(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】電磁波センサ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
G01J1/02 C
G01J1/02 Q
(21)【出願番号】P 2020201817
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169694
【氏名又は名称】荻野 彰広
(72)【発明者】
【氏名】原 晋治
(72)【発明者】
【氏名】太田 尚城
(72)【発明者】
【氏名】青木 進
(72)【発明者】
【氏名】小村 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】城川 眞生子
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-039570(JP,A)
【文献】特開2010-127892(JP,A)
【文献】国際公開第2007/000172(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00- 1/60
G01J 11/00
G01J 5/00- 5/90
H04N 23/00-23/959
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある特定の波長の電磁波に対して透過性を有する基板と、
前記基板の一方の面側に設けられた絶縁体層と、
前記基板の一方の面との間に空間を有して配置されたサーミスタ膜と、
前記絶縁体層の内部又は表面に設けられると共に、前記サーミスタ膜と電気的に接続された配線部と
、
前記サーミスタ膜と前記配線部との間を電気的に接続する接続部とを備え、
前記接続部は、前記基板の厚み方向成分を有する方向に延びるように配置されたレッグ部と、前記サーミスタ膜とは前記基板の厚み方向において重ならない位置に配置されたアーム部と有し、
前記アーム部は、前記接続部の中において前記サーミスタ膜と前記レッグ部との間に位置し、
前記レッグ部は、前記接続部の中において前記配線部と前記アーム部との間に位置し、
前記絶縁体層が設けられた層において、前記サーミスタ膜と対向する部分における前記電磁波の透過率が、前記配線部が設けられた部分における前記電磁波の透過率よりも相対的に高くな
ると共に、前記アーム部と対向する部分における前記電磁波の透過率が、前記サーミスタ膜と対向する部分における前記電磁波の透過率よりも相対的に低くなっており、
測定対象から放出された前記電磁波が前記基板側から前記サーミスタ膜と対向する部分を通して前記サーミスタ膜に入射することを特徴とする電磁波センサ。
【請求項2】
前記サーミスタ膜は、前記接続部により前記基板から吊り下げられた状態で支持され、
前記サーミスタ膜と前記絶縁体層との間には、前記空間が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波センサ。
【請求項3】
前記サーミスタ膜と対向する部分には、前記絶縁体層を貫通する孔部が設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の電磁波センサ。
【請求項4】
前記サーミスタ膜と対向する部分には、前記絶縁体層を凹ませた凹部が設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の電磁波センサ。
【請求項5】
前記サーミスタ膜と対向する部分には、前記配線部が設けられた部分の前記絶縁体層よりも単位厚さ当たりの前記電磁波の透過率が高い層が設けられていることを特徴とする請求項1~
4の何れか一項に記載の電磁波センサ。
【請求項6】
前記基板と前記絶縁体層との間には、反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1~
5の何れか一項に記載の電磁波センサ。
【請求項7】
前記絶縁体層は、酸化ケイ素膜と、前記基板と前記酸化ケイ素膜との間に設けられた酸化アルミニウム膜との積層膜を有することを特徴とする請求項1~
6の何れか一項に記載の電磁波センサ。
【請求項8】
前記サーミスタ膜の少なくとも一部を覆う誘電体膜を有することを特徴とする請求項1~
7の何れか一項に記載の電磁波センサ。
【請求項9】
前記サーミスタ膜とは別の参照用のサーミスタ膜を備え、
前記絶縁体層が設けられた層において、前記サーミスタ膜と対向する部分における前記電磁波の透過率が、前記参照用のサーミスタ膜と対向する部分における前記電磁波の透過率よりも相対的に高くなっていることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の電磁波センサ。
【請求項10】
ある特定の波長の電磁波に対して透過性を有する基板と、
前記基板の一方の面側に設けられた絶縁体層と、
前記基板の一方の面との間に空間を有して配置されたサーミスタ膜と、
前記絶縁体層の内部又は表面に設けられると共に、前記サーミスタ膜と電気的に接続された配線部と
、
前記サーミスタ膜と前記配線部との間を電気的に接続する接続部とを備え、
前記接続部は、前記基板の厚み方向成分を有する方向に延びるように配置されたレッグ部と、前記サーミスタ膜とは前記基板の厚み方向において重ならない位置に配置されたアーム部と有し、
前記アーム部は、前記接続部の中において前記サーミスタ膜と前記レッグ部との間に位置し、
前記レッグ部は、前記接続部の中において前記配線部と前記アーム部との間に位置し、
前記絶縁体層が設けられた層における前記サーミスタ膜と対向する部分には、前記絶縁体層を貫通する孔部又は前記絶縁体層を凹ませた凹部が設けられて
おり、
測定対象から放出された前記電磁波が前記基板側から前記サーミスタ膜と対向する部分を通して前記サーミスタ膜に入射することを特徴とする電磁波センサ。
【請求項11】
前記サーミスタ膜は、アレイ状に複数配列されていることを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の電磁波センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、サーミスタ素子を用いた電磁波センサがある。サーミスタ素子が有するサーミスタ膜の電気抵抗は、サーミスタ膜の温度変化に応じて変化する。電磁波センサでは、サーミスタ膜に入射した赤外線(電磁波)がサーミスタ膜又はサーミスタ膜の周辺の材料に吸収されることによって、このサーミスタ膜の温度が変化する。これにより、サーミスタ素子は、赤外線(電磁波)を検出する。
【0003】
ここで、シュテファン=ボルツマンの法則から、測定対象の温度と、この測定対象から熱輻射により放出される赤外線(輻射熱)との間には相関関係がある。したがって、測定対象から放出される赤外線をサーミスタ素子を用いて検出することで、測定対象の温度を非接触により測定することが可能である。
【0004】
また、このようなサーミスタ素子は、アレイ状に複数配列されることによって、測定対象の温度分布を二次元的に検出(撮像)する赤外線撮像素子(赤外線イメージセンサ)などの電磁波センサに応用されている(例えば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した電磁波センサでは、サーミスタ素子による赤外線(電磁波)の検出精度を向上させるため、測定対象から放出された赤外線がサーミスタ膜に入射するまでの間に、このサーミスタ膜以外の部分に赤外線が吸収されることを極力低く抑えることが求められている。
【0007】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、サーミスタ素子による電磁波の検出精度を向上させた電磁波センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
(1) ある特定の波長の電磁波に対して透過性を有する基板と、
前記基板の一方の面側に設けられた絶縁体層と、
前記基板の一方の面との間に空間を有して配置されたサーミスタ膜と、
前記絶縁体層の内部又は表面に設けられると共に、前記サーミスタ膜と電気的に接続された配線部と、
前記サーミスタ膜と前記配線部との間を電気的に接続する接続部とを備え、
前記接続部は、前記基板の厚み方向成分を有する方向に延びるように配置されたレッグ部と、前記サーミスタ膜とは前記基板の厚み方向において重ならない位置に配置されたアーム部と有し、
前記アーム部は、前記接続部の中において前記サーミスタ膜と前記レッグ部との間に位置し、
前記レッグ部は、前記接続部の中において前記配線部と前記アーム部との間に位置し、
前記絶縁体層が設けられた層において、前記サーミスタ膜と対向する部分における前記電磁波の透過率が、前記配線部が設けられた部分における前記電磁波の透過率よりも相対的に高くなると共に、前記アーム部と対向する部分における前記電磁波の透過率が、前記サーミスタ膜と対向する部分における前記電磁波の透過率よりも相対的に低くなっており、
測定対象から放出された前記電磁波が前記基板側から前記サーミスタ膜と対向する部分を通して前記サーミスタ膜に入射することを特徴とする電磁波センサ。
(2) 前記サーミスタ膜は、前記接続部により前記基板から吊り下げられた状態で支持され、
前記サーミスタ膜と前記絶縁体層との間には、前記空間が設けられていることを特徴とする前記〔1〕に記載の電磁波センサ。
(3) 前記サーミスタ膜と対向する部分には、前記絶縁体層を貫通する孔部が設けられていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電磁波センサ。
(4) 前記サーミスタ膜と対向する部分には、前記絶縁体層を凹ませた凹部が設けられていることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の電磁波センサ。
(5) 前記サーミスタ膜と対向する部分には、前記配線部が設けられた部分の前記絶縁体層よりも単位厚さ当たりの前記電磁波の透過率が高い層が設けられていることを特徴とする前記(1)~(4)の何れか一項に記載の電磁波センサ。
(6) 前記基板と前記絶縁体層との間には、反射防止膜が設けられていることを特徴とする前記(1)~(5)の何れか一項に記載の電磁波センサ。
(7) 前記絶縁体層は、酸化ケイ素膜と、前記基板と前記酸化ケイ素膜との間に設けられた酸化アルミニウム膜との積層膜を有することを特徴とする前記(1)~(6)の何れか一項に記載の電磁波センサ。
(8) 前記サーミスタ膜の少なくとも一部を覆う誘電体膜を有することを特徴とする前記(1)~(7)の何れか一項に記載の電磁波センサ。
(9) 前記サーミスタ膜とは別の参照用のサーミスタ膜を備え、
前記絶縁体層が設けられた層において、前記サーミスタ膜と対向する部分における前記電磁波の透過率が、前記参照用のサーミスタ膜と対向する部分における前記電磁波の透過率よりも相対的に高くなっていることを特徴とする前記(1)~(8)の何れか一項に記載の電磁波センサ。
(10) ある特定の波長の電磁波に対して透過性を有する基板と、
前記基板の一方の面側に設けられた絶縁体層と、
前記基板の一方の面との間に空間を有して配置されたサーミスタ膜と、
前記絶縁体層の内部又は表面に設けられると共に、前記サーミスタ膜と電気的に接続された配線部と、
前記サーミスタ膜と前記配線部との間を電気的に接続する接続部とを備え、
前記接続部は、前記基板の厚み方向成分を有する方向に延びるように配置されたレッグ部と、前記サーミスタ膜とは前記基板の厚み方向において重ならない位置に配置されたアーム部と有し、
前記アーム部は、前記接続部の中において前記サーミスタ膜と前記レッグ部との間に位置し、
前記レッグ部は、前記接続部の中において前記配線部と前記アーム部との間に位置し、
前記絶縁体層が設けられた層における前記サーミスタ膜と対向する部分には、前記絶縁体層を貫通する孔部又は前記絶縁体層を凹ませた凹部が設けられており、
測定対象から放出された前記電磁波が前記基板側から前記サーミスタ膜と対向する部分を通して前記サーミスタ膜に入射することを特徴とする電磁波センサ。
(11) 前記サーミスタ膜は、アレイ状に複数配列されていることを特徴とする前記(1)~(10)の何れか一項に記載の電磁波センサ。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、サーミスタ素子による電磁波の検出精度を向上させた電磁波センサを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る電磁波センサの構成を示す平面図である。
【
図2】
図1に示す電磁波センサの構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す電磁波センサのセル構造を示す断面図である。
【
図4】
図1に示す電磁波センサのセル構造を示す平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る電磁波センサのセル構造を示す断面図である。
【
図6】第1の絶縁体層に孔部を形成する工程を順に説明するための断面図である。
【
図7】第1の絶縁体層に孔部を形成する工程を順に説明するための断面図である。
【
図8】第1の絶縁体層に孔部を形成する工程を順に説明するための断面図である。
【
図9】第1の絶縁体層に孔部を形成する工程を順に説明するための断面図である。
【
図10】本発明の第3の実施形態に係る電磁波センサのセル構造を示す断面図である。
【
図11】本発明の第4の実施形態に係る電磁波センサのセル構造を示す断面図である。
【
図12】本発明の第5の実施形態に係る電磁波センサのセル構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面においては、各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがあり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らないものとする。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
また、以下に示す図面では、XYZ直交座標系を設定し、X軸方向を電磁波センサの特定の面内における第1の方向Xとし、Y軸方向を電磁波センサの特定の面内において第1の方向Xと直交する第2の方向Yとし、Z軸方向を電磁波センサの特定の面内に対して直交する第3の方向Zとして、それぞれ示すものとする。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、本発明の第1の実施形態として、例えば
図1~
図4に示す電磁波センサ1Aについて説明する。
なお、
図1は、電磁波センサ1Aの構成を示す平面図である。
図2は、電磁波センサ1Aの構成を示す斜視図である。
図3は、電磁波センサ1Aのセル構造を示す断面図である。
図4は、電磁波センサ1Aのセル構造を示す平面図である。
【0014】
本実施形態の電磁波センサ1Aは、測定対象から放出される赤外線(電磁波)を検出することによって、この測定対象の温度分布を二次元的に検出(撮像)する赤外線撮像素子(赤外線イメージセンサ)に本発明を適用したものである。
【0015】
赤外線は、波長が0.75μm以上、1000μm以下である電磁波である。赤外線イメージセンサは、赤外線カメラとして屋内や屋外の暗視などに利用されるほか、非接触式の温度センサとして人や物の温度測定などに利用されている。
【0016】
具体的に、この電磁波センサ1Aは、
図1~
図4に示すように、互いに対向して配置された第1の基板2及び第2の基板3と、これら第1の基板2と第2の基板3との間に配置された複数のサーミスタ素子4とを備えている。
【0017】
第1の基板2及び第2の基板3は、ある特定の波長の電磁波(本実施形態では波長8~14μmの長波長赤外線)(以下、「赤外線」という。)IRに対して透過性を有するシリコン基板からなる。また、赤外線IRに対して透過性を有する基板としては、ゲルマニウム基板などを用いることができる。
【0018】
第1の基板2及び第2の基板3は、互いに対向する面の周囲をシール材(図示せず。)により封止することによって、その間に密閉された内部空間Kを構成している。また、内部空間Kは、高真空に減圧されている。これにより、電磁波センサ1では、内部空間Kでの対流による熱の影響を抑制し、サーミスタ素子4に対して測定対象から放出される赤外線IR以外の熱による影響を排除している。
【0019】
なお、本実施形態の電磁波センサ1Aは、上述した密閉された内部空間Kを減圧した構成に必ずしも限定されるものではなく、大気圧のまま密閉又は開放された内部空間Kを有する構成であってもよい。
【0020】
サーミスタ素子4は、赤外線IRを検出するサーミスタ膜5と、サーミスタ膜5の一方の面に接触して設けられた第1の電極6aと、サーミスタ膜5の他方の面に接触して設けられた一対の第2の電極6bと、サーミスタ膜5を覆う誘電体膜7とを備え、サーミスタ膜5の面直方向に電流を流すCPP(Current-Perpendicular-to-Plane)構造を有している。
【0021】
すなわち、このサーミスタ素子4では、一方の第2の電極6bから第1の電極6aに向けてサーミスタ膜5の面直方向に電流を流すと共に、第1の電極6aから他方の第2の電極6bに向けてサーミスタ膜5の面直方向に電流を流すことが可能となっている。
【0022】
サーミスタ膜5としては、例えば、酸化バナジウム膜、非晶質シリコン、多結晶シリコン、マンガンを含むスピネル型結晶構造の酸化物、酸化チタン、又はイットリウム-バリウム-銅酸化物などを用いることができる。
【0023】
第1の電極6a及び第2の電極6bとしては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、銀(Ag)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)などの導電膜を用いることができる。
【0024】
誘電体膜7としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムマグネシウム、ホウ化ケイ素、窒化ホウ素、又はサイアロン(ケイ素とアルミニウムとの酸窒化物)などを用いることができる。
【0025】
誘電体膜7は、少なくともサーミスタ膜5の少なくとも一部を覆うように設けられた構成であればよい。本実施形態では、サーミスタ膜5の両面を覆うように誘電体膜7が設けられている。
【0026】
複数のサーミスタ素子4は、互いに同じ大きさで平面視で矩形状(本実施形態では正方形状)に形成されている。また、複数のサーミスタ素子4は、第1の基板2及び第2の基板3と平行な面内(以下、「特定の面内」という。)にアレイ状に配列されている。すなわち、これら複数のサーミスタ素子4は、特定の面内において互いに交差(本実施形態では直交)する第1の方向Xと第2の方向Yとにマトリックス状に並んで配置されている。
【0027】
また、各サーミスタ素子4は、第1の方向Xを行方向とし、第2の方向Yを列方向として、第1の方向Xに一定の間隔で並んで配置されると共に、第2の方向Yに一定の間隔で並んで配置されている。
【0028】
なお、上記サーミスタ素子4の行列数としては、例えば640行×480列、1024行×768列などが挙げられるが、これら行列数に必ずしも限定されるものではなく、適宜変更することが可能である。
【0029】
第1の基板2側には、第1の絶縁体層8と、後述する回路部15と電気的に接続された配線部9と、各サーミスタ素子4と配線部9との間を電気的に接続する第1の接続部10とが設けられている。
【0030】
第1の絶縁体層8は、第1の基板2の一方の面(第2の基板3と対向する面)側において積層された絶縁膜からなる。絶縁膜としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化タングステン、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素、酸化アルミニウムマグネシウム、ホウ化ケイ素、窒化ホウ素、サイアロン(ケイ素とアルミニウムの酸窒化物)などを用いることができる。
【0031】
配線部9は、複数の第1のリード配線9aと、複数の第2のリード配線9bとを有している。第1のリード配線9a及び第2のリード配線9bは、例えば銅や金などの導電膜からなる。配線部9は、第1の絶縁体層8の内部又は表面に設けられている。
【0032】
複数の第1のリード配線9aと複数の第2のリード配線9bとは、第1の絶縁体層8の第3の方向Zにおいて異なる層内に位置して、立体的に交差するように配置されている。このうち、複数の第1のリード配線9aは、第1の方向Xに延在し、且つ、第2の方向Yに一定の間隔で並んで設けられている。一方、複数の第2のリード配線9bは、第2の方向Yに延在し、且つ、第1の方向Xに一定の間隔で並んで設けられている。
【0033】
各サーミスタ素子4は、平面視において、これら複数の第1のリード配線9aと複数の第2のリード配線9bとによって区画された領域毎に設けられている。各サーミスタ膜5と第1の基板2の厚方向において対向する領域(平面視で重なる領域)には、第1の基板2とサーミスタ膜5との間で赤外線IRを透過させる窓部Wが存在している。
【0034】
第1の接続部10は、複数のサーミスタ素子4の各々に対応して設けられた一対の第1の接続部材11a,11bを有している。また、一対の第1の接続部材11a,11bは、一対のアーム部12a,12bと、一対のレッグ部13a,13bとを有している。
【0035】
各アーム部12a,12bは、例えばチタンや窒化チタンなどの薄膜によってサーミスタ素子4の周囲に沿って形成された折り曲げ線状の導体パターンからなる。各レッグ部13a,13bは、例えば銅、金、FeCoNi合金又はNiFe合金(パーマロイ)などのめっきによって第3の方向Zに延在して形成された断面円形状の導体ピラーからなる。
【0036】
一方の第1の接続部材11aは、一方の第2の電極6bと電気的に接続された一方のアーム部12aと、一方のアーム部12aと第1のリード配線9aとの間を電気的に接続する一方のレッグ部13aとを有して、サーミスタ素子4の一方側と第1のリード配線9aとの間を電気的に接続している。
【0037】
他方の第1の接続部材11bは、他方の第2の電極6bと電気的に接続された他方のアーム部12bと、他方のアーム部12cと第2のリード配線9bとの間を電気的に接続する他方のレッグ部13bとを有して、サーミスタ素子4の他方側と第2のリード配線9bとの間を電気的に接続している。
【0038】
これにより、サーミスタ素子4は、その面内の対角方向に位置する一対の第1の接続部材11a,11bにより第3の方向Zに吊り下げられた状態で支持されている。また、サーミスタ素子4と第1の絶縁体層8との間には、空間Gが設けられており、サーミスタ膜5は、第1の基板2の一方の面(第2の基板3と対向する面)との間に空間Gを有して配置されている。
【0039】
第1の基板2の一方の面(第2の基板3と対向する面)側には、図示を省略するものの、複数のサーミスタ素子4の中から1つのサーミスタ素子4を選択するための複数の選択用トランジスタ(図示せず。)が設けられている。複数の選択用トランジスタは、第1の基板2の複数のサーミスタ素子4の各々に対応した位置に設けられている。また、各選択用トランジスタは、赤外線IRの乱反射や入射効率の低下を防ぐため、上述した窓部Wを避けた位置に設けられている。
【0040】
第2の基板3側には、第2の絶縁体層14と、サーミスタ素子4から出力される電圧の変化を検出して輝度温度に変換する回路部15と、各サーミスタ素子4と回路部15との間を電気的に接続する第2の接続部16とが設けられている。
【0041】
第2の絶縁体層14は、第2の基板3の一方の面(第1の基板2と対向する面)側において積層された絶縁膜からなる。絶縁膜としては、上記第1の絶縁体層8で例示した絶縁膜と同じものを用いることができる。
【0042】
回路部15は、読み出し集積回路(ROIC:Read Out Integrated Circuit)やレギュレータ、A/Dコンバータ(Analog-to-Digital Converter)、マルチプレクサなどからなり、第2の絶縁体層14の層内に設けられている。
【0043】
また、第2の絶縁体層14の面上には、複数の第1のリード配線9a及び複数の第2のリード配線9bの各々に対応した複数の接続端子17a,17bが設けられている。接続端子17a,17bは、例えば銅や金などの導電膜からなる。
【0044】
一方の接続端子17aは、回路部15の周囲を囲む第1の方向Xの一方側の領域に位置して、第2の方向Yに一定の間隔で並んで設けられている。他方の接続端子17bは、回路部15の周囲を囲む第2の方向Yの一方側の領域に位置して、第1の方向Xに一定の間隔で並んで設けられている。
【0045】
第2の接続部16は、複数の第1のリード配線9a及び複数の第2のリード配線9bの各々に対応して設けられた複数の第2の接続部材18a,18bを有している。複数の第2の接続部材18a,18bは、例えば銅や金などのめっきによって第3の方向Zに延在して形成された断面円形状の導体ピラーからなる。
【0046】
一方の第2の接続部材18aは、第1のリード配線9aの一端側と一方の接続端子17aとの間を電気的に接続している。他方の第2の接続部材18bは、第2のリード配線9bの一端側と他方の接続端子17bとの間を電気的に接続している。これにより、複数の第1のリード配線9aと回路部15との間が一方の第2の接続部材18a及び一方の接続端子17aを介して電気的に接続されている。また、複数の第2のリード配線9bと回路部15との間が他方の第2の接続部材18b及び他方の接続端子17bを介して電気的に接続されている。
【0047】
以上のような構成を有する本実施形態の電磁波センサ1では、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通してサーミスタ素子4に入射する。
【0048】
サーミスタ素子4では、サーミスタ膜5の近傍に形成された誘電体膜7に入射した赤外線IRが誘電体膜7に吸収されること、並びに、サーミスタ膜5に入射した赤外線IRがサーミスタ膜5に吸収されることによって、このサーミスタ膜5の温度が変化する。また、サーミスタ素子4では、サーミスタ膜5の温度変化に対して、このサーミスタ膜5の電気抵抗が変化することで、一対の第2の電極6の間の出力電圧が変化する。本実施形態の電磁波センサ1では、サーミスタ素子4がボロメータ素子として機能する。
【0049】
本実施形態の電磁波センサ1では、測定対象から放出される赤外線IRを複数のサーミスタ素子4により平面的に検出した後、各サーミスタ素子4から出力される電気信号(電圧信号)を輝度温度に変換することによって、測定対象の温度分布(温度画像)を二次元的に検出(撮像)することが可能である。
【0050】
なお、サーミスタ素子4では、サーミスタ膜5に定電圧を印加する場合、このサーミスタ膜5の温度変化に対して、サーミスタ膜5に流れる電流の変化を検出して輝度温度に変換することも可能である。
【0051】
ところで、本実施形態の電磁波センサ1Aは、
図3及び
図4に示すように、複数のサーミスタ素子4のうち、測定用サーミスタ素子4Aが周期的に並んで配置された領域の外側の領域に、いくつかの参照用のサーミスタ素子4Bが配置された構成を有している。又は、測定用のサーミスタ素子4Aが周期的に並んで配置された領域の内側の領域に、いくつかの参照用のサーミスタ素子4Bが配置された構成であってもよい。
【0052】
本実施形態の電磁波センサ1Aでは、測定用のサーミスタ素子4Aにより検出される信号と、参照用のサーミスタ素子4Bにより検出される信号との差分を利用することにより、サーミスタ膜5の周囲における温度の影響を抑制して、測定対象の温度を精度良く検出することが可能である。
【0053】
本実施形態の電磁波センサ1Aでは、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおいて、サーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率が、配線部9が設けられた部分における赤外線IRの透過率よりも相対的に高くなっている。
【0054】
具体的に、このサーミスタ素子4Aでは、サーミスタ膜5と対向する部分に、第1の絶縁体層8を貫通する孔部21が設けられている。言い換えると、第1の基板2とサーミスタ膜5との間に、第1の絶縁体層8を貫通する孔部21が設けられている。これにより、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、この孔部21が設けられた位置における赤外線IRの透過率が最も高くなっている。
【0055】
第1の接続部10は、第1の基板2の厚み方向成分を有する方向に延びるように配置されたレッグ部13a,13bと、サーミスタ膜5とは第1の基板2の厚み方向において重ならない位置に配置されたアーム部12a,12bと有している。
【0056】
アーム部12a,12bは、第1の接続部10の中においてサーミスタ膜5とレッグ部13a,13bとの間に位置している。レッグ部13a,13bは、第1の接続部10の中において配線部9とアーム部12a,12bとの間に位置している。第1の基板2とアーム部12A,12bとの間には、第1の絶縁体層8が設けられている。
【0057】
これにより、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおいて、アーム部12a,12bと対向する部分における赤外線IRの透過率が、サーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率よりも相対的に低くなっている。このことからも、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、サーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率が最も高くなっている。
【0058】
したがって、本実施形態の電磁波センサ1Aでは、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通してサーミスタ膜5の近傍に入射するまでの間に、サーミスタ膜5及びその近傍以外の部分に赤外線IRが吸収されることを低く抑えることが可能である。
【0059】
また、本実施形態の電磁波センサ1Aでは、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、アーム部12a,12bと対向する部分における赤外線IRの透過率が、サーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率よりも相対的に低くなっている。したがって、アーム部12a,12bに照射される赤外線IRを抑制することができ、アーム部12a,12bに照射される赤外線IRによるサーミスタ膜5への影響を抑制することが可能である。
【0060】
一方、参照用のサーミスタ素子4Bでは、第1の基板2とサーミスタ膜5との間に第1の絶縁体層8が設けられている。すなわち、参照用のサーミスタ素子4Bは、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおいて、サーミスタ膜5と対向する部分に、上述した第1の絶縁体層8を貫通する孔部21が設けられていない構成である。このため、参照用のサーミスタ素子4Bでは、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通してサーミスタ膜5に入射するまでの間に、第1の絶縁体層8に赤外線IRが吸収されることになる。
【0061】
したがって、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおいて、測定用のサーミスタ素子4Aを構成するサーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率は、参照用のサーミスタ素子4Bを構成するサーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率よりも相対的に高くなっている。
【0062】
これにより、本実施形態の電磁波センサ1Aでは、測定対象から放出された赤外線IRが参照用のサーミスタ素子4Bのサーミスタ膜5に入射することが抑制されるため、上述した測定用のサーミスタ素子4Aにより検出される信号と、参照用のサーミスタ素子4Bにより検出される信号との差分を利用することにより、サーミスタ膜5の周囲における温度の影響を抑制して、測定対象の温度を精度良く検出することが可能である。
【0063】
以上のように、本実施形態の電磁波センサ1Aでは、上述したサーミスタ素子4Aによる赤外線IRの検出精度を向上させることができ、測定対象の温度分布(温度画像)を高精度に検出(撮像)することが可能である。
【0064】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、例えば
図5に示す電磁波センサ1Bについて説明する。
なお、
図5は、電磁波センサ1Bのセル構造を示す断面図である。また、以下の説明では、上記電磁波センサ1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0065】
本実施形態の電磁波センサ1Bは、
図5に示すように、第1の基板2と第1の絶縁体層8との間に反射防止膜22が設けられた構成である。それ以外は、上記電磁波センサ1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0066】
反射防止膜22は、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通してサーミスタ膜5に入射するまでの間に、第1の基板2と空間Gとの界面で赤外線IRが反射されることを防止し、第1の基板2を透過した赤外線IRをサーミスタ膜5側に効率良く入射させるためのものである。
【0067】
反射防止膜22としては、例えば、硫化亜鉛、フッ化イットリウム、カルコゲナイドガラス、ゲルマニウム、シリコン、セレン化亜鉛、ガリウム砒素などを用いることができる。
【0068】
また、反射防止膜22は、屈折率の異なる膜を交互に積層し、各層で反射する波の干渉を利用して赤外線IRの反射率を低減する構成であってもよい。この場合、反射防止膜22として、上述した材料の他にも、例えば、酸化膜、窒化膜、硫化膜、フッ化膜、ホウ化膜、臭化膜、塩化膜、セレン化膜、Ge膜,ダイヤモンド膜、カルコゲナイド膜、Si膜などを積層した積層膜を用いることができる。
【0069】
本実施形態の電磁波センサ1Bでは、上記電磁波センサ1Aと同様に、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、サーミスタ膜5と対向する部分に、第1の絶縁体層8を貫通する孔部21が設けられている。すなわち、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、この孔部21が設けられた位置における赤外線IRの透過率が最も高くなっている。
【0070】
これにより、測定用のサーミスタ素子4Aでは、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおいて、サーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率が、配線部9が設けられた部分における赤外線IRの透過率よりも相対的に高くなっている。
【0071】
したがって、本実施形態の電磁波センサ1Bでは、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通してサーミスタ膜5の近傍に入射するまでの間に、サーミスタ膜5及びその近傍以外の部分に赤外線IRが吸収されることを低く抑えることが可能である。
【0072】
したがって、本実施形態の電磁波センサ1Bでは、第1の基板2と第1の絶縁体層8との間に反射防止膜22を設けた場合でも、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、測定対象から放出された赤外線IRがサーミスタ膜5の近傍に入射するまでの間に、サーミスタ膜5及びその近傍以外の部分に赤外線IRが吸収されることを低く抑えることが可能である。
【0073】
以上のように、本実施形態の電磁波センサ1Bでは、上述したサーミスタ素子4Aによる赤外線IRの検出精度を向上させることができ、測定対象の温度分布(温度画像)を高精度に検出(撮像)することが可能である。
【0074】
ところで、第1の本実施形態の電磁波センサ1A及び第2の実施形態の電磁波センサ1Bでは、第1の絶縁体層8を貫通する孔部21が設けられている。このような構成の場合、第1の絶縁体層8は、酸化ケイ素膜8aと、第1の基板2と酸化ケイ素膜8aとの間に設けられた酸化アルミニウム膜8bとの積層膜からなることが好ましい。
【0075】
ここで、第1の絶縁体層8に孔部21を形成する工程について、
図6~
図9を参照しながら説明する。
なお、
図6~
図9は、第1の絶縁体層8に孔部21を形成する工程を順に説明するための断面図である。また、ここでは、第2の実施形態の電磁波センサ1Bを例示しながら説明する。
【0076】
第1の絶縁体層8に孔部21を形成する際は、先ず、
図6に示すように、第1の基板2の一方の面上に、反射防止膜22と、第1の絶縁体層8を構成する酸化アルミニウム膜8b及び酸化ケイ素膜8aとを順次積層して形成する。また、第1の絶縁体層8の面上に、孔部21に対応した位置に開口部30aを有するマスク層30を形成する。マスク層30は、フォトレジストからなる。
【0077】
次に、
図7に示すように、塩素系ガスを用いた反応性イオンエッチング(RIE)を行う。このとき、酸化アルミニウム膜8bをエッチングストッパーとして、酸化アルミニウム膜8bが露出するまで、開口部30aに対応した形状に酸化ケイ素膜8aをパターニングしながら除去する。
【0078】
次に、
図8に示すように、アルカリエッチングを用いて、反射防止膜22が露出するまで、開口部30aに対応した形状に酸化アルミニウム膜8bをパターニングしながら除去する。
【0079】
次に、
図9に示すように、第1の絶縁体層8の面上からマスク層30を除去する。これにより、第1の絶縁体層8に孔部21を精度良く形成することが可能である。
【0080】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態として、例えば
図10に示す電磁波センサ1Cについて説明する。
なお、
図10は、電磁波センサ1Cのセル構造を示す断面図である。また、以下の説明では、上記電磁波センサ1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0081】
本実施形態の電磁波センサ1Cは、
図10に示すように、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、サーミスタ膜5と対向する部分に、上述した第1の絶縁体層8を貫通する孔部21を設ける代わりに、第1の絶縁体層8を凹ませた凹部23が設けられた構成である。凹部23は、第1の基板2とサーミスタ膜5との間に設けられている。
【0082】
すなわち、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、この凹部23が設けられた位置における赤外線IRの透過率が最も高くなっている。それ以外は、上記電磁波センサ1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0083】
これにより、測定用のサーミスタ素子4Aでは、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおいて、サーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率が、配線部9が設けられた部分における赤外線IRの透過率よりも相対的に高くなっている。
【0084】
したがって、本実施形態の電磁波センサ1Cでは、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通してサーミスタ膜5の近傍に入射するまでの間に、サーミスタ膜5及びその近傍以外の部分に赤外線IRが吸収されることを低く抑えることが可能である。
【0085】
以上のように、本実施形態の電磁波センサ1Cでは、上述したサーミスタ素子4Aによる赤外線IRの検出精度を向上させることができ、測定対象の温度分布(温度画像)を高精度に検出(撮像)することが可能である。
【0086】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態として、例えば
図11に示す電磁波センサ1Dについて説明する。
なお、
図11は、電磁波センサ1Dのセル構造を示す断面図である。また、以下の説明では、上記電磁波センサ1B,1Cと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0087】
本実施形態の電磁波センサ1Dは、
図11に示すように、第1の基板2と第1の絶縁体層8との間に反射防止膜22が設けられた構成である。それ以外は、上記電磁波センサ1Cと基本的に同じ構成を有している。
【0088】
本実施形態の電磁波センサ1Dでは、上記電磁波センサ1Cと同様に、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、サーミスタ膜5と対向する部分に、第1の絶縁体層8を凹ませた凹部23が設けられている。
【0089】
これにより、測定用のサーミスタ素子4Aでは、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおいて、サーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率が、配線部9が設けられた部分における赤外線IRの透過率よりも相対的に高くなっている。
【0090】
したがって、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から窓部Wを通してサーミスタ膜5の近傍に入射するまでの間に、サーミスタ膜5及びその近傍以外の部分に赤外線IRが吸収されることを低く抑えることが可能である。
【0091】
以上のように、本実施形態の電磁波センサ1Dでは、上述したサーミスタ素子4Aによる赤外線IRの検出精度を向上させることができ、測定対象の温度分布(温度画像)を高精度に検出(撮像)することが可能である。
【0092】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態として、例えば
図12に示す電磁波センサ1Eについて説明する。
なお、
図12は、電磁波センサ1Eのセル構造を示す断面図である。また、以下の説明では、上記電磁波センサ1Aと同等の部位については、説明を省略すると共に、図面において同じ符号を付すものとする。
【0093】
本実施形態の電磁波センサ1Eは、
図12に示すように、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、孔部21の内側に高透過率層24が埋め込まれた状態で設けられた構成である。それ以外は、上記電磁波センサ1Aと基本的に同じ構成を有している。
【0094】
高透過率層24は、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、サーミスタ膜5と対向する部分に設けられている。高透過率層24は、配線部9が設けられた部分の第1の絶縁体層8よりも単位厚さ当たりの赤外線IRの透過率が高い層である。
【0095】
測定用のサーミスタ素子4Aでは、第1の絶縁体層8が設けられた層Tのうち、この孔部21及び高透過率層24が設けられた位置における赤外線IRの透過率が最も高くなっている。
【0096】
これにより、測定用のサーミスタ素子4Aでは、第1の絶縁体層8が設けられた層Tにおいて、サーミスタ膜5と対向する部分における赤外線IRの透過率が、配線部9が設けられた部分における赤外線IRの透過率よりも相対的に高くなっている。
【0097】
したがって、本実施形態の電磁波センサ1Eでは、測定用のサーミスタ素子4Aにおいて、測定対象から放出された赤外線IRが第1の基板2側から高透過率層24を通してサーミスタ膜5の近傍に入射するまでの間に、サーミスタ膜5及びその近傍以外の部分に赤外線IRが吸収されることを低く抑えることが可能である。
【0098】
高透過率層24は、例えば、反射防止層として機能させることができる。この場合、高透過率層24の材料としては、硫化亜鉛、フッ化イットリウム、カルコゲナイドガラス、ゲルマニウム、シリコン、セレン化亜鉛、ガリウム砒素などを用いることができる。これらの材料は、上記第1の絶縁体層8で例示した材料よりも、単位厚さ当たりの赤外線IRの透過率が高い材料である。
【0099】
高透過率層24を反射防止層として機能する場合、測定対象から放出された赤外線IRが高透過率層24を通してサーミスタ膜5に入射するまでの間に、第1の基板2と空間Gとの界面で赤外線IRが反射されることが防止され、第1の基板2を透過した赤外線IRがサーミスタ膜5側に効率良く入射する。
【0100】
以上のように、本実施形態の電磁波センサ1Eでは、上述したサーミスタ素子4Aによる赤外線IRの検出精度を向上させることができ、測定対象の温度分布(温度画像)を高精度に検出(撮像)することが可能である。
【0101】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記反射防止膜22については、第1の基板2の一方の面(第2の基板3と対向する面)側に設けられた構成だけでなく、第1の基板2の他方の面(第2の基板3と対向する面とは反対側の面)側に設けられた構成としてもよい。
【0102】
また、上記参照用のサーミスタ素子4Bは、必ずしも必要な構成ではなく、場合によっては省略することも可能である。
【0103】
なお、上記第1の絶縁体層8として、反射防止膜22のみを設けた場合には、反射防止膜22の材料によっては、上述した孔部21や凹部23を形成するためのプロセスに、従来の半導体プロセスを適用することが困難となる場合がある。したがって、第2の実施形態の電磁波センサ1B及び第4の実施形態の電磁波センサ1Dでは、上述した反射防止膜22に孔部21や凹部23を設けることなく、従来の半導体プロセスの適用が容易な第1の絶縁体層8に孔部21や凹部23を設ける構成としている。
【0104】
なお、本発明を適用した電磁波センサは、上述した複数のサーミスタ素子4をアレイ状に配列した赤外線イメージセンサの構成に必ずしも限定されるものではなく、サーミスタ素子4を単体で用いた電磁波センサや、複数のサーミスタ素子4を線状に並べて配列した電磁波センサなどにも本発明を適用することが可能である。
【0105】
また、本発明を適用した電磁波センサは、電磁波として、上述した赤外線を検出するものに必ずしも限定されるものではなく、例えば波長が30μm以上、3mm以下のテラヘルツ波を検出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1A,1B,1C,1D,1E…電磁波センサ 2…第1の基板 3…第2の基板 4…サーミスタ素子 4A…測定用のサーミスタ素子 4B…参照用のサーミスタ素子 5…サーミスタ膜 6a…第1の電極 6b…第2の電極 7…誘電体膜 8…第1の絶縁体層 8a…酸化ケイ素膜 8b…酸化アルミニウム膜 9…配線部 9a…第1のリード配線 9b…第2のリード配線 10…第1の接続部 11a,11a…第1の接続部材 12a,12b…アーム部 13a,13b…レッグ部 14…第2の絶縁体層 15…回路部 16…第2の接続部 17a,17b…接続端子 18a,18b…第2の接続部材 21…孔部 22…反射防止膜 23…凹部 24…高透過率層 IR…赤外線(電磁波) G…空間 K…内部空間