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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】運転制御方法及び運転制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20241202BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241202BHJP
   B60T 7/12 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
B60W30/08
G08G1/16 C
B60T7/12 C
B60T7/12 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020202642
(22)【出願日】2020-12-07
(65)【公開番号】P2022090315
(43)【公開日】2022-06-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】福重 孝志
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-077829(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0039591(US,A1)
【文献】特開2017-117080(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/08
G08G 1/16
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転制御装置のプロセッサを用いて自車両の車速を制御する運転制御方法であって、
前記プロセッサは、
カメラ又はレーダーである検出部を用いて、前記自車両の前方に障害物が検出されたか否かを判定し、
前記自車両の前方に前記障害物が検出されていない場合には、予め設定された基準車速を目標車速として設定し、
前記自車両の前方に前記障害物が検出された場合には、前記検出部が検出した前記障害物の任意の一点の位置の時間あたりの変位を示す波形グラフを作成し、前記波形グラフの単位時間当たりの振動の波の数である前記障害物の揺れの周波数、及び、前記波形グラフの山と谷との変位差である前記障害物の揺れの大きさの少なくとも何れか一方である前記障害物の特徴に基づいて、前記揺れの周波数及び前記揺れが大きい場合のほうが小さい場合よりも高い値となるように、前記自車両が前記障害物の側方を通過するときの側方通過リスクの評価値を算出し、
算出された前記側方通過リスクの評価値に応じて、前記基準車速よりも低い、前記自車両が前記障害物の側方を通過するときの目標通過車速を、前記側方通過リスクの評価値が第1の評価値である場合の第1の目標通過車速よりも、前記側方通過リスクの評価値が前記第1の評価値よりも高い第2の評価値である場合の第2の目標通過車速の方が低くなるように設定し、
前記障害物の側方を通過する手前の地点に至るまでに、前記自車両の車速を前記基準車速から前記目標通過車速に減速させ、前記障害物の側方を通過する区間では前記自車両の車速を前記目標通過車速に維持させる、運転制御方法。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記自車両の前方に前記障害物が検出されていない場合に、予め設定された前記基準車速に基づいて前記自車両の車速を制御し、
前記自車両の前方に前記障害物が検出された場合は、前記基準車速と前記第1の目標通過車速との車速差が、前記基準車速と前記第2の目標通過車速との車速差よりも小さくなるように、前記基準車速よりも低い前記目標通過車速を設定する、請求項1に記載の運転制御方法。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記自車両の前方に前記障害物が検出された場合に、前記自車両が前記障害物の側方を通過する前に、前記自車両の車速を予め定められた減速度に基づいて前記基準車速から前記目標通過車速に減速させる、請求項2に記載の運転制御方法。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記自車両の車速を前記基準車速から前記目標通過車速に減速させるための前記減速度が予め設定された許容減速度より大きいか否かを判定し、
前記減速度が前記許容減速度より大きい場合は、前記減速度が前記許容減速度以下となるように、前記目標通過車速を高く変更し、変更した前記目標通過車速を前記目標通過車速として再設定する、請求項3に記載の運転制御方法。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記自車両の前方に前記障害物が検出された場合に、前記側方通過リスクの評価値が予め設定された側方通過リスク閾値以下であるか否かを判定し、
前記側方通過リスクの評価値が前記側方通過リスク閾値より大きい場合は、前記目標通過車速を変更しない、請求項4に記載の運転制御方法。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記自車両の前方に前記障害物が検出された場合に、前記自車両に設けられた撮像装置が取得した画像情報から抽出される前記障害物の特徴に基づいて、前記側方通過リスクの評価値を算出する、請求項1~5のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項7】
前記障害物の特徴は、前記障害物の前記揺れの周波数、及び、前記揺れの大きさの少なくともいずれか一方を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の運転制御方法。
【請求項8】
プロセッサを用いて自車両の車速を制御する運転制御装置であって、
前記プロセッサは、
カメラ又はレーダーである検出部を用いて、前記自車両の前方に障害物が検出されたか否かを判定する障害物検出判定部と、
前記自車両の前方に前記障害物が検出されていない場合には、予め設定された基準車速を目標車速として設定する、目標車速設定部と、
前記自車両の前方に前記障害物が検出された場合は、前記検出部が検出した前記障害物の任意の一点の位置の時間あたりの変位を示す波形グラフを作成し、前記波形グラフの単位時間当たりの振動の波の数である前記障害物の揺れの周波数、及び、前記波形グラフの山と谷との変位差である前記障害物の揺れの大きさの少なくとも何れか一方である前記障害物の特徴に基づいて、前記揺れの周波数及び前記揺れの大きさが大きい場合のほうが小さい場合よりも高い値となるように、前記自車両が前記障害物の側方を通過するときの側方通過リスクの評価値を算出する側方通過リスク算出部と、を備え、
前記目標車速設定部は、算出された前記側方通過リスクの評価値に応じて、前記基準車速よりも低い、前記自車両が前記障害物の側方を通過するときの目標通過車速を前記側方通過リスクの評価値が第1の評価値である場合の第1の目標通過車速よりも、前記側方通過リスクの評価値が前記第1の評価値より高い第2の評価値である場合の第2の目標通過車速の方が低くなるように設定し、前記障害物の側方を通過する手前の地点に至るまでに、前記自車両の車速を前記基準車速から前記目標通過車速に減速させ、前記障害物の側方を通過する区間では前記自車両の車速を前記目標通過車速に維持させる、運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転制御方法及び運転制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている車速制御装置は、自車両が障害物の横を通過する際に、障害物の横位置、及び、ドライバの視線情報に応じて、車速を減速させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-087940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車速制御装置による車速の制御は、障害物がどのようなものであるかに関わらず実行されるため、障害物の種類によっては、車速制御に対する違和感を乗員に与えてしまうおそれがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自車両が障害物の側方を通過するときの乗員の違和感を低減させるように車速を制御することができる運転制御方法及び運転制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自車両の前方に障害物が検出されたか否かを判定し、自車両の前方に障害物が検出されていない場合には、予め設定された基準車速を目標車速として設定し、自車両の前方に障害物が検出された場合には、検出部が検出した障害物の任意の一点の位置の時間あたりの変位を示す波形グラフを作成し、波形グラフの単位時間当たりの振動の波の数である障害物の揺れの周波数、及び、波形グラフの山と谷との変位差である障害物の揺れの大きさの少なくとも何れか一方である障害物の特徴に基づいて、揺れの周波数及び揺れが大きい場合のほうが小さい場合よりも高い値となるように、自車両が障害物の側方を通過するときの側方通過リスクの評価値を算出し、算出された側方通過リスクの評価値に応じて、基準車速よりも低い、自車両が障害物の側方を通過するときの目標通過車速を、側方通過リスクの評価値が第1の評価値である場合の第1の目標通過車速よりも、側方通過リスクの評価値が第1の評価値よりも高い第2の評価値である場合の第2の目標通過車速の方が低くなるように設定し、障害物の側方を通過する手前の地点に至るまでに、自車両の車速を基準車速から目標通過車速に減速させ、障害物の側方を通過する区間では自車両の車速を目標通過車速に維持させる、ことによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、障害物の側方通過リスクに応じて目標車速を設定するので、自車両が障害物の側方を通過するときの乗員の違和感を低減させるように車速を制御することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係る運転制御装置の構成を示すブロック図である。
図2図1に示す運転制御装置によって算出される側方通過リスクと障害物の種類との対応関係の一例を示す表である。
図3図2に示す障害物の揺れの例を波形グラフで表した図である。
図4図1に示す運転制御装置によって制御される自車両と障害物との関係の一例を示す図である。
図5図1に示す運転制御装置によって制御される自車両と障害物との関係の一例を示す図である。
図6図2に示す運転制御方法によって制御される自車両の車速の変化を示すグラフである。
図7図1に示す運転制御装置による運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の第2実施形態に係る運転制御装置による運転制御方法の手順を示すフローチャートである。
図9図8に示す運転制御方法によって制御される自車両の車速の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
《第1実施形態》
第1実施形態について、図1~8に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る運転制御装置1の構成を示すブロック図である。運転制御装置1は、自車両の運転を制御する。図1に示すように、運転制御装置1は、検出部11、自車位置検出部12、地図データベース13、駆動制御部14、及び、プロセッサ20を備える。
【0010】
検出部11は、例えば、車外カメラ、又は、レーダであり、自車両の前方の障害物、又は、他車両を検出する。また、検出部11は、障害物の揺れの周波数、及び、揺れの大きさを検出することができる。
【0011】
自車位置検出部12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサなどから構成されている。自車位置検出部12は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、自車両の位置情報を周期的に取得するとともに、取得した自車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、自車両の現在位置を検出する。
【0012】
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、プロセッサ2からアクセス可能なように構成されたメモリである。地図データベース13には、高精度のデジタル地図情報(高精度地図、ダイナミックマップ)が格納されている。高精度地図情報は、道路が有する車線の識別情報を含む。
【0013】
駆動制御部14は、自律速度制御機能により、加減速度および車速を調整するための駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)及びブレーキ動作を制御する。また、駆動制御部14は、自律操舵制御機能により、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。
【0014】
プロセッサ20は、自車両の運転を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)とから構成される。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。プロセッサ20は、基準車速取得部21、障害物検出判定部22、側方通過リスク算出部23、走行経路生成部24、及び、目標車速設定部25を有する。基準車速取得部21、障害物検出判定部22、側方通過リスク算出部23、走行経路生成部24、及び、目標車速設定部25は、プロセッサ20の各機能を実現するためのプログラムを実行する。
【0015】
次に、プロセッサ20の各構成について、説明する。
基準車速取得部21は、自車両が走行するための基準車速V1を取得する。基準車速V1は、交通区間に応じて定められる制限速度であるが、これに限定されず、道路状況や天候等に応じて設定される速度、又は、自車両のドライバが設定する速度であってもよい。
【0016】
障害物検出判定部22は、検出部11から取得した情報に基づいて、自車両の前方に障害物が検出されたか否かを判定する。なお、障害物検出判定部22が検出されたか否かを判定する対象となる障害物は、所定の場所から移動しない静止障害物である。例えば、障害物の種類(属性)は、路肩に生えている草、車道側に向かって伸びている街路樹の枝、車道に目印として設置されたパイロン(ロードコーン)、路肩に停車している路上駐車車両等である(図2参照)。なお、街路樹の枝は、植栽の枝や葉を含む。
【0017】
また、自車両の前方に障害物が検出された場合に、側方通過リスク算出部23は、検出部11が検出した障害物の特徴に基づいて、障害物の側方通過リスクの評価値を算出する。側方通過リスクの評価値とは、自車両が障害物の側方を通過するときのリスクの高さであり、障害物に対してドライバが注意を要する度合を数値で示すものである。具体的には、図2の表に示すように、障害物が草である場合の側方通過リスクの評価値は、0.1である。また、障害物が街路樹の枝である場合の側方通過リスクの評価値は、0.4である。また、障害物がパイロンである場合の側方通過リスクの評価値は、0.7である。また、障害物が路上駐車車両である場合の側方通過リスクの評価値は、1である。なお、障害物の種類に応じた側方通過リスクの評価値は、これに限定されず、自動運転モードのレベル、道路状況、天候、時刻等に応じて適宜設定されてもよい。また、側方通過リスクの評価値は、障害物の種類に対応した固定値として設定されていてもよい。
【0018】
また、図1に示す側方通過リスク算出部23は、検出部11が自車両に設けられた撮像装置である場合に、検出部11が取得した画像情報から抽出される障害物の特徴に基づいて、障害物の種類を特定し、側方通過リスクの評価値を算出する。障害物の画像情報は、静止画像、若しくは、動画のいずれか一方、又は、両方を含む。具体的には、側方通過リスク算出部23は、障害物の画像から抽出された特徴量と障害物の種類とを対応させた教師データを用いて学習された学習済みモデルを用いて、障害物の側方通過リスクの評価値を算出してもよい。すなわち、側方通過リスク算出部23は、学習済みモデルに障害物の画像情報を入力することによって、障害物の種類、及び、側方通過リスクの評価値を出力してもよい。
【0019】
また、側方通過リスク算出部23は、検出部11が検出した障害物の揺れの周波数、又は、揺れの大きさの少なくともいずれか一方に基づいて、側方通過リスクの評価値を算出してもよい。すなわち、障害物の特徴には、障害物の揺れの周波数、及び、揺れの大きさの少なくともいずれか一方が含まれる。図3に示すように、障害物の揺れは、検出部11が検出した障害物の任意の一点の位置が、所定の時間でどの程度変位したかを示す波形グラフで表される。図3に示す波形グラフにおいて、揺れの周波数は、単位時間当たりの振動の波の数である。また、揺れの大きさは、振動の波の振幅の大きさ(波形グラフの山と谷との変位差)である。図3に示す実線のグラフG1は、破線のグラフG2に比べて、揺れの周波数が多く、揺れの大きさ(振幅)が大きい。一方、破線のグラフG2は、ほとんど変位していないため、揺れの周波数、及び、大きさ(振幅)は、0に近似している。従って、グラフG1に対応する障害物は、風が吹いて振動する物(例えば、草、又は、樹木の枝)である。また、グラフG2に対応する障害物は、風が吹いてもほとんど振動しない物(例えば、パイロン、又は、路上駐車車両)である。よって、側方通過リスク算出部23は、グラフG1に対応する障害物の側方通過リスクの評価値を、グラフG2に対応する障害物の側方通過リスクの評価値よりも低く算出する。また、側方通過リスク算出部23は、グラフG1に示すように、所定以上の周波数及び大きさで揺れる障害物の中でも、特に揺れの周波数及び大きさ(振幅)が大きいものを草と判断し、草よりも揺れの周波数及び大きさ(振幅)が小さいものを樹木の枝と判断して、周波数及び大きさ(振幅)が大きいもの程、側方通過リスクの評価値を高く算出してもよい。
【0020】
なお、側方通過リスク算出部23は、障害物の画像情報から取得した障害物の形状(輪郭)、及び、障害物の揺れの両方に基づいて、障害物の種類を特定し、側方通過リスクの評価値を算出してもよい。
【0021】
また、図1に示す走行経路生成部24は、検出部11が取得した障害物や他車両の情報、自車位置検出部12が取得した自車位置情報、地図データベース13の地図情報を用いて、自車両の走行経路を生成する。具体的には、走行経路生成部24は、図4,5に示すように、自車両30の前方に障害物B1,B2が検出された場合に、障害物B1,B2を迂回するように走行経路Rを生成する。
【0022】
また、図1に示す目標車速設定部25は、基準車速取得部21が取得した基準車速V1、障害物検出判定部22が判定した障害物の有無、及び、側方通過リスク算出部23が算出した障害物の側方通過リスクの評価値に基づいて、自車両30の目標車速を設定する。すなわち、目標車速設定部25は、加減速プロファイルを含む目標車速プロファイルを生成する。具体的には、目標車速設定部25は、自車両30の前方に障害物が検出されていない場合には、予め設定された基準車速V1を目標車速として設定する。一方、目標車速設定部25は、自車両30の前方に障害物が検出された場合には、障害物の側方通過リスクの評価値に応じて、自車両30が障害物の側方を走行するとき目標通過車速を設定する。
【0023】
具体的には、図4に示すように、自車両30の前方の障害物B1が路上駐車車両であった場合、目標車速設定部25は、自車両30の目標通過車速をV2に設定する。目標通過車速V2は、基準車速V1よりも低い。すなわち、自車両30は、障害物B1の側方を通過する手前の地点に至るまでに、車速を基準車速V1から目標通過車速V2に減速させる。
【0024】
一方、図5に示すように、自車両30の前方の障害物B2が、車道側に向かってはみ出した街路樹の枝であった場合、目標車速設定部25は、自車両30の目標通過車速をV3に設定する。目標通過車速V3は、基準車速V1よりも低い。すなわち、自車両30は、障害物B2の側方を通過する手前の地点に至るまでに、車速を基準車速V1から目標通過車速V3に減速させる。また、目標通過車速V3は、目標通過車速V2よりも高い。
【0025】
障害物B1が路上駐車車両であった場合の自車両30の車速の変化を、図6の実線のグラフに示す。また、障害物B2が街路樹の枝であった場合の自車両30の車速の変化を、図6の破線のグラフに示す。なお、図6に示すグラフの縦軸は、車速を示し、横軸は、自車両30が減速を開始するよりも手前の任意の位置を始点とした自車両30の走行距離を示している。また、障害物B1が路上駐車車両であった場合に自車両30が減速を開始する地点をP11、障害物B2が街路樹の枝であった場合に自車両30が減速を開始する地点をP21、自車両30が障害物B1,B2の側方を通過する区間をPX1~PX2とする。
【0026】
障害物B1が路上駐車車両であった場合、自車両30の車速は、図6の実線のグラフに示すように、自車両30が障害物B1の側方を通過する前に、基準車速V1から目標通過車速V2に減速する。また、PX1~PX2の区間では、自車両30の車速は、目標通過車速V2に維持される。一方、障害物B2が街路樹の枝であった場合、図6の破線のグラフに示すように、自車両30の車速は、自車両30が障害物B2の側方を通過する前に、基準車速V1から目標通過車速V3に減速する。また、PX1~PX2の区間では、自車両30の車速は、目標通過車速V3に維持される。また、基準車速V1と目標通過車速V2,V3との車速差は、障害物B1,B2の側方通過リスクの評価値に比例するように設定されている。すなわち、目標通過車速は、側方通過リスクの評価値が第1の評価値(例えば、0.4)である場合の第1の目標通過車速V3よりも、側方通過リスクの評価値が第1の評価値よりも高い第2の評価値(例えば、1)である場合の第2の目標通過車速V2の方が低くなるように設定される。換言すれば、基準車速V1と目標通過車速V2,V3との車速差は、障害物B1,B2の側方通過リスクの評価値が高い程、大きくなるように設定されている。
【0027】
より具体的には、図2に示すように、障害物B1(路上駐車車両)の側方通過リスクの評価値(第2の評価値)が1であり、障害物B2(街路樹の枝)の側方通過リスクの評価値(第1の評価値)が0.4であるため、障害物B2が街路樹の枝であった場合の基準車速V1と第1の目標通過車速V3との車速差は、障害物B1が路上駐車車両であった場合の基準車速V1と第2の目標通過車速V2との車速差に0.4を乗じた値となる。すなわち、目標通過車速は、算出された側方通過リスクの評価値が第1の評価値である場合の第1の目標通過車速V3よりも、側方通過リスクの評価値が第1の評価値よりも高い第2の評価値である場合の第2の目標通過車速V2の方が低くなるように設定されている。換言すれば、目標車速設定部25は、障害物の側方通過リスクの評価値が高い程、自車両30が障害物の側方を通過するときの目標通過車速を低く設定する。
なお、側方通過リスクの第1の評価値、及び、第1の評価値よりも高い第2の評価値は、各々、0.4,1に限定されない。また、第1の評価値に対応する第1の目標通過車速、及び、第2の評価値に対応する第2の目標通過車速は、各々、車速V3,V2に限定されない。
【0028】
なお、障害物B1が路上駐車車両であった場合の自車両30の減速度、及び、障害物B2が街路樹の枝であった場合の自車両30の減速度は予め定められた規定減速度に基づいて設定される。自車両30が減速を開始するタイミングP11,P21は、自車両30が障害物B1,B2の側方を通過する前に規定減速度に基づいて基準車速V1から目標通過車速V2,V3に減速することができるように、設定されている。
【0029】
また、プロセッサ20は、走行経路生成部24が生成した走行経路R、及び、目標車速設定部25が生成した目標車速プロファイルに基づいて、駆動制御部14を介して、自車両30の運転を制御する。
【0030】
次に、図7を用いて、運転制御装置1を用いた自車両30の運転制御方法の手順を説明する。なお、運転制御装置1のプロセッサ20は、自車両30の前方の障害物に自車両30が接触するおそれがないことを判定した上で、図7に示す運転制御方法を実行する。
図7に示すように、まず、ステップS1において、プロセッサ20の障害物検出判定部22は、自車両30の前方に障害物が検出されたか否かを判定する。障害物が検出されない場合は、制御はステップS5に移り、プロセッサ20は、基準車速V1に基づいて、自車両30の車速を制御する。
【0031】
障害物が検出された場合は、制御はステップS2に移る。ステップS2において、側方通過リスク算出部23は、障害物の特徴に基づいて障害物の側方通過リスクの評価値を算出する。さらに、次に、ステップS3において、目標車速設定部25は、障害物の側方通過リスクの評価値に応じて、目標通過車速V2,V3を設定する。
【0032】
次に、ステップS4において、プロセッサ20は、目標車速設定部25が設定した目標通過車速V2,V3で、自車両30が障害物の側方を通過するように、自車両30の車速を減速させる。なお、目標車速設定部25は、例えば、自車両30が、10km/h以下の基準車速V1で徐行している場合に、自車両30の目標通過車速を基準車速V1と同一の車速に設定してもよい。
【0033】
以上より、本実施形態に係る運転制御装置1のプロセッサ20は、自車両30の前方に障害物が検出された場合に、障害物の特徴に基づいて、自車両30が障害物の側方を通過するときの側方通過リスクの評価値を算出する。そして、プロセッサ20の目標車速設定部25は、側方通過リスクの評価値が第1の評価値である場合の第1の目標通過車速V3よりも、側方通過リスクの評価値が第1の評価値より高い第2の評価値である場合の第2の目標通過車速V2の方が低くなるように、目標通過車速を設定する。すなわち、プロセッサ20は、側方通過リスクの評価値が高い程、自車両30が障害物の側方を通過するときの目標通過車速を低く設定する。これにより、運転制御装置1は、障害物の特徴に応じて車速を制御するので、自車両30が障害物の側方を通過するときの車速の変化に対する乗員の違和感を低減させることができる。
【0034】
また、運転制御装置1のプロセッサ20の目標車速設定部25は、基準車速V1と第1の目標通過車速V3との車速差が、基準車速V1と第2の目標通過車速V2との車速差よりも小さくなるように、基準車速V1よりも低い目標通過車速を設定する。すなわち、プロセッサ20は、障害物の側方通過リスクの評価値が高い程、基準車速V1と目標通過車速との車速差が大きくなるように、目標通過車速を設定する。換言すれば、運転制御装置1は、障害物の側方通過リスクの評価値が高い程、自車両30を大きく減速させる。これにより、運転制御装置1は、障害物の側方通過リスクに応じて自車両30の減速量を設定するので、自車両30が障害物の側方を通過するときの減速に対する乗員の違和感を低減させることができる。
なお、本実施形態では、図6に示すように、基準車速V1と目標通過車速V2,V3との車速差は、障害物B1,B2の側方通過リスクの評価値に比例するように設定されているが、これに限定されず、基準車速V1と目標通過車速V2,V3との車速差は、障害物B1,B2の側方通過リスクの評価値に応じて、段階的に変化するように設定されてもよい。
【0035】
また、運転制御装置1のプロセッサ20は、自車両30が障害物の側方を通過する前に、自車両30の車速を予め定められた規定減速度に基づいて基準車速V1から目標通過車速に減速させる。これにより、運転制御装置1は、自車両30が障害物の側方を通過する前に、自車両30の車速を滑らかに減速させることができ、車両の挙動の変化量/変化速度を低減し、乗員の乗り心地が低下することを防ぐことができる。また、自車両30の車速を予め定められた減速度に基づいて減速させることにより、乗員に安心感を与えることができる。
【0036】
また、運転制御装置1のプロセッサ20は、自車両30に設けられた撮像装置としての検出部11が取得した画像情報から抽出される障害物の特徴に基づいて、障害物の側方通過リスクの評価値を算出する。これにより、障害物の視覚的特徴に基づいて、障害物の側方通過リスクの評価値を算出することができるため、運転制御装置1は、障害物を視認している乗員に違和感を与えずに、自車両30の車速を制御することができる。
【0037】
また、障害物の特徴は、障害物の揺れの周波数、及び、揺れの大きさの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。すなわち、運転制御装置1のプロセッサ20は、障害物の揺れの周波数、及び、揺れの大きさの少なくともいずれか一方に基づいて、側方通過リスクの評価値を算出することができる。これにより、運転制御装置1は、自車両30の前方の障害物が、風によって揺れる草や樹木の枝であるか、又は、風によって揺れることがないパイロンや路上駐車車両であるかを判断して、側方通過リスクの評価値を算出することができる。
【0038】
《第2実施形態》
第2実施形態について、図8,9に基づいて説明する。
以下の説明において、図1~7と同じ符号は、同一又は同様の処理、時間、及び、速度を示しているため、詳細な説明は省略する。なお、図7に示す運転制御方法と同様に、運転制御装置1のプロセッサ20は、自車両30の前方の障害物に自車両30が接触するおそれがないことを判定した上で、図8に示す運転制御方法を実行する。
【0039】
図8に示すように、運転制御装置1のプロセッサ20は、ステップS3において、目標通過車速を設定した後、ステップS11において、障害物の側方通過リスクの評価値が予め設定された側方通過リスク閾値以下であるか否かを判定する。例えば、側方通過リスク閾値が0.5と設定されている場合、図2に示す例によれば、草、及び、街路樹の枝の側方通過リスクの評価値は、側方通過リスク閾値以下であり、パイロン、及び、路上駐車車両の側方通過リスクの評価値は、側方通過リスク閾値よりも大きい。側方通過リスク閾値は、障害物に対してドライバが注意すべき度合いの大きさに基づいて、設定される。すなわち、側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値よりも大きい場合は、ドライバが障害物に充分に注意を払えるように、自車両の車速を減速させる必要がある。
【0040】
図8のステップS11において、障害物の側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値より大きいと判定された場合は、制御は、ステップS4に移り、運転制御装置1のプロセッサ20は、ステップS3で設定された目標通過車速V2に基づいて、車速を制御する。
【0041】
一方、ステップS11において、障害物の側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値以下であると判定された場合は、制御は、ステップS12に移る。ステップS12において、運転制御装置1のプロセッサ20は、自車両30の車速が基準車速V1から目標通過車速V3に減速するときの減速度を算出する。なお、ステップS12において算出される減速度は、自車両30の車速が基準車速V1から目標通過車速V3に減速するまでの減速度の平均値、又は、自車両30の車速が基準車速V1から目標通過車速V3に一定の減速度で減速したと仮定した場合の減速度である。
【0042】
そして次に、ステップS13において、運転制御装置1のプロセッサ20は、減速度は許容減速度よりも大きいか否かを判定する。ステップS13において、減速度は許容減速度以下であると判定された場合は、制御はステップS4に移り、運転制御装置1のプロセッサ20は、ステップS3で設定された目標通過車速V3に基づいて、車速を制御する。なお、許容減速度は、自車両30の乗員とっての乗り心地を示準にして設定される値であり、減速度が許容減速度以下であれば、運転制御装置1は、乗員に違和感を与えることなく、自車両30を減速させることができる。
【0043】
一方、ステップS13において、減速度が許容減速度よりも大きいと判定された場合は、制御は、ステップS14に移り、運転制御装置1のプロセッサ20は、減速度が許容減速度以下となるように、目標通過車速を変更し、再設定する。なお、「許容減速度以下」には、減速度が0の場合は含まれない。すなわち、「許容減速度以下の減速度」は、0よりも大きい値の減速度である。そして、制御は、ステップS4に移り、運転制御装置1のプロセッサ20は、ステップS14で変更された目標通過車速V3’に基づいて、車速を制御する。
【0044】
図8に示す運転制御方法による自車両30の車速制御の例を、図9のグラフに示す。障害物B1が路上駐車車両であった場合(図4)の自車両30の車速の変化の例は、図の実線のグラフに示される。また、障害物B2が街路樹の枝であった場合(図5)の自車両30の車速の変化の例は、図9の破線のグラフL1,L2に示される。また、検出部11によって障害物B1,B2が初めて検出された地点をP31とする。運転制御装置1は、P31を始点として、自車両30の車速を減速させる。
【0045】
まず、図8のステップS11において、障害物B1の側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値より大きいと判定された場合は、図9の実線のグラフに示すように、自車両30の車速は、P31~PX1の間で、基準車速V1から目標通過車速V2に減速する。一方、障害物B2の側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値以下であると判定された場合は、プロセッサ20は、自車両30の車速が、P31~PX1の間で、基準車速V1から目標通過車速V3に減速するとき(破線のグラフL1)の減速度を算出する。ここで、図8のステップS13に示すように、プロセッサ20は、算出した減速度が許容減速度よりも大きいか否かを判定する。そして、減速度が許容減速度よりも大きい場合は、図9の破線のグラフL2に示すように、減速度が許容減速度以下になるように、目標通過車速をV3からV3’に高く変更し、再設定する(図8のステップS14)。
【0046】
なお、図8のフローチャートにおいて、ステップS11は、破線で示すように、スキップされてもよい。すなわち、運転制御装置1のプロセッサ20は、障害物の側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値以下であるか否かに関わらず、減速度が許容減速度よりも大きい場合は、ステップS14において、目標通過車速を変更してもよい。
【0047】
以上より、本実施形態に係る運転制御装置1のプロセッサ20は、自車両30の車速を基準車速V1から目標通過車速V2に減速させるための減速度が予め設定された許容減速度より大きいか否かを判定する。そして、プロセッサ20は、減速度が許容減速度より大きい場合は、減速度が許容減速度以下(0より大きい値)となるように、目標通過車速を高く変更し、再設定する。すなわち、プロセッサ20は、減速度が許容減速度より大きい場合は、図9に示すように、目標通過車速V3を相対的に高い目標通過車速V3’に変更する。これにより、運転制御装置1は、自車両30の車速の急減速を防止し、車両の挙動の急変化を抑制し、乗員に違和感や不安を与えることなく、自車両30を減速させることができる。
【0048】
また、運転制御装置1のプロセッサ20は、障害物の側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値以下であるか否かを判定し、側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値より大きい場合は、目標通過車速を変更しない。すなわち、障害物の側方通過リスクの評価値が側方通過リスク閾値よりも大きい場合は、減速度が許容減速度を上回ったとしても、運転制御装置1は、目標通過車速V2を再設定せずに、自車両30の車速を減速させる。従って、障害物の側方通過リスクの評価値が高い場合は、運転制御装置1は、自車両30を充分に減速させてから障害物の側方を通過させることを優先して、車速を制御するため、自車両30のより慎重な挙動を実現することができる。
【符号の説明】
【0049】
1…運転制御装置
11…検出部(撮像装置)
20…プロセッサ
22…障害物検出判定部
23…側方通過リスク算出部
25…目標車速設定部
30…自車両
B1,B2…障害物
V1…基準車速
V2,V3,V3’…目標通過車速
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9