(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】形成装置、形成方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241202BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20241202BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20241202BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20241202BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241202BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20241202BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20241202BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B05C11/00
B05C11/10
B05C9/12
B05C5/00 101
B05D3/00 D
B05D1/26 Z
B29C59/02 Z
(21)【出願番号】P 2020204331
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 昌輝
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-506635(JP,A)
【文献】特開2011-192917(JP,A)
【文献】特開2004-342919(JP,A)
【文献】特開2011-131145(JP,A)
【文献】特開2020-025094(JP,A)
【文献】特開2002-139370(JP,A)
【文献】特開2012-169537(JP,A)
【文献】特開2016-076558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B05D 1/00-7/26
B05C 5/00-21/00
B29C 53/00-53/84,57/00-59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に吐出されたインプリント材を硬化させて前記インプリント材の層を形成する形成装置であって、
前記基板上に前記インプリント材の液滴を吐出する吐出部と、
前記吐出部の状態の変化に起因する、前記吐出部により吐出された前記液滴の重
量の変化に基づいて、前記吐出部の吐出条件を調整する制御部と、を有することを特徴とする形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記液滴の重
量が基準範囲から外れた場合に前記吐出部の吐出条件を調整することを特徴とする請求項1に記載の形成装置。
【請求項3】
前記形成装置は、前記基板上の前記インプリント材に部材を接触させた状態で前記インプリント材を硬化させ、前記層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記吐出部により前記液滴を吐出する前の前記基板の重量と、前記吐出部により前記液滴が吐出された後の前記基板の重量とに基づいて、前記吐出部から吐出された前記液滴の重量を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の形成装置。
【請求項5】
前記基板の重量を測定する測定部をさらに有し、
前記制御部は、前記測定部で前記基板の重量を測定することで、前記吐出部から吐出された前記液滴の重量を求めることを特徴とする請求項4に記載の形成装置。
【請求項6】
前記吐出部から吐出される前記液滴を受ける受け機構をさらに有し、
前記制御部は、前記受け機構の重量に基づいて、前記吐出部から吐出された前記液滴の重量を求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の形成装置。
【請求項7】
吐出部の吐出条件を調整する調整方法であって、
前記吐出部からインプリント材の液滴を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程で前記吐出部により吐出された前記液滴の重
量を取得する取得工程と、
前記取得工程で取得した前記液滴の重
量に基づいて、前記吐出部の状態の変化に起因す
る前記液滴の重
量の変化について判定する判定工程と、
前記判定工程の判定結果に基づいて、前記吐出部の吐出条件を調整する調整工程と、を有することを特徴とする形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の形成装置を用いて、基板上にインプリント材の層を形成する工程と、
前記層が形成された前記基板を加工する工程と、を含み、
加工された前記基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形成装置、形成方法及び物品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやMEMSなどの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加えて、基板上に数ナノメートルオーダーの微細なパターン(構造体)を形成することができるインプリント技術が注目されている。インプリント技術は、基板上に未硬化のインプリント材を供給(塗布)し、かかるインプリント材とモールド(型)とを接触させて、モールドに形成された微細な凹凸パターンに対応するインプリント材のパターンを基板上に形成する微細加工技術である。
【0003】
インプリント技術において、インプリント材の硬化法の1つとして光硬化法がある。光硬化法は、基板上のショット領域に供給されたインプリント材とモールドとを接触させた状態で光を照射してインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離すことでインプリント材のパターンを基板上に形成する方法である。
【0004】
このようなパターンを形成する際に必要なインプリント材は、ディスペンサと呼ばれる液体吐出部により、基板上のショット領域に塗布(供給)される。このディスペンサは、例えばインクジェット方式により液体状のインプリント材を吐出するものであり、その構成としては、インクジェットプリンタに用いられるインクジェットヘッドと同等のものを用いることができる。
【0005】
特許文献1には、インクジェット方式のディスペンサをインプリント装置に用いる例が開示されている。収容室は、仕切り材により2つに区分けされており、一方には未硬化の樹脂材料、もう一方には吐出部から吐出された樹脂材料相当の作動液がタンクから供給されるように設けられている。そしてタンクの重量を測定することで、ディスペンサ内部のインプリント材の残量を取得する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インプリント装置において所望のパターンや所望の膜厚の材料層を形成しようとすると、ディスペンサから吐出される液滴の体積(重量)が一定であることが望ましい。しかしながら、ディスペンサの吐出部の状態が変化し、吐出される液滴の量に変化が生じる可能性がある。このような原因としては、インプリント材の残量が低下してディスペンサ内部の圧力が変化することや、吐出部(例えば、ピエゾ素子や電気熱変換素子)の劣化などが考えられる。
【0008】
しかしながら特許文献1に開示されるような手法では、吐出部から実際に基板に吐出された成形可能材料自体の重量(体積)を取得することができないため、所望のパターンや所望の膜厚の材料層を設けることができない可能性がある。
【0009】
そこで、本願発明は、所望の形状の材料層を設けることができる構成を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、基板上に吐出されたインプリント材を硬化させて前記インプリント材の層を形成する形成装置であって、前記基板上に前記インプリント材の液滴を吐出する吐出部と、前記吐出部の状態の変化に起因する、前記吐出部により吐出された前記液滴の重量の変化に基づいて、前記吐出部の吐出条件を調整する制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望の形状の材料層を形成するのに有利な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態にかかるインプリント装置の構成を示す概略図である。
【
図2】インプリント装置の吐出部から排出される成形可能材料を受ける受け機構の構成を示す図である。
【
図3】第1の実施形態における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】第2の実施形態における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第3の実施形態における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置100(形成装置)の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、半導体デバイスなどの製造プロセスで使用されるリソグラフィ装置であって、基板上のインプリント材(成形可能材料)にパターン構造を有するモールド(部材)を接触させてパターンを形成するインプリント処理を行う。なお、本発明の計測方法や液体吐出部は、インプリント装置に限定されず、半導体デバイスや液晶表示デバイス等の製造装置のような産業機器や、プリンター等のコンシューマー製品も含め、液滴を吐出する機構を持つ装置に広く適用可能である。
【0015】
インプリント装置100は、パターンが形成されたモールドと基板に供給(塗布)されたインプリント材とを接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材からモールドを引き離すことで基板上にパターンを転写された材料層を形成する。なお、以下の説明ではインプリント装置100は紫外光の照射エネルギーによってインプリント材8を硬化させる光硬化法が用いられるものを例に説明を行うが、他のエネルギー(例えば、熱)によりインプリント材を硬化させるインプリント装置にも適用可能である。
【0016】
また、
図1では、上下方向(鉛直方向)にZ軸を取り、Z軸に垂直な平面内に互いに直交するX軸およびY軸として説明する。インプリント装置100は、照明系7と、モールド1を保持するモールド保持機構2と、ウエハ4(基板)を保持するウエハステージ6と、インプリント材を吐出する吐出部を備えたディスペンサ11と、これらを制御する制御部20とを備える。さらに、インプリント装置100は、ウエハ4をウエハステージ6に搬送する搬送機構と、ウエハ4の重量を測定することができる重量測定部30と、ディスペンサ11から廃棄されるインプリント材8を受ける受け機構14を含む。
【0017】
照明系7は、不図示の光源から発せられた紫外線を、インプリント材8を硬化させるのに適切な光(紫外光9)に調整し、モールド1を通過しインプリント材8に照射する硬化手段である。ここで、光源としては、例えばi線、g線を発生する水銀ランプを用いることができる。ただし、光源は、紫外線に限らず、モールド1を透過し、かつ、インプリント材8が硬化する波長の光を発するものであればよい。なお、熱硬化法を採用する場合には、硬化手段として、照明系7の代わりに、例えば、ウエハステージ6の近傍に成形可能材料を硬化させるための加熱手段を設置すればよい。
【0018】
モールド(型)1は、ウエハ4に接触する接触面の中央部に3次元状に形成された微細な凹凸パターンを有している。モールド1の材質としては、石英等の紫外線を透過させることが可能な材料を用いることができる。
【0019】
モールド保持機構(型保持部)2は、構造体3に支持され、不図示であるが、モールド1を保持するモールドチャックと、モールドチャックを支持し移動させるモールド駆動機構とを含む。モールドチャックは、モールド1における紫外光9の照射面の外周領域を真空吸着力や静電力により引き付けることでモールド1を保持する。モールド駆動機構は、モールド1とウエハ4上のインプリント材8とを接触させたり、引き離したりするために、モールド1(モールドチャック)をZ軸方向に移動させることができる。さらに、モールド保持機構2には、後述する不図示の重量測定部を設けることもできる。
【0020】
なお、インプリント処理時のウエハとモールドとの接触動作および離型動作は、ウエハステージ6を駆動させてウエハ4をZ軸方向に移動させることで実現してもよく、モールド1とウエハ4との双方を相対的に移動させてもよい。
【0021】
ウエハ4は、例えば単結晶シリコンからなる被処理基板(物体)である。なお、半導体デバイス以外の物品の製造用途であれば、基板の材質として、例えば、光学素子であれば石英等の光学ガラス、発光素子であればGaNやSiCなどを採用することができる。
【0022】
ウエハステージ(基板保持部)6は、ウエハ4を保持して、ステージ定盤5上をXY平面内で移動可能で、モールド1とウエハ4上のインプリント材8との接触に際し、モールド1とウエハ4との位置合わせを実施する。
【0023】
ディスペンサ11は、駆動機構12とともに構造体3に支持され、ウエハ4上に予め設定されているショット領域(パターン形成領域)上に、所望の塗布パターンで未硬化のインプリント材8を塗布する(インプリント材8の液滴を吐出する)。インプリント材8は、モールド1とウエハ4との間に充填される際には流動性を持ち、成形後には形状を維持する固体であることが求められる。光硬化法を用いる場合には、インプリント材8は、例えば紫外光9を受光することにより硬化する性質を有する紫外線硬化樹脂(光硬化性樹脂)であるが、熱硬化法を用いる場合には、光硬化樹脂に換えて熱硬化樹脂や熱可塑樹脂等が用いられる。
【0024】
重量測定部30は、載置されたウエハ4の重量を測定することができ、受け機構14は、ディスペンサ11の吐出状態を維持するために、不吐出期間が長期間とならないように定期的なタイミングで吐出部から排出されるインプリント材を受けるように設けられている。また、受け機構14で受けたインプリント材の重量が測定できるように重量測定部13を備えている。このような重量測定部30や重量測定部13は、具体的には、ロードセル、電磁平衡式センサ、感圧センサなどを用いることができる。なお、インプリント装置100は、重量測定部30、重量測定部13、モールド保持機構2内の重量測定部はすべて備えている必要はなく、以下説明する実施形態の構成に応じて必要に応じて設けられていればよい。
【0025】
制御部20は、例えばコンピュータなどで構成され、インプリント装置100の各構成要素に回線を介して接続され、プログラムなどに従って各構成要素の動作や調整などを制御する。そして、以下に示すようなインプリント材8の重量測定工程を含むインプリント処理を実行することができる。なお、制御部20は、インプリント装置100の他の部分と一体で(共通の筐体内に)構成してもよいし、インプリント装置100の他の部分とは別体で(別の筐体内に)構成してもよい。
【0026】
次に、インプリント装置100によるインプリント処理について概略的に説明する。ウエハステージ6は、不図示の搬送機構よりウエハ4が搬入され、処理対象のウエハ4を保持した後、ウエハ4がディスペンサ11の吐出部に対向する位置となるように移動する。
【0027】
そして、ディスペンサ11は、ウエハステージ6を移動させながら、吐出ノズルから所定量のインプリント材8を吐出することで、ウエハ4上の所望の位置にインプリント材8を塗布する(塗布工程)。
【0028】
次に、ウエハステージ6は、ウエハ4上のインプリント材8を塗布した部分がモールド1の凹凸パターンに対向する位置となるように移動する。モールド駆動機構は、モールド1をZ軸方向に沿ってウエハ4に向かうように移動させて、モールド1とウエハ4とが近接した状態とする。この状態で、不図示のアライメントスコープは、モールド1上のアライメントマークとウエハ4上のアライメントマークとを検出し、検出結果に基づいてウエハステージ6が移動することで重ね合わせ位置を調整し、両者の相対位置の調整を行う。
【0029】
次に、モールド駆動機構は、モールド1とウエハ4との間隔を狭めるように移動させ、ウエハ4上のインプリント材8とモールド1の凹凸パターンとを接触させる(接触工程)。
【0030】
次に、照明系7は、紫外光9を照射し、インプリント材8を硬化させる(硬化工程)。その後、モールド駆動機構は、インプリント材8が硬化した後、モールド1をウエハ4から離れる方向に移動させて、モールド1と硬化したインプリント材8(ウエハ4)との間隔を広げることにより、ウエハ4上のインプリント材8から引き離す(離型工程)。これにより、ウエハ4上のインプリント材8にモールド1の凹凸パターンに対応したパターンを有する硬化材料層が形成(転写)され、インプリント処理が終了する。その後、インプリント処理が完了したウエハ4は不図示の搬送機構によりウエハステージ6より搬出される。
【0031】
なお、ウエハ4上に複数のショット領域を設けるような場合には、ショット領域ごとに、このようなインプリント処理を繰り返し行うことで、同じパターン構造をウエハ4上に複数設けることができる。
【0032】
(第1の実施形態)
本実施形態においては、ディスペンサから受け機構14に吐出された液滴の重量を測定し、当該測定結果に基づいて、ディスペンサから吐出するインプリント材の体積を一定に保つように制御する方法を説明する。
【0033】
図2は、インプリント装置のディスペンサ11の吐出部から排出される成形可能材料を受ける受け機構の構成を示す図であるディスペンサ11は、駆動機構12により第一の位置である待機位置Aと第二の位置である塗布位置Bの間を移動するように設けられている。
【0034】
受け機構14は、ディスペンサ11の吐出状態を維持するために、不吐出期間が長期間とならないように定期的なタイミングで吐出部から排出されるインプリント材を受けるように設けられている。また、受け機構14で受けたインプリント材の重量が測定できるように重量測定部13が設けられている。ディスペンサ11は、待機位置Aの位置に移動した状態でインプリント材8を吐出することで、受け機構14へとインプリント材を排出させることができる。
【0035】
重量測定部13としては、ロードセル、電磁平衡式センサ、感圧センサなどを用いることができる。受け機構14は、ディスペンサ11から吐出されるインプリント材8を受けやすよいように、平面な構造とすることが望ましい。受け機構14の面積は、最低でもウエハ上に形成される1ショット分のパターン領域と同等であることが望ましい。また、受け機構14は、ディスペンサから吐出され受け機構14内に堆積するインプリント材8を取り除くことができるように、重量測定部13に対して着脱可能な構造とするのが望ましい。インプリント材8を取り除くタイミングは、定期的に行っても良く、重量測定部13の計測値が一定の値以上になった場合に行っても良い。
【0036】
図3は、本実施形態に係るディスペンサ11から受け機構14に吐出された液滴を用いて吐出条件を調整する流れを説明するフローチャートである。
図3のフローチャートに示す処理は、制御部20が各構成要素の動作や調整などを制御することで実現される。
【0037】
S301では、制御部20は、ディスペンサの吐出部から受け機構14に所定量のインプリント材8を吐出させる。吐出条件を調整させるために受け機構14へインプリント材を吐出し、重量測定部13でインプリント材を測定するタイミングとしては、上述のディスペンサ11の吐出状態を維持するためのタイミングでもよいし、必要に応じて行うようにしてもよい。
【0038】
S302では、制御部20は、受け機構14に吐出されたインプリント材の液滴の総重量を、重量測定部13により測定させる。具体的には受け機構14にインプリント材を吐出させる前後において重量測定部13で重量を測定しておき、その差分から重量を算出することが望ましい。
【0039】
S303では、制御部20は、吐出された液滴の数と、S302で測定された液滴の総重量とインプリント材の比重から、吐出された液滴1滴の体積を算出する。吐出されたインプリント材の液滴の数をN[pcs]、測定された重量をW[g]、インプリント材の比重をd[g/mL]とすると、液滴の体積は「W[g]/d[g/mL]/N[pcs]」の計算式で算出できる。なお、ディスペンサ11から受け機構14へインプリント材8を吐出する量、すなわち吐出する液滴の数Nは、重量測定部13の測定分解能により決定することができる。
【0040】
S304では、S303で算出された液滴1滴の体積が、所望の形状の材料層を設けることができる基準範囲を超えてしまうか否かを判断する。すなわち、基準値から所定以上変化したかどうかを判定する。具体的には、最適な液滴の体積に対しての変化量が±5%の範囲を外れたら、ディスペンサ11から吐出する液滴の体積を変更することが好ましい。
【0041】
S304で、基準範囲を超えてしまうと判断された場合にはS305において、吐出部の吐出条件を変更する。5%以上体積が減少したら、吐出部から吐出される液滴の体積を減少した分増加するように吐出条件を変更する。逆に体積の増加を検知したら、吐出する液滴の体積は減少するように吐出条件を変更する。なお、5%という数字は一例として出したものであり、装置の運用状況によりさまざまな値に変更しうる数字で、本特許の実施形態を限定するものではない。吐出する液滴の体積を調整する方法としては、吐出部(吐出駆動部)にピエゾ方式を用いるような場合には、ピエゾ素子に印加する電圧値や電圧の印可時間を変更する方法をとることができる。吐出部にサーマル方式を用いるような場合には、電気熱変換素子に供給する電流値や電流の印可時間を変更する方法をとることができる。一方、S304において基準範囲を超えないと判断された場合には、吐出条件の調整は行わずに処理を終了する。なお、制御部20は、測定された重量から算出した体積を記憶し、体積変化の推移を確認できるようにすることが望ましい。
【0042】
なお、本実施形態においては、総重量から算出された液滴1滴の体積をもとに変化が基準範囲を超えているか判定したが、総重量や1滴あたりの重量から基準範囲を超えているかを判定してもよい。
【0043】
以上のように制御することで、インプリント装置内のディスペンサ11において、吐出されるインプリント材の体積を一定に保つことができる。これにより吐出体積の変更によるウエハ上への良好なパターン形成が形成できない状況を防止することができ、所望の形状の材料層を設けることができる。
【0044】
(第2の実施形態)
本実施形態においては、重量測定部30で基板の重量を測定し、当該測定結果に基づいて、ディスペンサから吐出するインプリント材の体積を一定に保つように制御する方法を説明する。本実施形態の説明において、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0045】
図4は、本実施形態に係る重量測定部30で基板の重量を測定して吐出条件を調整する流れを説明するフローチャートである。
図4のフローチャートに示す処理は、制御部20が各構成要素の動作や調整などを制御することで実現される。
【0046】
S401では、制御部20は、搬送機構によりウエハを搬送させ、重量測定部30にウエハ4を載置させる。このとき、このときの重量測定部30は、ウエハの搬送時間をなるべく短縮するために、搬送機構の内部など、ウエハの搬送経路途中に構成することが望ましい。
【0047】
次に、S402では、制御部20は、インプリント材をディスペンサ11で塗布する前のウエハ4の重量を重量測定部30に測定させ、ウエハ4の重量を取得する。S403では、制御部20は、搬送機構にウエハ4ウエハステージ上に搬送させる。S404では、先に説明した塗布工程、接触工程、硬化工程、離型工程といった通常のインプリント処理を行うように制御する。インプリント処理は、予め設定されたウエハ上のショット領域に対して実施される。
【0048】
S405では、制御部20は、搬送機構にインプリント処理が全てのショット領域に対して完了したらウエハをウエハステージ上から搬出させる。そして、S406において、搬送機構に再度ウエハを重量測定部30上に載置させ、S407において、ウエハ4の重量を重量測定部30に測定させ、インプリント処理完了後、すなわち吐出されたインプリント材の重量を含むウエハ4の重量を測定する。
【0049】
S408では、S402で取得されたウエハ4の重量と、S407で取得されたウエハ4の重量との差分から、ディスペンサ11から吐出された液滴の総重量を取得する。S409では、制御部20は、第1の実施形態と同様に、吐出された液滴の数と、S302で測定された液滴の総重量とインプリント材の比重から、吐出された液滴1滴の体積を算出する。
【0050】
S410では、S304と同様に算出された液滴1滴の体積が、所望の形状の材料層を設けることができる基準範囲を超えてしまうか否かを判断する。S410で、基準範囲を超えてしまうと判断された場合にはS411において、液滴の吐出条件を変更する。一方、S410において基準範囲を超えないと判断された場合には、吐出条件の調整は行わずに処理を終了する。
【0051】
以上のように制御することで、インプリント装置内のディスペンサ11において、吐出されるインプリント材の体積を一定に保つことができる。これにより吐出体積の変更によるウエハ上への良好なパターン形成が形成できない状況を防止することができ、所望の形状の材料層を設けることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、重量測定部30がインプリント装置100内に設けられている構成を用いて説明したが、装置外に設けてもよい。その場合には制御部20は、装置外の重量測定部からウエハ4の重量を取得し、同様に吐出された液滴の体積が基準範囲を超えたかどうか判断すればよい。
【0053】
また、基板上に複数のショット領域があり、1枚の基板に対して複数回のインプリント処理を行うような場合には、所定のインプリント処理ごとに、重量を測定し、吐出体積の調整を行うようにしてもよい。
【0054】
(第3の実施形態)
本実施形態においては、モールド保持機構2内に設けられた重量測定部(不図示)で基板の重量を測定し、当該測定結果に基づいて、ディスペンサから吐出されるインプリント材の体積を一定に保つように制御する方法を説明する。本実施形態の説明において、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略する。
【0055】
図5は、本実施形態に係るモールド保持機構2内に設けられた重量測定部(不図示)で吐出条件を調整する流れを説明するフローチャートである。
図5のフローチャートに示す処理は、制御部20が各構成要素の動作や調整などを制御することで実現される。ここでは、既にウエハ4がウエハステージに搬送されている状態から説明を行う。
【0056】
S501では、制御部20は、インプリント処理を行う等する基板のショット領域に対してディスペンサ11によりインプリント材を供給されるように制御する(塗布工程)。S502では、モールド保持機構2を下げることで、モールドと基板上のインプリント材とを接触させる(接触工程)。S503では、制御部20は、照明系7に紫外光9を照射させ、インプリント材8を硬化させる(硬化工程)。
【0057】
S504では、現在インプリント処理を行っているショット領域が、重量を測定する対象のショット領域かどうかを判定する。重量測定対象のショットかどうかは予めメモリなどに記憶された情報を元に行うことができる。対象のショット領域でない場合には、S517に移行し、対象のショット領域である場合には、S505に進み、ウエハステージ6にウエハ4の保持を開放させる。ウエハステージ6によるウエハ4の保持は真空吸着にて行われるのが一般的で、保持の開放は真空破壊することで行う事ができる。
【0058】
S506では、制御部20は、ウエハ4がウエハステージ6で保持されていない状態でモールド保持機構を上げる。ウエハ4とモールド1との離型には離型力が必要であるため、ウエハ4が保持されていない状態でモールド保持機構を上げると、ウエハ4は硬化したインプリント材を介してモールドと一体状態のまま、モールド保持機構に吊り下げられることになる。
【0059】
S507では、制御部20は、モールド保持機構内に設けられた重力測定部によりモールド保持機構の重量を測定する。このときの重量の測定は、センサを構成しても良く、モールド保持機構の駆動制御をするモータへ流す電流の値を測定することにより行っても良い。
【0060】
S508では、制御部20は、測定された重量を基準の重量とするかどうかを予め記憶されている情報を元に判定する。基準の重量とする場合は、S509において測定された重量を基準重量Aとしてメモリなどに記憶しておく。基準の重量としない場合は、S510に進み測定された重量を計測重量Bとして保持する。
【0061】
S511では、制御部20は、計測重量Bとメモリなどに記憶された基準重量Aとの差分を算出し、吐出された液滴の総重量を算出する。
【0062】
基準重量Aが測定されるタイミングと計測重量Bが測定されるタイミングとの間には、複数のショット領域に対してインプリント処理がされているように設定しておく。すなわち、測定重量Bと基準重量Aとの差を求めることで、インプリント処理がなされた複数のショット領域に堆積させたインプリント材の重量を測定することができ、吐出したインプリント材の体積を算出することができる。
【0063】
S512では、制御部20は、第1の実施形態と同様に、吐出された液滴の数と、S302で測定された液滴の総重量とインプリント材の比重から、吐出された液滴1滴の体積を算出する。
【0064】
S513では、S304と同様に算出された液滴1滴の体積が、所望の形状の材料層を設けることができる基準範囲を超えてしまうか否かを判断する。S513で、基準範囲を超えてしまうと判断された場合にはS514において、液滴の吐出条件を変更する。一方、S513において基準範囲を超えないと判断された場合には、吐出条件の調整は行わずに処理を終了する。
【0065】
以上の吐出条件調整の工程が終わったら、S515においてウエハ4と一体になったモールド1を保持するモールド保持機構を下げる。ウエハ4が再度ウエハステージ6上に載置される位置までモールド保持機構が下がったら、S516においてウエハステージ6にウエハ4を再度吸着保持させる。
【0066】
次に、ウエハ4がウエハステージ6に吸着されている状態で、モールド保持機構2を上昇させることで、ウエハ上のインプリント材8の硬化物からモールド1を離型する離型工程を行う。
【0067】
S518では、次のショット領域があるかを判断し、ある場合にはS501に戻りインプリント処理を継続し、無い場合には処理を終了する。
【0068】
以上のように制御することで、インプリント装置内のディスペンサ11において、吐出されるインプリント材の体積を一定に保つことができる。これにより、吐出体積の変更によるウエハ上への良好なパターン形成が形成できない状況を防止することができ、所望の形状の材料層を設けることができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0070】
また、本発明においては、パターン構造を有するモールド1を用いてインプリントする場合を例に説明した。しかし、パターン構造を有しない部材(スーパーストレート)を用いて、基板上の成形可能材料を形成し、硬化させてウエハ4の表面を平坦化する材料層を形成する平坦化装置に適用することもできる。さらにモールドやスーパーストレートを用いずに材料層を形成するような場合にも適用することができる。
【0071】
(物品の製造について)
以上説明したインプリント装置100を用いて形成される硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。
【0072】
物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0073】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0074】
次に、
図6を用いて、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。まず
図6(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0075】
図6(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。
図6(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0076】
図6(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0077】
図6(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。
図6(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0078】
そして物品の製造方法には、基板に供給(塗布)されたインプリント材に上記のインプリント装置(インプリント方法)を用いてパターンを形成する工程と、かかる工程でパターンを形成された基板を加工する工程も含まれる。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利であるといえる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。