(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】振動型アクチュエータ及びそれを備える電子機器
(51)【国際特許分類】
H02N 2/12 20060101AFI20241202BHJP
G02B 7/04 20210101ALI20241202BHJP
【FI】
H02N2/12
G02B7/04 E
(21)【出願番号】P 2020208356
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】小島 信行
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-038877(JP,A)
【文献】特開2020-198658(JP,A)
【文献】特開2018-174618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/12
G02B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体と、前記弾性体に固定された電気-機械エネルギー変換素子と、を有する振動子と、
前記振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材を保持する基台と、
前記振動子と接触する接触体と、
前記接触体及び前記振動子を、を第1の方向に加圧する加圧部材と、を備え、
前記接触体が前記振動子に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動する振動型アクチュエータであって、
前記保持部材は、
前記振動子を、前記第1の方向に移動可能に支持する支持部と、
前記第1の方向に延びる嵌合凹部と、を有し、
前記基台は、前記第1の方向に延び、前記嵌合凹部と嵌合する嵌合凸部を有
し、
前記嵌合凹部と前記嵌合凸部が接触する接触面における法線方向が、前記第1の方向の成分及び前記第2の方向の成分を含むことを特徴とすることを特徴とする振動型アクチュエータ。
【請求項2】
弾性体と、前記弾性体に固定された電気-機械エネルギー変換素子と、を有する振動子と、
前記振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材を保持する基台と、
前記振動子と接触する接触体と、
前記接触体及び前記振動子を、を第1の方向に加圧する加圧部材と、を備え、
前記接触体が前記振動子に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動する振動型アクチュエータであって、
前記保持部材は、
前記振動子を、前記第1の方向に移動可能に支持する支持部と、
前記第1の方向に延びる嵌合凹部と、を有し、
前記基台は、前記第1の方向に延び、前記嵌合凹部と嵌合する嵌合凸部を有し、
前記第1の方向及び前記第2の方向に交差する方向を第3の方向とするとき、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部が接触する接触面における法線方向が、前記第1の方向の成分及び前記第3の方向の成分を含むことを特徴とする振動型アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1の方向及び前記第2の方向に交差する方向を第3の方向とするとき、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部が接触する接触面における法線方向が、前記第1の方向の成分及び前記第3の方向の成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項4】
前記保持部材は、
前記嵌合凸部としての、第1の嵌合凸部、第2の嵌合凸部及び第3の嵌合凸部と、
前記嵌合凹部としての、第1の嵌合凹部、第2の嵌合凹部及び第3の嵌合凹部と、
前記加圧部材による加圧により、前記第1の嵌合凸部と前記第1の嵌合凹部が接触する、前記接触面としての第1の接触面、前記第2の嵌合凸部と前記第2の嵌合凹部が接触する、前記接触面としての第2の接触面、及び前記第3の嵌合凸部と前記第3の嵌合凹部が接触する、前記接触面としての第3の接触面と、を有することを特徴とする請求項
1又は
2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項5】
前記第1の嵌合凸部、前記第2の嵌合凸部及び前記第3の嵌合凸部のいずれかの先端が、前記第1の嵌合凹部、前記第2の嵌合凹部又は前記第3の嵌合凹部の底部と接触することを特徴とする請求項4に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項6】
前記保持部材は、
前記嵌合凸部としての、第1の嵌合凸部及び第2の嵌合凸部と、
前記嵌合凹部としての、第1の嵌合凹部及び第2の嵌合凹部と、
前記加圧部材による加圧により、前記第1の嵌合凸部と前記第1の嵌合凹部が接触する、前記接触面としての第1の接触面、及び前記第2の嵌合凸部と前記第2の嵌合凹部が接触する、前記接触面としての第2の接触面と、を有することを特徴とする請求項
1又は
2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項7】
前記第1の嵌合凸部及び前記第2の嵌合凸部のいずれかうち少なくとも一つの先端が、前記第1の嵌合凹部又は前記第2の嵌合凹部の底部と接触することを特徴とする請求項6に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項8】
前記保持部材は、
前記嵌合凸部としての、第1の嵌合凸部及び第2の嵌合凸部と、
前記嵌合凹部としての、第1の嵌合凹部と、
前記加圧部材による加圧により、前記第1の嵌合凸部と前記第1の嵌合凹部が接触する、前記接触面としての第1の接触面、及び前記第2の嵌合凸部と前記第1の嵌合凹部が接触する、前記接触面としての第2の接触面と、を有することを特徴とする請求項
1又は
2に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項9】
前記第1の嵌合凸部及び前記第2の嵌合凸部のいずれかうち少なくとも一つの先端が、前記第1の嵌合凹部又は前記第2の嵌合凹部の底部と接触することを特徴とする請求項8に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項10】
前記保持部材は、前記振動型アクチュエータの駆動周波数域の周波数が共振周波数である振動モードを有しないことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項11】
前記保持部材は、可聴域の周波数が共振周波数である振動モードを有しないことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項12】
前記可聴域の周波数は、20Hz以上且つ20kHz以下であることを特徴とする請求項11に記載に振動型アクチュエータ。
【請求項13】
前記接触面は、前記保持部材の第1の方向に変形する曲げ振動モードの節を含むように形成されていることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項14】
前記保持部材は、前記振動子における異なる2つの振動モードの共通の節を加圧する加圧凸部を有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項15】
前記保持部材は、第2の方向及び第3の方向に対して対称形状であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータ。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項に記載の振動型アクチュエータと、
前記振動型アクチュエータの駆動によって位置決めされる部材と、を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型アクチュエータ及びそれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性体と、弾性体に固定された電気-機械エネルギー変換素子と、を有する、平板上の振動体(振動子)を用いた振動波モータ(振動型アクチュエータ)がある。この振動型アクチュエータは、振動子に励起された振動により、振動子と、振動子と加圧接触する被駆動体(接触体)と、を相対的に移動させるものである。
【0003】
この振動型アクチュエータでは、振動子の振動エネルギーが、接触体以外の部材に伝達することにより、出力効率が低下する。また、振動子の振動エネルギーが、接触体以外の部材に伝達することにより、不要な音(異音)が発生する。
【0004】
特許文献1には、このような課題を解決する手段として、弾性体の長手方向の両端に設けられ、保持部材に固定(接合)された、弾性体と保持部材とを連結する腕部が開示されている。この腕部により、振動子は、保持部材に支持されている。また、振動子から保持部材への振動の伝播を抑制するために、この腕部は、細くすることにより、剛性が低く設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような設計によっても、振動子が保持部材に接合されているので、振動が接触体以外の部材に伝搬し易く、出力効率の低下や異音の発生を抑制するという点では、さらなる改良が求められていた。
【0007】
本発明は、出力効率の低下や異音の発生を抑制した振動型アクチュエータ及びそれを備える電子機器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における課題を解決する手段は、弾性体と、前記弾性体に固定された電気-機械エネルギー変換素子と、を有する振動子と、
前記振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材を保持する基台と、
前記振動子と接触する接触体と、
前記接触体及び前記振動子を、を第1の方向に加圧する加圧部材と、を備え、
前記接触体が前記振動子に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動する振動型アクチュエータであって、
前記保持部材は、
前記振動子を、前記第1の方向に移動可能に支持する支持部と、
前記第1の方向に延びる嵌合凹部と、を有し、
前記基台は、前記第1の方向に延び、前記嵌合凹部と嵌合する嵌合凸部を有し、
前記嵌合凹部と前記嵌合凸部が接触する接触面における法線方向が、前記第1の方向の成分及び前記第2の方向の成分を含む。
また、本発明における課題を解決するほかの手段は、弾性体と、前記弾性体に固定された電気-機械エネルギー変換素子と、を有する振動子と、
前記振動子を保持する保持部材と、
前記保持部材を保持する基台と、
前記振動子と接触する接触体と、
前記接触体及び前記振動子を、を第1の方向に加圧する加圧部材と、を備え、
前記接触体が前記振動子に対して、前記第1の方向と交差する第2の方向に相対的に移動する振動型アクチュエータであって、
前記保持部材は、
前記振動子を、前記第1の方向に移動可能に支持する支持部と、
前記第1の方向に延びる嵌合凹部と、を有し、
前記基台は、前記第1の方向に延び、前記嵌合凹部と嵌合する嵌合凸部を有し、
前記第1の方向及び前記第2の方向に交差する方向を第3の方向とするとき、前記嵌合凹部と前記嵌合凸部が接触する接触面における法線方向が、前記第1の方向の成分及び前記第3の方向の成分を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出力効率の低下や異音の発生を抑制した振動型アクチュエータ及びそれを備える電子機器を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る振動型アクチュエータの正面図。
【
図3】
図1の振動型アクチュエータのステータユニットの構造を説明する斜視図。
【
図4】
図3の振動体ユニットの構造を示す分解斜視図。
【
図9】
図3の基台と保持部材の接触状態を説明する部分断面図。
【
図10】
図3の基台と保持部材の接触状態を説明する部分断面図。
【
図11】保持部材の振動モードの共振周波数を示す図。
【
図12】保持部材の代表的な振動モードの形状を示す図。
【
図13】第1の実施形態に係る接触面の他の構成を説明する部分断面図。
【
図18】第3の実施形態に係る基台を説明する部分斜視図。
【
図19】第3の実施形態に係る基台と保持部材の接触状態を説明する部分断面図。
【
図20】第4の実施形態に係る基台と保持部材を説明する分解斜視図。
【
図21】第4の実施形態に係る基台と保持部材の接触状態を説明する部分断面図。
【
図22】第4の実施形態に係る基台と保持部材の接触状態を説明する部分断面図。
【
図23】第4の実施形態に係る保持部材の他の構成を説明する部分断面図。
【
図24】第5の実施形態に係るステータユニットの構成を説明する分解斜視図。
【
図25】第6の実施形態に係る振動型アクチュエータの構成を説明する斜視図。
【
図26】第6の実施形態に係る振動型アクチュエータの構成を説明する分解斜視図。
【
図27】第7実施形態に係る、(a)撮像装置の概略構成を示す上面図、(b)撮像装置の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る振動波モータ1(振動型アクチュエータ)の概略構成を示す側面図である。
図2は、振動型アクチュエータ1の分解斜視図である。振動型アクチュエータ1は、固定部材9、伝達ユニット8、ロータユニット7、ステータユニット2、波ばね形状の加圧ばね31(加圧部材)及び加圧調整リング20を有する。振動型アクチュエータ1は、ベース(基部)となる固定部材9の円筒形状部に、円環形状を有するステータユニット2、円環形状を有するロータユニット7、伝達ユニット8、加圧ばね31及び加圧調整リング20が嵌め込まれて組み立てられている。
【0013】
ロータユニット7は、ロータホルダ73、ロータ71(接触体)、及びロータホルダ73とロータ71の間に挟持された伝達ゴム72によって構成されている。ロータユニット7は、固定部材9の円筒形状部に対して回転可能な状態で、固定部材9の円筒形状部に嵌め込まれている。
【0014】
伝達ユニット8は、コロリング84と3個のコロ85により構成されている。3個のコロ85の回転軸は、振動型アクチュエータ1でのロータユニット7の回転軸P(固定部材9の中心軸と合致する)と直交している。また、3個のコロ85は、加圧ばね31及び加圧調整リング20により、固定部材9のフランジ部9dとロータホルダ73とにより回転軸Pの軸方向に加圧された状態で保持されている。
【0015】
ロータユニット7は、3個のコロ85の回転によって、回転軸Pを回転中心として、円滑な回転動作を行うことができるようになっている。
【0016】
ステータユニット2は、3個の振動体ユニット5、略円環形状の基台17により構成されている。振動体ユニット5はそれぞれ、加圧ばね31及び加圧調整リング20により、ロータ21と加圧接触している。
【0017】
振動体ユニット5はそれぞれ、回転軸Pを中心とする円の接線方向に駆動力を発生するように、加圧受けユニット6を介して、基台17に配置されており、振動体ユニット5が発生する駆動力の合力は、回転軸Pまわりの回転駆動力となる。
【0018】
ステータユニット2は、回転軸Pの軸方向には変位可能であるが、回転軸Pまわりでの変位が規制されるように、その一部が、固定部材9に形成された嵌合溝9cに嵌合するように組み付けられている。これにより、振動体ユニット5による回転駆動力を受けるロータユニット7は、固定部材9に対して、回転軸Pまわりの回転変位を生じる。
【0019】
加圧調整リング20は、固定部材9の円筒形状部9bの所定位置に固定されており、加圧調整リング20とステータユニット2の基台17とで加圧ばね31を挟み込んでいる。基台17において、加圧ばね31と接触する面は略平面に形成されており、回転軸Pの軸方向での加圧調整リング20の位置を調整することにより、加圧ばね31に弾性変形を生じさせている。
【0020】
加圧ばね31が弾性変形することによって、ステータユニット2、ロータユニット7及び伝達ユニット8が、固定部材9のフランジ部9dに対して加圧され、各ユニット間の位置関係が保持されている。ステータユニット2が発生する駆動力はこの加圧力により生じる摩擦力を用いることでロータユニット7に伝達されて回転駆動が行われる。加圧力は、回転軸Pにより示される方向と同一の方向に付与されている。
【0021】
図3は、ステータユニット2の斜視図である。
図3においては、1つの振動体ユニット5を分離した状態で表している。基台17は、略リング状に形成されており、内径側には、固定部材9と嵌合されて回転方向の移動が規制される凸部17cが形成されている。基台17のステータユニット2が組み合わされている3箇所各々には、加圧方向と一致する方向に延出する3つの嵌合凸部である第1の嵌合凸部17b1,第2の嵌合凸部17b2,第3の嵌合凸部17b3が形成されている。
【0022】
図4は、1つの振動体ユニット5の斜視図である。説明のため上記で示した加圧方向をZ方向(第1の方向)とする。また、振動体ユニット5により生じる発生力(モータで発生する力)の方向をX方向(第2の方向)とする。また、これらZ方向(第1の方向)及びX方向(第2の方向)に交差(好ましくは、直交)する方向をY方向(第3の方向)とする。
【0023】
各振動体ユニット5は、振動子6及び保持部材13により形成されている。振動子6は、弾性体11、圧電素子12(電気-機械エネルギー変換素子)、フレキシブル基板14から構成されている。弾性体11は、矩形部11aと、矩形部11aの第1の面に設けられた2つの突起部11bとを有する。なお、弾性体11は板状の形状を有しており、第1の面とは、矩形部11aの厚み方向と交差(好ましくは、直交)する方向に広がる面を有する2つの面のうちの一方の面を指す。また、厚み方向は、加圧方向と一致する方向である。
【0024】
弾性体11の第1の面と対向する第2の面には、矩形板状の圧電素子12が接着(接合)されており、弾性体11と圧電素子12が振動体を構成する。圧電素子12において弾性体11と接着されている面と対向する面には、圧電素子12との電気的な接続を行うフレキシブル基板14が接合されている。
【0025】
保持部材13は、振動子6の圧電素子12を備える面側に、Z方向(第1の方向)に並ぶように配されている。保持部材13は、本体部13aからZ方向(第1の方向)に延出する2つの加圧凸部13cを備える。これら2つの加圧凸部13cは、振動子6と接触して、加圧力が振動子6と保持部材13とで作用する箇所となる。
【0026】
保持部材13には、本体部13aからZ方向(第1の方向)に延出する4つのガイド凸部13d(支持部)が形成されている。これらガイド凸部13dに囲まれるように、振動子6の弾性体11及び圧電素子12が配されている。これら4つのガイド凸部13dにより、振動子6は、Z方向(第1の方向)に移動自由(移動可能)に支持されている。また、これら4つのガイド凸部13dにより、振動子6は、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)に移動することができないように規制される状態で支持されている。
【0027】
次に、
図5を用いて振動子6に励起される振動モードについて説明する。本実施例では圧電素子3にフレキシブルプリント基板5を通じて交流電圧を印加して、振動子6に2つの異なる面外曲げ振動を励振し、これらの振動を合成した振動を生じさせる。
【0028】
第1の振動モードであるモードAは、振動子6の長手方向であるX方向に平行に2つの節が現れる一次の面外曲げ振動モードである。モードAの振動により、2つの突起部11bがZ方向に変位する。第2の振動モードであるモードBは、振動子6の短手方向であるY方向におおよそ平行な3つの節が現れる二次の面外曲げ振動モードである。モードBの振動により、2つの突起部11bがX方向に変位する。
【0029】
これらのモード(モードA、モードB)の振動を合成することによって、2つの突起部11bが、ZX面内で楕円運動又は円運動を行う。この2つの突起部11bにロータ71(接触体)を接触させることによって、X方向に摩擦力が発生し、振動子6とロータ71(接触体)とを相対的に移動させる駆動力(推力)が発生する。
【0030】
振動波アクチュエータ1を効率よく駆動するためには、振動子6に励振させる2つの振動モードの振動(変位)を阻害することなく振動子6を支持することが必要となり、このためには、これら2つの振動モードの節近傍を支持することが望ましい。このような理由から、振動子6に励振される2つの振動モードの共通の節を加圧・保持するために、
図4に示すように保持部材13に2つの加圧凸部13cを設けている。
図6にその接触位置と各振動モードにおける節位置を示す。
図6(a)には、モードAにおける節位置を示す。
図6(b)には、モードBにおける節位置を示す。なお、簡略化のため、フレキシブル基板14は省略している。
【0031】
図6において、黒色に塗りつぶされた部分は節近傍を示している。具体的には各振動モードの最大変位の35%以下の変位の個所を黒く表示している。ここではこの最大変位の35%以下の変位の個所を節近傍と定義する。モードA、Bを重ね合わせると黒い部分が重なる場所、つまり共通の節近傍が6個出現(丸印4か所と星印2か所)する。このうち星印で表す2か所が、振動子2をより効率的に支持する以下2つの観点で好ましい。まず他4か所よりも変位がより小さいこと、次にZX断面で見るとX方向には1点で加圧されているために突起部11bとロータ71とのY軸回りのイコライズ機能をもたせ、接触を均一化させることが可能だからである。
【0032】
このような理由から、
図6の星印部を、加圧凸部13cにより接触させることで、単に振動子の裏面を一様に面加圧・面支持する構造と比べ、より効率的に振動子6を加圧している。さらに加圧凸部13cと振動子6の間に作用する摩擦力によって振動子6をX方向及びY方向に保持している。本実施例では、フレキシブル基板14と加圧凸部13cが接触しているが、この最大静止摩擦力が、ロータ71に発生する推力よりも常に大きい値になるように加圧力と摩擦係数を調整している。いわば加圧凸部13cによってあたかも点接触するかのように加圧するため、振動波アクチュエータ1の駆動中に、振動子6が保持部材13に対して移動することを大きく低減している。
【0033】
図7は、保持部材13をマイナスZ方向から見た下面図である。保持部材13の振動子6が配されている面と対向する面には、6か所に嵌合凹部が形成されている。これらの嵌合凹部は保持部材13がX方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)に対して対称形状となるように形成されている。
【0034】
嵌合凹部のうち、マイナスX方向の第1の嵌合凹部13b1、第2の嵌合凹部13b2及びプラスX方向の第3の嵌合凹部13b3がそれぞれ、基台17の第1の嵌合凸部17b1、第2の嵌合凸部17b2及び第3の嵌合凸部17b3と接触している。そして、3か所の接触面である第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13が形成されている。
【0035】
基台17と保持部材13とは、これら第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13のみで接触している。第1の嵌合凹部13b1及び第2の嵌合凹部13b2は、Z方向(第1の方向)から見たときに、Y方向(第3の方向)に長辺を持つ略長円形状であり、底部は各方向に傾斜を持つように形成されている。傾斜に関しては、
図9等を用いて後述する。第3の嵌合凹部13b3は、Z方向(第1の方向)から見たときに、X方向(第2の方向)に長辺を持つ略長円形状であり、底部は同様に各方向に傾斜を持つように形成されている。
【0036】
図8は、基台17の一部を表す平面図である。第1の接触面C11を形成する第1の嵌合凸部17b1は、Z方向(第1の方向)から見たときに、略長円形状であり、先端は、各方向にRを持つ形状に形成されている。
【0037】
第2の接触面C12及び第3の接触面C13を形成する第2の嵌合凸部17b2及び第3の嵌合凸部17b3は、Z方向(第1の方向)から見たときに、略球形状であり、先端は、半球形状に形成されている。
【0038】
図9及び
図10は、第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13での接触状態を表すステータユニット2の断面図である。
図9は、接触面C11において、Y方向(第3の方向)を法線とする面での断面図である。
図10は、保持部材13と基台17とが実際に接触している第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13を含む位置でのZ方向(第1の方向)を法線とする面での断面図である。
【0039】
ここで、先述した傾斜の状態を説明する。
図9に示す断面では、第1の傾斜面13b1sは、法線がZ方向(第1の方向)及びX方向(第2の方向)の成分を有しており、法線がZ方向の成分のみを有する面に対して角度を備えていることを表している。
【0040】
なお、本説明では、法線がZ方向(第1の方向)以外の成分を有する面を、傾斜面とする。特に、法線がZ方向の成分及びX方向の成分のみを有する面を、X方向の傾斜面と表し、法線がZ方向の成分及びY方向の成分のみを有する面を、Y方向の傾斜面とする。法線がZ方向の成分のみを有する面を、傾斜のない面とする。傾斜面は、平面に限定されず、連続的に法線方向(法線の方向)が変化し、このような傾斜面には、球面や円筒面も含まれるものとして説明する。
【0041】
図9に示す断面において、第1の接触面C11は、第1の嵌合凹部13b1の第1の傾斜面13b1sと第1の嵌合凸部17b1とが接触している。この傾斜面において、基台17と保持部材13との加圧力が作用する。加圧力は、法線方向に作用するので、この加圧力は、Z方向(第1の方向)及びX方向(第2の方向)に分解して表現できる。つまり、第1の接触面C11における法線方向が、前記第1の方向及び前記第2の方向の成分を含む。第1の接触面C11において、X方向(第2の方向)の作用、反作用力が生じることで、基台17に対して、保持部材13のX方向(第2の方向)の移動が制限されている。このような作用が各第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13に与えられる。
【0042】
図10を用いて説明する。第1の接触面C11は、第1の嵌合凸部17b1と第1の嵌合凹部13b1の第1の傾斜面13b1sとは、
図9(a)で説明したように、X方向(第2の方向)で接触するとともに、同様な関係で、Y方向(第3の方向)においても接触している。この第1の接触面C11においては、保持部材13の基台17に対する、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)の相対的な移動が制限されている。
【0043】
第2の接触面C12は、第2の嵌合凸部17b2と第2の嵌合凹部13b2の第2の傾斜面13b2sとは、X方向(第2の方向)で接触している。この第2の接触面C12においては、X方向(第2の方向)に、基台17と保持部材13の基台17に対する、X方向(第2の方向)の相対的な移動が制限されている。第3の接触面C13は、第3の嵌合凸部17b3と第3の嵌合凹部13b3の第3の傾斜面13b3sとはY方向(第3の方向)で接触している。この第2の接触面C12においては、保持部材13の基台17に対する、相対的な移動が制限されている。
【0044】
これら第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13の作用により、保持部材23の基台27に対する、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)の相対的な移動が制限されている。
【0045】
図10に、記号FPで示した箇所は、振動子6と保持部材13とに作用する加圧力の合力が作用する位置を表している。前述した、2つの加圧凸部13cは、投影的に
図10に示した箇所であり、この2か所に略同一の加圧力が作用するので、これら2点の中点であるFPに合力が作用する。第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13で囲まれる範囲内にFPが収まるように接触面を形成することで、加圧力が生じた状態で、保持部材13を安定して保持することができる。
【0046】
保持部材13の形状や材質に関して説明を続ける。
図11は、保持部材13単体に生じる振動モードに関して、FEM計算で得られた共振周波数を示したグラフである。
図11では、横軸は、周波数[kHz]を表し、黒丸は、保持部材13が有する振動モードの共振周波数を表している。また、F1,F2,F3はそれぞれ、可聴域の周波数の上限値(20kHz),振動型アクチュエータの駆動周波数の下限値、振動型アクチュエータの駆動周波数の上限値を表している。なお、可聴域の周波数は、一般的には、20Hz以上且つ20kHz以下といわれている。振動子6に超音波振動を励振している状態では、保持部材13は、加圧凸部13cにおいて振動子6の振動変位を受けている。このような状態で保持部材13に、不要な音の発生源となる不要な振動が励振しないように、保持部材13の形状や材質を決定している。
【0047】
具体的には、保持部材13が有する振動モードの共振周波数が、可聴域の周波数の上限値(20kHz)以下に存在しないように、保持部材13の形状や材質を決定している。また、保持部材13が有する振動モードの共振周波数が、圧電素子12に印加する交流電圧の周波数域(振動型アクチュエータの駆動周波数域であるF2からF3の間の周波数)に存在しないように、保持部材13の形状や材質を決定している。
【0048】
図12(a)、
図12(b)にはそれぞれ、保持部材13に生じる、不要な音の発生源となる、代表的な不要振動モードである2つの振動モード(第1の振動モードS1及び第2の振動モードS2)を示している。これら2つの振動モード(振動の形態)は共に、Z方向(第1の方向)に変形する(第1の方向への変形が支配的な)曲げ変形の振動モード(曲げ振動モード)である。また、第1の振動モードS1及び第2の振動モードS2は、振動子6からの加振力に対して、加振されやすいと考えられる。
【0049】
第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13は、振動型アクチュエータ1の駆動時に、第1の振動モードS1及び第2の振動モードS2が保持部材13に励振されても、基台17への振動伝達がなるべく小さくなるように形成されている。たとえば、第1の接触面C11、第2の接触面C12及び第3の接触面C13は、第1の振動モードS1及び第2の振動モードS2の振動変位の小さい箇所、いわゆる振動モードの節近傍又は節を含むように形成されている。
【0050】
また、
図7に示すように、保持部材13は、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)に対して略対称形状としている。これは、第1の振動モードS1及び第2の振動モードS2(
図12参照)やその他の振動モードが対称形状となることを目的としている。振動モードが対称形状であることで、保持部材13の振動に関する挙動は、必要以上に複雑にならずに、振動に関する設計を確実に行うことができる。
【0051】
図13に、本実施形態における他の構成を示す。
図13は、保持部材13Aの第1の嵌合凹部13Ab1及び基台17Aの第1の嵌合凸部17Ab1により形成されている、第1の接触面C11の状態を示す部分断面図である。
【0052】
第1の嵌合凹部13Ab1の底部から凸状に第1の傾斜面13Ab1sが形成されている。第1の嵌合凸部17Ab1の先端部には、第1の傾斜面13Ab1sと接触する第1の受け部17Ab1sが形成されている。これら第1の傾斜面13Ab1sと第1の受け部17Ab1sとを接触させることで、
図9等を用いて示したものと同様の効果を得ることができる。
【0053】
<第2の実施形態>
図14は、第2の実施形態となる振動型アクチュエータ1における保持部材23の下面図である。
図15は、同じく第2の実施形態となる振動型アクチュエータ1における基台27の部分上面図である。
【0054】
図14に示すように、第1の嵌合凹部23b1は、Z方向(第1の方向)から見たときに、X方向(第2の方向)に長手軸を持つ長円形状であり、底部は、各方向に傾斜を持つように形成されている。第2の嵌合凹部23b2は、Z方向(第1の方向)から見たときに、X方向(第2の方向)に長手軸を持つ長円形状であり、底部は、傾斜のない平面で形成されている。第3の嵌合凹部23b3は、Z方向(第1の方向)から見たときに、略円形状であり、底部は、各方向に傾斜を持つように形成されている。
【0055】
図15に示すように、第1の嵌合凸部27b1,第2の嵌合凸部27b2及び第3の嵌合凸部27b3は、Z方向(第1の方向)から見たときに、略円形状であり、先端は、略半球形状に形成されている。
図16は、保持部品23と基台27とが組み合わされた状態での、第1の嵌合凹部23b1,第2の嵌合凹部23b2,第3の嵌合凹部23b3と第1の嵌合凸部27b1,第2の嵌合凸部27b2,第3の嵌合凸部27b3との接触状態を示す部分断面図である。
【0056】
第1の嵌合凹部23b1と第1の嵌合凸部27b1とが接触することで、第1の接触面C21が構成されている(
図16(a)参照)。第3の嵌合凹部23b3と第3の嵌合凸部27b3とが接触することで、第3の接触面C23が構成されている(
図16(b)参照)。これらの接触状態に関しては、
図9等で示した第1の実施形態と同様であるので、説明を省略する。第2の嵌合凹部23b2の底面は、前述のように、法線がZ方向の成分のみを有する面(傾斜のない面)であり、この個所に、第2の嵌合凸部27b2の先端が接触して、第2の接触面C22が構成されている(
図16(a)参照)。
【0057】
図17は、第1の接触面C21及び第3の接触面C23を含む高さでの、法線がZ方向の成分のみを有する面の断面図である。なお、第2の接触面C22は、Z方向(第1の方向)での位置が異なるため、本図では示されていない。第3の接触面C23は、第3の嵌合凸部27b3と第3の嵌合凹部23b3の第3の傾斜面23b3sとは、X方向(第2の方向)で接触するとともに、Y方向(第3の方向)においても接触している。この接触面C23においては、保持部材23の基台27に対する、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)の相対的な移動が制限されている。
【0058】
第1の接触面C21は、嵌合凸部27b1と嵌合凹部23b3の第1の傾斜面23b1sとは、Y方向(第3の方向)において接触している。この第1の接触面C21においては、保持部材23の基台27に対する、Y方向(第3の方向)の相対的な移動が制限されている。これら接触面C21及びC23の作用により、保持部材23の基台27に対する、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)の相対的な移動が制限されている。また、第1の接触面C21、第2の接触面C22及び第3の接触面C23により、保持部材23は基台27に対して、Z方向(第1の方向)に保持されている。
【0059】
<第3の実施形態>
図18は、第3の実施形態における基台37の部分斜視図である。3か所に形成されている嵌合凸部37b1,37b2,37b3は、Z方向(第1の方向)から見て、略円形状であり、先端は、円錐形状に形成されている。
図19は、保持部品33と基台37とが組み合わされた状態での、嵌合凹部33b1,33b2,33b3と嵌合凸部37b1,37b2,37b3との接触状態を示す部分断面図である。保持部材33の嵌合凹部33b1及び33b3は、底面が略円錐形状に形成されている。
【0060】
嵌合凹部33b1の円錐形状の頂点と、嵌合凸部33b1の円錐形状の頂点と、が接触することで、第1の接触面C31が構成されている(
図19(a)参照)。嵌合凹部33b3円錐形状の頂点と、第3の嵌合凸部37b3の円錐形状の頂点と、が接触することで、第3の接触面C33が構成されている(
図19(b)参照)。第3の嵌合凹部33b2の底面は、法線がZ方向の成分のみを有する面(傾斜のない面)であり、この個所に、第2の嵌合凸部37b2の先端が接触して、第2の接触面C32が構成されている(
図19(a)参照)。
【0061】
第1の接触面C31及び第3の接触面C33の作用により、保持部材33は、基台37に対して、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)の移動が制限されている。また、第1の接触面C31,第2の接触面C32及び第3の接触面C33により、保持部材33は基台37に対して、Z方向(第1の方向)に保持されている。
【0062】
<第4の実施形態>
図20は、第4の実施形態における、保持部材43及び基台47の斜視図である。
図20において、保持部材43は、基台47に対して、Z方向(第1の方向)に移動するとともに、X軸回りに回転させて示している。
【0063】
保持部材43の嵌合凹部43b1は、Z方向(第1の方向)から見たときに、Y方向(第3の方向)に長軸を持つ長円形状であり、底面は、各方向に傾斜を持つ傾斜面が形成されている。第2の嵌合凹部43b2は、Z方向(第1の方向)から見たときに、略円形状であり、底面は、各方向に傾斜を持つ傾斜面が形成されている。
【0064】
基台47には、Z方向(第1の方向)に延出し、Z方向(第1の方向)から見たときに、Y方向(第3の方向)に長軸を持つ長円形状に形成されている第1の嵌合凸部47b1が形成されている。第1の嵌合凸部47b1の先端は、Rを持つ形状に形成されている。基台47には、Z方向(第1の方向)に延出し、Z方向(第1の方向)から見たときに、略円形状に形成されている嵌合凸部47b2が形成されている。第2の嵌合凸部47b2の先端は、Rを持つ略半球形状に形成されている。
【0065】
第1の嵌合凹部43b1と第1の嵌合凸部47b1が接触することにより、第1の接触面C41が形成されている。第1の接触面C41における法線方向は、Z方向(第1の方向)の成分及びY方向(第3の方向)の成分を含む。また、第2の嵌合凹部43b2と第2の嵌合凸部47b2が接触することにより、第2の接触面C42が形成されている。第2の接触面C42における法線方向は、Z方向(第1の方向)の成分及びX方向(第2の方向)の成分を含む。
【0066】
図21は、保持部材43の第1の嵌合凹部43b1と基台47の第1の嵌合凸部47b1との接触状態を表す、部分断面図である。第1の嵌合凹部43b1と第1の嵌合凸部47b1は、Y方向(第3の方向)に長さを持ち、Y方向(第3の方向)の両端付近で互いに接触することで、第1の接触面C41を形成する。
【0067】
このように第1の接触面C41が形成されていることで、1つの嵌合凸部(第1の嵌合凸部47b1)で、X軸回りの傾きに対しての拘束を与えることができる。また、第2の接触面C42が形成されていることで、1つの嵌合凸部(第2の嵌合凸部47b2)で、Y軸回りの傾きに対して拘束を与えることができる。これら第1の接触面C41及び第2の接触面C42の作用により、保持部材43の基台47に対する、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)の相対的な移動が制限されている。
【0068】
図22は、第1の接触面C41及び第2の接触面C42を含む高さでのZ方向(第1の方向)を法線とした面の断面図である。第1の接触面C41は、
図20で説明したように、Y方向(第3の方向)の両端付近で接触している。第2の接触面C42は、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)で接触している。これら第1の接触面C41及び第2の接触面C42の作用により、保持部材43の基台47に対する、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)の相対的な移動が制限されている。
【0069】
図23は、本実施例における他の形態を示す保持部材43である。保持部材43Aにおいては、1つの嵌合凹部(第1の嵌合凹部43Ab)が形成されている。そして、1つの嵌合凹部(第1の嵌合凹部43Ab)と2つの嵌合凸部(第1の嵌合凸部47b1と第2の嵌合凸部47b2)が接触する。そして、2か所の接触面である第1の接触面C41及び第2の接触面C42が形成されている。そして、それにより、保持部材43と同様の作用が得られる。
【0070】
<第5の実施形態>
図24は、第5の実施形態における振動型アクチュエータ1に用いられる、基台57及び保持部材53の接触状態を表す分解斜視図である。基台57は、3つの嵌合凸部(第1の嵌合凸部57b1、第2の嵌合凸部57b2及び第3の嵌合凸部57b3)を備えている。保持部材53には、
図14に示した、保持部材23と同等の3つの嵌合凹部(第1の嵌合凹部53b1、第2の嵌合凹部53b2及び第3の嵌合凹部53b3)が形成されている。
【0071】
基台57の3つの嵌合凸部と保持部材の3つの嵌合凹部が接触して、保持部材53は、基台57に対しての相対的な移動が規制されている。保持部材53と振動子6とは、保持部材53に備えられる加圧凸部53cで接触する。また、基台57に形成されている2つのガイド部57cにより、振動子6は基台57に対して、X方向(第2の方向)及びY方向(第3の方向)の相対的に移動することができないように規制される状態で支持されている。
【0072】
<第6の実施形態>
図25は、第6の実施形態における、振動型アクチュエータ50の斜視図である。
図26は、振動型アクチュエータ50の分解斜視図である。振動型アクチュエータ50は、大略的に被駆動部52及びステータ部51により構成されている。被駆動部52は、ステータ部51に囲まれるように配置されており、後述するように、ステータ部51に対して、相対的に、X軸方向に直線的に移動可能となっている。被駆動部52は、被駆動枠体54、出力伝達部61及び摺動部材55を有する。
【0073】
ステータ部51は、振動子6、保持部材63、基台67、加圧ばね60、支持枠62、第1のレール59及び第2のレール58を有する。基台67は、加圧ばね60を介して、支持枠62に保持されている。加圧ばね60は、Z方向(第1の方向)に変位して、振動子6と摺動部材55とに加圧力を与える作用をなす。振動子6は、保持部材13を介して、基台67に保持されている。
【0074】
保持部材63は、
図4等で説明した保持部材13と同一形状である。また、基台67には、
図3等で説明した基台17の第1の嵌合凸部17b1、第2の嵌合凸部17b2及び第3の嵌合凸部17b3と同一形状の第1の嵌合凸部67b1、第2の嵌合凸部67b2及び第3の嵌合凸部67b3形成されている。また、基台67には、保持部材63の第1の嵌合凹部63b1、第2の嵌合凹部63b2及び第3の嵌合凹部63b3と接触して、接触面が形成されている。
【0075】
第1のレール59と第2のレール58は、支持枠62のそれぞれの上部に固定されている。被駆動部52において、摺動部材55は、被駆動枠体54の中央底部に形成された凹みに、接着剤等を用いて接合されている。
【0076】
摺動部材55は、振動子6から摩擦駆動力を受けて、駆動突起11aと摺動する部材である。被駆動枠体54の上面中央付近には、出力伝達部61が、例えば、ねじ止め等により固定されている。被駆動枠体54には、X軸方向に延在する、鋼球案内溝が設けられており、それぞれの鋼球案内溝に、1つの鋼球56が配置されている。また、第1のレール59と第2のレール58において、鋼球案内溝とZ軸方向で対向する面には、鋼球受け部(不図示)が設けられている。
【0077】
加圧ばね60により発生させる加圧力は、摺動部材55を介して、被駆動枠体54に伝達され、これにより、被駆動枠体54は、鋼球56を介して、第1のレール59と第2のレール58に押し当てられる。こうして、被駆動部52は、鋼球56の転動により、X軸方向に移動可能に、ステータ部51に保持されている。
【0078】
このような構成により、被駆動部52をX軸方向に移動させることができる。
【0079】
<第7の実施形態>
上述した振動型アクチュエータ1,50は、駆動によって位置決めされる部材を備える電子機器に広く適用が可能である。例えば、撮像装置(光学機器)のレンズ駆動、複写機の感光ドラムの回転駆動、ステージの駆動等の、様々な用途の駆動源に用いることができる。ここでは、一例として、振動型アクチュエータ1をレンズ鏡筒に配置されたレンズの駆動に用いた撮像装置(光学機器)について、
図27を用いて説明する。
【0080】
図27(a)は、撮像装置700の概略構成を示す上面図である。撮像装置700は、撮像素子710及び電源ボタン720を搭載したカメラ本体730を備える。また、撮像装置700は、第1のレンズ群(不図示)、第2のレンズ群320、第3のレンズ群(不図示)、第4のレンズ群340、振動型駆動装置(振動型アクチュエータ)620,640を備えるレンズ鏡筒740を備える。レンズ鏡筒740は、交換レンズとして、カメラ本体730に対して、着脱自在である。
【0081】
撮像装置700では、振動型駆動装置620によって、第2のレンズ群320の駆動が行われ、位置決めされる。また、撮像装置700では、振動型駆動装置640によって、第4のレンズ群340の駆動が行われ、位置決めされる。振動型駆動装置620,640はそれぞれ、振動型アクチュエータ1と、振動型アクチュエータ1の出力の変換機構とを有する。例えば、振動型駆動装置620を構成する被駆動体(ロータ21)の回転を、ギア等により、光軸方向の直進運動に変換し、第2のレンズ群320の光軸方向における位置を調整する。振動型駆動装置640についても、同様の構成とすることができる。
【0082】
図27(b)は、撮像装置700の概略構成を示すブロック図である。第1のレンズ群310、第2のレンズ群320、第3のレンズ群330、第4のレンズ群340及び光量調節ユニット350が、レンズ鏡筒740内部の光軸上の所定位置に配置されている。第1のレンズ群310~第4のレンズ群340と光量調節ユニット350とを通過した光は、撮像素子710に結像する。撮像素子710は、光学像を電気信号に変換して出力し、その出力は、カメラ処理回路750へ送られる。
【0083】
カメラ処理回路750は、撮像素子710からの出力信号に対して、増幅やガンマ補正等を施す。カメラ処理回路750は、AEゲート755を介して、CPU790に接続されていると共に、AFゲート760とAF信号処理回路765とを介して、CPU790に接続されている。カメラ処理回路750において所定の処理が施された映像信号は、AEゲート755と、AFゲート760及びAF信号処理回路765を通じて、CPU790へ送られる。なお、AF信号処理回路765は、映像信号の高周波成分を抽出して、オートフォーカス(AF)のための評価値信号を生成し、生成した評価値をCPU790へ供給する。
【0084】
CPU790は、撮像装置700の全体的な動作を制御する制御回路であり、取得した映像信号から、露出決定やピント合わせのための制御信号を生成する。CPU790は、決定した露出と適切なフォーカス状態が得られるように、振動型駆動装置620,640及びメータ630を制御することによって、第2のレンズ群320、第4のレンズ群340及び光量調節ユニット350の光軸方向位置を調整する。
【0085】
CPU790による制御下において、振動型駆動装置620は、第2のレンズ群320を光軸方向に移動させ、振動型駆動装置640は、第4のレンズ群340を光軸方向に移動させ、光量調節ユニット350は、メータ630により駆動制御される。
【0086】
振動型駆動装置620により駆動される第2のレンズ群320の光軸方向位置は、第1のリニアエンコーダ770により検出され、検出結果がCPU790に通知されることで、振動型駆動装置620の駆動にフィードバックされる。同様に、振動型駆動装置640により駆動される第4のレンズ群340の光軸方向位置は、第2のリニアエンコーダ775により検出され、検出結果がCPU790に通知されることで、振動型駆動装置640の駆動にフィードバックされる。
【0087】
光量調節ユニット350の光軸方向位置は、絞りエンコーダ780により検出され、検出結果がCPU790へ通知されることで、メータ630の駆動にフィードバックされる。振動型アクチュエータ1を備える振動型駆動装置620,640を用いることにより、撮像装置700のレンズ等を精度よく効率的に駆動することが可能となる。
【0088】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。さらに、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0089】
1,50 振動波モータ(振動型アクチュエータ)
2 ステータユニット
7 ロータユニット
5 振動体ユニット
6 振動子
31 加圧ばね(加圧部材)
71 ロータ(接触体)
13,13A,23,33,43,43A,53,63 保持部材
13b1,23b1,33b1,43b1,43Ab 第1の嵌合凹部
13b2,23b2,33b2 43b2 第2の嵌合凹部
13b3,23b3,33b3 第3の嵌合凹部
13d ガイド凸部(支持部)
17,27,37,47,57,67 基台
17b1,27b1,37b1,47b1,57b1 第1の嵌合凸部
17b2,27b2,37b2,47b2,57b2 第2の嵌合凸部
17b3,27b3,37b3,57b3 第3の嵌合凸部
C11,C21,C31,C41 第1の接触面
C12,C22,C32,C42 第2の接触面
C13,C23,C33 第3の接触面