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特許7596149弁尖クランプを備えた機械的に拡張可能な心臓弁
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】弁尖クランプを備えた機械的に拡張可能な心臓弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020560148
(86)(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019028641
(87)【国際公開番号】W WO2019209782
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】62/663,615
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/389,312
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤイール・エー・ニューマン
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536048(JP,A)
【文献】特表2014-522678(JP,A)
【文献】特表2011-528607(JP,A)
【文献】国際公開第2008/029296(WO,A2)
【文献】特表2015-509023(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0150956(US,A1)
【文献】特表2003-518984(JP,A)
【文献】特表2007-521125(JP,A)
【文献】特開2017-131738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工心臓弁のためのフレームであって、
前記フレームの環状主要本体を形成するように配置され、複数のピボットジョイントによって互いに連結された、複数の支柱部材であって、前記フレームの前記主要本体は、折り畳まれた構成へと半径方向に折り畳み可能であり、かつ拡張した構成へと半径方向に拡張可能であり、前記フレームの前記主要本体は、流入端部および流出端部を有する、複数の支柱部材と、
前記フレームの前記主要本体の外部に配置され、前記支柱部材に連結された、複数の弁尖クランプであって、前記複数の弁尖クランプは、前記フレームの前記主要本体の前記折り畳まれた構成に対応する開位置と、前記フレームの前記主要本体の前記拡張した構成に対応する閉位置との間で動くことができる、複数の弁尖クランプと、を備え、
前記折り畳まれた構成と前記拡張した構成との間で前記フレームの前記主要本体が動くことにより、前記弁尖クランプがこれに対応して前記開位置と前記閉位置との間で動
前記支柱部材は、前記フレームの前記主要本体の前記流入端部に位置するそれぞれの流入端部分と、前記フレームの前記主要本体の前記流出端部に位置するそれぞれの流出端部分と、前記流入端部分と前記流出端部分との間のそれぞれの中心部分と、を有し、
前記フレームが前記拡張した構成にある場合、前記支柱部材の前記中心部分は、前記支柱部材の前記流入端部分から、また前記流出端部分から、前記フレームの長手方向軸に対して半径方向内側にオフセットされ、それによって、前記フレームの前記主要本体は砂時計型の外形を有する、フレーム。
【請求項2】
前記弁尖クランプは、前記フレームの前記主要本体に連結された第1の端部分と、第2の自由端部分と、を備え、
前記弁尖クランプが前記開位置にある場合、前記第2の自由端部分は、前記フレームの前記主要本体から半径方向外側に離間する、請求項1に記載のフレーム。
【請求項3】
前記弁尖クランプが前記閉位置にある場合、前記第2の自由端部分は、前記フレームの前記主要本体に隣接して配置される、請求項2に記載のフレーム。
【請求項4】
前記フレームが前記折り畳まれた構成にある場合、前記支柱部材の前記中心部分は、前記支柱部材の前記それぞれの流入端部分および流出端部分から前記フレームの前記長手方向軸に対して半径方向外側にオフセットされ、それによって、前記フレームの前記主要本体は樽型の外形を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項5】
前記弁尖クランプはそれぞれ、前記フレームの前記主要本体の前記支柱部材に旋回可能に連結された一対の支柱部材を備える、請求項1からのいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項6】
前記弁尖クランプの前記支柱部材はそれぞれ、第1の端部分および第2の端部分を備え、
前記弁尖クランプが前記開位置にある場合、前記弁尖クランプの前記支柱部材の前記第2の端部分は、前記フレームの前記主要本体から半径方向外側に離間する、請求項に記載のフレーム。
【請求項7】
各弁尖クランプの前記支柱部材の前記第2の端部分は互いに連結され、それによって、前記弁尖クランプは、前記フレームが前記拡張した構成にある場合、V字型である、請求項に記載のフレーム。
【請求項8】
前記弁尖クランプの前記支柱部材の前記第1の端部分は、前記フレームの前記主要本体の前記流出端部の頂点に連結される、請求項またはに記載のフレーム。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載のフレームと、
前記フレーム内部に少なくとも部分的に配置された弁尖構造体と、を備える、人工心臓弁。
【請求項10】
人工心臓弁のためのフレームであって、
環状主要本体を形成するように配置された複数の支柱部材を備え、前記フレームの前記主要本体は、折り畳まれた構成へと半径方向に折り畳み可能であり、かつ拡張した構成へと半径方向に拡張可能であり、前記フレームの前記主要本体は、流入端部および流出端部を有し、長手方向軸を画定し、
前記フレームの前記支柱部材は、前記主要本体の前記流入端部に位置するそれぞれの流入端部分と、前記主要本体の前記流出端部に位置するそれぞれの流出端部分と、前記流入端部分と前記流出端部分との間のそれぞれの中心部分と、を有し、
前記フレームが前記拡張した構成にある場合、前記支柱部材の前記中心部分は、前記支柱部材の前記流入端部分から、また前記流出端部分から、前記長手方向軸に対して半径方向内側にオフセットされ、それによって、前記フレームの前記主要本体は砂時計型の外形を有する、フレーム。
【請求項11】
前記フレームの前記主要本体が前記折り畳まれた構成にある場合、前記支柱部材の前記中心部分は、前記支柱部材の前記それぞれの流入端部分および流出端部分から前記フレームの前記長手方向軸に対して半径方向外側にオフセットされ、それによって、前記フレームの前記主要本体は樽型の外形を有する、請求項10に記載のフレーム。
【請求項12】
前記フレームの前記主要本体の外部に配置され、前記支柱部材に連結された、複数の弁尖クランプをさらに備える、請求項11に記載のフレーム。
【請求項13】
前記弁尖クランプは、前記フレームの前記主要本体の前記折り畳まれた構成に対応する開位置と、前記フレームの前記主要本体の前記拡張した構成に対応する閉位置との間で動くことができる、請求項12に記載のフレーム。
【請求項14】
前記弁尖クランプはそれぞれ、前記フレームの前記主要本体の前記支柱部材に旋回可能に連結された一対の支柱部材を備える、請求項12または13に記載のフレーム。
【請求項15】
前記弁尖クランプの前記支柱部材はそれぞれ、第1の端部分および第2の端部分を備え、
前記弁尖クランプが前記開位置にある場合、前記弁尖クランプの前記支柱部材の前記第2の端部分は、前記フレームの前記主要本体から半径方向外側に離間する、請求項14に記載のフレーム。
【請求項16】
各弁尖クランプの前記支柱部材の前記第2の端部分は互いに連結され、それによって、前記弁尖クランプは、前記フレームが前記拡張した構成にある場合、V字型である、請求項15に記載のフレーム。
【請求項17】
前記弁尖クランプは、前記フレームが前記拡張した構成にある場合、曲げられる、請求項12から16のいずれか一項に記載のフレーム。
【請求項18】
前記フレームの前記主要本体の前記支柱部材は、複数のピボットジョイントによって互いに連結される、請求項10から17のいずれか一項に記載のフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人工心臓弁など、植え込み可能で機械的に拡張可能な人工装置、ならびにそのような人工装置のための方法および送達組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の心臓は、さまざまな弁膜症を患う可能性がある。これらの弁膜症は、心臓の著しい機能不全をもたらし、また、最終的には自己弁を人工弁で置換することを必要とし得る。いくつかの既知の人工弁、およびこれらの人工弁を人間に植え込むいくつかの既知の方法がある。
【0003】
さまざまな外科技術が、罹患または損傷した弁を置換または修復するのに使用され得る。狭窄および他の心臓弁膜症により、毎年、何千人もの患者が、欠陥のある自己心臓弁を人工弁で置換する手術を受ける。欠陥のある弁を治療するための、あまり極端でない別の方法は、修復または再建を通じたものであり、これは、典型的には石灰化が最小限の弁に使用される。外科的療法の問題は、慢性的に不調の患者に与える著しいリスクであり、外科的修復には、高い罹患率および死亡率が関連している。
【0004】
自己弁が置換される場合、人工弁の外科的植え込みは、典型的には、開胸手術を必要とし、開胸手術中、心臓は停止され、患者は心肺バイパス(いわゆる「人工心肺」)上に配置される。1つの一般的な外科処置では、罹患した自己弁の弁尖は切除され、人工弁が、弁輪において周辺組織に縫合される。処置に関連する外傷、および付随する体外の血液循環の持続時間により、一部の患者は、外科処置に耐えられないか、または外科処置後すぐに死亡してしまう。患者に対するリスクは、体外循環において必要とされる時間の長さと共に増加することが周知である。これらのリスクにより、欠陥のある自己弁を有する、相当な数の患者は、体調が処置に耐えるには虚弱すぎるため、手術不能とみなされる。ある推定によれば、弁狭窄、弁閉鎖不全症などといった心臓弁膜症を患っている、80歳を超えた被験者の50%超が、弁置換の手術を受けられない。
【0005】
従来の開胸手術に付随する欠点により、経皮的で最小侵襲の外科的アプローチが注目を集めている。一技術では、人工弁が、カテーテル法により、はるかに低侵襲の処置において植え込まれるように構成される。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、特許文献1および特許文献2は、折り畳み可能な経カテーテル心臓弁を記載しており、これは、カテーテル上において圧縮状態で経皮的に導入されて、バルーンの膨張によって、または自己拡張フレームもしくはステントの利用によって、所望の位置で拡張され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5,411,522号
【文献】米国特許第6,730,118号
【文献】米国特許出願公開第2018/0153689号
【文献】米国特許出願第16/105,353号
【文献】米国特許出願公開第2014/0296962号
【文献】米国特許出願公開第2018/0206982号
【文献】米国特許出願第16/252,890号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
重要な設計留意点は、人工心臓弁が、ずらされることなく配備後に治療場所にとどまる能力である。特に、人工心臓弁を植え込む際に自己心臓弁の弁尖に係合するための装置および方法の改善が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある実施形態は、弁尖クランプを含む人工心臓弁のためのフレームに関する。代表的な実施形態では、人工心臓弁のためのフレームは、フレームの環状主要本体を形成するように配置され、複数のピボットジョイントによって互いに連結された、複数の支柱部材を備える。フレームの主要本体は、折り畳まれた構成へと半径方向に折り畳み可能であり、かつ拡張した構成へと半径方向に拡張可能であり、フレームの主要本体は、流入端部および流出端部を有する。フレームは、フレームの主要本体の外部に配され、支柱部材に連結された、複数の弁尖クランプをさらに備える。複数の弁尖クランプは、フレームの主要本体の折り畳まれた構成に対応する開位置と、フレームの主要本体の拡張した構成に対応する閉位置との間で可動である。折り畳まれた構成と拡張した構成との間でフレームの主要本体が動くことにより、弁尖クランプがこれに対応して開位置と閉位置との間で動く。
【0009】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプは、フレームの主要本体に連結された第1の端部分と、第2の自由端部分と、を備え、弁尖クランプが開位置にあるとき、第2の自由端部分は、フレームの主要本体から半径方向外側に離間する。
【0010】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプが閉位置にあるとき、第2の自由端部分は、フレームの主要本体に隣接して配される。
【0011】
いくつかの実施形態では、支柱部材は、フレームの主要本体の流入端部に位置するそれぞれの流入端部分と、フレームの主要本体の流出端部に位置するそれぞれの流出端部分と、流入端部分と流出端部分との間のそれぞれの中心部分と、を有する。フレームが拡張した構成にあるとき、支柱部材の中心部分は、支柱部材の流入端部分から、また流出端部分から、フレームの長手方向軸に対して半径方向内側にオフセットされ、それによって、フレームの主要本体は砂時計型の外形を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、フレームが折り畳まれた構成にあるとき、支柱部材の中心部分は、支柱部材のそれぞれの流入端部分および流出端部分からフレームの長手方向軸に対して半径方向外側にオフセットされ、それによって、フレームの主要本体は樽型の外形を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプはそれぞれ、フレームの主要本体の支柱部材に旋回可能に連結された一対の支柱部材を備える。
【0014】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプの支柱部材はそれぞれ、第1の端部分および第2の端部分を備え、弁尖クランプが開位置にあるとき、弁尖クランプの支柱部材の第2の端部分は、フレームの主要本体から半径方向外側に離間する。
【0015】
いくつかの実施形態では、各弁尖クランプの支柱部材の第2の端部分は互いに連結され、それによって、弁尖クランプは、フレームが拡張した構成にあるとき、V字型である。
【0016】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプの支柱部材の第1の端部分は、フレームの主要本体の流出端部の頂点に連結される。
【0017】
いくつかの実施形態では、人工心臓弁は、本明細書に記載されるフレームの実施形態のいずれかと、フレーム内部に少なくとも部分的に配された弁尖構造体と、を備える。
【0018】
別の代表的な実施形態では、人工心臓弁のためのフレームは、環状主要本体を形成するように配置された複数の支柱部材を備える。フレームの主要本体は、折り畳まれた構成へと半径方向に折り畳み可能であり、かつ拡張した構成へと半径方向に拡張可能であり、流入端部および流出端部を有し、長手方向軸を画定する。フレームの支柱部材は、主要本体の流入端部に位置するそれぞれの流入端部分と、主要本体の流出端部に位置するそれぞれの流出端部分と、流入端部分と流出端部分との間のそれぞれの中心部分と、を有する。フレームが拡張した構成にあるとき、支柱部材の中心部分は、支柱部材の流入端部分から、また流出端部分から長手方向軸に対して半径方向内側にオフセットされ、それによって、フレームの主要本体は砂時計型の外形を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、フレームの主要本体が折り畳まれた構成にあるとき、支柱部材の中心部分は、支柱部材のそれぞれの流入端部分および流出端部分からフレームの長手方向軸に対して半径方向外側にオフセットされ、それによって、フレームの主要本体は樽型の外形を有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、フレームは、フレームの主要本体の外部に配され、支柱部材に連結された、複数の弁尖クランプをさらに備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプは、フレームの主要本体の折り畳まれた構成に対応する開位置と、フレームの主要本体の拡張した構成に対応する閉位置との間で動くことができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプはそれぞれ、フレームの主要本体の支柱部材に旋回可能に連結された一対の支柱部材を備える。
【0023】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプの支柱部材はそれぞれ、第1の端部分および第2の端部分を備え、弁尖クランプが開位置にあるとき、弁尖クランプの支柱部材の第2の端部分は、フレームの主要本体から半径方向外側に離間する。
【0024】
いくつかの実施形態では、各弁尖クランプの支柱部材の第2の端部分は互いに連結され、それによって、弁尖クランプは、フレームが拡張した構成にあるとき、V字型である。
【0025】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプは、フレームが拡張した構成にあるとき、曲げられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、フレームの主要本体の支柱部材は、複数のピボットジョイントによって互いに連結される。
【0027】
別の代表的な実施形態では、人工心臓弁を植え込む方法は、送達器具を用いて、折り畳まれた構成にある人工心臓弁を自己心臓弁まで前進させるステップを含む。人工心臓弁は、複数のピボットジョイントによって互いに連結され、環状主要本体を有するフレームを形成するように配置された、複数の支柱部材を備える。フレームの主要本体は、折り畳まれた構成へと半径方向に折り畳み可能であり、かつ拡張した構成へと半径方向に拡張可能であり、フレームの主要本体の外部に配され、支柱部材に連結された、複数の弁尖クランプを含む。弁尖クランプは、フレームの主要本体の折り畳まれた構成に対応する開位置と、フレームの主要本体の拡張した構成に対応する閉位置との間で動くことができる。この方法は、自己心臓弁の弁尖がそれぞれの弁尖クランプとフレームの主要本体との間に位置するように人工心臓弁を位置付けるステップと、弁尖クランプが開位置から閉位置に動いて、弁尖を人工心臓弁に対してクランプするように、人工心臓弁を折り畳まれた構成から拡張した構成へと半径方向に拡張させるステップと、をさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、弁尖クランプは、フレームの主要本体の流出端部に連結された第1の端部分と、第2の自由端部分と、を備え、人工心臓弁を半径方向に拡張させるステップは、フレームの主要本体の流出端部がフレームの主要本体の中心部分の半径方向外側に動き、かつ弁尖クランプの第2の自由端部分がフレームの主要本体に隣接して動くように、支柱部材の自然な直径を超えてフレームの主要本体を拡張させるステップをさらに含む。
【0029】
開示されたテクノロジーの前述した目的、特徴、および利点ならびに他の目的、特徴、および利点は、添付図面を参照して進める、以下の詳細な説明から、さらに明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】複数の弁尖クランプを有する機械的に拡張可能なフレームを含む人工心臓弁の代表的な実施形態を示す斜視図である。
図2図1の人工心臓弁のフレームの側面図である。
図3】支柱部材の代表的な実施形態の斜視図である。
図4A】ピボットジョイントの代表的な実施形態の斜視図である。
図4B図4Aのピボットジョイントの平面図である。
図5】半径方向に折り畳まれた構成にある図2のフレームの側面図である。
図6】支柱部材が支柱部材の自然な直径にて人工心臓弁の形で配置されている、図2のフレームの1組の支柱部材の側面図である。
図7図6の支柱部材の平面図である。
図8図2のフレームが支柱部材の自然な直径より小さい直径まで半径方向に折り畳まれたときの図6の支柱部材の位置を示す側面図である。
図9図2のフレームが支柱部材の自然な直径より大きい直径まで半径方向に拡張されたときの図6の支柱部材の位置を示す側面図である。
図10】自己大動脈弁内で折り畳まれた構成にあり、開放構成にある弁尖クランプを含む、図6の支柱部材を示す側面図である。
図11】弁尖クランプが閉鎖構成にあり、大動脈弁の自己弁尖に係合するように、拡張した構成にある図6の支柱部材を示す側面図である。
図12】送達器具の代表的な実施形態の斜視図である。
図13】内側支柱部材、外側支柱部材、および弁尖クランプを含み、フレームの自然な直径にある、フレームの別の実施形態の側面図である。
図14】弁尖クランプが開位置にある状態で、折り畳まれた構成にある図13のフレームの側面図である。
図15】弁尖クランプが閉位置にある状態で、拡張した構成にある図13のフレームの側面図である。
図16】弁尖クランプが閉位置にあり、フレームの外側外形の湾曲に対応するように湾曲した状態で、拡張した構成にある、図13のフレームの側面図である。
図17】弁尖クランプ上に配された覆いを示す、図13のフレームの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、植え込み可能な人工装置、特に、植え込み可能な人工弁、および、そのような装置を植え込む方法の実施形態に関する。特定の実施形態では、人工装置は、人工心臓弁を含み、自己心臓弁(大動脈弁、僧帽弁、肺動脈弁、および三尖弁)のうちのいずれかに植え込まれるように構成され得る。さらに、人工心臓弁は、例えば、経カテーテル心臓弁、外科用心臓弁、または最小侵襲性心臓弁とすることもできる。人工弁はまた、心臓の外側の他の身体内腔内に植え込み可能な他のタイプの弁、または、経心房もしくは経心室隔壁弁(trans-atrial or trans-ventricle septum valves)など、自己弁以外の場所で心臓内に植え込み可能な心臓弁を含み得る。
【0032】
開示される人工心臓弁は、自己大動脈弁への植え込みに特に適している。人工大動脈弁の文脈では、用語「下方」および「上方」は、便宜上、用語「流入」および「流出」それぞれと互換的に使用される。よって、例えば、図面で示す向きにおいて、人工弁の下方端部は、その流入端部であり、人工弁の上方端部は、その流出端部である。しかしながら、人工弁は逆の向きで植え込まれ得ることを理解されたい。例えば、僧帽弁の位置での植え込みでは、人工弁の上方端部は流入端部であり、弁の下方端部は、流出端部である。
【0033】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される人工弁は、自己心臓弁の弁尖を人工心臓弁に対してクランプするために弁尖クランプとして構成されたドッキング機構を含み得る。ある構成では、弁尖クランプは、人工弁の半径方向に折り畳まれた構成に対応する開放構成と、人工弁の半径方向に拡張した構成に対応する閉鎖構成との間で可動とすることができる。いくつかの実施形態では、人工弁のフレームの直径は、フレームの長手方向軸に沿ってさまざまであってよい。フレームのさまざまな部品の直径も、折り畳まれた構成と拡張した構成との間でさまざまであってよい。例えば、ある構成では、フレームの流入端部および流出端部は、フレームが折り畳まれた構成にあるとき、フレームの中心部分の半径方向内側に配され得、それによって、フレームは凸状または樽型の外形を有する。逆に、フレームが拡張した構成にあるとき、フレームの中心部分は、フレームの流入端部および流出端部の半径方向内側に配され得、それによって、フレームは、凹状または砂時計型の外側外形を示す。弁尖クランプがフレームに連結されると、フレームの中心部分に対するフレームの流入端部および流出端部のこの半径方向の動きは、弁尖受容空間が弁尖クランプとフレームとの間に画定される、開位置と、弁尖クランプがフレームに接してまたはこれに隣接して配される、閉位置と、の間で弁尖クランプを作動させるのに使用され得る。
【0034】
例えば、図1は、人工心臓弁10の代表的な実施形態を示す。人工弁10は、環状主要本体13を有する、機械的に拡張可能なステントまたはフレーム12と、フレーム12内部に位置し、これに連結された弁尖構造体14と、を含み得る。フレーム12は、流入端部16および流出端部18を含み得る。弁尖構造体は、複数の弁尖20、例えば大動脈弁と同様に三尖弁の構造で折り畳まれるように配置された3つの弁尖を備え得る。代わりに、人工弁は、特定の適用に応じて、僧帽弁と同様に二尖弁の構造で折り畳まれるように構成された2つの弁尖20、または3つを超える弁尖を含み得る。人工弁10は、いったん植え込まれると人工弁を周辺組織に対して封止するのを助けるために1つまたは複数の封止部材を含むこともできる。封止部材は、例えば、適切な布(例えば、PET)または自然組織(例えば、心膜組織)から形成された環状スカートの形態をとることができる。人工弁は、フレーム12の内側表面および/またはフレーム12の外側表面上に環状スカートを含み得る。
【0035】
フレーム12は、格子型パターンで配置され、人工弁の主要本体13の流入端部16および流出端部18に複数の頂点24を形成する、複数の相互接続された支柱部材22(「第1の支柱部材」とも呼ばれる)を含み得る。例示された構成では、フレーム12は、第1の組の支柱部材22Aと、第2の組の支柱部材22Bと、を含む。第1の組の支柱部材22Aは、第2の組の支柱部材22Bの半径方向内側に位置し、それによって、支柱部材22Bは、フレームの外側にくる。例示された実施例では、支柱部材22Aは、第1の方向に傾斜していてよく、フレーム12の長手方向軸78の周りで螺旋状に延びることができ、支柱部材22Bは、支柱部材22Aとは反対の方向に傾斜していてよく、長手方向軸78の周りで支柱部材22Aの螺旋度とは反対の方向に螺旋状に延びることができる。
【0036】
図2は、例示目的で弁構造がない人工弁10のフレーム12の代表的な実施形態を示し、図3は、支柱部材22の代表的な実施形態をさらに詳細に示す。図3を参照すると、支柱部材22は、支柱部材の長さに沿って離間した複数の開口部28を画定し得る。例えば、例示された実施形態では、支柱部材22Aおよび22Bは、第1の組の支柱部材22Aが第2の組の支柱部材22Bに重なる、それらの長さに沿った位置において、開口部28を画定し得る。支柱部材22は、それらのそれぞれの端部分において画定された開口部28を含むこともでき、それによって、それぞれの支柱部材22Aおよび22Bは、互いに連結されて、フレームの流入端部および流出端部において頂点24を形成し得る。
【0037】
図3に示すように、各支柱部材22は、複数のオフセットした線形部分またはセグメント38によって画定された、オフセットまたはジグザグパターンを有し得る。例示された実施形態における線形セグメント38は、互いに対して端と端をつないで配置され、隣接する端部は、中間セグメント40によって互いに相互接続される。支柱22は、フレームの流入端部における、拡大された第1の端部分41と、フレームの流出端部における第2の端部分42と、を有し得る。よって、第1の端部分41および第2の端部分42は、フレームの流入端部および流出端部において頂点24を形成し得る。支柱部材22はまた、第1の端部分41と第2の端部分42との間の中ほどに位置する中心部分76を含み得る。
【0038】
各線形セグメント38は、支柱22の全長に対して垂直な方向に、隣接する線形セグメント38からわずかに横方向にオフセットして、ジグザグパターンを支柱に提供し得る。中間セグメント40ならびに端部分41および42のそれぞれは、ファスナ30(図4B)を受容するためにその幾何学的中心にそれぞれの開口部28を有し得る。支柱22の長さに沿った、隣接する線形セグメントに対する各線形セグメント38のオフセットの量は、軸44が、支柱の全長に沿って各中間セグメント40の開口部28を通過し得るように、一定とすることができる。代替的な実施形態では、2つの隣接する線形セグメント38の間のオフセットの量は、支柱の長さに沿ってさまざまであってよい。例えば、フレームの流出端部に隣接する線形セグメント38間のオフセットの量は、フレームの流入端部に隣接する線形セグメント38間のオフセットの量より大きくてよく、またはこの逆であってもよい。
【0039】
線形セグメント38は、中間セグメント40の湾曲したまたは曲線的なエッジ48間に延びる少なくとも実質的に平坦または線形の対向する長手方向エッジ46a、46bを含み得る。代替的な実施形態では、中間セグメント40の対向するエッジ48は、線形セグメント38のエッジ46a、46bのそれぞれの端部間で角度をなして延びる、実質的に平坦または線形のエッジとすることができる。
【0040】
図3で最もよく示されるように、各線形セグメント38の幅W1は、セグメント38の対向するエッジ46aおよび46b間で測定される距離として定められる。例示された実施形態では、幅W1は、支柱22の長さに沿って一定である。したがって、各長手方向エッジ46aは、隣接する線形セグメント38の隣接する長手方向エッジ46aから横方向にオフセットされ、各長手方向エッジ46bは、隣接する線形セグメント38の隣接する長手方向エッジ46bから横方向にオフセットされる。各中間セグメント40および端部分41、42の幅W2は、線形セグメント38の幅W1より大きくてよい。
【0041】
代替的な実施形態では、各線形セグメント38の幅W1は、支柱の長さに沿ってさまざまであってよい。例えば、フレームの流入端部に隣接する線形セグメント38の幅W1は、フレームの流出端部に隣接する線形セグメント38の幅W1より大きくてよく、またはこの逆であってもよい。さらに、線形セグメント38の幅W1が支柱22の長さに沿ってさまざまである場合、線形セグメントは、支柱の同じ側における隣接する線形セグメントの長手方向エッジと同一直線上にある一方の長手方向エッジ46aまたは46bを有し得、他方の長手方向エッジ46a、46bは、支柱の同じ側における隣接する線形支柱の長手方向エッジから横方向にオフセットされる。言い換えれば、支柱22は、線形セグメントのさまざまな幅W1により、全体的にジグザグまたはオフセットパターンを有し得る。
【0042】
代替的な実施形態では、支柱22は、互いからオフセットしていない線形セグメント38を有し得、すなわち、支柱は、実質的に矩形であり、各支柱の長手方向側面は、(例えば、以下に記載する支柱68と同じように)オフセット部分なしで、支柱の一方の端部から支柱の反対側の端部まで連続して延びる。
【0043】
図1および図2に戻ると、第1の組の支柱部材のうちの支柱部材22Aは、ヒンジまたはジョイント26によって第2の組の支柱部材のうちの支柱部材22Bに旋回可能に連結され得る。ある実施例では、ジョイント26は、頂点24を含め、支柱部材が重なる開口部28を通してファスナ30(例えば、リベット、ピンなど)を挿入することによって形成され得る。図4Aおよび図4Bは、代表的なジョイント26をさらに詳細に示す。図4Aを参照すると、スペーサ32、例えばワッシャまたはブシュが、ジョイント内で、それぞれの支柱部材22Aおよび22B間に配され得る。スペーサ32は、支柱部材22Aおよび22Bが互いに対して動いてフレームを拡張させかつ/または折り畳むのを助けることができる。スペーサ32はまた、支柱部材22A、22Bを互いから離間させるように作用し得る。他の実施形態では、ジョイント26は、スペーサ32を含む必要はなく、かつ/または、支柱部材22は、別の方法で離間され得る。
【0044】
図4Bを参照すると、特定の実施形態では、ファスナ30は、支柱部材の開口部28から半径方向外側に延びておらず、開口部内に完全に収容され得る。例えば、半径方向に最も外側の支柱22B上の開口部28はそれぞれ、それぞれのファスナ30(例えば、リベット)のヘッド部分36を受容するようにサイズ決めされた、カウンターボアまたは拡大された陥凹部分34を含み得る。ヘッド部分36は、カウンターボア34内部に完全に受容され得、カウンターボアから半径方向外側に延びない。例えば、ヘッド部分36は、支柱22Bの外側表面と同じ高さとすることもできる。このように、ファスナ30は、人工弁の全体的なクリンプ外形を増大させるか、またはこれに寄与することはなく、また、弁が送達中に配され得る送達シースを妨げるか、またはこれに過度の応力を加えることがない。
【0045】
ジョイント26は、人工弁10の組み立て、準備、または植え込みの間などに、フレーム12が拡張または収縮される際に、支柱部材22Aが支柱部材22Bに対して旋回することを可能にし得る。例えば、フレーム12(よって人工弁10)は、半径方向に圧縮または収縮された構成(図5を参照)へと操作されて、植え込みのため患者に挿入され得る。いったん身体の内側にくると、人工弁10は、以下でさらに説明するように、拡張した状態(図1)へと操作され、その後、送達器具から解放され得る。
【0046】
フレーム12は、柔らかい構成要素(例えば、弁尖20、および人工弁の一部を形成する任意のスカート、縫合糸など)を、人工弁のクリンピングおよび拡張中にフレームによって挟まれるかまたは切断されることから保護するように構成され得る。例えば、図5は、半径方向に折り畳まれた構成にある、図1のフレーム12を示す。支柱セグメント38のオフセットまたはジグザグパターンは、フレーム12が半径方向に圧縮された状態にあるときに支柱22を周方向に離間させるのを助けることができる。図示のように、支柱22間にオープンセル50を画定するフレーム12の開放格子構造は、フレーム12が完全に圧縮または収縮されても、維持され得る。例えば、図5を参照すると、フレーム12の長さに沿ったセル50の幅は、隣接する支柱間でさまざまであってよいが、ギャップ52が、2つの隣接するピボットジョイント26間のセル50の中央に残る。ギャップ52を含む、支柱22の離間した性質は、フレーム12が拡張または収縮する際に人工弁の柔らかい構成要素を保護するのを助けることができる。支柱22のオフセット構成により作り出されるギャップ52は、弁尖20、弁周囲漏出スカート(不図示)などのスカート、および/または縫合糸を、人工弁が半径方向に圧縮された際に隣接する支柱22間で挟まれるか、または剪断されることから保護することができる。このように、人工弁の柔らかい構成要素は、フレームの金属支柱との接触により生じ得る損傷から保護される。
【0047】
図1に戻ると、フレーム12は、複数の柱部材54を備え得る。例示された構成では、柱部材54は、アクチュエータ構成要素として構成され、これは、フレームを半径方向に拡張および収縮させ、かつフレームを所望の拡張した状態に維持するように構成された、解放およびロックユニット(ロック組立体または拡張ユニットとも呼ばれる)としても機能し得る。例示された構成では、フレーム12は、周方向に離間した場所でフレーム12に連結された3つのアクチュエータ構成要素54を備え得るが、フレームは、特定の適用に応じて、より多いか、またはより少ないアクチュエータ構成要素を含み得る。アクチュエータ構成要素54はそれぞれ、概して、内側管状部材などの内側部材56と、内側部材56の周りに同心円状に配された外側管状部材などの外側部材58と、を備え得る。内側部材56および外側部材58は、特許文献3でさらに説明されるように、フレーム12を半径方向に拡張および収縮させるために、入れ子式に互いに対して長手方向に可動とすることができる。
【0048】
例示された構成では、内側部材56は、(例えば、ピン部材などの連結要素により)フレーム12の流入端部16に連結された遠位端部分60を有し得る。例示された実施形態では、内側部材56はそれぞれ、フレームの流入端部16におけるそれぞれの頂点24においてフレームに連結される。外側部材58は、特定の適用に応じて、例えば、図1に示すように外側部材の中央部分が、または外側部材の近位端部分が、フレーム12の流出端部18における頂点24に連結され得る。
【0049】
内側部材56および外側部材58は、(人工弁の完全に半径方向に拡張した状態に対応する)完全に収縮した状態と、(人工弁の完全に半径方向に圧縮された状態に対応する)完全に伸長した状態との間で、互いに対して入れ子式に嵌まり込み得る。完全に伸長した状態では、内側部材56は、外側部材58から完全に伸長される。このように、アクチュエータ構成要素54は、人工弁が、患者の身体の内側で種々の直径まで完全に拡張されるか、または部分的に拡張されることを可能にし、人工弁を部分的にまたは完全に拡張した状態に維持する。内側部材56および外側部材58は、それぞれのロック要素を有し、これらは、特許文献3にさらに開示されるように、フレームが所望の拡張直径まで拡張され、ロック要素がユーザによって作動されると、互いに係合し、フレームの半径方向圧縮を防ぐように構成される。
【0050】
人工弁10は、弁の半径方向の拡張を制御し、かつ/もしくは弁を拡張した状態に維持するための、さまざまな他のタイプのアクチュエータおよび/またはロック装置を含み得る。いくつかの実施形態では、例えば、アクチュエータ構成要素54は、アクチュエータの構成要素のうちの1つの回転によってフレーム12を半径方向に拡張し折り畳むように構成された、ねじアクチュエータとすることができる。例えば、内側部材56は、対応する外側構成要素の雌ねじに係合する雄ねじを有するねじとして構成され得る。いくつかの実施形態では、ねじアクチュエータ内部でのねじの内部摩擦または抵抗は、フレームを所望の拡張した状態に維持するのに十分となり得る。人工弁に組み込まれ得るねじアクチュエータならびにさまざまな他のタイプのアクチュエータおよびロック装置に関するさらなる詳細は、特許文献3;2018年8月20日出願の特許文献4;および特許文献5に開示されている。
【0051】
さらに図1を参照すると、人工弁10は、交連クラスプまたはクランプ62として構成された複数の交連支持要素を含み得る。弁尖の隣接する側部分は、対をなして配置され、弁尖の複数の交連64を形成する。例示された構成では、人工弁は、各交連64に位置付けられ、フレーム12の半径方向内側に離間した場所で交連の隣接する弁尖20の2つの隣接する側部分を握るように構成された、交連クランプ62を含む。
【0052】
図1を参照すると、人工弁10は、弁尖クランプ66として構成された複数のドッキング機構または保持機構を含み得る。例示された実施形態では、弁尖クランプ66は、フレーム12の主要本体13の半径方向外側面上に配され、人工心臓弁が配備後に弁輪に保持されるように、人工弁10が植え込まれる心臓弁の自己弁尖をクランプするか、握るか、またはつかむように構成され得る。ある実施形態では、各弁尖クランプ66は、(例えば、流出端部18において)主要本体13に連結された第1の端部分90と、第2の端部分92と、を含み得る。いくつかの実施形態では、第2の端部分92は、自由端部分とすることができ、これは、主要本体13に直接接続されておらず、フレームが拡張および/または収縮する際にフレームの主要本体に対して可動(例えば、半径方向内側および外側に可動)とすることができる。
【0053】
例示された実施形態では、人工弁10は3つのクランプ66を含むが、より多いかまたはより少ない数を使用することができる。クランプ66は、必須ではないが、望ましくは、フレームの主要本体の周辺部の周りで角度を付けて等間隔である。3つの弁尖を有する自己弁(例えば、大動脈弁)に植え込まれることが意図されている場合、人工弁10は、3つのクランプ66を有し得、各クランプは、自己弁尖のうちの1つをクランプするように位置付けられる。2つの弁尖を有する自己弁(例えば、僧帽弁)に植え込まれることが意図されている場合、人工弁10は2つのクランプ66を有し得、各クランプは、自己弁尖のうちの1つをクランプするように位置付けられる。他の実施形態では、人工弁10は、人工弁10が植え込まれる自己弁の自己弁尖の数と等しくない数のクランプ66を有し得、かつ/または、人工弁10は、単一の自己弁尖上にクランプするように位置付けられた1つより多いクランプを有し得る。
【0054】
例示された実施形態では、各弁尖クランプ66は、(「第2の支柱部材」とも呼ばれる)一対の支柱部材68を備え得る。支柱部材68は、それぞれの第1の端部分70、中心部分72、および第2の端部分74を含み得る。第1の端部分70は、フレーム12の主要本体13に連結され得る。さらに具体的には、ある実施形態では、支柱部材68の第1の端部分70は、フレームの流出端部18において(例えば、ピボットジョイント26により)隣接する頂点24に旋回可能に連結され得る。各クランプ66の支柱部材68の第2の端部分74は、ピボットジョイント94によって互いに旋回可能に連結され得る。このように、弁尖クランプ66は、フレーム12の拡張した構成および折り畳まれた構成に対応する、拡張した構成(図1)と、(図5に破線で示される)折り畳まれた構成との間で可動とすることができる。
【0055】
例えば、人工弁10が拡張した構成にあるとき、弁尖クランプ66も拡張した構成にあり、支柱部材68の第1の端部分70は、フレーム12の周りで互いから周方向に離間され、それによって、支柱部材68はV字型を形成する。例示された実施形態では、Vの開口部は、フレームの流出端部の方に向けられる。人工弁10が折り畳まれた構成に動かされると、弁尖クランプ66も、折り畳まれた構成へと動き得る。例えば、支柱部材68の第1の端部分70は、ピボットジョイント26を中心に旋回することができ、それによって、第1の端部分70は、フレーム12が図5に示す構成へと半径方向に折り畳まれると、互いに近づく。弁尖クランプ66の支柱部材68はまた、図5に破線で示すように、弁尖クランプが折り畳まれた構成にあるときに、V字型を形成することができるが、支柱部材の第1の端部分70は、拡張した構成にあるときよりも互いに近くに位置する。
【0056】
ある実施形態では、フレーム12の主要本体13は、折り畳まれた構成にあるときに樽型の外形を有し、拡張した構成にあるときに砂時計型の外形を有するように、構成され得る。本明細書で使用される場合、用語「樽型の外形」は、フレーム12の主要本体13の中心部分80がフレーム12の主要本体の長手方向軸78に対して流入端部16および流出端部18から半径方向外側にオフセットし、それによって、主要本体の中心部分の直径が、主要本体の流入端部および流出端部の直径より大きくなることを意味する。本明細書で使用される場合、用語「砂時計型の外形」は、主要本体13の中心部分80が長手方向軸78に対してフレームの流入端部16から、また流出端部18から半径方向内側にオフセットし、それによって、主要本体の中心部分の直径が主要本体の流入端部および流出端部の直径より小さくなることを意味する。
【0057】
例えば、図6および図7は、支柱が、7つの丸みを帯びたセグメント40(端部分41および42を含む)、ならびに対応する開口部28を備える、フレーム12の別の実施形態の一組の支柱部材22(例えば、外側支柱部材22B)を示す。フレーム12は、例示目的で、弁尖クランプ66なしで示されている。ある実施形態では、支柱部材22は、チューブから切断(例えば、レーザー切断)され得、それによって、支柱部材は、湾曲し、支柱が切断されたチューブの半径に対応する半径を有する。よって、主要本体13は、支柱部材22が切断されたチューブの直径に対応する「自然な」直径Dを有する。他の実施形態では、支柱部材22は、シート原料から切断され、所望の湾曲まで曲げられ得る。ある実施形態では、弁尖クランプ66の支柱部材68も、1つまたは複数のチューブから切断され得、それによって、支柱部材は、支柱が切断されたチューブの自然な直径まで湾曲される。支柱部材68の自然な直径は、特定の構成に応じて、支柱部材22の自然な直径Dより大きいか、これと同じであるか、またはこれより小さくすることができる。
【0058】
人工弁10が、フレームの主要本体の自然な直径Dより小さい、半径方向に折り畳まれた構成へとクリンプされると、支柱部材22の中心部分76は、半径方向外側に曲がりがちになり得、それによって、フレーム12の主要本体13は、図8に示すように樽型の外形を有する。さらに具体的には、主要本体13の直径が縮小されると、第1の端部分41および第2の端部分42は、支柱部材22の中心部分76の半径方向内側に位置付けられ得、それによって、第1の端部分41および第2の端部分42は、支柱部材の中心部分76よりもフレームの長手方向軸78に近接して位置する。このように、主要本体13の流入端部16の直径D、および主要本体の流出端部18の直径Dは、主要本体の中心部分80の直径Dより小さくなることができる。言い換えれば、支柱部材22の第1の端部分41および第2の端部分42は、中心部分76の半径方向内側に位置することができ、それによって、支柱部材の凹状側は、フレーム12の主要本体の直径がその自然な直径D未満まで縮小されると、軸78の方に向けられる。支柱部材の凸状側は、フレーム12の主要本体の直径がその自然な直径D未満まで縮小されると、軸78から離れる方に向けられ得る。
【0059】
逆に、人工弁10が拡張した構成へと拡張されると、主要本体13は、その自然な直径Dを超えて拡張され得、それによって、フレームは、図9に示すように砂時計型の外形を有する。図9を参照すると、支柱部材22の第1の端部分41および第2の端部分42は、支柱部材22の中心部分76の半径方向外側に位置付けられ得、それによって、第1の端部分41および第2の端部分42は、支柱部材の中心部分76よりフレームの長手方向軸78からさらに離れて位置する。このように、主要本体13の流入端部16の直径D、および主要本体の流出端部18の直径Dは、主要本体の中心部分80の直径Dより小さくすることができる。言い換えれば、主要本体13の直径がその自然な直径Dを超えて拡張されると、支柱部材22の凹状側は依然として軸78の方に向けられているが、支柱部材22の第1の端部分41および第2の端部分42は、中心部分76の半径方向外側に位置し得る。
【0060】
内側の組の支柱部材22Aおよび外側の組の支柱部材22Bの両方を含む、完全に組み立てられたフレーム12は、折り畳まれた構成および拡張した構成にあるときに前述したような形状を示し得るが、達成される樽型の外形および砂時計型の外形の程度は、ジョイント26により課される制約、ならびに内側の組の支柱部材22Aおよび外側の組の支柱部材22Bの逆の螺旋性により、さまざまであってよい。代表的な一実施例では、フレームの主要本体の自然な直径Dは、13mm~16mmとすることができる。よって、フレームが折り畳まれた構成へとクリンプされると、主要本体13の中心部分80の直径Dは6mmとすることができる。機能的なサイズまで拡張されると、主要本体13は、その自然な直径を超えて拡張されて、砂時計形状を達成し得る。前述した実施例では、主要本体13の中心部分80の直径Dは、その機能的なサイズを24mm~26mmとすることができる。図8および図9に示されるように、(例えば、軸78の方向における)フレーム12の長さ寸法も、フレームが拡張するにつれて短くなり得る。
【0061】
中心部分80に対するフレーム12の主要本体の流入端部16および流出端部18の半径方向位置の変動は、弁尖クランプ66を開位置と閉位置との間で動かすか、または作動させるのに利用され得る。例えば、図10は、自己心臓弁86内で部分的に半径方向に折り畳まれた構成にあるフレーム12を示し、フレームの主要本体が樽型の外形を有する。前述した図6図9で見られるように、ただ1組の支柱部材22(例えば、外側支柱部材22B)が、例示を容易にするために示されているが、実際には、フレームは、図1に示す内側支柱部材および外側支柱部材の両方を含み得る。図10に示す位置では、弁尖クランプ66の支柱部材68の第1の端部分70が主要本体13の流出端部18に連結されるので、支柱部材68の第2の端部分74は、第1の端部分70の半径方向外側に位置し得る。このように、弁尖クランプ66は、支柱部材68とフレーム12の主要本体13との間にそれぞれの弁尖受容領域82を画定し得る。弁尖受容領域82は、植え込み中に自己心臓弁86の弁尖88を受容するように構成され得る。支柱部材68はまた、曲げられるか、または湾曲され得、それによって、弁尖クランプ66の凹状側は、中心軸78に向かって半径方向内側に向けられ、弁尖クランプの凸状側は、中心軸から離れて半径方向外側に向けられる。
【0062】
逆に、人工弁10がその機能的なサイズまで拡張されると、フレーム12の主要本体13は、図11に示す砂時計型の外形をとり得る。前述したように、フレーム12が拡張するにつれて、支柱部材22は、曲がるか、または湾曲し得、それによって、支柱部材22の第1の端部分41および第2の端部分42(図9)は、中心部分76の半径方向外側に位置付けられる。これにより、弁尖クランプ66は(例えば、旋回によって)閉位置に動かされ得、閉位置では、支柱部材68の第1の端部分70は、第2の端部分74と実質的に同じ、軸78からの半径方向距離のところに、または第2の端部分74の半径方向外側に、位置する。閉位置では、第2の端部分74は、フレーム12の主要本体13に隣接するか、またはこれに接触していてよい。このように、弁尖クランプ66は、心臓弁86の自己弁尖88を、フレーム12の外側支柱部材22Bおよびクランプ66の内側表面に対してクランプするか、握るか、またはつかむことができる。
【0063】
図11に示すように、クランプが閉位置にある、フレームの半径方向に拡張した構成では、クランプの支柱部材68は、フレームの主要本体の形状に一致するようにわずかに曲げられ得、それによって、第1の端部分70および第2の端部分74は、支柱部材68の中心部分の半径方向外側に位置する。別の言い方をすれば、支柱部材68のくぼみは、図10に示す開位置と比べて逆にされてよく、それによって、弁尖クランプ66の凹状側は、中心軸78から離れる方に向けられ、クランプの凸状側は、主要本体および中心軸に向かって半径方向内側に向けられる。
【0064】
支柱部材22および/または支柱部材68は、さまざまな生体適合性材料のうちの任意のものから作られ得る。例えば、ある実施形態では、支柱部材22および/または支柱部材68は、ニッケルチタン合金、例えばニチノール、またはステンレス鋼などを含む、さまざまな金属合金のうちの任意のものから作られ得る。
【0065】
開示される人工弁の実施形態は、さまざまな送達システムのうちの任意のものを使用して、半径方向に折り畳まれ、経皮的に心臓まで送達され得る。例えば、図12は、図1図11の人工弁10と共に使用されるように構成され、特許文献3に詳細に説明された、送達組立体100の代表的な実施例を示す。送達組立体100は、ハンドル102と、ハンドル102から遠位に延びる細長いシャフト104と、シャフトを通って、シャフト104の遠位端部108から遠位方向外側に延びる(例えば、位置付けチューブの形態の)複数の第1の作動部材106と、を含み得る。第1の作動部材106は、弁フレーム12のそれぞれの拡張ユニット54に連結され得る。
【0066】
送達組立体100は、第1の作動部材を通って同軸に延び、それぞれの内側部材56に接続された、第2の作動部材(不図示)を含み得る。人工弁の半径方向の拡張を生じさせるためには、第1の作動部材106は、遠位に向けられた力をフレーム12に加えるように作動され、かつ/または第2の作動部材は、近位に向けられた力を内側部材56に加えるように作動される。人工弁の半径方向の圧縮を生じさせるためには、第1の作動部材106は、近位に向けられた力をフレーム12に加えるように作動され、かつ/または、第2の作動部材は、遠位に向けられた力を内側部材56に加えるように作動される。
【0067】
最初は、人工弁10は、シャフト104のシース110内部で、半径方向に折り畳まれた構成にあることができる。シース110は、人工弁の送達中、クランプ66をフレーム12の外側表面に接して保持する。送達器具の遠位端部が患者の脈管構造を通して(例えば、上行大動脈における)治療部位まで前進されると、人工弁10は、例えばハンドル102上の回転可能なアクチュエータ112を使用することによって、シース110から前進され得る。クランプは、望ましくは、人工弁がシースから配備されると、クランプ66がフレーム12から離れて、図10に示すそれらの開位置へと自動的に自己拡張し得るように、十分な弾性を有する。人工弁10は、その後、治療部位に位置付けられ、拡張され、概して114で示される解放組立体を使用して配備され得る。例えば、図10および図11に戻ると、人工弁10は、送達組立体100を使用して、自己心臓弁86(例えば、大動脈弁)の弁輪84内に位置付けられ得る。自己弁尖88が弁尖受容領域82内に適切に位置付けられたと外科医が判断したら、人工弁10は、送達組立体100を使用して拡張され得、それによって、弁尖クランプ66は、図10に示す開位置から、図11に示す閉位置に動いて、弁尖88をフレーム12に対してクランプする。
【0068】
代替的な実施形態では、弁尖クランプ66は、互いに連結された2つの支柱部材68の代わりに単一の部材を備え得る。例えば、ある実施形態では、弁尖クランプ66は、弁尖クランプ66と同様にU字型またはV字型になるように湾曲した、単一の支柱部材を備え得る。このような支柱部材は、例えば、さまざまな形状記憶合金のうちの任意のものから作られ得、それによって、支柱部材は、クリンプされ得、またフレームの拡張時にその機能的な形状へと跳ね返ることができる。さらなる構成では、弁尖クランプ66は、フレーム12と共に開位置と閉位置との間で動くように構成された、支柱部材68と同様の単一のまっすぐな支柱部材を備え得る。ある実施形態では、弁尖クランプ66はまた、さまざまな非外傷性の覆いのうちの任意のもの、例えば織布または不織布、さまざまな電界紡糸コーティングのうちの任意のものなど、例えば図17を参照して以下に記載するもの、を含み得る。
【0069】
本明細書に記載される弁尖クランプの実施形態は、既知の人工弁ドッキング機構と比べて、有意な利点を提供し得る。例えば、弁尖クランプがフレームの一部であるため、別個のドッキング部材および関連する送達器具が必要ない。さらに、弁尖クランプが、収縮した構成と拡張した構成との間でのフレームの動きによって、開位置と閉位置との間で作動されるので、外科医が人工弁の配置に満足するまで、弁尖クランプは容易に再開放され得、人工弁は再位置付けされ得る。機械的に拡張可能なフレームの関連する利点は、フレームをその機能的なサイズまで拡張させるのにバルーンが必要なく、よって、弁の拡張中に血流の閉塞がないことである。また、弁尖クランプが、自己拡張ではなく、人工弁の動きによって作動されるので、弁尖クランプは、超弾性または形状記憶材料から作られる必要がない。代わりに、クランプを形成する支柱部材は、比較的強いおよび/または堅い材料、例えばステンレス鋼もしくはコバルトクロム合金から作られ得る。使用中、クランプの支柱部材は、フレームが半径方向に拡張され、また折り畳まれてクランプをそれらの開位置と閉位置との間で動かすと、それらの弾性範囲内で変形する。
【0070】
さらに、例示された構成は、大動脈弁への植え込みに適合されているが、フレームおよび弁尖クランプは、僧帽弁および/または三尖弁に植え込まれるように構成されてもよい。例えば、支柱部材68の第1の端部分70がフレームの下方端部16(例えば、僧帽弁の位置に植え込まれる場合はフレームの流出端部)における頂点24に連結されるように、弁尖クランプ66の向きを逆にすることによって、弁尖クランプは、僧帽弁および/または三尖弁で使用されるように構成され得る。
【0071】
図13図15は、内側支柱22Aおよび外側支柱22Bの両方、ならびに弁尖クランプ66を含む、さまざまな拡張状態にあるフレーム12を示す。図13は、その自然な直径Dにあるフレーム12を示す。例示目的で代表的な外側支柱部材22B(1)を参照すると、図示される構成では、支柱部材は、7つの丸みを帯びた中間セグメントまたは部分40を含み得る。中間部分40は、外側支柱部材22B(1)を内側支柱部材22Aと互いに連結する、7つの対応するヒンジまたはジョイント26A~26Gの一部とすることができる。支柱68の第1の端部分70は、フレームの流出端部18においてジョイント26Gに連結され得る。図13に示すその自然な直径では、弁尖クランプ66の支柱68は、フレームの外側支柱部材22Bと平行に位置し、かつ/またはこれに接触することができる。
【0072】
図14は、送達のために折り畳まれた構成にクリンプされたフレーム12を示す。折り畳まれた構成では、内側支柱22Aおよび外側支柱22Bの両方が、フレームの端部分において半径方向内側に湾曲し得る。例えば、支柱22Aおよび22Bは、フレームの流入端部16におけるジョイント26Bの場所の周りから、ジョイント26Aに向かって上流方向に、半径方向内側に湾曲し得る。同様に、支柱22Aおよび22Bは、ほぼジョイント26Fのところから、フレームの流出端部18におけるジョイント26Gに向かって下流方向に、それらの両端部が半径方向内側に湾曲し得る。よって、ジョイント26Aの高さにおけるフレーム12の流入端部16は、直径Dを有し得、ジョイント26Gの高さにおけるフレームの流出端部は、直径Dにほぼ等しくてよい、直径Dを有し得る。直径DおよびDはいずれも、フレームの中心部分80の直径D未満とすることができる。例えば、ある実施形態では、フレーム12は、ほぼジョイント26Bの高さからほぼジョイント26Fの高さまで直径Dを有し得、それによって、フレームは樽型の外形を有する。支柱22Aおよび22Bはジョイント26Fから半径方向内側に湾曲するので、ジョイント26Gにおいてフレームに連結された、弁尖クランプ66の支柱68は、開位置においてフレームから離れて角度を付けられ得る。
【0073】
図15は、拡張した構成まで拡張されたフレーム12を示す。フレーム12は、ジョイント26Aおよび26Gがそれらの間のジョイント26B~26Fの半径方向外側に配された、砂時計型の外形を有し得る。この構成では、フレームは、流入端部16におけるジョイント26Aにおいて直径Dを、流出端部18におけるジョイント26Gにおいて直径Dを有し得る。中心部分80は、ほぼジョイント26Cとジョイント26Dとの間に位置する最小直径Dを有し得る。支柱部材22Aおよび22Bがフレームの流入端部および流出端部において半径方向外側にねじれるか、湾曲するか、または広がるので、弁尖クランプ66の支柱68は、フレームに向かって内側に角度を付けられ得る。これにより、弁尖クランプ66は、前述したように、自己心臓弁の弁尖をフレームの外部に対してクランプすることができる。
【0074】
他の実施形態では、支柱部材22Aおよび/または22Bは、ジョイント26Bおよび26F以外の場所で半径方向内側に湾曲し得る。例えば、他の実施形態では、支柱部材22Aおよび/または22Bは、ジョイント26Cおよび26Eにおいて半径方向内側に湾曲し得る。さらに他の実施形態では、フレーム12は、流出端部18が、折り畳まれた構成では半径方向内側に、拡張した構成では半径方向外側に湾曲して、弁尖クランプを作動させ、流入端部16における支柱がほとんどもしくはまったく湾曲を示さないか、または平行のままであるように、構成され得る。
【0075】
図16は、拡張した構成にあるフレーム12の別の実施形態を示し、拡張した構成では、弁尖クランプの支柱部材68は、フレームの外側表面に沿って、流出端部18から流入端部16に向かう方向に湾曲するように構成される。さらに具体的には、支柱部材68は曲げられるか、または湾曲され得、それによって、弁尖クランプ66の凹状側は、フレームの長手方向軸から離れて半径方向に向けられ、弁尖クランプの凸状側は、外側支柱部材22Bに隣接するか、またはこれに接して配される。
【0076】
図17は、弁尖クランプ66の支柱部材68上に配された覆い71を含むフレーム12を示す。覆い71は、支柱68が受容され得る管状本体を備え得る。例示された実施形態では、覆い71は、第1の管状部分73および第2の管状部分75を備え、これらは共通の第3の管状部分77と連通し、それによって、覆いは、弁尖クランプ66のV字型に対応する。他の実施形態では、覆い71は、弁尖クランプ66の両方の支柱を受容するように構成された単一の内腔もしくは開口部を備えたライナー、または各弁尖クランプの個々の支柱68を受容するように構成された別々のライナー部材を備え得る。覆いは、織布もしくは不織布、編布を備え得、かつ/または、ポリマー層、例えばディップコーティングされたシリコーン層もしくはスリーブ、または電界紡糸延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)層を備え得る。覆いはまた、自然組織を備え得る。前述したように、覆い71は、弁尖クランプ66とフレーム12との間でクランプされた自己弁弁尖を保護するため、および/または周辺組織への損傷のリスクを減少させるために緩衝材を提供し得る。覆い71は、フレームが拡張し、折り畳まれる際に、弁尖クランプ66を開位置と閉位置との間で動かすように構成され得る。このような覆いは、フレームの支柱22に、および/または全体としてフレームの周りに適用されてもよい。本明細書に記載されるフレームと組み合わせて使用され得る、代表的なフレームの覆いは、米特許文献6、および特許文献7で見ることができる。
【0077】
用語の説明
この説明のため、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規な特徴が本明細書に記載されている。開示される方法、器具、およびシステムは、決して限定的と解釈すべきではない。代わりに、本開示は、単独で、また互いとのさまざまな組み合わせおよび部分的組み合わせにおいて、さまざまな開示される実施形態のすべての新規かつ非自明な特徴および態様に向けられている。方法、器具、およびシステムは、任意の特定の態様もしくは特徴またはそれらの組み合わせに限定されず、また、開示される実施形態は、任意の1つもしくは複数の特定の利点が存在するか、または問題が解決されることを必要としない。
【0078】
開示される実施形態のうちのいくつかの動作を、提示する便宜上具体的な順序で説明したが、以下に記載される特定の言語によって特定の順序が必要とされない限り、この記載様式は並べ替えを含むことを理解されたい。例えば、連続的に記載される動作は、場合によっては、並べ替えられるか、または同時に実行され得る。さらに、単純にするため、添付図面は、開示される方法が他の方法と共に使用され得る、さまざまな方法を示していない場合がある。さらに、説明は、開示される方法を説明するために「提供する」または「達成する」のような用語を使用する場合がある。これらの用語は、実行される実際の動作の高レベルな抽象概念である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施形態に応じて変化してよく、当業者には容易に認識できる。
【0079】
本出願および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈で別様に明白に規定されない限り、複数形を含む。さらに、用語「含む(includes)」は、「備える(comprises)」を意味する。さらに、用語「連結される(coupled)」および「関連する(associated)」は概して、電気的、電磁的、および/または物理的に(例えば、機械的もしくは化学的に)連結されるか、またはリンクされることを意味し、特に逆の言葉がなくても、連結されるか、または関連するアイテム間の中間要素の存在を排除するものではない。
【0080】
本出願の文脈では、用語「下方」および「上方」は、用語「流入」および「流出」とそれぞれ互換的に使用される。よって、例えば、弁の下方端部はその流入端部であり、弁の上方端部はその流出端部である。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「近位」は、ユーザに近く、植え込み部位から離れている、装置の位置、方向、または部分を指す。本明細書で使用される場合、用語「遠位」は、ユーザから離れていて、植え込み部位に近い、装置の位置、方向、または部分を指す。よって、例えば、装置の近位の動きは、ユーザに向かう装置の動きであり、装置の遠位の動きは、ユーザから離れる装置の動きである。用語「長手方向」および「軸方向」は、明示的に別段の定めをした場合を除き、近位方向および遠位方向に延びる軸を指す。
【0082】
別段の指示がない限り、明細書または特許請求の範囲で使用されるような、寸法、構成要素の数量、角度、分子量、パーセンテージ、温度、力、時間などを表す、すべての数字は、用語「約」によって修飾されていることが理解される。したがって、黙示的または明示的に別段の指示がない限り、記載される数値パラメータは、求められる所望の特性および/または当業者によく知られる試験条件/方法での検出限界によって左右され得る、近似値である。実施形態を、議論される先行技術から直接明示的に識別する際には、実施形態の数字は、単語「約」が記載されない限り、近似値(approximates)ではない。さらに、本明細書に列挙されるすべての代替案が等価物とは限らない。
【0083】
開示されるテクノロジーの原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、例示される実施形態は単に好適な実施例であり、開示の範囲を限定するものと理解すべきではないことを、認識されたい。むしろ、本開示の範囲は、少なくとも以下の特許請求の範囲と同じくらい広い。したがって、これらの請求項の範囲および趣旨に含まれるものすべてを、特許請求する。
【符号の説明】
【0084】
10 人工心臓弁
12 フレーム
13 環状主要本体
14 弁尖構造体
16 流入端部
18 流出端部
20 弁尖
22 支柱部材
22A 第1の組の支柱部材
22B 第2の組の支柱部材
24 頂点
26 ジョイント
26A~G ジョイント
28 開口部
30 ファスナ
32 スペーサ
34 カウンターボア
36 ヘッド部分
38 線形セグメント
40 中間セグメント
41 第1の端部分
42 第2の端部分
44 軸
46a,46b 長手方向エッジ
48 曲線的なエッジ
50 オープンセル
52 ギャップ
54 柱部材
56 内側部材
58 外側部材
62 交連クランプ
64 交連
66 弁尖クランプ
68 支柱
70 第1の端部分
71 覆い
72 中心部分
73 第1の管状部分
74 第2の端部分
75 第2の管状部分
76 中心部分
77 第3の管状部分
78 長手方向軸
80 中心部分
82 弁尖受容領域
84 弁輪
86 自己心臓弁
88 自己弁尖
90 第1の端部分
92 第2の端部分
94 ピボットジョイント
100 送達組立体
102 ハンドル
104 シャフト
106 第1の作動部材
108 遠位端部
110 シース
112 アクチュエータ
114 解放組立体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17