(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】シャッター用安全装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/08 20060101AFI20241202BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B23Q11/08 Z
E05F5/02 E
(21)【出願番号】P 2021026784
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591014835
【氏名又は名称】高松機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】永田 真一
(72)【発明者】
【氏名】菊 康爾
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109079654(CN,A)
【文献】特開2019-013982(JP,A)
【文献】特開2008-290221(JP,A)
【文献】国際公開第2019/226093(WO,A1)
【文献】特開2014-074313(JP,A)
【文献】特開2003-082954(JP,A)
【文献】特開昭62-039153(JP,A)
【文献】特開昭61-172984(JP,A)
【文献】米国特許第04727919(US,A)
【文献】中国特許出願公開第106826383(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105782167(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103032412(CN,A)
【文献】中国実用新案第207272852(CN,U)
【文献】中国実用新案第206010609(CN,U)
【文献】中国実用新案第205201191(CN,U)
【文献】中国実用新案第202971419(CN,U)
【文献】特開2016-113861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00-13/00
E05F 1/00-13/04
E06B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャッター本体と、
前記シャッター本体を開閉する駆動力となる駆動部材と、
重量物である前記シャッター本体が下方向へ閉じる際の前記シャッター本体の自重による加速度を制御するための自重制御部材と、
前記シャッター本体に設置されており、前記自重制御部材の下端側、及び前記駆動部材の下端側をそれぞれ連結させるための固定部材を備え
ており、
前記駆動部材と前記自重制御部材との間の距離は、駆動部材の外径の2倍~3倍であることを特徴とするシャッター用安全装置。
【請求項2】
前記駆動部材は真上から見た際、前記シャッター本体と重なる位置に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のシャッター安全装置。
【請求項3】
前記自重制御部材は真上から見た際、前記シャッター本体と重なる位置になるように設置されており、さらに、前記駆動部材と並列になるように設置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシャッター用安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のシャッターの開閉時(特にシャッターが閉じる時)における作業者の安全を確保するためのシャッター用安全装置に関する。さらに言えば、可動式ガードに関するJIS規格をクリアし、作業者の「挟まれ防止対策」に貢献することのできるシャッター用安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
垂直または傾斜した自動開閉機構を備えた工作機械においては、開閉時(特にシャッターが閉じる時)にシャッター等の稼働部に掛かる自重、及び駆動装置であるシリンダの推力を受けることで、(重量物である)シャッター等の稼働部に加速度が生じてしまい、結果として衝撃力が大きくなり、誤って作業者の手が挟まると危険である。工作機械の開閉部に設置されたシャッターは、かなりの重量物である。工作機械のシャッター部分が垂直または傾斜した態様であれば、即ち、重力の影響を受けるような態様であれば、自重でシャッターが落下してしまうので、開閉時(特に閉じる時に)何らかの安全対策をしなければ危険である。
【0003】
従って、シリンダ等の動力を用いてシャッター等の可動式ガードの開閉を行う場合、挟まれ防止策をすることが義務付けられている(JIS規格:JISB9716、JISB9710)。工作機械には被加工物であるワークの取り外し作業をするため、開閉自在のシャッター(JIS規格で言うところの可動式ガード)が設置されており、加工作業時には、必ずシャッターを開閉する必要がある。作業者の安全を確保するため(JIS規格をクリアするため)、安全を確保するための「挟まれ防止機構」が別途必要であったし、作業者がシャッターに直接接触できないように別途カバー(作業者の安全を確保するための防護設備)を設置し、カバー内にシャッター等の自動開閉機構を設ける必要があった。
【0004】
特許文献1には、「工作機械の加工領域と作業者側を仕切るため両側に設けたレールに案内され開閉シリンダの作用で、自動で開閉するオートドアにおいて、前記開閉シリンダのロッドの先端に取付けられドア開閉時に一定以上の外力が掛かった場合にドアとの係合が離脱可能に設けられた連結ブロツクと、該連結ブロツクに配設されて流体を密封し両側に大径部を中間に小径部を形成するシリンダ室を有するシリンダブロツクと、該シリンダブロツクのシリンダ室の大径部間を連通し中間に流量調整弁を設けた連通路と、前記シリンダブロツクを左右に貫通する穴に摺動可能に挿嵌するロッドを両側に有し前記シリンダ室の小径部に対し最少間を有して挿嵌し両ロッド側にテーパ部を有するピストンと、ドア開閉端において前記ピストン両側の各ロッドに当接すべく固定側に設けられた受け部材とから成り該受け部材との当接時において前記シリンダ室内に密封された流体がピストンの移動に伴って連通路を通過する際流量を調整しドア開閉端における当接時の衝撃を緩和することを特徴とするオートドアの補助クツシヨン装置(特許文献1:実用新案登録請求の範囲)。」が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】公開実用新案公報:昭61-50641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係るオートドアの補助クッション装置(特許文献1:発明の名称)は、エアシリンダの作用で自動開閉する自動ドアにおいて、開閉端における当接時の衝撃を緩和する補助クッション装置である。基本原理としては、シリンダ室内部の作動油が移動する際発生する流動抵抗により、オートドアに極端に大きな加速度が発生しないようにしたものである。しかしながら、多種の部品が必要であり、さらに構造も複雑になってしまい、コスト面での問題、及びメンテナンス性にも問題があるものであった。
【0007】
本発明の目的は、工作機械のシャッターの開閉時(特にシャッターが閉じる時)における作業者の安全を確保するためのシャッター用安全装置を提供することにある。さらに言えば、可動式ガードに関するJIS規格をクリアし、作業者の「挟まれ防止対策」に貢献することのできるシャッター用安全装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、シャッター本体と、前記シャッター本体を開閉する駆動力となる駆動部材と、重量物である前記シャッター本体が下方向へ閉じる際の前記シャッター本体の自重による加速度を制御するための自重制御部材と、前記シャッター本体に設置されており、前記自重制御部材の下端側、及び前記駆動部材の下端側をそれぞれ連結させるための固定部材を備えており、前記駆動部材と前記自重制御部材との間の距離は、駆動部材の外径の2倍~3倍であることを特徴とするシャッター用安全装置であることを特徴とするものである。尚、本明細書において下方向とは、重力による作用を受けてシャッター本体が移動(落下)する方向のことを言う。さらに、本明細書において、シャッター(本体)とは、工作機械における加工域と加工域外を仕切るための「仕切り」の概念のみならず、工作機械の加工域外に搬送装置等の稼動部を設置する場合であっても、(工作機械の加工域と加工域外、及び)加工室外の稼働域と稼働域外を仕切るものであり、広く工作機械(搬送装置を含む)の内側と外側の遮断と開放を切り替えるための「仕切り」の概念も含まれる。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1において、前記駆動部材は真上から見た際、前記シャッター本体と重なる位置に設置されているシャッター安全装置であることを特徴とするものである。即ち、駆動部材はシャッター本体上に設置されている。
【0010】
請求項3に記載された発明は、請求項1または請求項2において、前記自重制御部材は真上から見た際、前記シャッター本体と重なる位置になるように設置されており、さらに、前記駆動部材と並列になるように設置するシャッター用安全装置であることを特徴とするものである。即ち、駆動部材と自重制御部材はシャッター本体上に設置されている。尚、本発明において真上とは、地面を基準にした概念である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るシャッター用安全装置は、垂直、又は傾斜した自動開閉機構を備えた工作機械の加工域と加工域外との間を仕切る(工作機械(搬送装置を含む)の内側と外側の遮断と開放を切り替えるための「仕切り」も含む)開閉式シャッターが閉じる際、作業者を防護するシャッター用安全装置である。シャッター本体と、シャッター本体を開閉する駆動力となる駆動部材と、重量物であるシャッター本体が下方向へ閉じる際のシャッターの自重による加速度を制御するための自重制御部材と、シャッター本体の下側端部中央に設置されており、自重制御部材の下端側、及び駆動部材の下端側をそれぞれ連結させるための固定部材を備えている。
【0012】
開閉時(特にシャッターが閉じる時)にシャッター等の稼働部に掛かる自重、及び駆動装置である開閉シリンダの推力を受けることで、(重量物である)シャッター等の稼働部に加速度が生じてしまい、結果として衝撃力が大きくなり、誤って作業者の手が挟まれる怖れがあり危険である。
【0013】
シャッター用安全装置は、重量物であるシャッター本体が下方向へ閉じる際、シャッター本体の自重による重力加速度を制御するための自重制御部材を備えていることが発明のポイントである。駆動部材として設置された開閉シリンダの作用により、シャッター本体が閉じようとして下方向に移動している際に、自重制御部材のロッド側に、常に一定量の空気を供給し続けておくことで、自重制御部材の作用(反発力)によりシャッター本体に逆方向の力が作用するので、シャッター本体の重量により生ずる重力加速度を相殺することになる。シャッター本体の速度を落とすことなく、衝撃力を緩和させることが本発明の優れた点である。その結果、シャッター本体の閉じる際の衝撃力を75N、4J以下にすることができるので(安全基準を満たすので)シャッター本体に挟まれないようにする安全機構、或いは、シャッター本体を覆うためのカバー等の保護設備が不要になる。
【0014】
さらに、駆動部材は真上から見た際、シャッター本体と重なる位置に設置されており(シャッター本体上に設置されており)、自重制御部材は真上から見た際、シャッター本体と重なる位置になるように設置されており(シャッター本体上に設置されており)、さらに、駆動部材と並列になるように設置することにより、全体としてコンパクトに設置することができる(
図1、及び
図2参照)ので省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】シャッター用安全装置が発明される以前におけるシャッターの開閉機構を説明するための概略図である。
【
図2】シャッター用安全装置の開閉機構を説明するための概略図である。
【
図3】駆動部材、及び自重制御部材のピストン、及びロッドの動きを説明するための図である。
【
図4】シャッター本体が開いた状態を示す図である。
【
図5】シャッター本体が閉じる途中の状態を示す図である。
【
図6】シャッター本体が閉じた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<従来のシャッターの開閉機構>
以下、本発明に係るシャッター用安全装置10の一実施形態について、
図1~
図6に基づいて詳細に説明する。シャッター用安全装置10を説明する前に、従来のシャッターの開閉機構について説明する。
図1は、シャッター用安全装置10が発明される以前におけるシャッターの開閉機構を説明するための概略図である。
【0017】
工作機械においては、被加工物を加工する加工域と工具マガジンの領域等の加工域外との間を仕切るため(及び工作機械(搬送装置を含む)の内側と外側の遮断と開放を切り替えるために)、シャッターを設けており、工具交換時等にシャッターを開閉することが一般的に行われている。
図1に記載したように、シャッター用安全装置10が発明される以前におけるシャッターの開閉機構は、シャッターの外端側(
図1においてシャッターの右端側:工作機械本体の外端側)の略中央部に開閉シリンダのロッドの先端を固定させるように、開閉シリンダを設置していた(本発明とは異なり、シャッター上に開閉シリンダ(本発明で言う駆動部材30)が設置されているのでは無いことがポイント(
図2と比較されたし))。
【0018】
シャッターの外端側(
図1においてシャッターの右端側:工作機械本体の外端側)の略中央部に開閉シリンダのロッドの先端を固定させる方式だと、開閉する方向に対する奥行きが短い工作機械では開閉シリンダの円筒シリンダ部分が、工作機械本体からはみ出してしまい(
図1参照)、(シリンダのはみ出し分を考慮する必要があり)工作機械の設置の際、余分なスペースが必要であった。
【0019】
さらに重要な課題として、工作機械の加工域と加工域外との間を仕切るシャッターは、傾斜した状態で設置されるので(
図1下図参照)、シャッターが閉じる際、シャッター自体の自重により重力加速度が生じてしまう。その結果として、シャッターが閉じ切る際に発生する衝撃力が75N,4J以上(安全規格を超えた値)になってしまう。そのため、安全対策のために、作業者の手等がシャッター本体に挟まれないようにする安全機構(挟まれ防止機構)、或いは、シャッター本体を覆うためのカバー(
図1参照)等の保護設備が必要となってしまい、その分、コストが掛かるという問題があり、さらに、メンテナンスの面でも問題があった。
【0020】
<シャッター用安全装置の開閉機構>
このような現状に鑑み、発明者らは鋭意検討を行い本発明に係るシャッター用安全装置10を開発するに至った。シャッター用安全装置10は、重量物であるシャッター本体20の重量により生ずる重力加速度を、従来の(開閉シリンダ(駆動部材30)のみが設置されていた)開閉シャッターに自重制御部材40(バランスシリンダ)を設置し(注:駆動部材30、及び自重制御部材40を設置する場所についても、コンパクト化による省スペースを考慮している)、重力加速度を制御することで低推力化する安全装置である。シャッター本体20の閉じる際の移動速度を落とすことなく、重力加速度を制御することで衝撃力を緩和することに技術的な意義がある。
【0021】
図2は、シャッター用安全装置10の開閉機構を説明するための概略図である。シャッター用安全装置10は、開閉時に(特に閉まる時)シャッター本体20の自重により生ずる重力加速度を、自動制御部材40(バランスシリンダ)を設置して、逆方向の推力(反発力)を発生させて相殺することで、シャッター本体20の重力加速度(運動エネルギー)から生ずる衝撃力を大幅に減少させるシャッター用安全装置10である。
【0022】
シャッター本体20の閉じる際の移動速度を落とすことなく、重力加速度を制御することで衝撃力を緩和する原理について説明する。シャッター本体20は、シャッター本体20開閉時(特に閉じる時)に重力の影響を受けることになる。物理法則によれば、ニュートンの運動方程式F=ma(F:力(衝撃力)、m:シャッター本体の質量、a:加速度)より、シャッター本体20の質量は一定なので、加速度を0に近づけるように制御すれば、衝撃力は緩和されるという理屈である。尚、加速度aは、地球上では重力加速度が採用される。
【0023】
シャッター用安全装置10により、作業者の安全を図ることができるので、安全規格を満足させるため、作業者の手等がシャッター本体に挟まれないようにする安全機構(挟まれ防止機構)、或いは、シャッター本体を覆うためのカバー等の保護設備を設置する必要も無くなる。さらに、開閉するための駆動部材30(開閉シリンダ)、及び重力加速度を制御するための自重制御部材40(バランスシリンダ)を並べてシャッター本体20上に配置することで省スペース化にも寄与することができる(
図2参照)。
【0024】
<シャッター用安全装置の原理、構造、及び使用方法>
本発明に係るシャッター用安全装置10について、さらに詳細に説明する。
図3は、駆動部材30、及び自重制御部材40のピストン、及びロッドの動きを説明するための図である。
図4は、シャッター本体20が開いた状態を示す図である。
図5は、シャッター本体20が閉じる途中の状態を示す図である。
図6は、シャッター本体20が閉じた状態を示す図である。
【0025】
先ず、シャッター用安全装置10の原理について、
図3を参照しつつ説明する。シャッター用安全装置10は、従来型の自動開閉機構である開閉シリンダ(本発明において駆動部材30)に、自重制御部材40(バランスシリンダ)を付加したことに最大の特徴がある。シャッター用安全装置10は、駆動部材30である開閉シリンダとは別に、もう1個、自重制御部材40としてバランスシリンダを設置している。尚、シリンダは、空気圧によりロッドが円筒形状のシリンダから前進後退する機械要素である。(
図3参照:駆動部材30の空気の注入位置については黒太字矢印にて表記、排出位置については黒細字矢印にて表記、尚、自重制御部材40は常に空気が供給されて、供給された空気を開放している)。
【0026】
シャッター用安全装置10の開閉機構における主要部品である駆動部材30、及び自重制御部材40として採用するシリンダは、
図3に記載したように、主要な構成部品として円筒形の円筒シリンダ、円筒シリンダの径よりも短い径を備えたロッド(丸棒状部材)、円筒シリンダの内径と同じ内径を備えるロッドと一体化したピストン(円柱形状部材)を備えている(
図3(b)参照)。
図3(a)に記載したように、ピストンを挟んで、円筒シリンダ側に空気を注入すると、(即ち、駆動部材30の円筒シリンダ側に空気を注入すると)、ロッドが円筒シリンダから外に飛び出し(ピストンがストッパとして作用するので、ロッドが円筒シリンダから完全に飛び出ることが無い)、
図3(c)に記載したように、ピストンを挟んで、ロッド側に空気を注入すると、(即ち、駆動部材30のロッド側に空気を注入すると)、ロッドが円筒シリンダ内に収まる仕組みになっている。シャッター用安全装置10の開閉原理は、固定部材50を介してシャッター本体20に連結された駆動部材30と自重制御部材40に備わったロッドの出し入れによるものである。即ち、
図3(a)→
図3(b)→
図3(c)→
図3(b)→
図3(a)のような動きをすることでシャッター本体20の開閉を行うものである。
【0027】
続いて、シャッター用安全装置10の構造、及び使用方法の実施例について
図3~
図6を参照しつつ説明する。シャッター用安全装置10は、シャッター本体20と、シャッター本体20を開閉する駆動力となる駆動部材30と、重量物であるシャッター本体20が下方向へ閉じる際のシャッター本体20の自重による加速度を制御するための自重制御部材40と、シャッター本体20の下側端部中央に設置されており、自重制御部材40の下端側、及び駆動部材30の下端側をそれぞれ連結させるための固定部材50を備えている(
図4参照)。尚、駆動部材30と自重制御部材40は、下端側がそれぞれ固定部材50に連結しているが、設置した状態における(駆動部材30、及び自重制御部材40)の間の距離は、駆動部材30の外径(又は、自重制御部材40の外径)の3倍以内であることが、自重制御部材40の反発力の作用による固定部材50に掛かる応力を緩和するために好ましい。そして、取り付けの際のクリアランスを考慮すれば、駆動部材30の外径(又は、自重制御部材40の外径)の2倍以上であることが好ましい。さらに、駆動部材30と自重制御部材40の間の距離に合わせて固定部材50の長さ(シャッター本体20の移動方向と垂直方向)を自由に調整することができるのは言うまでもない。
【0028】
工作機械の開閉部は、被加工物や工具を交換するためにシャッター本体20を完全に開いた状態にした
図4の状態から、シャッター本体20を開閉する推力となる駆動部材30により(駆動部材30を作動させることにより)、
図5の状態を経て、切削加工を開始するために、シャッター本体20を完全に閉じた
図6の状態になる。シャッター本体20の位置が
図5の状態になると、シャッター本体20を開閉する駆動部材30による推力の他、重量物であるシャッター本体20が下方向へ閉じる際のシャッター本体20の自重により生ずる重力加速度が発生する。
【0029】
このままの状態を放置すると、シャッター本体20の自重により発生する重力加速度を制御することができず、即ち、衝撃力を制御できず、誤ってシャッター本体20に作業者の手が挟まれると危険である。しかしながら、シャッター用安全装置10は、自動制御部材40のロッド側に、常に一定量の空気を供給し続けているため(
図3参照)、自動制御部材40が
図5の状態になった際、即ち、
図3(a)の状態から、
図3(b)の状態を経て
図3(c)の状態になった際、自動制御部材40内部(ロッド側)の圧力が大きくなり、シャッター本体20が閉じる方向とは反対方向の反発力が働く(同時に駆動部材30への空気注入を止める)ことで衝撃力を緩和することができる。
【0030】
要するに、自重制御部材40(下端側が固定部材50と連結しておりシャッター本体20と固定部材を介して連結している)を、空気圧を利用してピストンとロッドを、駆動部材30の動きとは逆方向になるように、即ち、自重制御部材40の作用による反発力を与えることにより、シャッター本体20の閉じる際の移動速度を落とすことなく、加速度を制御することで衝撃力を緩和することになる。即ち、駆動部材30と自重制御部材40の空気圧を制御することによりシャッター本体20を無重力に近い状態に保つことができるというものである。
【0031】
<シャッター用安全装置の効果>
シャッター用安全装置10は、重量物であるシャッター本体が下方向へ閉じる際、シャッター本体の自重による重力加速度を制御するための自重制御部材40を備えていることが発明のポイントである。駆動部材30として設置されたシリンダの作用により、シャッター本体20が閉じようとして下方向に移動している際に、常に一定量の空気を供給され続けている自重制御部材40の反発力により、シャッター本体20に逆方向の力(シャッター本体20が開こうとする力)が作用する。
【0032】
シャッターの傾斜取り付け仕様であれば、開閉時(特にシャッターが閉じる時)にシャッター等の稼働部に掛かる力は、例えば、シャッター本体20の重量が14kg、開閉部の傾斜が20°であるとして計算すると、約47N(14×9.8×sin20°)になる。垂直取り付け仕様であれば、開閉時(特にシャッターが閉じる時)にシャッター等の稼働部に掛かる力は、シャッター本体20の重量が14kg、開閉部の傾斜は90°であるので、掛かる力は約137Nになる。さらに、駆動部材30である開閉シリンダの推力を受けるので、(重量物である)シャッター本体20に重力加速度が生じてしまい、結果として衝撃力が大きくなり作業者の手が挟まれる怖れがあり危険である。重量物であるシャッター本体20の重量が大きい程、そして傾斜が大きい程、安全規格値を超えてしまうことになる。
【0033】
安全規格値を超えないようにするため、シャッター本体20に、固定部材50を介して(駆動部材30と並ぶように)自重制御部材40(バランスシリンダ)を取り付け、シャッター本体20の自重と同じ力で上方向に反発力を生じさせることにより衝撃力を緩和することができるようにした。要するに、自重制御部材40(バランスシリンダ)の推力で相殺することができるようにした。
【0034】
以上纏めると、シャッター本体20の速度を落とすことなく、衝撃力を緩和させることが本発明の優れた点である。シャッター本体20の閉じる際の衝撃力を75N、4J以下にすることができるので(安全基準を満たすので)、作業者の手等がシャッター本体に挟まれないようにする安全機構(挟まれ防止機構)、或いは、シャッター本体20を覆うためのカバー等の保護設備が不要になった。尚、自重制御部材40(バランスシリンダ)として、低推力で滑らかな動きができるスムースシリンダを採用することが望ましい。さらに、自重制御部材40を設置したことにより、駆動部材30は、シャッター本体20をスライドさせる推力のみで足るため(シャッター本体20を押し上げる推力は、自重制御部材40(バランスシリンダ)に担わせることができる)、シリンダのサイズの縮小化を図ることができるようになった。
【0035】
尚、本発明の技術的思想は、垂直、又は傾斜した自動開閉機構を備えた工作機械に限定されることは無く、開閉式の形態を備えた全ての機械、装置、設備等にも応用できるものであることは言うまでも無い。
【0036】
<シャッター用安全装置の変更例>
本発明に係るシャッター用安全装置は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、シャッター本体、駆動部材、自重制御部材、固定部材等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るシャッター用安全装置は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、垂直、又は傾斜した自動開閉機構を備えた工作機械のシャッター等の稼働部の安全装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0038】
10・・シャッター用安全装置
20・・シャッター本体
30・・駆動部材
40・・自重制御部材
50・・固定部材