(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/097 20060101AFI20241202BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G03G9/097 368
G03G9/09
(21)【出願番号】P 2021028014
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 紅一郎
(72)【発明者】
【氏名】井田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】千本 裕也
(72)【発明者】
【氏名】浜 雅之
(72)【発明者】
【氏名】白山 和久
(72)【発明者】
【氏名】梶原 久輔
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-086649(JP,A)
【文献】特開2009-151276(JP,A)
【文献】特開2014-145886(JP,A)
【文献】特開2005-049858(JP,A)
【文献】特開2004-205890(JP,A)
【文献】特開2022-096602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、
帯電された該静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、
現像装置を用いて、トナーと磁性キャリアを含む現像剤により該静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程、
中間転写体を介して又は介さずに該トナー像を転写材に転写する転写工程、及び
転写トナー像を転写材に定着する定着工程を有する画像形成方法であって、
該現像工程は、
第一の現像剤を用いて、第一の静電潜像を現像して、第一のトナー像を形成する工程、
第二の現像剤を用いて、第二の静電潜像を現像して、第二のトナー像を形成する工程、
第三の現像剤を用いて、第三の静電潜像を現像して、第三のトナー像を形成する工程、
を有しており、
該第一の現像剤、該第二の現像剤および該第三の現像剤はいずれも、屈折率1.5以上1.7以下の粒子を含有するトナー粒子を有し、
該転写材の上に形成される転写トナー像には、該第一のトナー像、該第二のトナー像及び該第三のトナー像が積層された領域が少なくとも存在しており、
該領域において、
最も転写材の表面に近いトナー層Aに含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量をA(質量%)とし、
該トナー層Aの上に形成されるトナー層Bに含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量をB(質量%)とし、
該トナー層Bの上に形成されるトナー層Cに含有される、1.5以上1.7以下の粒子の含有量をC(質量%)としたとき、該A、該B及び該Cが、
A>B
A>C
の関係を満た
し、
該屈折率1.5以上1.7以下の粒子が、炭酸カルシウム粒子であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
該トナー層Aを構成するトナーがシアントナーであり、
該トナー層Bを構成するトナーがイエロートナーであり、
該トナー層Cを構成するトナーがマゼンタトナーである請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
該シアントナーがシアン顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3、及びC.I.ピグメントブルー15:4からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
該イエロートナーがイエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
該マゼンタトナーがマゼンタ顔料としてC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド150、及びC.I.ピグメントレッド238からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項
2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
該A(質量%)、該B(質量%)、該C(質量%)が
5.0≦A≦15.0
0.5≦B≦5.0、
0.5≦C≦5.0、
である請求項1~
3のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
該A(質量%)、該B(質量%)、該C(質量%)が
A-B≧3(質量%)
A-C≧3(質量%)
である請求項1~
4のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
該炭酸カルシウム粒子の個数平均粒径が200nm以上800nm以下である請求項
1~5のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項7】
該炭酸カルシウム粒子は、
トナーに対するCuKα線よるX線回折測定を行った際、ブラッグ角(2θ) 26.5±0.5の範囲および29.5±0.5の範囲にピークを有し、
ブラッグ角(2θ)29.5±0.5に帰属される結晶の結晶子サイズが、100Å以上450Å以下であり、
ブラッグ角(2θ)26.5±0.5に帰属される結晶のピーク強度とブラッグ角(2θ)29.5±0.5に帰属される結晶のピーク強度との比が0.15以上0.24以下である請求項
1~6のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、高速、高画質、高い生産性と同時に、低コスト化が要求されている。
そのような低コスト化を実現するために安価な充填剤を使用してトナー原材料の使用量を低減するという技術が知られている(特許文献1)。しかし、このような充填剤を用いることで、特にトナーを重ねわせる二次色を形成する際に、充填剤とトナー原材料の界面の光の散乱によって画像の色再現性が落ちてしまうことがあった。
【0003】
一方、製本や、パッケージ印刷において、コート紙のようなトナーが定着しにくいメディアを用いると、印刷したトナーが、人の爪や鋭利なものとの接触など、外部からの強いストレスによって剥がれる、いわゆるスクラッチ削れという現象が起こる場合がある。充填剤を少なくすると、コストメリットが薄れると同時に、上記のような画像の耐スクラッチ性が低下することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記の問題点を解決し、充填剤を用いる場合であっても色域が低下せず、耐スクラッチ性の高い画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、
帯電された該静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、
現像装置を用いて、トナーと磁性キャリアを含む現像剤により該静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程、
中間転写体を介して又は介さずに該トナー像を転写材に転写する転写工程、及び
転写トナー像を転写材に定着する定着工程を有する画像形成方法であって、
該現像工程は、
第一の現像剤を用いて、第一の静電潜像を現像して、第一のトナー像を形成する工程、
第二の現像剤を用いて、第二の静電潜像を現像して、第二のトナー像を形成する工程、
第三の現像剤を用いて、第三の静電潜像を現像して、第三のトナー像を形成する工程、
を有しており、
該第一の現像剤、該第二の現像剤および該第三の現像剤はいずれも、屈折率1.5以上1.7以下の粒子を含有するトナー粒子を有し、
該転写材の上に形成される転写トナー像には、該第一のトナー像、該第二のトナー像及び該第三のトナー像が積層された領域が少なくとも存在しており、
該領域において、
最も転写材の表面に近いトナー層Aに含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量をA(質量%)とし、
トナー層Aの上に形成されるトナー層Bに含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量をB(質量%)とし、
トナー層Bの上に形成されるトナー層Cに含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量をC(質量%)としたとき、該A、該B及び該Cが、
A>B
A>C
の関係を満たし、
該屈折率1.5以上1.7以下の粒子が、炭酸カルシウム粒子である画像形成方法が提供される。
本発明により、充填剤に起因する光の散乱を抑えることによって、充填剤を用いる場合であっても色の再現性を損なわず、耐スクラッチ性の高い画像形成方法が得られる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、充填剤を用いる場合であっても色の再現性を損なわず、耐スクラッチ性の高い画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定するものではない。
本明細書において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、
特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
【0009】
まず、本発明に係る画像形成方法では、次のような工程を有する。
静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、
帯電された該静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、
現像装置を用いて、トナーと磁性キャリアを含む現像剤により該静電潜像を現像してトナー像を形成する現像工程、
中間転写体を介して又は介さずに該トナー像を転写材に転写する転写工程。ここで転写材とは、被記録媒体を指す。
さらに、帯電工程から転写工程までの工程を色毎に行い、転写トナー像を転写材に定着する定着工程を有する。
【0010】
該現像工程は、
第一の現像剤を用いて、第一の静電潜像を現像して、第一のトナー像を形成する工程、
第二の現像剤を用いて、第二の静電潜像を現像して、第二のトナー像を形成する工程、
第三の現像剤を用いて、第三の静電潜像を現像して、第三のトナー像を形成する工程を有する。
画像形成部は画像形成装置本体内に直列に配列されており、並列的に処理が進められ、それぞれのトナー像が該転写材に対して、第一のトナー像が該転写材に直接転写され、その次に第二のトナー像が転写され、さらにその次に第三のトナー像が転写される。
中間転写体を介して被記録媒体である転写材に転写する場合には、画像形成部の配列順序は中間転写体を介さない場合に対して逆の順番になる。
【0011】
本発明の特徴は、
該第一の現像剤、該第二の現像剤および該第三の現像剤はいずれも、屈折率1.5以上1.7以下の粒子を含有するトナー粒子を有し、
該転写材の上に形成される転写トナー像には、該第一のトナー像、該第二のトナー像及び該第三のトナー像が積層された領域が少なくとも存在しており、
該領域において、最も転写材の表面に近いトナー層Aに含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量をA(質量%)とし、
トナー層Aの上に形成されるトナー層Bに含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量をB(質量%)とし、
トナー層Bの上に形成されるトナー層Cに含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量をC(質量%)としたとき、該A、該B及び該Cが、
A>B
A>C
の関係を満たすことである。
尚、各トナー層に含有される、屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量は、該トナー層を構成するトナーに含有される該粒子の含有量と同じとなる。
【0012】
このような形態にすることで、充填剤を用いる場合であっても色域を損なわず、耐スクラッチ性が高い画像を得ることができる。
色域を損なわず、耐スクラッチ性が高い画像を得ることができる理由は以下のとおりであると考えている。
屈折率1.5以上1.7以下の粒子が定着後のトナー層の上層に多く含まれないことによってトナー層に対する入射光の散乱が抑えられ、色域を損なわない。
一方、屈折率1.5以上1.7以下の粒子が定着後のトナー層の下層に多く含まれることによって、該粒子による画像の補強効果が得られる。
【0013】
本発明の画像形成方法のシアントナー、イエロートナー、マゼンタトナーの転写材に対する画像形成順序は、優れた発色性を得ることができるという観点から、シアントナー、イエロートナー、マゼンタトナーの順序であることが好ましい。すなわち、被記録媒体にシアントナーが直接積層され、その後にイエロートナーが積層され、その後にマゼンタトナーが積層されることが好ましい。
【0014】
本発明に用いられる屈折率1.5以上1.7以下の粒子は、無彩色の屈折率1.5以上1.7以下の粒子である。そのような粒子として、例えば炭酸カルシウム(CaCO3)粒子、カオリン(Al2Si2O5(OH)4を主成分とする鉱物)粒子、タルク(Mg3Si4O10(OH)2を主成分とする鉱物)粒子、硫酸バリウム(BaSO4)粒子などが挙げられる。色域をより損なわないという観点から、炭酸カルシウム粒子が好ましい。炭酸カルシウム粒子を用いることによって、より高い色再現性が実現できる。
【0015】
本発明に用いられる顔料は、
シアントナーがシアン顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3、及びC.I.ピグメントブルー15:4からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
イエロートナーがイエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
マゼンタトナーがマゼンタ顔料としてC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド150、及びC.I.ピグメントレッド238からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが、広い色域を達成するために好ましい。
【0016】
屈折率1.5以上1.7以下の粒子の含有量は、各トナー層に対して
5.0質量%≦A≦15.0質量%
0.5質量%≦B≦5.0質量%、
0.5質量%≦C≦5.0質量%、
であることが好ましい。この範囲にすることで、色域と耐スクラッチ性を高い水準で両立できる。
【0017】
さらに、
A-B≧3質量%、
A-C≧3質量%
であることが好ましい。この範囲にすることで、色域と耐スクラッチ性をより高い水準で両立できる。
【0018】
さらに、該炭酸カルシウム粒子の個数平均粒径は200nm以上800nm以下であることが好ましい。この範囲の粒径にすることで、より高い色再現性が実現できる。
さらに、該炭酸カルシウム粒子は、トナーに対するCuKα線よるX線回折測定を行った際、ブラッグ角(2θ)26.5±0.5の範囲および29.5±0.5の範囲にピークを有し、
ブラッグ角(2θ)29.5±0.5に帰属される結晶の結晶子サイズが、100Å以上450Å以下であり、
ブラッグ角(2θ)26.5±0.5に帰属される結晶のピーク強度(第1のピーク強度)とブラッグ角(2θ)29.5±0.5に帰属される結晶のピーク強度(第2のピーク強度)との比(ピーク強度比)が0.15以上0.24以下であることが好ましい。
ピーク強度比は下記式によって算出される。
ピーク強度比=(第1のピーク強度)/(第2のピーク強度)
このような炭酸カルシウムを用いることによって、より高い色再現性が実現できる。
以下、本発明の好ましい構成を詳述する。
まずは本発明で使用するトナーの原材料について説明する。
【0019】
<顔料>
顔料としては、公知の有機顔料が挙げられる。
シアン系顔料としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。
【0020】
マゼンタ系顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが挙げられる。
【0021】
イエロー系顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などが挙げられる。
該顔料は、一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0022】
本発明の顔料は、
シアントナーがシアン顔料としてC.I.ピグメントブルー15:3、及びC.I.ピグメントブルー15:4からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
イエロートナーがイエロー顔料としてC.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー180、及びC.I.ピグメントイエロー185からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
マゼンタトナーがマゼンタ顔料としてC.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド150、及びC.I.ピグメントレッド238からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有する
ことが、広い色域を達成するために好ましい。
【0023】
<結着樹脂>
電子写真に用いられるトナーに用いられる結着樹脂としては、一般的な樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などが例示できる。これらの樹脂は、屈折率が1.5~1.7である。この中でも、低温定着性を良好にするという観点から非晶性ポリエステル樹脂が用いられ、優れた低温定着性と耐ホットオフセット性とを両立させることができるという観点から、低分子量ポリエステルと高分子量ポリエステルとを併用することが知られている。また、さらなる低温定着性の向上と保管時の耐ブロッキング性とを両立させることができるという観点から結晶性ポリエステルを可塑剤として用いることもある。
【0024】
<離型剤>
必要に応じて、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する離型剤を用いてもよい。該離型剤としては、低分子量ポリオレフィン類、シリコーンワックス、脂肪酸アミド類、エステルワックス類、カルナバワックス、炭化水素系ワックスなどが一般的に例示できる。
【0025】
<外添剤>
外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムのような無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m2/g以上400m2/g以下の無機微粉体が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粉体であることが好ましい。流動性の向上と耐久性の安定化とを両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粉体を併用してもよい。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合には、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いることができる。
【0026】
<トナーの製造方法>
トナーの製造方法としては、混練粉砕法、溶解懸濁法、懸濁重合法、及び乳化凝集法が挙げられる。いずれか単独の製造方法でトナーを製造しても良いし、組み合わせてトナーを製造しても良い。
以下、混練粉砕法のトナーの製造方法について具体的に例示するが、これらに限定されるものではない。
【0027】
<混練粉砕法>
混練粉砕法では、先ず、トナーの構成材料である顔料分散体及び非晶性樹脂、並びに、必要に応じて添加される離型剤、着色剤及びその他の添加剤を十分に混合し、加熱ロールやニーダーなどの公知の熱混練機を用いて溶融混練する(混練工程)。その後、所望のトナー粒子径になるまで機械的に粉砕し(粉砕工程)、所望の粒度分布になるよう分級を行い(分級工程)、トナーを製造する。
【0028】
(混練工程)
トナーの構成材料の溶融混練は、加熱ロールやニーダーなどの公知の熱混練機を用いて行うことができる。上記混練工程は、トナーの構成材料が混合機を用いて事前に十分に混合されていることが好ましい。
混合機としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製);スーパーミキサー(カワタ社製);リボコーン(大川原製作所社製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン社製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工社製);レーディゲミキサー(マツボー社製)。
【0029】
熱混練機としては、以下のものが挙げられる。KRCニーダー(栗本鉄工所社製);ブス・コ・ニーダー(Buss社製);TEM型押し出し機(東芝機械社製);TEX二軸混練機(日本製鋼所社製);PCM混練機(池貝鉄工所社製);三本ロールミル、ミキシングロールミル、ニーダー(井上製作所社製);ニーデックス(三井鉱山社製);MS式加圧ニーダー、ニダールーダー(森山製作所社製);バンバリーミキサー(神戸製鋼所社製)。
【0030】
(粉砕工程)
粉砕工程とは、上記混練工程で得られた混練物を粉砕可能な硬度に達するまで冷却した後、衝突板式ジェットミル、流動層式ジェットミル、及び回転型機械ミル等の公知の粉砕機で、トナー粒子径になるまで、機械的に粉砕する工程である。粉砕効率の観点から、粉砕機としては、流動層式ジェットミルを用いることが望ましい。
【0031】
粉砕機としては、以下のものが挙げられる。カウンタージェットミル、ミクロンジェット、イノマイザ(ホソカワミクロン社製);IDS型ミル、PJMジェット粉砕機(日本ニューマチック工業社製);クロスジェットミル(栗本鉄工所社製);ウルマックス(日曹エンジニアリング社製);SKジェット・オー・ミル(セイシン企業社製);クリプトロン(川崎重工業社製);ターボミル(ターボ工業社製);スーパーローター(日清エンジニアリング社製)など。
【0032】
(分級工程)
分級工程とは、上記粉砕工程で得られた微粉砕物を分級し、所望の粒度分布を有するトナーを得る工程である。
分級に用いられる分級機としては、風力分級機、慣性式分級機、及び篩式分級機等の公知の装置を使用することができる。具体的には、以下のものが挙げられる。クラッシール、マイクロンクラッシファイアー、スペディッククラッシファイアー(セイシン企業社製);ターボクラッシファイアー(日清エンジニアリング社製);ミクロンセパレータ、ターボフレックス(ATP)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製);エルボージェット(日鉄鉱業社製)、ディスパージョンセパレータ(日本ニューマチック工業社製);YMマイクロカット(安川商事社製)。
【0033】
上記工程を経て作製したトナーには、必要に応じて、シリカ、アルミナ、チタニア、及び炭酸カルシウム等の無機微粒子や、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、及びシリコーン樹脂等の樹脂微粒子を、乾燥状態で剪断力を印加して添加してもよい。これらの無機微粒子や樹脂微粒子は、流動性助剤やクリーニング助剤等の外添剤として機能する。
トナーおよび各種物性の測定法について、以下に説明する。
【0034】
[トナー粒子中の屈折率1.5~1.7の粒子の含有量]
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)1.70gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。次に、遠心分離用チューブをシェイカーにて振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30minの条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤とが分離する。トナー粒子と外添剤とが十分に分離されていることを目視で確認し、トナー粒子を採取して減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、外添剤が分離されたトナー粒子を得る。
【0035】
次いで、溶剤への溶解度の差を利用してトナー粒子から結着樹脂等の材料を分離してから、それぞれの質量を測定し、屈折率1.5~1.7の粒子の含有率を測定する。分離の具体的な方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
温度23℃のテトラヒドロフラン(THF)にトナー粒子を溶解させ、可溶分(結着樹脂)と不溶分(屈折率1.5~1.7の粒子、離型剤、顔料など)とを分離し、可溶分を乾固させる。さらに温度23℃のヘキサンに、上記で分離した不溶分を溶解させ、可溶分(離型剤など)と不溶分(屈折率1.5~1.7の粒子と顔料)とに分けとり、さらに可溶分は乾固させる。最後に、上記ヘキサンへの不溶分をテトラヒドロフラン中に分散させ、内径10mmの遠心管に入れて遠心分離機を用いて3000rpm、回転時間1分間の条件で遠心分離した後、上澄み液を回収したのちに乾固させ、顔料を得る。さらに、沈降物を分けとり、屈折率1.5~1.7の粒子を得る。
上記のそれぞれの成分の質量を測定し、トナー粒子中の結着樹脂の屈折率1.5~1.7の粒子の含有率を得る。
【0036】
[トナー粒子中の屈折率1.5~1.7の粒子の屈折率]
上述の方法で単離した屈折率1.5~1.7の粒子を用い、アッベ屈折計(例えば、DR-M2(株式会社オハラ製))、又は分光エリプソメーター(例えば、VASE、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製など)により屈折率の測定を行う。
【0037】
[トナー粒子中の顔料の構造]
上述の方法で単離した顔料は、日本電子(株)製ECA-400(400MHz)を用いて、1H-NMR、及び、13C-NMRのスペクトル測定を行うことによって構造を同定する。
【0038】
[屈折率1.5~1.7の粒子の個数平均粒径]
屈折率1.5~1.7の粒子の個数平均粒径は、トナー粒子断面を走査型電子顕微鏡(S-4800、(株)日立ハイテクノロジーズ)にて観察し、粒子100個についての長径を計測し、平均値(算術平均値)を求めることで算出する。
【0039】
[トナー粒子中の炭酸カルシウムのX線回折測定]
トナー粒子中の炭酸カルシウムのX線回折測定は、測定装置「RINT-TTRII」((株)リガク製)を用いて、CuKα特性X線において、ブラッグ角(2θ±0.20deg)3deg~35degの範囲で行う。
得られたスペクトルの全積分強度から、
ブラッグ角(2θ)29.5±0.5に帰属される結晶の結晶子サイズ、
ブラッグ角(2θ)26.5±0.5に帰属される結晶のピーク強度とブラッグ角(2θ)29.5±0.5に帰属される結晶のピーク強度との比を求める。
なお、測定条件は以下のとおりである。
【0040】
X線:Cu/50kV/300mA
ゴニオメータ:ローター水平ゴニオメータ(TTR-2)
アタッチメント:標準試料ホルダー
発散スリット:解放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4.0000°/min.
サンプリング幅:0.0200°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000~40.0000°
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてさらに詳細に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の処方において、部は特に断りのない限り質量基準である。
【0042】
<シアン顔料マスターバッチC1の製造>
シアン顔料(PB15:3) 30質量部
軽質炭酸カルシウム (個数平均粒径400nm) 50質量部
非晶性ポリエステルA 20質量部
(非晶性ポリエステルA:組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸=100:50:50〕、軟化温度(Tm)=122℃、ガラス転移温度(Tg)=70℃、SP値=22.6(J/cm3)0.5)
【0043】
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて温度120℃で混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて粒径100μm以下に粗粉砕し、シアン顔料マスターバッチC1の粗砕物を得た。
【0044】
<シアン顔料マスターバッチC2~C6の製造>
表1に示す材料に変更した以外は、シアン顔料マスターバッチC1と同様に製造し、シアン顔料マスターバッチC2~C6を得た。
【0045】
【表1】
表1中、PB15:3は、C.I.ピグメントブルー15:3を示し、PB15:4は、C.I.ピグメントブルー15:4を示す。
【0046】
<シアントナーCT1の製造>
・非晶性ポリエステルA 75.25質量部
(組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸=100:50:50〕、軟化温度(Tm)=122℃、ガラス転移温度(Tg)=70℃、SP値=22.6(J/cm3)0.5)
・シアン顔料マスターバッチC1 16.75質量部
・合成ワックス1 8.00質量部
(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃)
【0047】
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて温度130℃で混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて粒径100μm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて目的粒径となるように回転数やパス回数を調整して微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。
【0048】
回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)の運転条件は、目的粒径および粒度分布が得られるように回転数を調整して分級を行った。得られたトナー粒子100質量部に、下記のシリカ微粒子1.8質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合し、シアントナーCT1を得た。
シリカ微粒子:BET法で測定した比表面積が200m2/gであり、シリコーンオイルにより疎水化処理されたシリカ微粒子
【0049】
<シアントナーCT2~CT14の製造例>
表2に示す材料に変更した以外は、シアントナーCT1と同様に製造し、シアントナーCT2~CT14を得た。
【0050】
【0051】
<マゼンタ顔料マスターバッチM1の製造>
マゼンタ顔料(PR122) 30質量部
マゼンタ顔料(PR150) 10質量部
軽質炭酸カルシウム (個数平均粒径400nm) 15質量部
非晶性ポリエステルA 45質量部
(非晶性ポリエステルA:組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸=100:50:50〕、軟化温度(Tm)=122℃、ガラス転移温度(Tg)=70℃、SP値=22.6(J/cm3)0.5)
【0052】
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて温度120℃で混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて粒径100μm以下に粗粉砕し、マゼンタ顔料マスターバッチM1の粗砕物を得た。
【0053】
<マゼンタ顔料マスターバッチM2~M6の製造>
表3に示す材料に変更した以外は、マゼンタ顔料マスターバッチM1と同様に製造し、マゼンタ顔料マスターバッチM2~M6を得た。
【0054】
【表3】
表3中、PR122は、C.I.ピグメントレッド122を示し、PR238は、C.I.ピグメントレッド238を示す。
【0055】
<マゼンタトナーMT1の製造>
・非晶性ポリエステルA 92.5質量部
(組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸=100:50:50〕、軟化温度(Tm)=122℃、ガラス転移温度(Tg)=70℃、SP値=22.6(J/cm3)0.5)
・マゼンタ顔料マスターバッチM1 12.5質量部
・合成ワックス1 8.0質量部
(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃)
【0056】
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて温度130℃で混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて体積平均粒径100μm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて目的粒径となるように回転数やパス回数を調整して微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。
【0057】
回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)の運転条件は、目的粒径および粒度分布が得られるように回転数を調整して分級を行った。得られたトナー粒子100質量部に、下記のシリカ微粒子1.8質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合し、マゼンタトナーMT1を得た。
シリカ微粒子:BET法で測定した比表面積が200m2/gであり、シリコーンオイルにより疎水化処理されたシリカ微粒子
【0058】
<マゼンタトナーMT2~MT14の製造例>
表4に示す材料に変更した以外は、マゼンタトナーMT1と同様に製造し、マゼンタトナーMT2~MT14を得た。
【0059】
【0060】
<イエロー顔料マスターバッチY1の製造>
イエロー顔料(PY180) 30質量部
軽質炭酸カルシウム (個数平均粒径400nm) 55質量部
非晶性ポリエステルA 15質量部
(非晶性ポリエステルA:組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸=100:50:50〕、軟化温度(Tm)=122℃、ガラス転移温度(Tg)=70℃、SP値=22.6(J/cm3)0.5)
【0061】
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて温度120℃で混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて体積平均粒径100μm以下に粗粉砕し、イエロー顔料マスターバッチY1の粗砕物を得た。
【0062】
<イエロー顔料マスターバッチY2~Y8の製造>
表5に示す材料に変更した以外は、イエロー顔料マスターバッチY1と同様に製造し、イエロー顔料マスターバッチY2~Y8を得た。
【0063】
【表5】
表5中、PY74は、C.I.ピグメントイエロー74を示し、PY180は、C.I.ピグメントイエロー180を示し、PY185は、C.I.ピグメントイエロー185を示す。
【0064】
<イエロートナーYT1の製造>
・非晶性ポリエステルA 72.0質量部
(組成(モル%)〔ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:イソフタル酸:テレフタル酸=100:50:50〕、軟化温度(Tm)=122℃、ガラス転移温度(Tg)=70℃、SP値=22.6(J/cm3)0.5)
・イエロー顔料マスターバッチY1 20.0質量部
・合成ワックス1 8.0質量部
(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃)
【0065】
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、株式会社池貝製)にて温度130℃で混練した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて体積平均粒径100μm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて目的粒径となるように回転数やパス回数を調整して微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。
【0066】
回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)の運転条件は、目的粒径および粒度分布が得られるように回転数を調整して分級を行った。得られたトナー粒子100質量部に、下記のシリカ微粒子1.8質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合し、イエロートナーYT1を得た。
シリカ微粒子:BET法で測定した比表面積が200m2/gであり、シリコーンオイルにより疎水化処理されたシリカ微粒子
【0067】
<イエロートナーYT2~YT16の製造例>
表6に示す材料に変更した以外は、イエロートナーYT1と同様に製造し、イエロートナーYT2~YT16を得た。
【0068】
【0069】
<磁性キャリア1の製造例>
・個数平均粒径0.30μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am2/kg)のマグネタイト1
・個数平均粒径0.50μm、(1000/4π(kA/m)の磁界下における磁化の強さ65Am2/kg)のマグネタイト2
上記の材料それぞれ100部に対し、4.0部のシラン化合物(3-(2-アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン)を加え、容器内にて100℃以上で高速混合撹拌し、それぞれの微粒子を処理した。
・フェノール: 10質量%
・ホルムアルデヒド溶液: 6質量%(ホルムアルデヒド40質量%、メタノール10質量%、水50質量%)
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト1:58質量%
・上記シラン化合物で処理したマグネタイト2:26質量%
【0070】
上記材料100部と、28質量%アンモニア水溶液5部、水20部をフラスコに入れ、攪拌、混合しながら30分間で85℃まで昇温及び保持し、3時間重合反応させて、生成するフェノール樹脂を硬化させた。
その後、硬化したフェノール樹脂を30℃まで冷却し、さらに水を添加した後、上澄み液を除去し、沈殿物を水洗した後、風乾した。
次いで、これを減圧下(5mmHg以下)、60℃の温度で乾燥して、磁性体分散型の球状の磁性キャリア1を得た。磁性キャリア1の体積基準の50%粒径(D50)は、34.2μmであった。
【0071】
<シアン二成分系現像剤CD1の製造例>
92.0部の磁性キャリア1に対して、8.0部のシアントナーCT1を加え、V型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、シアン二成分系現像剤CD1を得た。
【0072】
<シアン二成分系現像剤CD2~CD14の製造例>
シアン二成分系現像剤CD1の製造例において、トナーを表7のように変更する以外は同様にして製造を行い、シアン二成分系現像剤CD2~CD14を得た。
【0073】
<マゼンタ二成分系現像剤MD1の製造例>
92.0部の磁性キャリア1に対して、8.0部のマゼンタトナーMT1を加え、V型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、マゼンタ二成分系現像剤MD1を得た。
【0074】
<マゼンタ二成分系現像剤MD2~MD14の製造例>
マゼンタ二成分系現像剤MD1の製造例において、トナーを表7のように変更する以外は同様にして製造を行い、マゼンタ二成分系現像剤MD2~MD14を得た。
【0075】
<イエロー二成分系現像剤YD1の製造例>
92.0部の磁性キャリア1に対して、8.0部のイエロートナーYT1を加え、V型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、イエロー二成分系現像剤YD1を得た。
【0076】
<イエロー二成分系現像剤YD2~YD16の製造例>
イエロー二成分系現像剤YD1の製造例において、トナーを表7のように変更する以外は同様にして製造を行い、イエロー二成分系現像剤YD2~YD16を得た。
【0077】
【表7】
上記トナーを用いて得られた画像の評価方法を以下に記載する。
【0078】
<色域の評価>
画像形成装置として、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C5255を用い、評価を行った。本装置においては、非記録媒体である転写材の表面に近い側から、シアントナーによるシアントナー層、イエロートナーによるイエロートナー層、マゼンタトナーによるマゼンタトナー層の順序で転写材上に積層される。
【0079】
評価環境は、常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度50%)とし、評価紙は、コピー用普通紙GFC-081(A4、坪量81.4g/m2 キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用い、1cm×1cmのパッチ画像を出力し、コントローラーで各パッチのトナー載り量が0.35g/m2になるように調節し、上記パッチ画像の定着画像を出力した。
【0080】
画像評価は、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用いて、各画像サンプルにおける一次色および二次色部のL*a*b*表色系における色度(L*、a*、b*)を測定した。
測定結果を用いて色域体積をシミュレートし、基準に対して色域体積が何%変化したかを評価した。
なお、実施例1、4~12及び比較例1~2は比較例3を基準として用い、実施例2は比較例4を基準として用い、実施例3は比較例5を基準として用いた。
評価結果を表8に示す。
【0081】
(色域の評価基準)
A:105%以上
B:100%以上105%未満
C:95%以上100%未満
D:95%未満
【0082】
<耐スクラッチ性>
・紙:Oce Top Coated Pro Silk 270(270.0g/m2)(Oce株式会社より販売)
・評価画像:上記A4用紙の中心に2cm×15cmの二次色の画像を配置
・各トナーの紙上のトナー載り量:0.35mg/cm2
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
・試験環境:常温常湿環境下(温度23℃、相対湿度50%(以下N/N))
・定着温度:160℃
・プロセススピード:400mm/s
【0083】
上記評価画像が出力された記録紙を、新東科学株式会社製の表面性試験機HEIDON TYPE14FWを用いて、200gの重りを乗せ、直径0.75mmの針で速度60mm/min、長さ30mmで引掻いたことによって画像に生じるキズで評価した。
なお、トナーが剥がれた面積比率は、引掻いた面積に対してトナー剥がれの発生した面積を画像処理により2値化して求めた。測定結果を表8に示す。
【0084】
(評価基準)
A:画像キズによるトナーが剥がれた面積比率が0%以上1.0%未満
B:画像キズによるトナーが剥がれた面積比率が1.0%以上4.0%未満
C:画像キズによるトナーが剥がれた面積比率が4.0%以上7.0%未満
D:画像キズによるトナーが剥がれた面積比率が7.0%以上
【0085】
【表8】
なお、実施例12は参考例として評価を行った。