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特許7596180レーダ装置、飛しょう体および誘導プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】レーダ装置、飛しょう体および誘導プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/68 20060101AFI20241202BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20241202BHJP
   G01S 3/46 20060101ALI20241202BHJP
   F41G 7/22 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G01S13/68
G01S7/02 218
G01S3/46
F41G7/22
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021031369
(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022132749
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】小山 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】山岸 司
(72)【発明者】
【氏名】福場 真佑
(72)【発明者】
【氏名】池田 成臣
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-120916(JP,A)
【文献】特開2010-223895(JP,A)
【文献】米国特許第05502444(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛しょう体に搭載され、クラッタ源表面の上にある目標に前記飛しょう体を誘導するために前記目標を検出するレーダ装置であって、
前記目標の上方からレーダ波を送信し、前記レーダ波が少なくとも前記目標で反射したレーダ反射波に含まれる第1期間反射波を受信するアンテナと、
前記レーダ波を送信してから前記第1期間反射波を受信するまでの時間と、前記第1期間反射波とに基づいて前記目標を検出する信号処理装置と
を備え、
送信された前記レーダ波が照射される照射角度の範囲は、前記クラッタ源表面の法線方向を含み、
前記第1期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記レーダ波を送信してから第1時間が経過した第1時刻と、前記第1時刻から第1時間間隔が経過した第2時刻との間の第1期間に受信された部分であり、
前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第1期間反射波とは別の第0期間反射波をさらに受信し、
前記第0期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記第1時刻と、前記第1時刻までに前記第1時間間隔が経過する前の第0時刻との間の第0期間に受信された部分であり、
前記信号処理装置は、前記レーダ波を送信してから前記第0期間反射波を受信するまでの時間と、前記第0期間反射波とにさらに基づいて前記目標を検出し、
前記アンテナは、
第1領域に配置された第1アンテナ群と、
前記第1領域とは別の第2領域に配置された第2アンテナ群と
を備え、
前記第1アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第1領域に到達する第1領域反射波を受信し、
前記第2アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第2領域に到達する第2領域反射波を受信し、
前記レーダ装置は、
前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の和を表すΣ信号と、前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の差を表すΔ信号とを生成するモノパルスコンパレータ
をさらに備え、
前記信号処理装置は、前記Σ信号と前記Δ信号とにさらに基づいて前記目標を検出し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第1期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第1期間第2領域反射波との和を表す第1期間Σ信号と、
前記第1期間第1領域反射波と前記第1期間第2領域反射波との差を表す第1期間Δ信号と、
前記第0期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第0期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第0期間第2領域反射波との和を表す第0期間Σ信号と
を生成し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間Σ信号の受信電力を表す第1期間Σ受信電力と、
前記第1期間Δ信号の受信電力を表す第1期間Δ受信電力と、
前記第0期間Σ信号の受信電力を表す第0期間Σ受信電力と
にさらに基づいて前記目標を検出し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値より大きく、かつ、
前記第1期間Σ受信電力から前記第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値より小さく、かつ、
前記第1期間Σ受信電力から前記第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値より大きい
ときに、前記レーダ波が前記第1期間反射波として反射された空間で前記目標を検出したと判定し、
前記第1閾値は、前記ノイズレベルと、前記レーダ反射波のうち、前記目標に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されており、
前記第2閾値は、前記レーダ反射波のうち、前記クラッタ源表面に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、前記目標受信電力とに基づいて設定されており、
前記第3閾値は、前記目標受信電力に基づいて設定されている、
レーダ装置。
【請求項2】
飛しょう体に搭載され、クラッタ源表面の上にある目標に前記飛しょう体を誘導するために前記目標を検出するレーダ装置であって、
前記目標の上方からレーダ波を送信し、前記レーダ波が少なくとも前記目標で反射したレーダ反射波に含まれる第1期間反射波を受信するアンテナと、
前記レーダ波を送信してから前記第1期間反射波を受信するまでの時間と、前記第1期間反射波とに基づいて前記目標を検出する信号処理装置と
を備え、
送信された前記レーダ波が照射される照射角度の範囲は、前記クラッタ源表面の法線方向を含み、
前記第1期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記レーダ波を送信してから第1時間が経過した第1時刻と、前記第1時刻から第1時間間隔が経過した第2時刻との間の第1期間に受信された部分であり、
前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第1期間反射波とは別の第0期間反射波をさらに受信し、
前記第0期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記第1時刻と、前記第1時刻までに前記第1時間間隔が経過する前の第0時刻との間の第0期間に受信された部分であり、
前記信号処理装置は、前記レーダ波を送信してから前記第0期間反射波を受信するまでの時間と、前記第0期間反射波とにさらに基づいて前記目標を検出し、
前記アンテナは、
第1領域に配置された第1アンテナ群と、
前記第1領域とは別の第2領域に配置された第2アンテナ群と
を備え、
前記第1アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第1領域に到達する第1領域反射波を受信し、
前記第2アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第2領域に到達する第2領域反射波を受信し、
前記レーダ装置は、
前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の和を表すΣ信号と、前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の差を表すΔ信号とを生成するモノパルスコンパレータ
をさらに備え、
前記信号処理装置は、前記Σ信号と前記Δ信号とにさらに基づいて前記目標を検出し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第1期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第1期間第2領域反射波との和を表す第1期間Σ信号と、
前記第1期間第1領域反射波と前記第1期間第2領域反射波との差を表す第1期間Δ信号と、
前記第0期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第0期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第0期間第2領域反射波との和を表す第0期間Σ信号と
を生成し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間Σ信号の受信電力を表す第1期間Σ受信電力と、
前記第1期間Δ信号の受信電力を表す第1期間Δ受信電力と、
前記第0期間Σ信号の受信電力を表す第0期間Σ受信電力と
にさらに基づいて前記目標を検出し、
前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第0期間反射波とも前記第1期間反射波とも別の、前記レーダ波が少なくとも前記クラッタ源表面で反射した第2期間反射波を、前記第2時刻と、前記第2時刻から前記第1時間間隔が経過した第3時刻との間の第2期間にさらに受信し、
前記信号処理装置は、
前記第2期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第2期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第2期間第2領域反射波との和を表す第2期間Σ信号
をさらに生成し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値より大きく、かつ、
前記第1期間Σ受信電力から前記第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値より小さく、かつ、
前記第1期間Σ受信電力から前記第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値より大きく、かつ、
前記第2期間Σ信号の受信電力を表す第2期間Σ受信電力から前記第1期間Σ受信電力を引き算した第4電力差が第4閾値より大きい
ときに、前記レーダ波が前記第1期間反射波として反射された空間で前記目標を検出したと判定し、
前記第1閾値は、前記ノイズレベルと、前記レーダ反射波のうち、前記目標に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されており、
前記第2閾値は、前記レーダ反射波のうち、前記クラッタ源表面に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、前記目標受信電力とに基づいて設定されており、
前記第3閾値は、前記目標受信電力に基づいて設定されており、
前記第4閾値は、前記アンテナから前記クラッタ源表面までの距離と、前記レーダ波が前記第3時刻までに伝播する距離とが等しいときの、前記クラッタ受信電力と前記目標受信電力とに基づいて設定されている
レーダ装置。
【請求項3】
飛しょう体に搭載され、クラッタ源表面の上にある目標に前記飛しょう体を誘導するために前記目標を検出するレーダ装置であって、
前記目標の上方からレーダ波を送信し、前記レーダ波が少なくとも前記目標で反射したレーダ反射波に含まれる第1期間反射波を受信するアンテナと、
前記レーダ波を送信してから前記第1期間反射波を受信するまでの時間と、前記第1期間反射波とに基づいて前記目標を検出する信号処理装置と
を備え、
送信された前記レーダ波が照射される照射角度の範囲は、前記クラッタ源表面の法線方向を含み、
前記第1期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記レーダ波を送信してから第1時間が経過した第1時刻と、前記第1時刻から第1時間間隔が経過した第2時刻との間の第1期間に受信された部分であり、
前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第1期間反射波とは別の第0期間反射波をさらに受信し、
前記第0期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記第1時刻と、前記第1時刻までに前記第1時間間隔が経過する前の第0時刻との間の第0期間に受信された部分であり、
前記信号処理装置は、前記レーダ波を送信してから前記第0期間反射波を受信するまでの時間と、前記第0期間反射波とにさらに基づいて前記目標を検出し、
前記アンテナは、
第1領域に配置された第1アンテナ群と、
前記第1領域とは別の第2領域に配置された第2アンテナ群と
を備え、
前記第1アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第1領域に到達する第1領域反射波を受信し、
前記第2アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第2領域に到達する第2領域反射波を受信し、
前記レーダ装置は、
前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の和を表すΣ信号と、前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の差を表すΔ信号とを生成するモノパルスコンパレータ
をさらに備え、
前記信号処理装置は、前記Σ信号と前記Δ信号とにさらに基づいて前記目標を検出し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第1期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第1期間第2領域反射波との和を表す第1期間Σ信号と、
前記第1期間第1領域反射波と前記第1期間第2領域反射波との差を表す第1期間Δ信号と、
前記第0期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第0期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第0期間第2領域反射波との和を表す第0期間Σ信号と
を生成し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間Σ信号の受信電力を表す第1期間Σ受信電力と、
前記第1期間Δ信号の受信電力を表す第1期間Δ受信電力と、
前記第0期間Σ信号の受信電力を表す第0期間Σ受信電力と
にさらに基づいて前記目標を検出し、
前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第0期間反射波とも前記第1期間反射波とも別の、前記レーダ波が少なくとも前記目標で反射した第2期間反射波を、前記第2時刻以降の第3時刻と、前記第3時刻から前記第1時間間隔が経過した第4時刻との間の第2期間にさらに受信し、
前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第0期間反射波とも前記第1期間反射波とも前記第2期間反射波とも別の、前記レーダ波が少なくとも前記クラッタ源表面で反射した第3期間反射波を、前記第4時刻と、前記第4時刻から前記第1時間間隔が経過した第5時刻との間の第3期間にさらに受信し、
前記信号処理装置は、
前記第2期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第2期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第2期間第2領域反射波との和を表す第2期間Σ信号と、
前記第3期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第3期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第3期間第2領域反射波との和を表す第3期間Σ信号と
をさらに生成し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値より大きく、かつ、
前記第1期間Σ受信電力から前記第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値より小さく、かつ、
前記第1期間Σ受信電力から前記第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値より大きく、かつ、
前記第3期間Σ信号の受信電力を表す第3期間Σ受信電力から前記第2期間Σ信号の受信電力を表す第2期間Σ受信電力を引き算した第4電力差が第4閾値より大きい
ときに、前記レーダ波が前記第2期間反射波として反射された空間で前記目標を検出したと判定し、
前記第1閾値は、前記ノイズレベルと、前記レーダ反射波のうち、前記目標に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されており、
前記第2閾値は、前記レーダ反射波のうち、前記クラッタ源表面に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、前記目標受信電力とに基づいて設定されており、
前記第3閾値は、前記目標受信電力に基づいて設定されており、
前記第4閾値は、前記アンテナから前記クラッタ源表面までの距離と、前記レーダ波が前記第3時刻までに伝播する距離とが等しいときの、前記クラッタ受信電力と前記目標受信電力とに基づいて設定されている
レーダ装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のレーダ装置において、
前記信号処理装置は、
前記第4電力差が第4閾値より小さいときに、前記第1時間間隔を第2時間間隔だけ縮小し、
縮小された前記第1時間間隔を用いて前記検出の処理を繰り返す
レーダ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のレーダ装置において、
前記信号処理装置は、
前記第2電力差が前記第1閾値より小さいときに、前記第1時刻を前記第1時間間隔だけ遅延させ、
遅延された前記第1時刻を用いて前記検出の処理を繰り返す
レーダ装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のレーダ装置において、
前記信号処理装置は、
前記第2電力差が第2閾値より大きいときに、前記照射角度の範囲を微調整し、
微調整された前記照射角度の範囲に前記レーダ波を送信して得られる前記Σ信号と前記Δ信号とに基づいて前記検出の処理を繰り返す
レーダ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のレーダ装置において、
前記信号処理装置は、
前記第2電力差が第3閾値より小さいときに、前記照射角度の範囲を微調整し、
微調整された前記照射角度の範囲に前記レーダ波を送信して得られる前記Σ信号と前記Δ信号とに基づいて前記検出の処理を繰り返す
レーダ装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のレーダ装置と、
前記レーダ装置が前記目標の検出に基づいて出力する信号に基づいて姿勢制御信号を生成する制御装置と、
前記姿勢制御信号に基づいて、前記飛しょう体が前記目標に向かって移動するように前記飛しょう体の姿勢を制御する姿勢制御装置と
を備える
飛しょう体。
【請求項9】
クラッタ源表面の上にある目標に飛しょう体を誘導する処理を、演算装置が実行することによって実現するためのレーダ装置の誘導プログラムであって、
前記目標の上方からレーダ波を送信し、前記レーダ波が少なくとも前記目標で反射したレーダ反射波に含まれる第1期間反射波をアンテナで受信することと、
前記レーダ波を送信してから前記第1期間反射波を受信するまでの時間と、前記第1期間反射波とに基づいて信号処理装置で前記目標を検出することと
を含み、
送信された前記レーダ波が照射される照射角度の範囲は、前記クラッタ源表面の法線方向を含み、
前記第1期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記レーダ波を送信してから第1時間が経過した第1時刻と、前記第1時刻から第1時間間隔が経過した第2時刻との間の第1期間に受信された部分であり、
前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第1期間反射波とは別の第0期間反射波をさらに受信し、
前記第0期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記第1時刻と、前記第1時刻までに前記第1時間間隔が経過する前の第0時刻との間の第0期間に受信された部分であり、
前記信号処理装置は、前記レーダ波を送信してから前記第0期間反射波を受信するまでの時間と、前記第0期間反射波とにさらに基づいて前記目標を検出し、
前記アンテナは、
第1領域に配置された第1アンテナ群と、
前記第1領域とは別の第2領域に配置された第2アンテナ群と
を備え、
前記第1アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第1領域に到達する第1領域反射波を受信し、
前記第2アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第2領域に到達する第2領域反射波を受信し、
前記レーダ装置は、
前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の和を表すΣ信号と、前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の差を表すΔ信号とを生成するモノパルスコンパレータ
をさらに備え、
前記信号処理装置は、前記Σ信号と前記Δ信号とにさらに基づいて前記目標を検出し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第1期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第1期間第2領域反射波との和を表す第1期間Σ信号と、
前記第1期間第1領域反射波と前記第1期間第2領域反射波との差を表す第1期間Δ信号と、
前記第0期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第0期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第0期間第2領域反射波との和を表す第0期間Σ信号と
を生成し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間Σ信号の受信電力を表す第1期間Σ受信電力と、
前記第1期間Δ信号の受信電力を表す第1期間Δ受信電力と、
前記第0期間Σ信号の受信電力を表す第0期間Σ受信電力と
にさらに基づいて前記目標を検出し、
前記信号処理装置は、
前記第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値より大きく、かつ、
前記第1期間Σ受信電力から前記第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値より小さく、かつ、
前記第1期間Σ受信電力から前記第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値より大きい
ときに、前記レーダ波が前記第1期間反射波として反射された空間で前記目標を検出したと判定し、
前記第1閾値は、前記ノイズレベルと、前記レーダ反射波のうち、前記目標に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されており、
前記第2閾値は、前記レーダ反射波のうち、前記クラッタ源表面に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、前記目標受信電力とに基づいて設定されており、
前記第3閾値は、前記目標受信電力に基づいて設定されている、
誘導プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーダ装置と、このレーダ装置を用いる飛しょう体と、このレーダ装置が用いる誘導プログラムに関し、例えば、飛しょう体を目標に誘導するために目標を検出するレーダ装置と、このレーダ装置を用いる飛しょう体と、このレーダ装置が用いる誘導プログラムとに好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
航空機などの飛しょう体を艦船などの目標に誘導するとき、飛しょう体に搭載されたレーダ装置で目標を捜索して追尾する手法がある。ここで、艦船の周囲の海面などの表面は、レーダ波を反射して強い電力を有するクラッタ波を生成するクラッタ源になり得る。その結果、レーダ装置が目標を検出するために鉛直下向き方向にレーダ波を送信すると、目標で反射されるレーダ反射波がクラッタ波に埋もれてしまい、検出が困難になる場合がある。
【0003】
このような問題を避けるために、海面などのクラッタ源表面との間のグレージング角を比較的小さくして、飛しょう体が艦船に対して斜めの方向から艦船を観測する手法がある。しかし、艦船にもレーダ装置が搭載されている場合には、グレージング角が比較的小さいときに飛しょう体が艦船のレーダ装置の覆域に入る。その結果、飛しょう体は艦船によって容易に発見される可能性がある。
【0004】
上記に関連して、特許文献1(特開昭60-159668号公報)には、レーダ装置が開示されている。このレーダ装置は、モノパルス方式アンテナの和チャンネル信号とエレベーション差チャンネル信号を用いて、アンテナボアサイト軸上のアンテナから大地までの距離を測定する航空機搭載用のレーダ装置である。このレーダ装置は、距離追尾回路に高度センサからの高度信号と姿勢角センサからの機体ピッチ角信号に対応して距離ゲートの掃引範囲を制御する距離ゲート制御回路及び送信パルス幅を制御するパルス幅制御回路とを設けたことを特徴とする。
【0005】
また、特許文献2(特開2000-329843号公報)には、レーダ高度計が開示されている。このレーダ高度計は、送受信アンテナを備える。このレーダ高度計は、送信アンテナの放射角度を変えるため複数個の送受共用の送信アンテナを各々角度をつけて取り付け、複数個の送信アンテナを順次切り替えることを特徴とする。
【0006】
また、特許文献3(特開2005-326228号公報)には、レーダ装置が開示されている。このレーダ装置は、送受信アンテナを介して広帯域パルス信号を送信し、その反射波を受信信号として受信し、受信信号に基づいて目標を検出する。このレーダ装置は、レーダ高度推定手段と、記憶部と、制御装置と、レンジ圧縮手段と、クラッタ照射パターン算出手段と、クラッタ散乱断面積推定手段と、クラッタ抑圧手段と、目標検出手段とを備えることを特徴とする。このレーダ高度推定手段は、位置情報の入力に基づいてレーダ高度を推定する。この記憶部は、送受信アンテナの指向角度と受信信号とを対応付けて蓄積する。この制御装置は、送受信アンテナのアンテナパターンの指向角度をエレベーション方向に制御する。このレンジ圧縮手段は、送受信アンテナを介して受信した受信信号をパルス圧縮処理し、パルス圧縮処理後の受信信号を制御装置から受信した指向角度の情報と対応付けて記憶部に記憶させる。このクラッタ照射パターン算出手段は、推定されたレーダ高度と、制御装置からの指向角度の情報と、事前に計測した送受信アンテナのアンテナパターンとに基づいて、クラッタ照射パターンを算出する。このクラッタ散乱断面積推定手段は、算出されたクラッタ照射パターンと、記憶部に蓄積されたそれぞれの指向角度に対応するパルス圧縮処理後の受信信号とから、それぞれの受信信号におけるクラッタ散乱断面積を推定する。このクラッタ抑圧手段は、推定されたクラッタ散乱断面積を用いて、記憶部に蓄積されたそれぞれのパルス圧縮処理後の受信信号に対してクラッタ電力を抑圧したクラッタ抑圧信号を算出する。この目標検出手段は、算出されたクラッタ抑圧信号の中から目標を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭60-159668号公報
【文献】特開2000-329843号公報
【文献】特開2005-326228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
クラッタ源表面の上にある目標を、目標の上方から検出することができるレーダ装置と、このレーダ装置を用いる飛しょう体と、このレーダ装置が用いる誘導プログラムとを提供する。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0010】
一実施の形態によれば、レーダ装置(2)は、飛しょう体(1)に搭載され、クラッタ源表面(9)の上にある目標(8)に飛しょう体(1)を誘導するために目標(8)を検出する。レーダ装置(2)は、アンテナ(25)と、信号処理装置(21)とを備える。アンテナ(25)は、目標(8)の上方からレーダ波を送信し、レーダ波が少なくとも目標(8)で反射したレーダ反射波に含まれる第1期間反射波を受信する。信号処理装置(21)は、レーダ波を送信してから第1期間反射波を受信するまでの時間と、第1期間反射波とに基づいて目標(8)を検出する。送信されたレーダ波が照射される照射角度の範囲(20)は、クラッタ源表面(9)の法線方向を含む。
前記第1期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記レーダ波を送信してから第1時間が経過した第1時刻と、前記第1時刻から第1時間間隔が経過した第2時刻との間の第1期間に受信された部分であり、前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第1期間反射波とは別の第0期間反射波をさらに受信し、前記第0期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記第1時刻と、前記第1時刻までに前記第1時間間隔が経過する前の第0時刻との間の第0期間に受信された部分であり、前記信号処理装置は、前記レーダ波を送信してから前記第0期間反射波を受信するまでの時間と、前記第0期間反射波とにさらに基づいて前記目標を検出し、前記アンテナは、第1領域に配置された第1アンテナ群と、前記第1領域とは別の第2領域に配置された第2アンテナ群とを備え、前記第1アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第1領域に到達する第1領域反射波を受信し、前記第2アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第2領域に到達する第2領域反射波を受信し、前記レーダ装置は、前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の和を表すΣ信号と、前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の差を表すΔ信号とを生成するモノパルスコンパレータをさらに備え、前記信号処理装置は、前記Σ信号と前記Δ信号とにさらに基づいて前記目標を検出し、前記信号処理装置は、前記第1期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第1期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第1期間第2領域反射波との和を表す第1期間Σ信号と、前記第1期間第1領域反射波と前記第1期間第2領域反射波との差を表す第1期間Δ信号と、前記第0期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第0期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第0期間第2領域反射波との和を表す第0期間Σ信号とを生成し、前記信号処理装置は、前記第1期間Σ信号の受信電力を表す第1期間Σ受信電力と、前記第1期間Δ信号の受信電力を表す第1期間Δ受信電力と、前記第0期間Σ信号の受信電力を表す第0期間Σ受信電力とにさらに基づいて前記目標を検出し、前記信号処理装置は、前記第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値より大きく、かつ、前記第1期間Σ受信電力から前記第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値より小さく、かつ、前記第1期間Σ受信電力から前記第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値より大きいときに、前記レーダ波が前記第1期間反射波として反射された空間で前記目標を検出したと判定し、前記第1閾値は、前記ノイズレベルと、前記レーダ反射波のうち、前記目標に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されており、前記第2閾値は、前記レーダ反射波のうち、前記クラッタ源表面に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、前記目標受信電力とに基づいて設定されており、前記第3閾値は、前記目標受信電力に基づいて設定されている。
【0011】
一実施の形態によれば、レーダ装置の誘導プログラムは、クラッタ源表面(9)の上にある目標(8)に飛しょう体(1)を誘導する処理を、演算装置が実行することによって実現するためのものである。誘導プログラムは、目標(8)の上方からレーダ波を送信し、レーダ波が少なくとも目標(8)で反射したレーダ反射波に含まれる第1期間反射波をアンテナで受信することと、レーダ波を送信してから第1期間反射波を受信するまでの時間と、第1期間反射波とに基づいて信号処理装置で目標(8)を検出することとを含む。送信されたレーダ波が照射される照射角度の範囲(20)は、クラッタ源表面(9)の法線方向を含む。
前記第1期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記レーダ波を送信してから第1時間が経過した第1時刻と、前記第1時刻から第1時間間隔が経過した第2時刻との間の第1期間に受信された部分であり、前記アンテナは、前記レーダ反射波に含まれる、前記第1期間反射波とは別の第0期間反射波をさらに受信し、前記第0期間反射波は、前記レーダ反射波のうち、前記第1時刻と、前記第1時刻までに前記第1時間間隔が経過する前の第0時刻との間の第0期間に受信された部分であり、前記信号処理装置は、前記レーダ波を送信してから前記第0期間反射波を受信するまでの時間と、前記第0期間反射波とにさらに基づいて前記目標を検出し、前記アンテナは、第1領域に配置された第1アンテナ群と、前記第1領域とは別の第2領域に配置された第2アンテナ群とを備え、前記第1アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第1領域に到達する第1領域反射波を受信し、前記第2アンテナ群は、前記レーダ反射波のうち、前記第2領域に到達する第2領域反射波を受信し、前記レーダ装置は、前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の和を表すΣ信号と、前記第1領域反射波と前記第2領域反射波の差を表すΔ信号とを生成するモノパルスコンパレータをさらに備え、前記信号処理装置は、前記Σ信号と前記Δ信号とにさらに基づいて前記目標を検出し、前記信号処理装置は、前記第1期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第1期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第1期間第2領域反射波との和を表す第1期間Σ信号と、前記第1期間第1領域反射波と前記第1期間第2領域反射波との差を表す第1期間Δ信号と、前記第0期間反射波のうち、前記第1アンテナ群が受信した第0期間第1領域反射波と、前記第2アンテナ群が受信した第0期間第2領域反射波との和を表す第0期間Σ信号とを生成し、前記信号処理装置は、前記第1期間Σ信号の受信電力を表す第1期間Σ受信電力と、前記第1期間Δ信号の受信電力を表す第1期間Δ受信電力と、前記第0期間Σ信号の受信電力を表す第0期間Σ受信電力とにさらに基づいて前記目標を検出し、前記信号処理装置は、前記第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値より大きく、かつ、前記第1期間Σ受信電力から前記第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値より小さく、かつ、前記第1期間Σ受信電力から前記第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値より大きいときに、前記レーダ波が前記第1期間反射波として反射された空間で前記目標を検出したと判定し、前記第1閾値は、前記ノイズレベルと、前記レーダ反射波のうち、前記目標に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されており、前記第2閾値は、前記レーダ反射波のうち、前記クラッタ源表面に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、前記目標受信電力とに基づいて設定されており、前記第3閾値は、前記目標受信電力に基づいて設定されている。
【発明の効果】
【0012】
一実施の形態によれば、クラッタ源表面の上にある目標を、目標の上方から検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施の形態による飛しょう体の一構成例を示すブロック回路図である。
図2A図2Aは、一関連技術による飛しょう体の目標に対するグレージング角の例を示す図である。
図2B図2Bは、一関連技術によるレーダ装置の、目標までの距離と、目標から得る反射波の受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図3A図3Aは、一実施の形態によるレーダ装置の一構成例を示すブロック回路図である。
図3B図3Bは、一実施の形態による信号処理装置の一構成例を示すブロック回路図である。
図3C図3Cは、一実施の形態によるアンテナの一構成例を示す平面図である。
図4A図4Aは、一実施の形態による誘導プログラムの一構成例を示すフローチャートの前半部分である。
図4B図4Bは、一実施の形態による誘導プログラムの一構成例を示すフローチャートの後半部分である。
図5図5は、一実施の形態によるレーダ装置の、ビーム照射範囲とレンジ分解能との一例を示す図である。
図6A図6Aは、一実施の形態によるレーダ装置が所定のレンジセルで得るレーダ反射波の反射源分布パターンの一例を示す図である。
図6B図6Bは、一実施の形態によるレーダ装置が所定のレンジセルで得るレーダ反射波の反射源分布パターンの一例を示す図である。
図6C図6Cは、一実施の形態によるレーダ装置が所定のレンジセルで得るレーダ反射波の反射源分布パターンの一例を示す図である。
図6D図6Dは、一実施の形態によるレーダ装置が所定のレンジセルで得るレーダ反射波の反射源分布パターンの一例を示す図である。
図6E図6Eは、一実施の形態によるレーダ装置が所定のレンジセルで得るレーダ反射波の反射源分布パターンの一例を示す図である。
図7図7は、一実施の形態によるレーダ装置の照射方向と目標との間の角度と、目標から得るレーダ反射波の受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図8A図8Aは、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との距離と、目標から得る反射波の受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図8B図8Bは、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との距離と、目標から得る反射波の受信電力との関係の別の一例を示すグラフである。
図9A図9Aは、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との距離と、目標から得る反射波のΣ電力との関係の一例を示すグラフである。
図9B図9Bは、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との角度と、目標から得るクラッタ反射波のΣクラッタ受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図9C図9Cは、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との角度と、目標から得るクラッタ反射波のΔクラッタ受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図10A図10Aは、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との距離と、目標から得る反射波のΔ電力との関係の一例を示すグラフである。
図10B図10Bは、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との角度と、目標から得る目標反射波のΣ目標受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図10C図10Cは、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との角度と、目標から得る目標反射波のΔ目標受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図11A図11Aは、一実施の形態による誘導プログラムの一構成例を示すフローチャートの前半部分である。
図11B図11Bは、一実施の形態による誘導プログラムの一構成例を示すフローチャートの後半部分である。
図12図12は、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との距離と、目標から得る反射波の受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図13図13は、一実施の形態によるレーダ装置の、ビーム照射範囲とレンジ分解能との一例を示す図である。
図14図14は、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との距離と、目標から得る反射波の受信電力との関係の一例を示すグラフである。
図15図15は、一実施の形態によるレーダ装置の、ビーム照射範囲とレンジ分解能との別の一例を示す図である。
図16図16は、一実施の形態によるレーダ装置の、目標との距離と、目標から得る反射波の受信電力との関係の別の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して、本発明によるレーダ装置と、飛しょう体と、誘導プログラムとを実施するための形態を以下に説明する。
【0015】
(第1実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による飛しょう体1は、レーダ装置2と、制御装置3と、姿勢制御装置4と、推進装置5とを備えている。レーダ装置2は、目標を検出し、目標を検出したことを表す目標検出信号と、飛しょう体1に対する目標の相対位置を表す追尾角度制御信号とを生成して制御装置3に送信する。制御装置3は、追尾角度制御信号に基づいて、姿勢制御装置4を制御するための姿勢制御信号を生成して姿勢制御装置4に送信する。また、制御装置3は、目標検出信号に基づいて、推進装置5を制御するための推進制御信号を生成して推進装置5に送信する。姿勢制御装置4は、姿勢制御信号に基づいて動作し、飛しょう体1の姿勢を制御する。推進装置5は、推進制御信号に基づいて動作し、飛しょう体1の推進力を制御する。
【0016】
図2Aに示すように、関連技術による飛しょう体1Aは、レーダ装置2Aを備えており、レーダ装置2Aは目標である艦船8を検出距離Dから検出し、この検出に基づいて飛しょう体1Aは艦船8に向かって移動する。同様に、関連技術による飛しょう体1Bは、レーダ装置2Bを備えており、レーダ装置2Bは目標である艦船8を検出距離Dから検出し、この検出に基づいて飛しょう体1Bは艦船8に向かって移動する。
【0017】
図2Aの例では、艦船8は海面9の上に存在する。厳密には、艦船8のうち、海面9の上に存在する部分が、目標として検出される対象である。
【0018】
艦船8は、飛しょう体1A、1Bなどを検出するための、別のレーダ装置を備えている。この別のレーダ装置は、艦船レーダ覆域81の内側に存在する飛しょう体1Aを検出するが、艦船レーダ覆域81の外側に存在する飛しょう体1Bを検出しない。この観点において、艦船8によって検出されずに艦船8に到達するためには、より低い高度Hで移動する飛しょう体1Aよりも、より高い高度Hで移動する飛しょう体1Bの方が有利である。ここで、飛しょう体1Aの高度Hの基準と、飛しょう体1Bの高度Hとの基準とは、いずれも海面9である。言い換えれば、飛しょう体1Aから海面9までの距離を高度Hと呼び、飛しょう体1Bから海面9までの距離を高度Hと呼ぶ。
【0019】
その一方で、飛しょう体1A、1Bの高度H、Hが高ければ高いほど、レーダ装置2A、2Bによる艦船8の検出は困難である。飛しょう体1A、1Bの高度H、Hが高ければ高いほど、飛しょう体1A、1Bのそれぞれと艦船8を結ぶ直線と、海面9との間のグレージング角A、Aは大きい。グレージング角A、Aが大きければ大きいほど、レーダ装置2A、2Bが送信するレーダ波が海面9で反射したクラッタ反射波の受信電力が大きくなる。クラッタ反射波の受信電力が大きければ大きいほど、レーダ波が艦船8で反射した目標反射波とクラッタ反射波との区別がつきにくくなる。
【0020】
さらに、図2Bに示すように、レーダ装置2Aが検出距離Dから艦船8を検出し、レーダ装置2Bが検出距離Dから艦船8を検出するためには、目標反射波の受信電力である目標受信電力が、ノイズレベルより十分に高いことが好ましい。図2Bにおいて、グラフGは飛しょう体1Aと艦船8の間の検出距離Dと、レーダ装置2Aが受信する海面9からのクラッタ反射波の受信電力との関係の一例を表す。同様に、グラフGは飛しょう体1Bと艦船8の間の検出距離Dと、レーダ装置2Bが受信する海面9からのクラッタ反射波の受信電力との関係の一例を表す。なお、レーダ装置2Aから海面9までの距離は高度Hであるので、グラフGから読み取れるように、レーダ装置2Aが検出距離Hにおいて受信する電力は海面9からのクラッタ反射電力となる。同様に、レーダ装置2Bから海面9までの距離は高度Hであるので、グラフGから読み取れるように、レーダ装置2Bが検出距離Hにおいて受信する電力は海面9からのクラッタ反射電力となる。
【0021】
このように、飛しょう体1A、1Bが目標としての艦船8によって検出されないことと、飛しょう体1A、1Bのレーダ装置2A、2Bが目標としての艦船8を検出できることとは、トレードオフの関係にある。
【0022】
一実施の形態によれば飛しょう体1が鉛直下向き方向またはこれに近い方向にある艦船8を検出できることについて説明する。
【0023】
図3Aに示すように、一実施の形態によるレーダ装置2は、信号処理装置21と、送信機22と、サーキュレータ23と、モノパルスコンパレータ24と、アンテナ25と、受信機26とを備えている。信号処理装置21は、パルス符号発生器211と、目標検出処理部212と、追尾処理部213とを備えている。モノパルスコンパレータ24は、Σ信号生成部241と、Δ信号生成部242とを備えている。アンテナ25は、アンテナ素子251、252を備えている。
【0024】
図3Bに示すように、信号処理装置21は、コンピュータなどの計算機として構成されていてもよい。図3Bの例では、信号処理装置21は、バス200と、演算装置201と、記憶装置202と、インタフェース205とを備えている。バス200は、演算装置201、記憶装置202およびインタフェース205を、相互に通信可能に接続している。インタフェース205は、パルス符号発生器211と、制御装置3とに接続されている。
【0025】
演算装置201は、記憶装置202に格納されているプログラムを実行することによって信号処理装置21の機能を実現する。記憶装置202は、目標検出処理部212の機能を実現するための目標検出プログラム203と、追尾処理部213の機能を実現するための追尾プログラム204とを格納している。目標検出プログラム203は、パルス符号発生器211を制御する機能をさらに実現してもよい。記憶装置202は、後述する観測処理を実現するための観測プログラムをさらに格納していてもよい。観測プログラムと、目標検出プログラム203と、追尾プログラム204との一部または全てを、レーダ装置2の機能を実現するために演算装置201が実行する誘導プログラムと総称してもよい。これらのプログラムは、記録媒体206から読み出されて記憶装置202に格納されてもよい。
【0026】
図3Cに示すように、一実施の形態によるアンテナ25は、アンテナ素子251を含む第1アンテナ群253と、アンテナ素子252を含む第2アンテナ群254とを備えるアレイアンテナである。図3Cの例において、第1アンテナ群253は第1領域255に配置されており、第2アンテナ群254は第1領域255とは別の第2領域256に配置されている。第1領域255と第2領域256は、アンテナ25の中心に対して点対称の位置関係にあってもよい。
【0027】
図4A図4Bとのフローチャートを参照して、一実施の形態による飛しょう体1およびレーダ装置2の動作、すなわち一実施の形態による誘導プログラムの一構成例について説明する。なお、図4A図4Bとは、一実施の形態による目標検出方法の一構成例を表しているとも言える。
【0028】
飛しょう体1が目標としての艦船8に十分に接近したとき、図4A図4Bとのフローチャートが開始する。飛しょう体1が艦船8に十分に接近したことは、演算装置201が所定のプログラムを実行して検知してもよい。一例として、演算装置201が、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)で測定した飛しょう体1の位置情報と、飛しょう体1に予め格納されている艦船8の位置情報とに基づいて、飛しょう体1が艦船8に十分に接近したことを検知してもよい。
【0029】
図4A図4Bとのフローチャートが開始すると、ステップS01においてレーダ装置2が観測処理を開始する。ステップS01において、演算装置201は目標検出プログラム203を実行してパルス符号発生器211を制御する。パルス符号発生器211は、演算装置201の制御下で、パルス符号を発生する。送信機22は、パルス符号に基づいてレーダ波を生成して出力する。レーダ波は、サーキュレータ23と、Σ信号生成部241とを介してアンテナ25に伝達され、第1アンテナ素子251を含む第1アンテナ群253と、第2アンテナ素子252を含む第2アンテナ群254とによって飛しょう体1の外部に送信される。
【0030】
レーダ波は、目標としての艦船8および/またはクラッタ源表面としての海面9で反射する。反射したレーダ波をレーダ反射波と呼ぶ。レーダ反射波は、第1アンテナ素子251を含む第1アンテナ群253と、第2アンテナ素子252を含む第2アンテナ群254とによって受信される。レーダ反射波のうち、第1アンテナ群253によって受信された部分を、第1領域反射波と呼ぶ。同様に、レーダ反射波のうち、第2アンテナ群254によって受信された部分を、第2領域反射波と呼ぶ。
【0031】
モノパルスコンパレータ24は、第1領域反射波と第2領域反射波とをアンテナ25から受信する。Σ信号生成部241は、第1領域反射波と第2領域反射波とに基づいて、第1領域反射波と第2領域反射波との和を表すΣ信号を生成する。Δ信号生成部242は、第1領域反射波と第2領域反射波とに基づいて、第1領域反射波と第2領域反射波との差を表すΔ信号を生成する。
【0032】
受信機26は、Σ信号とΔ信号とを受信して信号処理装置21に送信する。このとき、Σ信号はサーキュレータ23を介してΣ信号生成部241から受信機26に送信されてもよい。
【0033】
ステップS02において、目標検出処理部212が目標検出処理を開始する。目標検出処理部212は、Σ信号を受信し、Σ信号のうち、レーダ波を送信してから所定の時間が経過した第1時刻から、この第1時刻から所定の時間間隔が経過した第2時刻までの時間間隔に受信したレーダ反射波に由来する部分を抽出する。同様に、目標検出処理部212は、Δ信号を受信し、Δ信号のうち、同じ時間間隔に受信したレーダ反射波に由来する部分を抽出する。
【0034】
Σ信号とΔ信号のそれぞれから一部を抽出することについて説明する。レーダ装置2と、艦船8または海面9との間で、レーダ波およびレーダ反射波が伝播する速度が一定かつ一様であるとき、レーダ波の送信時刻を基準とする所定の時間間隔に受信されたレーダ反射波とは、レーダ装置2がレーダ波を送信した位置を基準とする所定の領域で反射したレーダ反射波である。言い換えれば、レーダ波がレーダ装置2から送信された時刻から第1時刻までに伝播した距離が第1距離であり、レーダ波がレーダ装置2から送信された時刻から第2時刻までに伝播した距離が第2距離であるとき、第1時刻から第2時刻までの第1期間にレーダ装置2が受信したレーダ反射波は、第1距離の半分から第2距離の半分までの範囲に含まれる領域に存在する物体の表面で反射している。
【0035】
図5に示すように、海面9の上にある艦船8の上方に位置する飛しょう体1のレーダ装置2が艦船8に向けてレーダ波を送信するとき、レーダ波が送信される照射角度の範囲であるビーム照射範囲20の内側の領域を、レーダ装置2からの距離に基づいて複数のレンジセルRN-1、R、RN+1、RN+2、RN+3などに仮想的に分割することができる。例えば、レンジセルRN-1として、ビーム照射範囲20のうち、レーダ装置2からの距離がDN-1からDまでの空間を定義する。同様に、レンジセルRとして、ビーム照射範囲20のうち、レーダ装置2からの距離がDからDN+1までの空間を定義する。レンジセルRN+1として、ビーム照射範囲20のうち、レーダ装置2からの距離がDN+1からDN+2までの空間を定義する。レンジセルRN+2として、ビーム照射範囲20のうち、レーダ装置2からの距離がDN+2からDN+3までの空間を定義する。レンジセルRN+3として、ビーム照射範囲20のうち、レーダ装置2からの距離がDN+3からDN+4までの空間を定義する。これらの定義は、例えば、信号処理装置21の演算装置201が行う。このとき、それぞれのレンジセルの、レーダ装置2からの距離の方向の幅は一定であり、この幅をレンジ分解能ΔRと呼ぶ。レンジ分解能ΔRの値は、適宜な値が予め記憶装置202に格納されていてもよい。また、レンジ分解能ΔRの適宜な初期値が予め記憶装置202に格納されており、演算装置201がレーダ反射波などに基づいてこの初期値を調節してレンジ分解能ΔRの値を決定してもよい。なお、レンジセルの番号には、最大値Nmaxが設定されていてもよい。このとき、レーダ装置2の検索範囲は、ビーム照射範囲20のうち、レーダ装置2からレンジセルRNmaxの外側表面までの範囲である。図5の表記にならえば、レーダ装置2の検索範囲は、ビーム照射範囲20のうち、レーダ装置2から距離DNmax+1までの範囲である。ここで、最大値Nmaxは、任意の数値に設定することができる。最大値Nmaxにより目標とクラッタ源の境界の捜索範囲が既定されるため、あらかじめ目標高度相当の適当な数値に最大値Nmaxを設定しておいても良いし、飛しょう体1の高度に応じて最大値Nmaxを制御しても良い。
【0036】
以降の説明では、各レンジセルの境界を、レーダ装置2からの距離で定義するが、これらの距離は、レーダ装置2からレーダ波が送信されてから経過した時間にそれぞれ対応し、したがってこれらの距離を対応する時間に読み替えることができることに注目されたい。例えば、距離としてのレンジ分解能ΔRは、上記時間間隔に読み替えることができる。演算装置201において、受信したレーダ反射波を上記時間間隔ごとに分割することで、対応するレンジセルにおける反射電力に読み替えることができ、レンジごとの反射物の有無を分析することができる。
【0037】
なお、図5の例では、クラッタ源表面としての海面9は水平な平面に近似されており、飛しょう体1は海面9の法線方向である鉛直下向き方向に移動しており、レーダ装置2がレーダ波を送信する照射角度の範囲の中心も鉛直下向き方向であるが、一実施の形態はこの例に限定されない。一実施の形態は、例えば、クラッタ源表面が、水平方向に対して傾斜している地面であってもよい。この場合、飛しょう体1は地面の法線方向に移動していてもよい。また、レーダ装置2の照射角度の範囲にはクラッタ源表面の法線方向が含まれていることが好ましいが、照射角度の範囲の中心がクラッタ源表面の法線方向に一致していなくてもよい。このように移動することで、飛しょう体1が目標から発見されにくいことが期待される。例えば、図2Aに示すように、艦船8の艦船レーダ覆域81がクラッタ源表面としての海面9に対して平行な方向を中心に、海面9の法線方向に対して所定の角度の範囲まで広がっている場合、飛しょう体1が目標としての艦船8に接近するときに、艦船8の艦船レーダ覆域81の外側を移動することができ、艦船8から発見されにくいことが期待される。また、クラッタ源表面の法線方向からレーダ波を照射することで、目標とクラッタ源表面の境界がレンジセルの境界と平行となり、目標からのレーダ反射波とクラッタ源からのレーダ反射波の分離が可能となる。
【0038】
図6Aは、図5で示したレンジセルRN-1の中に存在する反射物から得られるレーダ反射波の受信電力の分布に基づいて推定される反射源の分布を表す反射源分布パターン70N-1の一例を示す。ただし、図6Aの例では、レンジセルRN-1には艦船8も海面9も存在しない。したがって、レンジセルRN-1ではレーダ波が艦船8または海面9で反射したレーダ反射波が得られておらず、反射源分布パターン70N-1は空白である。
【0039】
図6Bは、図5で示したレンジセルRで得られるレーダ反射波の反射源分布パターン70の一例を示す。レンジセルRには艦船8は存在するが海面9は存在しない。したがって、反射源分布パターン70にはレーダ波が艦船8で反射した目標反射パターン80が含まれている。
【0040】
図6Cは、図5で示したレンジセルRN+1で得られるレーダ反射波の反射源分布パターン70N+1の一例を示す。レンジセルRN+1には艦船8は存在するが海面9は存在しない。したがって、反射源分布パターン70N+1にはレーダ波が艦船8で反射した目標反射パターン80N+1が含まれている。
【0041】
図6Dは、図5で示したレンジセルRN+2で得られるレーダ反射波の反射源分布パターン70N+2の一例を示す。レンジセルRN+2には艦船8と海面9が存在する。したがって、反射源分布パターン70N+2にはレーダ波が艦船8で反射した目標反射波の目標反射パターン80N+2と、レーダ波が海面9で反射したクラッタ反射波のクラッタ反射パターン90N+2とが含まれている。
【0042】
図6Eは、図5で示したレンジセルRN+3で得られるレーダ反射波の反射源分布パターン70N+3の一例を示す。レンジセルRN+3には艦船8は存在しないが海面9は存在する。したがって、反射源分布パターン70N+3にはレーダ波が海面9で反射したクラッタ反射波のクラッタ反射パターン90N+3が含まれている。
【0043】
このように、レンジセルRN-1、R、RN+1、RN+2、RN+3などのそれぞれに対応する成分を、目標検出処理部212は、Σ信号とΔ信号とのそれぞれから抽出する。
【0044】
図7は、レーダ装置2の照射方向と目標との間の角度と、目標から得るレーダ反射波の受信電力との関係の一例を示す。図7は2つのグラフG1ΣとG1Δとを含む。グラフG1Σは、Σ信号の受信電力であるΣ電力を表す。グラフG1Δは、Δ信号の受信電力であるΔ電力を表す。レーダ装置2の照射方向と目標との間の角度がゼロのとき、言い換えればレーダ装置2の照射角度の範囲の中心となる方向に目標が存在するときに、Σ電力は最大になり、Δ電力はゼロになる。
【0045】
目標検出処理部212は、Σ電力がノイズレベルより十分に大きいかどうかを判定する。言い換えれば、Σ電力からノイズレベルを引き算した電力差が、所定の閾値TH1より大きいかどうかを判定する。この電力差が閾値TH1より小さい場合は、Σ電力が目標としての艦船8に由来するかどうかの判定もできないと推定される。閾値TH1は、レーダ装置2などに依存するノイズレベルと、目標に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて適宜に設定される。
【0046】
図4Aに戻り、一例として、処理の対象となるレンジセルを番号iで示し、レンジセルRで得られたΣ電力をΣと表すとき、
Σ-ノイズレベル>TH1
の条件が満たされない場合(NO)には、図4Aのフローチャートの処理はステップS03に進む。反対に、上記の条件が満たされる場合(YES)には、処理はステップS04に進む。
【0047】
ステップS03において、目標検出処理部212は、処理の対象となるレンジセルの番号iをインクリメントし、次のレンジセルについてステップS02の処理を繰り返す。言い換えれば、目標検出処理部212はレンジセルの番号iをi+1に設定し、処理はステップS02に進む。判定処理の対象となるレンジセルの番号iは、ステップS02を最初に実行する前に、例えばステップS01において、初期化してもよい。
【0048】
目標検出処理部212は、ステップS02とステップS03とをこのように繰り返すことによって、ノイズレベルより十分に大きいΣ電力が得られるレンジセルを検出する。図8Aおよび図8Bに示すように、レンジセルRN-1、Rでは、グラフG2Σが表すΣ電力からノイズレベルを引き算した電力差が閾値TH1より小さいが、レンジセルRN+1では、Σ電力からノイズレベルを引き算した電力差が閾値TH1より大きい。これらの場合、処理の対象となるレンジセルの番号iがN+1に設定されている状態で図4A図4Bとのフローチャートの処理はステップS04に進む。
【0049】
ステップS04において、目標検出処理部212は、現在注目しているレンジセルのΣ電力から1つ前のレンジセルのΣ電力を引き算した電力差が、所定の閾値TH2より小さいかどうかを判定する。例えば、現在注目しているレンジセルの番号がiであるとき、このレンジセルRのΣ電力であるΣから、1つ前のレンジセルRi-1のΣ電力であるΣi-1を引き算した電力差が、閾値TH2より小さいかどうかを判定する。
【0050】
図9Aに示すように、レーダ装置2からの距離が、クラッタ源表面としての海面9に到達する直後と直前とでは、Σ電力が、クラッタ受信電力から目標受信電力に、急激に落ち込む。この落ち込みを、便宜上、落ち込み電力と呼ぶ。ここで、図9AのグラフG1の曲線部分は、レーダ装置2からクラッタ源表面としての海面9までの距離と、クラッタ受信電力との関係の一例を示している。これは、図5図6DのレンジセルRN+2の例に示すように、レーダ波を送信する照射角度の範囲のうちの広い範囲にクラッタ源表面としての海面9が存在するため、クラッタ源表面を含むレンジセルにおいては、図9Bに示すように、Σ電力が全体的に大きいからである。なお、図9Cに示すように、同じ条件においてはΔ電力も全体的に大きい。
【0051】
目標検出処理部212は、図9Aに示した落ち込み電力を検出することで、注目しているレンジセルにクラッタ源表面としての海面9が含まれているかどうかを判定することができる。したがって、ΣからΣi-1を引き算した電力差が閾値TH2以上である場合は、現在注目しているレンジセルのレーダ反射波はクラッタ源表面としての海面9に由来すると推定でき、目標としての艦船8に由来するレーダ反射波を受信できていない可能性がある。閾値TH2は、クラッタ源表面に由来する受信電力を表すクラッタ受信電力と、目標に由来する受信電力を表す目標受信電力とに基づいて適宜に設定されている。
【0052】
図4Aに戻り、一例として、現在注目しているレンジセルの番号がiであるとき、
Σ-Σi-1<TH2
の条件が満たされない場合(NO)には、図4Aのフローチャートの処理はステップS05に進む。図8Bの例において、現在注目しているレンジセルの番号iがN+1である場合には、レンジセルRN+1のΣ信号の電力であるΣN+1から、レンジセルRのΣ信号の電力であるΣを引き算した電力差は閾値TH2以上であると判定され、処理はステップS05に進む。反対に、上記の条件が満たされる場合(YES)には、処理はステップS06に進む。図8Aの例において、現在注目しているレンジセルの番号がN+1である場合には、レンジセルRN+1のΣ信号の電力であるΣN+1から、レンジセルRのΣ信号の電力であるΣを引き算した電力差は閾値TH2より小さいと判定され、処理はステップS06に進む。
【0053】
ステップS05において、目標検出処理部212は、レーダ波を送信する照射角度の範囲内に目標としての艦船8を捉えられるようにレーダ波のビームを照射する方向を微調整し、図4A図4Bとのフローチャートの処理はステップS01に戻って繰り返される。
【0054】
ステップS06において、目標検出処理部212は、現在注目しているレンジセルにおける、Σ電力からΔ電力を引き算した電力差が、所定の閾値TH3より大きいかどうかを判定する。図8Aおよび図8Bの例では、グラフG2ΣがΣ電力を表し、グラフG2ΔがΔ電力を表している。
【0055】
図10Aに示すように、注目しているレンジセルに、クラッタ源表面としての海面9が含まれておらず、かつ、目標としての艦船8が含まれているときに、もしレーダ波を送信する照射角度の範囲の中心で目標を捉えていれば、このレンジセルのΣ電力からΔ電力を引き算した電力差は十分に大きくなる。これは、図10B図10Cとに示すように、レーダ波を送信する照射角度の範囲の中心部分の狭い範囲に目標としての艦船8が存在し、かつ、クラッタ源表面としての海面9を含まないレンジセルにおいては、Σ電力は高く、Δ電力は低いからである。
【0056】
目標検出処理部212は、図10Aに示した電力差が、図8Aおよび図8BのレンジセルRN+1に示した閾値TH3より大きいかどうかを判定することで、注目しているレンジセルにおいて、レーダ波を送信する照射角度の範囲の中心部分に艦船8が存在するかどうかを判定することができる。したがって、注目しているレンジセルのΣ電力からΔ電力を引き算した電力差が閾値TH3より大きい場合は、そのレンジセルにおいて目標としての艦船8はレーダ波を送信する照射角度の範囲の中心部分にあると推定できる。反対に、この電力差が閾値TH3以下である場合は、そのレンジセルにおいて目標としての艦船8はレーダ波を送信する照射角度の範囲の中心部分から外れている、または何らかの誤検出がされた、などと推定できる。閾値TH3は、目標に由来する受信電力を表す目標受信電力に基づいて適宜に設定されている。
【0057】
図4Bに戻り、一例として、現在注目しているレンジセルの番号がiであるとき、
Σ-Δ>TH3
の条件が満たされない場合(NO)には、図4Bのフローチャートの処理はステップS07に進む。反対に、上記の条件が満たされる場合(YES)には、処理はステップS08に進む。
【0058】
ステップS07の処理は、前述したステップS05の処理と同様である。
【0059】
ステップS08において、信号処理装置21がモノパルス追尾処理を行う。ここで、目標検出処理部212は、目標としての艦船8を検出したことを表す目標検出信号を生成して制御装置3へ送信する。また、目標検出処理部212は、検出した目標としての艦船8が存在するレンジセルを表す角度追尾レンジセル情報を生成して追尾処理部213へ送信する。さらに、追尾処理部213は、角度追尾レンジセル情報に基づいて、飛しょう体1に対する目標の相対位置を表す追尾角度制御信号を生成して制御装置3へ送信する。
【0060】
ステップS09において、制御装置3が追尾角度制御を行う。ここで、制御装置3は、目標検出信号と追尾角度制御信号とに基づいて、飛しょう体1が目標としての艦船8に到達するように、姿勢制御装置4と推進装置5とを制御して飛しょう体1の終末制御を行う。
【0061】
ステップS09が完了すると、図4A図4Bとのフローチャートは終了する。
【0062】
このように、一実施の形態によるレーダ装置2と、飛しょう体1と、誘導プログラムとによれば、クラッタ源表面としての海面9の上に存在する目標としての艦船8を、この艦船8の上方から、例えば鉛直下向き方向に移動しながら検出することができる。
【0063】
(第2実施の形態)
本実施の形態では、上述の第1実施の形態に以下の変更を加える。すなわち、いずれか2つの隣接するレンジセルの間の境界を、クラッタ源表面としての海面9に一致させる処理を追加する。これは、レンジセルの境界が海面9からずれているとき、艦船8と海面9とが存在するレンジセルが存在し、このようなレンジセルでは、クラッタ受信電力と目標受信電力との電力差が十分に大きくないために目標の検出が困難になる可能性があり、このような可能性を抑制するためである。
【0064】
図11A図11Bとは、本実施形態による誘導プログラムの一構成例を示すフローチャートである。図11A図11Bとのフローチャートは、図4A図4Bとのフローチャートに、ステップS16、S17、S18およびS19を追加したものである。言い換えれば、図11A図11BとのフローチャートのステップS11、S12、S13、S14、S15、S20、S21、S22およびS23は、それぞれ、図4A図4BとのフローチャートのステップS01、S02、S03、S04、S05、S06、S07、S08およびS09と同じである。ただし、図11A図11Bとのフローチャートでは、ステップS14において、
Σ-Σi-1<TH2
の条件が満たされない場合(NO)には処理がステップS15に進み、反対に上記の条件が満たされる場合(YES)には処理がステップS16に進む。
【0065】
ステップS16において、目標検出処理部212は、現在注目しているレンジセルのΣ電力を、1つの後のレンジセルのΣ電力から引き算した電力差が、閾値TH4より大きいかどうかを判定する。
【0066】
図12に示すように、レンジセルRN+2とレンジセルRN+3との間の境界がクラッタ源表面としての海面9に等しいとき、レンジセルRN+2とレンジセルRN+3とのΣ電力の間の電力差は十分に大きくなり、閾値TH4より大きくなる。閾値TH4は、レンジセルの境界がクラッタ源表面としての海面9に等しいときのクラッタ受信電力と目標受信電力とに基づいて適宜に設定されている。図12の例では、グラフG3ΣがΣ電力を表し、グラフG3ΔがΔ電力を表している。
【0067】
一例として、現在注目しているレンジセルの番号がiであるとき、
Σi+1-Σ>TH4
の条件が満たされない場合(NO)には、図11A図11Bとのフローチャートの処理はステップS17に進む。反対に、上記の条件が満たされる場合(YES)には、処理はステップS20に進む。
【0068】
図13に示すように、レンジセルの境界がクラッタ源表面としての海面9に十分一致しないとき、特にレンジセルRN+2には目標としての艦船8とクラッタ源表面としての海面9とが含まれるため、図14に示すように、レンジセルRN+2とこれに隣接するレンジセルRN+3のΣ電力の電力差が十分に大きくなく、閾値TH4に係る上記の条件が満たされない。図14の例では、グラフG4ΣがΣ電力を表し、グラフG4ΔがΔ電力を表している。
【0069】
ステップS17において、レンジセルの番号iをインクリメントし、処理はステップS18に進む。ステップS18において、インクリメントしたレンジセルの番号iが、レンジセルの番号の最大値Nmaxに達したかどうかを判定する。レンジセルの番号iが、レンジセルの番号の最大値Nmaxより小さい場合(YES)、i番のレンジセルについてステップS16の処理を繰り返す。反対に、レンジセルの番号iが、レンジセルの番号の最大値Nmaxに達している場合(NO)、処理はステップS19に進む。
【0070】
ステップS19において、目標検出処理部212は、レンジ分解能ΔRを、微量のレンジ分解能調整値αだけ縮小し、ステップS11から処理を繰り返す。この繰り返し処理は、上記の条件が満たされるまで、すなわち、注目しているレンジセルの境界がクラッタ源表面としての海面9に十分近づくまで、継続されてもよい。
【0071】
図15に示すように、レンジ分解能ΔRを微量のレンジ分解能調整値αだけ縮小した結果、レンジセルRN+2とレンジセルRN+3との間の境界が、クラッタ源表面としての海面9に対して十分に一致するとき、図16に示すように、レンジセルRN+2とレンジセルRN+3とのΣ電力の電力差が十分に大きくなり、閾値TH4に係る上記の条件が満たされる。図16の例では、グラフG5ΣがΣ電力を表し、グラフG5ΔがΔ電力を表している。
【0072】
図11A図11Bとのフローチャートのその他のステップについては、対応する図4A図4Bとの各ステップと同様であるので、さらなる詳細な説明を省略する。
【0073】
このように、本実施の形態によれば、目標の検出を、第1の実施の形態より精度よく行うことができる。
【0074】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、各実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0075】
各実施形態に記載のレーダ装置2は、例えば以下のように把握される。
【0076】
(1)第1の態様に係るレーダ装置2は、飛しょう体1に搭載され、クラッタ源表面9の上にある目標8に飛しょう体1を誘導するために目標8を検出するレーダ装置2である。このレーダ装置2は、アンテナ25と、信号処理装置21とを備える。このアンテナ25は、目標8の上方からレーダ波を送信し、レーダ波が少なくとも目標8で反射したレーダ反射波に含まれる第1期間反射波を受信する。この信号処理装置21は、レーダ波を送信してから第1期間反射波を受信するまでの時間と、第1期間反射波とに基づいて目標8を検出する。レーダ波を照射する照射角度の範囲20は、クラッタ源表面9の法線方向を含む。
【0077】
第1の態様に係るレーダ装置2は、目標8の上方から目標8を検出できる、という効果を奏する。
【0078】
(2)第2の態様に係るレーダ装置2は、第1の態様に係るレーダ装置2であって、第1期間反射波は、レーダ反射波のうち、レーダ波を送信してから第1時間が経過した第1時刻と、第1時刻から第1時間間隔が経過した第2時刻との間の第1期間に受信された部分である。
【0079】
第2の態様に係るレーダ装置2は、レーダ反射波を、レーダ波を送信してからレーダ反射波を受信するまでの時間で分割して処理することによって目標8を検出できる、という効果を奏する。
【0080】
(3)第3の態様に係るレーダ装置2は、第2の態様に係るレーダ装置2であって、アンテナ25は、レーダ反射波に含まれる、第1期間反射波とは別の第2期間反射波をさらに受信する。第0期間反射波は、レーダ反射波のうち、第1時刻と、第1時刻までに第1時間間隔が経過する前の第0時刻との間の第0期間に受信された部分である。信号処理装置21は、レーダ波を送信してから第0期間反射波を受信するまでの時間と、第0期間反射波とにさらに基づいて目標8を検出する。
【0081】
第3の態様に係るレーダ装置2は、レーダ反射波を複数の部分に分割して処理することによって、ノイズなどによる影響を抑制して目標8を検出できる、という効果を奏する。
【0082】
(4)第4の態様に係るレーダ装置2は、第3の態様に係るレーダ装置2であって、アンテナ25は、第1領域255に配置された第1アンテナ群253と、第1領域255とは別の第2領域256に配置された第2アンテナ群254とを備える。第1アンテナ群253は、レーダ反射波のうち、第1領域255に到達する第1領域反射波を受信する。第2アンテナ群254は、レーダ反射波のうち、第2領域256に到達する第2領域反射波を受信する。レーダ装置2は、モノパルスコンパレータ24をさらに備える。モノパルスコンパレータ24は、第1領域反射波と第2領域反射波の和を表すΣ信号と、第1領域反射波と第2領域反射波の差を表すΔ信号とを生成する。信号処理装置21は、Σ信号とΔ信号とにさらに基づいて目標を検出する。
【0083】
第4の態様に係るレーダ装置2は、2つのアンテナ群のそれぞれで受信したレーダ反射波の和と差とをそれぞれ表すΣ信号とΔ信号とに基づいて、レーダ波の反射角度の範囲の中心で目標8を捉えられているかどうかを検出できる、という効果を奏する。
【0084】
(5)第5の態様に係るレーダ装置2は、第4の態様に係るレーダ装置2であって、信号処理装置21は、第1期間Σ信号と、第1期間Δ信号と、第2期間Σ信号とを生成する。第1期間Σ信号は、第1期間反射波のうち、第1アンテナ群253が受信した第1期間第1領域反射波と、第2アンテナ群254が受信した第1期間第2領域反射波との和を表す。第1期間Δ信号は、第1期間第1領域反射波と第1期間第2領域反射波との差を表す。第0期間Σ信号は、第0期間反射波のうち、第1アンテナ群253が受信した第0期間第1領域反射波と、第2アンテナ群254が受信した第0期間第2領域反射波との和を表す。信号処理装置21は、第1期間Σ信号の受信電力を表す第1期間Σ受信電力と、第1期間Δ信号の受信電力を表す第1期間Δ受信電力と、第0期間Σ信号の受信電力を表す第0期間Σ受信電力とにさらに基づいて目標8を検出する。
【0085】
第5の態様に係るレーダ装置2は、同じ期間のΣ信号およびΔ信号の電力と、隣接する期間のΣ信号の電力とに基づいて、レーダ波の反射角度の範囲の中心で目標8を捉えられているかどうかを検出でき、かつ、クラッタ源表面9から区別して目標8を検出できる、という効果を奏する。
【0086】
(6)第6の態様に係るレーダ装置2は、第5の態様に係るレーダ装置2であって、信号処理装置21は、第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値TH1より大きく、かつ、第1期間Σ受信電力から第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値TH2より小さく、かつ、第1期間Σ受信電力から第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値TH3より大きいときに、レーダ波が第1期間反射波として反射された空間で目標8を検出したと判定する。第1閾値TH1は、ノイズレベルと、レーダ反射波のうち、目標8に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されている。第2閾値TH2は、レーダ反射波のうち、クラッタ源表面9に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、目標受信電力とに基づいて設定されている。第3閾値TH3は、目標受信電力に基づいて設定されている。
【0087】
第6の態様に係るレーダ装置2は、注目する期間のΣ電力がノイズレベルより十分に大きく、かつ、注目する期間のΣ電力がクラッタ源表面9に由来しないと推定され、かつ、レーダ波を送信する照射角度の範囲の中心部分に目標8が存在すると推定されるときに、目標8を検出したと判定できる、という効果を奏する。
【0088】
(7)第7の態様に係るレーダ装置2は、第5の態様に係るレーダ装置2であって、アンテナ25は、レーダ反射波に含まれる、第0期間反射波とも第1期間反射波とも別の、レーダ波が少なくともクラッタ源表面9で反射した第2期間反射波を、第2時刻と、第2時刻から第1時間間隔が経過した第3時刻との間の第2期間にさらに受信する。信号処理装置21は、第2期間反射波のうち、第1アンテナ群253が受信した第2期間第1領域反射波と、第2アンテナ群254が受信した第2期間第2領域反射波との和を表す第2期間Σ信号をさらに生成する。信号処理装置21は、第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値TH1より大きく、かつ、第1期間Σ受信電力から第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値TH2より小さく、かつ、第1期間Σ受信電力から第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値TH3より大きく、かつ、第2期間Σ信号の受信電力を表す第2期間Σ受信電力から第1期間Σ受信電力を引き算した第4電力差が第4閾値TH4より大きいときに、レーダ波が第1期間反射波として反射された空間で目標8を検出したと判定する。第1閾値TH1は、ノイズレベルと、レーダ反射波のうち、目標8に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されている。第2閾値TH2は、レーダ反射波のうち、クラッタ源表面9に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、目標受信電力とに基づいて設定されている。第3閾値TH3は、目標受信電力に基づいて設定されている。第4閾値TH4は、アンテナ25からクラッタ源表面9までの距離と、レーダ波が第3時刻までに伝播する距離とが等しいときの、クラッタ受信電力と目標受信電力とに基づいて設定されている。
【0089】
第7の態様に係るレーダ装置2は、注目する期間のΣ電力がノイズレベルより十分に大きく、かつ、注目する期間のΣ電力がクラッタ源表面9に由来しないと推定され、かつ、レーダ波を送信する照射角度の範囲の中心部分に目標8が存在すると推定され、かつ、注目する期間のΣ電力が目標8に由来し、注目する期間の次の期間のΣ電力がクラッタ源表面9に由来すると推定されるときに、目標8を検出したと判定できる、という効果を奏する。
【0090】
(8)第8の態様に係るレーダ装置2は、第5の態様に係るレーダ装置2であって、アンテナ25は、レーダ反射波に含まれる、第0期間反射波とも第1期間反射波とも別の、レーダ波が少なくとも目標8で反射した第2期間反射波を、第2時刻以降の第3時刻と、第3時刻から第1時間間隔が経過した第4時刻との間の第2期間にさらに受信する。アンテナ25は、レーダ反射波に含まれる、第0期間反射波とも第1期間反射波とも第2期間反射波とも別の、レーダ波が少なくともクラッタ源表面9で反射した第3期間反射波を、第4時刻と、第4時刻から第1時間間隔が経過した第5時刻との間の第3期間にさらに受信する。信号処理装置21は、第2期間反射波のうち、第1アンテナ群253が受信した第2期間第1領域反射波と、第2アンテナ群254が受信した第2期間第2領域反射波との和を表す第2期間Σ信号と、第3期間反射波のうち、第1アンテナ群253が受信した第3期間第1領域反射波と、第2アンテナ群254が受信した第3期間第2領域反射波との和を表す第3期間Σ信号とをさらに生成する。信号処理装置21は、第1期間Σ受信電力から所定のノイズレベルを引き算した第1電力差が第1閾値TH1より大きく、かつ、第1期間Σ受信電力から前記第0期間Σ受信電力を引き算した第2電力差が第2閾値TH2より小さく、かつ、第1期間Σ受信電力から第1期間Δ受信電力を引き算した第3電力差が第3閾値TH3より大きく、かつ、第3期間Σ信号の受信電力を表す第3期間Σ受信電力から第2期間Σ信号の受信電力を表す第2期間Σ受信電力を引き算した第4電力差が第4閾値TH4より大きいときに、レーダ波が第2期間反射波として反射された空間で目標8を検出したと判定する。第1閾値TH1は、ノイズレベルと、レーダ反射波のうち、目標8に由来する部分の受信電力を表す目標受信電力とに基づいて設定されている。第2閾値TH2は、レーダ反射波のうち、クラッタ源表面9に由来する部分の受信電力を表すクラッタ受信電力と、目標受信電力とに基づいて設定されている。第3閾値TH3は、目標受信電力に基づいて設定されている。第4閾値TH4は、アンテナ25からクラッタ源表面9までの距離と、レーダ波が第3時刻までに伝播する距離とが等しいときの、クラッタ受信電力と目標受信電力とに基づいて設定されている。
【0091】
第8の態様に係るレーダ装置2は、注目する期間のΣ電力がノイズレベルより十分に大きく、かつ、注目する期間のΣ電力がクラッタ源表面9に由来しないと推定され、かつ、レーダ波を送信する照射角度の範囲の中心部分に目標8が存在すると推定され、かつ、この注目する期間より後の期間のΣ電力が目標8に由来し、この後の期間の次の期間のΣ電力がクラッタ源表面9に由来すると推定されるときに、目標8を検出したと判定できる、という効果を奏する。
【0092】
(9)第9の態様に係るレーダ装置2は、第7または8の態様に係るレーダ装置2であって、信号処理装置21は、第4電力差が第4閾値TH4より小さいときに、第1時間間隔を第2時間間隔だけ縮小し、縮小された前記第1時間間隔を用いて検出の処理を繰り返す。
【0093】
第9の態様に係るレーダ装置2は、注目する期間のΣ電力が目標8に由来し、注目する期間の次の期間のΣ電力がクラッタ源表面9に由来する状態が得られるまで、時間間隔を微調整することができる、という効果を奏する。
【0094】
(10)第10の態様に係るレーダ装置2は、第6~第9の態様に係るレーダ装置2であって、信号処理装置21は、第2電力差が第1閾値TH1より小さいときに、第1時刻を第1時間間隔だけ遅延させ、遅延された第1時刻を用いて検出の処理を繰り返す。
【0095】
第10の態様に係るレーダ装置2は、Σ電力がノイズレベルより十分に大きい期間を探すことができる、という効果を奏する。
【0096】
(11)第11の態様に係るレーダ装置2は、第6~第10の態様に係るレーダ装置2であって、信号処理装置21は、第2電力差が第2閾値TH2より大きいときに、照射角度の範囲を微調整し、微調整された照射角度の範囲にレーダ波を送信して得られるΣ信号とΔ信号とに基づいて検出の処理を繰り返す。
【0097】
第11の態様に係るレーダ装置2は、注目する期間のΣ電力がクラッタ源表面9に由来しないと推定されるまで、照射角度の範囲を微調整することができる、という効果を奏する。
【0098】
(12)第12の態様に係るレーダ装置2は、第6~第11の態様に係るレーダ装置2であって、信号処理装置21は、第2電力差が第3閾値TH3より小さいときに、照射角度の範囲を微調整し、微調整された照射角度の範囲にレーダ波を送信して得られるΣ信号とΔ信号とに基づいて検出の処理を繰り返す。
【0099】
第12の態様に係るレーダ装置2は、目標8が照射角度の範囲20の中心部分にあると推定されるまで照射角度の範囲20を微調整できる、という効果を奏する。
【0100】
(13)第13の態様に係る飛しょう体1は、第1~第12の態様に係るレーダ装置2と、制御装置3と、姿勢制御装置4とを備える。この制御装置3は、レーダ装置2が目標8の検出に基づいて出力する信号に基づいて姿勢制御信号を生成する。この姿勢制御装置4は、姿勢制御信号に基づいて、飛しょう体1が目標8に向かって移動するように飛しょう体1の姿勢を制御する。
【0101】
第13の態様に係る飛しょう体1は、第1~第12の態様に係るレーダ装置2による目標8の検出に基づいて目標8に誘導することができる、という効果を奏する。
【0102】
(14)第14の態様に係る誘導プログラムは、クラッタ源表面9の上にある目標8に飛しょう体1を誘導する処理を、演算装置201が実行することによって実現するための誘導プログラムである。この誘導プログラムは、目標8の上方からレーダ波を送信し、レーダ波が少なくとも目標8で反射したレーダ反射波に含まれる第1期間反射波を受信することと、レーダ波を送信してから第1期間反射波を受信するまでの時間と、第1期間反射波とに基づいて目標8を検出することとを含む。レーダ波を照射する照射角度の範囲20は、クラッタ源表面9の法線方向を含む。
【0103】
第1の態様に係る誘導プログラムは、目標8の上方から目標8を検出できる、という効果を奏する。
【符号の説明】
【0104】
1、1A、1B 飛しょう体
2、2A、2B レーダ装置
20 ビーム照射範囲(照射角度の範囲)
21 信号処理装置
200 バス
201 演算装置
202 記憶装置
203 目標検出プログラム
204 追尾プログラム
205 インタフェース
206 記録媒体
211 パルス符号発生器
212 目標検出処理部
213 追尾処理部
22 送信機
23 サーキュレータ
24 モノパルスコンパレータ
241 Σ信号生成部
242 Δ信号生成部
25 アンテナ
251 アンテナ素子
252 アンテナ素子
253 第1アンテナ群
254 第2アンテナ群
255 第1領域
256 第2領域
26 受信機
3 制御装置
4 姿勢制御装置
5 推進装置
70N-1、70、70N+1、70N+2、70N+3 反射源分布パターン
8 艦船(目標)
80、80N+1、80N+2 目標反射パターン
81 艦船レーダ覆域
9 海面(クラッタ源表面)
90N+2、90N+3 クラッタ反射パターン
、A グレージング角
、D 検出距離
、G、G1Σ、G1Δ、G2Σ、G2Δ、G3Σ、G3Δ、G4Σ、G4Δ、G5Σ、G5Δ グラフ
、H 高度
、R、R、RN-1、R、RN+1、RN+2、RN+3 レンジセル
TH1、TH2、TH3、TH4 閾値
α レンジ分解能調整値
ΔR レンジ分解能
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16