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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】歩行玩具
(51)【国際特許分類】
   A63H 7/02 20060101AFI20241202BHJP
   A63H 11/00 20060101ALI20241202BHJP
   A63H 31/00 20060101ALI20241202BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
A63H7/02
A63H11/00 Z
A63H31/00 A
B25J5/00 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021037665
(22)【出願日】2021-03-09
(62)【分割の表示】P 2020070506の分割
【原出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021166700
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000233778
【氏名又は名称】任天堂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100130269
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 盛規
(72)【発明者】
【氏名】古池 裕智
(72)【発明者】
【氏名】岩尾 敏明
(72)【発明者】
【氏名】郡山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】北野 泰久
(72)【発明者】
【氏名】藤野 高基
(72)【発明者】
【氏名】太田 敬三
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-125638(JP,A)
【文献】実開平06-041792(JP,U)
【文献】登録実用新案第3043944(JP,U)
【文献】実公昭26-003835(JP,Y1)
【文献】田部井聡 他4名,受動歩行機のアシスト平地歩行の実現,ロボティクス・メカトロニクス講演会2009講演論文集,社団法人日本機械学会,2009年05月24日,2P1-C14(1)~(2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
B25J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体を含む上体部と前記胴体に連結された二本の脚とを有し、前記胴体の軸線の歩行面に対する前後方向の角度が一定範囲内である場合に、前記上体部が前方に押されると歩行運動が連続的に行われるように構成された人形部と、
前記上体部に取り付けられた歩行補助具とを備える歩行玩具であって、
前記歩行補助具は、前記歩行運動が行われている間、前記脚とは異なる位置において継続的に歩行面に接地する補助接地部を備え、且つ、前記歩行運動が行われている間、前記角度が前記一定範囲内に維持されるように前記胴体を保持し、
前記歩行補助具は装着部を有し、前記上体部は被装着部を有し、
前記歩行補助具は、前記装着部が前記被装着部に対して着脱可能に取り付けられることにより、前記上体部に対して着脱可能に取り付けられ、
前記人形部の、前記歩行運動に伴って回転するクランク部材の回転位相を検出する位相検出部を更に備え、
前記位相検出部は、前記クランク部材に設けられた被検出部と該被検出部に対向するように前記装着部に配置された検出器とを有し、
前記被検出部は、その外周面が前記クランク部材の周方向において前記クランク部材の回転軸線からの径が変化するように形成され、
前記検出器は前記被検出部の外周面までの距離に応じた信号を出力する、歩行玩具。
【請求項2】
前記検出器は対象物までの距離を検出する光学センサであり、
前記被装着部は前記胴体に形成された受容穴であり、
前記装着部は前記受容穴内に挿入されるように構成され、
前記検出器は、前記装着部が前記被装着部に挿入されたときに前記胴体内において前記被検出部に対向するように前記装着部に配置される、請求項に記載の歩行玩具。
【請求項3】
前記装着部は前記被装着部に取り付けられたときに前記被検出部の上方に位置し、
前記検出器は、前記装着部の下側に、前記装着部が前記被装着部に取り付けられたとき前記被検出部の上面と対向するように配置される、請求項1又は2に記載の歩行玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歩行玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
胴体と、胴体に連結された二本の脚とを有し、少なくとも一方の脚の下端面を、地面や床等の歩行面に接地させた状態で胴体を前方に移動させると脚によって歩行する歩行玩具が検討されている(例えば、特許文献1)。斯かる歩行玩具では、胴体を前方に移動させて歩行面に接地している一方の脚を相対的に後方に移動させるとクランク部材が回転し、このクランク部材の回転によって他方の脚が歩行面から離れた状態で前方に移動される。斯かる動作が連続的に行われることによって歩行玩具が脚によって歩行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/212899号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ある側面においては、特許文献1に記載の歩行玩具の一つの機構では、多数のリンクが設けられているため、その構造は複雑であり、また部品点数が多い。また別の側面においては、特許文献1に記載の歩行玩具の別の一つの機構では、一方の脚を相対的に後方に移動させたときにそれに伴ってクランク部材が回転しにくい場合があり、よって歩行玩具の安定的な歩行を継続させにくい場合がある可能性がある。このように、特許文献1に記載の歩行玩具の歩行機構には改良の余地がある。
【0005】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、従来の歩行玩具とは異なる歩行機構を有する歩行玩具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)胴体を含む上体部と、前記胴体に連結された二本の脚とを有し、少なくとも一方の脚の接地面を歩行面に接地させた状態で前記胴体を前方に移動させると前記脚による歩行運動が行われる歩行玩具であって、
前記胴体内に回転可能に支持され且つその回転軸線から偏心して位置する一対のクランク偏心軸を有するクランク部材を備え、
前記クランク偏心軸は前記回転軸線に対して互いに逆位相になるように配置され、
各脚は、前記胴体を前方に移動させたときに前記クランク部材に回転力を与える運動部材を有し、
各運動部材は、対応するクランク偏心軸に揺動可能に連結された偏心軸連結部分と、胴体と協動する胴体協動部分と、前記歩行面から受ける力が作用する作用部分とを有し、
前記運動部材の胴体協動部分及び前記胴体のうちの一方には溝が形成されていると共に、他方には該溝内を摺動して該溝によって案内される突起が形成され、
前記溝は、前記クランク部材の回転運動に対応して前記突起が当該溝内を往復運動するように構成され、
前記胴体を前方に移動させて前記歩行面に接地している一方の脚の前記運動部材の作用部分を前記胴体に対して相対的に後方に移動させると、前記突起が前記溝内で移動を制限されていることによって前記一方の脚の運動部材が該運動部材により前記クランク部材に回転力を与えるように移動し、該クランク部材の回転により他方の脚が前記歩行面から離れた状態で前方に移動されて、その後、前記歩行面に接地する、歩行玩具。
(2)胴体を含む上体部と、前記胴体に連結された二本の脚とを有し、少なくとも一方の脚の接地面を歩行面に接地させた状態で前記胴体を前方に移動させると前記脚による歩行運動が行われる歩行玩具であって、
前記胴体内に回転可能に支持され且つその回転軸線から偏心して位置する一対のクランク偏心軸を有するクランク部材を備え、
前記クランク偏心軸は前記回転軸線に対して互いに逆位相になるように配置され、
各脚は、前記胴体を前方に移動させたときに前記クランク部材に回転力を与える運動部材を有し、
各運動部材は、対応するクランク偏心軸に揺動可能に連結された偏心軸連結部分と、胴体と協動する胴体協動部分と、前記歩行面から受ける力が作用する作用部分とを有し、
前記運動部材の胴体協動部分及び前記胴体に、前記運動部材の胴体協動部分を前記運動部材における支点として機能させる支点機構が形成されており、
前記胴体を前方に移動させて前記歩行面に接地している一方の脚の前記運動部材の作用部分を前記胴体に対して相対的に後方に移動させると、前記一方の脚の運動部材がその前記運動部材の上方部分を支点として揺動されると共に、揺動する前記一方の脚の運動部材により前記クランク部材に回転力が加えられ、該クランク部材の回転により他方の脚が前記歩行面から離れた状態で前方に移動されて、その後、前記歩行面に接地する、歩行玩具。
(3)前記支点機構は、前記胴体に対して前記運動部材の胴体協動部分を案内するガイド機構を含む、上記(2)に記載の歩行玩具。
(4)胴体を含む上体部と、前記胴体に連結された二本の脚とを有し、少なくとも一方の脚の接地面を歩行面に接地させた状態で前記胴体を前方に移動させると前記脚による歩行運動が行われる歩行玩具であって、
前記胴体内に回転可能に支持され且つその回転軸線から偏心して位置する一対のクランク偏心軸を有するクランク部材を備え、
前記クランク偏心軸は前記回転軸線に対して互いに逆位相になるように配置され、
各脚は、前記胴体を前方に移動させたときに前記クランク部材に回転力を与える運動部材を有し、
各運動部材は、対応するクランク偏心軸に揺動可能に連結された偏心軸連結部分と、胴体と協動する胴体協動部分と、前記歩行面から受ける力が作用する作用部分とを有し、
前記運動部材の胴体協動部分及び前記胴体に、前記運動部材の胴体協動部分が前記胴体に対して移動可能な範囲を制限する移動制限機構が形成されており、
前記胴体を前方に移動させて前記歩行面に接地している一方の脚の前記運動部材の作用部分を前記胴体に対して相対的に後方に移動させると、前記移動制限機構により前記胴体協動部分の移動可能な範囲が制限されていることによって前記一方の脚の運動部材が該運動部材により前記クランク部材に回転力を加えるように移動し、該クランク部材の回転により他方の脚が前記歩行面から離れた状態で前方に移動されて、その後、前記歩行面に接地する、歩行玩具。
(5)前記移動制限機構は、前記胴体に対して前記胴体協動部分を案内するガイド機構を含む、上記(4)に記載の歩行玩具。
(6)前記ガイド機構は、前記胴体が歩行面に対して直立した状態にあるときに歩行面に対して角度をなす方向に、前記胴体に対して前記胴体協動部分を案内する、上記(3)又は(5)に記載の歩行玩具。
(7)前記ガイド機構は、前記胴体協動部分及び前記胴体うちの一方に設けられた溝と、前記胴体協動部分及び前記胴体のうちの他方に設けられた突起とを有し、
前記突起が前記溝内を摺動することで前記胴体に対して前記胴体協動部分が案内される、上記(3)、(5)及び(6)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(8)各運動部材の作用部分は、当該運動部材を有する脚が歩行面に接地しているときに前記歩行面に接地する、上記(1)~(7)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(9)各脚は、上脚部材と下脚部材とを更に有し、
前記上脚部材の上方部分が前記胴体に揺動可能に連結されると共に前記下脚部材が前記上脚部材の下方部分に揺動可能に連結され、
各運動部材の作用部分は、対応する前記下脚部材に、前記上脚部材への連結部とは異なる位置において連結される、上記(1)~(7)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(10)各運動部材の作用部分は、対応する下脚部材に、前記上脚部材への連結部の後方において、揺動可能に連結される、上記(9)に記載の歩行玩具。
(11)前記運動部材は直線的なロッドであり、
前記偏心軸連結部分は前記胴体協動部分と作用部分との間に位置する、上記(1)~(10)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(12)各脚の前記接地面は前後方向において歩行面に向かって凸な弧状に形成される、上記(1)~(11)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(13)前記上体部に取り付けられた歩行補助具を更に備え、
前記歩行補助具は、前記歩行運動が行われている間、前記脚とは異なる位置において継続的に歩行面に接地する補助接地部を有する、上記(1)~(12)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(14)前記補助接地部は車輪である、上記(13)に記載の歩行玩具。
(15)前記車輪は、前後方向に対してほぼ垂直な一つの軸線回りで回転する、上記(14)に記載の歩行玩具。
(16)前記歩行補助具は、前記車輪を駆動する電動機を有する、上記(14)又は(15)に記載の歩行玩具。
(17)前記歩行補助具は前記上体部の後側に取り付けられる、上記(13)~(16)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(18)前記歩行補助具は、前記歩行補助具に前向き及び下向きの力が加わったときに前記上体部に前向き及び下向きの力が加わるように前記上体部に取り付けられる、上記(13)~(17)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(19)前記歩行補助具は、前記補助接地部を有する本体部と、一方の端部において前記本体部に固定され且つ他方の端部において前記上体部の後側に取り付けられるアームとを有し、該アームは、前記本体部への固定位置から前記上体部への取付位置へ向かって上方に傾斜するように前記上体部に取り付けられる、上記(18)に記載の歩行玩具。
(20)前記胴体、前記脚及び前記クランク部材は、前記胴体の軸線の歩行面に対する前後方向の角度が一定範囲内である場合に前記歩行運動が連続的に行われるように構成され、
前記歩行補助具は、前記胴体の軸線の歩行面に対する前記角度が前記一定範囲内に維持されるように前記胴体を保持する、上記(13)~(19)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(21)前記胴体、前記脚及び前記クランク部材は、前記胴体の軸線の歩行面に対する前後方向の角度が一定範囲内である場合に、前記歩行面から離れた状態で前方に移動されていた前記他方の脚の下脚部材が最前方の位置に到達した後に接地するように構成され、
前記歩行補助具は、前記胴体の軸線の歩行面に対する前記角度が前記一定範囲内に維持されるように前記胴体を保持する、上記(13)~(19)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(22)前記歩行補助具は装着部を有し、前記上体部は被装着部を有し、
前記歩行補助具は、前記装着部が前記被装着部に対して着脱可能に取り付けられることにより、前記上体部に対して着脱可能に取り付けられる、上記(13)~(21)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(23)前記クランク部材の回転位相を検出する位相検出部を更に備える、上記(1)~(22)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(24)前記位相検出部は、前記クランク部材に設けられた被検出部と、該被検出部に対向するように配置された検出器とを有し、
前記被検出部は、その外周面が前記クランク部材の周方向において前記クランク部材の回転軸線からの径が変化するように形成され、
前記検出器は前記被検出部の外周面までの距離に応じた信号を出力する、上記(23)に記載の歩行玩具。
(25)前記クランク部材の回転位相を検出する位相検出部を更に備え、
前記位相検出部は、前記クランク部材に設けられた被検出部と該被検出部に対向するように前記装着部に配置された検出器とを有し、
前記被検出部は、その外周面が前記クランク部材の周方向において前記クランク部材の回転軸線からの径が変化するように形成され、
前記検出器は前記被検出部の外周面までの距離に応じた信号を出力する、上記(22)に記載の歩行玩具。
(26)前記検出器は対象物までの距離を検出する光学センサであり、
前記被装着部は前記胴体に形成された受容穴であり、
前記装着部は前記受容穴内に挿入されるように構成され、
前記検出器は、前記装着部が前記被装着部に挿入されたときに前記胴体内において前記被検出部に対向するように前記装着部に配置される、上記(25)に記載の歩行玩具。
(27)前記装着部は前記被装着部に取り付けられたときに前記被検出部の上方に位置し、
前記検出器は、前記装着部の下側に、前記装着部が前記被装着部に取り付けられたとき前記被検出部の上面と対向するように配置される、上記(25)又は(26)に記載の歩行玩具。
(28)前記クランク部材は前記被検出部の回転軸線方向に配置されたスペーサを有し、前記スペーサは前記被検出部とは異なる外周形状を有し、
前記胴体は、前記クランク部材が第1の向きで前記胴体内に配置されたときには前記胴体が前記被検出部及び前記スペーサのいずれの外周面とも干渉せず且つ前記クランク部材が前記第1の向きとは逆向きの第2の向きで前記胴体内に配置されたときには前記胴体が前記被検出部及び前記スペーサのうちの何れかの外周面と干渉するように形成される、上記(24)~(27)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
(29)前記位相検出部から出力された信号が入力されると共に該入力された信号に応じた処理を行うコンピュータを更に備える、上記(23)~(28)のいずれか一つに記載の歩行玩具。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、従来の歩行玩具とは異なる歩行機構を有する歩行玩具が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、歩行玩具1の正面図である。
図2図2は、図1と同じ歩行状態における歩行玩具の側面図である。
図3図3は、図1と同じ歩行状態における、胴体を省略した歩行玩具の斜視図である。
図4図4は、歩行玩具の胴体及び脚の一部を示す、斜視透視図である。
図5図5は、右脚及び右運動部材を示す斜視図である。
図6図6は、胴体の左前方下部の部分的な断面図である。
図7図7は、クランク部材の概略的な斜視図である。
図8図8は、歩行面に接地していない左脚が最前方に位置するときの歩行玩具の歩行状態を示している。
図9図9は、左脚が下がっていって左脚の接地面が歩行面に接地したときの歩行玩具の歩行状態を示している。
図10図10は、歩行面に接地していない右脚が左脚よりも前方に移動したときの歩行玩具の歩行状態を示している。
図11図11は、歩行面に接地していない右脚が最前方に位置するときの歩行玩具の歩行状態を示している。
図12図12は、第一実施形態の変形例に係る歩行玩具の斜視図である。
図13図13は、第一実施形態の変形例に係る歩行玩具の図9と同様な側面図である。
図14図14は、ガイド機構の例を概略的に示す図である。
図15図15は、胴体を省略した歩行玩具の概略的な上面図である。
図16図16は、第二実施形態に係る歩行玩具の断面側面図である。
図17図17は、胴体の一部を省略した歩行玩具の斜視図である。
図18図18は、胴体を省略した歩行玩具の側面図である。
図19図19は、第三実施形態に係る歩行玩具を概略的に示す側面図である。
図20図20は、アームの上側端部が胴体に取り付けられている状態を示す胴体近傍の概略的な断面図である。
図21図21は、胴体が前向きに傾斜した状態にあるときの、歩行玩具の歩行状態を示す側面図である。
図22図22は、第三実施形態の変更例に係る歩行補助具の本体部の概略的な平面図である。
図23図23は、図20と同様な、胴体近傍の概略的な側面図である。
図24図24は、第四実施形態に係るクランク部材の斜視図である。
図25図25は、クランク部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0011】
<第一実施形態>
<歩行玩具の構成>
まず、図1図4を参照して、第一実施形態に係る歩行玩具1について説明する。図1は歩行玩具1の正面図であり、図2図1と同じ歩行状態における歩行玩具1の側面図であり、図3図1と同じ歩行状態における、胴体を省略した歩行玩具1の斜視図である。また、図4は、歩行玩具1の胴体及び脚の一部を示す、斜視透視図である。図5は、右脚及び右運動部材を示す斜視図であり、下脚部が破線で示されている。
【0012】
本明細書では、歩行玩具1が歩行する歩行面に対して平行な歩行玩具1の進行方向を前方、前方とは反対向きの方向を後方と称する。また、歩行玩具1が歩行する歩行面に対して垂直であって歩行面から離れる方向を上方、歩行面に近づく方向を下方と称する。加えて、歩行玩具1を後方から前方に向かって見たときの右方向を右方、左方向を左方と称する。
【0013】
図1図5に示したように、歩行玩具1は、胴体10と、胴体10に連結された一対の脚20と、クランク部材60とを備える。特に、本実施形態では、歩行玩具1は、前方に向かって右側に設けられた右脚20aと、前方に向かって左側に設けられた左脚20bとの二本の脚20を有する。
【0014】
≪胴体≫
胴体10は、中空の部材として形成される。図2及び図4に示したように、本実施形態では、胴体10は前側半体11と後側半体12とを有し、これら半体11、12が互いに対して組み付けられることで胴体10が形成される。また、胴体10は、胴体10の左右の側面を形成する二つの側壁13を有する(各側壁13は前側半体11の一部及び後側半体12の一部から構成される)。各側壁13は、前方下部に、後述する上脚部材30の厚さと同程度だけ凹んだ凹部14を有する。
【0015】
図6は、胴体10の左前方下部の部分的な断面図である。図6に示したように、凹部14には、脚20を連結するための第1ボス15が形成され、この第1ボス15には第1ボルト33を受容するボルト穴151が形成される。
【0016】
また、胴体10は、側壁13の内側において、側壁13と平行に、すなわち前後方向に延びる一対の内部壁16を備える(図4参照)。内部壁16は、胴体10の左右方向の中心よりも左側及び右側にそれぞれ一つずつ設けられる。内部壁16は、その前側部分が前側半体11に設けられ、後側部分が後側半体12に設けられる。そして、内部壁16の前側部分と後側部分との間には、溝17が形成される。特に、本実施形態では、溝17は、横方向から見たときに、胴体10の中央付近に位置するように形成される。また、溝17は、胴体10の上下方向の中心軸線Mに対して僅かに下向き後方に傾斜するように形成される。したがって、溝17は、胴体10が歩行面に対して直立した状態にあるときに(すなわち、胴体10の中心軸線が鉛直方向に延びているときに)、歩行面に対して角度をなすように(好ましくは、歩行面に垂直に又は垂直に対して僅かに角度をなすように)形成される。また、本実施形態では、溝17は、直線的に延びる。
【0017】
加えて、胴体10は、その下壁に一対のロッド用開口部18を有する。各ロッド用開口部18は、対応する内部壁16に隣接してこの内部壁16の左右方向の内側に形成される。各開口部18は、前後方向に広範囲に亘って延びるように形成される。したがって、各ロッド用開口部18の一部は前側半体11に形成され、各ロッド用開口部18の残りの部分は後側半体12に形成される(図2参照)。
【0018】
また、本実施形態では、胴体10の上壁には歩行玩具1の頭部材(図示せず)を取り付けるための頭部取付孔191が形成される(図4参照)。また、胴体10の左右の側壁13には歩行玩具1の腕部材(図示せず)を取り付けるための腕部取付孔192が形成される(図2参照)。これら取付孔191、192は、前側半体11と後側半体12との間に配置され、これら半体11、12を互いに組み付けることで頭部材や腕部材が胴体10に連結される。胴体10に頭部材や腕部材が取り付けられると、上体部が構成される。したがって、上体部は、胴体10、頭部材及び腕部材を含む。なお、本実施形態では、頭部材及び腕部材が胴体10とは別体として形成されているが、頭部材及び/又は腕部材は胴体10と一体的に形成されてもよい。また、上体部は、頭部材及び/又は腕部材を含まずに胴体10のみから形成されてもよいし、尻尾部材等、胴体10、頭部材及び腕部材以外の部材を含んでもよい。
【0019】
≪クランク部材≫
図7は、クランク部材60の概略的な斜視図である。クランク部材60は、回転軸線C回りに回転可能に胴体10内に支持される。クランク部材60の回転軸線Cは、歩行玩具1の進行方向を含む鉛直面に対して垂直に延び、また、本実施形態では上脚部材30の揺動軸線Aと平行に延びる。本実施形態では、クランク部材60は、左右方向において胴体10の中央に且つ前後方向において胴体10の中央に配置される。なお、クランク部材60は、前後方向において胴体10の中央からずれた位置に配置されてもよい。また、本実施形態では、クランク部材60は、胴体10の前側半体11と後側半体12との間に形成された円筒状の空間内に配置される。
【0020】
クランク部材60は、円筒状本体61と、一対のクランク偏心軸62とを有する。円筒状本体61は、その外周面が、胴体10の円筒状の空間を画定する内周面と対向するように胴体10内に配置される。また、円筒状本体61は、胴体10に形成された一対のロッド用開口部18の間に、その各側面が対応するロッド用開口部18に面するように配置される。
【0021】
一対のクランク偏心軸62のそれぞれは、クランク部材60の回転軸線Cから偏心して位置すると共に、円筒状本体61の各円形側面から左右方向に突出する。したがって、右クランク偏心軸62aは円筒状本体61の右側面から右方向に突出し、左クランク偏心軸62bは円筒状本体61の左側面から左方向に突出する。また、各クランク偏心軸62は、ロッド用開口部18を少なくとも部分的に左右方向に横断して、ロッド用開口部18内において後述する運動部材50と連結されるように円筒状本体61から突出する。クランク偏心軸62は、その軸線Eがクランク部材60の回転軸線Cと平行になるように形成される。また、一対のクランク偏心軸62は、クランク部材60の回転軸線Cに対して互いに逆位相になるように配置される。
【0022】
≪脚≫
各脚20は、上脚部材30と下脚部材40と運動部材50とを有する。したがって、右脚20aは、右上脚部材30aと右下脚部材40aと右運動部材50aとを有し、左脚20bは、左上脚部材30bと左下脚部材40bと左運動部材50bとを有する。
【0023】
上脚部材30は、大腿に相当する部材であり、細長い平板状に形成される。上脚部材30の上部(特に、上端部)は、胴体10に前後方向に揺動可能に連結される。本実施形態では、右上脚部材30aは、胴体10の右側の側壁13下部に連結され、左上脚部材30bは、胴体10の左側の側壁13下部に連結される。
【0024】
特に、本実施形態では、図5及び図6に示したように、上脚部材30の上部(特に、上端部)に円筒状の開口31が形成される。図6に示したように、この開口31に胴体10に形成された第1ボス15が嵌合された状態で、第1ボルト33を胴体10のボルト穴151にネジ止めすることによって、上脚部材30が胴体10に連結される。この結果、上脚部材30の上部は、上脚部材30が胴体10に対して第1ボス15又は第1ボルト33の軸線を中心として前後方向に揺動することができるように、胴体10に連結される。しかしながら、上脚部材30は、その上部を中心として胴体10に対して前後方向に揺動可能であれば、如何なる態様で胴体10の側壁の下方に連結されてもよい。
【0025】
下脚部材40は、下腿及び足に相当する部分であり、下腿に相当する下腿部分41と、足に相当する足部分42とを有する。したがって、足部分42は下腿部分41よりも前方に突出するように形成される。
【0026】
下脚部材40の上部は、上脚部材30の下部に前後方向に揺動可能に連結される。特に、本実施形態では、上脚部材30と下脚部材40との連結部が膝関節のように見えるように、下脚部材40の上端部が上脚部材30の下端部に揺動可能に連結される。したがって、右下脚部材40aの上端部は、右上脚部材30aの下端部に連結され、左下脚部材40bの上端部は左上脚部材30bの下端部に連結される。
【0027】
特に、本実施形態では、上脚部材30の下部に円筒状の開口32が形成され(図5参照)、また、下脚部材40の上部には左右方向外側に向かって延びる第2ボスが形成される。そして、図6に示した連結方法と同様に、上脚部材30の開口32に下脚部材40に形成された第2ボスが嵌合された状態で、第2ボルト34を第2ボスの中央に形成されたボルト穴にネジ止めすることによって、上脚部材30が下脚部材40の上部に連結される。この結果、下脚部材40の上部は、下脚部材40が上脚部材30に対して第2ボルト34(第2ボス)の軸線を中心として前後方向に揺動することができるように、上脚部材30の下部に連結される。特に、本実施形態では、下脚部材40の揺動軸線Bは上脚部材30の揺動軸線Aと平行である。なお、下脚部材40は、その上部を中心として上脚部材30に対して前後方向に揺動可能であれば、如何なる態様で上脚部材30の下部に連結されてもよい。
【0028】
各足部分42は、歩行玩具1が歩行する際に歩行面と接地する接地面43を有する。本実施形態では、接地面43は、前後方向において、歩行面に向かって凸な弧状に形成される。特に、本実施形態では、接地面43は、下脚部材40の上端近傍、特に下脚部材40の上脚部材30への連結部近傍を中心にした概略円弧状に形成される。このとき、接地面43は中心が一つの円弧状に形成されてもよいし、接地面43の前方と後方とで中心が異なる少なくとも二つの円弧状に形成されてもよい。接地面43がこのように円弧状に形成されていることにより、歩行玩具1が歩行面上を歩行する際に、下脚部材40が歩行面に引っかかりにくくなる。
【0029】
運動部材50は、一方の脚20を歩行面に接地させた状態で胴体10を前方に移動させたときにクランク部材60に回転力を与える。本実施形態では、運動部材50は、直線的なロッドとして形成される。特に、本実施形態では、運動部材50は、右側に設けられた右運動部材50aと、左側に設けられた左運動部材50bとを有する。
運動部材50は、クランク部材60よりも右側に配置された右運動部材50aと、クランク部材60よりも左側に配置された左運動部材50bとを有する。運動部材50は、それぞれ、作用部分51と、胴体協動部分52と、偏心軸連結部分53とを有する。本実施形態では、作用部分51は運動部材50の下端部分に位置し、胴体協動部分52は上端部分に位置する。偏心軸連結部分は、作用部分51と胴体協動部分52との間に位置する。図1及び図4に示したように、運動部材50はその一部が胴体10に形成されたロッド用開口部18内に配置される。
【0030】
各運動部材50の作用部分51は、対応する下脚部材40に、揺動可能に連結される。したがって、右運動部材50aの作用部分51は、右下脚部材40aに揺動可能に連結され、左運動部材50bの作用部分51は、左下脚部材40bに揺動可能に連結される。また、各運動部材50の作用部分51は、対応する下脚部材40に、上脚部材30への連結部とは異なる位置において連結される。本実施形態では、各運動部材50の作用部分51は、対応する下脚部材40に、上脚部材30への連結部の後方において、連結される。
【0031】
特に、本実施形態では、運動部材50の作用部分51には円筒状の開口54が形成され(図5参照)、また、下脚部材40の上部であって第2ボス(上脚部材30への連結部)よりも後方には左右方向内側に向かって延びる第3ボスが形成される。そして、図6に示した連結方法と同様に、運動部材50の開口54に下脚部材40に形成された第3ボスが嵌合された状態で、第3ボルト57を第3ボスの中央に形成されたボルト穴にネジ止めすることによって、運動部材50が下脚部材40の上端後部に連結される。この結果、運動部材50の作用部分51は、運動部材50が下脚部材40に対して第3ボルト57(第3ボス)の軸線を中心として揺動することができるように下脚部材40の上後部に連結される。特に、本実施形態では、運動部材50が下脚部材40に対して揺動する際の揺動軸線Dは、上脚部材30の揺動軸線Aと平行である。なお、運動部材50は、その作用部分51を中心として下脚部材40に対して揺動可能であれば、如何なる態様で下脚部材40に連結されてもよい。
【0032】
各運動部材50の偏心軸連結部分53は、対応するクランク偏心軸62に揺動可能に連結される。したがって、右運動部材50aの偏心軸連結部分53は右クランク偏心軸62aに揺動可能に連結され、左運動部材50bの偏心軸連結部分53は左クランク偏心軸62bに揺動可能に連結される。
【0033】
特に、本実施形態では、各運動部材50の偏心軸連結部分53には円筒状の開口55が形成され、各開口55内に、対応するクランク偏心軸62が嵌合する。したがって、右運動部材50aの開口55内に右クランク偏心軸62aが嵌合し、左運動部材50bの開口55内に左クランク偏心軸62bが嵌合する。この結果、各運動部材50の偏心軸連結部分53は、運動部材50がクランク偏心軸62の軸線Eを中心として揺動することができるように、クランク偏心軸62に連結される。
【0034】
各運動部材50の胴体協動部分52には、円筒状の突起56が形成される。突起56は、各運動部材50の胴体協動部分52から左右方向において外側に向かって延びるように形成される。したがって、右運動部材50aの胴体協動部分52からは右突起56aが右方向に延び、左運動部材50bの胴体協動部分52からは左突起56bが左方向に延びる。
【0035】
各運動部材50の突起56は、胴体10の内部壁16に形成された溝17内を摺動することができるように溝17内に収容される。したがって、運動部材50の突起56は、溝17内に沿って案内される。
【0036】
<歩行玩具の歩行運動>
上述したように構成された歩行玩具1は、少なくとも一方の脚20の接地面を歩行面に接地させた状態でユーザの手等によって胴体10を前方に押して胴体10を前方に移動させることで、脚20により歩行する。以下では、図8図11を参照して、上述したように構成された歩行玩具1の歩行運動について説明する。図8図11は、歩行玩具1の異なる歩行状態を示す側面図である。図8図11は、左脚20bが最前方に位置する状態から右脚20aが最前方に位置する状態までの歩行玩具1の作動状態を順番に示している。
【0037】
なお、図中の点Aは胴体10に対する左上脚部材30bの揺動軸線Aの位置を、点Bは左上脚部材30bに対する左下脚部材40bの揺動軸線Bの位置を、点Dは左下脚部材40bに対する左運動部材50bの揺動軸線Dの位置を、点Eは左クランク偏心軸62bの軸線Eを、点Fは左運動部材50bの左突起56bの軸線をそれぞれ示している。また、図中の線Xは、点Aと点Bとを結ぶ線であり、左上脚部材30bの位置を表している。図中の線Yは、点Bと点Dとを結ぶ線であり、左下脚部材40bの位置を表している。図中の線Zは、点D、点E及び点Fを結ぶ線であり、左運動部材50bの位置を表している。なお、本実施形態では、点D、点E及び点Fが同一直線上にあるため、線Zが直線になっているが、点D、点E及び点Fは必ずしも同一直線上に位置するとは限らず、よって線Zは必ずしも直線であるとは限らない。
【0038】
また、図中の破線bは1サイクル当たりの点Bの軌跡を、一点鎖線dは1サイクル当たりの点Dの軌跡を、破線eは1サイクル当たりの点Eの軌跡を、一点鎖線fは1サイクル当たりの点Fの軌跡をそれぞれ表している。特に、点Eは破線eに沿って反時計回り(図8中の矢印の向き)に回転する。
【0039】
図8は、歩行面に接地していない左脚20bが最前方に位置するとき、すなわち点Bが最前方に位置するときの歩行玩具1の歩行状態を示している。図8に示したように、このとき、左上脚部材30b(線X)はその移動範囲内で最前方に位置し、左クランク偏心軸62bがその移動範囲内でほぼ最前方に位置(点Eが軌跡eのほぼ最前方に位置)し、左運動部材50bの突起56(点F)は溝17内において下方に位置する。
【0040】
図8に示した状態では、右脚20aが接地しているため、胴体10に対して外部から前向きの力が加えられると、右脚20aは胴体10に対して相対的に後向きの力を受ける。このような力が右脚20aに加わることにより、後述するようにクランク部材60が反時計回りの力を受け、これに伴って、左クランク偏心軸62b(点E)には接線方向の力が作用する。左運動部材50bの突起56(点F)は、胴体10の溝17内にて溝17の延在方向と垂直な方向への移動が制限されていることから、左クランク偏心軸62b(点E)の接線方向にほとんど移動することができず、よって支点として機能する。この結果、左運動部材50b(線Z)では、点Eが力点、点Fが支点、点Dが作用点として作用し、点Dに矢印α1の向きに力が加わる。また、左下脚部材40bに作用する重力によっても左脚20bには下がる方向に力が加わる。この結果、上がっていた左脚20bは下がる。
【0041】
図9は、左脚20bが下がっていって左脚20bの接地面43(具体的にはかかと部分)が歩行面に接地したときの歩行玩具1の歩行状態を示している。本実施形態では、このとき、図9に示したように、左クランク偏心軸62b(点E)がその移動範囲内において最下方近傍に位置(点Eが軌跡eのほぼ最下方に位置)し、左運動部材50bの突起56は溝17内において下方に位置する。
【0042】
図9に示した状態では、左脚20bが接地しているため、歩行玩具1の自重及び/又は胴体10に対する外部からの下向きの力により、左脚20bの左下脚部材40bは歩行面から上向きの力を受ける。また、胴体10に対して外部から前向きの力が加えられると、左脚20bの左下脚部材40bは歩行面から胴体10に対して相対的に後向きの力を受ける。この結果、左運動部材50b(線Z)の点Dには上向きの力及び後向きの力が加わる。
【0043】
左運動部材50bの突起56(点F)は、胴体10の溝17内にて溝17の延在方向と垂直な方向への移動が制限されていることから、矢印α2の方向に移動することができず、よって支点として機能する。この結果、左運動部材50b(線Z)では、点Dが力点、点Fが支点、点Eが作用点として作用する。このため、左クランク偏心軸62b(点E)には左運動部材50bの軸線方向の力(線Z方向の力)に加えて、図中の矢印α2で示したように後向きの接線方向の力が加わる。よって点Eに回転方向の力が加わり、クランク部材60が反時計回りに回転せしめられる。このようなクランク部材60の回転により、右脚20aが前方上方に移動せしめられる。このようにこれまで歩行面に接地していた右脚20aが上方に移動することに右脚20aが歩行面から離れ、よって接地している脚が右脚20aから左脚20bに切り替えられる。特に、本実施形態では、クランク部材60が図9において反時計回りに回転するため、接地していない脚20の運動部材50の揺動軸線Dの軌道dは接地している脚の揺動軸線Dの軌道dよりも高い。換言すると、各脚20の運動部材50の揺動軸線Dの軌道dは、概して、脚20が接地しているときに比べて脚20が接地していないときの方が高い。運動部材50の揺動軸線Dは膝関節に相当する揺動軸線Bの後方に位置し且つ下脚部材40が揺動軸線B回りで揺動可能であるため、軌道dに上述したような高低差があることにより、歩行面に接地していた脚20が歩行面から離れて前方に移動するときには、この脚20の膝関節が曲がるように上脚部材30に対する下脚部材40の相対角度が変化する。
【0044】
図10は、歩行面に接地していない右脚20aが左脚20bよりも前方に移動したときの歩行玩具1の歩行状態を示している。本実施形態では、このとき、図10に示したように、左クランク偏心軸62b(点E)がその移動範囲内において最下方近傍よりも僅かに後方に位置(点Eが軌跡eの最下方よりも僅かに後上方に位置)し、左運動部材50bの突起56(点F)は溝17内において図9に示した歩行状態のときよりも上方に位置する。また、左運動部材50bはほぼ上下方向(鉛直方向)に延びている。
【0045】
図10に示した状態でも、左脚20bが接地しているため、左脚20bの左下脚部材40bは歩行面から上向きの力を受ける。また、胴体10に対して外部から前向きの力が加えられているため、左脚20bの左下脚部材40bは歩行面から胴体10に対して相対的に後向きの力を受ける。この結果、図10に示した状態でも、左運動部材50b(線Z)の点Dには上向きの力及び後向きの力が加わる。換言すると、点Dには、左運動部材50bの軸方向の力(線Z方向の力)と、図中の矢印α3で示したような後向きの接線方向の力が加わる。
【0046】
左運動部材50bの突起56は、胴体10の溝17内にて溝17の延在方向と垂直な方向への移動が制限されていることから、突起56は矢印α3の方向には移動することができず、よって支点として機能する。この結果、左運動部材50b(線Z)では、点Dが力点、点Fが支点、点Eが作用点として作用し、よって左クランク偏心軸62b(点E)に後向きの力が加わる。また、上述したように左運動部材50bには軸方向上向きの力が加わっていることから、左クランク偏心軸62b(点E)に上向きの力も加わる。この結果、左クランク偏心軸62bには後上向きの力、すなわち回転方向の力が加わり、クランク部材60が反時計回りに回転せしめられる。このようなクランク部材60の回転により、右脚20aが更に前方上方に移動せしめられる。
【0047】
図11は、歩行面に接地していない右脚20aが最前方に位置するときの歩行玩具1の歩行状態を示している。したがって、図11は、図8に示した歩行状態に対して左右が逆転した状態を示している。本実施形態では、このとき、図11に示したように、左クランク偏心軸62bがその移動範囲内においてほぼ最後方に位置(点Eが軌跡eのほぼ最後方に位置)し、左運動部材50bの突起56は溝17内において中央付近に位置する。
【0048】
図11に示した状態でも、左脚20bの左下脚部材40bは歩行面から上向きの力を受ける。また、左脚20bの左下脚部材40bは胴体10に対して相対的に後向きの力を受ける。この結果、図11に示した状態でも、左運動部材50b(線Z)の点Eには上向きの力及び後向きの力が加わる。したがって、点Eには、左運動部材50bの軸方向の力(線Z方向の力)と、図中の矢印α4で示したような後向きの接線方向の力が加わる。
【0049】
左運動部材50bの突起56(点F)は、胴体10の溝17内にて溝17の延在方向と垂直な方向への移動が制限されていることから、突起56は矢印α4の方向には移動することができない。また、左クランク偏心軸62bがその移動範囲内においてほぼ最後方に位置することから、左クランク偏心軸62b(点E)は後方には移動しない。したがって、点Dに接線方向の後向きの力α4が加わっても、点Dが後方に移動することはなく、よって突起56は点Dがそれ以上後方に移動しないよう左運動部材50bの動きを制限する支点として機能する。一方、左運動部材50bには軸方向上向きの力が加わっていることから、左クランク偏心軸62b(点E)には上向きの力、すなわち回転方向の力が加わる。50この結果、クランク部材60が反時計回りに回転せしめられ、これに伴って右脚20aに下向きに移動する。また、右下脚部材40aに作用する重力によっても右脚20aには下がる方向に力が加わる。
【0050】
この後、右脚20aの接地面が歩行面に接地し、その後、図8図11に示した左脚20bの動作と同様な動作が右脚20aにて行われる。その結果、右脚20aが胴体10に対して後方に移動する間に、歩行面に接地していない左脚20bが前方に移動する。そして、このような動作が左右交互に繰り返されることによって、歩行玩具1が歩行面上を歩行する。
【0051】
図8図11を参照すると、本実施形態に係る歩行玩具1は、歩行面に対して胴体10を前方に移動させて、歩行面に接地している一方の脚20の下脚部材40を胴体10に対して相対的に後方に移動させると、歩行運動を行う。
【0052】
ここで、本実施形態に係る歩行玩具1では、運動部材50に形成された突起56は、胴体10に形成された溝17内で案内される。したがって、運動部材50に形成された突起56と胴体10の溝17は、胴体10に対して運動部材50の胴体協動部分52を案内するガイド機構を構成している。したがって、運動部材50に形成された突起56と胴体10の溝17は、運動部材50の胴体協動部分52が胴体10に対して移動可能な範囲を制限する移動制限機構を形成している。
【0053】
本実施形態では、このように運動部材50の胴体協動部分52が胴体10に対して移動可能な範囲が制限されていることにより、胴体10を歩行面に対して前方に移動させて歩行面に接地している一方の脚20の下脚部材40を胴体10に対して相対的に後方に移動させると、この下脚部材40に連結された運動部材50がこの運動部材50によりクランク部材60に回転力を加えるように移動する。換言すると、移動制限機構は、歩行面に接地している一方の脚20の下脚部材40を胴体10に対して相対的に後方に移動させたときに、この下脚部材40に連結された運動部材50がこの運動部材50によりクランク部材60に回転力を加えるように移動すべく構成されている。このような回転力が加えられてクランク部材60が回転すると、この回転によって他方の脚20の下脚部材40が歩行面から離れた状態で前方に移動される。
【0054】
見方を変えると、本実施形態に係る歩行玩具1では、運動部材50に形成された突起56及び胴体10の溝17により、胴体10を歩行面に対して前方に移動させて歩行面に接地している一方の脚20の下脚部材40を胴体10に対して相対的に後方に移動させると、この一方の脚20の下脚部材40に連結された一方の運動部材50がその胴体協動部分52を支点として後方に向かって揺動する。したがって、運動部材50の突起56及び胴体10の溝17は運動部材50の胴体協動部分52を支点として機能させる支点機構を形成している。
【0055】
支点機構によって一方の運動部材50がその胴体協動部分52を支点として後方に向かって揺動されると、揺動する一方の運動部材50によりクランク部材60に回転力が加えられる。そして、このような回転力が加えられてクランク部材60が回転すると、この回転によって他方の脚20の下脚部材40が歩行面から離れた状態で前方に移動される。
【0056】
以上より、本実施形態によれば、一方の脚20の接地面を歩行面に接地させた状態で胴体10を前方に移動させると、クランク部材60の回転を介して他方の脚20が前方に移動され、その後、この他方の脚20が歩行面に接地する。
【0057】
<効果>
本実施形態に係る歩行玩具1では、上述したように、歩行玩具1自体の重力により及び場合によってはユーザが歩行面に歩行玩具1を押し付けることにより、脚20は歩行面から上向きの力を受ける。また、ユーザが歩行玩具1を前方に移動させることにより、脚20は摩擦力により歩行面から後向きの力を受ける。そして、運動部材50の突起56及び胴体10の溝17から構成されるガイド機構、移動制限機構又は支点機構が作用することで、脚20に加わった上向きの力及び後向きの力がクランク偏心軸62に加わる回転方向の力に変換される。この結果、クランク偏心軸62には回転方向に力が加わり、クランク部材60が回転せしめられる。そして、このような動作が左右の両脚で繰り返し行われることにより、クランク部材60を連続的に回転させることができ、よって歩行玩具1を連続的に歩行させることができる。
【0058】
したがって、本実施形態によれば、運動部材50の突起56及び胴体10の溝17から構成されるガイド機構、移動制限機構又は支点機構により、すなわち簡単な機構により少ない部品点数で、安定的にクランク部材60を回転させることができ、よって歩行玩具1を安定的に歩行させることができる。
【0059】
<変形例>
以下では、第一実施形態に係る歩行玩具1の変形例について説明する。図12及び図13は、一つの変形例に係る歩行玩具1について説明する。図12は、本変形例に係る歩行玩具1の斜視図であり、胴体10の一部が省略されている。図13は、本変形例に係る歩行玩具1の図9と同様な側面図である。本変形例に係る歩行玩具1は基本的に第一実施形態に係る歩行玩具1と同様に構成されているため、以下では、第一実施形態に係る歩行玩具1と異なる部分を中心に説明する。
【0060】
本変形例に係る歩行玩具1では、運動部材50の突起56は、運動部材50の胴体協動部分52から左右方向において内側に向かって延びるように形成される。これに伴って、溝17が形成される各内部壁は、左右方向において対応する運動部材50の内側に、すなわち対応するロッド用開口部18の内側に配置される。この結果、胴体10の幅を小さく形成することができる。
【0061】
また、本変形例では、溝17は、クランク部材60よりも上方に配置される。特に、本変形例では、突起56に対応する点Fの軌跡f(図13参照)からわかるように、溝17は、胴体10が直立した状態にあるときに、クランク部材60の中央上方において、胴体10の軸線方向(鉛直方向)とほぼ平行に延びる。
【0062】
ただし、溝17の形状は、上記第一実施形態及び変形例における形状に限定されるものではない。したがって、溝17は様々な形状とされることができる。しかしながら、溝17は、クランク部材60の回転に対応して運動部材50の突起56が往復運動するように、線状に、例えば直線状、円弧状、波状等に形成されることが好ましい。また、溝17は、胴体10が歩行面に対して直立した状態にあるときに、歩行面に対して角度をなすように形成されるのが好ましい。なお、溝17の形状によって、各運動状態における運動部材50の向きは異なり、よって各運動状態における溝17内の突起56の位置とクランク部材60の回転位相との関係は異なる。
【0063】
また、上記第一実施形態では、胴体10に溝17が形成され、この溝17内によって案内される突起56が運動部材50に形成されている。しかしながら、胴体10に対して運動部材50の胴体協動部分52を案内することができれば、これら溝17及び突起56の代わりに他のガイド機構が設けられてもよい。したがって、例えば、運動部材50に溝が形成され、この溝によって案内される突起が胴体10に形成されてもよい。
【0064】
図14は、ガイド機構の例を概略的に示す図である。図14(A)に示したガイド機構70は、胴体10に連結されたスライドバー71と、このスライドバー71上を摺動するスライダ72とを備える。スライダ72には、円筒状の突起73が形成されており、この円筒状の突起73が運動部材50の胴体協動部分52に形成された円筒状の開口に嵌合する。この結果、運動部材50の胴体協動部分52が胴体10に設けられたスライドバー71に沿って案内される。
【0065】
図14(B)に示したガイド機構75は、胴体10に形成された同一軸線を有する二つのシリンダ76と、これら二つのシリンダ76内で摺動する二つのピストン77と、これらピストン77を連結する連結部材78とを備える。連結部材78は、シリンダ76の軸線に沿って移動する。連結部材78には、円筒状の突起79が形成されており、この円筒状の突起79が運動部材50の胴体協動部分52に形成された円筒状の開口に嵌合する。この結果、運動部材50の胴体協動部分52が胴体10に設けられたシリンダ76の軸線に沿って案内される。
【0066】
さらに、運動部材50の胴体協動部分52を支点として機能させることができれば、溝17及び突起56の代わりに又は上記ガイド機構の代わりに他の支点機構が設けられてもよい。或いは、運動部材50の胴体協動部分52が胴体10に対して移動可能な範囲を制限することができれば、溝17及び突起56の代わりに又は上記ガイド機構の代わりに、他の移動制限機構が設けられてもよい。斯かる支点機構や移動制限機構としては、例えば、構造が簡単な機械的なリンク機構等が挙げられる。具体的には、一方の端部が胴体10に揺動可能に連結されたリンク部材の他方の端部を、運動部材50の胴体協動部分52に揺動可能に連結することが考えられる。
【0067】
また、上記実施形態では、胴体10に対する上脚部材30の揺動軸線A、上脚部材30に対する下脚部材40の揺動軸線B及び下脚部材40に対する運動部材50の揺動軸線Dは、クランク部材60の回転軸線Cと平行である。しかしながら、これらは必ずしも平行でなくてもよい。例えば、胴体を省略した歩行玩具の概略的な上面図である図15に示したように、上脚部材30の揺動軸線A、下脚部材40の揺動軸線B及び運動部材50の揺動軸線Dが、クランク部材60の回転軸線Cに対して角度を有してもよい。この場合であっても、クランク部材60の回転軸線Cは進行方向を含む鉛直面に対して垂直に延びる。
【0068】
<第二実施形態>
次に、図16図18を参照して、第二実施形態に係る歩行玩具1について説明する。以下では、第一実施形態に係る歩行玩具とは異なる部分を中心に説明する。
【0069】
図16は、第二実施形態に係る歩行玩具1の断面側面図であり、図17は胴体10の一部を省略した歩行玩具1の斜視図であり、図18は胴体10を省略した歩行玩具1の側面図である。
【0070】
図6図18に示したように、本実施形態の歩行玩具1も第一実施形態に歩行玩具と同様に、胴体10、一対の脚20及びクランク部材60を備える。
【0071】
本実施形態では、胴体10は、下側半体11’と上側半体12’とを有し、これら半体11’、12’が互いに対して組み付けられることで胴体が形成される。溝17はこれら下側半体11’と上側半体12’との間に形成される。特に、本実施形態では、各脚20の両側に同一形状の一対の溝17が設けられる。
【0072】
また、本実施形態では、各脚20は、上脚部材及び下脚部材を有さずに、運動部材50のみを有する。本実施形態に係る運動部材50は、連結部58と、連結部58から外側に向かって延びる延在部59とを備える。特に、本実施形態では、運動部材50は、連結部58と延在部59とがほぼT字状になるように構成される。連結部58は、その一方の端部に胴体協動部分52を有し、他方の端部に偏心軸連結部分53を有する。また、延在部59はその先端部に作用部分51を有する。したがって、運動部材50は、それぞれ、作用部分51、胴体協動部分52及び偏心軸連結部分53を備える。
【0073】
本実施形態では、延在部59の先端には足に相当する足部分591が設けられる。足部分591は、第一実施形態の足部分と同様に歩行玩具1が歩行する際に歩行面と接地する接地面を有する。したがって、延在部59の先端部に位置する作用部分51は、この作用部分51を有する脚20が歩行面に接地しているときに、歩行面に接地する。
【0074】
各運動部材50の偏心軸連結部分53は、対応するクランク偏心軸62に揺動可能に連結される。したがって、偏心軸連結部分53は、運動部材50がクランク偏心軸62の軸線を中心として揺動することができるように、クランク偏心軸62に連結される。
【0075】
各運動部材50の胴体協動部分52には、円柱状部分が形成され、この円柱状部分の両端は連結部58から左右方向に突出する突起56を構成する。したがって、本実施形態では、各胴体協動部分52は、互いに反対方向に突出する二つの突起56を有する。これら突起56は、胴体10内に形成された溝17内を摺動することができるように溝17内に収容される。
【0076】
このように構成された第二実施形態に係る歩行玩具1も、少なくとも一方の脚20の接地面を歩行面に接地させた状態でユーザの手等によって胴体10を前方に押して胴体10を前方に移動させることで、脚20により歩行する。図18(A)~図18(C)は、歩行玩具1の異なる歩行状態を示している。なお、図18にも、図9図11と同様に便宜上点Dを示しているが、本実施形態では点Dは揺動軸線としては機能していない。
【0077】
図18(A)は、接地していなかった左脚20bの左運動部材50bが接地したときの歩行玩具1の歩行状態を示している。このとき、左運動部材50bの作用部分51には歩行面から上向きの力及び後向きの力が加わる。そして、左運動部材50bの突起56(点F)が支点として機能することにより、左クランク偏心軸62b(点E)には回転方向の力が加わり、クランク部材60が反時計回りに回転せしめられる。
【0078】
図18(B)は、歩行面に接地していない右脚20aの右運動部材50aが歩行面に接地している左脚20bの左運動部材50bよりも前方に移動したときの歩行玩具1の歩行状態を示している。また、図18(C)は、歩行面に接地していなかった右脚20aの右運動部材50aが接地したときの歩行玩具1の歩行状態を示している。図18(B)及び図18(C)に示した歩行状態においても、左運動部材50bの作用部分51には歩行面から上向きの力及び後向きの力が加わる。そして、左運動部材50bの突起56(点F)が支点として機能することにより、左クランク偏心軸62b(点E)には回転方向の力が加わり、クランク部材60が反時計回りに回転せしめられる。
【0079】
この後、図18(A)~図18(C)に示した動作と同様な動作が右脚20aにて行われる。そして、このような動作が左右交互に繰り返されることによって、歩行玩具1が歩行面上を歩行する。したがって、本実施形態に係る歩行玩具1でも、第一実施形態に係る歩行玩具と同様に、歩行玩具1を連続的に歩行させることができる。したがって、本実施形態によれば、運動部材50の突起56及び胴体10の溝17から構成されるガイド機構、移動制限機構又は支点機構により、すなわち簡単な機構により、第一実施形態よりも少ない部品点数で、安定的にクランク部材60を回転させることができ、よって歩行玩具1を安定的に歩行させることができる。
【0080】
なお、上記第二実施形態では、運動部材50はT字状になるように形成されているが、T字状とは異なる形状になるように形成されてもよい。したがって、例えば、運動部材50は第一実施形態と同様に直線状に形成されてもよい。また、逆に、第一実施形態に係る運動部材が第二実施形態に係る運動部材と同様にT字状に形成されてもよい。
【0081】
<第三実施形態>
次に、図19及び図20を参照して、第三実施形態に係る歩行玩具1について説明する。以下では、第一実施形態に係る歩行玩具とは異なる部分を中心に説明する。
【0082】
図19は、第三実施形態に係る歩行玩具1を概略的に示す側面図である。図19に示したように、本実施形態に係る歩行玩具1は、胴体10、脚20、クランク部材60を備える第一実施形態又は第二実施形態に係る歩行玩具(以下、「人形部」とも称する)に加えて、胴体10に取り付けられる歩行補助具80を備える。
【0083】
歩行補助具80は、歩行玩具1の人形部による歩行運動を補助する。歩行補助具80は、本体部81と、本体部81に固定されると共に胴体10に取り付けられるアーム82と、継続的に歩行面に接地する車輪83とを備える。
【0084】
本体部81は、中空のハウジングとして形成される。図19に示した例では、本体部81は直方体形状を有するが、任意の形状とすることができる。本体部81の上面には、アーム82に設けられた係止部を操作するためのスイッチ85が設けられる。なお、係止部を操作することができれば、スイッチ85は歩行補助具80のどこに配置されてもよい。
【0085】
アーム82は中空上に形成され、下側端部において本体部81の前方に固定される。また、アーム82は、上側端部において胴体10の後側に取り付けられる。本実施形態では、アーム82の胴体10への取付位置は本体部81への固定位置よりも高い。したがって、アーム82は、前方へ向かって上方に傾斜するように、すなわち本体部81への固定位置から胴体10への取付位置に向かって上方に傾斜するように、胴体10に取り付けられる。
【0086】
また、本実施形態では、アーム82の上側端部は胴体10の後側(背中側)に着脱可能に取り付けられる。この結果、歩行補助具80は胴体に対して着脱可能に取り付けられる。図20は、アーム82の上側端部が胴体10に取り付けられている状態を示す胴体10近傍の概略的な断面図である。図20に示したように、アーム82の上側端部には、胴体10の被装着部101に取り付けられる装着部821が形成される。装着部821は、例えば、角柱状に形成された棒状部である。一方、装着部821が取り付けられる被装着部101は、例えば、角柱状の棒状部と相補的な形状を有する受容穴として胴体10の後面に形成される。したがって、本実施形態では、装着部821の棒状部を被装着部101の受容穴内に挿入することによって装着部821が被装着部101に取り付けられる。
【0087】
また、装着部821の上部には、摺動開口86が形成され、この摺動開口86内には、摺動開口86に沿って摺動する係止部87が配置される。本実施形態では、装着部821の上面に摺動開口86が形成される。係止部87は、装着部821の摺動開口86から上方に突出した突出状態と、摺動開口86内に格納された格納状態との間で摺動することができる。係止部87は、弾性部材88によって上方に向かって付勢される。したがって、係止部87は、外部から力が加えられていないときには、突出状態に維持される。
【0088】
被装着部101には、装着部821が被装着部101に取り付けられたときに摺動開口86と対面する位置に係止孔102が形成される。したがって、装着部821が被装着部101に取り付けられて係止部87が突出状態にあるときには、係止部87が係止孔102に係止され、よって装着部821が被装着部101に係止される。
【0089】
また、係止部87の下面にはストラップ89が設けられ、このストラップ89は中空のアーム82内を通ってスイッチ85に連結される。本実施形態では、スイッチ85がユーザによって操作されると、係止部87が弾性部材88の付勢力に抗して突出状態から格納状態へ摺動する。この結果、スイッチが操作されると、係止部87の係止孔102への係止が解除され、よって、装着部821の被装着部101への係止が解除される。
【0090】
車輪83は、脚20による歩行運動が行われている間に脚20とは異なる位置において継続的に歩行面に接地する。本実施形態では、歩行補助具80は、本体部81に対して回転可能に取り付けられた一組のみの車輪を備える。特に、本実施形態では、これら車輪は、前後方向に対してほぼ垂直な一つの軸線G回りで回転する。
【0091】
歩行補助具80は、胴体10に取り付けられたときに、胴体10が歩行面に対して特定の角度で保持されるように形成される。特に、本実施形態では、胴体10が歩行面に対して直立した状態(すなわち、胴体10の軸線が鉛直方向に延びる状態)に保持されるように形成される。
【0092】
このように構成された歩行補助具80は車輪83によって常に歩行面に接地する。ここで、人形部は、歩行中に一方の脚のみが歩行面に接地していることが多い。この場合、前後左右方向に傾倒するようなふらつきが生じることで、つまずきが生じることがある。また、人形部が歩行するためには、歩行面に接地している脚と歩行面との間で摩擦力が生じることが必要になるが、上述したようなふらつきが生じると摩擦力が不十分になる可能性がある。これに対して、車輪83は常に接地していることから、斯かるふらつきの発生を抑制することができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、継続的に歩行面に接地する補助接地部として車輪83が用いられている。しかしながら、継続的に歩行面に接地することができれば、車輪83以外の補助接地部が用いられてもよい。斯かる補助接地部としては、例えば、平面状の接地部材であってもよい。あるいは、胴体、脚及びクランク部材を備えた第一実施形態又は第二実施形態に係る歩行玩具であってもよい。
【0094】
また、上記実施形態では、歩行補助具80は胴体10の後側に取り付けられている。しかしながら、歩行補助具80は胴体10の後側とは異なる部位に取り付けられてもよく、例えば胴体10の前側に取り付けられてもよい。
【0095】
さらに、上記実施形態では、アーム82は、本体部81への固定位置から胴体10への取付位置に向かって上方に傾斜する。したがって、アーム82に加わる重力によりアーム82には本体部81の車輪83を中心としたモーメントが作用する。また、アーム82に外部から前方下向きの力β1が加えられると、この力によってもアーム82には本体部81の車輪83を中心としたモーメントが作用する。この結果、アーム82の胴体10との取付位置においては、前方下向きの力γが胴体10に加わる。換言すると、本実施形態では、歩行補助具80は、歩行補助具80に前向き及び下向きの力が加わったときに、胴体10に前向き及び下向きの力が加わるように胴体10に取り付けられているといえる。この結果、アーム82に前向きの力βを加えることで胴体10が前方に移動したときに、歩行面に接地している脚20の接地面と歩行面との間に生じる摩擦力が大きくなる。このため、胴体10に前向きの力を加えたときに脚20が歩行面上で前向きに滑ってしまうことが抑制される。
【0096】
次に、胴体10の歩行面に対する傾きと歩行との関係について説明する。図21は、胴体10が前向きに傾斜した状態にあるときの、歩行玩具1の歩行状態を示す側面図である。図21に示した状態では、左脚20b及び左下脚部材40bは最前方(最も蹴り上げた位置)に位置している。そしてこの状態において、それまで歩行面に接地せずに前方に移動してきた左脚20bが歩行面に接地している。したがって、胴体10を歩行面に対してこれ以上前向きに傾けた場合、歩行面に接地せずに前方に移動していた左脚20bは最前方の位置に到達する前に歩行面に接地してしまうことになる。そして、左脚20bが歩行面に接地すると、胴体10に前向きの力が加わったときに、左脚20bには相対的に後向きの力が加わる。左脚20bは最前方の位置に到達する前であるため、左脚20bに後向きの力が加わると、クランク部材60には逆回転方向に力が加わることになる。この結果、歩行玩具1それ以上歩行することができなくなってしまう。したがって、この場合には、歩行玩具1は連続的に歩行運動を行うことができない。逆に言うと、胴体10の歩行面に対する角度が図21に示した角度よりも大きい(直角側の)一定範囲内の角度である場合には、歩行面から離れた状態で前方に移動されていた脚20の下脚部材40が、最前方に到達した後に接地することになる。したがってこの場合には、歩行玩具1は継続的に歩行運動を行うことができる。
【0097】
また、胴体10が歩行面に対して後向きに傾斜した場合には、傾斜角度が或る特定の角度以上に大きくなり過ぎると、下脚部材40の接地面がほぼ鉛直に延びる状態に到達しうる。このような状態に到達すると、胴体10を前方に移動させても下脚部材40に後向きの力が加わらなくなる。この結果、歩行玩具1は継続的に歩行運動を行うことができなくなる。したがって、胴体10が後向きに傾斜し過ぎても歩行玩具1は継続的に歩行運動を行うことができない。したがって、歩行玩具1では、胴体10の軸線の歩行面に対する角度が一定範囲内である場合に歩行運動が連続的に行われる。
【0098】
ここで、本実施形態では、歩行補助具80は、人形部の胴体10の軸線の歩行面に対する角度がほぼ直角になるように胴体10を保持する。したがって、胴体10の軸線の歩行面に対する角度は上述した一定範囲内の角度である。このため、本実施形態に係る、歩行補助具80を有する歩行玩具1は継続的に歩行運動を行うことができる。なお、歩行補助具80は、胴体10の軸線の歩行面に対する角度が上述した一定範囲内に維持されれば、胴体10の軸線が歩行面に対して垂直とは異なる角度になるように胴体10を保持してもよい。歩行補助具80は、上述した一定範囲内において胴体10の軸線の歩行面に対する角度を変更することができるように構成されてもよい。
【0099】
なお、本実施形態では、アーム82は胴体10に取り付けられるが、胴体10とは異なる上体部の部材、例えば頭部材や腕部材に取り付けられてもよい。また、本実施形態では、歩行補助具80のアーム82及び本体部81は胴体10とは別の部材として構成されている。しかしながら、歩行補助具80は胴体10と一体的に形成されてもよい。この場合には、歩行補助具80は胴体10から取り外すことはできない。
【0100】
また、上記第二実施形態では、歩行玩具1の人形部として、上記第一実施形態に係る歩行玩具が用いられている。しかしながら、人形部としては、上記第一実施形態に係る歩行玩具とは異なる構成の人形部が用いられてもよい。しかしながら、その場合であっても、人形部は、胴体の軸線の歩行面に対する前後方向の角度が一定範囲内である場合に歩行運動が連続的に行われるように構成される。或いは、人形部は、胴体の軸線の歩行面に対する前後方向の角度が一定範囲内である場合に、歩行面から離れた状態で前方に移動されていた脚20の下脚部材40が最前方の位置に到達した後に接地するように構成される。
【0101】
また、歩行補助具80は、車輪83を駆動する電動機を備えていてもよい。図22は、第三実施形態の変更例に係る歩行補助具80の本体部81の概略的な平面図である。図22に示したように、本変形例に係る歩行補助具80は、4つの車輪83を有し、このうち前側の二つの車輪は従動輪831、後側の二つの車輪は操舵駆動輪832である。本体部81は操舵用電動機811と、駆動用電動機812と、これら電動機811、812に接続された電子制御装置813とを有する。操舵駆動輪832は操舵用電動機811により操舵され、且つ駆動用電動機812により駆動される。操舵用電動機811及び駆動用電動機812は電子制御装置813により制御される。電子制御装置813は外部のコントローラと通信可能な通信機器を備えていてもよい。この場合、操舵用電動機811及び駆動用電動機812は外部のコントローラによって制御される。なお、歩行補助具80は、従動輪831を有さずに、操舵駆動輪832のみを有していてもよい。また、操舵用電動機811は設けられなくてもよく、よって操舵駆動輪832は操舵されなくてもよい。
【0102】
このように歩行補助具80が車輪83を駆動する電動機を備えることにより、ユーザが手によって胴体10を押さなくても、歩行玩具を歩行させることができる。
【0103】
<第四実施形態>
次に、図23図25を参照して、第四実施形態に係る歩行玩具1について説明する。以下では、第三実施形態に係る歩行玩具とは異なる部分を中心に説明する。
【0104】
図23は、図16と同様な、胴体10近傍の概略的な側面図である。図23に示したように、本実施形態に係る歩行玩具1は、クランク部材60の回転位相を検出する位相検出部90を備える。位相検出部90は、クランク部材60に形成された被検出部64と、被検出部64に対向するように配置された検出器91とを備える。位相検出部90の出力信号は、歩行玩具1内に配置されたコンピュータ(図示せず)に入力される。或いは、位相検出部90の出力信号は、通信手段を介して外部のコンピュータに入力されてもよい。これらコンピュータは、位相検出部90から入力された信号に応じた処理を行う。内での処理に用いられる。検出された回転位相は、例えば、これらコンピュータを介して、歩行玩具1の脚20の動きと連動させて他の機器を動作させるのに用いられる。
【0105】
図24は、本実施形態に係るクランク部材60の斜視図である。また、図25(A)は図24のA-Aに沿って見たクランク部材60の断面図であり、図25(B)は図24のB-Bに沿って見たクランク部材60の断面図である。図25には、クランク部材60に加えて胴体10の一部が示されている。
【0106】
図24に示したように、クランク部材60は回転軸線C方向の外側に配置された一対の円板状部材63と、円板状部材63の間に設けられた被検出部64及びスペーサ65とを備える。スペーサ65は被検出部64に隣接して配置される。図25(A)に示したように、被検出部64は、断面が半円状の二つの部材がクランク部材60の回転軸線Cに対して偏心して互いに合わさるように形成される。したがって、被検出部64は、その外周面がクランク部材60の周方向において、回転軸線Cからの径が変化するように形成される。また、図25(B)に示したように、スペーサ65は、その外径が被検出部64の最大外径よりも小さくなるように円柱状に形成される。したがって、スペーサ65は被検出部64とは異なる外周形状を有する。
【0107】
また、図25(B)に示したように、胴体10のスペーサ65と対面する壁面103上には突出部104が設けられる。この突出部104は、スペーサ65の外周面にまでは到達しないような高さを有する。また、突出部104は、クランク部材60が胴体10に左右逆向きに配置されて突出部104がクランク部材60の被検出部64に対面したときには、クランク部材60の回転中に突出部104が被検出部64と接触するような高さを有する。したがって、本実施形態では、胴体10は、クランク部材60が第1の向き(正しい向き)で胴体10内に配置されたときには胴体10が被検出部64及びスペーサ65のいずれの外周面とも干渉せず且つクランク部材60が第1の向きとは逆向きの第2の向き(誤った向き)で胴体10内に配置されたときには胴体10が被検出部64の外周面と干渉するように形成される。この結果、クランク部材60が逆向きに配置されることを防止することができる。
【0108】
なお、スペーサ65はその外径が被検出部64の最大外径よりも大きくなるように形成されてもよい。この場合には、クランク部材60が第1の向きで胴体10内に配置されたときには胴体10は被検出部64及びスペーサ65のいずれの外周面とも干渉せず且つクランク部材60が第1の向きとは逆向きの第2の向きで胴体10内に配置されたときには胴体10がスペーサ65の外周面と干渉する。
【0109】
本実施形態では、検出器91はアーム82の装着部821に配置される。また、被装着部101は、クランク部材60の上方に位置する。したがって、装着部821は被装着部101に取り付けられたときに被検出部64の上方に位置する。また、検出器91は、装着部821の下側に配置される。したがって、検出器91は、装着部821が被装着部101に取り付けられたときに、胴体10内においてクランク部材60の被検出部64の上面に対向するように装着部821に配置される。
【0110】
また、本実施形態では、検出器91は、検出器91に対向する対象物までの距離を検出する光学センサである。検出器91は、被検出部64に対向するように配置されていることから、被検出部64の外周面までの距離に応じた信号を出力する。
【0111】
ここで、上述したように装着部821は上側に係止部87が設けられる。本実施形態では、検出器91が装着部821の下側に配置されることにより、装着部821に係止部87と検出器91との両方を設けることができる。また、検出器91は、装着部821が被装着部101に取り付けられたときに、胴体10内において被検出部64の上面に対向する。したがって、光学センサである検出器91は比較的暗い胴体10内において距離の検出を行うため、高い精度で距離を検出することができる。さらに、本実施形態では、検出器91は装着部821の下側に配置される。したがって、検出器91が装着部821の先端に設けられているような場合と比べて、装着部821を胴体10内に奥まで挿入することができる。この結果、被装着部101へ装着部821を安定して取り付けることができる。
【0112】
なお、検出器91は、検出器91に対向する対象物までの距離を検出することができれば、磁気センサや接触式のセンサ等の他のセンサであってもよい。また、位相検出部90は、クランク部材60の位相を検出することができれば、クランク部材60が一定角度回転する毎にパルス信号を出力する回転パルス検出センサ等、他の位相検出器によって構成されてもよい。
【0113】
また、本実施形態では、検出器91は、歩行補助具80の装着部821に設けられる。しかしながら、検出器91は、例えば、胴体10内に配置されてもよいし、歩行補助具80とは別の部品に設けられてもよい。
【0114】
具体的には、例えば、胴体10の前側(腹側)に被装着部101とは異なる被装着部を設け、この被装着部に検出器を有する装着部材を取り付けるようにしてもよい。この場合、装着部材は検出器からの出力を外部の機器に送信可能な通信機器を有していてもよい。このように歩行補助具80を取り付けるための被装着部101とは異なる被装着部を胴体10に互いに反対向きに設けることで、別々の部品である歩行補助具80と検出器を有する装着部材とを同時に取り付けることができる。
【0115】
さらに、上記実施形態では、胴体10の壁面103にはスペーサ65に対向する位置に突出部104が設けられる。しかしながら、突出部104は被検出部64と対向する位置において壁面103に設けられてもよい。この場合には、スペーサ65は、被検出部64の最大外径よりも大きな最大外径を有することが必要である。
【0116】
以上、好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0117】
1 歩行玩具
10 胴体
20 脚
30 上脚部材
40 下脚部材
50 運動部材
60 クランク部材
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