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特許7596183食材保管装置、需要連動在庫補充サービス提供システムおよび需要連動在庫補充サービス提供プログラム
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  • 特許-食材保管装置、需要連動在庫補充サービス提供システムおよび需要連動在庫補充サービス提供プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】食材保管装置、需要連動在庫補充サービス提供システムおよび需要連動在庫補充サービス提供プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/087 20230101AFI20241202BHJP
【FI】
G06Q10/087
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021038136
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138322
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】堀内 敬介
(72)【発明者】
【氏名】肥後 圭哉
(72)【発明者】
【氏名】武藤 圭史
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-000247(JP,A)
【文献】特表2016-511392(JP,A)
【文献】特開平10-148464(JP,A)
【文献】特開2019-175247(JP,A)
【文献】特開平04-010097(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107748974(CN,A)
【文献】特開2002-269203(JP,A)
【文献】小林 富雄,改訂新版 食品ロスの経済学,第2版,農林統計出版株式会社,2018年03月12日,p.121-124,ISBN978-4-89732-378-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を冷凍保存する冷凍手段と、
前記冷凍手段に設置されたセンサから、前記食材の在庫データを取得する通信手段と、
特定日または特定時間に消費される前記食材と該食材の消費見込量を顧客情報から予測する予測手段と、
前記消費見込量を参照した店員が前記消費見込量に応じた前記食材を解凍するときに用いられる解凍手段と、
前記センサにより取得された前記食材の在庫減少分に基づき、前記食材の発注すべき量と発注するタイミングを演算し、その食材を発注する発注手段と、を備え、
食材保管装置の食材在庫量から消費期限が所定期間以内の在庫量を差し引いた残量を前記食材保管装置の管理費で除した販売効率を優先させるモードを有し、
前記発注手段は、前記モードに基づいて、前記食材の発注すべき量と発注するタイミングを演算する、食材保管装置。
【請求項2】
請求項1に記載の食材保管装置において、
前記予測手段は、前記顧客情報に加えて、気象あるいは交通を含む都市情報から、前記食材の消費見込量を予測する、食材保管装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の食材保管装置において、
さらに、1回あたりの食材の配送量を配送頻度で除した配送効率を優先させるモードを有し、
前記発注手段は、前記販売効率を優先させるモードと、前記配送効率を優先させるモードと、のいずれかに基づいて、前記食材の発注すべき量と発注するタイミングを演算する、食材保管装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載の食材保管装置において、
前記冷凍手段は、前記食材を急速冷凍する、食材保管装置。
【請求項5】
食材を冷凍保存する冷凍手段と、
前記冷凍手段に設置されたセンサから、前記食材の在庫データを取得する通信手段と、
特定日または特定時間に消費される前記食材と該食材の消費見込量を顧客情報から予測する予測手段と、
前記消費見込量を参照した店員が前記消費見込量に応じた前記食材を解凍するときに用いられる解凍手段と、
前記センサにより取得された前記食材の在庫減少分に基づき、前記食材の発注すべき量と発注するタイミングを演算し、その食材を発注する発注手段と、を備え、
食材保管装置の食材在庫量から消費期限が所定期間以内の在庫量を差し引いた残量を前記食材保管装置の管理費で除した販売効率を優先させるモードを有し、
前記発注手段は、前記モードに基づいて、前記食材の発注すべき量と発注するタイミングを演算する、需要連動在庫補充サービス提供システム。
【請求項6】
請求項に記載の需要連動在庫補充サービス提供システムにおいて、
前記予測手段は、前記顧客情報に加えて、気象あるいは交通を含む都市情報から、前記食材の消費見込量を予測する、需要連動在庫補充サービス提供システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載の需要連動在庫補充サービス提供システムにおいて、
さらに、1回あたりの食材の配送量を配送頻度で除した配送効率を優先させるモードを有し、
前記発注手段は、前記販売効率を優先させるモードと、前記配送効率を優先させるモードと、のいずれかに基づいて、前記食材の発注すべき量と発注するタイミングを演算する、需要連動在庫補充サービス提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材保管装置、需要連動在庫補充サービス提供システムおよび需要連動在庫補充サービス提供プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
食材を販売する小売店の共通課題は、需要予測に応じた品揃えによる販売機会損失抑制と食材鮮度維持である。例えば、特許文献1には、来店者数、売上額、オーダー品目などのPOS(Point of Sales)データを参照し、調理品の予測をすることで食材仕込み量を予測するシステムが開示されている。また、小売店でなく焼肉店の例であるが、特許文献2には、消費見込み量予測値を基に冷凍肉の必要解凍量を算出し、必要な分だけ解凍することで、調理品の品質維持を図ることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-175250号公報
【文献】特開2019-175247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は販売機会損失抑制を目的しており、特許文献2は食材鮮度維持を目的しているが、食材の発注から、配送、受取、陳列、解凍を経て、再び発注に至る一連のプロセスの中で、配送頻度過多に伴う配送、受取および陳列に要する手間や経費については考慮されていない。
【0005】
本発明の目的は、配送頻度の抑制により手間や経費を削減する食材保管装置、需要連動在庫補充サービス提供システムおよび需要連動在庫補充サービス提供プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、食材を冷凍保存する冷凍手段と、特定日または特定時間に消費される前記食材と該食材の消費見込量を顧客情報から予測する予測手段と、前記消費見込量に応じて前記食材を解凍する解凍手段と、解凍された食材を特定して発注すべき量と発注するタイミングを演算し、その食材を発注する発注手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、配送頻度の抑制により手間や経費を削減する食材保管装置、需要連動在庫補充サービス提供システムおよび需要連動在庫補充サービス提供プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に関わる需要連動在庫補充サービス提供システムの全体像を示す図。
図2】需要連動在庫補充サービス提供システムにおけるステークホルダ間のデータや物の流れを示す図。
図3】消費者需要予測、食材保管庫在庫、累積食材解凍量、食材発注/受取の時系列データの一様態を示す図。
図4】消費者需要予測、食材保管庫在庫、累積食材解凍量、食材発注/受取の時系列データの別の様態を示す図。
図5】販売効率と配送効率の関係を模式的に示すグラフ。
図6】実施例2に関わる需要連動在庫補充サービス提供システムの全体像を示す図。
図7】比較例として、従来の手法で食材の発注を手配する場合における、食材発注/受取の時系列データの様態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を実施するための形態について、各図を参照して詳細に説明する。なお、以下では、在庫量、解凍量、発注量、消費見込量といった文言を用いるが、本明細書における「量」は、食材の種類によっては、質量以外に、個数や体積を意味する場合もある。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1に関わる需要連動在庫補充サービス提供システム100の全体像を示す図である。従来、食材販売店舗20で常温もしくはチルド温度帯で販売される食材は、食材生産事業者50において必要に応じて解凍され、常温もしくはチルド温度帯の状態で食材販売店舗20へ配送されていた。しかし、本実施例の需要連動在庫補充サービス提供システム100では、食材販売店舗20で常温もしくはチルド温度帯で販売される食材が、冷凍の状態で食材生産事業者50から食材販売店舗20へ配送され、食材販売店舗20において適切なタイミングで解凍が行われる。
【0011】
食材の解凍は、消費者18自身がフロント側のレジ横にある電子レンジ(図示せず)を用いて行うようにしても良いが、食材販売店舗20のバックヤード側にて店員(店長を含む)が行うのが望ましい。このため、本実施例の食材販売店舗20には、食材保管装置31として、食材保管庫31aの他に、食材解凍装置31bが設けられている。また、食材保管装置31は、プロセッサと、メモリと、記憶手段と、通信手段と、出力手段と、入力手段と、を備えている。食材保管装置31内の演算や制御等の機能は、プログラムがプロセッサによって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現される。これらの機能を実現するためのプログラムは、メモリに格納される。
以下、食材販売店舗20における食材の保管および解凍の流れについて、説明する。
【0012】
まず、図1の(1)で示す通り、食材保管庫31a内に設置された画像センサや質量センサなどで取得されるセンサデータ12が、クラウドサーバー17(図2参照)に送信され、食材保管庫31aに冷凍保管された食材の数と種類が管理される。クラウドサーバー17へ送信されるセンサデータ12には、食材のタグやバーコードから読み取った情報を含めても良い。
【0013】
次に、クラウドサーバー17は、図1の(2)で示す通り、消費者18が携帯端末などから発信した口コミ14、ニーズデータ15、都市情報16、食材販売店舗20で得られる顧客情報11、などを基にして、需要のある食材とその消費量を予測し、消費者行動予測データ13として、食材販売店舗20に提供される。なお、消費者行動予測データ13は、食材販売店舗20を管理する店舗管理会社40を介して、食材販売店舗20へ送信される場合もある。都市情報16には、例えば、交通データ16a、駐車場データ16b、気象データ16c、店舗周辺の人流データ16dなどが含まれる。また、顧客情報11には、食材販売店舗20のフロント側で店員が入力した購入年齢層に関する情報や、商品のバーコード等によって読み取られた食材の種類に関する情報、購入時間帯などが含まれる。
【0014】
消費者18は、モバイルアプリを用いて会員登録などを行うことにより、食材販売店舗20の在庫を事前に閲覧できるようになっており、来店後に買いたい食材の欠品に気付くという無駄を未然に防ぐことができる。また、消費者18がモバイルアプリで情報発信した口コミ14やニーズデータ15は、クラウドサーバー17から、消費者行動予測データ13として食材販売店舗20に提供され、食材販売店舗20にとっても、食材の需要に見合う食材の解凍や発注を行うのに有用となる。
【0015】
次に、図1の(3)で示すように、食材販売店舗20の店員は、消費者行動予測データ13を参照し、需要に見合う食材を必要分だけ、バックヤード側で食材解凍装置31bを用いて解凍する。解凍された食材は、フロント側で常温やチルド温度帯の商品として陳列される。食材の陳列は、店員が食材を事前に解凍して陳列しておいても良いが、バックヤード側とフロント側がショーウィンドウを介して繋がっている陳列棚であれば半自動陳列も可能である。
【0016】
次に、図1の(4)で示すように、食材販売店舗20では、消費者行動予測データ13から得られる消費者需要予測1と、食材保管庫31a内のセンサデータ12から得られる食材保管庫在庫2と、食材解凍装置31bで解凍した累積食材解凍量3と、を用いて、店員が、必要と判断した分の食材発注/受取4を実行する。詳細は後述するが、店員は、経験や勘に頼らず、これらの情報を用いて機械的に発注要否や発注量の判断を行う。その結果、熟練度の高くない店員でもAIなどを用いた発注の完全自動化が可能となり、発注精度が向上するだけでなく、発注作業の省力化により人手不足の解消も期待できる。また、食材販売店舗20では、需要に見合わない食材の発注が抑制でき、食材生産事業者50でも、需要に見合わない食材の生産が抑制できるため、冷凍食品そのもののフードロス低減が実現できる効果がある。
【0017】
前述のように、従来、常温やチルド温度帯のまま卸/物流センタ60が頻度多く配送していた食材について、本実施例では、冷凍化し、鮮度を長期化しつつ、食材販売店舗20で解凍し必要なときだけ食材を発注する仕組みにする。これにより、配送頻度が低減され、卸/物流センタ60および食材販売店舗20の双方にとって負担低減となり、配送および受取の手間や経費が削減される結果、人出不足の問題も解消が可能となる。
【0018】
また、食材販売店舗20への配送を予め許可された配達員70が、入門証となるカードをゲートにかざしてバックヤード内に入り、食材保管庫31aにアクセスすることで、配達員70自身が食材を食材保管庫31aに直接収納できるようにするのが望ましい。これにより、食材販売店舗20側で受け取る店員のスケジュールに左右されずに、食材が受け取れるようになり、食材販売店舗20での受け付け作業を待つロス時間が減るとともに、店員が接客に専念できフロント側でのサービスの質が向上する。さらに、配達員70は、収納した食材の商品タグやバーコードを読み取り、配達時に検収まで完了できるような権限を有するようにしても良い。その結果、食材の品質保証や安全に関するトレーサビリティを確保しつつ、複数店舗に効率よく多くの食材を時間内に配送することも可能となる。
【0019】
図2は、需要連動在庫補充サービス提供システム100におけるステークホルダ間のデータや物の流れを示す図である。
【0020】
データ管理会社10は、消費者18からの口コミ14やニーズデータ15、都市情報16、食材販売店舗20の食材保管庫31aに設置されたセンサから得られるセンサデータ12、食材販売店舗20での販売時に得られる顧客情報11、を全てクラウドサーバー17上で、セキュリティ・データ冗長性・安定性を含めて管理する。このデータ管理会社10は、メーカ30に消費者行動予測データ13を提供する代わりにデータ利用料を得る。
【0021】
メーカ30は、消費者行動予測データ13を需要予測に変換するAIソフトと、食材販売店舗20に設置するためのセンサを内蔵した食材保管装置31(食材保管庫31a、食材解凍装置31b)と、を店舗管理会社40に提供する。また、メーカ30は、食材の温度や湿度やテクスチャなどの状態監視と品質管理をするためのデータも、店舗管理会社40に提供する。これらのデータは、前述の食材保管装置31に設置されたセンサだけでなく、冷凍配送トラック内の冷凍装置や、食材梱包箱に設置された温度や湿度や質量のデータを得るためのセンサからの情報も活用される。
【0022】
食材生産事業者50は、従来冷凍化していなかった食材を冷凍化することで、冷凍商品の品数が増える一方、必要なタイミングで必要な分だけ受注生産する形にすることで、24時間運転管理する必要があり電気代がかかる超大型冷凍庫が不要となる。その結果、冷凍食品を長期間保管することで生じる乾燥や酸化による冷凍焼けが防止でき、廃棄するフードロスの低減につながる。
【0023】
卸/物流センタ60にとっても、食材販売店舗20に食材を配送する頻度が低減できるメリットがある。トラック内の冷凍装置は、空調などで用いられている圧縮機による冷凍サイクルを用いたものでも良いし、単に食材梱包箱の中に保冷剤を入れたものでも良い。なお、すべての食材を冷凍食品化するのは現実的/経済的ではないため、一部常温食材やチルド食材が残り、それらも纏めて配送する必要がある。ただし、冷凍食材はマイナス15℃以下、常温食材は10~15℃、チルド食材は±5℃で温度管理しなければならない。このため、3種の温度帯をそれぞれ梱包箱で断熱的に隔離しつつ、3種の保冷剤を利用することで、トラックの荷台丸ごと冷凍庫にしなくて済む。
【0024】
図3は、消費者需要予測1、食材保管庫在庫2、累積食材解凍量3、食材発注/受取4の時系列データの一様態を示す図である。
【0025】
消費者需要予測1のデータは、食材保管装置31の通信手段がデータ管理会社10などから受信するものであり、顧客情報に基づいて予測された消費者行動予測データ13に基づいている。この消費者需要予測1は、朝、昼、晩それぞれに日々極大値が存在し、イベントの有無や曜日によって、日毎のバラツキもあり、急な震災や交通事故などで、突如予想に反して、データが補正されることもあり得る。
【0026】
食材保管庫在庫2のデータは、食材保管庫31aのセンサデータ12に基づき、1~2日に1~2回自動的に更新される。許容される在庫量は、最小値と最大値の閾値が予め設定されており、最小在庫閾値2aは販売機会損失抑制の観点で設け、最大在庫閾値2bは冷凍庫電気代や他の食材への影響を加味した保管サイズの観点で設けている。図3の例では、2種の食材A,Bそれぞれの在庫量が別々に推移しており、食材Aの方が先に最小在庫閾値2aに到達している。なお、これらの閾値は、固定値であっても良いし、季節によって変わる変動値であっても良い。また、最小在庫閾値2aは食材によらず共通とし、最大在庫閾値2bは食材のサイズによって変えても良い。
【0027】
累積食材解凍量3は、食材販売店舗20の店員が食材保管庫31aから取り出して解凍した食材の累計量を示すものであり、新しく発注した食材が補充された時点でリセットされる。
【0028】
食材発注/受取4は、食材を発注したタイミングおよび量と、食材の受取タイミングを示すものである。図3の例では、食材Aが先に最小在庫閾値2aに達したため、食材Aの方が先に発注が行われている。
【0029】
食材保管装置31は、解凍された食材を測定して発注すべき量と発注すべきタイミングを演算し、その食材を自動的に発注する発注手段を、プログラムとしてメモリに格納しており、食材保管庫在庫2の最小在庫閾値2aを下回ったタイミングをトリガに、在庫の減少分を自動的に発注しても良い。食材保管装置31が、食材の発注タイミングや発注量を演算する際には、消費者需要予測1のデータを利用することもできる。しかし、食材保管庫在庫2の情報は、1~2日に1~2回程度の頻度で更新され、その日に解凍した分が反映されていない可能性があるため、食材販売店舗20の店員が、実際の累積食材解凍量3を加味して、発注量を判断するのが望ましい。すなわち、最小在庫閾値2aを下回ったタイミングで、食材保管庫在庫2の情報に反映されていない在庫減少分、例えば、その日のうちに解凍する量も考慮した在庫減少分を、店員が発注するようにしても良い。また、消費者需要予測1のデータは、急な天候変更やイベント中止/開催、災害や事故や交通渋滞などに起因して様々な誤差が生じる。したがって、予測に反して需要が増え、急遽大量の食材の解凍が必要な場合には、定期的なデータ更新が行われる前に食材保管庫在庫2を手動でデータ更新したり、予測よりも多めの発注量としたりすることも考えられる。
【0030】
このような在庫補充をすることで、食材ごとに最適なタイミングで最適な量の補充が行え、食材販売店舗20での販売効率を向上させることが可能となる。また、発注・配送・受取の作業の手間削減(卸/物流センタ60の配送頻度の低減、食材販売店舗20での食材の受取および陳列の頻度の低減)や、経費削減(卸/物流センタ60の配送に伴う燃料費の低減や、食材販売店舗20での冷凍庫電気代や人件費の低減)が、実現できる。さらに、無駄な発注が抑制されるため、フードロス低減にも効果がある。
【0031】
図4は、消費者需要予測1、食材保管庫在庫2、累積食材解凍量3、食材発注/受取4の時系列データの別の様態を示す図である。図3は、食材販売店舗20での販売効率を向上させることを優先したモードの例であったが、図4は、卸/物流センタ60の配送効率を向上させることを優先したモードの例である。ここで、販売効率は、全食材における在庫量から消費期限が残り僅か(例えば2日未満)の在庫量を差し引いた残量を、食材保管庫31aの電気代などの管理経費で除した値と定義する。また、配送効率は、1回あたりの配送量を配送頻度で除した値と定義する。
【0032】
図4の例でも、図3の例と同様に、食材Aが先に最小在庫閾値2aに達するが、図4の例では、図3の例と異なり、このタイミングで、食材Aだけでなく食材Bも同時に発注を行う。食材Aが最小在庫閾値2aに達して時点で、食材Bの累積解凍量はまだ少ないため、食材Aと比べて食材Bの発注量は少なくなる。しかし、このように食材Aと食材Bを同時に発注し同時に配送・受取をすることで、複数の食材がバラバラに配送されるのでなく、配送頻度が最小限となるため、特に配達や受取の手間を削減する効果が大きい。
【0033】
図7は、比較例として、従来の手法で食材の発注を手配する場合における、食材発注/受取の時系列データの様態を示す図である。比較例では、食材販売店舗20の店員が経験と勘で2日後の需要を予測して発注した場合を示しているが、図7によれば、食材の発注量およびタイミングが消費者需要に連動できていないことが分かる。また、4種の食材A,B,C,Dについて、それぞれ殆ど毎日、受け取って店頭に陳列する作業が発生している。結果として、比較例では、一部の食材について廃棄(フードロス)が必要となったり、一部の食材について在庫ゼロ(販売機会損失)となったりする。
【0034】
図5は、販売効率と配送効率の関係を模式的に示すグラフであり、実線は本実施例、破線は従来手法、をそれぞれ示している。図3の例では食材販売店舗20での販売効率の向上を優先させ、図4の例では配送効率の向上を優先させたが、両者は相反関係にある。ただし、本実施例によれば、経験と勘で食材毎に発注手配をしていた従来の手法に比べると、トレードオフカーブそのものが右上に改善していることが分かる。このような改善効果は、需要予測・発注判断・在庫管理・発注作業を自動化することによって、店員の発注バラツキを低減できることが要因として挙げられる。また、もう1つの要因としては、消費者行動予測データ13を活用することによって、需要の予測精度を向上できることが挙げられる。
【0035】
また、本実施例では、従来は常温やチルド温度帯で配送していた食材を冷凍化して冷凍状態で配送し、食材販売店舗20で解凍するシステムとなっているので、急な天候変更やイベント中止/開催、災害や事故や交通渋滞などにより、消費者行動予測データ13に誤差が生じても、冷凍状態で食材を一時保管することにより、その誤差による変動を吸収できる。その結果、需要供給バランスを最適化できるため、各ステークホルダの経費が削減できるだけでなく、全体エコシステムとしてのフードロスが削減できる。
【実施例2】
【0036】
図6は、本発明の実施例2に関わる需要連動在庫補充サービス提供システム100の全体像を示す図である。本実施例の食材保管装置31は、実施例1と異なり、食材販売店舗20内のバックヤードに更に、急速冷凍機能を有する食材冷凍装置31cを備えている。マイナス5℃~マイナス1℃は最大氷結晶生成帯と呼ばれ、この温度帯を30分以下で通過し冷凍状態にもっていく急速冷凍を行った方が、冷凍食品の品質維持と解凍後のおいしさを実現しやすい。そこで、本実施例では、図6の(5)で示すように、余った食材の内、再冷凍可能なものは食材冷凍装置31cで急速冷凍され、その後、食材保管庫31aに戻される。
【0037】
このように、食材販売店舗20内に食材冷凍装置31cを設けることで、その日は需要が無くても、次の需要ピークに合わせて週末やイベント時などに解凍することが可能となる。また、消費者予測データは必ずしも100%的中せず、供給過多となることはあり得るため、特に食材販売店舗20で加工した食品を含む売れ残りが発生する場合、フードロス低減と販売機会の一次延期に繋がるため好的である。ただし、冷凍や解凍を何度も繰り返すと、生鮮食品は品質や味が落ちる可能性があるため、再冷凍の対象は、解凍後に油で揚げたり炒めたり煮込んだり加工調理する前提の食品に限るのが良い。消費者にとってのメリットとして、売れ残りは、冷凍/解凍プロセスを経て、安売り販売している点である。よって、食材冷凍装置31cを用いた急速冷凍により、味や品質の低下が抑制できていれば、消費者18にとっても満足できる。
【0038】
本発明は前述した各実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、前述の実施例1,2に係る食材保管装置31は、消費者需要予測1のデータを外部から通信手段で受信するものであったが、食材販売店舗20における特定日または特定時間に消費される食材と該食材の消費見込量を予測する予測手段が、プログラムとしてメモリに格納されていても良い。
【0039】
また、前述した実施例は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。さらに、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 消費者需要予測
2 食材保管庫在庫
2a 最小在庫閾値
2b 最大在庫閾値
3 累積食材解凍量
4 食材発注/受取
10 データ管理会社
11 顧客情報
12 センサデータ
13 消費者行動予測データ
14 口コミ
15 ニーズデータ
16 都市情報
16a 交通データ
16b 駐車場データ
16c 気象データ
16d 人流データ
17 クラウドサーバー
18 消費者
20 食材販売店舗
30 メーカ
31 食材保管装置
31a 食材保管庫
31b 食材解凍装置
31c 食材冷凍装置
40 店舗管理会社
50 食材生産事業者
60 卸/物流センタ
70 配達員
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7