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特許7596188発電機の同期調相機化工程表作成システム、および、発電機の同期調相機化工程表作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】発電機の同期調相機化工程表作成システム、および、発電機の同期調相機化工程表作成方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20241202BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/18 185
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021042914
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142656
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松崎 隆久
(72)【発明者】
【氏名】奥山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】守田 俊也
(72)【発明者】
【氏名】西澤 壮平
(72)【発明者】
【氏名】蓮井 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】水谷 章
(72)【発明者】
【氏名】浜浦 紀一
(72)【発明者】
【氏名】平根 智章
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-067728(JP,A)
【文献】特開2021-026643(JP,A)
【文献】特開平03-082339(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0365162(US,A1)
【文献】特開2017-036735(JP,A)
【文献】特開2015-148221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの廃炉プラントの発電機を構成する各機器が廃炉作業に必要か否かの情報、および前記発電機を同期調相機として利用する予定期間の情報を記憶する記憶部と、
前記発電機の同期調相機化に係る顧客の要望が入力される入力部と、
前記記憶部に記憶された情報を用いて、前記入力部に入力された前記顧客の要望に合わせ、前記発電機を同期調相機に改造する工程を含む工程表を作成する工程表作成部と、
を有することを特徴とする発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項2】
前記顧客の要望は、初期コスト抑制、運用コスト抑制、同期調相機の性能向上、利便性の向上、周辺住民への説明性、および将来的な廃棄物の最小化のうち何れか一つを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項3】
系統解析により前記廃炉プラントの発電機のうち同期調相機への改造が必要な基数を求め、無効電力の制御幅および速度、運用のニーズを考慮して、同期調相機として改造するのに適切な発電機を選定する選定部、
を更に有することを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項4】
前記工程表作成部は、電力系統の今後の整備状況、電源導入計画、同期調相機への改造を提案する前記発電機の発電プラントとしての利用状況、メンテナンスデータまたは状態データから想定される前記発電機のコンディションのうち何れか一つ以上から、前記発電機を同期調相機に改造する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項5】
前記工程表作成部は、廃止される以前の発電機の運用状況に基づき、同期調相機として改造に着手する発電機の点検、メンテナンス、および動作確認のうち何れか一つ以上を含む工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項6】
前記工程表作成部は、前記発電機に近接する系統のタービンを撤去して、同期調相機としての運用に必要な駆動機を撤去した跡地に設置する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項7】
前記工程表作成部は、前記発電機のタービンの羽根を撤去し、前記タービンの軸のうち前記発電機と接続していない側の端部、または前記発電機の軸のうちタービンと接続していない側の端部に、同期調相機としての運用に必要な駆動機を設置する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項8】
前記工程表作成部は、同期調相機として必要な補機や電源系に関して、発電機の電源系および潤滑装置、冷却装置を、同期調相機の電源系および潤滑装置、冷却装置として流用する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項9】
前記工程表作成部は、原子炉側の廃止措置の進展により不要となる機器や電源系を考慮して、同期調相機として必要な補機や電源系に関して縮退や改造を行う工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項10】
前記工程表作成部は、発電機の固定子や回転子の巻き直しや巻き替えを行って、同期調相機に改造する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項11】
前記工程表作成部は、励磁機の制御方法を変更する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項12】
前記工程表作成部は、前記発電機を同期調相機として運用する際に不要な機器を同定し、前記発電機を同期調相機として運用する期間中もタービン建屋から搬出または除却する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項13】
前記工程表作成部は、補機や電源系の冷却を空冷方式とし、海水系を廃止または除却する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項14】
前記工程表作成部は、同期調相機の制御盤を中央制御室に設置して、中央制御室から同期調相機を監視または/および制御する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項15】
前記工程表作成部は、同期調相機の制御盤をタービン建屋外に設けた別建屋に設け、その建屋から同期調相機を監視または/および制御する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項16】
前記工程表作成部は、同期調相機の制御盤をタービン建屋内に設け、その制御盤で同期調相機を監視または/および制御する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項17】
前記工程表作成部は、遠隔地よりネットワークを介して同期調相機を監視または/および制御する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項18】
前記工程表作成部は、全体が管理区域となっているタービン建屋を除染する工程、または汚染が想定される区域とそれ以外を区画するように隔壁を設ける工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項19】
前記工程表作成部は、非管理区域として使いたい区域の線量を計測して、タービン建屋の一部もしくは全体を非管理区域に変更する工程を含む工程表を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項20】
前記工程表作成部は、タービンの撤去の工程、または、タービンの羽根の撤去の工程を作成する際に、放射性物質の飛散を防止した工法を前提とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電機の同期調相機化工程表作成システム。
【請求項21】
記憶部が、原子力プラントの廃炉プラントの発電機を構成する各機器が廃炉作業に必要か否かの情報、および前記発電機を同期調相機として利用する予定期間の情報を記憶するステップと、
入力部が、前記発電機の同期調相機化に係る顧客の要望の入力を受け付けるステップと、
工程表作成部が、前記記憶部に記憶された情報を用いて、前記入力部に入力された前記顧客の要望に合わせ、前記発電機を同期調相機に改造する工程を含む工程表を作成するステップと、
を実行することを特徴とする発電機の同期調相機化工程表作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラントの発電機を同期調相機に改造して運用する工程表を作成する発電機の同期調相機化工程表作成システム、および、発電機の同期調相機化工程表作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統の電圧および無効電力制御のための調相設備として同期調相機がある。同期調相機は電力系統に無効電力を必要なタイミングで供給することで、電力系統を安定化させる。静止型無効電力補償装置(SVC:Static Var Compensator)や自励式静止型無効電力補償装置(STATCOM:STATic var COMpensator)と比較して、同期調相機は、電圧制御を連続的に実施することができ、かつ回転機であるため系統に慣性力も提供できる。しかし、同期調相機は回転機であり、高コストな発電機を持つなど、新設した場合は建設費が高くなる傾向にある。
【0003】
火力発電や原子力発電では一般的に同期発電機(回転機)が用いられる。これら同期発電機は、有効電力とともに無効電力も供給できる。また大型のタービンと発電機が回転していることによって、電力系統へ慣性力も供給している。
【0004】
近年、原子力発電プラントの廃炉や老朽火力発電プラント(特に石炭火力)の廃止が増えてきており、電力系統に供給できる慣性力や無効電力が不足することが課題となっている。このような課題を解決するために特許文献1では遊休火力発電プラントの発電機を同期調相機として改造して、電力系統へ慣性力と無効電力を供給することが記載されている。また非特許文献1では、廃止プラント(廃炉)となる原子力発電プラントの発電機を改造して同期調相機として利用する例が記載されている。
【0005】
既存の火力発電プラントや原子力発電プラントの発電機を同期調相機として再利用することにより、同期調相機を新設する際のコストに占める割合の大きい発電機とその運転に必要な設備のコストが不要となり、安価に同期調相機を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平3-82339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
廃炉となる原子力発電プラントの発電機を同期調相機として活用しようとするとき、発電機本体以外に、直接的、間接的に必要となる設備がある。直接的に必要な設備とは、例えば発電機を冷却する冷却水系設備があり、間接的に必要な設備とは、例えば発電機エリアの環境にかかわる換気空調系設備がある。さらに、用水供給系、圧縮空気供給系、廃水系などのサービス設備もありえる。
【0008】
電気設備についても同様で、開閉所、主変圧器、相分離母線といった主要電路以外に、直接的、間接的に必要な設備がある。直接的に必要な設備とは、例えば主要電路に配置される遮断器や断路器があり、間接的な設備とは、例えば相分離母線の冷却設備がある。さらに、照明ほかサービス用の電気設備もありえる。
【0009】
機械設備、電気設備とも、直接的に必要となる設備は、無条件に必要な設備と言える。一方、間接的に必要な設備、サービス設備については、条件によって必要とも不必要ともなりえる。例えば換気空調系設備は、発電プラントだったときと比較して熱負荷が低下するため、不要になる可能性もある。
【0010】
火力発電プラントや原子力発電プラントの発電機を同期調相機として改造した場合、電源系や補機(潤滑や冷却装置)もそのまま流用すれば初期コストを大幅に低減できる。また大型の発電所は大容量の電力系統と接続しているため、同期調相機もその大容量の電力系統をそのまま利用できる。一方で、電源系や補機(潤滑装置や冷却装置)は発電所の出力運転時を想定して設計されているため、そのまま利用するとそれらの機器は同期調相機としてはオーバースペックであるため、運用コストや保守コストが高くなる。例えば熱負荷が低減される機器はより小型のものに交換する、もしくは水冷から空冷の機器に交換するなどして運用コストや保守コストを低減できる。
【0011】
このように、改造した同期調相機を短期間のみ利用する場合は、改造を最小限にして初期コストを抑えることで、トータルコストを最小とするのが合理的である。一方、同期調相機を長期にわたって利用する場合は、運用コストや保守コストが高い機器を、同期調相機が必要なスペックの機器に交換などして運用コストや保守コストを合理化することで、トータルコストを最小とすることが合理的である。これらコストには運転員の作業環境の向上やプラントの制御性の向上による運用コストの低減や許認可のためのコストなども含まれる。
【0012】
特許文献1では火力発電プラントの発電機を同期調相機として改造する上で、水素冷却発電機の機内水素ガス圧力をあらかじめ下げることで風損を低減し、駆動用電動機の容量を最小限にしている。しかし、特許文献1では電源系や補機(潤滑装置や冷却装置)には手を付けられておらず、運用コストや保守コスト面での改善効果は少ない。
【0013】
原子力発電プラントでは、運用時の安全性が最も重要なため、電源系や補機の構成が多重化されていたり、設備容量に余裕を持った設計となっている。そのため、同期調相機として原子力発電プラントを利用する場合、それらの電源系や補機類はオーバースペックとなる場合が多い。そのため、運用コストの低減には、適切に電源系や補機類を縮小するなどの合理化が必要である。
【0014】
火力発電プラントと比較して原子力発電プラントを同期調相機化する場合において原子力発電プラント特有の課題もある。火力発電プラントを廃止して同期調相機とする場合、廃止措置を取るボイラや燃焼器などは停止後の安全措置は必要ない。そのため、火力発電プラントでは、同期調相機として適切な機器構成を改造当初から取ることができる。
【0015】
一方、原子力発電プラントは、廃止措置直後において、原子炉の圧力容器内に使用済み燃料がある。使用済み燃料は崩壊熱を発しているため、常に冷却する必要がある。例えば沸騰水型軽水炉では、残留熱除去系の原子炉停止冷却モードによって冷却する。この動作には多重な電源、非常用発電機の確保、冷却系の維持などが必要である。そのため、廃止措置中の原子炉の圧力容器内の使用済み燃料の冷却に必要な電源系や補機は、たとえ同期調相機としての動作に不要な電源系や補機であったとしても合理化できない。その後、燃料の冷却が進み、すべての燃料を使用済み燃料プールに移送すると、使用済み燃料プール冷却系(FPCと呼ばれる)によって使用済み燃料を冷却する。そして、圧力容器内には燃料が無くなるため、圧力容器内に注水する必要性が生じる可能性はなくなる。そのため、FPCに関わる電源系や補機は合理化できないが、残留熱除去系の原子炉停止冷却モードなど圧力容器内に注水する機器やそれに関わる電源系、補機は不要となる。さらに廃炉作業が進展し、使用済み燃料プールから燃料を運び出せば、あらゆる燃料冷却系とそのための電源系、補機は不要となる。
【0016】
このように原子力発電プラントでは、同期調相機の電源系や補機系は、同期調相機としての運用のみでは決まらず、廃止措置の一部である使用済み燃料がどの場所にあるかによって取ることができる機器構成が変わる。また同期調相機の制御装置に関しても、廃止措置の初期で中央制御室が存置されている状態の場合は、中央制御室に同期調相機の制御盤を設置して制御することが考えられる。このとき、工程表作成者は、同期調相機の制御盤を中央制御室に設置して、中央制御室から同期調相機を監視または/および制御する工程を含む工程表を作成する。
しかし、原子力発電プラントの廃止措置が進展し、中央制御室が撤去される段階まで同期調相機を利用することが想定される場合は、同期調相機の制御装置と制御室を別に設ける方が合理的である。
【0017】
このように廃止措置の進展によっても合理的な設計は異なる。このように廃炉となる原子力発電プラントには同期調相機とは関係なく廃炉プラント独自に必要な設備がある。そして廃炉プラントの必要設備や存在している設備は廃炉作業工程の進捗にともなって時系列的に変化していく。原子力発電プラントを同期調相機に改造して活用するために設備の縮退(不要設備の休止や撤去)を検討するには、廃炉作業への影響がないことが条件となる。そのため課題のひとつとして、こうした点を考慮して縮退範囲、改造範囲を同定することである。
【0018】
非特許文献1の改造例では、あくまで改造範囲を最小としているのみであり、同期調相機として運用する期間に実施する廃止措置に応じた適切な同期調相機の改造範囲の変更とそれによるコストなどの最適化は実施されていない。また同期調相機として利用する期間を同定するには、電力系統の今後の整備状況や再生可能エネルギーなどの電源導入計画、改造する発電機の状態から今後どの程度の期間利用可能かを判断することなども必要である。
【0019】
さらに加圧水型軽水炉と比較して沸騰水型軽水炉の課題として、タービンが放射性物質によって汚染されており、タービン建屋が管理区域となっていることがある。同期調相機はタービン建屋に設置してある発電機を改造して利用するため、放射性物質を除染したり、汚染がないことを確認できなければ、同期調相機は管理区域で運用する必要がある。管理区域で運用する場合、運用面での手間が増えるが、管理区域を非管理区域に変更して運用するには初期コストや工事期間が掛かる。そこでこれらについても同期調相機としての運用期間も踏まえて検討する必要がある。また同期調相機とするには一部タービンを撤去する必要がある可能性が高いが、沸騰水型軽水炉ではタービンは汚染されているため、放射性物質の飛散を抑えた工法によって改造を実施する必要がある。
【0020】
そこで、本発明は、廃炉となる原子力発電プラントの発電機を同期調相機に改造する場合において、顧客にとって好適な同期調相機の改造工程および運用工程を含む工程表を作成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記した課題を解決するため、本発明の発電機の同期調相機化工程表作成システムは、 原子力プラントの廃炉プラントの発電機を構成する各機器が廃炉作業に必要か否かの情報、および前記発電機を同期調相機として利用する予定期間の情報を記憶する記憶部と、前記発電機の同期調相機化に係る顧客の要望が入力される入力部と、前記記憶部に記憶された情報を用いて、前記入力部に入力された前記顧客の要望に合わせ、前記発電機を同期調相機に改造する工程を含む工程表を作成する工程表作成部と、を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の発電機の同期調相機化工程表作成方法は、記憶部が、原子力プラントの廃炉プラントの発電機を構成する各機器が廃炉作業に必要か否かの情報、および前記発電機を同期調相機として利用する予定期間の情報を記憶するステップと、入力部が、前記発電機の同期調相機化に係る顧客の要望の入力を受け付けるステップと、工程表作成部が、前記記憶部に記憶された情報を用いて、前記入力部に入力された前記顧客の要望に合わせ、前記発電機を同期調相機に改造する工程を含む工程表を作成するステップと、を実行することを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、廃炉となる原子力発電プラントの発電機を同期調相機に改造する場合において、顧客にとって好適な同期調相機の改造工程および運用工程を含む工程表を作成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る工程表提案サーバを示すブロック図である。
図2】工程表提案サーバのハードウエア構成図である。
図3】廃止プラントの発電機の同期調相機化工程表の提案処理のフローチャートである。
図4】原子力発電プラントの廃止措置工程表の一例を示す図である。
図5】原子力発電プラントの廃止措置工程表と機器構成との関係を示す図である。
図6】第1実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋内の機器配置を示す図である。
図7】第2実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋内の機器配置を示す図である。
図8】第3実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋内の機器配置を示す図である。
図9】第4実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋内の機器配置を示す図である。
図10】第5実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋内の機器配置を示す図である。
図11】第6実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋内の機器配置を示す図である。
図12】第7実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋内の機器配置を示す図である。
図13】第8実施形態に係る工程の提案処理のフローチャートである。
図14】第9実施形態に係る工程の提案処理のフローチャートである。
図15】第10実施形態に係る工程の提案処理のフローチャートである。
図16】第11実施形態の同期調相機化する発電機の号機提案処理のフローチャートである。
図17】第12実施形態に係る工程の提案処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
廃炉プラントの発電機を同期調相機として改造する際に、その発電機を同期調相機として運用する期間を検討し、その期間中の廃炉作業において同期調相機が利用する各機器が廃炉作業に必要か否かの情報と、同期調相機として利用予定の期間の情報を用いて、顧客の要望(費用抑制、同期調相機の性能向上など)に合わせ、同期調相機の各機器に対する改造スケジュールを作成する。
【0026】
この目的を達成するために好適な実施形態の一つである第1実施形態の廃止プラントの発電機の同期調相機化について図1から図6を用いて説明する。本実施形態では、沸騰水型軽水炉において発電機の同期調相機化した場合を例に説明するが、汚染されたタービンと管理区域の非管理区域化の問題を除けば、加圧水型軽水炉に関しても適用できる。
【0027】
図1は、本実施形態に係る工程表提案サーバ30を示すブロック図である。
この工程表提案サーバ30は、コンピュータであり、入力部31と、工程表作成部32と、発電機選定部33と、記憶部34とを含んで構成される。工程表提案サーバ30は、顧客の要望に合わせて、発電機を同期調相機化する際の、各機器に対する改造工程や運用工程を含んだ工程表(スケジュール)を作成する同期調相機化工程表作成システムを構成する。これにより、顧客は、好適に改造された同期調相機を好適に運用できる。
【0028】
入力部31は、例えばキーボードやマウスなどであり、発電機の同期調相機化により実現したいことの中で、優先度の高いものを示す顧客の要望が入力される。ここで顧客の要望は、初期コスト抑制、運用コスト抑制、同期調相機の性能向上、利便性の向上、周辺住民への説明性、および将来的な廃棄物の最小化のうち何れか一つを含む。
【0029】
工程表作成部32は、工程表を作成する機能を有する機能部であり、例えば、不図示の工程表作成プログラムをCPU(Central Processing Unit)が実行することで具現化される。このなお、工程表作成部32は、電力系統の今後の整備状況、電源導入計画、同期調相機への改造を提案する発電機の発電プラントとしての利用状況、メンテナンスデータまたは状態データから想定される発電機のコンディションのうち何れか一つ以上から、この発電機を同期調相機に改造する工程を含む工程表を作成する。
【0030】
発電機選定部33は、同期調相機に改造する発電機を選定する部位であり、例えば発電機選定プログラムをCPUが実行することにより具現化される。発電機選定部33は、系統解析により、廃炉プラントの発電機のうち同期調相機への改造が必要な基数を求め、無効電力の制御幅および速度、運用のニーズを考慮して、同期調相機として改造するのに適切な発電機を選定する選定部である。
【0031】
記憶部34は、例えばHDD(Hard Disk Drive)などの大容量記憶装置であり、発電機構成情報341と利用予定期間情報342とを格納している。発電機構成情報341は、原子力プラントの廃炉プラントの発電機を構成する各機器が廃炉作業に必要か否かの情報である。利用予定期間情報342は、発電機を同期調相機として利用する予定期間の情報である。
【0032】
図2は、工程表提案サーバ30のハードウエア構成図である。
工程表提案サーバ30などのコンピュータ900は、CPU901と、RAM(Random Access Memory)902と、ROM(Read Only Memory)903と、HDD904と、通信インタフェース905と、入出力インタフェース906と、メディアインタフェース907とを有する。
【0033】
通信インタフェース905は、外部の通信装置915と接続される。入出力インタフェース906は、入出力装置916と接続される。メディアインタフェース907は、記録媒体917からデータを読み書きする。さらに、CPU901は、RAM902に読み込んだプログラムを実行することにより、各処理部を制御する。そして、このプログラムは、通信回線を介して配布したり、CD-ROM等の記録媒体917に記録して配布したりすることも可能である。
【0034】
図3は、廃止プラントの発電機の同期調相機化工程表の提案処理のフローチャートである。
処理を開始すると、入力部31は、初期コスト抑制、運用コスト抑制、同期調相機の性能向上、および利便性の向上など顧客要望の入力を受け付ける(ステップS10)。
工程表作成部32は、同期調相機として利用する期間を決定する(ステップS11)。工程表作成部32は、電力系統の今後の整備状況や再生可能エネルギーなどの電源導入計画、改造する発電機の状態から、今後どの程度の期間に亘って同期調相機として利用可能かを決定する。
そして、工程表作成部32は、利用期間中の廃止処理の見積りを実施する(ステップS12)。例えば、原子力発電プラントの廃止によって短期的に無効電力が不足するが、その後の電力系統の整備計画があり、同期調相機が不要となる見込みがある場合を考える。工程表作成部32は、同期調相機が不要となるまでの期間を、同期調相機として利用する期間として決定する。
【0035】
また、再生可能エネルギーなどの電源導入計画がある場合、無効電力が不足する傾向が強まる。この場合、工程表作成部32は、電力系統の整備計画を参照しつつ、再生可能エネルギーなどの電源導入計画に応じて同期調相機として利用する期間を伸ばすように決定する。
【0036】
次に、工程表作成部32は、発電機を更新した場合と元の発電機のまま利用した場合の利便性等を比較する(ステップS13)。工程表作成部32は、発電機を更新した方が利便性が高いならば(Yes)、ステップS14に進み、発電機を更新する工程を追加して、ステップS15に進む。工程表作成部32は、発電機を更新した方の利便性が低いならば(No)、ステップS15に進む。
同期調相機として利用する発電機は、それまで原子力発電プラントの発電機として利用されてきたものであり、定期的にメンテナンスはされてはいるものの、ある程度は経年劣化している。工程表作成部32は、そのため、同期調相機化する段階での発電機のコンディションにより、同期調相機として利用する期間を決める場合もある。
【0037】
経年劣化による利用期間の制限は、発電機のオーバーホールなど(固定子巻線や回転子巻線の巻替えなど)で利用期間を延長できるが、これらには多額なコストが掛かる。そのため、利用期間の延長効果とそれに掛かるコストを比較して、発電機のオーバーホールなどをどの程度まで行うかを決める必要がある。また巻替えを実施する場合は、それに合わせて無効電力の制御幅の拡大が可能な巻き方に変更するなどの改造を加えてもよい。
【0038】
そして、ステップS15において、工程表作成部32は、発電機の同期調相機への改造工程と運用工程を含む最適な工程表を作成すると、図3の処理を終了する。
【0039】
図4は、原子力発電プラントの廃止措置工程表の一例を示す図である。
ここでは、同期調相機として運用している間に生じる廃炉プラントの廃止措置について見積もる。廃炉に関わる廃止措置は、およそ10年単位で四段階に分類される。
【0040】
第一段階は、解体工事の準備期間であり、廃止措置の開始から10年に相当する。
第二段階は、原子炉本体や周辺設備等を解体および撤去する期間であり、廃止措置開始の10年後から20年後までに相当する。
【0041】
第三段階は、原子炉本体等を解体して撤去する期間であり、廃止措置開始の20年後から30年後までに相当する。
第四段階は、建屋等を解体して撤去する期間であり、廃止措置開始の30年後から40年後までに相当する。
【0042】
プラントの廃止措置からおよそ40年で第四段階が終了し、プラントは更地に戻る。同期調相機が関連する廃止措置として特に関連するものとして、核燃料物質の搬出、管理区域内設備(原子炉本体以外)の解体撤去、建屋等の解体、管理区域外設備の解体撤去がある。
【0043】
核燃料物質の搬出とは、使用済み燃料の移動に関するものである。廃止措置のための原子力発電プラント停止直後において、使用済み燃料は、原子炉圧力容器の中にある。その後、使用済み燃料の冷却が進むと、この使用済み燃料は使用済み燃料プールに移される。ここまでの段階では使用済み燃料を冷却する機器を維持する必要があることから、電源系も高い信頼性を要求される。そのため電源系などが合理化できる範囲は限定的である。その後さらに使用済み燃料プールにおいて使用済み燃料の冷却が進めば、使用済み燃料は、キャスクに格納されて搬出される。使用済み燃料が搬出されれば、燃料冷却に関わる設備が不要となるため、それを支える補機、電源系を大幅に合理化できる。これらのことが第二段階までの期間で生じる。特に燃料搬出以降、補機や電源系をどの程度の期間に亘って利用するかにより、本システムは、補機や電源系の合理化を決定する。
【0044】
廃炉段階の第二段階からは管理区域内設備のうち原子炉本体以外の解体撤去が始まる。解体撤去する設備のなかで同期調相機が関連する設備は、中央制御室である。同期調相機に用いる発電機は、元来、中央制御室から制御できるものである。そのため、同期調相機として利用するために必要な電動機(後述する)の制御盤も合わせて中央制御室に設置して運用するとよい。同期調相機を第二段階まで運用する場合、中央制御室の撤去に影響を与えないために、プラントの運用者は、このタイミングで新たに制御室を建設するとよい。しかし新たな制御室を建設している期間の間は同期調相機としての運用に支障が生じる可能性が高いため、同期調相機への改造のタイミングで、事前に別に制御室を設ける工程により、合理的な運用が可能となる。
【0045】
廃炉の第四段階において、すべての建屋の解体が始まり、第四段階の終了時には原子力発電プラントとしての設備がすべて撤去される。同期調相機のあるタービン建屋も解体撤去されるため、例えば第四段階まで同期調相機を運用する場合、同期調相機として利用する発電機を別に建設した建屋に移設する工程とするとよい。
【0046】
また、第四段階の終了時にタービン建屋の解体撤去が終了するように、タービン建屋内の機器のうち同期調相機として不要な機器は、同期調相機として運用している間に順次撤去する工程としておくことが望まれる。
【0047】
管理区域外設備の解体撤去は、第一段階から始まる。その中で、同期調相機として必要な主変圧器は第一段階の早いタイミングで撤去される。そのため同期調相機として利用するには、その検討を第一段階が始まる前に終えることが望ましい。
【0048】
図5は、原子力発電プラントの廃止措置工程表と機器構成との関係を示す図である。この工程表は、例えば図1の工程表提案サーバ30が提案するものである。
顧客視点からみると、第一段階にて投資を最小化することが望ましい。顧客視点からみると、第二~第三段階にて、トータルコスト最小化と運用性を向上することが望ましい。そして、第四段階にて更地に戻すことが望ましい。工程表提案サーバ30は、これら各段階における顧客視点に基づき、改造工程や運用工程を提案する。
【0049】
工程表提案サーバ30は、発電機に関して、第一段階にて状態確認の工程を提案する。そして、第二~第四段階にて固定子巻きなおし工程を提案し、無効電力の制御幅や速度の増強を図ることが望ましい。
工程表提案サーバ30は、周辺設備に関して、第一段階にて最小限の改造工程を提案する。そして、第二~第四段階にて機器の入れ替え工程を提案することが望ましい。
【0050】
工程表提案サーバ30は、発電設備に関して、第一段階にて最小限の改造工程を提案する。そして、第二段階にて部分的な空冷化の工程を提案し、第三~第四段階にてフル空冷化による海水系から離脱工程を提案することが望ましい。
工程表提案サーバ30は、電源に関して、第一段階にてほぼそのまま利用する工程を提案する。そして第二段階以降にて、工程表提案サーバ30は、燃料の移送による原子炉側負荷減(燃料冷却用機器減)に応じて削減する工程を提案する。
【0051】
工程表提案サーバ30は、制御系に関して、第一段階にて中央制御室から制御する運用を提案する。そして、工程表提案サーバ30は、第二~第四段階にて、タービン建屋内を一部非管理区域化する工程、全面非管理区域化して制御室とする工程、および全面的に遠隔地よりネットワークを介して制御する運用工程のうち何れかを提案する。
工程表提案サーバ30は、タービン建屋内状況に関して、第一段階にて撤去したタービンを仮置きする工程を提案する。そして第二段階にて、工程表提案サーバ30は、タービン建屋の一部を非管理区域化する工程を提案する。第三~第四段階にて、工程表提案サーバ30は、同期調相機として運用するのに不要な機器を先行搬出する工程を提案する。
【0052】
なお、図5の工程表は一例であり、厳密にこれに従う必要は無く、トータルコスト評価や顧客要望を聞いた上で、最終的な改造方法、範囲は決定する。それぞれの機器構成に関しては各実施形態で詳しく説明する。
【0053】
本実施形態では同期調相機として運用する期間が前述した廃炉段階のうち第一段階で、使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにある場合の機器構成例を示す。まず廃炉となる原子力発電プラントを同期調相機として運用する場合に必要な主な設備を以下に列挙し、各設備に対する改造工程や運用工程を説明する。
【0054】
・発電機
・固定子冷却水系
・発電機ガス系同期調相機駆動用電動機と電動機用インバータ
・発電機密封油系
・タービン潤滑油系
・同期調相機駆動用電動機(駆動機)と駆動機用インバータ
・励磁装置
・主変圧器や他の電気設備
・タービン補機冷却水系、及び、海水系
・計装用圧縮空気系
・タービン建屋の換気空調系
・純水補給水系
・タービン建屋内排水系、ドレン処理系
【0055】
《発電機》
発電機に関しては、原子力プラントとして運転されていた発電機をそのまま使用する場合が最も基本的である。発電機の出力できる有効電力と無効電力は出力可能曲線で決まり、発電機の出力可能曲線は、この発電機の巻き線形状によって決まる。発電用に用いる発電機は、通常は無効電力量よりも有効電力量を出力できるような巻き線の巻き方となっている。そのため、発電機の巻き線の巻き直しや巻替えを実施する場合、より無効電力量が出力できるような巻き線形状に変更してもよい。ただし、巻き直しや巻替えはコストが高いため、同期調相機としての利用期間が第一段階のみに留まる場合、発電機をそのまま利用するのが初期コストおよびトータルコスト低減のために合理的である。
【0056】
《固定子冷却水系》
固定子冷却水系に関しては、同期調相機として運転する場合、固定子の発熱ロスは50%以下となる。一般的な原子力発電プラントにおいて、固定子冷却ポンプは、10%のものが2台(1台は予備)で運用されているケースが多いため、例えばこのようなプラントでは第一段階のみの利用の場合、このうち1台のみを運用して、残りは廃止してもよい。また固定子冷却ポンプの廃止のコストが高い場合は、固定子冷却ポンプをそのまま運用してもよい。
【0057】
《発電機ガス系》
発電機ガス系は、同期調相機駆動用電動機と電動機用インバータを含んで構成される。回転子の発熱ロスは同期調相機として運用した場合も変わらないため、そのまま利用する。原子力発電プラントでは発電機の回転子および固定子鉄芯は水素によって冷却されており、発電機ガス系は、水素の供給や封止を担っている。
【0058】
《発電機密封油系》
発電機密封油系は、何れの廃止措置の段階まで利用する場合でもそのまま利用することが合理的である。
【0059】
《タービン潤滑油系》
タービン潤滑油系のオイルポンプはタービン駆動ポンプであることが一般的である。本実施形態の同期調相機はタービンを切り離して運用(後述)するため、このオイルポンプは電動ポンプを新設する必要がある。
【0060】
《同期調相機駆動用電動機(駆動機)と駆動機用インバータ》
同期調相機駆動用電動機(駆動機)と駆動機用インバータは、同期調相機として利用する際のロスをこの電動機で補うために必要なものであり、起動時には同期速度まで昇速し併入する。発電機を同期調相機として利用する場合には、同期調相機駆動用電動機(駆動機)と駆動機用インバータの新設が必要である。また駆動機用インバータは、この駆動機を駆動するために必要である。またこの駆動機用インバータへの電力の供給は、タービン電気品室のメタクラと接続して電力を供給する。メタクラの容量に余裕があれば新たな電源盤の新設は不要であるが、不足する場合は新たな電源盤が必要となる。利用段階の最後まで残す電源盤に接続する検討を進め、最後まで残す電源盤の選定とそこからの駆動機への給電を考慮した検討(電路の設計、コストなど)を進めることが必要である。これはどの廃炉段階においても同じである。既設の電路に合わせて適切に設計することも重要である。
【0061】
またこの駆動機およびインバータへの冷却水および潤滑油も必要となるが、発電機本体が必要とする冷却水量および潤滑油量よりも大幅に少ないため、本体への冷却水供給系と潤滑油供給系から分岐させて供給するのが合理的である。インバータに関しては、空冷としてもよい。
【0062】
《励磁装置》
励磁装置に関しては、改造によって無効電力の制御幅や制御速度を向上させることも考えられる。つまり、工程表作成部32は、励磁機の制御方法を変更する工程を含む工程表を作成する。
しかし、第一段階のみ同期調相機として利用する場合は、励磁装置はそのまま利用することが合理的である。
【0063】
《主変圧器、他の電気設備》
主変圧器、他の電気設備に関しては、冷却方式の変更なども考えられるが、第一段階のみの利用に留まる場合はそのまま利用することが合理的である。
【0064】
《タービン補機冷却水系、及び海水系》
タービン補機冷却水系、及び海水系に関しては同期調相機化の場合は熱負荷が低下(1/2程度に低下)するため、これらを合理化できる。ただし第一段階のみの利用の場合は大幅な改造はせず、タービン補機冷却水系、及び海水系は複数の系統から構成されている場合が多いため、これらの系統のうち一部のみを利用するなどの運用をすることが望ましい。
【0065】
《計装用圧縮空気系》
計装用圧縮空気系は、一般的な設計では原子炉側の補機冷却水系(原子炉補機冷却水系)から冷却水供給を受けている。原子炉側の補機冷却水系は使用済み燃料の冷却のための機器の運転に必要なため、第一段階のみの利用の場合は原子炉側の補機冷却水系は運転を維持される。そのため計装用圧縮空気系はそのまま利用することが合理的である。逆に計装用圧縮空気系を既存設備のまま流用する場合は、原子炉補機冷却水系は縮退可能な設備から除外される。
【0066】
つまり、図1の工程表作成部32は、同期調相機として必要な補機や電源系に関して、発電機の電源系および潤滑装置、冷却装置を、同期調相機の電源系および潤滑装置、冷却装置として流用する工程を含む工程表を作成する。
【0067】
《タービン建屋の換気空調系》
タービン建屋の換気空調系は、タービン建屋を管理区域として利用する場合において管理区域の換気・負圧維持機能が必要となる。タービン建屋の非管理区域化はコストや工事期間が掛かるため、第一段階のみ同期調相機として利用する場合は、そのまま利用することが合理的である。
【0068】
《純水補給水系》
純水補給水系は系統の水張りに必要である。純水製造に関してはフィルタ方式に変更するなどが考えられるが、改造コストと比較して決定する。これは何れの段階まで運用する場合でも同じである。
【0069】
《タービン建屋内排水系、ドレン処理系》
タービン建屋内排水系、ドレン処理系は、設備点検時のドレン排水用に必要であり、そのまま利用することが望ましい。
【0070】
《第1実施形態》
以上を踏まえて、本発明の第1実施形態の機器配置と改造方法について説明する。
同期調相機化の改造工事は、タービン建屋1内で実施される。改造対象が沸騰水型軽水炉であった場合、このタービン建屋1は、放射線被ばくのおそれのある管理区域である。管理区域の解除には除染や線量の確認など時間とコストが掛かるため、第一段階のみの利用の場合は、管理区域のまま利用することが合理的である。中央制御室の空いたスペースに指令卓を設けて監視、制御を実施することが合理的である。
【0071】
図6は、第1実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋1内の機器配置を示す図である。
一般的な大型の原子力発電プラントにおいて、タービンは、1つの高圧タービン14と3つの低圧タービンA系13と、低圧タービンB系12と、低圧タービンC系16から構成されている。これらタービンは、すべて同じ発電機駆動軸7に繋がっており、一体となって発電機5を回転させる。ここで、プラントの運用者は、発電機5に最も近い低圧タービンC系16を撤去する。これによってタービンと発電機5が切り離される。
その後、プラントの運用者は、低圧タービンC系16を撤去してできた低圧タービンC系跡地6を整地し、その箇所に駆動機8と駆動機用インバータ9を設置する。
【0072】
つまり、図1の工程表作成部32は、発電機5に近接する系統の低圧タービンC系16を撤去して、同期調相機としての運用に必要な駆動機を撤去した跡地に設置する工程を含む工程表を作成する。
【0073】
駆動機8は、残った発電機駆動軸7に接続され、発電機5が同期調相機として運転する際に生じるロス分を駆動機8によって補う。これにより、発電機5は、電力系統と同期して運転される。発電機5は、励磁機4によって出力が制御される。駆動機用インバータ9は、タービン建屋電気品室2内にある電源盤11に、駆動機用配線10によって接続して、電源盤11から電力を供給する。中央制御室22では、すでに発電機5や駆動機8を監視、制御が可能なため、駆動機8の制御に関しても駆動機制御用制御ライン17を中央制御室22まで引き回し、中央制御室22内に制御盤を設けることで制御する。なお、既設設備との取合い用現場I/O盤設置によるデジタル化を進めておいてもよい。
【0074】
制御方法については、系統事故の情報をすべて同期調相機の指令卓に伝送するのは現実的ではない。そのため、中央給電指令所から各電力の制御所を経由して、運転指令をもらう構成が最も現実的である。この際にサイバーセキュリティ上、中央給電指令所からの運転指令には専用線とするか、ファイヤーウォールなどを設ける必要がある。これは以降の実施形態でも同様である。
【0075】
撤去した低圧タービンC系16aは、沸騰水型軽水炉では放射性物質によって汚染されているため、タービン建屋1の一部に移動させて保管する。タービン建屋1内には、定期検査時にタービンを取り外して仮置きするスペースが設けられているため、そのスペースに仮置きすることが望ましい。これにより、低圧タービンC系16aを仮置きする位置と床面荷重を再検討する必要がなくなる。
【0076】
撤去した低圧タービンC系16aは、汚染されてはいるものの、それほど周囲の線量は大きいわけではないため、基本的には密封する必要はない。しかし、タービン建屋1内に立ち入る運転員や作業員の被ばく線量を最小化するために、撤去した低圧タービンC系16aは、コンクリートブロックなどで遮蔽することが望ましい。
【0077】
また加圧水型軽水炉ではタービンおよび復水器は汚染されていないため、タービン建屋1内に仮置きせず、大物搬入口3を通してタービン建屋1外に搬出してもよい。また複数機によってラドなど管理区域を共有しているサイトにおいて、同期調相機化する機の撤去した低圧タービンC系16aを、同期調相機化しない機のタービン建屋1に搬出してもよい。その場合、同期調相機化しない機の廃止措置にあわせて、低圧タービンC系16aを、搬出先で除染、解体して除却できる。
【0078】
また沸騰水型軽水炉においてタービンは汚染されており、タービンを撤去する際に汚染物質が飛散する。そして、新たな汚染物質の増加は、極力少なくする必要がある。そこで、低圧タービンC系16を取り外した後の開口部は、コンクリートプラグ、もしくはH鋼と鉄板の組み合わせなどで閉止する処置が必要となる。そして復水器側からの汚染拡大が無いようコーキング等の対策処置が必要となる。駆動機8の重量を支えるのみならH鋼と鉄板の組み合わせで十分であるが、駆動機8の固定にアンカーを用いる場合は、コンクリートプラグ(事前に外で製作して大物搬入口3から搬入)で閉止するのが望ましい。
【0079】
つまり、図1の工程表作成部32は、タービンの撤去の工程、または、タービンの羽根の撤去の工程を作成する際に、放射性物質の飛散を防止した工法を前提とする。
【0080】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態の機器配置と改造方法について説明する。本実施形態でも第1実施形態と同様に廃炉段階のうち第一段階のみ運用予定で、使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにある場合の機器構成例を示す。
図7は、第2実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋1内の機器配置を示す図である。
【0081】
第1実施形態では低圧タービンC系16を撤去したが、第2実施形態にてプラントの運用者は、低圧タービンC系16を撤去せず、タービンの発電機5と接続されている側とは反対端に駆動機8と駆動機用インバータ9を設置する。そして、プラントの運用者は、接続用シャフト15を通して駆動機8を発電機駆動軸7と接続する。駆動機8によってロス分を補い、発電機5を同期調相機として運転するが、このままではタービンの風損によるロスが大きすぎるため、それぞれのタービンの羽根はすべて撤去し、発電機駆動軸7のみとして回転させる。この場合、発電機駆動軸7の質量は大きいため、第1実施形態と比較して、電力系統に提供できる慣性が第1実施形態よりも大きくできる。また発電機駆動軸7が維持されるため、第1実施形態では電動ポンプへの改造が必要であったタービン潤滑油系は、これを駆動する発電機駆動軸7が維持されるため、電動ポンプへの改造も不要となる。また、場合によっては、主油ポンプを内蔵する軸受箱の改造が必要となる。
【0082】
つまり、図1の工程表作成部32は、発電機5のタービンの羽根を撤去し、このタービンの軸のうち発電機5と接続していない側の端部、または発電機5の軸のうちタービンと接続していない側の端部に、同期調相機としての運用に必要な駆動機8を設置する工程を含む工程表を作成する。
【0083】
《第3実施形態》
本発明の第3実施形態の機器配置と改造方法について説明する。本実施形態でも第1実施形態と同様に廃炉段階のうち第一段階のみ運用予定で、使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにある場合の機器構成例を示す。ここでは第1実施形態との違いのみ説明する。
【0084】
図8は、第3実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋1内の機器配置を示す図である。
【0085】
第1実施形態では低圧タービンC系16を撤去したが、本実施形態にてプラントの運用者は、低圧タービンC系16を撤去しない。プラントの運用者は、発電機5と発電機駆動軸7が接続されている側とは反対端の励磁機4を撤去して、代わりに駆動機8と駆動機用インバータ9を設置し、接続用シャフト15を通して駆動機8を発電機5と接続する。駆動機8によってロス分を補い、発電機5を同期調相機として運転するが、このままではタービンの風損によるロスが大きすぎる。そのため、第2実施形態と同様に、それぞれのタービンの羽根はすべて撤去し、発電機駆動軸7のみとして回転させる。
つまり、図1の工程表作成部32は、発電機5と発電機駆動軸7が接続されている側とは反対端に駆動機8と駆動機用インバータ9を設置し、接続用シャフト15を通して駆動機8を発電機5と接続する工程を含む工程表を作成する。
【0086】
この場合、発電機駆動軸7の質量は大きいため、第1実施形態と比較して、電力系統に提供できる慣性が第1実施形態よりも大きくできる。また発電機駆動軸7が維持されるため、第1実施形態では電動ポンプへの改造が必要であったタービン潤滑油系は、これを駆動する発電機駆動軸7が維持されるため、電動ポンプへの改造も不要となる。この構成とするためには、励磁機4が発電機5の軸上に無いことが条件である。
【0087】
《第4実施形態》
第4実施形態の機器配置と改造方法について説明する。本実施形態では廃炉段階のうち第二段階まで同期調相機を運用予定で、使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにある場合の機器構成例を示す。
【0088】
図9は、第4実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋1内の機器配置を示す図である。
第二段階で運用する場合は、第二段階で実施する可能性がある中央制御室22の廃止に対処する必要がある。中央制御室22の廃止に対処するため、タービン建屋1の外側に同期調相機制御室19を別建屋として設け、その中に同期調相機制御盤20を設置し、その制御盤に駆動機制御用制御ライン17および発電機制御用制御ライン18をつなぎこみ、同期調相機を監視および/または制御できる形とする。同期調相機制御室19はタービン建屋1の外側に設けられるため、タービン建屋1内は管理区域のまま運用することができ、改造費用を最小化できる。またこの改造費用が小さい場合は、廃炉の第一段階においてもこの形態を取ってもよい。
つまり、図1の工程表作成部32は、タービン建屋1の外側に同期調相機制御室19を別建屋として設け、その中に同期調相機制御盤20を設置する工程と、その制御盤に駆動機制御用制御ライン17および発電機制御用制御ライン18をつなぎこむ工程を含む工程表を作成する。
【0089】
またこの形態は、運転開始当初からこの構成を提案してもよく、第一段階から第二段階に移るタイミングで改造を提案してもよい。火力発電プラントで検討が進んでいるクラウドによる監視制御化(制御室不要化)も、規制やコストを踏まえて提案を検討してもよい。
使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにあるため、その他の機器構成は第1実施形態と同様である。
【0090】
駆動機8の配置に関しては、第2実施形態や第3実施形態のような構成を提案してもよい。発電機5が出力できる有効電力と無効電力は、出力可能曲線で決まる。出力可能曲線は、発電機5の巻き線形状によって決まる。発電用に用いる発電機は、通常は無効電力量よりも有効電力量を出力できるような巻き線の巻き方となっている。そのため、巻き直しや巻替え工程を提案する場合は、より無効電力量が出力できる巻き線形状に変更する工程を提案してもよい。巻き直しや巻替えはコストが高いが、第二段階でも同期調相機として運用するため、トータルコストして回収できる場合、発電機5の巻き直しや巻替え工程を提案してもよい。また、無効電力の制御幅や速度を改善するため、励磁機4を改造する工程を提案してもよい。
【0091】
またこの段階になれば、タービン建屋電気品室2内のうち、不要となるメタクラなどを撤去、合理化することも考えられる。そのため、駆動機用配線10をあらかじめ残すと想定している電源盤11のメタクラに接続する工程を提案することが望ましい。
タービン建屋1の換気空調系に関しては、タービン建屋1を管理区域として利用する場合において管理区域の換気・負圧維持機能が必要となる。本実施形態において、タービン建屋1は管理区域のままのため、これらの維持が必要となる。
【0092】
《第5実施形態》
第5実施形態の機器配置と改造方法について説明する。本実施形態では廃炉段階のうち第二段階まで同期調相機を運用予定で、使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにある場合の機器構成例を示す。
【0093】
図10は、第5実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋1内の機器配置を示す図である。
第二段階で運用する場合は、第二段階実施する可能性がある中央制御室の廃止に対処する必要がある。中央制御室の廃止に対処するため、プラントの運用者は、タービン建屋1の一部を除染、もしくは線量が制限値よりも低いことを確認し、タービン建屋1の内部に同期調相機制御室19を設ける。プラントの運用者は、同期調相機制御室19の中に同期調相機制御盤20を設置し、その制御盤に駆動機制御用制御ライン17および発電機制御用制御ライン18をつなぎこみ、同期調相機を監視または/および制御できる形とする。同期調相機制御室19はタービン建屋1内部に設けられるため、タービン建屋1外側に十分な設置スペースが確保できなくても同期調相機としての運用が可能となる。
【0094】
このとき図1の工程表作成部32は、同期調相機の制御盤をタービン建屋内に設け、その制御盤で同期調相機を監視または/および制御する工程を含む工程表を作成する。
【0095】
またこの形態は、運転開始当初からこの構成となるように提案してもよく、第一段階から第二段階に移るタイミングで改造する工程を提案してもよい。第4実施形態と同様に固定子の巻き直し、巻替えや励磁機4を改良する工程を提案してもよい。
【0096】
使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにあるため、その他の機器構成は第1実施形態と同様である。
駆動機8の配置に関しては、第2実施形態や第3実施形態のような構成を提案してもよい。また発電機5の巻き直しや巻替え工程を提案してもよい。
【0097】
タービン建屋1の換気空調系に関しては、タービン建屋1を管理区域として利用する場合において管理区域の換気・負圧維持機能が必要となる。タービン建屋1内に管理区域が残っているためそのまま利用することが合理的である。
【0098】
《第6実施形態》
第6実施形態の機器配置と改造方法について説明する。本実施形態では廃炉段階のうち第二段階まで同期調相機を運用予定で、使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにある場合の機器構成例を示す。
【0099】
図11は、第6実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋1内の機器配置を示す図である。
第二段階で運用する場合は、第二段階で実施する可能性がある中央制御室の廃止に対処する必要がある。中央制御室の廃止に対処するため、プラントの運用者は、タービン建屋1の全体を除染、または線量が制限値よりも低いことを確認する。これによりプラントの運用者は、タービン建屋1の内部に同期調相機制御盤20を設置し、その制御盤に駆動機制御用制御ライン17および発電機制御用制御ライン18をつなぎこみ、同期調相機を監視および/または制御できる形とする。同期調相機制御室19はタービン建屋1内部に設けられるため、第5実施形態と同様にタービン建屋1外側に十分な設置スペースが確保できなくても同期調相機としての運用が可能となる。またタービン建屋1内全域が非管理区域となることから運転員の配置の制限がなくなる。また撤去した低圧タービンC系16aは、厳重に封印した上でタービン建屋1内にあってもよいが、本実施形態を取る場合は、除染して外部に搬出、もしくは使用していない他号機に移送する方が合理的である。
【0100】
つまり、図1の工程表作成部32は、全体が管理区域となっているタービン建屋1を除染する工程を含む工程表を作成する。そして工程表作成部32は、非管理区域として使いたい区域の線量を計測して、タービン建屋1の一部もしくは全体を非管理区域に変更する工程を含む工程表を作成する。
【0101】
タービン建屋1内は、運転開始当初からこの構成となるように提案してもよく、第一段階から第二段階に移るタイミングで改造する工程を提案してもよい。
使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにあるため、その他の機器構成は、第1実施形態と同様である。また、第4実施形態と同様に固定子の巻き直し、巻替えや励磁機4を改良する工程を提案してもよい。
駆動機8の配置に関しては、第2実施形態や第3実施形態のような構成を提案してもよい。また発電機5の巻き直しや巻替え工程を提案してもよい。
【0102】
タービン建屋1の換気空調系に関しては、タービン建屋1が非管理区域化となるため、タービン建屋1の温度管理に必要な容量を除いて不要となる。タービン建屋1が高温とならないと想定される場合はこの換気空調系は不要となる。
【0103】
《第7実施形態》
第7実施形態の機器配置と改造方法について説明する。本実施形態では廃炉段階のうち第二段階まで同期調相機を運用予定で、使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにある場合の機器構成例を示す。
【0104】
図12は、第7実施形態に係る同期調相機化に関するタービン建屋1内の機器配置を示す図である。
第二段階で運用する場合は、第二段階実施する可能性がある中央制御室の廃止に対処する必要がある。中央制御室の廃止に対処するため、プラントの運用者は、タービン建屋1のうち放射性物質の付着の可能性が低い発電機5やタービン建屋電気品室2と、確実に放射性物質の付着があるタービンがあるエリアの間に隔壁21を設置する。そして、プラントの運用者は、発電機5やタービン建屋電気品室2が存在する側を非管理区域としてその内部に同期調相機制御盤20を設置する。更にプラントの運用者は、その制御盤に駆動機制御用制御ライン17および発電機制御用制御ライン18をつなぎこみ、同期調相機を監視または/および制御できる形とする。同期調相機制御室19は、タービン建屋1内部に設けられるため、第5実施形態と同様にタービン建屋1外側に十分な設置スペースが確保できなくても同期調相機としての運用が可能となる。またタービン建屋1内全域が非管理区域となることから運転員の配置の制限がなくなる。また第5実施形態よりも非管理区域とする面積を小さくできる。撤去した低圧タービンC系16aは管理区域に置かれるため、タービン建屋1内に存置されたままでもよい。
【0105】
つまり、図1の工程表作成部32は、全体が管理区域となっているタービン建屋1を除染する工程、または汚染が想定される区域とそれ以外を区画するように隔壁21を設ける工程を含む工程表を作成する。
【0106】
タービン建屋1内は、運転開始当初からこの構成となるように提案してもよく、第一段階から第二段階に移るタイミングで改造する工程を提案してもよい。
使用済み燃料が原子炉圧力容器内もしくは使用済み燃料プールにあるため、その他の機器構成は第1実施形態と同様である。
【0107】
駆動機8の配置に関しては、第2実施形態や第3実施形態のような構成を提案してもよい。また発電機5の巻き直しや巻替えを提案してもよい。第4実施形態と同様に、発電機5の固定子の巻き直し、巻替えや励磁機4の改良を提案してもよい。
【0108】
タービン建屋1の換気空調系に関しては、タービン建屋1を管理区域として利用する場合において管理区域の換気・負圧維持機能が必要となる。タービン建屋1内に管理区域が残っているため、そのまま利用することが合理的である。
【0109】
《第8実施形態》
第8実施形態の改造方法について説明する。本実施形態では廃炉段階のうち第二段階まで同期調相機を運用予定で、使用済み燃料はキャスクに格納されて原子炉建屋外に搬出されている段階まで同期調相機を利用する場合の工程の提案例を示す。
【0110】
図13は、第8実施形態に係る工程の提案処理のフローチャートである。
最初、図1の工程表作成部32は、使用済み燃料をキャスクに格納して原子炉建屋外に搬出する工程を提案する(ステップS30)。使用済み燃料がキャスクに格納されて原子炉建屋外に搬出された場合、使用済み燃料の冷却に関わる設備(補機)や、その設備を運用するために必要な電源系などは、不要となる。使用済み燃料の冷却に関わる可能性が無くなったため、ある程度電源系の信頼性を落としても問題ない。よって工程表作成部32は、使用済み燃料を搬出する工程の後に、電源系の系統数を削減する工程を提案する(ステップS31)。
【0111】
そして工程表作成部32は、冷却系を簡素なものに改造する工程を提案する(ステップS32)。これは、使用済み燃料の冷却が不要になったためである。そのため、工程表作成部32が提案した工程により、更に電源系を合理化できる。更に使用済み燃料の冷却が不要となることから、原子炉補機冷却水系を始め、海水冷却が必要な装置が減少する。それに合わせて、工程表作成部32は、ステップS32において電源系の装置も空冷に変える工程を提案してもよい。海水冷却への依存度を下げることにより、プラントの運用者は、同期調相機の運用コストを低減すると共に、その後の廃止措置をスムーズに行える。
【0112】
工程表作成部32は、合理化した際のコストを評価して、運用期間中のコストから電源系を合理化する工程を提案する。合理化の方法としては、使用済み燃料の冷却のために多数の系統を維持していたものの数を減らすのが一つの方法である。後述の必要補機の整理、縮退範囲の同定)の結果、および廃炉スケジュールを加味した所内電源(メタクラ、パワーセンタ、モーターコントロールセンタ)の最適化とそれに伴う所内電源リプレースの検討(廃止措置のスケジュール、廃止措置に必要な負荷にプラスして、同期調相機に必要な負荷も考慮したリプレース計画の立案)が必要となる。
【0113】
工程表作成部32は、また駆動機が接続する電源盤も廃止措置の後期まで維持される負荷と同じ電源盤に接続することで、維持する電源盤の数を絞る工程を提案する(ステップS33)。
【0114】
そして、工程表作成部32は、補機を合理化する工程を提案し(ステップS34)、図13の処理を終了する。補機に関しては原子炉補機冷却水系が不要となるため、これらを合理化することで運用コストを低減できる。ただし現行の設計では計装用圧縮空気系の冷却を原子炉補機冷却水系に依存している設計が多いため、その場合は計装用圧縮空気系の冷却を例えば空冷式に変更するなどの設計変更が必要となる。また原子炉補機冷却水系が不要となるのに合わせて、タービン補機冷却水系、及び海水系や換気空調系などを同期調相機として必要な熱負荷に合わせて適切なものに縮退、交換する工程を更に提案することが望ましい。
【0115】
また工程表作成部32は、ステップS32において、機器の空冷化を可能な範囲で進めて海水系を不要とする工程を提案して運用コスト低減を図ると共に、その後撤去が始まる海水系がスムーズに撤去できるようにしてもよい。これにより、プラントの運用者は、その後の廃止措置をスムーズに進めることが可能となる。
【0116】
タービン建屋1内の機器配置については、第4実施形態から第7実施形態のような構成を提案し、中央制御室を撤去できるようにし、タービン建屋1の内外のみで同期調相機としての運用が可能とする構成を提案することが望ましい。
【0117】
つまり、工程表作成部32は、原子炉側の廃止措置の進展により不要となる機器や電源系を考慮して、同期調相機として必要な補機や電源系に関して縮退や改造を行う工程を含む工程表を作成する。
【0118】
《第9実施形態》
第9実施形態の改造方法について説明する。本実施形態では廃炉段階のうち第三段階まで同期調相機を運用予定である場合の工程の提案処理を示す。
【0119】
図14は、第9実施形態に係る工程の提案処理のフローチャートである。
第三段階にて、工程表作成部32は、原子炉本体の撤去も解体撤去を進める工程を提案し(ステップS40)、原子炉建屋側で必要としていた海水冷却系などを撤去する工程を提案する(ステップS41)。工程表作成部32は、補機に関しては同期調相機に必要な熱負荷に合わせた適切な縮退、交換工程を提案する(ステップS42)。このとき、特に海水系を利用した冷却ではなく、空冷の装置に交換する工程を提案することが望ましい。
更に工程表作成部32は、電源系も合わせて合理化を進めるが、電源系に必要な冷却も空冷化を進める工程を提案し(ステップS43)、図14の処理を終了する。
【0120】
タービン建屋内の機器配置については第4実施形態から第7実施形態のような構成を提案し、中央制御室を撤去できるようにし、タービン建屋内外のみで同期調相機としての運用が可能とする構成を提案することが望ましい。また第三段階まで運用する場合、その後のタービン建屋の廃止措置も控えるため、工程表作成部32は、第6実施形態のようにタービン建屋を非管理区域化するか、または第7実施形態のようにタービン建屋の多くの部分を非管理区域とし、非管理区域化した範囲で同期調相機の運転に不要な機器を搬出および/または除却できるような構成を提案とする。この提案を実行することにより、プラントの運用者は、後の廃止措置を円滑に進めることができる。
【0121】
つまり、工程表作成部32は、発電機を同期調相機として運用する際に不要な機器を同定し、発電機を同期調相機として運用する期間中もタービン建屋から搬出または除却する工程を含む工程表を作成するとよい。
【0122】
《第10実施形態》
第10実施形態の改造方法について説明する。本実施形態では廃炉段階のうち第四段階まで同期調相機を運用予定である場合の工程の提案方法を示す。
【0123】
図15は、第10実施形態に係る工程の提案処理のフローチャートである。
第四段階では、終了時点ですべての施設の廃止措置を完了する必要がある。そのため工程表作成部32は、補機に関しては同期調相機に必要な熱負荷に合わせた適切な縮退および/または交換を行う工程を提案する(ステップS50)。特に海水系を利用した冷却ではなく空冷の装置としておく工程を提案することが望ましい。工程表作成部32は、電源系も合わせて合理化を進める工程を提案する(ステップS51)。このとき、工程表作成部32は、電源系に必要な冷却も、海水系を廃止または除却する工程と共に、これを空冷化する工程を提案することが望ましい。
【0124】
工程表作成部32は、発電機や、発電機を同期調相機として運用するために必要な補機などを移設する工程を提案し(ステップS52)、図15の処理を終了する。これにより、元々の原子力発電プラントとは独立して運用できるようにすることで、廃止措置に影響を与えない体系とできる。
【0125】
タービン建屋内の機器配置については、第4実施形態から第7実施形態のような構成を提案し、中央制御室を撤去できるようにし、タービン建屋内外のみで同期調相機としての運用が可能とする構成を提案することが望ましい。第四段階中のタービン建屋の廃止措置も控えるため、第6実施形態のようにタービン建屋を非管理区域化する、または、第7実施形態のようにタービン建屋の多くの部分を非管理区域とし、非管理区域化した範囲で同期調相機の運転に不要な機器を搬出および/または除却できるような構成を提案することが望ましい。プラントの運用者が、後の廃止措置を円滑に進めるためである。
【0126】
《第11実施形態》
原子力発電プラントでは、プラントごとに容量、励磁方式が異なっており、同じサイトでも号機によってそれぞれが異なっている場合も多い。本実施形態では、同期調相機化の改造の着手をする際に、立地条件や必要な無効電力出力量などを加味して系統解析により改造が必要な基数を求め、無効電力の制御幅、速度、運用のニーズを考慮して、同期調相機として改造する発電機を選定する。
【0127】
図16は、第11実施形態の同期調相機化する発電機の号機提案処理のフローチャートである。
発電機選定部33は、電力系統の整備状況、電源導入計画などを考慮して、系統解析から必要な無効電力出力量と大まかな同期調相機の運用場所を求める(ステップS20)。
【0128】
発電機選定部33は、選定された無効電力出力量と場所に適合する廃止計画があるプラントを選定し(ステップS21)、必要な無効電力出力量から同期調相機に改造する発電機の基数を決める(ステップS22)。
【0129】
そして、発電機選定部33は、各号機の無効電力の制御幅、制御速度、発電機の運用の容易さなどを比較し、同期調相機に改造する号機を決定すると(ステップS23)、図16の処理を終了する。
この号機提案処理により、プラントの運用者は、どの号機の発電機を同期調相機化すればよいかを容易に知ることができる。これは第1実施形態から第10実施形態に対しても適用できる。
【0130】
《第12実施形態》
一般的に発電機の保守点検には、5年に1回程度のシール材等の消耗部品の交換、製品寿命中に1回程度のコイル巻替えといった大型工事が含まれる。また、停止保管中の場合には、錆の発生、樹脂材料の劣化、回転体の動作不良に対する配慮も必要で、気化性防錆材を用いたり、乾燥保管あるいは満水保管を使い分けたり、定期的な回転機ターニングを行ったりといった配慮を要する。このように同期調相機化する発電機は、それまでの運転経歴や保管経歴がさまざまであるため、同期調相機化の改造の前にそうした経歴に配慮した発電機の状態把握が必要となる。
【0131】
図17は、第12実施形態に係る工程の提案処理のフローチャートである。
工程表作成部32は、この発電機が同期調相機化の直前まで使用されていたか否かを判定する(ステップS60)。工程表作成部32は、この発電機が同期調相機化の直前まで使用されていたならば(Yes)、ステップS61に進み、同期調相機化の前まで年単位の長期間に亘って使用されていないならば(No)、ステップS63に進む。
【0132】
同期調相機化の直前まで使用されていた発電機を使用する場合は、直前まで当該発電機の動作が確認されている。ステップS62において、工程表作成部32は、この発電機に係るこれまでの保守点検計画の延長線上での保守点検工程を提案し、発電機の同期調相機化の工事に合わせた発電機の開放点検工程を提案すると(ステップS62)、図17の処理を終了する。ただし、発電機が製品寿命に達したことによって廃止措置が取られることとなった場合、工程表作成部32は、同期調相機への改造の可否を検討する必要がある。
【0133】
同期調相機化の前まで年単位の長期間に亘り使用されていない発電機を使用する場合は、停止保管中の状態も考慮する必要がある。ステップS63において、工程表作成部32は、廃炉を想定し手入れなしで保管してきた発電機であると判定し、可能な限りの分解点検、消耗部品交換、動作試験の工程を提案する(ステップS63)。このステップS63において、工程表作成部32は、発電機の固定子や回転子の巻き直しや巻き替えを行って、同期調相機に改造する工程を含む工程表を作成してもよい。
【0134】
そして、発電機の同期調相機化の工事に先立ち発電機の開放点検の工程を提案し(ステップS64)、発電機の付帯系統の点検工程も同様に提案すると、図17の処理を終了する。これによりプラントの運用者は、点検の結果から、コイル巻替えなどの大型工事の要否を判断できる。
【0135】
つまり、図1の工程表作成部32は、廃止される以前の発電機の運用状況に基づき、同期調相機として改造に着手する発電機の点検、メンテナンス、および動作確認のうち何れか一つ以上を含む工程を含む工程表を作成する。
【0136】
大型工事を実施する場合には計画から工事完了まで年単位の時間を要するため、発電機の点検工程は、同期調相機化の計画の初期に検討されなければならない。これらの検討は、第1実施形態から第11実施形態に対しても適用できる。
【0137】
《実施形態の効果》
以上説明した各実施形態によれば、工程表提案サーバ30は、トータルコストの最適化など、顧客に最適な同期調相機に改造する工程や運用する工程を含む工程表を提案できる。
【0138】
《変形例》
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0139】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウエアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0140】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0141】
1 タービン建屋
2 タービン建屋電気品室
3 大物搬入口
4 励磁機
5 発電機
6 低圧タービンC系跡地
7 発電機駆動軸
8 駆動機
9 駆動機用インバータ
10 駆動機用配線
11 電源盤
12 低圧タービンB系
13 低圧タービンA系
14 高圧タービン
15 接続用シャフト
16 低圧タービンC系
16a 低圧タービンC系 (撤去後)
17 駆動機制御用制御ライン
18 発電機制御用制御ライン
19 同期調相機制御室
20 同期調相機制御盤
21 隔壁
22 中央制御室
30 工程表提案サーバ (発電機の同期調相機化工程表作成システム)
31 入力部
32 工程表作成部
33 発電機選定部 (選定部)
34 記憶部
341 発電機構成情報
342 利用予定期間情報
900 コンピュータ
901 CPU
902 RAM
903 ROM
904 HDD
905 通信インタフェース
906 入出力インタフェース
907 メディアインタフェース
915 通信装置
916 入出力装置
917 記録媒体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17