(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子及びその製造方法、発泡成形体、並びに自動車用部材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/16 20060101AFI20241202BHJP
B29B 9/02 20060101ALI20241202BHJP
B29B 9/16 20060101ALI20241202BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241202BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20241202BHJP
B29K 67/00 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
C08J9/16 CFD
B29B9/02
B29B9/16
B29C44/00 E
B29C44/44
B29K67:00
(21)【出願番号】P 2021044095
(22)【出願日】2021-03-17
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲桑▼▲原▼ 佑輔
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5974010(JP,B2)
【文献】特開2014-043528(JP,A)
【文献】特開2017-043011(JP,A)
【文献】国際公開第2020/049802(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
B29B 9/02、 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子中心部における結晶化度(A)及び粒子表層部における結晶化度(B)がいずれも
1~10%であり、中心部における結晶化度に対する表層部における結晶化度の比(B/A)が0.30~1.40である、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
粒子表面の樹脂層の厚みが5μm~40μmである、請求項1に記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
粒子中心部における平均気泡径(C)及び粒子表層部における平均気泡径(D)がいずれも50μm~300μmであり、中心部における平均気泡径に対する表層部における平均気泡径の比(D/C)が0.75~0.95である、請求項1又は2に記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
粒子中心部における結晶化度に対する表層部における結晶化度の比(B/A)が0.30~1.30である、請求項1~3のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡成形体。
【請求項6】
密度が0.05g/cm
3~0.7g/cm
3である、請求項
5に記載の発泡成形体。
【請求項7】
請求項
5又は
6に記載の発泡成形体を含有する自動車用部材。
【請求項8】
芳香族ポリエステル系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練する工程と、溶融混練された芳香族ポリエステル系樹脂を前記押出機の前端に取り付けたノズル金型から気体条件下で押出発泡させながら切断して粒子状切断物を製造する工程と、前記粒子状切断物を冷却水で冷却する工程とを有し、前記冷却水の温度が23℃~55℃である、
請求項1~4のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型内発泡成形用の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子及びその製造方法、発泡成形体、並びに自動車用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリエステル系樹脂製の発泡粒子を発泡させて芳香族ポリエステル系樹脂発泡成形体を製造する方法として型内発泡成形が従来から汎用されている。型内発泡成形とは、樹脂発泡粒子を金型内に充填する工程と、熱水や水蒸気などの熱媒体によって金型内に充填された樹脂発泡粒子を加熱して二次発泡させて、二次発泡粒子同士を熱融着一体化させて所望形状を有する型内発泡成形体を製造する工程とを有する成形方法である。
芳香族ポリエステル系樹脂製の発泡粒子は、発泡剤の存在下、押出機内で溶融混練された基材樹脂を押し出すと同時に発泡させて製造される。この際、ホットカット法、アンダーウォーターカット法(水中カット法)等が使用されている。
【0003】
特許文献1では、ウォーターリングホットカット法、つまり気体下で押出された溶融混練樹脂を切断し、切断粒子を冷却水で冷却する方法で芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造している。
また特許文献2では、アンダーウォーターカット法、つまり押出された溶融混練樹脂を水中で切断及び冷却する方法で芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5974010号公報
【文献】欧州特許出願公開第2564799号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発泡粒子の製造方法では、製造後の保管可能期間が長い発泡粒子を製造できる。しかし、この製造方法で得られる発泡粒子から得られる発泡成形体の機械的強度をより高くすることは難しかった。
特許文献2の発泡粒子の製造方法では、切断された樹脂粒子は発泡粒子になるとともに直ちに80℃程度の水中に放たれて冷却される。しかし、本発明者らによれば、この方法で製造された発泡粒子は二次発泡性が悪く成形性において改善が必要であった。
【0006】
本発明は、機械的物性に優れた芳香族ポリエステル系樹脂発泡成形体の提供を一つの目的とする。本発明は、当該発泡成形体を製造するための芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の提供を一つの目的とする。本発明は、当該発泡粒子の製造方法の提供を一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特許文献1の製造方法で得られる発泡粒子の表面樹脂の厚みが著しく大きく、これによって発泡粒子の二次発泡性が悪いことを見出した。さらに、本発明者らは、特許文献2の製造方法で得られる発泡粒子では、発泡粒子の表面樹脂の厚みが著しく大きいこと、発泡粒子中心部樹脂の結晶化度と比較して表層部樹脂の結晶化度がかなり大きいこと、発泡粒子中心部の平均気泡径が大きく表層部の平均気泡径との差が大きいことによって、発泡粒子の二次発泡性が悪いことを見出した。
より詳細には、本発明者らは、芳香族ポリエステル系樹脂は結晶性樹脂であるが故に、発泡粒子の結晶化度が高すぎると二次発泡粒子を熱融着一体化させる際に融着性を低下させることがあることを見出した。また、本発明者らは、発泡粒子表面の樹脂層の厚みが厚すぎると二次発泡性が低下し、成形品の表面伸び、及び発泡成形体における二次発泡粒子の融着性が悪くなることを見出した。更に、本発明者らは、発泡粒子の中心部における平均気泡径と表層部における平均気泡径の差が大きすぎると、発泡成形体の圧縮時に気泡への応力集中が起こりやすくなり、発泡成形体の機械的物性が低下することを見出した。
【0008】
そして、本発明者らは、発泡粒子表面の樹脂の厚み、発泡粒子の結晶化度、発泡粒子の気泡径等に着目し、ウォーターリングホットカット法において冷却水温を特定の範囲に調整することによって得られる発泡粒子の表面樹脂の厚みと結晶化度と気泡径を所定の範囲とできること、この発泡粒子は二次発泡性に優れ、この発泡粒子を発泡成形した発泡成形体が機械的物性、例えば圧縮強度、曲げ強度等に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、代表的には以下の態様を包含する。
項1.
粒子中心部における結晶化度(A)及び粒子表層部における結晶化度(B)がいずれも10%以下であり、中心部における結晶化度に対する表層部における結晶化度の比(B/A)が0.30~1.40である、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項2.
粒子表面の樹脂層の厚みが5μm~40μmである、項1に記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項3.
粒子中心部における平均気泡径(C)及び粒子表層部における平均気泡径(D)がいずれも50μm~300μmであり、中心部における平均気泡径に対する表層部における平均気泡径の比(D/C)が0.75~0.95である、項1又は2に記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項4.
粒子中心部における結晶化度に対する表層部における結晶化度の比(B/A)が0.30~1.30である、項1~3のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項5.
粒子中心部における結晶化度(A)及び粒子表層部における結晶化度(B)がいずれも1~10%である、項1~4のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子。
項6.
項1~5のいずれかに記載の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡成形体。
項7.
密度が0.05g/cm3~0.7g/cm3である、項6に記載の発泡成形体。
項8.
項6又は7に記載の発泡成形体を含有する自動車用部材。
項9.
芳香族ポリエステル系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練する工程と、溶融混練された芳香族ポリエステル系樹脂を前記押出機の前端に取り付けたノズル金型から気体条件下で押出発泡させながら切断して粒子状切断物を製造する工程と、前記粒子状切断物を冷却水で冷却する工程とを有し、前記冷却水の温度が23℃~55℃である、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機械的物性に優れた発泡成形体を製造できる芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子とその製造方法を提供できる。本発明によれば、機械的物性、例えば圧縮強度、曲げ強度等に優れた発泡成形体とこれを含有する自動車用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造装置の一例を示した模式断面図である。
【
図2】マルチノズル金型を正面から見た模式図である。
【
図3】芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子が冷却水に進入する状況を示した模式図である。
【
図4】実施例1~3で製造した発泡粒子の中心部(100倍)及び表層部(100倍及び500倍)の断面のSEM撮影画像である。
【
図5】実施例4及び5で製造した発泡粒子の中心部(100倍)及び表層部(100倍及び500倍)の断面のSEM撮影画像である。
【
図6】比較例1~3で製造した発泡粒子の中心部(100倍)及び表層部(100倍及び500倍)の断面のSEM撮影画像である。
【
図7】比較例4及び5で製造した発泡粒子の中心部(100倍)及び表層部(100倍及び500倍)の断面のSEM撮影画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0013】
(芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子)
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、芳香族ポリエステル系樹脂を主成分として含んでいる。ここで、「主成分」とは、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を構成している樹脂中、80~100質量%、好ましくは90~100質量%の芳香族ポリエステル系樹脂を含有していることを意味する。
【0014】
(芳香族ポリエステル系樹脂)
芳香族ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分とジオール成分とを含むポリエステルであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられ、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。芳香族ポリエステル系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0015】
芳香族ポリエステル系樹脂は、芳香族ジカルボン酸成分及びジオール成分以外に、例えば、トリメリット酸などのトリカルボン酸、ピロメリット酸などのテトラカルボン酸などの三価以上の多価カルボン酸やその無水物、グリセリンなどのトリオール、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどの三価以上の多価アルコールなどを構成成分として含有していてもよい。
【0016】
芳香族ポリエステル系樹脂は、石油由来品だけでなく、植物由来品、使用済のペットボトルなどから回収、再生したリサイクル品を用いることもできる。
【0017】
芳香族ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、押出発泡性に優れると共に、得られる発泡粒子の二次発泡性に優れることから、0.7~1.1が好ましく、0.75~1.05がより好ましい。
【0018】
芳香族ポリエステル系樹脂の固有粘度(IV値)は、JIS K7367-5(2000)に準拠して測定された値をいう。具体的には、芳香族ポリエステル系樹脂を133Paの真空度で40℃にて15時間に亘って乾燥させる。
【0019】
芳香族ポリエステル系樹脂から0.1000gを試料として取り出して20mLのメスフラスコに入れ、メスフラスコに混合溶媒(フェノール50重量%、1,1,2,2-テトラクロロエタン50重量%)約15mLを添加する。メスフラスコ内の試料をホットプレート上に載置して約130℃に加熱して溶融させる。試料を溶融させた後に室温まで冷却し、体積が20mLとなるように調製し試料溶液(試料濃度:0.500g/100mL)を作製する。
【0020】
試料溶液8mLをホールピペットで粘度計に供給し、25℃の水が入れられた水槽を用いて試料の温度を安定させた後、試料の流下時間を測定する。試料溶液の濃度変更は、順次、粘度計内に混合溶媒8mLを添加して混合し希釈して希釈試料溶液を作製する。そして、希釈試料溶液の流下時間を測定した。試料溶液とは別に上記混合溶媒の流下時間を測定する。
【0021】
下記の計算式に基づいて芳香族ポリエステル系樹脂の固有粘度を算出する。混合溶媒の流下時間(t0)と試料溶液の流下時間(t)から以下を算出した。
相対粘度(ηr) =t/t0
比粘度 (ηsp)=(t-t0)/t0=ηr-1
還元粘度=ηsp/C
試料溶液の濃度C(g/100mL)を種々、変更した希釈試料溶液の測定結果から、縦軸を還元粘度とし横軸を試料溶液の濃度Cとしてグラフを作成し、得られた直線関係をC=0に外挿した縦軸切片から固有粘度[η]を求めた。
【0022】
【0023】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を構成している芳香族ポリエステル系樹脂は、架橋剤によって架橋された改質芳香族ポリエステル系樹脂であってもよい。架橋剤としては、公知のものが用いられ、例えば、無水ピロメリット酸などの酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられる。なお、架橋剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0024】
芳香族ポリエステル系樹脂を架橋剤によって架橋して改質する場合には、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造時に、押出機に芳香族ポリエステル系樹脂と架橋剤とを供給し、押出機中において、芳香族ポリエステル系樹脂を架橋剤によって架橋すればよい。押出機に供給する架橋剤の量は、押出発泡を良好に実施する点から、芳香族ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.01質量部~5質量部が好ましく、0.1質量部~1質量部がより好ましい。
【0025】
本発明の発泡粒子を構成する芳香族ポリエステル系樹脂の質量平均分子量は、押出発泡性に優れると共に、得られる発泡粒子の二次発泡性に優れることから、4.5万~10万が好ましく、6万~9万がより好ましい。
発泡粒子を構成する芳香族ポリエステル系樹脂が改質芳香族ポリエステル系樹脂である場合、芳香族ポリエステル系樹脂の質量平均分子量は、改質芳香族ポリエステル系樹脂の質量平均分子量を意味する。
【0026】
本発明の発泡粒子を構成する芳香族ポリエステル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定したポリスチレン(PS)換算質量平均分子量を意味する。
質量平均分子量は、具体的には、次のようにして測定する。試料5mgにヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)0.5mLと、クロロホルム0.5mLとをこの順で添加し溶解させ(浸漬時間:6.0±1.0hr(完全溶解))、試料溶液を得る。試料が溶液中に完全に溶解したことを確認した後、この試料溶液にクロロホルムを添加して体積が10mLとなるように希釈して振とう混合する。試料溶液を(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過してろ液を得る。次の測定条件にてクロマトグラフを用いてろ液を測定する。質量平均分子量(Mw)は、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から求める。
使用装置=東ソー(株)製 「HLC-8320GPC EcoSEC」 ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)
(GPC測定条件)
カラム
サンプル側
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列
リファレンス側
抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列
カラム温度=40℃
移動相=クロロホルム
移動相流量
サンプル側ポンプ=1.0mL/min
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min
検出器:UV検出器
波長:254nm
注入量:15μL
測定時間:10分-32min
ランタイム:20min
サンプリングピッチ:500msec
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」および「STANDARD SH-75」で質量平均分子量が5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、151,000、53,500、17,000、7,660、2,900、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、151,000、17,000、2,900)およびB(3,120,000、442,000、53,500、7,660、1,320)にグループ分けした後、Aを(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)秤量後クロロホルム30mLに溶解し、Bも(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)秤量後クロロホルム30mLに溶解する。標準ポリスチレン検量線は、作製した各AおよびB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得る。その検量線を用いて質量平均分子量を算出する。
【0027】
(芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法)
本発明の発泡粒子は、例えば、芳香族ポリエステル系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練する工程と、溶融混練された芳香族ポリエステル系樹脂を前記押出機の前端に取り付けたノズル金型から気体条件下で押出発泡させながら切断して粒子状切断物を製造する工程と、前記粒子状切断物を冷却水で冷却する工程とを有し、前記冷却水の温度が23℃~55℃である、製造方法により製造することができる。このような製造方法もまた、本発明の1つである。なお、以下に本製造方法について説明をするが、本発明の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
【0028】
先ず、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の製造に用いられる製造装置の一例について説明する。
図1中、押出機の前端にはノズル金型1が取り付けられている。ノズル金型1は、芳香族ポリエステル系樹脂を押出発泡させて均一微細な気泡を形成できることから好ましい。そして、
図2に示したように、ノズル金型2の前端面1aには、ノズルの出口部11が複数個、同一仮想円A上に等間隔毎に形成されている。なお、押出機の前端に取り付けるノズル金型は、ノズル内において芳香族ポリエステル系樹脂が発泡しないものであれば、特に限定されない。
【0029】
ノズル金型1のノズルの数は、製造効率の点及び粒子上切断物同士の合体を抑制できる点から、2~80個が好ましく、5~60個がより好ましく、8~50個が特に好ましい。
【0030】
ノズル金型1におけるノズルの出口部11の直径は、押出圧力と発泡粒子の径を適切な範囲とできる点で、0.2~2mmが好ましく、0.3~1.6mmがより好ましく、0.4~1.2mmが特に好ましい。
【0031】
ノズル金型1のランド部の長さは、ノズル金型1のノズルにおける出口部11の直径の4~30倍が好ましく、ノズル金型1のノズルにおける出口部11の直径の5~20倍がより好ましい。これは、ノズル金型のランド部の長さが前記範囲内であると、フラクチャーの発生が抑制されて安定的に押出発泡できる点で有利である。
【0032】
そして、ノズル金型1の前端面1aにおけるノズルの出口部11で囲まれた部分には、回転軸2が前方に向かって突出した状態に配設されており、この回転軸2は、後述する冷却部材4を構成する冷却ドラム41の前部41aを貫通してモータなどの駆動部材3に連結されている。
【0033】
更に、上記回転軸2の後端部の外周面には一枚又は複数枚の回転刃5が一体的に設けられており、全ての回転刃5は、その回転時には、ノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態となる。なお、回転軸2に複数枚の回転刃5が一体的に設けられている場合には、複数枚の回転刃5は回転軸2の周方向に等間隔毎に配列されている。又、
図2では、一例として、四個の回転刃5を回転軸2の外周面に一体的に設けた場合を示した。
【0034】
そして、回転軸2が回転することによって回転刃5は、ノズル金型1の前端面1aに常時、接触しながら、ノズルの出口部11が形成されている仮想円A上を移動し、ノズルの出口部11から押出された芳香族ポリエステル系樹脂押出物を順次、連続的に切断可能に構成されている。
【0035】
ノズル金型1の少なくとも前端部と、回転軸2とを包囲するように冷却部材4が配設されている。この冷却部材4は、ノズル金型1よりも大径な正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設された円筒状の周壁部41bとを有する有底円筒状の冷却ドラム41とを備えている。
【0036】
更に、冷却ドラム41の周壁部41bにおけるノズル金型1の外方に対応する部分には、冷却水42を供給するための供給口41cが内外周面間に亘って貫通した状態に形成されている。冷却ドラム41の供給口41cの外側開口部には冷却水42を冷却ドラム41内に供給するための供給管41dが接続されている。
【0037】
冷却水42は、供給管41dを通じて、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って斜め前方に向かって供給されるように構成されている。そして、冷却水42は、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進む。そして、冷却水42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却水42によって全面的に被覆された状態となるように構成されている。
【0038】
冷却水の温度は、発泡粒子の結晶化度、気泡径サイズ、又は表面の樹脂層の厚みを適切に調製できる点から、23℃~55℃であり、24℃~50℃がより好ましく、25℃~45℃が特に好ましい。
【0039】
そして、冷却ドラム41の周壁部41bの前端部下面には、その内外周面間に亘って貫通した状態に排出口41eが形成されている。排出口41eの外側開口部には排出管41fが接続されている。芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子及び冷却水42が排出口41eを通じて連続的に排出されるように構成されている。
【0040】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は押出発泡によって製造されることが好ましい。例えば、芳香族ポリエステル系樹脂を押出機に供給して発泡剤の存在下にて溶融混練した後、押出機の前端に取り付けたノズル金型1から芳香族ポリエステル系樹脂押出物を押出発泡させながら回転刃5によって切断し芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を製造する。
【0041】
前記押出機としては、従来から汎用されている押出機であれば、特に限定されず、例えば、単軸押出機、二軸押出機、複数の押出機を連結させたタンデム型の押出機が挙げられる。
【0042】
前記発泡剤としては、従来から汎用されているものが用いられる。前記発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどの化学発泡剤、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素系発泡剤、ジメチルエーテルなどのエーテル系発泡剤、塩化メチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン系発泡剤、二酸化炭素、窒素などの無機系発泡剤などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素がより好ましく、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が特に好ましい。なお、発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0043】
押出機に供給される発泡剤量は、発泡粒子の発泡倍率を適切な範囲とし易い点から、芳香族ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.1質量部~5質量部が好ましく、0.2質量部~4質量部がより好ましく、0.2質量部~3質量部が特に好ましい。
【0044】
押出機には気泡調整剤が供給されることが好ましい。このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末、アクリル樹脂で変性されたポリテトラフルオロエチレン粉末、タルクなどが好ましい。
【0045】
押出機に供給される気泡調整剤の量は、発泡粒子の気泡径を適切な範囲とできる点から、芳香族ポリエステル系樹脂100質量部に対して0.01質量部~5質量部が好ましく、0.05質量部~3質量部がより好ましく、0.1質量部~2質量部が特に好ましい。
【0046】
ノズル金型1から押出発泡された芳香族ポリエステル系樹脂押出物は引き続き切断工程に入る。芳香族ポリエステル系樹脂押出物の切断は、回転軸2を回転させることによって、ノズル金型1の前端面1aに配設された回転刃5を回転させて行われる。回転刃5の回転数は2000rpm~10000rpmが好ましい。回転刃は、一定の回転数で回転させることが好ましい。
【0047】
全ての回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触しながら回転しており、ノズル金型1から押出発泡された芳香族ポリエステル系樹脂押出物は、回転刃5と、ノズル金型1におけるノズルの出口部11端縁との間に生じる剪断応力によって、一定の時間間隔毎に大気中において切断されて粒子状切断物とされる。
【0048】
本発明では、ノズル金型1のノズル内において芳香族ポリエステル系樹脂が発泡しないようにしている。そして、芳香族ポリエステル系樹脂は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後は、未だに発泡しておらず、吐出されてから僅かな時間が経過した後に発泡を始める。従って、芳香族ポリエステル系樹脂押出物は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する、未発泡部に先んじて押出された発泡途上の発泡部とからなる。
【0049】
ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出されてから発泡を開始するまでの間、未発泡部はその状態を維持する。この未発泡部が維持される時間は、ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力や、発泡剤量などによって調整することができる。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力が高いと、芳香族ポリエステル系樹脂押出物はノズル金型1から押出されてから直ぐに発泡することはなく未発泡の状態を維持する。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力の調整は、ノズルの直径、押出量、芳香族ポリエステル系樹脂の溶融粘度及び溶融張力によって調整することができる。発泡剤量を適正な量に調整することによって金型内部において芳香族ポリエステル系樹脂が発泡することを防止し、未発泡部を確実に形成することができる。
【0050】
そして、全ての回転刃5はノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態で芳香族ポリエステル系樹脂押出物を切断していることから、芳香族ポリエステル系樹脂押出物は、ノズル金型1のノズルの出口部11から吐出された直後の未発泡部において切断されて粒子状切断物が製造される。
【0051】
上述したように、回転刃5は一定の回転数で回転しているが、回転刃5の回転数は、2000rpm~10000rpmが好ましく、2000rpm~9000rpmがより好ましく、2000rpm~8000rpmが特に好ましい。回転数が前記範囲内であると、切断の確実性が向上する点、又は、粒子上切断物同士の合着を抑制できる点で有利である。
【0052】
上述のようにして得られた粒子状切断物は、回転刃5による切断応力によって切断と同時に冷却ドラム41に向かって飛散され、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面を被覆する冷却水42に直ちに衝突する。粒子状切断物は、冷却水42に衝突するまでの間も発泡をし続けており、粒子状切断物は発泡によって略球状に成長している。従って、得られる芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は略球状である。芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型内に充填して型内発泡を行うにあたって、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は金型内への充填性に優れ、金型内に芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を均一に充填することができ、均質な型内発泡成形体を得ることができる。
【0053】
冷却ドラム41の周壁部41bの内周面は全面的に冷却水42(23℃~55℃)で被覆されているが、この冷却水42は、供給管41dを通じて、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って斜め前方に向かって供給され、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進み、そして、冷却水42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却水42によって全面的に被覆された状態となっている。
【0054】
上述のように、芳香族ポリエステル系樹脂押出物を回転刃5によって切断した後に、粒子状切断物を直ちに冷却水42(23℃~55℃)によって冷却していることから、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子が過度に発泡するのを防止している。
【0055】
更に、芳香族ポリエステル系樹脂押出物を回転刃5によって切断して得られた粒子状切断物は冷却水42に向かって飛散させられる。上述の通り、冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に沿って流れている冷却水42は螺旋状に旋回しながら流れている。従って、冷却水42の表面に対して斜交し且つ冷却水42の流れの上流側から下流側に向かって粒子状切断物Pを冷却水42に衝突させて冷却水42に進入させるようにすることが好ましい(
図3参照)。なお、
図3において、冷却水の流れ方向を「F」として示した。
【0056】
このように、粒子状切断物を冷却水42内に進入させるにときに、粒子状切断物を冷却水42の流れを追う方向から冷却水42に進入させているので、粒子状切断物は冷却水42の表面に弾かれることなく、粒子状切断物は冷却水42内に円滑に且つ確実に進入して冷却水42によって冷却されて芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子が製造される。
【0057】
従って、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、冷却ムラや収縮のない略球状の形態を有し、型内発泡成形時に優れた発泡性を発揮する。そして、ポリエチレンテレフタレートのような結晶性樹脂の場合、粒子状切断物は、芳香族ポリエステル系樹脂押出物の切断後に23℃~55℃の冷却水42で冷却されているので結晶化度、気泡径、及び表面の樹脂層の厚みが、機械的物性に優れた発泡成形体の製造に適したものとなる。
【0058】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、発泡力の向上及び二次発泡粒子の融着力の向上の点から、0.05g/cm3~0.7g/cm3が好ましく、0.07g/cm3~0.6g/cm3がより好ましく、0.08g/cm3~0.5g/cm3が特に好ましい。なお、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力、又は、発泡剤量などによって調整することができる。ノズル金型1のノズルの出口部11における樹脂圧力の調整は、ノズルの直径、押出量及び芳香族ポリエステル系樹脂の溶融粘度によって調整することができる。
【0059】
なお、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の嵩密度は、JIS K6911:1995年「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定されたものをいう。詳細には実施例に記載された方法で決定される。
【0060】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、結晶化度が高いと発泡成形体の耐熱性が向上するものの、二次発泡粒子の融着力が大きくならず、その結果、発泡成形体の機械的強度が向上し辛い。このため、粒子中心部における結晶化度(A)及び粒子表層部における結晶化度(B)がいずれも10%以下であることが好ましく、1~10%であることがより好ましく、2~8%であることが特に好ましい。
【0061】
発泡粒子の中心部及び表層部は次のようにして決定される。
発泡粒子を剃刀刃を用いて中心で略二等分にし、露出した断面における粒子中心から発泡粒子半径方向の20%までの範囲における部分を中心部とし、露出した断面における粒子表面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分を表層部とする。
【0062】
発泡粒子の結晶化度は、JIS K7122:1987、JIS K7122:2012に記載されている方法で決定され、詳細には実施例に記載された方法で決定される。
【0063】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の中心部における結晶化度(A)に対する表層部における結晶化度(B)の比(B/A)は、発泡力の向上又は二次発泡粒子の融着力の向上の点から、0.30~1.30であることが好ましく、0.35~1.25であることがより好ましく、0.40~1.20であることが特に好ましい。
【0064】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、発泡力の向上又は二次発泡粒子の融着力の向上の点から、その表面の樹脂層の厚みが5μm~40μmであることが好ましく、7μm~、37μmであることがより好ましい。ここで、発泡粒子表面の樹脂層の厚みは、発泡粒子の中心で略二分割した断面の表層部を走査電子顕微鏡を用いて、500倍に拡大して撮影した画像から決定され、詳細には実施例に記載された方法で決定される。
【0065】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の粒子中心部における平均気泡径(C)及び粒子表層部における平均気泡径(D)がいずれも50μm~300μmであることが、発泡力の向上又は二次発泡粒子の融着力の向上の点から好ましい。
【0066】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、中心部の気泡径より表層部の気泡径がやや小さいと、発泡が良好となり、二次発泡粒子の融着力も高くなるため、好ましい。このため、発泡粒子の中心部における平均気泡径(C)に対する表層部における平均気泡径(D)の比(D/C)は、0.75~0.95であることが好ましく、0.80~0.95であることがより好ましく、0.80~0.90であることが特に好ましい。
【0067】
本発明の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型のキャビティ内に充填して加熱し、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を発泡させることによって、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を発泡させて得られた二次発泡粒子同士をそれらの発泡圧によって互いに熱融着一体化させることで、機械的物性に優れた所望形状を有する型内発泡成形体を得ることができる。金型内に充填した芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の加熱媒体としては、特に限定されず、水蒸気の他に、熱風、温水などが挙げられる。
【0068】
本発明の芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡成形体も本発明の一つである。この発泡成形体は、本発明の発泡粒子を型内発泡成形して得られる。
【0069】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡成形体の密度は、軽量性と機械的強度の点から、0.05g/cm3~0.7g/cm3が好ましく、0.07g/cm3~0.6g/cm3がより好ましく、0.08g/cm3~0.5g/cm3が特に好ましい。
【0070】
更に、型内発泡成形直前に、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に更に不活性ガスを含浸させて、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させてもよい。このように芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子の発泡力を向上させることにより、型内発泡成形時に芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子同士の熱融着性が向上し、得られる型内発泡成形体は更に優れた機械的強度を有する。なお、前記不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられ、二酸化炭素が好ましい。
【0071】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる方法としては、例えば、常圧以上の圧力を有する不活性ガス雰囲気下に芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を置くことによって芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子中に不活性ガスを含浸させる方法が挙げられる。このような場合、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型内に充填する前に不活性ガスを含浸させてもよいが、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子を金型内に充填した後に金型ごと不活性ガス雰囲気下に置き、芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させてもよい。
【0072】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時の温度は5℃~40℃が好ましく、10℃~30℃がより好ましい。
【0073】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時の圧力は0.2~2.0MPaが好ましく、0.25MPa~1.5MPaがより好ましい。不活性ガスが二酸化炭素である場合には、0.2MPa~1.5MPaが好ましく、0.25MPa~1.2MPaがより好ましい。
【0074】
芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子に不活性ガスを含浸させる時間は、10分~72時間が好ましく、15分~64時間がより好ましく、20分~48時間が特に好ましい。
【0075】
不活性ガスを含浸させた芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子は、例えば55℃~90℃に加熱されることによって発泡(予備発泡)し、予備発泡粒子が製造される。
【0076】
発泡成形体を芯材とし、発泡成形体の表面に表皮材を積層一体化させて複合構造部材とすることができる。発泡成形体と、発泡成形体の表面に積層一体化された表皮材とを含む複合構造部材も本発明の一つとできる。複合構造部材に芯材として用いられる発泡成形体の厚みは、強度、重量、耐衝撃性の点から、1mm~40mmが好ましい。
【0077】
表皮材としては特に限定されず、例えば、繊維強化合成樹脂シート、金属シート、合成樹脂シートなどが挙げられる。表皮材は、優れた機械的強度及び軽量性を有していることから、繊維強化合成樹脂が好ましい。
【0078】
繊維強化合成樹脂シートは、繊維をマトリックス樹脂によって互いに結着してなるシートである。繊維強化合成樹脂シートを構成している繊維としては特に限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維などが挙げられる。繊維は、優れた機械的強度及び耐熱性を有していることから、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が好ましく、炭素繊維がより好ましい。
【0079】
繊維強化合成樹脂を構成しているマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂がある。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。なお、熱硬化性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABSや、アクリロニトリルとスチレンとの共重合体などが挙げられる。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0080】
繊維強化合成樹脂シートの厚みは、強度、重量及び耐衝撃性の点から0.2mm~2.0mmが好ましい。
【0081】
複合構造部材の製造方法は、特に限定されず、例えば、芯材となる発泡成形体の表面に表皮材を接着剤を用いて積層一体化する方法、繊維強化合成樹脂シートの成形で一般
的に適用される方法が挙げられる。繊維強化合成樹脂シートの成形で用いられる方法としては、例えば、オートクレーブ法、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、PCM(Prepreg Compression Molding)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、VaRTM(Vacuum assisted Resin Transfer Molding)法などが挙げられる。
【0082】
このような複合構造部材は、自動車用部材、航空機用部材、鉄道車両用部材、建築資材などの用途に有用である。自動車用部材としては、例えば、ドアパネル、ドアインナー、バンパー、フェンダー、フェンダーサポート、エンジンカバー、ルーフパネル、トランクリッド、フロアパネル、センタートンネル、クラッシュボックスなどが挙げられる。例えば、従来、鋼板で作製されていたドアパネルに複合構造部材を用いると、鋼板製ドアパネルと略同一の剛性を有するドアパネルが大きく軽量化できるため、自動車の軽量化の高い効果が得られる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例等によって本発明の一実施態様を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例等における各種物性等の特定方法を下記する。
【0084】
(嵩密度)
嵩密度は、JIS K6911:1995「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して測定した。即ち、JIS K6911に準拠した見掛け密度測定器を用いて測定した。
発泡粒子の嵩密度(g/cm3)=〔試料を入れたメスシリンダーの質量(g)-メスシリンダーの質量(g)〕/〔メスシリンダーの容量(cm3)〕
【0085】
(結晶化度)
結晶化度はJIS K7122:1987、JIS K7122:2012に記載されている方法で測定した。但し、サンプリング方法及び温度条件に関しては以下のように行った。試料は発泡粒子表層と中心から採取した。表層部の試料は、発泡粒子の中心で剃刀刃を用いて略二等分にし、発泡粒子表面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分で採取した。同様に、中心部の試料は二等分にした発泡粒子中心から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分で採取した。
5.5±0.5mgの試料をアルミニウム製測定容器の底にすきまのないよう充てん後、アルミニウム製の蓋をした。次いで(株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7000X、AS-3」示差走査熱量計を用い、示差走査熱量分析を実施した。窒素ガス流量20mL/分のもと以下のようなステップで試料を加熱しDSC曲線を得た。
(ステップ1)
30℃で2分間保持。
(ステップ2)
速度10℃/分で30℃から290℃まで昇温。その時の基準物質はアルミナを用いた。融解ピークの面積から求められる融解熱量(J/g)と結晶化ピークの面積から求められる結晶化熱量(J/g)の差を求めた。この差をポリエチレンテレフタレート完全結晶の理論融解熱量140.1J/gで除して求められる割合を結晶化度とした。融解熱量及び結晶化熱量は装置付属の解析ソフトを用いて算出した。具体的には、融解熱量は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側のベースラインへ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分から算出した。結晶化熱量は低温側のベースラインからDSC曲線が離れる点と、そのDSC曲線が再び高温側へ戻る点とを結ぶ直線と、DSC曲線に囲まれる部分の面積から算出した。つまり、結晶化度は次式より求めた。
結晶化度(%)=(融解熱量(J/g)-結晶化熱量(J/g))/140.1(J/g)×100
【0086】
(結晶化度比)
結晶化度比は次式により求めた。
結晶化度比=発泡粒子表層部の結晶化度(%)/発泡粒子中心部の結晶化度(%)
【0087】
(平均気泡径)
発泡粒子の中心部で略二分割した断面の表層部と中心部を、(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査電子顕微鏡を用いて、100倍に拡大して撮影した。発泡粒子表面から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分を表層部、同様に発泡粒子中心から発泡粒子半径方向の20%の範囲における部分を中心部とした。
撮影された顕微鏡画像は、横向きのA4用紙1枚に2画像並んだ状態になるように配置し、A4用紙に印刷した。
印刷された発泡粒子断面の画像1つにつき、タテ方向およびヨコ方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描いた。即ち、顕微鏡画像2つにつき、描いた任意の直線はタテ方向に6本、ヨコ方向に6本とした。なお、できる限り直線が気泡と接点でのみ接することのないように描いた。そしてこの直線が通過する気泡の数を数えた。気泡が直線と接点のみで接してしまう場合には、この気泡も数に加えた。タテ方向、ヨコ方向の各方向の6本の任意の直線について数えた気泡数を算術平均し、各方向の気泡数とした。気泡数を数えた画像の倍率とこの気泡数から気泡の平均弦長tを次式により算出した。
平均弦長 t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)
画像倍率は画像上のスケールバーを(株)ミツトヨ製「デジマチックキャリパ」にて1/100mmまで計測し、次式により求めた。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)
そして次式によりタテ方向及びヨコ方向における気泡径を算出した。
タテ方向又はヨコ方向の気泡径D(mm)=t/0.616
さらにタテ方向の気泡径D及びヨコ方向の気泡径Dの積の2乗根を気泡径とした。
気泡径(μm)=1000×(Dタテ×Dヨコ)1/2
以上の作業を表層部、中心部でそれぞれN数10で行い、平均値を平均気泡径とした。
【0088】
(平均気泡径比)
平均気泡径比は次式により求めた。
平均気泡径比=発泡粒子表層部の平均気泡径(μm)/発泡粒子中心部の平均気泡径(μm)
【0089】
(表面樹脂の厚み)
発泡粒子の中心で略二分割した断面の表層部を、(株)日立ハイテクノロジーズ製「SU1510」走査電子顕微鏡を用いて、500倍に拡大して撮影した。顕微鏡画像の発泡粒子表面の任意の位置で、接線に直行する直線を発泡粒半径方向に5本描き、各直線ごとに表面から最初に接する気泡までの距離を測定した。即ち、一つの断面画像につき5つの当該距離を測定した。以上の作業をそれぞれN数10で行い、平均値を表面樹脂の厚み(μm)とした。
【0090】
(成形性評価)
成形性評価は以下の基準で行った。
○:発泡粒子同士が熱融着して強固に接着し、一体化していた
×:発泡粒子同士が接着しておらず、容易に発泡粒子が脱落する状態であった
【0091】
(発泡成形体の密度)
発泡成形体(成形後、55℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した直方体状の試験片(例;75mm×300mm×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求めた。
【0092】
(曲げ試験:最大曲げ強度及び曲げ弾性率)
最大曲げ強度、曲げ弾性率はJIS K7221-1:2006に準拠し測定した。すなわち、最大曲げ強度は(株)島津製作所製「オートグラフAG-X plus 100kN」万能試験機、及び(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理ソフトを用いて測定した。試験片として発泡成形体(成形後、55℃で20時間以上乾燥させたもの)から幅25mm×長さ130mm×厚さ20mmを切り出した。試験片の数は5個とした。試験片はJIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調節した後、同じ標準雰囲気下での測定に用いた。試験速度は10mm/分とした。加圧くさびおよび支点の先端部の半径は5Rとし、支点間距離は100mmとした。得られたグラフより、傾きが最大となる荷重領域を設定し、前記万能試験機データ処理にて見かけ曲げ弾性率を求めた。この弾性率の直線とストロークの交点を伸びの原点とし、対応する最大曲げ強度を自動算出した。
【0093】
(圧縮試験:5%圧縮強度及び圧縮弾性率)
5%圧縮強度及び圧縮弾性率は、JIS K6767:1999に準拠し測定した。すなわち5%圧縮強度は、(株)島津製作所製「オートグラフ AG-X plus 100kN」万能試験機、及び(株)島津製作所製「TRAPEZIUM X」万能試験機データ処理ソフトを用いて測定した。試験片サイズは50mm×50mm×厚み25mmとし、試験片の数は3個とした。試験片は、JIS K 7100:1999の記号「23/50」(温度23℃、相対湿度50%)、2級の標準雰囲気下で16時間かけて状態調節した後、同じ標準雰囲気下での測定に用いた。圧縮速度を2.5mm/分とした。得られたグラフより、傾きが最大となる荷重領域を設定し、前記万能試験機データ処理ソフトにて圧縮弾性率を求めた。この弾性率の直線とストロークの交点を伸びの原点とし、5%圧縮率における圧縮強度を自動算出した。
【0094】
(成形品の機械的物性の評価)
成形品の機械的物性評価は、下記の基準によって評価した。
○:曲げ最大強度が1.20MPa以上、且つ5%圧縮強度が0.70MPa以上。
×:曲げ最大強度が1.20MPa未満、又は5%圧縮強度が0.70MPa未満。
【0095】
(実施例1)
(発泡粒子製造工程)
図1及び
図2に示した製造装置を用いて発泡粒子を製造した。先ず、植物由来ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.80、密度:1400kg/m
3、融点:247.2℃、ガラス転移温度78.7℃、質量平均分子量7.4万、植物度:30%)100質量部、ポリエチレンテレフタレートにタルクを含有させてなるマスターバッチ(ポリエチレンテレフタレート含有量:60重量%、タルク含有量:40重量%、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度:0.82)1.8質量部、及び無水ピロメリット酸0.22質量部を含むポリエチレンテレフタレート組成物を口径が65mmで且つL/D比が34の単軸押出機に供給して300℃にて溶融混練した。
続いて、この押出機の途中から、発泡剤としてイソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%からなるブタンをポリエチレンテレフタレート100質量部に対して1.15質量部となる量で溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物に圧入して、ポリエチレンテレフタレート中に均一に分散させた。
【0096】
しかる後、押出機の前端部において、溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物を280℃に冷却した後、押出機の前端に取り付けたマルチノズル金型1の各ノズルからポリエチレンテレフタレート組成物を押出発泡させた。ポリエチレンテレフタレート組成物の押出量を30kg/hとした。
なお、マルチノズル金型1は、出口部11の直径が1mmのノズルを20個有しており、ノズルの出口部11は全て、マルチノズル金型1の前端面1aに想定した、直径が139.5mmの仮想円A上に等間隔毎に配設されていた。
そして、回転軸2の後端部外周面には、2枚の回転刃5が回転軸2の周方向に180°の位相差でもって一体的に設けられており、各回転刃5はマルチノズル金型1の前端面1aに常時、接触した状態で仮想円A上を移動するように構成されていた。
更に、冷却部材4は、正面円形状の前部41aと、この前部41aの外周縁から後方に向かって延設され且つ内径が320mmの円筒状の周壁部41bとからなる冷却ドラム41を備えていた。そして、供給管41d及び冷却ドラム41の供給口41cを通じて冷却ドラム41内に25℃の冷却水42が供給されていた。冷却ドラム41内の容積は17684cm3であった。
【0097】
冷却水42は、供給管41dから冷却ドラム41の周壁部41bの内周面に供給される際の流速に伴う遠心力によって、冷却ドラム41の周壁部41b内周面に沿って螺旋状を描くように前方に向かって進んでおり、冷却水42は、周壁部41bの内周面に沿って進行中に、徐々に進行方向に直交する方向に広がり、その結果、冷却ドラム41の供給口41cより前方の周壁部41bの内周面は冷却水42によって全面的に被覆された状態となっていた。
そして、マルチノズル金型1の前端面1aに配設した回転刃5を3200rpmの回転数で回転させてあり、マルチノズル金型1の各ノズルの出口部11から押出発泡されたポリエチレンテレフタレート押出物を回転刃5によって切断して略球状の粒子状切断物を製造した。ポリエチレンテレフタレート押出物は、マルチノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなっていた。そして、ポリエチレンテレフタレート押出物は、ノズルの出口部11の開口端において切断されており、ポリエチレンテレフタレート押出物の切断は未発泡部において行われていた。
【0098】
なお、上述のポリエチレンテレフタレート発泡粒子の製造にあたっては、先ず、マルチノズル金型1に回転軸2を取り付けず且つ冷却部材4をマルチノズル金型1から退避させておいた。この状態で、押出機からポリエチレンテレフタレート押出物を押出発泡させ、ポリエチレンテレフタレート押出物が、マルチノズル金型1のノズルから押出された直後の未発泡部と、この未発泡部に連続する発泡途上の発泡部とからなることを確認した。次に、マルチノズル金型1に回転軸2を取り付け且つ冷却部材4を所定位置に配設した後、回転軸2を回転させ、ポリエチレンテレフタレート押出物をノズルの出口部11の開口端において回転刃5で切断して粒子状切断物を製造した。
この粒子状切断物は、回転刃5による切断応力によって外方或いは前方に向かって飛ばされ、冷却部材4の冷却ドラム41の内面に沿って流れている冷却水42にこの冷却水42の流れの上流側から下流側に向かって冷却水42を追うように冷却水42の表面に対して斜交する方向から衝突し、粒子状切断物は冷却水42中に進入して直ちに冷却され、型内発泡成形用ポリエチレンテレフタレート発泡粒子が製造された。
得られたポリエチレンテレフタレート発泡粒子は、冷却ドラム41の排出口41eを通じて冷却水42と共に排出された後、脱水機にて冷却水42と分離された。
【0099】
(成形工程)
得られたポリエチレンテレフタレート発泡粒子を製造直後から23℃、大気圧下にて30日間に亘って放置した。その後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.05MPaの水蒸気にて180秒間、0.10MPaの水蒸気にて30秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0100】
(実施例2)
ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.82、密度:1400kg/m3、融点:248.0℃、ガラス転移温度78.7℃、質量平均分子量7.2万)95重量%、ポリエチレンナフタレート(密度:1330kg/m3、融点:264.2℃、ガラス転移温度119.8℃)5重量%を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂100質量部、ポリエチレンテレフタレートにタルクを含有させてなるマスターバッチ(ポリエチレンテレフタレート含有量:60重量%、タルク含有量:40重量%、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度:0.82)1.8質量部、及び無水ピロメリット酸0.24質量部を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0101】
(実施例3)
回収ポリエチレンテレフタレート(固有粘度:0.80、密度:1400kg/m3、融点:248.3℃、ガラス転移温度78.9℃、質量平均分子量7.8万)95重量%、ポリエチレンナフタレート(密度:1330kg/m3、融点:264.2℃、ガラス転移温度119.8℃)5重量%を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂100質量部、ポリエチレンテレフタレートにタルクを含有させてなるマスターバッチ(ポリエチレンテレフタレート含有量:60重量%、タルク含有量:40重量%、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度:0.82)0.5質量部、ポリエチレンテレフタレートにカーボンブラックを含有させてなるマスターバッチ(ポリエチレンテレフタレート含有量:70重量%、カーボンブラック含有量:30重量%、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度:0.82)3.3質量部、及び無水ピロメリット酸0.26質量部を含む熱可塑性ポリエステル系樹脂組成物を使用したこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0102】
(実施例4)
(発泡粒子製造工程)
押出機の途中から、二酸化炭素をポリエチレンテレフタレート100質量部に対して0.3質量部となる量で溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物に圧入して、ポリエチレンテレフタレート中に均一に分散させたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。
【0103】
(成形工程)
得られたポリエチレンテレフタレート発泡粒子を製造直後から23℃、大気圧下にて1日間に亘って放置した後、圧力容器中に密閉し、圧力容器内に圧縮空気を0.5MPa(ゲージ圧)まで圧入した。圧力容器内温度を20℃として静置し、加圧養生を24時間実施した。取り出し後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.05MPaの水蒸気にて180秒間、0.10MPaの水蒸気にて30秒間加熱を行い、次いで、発泡成形体の最高面圧が0.01MPaに低下するまで冷却することで、発泡成形体を得た。
【0104】
(実施例5)
冷却水の温度を45℃にしたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0105】
(比較例1)
冷却水の温度を60℃にしたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0106】
(比較例2)
冷却水の温度を10℃にしたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0107】
(比較例3)
冷却水の温度を20℃にしたこと以外は実施例1と同様にして発泡粒子及び発泡成形体を得た。
【0108】
(比較例4)
(発泡粒子製造工程)
ダイバータバルブを有し、直径2.0mm、ランド長2.0mmのダイス孔を5個備えたダイスを有し、前記ダイバータバルブの機外排出側の樹脂流路を通じて押出機からダイに供給される溶融ポリエチレンテレフタレート樹脂を機外に排出させるようにダイバータバルブをセットした水中カット式造粒機を用いた。また、前記ダイスを取り付ける押出機として、口径65mmで且つL/D比が34の単軸押出機が備えられた水中カット式造粒機を用いた。
まず、前記ダイスのダイス孔部分の温度が300℃となるようにヒーターによる温度調整を実施するとともに押出機の温度調整を実施した。具体的には、上流側の押出機を下流側の押出機に比べて高温にセットして発泡剤の溶解性を高めた状態にし、最終的に前記ダイスに290℃の樹脂温度で溶融樹脂が供給されるように押出機の温度設定を行った。
この押出機に、実施例1で使用したと同じポリエチレンテレフタレート組成物を、30kg/hの割合で供給し、溶融混練した。
その後、発泡剤としてイソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%からなるブタンをポリエチレンテレフタレート100質量部に対して3.0質量部となる量で押出機に圧入し、溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物を溶融混練して前記ダイスに供給し、前記ダイバータバルブの樹脂流路を通じて機外に排出させた。
【0109】
押出機の温度、発泡剤の圧力等が安定した段階で、ダイスの前方に装着させたチャンバー内でカッターを運転させ、前記ダイバータバルブにより溶融ポリエチレンテレフタレート組成物の流路を切り替えるとともに前記チャンバーに0.3MPaの水圧を有する80℃の循環水を12m3/hで循環させて造粒を開始した。
循環水中に発泡しながら押し出された溶融ポリエチレンテレフタレート押出物を回転刃で切断して発泡粒子を製造した。この粒子状切断物は循環水中で発泡し、ポリエチレンテレフタレート発泡粒子が製造された。発泡粒子を含む循環水は、チャンバーから遠心乾燥機に運ばれ、そこで発泡粒子から水を除去した。
【0110】
(成形工程)
得られたポリエチレンテレフタレート発泡粒子を製造直後から23℃、大気圧下にて30日間に亘って放置した。その後、30mm×300mm×400mmの成形用金型に充填し、0.05MPaの水蒸気にて180秒間、0.10MPaの水蒸気にて30秒間加熱を行ったが、成形不可であった。
【0111】
(比較例5)
(発泡粒子製造工程)
発泡剤としてイソブタン35重量%及びノルマルブタン65重量%からなるブタンをポリエチレンテレフタレート100質量部に対して2.2質量部となる量で溶融状態のポリエチレンテレフタレート組成物に圧入して、ポリエチレンテレフタレート中に均一に分散させたこと以外は比較例4と同様にして発泡粒子を得た。
(成形工程)
比較例4と同様にして成形工程を行ったが、成形不可であった。
【0112】
上記実施例及び比較例で得られた発泡粒子の断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を
図4~
図7に示す。また、上記実施例及び比較例で得られた発泡粒子及び発泡成形体について測定された物性を表1及び表2に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
比較例1の発泡粒子の結晶化度比が大きかったことにより二次発泡性が悪く、発泡成形体の機械的特性が低かったと推測された。また、比較例2及び3の発泡粒子の結晶化度比が小さかったことにより二次発泡性が悪く、発泡成形体の機械的特性が低かったと推測された。さらに、比較例4及び5の発泡粒子の中心部及び表層部の結晶化度が大きいこと、さらには、結晶化度比も大きかったことにより、二次発泡性が非常に悪く、発泡成形できなかったと推測された。
【0116】
さらに、比較例1の発泡粒子の表面の樹脂層が薄かった(断面写真)。これは冷却水温が60℃と高いためと推測された。比較例2、3の発泡粒子の表面の樹脂層が厚かった(断面写真)。これは冷却水温がそれぞれ10℃、20℃と低いためと推測された。比較例4及び5の発泡粒子の表面の樹脂層が厚かった(断面写真)。これは水中カット方式では発泡粒子が急速に冷却されるためと推測された。
【0117】
一方、実施例1~5の発泡粒子から得られた発泡成形体は曲げ試験及び圧縮試験のいずれでも比較例より優れた物性を示した。これはウォータリングホットカット方式において冷却水温を適度な範囲に設定することによって、発泡粒子の中心部と表層部の結晶化度を適切な範囲とできたため、及び/又は、表面の樹脂層の厚みが適切に調整されたためと推測された。
【0118】
実施例1~3では、芳香族ポリエステル系樹脂が植物由来品、石油由来品、リサイクル品であっても本発明の発泡粒子及び発泡成形体が得られた。実施例4では、発泡剤が無機系ガスであっても本発明の発泡粒子及び発泡成形体が得られた。
【符号の説明】
【0119】
1 ノズル金型
2 回転軸
3 駆動部材
4 冷却部材
41 冷却ドラム
42 冷却水
5 回転刃
P 型内発泡成形用芳香族ポリエステル系樹脂発泡粒子