(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】コエンザイムQ10含有組成物、コエンザイムQ10含有錠剤、コエンザイムQ10の安定化方法、コエンザイムQ10安定化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/122 20060101AFI20241202BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20241202BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20241202BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20241202BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20241202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
A61K31/122
A61K47/36
A61K47/02
A61K47/04
A61K9/20
A61P43/00 105
(21)【出願番号】P 2021044636
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】阿部 里実
(72)【発明者】
【氏名】山上 隼平
(72)【発明者】
【氏名】清水 篤史
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-104934(JP,A)
【文献】特開昭56-145214(JP,A)
【文献】特開2006-320311(JP,A)
【文献】特開2011-046666(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105213283(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105310894(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102533908(CN,A)
【文献】特開2020-158410(JP,A)
【文献】特開2020-180093(JP,A)
【文献】特開2010-059060(JP,A)
【文献】特開2020-011927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムQ10、多孔質デンプン、及びカルシウム又はマグネシウムを含有することを特徴とする、コエンザイムQ10含有組成物。
【請求項2】
微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を含有することを特徴とする、請求項1に記載のコエンザイムQ10含有組成物。
【請求項3】
前記微粒多孔質物質は、微粒二酸化ケイ素であることを特徴とする、請求項2に記載のコエンザイムQ10含有組成物。
【請求項4】
前記カルシウム又はマグネシウムは、ドロマイト、貝殻から選ばれる1種又は2種を由来とすることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコエンザイムQ10含有組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のコエンザイムQ10含有組成物を含有することを特徴とする、コエンザイムQ10含有錠剤。
【請求項6】
コエンザイムQ10、及びカルシウム又はマグネシウムを含有する組成物中のコエンザイムQ10を安定化する方法であって、
コエンザイムQ10、及びカルシウム又はマグネシウムを含有する組成物に多孔質デンプンを添加することを特徴とする、コエンザイムQ10の安定化方法。
【請求項7】
微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を添加することを特徴とする、請求項6に記載のコエンザイムQ10の安定化方法。
【請求項8】
前記微粒多孔質物質は、微粒二酸化ケイ素であることを特徴とする、請求項6又は7に記載のコエンザイムQ10の安定化方法。
【請求項9】
前記カルシウム又はマグネシウムは、ドロマイト、貝殻から選ばれる1種又は2種を由来とすることを特徴とする、請求項6~8のいずれか一項に記載のコエンザイムQ10の安定化方法。
【請求項10】
コエンザイムQ10、及びカルシウム又はマグネシウムを含有する組成物中のコエンザイムQ10を安定化するためのコエンザイムQ10安定化組成物であって、
多孔質デンプンを含有することを特徴とする、コエンザイムQ10安定化組成物。
【請求項11】
微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を含有することを特徴とする、請求項10に記載のコエンザイムQ10安定化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コエンザイムQ10含有組成物、コエンザイムQ10含有錠剤、コエンザイムQ10の安定化方法、及びコエンザイムQ10安定化組成物に関する。より詳しくは、医薬品、健康食品などの分野で用いるコエンザイムQ10含有組成物、コエンザイムQ10含有錠剤、コエンザイムQ10の安定化方法、及びコエンザイムQ10安定化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コエンザイムQ10は、CoQ10、補酵素Q、ユビキノン、ユビデカレノンなどと呼ばれ、高等生物に存在する補酵素の1種である。また、コエンザイムQ10は、補酵素としての機能だけではなく、生体の酸素利用効率を改善させる作用、フリーラジカルを捕捉する作用などを有し、種々の健康機能に関与するとされている。コエンザイムQ10の臨床的効果としては、狭心症や心筋梗塞などの心血管疾患、筋ジストロフィーなどの症状改善、高血圧、動脈硬化、糖尿病、歯周病などの予防や治療、制癌剤や向精神薬の副作用の予防などが報告されている。また、コエンザイムQ10が酸素利用効率を改善することから、疲労回復、運動機能回復、体重減少のための健康食品、サプリメントとしても利用されている。このようにコエンザイムQ10は高い生理活性を有しつつ、生体内に存在することから、安全性の高い有効成分として有用な物質である。
【0003】
一方、カルシウムは、骨や歯の主要成分となるだけでなく、細胞分裂、細胞分化、筋肉収縮、神経機能、血液凝固作用などに関与している。また、マグネシウムは、補酵素として、神経機能、筋肉の収縮、ホルモン分泌、体温調節など代謝機構全般に関わっている。近年、カルシウムやマグネシウムの摂取量は、食生活の変化などから不足する傾向にあり、健康食品、サプリメントなどで補うことが多くなっている。
【0004】
健康食品、サプリメントなどの分野では、コエンザイムQ10だけでなく、カルシウム、マグネシウムを配合した食品などが商品化されている。しかし、コエンザイムQ10は、ミネラル類としてカルシウムやマグネシウムと混合すると不安定になることが明らかとなっている。そこで、カルシウムやマグネシウムを含有し、かつコエンザイムQ10の安定性を改善した食品などが検討されている。安定なコエンザイムQ10、カルシウム、マグネシウムを含有する食品としては、例えば、特許文献1には、造粒物やマイクロカプセル封入物の形態であるコエンザイムQ10、カルシウム、マグネシウムを含有する錠剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の食品は、コエンザイムQ10の安定性を改善するために、コエンザイムQ10とカルシウム、マグネシウムを別個の造粒物やマイクロカプセル封入物とした後に、それらを混合して錠剤やカプセル剤、顆粒剤としたものである。この製造方法では、コエンザイムQ10とカルシウム、マグネシウムを一度に混合することができず、製造工程の増加により製造効率や品質の低下が懸念される。そのため、カルシウム、マグネシウムの存在下でも、コエンザイムQ10を安定化する簡便な方法が望まれている。
本発明の課題は、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善する組成物やコエンザイムQ10の安定化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題について鋭意検討した結果、コエンザイムQ10、カルシウム、マグネシウムを含有する組成物に多孔質デンプンを配合することによって、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善することができるという知見に至り、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]を提供する。
[1]コエンザイムQ10、多孔質デンプン、及びカルシウム又はマグネシウムを含有することを特徴とする、コエンザイムQ10含有組成物。
このコエンザイムQ10含有組成物によれば、多孔質デンプンの作用により、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善した組成物とすることができる。
[2]微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を含有することを特徴とする、[1]に記載のコエンザイムQ10含有組成物。
この特徴によれば、多孔質デンプンに加えて、微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を含有することにより、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化をより改善することができる。
[3]前記微粒多孔質物質は、微粒二酸化ケイ素であることを特徴とする、[2]に記載のコエンザイムQ10含有組成物。
この特徴によれば、微粒二酸化ケイ素を含有することにより、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化をより改善することができる。
[4]前記カルシウム又はマグネシウムは、ドロマイト、貝殻から選ばれる1種又は2種を由来とすることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載のコエンザイムQ10含有組成物。
この特徴によれば、ドロマイトや貝殻由来のカルシウム、マグネシウムを用いることにより、安全性の高い組成物を提供することができる。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載のコエンザイムQ10含有組成物を含有することを特徴とする、コエンザイムQ10含有錠剤。
この錠剤によれば、多孔質デンプンの作用により、安定なコエンザイムQ10、カルシウム、マグネシウムを含有することができる。
[6]コエンザイムQ10、及びカルシウム又はマグネシウムを含有する組成物中のコエンザイムQ10を安定化する方法であって、
コエンザイムQ10、及びカルシウム又はマグネシウムを含有する組成物に多孔質デンプンを添加することを特徴とする、コエンザイムQ10の安定化方法。
このコエンザイムQ10を安定化するための方法によれば、多孔質デンプンの作用により、コエンザイムQ10、及びカルシウム、マグネシウムを含有する組成物中のコエンザイムQ10の安定性を向上させることができる。
[7]微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を添加することを特徴とする、[6]に記載のコエンザイムQ10の安定化方法。
このコエンザイムQ10の安定化方法によれば、多孔質デンプンに加えて、微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を添加することにより、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善することができる。
[8]前記微粒多孔質物質は、微粒二酸化ケイ素であることを特徴とする、[6]又は[7]に記載のコエンザイムQ10の安定化方法。
このコエンザイムQ10の安定化方法によれば、多孔質デンプンに加えて、微粒二酸化ケイ素を添加することにより、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善することができる。
[9]前記カルシウム又はマグネシウムは、ドロマイト、貝殻から選ばれる1種又は2種を由来とすることを特徴とする、[6]~[8]のいずれか一項に記載のコエンザイムQ10の安定化方法。
このコエンザイムQ10を安定化するための方法によれば、ドロマイトや貝殻由来のカルシウム、マグネシウムを用いることにより、安全性の高い組成物を提供することができる。
[10]コエンザイムQ10、及びカルシウム又はマグネシウムを含有する組成物中のコエンザイムQ10を安定化するためのコエンザイムQ10安定化組成物であって、
多孔質デンプンを含有することを特徴とする、コエンザイムQ10安定化組成物。
このコエンザイムQ10安定化組成物によれば、多孔質デンプンの作用により、コエンザイムQ10、及びカルシウム、マグネシウムを含有する組成物中のコエンザイムQ10の安定性を向上させることができる。
[11]微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を含有することを特徴とする、[10]に記載のコエンザイムQ10安定化組成物。
このコエンザイムQ10の安定化組成物によれば、多孔質デンプンに加えて、微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)を添加することにより、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善する組成物やコエンザイムQ10の安定化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のカルシウム含有錠剤におけるコエンザイムQ10の残存率について示す図である。
【
図2】本発明のカルシウム及びマグネシウム含有錠剤におけるコエンザイムQ10の残存率について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のコエンザイムQ10含有組成物、コエンザイムQ10含有錠剤、コエンザイムQ10の安定化方法について説明する。
なお、実施形態に記載するコエンザイムQ10含有組成物、コエンザイムQ10含有錠剤、コエンザイムQ10の安定化方法については、本発明を説明するために例示したに過ぎず、これに制限されるものではない。
【0012】
[コエンザイムQ10含有組成物]
本発明のコエンザイムQ10含有組成物は、コエンザイムQ10、多孔質デンプン、カルシウム、マグネシウムを含有するコエンザイムQ10含有組成物である。
まず、コエンザイムQ10含有組成物を構成する各成分について、詳細に説明する。なお、各成分の含有量について、特に断りがない場合はコエンザイムQ10含有組成物における含有量を示す。
【0013】
(コエンザイムQ10)
コエンザイムQ10は、ベンゾキノン構造を有し、補酵素としての生理活性を奏するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、酸化型コエンザイムQ10(ユビキノン)、還元型コエンザイムQ10(ユビキノール)、コエンザイムQ10誘導体などが挙げられる。
コエンザイムQ10の具体例としては、例えば、商品名「コエンザイムQ10パウダー50」(三菱ケミカルフーズ株式会社製)などが挙げられる。
コエンザイムQ10誘導体の具体例としては、例えば、乳化処理や水溶化処理によりコエンザイムQ10の水可溶性、生体吸収性、生体安定性などを向上させたもの、コエンザイムQ10のリン酸化合物などが挙げられる。また、これらのコエンザイムQ10は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0014】
コエンザイムQ10の含有量は、特に制限されるものではなく、例えば、0.05質量%以上2.0質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下である。
コエンザイムQ10の含有量を上記範囲とすることで、コエンザイムQ10の生理作用を十分に発揮することができる。
【0015】
(多孔質デンプン)
多孔質デンプンは、デンプンの粒子に酵素又は酸を作用させることにより、粒子の表面に無数の微細孔を形成させたものである。デンプン粒子の由来としては、特に制限されないが、例えば、とうもろこし、馬鈴薯、甘薯、タピオカ、サゴ、小麦等が挙げられる。これらの中でも、平均粒子径を小さくするという観点から、とうもろこし、タピオカ、サゴ、小麦が好ましく、とうもろこしがより好ましい。
多孔質デンプンの具体例としては、例えば、商品名「ロンフードOWP」(平均粒子径15μm、日澱化学社製)などが挙げられる。
【0016】
本発明のコエンザイムQ10含有組成物は、多孔質デンプンを含有することにより、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善することができる。コエンザイムQ10を安定化するメカニズムとしては、コエンザイムQ10が多孔質デンプンの孔質中に入り込むことで、カルシウムやマグネシウムなどのアルカリとの接触が抑制される、又は多孔質デンプンにより、組成物内の水分活性が抑制され、コエンザイムQ10とアルカリとの反応が抑制されることが考えられる。
【0017】
本発明に用いられる多孔質デンプンはデキストロース当量で、例えば、2以下である。好ましくは、コエンザイムQ10に対する安定性効果の観点から、1.5以下であり、より好ましくは1以下である。デキストロース当量(Dextrose Equivalent値)とは、デンプンの分解度を示す指標であり、グルコースを100としたときの試料の還元力を固形分あたりで表したものである。デキストロース当量は公定法であるレイン・エイノン法(「澱粉糖関連工業分析法」(澱粉糖技術部会編))により測定することができる。デキストロース当量の値は、分解されていないデンプンほど0に近い値を示す。
【0018】
多孔質デンプンの平均粒子径は、特に制限されるものではなく、例えば、500μm以下である。上限値としては、コエンザイムQ10対する安定性効果の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、更に好ましくは50μm以下、より更に好ましくは25μm以下である。下限値としては、入手の容易さの観点から、好ましくは1μm以上である。
なお、多孔質デンプンの平均粒子径はレーザー回折装置にて測定することができる。レーザー回折装置としては、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所)等が挙げられる。
【0019】
多孔質デンプンの含有量は、特に制限されるものではなく、例えば、5質量%以上99質量%以下である。下限値としては、コエンザイムQ10に対する安定性効果の観点から好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上である。一方、上限値としては、コエンザイムQ10含有組成物の組成の自由度の観点から、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
また、カルシウム、マグネシウムの含有量に対する多孔質デンプンの含有量の質量比(多孔質デンプンの含有量/カルシウム、マグネシウムの含有量)は、特に制限されるものではなく、例えば、0.2以上である。下限値としては、好ましくは0.5以上、より好ましくは2以上である。一方、上限値としては、好ましくは100以下であり、より好ましくは80以下であり、更に好ましくは60以下である。
多孔質デンプンの含有量を上記範囲とすることで、コエンザイムQ10に対する安定性効果を更に発揮することができる。
【0020】
また、コエンザイムQ10の含有量に対する多孔質デンプンの含有量の質量比(多孔質デンプンの含有量/コエンザイムQ10の含有量)は、特に制限されるものではなく、例えば、10~5000である。下限値としては、コエンザイムQ10に対する安定性効果の観点から、好ましくは50以上であり、より好ましくは100以上である。上限値としては、コエンザイムQ10の配合量の観点から、好ましくは1000以下であり、より好ましくは500以下である。
【0021】
(カルシウム、マグネシウム)
カルシウム、マグネシウムは、生体必須ミネラルであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、塩化物、炭酸化物、硫酸化物、水酸化物、リン酸化物などの化学合成したカルシウム化合物やマグネシウム化合物、天然物由来のカルシウムやマグネシウムなどが挙げられる。好ましいカルシウム、マグネシウムとしては、安全性の観点から、天然物由来のカルシウム、マグネシウムである。
カルシウムの具体例としては、例えば、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウムなどが挙げられる。
天然物由来のカルシウムの具体例としては、例えば、ホタテ貝殻やカキ貝殻などの貝殻由来のカルシウム、ドロマイト、卵殻カルシウム、珊瑚カルシウム、ウニ殻カルシウム、石化海藻カルシウム、真珠カルシウム、牛骨カルシウム、魚骨粉カルシウム、魚鱗片カルシウム、海水カルシウムなどが挙げられる。これらの天然物由来のカルシウムは、焼成カルシウムであっても未焼成カルシウムであってもよい。
マグネシウムの具体例としては、例えば、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、L-グルタミン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。
天然物由来のマグネシウムの具体例としては、例えば、ドロマイト、珊瑚マグネシウム、ウニ殻マグネシウム、海藻マグネシウム、酵母マグネシウム、苦汁(にがり)、海水マグネシウム、穀類果皮マグネシウムなどが挙げられる。これらの天然物由来のマグネシウムは、焼成マグネシウムであっても未焼成マグネシウムであってもよい。また、これらのカルシウム、マグネシウムは、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0022】
カルシウムの含有量(カルシウム元素の含有量)は、特に制限されるものではなく、例えば、1.5質量%以上20質量%以下である。下限値としては、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは2.2質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
マグネシウムの含有量(マグネシウム元素の含有量)は、特に制限されるものではなく、例えば、2質量%以上15質量%以下である。下限値としては、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは4質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは9質量%以下である。なお、カルシウム、マグネシウムの含有量は、組成物や錠剤などの成分量を分析することにより求めてもよいし、カルシウムやマグネシウムの供給源の組成物や錠剤などにおける配合量から算出してもよい。
カルシウム、マグネシウムの含有量を上記範囲とすることで、コエンザイムQ10に対する多孔質デンプンの安定性効果を更に発揮することができる。
【0023】
(微粒多孔質物質)
本発明のコエンザイムQ10含有組成物は、さらに微粒多孔質物質を含有することが好ましい。微粒多孔質物質は、多孔質デンプン以外の無数の空孔を有する微粒子であり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、微粒二酸化ケイ素、活性炭、微結晶セルロースなどが挙げられる。また、これらの微粒二酸化ケイ素は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
微粒二酸化ケイ素は、二酸化ケイ素、シリカゲル、フュームドシリカを微粉末化したものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ケイ酸ソーダを硫酸で直接分解する湿式法により作製される微粒二酸化ケイ素、四塩化ケイ素の酸水素焔中で高温加水分解する気相法により作製される微粒二酸化ケイ素などが挙げられる。
微粒二酸化ケイ素の具体例としては、例えば、商品名「サイロページ720」(富士シリシア化学株式会社製;平均粒子径2.9μm)などが挙げられる。また、これらの微粒二酸化ケイ素は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0024】
微粒多孔質物質の平均粒子径は、特に制限されるものではなく、例えば、50μm以下である。上限値としては、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10μm以下である。
微粒多孔質物質の平均粒子径を上記範囲とすることで、コエンザイムQ10に対する安定性効果を更に発揮することができる。
なお、微粒多孔質物質の平均粒子径はレーザー回折装置にて測定することができる。レーザー回折装置としては、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(株式会社堀場製作所)等が挙げられる。
【0025】
微粒多孔質物質の含有量は、特に制限されるものではなく、例えば、0.1質量%以上3.5質量%以下である。下限値としては、より好ましくは0.3質量%以上、更に好ましくは0.4質量%以上である。一方、上限値としては、より好ましくは3.0質量%以下、更に好ましくは2.7質量%以下である。
【0026】
また、多孔質デンプンの含有量に対する微粒多孔質物質の含有量の質量比(微粒多孔質物質の含有量/多孔質デンプンの含有量)は、特に制限されるものではなく、例えば、0.005以上である。下限値としては、コエンザイムQ10に対する安定性効果をより向上する観点から、好ましくは0.008以上、より好ましくは0.0012以上である。
【0027】
また、カルシウム、マグネシウムの含有量に対する微粒多孔質物質の含有量の質量比は、特に制限されるものではなく、例えば、0.002以上3.0以下である。下限値としては、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.015以上である。一方、上限値としては、より好ましくは2.7以下、更に好ましくは2.6以下である。
微粒多孔質物質の含有量を上記範囲とすることで、コエンザイムQ10に対する安定性効果を更に発揮することができる。
【0028】
(コエンザイムQ10含有組成物の形態)
コエンザイムQ10含有組成物の形態は、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠、チュアブル錠などの錠剤、丸剤、散剤、ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤などの液剤、トローチ剤、加工食品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、病者向け食品(病院食、病人食、介護食など)、菓子、油脂類、乳製品、レトルト食品、レンジ食品、冷凍食品、調味料、健康補助食品、飲料、栄養ドリンクなどが挙げられる。
【0029】
[コエンザイムQ10含有錠剤]
本発明のコエンザイムQ10含有錠剤は、コエンザイムQ10、多孔質デンプン、カルシウム、マグネシウムを含有する錠剤である。更に微粒多孔質物質を含有することが好ましく、微粒二酸化ケイ素を含有することがより好ましい。
まず、コエンザイムQ10含有錠剤を構成する各成分について、詳細に説明する。なお、各成分の含有量について、特に断りがない場合はコエンザイムQ10含有錠剤の含有量を示す。
なお、コエンザイムQ10含有錠剤を構成するコエンザイムQ10、多孔質デンプン、カルシウム、マグネシウム、微粒多孔質物質(前記多孔質デンプンを除く。)については、上記本発明のコエンザイムQ10含有組成物と同様でもよい。また、コエンザイムQ10含有錠剤におけるコエンザイムQ10、多孔質デンプン、カルシウム、マグネシウム、微粒多孔質物質の含有量は、上記[コエンザイムQ10含有組成物]における(コエンザイムQ10)、(多孔質デンプン)、(カルシウム、マグネシウム)(微粒多孔質物質)の項の記載におけるコエンザイムQ10含有組成物をコエンザイムQ10含有錠剤に置き換え、その説明を充足するものであればよい。
【0030】
(その他の成分)
本発明におけるコエンザイムQ10含有錠剤は、コエンザイムQ10、多孔質デンプン、カルシウム、マグネシウム、微粒多孔質物質以外に、必要に応じて有効成分、添加剤を含有してもよい。添加剤の具体例としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、保存剤、着色剤などが挙げられる。
【0031】
有効成分は、効能、効果を発揮するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、医薬品、医薬部外品、OTC医薬品、漢方薬、生薬、化粧品、化粧料、健康食品、サプリメント、動物用薬品、飼料などに用いられる医薬成分、機能性成分などが挙げられる。
医薬成分、機能性成分の具体例としては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、葉酸、ビオチン、ナイアシン、パントテン酸、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン、クロム、モリブデン、ポリグルタミン酸、藤茶ポリフェノール、脂質調整剤、抗糖尿病剤、食欲抑制剤、降圧剤、血管拡張剤、βアドレナリン受容体遮断薬、強心イオンチャンネル剤、不整脈治療剤、抗凝血剤、中枢神経機能改善剤、交感神経刺激剤、副交感神経刺激剤、抗ムスカリン様作動剤、ドーパミン作動剤、精神安定剤、抗鬱剤、抗癲癇剤、抗不安剤、催眠剤、覚醒剤、動物由来物質、植物由来物質、ラピジン、ノビレチン、スルフォラファン、アンペロプシン、クルクミン類、レスベラトロール類、ゲラニオール、オサジン、イソリキリチゲニン、ヒドロキシチロソール、25-ヒドロキシコレカルシフェロール、S-アデノシルメチオニン、アントシアニン、アスコルビン酸2-グルコシド、プロテオグリカン、N-アセチルグルコサミン、コラーゲン、ビルベリーエキス、ニンジン末、ゴカヒ、カンゾウ、シャクヤク、ケイヒ、ウイキョウ、シュクシャ、ビフィズス菌、乳酸菌、酵母、ポリデキストロースなどの食物繊維などが挙げられる。また、これらの医薬成分、機能性成分は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0032】
賦形剤は、素錠のかさを調節するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、糖類、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
賦形剤の具体例としては、例えば、結晶セルロース、乳糖、白糖、マンニトール、グルコース、デンプン、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。また、これらの賦形剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
賦形剤を添加することにより、素錠のかさを調節し、錠剤を服用しやすくすることができる。
【0033】
結合剤は、粉体成分の結合力を高めるものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、セルロース誘導体、合成樹脂、糖類、ポリエーテル、ワックス類などが挙げられる。
結合剤の具体例としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、パラフィン、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、デンプン、プルランなどが挙げられる。また、これらの結合剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
結合剤を添加することにより、粉末成分に結合力を与え、安定な固形製剤を製造することができる。
【0034】
崩壊剤は、錠剤を崩壊させ、有効成分の吸収性を高めるものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、糖類、セルロース誘導体、合成樹脂、アルギン酸塩などが挙げられる。
崩壊剤の具体例としては、例えば、トウモロコシデンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、これらの崩壊剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
崩壊剤を添加することにより、錠剤の崩壊を促進し、吸収性を向上させることができる。
【0035】
滑沢剤は、粉体成分の付着力を低減して流動性を高めるものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、フィロケイ酸塩鉱物粉末、ケイ素酸化物、飽和脂肪酸、エステル類、ワックス類、硬化植物油、脂肪、ポリエーテルなどが挙げられる。
滑沢剤の具体例としては、例えば、タルク、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、パルミチン酸、ステアリルフマル酸ナトリウム、ミツロウ、ダイズ硬化油、カカオ脂、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。また、これらの滑沢剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
滑沢剤を添加することにより、錠剤の製造時に、スティッキングなどの打錠障害の発生を抑制することができる。
【0036】
安定剤は、有効成分の化学的分解、物理的分解を抑制するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、無機化合物、有機酸、有機酸塩、ビタミン類などが挙げられる。
安定剤の具体例としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、エデト酸ナトリウム、トコフェロールなどが挙げられる。また、これらの安定剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
安定剤を添加することにより、有効成分の失活を抑制することができる。
【0037】
保存剤は、微生物の増殖を抑制するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、安息香酸塩、パラオキシ安息香酸エステル類などが挙げられる。
保存剤の具体例としては、例えば、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、メチルパラベン、プロピルパラベンなどが挙げられる。また、これらの保存剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
保存剤を添加することにより、錠剤が微生物汚染されることを防ぐことができる。
【0038】
着色剤は、錠剤の嗜好性や識別性を向上させるものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然色素、合成色素などが挙げられる。
着色剤の具体例としては、例えば、コチニール、カルミン、クルクミン、リボフラビン、アンナット、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、タルク、焼成シリカ、炭酸マグネシウム、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号などの食用合成着色料などが挙げられる。また、これらの着色剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
着色剤を添加することにより、錠剤を着色し、被覆固形製剤の嗜好性や識別性を高めることができる。
【0039】
その他の添加剤としては、溶解補助剤、界面活性剤、乳化剤、抗酸化剤、光沢化剤、発泡剤、防湿剤、防腐剤、流動化剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着香剤、香料、芳香剤、崩壊補助剤などが挙げられる。また、これらの添加剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
【0040】
(コーティング成分)
本発明におけるコエンザイムQ10含有錠剤は、当業者に公知の方法により糖衣コーティング、フィルムコーティングしてもよい。
コーティング成分は、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、糖類、コーティング基剤、増粘剤、可塑剤、甘味剤、香味物質、着色剤、光保護剤などが挙げられる。
【0041】
糖類は、糖衣コーティングの主成分であり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、単糖、二糖、糖アルコールなどが挙げられる。
糖類の具体例としては、例えば、グルコース、スクロース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトールなどが挙げられる。また、これらの糖類は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
糖類を添加することにより、錠剤の光安定性、服用性を向上することができる。
【0042】
コーティング基剤は、素錠をコーティングするための組成物における基剤であり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、セルロース誘導体、合成樹脂、多糖類などが挙げられる。
コーティング基剤の具体例としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、プルラン、ゼイン(ツェイン)、シェラック、イーストラップなどが挙げられる。また、これらのコーティング基剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
コーティング基剤を添加することにより、コーティングの効率や性能を向上することができる。
【0043】
増粘剤は、組成物に水分に対する溶解性と粘度を付与するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、多糖類、水溶性アクリル酸重合体、セルロース誘導体などが挙げられる。
増粘剤の具体例としては、例えば、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム、カルボキシビニルポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カラギーナン、ジェランガム、ペクチン、アラビアガム、ローストビンガムなどが挙げられる。また、これらの増粘剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
増粘剤を添加することにより、粉末成分に結合力を与え、安定な固形製剤を製造することができる。
【0044】
可塑剤は、組成物の柔軟性、弾力性を付与するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ポリエーテル、多価アルコール、エステル類、有機酸、植物油などが挙げられる。
可塑剤の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、グリセロール、ポリオール、クエン酸トリエチル、アセチルモノグリセリド、ブチルフタリルブチルグリコレート、酒石酸ジブチル、プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセロール、トリプロピオイン、ジアセチン、クエン酸、中鎖脂肪酸油、菜種油などが挙げられる。また、ポリエチレングリコールの分子量としては、例えば、4000以上20000以下である。ポリエチレングリコールの具体例としては、例えば、PEG6000、PEG8000などが挙げられる。また、これらの可塑剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
可塑剤を添加することにより、素錠をコーティングするための組成物の柔軟性、弾力性を調節し、塗布性能を向上することができる。
【0045】
甘味剤は、錠剤に甘味をもたせるものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然甘味料、人工甘味料などが挙げられる。
甘味剤の具体例としては、例えば、エリスリトール、ソルビトール、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、スクラロース、グリチルリチン酸、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウムなどが挙げられる。また、これらの甘味剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
甘味剤を添加することにより、錠剤に甘味を付与して服用しやすくすることができる。
【0046】
香味物質は、錠剤の口腔内での官能感覚を改善するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然植物油、アルデヒド化合物などが挙げられる。
香味物質の具体例としては、例えば、スペアミント油、ペパーミント油、シナモン油、果実エッセンス、ベンズアルデヒド、ネラール、デカナール、トリルアルデヒド、2-ドデナール、アルデヒドC-8、アルデヒドC-9、アルデヒドC-12、2,6-ジメチルオクタナールなどが挙げられる。また、これらの香味物質は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
香味物質を添加することにより、錠剤を服用しやすくすることができる。
【0047】
着色剤は、錠剤の嗜好性や識別性を向上させるものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然色素、合成色素などが挙げられる。
着色剤の具体例としては、例えば、コチニール、カルミン、クルクミン、リボフラビン、アンナット、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、タルク、焼成シリカ、炭酸マグネシウム、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号などの食用合成着色料などが挙げられる。また、これらの着色剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
着色剤を添加することにより、錠剤を着色し、被覆固形製剤の嗜好性や識別性を高めることができる。
【0048】
光保護剤は、錠剤に遮光性を付与するものであり、医薬品、食品、動物用薬品、飼料などの用途に許容されるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、酸化物、タール系色素などが挙げられる。
光保護剤の具体例としては、例えば、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、食用黄色5号、食用黄色4号などが挙げられる。また、これらの光保護剤は、単独で配合してもよいし、二種以上を組み合わせて配合してもよい。
光保護剤を添加することにより、錠剤に含まれる成分を光から保護することができる。
【0049】
以上の特徴により、本発明におけるコエンザイムQ10含有錠剤は、多孔質デンプンの作用により、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善するという効果を発揮することができる。
【0050】
[コエンザイムQ10の安定化方法]
本発明のコエンザイムQ10の安定化方法は、コエンザイムQ10、カルシウム、マグネシウムを含有する組成物に多孔質デンプンを添加する方法である。
なお、コエンザイムQ10の安定化方法を構成するコエンザイムQ10、多孔質デンプン、カルシウム、マグネシウムについては、上記本発明のコエンザイムQ10含有組成物と同様でもよい。
【0051】
多孔質デンプンの添加量は、特に制限されるものではなく、例えば、上記[コエンザイムQ10含有組成物]、[コエンザイムQ10含有錠剤]における(多孔質デンプン)の項の説明を充足するものであればよい。
【0052】
本発明のコエンザイムQ10の安定化方法においては、更に微粒多孔質物質を添加することが好ましく、微粒二酸化ケイ素を添加することがより好ましい。
【0053】
以上の特徴により、本発明におけるコエンザイムQ10の安定化方法は、多孔質デンプンの作用により、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善するという効果を発揮することができる。
【0054】
[コエンザイムQ10安定化組成物]
本発明のコエンザイムQ10安定化組成物は、コエンザイムQ10、及びカルシウム又はマグネシウムを含有する組成物中のコエンザイムQ10を安定化するためのコエンザイムQ10安定化組成物であって、多孔質デンプンを含有することを特徴とする。
このコエンザイムQ10安定化組成物によれば、多孔質デンプンの作用により、コエンザイムQ10、及びカルシウム、マグネシウムを含有する組成物中のコエンザイムQ10の安定性を向上させることができる。
【0055】
また、本発明のコエンザイムQ10安定化組成物は、微粒多孔質物質を含有してもよい。多孔質デンプンに加えて、微粒多孔質物質を添加することにより、カルシウム、マグネシウムによるコエンザイムQ10の不安定化を改善することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【0057】
(試験試料の作製)
表1に示す原料を、表2、表3の配合量で混合機(透視式混合器S-3、筒井理化学器機械株式会社)で混合して混合物とした。錠剤は、前記混合物を、単発式打錠機(N-30E、岡田精工株式会社)を用いて、打錠圧1000kgf、錠剤径8mm、錠剤重量300mgの錠剤を得た。なお、コエンザイムQ10パウダー50は、コエンザイムQ10を50質量%含有する。多孔質デンプンとしてはロンフードOWP(平均粒子径15μm)、多孔質デキストリンとしてはパインフロー(平均粒子径150μm)を用いた。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
(安定性試験)
安定性試験は、作製した試験試料をアルミ袋に入れて封をした状態で、50℃の恒温槽で2週間処理した。その後、試験試料に含まれるコエンザイムQ10を高速液体クロマトグラフィー(Shimadzu prominence、株式会社島津製作所)で測定した。コエンザイムQ10の残存率は、50℃の恒温槽で処理する前の含有量に対する重量百分率(%)で算出した。
【0062】
【0063】
【0064】
(結果)
表4及び
図1は、実施例1~2、比較例1~4の錠剤におけるコエンザイムQ10の残存率を示したグラフである。これらの錠剤は、カルシウム元素量の少ない錠剤(2.45質量%)の例として作成した。
比較例1では、50℃、2週間の処理により、コエンザイムQ10の残存率が67%となった。また、多孔質デキストリンを用いた比較例3では残存率が69%となった。
一方、多孔質デンプンを添加した実施例1においては、残存率が96%と大幅に上昇した。
また、比較例1に微粒二酸化ケイ素(シリカ)をさらに配合した比較例2においては、コエンザイムQ10の残存率が81%と向上し、比較例3に微粒二酸化ケイ素(シリカ)をさらに配合した比較例4においては、残存率が81%と向上した。
一方、実施例1に微粒二酸化ケイ素(シリカ)をさらに配合した実施例2においては、残存率は実施例1よりは向上しなかった。
【0065】
表5及び
図2は、実施例3~4、比較例5~8の錠剤におけるコエンザイムQ10の残存率を示したグラフである。これらの錠剤は、カルシウム、マグネシウム元素量の多い錠剤(14.42質量%)の例として作成した。
比較例5では、50℃、2週間の処理により、コエンザイムQ10の残存率が59%となった。また、多孔質デキストリンを用いた比較例7では残存率が62%となった。
一方、多孔質デンプンを添加した錠剤においては、残存率が、パインフローを添加した実施例5では62%、ロンフードを添加した実施例7では80%と大幅に上昇した。
また、比較例5に微粒二酸化ケイ素(シリカ)をさらに配合した比較例6においては、コエンザイムQ10の残存率が80%と向上し、比較例7に微粒二酸化ケイ素(シリカ)をさらに配合した比較例8においては、残存率が80%と向上した。
一方、実施例3に微粒二酸化ケイ素(シリカ)をさらに配合した実施例4においては、残存率が88%と向上した。
【0066】
以上の結果から、多孔質デンプンを配合することによりコエンザイムQ10の安定性効果が得られることが確認された。
【0067】
また、カルシウム、マグネシウムの含有量に対する多孔質デンプンの含有量の質量比(多孔質デンプンの含有量/カルシウム、マグネシウムの含有量)が小さい場合は、微粒多孔質物質である微粒二酸化ケイ素をさらに添加することにより、コエンザイムQ10の安定性効果をさらに向上することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、安定なコエンザイムQ10、カルシウム、マグネシウムを含有する組成物を簡便に製造できるので、コエンザイムQ10、カルシウム、マグネシウムが有する有利な効果を利用した医薬品、医薬部外品、飲む化粧料、飲む化粧品、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示食品など)、サプリメント、飼料などを提供することができる。