IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7596195システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム
<>
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図1
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図2
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図3
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図4
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図5
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図6
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図7
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図8
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図9
  • 特許-システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241202BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J29/38 204
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 501
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021053207
(22)【出願日】2021-03-26
(65)【公開番号】P2022150558
(43)【公開日】2022-10-07
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】原田 敬子
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-163774(JP,A)
【文献】特開2020-163599(JP,A)
【文献】特開2020-138491(JP,A)
【文献】特開2004-122766(JP,A)
【文献】特開平11-320853(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0156754(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の特性を測定する第1の測定手段と、
予め記録媒体の種類に対応する特性値の基準値を記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の測定手段の測定結果と、前記第1の記憶手段に予め記憶された特性値の基準値と、に基づいて、前記第1の測定手段に測定された記録媒体の種類の候補を抽出する第1の抽出手段と、
前記第1の測定手段によって測定された記録媒体の種類であると決定された記録媒体の種類に対応する情報を取得する第1の情報取得手段と、
前記第1の情報取得手段が取得した前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値と、前記測定結果と、に基づいて、前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値を補正する補正値を取得する第1の補正値取得手段と、
を有し、
前記第1の抽出手段は、次に候補を抽出する際には、特性値の基準値と、補正値と、に基づいて記録媒体の種類の候補を抽出するシステムであって、
前記第1の抽出手段が抽出の対象とする記録媒体の種類として予め設定されていない未設定の記録媒体を抽出の対象とする場合には、前記第1の測定手段が測定した前記未設定の記録媒体の特性の測定結果と、前記第1の記憶手段に予め記憶されている種類の記録媒体について前記第1の補正値取得手段が取得した補正値と、に基づいて、前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を決定する第1の決定手段を更に有し、前記第1の記憶手段は、前記第1の決定手段が決定した前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を記憶することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記第1の決定手段は、前記第1の補正値取得手段が取得する前記第1の記憶手段に予め記憶されている種類の記録媒体の補正値に基づいて、前記未設定の記録媒体の補正値を決定し、前記未設定の記録媒体の補正値と前記第1の測定手段が測定した前記未設定の記録媒体の測定結果とに基づいて前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を算出することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
記録媒体の特性を測定する第2の測定手段と、
予め記録媒体の種類に対応する特性値の基準値を記憶する第2の記憶手段と、
前記第2の測定手段の結果と、前記第2の記憶手段に予め記憶された特性値の基準値と、に基づいて、当該記録媒体の種類の候補を抽出する第2の抽出手段と
を更に有し、
前記第2の測定手段が前記未設定の記録媒体を測定したときに、前記第2の抽出手段によって前記未設定の記録媒体の測定結果に基づいて、前記未設定の記録媒体が候補として抽出されるようにする場合には、前記第2の記憶手段に前記第1の決定手段が算出した前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を記憶することを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を決定する第2の決定手段を更に有し、
前記第2の決定手段は、前記第2の測定手段が測定した測定結果に基づいて記録媒体の種類の候補を抽出する際に使用する前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を、前記第2の記憶手段に記憶することを特徴とする請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記第2の測定手段によって測定された記録媒体の種類だと決定された記録媒体の種類に対応する情報を取得する第2の情報取得手段と、
前記第2の情報取得手段が取得した前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値と、前記第2の測定手段の測定結果と、に基づいて、前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値を補正する補正値を取得する第2の補正値取得手段を更に有し、
前記第2の決定手段は、前記第2の補正値取得手段が取得する前記第2の記憶手段に予め記憶されている種類の記録媒体の補正値に基づいて、前記未設定の記録媒体の補正値を決定することを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の測定手段と、前記第1の記憶手段と、前記第1の抽出手段と、前記第1の情報取得手段と、を有する第1の情報処理装置と、
前記第2の測定手段と、前記第2の記憶手段と、前記第2の抽出手段と、を有する第2の情報処理装置と、
を有することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
ユーザが設定した前記未設定の記録媒体の名称を取得する名称取得手段を更に有し、
前記名称取得手段が名称を取得した後に、前記第1の測定手段は記録媒体の特性の測定を開始することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
第3の情報処理装置を有し、
前記第3の情報処理装置は、ユーザが設定した前記未設定の記録媒体の名称を取得する名称取得手段を有し、
前記名称取得手段が名称を取得すると、前記第3の情報処理装置は前記第1の情報処理装置に前記名称取得手段が名称を取得したことを示す情報を送り、
前記第1の情報処理装置は前記名称を取得したことを示す情報を受信したことに応じて前記第1の測定手段による記録媒体の特性の測定を行うことを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記第3の情報処理装置は前記第1の記憶手段から前記未設定の記録媒体の特性値の基準値の情報を取得することができ、
前記第2の測定手段が前記未設定の記録媒体を測定したときに、前記第2の抽出手段によって前記未設定の記録媒体の測定結果に基づいて、前記未設定の記録媒体が候補として抽出されるようにする場合には、前記第3の情報処理装置は前記第1の記憶手段から取得した前記未設定の記録媒体の特性値の基準値の情報を前記第2の情報処理装置に送信し、
前記第2の情報処理装置が前記未設定の記録媒体の特性値の基準値の情報を受信すると、前記第2の記憶手段は受信した情報が示す前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を記憶することを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
第1の情報処理装置を有し、
前記第1の情報処理装置は、前記第1の測定手段と、前記第1の記憶手段と、前記第1の抽出手段と、前記第1の情報取得手段と、前記第1の補正値取得手段と、前記第1の決定手段とを有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記第1の情報処理装置は記録媒体にインクを吐出して画像を記録するための記録ヘッドを有することを特徴とする請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
測定手段によって記録媒体の特性を測定した測定結果と、記憶手段に予め記憶されている記録媒体の種類に対応する特性値の基準値と、記録媒体の種類ごとに前記特性値の基準値を補正する補正値と、に基づいて、前記予め記憶されている記録媒体の種類から前記測定結果と対応する記録媒体の種類の候補を抽出する抽出装置において用いられる情報を取得するための情報処理装置であって、前記抽出装置において前記記憶手段に記憶されている種類でない未設定の記録媒体が候補として抽出されるようにする場合に、前記記憶手段に記憶されている記録媒体の種類の補正値と、前記未設定の記録媒体の特性を測定した測定結果と、に基づいて前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を取得することを特徴とする情報処理装置。
【請求項13】
記録媒体の特性を測定し、
記憶手段に記憶された予め記録媒体の種類に対応する特性値の基準値と、前記記録媒体の特性を測定した測定結果と、に基づいて特性が測定された前記記録媒体の種類の候補を抽出し、
特性が測定された記録媒体の種類であると決定された記録媒体の種類に対応する情報を取得し、
取得した前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値と、前記測定結果と、に基づいて前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値を補正する補正値を取得し、
次に記録媒体の種類の候補を抽出する際には、記憶手段に記憶された特性値の基準値と、取得された補正値と、に基づいて特性が測定された記録媒体の種類の候補を抽出し、
抽出の対象とする記録媒体の種類として予め設定されていない未設定の記録媒体を抽出の対象とする場合には、
前記未設定の記録媒体の特性を測定し、
前記未設定の記録媒体の特性の測定結果と、前記記憶手段に予め記憶されている種類の記録媒体の補正値と、に基づいて、前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を決定し、
前記記憶手段に前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を記憶することを特徴とする記録媒体の種類の判定方法。
【請求項14】
記録媒体の特性を測定した測定結果を取得し、
記憶手段に記憶された予め記録媒体の種類に対応する特性値の基準値と、前記測定結果と、に基づいて特性が測定された前記記録媒体の種類の候補を抽出し、
特性が測定された記録媒体の種類であると決定された記録媒体の種類に対応する情報を取得し、
取得した前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値と、前記測定結果と、に基づいて前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値を補正する補正値を取得し、
次に記録媒体の種類の候補を抽出する際には、記憶手段に記憶された特性値の基準値と、取得された補正値と、に基づいて特性が測定された記録媒体の種類の候補を抽出し、
抽出の対象とする記録媒体の種類として予め設定されていない未設定の記録媒体を抽出の対象とする場合には、
前記未設定の記録媒体の特性を測定した測定結果を取得し、
前記未設定の記録媒体の特性の測定結果と、前記記憶手段に予め記憶されている種類の記録媒体の補正値と、に基づいて、前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を算出し、
前記記憶手段に前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を記憶することをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項15】
測定手段によって記録媒体の特性を測定した測定結果と、記憶手段に予め記憶されている記録媒体の種類に対応する特性値の基準値と、記録媒体の種類ごとに前記特性値の基準値を補正する補正値と、に基づいて、前記予め記憶されている記録媒体の種類から前記測定結果と対応する記録媒体の種類の候補を抽出する抽出装置において、前記記憶手段に記憶されている種類でない未設定の記録媒体が候補として抽出されるようにする場合に、前記記憶手段に記憶されている記録媒体の種類の補正値と、前記未設定の記録媒体の特性を測定した測定結果と、に基づいて前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を取得することをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システム、情報処理装置、記録媒体の種類の判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置において記録を行う際に、記録媒体の種類に応じた制御パラメータを使用して記録を行うことが知られている。特許文献1には、適切な制御パラメータを使用して記録を行うために、記録対象の記録媒体の複数の特性値を測定し、予め記憶されている種類の中から記録媒体の種類を選択することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-215591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、予め記憶されている記録媒体の種類以外の種類の記録媒体を使用する場合には、使用したい記録媒体の種類が選択されない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、予め記憶されていない種類の記録媒体についても選択可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、記録媒体の特性を測定する第1の測定手段と、予め記録媒体の種類に対応する特性値の基準値を記憶する第1の記憶手段と、前記第1の測定手段の測定結果と、前記第1の記憶手段に予め記憶された特性値の基準値と、に基づいて、前記第1の測定手段に測定された記録媒体の種類の候補を抽出する第1の抽出手段と、前記第1の測定手段によって測定された記録媒体の種類であると決定された記録媒体の種類に対応する情報を取得する第1の情報取得手段と、前記第1の情報取得手段が取得した前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値と、前記測定結果と、に基づいて、前記情報が示す記録媒体の種類の特性値の基準値を補正する補正値を取得する第1の補正値取得手段と、を有し、前記第1の抽出手段は、次に候補を抽出する際には、特性値の基準値と、補正値と、に基づいて記録媒体の種類の候補を抽出するシステムであって、前記第1の抽出手段が抽出の対象とする記録媒体の種類として予め設定されていない未設定の記録媒体を抽出の対象とする場合には、前記第1の測定手段が測定した前記未設定の記録媒体の特性の測定結果と、前記第1の記憶手段に予め記憶されている種類の記録媒体について前記第1の補正値取得手段が取得した補正値と、に基づいて、前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を決定する第1の決定手段を更に有し、前記第1の記憶手段は、前記第1の決定手段が決定した前記未設定の記録媒体の特性値の基準値を記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、予め記憶されていない種類の記録媒体についても選択可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る記録装置の構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係るキャリッジの構成を示す図である。
図3】実施形態における光学センサの構成を示す図である。
図4】実施形態における記録装置の制御系のブロック構成を示す図である。
図5】実施形態における記録媒体決定処理を示すフローチャートである。
図6】実施形態における入出力部の表示形態を示す図である。
図7】実施形態においてEEPROMに記憶されている特性値を示す表である。
図8】入出力部の他の形態を示す図である。
図9】実施形態における補正値更新処理を示すフローチャートである。
図10】ユーザ登録用紙を選択可能に設定する流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
<全体構成>
図1は、記録装置100の構成を示す斜視図であり、キャスターおよび排紙のためのバスケットが取り付けられている。図1(a)は全体の外観を示し、図1(b)は上部カバーを開けて内部構造が見える状態を示す。本実施形態における記録装置100は、インクジェット記録方式により、記録媒体上に記録材としてインク滴を付与することにより記録を行う。記録媒体はY方向を搬送方向として搬送される。そして、記録ヘッド102を搭載したキャリッジ101はY方向と交差するX方向に往復移動して記録を行う、いわゆるシリアル型記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置について説明する。しかしながら、ノズル列が記録媒体の搬送方向に対する記録幅に亘って構成された、いわゆるライン型記録ヘッドを備えるインクジェット記録装置が用いられても良い。また、記録機能だけでなく、スキャン機能やFAX機能、送信機能等が一体化された多機能型周辺装置(MFP)でもよい。また、記録材として粉末トナーを用いる電子写真方式の記録装置でもよい。本実施形態では、後述する使用する記録媒体の決定処理を行うための情報処理装置の機能は記録装置100に搭載されている。
【0010】
記録装置100の上部に入出力部406を備える。入出力部406は操作パネルであり、ディスプレイにインク残量や記録媒体の種類の候補を表示し、ユーザはキーを操作することにより記録媒体の種類を選択したり記録の設定を行ったりすることができる。
【0011】
キャリッジ101は、光学センサ201(図2)と、インクを吐出する吐出口が設けられた吐出口面が形成された記録ヘッド102とを有する。キャリッジ101は、キャリッジモータ415(図4)の駆動により、キャリッジベルト103を介してシャフト104に沿ってX方向(キャリッジの移動方向)に往復移動可能に構成されている。本実施形態において、記録装置100は、光学センサ201により、記録媒体105の表面上の乱反射特性値や正反射特性値を取得したり、キャリッジ101と記録媒体105との間の距離を測定したりすることが可能である。
【0012】
ロール紙等の記録媒体105は、不図示の搬送ローラによりプラテン106上をY方向に搬送される。搬送ローラによりプラテン106上に搬送された記録媒体105上をキャリッジ101がX方向に移動しながら、記録ヘッド102からインク滴を吐出することで記録動作が行われる。キャリッジ101が記録媒体105上の記録領域の端まで移動すると、搬送ローラは記録媒体105を一定量搬送し、次の記録走査を行う領域を記録ヘッド102が記録可能な位置に移動させる。以上の動作の繰り返しにより画像の記録が行われる。
【0013】
<キャリッジ構成>
図2は、キャリッジ101の構成を示す図である。キャリッジ101は、トランスレータ202とヘッドホルダ203とを備えて構成されている。ヘッドホルダ203は、記録ヘッド102と反射型センサである光学センサ201を含む。図2に示すように、光学センサ201は、底面が記録ヘッド102の底面と同位置若しくはそれよりも高くなるように、構成されている。
【0014】
<光学センサ構成>
図3は、光学センサ201の構成を示す断面模式図である。光学センサ201は、光学素子として第1のLED301、第2のLED302、第3のLED303、第1のフォトダイオード304、第2のフォトダイオード305、第3のフォトダイオード306を含む。第1のLED301は、記録媒体105の表面(測定面)に対して法線(90°)の照射角を有する光源である。第1のフォトダイオード304は、第1のLED301から照射され記録媒体105からの反射光をZ方向45°の角度で受光する。つまり、記録媒体105からの反射光のいわゆる乱反射成分を検出する光学系を形成する。
【0015】
第2のLED302は、記録媒体105の表面(測定面)に対してZ方向60°の照射角を有する光源である。第1のフォトダイオード304は、第2のLED302から照射され記録媒体105からの反射光をZ方向60°の角度で受光する。つまり、発光と受光の角度が等しくなり、記録媒体105からの反射光のいわゆる正反射成分を検出する光学系を形成する。
【0016】
第3のLED303は、記録媒体105の表面(測定面)に対して法線(90°)の照射角を有する光源である。第2のフォトダイオード305と第3のフォトダイオード306は、第3のLED303から照射され記録媒体105からの反射光を受光する。第2のフォトダイオード305と第3のフォトダイオード306は、それぞれの受光量が光学センサ201と記録媒体105との距離に応じて変化することで、光学センサ201と記録媒体105との距離を測定する。
【0017】
本実施形態では光学センサはキャリッジに設置されているが、他の形態でもよい。例えば、記録装置に固定して設置されていてもよいし、あるいは記録装置とは別体の記録媒体の乱反射や正反射等の特性値を測定するための測定機器であって、測定機器によって測定した特性値を記録装置に送信する形態でもよい。
【0018】
<ブロック図>
図4は、記録装置100の制御系のブロック構成を示す図である。ROM402は、不揮発性メモリであり、例えば、記録装置100を制御するための制御プログラムや、本実施形態の動作を実現させるためのプログラムが記憶されている。本実施形態の動作は、例えば、CPU401がROM402に記憶されたプログラムをRAM403に読み出して実行することにより実現される。RAM403は、CPU401のワーキングメモリとしても用いられる。EEPROM404は、記録装置100の電源がオフとされても保持しておくべきデータを記憶する。少なくとも、CPU401とROM402が、後述する記録媒体決定処理をするための情報処理装置の機能を実現する。また、EEPROM404は、予め定められた基準として利用する各記録媒体の特性値や、各記録媒体のカテゴリ、使用された記録媒体の種類(使用履歴)を記憶する。カテゴリとは記録媒体の種類を大きく分類したものであり、本実施形態においては、光沢紙、普通紙、コート紙、フィルム用紙、スペシャル、の5つが設定されている。例えば記録媒体がスタンダード光沢紙であるならば光沢紙のカテゴリ、プレミアム普通紙ならば普通紙のカテゴリに分類されている。記録媒体は紙媒体ではない媒体も含むが、本実施形態においてはユーザに対して「用紙」という文言を用いて通知を行う。使用履歴情報や各記録媒体の特性値は記録装置内の記憶媒体ではなく、ホストコンピュータのROMやサーバーなどの外部メモリに記憶してもよい。
【0019】
インタフェース(I/F)回路410は、記録装置100と外部のLAN等のネットワークとを接続する。記録装置100は、I/F回路410により、外部のホストコンピュータ等の装置との間で各種ジョブやデータ等の送受信を行う。
【0020】
入出力部406は、入力部と出力部を含む。入力部はユーザからの電源投入の指示や、記録実行の指示、各種機能の設定の指示を受け付ける。出力部は省電力モード等の各種装置情報や、記録装置100が実行可能な各種機能の設定画面を表示する。本実施形態では入出力部406は記録装置100に備えられた操作パネルであり、入出力部406は、入出力制御回路405を介してシステムバス416とデータの送受信が可能なように接続されている。本実施形態ではCPU401が出力部の情報の通知制御を行う。
【0021】
他にも、入力部は外部のホストコンピュータのキーボードでもよく、外部のホストコンピュータからユーザの指示を受付可能としてもよい。出力部は、LEDディスプレイやLCDディスプレイ、ホスト装置と接続されているディスプレイでもよい。また、入出力部がタッチパネルである場合には、ソフトウェアキーによりユーザからの指示を受付可能である。また、入出力部406はスピーカーとマイクであって、ユーザからの入力を音声入力、ユーザへの通知を音声出力としてもよい。
【0022】
CPU401とROM402と同様の機能を持つCPUとROMを備え、記録装置100と外部接続される情報処理装置が、後述する記録媒体決定処理を行い、記録装置100で使用する記録媒体を決定してもよい。
【0023】
光学センサ201による測定を実施する場合には、CPU401によりLED制御回路407が駆動され、光学センサ201内の所定のLEDが点灯するように制御される。光学センサ201の各フォトダイオードは受光した光に応じた信号を出力し、A/D変換回路408によりデジタル信号に変換され、RAM403に一旦保存される。記録装置100の電源オフ時にも保存されるべきデータは、EEPROM404に記憶される。
【0024】
記録ヘッド制御回路411は、記録ヘッド102に搭載されセレクタやスイッチを含むノズル駆動回路に対して、記録データに応じた駆動信号を供給し、ノズルの駆動順序等、記録ヘッド102の記録動作の制御を行う。例えば、外部からI/F回路410に記録対象データが送信されてきた場合、記録対象データは、RAM403に一旦保存される。そして、記録ヘッド制御回路411は、記録対象データから、記録のための記録データに変換された記録データに基づいて、記録ヘッド102を駆動する。その際、LF(ラインフィード)モータ駆動回路412は、記録データのバンド幅等に基づいてLFモータ413を駆動し、LFモータ413と接続されている搬送ローラが回転することにより記録媒体を搬送する。CR(キャリッジ)モータ駆動回路414は、CR(キャリッジ)モータ415を駆動することによりキャリッジベルト103を介してキャリッジ101を走査させる。
【0025】
I/F回路410から送られてくるデータには、記録対象データのみでなく、プリンタドライバで設定された内容のデータも含まれる。また、記録対象データは、例えば、I/F回路410を介して外部から受信して記憶部に格納されたり、ハードディスク等の記憶部に予め格納されたりしている場合もある。CPU401は、画像データを記憶部から読み出して画像処理回路409を制御して、記録ヘッド102を用いるための記録データへの変換(二値化処理)を実行する。画像処理回路409は、二値化処理の他、色空間変換、HV変換、ガンマ補正、画像の回転等、種々の画像処理を実行する。
【0026】
<記録媒体決定処理>
図5は、記録対象の記録媒体105の特性を測定した測定結果を取得し、測定結果に基づいて入出力部406に記録媒体の候補を通知して記録対象の記録媒体の種類を決定する記録媒体決定処理を示すフローチャートである。以下の記録媒体決定処理においては、ユーザが選択した記録媒体の種類の特性値について、測定値を新たな情報として得て、これに基づいて予め定められている特性値を測定値に近づけるように変更する。このような学習により、より精度よく記録媒体の種類を選択できるような特性値を獲得していく。
【0027】
図5のステップS101~S114までの各ステップの処理は、例えば、図4で示すCPU401がROM402に記憶されたプログラムをRAM403に読み出して実行することで実現される。また、記録媒体決定処理はホスト装置のソフトウェアによって実行されてもよい。本実施形態において入出力部406は記録装置に備えられた操作パネルであるので記録媒体の候補の通知は操作パネルに記録媒体の名称を表示することによって行われる。入出力部406はホスト装置に接続されたディスプレイとホスト装置であってもよい。また、入出力部406が音声の入出力が可能なマイク機能のあるスピーカーである場合には記録媒体の候補の通知はスピーカーによって行われ、記録媒体の選択はマイクにユーザが記録媒体の名称、或いは対応する符号を音声入力することによって行われる。
【0028】
CPU401は、入出力部406である操作パネルからユーザによる給紙開始の指示を受け付けると図5の記録媒体決定処理を開始する。図6(a)は給紙処理開始の指示の入力を受け付ける操作パネルの表示例である。操作パネルはユーザによるタッチ入力可能なタッチパネルである。「はい」の項目をタッチすると給紙が開始されると、記録媒体105は搬送ローラによりプラテン106上の光学センサ201が検知可能な位置まで搬送される(ステップS101)。
【0029】
記録媒体105が搬送されると、ステップS102においてキャリッジ101がX方向に移動し光学センサ201が記録媒体105上に移動する。
【0030】
ステップS103で光学センサ201によって記録媒体105の正反射値V1、乱反射値V2、記録媒体の厚さの値(以下、紙厚)V3を取得する。乱反射値は記録媒体の白色度と対応し、正反射値は記録媒体の光沢度と対応する。記録媒体の特性として、記録媒体のX方向の幅を使用して記録媒体決定処理を行ってもよい。記録媒体の特性の測定を行う位置は1箇所でもよいし、複数箇所の測定結果の平均を取ってもよい。また、特性の測定は光学センサ201が停止した状態で行ってもよいし、移動しながら行ってもよい。測定値は一旦RAM403などのメモリに記憶される。
【0031】
次いで、ステップS104~S107の処理でCPU401は取得した測定値をメモリから読み出し、予め定められてEEPROM404に記憶されている各種記録媒体の特性値と比較する。これにより、測定値が示す特性に該当する度合が所定の度合より高い記録媒体の種類を抽出する。詳しくは以下の通りである。
【0032】
ステップS104では、EEPROM404に記憶されている全ての記録媒体の種類の特性値との比較が終了したかを判定する。終了したと判定した場合にはステップS108に進む。
【0033】
ステップ104にて比較が終了していないと判定した場合には、ステップS105に進み、記録媒体の種類の特性値と測定値とを比較する。図7(a)はEEPROM404に記憶されている記録媒体の種類毎の特性値を示す。この特性値は予め決められた値に設定されており、変更されない値である。乱反射値、正反射値は、光学センサ201が光を受光して出力する出力電圧を10bitでA/D変換した値が記憶されている。図7(b)はEEPROM404に記憶されている補正値と学習値を示す。学習値については後述する。補正値は、学習により更新されていく値である。本実施形態において補正値は、工場から出荷される段階ではすべて0が格納されており、図9で説明する補正値更新処理によって更新される値である。図7(a)に示す予め決められている特性値の基準値を図7(b)に示す補正値によって補正した値を測定値と比較する特性値(以下では比較値)とし、これを測定値と比較し、記録媒体の種類を判別する。本実施形態では、予め決められた特性値に補正値を掛けた値を基準となる補正値とする。例えば普通紙Aの正反射値の比較値は正反射値の基準値(V1L_a)×補正値(α_a)である。この、特性値の比較値を基準として図7(c)に示す正の抽出限度値から負の抽出限度値までの第一の範囲を抽出範囲として記録媒体の種類を検出する。例えば、普通紙Aの正反射値の正の抽出限度値はJ1_a、負の抽出限度値はJ1‘_aであるので、(V1L_a)×(α_a)+(J1‘_a)から、(V1L_a)×(α_a)+(J1‘_a)が普通紙Aの正反射値の抽出範囲である。ステップS105では所定種類の記録媒体の抽出範囲内にステップS103で測定した測定値が入っているか否かを判定する。入っていない場合にはステップS104に戻り次の種類の記録媒体について判定を行う。入っている場合にはステップS106に進む。
【0034】
ステップS106では、測定値と特性値の比較値との近さを示す判定距離Dxを算出する。判定距離Dxの値が小さい特性値の比較値を持つ記録媒体の種類ほど、測定した記録媒体の種類と近いことを示す。以下に判定距離Dxを算出する式を普通紙Aを例にとり示す。
Dx={V1-(α_a)×(V1L_a)+{V2-(β_a)×(V2L_a)}+{V3-(γ_a)×(V3L_a)}
【0035】
判定距離Dxの求め方は上記の式だけに限らず、測定値と特性値の比較値との類似性を計算できるものであればよい。本実施形態では、取得するすべての測定値と特性値の比較値との距離を一括して求めているが、それぞれの相関が低い場合は、個々の特性値に対して別々に距離を求めて測定値との近さを判定してもよい。また、例えば正反射値と乱反射値の相関に対して、紙厚の相関が低い場合には以下のようにすることもできる。正反射値V1、乱反射値V2に対する判定距離Dx1、紙厚V3についての判定距離Dx2を以下の式で求める。
Dx1={V1-(α_a)×(V1L_a)+{V2-(β_a)×(V2L_a)}
Dx2={V3-(γ_a)×(V3L_a)}
そして、Dx1、Dx2それぞれの閾値を設定し、判定する。
【0036】
ステップS107では、ステップS106で算出した判定距離Dxと記録媒体の種類とを紐づけてRAM403に一時記憶する。
【0037】
ステップS104~ステップS107の処理を全ての記録媒体の種類で行うとステップS104でYESの判定となり、ステップS108に進む。ステップS108では、RAM403に記憶されている記録媒体の種類があるか否かを判定する。RAM403に記憶されている記録媒体の種類が無い場合には、図6(b)のように操作パネルに全てのカテゴリを表示する(ステップS111)。カテゴリは予め定められた順番に並べられて表示される。カテゴリの表示を行った場合には、ユーザが選択したカテゴリの入力を受け付けると図6(c)のようにカテゴリ内の記録媒体の種類を表示する。そして、表示した記録媒体の種類のうち選択された記録媒体の種類についての入力を受ける。入力は記録媒体の名称が表示されている項目をタッチすることによって行われる。図6(b)では、記録媒体のカテゴリとは別に、「すべて」という項目を一番下に表示している。この「すべて」が選択されると全ての記録媒体が予め定められた順番で表示される。最近、即ち一番最後に使用された記録媒体から近い順番に表示するようにしてもよい。
【0038】
ステップS108でRAM403に記憶されている記録媒体の種類がある場合、記憶されている記録媒体の種類を、判定距離Dxが小さい順に優先順位をつける(ステップS109)。
【0039】
記録媒体の種類の名称を、図6(d)に示すように、ステップS109で決定した優先順位の高い順に上から表示する(ステップS110)。
【0040】
図6(d)の操作パネルに表示されている40をタッチすると画面の表示を下にスクロールすることができる。「STOP」をタッチすると記録媒体決定処理を中止し、図6(a)の表示からホーム画面の表示に切り替わる。図6(d)では優先度の高い順に記録媒体の名称の横に1~3までの符号を付して表示している。記録媒体の種類の選択は、表示されている記録媒体の名称の項目をタッチすることによって行われる。ここでは、1の番号が振られているスタンダード半光沢紙の優先度が最も高い。符号は優先度の高さが分かるようなものであればよく、数字以外の符号でもよい。また、表示の方法はこれに限らず優先順をユーザが認識可能であればよい。
【0041】
図6(d)では、候補の記録媒体を上から3つまで表示することができるが、抽出された記録媒体の種類は2種類であるため、図6(d)では2つの記録媒体までしか表示していない。3つ目の欄には上記2つの記録媒体の名称よりも目立たないように「選択候補がありません」と薄く(或いは暗く)表示し、ユーザには3つ目の候補がないことを報知する。例えば操作パネルの背景の色が黒の場合、記録媒体2つは白色で、「選択候補がありません」という内容は白よりも輝度の低い色であるグレーで表示する。「選択候補がありません」という内容の表示の下部には、用紙のカテゴリを表示する。このようにしてユーザが所望する記録媒体が入出力部406に表示された記録媒体の中になかった場合に、その他の種類の記録媒体を選択するために、個別の記録媒体を選択できるようにしてある。本実施形態では、カテゴリは1位の記録媒体の種類が属するカテゴリを一番上に表示する。特性が近いカテゴリを上位に表示し、選択しやすくすることによって候補の記録媒体にユーザが所望する記録媒体が無かった場合でも、所望の記録媒体のカテゴリを選択するまでの手間を少なくすることができる。
【0042】
図8に他の形態の入出力部406における記録媒体の種類の候補の表示方法を示す。図8(a)のように、記録媒体の種類の候補が操作パネルに表示しきれない場合にはスクロール操作等によって下位の候補を表示可能にしてもよい。また、候補の上位から順に表示せずとも、優先順位をユーザが認識可能であればよい。操作パネルの中央に最も上位の記録媒体の名称を表示させるようにしてもよいし、図8(b)のように優先度が上位の記録媒体の名称を表示する文字の大きさを大きくする、太字にするなどして優先度の上下を表現してもよい。また、「用紙のカテゴリ」という表示の下にカテゴリが表示されているが、「用紙のカテゴリ」を意味する表示なしにカテゴリを表示するようにしてもよい。また、候補の記録媒体の下にはカテゴリではなく、候補以外の記録媒体の種類を表示してもよい。
【0043】
また、図8(c)のように優先度1位の記録媒体のみを表示するようにしてもよい。ユーザが、抽出された他の記録媒体を選択したい場合には、図8(c)ではスタンダード普通紙と表示されている記録媒体の項目の部分を選択することができる。この選択を受け付けると図6(d)のような画面の表示になり、他の記録媒体を選択できるような表示方法でもよい。
【0044】
ステップS112にて、ユーザが入出力部406から記録媒体の種類を選択すると、ステップS113では補正値を学習した値に更新する。補正値の更新処理については後述する。
【0045】
次に、ステップS114にてキャリッジ101を待機位置まで移動させる。そしてステップS115では搬送ローラによって記録媒体105を記録ヘッド102で記録するための待機位置まで搬送させる。
【0046】
以上により記録媒体決定処理が終了し、ユーザからの記録ジョブを受信すると記録を開始する。記録媒体の種類に応じた記録時のパラメータが予め設定されてEEPROM404に記憶されている。記録ジョブの記録で使用するパラメータは、上述した記録媒体決定処理によって決定された記録媒体の種類に応じて決定する。記録時のパラメータは、インクの打ち込み量や、搬送量等である。
【0047】
また、入出力部406からユーザが選択して入力された記録媒体の種類と、ホストコンピュータから記録装置100に送信されたジョブの記録媒体の種類が異なっている場合は、EEPROM404に記憶している記録媒体の補正値を更新しないようにしてもよい。
【0048】
<補正値更新処理>
図9図5のステップS113の記録媒体の補正値更新処理を示すフローチャートである。図5のステップS112においてユーザが普通紙Aを選択したときを例にとり説明する。
【0049】
測定値が選択された記録媒体(ここでは普通紙A)の第二の範囲である学習範囲内か否かを判断する。ここで、学習範囲について説明する。特性値の比較値から大きくかけ離れた測定値に基づいて学習を行ってしまうと間違った値を学習してしまう虞があるため、学習する測定値の範囲である学習範囲が設定されている。学習範囲は、本実施形態では抽出範囲から所定距離大きい範囲を持つ範囲である。特性値の比較値を基準として、図7(c)に示す正の学習限度値から負の学習限度値までの範囲を学習範囲とし、学習限度値はEEPROM404に記憶されている。記録媒体の種類毎に抽出範囲と学習範囲との所定距離は異なる距離を設定することができる。選択された記録媒体の学習範囲内に測定値が入っていた場合は補正値を変更する。普通紙Aの学習値として所定の数の測定値がEEPROM404に記憶されており、学習値に基づいて補正値を更新する。本実施形態では、学習値を2つ記憶している形態について説明する。
【0050】
ステップS201では、測定した正反射値V1が普通紙Aの正反射値の学習範囲内に入っているか否かを判定する。普通紙Aの正反射値の学習範囲は、(V1L_a)×(α_a)+(L1‘_a)から、(V1L_a)×(α_a)+(L1_a)である。学習範囲に入っていなかった場合には補正値を更新しないため補正値更新処理を終了する。学習範囲に入っていた場合にはステップS202に進む。
【0051】
ステップS202では、測定した乱反射値V2が普通紙Aの正反射値の学習範囲内に入っているか否かを判定する。普通紙Aの正反射値の学習範囲は、(V2L_a)×(β_a)+(L2‘_a)から、(V2L_a)×(β_a)+(L2_a)である。学習範囲に入っていなかった場合には補正値を更新しないため補正値更新処理を終了する。学習範囲に入っていた場合にはステップS203に進む。
【0052】
ステップS203では、測定した紙厚V3が普通紙Aの正反射値の学習範囲内に入っているか否かを判定する。普通紙Aの正反射値の学習範囲は、(V3L_a)×(γ_a)+(L3‘_a)から、(V3L_a)×(γ_a)+(L3‘_a)である。学習範囲に入っていなかった場合には補正値を更新しないため補正値更新処理を終了する。学習範囲に入っていた場合には全ての特性が学習範囲に入ったため、測定値を学習値としてEEPROM404に記憶し、ステップS204に進む。
【0053】
ステップS204ではEEPROM404に記憶されている学習値を更新するために、前回更新された学習値が格納位置a2に格納されているかを判定する。格納位置がa2の場合(ステップS204:YES)にはステップS205にてa1に格納されている学習値を測定値に更新する。格納位置がa1の場合(ステップS204:NO)にはステップS206にてa2に格納されている学習値を測定値に更新する。EEPROM404に記憶されている学習値は、記録対象の記録媒体が普通紙Aであると選択され、測定値が学習範囲内であった前回と前々回の2回分の学習値である。ステップS204~S206で最も古い学習値である前々回の学習値を今回測定した測定値で上書きして更新する。
【0054】
ステップS207にて、EEPROM404に記憶されている学習値の平均値をとり、特性値の比較値との離れている割合を算出し、これを補正値として更新する。例えば、普通紙Aの場合の補正値は以下のように算出できる。
(α_a)=(V1L_a)/{(v1_a1)+(v1_a2)}
(β_a)=(V2L_a)/{(v2_a1)+(v2_a2)}
(γ_a)=(V3L_a)/{(v3_a1)+(v3_a2)}
以上により、補正値更新処理を終了する。
【0055】
上述の形態では、工場出荷時には補正値に0が格納されており、ユーザが給紙を行ったときに補正値を更新する形態としたが、工場で補正値更新処理を行って補正値として格納しておいてもよい。工場出荷時に格納した補正値はユーザ先では更新しないようにしてもよいし、図5の処理のように更新するようにしてもよい。また、工場で格納した補正値と、ユーザ先で算出した補正値は別の補正値としてメモリに格納するようにしてもよい。
【0056】
図10にて、抽出の対象とする記録媒体の種類として予め設定されていない未設定の種類の記録媒体である、ユーザが用意した用紙(以下、ユーザ登録用紙と称する)を、選択可能な用紙として設定するときの流れを説明する。ここで、予め選択できる記録媒体の種類とは、本処理を開始する前にEEPROM404に選択可能なように記憶されている種類のことである。本実施形態では、記録装置702に設定するユーザ登録用紙の基準値を、他の機体(以下の説明においては記録装置703)にも適用できるように基準値を設定する。ここでは、ホストコンピュータ701からある記録装置702にユーザ登録用紙を登録するフローを例にとり説明する。ホストコンピュータ701は、I/F回路410を介して記録装置と情報の通信が可能なように接続されるコンピュータである。また、記録装置702と記録装置703は記録装置の個体を区別するための参照番号であり、それぞれ上述した記録装置100の構成を有した記録装置である。
【0057】
まず、ステップS711で、ユーザはホストコンピュータ701にインストールされている記録装置で使用する記録媒体のパラメータ操作用のアプリケーションで、未設定の記録媒体の種類としてユーザ登録用紙を設定する。記録装置側の情報がなくても設定できる、用紙の名称や、所定の印字パラメータはアプリケーション内でユーザが設定する。ここでの所定の印字パラメータとは、記録装置が異なることによって変わることのないパラメータを指し、例えば記録媒体の表面特性に合わせたインクの打ち込み量や、記録媒体の重さに即した搬送時のモータ動作等を指定するパラメータである。また、画像処理系のパラメータであってもよく、ICCプロファイル等であってもよい。設定された用紙の名称と印字パラメータは紐づけてホストコンピュータ701に保存される。
【0058】
ステップS712では、ステップS711で設定した用紙の名称を示す情報や印字パラメータを示す情報がUSB通信等の通信により記録装置のI/F回路410を介して記録装置702に送信される。
【0059】
ステップS713では、記録装置702は、ホストコンピュータ701から送られた用紙の名称と印字パラメータを取得すると、記録装置702内のメモリに格納する。ここではEEPROM404に格納する。格納が完了すると、ステップS714で記録装置702はホストコンピュータ701に対して、登録が完了したことを示す情報を送信する。
【0060】
ホストコンピュータ701は登録が完了したことを示す情報を受信すると、ステップS715で記録媒体の種類を推定するための特性値を取得することを依頼する情報を記録装置702に送信する。
【0061】
記録装置702は特性値を取得することを依頼する情報を受信すると、ステップS716で記録装置にユーザ登録用紙を給紙するようにユーザに促す通知を入出力部406にて行う。給紙の方法は図5で説明した方法と同様に、ユーザが記録媒体をセットした後に入出力部406から給紙開始の指示を記録装置702に送り、CPU401がこの指示を受け付けると給紙を開始する。給紙が開始されると、記録媒体は搬送ローラによりプラテン106上の光学センサ201が検知可能な位置まで搬送される。
【0062】
給紙が完了すると、ステップS717にて、記録媒体の特性値を測定する。測定は図5のステップS102~S103と同様の処理によって行う。まず、キャリッジ101がX方向に移動し光学センサ201が記録媒体上に移動する。そして、光学センサ201によって記録媒体の正反射値、乱反射値、紙厚を取得する。測定値は一旦RAM403などのメモリに記憶する。
【0063】
ステップS718では、ステップS717で取得した測定値に基づいて、特性値の基準値である、正反射値V1L_newmedia、乱反射値V2L_newmedia、紙厚V3L_newmediaと、各特性値の補正値α_newmedia、β_newmedia、γ_newmediaを算出する。また、測定値に基づいて抽出範囲を示す抽出限度値J1_newmedia、J1‘_newmedia、J2_newmedia、J2‘_newmedia、J3_newmedia、J3‘_newmediaと、学習範囲を示す学習限度値L1_newmedia、L1‘_newmedia、L2_newmedia、L2‘_newmedia、L3_newmedia、L3‘_newmediaを算出する。算出した値はEEPROM404に保存する。EEPROM404において、特性値の基準値は図7(a)で示す領域に、補正値は図7(b)に示す領域に、抽出限度値及び学習限度値は図7(c)に示す領域にそれぞれ保存する。各値の算出方法は後述する。
【0064】
本実施形態では、他の記録装置でもユーザ登録用紙を候補として抽出することが可能なように、ステップS717で取得した測定値をそのまま特性値の基準値とするのではなく、特性値の基準値と補正値とに分ける。このようにすることで、特性値の基準値は、特性値の測定を行った記録装置の取り付け誤差等による特性値の基準値のずれを小さくすることができる。そして特性値の基準値を他の記録装置に送信し、送られた特性値の基準値に他の記録装置の補正を適用することで他の記録装置でも精度よくユーザ登録用紙を抽出することができる。
【0065】
ステップS719では、記録装置702はステップS718で算出した特性値の基準値をホストコンピュータ701に送信する。
【0066】
ホストコンピュータ701は特性値の基準値を受信すると、ステップS720にて受信した特性値の基準値を用紙の名称と紐づけて保存する。そして、他の記録装置で今回保存したユーザ登録用紙を登録する場合に使用する。他の記録装置に登録する場合については図10(b)で説明する。
【0067】
以下では、ステップS718における特性値の基準値、補正値、抽出限度値、学習限度値の算出方法を説明する。
【0068】
正反射値と紙厚は、光学センサ201と記録媒体までの距離の変化による値の変化が大きく、乱反射値は光学センサ201と記録媒体までの距離の変化による値の変化が小さい。取り付け誤差によって、機体ごとに光学センサ201と記録媒体の距離が異なることがある。そのため、本実施形態では正反射値と紙厚は、ステップS717で測定した測定値から補正値を逆算したものを特性値の基準値とし、乱反射値は測定値をそのまま特性値の基準値とする。
【0069】
正反射値と紙厚の補正値には、記録装置702に設定されている記録媒体であって、使用したことのある記録媒体の補正値の平均値を設定する。これは、組付け誤差による特性値の基準値と光学センサ201による測定値のずれが補正値に載っていると考え、平均することで他の要因による補正値の影響を小さくするためである。例えば、EEPROM404に使用履歴がある記録媒体が普通紙A、普通紙B、普通紙C、光沢紙D、光沢紙F、コート紙Hであった場合には、ユーザ登録用紙の特性値の基準値は以下のようになる。
V1L_newmedia = V1 / average(α_a , α_b , α_c , α_d , α_f , α_h)
V2L _newmedia = V2
V3L _newmedia = V3 / average(γ_a , γ_b , γ_c , γ_d , γ_f , γ_h)
そして、ユーザ登録用紙の補正値は以下のようになる。
α_newmedia= average(α_a , α_b , α_c , α_d , α_f , α_h)
β_newmedia =1
γ_newmedia = average(γ_a , γ_b , γ_c , γ_d , γ_f , γ_h)
尚、工場等で予め測定が行われ、補正値が格納されている場合にはすべての補正値の平均値をユーザ登録用紙の補正値として設定するようにしてもよい。
【0070】
また、抽出限度値と学習限度値は算出した特性値の基準値に基づいて算出する。ユーザ登録用紙の抽出範囲と学習範囲は特性値の基準値から予め定められた大きさの範囲に設定する。たとえば正反射値の抽出範囲は特性値の基準値から±Q1の範囲であり、正反射値の学習範囲は特性値の基準値から±R1であるとすると、
J1_newmedia=Q1
J1‘_newmedia=-Q1
L1_newmedia=R1
L1‘_newmedia=-R1
他の特性値も同様に設定する。乱反射値は以下のようになる。
J2_newmedia=Q2
J2‘_newmedia=-Q2
L2_newmedia=R2
L2‘_newmedia=-R2
紙厚は以下のようになる。
J3_newmedia=Q3
J3‘_newmedia=-Q3
L3_newmedia=R3
L3‘_newmedia=-R3
以上のようにして測定値から各値を算出する。
【0071】
図10(b)は、記録装置702で登録したユーザ登録用紙を、ホストコンピュータ701と接続された他の記録装置703にも登録するときの流れを示す図である。図10(b)は図10(a)の処理が完了した後に行われる処理である。そのため、ユーザ登録用紙の名称、印字パラメータ、特性値の基準値がホストコンピュータ701に保存されている状態である。
【0072】
ステップS721では、ホストコンピュータ701は記録装置703にユーザ登録用紙の名称、印字パラメータ、特性値の基準値を送信する。
【0073】
ステップS722で、記録装置703は受信したユーザ登録用紙の名称、印字パラメータ、特性値の基準値をEEPROM404に保存する。
【0074】
次に、ステップS723は、ユーザ登録用紙の補正値、抽出限度値、学習限度値を設定する。抽出限度値、学習限度値についてはステップS718と同じように予め定められた値を設定する。また、補正値は図10(a)のステップS718で説明した方法で算出する。例えば、記録装置703における使用履歴が普通紙A、普通紙C、光沢紙D、光沢紙F、コート紙Gがあった場合には、記録装置703におけるユーザ登録用紙の補正値は以下のようになる。
α_newmedia= average(α_a , α_c , α_d , α_f , α_g)
β_newmedia =1
γ_newmedia = average(γ_a , γ_c , γ_d , γ_f , γ_g)
【0075】
以上のように、ある記録装置で測定した測定値に基づいて、特性値の基準値を算出する。この特性値の基準値は他の記録装置でも使用できるため、複数の同じ機能を有する記録装置において同じユーザ登録用紙を使用する場合に、最初の1回だけ特性値の測定動作を行えばよいため、ユーザの手間を減らすことができる。また、その記録装置固有の取り付け誤差の影響を小さくした基準値を算出することができるため、他の記録装置においても精度よくユーザ登録用紙を検知し、候補として通知することができる。
【0076】
この方法を用いれば、例えば記録媒体の販売会社が自社の記録媒体を販売するときに、特性値の基準値のパラメータをと記録媒体をセットで販売することができる。特性値の基準値を登録すれば、購入先では特性値の基準値を設定するために光学センサで特性値を測定する動作を行わなくても、自社の記録媒体を記録媒体の種類の検出の対象とすることができる。
【0077】
本実施形態ではホストコンピュータ701が記録装置702と記録装置703の共通のホストの場合を説明したが、各記録装置に接続するホストコンピュータは別でも良い。この場合は、記録装置702に接続するホストコンピュータ701で作成した各種パラメータ群を、記録装置703に接続する別のホストコンピュータにコピーすればよい。さらには、記録装置100の入出力部406でユーザ登録用紙の名称や印字パラメータを設定でき、記録装置同士での情報のやり取りが可能な場合には、図10で説明した処理をホストコンピュータを介さずに実現してもよい。
【0078】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、補正値には主に取り付け誤差によるずれが含まれるとしてユーザ登録用紙の補正値を設定した。本実施形態では補正値に他の要因によるずれも含まれることを考慮してユーザ登録用紙の補正値を設定する。第1の実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0079】
記録ヘッド102から吐出されるインクから、主滴から分離して記録媒体に着弾せずに記録装置内に浮遊するミストが発生する。このミストが光学センサ201のLEDやフォトダイオードに付着すると、測定時の出力が低下する。ミストによる出力の低下の測定値への影響は、紙種によって傾向が異なる。一方で、組付け誤差の測定値への影響は紙種によってあまり傾向が変わらない。
【0080】
そこで、本実施形態では図10(a)はステップS718において、記録した枚数が少ない段階で設定した補正値を組付け誤差による補正値とし、これを全種類の共通の補正値(共通補正値)とする。そして、ユーザ登録用紙が追加された場合の補正値はこの共通補正値を設定する。以下に具体例を挙げて説明する。
【0081】
使用履歴がある記録媒体が普通紙A、光沢紙D、コート紙Hであったとする。さらに、給紙実行回数が少ないうちに給紙された記録媒体が普通紙Aとコート紙Hであったとする。この場合、ユーザ登録用紙の補正値を以下のように設定する。
α_newmedia = average(α_a , α_h)
β_newmedia = average(β_a , β_h)
γ_newmedia = average(γ_a , γ_h)
そして、特性値の基準値を以下のように設定する。
V1L_newmedia = V1 / average(α_a , α_h)
V2L_newmedia = V2 / average(β_a , β_h)
V3L_newmedia = V3 / average(γ_a , γ_h)
以上のように、記録媒体の種類で異なるミストの影響をユーザ登録用紙の補正値に反映させないようにする。
【0082】
このように設定したユーザ登録用紙を図10(b)の他の記録装置に適用する場合の例を以下示す。図10(b)のステップS723において、ユーザ登録用紙の補正値を設定する。使用履歴において、普通紙B、光沢紙Cであった場合には補正値は以下のようになる。
α_newmedia = average(α_b , α_c)
β_newmedia = average(β_b , β_c)
γ_newmedia = average(γ_b , γ_c)
【0083】
また、別の方法で補正値を設定するようにしてもよい。光学センサにミストが付着することによる測定値への影響の傾向は、記録媒体の表面にインクの受容層があるか否かによって、また受容層がある場合には受容層の厚みによって影響の傾向が似ている。例えば、普通紙は受容層を有しておらず、普通紙のカテゴリに含まれる普通紙A、普通紙B、普通紙Cの測定値への影響の傾向は似ている。受容層を有しない普通紙のカテゴリに含まれる記録媒体と、受容層を有する光沢紙のカテゴリに含まれる記録媒体の測定値への影響の傾向は異なる。
【0084】
そこで、ユーザ登録用紙がどのカテゴリに含まれるかを判定し、その判定結果のカテゴリに含まれる記録媒体の種類の補正値の平均値をユーザ登録用紙の補正値に設定するようにすることもできる。そしてその補正値に基づいてユーザ登録用紙の特性値の基準値を算出する。
【0085】
ユーザ登録用紙がどのカテゴリに含まれるかの判定は、既に登録されている記録媒体の比較値、つまり特性値の基準値に補正値を掛けた値と、ステップS717で測定したユーザ登録用紙の測定値との近さを判定する。最も近い記録媒体の種類が属しているカテゴリをユーザ登録用紙のカテゴリと判定する。
【0086】
以上のように、ユーザ登録用紙と近い記録媒体の種類の補正値を用いてユーザ登録用紙の補正値及び特性値の基準値を設定することで、ミストの影響を考慮した補正値、特性値の基準値を設定することができる。
【0087】
(第3の実施形態)
上述の実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0088】
記録装置の使われ方として、しばしば行われるのが、ユーザの指定と実際の紙種が異なる、というものである。一例をあげると、再生用紙を使用するときにユーザは普通紙を指定するケースはよく見られる。このような場合、再生用紙と普通紙は表面の光学的反射特性が異なるため、以下のような事態になる。ユーザは給紙時に入出力部406で使用する記録媒体の選択を行う(図5ステップS112)が、このとき普通紙Aを選択した。しかし、実際に給紙された記録媒体は再生紙Ωであった。このような場合、光学センサ201で測定した記録媒体の特性の測定値は、予め保存されている普通紙Aの特性値の基準値、補正値から求められる、測定値と比較する値とは大きく異なることがある。再生紙Ωの測定値を図9のステップS205あるいはステップS206でEEPROM404に保存し、保存した測定値に基づいて補正値を更新してしまうと、理想的な補正値からずれてしまう。このような補正値を用いてユーザ登録用紙の補正値を設定し、そこから逆算して特性値の基準値を求めると、本来の特性値の基準値と大きくずれたものが設定されてしまう恐れがある。
【0089】
そこで、本実施形態では理想的な補正値からずれていると判断した記録媒体の種類の補正値はユーザ登録用紙の補正値の算出に使用しない。以下に本実施形態の図10(a)のステップS718でのユーザ登録用紙の補正値及び特性値の基準値を算出する方法を説明する。
【0090】
まず、EEPROM404に登録されているすべての種類の補正値を比較し、ある範囲内に入っているかを判断する。判断の方法としては、ある紙種の補正値から一定値以内に他の記録媒体の補正値が入っているかを判断する方法がある。他の方法としては、補正値をソートし、分布をヒストグラム化して3σ内に入るかを判断する方法もある。このようにしてある範囲内に補正値が入るものは、ユーザの選択と実際の記録媒体の種類が異なっていないと判断する。理由としては、補正値には取り付け誤差や、光学センサに付着するミストによって予め設定している特性値の基準値からのずれが反映される。第2の実施形態で説明したように光学センサに付着するミストによるずれの影響は記録媒体の種類によって異なるが、そこまで大きく異なるわけではない。そのため、補正値は紙種によらずある程度似た値になると考えられる。そのため、ある範囲内に入らなかった記録媒体の種類はなんらか別の種類の測定値によって補正値を算出したと判定する。
【0091】
例えば、使用履歴がある記録媒体が普通紙A、光沢紙D、コート紙Hであったとする。普通紙A、光沢紙D、コート紙Hの補正値を用いて、それぞれの補正値をヒストグラム化したところ、普通紙Aの補正値が3σ内に入らなかったとする。この場合には、ユーザ登録用紙の補正値には光沢紙D、コート紙Hの補正値の平均値を設定する。
α_newmedia = average(α_d , α_h)
β_newmedia = average(β_d , β_h)
γ_newmedia = average(γ_d , γ_h)
そして、ユーザ登録用紙の特性値の基準値を以下のように設定する。
V1L_newmedia = V1 / average(α_d , α_h)
V2L_newmedia = V2 / average(β_d , β_h)
V3L_newmedia = V3 / average(γ_d , γ_h)
以上のように、ユーザの選択した記録媒体の種類と実際に使用された記録媒体の種類がことなる記録媒体があった場合にも、適切なユーザ登録用紙の補正値及び特性値の基準値を設定することができる。
【0092】
(第4の実施形態)
本実施形態の図10(a)のステップS718において、ユーザ登録用紙の補正値及び特性値の基準値を設定する方法を説明する。上述の実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0093】
ステップS717で取得した測定値が、EEPROM404に保存されている既存の記録媒体の種類の比較値、つまり特性値の基準値に補正値を掛けた値とが近い値の場合を考える。ここでは普通紙Aの値が近いとする。この場合、普通紙Aとユーザ登録用紙とは同じような特性を有する記録場体であると考えられる。本実施形態では、ユーザ登録用紙の補正値及び特性値の基準値に、普通紙Aの補正値及び特性値の基準値を設定する。
α_newmedia=α_a
β_newmedia =β_a
γ_newmedia =γ_a
V1L_newmedia = V1L_a
V2L_newmedia = V2L_a
V3L_newmedia = V3L_a
【0094】
ユーザが、次回以降の給紙の際に普通紙Aあるいはユーザ登録用紙を選択すると、選択された記録媒体の補正値が図9の補正値更新処理によって更新される。この更新が繰り返されることによって普通紙Aとユーザ登録用紙の値がそれぞれの検出に適切なものになり、検出精度が上がっていく。
【符号の説明】
【0095】
100 記録装置
105 記録媒体
201 光学センサ
401 CPU
404 EEPROM
406 入出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10