IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本車輌製造株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-金属部品の回収方法 図1
  • 特許-金属部品の回収方法 図2
  • 特許-金属部品の回収方法 図3
  • 特許-金属部品の回収方法 図4
  • 特許-金属部品の回収方法 図5
  • 特許-金属部品の回収方法 図6
  • 特許-金属部品の回収方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】金属部品の回収方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/00 20060101AFI20241202BHJP
   B09B 3/40 20220101ALI20241202BHJP
   B09B 5/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H01F41/00 Z
B09B3/40
B09B5/00 Q ZAB
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021057154
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154233
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】土井 一慶
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-260437(JP,A)
【文献】特開2013-103158(JP,A)
【文献】特開2004-074663(JP,A)
【文献】特開平07-117742(JP,A)
【文献】特開2000-299023(JP,A)
【文献】特開平11-004564(JP,A)
【文献】特開平11-128899(JP,A)
【文献】特開平11-019631(JP,A)
【文献】特開2019-044100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00- 5/00
B09C 1/00- 1/10
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
C22B 1/00-61/00
H01B 15/00
H01F 27/28
H01F 27/32
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10-41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属部品と、その金属部品をモールドする熱硬化性樹脂の樹脂層と、を備える樹脂モールド品から前記金属部品を回収する金属部品の回収方法において、
前記樹脂層は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂または尿素樹脂であり、
前記樹脂層の温度が100℃以上200℃未満になるように前記樹脂モールド品を常圧下で加熱して前記樹脂層を軟化させる第1工程と、その第1工程により軟化状態となった前記樹脂層を外力によって前記金属部品から取り除くことにより、前記樹脂モールド品から前記金属部品を回収する第2工程と、を備えることを特徴とする金属部品の回収方法。
【請求項2】
金属部品と、その金属部品をモールドする熱硬化性樹脂の樹脂層と、を備える樹脂モールド品から前記金属部品を回収する金属部品の回収方法において、
前記樹脂モールド品を常圧下で加熱して前記樹脂層を軟化させる第1工程と、その第1工程により軟化状態となった前記樹脂層を外力によって前記金属部品から取り除くことにより、前記樹脂モールド品から前記金属部品を回収する第2工程と、を備え、
前記第2工程では、前記金属部品の延設方向に延びる孔または凹みを有する支持部材の上に、前記樹脂層を切除することで形成された切除面を前記支持部材側に向ける姿勢で前記樹脂モールド品を載せ、前記孔または前記凹みに向けて前記金属部品を押し込む外力を加えることで前記金属部品から前記樹脂層を取り除くことを特徴とする金属部品の回収方法。
【請求項3】
前記第1工程における前記樹脂モールド品の加熱温度は、前記金属部品の融点よりも低い温度であることを特徴とする請求項1又は2に記載の金属部品の回収方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記樹脂層に切れ目を入れ、その切れ目に外力を加えることで前記金属部品から前記樹脂層を取り除くことを特徴とする請求項1記載の金属部品の回収方法。
【請求項5】
前記切れ目は、線状の前記金属部品の延設方向に沿って延び、且つ前記金属部品を含む平面に沿って切り込まれるものであり、
前記第2工程では、前記切れ目を広げる外力を加えることで前記金属部品から前記樹脂層を取り除くことを特徴とする請求項記載の金属部品の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属部品の回収方法に関し、特に、金属部品が破損することを抑制しつつ、金属部品の回収コストを低減できる金属部品の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂の樹脂層によって金属部品がモールドされた樹脂モールド品から金属部品を回収する技術が知られている。例えば、特許文献1には、樹脂層(モールド樹脂層5)に酸無水物が添加された樹脂モールド品(樹脂モールドコイル2)に対し、200℃の加熱を50時間行う技術が記載されている。この技術によれば、樹脂層から金属部品(巻線3,4)を引き抜くことができる程度まで樹脂層の機械的強度を低下させることができる。
【0003】
また、特許文献2には、水とドライアイスを樹脂モールド品と共にオートクレーブに入れて加圧し、その加圧環境下で200℃の加熱を行うことで樹脂層に水分を吸収させる技術が記載されている。この技術では、樹脂モールド品の加熱後に減圧、急冷または再加熱を行って樹脂層の水分を膨張させることにより、粉々に壊すことができる程度まで樹脂層の機械的強度を低下させることができる。
【0004】
これらの技術によれば、樹脂層の機械的強度を大きく低下させることができるので、樹脂層にモールドされた金属部品を加工することなく再利用可能な状態で回収できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-119757号公報(例えば、段落0034,0041,図1
【文献】特開2001-009436号公報(例えば、段落0020~0024)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の技術のように、金属部品を引き抜くことができる程度まで樹脂層の機械的強度を低下させる場合には、樹脂層に酸無水物が添加された樹脂モールド品に対し、200℃の高温下で50時間以上加熱する必要がある。よって、そのような高温下に金属部品も長時間晒されるため、金属部品が破損し易いという問題点がある。
【0007】
また、上述した特許文献2の技術のように、粉々に壊すことができる程度まで樹脂層の機械的強度を低下させる場合には、樹脂層に水分を吸収させるために高圧下で樹脂モールド品を加熱する必要がある。よって、高圧に耐え得る加熱装置を用いる必要があるので、金属部品の回収コストが増大するという問題点がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、金属部品が破損することを抑制しつつ、金属部品の回収コストを低減できる金属部品の回収方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために本発明の金属部品の回収方法は、金属部品と、その金属部品をモールドする熱硬化性樹脂の樹脂層と、を備える樹脂モールド品から前記金属部品を回収するものであり、前記樹脂層は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂または尿素樹脂であり、前記樹脂層の温度が100℃以上200℃未満になるように前記樹脂モールド品を常圧下で加熱して前記樹脂層を軟化させる第1工程と、その第1工程により軟化状態となった前記樹脂層を外力によって前記金属部品から取り除くことにより、前記樹脂モールド品から前記金属部品を回収する第2工程と、を備える。
本発明の金属部品の回収方法は、金属部品と、その金属部品をモールドする熱硬化性樹脂の樹脂層と、を備える樹脂モールド品から前記金属部品を回収するものであり、前記樹脂モールド品を常圧下で加熱して前記樹脂層を軟化させる第1工程と、その第1工程により軟化状態となった前記樹脂層を外力によって前記金属部品から取り除くことにより、前記樹脂モールド品から前記金属部品を回収する第2工程と、を備え、前記第2工程では、前記金属部品の延設方向に延びる孔または凹みを有する支持部材の上に、前記樹脂層を切除することで形成された切除面を前記支持部材側に向ける姿勢で前記樹脂モールド品を載せ、前記孔または前記凹みに向けて前記金属部品を押し込む外力を加えることで前記金属部品から前記樹脂層を取り除く。
【発明の効果】
【0010】
請求項1又は2に記載の金属部品の回収方法によれば、樹脂モールド品を常圧下で加熱して樹脂層を軟化させ、その軟化状態となった樹脂層を外力によって金属部品から取り除くので、樹脂モールド品の加熱時間を短くできる。即ち、従来のように樹脂層から金属部品を引き抜ける程度まで樹脂層の機械的強度を低下させるのではなく、金属部品から樹脂層を外力によって取り除ける程度に樹脂層を軟化させるものであるため、樹脂モールド品を長時間加熱する必要がない。よって、金属部品が高温下に長時間晒されることを抑制できるので、金属部品の破損を抑制できるという効果がある。また、樹脂モールド品を常圧下で加熱して樹脂層を軟化させるため、高圧に耐え得る加熱装置を用いる必要がない。よって、金属部品の回収コストを低減できるという効果がある。
また、請求項1記載の金属部品の回収方法によれば、樹脂層は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂または尿素樹脂であり、その樹脂層の温度が100℃以上200℃未満になるように樹脂モールド品を常圧下で加熱して樹脂層を軟化させるものである。よって、それらの熱硬化性樹脂からなる樹脂層を外力によって金属部品から取り除くことができるという効果がある。
また、請求項2記載の金属部品の回収方法によれば、樹脂層を切除することで金属部品から樹脂層を取り除くので、例えば、樹脂層に入れた切れ目に外力を加えて金属部品から樹脂層を取り除く場合に比べ、金属部品に加わる外力を低減できる。更に、金属部品の延設方向に延びる孔または凹みを有する支持部材の上に、樹脂層の切除によって形成された切除面を支持部材側に向ける姿勢で樹脂モールド品を載せ、支持部材の孔または凹みに向けて金属部品を押し込むことにより、金属部品から樹脂層を取り除くことができる。これにより、金属部品から樹脂層を取り除く外力を加える時に、樹脂モールド品を固定することや、複数の方向への外力を樹脂モールド品に加えることを不要にできるので、金属部品から樹脂層を容易に除去できるという効果がある。
【0011】
請求項記載の金属部品の回収方法によれば、請求項1又は2に記載の金属部品の回収方法の奏する効果に加え、次の効果を奏する。樹脂モールド品の加熱温度は、金属部品の融点よりも低い温度である。よって、金属部品から樹脂層を取り除くことを可能にしつつ、金属部品の破損を抑制できるという効果がある。
【0012】
請求項記載の金属部品の回収方法によれば、請求項1記載の金属部品の回収方法の奏する効果に加え、次の効果を奏する。樹脂層に切れ目を入れ、その切れ目に外力を加えて金属部品から樹脂層を取り除くので、樹脂層の軟化状態が金属部品を引き抜けない程度であっても、金属部品から樹脂層を容易に取り除くことができる。即ち、切れ目を入れずに樹脂層を取り除く場合に比べ、比較的弱い外力で樹脂層を取り除くことができるので、その外力による金属部品の破損を抑制できるという効果がある。
【0013】
請求項記載の金属部品の回収方法によれば、請求項記載の金属部品の回収方法の奏する効果に加え、次の効果を奏する。線状の金属部品の延設方向に沿って延び、且つ金属部品を含む平面に沿って切り込まれる切れ目を樹脂層に入れ、その切れ目を広げる外力を加えることで金属部品から樹脂層を取り除くので、樹脂層を取り除く時の外力が線状の金属部品を折り曲げる方向に加わることを抑制できる。よって、金属部品の破損を抑制できるという効果がある。
【0014】
【0015】
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、第1実施形態における樹脂モールド品の正面図であり、(b)は、図1(a)のIb-Ib線における樹脂モールド品の断面図である。
図2】(a)は、樹脂層に切れ目を入れた状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(b)は、切れ目に外力を加えて樹脂層を取り除く第1の方法を示す樹脂モールド品の断面図であり、(c)は、切れ目に外力を加えて樹脂層を取り除く第2の方法を示す樹脂モールド品の断面図であり、(d)は、切れ目に外力を加えて樹脂層を取り除く第3の方法を示す樹脂モールド品の断面図である。
図3】(a)は、1回目の操作によって樹脂層の一部が取り除かれた状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(b)は、1回目の操作後に残存した樹脂層を取り除く方法を示す樹脂モールド品の断面図であり、(c)は、2回目の操作によって樹脂層の一部が取り除かれた状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(d)は、2回目の操作後に残存した樹脂層を除去する方法を示す樹脂モールド品の断面図である。
図4】(a)は、樹脂層の一部が切除された状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(b)は、図4(a)の状態から樹脂層が更に切除された状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(c)は、樹脂層の一部が切除された状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(d)は、図4(c)の樹脂モールド品に外力を加えて樹脂層を取り除く方法を示す樹脂モールド品および支持部材の断面図である。
図5】(a)は、第2実施形態の樹脂モールド品の断面図であり、(b)は、樹脂層に切れ目を入れた状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(c)は、切れ目に外力を加えて樹脂層を取り除く方法を示す樹脂モールド品の断面図である。
図6】(a)は、第3実施形態の樹脂モールド品の断面図であり、(b)は、樹脂層に切れ目を入れた状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(c)は、切れ目に外力を加えて樹脂層を取り除く方法を示す樹脂モールド品の断面図である。(d)は、他の例を示す樹脂モールド品の断面図である。
図7】(a)は、第4実施形態の樹脂モールド品の断面図であり、(b)は、樹脂層に切れ目を入れた状態を示す樹脂モールド品の断面図であり、(c)は、切れ目に外力を加えて樹脂層を取り除く方法を示す樹脂モールド品の断面図である。(d)は、他の例を示す樹脂モールド品の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、第1実施形態の樹脂モールド品1の構成について説明する。図1(a)は、第1実施形態における樹脂モールド品1の正面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb-Ib線における樹脂モールド品1の断面図である。なお、図1(b)では、金属部品2の内周側(図1(b)の左側)に位置する樹脂層3を除去した状態を図示している。また、図1(b)では、樹脂モールド品1の断面のみを図示すると共に、樹脂層3のハッチングを省略しており、図2以降においても同様とする。
【0018】
図1に示すように、樹脂モールド品1は、金属部品2を樹脂層3によってモールド(封止)したコイルである。金属部品2は、複数の導線を撚り合わせた断面円形の撚線であり、環状に形成される金属部品2が樹脂層3によってモールドされる。
【0019】
樹脂層3は、熱硬化性樹脂(本実施形態では、エポキシ樹脂)から構成されており、直方体状の樹脂層3で金属部品2の全体が覆われる。樹脂層3の外面からは一対の端子4が突出しており、図示は省略するが、導線から成る金属部品2の両端は一対の端子4に接続されている。
【0020】
樹脂モールド品1は、熱硬化性樹脂の樹脂層3を加熱、硬化させることで金属部品2がモールドされるが、その製造方法は公知の方法が採用可能であるので詳細な説明は省略する。
【0021】
加熱によって一度硬化した樹脂層3は、再度加熱しても溶融することはないが、軟化はする。材質によっては、荷重たわみ温度(軟化点)以上に加熱すると外力によって容易に変形する程度に軟化する。よって、その軟化状態となった樹脂層3に外力を加えて金属部品2から取り除くことにより(図2参照)、樹脂モールド品1から金属部品2を再利用可能な状態で回収できる。
【0022】
なお、樹脂層3の荷重たわみ温度は、JIS K7191-1:2015に規定される方法で求められる温度である(軟化点は、例えばエポキシ樹脂であれば、JIS K7234:1986に規定される方法で求められる温度である)。
【0023】
樹脂モールド品1を加熱する工程(第1工程)で用いる装置(手段)は、樹脂層3を加熱できるものであれば公知のものを採用でき、例えば、樹脂モールド品1が収まる大きさの加熱炉などが例示される。
【0024】
特に、本実施形態では、外力によって取り除くことができる程度に樹脂層3を軟化させるだけで良く、従来のように高圧下で樹脂層3を加熱する必要がない。つまり、常圧の加熱炉内で樹脂モールド品1を加熱すれば良いため、高圧に耐え得る加熱炉を用いる必要が無い。よって、金属部品2を回収するための装置コストを低減できる。
【0025】
加熱炉の炉内の温度は、上記の通り、樹脂層3が荷重たわみ温度(軟化点)以上になる温度に設定される。よって、本実施形態のように樹脂層3がエポキシ樹脂であれば、樹脂層3の温度が100℃以上になるように、例えば加熱炉内の温度を120℃以上に設定する。
【0026】
加熱炉における樹脂モールド品1の加熱時間は、樹脂層3が軟化状態となるまでの時間(例えば、5時間以上10時間以下)であれば良い。即ち、外力によって金属部品2から取り除くことができる程度に樹脂層3を軟化させるだけで良いため、樹脂モールド品1を長時間(例えば、50時間以上)加熱することは不要である。よって、金属部品2が高温下に長時間晒されることを抑制できるので、金属部品2の劣化を抑制できる。
【0027】
なお、上述した通り、図1(b)に示す断面図は、環状の金属部品2の内周側の樹脂層3を除去した状態を示しているが、このような除去を行う場合には、カッターやナイフなどの刃を有する工具を用いれば良い。但し、図1(b)に示すような樹脂層3の一部の除去を省略し、図2~4を参照して後述する樹脂層3の除去のみを行っても良い。
【0028】
このように、本実施形態では、従来のように金属部品2を引き抜ける程度まで樹脂層3を軟化させたり、ハンマーで叩いて粉々にできるまで樹脂層3を脆化させたりするものではなく、所定の弾性を持つ程度に樹脂層3を軟化させるものである。よって、従来に比べて樹脂層3を金属部品2から取り除き難くなるが、この樹脂層3の除去方法について、図2を参照して説明する。
【0029】
図2(a)は、樹脂層3に切れ目30を入れた状態を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図2(b)は、切れ目30に外力を加えて樹脂層3を取り除く第1の方法を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図2(c)は、切れ目30に外力を加えて樹脂層3を取り除く第2の方法を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図2(d)は、切れ目30に外力を加えて樹脂層3を取り除く第3の方法を示す樹脂モールド品1の断面図である。
【0030】
また、以下に説明する樹脂層3の除去は、工具T1~T3を用いた手作業で行っても良いし、そのような工具T1~T3(又はそれに類似する手段)を有する機械化された装置で行っても良い。図3以降で説明する除去操作においても同様である。
【0031】
図2(a)に示すように、樹脂モールド品1を加熱して樹脂層3を軟化させる工程(第1工程)の後、樹脂層3を取り除く工程(第2工程)は、樹脂モールド品1を冷却することなく(第1工程での加熱による軟化状態を維持したまま)行われる。樹脂層3を取り除く工程では、上述したカッターなどの刃物を有する工具を用いて樹脂層3に切れ目30を入れる。なお、切れ目30は、樹脂層3を軟化させる(加熱する)前に入れても良い。
【0032】
切れ目30は、樹脂層3の外面から金属部品2に向けて切り込まれるものである。即ち、切れ目30は、線状の金属部品2の延設方向(軸方向)(図1の紙面垂直方向)に沿って延び、且つ金属部品2を含む平面に沿って切り込まれるものであり、本実施形態では、金属部品2の表面またはその近傍まで切れ目30が形成される。なお、金属部品2の表面の近傍とは、金属部品2の表面からの距離が1mm以下となる領域であるが、金属部品2の表面からの距離が1mmを超える領域に切れ目30を入れる構成でも良い。
【0033】
図2(b)に示すように、樹脂層3を除去する第1の方法では、L字状に屈曲する屈曲部T1aを先端部に有する一対の工具T1(バール)を用いる。一対の工具T1の各々の屈曲部T1aを切れ目30に挿入した(引っ掛けた)状態で、工具T1の各々の基端側を引っ張って切れ目30を広げる。これにより、樹脂層3を金属部品2から引き剥がすことができる。なお、この第1の方法に類似する他の除去方法として、ペンチのような工具の先端部を切れ目30に差し込んで押し広げる方法が例示される。
【0034】
図2(c)に示すように、樹脂層3を除去する第2の方法では、先端部が扁平な棒または板状に形成される工具T2(バール)を用いる。切れ目30に工具T2の先端部を差し込み、樹脂モールド品1を図示しない固定手段で固定した状態で、切れ目30を広げる方向に工具T2を回動させる(又は引っ張る)。これにより、樹脂層3を金属部品2から引き剥がすことができる。
【0035】
図2(d)に示すように、樹脂層3を除去する第3の方法では、一対のアーム部T3aを先端部に有する工具T3(くわえ部を有するペンチ)を用いる。一方のアーム部T3aを切れ目30に差し込んで樹脂層3を掴み、樹脂モールド品1を図示しない固定手段で固定した状態で、切れ目30を広げる方向に工具T3を回動させる(又は引っ張る)。これにより、樹脂層3を金属部品2から引き剥がすことができる。
【0036】
これら第1~3の方法のように、切れ目30を広げる外力によって金属部品2から樹脂層3を引き剥がすことにより、樹脂層3の軟化状態が金属部品2を引き抜けない程度のものであっても、金属部品2から樹脂層3を容易に取り除くことができる。即ち、切れ目30を入れずに樹脂層3を取り除く場合に比べ、比較的弱い外力で樹脂層3を取り除くことができるので、その外力による金属部品2の破損を抑制できる。
【0037】
また、切れ目30は、線状の金属部品2の延設方向(軸方向)に沿って延び、且つ金属部品2を含む平面に沿って切り込まれるものである。よって、切れ目30を広げて樹脂層3を引き剥がす時の力が金属部品2の周方向に作用するため、樹脂層3を取り除く時の外力で金属部品2が折れ曲がることを抑制できる。従って、金属部品2の破損を抑制できる。
【0038】
このように、樹脂層3に外力を加えて取り除く場合、その外力によって金属部品2が変形(破損)するおそれがある。本実施形態では、金属部品2がアルミニウム製の導線であるため、金属部品2の温度が200℃を超えると機械的強度が大きく低下し、樹脂層3を取り除く時の外力で金属部品2が変形し易くなる。よって、金属部品2を再利用可能な状態で回収できないことがある。
【0039】
従って、上述した樹脂モールド品1を加熱する際(第1工程)の温度は、樹脂層3が荷重たわみ温度(軟化点)以上になる温度、且つ金属部品2が融点に達しない十分に低い温度であって、金属部品2から樹脂層3を取り除く時の外力で金属部品2が破損(変形)しないで、且つ機械的強度を保てる温度であることが好ましい。
【0040】
具体的には、本実施形態では樹脂層3がエポキシ樹脂であり、金属部品2がアルミニウムであるため、加熱時の樹脂層3の温度が100℃以上200℃未満になるように加熱する(加熱炉の温度を設定する)ことが好ましい。これにより、樹脂層3を外力で取り除くことを可能にしつつ、その外力で金属部品2が変形(破損)することを抑制できる。また、かかる加熱時の樹脂層3の温度が120℃以上150℃未満になるように加熱することがより好ましい。これにより、樹脂層3を外力で取り除くことを容易にしつつ、その外力で金属部品2が破損することをより効果的に抑制できる。
【0041】
ここで、上述した第1~3の方法によって樹脂層3を取り除く場合、工具T1~T3による1回の除去操作では全ての樹脂層3を取り除けない場合がある。この場合に樹脂層3を取り除く方法について、図3を参照して説明する。
【0042】
図3(a)は、1回目の操作によって樹脂層3の一部が取り除かれた状態を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図3(b)は、1回目の操作後に残存した樹脂層3を取り除く方法を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図3(c)は、2回目の操作によって樹脂層3の一部が取り除かれた状態を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図3(d)は、2回目の操作後に残存した樹脂層3を除去する方法を示す樹脂モールド品1の断面図である。
【0043】
図3(a)に示すように、切れ目30に外力を加えて樹脂層3を引き剥がした場合、樹脂層3の一部が破断された破断面31が樹脂モールド品1に形成されることがある。このような場合には、図3(b)に示すように、一対の工具T3を用いて樹脂層3を取り除く。
【0044】
具体的には、切れ目30を含む樹脂層3の一部を一方の工具T3のアーム部T3aによって掴み、破断面31を含む樹脂層3の一部を他方の工具T3のアーム部T3aによって掴む。そして、樹脂層3を掴んだ状態で、一対の工具T3を金属部品2の周方向で異なる方向に(樹脂層3から金属部品2を押し出すように)回動させる。これにより、樹脂層3を金属部品2から引き剥がすことができる。
【0045】
図3(c)に示すように、上記の2回目の操作により、樹脂層3の一部が再度破断された破断面32が樹脂モールド品1に形成されることがある。この場合には、図3(d)に示すように、破断面31を含む樹脂層3の一部を一方の工具T3のアーム部T3aによって掴み、破断面32を含む樹脂層3の一部を他方の工具T3のアーム部T3aによって掴む。そして、上述した2回目の操作と同様に、一対の工具T3を金属部品2の周方向で異なる方向に(樹脂層3から金属部品2を押し出すように)回動させる。これにより、樹脂層3を金属部品2から引き剥がすことができる。
【0046】
このように、1又は複数回の除去操作で樹脂層3が残存した場合には、切れ目30や破断面31,32を含む樹脂層3の一部を一対の工具T3で掴んだ状態で、それら一対の工具T3を金属部品2の周方向で異なる方向に回動させて樹脂層3を引き剥がす。これにより、樹脂層3を引き剥がす時の力が金属部品2の周方向に作用するので、樹脂層3を取り除く時の力で線状の金属部品2が折れ曲がることを抑制できる。よって、金属部品2の破損を抑制できる。
【0047】
なお、工具T3を用いて樹脂層3を引き剥がす場合に、一対の工具T3ではなく、3以上の工具T3で樹脂層3を掴んでも良い。また、同一種類の複数の工具T3で樹脂層3を掴むのではなく、異なる種類の複数の工具で樹脂層3を掴んでも良い。
【0048】
次いで、図4を参照して、樹脂層3に切れ目30a~30dを入れることで金属部品2から切除する場合について説明する。図4(a)は、樹脂層3の一部が切除された状態を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図4(b)は、図4(a)の状態から樹脂層3が更に切除された状態を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図4(c)は、樹脂層3の一部が切除された状態を示す樹脂モールド品1の断面図であり、図4(d)は、図4(c)の樹脂モールド品1に外力を加えて樹脂層3を取り除く方法を示す樹脂モールド品1及び支持部材5の断面図である。なお、図4(d)では、支持部材5の断面のみを図示している。
【0049】
図4(a)に示すように、樹脂層3の一部を切除する場合には、金属部品2の表面(又はその近傍)に沿って互いに平行な一対の切れ目30a,30bを入れる。即ち、切れ目30a,30bは、線状の金属部品2の延設方向(軸方向)に沿って延び、且つ金属部品2を含まない平面に沿って切り込まれるものである。これにより、切れ目30a,30bに沿って樹脂層3の一部を切除できる。よって、上述したような切れ目30(図3参照)を押し広げて樹脂層3を取り除く場合に比べ、金属部品2に外力が加わることを抑制できるので、金属部品2の破損を抑制できる。
【0050】
次いで、図4(b)に示すように、切れ目30a,30bによって一部が切除された樹脂層3に対し、更に一対の切れ目30c,30dを入れて切除する。一対の切れ目30c,30dは互いに平行な切れ目であって、一対の切れ目30a,30bと直交する方向に延びる切れ目である。これにより、4回の切れ目30a~30dを入れる操作によってほぼ全ての樹脂層3を金属部品2から取り除くことができる。このように、樹脂層3の切除を複数回繰り返してほぼ全ての樹脂層3を取り除くことにより、金属部品2が外力によって破損することを抑制できる。
【0051】
なお、複数回の樹脂層3の切除により、例えば図4(b)に示すように金属部品2の表面に僅かな樹脂層3が残存する場合には、ブラッシング等によって取り除けば良い。
【0052】
図4(c)及び図4(d)に示すように、切れ目30aを入れて樹脂層3の一部を切除した後、支持部材5を用いて樹脂層3を取り除くことも可能である。具体的には、支持部材5は、金属部品2の形状(本実施形態では、円環状)に対応した形状の長孔50(又は凹み)を有する部材である。切れ目30aによる樹脂層3の切除によって形成された面を切除面33とすると、その切除面33を支持部材5の長孔50側に向ける姿勢、即ち、長孔50の上に金属部品2が配置される姿勢で樹脂モールド品1を支持部材5の上に載置する。
【0053】
そして、その載置状態で樹脂層3の切除面33とは反対側の外面34を押し込む外力を加える。これにより、金属部品2が長孔50に向けて押し込まれる時に樹脂層3が取り除かれる。よって、上述したような工具T1~T3(図3参照)によって樹脂層3を引き剥がす場合に比べ、樹脂モールド品1を固定することや、複数の方向への外力を樹脂モールド品1に加えることを不要にできる。
【0054】
次いで、図5~7を参照して、第2~4実施形態について説明するが、第1~4実施形態の各実施形態において同一の部分には同一の符号を付してその説明を省略する。また、後述する第2~4実施形態における樹脂モールド品201,301,401を加熱する工程(第1工程)は、第1実施形態と同様の条件であるため、かかる工程の説明は省略する。
【0055】
まず、第2実施形態について説明する。図5(a)は、第2実施形態の樹脂モールド品201の断面図であり、図5(b)は、樹脂層203に切れ目230を入れた状態を示す樹脂モールド品201の断面図であり、図5(c)は、切れ目230に外力を加えて樹脂層203を取り除く方法を示す樹脂モールド品201の断面図である。なお、図5では、理解を容易にするために繊維強化樹脂235にドット状のハッチングを付しており、図6以降においても同様とする。
【0056】
図5(a)に示すように、第2実施形態の樹脂モールド品201は、シート状の繊維強化樹脂235が積層されることで樹脂層203が形成される。繊維強化樹脂235は、ガラス繊維や炭素繊維などの補強繊維に熱硬化性樹脂を含侵させたSMC(Sheet Molding Compounds)である。本実施形態では、1枚の繊維強化樹脂235を金属部品2に複数回巻き付けることによって金属部品2がモールドされる。よって、繊維強化樹脂235は、断面視において金属部品2側の端部E1から外周側の端部E2にかけて、金属部品2を中心とした渦巻き状に形成される。
【0057】
図5(b)に示すように、金属部品2から樹脂層203を取り除く場合には、繊維強化樹脂235の外周側の端部E2の内側に向けて切れ目230を入れる。切れ目230を形成した後、図5(c)に示すように、工具T3の一対のアーム部T3aのうちの一方を切れ目230に挿入し、繊維強化樹脂235の外周側の端部E2を掴む。その状態で金属部品2の周方向に工具T3を回動させ、金属部品2に巻かれた状態の繊維強化樹脂235を広げるようにようにして引き剥がす。これにより、1枚の繊維強化樹脂235を金属部品2から剥がす操作により、ほぼ全ての樹脂層203を取り除くことができる。よって、樹脂層203を効率良く除去できるので、金属部品2を容易に回収できる。
【0058】
次いで、第3実施形態について説明する。図6(a)は、第3実施形態の樹脂モールド品301の断面図であり、図6(b)は、樹脂層303に切れ目330を入れた状態を示す樹脂モールド品301の断面図であり、図6(c)は、切れ目330に外力を加えて樹脂層303を取り除く方法を示す樹脂モールド品301の断面図であり、図6(d)は、他の例を示す樹脂モールド品301の断面図である。
【0059】
図6(a)に示すように、第3実施形態の樹脂モールド品301は、シート状の繊維強化樹脂235が複数(本実施形態では、4枚)積層されることで樹脂層303が形成される。なお、以下の説明においては、金属部品2に最も近い位置に積層されるものから順に繊維強化樹脂235a、235b、235c、235dと符号を付して説明する。
【0060】
複数の繊維強化樹脂235a~235dの各々は、金属部品2の延設方向と直交する方向(図6(a)の下側)から金属部品2に被せられるようにして巻き付けられている。金属部品2の周方向における繊維強化樹脂235aの両端部E1,E2の間には隙間S1が形成される。また、金属部品2の周方向における繊維強化樹脂235b~235dの両端部は、金属部品2の延設方向と直交する方向視(図6(a)の上下方向視)において、隙間S1とは重ならないように構成される。
【0061】
これにより、図6(b)に示すように、樹脂層303の外面から隙間S1に向けた切れ目330を入れることにより、繊維強化樹脂235aの内周側(金属部品2との間)に向けた切れ目330を形成できる。
【0062】
そして、図6(c)に示すように、工具T3の一対のアーム部T3aのうちの一方を切れ目330に挿入し、繊維強化樹脂235aの端部E2(又はE1)を工具T3で掴む。その状態で金属部品2の周方向に工具T3を回動させ、金属部品2に巻かれた状態の繊維強化樹脂235a~235dを広げるようにようにして引き剥がす。これにより、繊維強化樹脂235a~235dを金属部品2から剥がす操作によってほぼ全ての樹脂層303を取り除くことができる。よって、樹脂層303を効率良く除去できるので、金属部品2を容易に回収できる。
【0063】
なお、図6(d)に示すように、樹脂モールド品301は、金属部品2の周方向において、繊維強化樹脂235a~235dの端部の位置がそれぞれ異なる場合がある。即ち、金属部品2の延設方向と直交する方向視において、繊維強化樹脂235a~235dの両端部の間の隙間がそれぞれ重ならない位置に配置される場合がある。このような場合には、繊維強化樹脂235a~235dを切断するような切れ目を入れてから繊維強化樹脂235a~235dを一または複数枚ずつ引き剥がしても良いし、切れ目を入れずに繊維強化樹脂235a~235dを引き剥がしても良い。
【0064】
次いで、第4実施形態について説明する。図7(a)は、第4実施形態の樹脂モールド品401の断面図であり、図7(b)は、樹脂層403に切れ目430を入れた状態を示す樹脂モールド品401の断面図であり、図7(c)は、切れ目430に外力を加えて樹脂層403を取り除く方法を示す樹脂モールド品401の断面図であり、図7(d)は、他の例を示す樹脂モールド品401の断面図である。
【0065】
図7(a)に示すように、第4実施形態の樹脂モールド品401は、シート状の繊維強化樹脂235が複数(本実施形態では、8枚)積層されることで樹脂層403が形成される。なお、以下の説明においては、金属部品2の延設方向と直交する方向(図7(a)の上下方向)において、金属部品2を挟んで一側(図7(a)の上側)に位置する4枚を繊維強化樹脂235e、他側に位置する4枚を繊維強化樹脂235fと符号を付して説明する。
【0066】
複数の繊維強化樹脂235eの各々は、金属部品2の延設方向と直交する方向(図7(a)の上側)から金属部品2に被せられるようにして円弧状に巻き付けられている。即ち、金属部品2には、周方向において繊維強化樹脂235eが巻き付けられていない領域が形成されており、その領域を覆うようにして複数の繊維強化樹脂235fが積層される。複数の繊維強化樹脂235fの各々は、互いに平行である。
【0067】
複数の繊維強化樹脂235eのうち、最も金属部品2に近い位置に積層される繊維強化樹脂235eの端部E1(E2)と、複数の繊維強化樹脂235fのうち、最も金属部品2に近い位置に積層される繊維強化樹脂235fの端部E1(E2)との各々の間には隙間S2が形成されている。
【0068】
これにより、図7(b)に示すように、樹脂層403の外面から隙間S2に向けた切れ目430を入れることにより、最も金属部品2に近い位置に積層される繊維強化樹脂235fの内周側(金属部品2との間)に向けた切れ目430を形成できる。
【0069】
そして、図7(c)に示すように、工具T3の一対のアーム部T3aのうちの一方を切れ目430に挿入し、繊維強化樹脂235f(又は繊維強化樹脂235e)の端部E1を工具T3のアーム部T3aで掴む。その状態で金属部品2の周方向に工具T3を回動させ、積層された状態の繊維強化樹脂235fを引き剥がす。これにより、一度に多くの量の樹脂層403を金属部品2から取り除くことができる。よって、樹脂層403を効率良く除去できるので、金属部品2を容易に回収できる。
【0070】
繊維強化樹脂235fを取り除いた後は、図3(d)で説明した場合と同様、一対の工具T3aを用いて金属部品2を押し出すようにして樹脂層235eを取り除けば良い。また、以上に説明した第2~4実施形態においても、繊維強化樹脂235を引き剥がした後に金属部品2の表面に僅かな樹脂層203,303,403が残存する場合には、ブラッシング等によって取り除けば良い。
【0071】
なお、図7(d)に示すように、樹脂モールド品401は、金属部品2の周方向において、繊維強化樹脂235e,235fの端部の位置がそれぞれ異なる場合がある。即ち、金属部品2の延設方向と直交する方向視において、繊維強化樹脂235e,235fの両端部の間の隙間がそれぞれ重ならない位置に配置される場合がある。このような場合には、繊維強化樹脂235e,235fを切断するような切れ目を入れてから繊維強化樹脂235e,235fを一または複数枚ずつ引き剥がしても良いし、切れ目を入れずに繊維強化樹脂235e,235fを引き剥がしても良い。
【0072】
以上の通り、本発明の金属部品2の回収方法によれば、樹脂モールド品1,201,301,401を加熱することにより、外力によって金属部品2から除去できる程度に樹脂層3,203,303,403を軟化させるものである。よって、長時間の加熱を不要にできるので、樹脂モールド品1,201,301,401から金属部品2を無傷の状態で回収し易くできる。
【0073】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
【0074】
上記各実施形態では、金属部品2が複数の導線を撚り合わせた断面円形の撚線である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、金属部品2は、丸棒状(断面円形)や平板状の単線でも良く、平撚線のような撚線でも良い。また、金属部品2は環状以外(例えば直線状)の形状でも良いし、樹脂層3は直方体以外(例えば環状)の形状でも良い。また、金属部品2の材質はアルミニウムに限定されるものではなく、鉄や銅などの他の金属であっても良い。
【0075】
即ち、上述した金属部品2や樹脂層3の形状などの各構成(樹脂モールド品1がコイルである点)は例示であり、金属を含む部品が熱硬化性樹脂によってモールドされるものであれば、上記各実施形態の技術思想を適用できる。
【0076】
上記各実施形態では、熱硬化性樹脂から成る樹脂層3,203,303,403の一例としてエポキシ樹脂を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、樹脂層3,203,303,403は、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、メラミン樹脂、又は尿素樹脂(ユリア樹脂)など、加熱によって軟化する材質のものであれば、他の熱硬化性樹脂であっても良い。即ち、樹脂層(熱硬化性樹脂)の材質に応じて加熱温度や加熱時間を調節し、金属部品2から引き剥がせる程度に軟化させれば良く、例えば、樹脂層がフェノール樹脂や尿素樹脂であれば140℃以上、メラミン樹脂であれば170℃以上に加熱すれば良い。
【0077】
上記各実施形態では説明を省略したが、金属部品2から樹脂層3,203,303,403を取り除く工程(第2工程)は、常温以下で行っても良いし、加熱された環境下(第1工程の温度以下)で行っても良い。即ち、樹脂層3,203,303,403を取り除く工程は、加熱による樹脂の軟化状態(金属部品2から除去可能な状態)を維持できる環境下で行えば良い。
【0078】
上記各実施形態では、樹脂層3,203,303,403に切れ目30,30a~30d,230,330,430を入れる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、切れ目30,230,330,430を省略しても良い。
【0079】
上記各実施形態では、切れ目30,30a~30d,230,330,430を直線状に形成する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、樹脂層3,203,303,403を除去し易くできる形態であれば、切れ目の形状は直線や曲線を組み合わせて適宜設定できる。よって、例えば、図4で例示した切れ目30a(30b)と切れ目30c(30d)とを繋げたL字状の切れ目や、切れ目30a~30cを繋げたコ字状の切れ目を入れて樹脂層3を除去しても良い。
【0080】
上記第2~4実施形態では、繊維強化樹脂235(235a~235f)が複数積層されることで樹脂層3,203,303,403が形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、繊維強化樹脂ではなく、シリカや炭酸カルシウムなどの充填材が樹脂層3,203,303,403に添加される構成でも良い。
【0081】
上記第3,4実施形態では、金属部品2から4枚の繊維強化樹脂235a~235fを同時に引き剥がす場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、繊維強化樹脂235a~235fを1枚ずつ引き剥がしても良いし、2又は3枚ずつ引き剥がしても良い。
【符号の説明】
【0082】
1,201,301,401 樹脂モールド品
2 金属部品
3,203,303,403 樹脂層
30,30a~30d,230,330,430 切れ目
33 切除面
235,235a~235f 繊維強化樹脂
5 支持部材
50 長孔(孔)


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7