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特許7596200情報処理装置、移動体、情報処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、移動体、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/32 20090101AFI20241202BHJP
   H04W 4/44 20180101ALI20241202BHJP
   H04W 36/08 20090101ALI20241202BHJP
   H04W 36/30 20090101ALI20241202BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20241202BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W4/44
H04W36/08
H04W36/30
H04W84/12
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021058357
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022155035
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 優
【審査官】伊東 和重
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-204159(JP,A)
【文献】特開平07-030945(JP,A)
【文献】特開2001-251657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられる情報処理装置であって、
通信部が第1アクセスポイントに接続し前記第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、前記通信部と前記第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、前記通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する取得部と、
前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替える切替部と、
前記移動体の移動速度が高いほど、前記接続先の切り替えを抑制する抑制部と
前記通信部が接続可能なアクセスポイントを探索する探索部と
を備え
前記抑制部は、前記探索部によって探索されたアクセスポイントの数が多いほど、前記接続先の切り替えを抑制する
情報処理装置。
【請求項2】
前記抑制部は、前記移動体の移動速度が高いほど、前記品質基準値を高く設定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記抑制部は、前記移動体の現在位置に更に基づいて前記品質基準値を設定する
請求項に記載の情報処理装置。
【請求項4】
移動体に設けられる情報処理装置であって、
通信部が第1アクセスポイントに接続し前記第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、前記通信部と前記第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、前記通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する取得部と、
前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替える切替部と、
前記移動体の移動速度が高いほど、前記接続先の切り替えを抑制する抑制部と、
地理的位置を示す情報に対応づけて、アクセスポイントの設置数の指標値を記憶する記憶部
を備え、
前記抑制部は、前記移動体の現在位置に適合する地理的位置に対応づけて前記記憶部に記憶されている前記指標値が大きいほど、前記品質基準値を高く設定する
報処理装置。
【請求項5】
前記抑制部は、前記探索部によって探索されたアクセスポイントの数が多いほど、前記品質基準値を高く設定する
請求項1からのいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記抑制部は、前記第1通信品質が低いほど、前記品質基準値を低くする
請求項1から5のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記切替部は、前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質閾値より高い時間が予め定められた時間閾値を超えた場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替え、
前記抑制部は、前記移動体の移動速度が高いほど、前記時間閾値を長く設定する
請求項1から6のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記抑制部は、前記移動体の現在位置に更に基づいて前記時間閾値を設定する
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
移動体に設けられる情報処理装置であって、
通信部が第1アクセスポイントに接続し前記第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、前記通信部と前記第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、前記通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する取得部と、
前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替える切替部と、
前記移動体の移動速度が高いほど、前記接続先の切り替えを抑制する抑制部と、
地理的位置を示す情報に対応づけて、接続可能なアクセスポイントの多さを示す指標値を記憶する記憶部
を備え、
前記切替部は、前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質閾値より高い時間が予め定められた時間閾値を超えた場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替え、
前記抑制部は、前記移動体の移動速度が高いほど、前記時間閾値を長く設定し、
前記抑制部は、前記移動体の現在位置に適合する地理的位置に対応づけて前記記憶部に記憶されている前記指標値が大きいほど、前記時間閾値を長く設定する
報処理装置。
【請求項10】
前記切替部は、前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質閾値より高い時間が予め定められた時間閾値を超えた場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替え、
前記抑制部は、前記移動体の移動速度が高いほど、前記時間閾値を長く設定し、
前記抑制部は、前記探索部によって探索されたアクセスポイントの数が多いほど、前記時間閾値を長く設定する
請求項からのいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記抑制部は、前記第1通信品質が低いほど、前記時間閾値を短くする
請求項7から10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記通信品質は、RSSI(receiving signal strength indicator)である
請求項7から10のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記移動体は、車両である
請求項1から12のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の情報処理装置を備える移動体。
【請求項15】
移動体において実行される情報処理方法であって、
通信部が第1アクセスポイントに接続し前記第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、前記通信部と前記第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、前記通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する段階と、
前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替える段階と、
前記移動体の移動速度が高いほど、前記接続先の切り替えを抑制する段階と
前記通信部が接続可能なアクセスポイントを探索する段階と
を備え
前記接続先の切り替えを抑制する段階は、前記探索する段階によって探索されたアクセスポイントの数が多いほど、前記接続先の切り替えを抑制する
情報処理方法。
【請求項16】
移動体において実行される情報処理方法であって、
通信部が第1アクセスポイントに接続し前記第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、前記通信部と前記第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、前記通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する段階と、
前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替える段階と、
前記移動体の移動速度が高いほど、前記接続先の切り替えを抑制する段階と、
地理的位置を示す情報に対応づけて、アクセスポイントの設置数の指標値を記憶する段階と
を備え、
前記接続先の切り替えを抑制する段階は、前記設置数の指標値を記憶する段階によって前記移動体の現在位置に適合する地理的位置に対応づけて記憶されている前記指標値が大きいほど、前記品質基準値を高く設定する
情報処理方法。
【請求項17】
移動体において実行される情報処理方法であって、
通信部が第1アクセスポイントに接続し前記第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、前記通信部と前記第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、前記通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する段階と、
前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替える段階と、
前記移動体の移動速度が高いほど、前記接続先の切り替えを抑制する段階と、
地理的位置を示す情報に対応づけて、接続可能なアクセスポイントの多さを示す指標値を記憶する段階と
を備え、
前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替える段階は、前記第2通信品質と前記第1通信品質との差が予め定められた品質閾値より高い時間が予め定められた時間閾値を超えた場合に、前記通信部の接続先を前記第1アクセスポイントから前記第2アクセスポイントに切り替え、
前記接続先の切り替えを抑制する段階は、
前記移動体の移動速度が高いほど、前記時間閾値を長く設定する段階と、
前記接続可能なアクセスポイントの多さを示す指標値を段階によって前記移動体の現在位置に適合する地理的位置に対応づけて記憶されている前記指標値が大きいほど、前記時間閾値を長く設定する段階と
を有する情報処理方法。
【請求項18】
プログラムであって、移動体に搭載されるコンピュータ請求項1から13のいずれか一項に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、移動体、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無線LAN通信において、1つのアクセスポイントから切断して、別のアクセスポイントに接続すること記載されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特表2015-525010号公報
【発明の概要】
【0003】
第1の態様において、情報処理装置が提供される。情報処理装置は、移動体に設けられる。情報処理装置は、通信部が第1アクセスポイントに接続し第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、通信部と第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する取得部を備える。情報処理装置は、第2通信品質と第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、通信部の接続先を第1アクセスポイントから第2アクセスポイントに切り替える切替部を備える。情報処理装置は、移動体の移動速度が高いほど、接続先の切り替えを抑制する抑制部を備える。
【0004】
抑制部は、移動体の移動速度が高いほど、品質基準値を高く設定してよい。
【0005】
抑制部は、移動体の現在位置に更に基づいて品質基準値を設定してよい。
【0006】
情報処理装置は、地理的位置を示す情報に対応づけて、アクセスポイントの設置数の指標値を記憶する記憶部を備えてよい。抑制部は、移動体の現在位置に適合する地理的位置に対応づけて記憶部に記憶されている指標値が大きいほど、品質基準値を高く設定してよい。
【0007】
情報処理装置は、通信部が接続可能なアクセスポイントを探索する探索部を備えてよい。抑制部は、探索部によって探索されたアクセスポイントの数が多いほど、品質基準値を高く設定してよい。
【0008】
抑制部は、第1通信品質が低いほど、品質基準値を低くしてよい。
【0009】
切替部は、第2通信品質と第1通信品質との差が予め定められた品質閾値より高い時間が予め定められた時間閾値を超えた場合に、通信部の接続先を第1アクセスポイントから第2アクセスポイントに切り替えてよい。抑制部は、移動体の移動速度が高いほど、時間閾値を長く設定してよい。
【0010】
抑制部は、移動体の現在位置に更に基づいて時間閾値を設定してよい。
【0011】
情報処理装置は、地理的位置を示す情報に対応づけて、接続可能なアクセスポイントの多さを示す指標値を記憶する記憶部を備えてよい。抑制部は、移動体の現在位置に適合する地理的位置に対応づけて記憶部に記憶されている指標値が大きいほど、時間閾値を長く設定してよい。
【0012】
情報処理装置は、通信部が接続可能なアクセスポイントを探索する探索部を備えてよい。抑制部は、探索部によって探索されたアクセスポイントの数が多いほど、時間閾値を長く設定してよい。
【0013】
抑制部は、第1通信品質が低いほど、時間閾値を短くしてよい。
【0014】
前記通信品質は、RSSI(receiving signal strength indicator)であってよい。
【0015】
移動体は車両であってよい。
【0016】
第3の態様において、情報処理方法が提供される。情報処理方法は移動体において実行される。情報処理方法は、通信部が第1アクセスポイントに接続し第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、通信部と第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する段階を備える。情報処理方法は、第2通信品質と第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、通信部の接続先を第1アクセスポイントから第2アクセスポイントに切り替える段階を備える。情報処理方法は、移動体の移動速度が高いほど、接続先の切り替えを抑制する段階を備える。
【0017】
第4の態様において、プログラムが提供される。プログラムは、移動体に搭載されるコンピュータに、通信部が第1アクセスポイントに接続し第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、通信部と第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、通信部と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する手順を実行させる。プログラムは、コンピュータに、第2通信品質と第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、通信部の接続先を第1アクセスポイントから第2アクセスポイントに切り替える手順を実行させる。プログラムは、コンピュータに、移動体の移動速度が高いほど、接続先の切り替えを抑制する手順を実行させる。
【0018】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る車両20を、無線アクセスポイント14a、無線アクセスポイント14b及び無線アクセスポイント14cと基地局12とともに模式的に示す。
図2】車両20のシステム構成を模式的に示す。
図3】抑制部230が利用する閾値情報のデータ構造の一例を示す。
図4】抑制部230が利用する位置種別情報のデータ構造の一例を示す。
図5】アクセスポイント数に関する第1閾値調整値情報のデータ構造の一例を示す。
図6】現在接続中の通信品質に関する第2閾値調整値情報のデータ構造の一例を示す。
図7】切替部220が管理する接続情報のデータ構造の一例を示す。
図8】通信装置100において実行される情報処理方法に関する実行手順を示すフローチャートである。
図9】コンピュータ2000の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、一実施形態に係る車両20を、無線アクセスポイント14a、無線アクセスポイント14b及び無線アクセスポイント14cと基地局12とともに模式的に示す。本実施形態において、無線アクセスポイント14a、無線アクセスポイント14b及び無線アクセスポイント14cのことを「無線アクセスポイント14」と総称する場合がある。
【0022】
基地局12は、移動体通信網に属する基地局である。無線アクセスポイント14は、例えば無線LAN(ローカルエリアネットワーク)アクセスポイントである。無線アクセスポイント14は、例えば公衆無線LANアクセスポイントであってよい。無線アクセスポイント14は、交通インフラに設置された無線アクセスポイントであってよい。無線アクセスポイント14は、交通インフラに近接して設けられた施設に設置された無線アクセスポイントであってよい。
【0023】
車両20は、通信装置100を備える。通信装置100は、無線LAN通信を行う機能と、基地局12を通じた移動体通信を行う機能を備える。通信装置100は、接続先となる無線アクセスポイント14を切り替える機能を備える。通信装置100は、無線アクセスポイント14aと接続して、無線アクセスポイント14aを通じて無線LAN通信を行っているものとする。ここで、通信装置100と無線アクセスポイント14aとの間の通信品質の指標として、RSSI(受信信号強度)を用いるものとする。無線アクセスポイント14aからの受信信号強度はRSSI1であるとする。通信装置100は、無線アクセスポイント14aと通信している間に、周囲の無線アクセスポイント14b及び無線アクセスポイント14cの探索を行うとともに、無線アクセスポイント14bからの受信信号強度RSSI2及び無線アクセスポイント14cからの受信信号強度RSSI3を取得する。
【0024】
通信装置100は、無線アクセスポイント14aとの間で無線LAN通信を行っている間に、RSSI2とRSSI1との差RSSI2-RSSI1(「相対RSSI」と呼ぶ場合がある)が予め定められた品質閾値を超えた場合に、接続先を無線アクセスポイント14aから無線アクセスポイント14bに切り替えて、無線アクセスポイント14bとの間の無線LAN通信を開始する。通信装置100は、車両20の車速が高いほど、無線アクセスポイント14の切り換えを抑制する。例えば、通信装置100は、無線アクセスポイントの切り換えの判断に用いる品質閾値を高める。これにより、車両20の車速が高いほど、無線アクセスポイント14の切り替えが頻繁に生じないようにすることができる。
【0025】
無線アクセスポイント14の切り替えにはある程度の時間を要し、実際のデータ通信が開始されるまでには時間がかかる。例えば、実際のデータ通信を開始するまでに、切り替え先の無線アクセスポイントとの間でアソシエーション手続き及び認証手続き等の通信を行う時間が必要となる。そのため、切り換え先の無線アクセスポイント14との間の通信品質が高い場合であったとしても、無線アクセスポイント14の切り替えが多発すると、かえって通信スループットが低下する場合がある。通信装置100の制御によれば、車両20の車速が高いほど、無線アクセスポイント14の切り替えが頻繁に生じないようにすることができるので、無線アクセスポイント14の切り替えが多発することによる通信スループットの低下を抑制することができる。例えば、車両20の車速が高いほど、無線アクセスポイント14の切り換えの判断するための品質閾値を高く設定するので、RSSIが非常に良好な無線アクセスポイント14が発見された場合には、その無線アクセスポイント14に接続先を切り替えるので、高速な通信を行うことが可能となり、トータルの通信スループットを高めることが期待できる。このような制御は、例えば無線アクセスポイント14が多数存在する都市部における制御に有利である。
【0026】
図2は、車両20のシステム構成を模式的に示す。車両20は、通信装置100と、車速センサ22と、GNSS受信機24とを備える。車速センサ22は、車両20の車速を検出する。GNSS受信機24は、GNSS衛星からの電波を受信して位置情報を生成する。なお、本実施形態では、車両20における無線アクセスポイント14の切り換え制御を分かりやすく説明するために、車両20が通信装置100、車速センサ22及びGNSS受信機24を備える構成を例示するが、車両20の構成は本実施形態の例に限られない。
【0027】
通信装置100は、移動体通信部201と、情報処理装置208と、無線LAN通信部209とを備える。移動体通信部201は、主に移動体通信を担う。無線LAN通信部209は、無線LAN通信を担う。無線LAN通信部209は、例えばIEEE802.11シリーズに準拠して通信を行う。無線LAN通信部209は「通信部」の一例である。移動体通信部201及び無線LAN通信部209は、1つのテレマティクス制御ユニット(Telematics Control Unit)として実現されてよい。
【0028】
情報処理装置208は、取得部210と、切替部220と、抑制部230と、記憶部270と、探索部250とを備える。
【0029】
取得部210は、無線LAN通信部209が第1アクセスポイントに接続し第1アクセスポイントを通じて無線通信を実行中に、無線LAN通信部209と第1アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第1通信品質を示す情報と、無線LAN通信部209と第2アクセスポイントとの間の無線通信の通信品質である第2通信品質を示す情報とを取得する。切替部220は、第2通信品質と第1通信品質との差が予め定められた品質基準値より高い場合に、無線LAN通信部209の接続先を第1アクセスポイントから第2アクセスポイントに切り替える。抑制部230は、車両20の移動速度が高いほど、接続先の切り替えを抑制する。
【0030】
抑制部230は、車両20の移動速度が高いほど、品質基準値を高く設定する。
【0031】
抑制部230は、車両20の現在位置に更に基づいて品質基準値を設定する。例えば、記憶部270は、地理的位置を示す情報に対応づけて、アクセスポイントの設置数の指標値を記憶する。抑制部230は、車両20の現在位置に適合する地理的位置に対応づけて記憶部270に記憶されている指標値が大きいほど、品質基準値を高く設定する。
【0032】
探索部250は、無線LAN通信部209が接続可能なアクセスポイントを探索する。抑制部230は、探索部250によって探索されたアクセスポイントの数が多いほど、品質基準値を高く設定してよい。
【0033】
抑制部230は、第1通信品質が低いほど、品質基準値を低くしてよい。
【0034】
切替部220は、第2通信品質と第1通信品質との差が予め定められた品質閾値より高い時間が予め定められた時間閾値を超えた場合に、無線LAN通信部209の接続先を第1アクセスポイントから第2アクセスポイントに切り替える。抑制部230は、車両20の移動速度が高いほど、時間閾値を長く設定する。
【0035】
抑制部230は、車両20の現在位置に更に基づいて時間閾値を設定してよい。例えば、記憶部270は、地理的位置を示す情報に対応づけて、接続可能なアクセスポイントの多さを示す指標値を記憶してよい。抑制部230は、車両20の現在位置に適合する地理的位置に対応づけて記憶部270に記憶されている指標値が大きいほど、時間閾値を長く設定してよい。
【0036】
なお、抑制部230は、探索部250によって探索されたアクセスポイントの数が多いほど、時間閾値を長く設定してよい。抑制部230は、第1通信品質が低いほど、時間閾値を短く設定してよい。
【0037】
図3は、抑制部230が利用する閾値情報のデータ構造の一例を示す。閾値情報は、車速と、品質閾値と、時間閾値とを対応づける情報である。閾値情報は記憶部270に記憶される。閾値情報300は都市部用の閾値情報である。閾値情報300aは準都市部用の閾値情報である。閾値情報300bは非都市部用の閾値情報である。「都市部」、「準都市部」及び「非都市部」は、地理的な位置の種別を示す情報である。
【0038】
「車速」は、車両20の車速vに関する範囲を示す。ここで、v1<v2である。
【0039】
「品質閾値」は、無線アクセスポイント14の切り換え判断に用いる相対RSSIに関する閾値である。閾値情報300において、RSSI閾値1<RSSI閾値2<RSSI閾値3である。閾値情報300aにおいて、RSSI閾値1a<RSSI閾値2a<RSSI閾値3aである。閾値情報300bにおいて、RSSI閾値1b<RSSI閾値2b<RSSI閾値3bである。
【0040】
「時間閾値」は、無線アクセスポイント14の切り換え判断に用いる「相対閾値が品質閾値を超えた時間」に関する閾値である。閾値情報300において、時間閾値1<時間閾値2<時間閾値3である。閾値情報300aにおいて、時間閾値1a<時間閾値2a<時間閾値3aである。閾値情報300bにおいて、時間閾値1b<時間閾値2b<時間閾値3bである。
【0041】
抑制部230は、車両20が都市部に存在する場合、都市部に対応づけられた閾値情報300を用いて、車両20に対応する品質閾値及び時間閾値を設定する。ここで、車両20の現在の車速vがv2以上であるとすると、抑制部230は、切替部220が切り換え判断に用いる品質閾値として品質閾値3を設定し、切替部220が切り換え判断に用いる時間閾値として時間閾値3を設定する。
【0042】
現在において無線LAN通信部209が無線アクセスポイント14aに接続されており、無線アクセスポイント14aとの間の通信品質がRSSI1であり、無線LAN通信部209と無線アクセスポイント14bとの間の通信品質がRSSI2であるとすると、切替部220は、RSSI2-RSSI1が品質閾値3を超え、かつ、RSSI2-RSSI1が品質閾値3を超える時間が時間閾値3を超える場合に、接続先の無線アクセスポイントを無線アクセスポイント14aから無線アクセスポイント14bに切り替える。なお、図3から図8に関連して説明する形態では、相対RSSI(RSSI2-RSSI1)が品質閾値を超え、かつ、相対RSSIが品質閾値を超える時間が時間閾値を超える場合に、接続先の無線アクセスポイントを切り替える。しかし、相対RSSIが品質閾値を超える時間にかかわらず、相対RSSIが品質閾値を超える場合に、接続先の無線アクセスポイントを切り替える形態を採用できる。
【0043】
なお、RSSI閾値1>RSSI閾値1a>RSSI閾値1bであり、RSSI閾値2>RSSI閾値2a>RSSI閾値2bであり、RSSI閾値3>RSSI閾値3a>RSSI閾値3bである。また、時間閾値1>時間閾値1a>時間閾値1bであり、時間閾値2>時間閾値2a>時間閾値2bであり、時間閾値3>時間閾値3a>時間閾値3bである。すなわち、車両20が都市部に存在する場合、車両20が準都市部に存在する場合に比べて、無線アクセスポイント14の切り換えが抑制され得る。また、車両20が準都市部に存在する場合、車両20が非都市部に存在する場合に比べて、無線アクセスポイント14の切り換えが抑制され得る。
【0044】
一般に、都市部には多数の無線アクセスポイントが設置されている場合が多い一方、非都市部には無線アクセスポイントはあまり設置されていない場合が多い。したがって、例えば車両20が都市部に存在する場合には、無線アクセスポイント14の切り換え頻度が高くなり易い。これに対し、抑制部230の制御によれば、都市部において無線アクセスポイント14の切明が多発することによって通信スループットがかえって低下するようなことを抑制することができる。
【0045】
なお、「都市部」、「準都市部」及び「非都市部」を示す情報は、アクセスポイントの設置数の指標値の一例である。「都市部」、「準都市部」及び「非都市部」を示す情報に代えて、それぞれの位置に設置されたアクセスポイントの設置数の多さの指標値を示す情報を適用してよい。
【0046】
図4は、抑制部230が利用する位置種別情報のデータ構造の一例を示す。位置種別情報は、位置と、地域の種別とを対応づける情報である。位置種別情報は記憶部270に記憶される。
【0047】
「位置」は、地理的な位置の範囲を示す。「種別」は、位置の種別を示す。抑制部230は、位置種別情報を参照して、GNSS受信機24によって取得された車両20の現在位置に適合する位置に対応づけられた種別を、車両20が存在する位置の種別として特定する。そして、抑制部230は、特定した種別に対応する閾値情報を用いて、車両20に対応する品質閾値及び時間閾値を設定する。例えば、図3等に関連して説明したように、抑制部230は、車両20が都市部に存在する場合、都市部に対応づけられた閾値情報300を用いて、車両20に対応する品質閾値及び時間閾値を設定する。
【0048】
図5は、アクセスポイント数に関する第1閾値調整値情報のデータ構造の一例を示す。第1閾値調整値情報は、無線アクセスポイント数と、第1閾値調整係数とを対応づける情報である。第1閾値調整値情報は記憶部270に記憶される。
【0049】
「アクセスポイント数」は、探索された無線アクセスポイント14の数nに関する範囲を示す。ここで、N1<N2である。「第1閾値調整係数」は、品質閾値及び時間閾値を調整する係数である。例えば、第1閾値調整係数は、品質閾値及び時間閾値に対する乗算係数である。なお、係数1<係数2<係数3である。
【0050】
抑制部230は、無線アクセスポイント14の数nに応じて品質閾値及び時間閾値を調整する場合、探索部250によって探索された無線アクセスポイント14の数nに基づいて、第1閾値調整値情報の中から第1閾値調整係数を選択する。例えば、抑制部230は、探索された無線アクセスポイント14の数nがN2以上である場合、品質閾値及び時間閾値を調整するための第1閾値調整係数として、係数3を選択する。そして、抑制部230は、上述したように車両20の現在位置及び車両20の現在の車速から選択される品質閾値に係数3を乗じた値を、切替部220が切り換え判断に用いる品質閾値として設定する。また、抑制部230は、上述したように車両20の現在位置及び車両20の現在の車速から選択される時間閾値に係数3を乗じた値を、切替部220が切り換え判断に用いる時間閾値値として設定する。
【0051】
周囲に多数の無線アクセスポイント14が存在する場合、無線アクセスポイント14の切り換えが頻繁に生じる可能性が高まる。抑制部230の制御によれば、探索された無線アクセスポイント14の数が多いほど、無線アクセスポイント14の切り換えを生じにくくすることができる。これにより、周囲に多数の無線アクセスポイント14が存在する場合に、無線アクセスポイント14の切り換えが多発することによって通信スループットがかえって低下することを抑制することができる。
【0052】
なお、図5では、乗算係数によって品質閾値及び時間閾値を調整する方法を例示したが、探索された無線アクセスポイント14の数が多いほど品質閾値を高くしたり、探索された無線アクセスポイント14の数が多いほど時間閾値を長くする任意の手法を適用することができる。
【0053】
図6は、現在接続中の通信品質に関する第2閾値調整値情報のデータ構造の一例を示す。第2閾値調整値情報は、現通信品質と、第2閾値調整係数とを対応づける情報である。第2閾値調整値情報は記憶部270に記憶される。
【0054】
「現通信品質」は、現在接続中の無線アクセスポイント14から送信される信号のRSSIに関する範囲を示す。ここで、RSSI_1<RSSI_2である。「第2閾値調整係数」は、品質閾値及び時間閾値を調整する係数である。例えば、第2閾値調整係数は、品質閾値及び時間閾値に対する乗算係数である。
【0055】
抑制部230は、現在接続中の無線アクセスポイント14から送信される信号のRSSIに応じて品質閾値及び時間閾値を調整する場合、現在接続中の無線アクセスポイント14から送信される信号のRSSIに基づいて、第2閾値調整値情報の中から第2閾値調整係数を選択する。例えば、抑制部230は、現在接続中の無線アクセスポイント14から送信される信号のRSSIがRSSI_2以上である場合、品質閾値及び時間閾値を調整するための第2閾値調整係数として、係数3'を選択する。そして、抑制部230は、上述したように車両20の現在位置及び車両20の現在の車速から選択される品質閾値に係数3'を乗じた値を、切替部220が切り換え判断に用いる品質閾値として設定する。また、抑制部230は、上述したように車両20の現在位置及び車両20の現在の車速から選択される時間閾値に係数3'を乗じた値を、切替部220が切り換え判断に用いる時間閾値値として設定する。
【0056】
なお、係数1'<係数2'<係数3'であってよい。これにより、現在のRSSIが低いほど、品質閾値を低く、かつ時間閾値を短くすることができる。したがって、現在のRSSIが低い場合に無線アクセスポイント14の切り換えを抑制し過ぎないようにすることができるので、RSSIが高い無線アクセスポイント14への切り替えを促進することができる。
【0057】
なお、図6では、乗算係数によって品質閾値及び時間閾値を調整する方法を例示したが、RSSIが低いほど品質閾値を低くしたり、RSSIが低いほど時間閾値を短くする任意の手法を適用することができる。
【0058】
図7は、切替部220が管理する接続情報のデータ構造の一例を示す。接続情報は、SSIDと、RSSIと、接続中フラグと、時刻とを対応づける情報である。位置種別情報は記憶部270に記憶される。
【0059】
「SSID」は、無線アクセスポイント14を識別する情報である。SSIDは、Service Set Identifierである。「RSSI」は、各無線アクセスポイント14から送信される信号の現在の受信信号強度である。「接続中フラグ」は、無線LAN通信部209が無線アクセスポイント14に接続しているか否かを示すフラグである。フラグ「1」は、その無線アクセスポイント14に接続していることを示す。例えば、図7の例では、SSIDが「AP01」の無線アクセスポイント14に無線LAN通信部209が接続している状態であることを示す。なお、無線アクセスポイント14に接続している情報とは、無線LAN通信部209が無線アクセスポイント14との間で認証を行って認証情報を取得しており、無線LAN通信部209が無線アクセスポイント14外の通信装置との間でデータの送受信を行うことができる状態であるとしてよい。
【0060】
「時刻」は、無線アクセスポイント14から送信される信号のRSSIが抑制部230によって設定されたRSSI閾値を超えた時刻である。この時刻は、例えば、RSSIがRSSI閾値を超えていない状態から、RSSIがRSSI閾値をRSSIが超えた状態になったときの時刻である。
【0061】
図8は、通信装置100において実行される情報処理方法に関する実行手順を示すフローチャートである。本フローチャートの処理は、無線LAN通信部209が動作を開始した場合に開始される。S802において、取得部210は、周囲の無線アクセスポイント14を探索するスキャンを無線LAN通信部209に実行させ、取得された無線アクセスポイント14のSSID及びRSSIを含む無線アクセスポイント情報を取得する。
【0062】
S804において、抑制部230は、S802で取得した無線アクセスポイント情報に基づいて、図7等に関連して説明した接続情報の「SSID」、「RSSI」及び「時間」を更新する。S806において、切替部220は、S802において取得した無線アクセスポイント情報に基づいて、接続可能な無線アクセスポイント14が探索されたか否かを判断する。例えば、切替部220は、RSSIが予め定められた閾値以上の無線アクセスポイント14が探索された場合に、接続可能な無線アクセスポイントとして判断してよい。
【0063】
S808において、無線LAN通信部209が無線アクセスポイント14に接続済みであるか否かを判断する。無線LAN通信部209が無線アクセスポイント14に接続済みでない場合、切替部220は、探索された無線アクセスポイント14の中からRSSIに基づいて1つの無線アクセスポイント14を選択し(S840)、S840で選択した無線アクセスポイント14に無線LAN通信部209を接続させ(S842)、S830に処理を移行する。
【0064】
S808において無線LAN通信部209が無線アクセスポイント14に接続済みである場合、抑制部230は車速センサ22によって検出された車両20の現在の車速を取得し(S812)、GNSS受信機24によって検出された車両20の現在位置を取得する(S814)。S816において、抑制部230は、品質閾値及び時間閾値を設定する。例えば、図3及び図4等に関連して説明したように、抑制部230は、現在位置に適合する閾値情報を参照して、現在位置及び車速の組み合わせに基づいて品質閾値及び時間閾値を決定する。また、抑制部230は、S802で探索された無線アクセスポイント数と図5等に関連して説明した第1閾値調整値情報とに基づいて、第1閾値調整係数を決定する。また、抑制部230は、現在接続中の無線アクセスポイント14から送信される信号のRSSIと図6等に関連して説明した第2閾値調整値情報に基づいて第2閾値調整係数を決定する。抑制部230は、現在位置及び車速の組み合わせに基づいて決定した品質閾値に、第1閾値調整値情報及び第2閾値調整値情報を乗じることによって、切替部220が切り換え判断に用いる品質閾値を設定する。また、抑制部230は、現在位置及び車速の組み合わせに基づいて決定した時間閾値に、第1閾値調整係数及び第2閾値調整係数を乗じることによって、切替部220が切り換え判断に用いる時間閾値を設定する。
【0065】
S818において、切替部220は、接続情報を参照して、接続可能な1つ以上の無線アクセスポイント14のうち、現在接続中の無線アクセスポイント14のRSSIに対する相対RSSIがS816で設定された品質閾値を超える無線アクセスポイント14が存在するか否かを判断する。相対RSSIが品質閾値を超える無線アクセスポイント14が存在しない場合はS830に処理を移行する。相対RSSIが品質閾値を超える無線アクセスポイント14が存在する場合、S820において、切替部220は、接続情報を参照して、相対RSSIが品質閾値を超える時間が、S816で設定された時間閾値を超える無線アクセスポイント14が存在するか否かを判断する。相対RSSIが品質閾値を超える時間が時間閾値を超える無線アクセスポイント14が存在しない場合はS830に処理を移行する。相対RSSIが品質閾値を超える時間が時間閾値を超える無線アクセスポイント14が存在する場合、S822に処理を移行する。
【0066】
S822において、切替部220は、相対RSSIが品質閾値を超える時間が時間閾値を超える無線アクセスポイント14の中から、接続の切り換え先として1つの無線アクセスポイント14を選択する。このとき、切替部220は、接続情報を参照して、RSSIがより高い無線アクセスポイント14を、接続の切り換え先としてより優先して選択する。S824において、切替部220は、無線LAN通信部209の接続先を、S822で選択した無線アクセスポイント14に切り換える。続いて、S830において、情報処理装置208は、無線LAN通信を終了するか否かを判断する。例えば、車両20のイグニッション電源がオフになった場合に、無線LAN通信を終了すると判断する。無線LAN通信を終了しない場合はS802に処理を移行し、無線LAN通信を終了する場合は本フローチャートの処理を終了する。
【0067】
以上の説明では、抑制部230は、車両20の車速に加えて、(1)車両20の現在位置、(2)相対RSSIが時間閾値を超える時間、(3)探索された無線アクセスポイント数、及び(4)現在接続中の無線アクセスポイント14に対するRSSIに基づいて、無線アクセスポイント14の切り換えを抑制するための処理を行うものとした。しかし、抑制部230は、車両20の車速に加えて、(1)、(2)、(3)及び(4)の任意の組み合わせの情報に基づいて、無線アクセスポイント14の切り換えを抑制する処理を行ってよい。抑制部230は、車両20の車速のみに基づいて、無線アクセスポイント14の切り換えを抑制する処理を行ってよい。
【0068】
通信品質を示す指標としてRSSIを用いたが、通信品質を示す指標であれば他の指標でも良い。例えば、受信信号強度は、無線LAN通信部209が備えるアンテナで受信した受信信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器(ADC)の出力ビット、無線LAN通信部209が備える送受信回路が有する増幅器の受信信号に対する増幅率に基づいて計算されてもよい。あるいは、送受信回路に受信電力を測定するための測定回路を配置し、測定回路から電圧値、電流値、及び電力値を取得して、それらのいずれの値を受信信号強度として用いても良い。
【0069】
なお、本実施形態では、無線LAN通信の無線アクセスポイント14の切り替えについて説明したが、無線LAN通信以外の無線通信方式におけるアクセスポイントの切り替えに適用してもよい。
【0070】
以上に説明したように、通信装置100における制御によれば、車両20の車速が高いほど、無線アクセスポイント14の切り替えが頻繁に生じないようにすることができるので、無線アクセスポイント14の切り替えが多発することによる通信スループットの低下を抑制することができる。このような制御は、例えば無線アクセスポイント14が多数存在する都市部における制御に有利である。
【0071】
図9は、本発明の複数の実施形態が全体的又は部分的に具現化され得るコンピュータ2000の例を示す。コンピュータ2000にインストールされたプログラムは、コンピュータ2000を、実施形態に係る情報処理装置等の装置もしくはその装置の各部として機能させる、各部に関連付けられるオペレーションを実行させる、及び/又は、実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。そのようなプログラムは、コンピュータ2000に、本明細書に記載の処理手順及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU2012によって実行されてよい。
【0072】
本実施形態によるコンピュータ2000は、CPU2012、及びRAM2014を含み、それらはホストコントローラ2010によって相互に接続されている。コンピュータ2000はまた、ROM2026、フラッシュメモリ2024、通信インタフェース2022、及び入力/出力チップ2040を含む。ROM2026、フラッシュメモリ2024、通信インタフェース2022、及び入力/出力チップ2040は、入力/出力コントローラ2020を介してホストコントローラ2010に接続されている。
【0073】
CPU2012は、ROM2026及びRAM2014内に格納されたプログラムに従い動作し、それにより各ユニットを制御する。
【0074】
通信インタフェース2022は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。フラッシュメモリ2024は、コンピュータ2000内のCPU2012によって使用されるプログラム及びデータを格納する。ROM2026は、アクティブ化時にコンピュータ2000によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ2000のハードウエアに依存するプログラムを格納する。入力/出力チップ2040はまた、キーボード、マウス及びモニタ等の様々な入力/出力ユニットをシリアルポート、パラレルポート、キーボードポート、マウスポート、モニタポート、USBポート、HDMI(登録商標)ポート等の入力/出力ポートを介して、入力/出力コントローラ2020に接続してよい。
【0075】
プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、又はメモリカードのようなコンピュータ可読記憶媒体又はネットワークを介して提供される。RAM2014、ROM2026、又はフラッシュメモリ2024は、コンピュータ可読記憶媒体の例である。プログラムは、フラッシュメモリ2024、RAM2014、又はROM2026にインストールされ、CPU2012によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ2000に読み取られ、プログラムと上記様々なタイプのハードウエアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ2000の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0076】
例えば、コンピュータ2000及び外部デバイス間で通信が実行される場合、CPU2012は、RAM2014にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インタフェース2022に対し、通信処理を命令してよい。通信インタフェース2022は、CPU2012の制御下、RAM2014及びフラッシュメモリ2024のような記録媒体内に提供される送信バッファ処理領域に格納された送信データを読み取り、読み取った送信データをネットワークに送信し、ネットワークから受信された受信データを、記録媒体上に提供される受信バッファ処理領域等に書き込む。
【0077】
また、CPU2012は、フラッシュメモリ2024等のような記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM2014に読み取られるようにし、RAM2014上のデータに対し様々な種類の処理を実行してよい。CPU2012は次に、処理されたデータを記録媒体にライトバックする。
【0078】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような様々なタイプの情報が記録媒体に格納され、情報処理にかけられてよい。CPU2012は、RAM2014から読み取られたデータに対し、本明細書に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々な種類のオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々な種類の処理を実行してよく、結果をRAM2014にライトバックする。また、CPU2012は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU2012は、第1の属性の属性値が指定されている、条件に一致するエントリを当該複数のエントリの中から検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、それにより予め定められた条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0079】
上で説明したプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ2000上又はコンピュータ2000近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバーシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能である。コンピュータ可読記憶媒体に格納されたプログラムを、ネットワークを介してコンピュータ2000に提供してよい。
【0080】
コンピュータ2000にインストールされ、コンピュータ2000を情報処理装置208として機能させるプログラムは、CPU2012等に働きかけて、コンピュータ2000を、情報処理装置208の各部としてそれぞれ機能させてよい。これらのプログラムに記述された情報処理は、コンピュータ2000に読込まれることにより、ソフトウエアと上述した各種のハードウエア資源とが協働した具体的手段である情報処理装置208の各部として機能する。そして、これらの具体的手段によって、本実施形態におけるコンピュータ2000の使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置208が構築される。
【0081】
様々な実施形態が、ブロック図等を参照して説明された。ブロック図において各ブロックは、(1)オペレーションが実行されるプロセスの段階又は(2)オペレーションを実行する役割を持つ装置の各部を表してよい。特定の段階及び各部が、専用回路、コンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプログラマブル回路、及び/又はコンピュータ可読記憶媒体上に格納されるコンピュータ可読命令と共に供給されるプロセッサによって実装されてよい。専用回路は、デジタル及び/又はアナログハードウエア回路を含んでよく、集積回路(IC)及び/又はディスクリート回路を含んでよい。プログラマブル回路は、論理AND、論理OR、論理XOR、論理NAND、論理NOR、及び他の論理オペレーション、フリップフロップ、レジスタ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラマブルロジックアレイ(PLA)等のようなメモリ要素等を含む、再構成可能なハードウエア回路を含んでよい。
【0082】
コンピュータ可読記憶媒体は、適切なデバイスによって実行される命令を格納可能な任意の有形なデバイスを含んでよく、その結果、そこに格納される命令を有するコンピュータ可読記憶媒体は、処理手順又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段をもたらすべく実行され得る命令を含む製品の少なくとも一部を構成する。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、電子記憶媒体、磁気記憶媒体、光記憶媒体、電磁記憶媒体、半導体記憶媒体等が含まれてよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、電気的消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EEPROM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、コンパクトディスクリードオンリメモリ(CD-ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、メモリスティック、集積回路カード等が含まれてよい。
【0083】
コンピュータ可読命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、マシン命令、マシン依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、又はSmalltalk(登録商標)、JAVA(登録商標)、C++等のようなオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語又は同様のプログラミング言語のような従来の手続型プログラミング言語を含む、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述されたソースコード又はオブジェクトコードのいずれかを含んでよい。
【0084】
コンピュータ可読命令は、汎用コンピュータ、特殊目的のコンピュータ、若しくは他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサ又はプログラマブル回路に対し、ローカルに又はローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等のようなワイドエリアネットワーク(WAN)を介して提供され、説明された処理手順又はブロック図で指定されたオペレーションを実行するための手段をもたらすべく、コンピュータ可読命令を実行してよい。プロセッサの例としては、コンピュータプロセッサ、処理ユニット、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ等を含む。
【0085】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0086】
特許請求の範囲、明細書、及び図面中において示した装置、システム、プログラム、及び方法における動作、手順、ステップ、及び段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、及び図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0087】
12 基地局
14 無線アクセスポイント
20 車両
201 移動体通信部
208 情報処理装置
210 取得部
220 切替部
230 抑制部
250 探索部
270 記憶部
300 閾値情報
2000 コンピュータ
2010 ホストコントローラ
2012 CPU
2014 RAM
2020 入力/出力コントローラ
2022 通信インタフェース
2024 フラッシュメモリ
2026 ROM
2040 入力/出力チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9