(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】情報処理装置、データ抽出方法、機械学習モデルの生成方法、およびデータ抽出プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
(21)【出願番号】P 2021075233
(22)【出願日】2021-04-27
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】カナデビア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水谷 光浩
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-045720(JP,A)
【文献】特開2010-181188(JP,A)
【文献】特開2019-101495(JP,A)
【文献】国際公開第2018/104985(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/169282(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00 -23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定部と、
前記位置特定部が特定した前記測定位置に基づいて、前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出部と、を備え
、
前記関連データ抽出部は、前記プラントに配置された構造物の位置および範囲、または、前記プラントにおける部屋割りを示す構造物情報と、前記位置特定部が特定した前記測定位置と、に基づいて前記関連データを抽出する、情報処理装置。
【請求項2】
前記位置特定部は、前記測定データに対応する前記設備機器の位置、または当該測定データを測定した測定機器の位置を、当該測定データの測定位置と特定し、
前記測定データと、前記位置特定部が特定した位置を示す位置情報とを対応付けて記録するデータ管理部を備える、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記関連データ抽出部は、複数の前記設備機器の中から選択された対象設備機器までの距離、または前記プラント内で指定された指定位置までの距離が所定範囲内である前記測定位置で測定された前記測定データを前記関連データとして抽出する、請求項1または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記関連データを用いて機械学習モデル用の教師データを生成する教師データ生成部を備える、請求項1から3の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記位置特定部は、可搬式の測定機器により測定された前記測定データについては、当該測定が行われたときの当該測定機器の位置を前記測定位置として特定する、請求項1から
4の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
所定の順序で接続された複数の前記設備機器間を所定の対象が搬送される搬送速度と、前記設備機器間の距離から、前記対象が各設備機器を通過するタイミングの差を算出するか、または、複数の前記設備機器間における前記対象の標準の移動条件と前記対象の実際の移動条件との差異に基づいて、前記対象の複数の前記設備機器間の標準の移動時間を補正することにより、前記タイミングの差を算出する時差特定部を備え、
前記関連データ抽出部は、前記設備機器のそれぞれについて測定された時系列の前記測定データの中から、前記位置特定部が特定した前記測定位置と、
前記時差特定部により算出されたタイミングの差と、に基づいて前記関連データを抽出する、請求項1から
5の何れか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
情報処理装置が実行するデータ抽出方法であって、
プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定ステップと、
前記位置特定ステップで特定した前記測定位置に基づいて、前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップと、を含
み、
前記関連データ抽出ステップでは、前記プラントに配置された構造物の位置および範囲、または、前記プラントにおける部屋割りを示す構造物情報と、前記位置特定ステップにて特定された前記測定位置と、に基づいて前記関連データを抽出する、データ抽出方法。
【請求項8】
1または複数の情報処理装置が実行する機械学習モデルの生成方法であって、
プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定ステップと、
前記位置特定ステップで特定した前記測定位置に基づいて、前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップと、
前記関連データを用いて機械学習モデル用の教師データを生成する教師データ生成ステップと、
前記教師データを用いた機械学習により前記機械学習モデルを生成する学習ステップと、を含
み、
前記関連データ抽出ステップでは、前記プラントに配置された構造物の位置および範囲、または、前記プラントにおける部屋割りを示す構造物情報と、前記位置特定ステップにて特定された前記測定位置と、に基づいて前記関連データを抽出する、機械学習モデルの生成方法。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理装置としてコンピュータを機能させるためのデータ抽出プログラムであって、前記位置特定部および前記関連データ抽出部としてコンピュータを機能させるためのデータ抽出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントで測定された各種データを処理する情報処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
産業的に使用される各種プラントにおいては、各種測定機器により様々なデータが測定され、利用されている。例えば、下記の特許文献1には、プラントで測定されたプラントデータを用いて、当該プラントの異常診断を行う技術が開示されている。より詳細には、特許文献1の技術では、プラントデータを用いた機械学習により生成した学習機構を用いてプラントの異常診断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、プラントで測定される多種多様なデータの中から、学習に用いるべきプラントデータを適切に選択するための方法については何ら記載されていない。しかし、異常診断を高精度で行うためには、学習に用いるべきプラントデータを適切に選択することは極めて重要である。これは、一般的なプラントで測定されるデータは種類も量も膨大なものとなることが多いが、プラントの異常と関連性が低いデータ、あるいは関連性がないデータを学習に用いた場合、異常診断精度がかえって低下するためである。
【0005】
このため、従来は、プラントで測定されるデータを利用するためには、データの利用者が、そのプラントについての十分な知識を予め身に着けておく必要があった。例えば、関連するデータを選別するために、プラントのプロセスフローや設備の図面等を調べるといった作業が従来から行われている。しかし、このような作業は手間がかかり、また、プラント自体やそれに含まれる各種設備機器についての知識の程度により、データの選別精度が左右されてしまうという問題がある。なお、このような問題は、機械学習に用いるデータの選別に限られず、プラントで測定されるデータを利用しようとする際に共通して生じる問題点である。
【0006】
本発明の一態様は、プラントについての知識を有していなくても、測定データを適切に利用することを可能にする情報処理装置等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る情報処理装置は、プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定部と、前記位置特定部が特定した前記測定位置に基づいて、前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出部と、を備える。
【0008】
また、上記の課題を解決するために、本発明の他の態様に係る情報処理装置は、所定の順序で接続された複数の設備機器を、所定の対象が前記接続の順に通過するプラントにおいて、前記対象が各設備機器を通過するタイミングの差を特定する時差特定部と、前記時差特定部が特定した前記タイミングの差に基づいて、前記設備機器のそれぞれについて測定された時系列の前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出部と、を備える。
【0009】
また、本発明の一態様に係るデータ抽出方法は、情報処理装置が実行するデータ抽出方法であって、プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定ステップと、前記位置特定ステップで特定した前記測定位置に基づいて、前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップと、を含む。
【0010】
また、本発明の他の態様に係るデータ抽出方法は、情報処理装置が実行するデータ抽出方法であって、所定の順序で接続された複数の設備機器を、所定の対象が前記接続の順に通過するプラントにおいて、前記対象が各設備機器を通過するタイミングの差を特定する時差特定ステップと、前記時差特定ステップで特定した前記タイミングの差に基づいて、前記設備機器のそれぞれについて測定された時系列の前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップと、を含む。
【0011】
また、本発明の一態様に係る機械学習モデルの生成方法は、1または複数の情報処理装置が実行する機械学習モデルの生成方法であって、プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定ステップと、前記位置特定ステップで特定した前記測定位置に基づいて、前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップと、前記関連データを用いて機械学習モデル用の教師データを生成する教師データ生成ステップと、前記教師データを用いた機械学習により前記機械学習モデルを生成する学習ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、プラントについての知識を有していなくても、測定データを適切に利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係る情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】上記情報処理装置を適用可能なごみ焼却プラントの例を示す図である。
【
図3】測定データ格納部に記録される測定データの例を示す図である。
【
図4】可搬式の測定機器の測定位置が変化した例を示す図である。
【
図5】プラントにおける構造物と測定機器の配置例を示す図である。
【
図6】上記情報処理装置が実行する処理の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態2に係る情報処理装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】時差の特定と関連データの抽出の例を示す図である。
【
図9】上記情報処理装置が実行する処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
(情報処理装置1の構成)
本実施形態に係る情報処理装置1の構成を説明する。情報処理装置1は、プラントに配置された複数の設備機器について測定された測定データを処理する装置である。ここで「プラント」とは、産業的に使用される設備であり、上述のように複数の設備機器を備えており、それらの設備機器により、例えば製品の生産や廃棄物の処理といった所定の処理を行うものである。「設備機器」は、プラントにおいて所定の処理を行う機器である。1つの設備機器は、単体の機器であってもよいし複数の機器からなるものであってもよい。
【0015】
図1は、情報処理装置1の要部構成の一例を示すブロック図である。図示のように、情報処理装置1は、情報処理装置1の各部を統括して制御する制御部11と、情報処理装置1が使用する各種データを記憶する記憶部12を備えている。また、情報処理装置1は、情報処理装置1が他の装置と通信するための通信部13、情報処理装置1に対する各種データの入力を受け付ける入力部14、および情報処理装置1が各種データを出力するための出力部15を備えている。
【0016】
また、制御部11には、測定データ取得部111、位置特定部112、データ管理部113、関連データ抽出部114、教師データ生成部115、および学習部116が含まれている。そして、記憶部12には、測定データ格納部121およびモデル格納部122が含まれている。
【0017】
測定データ取得部111は、プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された測定データを取得する。測定データの取得方法は特に限定されず、例えば情報処理装置1のユーザが入力部14を介して測定データを入力してもよく、この場合、測定データ取得部111は、入力部14を介して入力された測定データを取得する。また、例えば、測定データ取得部111は、測定データを測定する測定機器と通信部13を介して通信することにより、その測定機器から測定データを取得してもよい。
【0018】
位置特定部112は、測定データ取得部111が取得する各測定データの測定位置を特定する。測定位置の特定方法は特に限定されない。例えば、位置特定部112は、測定データに対応する設備機器の位置、または当該測定データを測定した測定機器の位置を、当該測定データの測定位置と特定してもよい。この場合、プラント内における設備機器の位置またはプラント内における測定機器の位置を予め特定しておく。そして、位置特定部112は、測定データが何れの設備機器について測定されたものであるか、あるいは測定データが何れの測定機器により測定されたものであるかに応じて当該測定データの測定位置を特定する。この他にも、位置特定部112は、例えば、各測定データの測定位置を、入力部14を介してユーザに入力させる等の方法で測定位置を特定してもよい。
【0019】
データ管理部113は、測定データ取得部111が取得した測定データと、位置特定部112が特定したその測定データの測定位置を示す位置情報とを対応付けて測定データ格納部121に記録する。
【0020】
関連データ抽出部114は、位置特定部112が特定した測定位置に基づいて、測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する。どのような測定データを関連データとするかは予め定めておけばよい。例えば、関連データ抽出部114は、複数の設備機器の中から選択された対象設備機器までの距離、またはプラント内で指定された指定位置までの距離が所定範囲内である測定位置で測定された測定データを関連データとして抽出してもよい。
【0021】
対象設備機器までの距離が所定範囲内の測定位置で測定された測定データは、対象設備機器に関連している可能性が高い。同様に、指定位置までの距離が所定範囲内の測定位置で測定された測定データは、指定位置で発生した事象に関連している可能性が高い。よって、上記の構成によれば、対象設備機器あるいは指定位置で発生した事象に関連する測定データを関連データとして抽出することができる。
【0022】
教師データ生成部115は、関連データを用いて機械学習モデル用の教師データを生成する。情報処理装置1は、教師データ生成部115を備えていることにより、機械学習モデル用の教師データを自動的に生成することができる。
【0023】
機械学習モデルは、関連データを用いてプラントに関する推論を行うものであればよい。例えば、関連データ抽出部114が、対象設備機器あるいは指定位置の近傍で測定された測定データを関連データとして抽出するとする。なお、対象設備機器あるいは指定位置は、ユーザが指定してもよいし、予め定めておいてもよい。
【0024】
この場合、教師データ生成部115は、当該対象設備機器あるいは指定位置に関する所定の推論を行う機械学習モデル用の教師データを生成してもよい。所定の推論としては、例えば、所定時間後における対象設備機器の動作状態の予測、対象設備機器あるいは指定位置で動作異常等の所定の事象が発生する確率の予測、当該事象の発生を未然に防ぐために必要なプラント制御の内容の予測等が挙げられる。
【0025】
教師データ生成部115は、関連データに対して、機械学習モデルが行う推論の内容に応じた正解データを対応付けることにより、教師データを生成する。例えば、対象設備機器に1時間以内に動作異常が発生するか否かを予測する機械学習モデルを生成するとする。この場合、教師データ生成部115は、関連データに対して、それらの関連データが測定された後、1時間以内に動作異常が発生したか否かを示す正解データを対応付ければよい。
【0026】
学習部116は、教師データ生成部115が生成する教師データを用いた機械学習により機械学習モデルを生成する。機械学習のアルゴリズムは、推論の内容や要求される推論の精度等に応じて適宜選択すればよい。例えば、ニューラルネットワーク等を適用することもできるし、線形回帰等を適用することもできる。生成されたモデルはモデル格納部122に記録される。
【0027】
測定データ格納部121には、上述のように、測定データ取得部111が取得した測定データと、その測定データの測定位置を示す位置情報とが対応付けられた状態で記録される。測定データ格納部121に記録されるデータの詳細は
図3に基づいて後述する。また、モデル格納部122には、上述のように、学習部116が生成する機械学習モデルが記録される。
【0028】
以上のように、情報処理装置1は、プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定部112と、位置特定部112が特定した前記測定位置に基づいて、前記測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出部114と、を備える。
【0029】
プラントに配置された各設備機器について測定された測定データと、それらの測定位置との間には関連性があることが多い。例えば、プラントで障害が発生したときには、プラントで測定された測定データのうち、その障害の発生位置から近い測定位置で測定されたものには障害の影響が現れ、その障害の発生位置から遠い測定位置で測定されたものには障害の影響が現れないことが多い。
【0030】
よって、測定データの測定位置に基づいて関連データを抽出する上記の構成によれば、測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出することが可能になる。そして、関連データを抽出することができれば、プラントについての知識を有していなくても、それらを適切に利用することが可能になる。
【0031】
また、以上のように、位置特定部112は、測定データに対応する設備機器の位置、または当該測定データを測定した測定機器の位置を、当該測定データの測定位置と特定してもよい。そして、情報処理装置1は、測定データと、位置特定部112が特定した位置を示す位置情報とを対応付けて記録するデータ管理部113を備えていてもよい。この構成によれば、取得した測定データとその測定データの位置情報とを対応付けて記録するので、測定データに位置情報という付加価値を与えることができる。
【0032】
例えば、位置情報が対応付けられた測定データを用いれば、プラントについての知識がないユーザであっても、物理的に近い位置で測定された測定データの関連性を分析することができる。また、位置情報を三次元の位置情報として記録しておくことにより、VR(Virtual Reality)やAR(Augmented Reality)において、測定データの測定位置を表示することも可能になる。そして、これにより、VRを用いた臨場感(現場感)のあるプラント監視を行うことや、ARを活用した現場の保全員へのデータ提供等も可能になる。また、プラント内でトラブルや事故が発生した場合、その現場付近にPTZ(Panorama Tilt Zoom)カメラや、遠隔操作可能なあるいは自律移動するドローン、ロボット等を移動させて情報取集を行わせることも可能になる。
【0033】
(情報処理装置1の適用例)
情報処理装置1の適用例を
図2に基づいて説明する。
図2は、情報処理装置1を適用可能なごみ焼却プラント1000の例を示す図である。
【0034】
ごみ焼却プラント1000は、ごみ収集車Pが搬入するごみを一時的に貯留するごみピット1001と、ごみピット1001内のごみを焼却する焼却炉1002とを含む。ごみピット1001と焼却炉1002は、ごみを焼却炉1002に供給するためのホッパー1003で接続されており、ごみピット1001内のごみは、ホッパー1003を通って焼却炉1002に送り込まれ、焼却される。
【0035】
ごみピット1001には、監視室1004が設けられている。監視室1004内には、クレーン1006を操作するための制御装置等が設けられている。上述の情報処理装置1は、例えばこの監視室1004内に配置してもよい。無論、情報処理装置1の配置は任意であり、例えばごみ焼却プラント1000の外部に配置してもよい。
【0036】
ごみピット1001の底部は、ごみ収集車Pが搬入したごみを貯留するごみ貯留部1005となっている。
図2の例では、ごみ貯留部1005に貯留されているごみを「G」で示している。ごみ貯留部1005内のごみGは、ごみピット1001内に設けられたクレーン1006でホッパー1003に投入されて、焼却炉1002に送り込まれる。
【0037】
焼却炉1002には、火格子1007と煙道1008と灰取出口1009が含まれている。焼却炉1002に送り込まれたごみは、火格子1007により搬送されつつ焼却される。ごみの焼却により発生した煙等は、有害物質等が除去された上で煙道1008から放出される。また、ごみの焼却により発生した焼却灰等は、灰取出口1009から排出される。
【0038】
以上のような構成を備えるごみ焼却プラント1000には、測定機器3a~3gが設けられている。より詳細には、測定機器3a、3bはごみピット1001内に、測定機器3c~3eは火格子1007付近に、測定機器3fは焼却炉1002の天井付近に、測定機器3gは煙道1008に設けられている。なお、以下では、測定機器3a~3gを区別する必要がないときには単に測定機器3と呼ぶ。
【0039】
測定機器3は、ごみ焼却プラント1000に含まれる設備機器についての測定を行い、その測定結果を示す測定データを出力する機器である。測定対象はごみ焼却プラント1000の運用に寄与するものであればよく、測定方法は測定対象に応じた方法を適宜採用すればよい。例えば、測定機器3fを温度計とすれば、焼却炉1002という設備機器における炉内温度を測定データとすることができる。また、例えば、測定機器3gを窒素酸化物の濃度を検出するセンサとすれば、焼却炉1002という設備機器で発生した窒素酸化物の濃度を測定データとすることができる。この他にも、例えば、測定機器3bをカメラとすれば、ホッパー1003という設備機器内におけるごみの外観を示す画像データを測定データとすることができる。この他にも、例えば振動計等を測定機器3として適用することもできる。
【0040】
また、上記「測定データ」には、設備機器の動作条件を示すデータが含まれていてもよい。この場合、設備機器の動作制御を行う機器を測定機器3としてもよい。例えば、火格子1007の動作制御を行う機器を測定機器3とし、火格子速度の設定値を測定データとしてもよい。
【0041】
(測定データの例)
測定データ格納部121に記録される測定データについて
図3に基づいて説明する。
図3は、測定データ格納部121に記録される測定データの例を示す図である。より詳細には、
図3には、各測定データについて、測定機器IDと設備機器IDと位置情報とが対応付けられたテーブル形式のデータを示している。
【0042】
測定機器IDは、測定データを出力した測定機器3を示す識別情報である。また、設備機器IDは、測定データが測定された設備機器を示す識別情報である。そして、位置情報は、測定データの測定位置を示す情報である。
【0043】
例えば、
図3の例において、測定データ(a0,a1,a2,…)は、時系列のデータであって、測定機器IDが0001で設備機器IDがAであり、位置情報が(x1,y1,z1)である。この例のように、位置情報は、例えばごみ焼却プラント1000内における位置を三次元の座標値により表したものであってもよい。
【0044】
これらの情報から、この測定データが何れの測定機器3でいずれの設備機器について測定されたデータであるかを特定することができると共に、この測定データの測定位置を特定することが可能である。
【0045】
また、
図3に示す測定データ(d0,d1,d2,…)は、測定機器IDがM004となっている。この測定機器IDで示される測定機器3は、可搬式の測定機器3であることを想定している。「可搬式」とはプラント内における測定位置を変更できるということである。可搬式の測定機器3は、測定位置を変えることができるため、可搬式の測定機器3で測定された測定データについては、その測定時における測定機器3の位置を特定する必要がある。可搬式の測定機器3は、例えば現場の保全員やドローン、あるいはロボット等により測定位置に運ばれる。
【0046】
(可搬式の測定機器で測定した測定データの取り扱いについて)
上述のように、可搬式の測定機器3については測定位置が変わるので、測定が行われたときの測定機器3の位置を測定位置とする必要がある。また、測定位置が変わることにより、可搬式の測定機器3で測定された測定データの関連データも変化し得る。これについて、
図4に基づいて説明する。
図4は、可搬式の測定機器3の測定位置変化した例を示す図である。
【0047】
図4の例では、プラントの保全員Xが可搬式の測定機器3Bを携帯している。そして、時刻t1において、保全員Xは、測定機器3Aが設けられた設備機器Aの付近で測定機器3Bによる測定を行っている。また、時刻t2には、保全員Xは、測定機器3Cが設けられた設備機器Cの付近で測定機器3Bによる測定を行っている。
【0048】
このように、可搬式の測定機器3Bを用いて測定を行う場合、同じ測定機器3Bによって測定した測定データであっても、時刻t1に測定されたものと、時刻t2に測定されたものとでは測定位置が異なる。つまり、測定機器3Bで測定した測定データは、測定位置が動的に変化し得る。
【0049】
このため、位置特定部112は、可搬式の測定機器3Bにより測定された測定データについては、当該測定が行われたときの測定機器3Bの位置を測定位置として特定する。これにより、可搬式の測定機器3Bにより測定された測定データについても妥当な測定位置を特定することができる。
【0050】
可搬式の測定機器3Bの測定位置の特定方法は特に限定されず、例えば、保全員Xが測定機器3Bで測定を行う際に測定位置を記録しておき、その測定位置を情報処理装置1に入力するようにしてもよい。また、例えば、プラント内の各所にビーコン信号の発信器を取り付けておき、保全員Xまたは測定機器3Bにその受信器を取り付けておいてもよい。この場合、位置特定部112は、測定データの測定中に、何れの場所のビーコン信号が受信器に受信されているかにより、測定位置を特定することができる。この他にも、例えば保全員Xまたは測定機器3BにGPS(Global Positioning System)の受信機を取り付けておいて、当該受信機の出力する位置情報を用いて測定位置を特定すること等も可能である。
【0051】
可搬式の測定機器3Bにより測定された測定データは、その測定時刻に応じて異なる測定データに対する関連データとして抽出され得る。例えば、
図4の例では、時刻t1における測定機器3Bの測定位置は、設備機器Aの近傍である。このため、時刻t1で測定機器3Bが測定した測定データは、設備機器Aに設けられた測定機器3Aが測定した測定データの関連データとして抽出され得る。一方、時刻t2における測定機器3Bの測定位置は設備機器Cの近傍であるため、時刻t2で測定機器3Bが測定した測定データは、設備機器Cに設けられた測定機器3Cが測定した測定データの関連データとして抽出され得る。
【0052】
(構造物情報を用いた関連データの抽出例)
関連データ抽出部114は、プラントに配置された構造物の配置を示す構造物情報に基づいて関連データを抽出してもよい。これについて、
図5に基づいて説明する。
図5は、プラントにおける構造物STと測定機器3A~3Cの配置例を示す図である。なお、
図5には上面視でL字状の壁である構造物STを真上から見た様子を示している。
【0053】
この構造物STの周囲には、測定機器3A~3Cが配置されている。測定機器3Aと3Bの距離はd1、測定機器3Bと3Cの距離はd2である。
図5の例では、d2>d1であるから、単純に距離のみから測定機器3Bの測定データに関連する関連データを抽出する場合、測定機器3Aの測定データが抽出されて、測定機器3Cの測定データは抽出されないことがあり得る。
【0054】
しかし、測定機器3Aと3Bの間には構造物STが存在しており、この構造物STの存在により測定機器3Aで測定した測定データと測定機器3Bで測定した測定データとの間の関連性が低くなったり、あるいは無くなったりすることがあり得る。例えば、測定機器3A~3Cが何れも温度センサであり、構造物STが熱を通しにくい遮熱壁である場合、測定機器3Aで測定した測定データと測定機器3Bで測定した測定データとの間の関連性は低くなる可能性が高い。よって、この場合、測定機器3Bの測定データに関連する関連データとしては、測定機器3Aの測定データよりも、測定機器3Cの測定データを抽出する方が妥当である。
【0055】
以上のことから、関連データ抽出部114は、位置特定部112が特定する測定位置のみならず、プラントに配置された構造物の配置を示す構造物情報に基づいて関連データを抽出してもよい。この構成によれば、プラントに配置された構造物の配置を示す構造物情報と測定位置に基づいて関連データを抽出するので、構造物の配置を考慮した関連データの抽出が可能になる。
【0056】
構造物情報に基づく関連データの抽出方法は、当該構造物の影響が抽出結果に反映されるような方法であればよい。例えば、関連データ抽出部114は、
図5に示すように、構造物STを回り込んで測定位置間を結ぶ経路を設定し、その経路の経路長(
図5の例ではd3)を測定機器3Aの測定位置と測定機器3Bの測定位置との距離とみなしてもよい。これは、構造物を回り込んで伝わる音や振動などの測定に有効な方法である。
【0057】
また、例えば、関連データ抽出部114は、
図5における測定機器3Aと測定機器3Bのように測定位置の間に構造物が存在する場合には、それらの測定データを関連データとして抽出しないようにしてもよい。
【0058】
この他にも、例えば、関連データ抽出部114は、測定位置の間に構造物が存在する場合には、それらの測定位置間の距離に重み付けをした上で関連データの抽出を行ってもよい。例えば、
図5の例において、測定機器3Aの測定位置と測定機器3Bの測定位置との間の距離d1に1.5倍の重みを乗じるようにした場合、重み付けされたd1はd2よりも大きくなる。よって、この場合、測定機器3Bの測定データと最も関連性の高い測定データを1つ抽出するとすれば、測定機器3Aの測定データではなく、測定機器3Cの測定データが抽出される。なお、重みの値は、測定データの種類、構造物STの形状、材質、およびサイズ等に応じたものとしてもよい。
【0059】
なお、構造物情報は、プラントに配置された構造物の位置および範囲を座標などで示すものであってもよいし、プラントにおける部屋割り等を示すものであってもよい。プラントにおける部屋割りを示す構造物情報を用いる場合、関連データ抽出部114は、測定位置が同じ部屋内である測定データを優先的に関連データとして抽出すればよい。
【0060】
(処理の流れ)
情報処理装置1が実行する処理の流れを
図6に基づいて説明する。
図6は、情報処理装置1が実行する処理の一例を示す図である。なお、
図6の処理のうち、S11~S14がデータ抽出方法であり、S15およびS16を含めた
図6の処理全体が機械学習モデルの生成方法である。
【0061】
S11では、測定データ取得部111が、所定の期間に各測定機器3が測定した測定データを取得する。測定データ取得部111は、通信部13を介して受信した測定データを取得してもよいし、入力部14を介して入力された測定データを取得してもよい。なお、測定データの取得方法および取得タイミングはこの例に限られない。例えば、測定データ取得部111は、各測定機器3が出力する測定データを逐次取得してもよい。
【0062】
S12(位置特定ステップ)では、位置特定部112が、S11で取得された測定データ、すなわちプラント(例えばごみ焼却プラント1000)に配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する。
【0063】
例えば、位置特定部112は、測定機器3の位置をその測定データの測定位置として特定してもよい。また、例えば、位置特定部112は、測定データが測定された設備機器の位置をその測定データの測定位置として特定してもよい。また、S11で取得した測定データに可搬式の測定機器3で測定されたものが含まれている場合には、位置特定部112は、
図4に基づいて説明した方法により測定位置を特定すればよい。
【0064】
S13では、データ管理部113が、S11で取得された測定データに、S12で特定された測定位置を示す位置情報を対応付けて測定データ格納部121に記録する。
図3の例のように、データ管理部113は、測定機器3の識別情報や設備機器の識別情報についてもあわせて記録してもよい。
【0065】
S14(関連データ抽出ステップ)では、関連データ抽出部114が、S12で特定された測定位置に基づいて、S11で取得された測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する。例えば、関連データ抽出部114は、情報処理装置1のユーザが指定した設備機器、つまり上述した対象設備機器までの距離が所定値以下の測定位置で測定された測定データを、当該対象設備機器に関連する関連データとして抽出してもよい。
【0066】
S15では、教師データ生成部115が、S14で抽出された関連データに対して正解データを対応付けて教師データを生成する。そして、S16では、学習部116が、S15で生成された教師データを用いて機械学習を行い、機械学習モデルを生成し、生成した機械学習モデルをモデル格納部122に記録する。これにより
図6の処理は終了する。
【0067】
以上のように、情報処理装置1が実行するデータ抽出方法には、プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定ステップ(S12)と、位置特定ステップで特定した測定位置に基づいて、測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップ(S14)と、を含む。これにより、プラントについての知識を有していなくても、測定データを適切に利用することが可能になる。
【0068】
また、以上のように、情報処理装置1が実行する機械学習モデルの生成方法は、プラントに配置された複数の設備機器のそれぞれについて測定された各測定データの測定位置を特定する位置特定ステップ(S12)と、位置特定ステップで特定した測定位置に基づいて、測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップ(S14)と、関連データを用いて機械学習モデル用の教師データを生成する教師データ生成ステップ(S15)と、この教師データを用いた機械学習により機械学習モデルを生成する学習ステップ(S16)と、を含む。この生成方法によれば、プラントについての知識を有していなくても、相互に関連する測定データを抽出して、機械学習モデルを生成することが可能になる。
【0069】
なお、上記機械学習モデルの生成方法は、上述の例のように1台の情報処理装置1が実行してもよいし、複数台の情報処理装置が実行してもよい。後者の場合、例えば、S11~S14の処理を行う情報処理装置1と、S15およびS16の処理を行う情報処理装置とを用いて機械学習モデルの生成方法を実行してもよい。また、S15の処理とS16の処理をそれぞれ別の情報処理装置に実行させてもよい。
【0070】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0071】
(情報処理装置1Aの構成)
図7は、本実施形態に係る情報処理装置1Aの要部構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置1Aは、位置特定部112の代わりに時差特定部112Aを備えている点、および移動条件特定部117Aを備えている点で情報処理装置1と相違している。
【0072】
時差特定部112Aは、プラントにおいて所定の対象が各設備機器を通過するタイミングの差を特定する。時差特定部112Aが実行する処理の詳細は
図8に基づいて後述する。そして、情報処理装置1Aの関連データ抽出部114は、時差特定部112Aが特定したタイミングの差に基づいて、設備機器のそれぞれについて測定された時系列の測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する。
【0073】
移動条件特定部117Aは、設備機器間における所定の対象の移動条件を特定する。移動条件特定部117Aは必須の構成ではない。移動条件特定部117Aが設けられている場合、時差特定部112Aは、移動条件特定部117Aが特定した移動条件に基づいて、所定の対象が各設備機器を通過するタイミングの差を特定する。これにより、対象の移動条件が変動する場合であっても、対象が各設備機器を通過するタイミングの差を適切に特定することができる。なお、移動条件の特定方法については
図8に基づいて後述する。
【0074】
以上のように、情報処理装置1Aは、プラントにおいて所定の対象が各設備機器を通過するタイミングの差を特定する時差特定部112Aと、時差特定部112Aが特定したタイミングの差に基づいて、設備機器のそれぞれについて測定された時系列の測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出部114と、を備える。
【0075】
所定の順序で接続された複数の設備機器を、所定の対象が順に通過するプラントにおいては、対象が各設備機器を通過するタイミングに差が生じる。そして、対象が設備機器を通過しているときにその設備機器について計測された計測データは対象に関連がある可能性が高く、一方、対象が設備機器を通過していないときにその設備機器について計測された計測データは対象に関連がない可能性が高いといえる。よって、対象が各設備機器を通過するタイミングの差に基づいて関連データを抽出する上記の構成によれば、時系列の測定データの中から相互に関連するものを関連データとして抽出することが可能になる。
【0076】
(時差の特定と関連データの抽出の例)
移動条件特定部117Aと時差特定部112Aによる時差の特定と、特定された時差に基づく関連データ抽出部114により関連データの抽出について、
図8に基づいて説明する。
図8は、時差の特定と関連データの抽出の例を示す図である。
【0077】
図8の例では、対象となるプラントにA~Cの3台の設備機器が設けられており、設備機器A~Cにはそれぞれ測定機器3A~3Cが設けられていることを想定している。設備機器A~Cは、A~Cの順序で接続されており、設備機器A~Cを所定の対象Yがこの接続の順に通過する。対象Yは、例えば、各設備機器A~Cの内部または周囲を通過する気体(例えば排出ガス等)であってもよいし、液体(例えばプラントで処理される処理液や冷却水等)であってもよいし、固体であってもよい。
【0078】
ここでは、対象となるプラントがごみ焼却プラントであり、対象Yがごみであるとして説明を行う。対象Yは、図示しない第1の搬送装置により設備機器AからBに搬送され、さらに、図示しない第2の搬送装置により設備機器BからCに搬送されるとする。
【0079】
図8の例において、時刻t0には、対象Yは設備機器Aの内部に存在し、このときに測定機器3Aが測定した測定データの値はa0である。時刻t0からΔt1だけ経過した時刻t1には、対象Yは設備機器Bに移動しており、このときに測定機器3Bが測定した測定データの値はb1である。そして、時刻t1からΔt2だけ経過した時刻t2には、対象Yは設備機器Cに移動しており、このときに測定機器3Cが測定した測定データの値はc2である。
【0080】
この例では、時差特定部112Aは、対象Yが設備機器Aを通過するタイミングと設備機器Bを通過するタイミングとの差をΔt1と特定し、対象Yが設備機器Bを通過するタイミングと設備機器Cを通過するタイミングとの差をΔt2と特定する。
【0081】
このようなタイミングの差を特定する方法としては様々な方法を適用することができる。例えば、移動条件特定部117Aが、設備機器間における対象Yの搬送速度を特定する構成としてもよい。この場合、時差特定部112Aは、特定された搬送速度と設備機器間の距離から、タイミングの差を算出することができる。
【0082】
また、例えば、設備機器間における対象Yの標準の移動条件と標準の移動時間を予め求めておいてもよい。この場合、時差特定部112Aは、移動条件特定部117Aが特定した移動条件と標準の移動条件との差異に基づいて標準の移動時間を補正することにより、タイミングの差を算出すればよい。例えば、移動条件特定部117Aが特定した移動条件が、標準の移動条件よりも対象Yの移動速度を10%低下させるものであった場合、時差特定部112Aは、標準の移動時間を10%増しにした時間を、タイミングの差として特定すればよい。
【0083】
なお、移動条件特定部117Aが特定する移動条件は、所定の対象が各設備機器を通過するタイミングの差に影響を与えるような条件であればよい。例えば、所定の対象が液体であれば、移動条件特定部117Aはその流量や流速を移動条件として特定してもよい。また、例えば、所定の対象が気体であれば、移動条件特定部117Aは風速を移動条件として特定してもよい。
【0084】
また、移動条件特定部117Aは、搬送装置の運転状況を移動条件として特定してもよい。また、設備機器間にダンパやバルブ等が設けられている場合、移動条件特定部117Aは、それらの動作状態や開閉状態を移動条件として特定してもよい。このような移動条件を用いることにより、対象の一時的な停滞や、移動ルートの変更等も考慮した関連データの抽出が可能になる。
【0085】
データ管理部113は、以上のようにして特定されたタイミングの差を時差情報として測定データ格納部121に記録してもよい。
図8には、時差情報と対応付けて測定データ格納部121に記録された測定データの例を示している。このように、測定データと時差情報とを対応付けて記録しておけば、関連データ抽出部114は、測定データ格納部121を参照して関連データを抽出することができる。
【0086】
より詳細には、
図8に示す各測定データには、測定機器ID、設備機器ID、時差情報、および測定時刻を示す情報がそれぞれ対応付けられている。時差情報は、上述のように所定の対象が設備機器を通過するタイミングの差を示している。測定時刻は、各測定データの測定時刻を示している。
【0087】
関連データ抽出部114は、このような各種情報を対応付けた測定データを参照することにより、互いに関連する測定データを関連データとして抽出することができる。例えば、
図8に示す、設備機器Aについて測定された測定データのうち、破線で囲んだa0の関連データ(測定時刻はt0)を抽出するとする。この場合、関連データ抽出部114は、設備機器Aの下流に位置する設備機器Bについて測定された測定データのうち、a0が測定された時刻t0から時差情報が示す時間Δt1が経過した時刻(t0+Δt1=t1)に測定された測定データb1を抽出する。また、関連データ抽出部114は、設備機器Bの下流に位置する設備機器Cについて測定された測定データのうち、b1が測定された時刻t1から時差情報が示す時間Δt2が経過した時刻(t1+Δt2=t2)に測定された測定データc2を抽出する。これらの各測定データには対象Yの存在の影響が反映されていると考えられるので、これらの各測定データは対象Yに関連した関連データであるといえる。
【0088】
(処理の流れ)
情報処理装置1Aが実行する処理の流れを
図9に基づいて説明する。
図9は、情報処理装置1Aが実行する処理の一例を示す図である。なお、
図9の処理のうち、S21~S25がデータ抽出方法であり、S26およびS27を含めた
図9の処理全体が機械学習モデルの生成方法である。
【0089】
S21では、
図6のS11と同様に、測定データ取得部111が測定データを取得する。また、S22では、移動条件特定部117Aが、S21で取得された測定データの測定期間において、プラントの設備機器間を所定の対象が移動する移動条件を特定する。
【0090】
S23(時差特定ステップ)では、時差特定部112Aが、S22で特定された移動条件に基づいて、所定の対象が各設備機器を通過するタイミングの差を特定する。そして、S24では、データ管理部113が、S21で取得された測定データに、S23で特定された時差を対応付けて測定データ格納部121に記録する。
【0091】
S25(関連データ抽出ステップ)では、関連データ抽出部114が、S23で特定されたタイミングの差に基づいて、設備機器のそれぞれについて測定された時系列の測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する。S26およびS27の処理は
図6のS15およびS16と同様である。
【0092】
以上のように、情報処理装置1Aが実行するデータ抽出方法は、所定の順序で接続された複数の設備機器を、所定の対象が前記接続の順に通過するプラントにおいて、前記対象が各設備機器を通過するタイミングの差を特定する時差特定ステップ(S23)と、時差特定ステップで特定したタイミングの差に基づいて、設備機器のそれぞれについて測定された時系列の測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップ(S25)と、を含む。この構成によれば、時系列の測定データの中から相互に関連するものを関連データとして抽出することが可能になる。
【0093】
また、情報処理装置1Aが実行する機械学習モデルの生成方法は、所定の順序で接続された複数の設備機器を、所定の対象が前記接続の順に通過するプラントにおいて、前記対象が各設備機器を通過するタイミングの差を特定する時差特定ステップ(S23)と、時差特定ステップで特定したタイミングの差に基づいて、設備機器のそれぞれについて測定された時系列の測定データのうち相互に関連するものを関連データとして抽出する関連データ抽出ステップ(S25)と、前記関連データを用いて機械学習モデル用の教師データを生成する教師データ生成ステップ(S26)と、前記教師データを用いた機械学習により前記機械学習モデルを生成する学習ステップ(S27)と、を含む。この生成方法によれば、プラントについての知識を有していなくても、相互に関連する測定データを抽出して、機械学習モデルを生成することが可能になる。
【0094】
〔変形例〕
実施形態2の情報処理装置1Aの制御部11に、実施形態1の情報処理装置1が備える位置特定部112を追加してもよい。この場合、関連データ抽出部114は、設備機器のそれぞれについて測定された時系列の前記測定データの中から、位置特定部112が特定する測定位置と、時差特定部112Aが特定するタイミングの差と、に基づいて関連データを抽出してもよい。
【0095】
対象が各設備機器を通過するタイミングの差のみならず、測定位置にも基づいて関連データを抽出する上記の構成によれば、時系列の測定データの中から相互に関連するものを関連データとして抽出することが可能になる。
【0096】
また、実施形態1および2において抽出した関連データは、上述のように教師データとして利用できる他、様々な用途で利用することができる。例えば、抽出された関連データを解析してプラントの状態を予測することや、プラントにおいて発生した動作異常の原因解析等も可能になる。
【0097】
また、実施形態2で説明した時差情報は、対象のトラッキング情報として利用することもできる。例えば、製品を製造するプラントであれば、時差情報を用いて各製品の製造時に各設備機器で測定された測定データを関連データとして抽出し、それらを各製品の品質管理用データとすることもできる。
【0098】
また、時差情報は、測定データの補正に利用することもできる。例えば、ある設備機器で生じた障害の影響により、その下流の設備機器についての測定データが異常値となることがある。このような場合、時差情報を用いれば、障害の影響で異常値となった測定データを特定することができ、また、そのような測定データを補正して障害の影響を除外することも可能になる。
【0099】
〔ソフトウェアによる実現例〕
情報処理装置1および情報処理装置1A(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に制御部11に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラム(データ抽出プログラム)により実現することができる。
【0100】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0101】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0102】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0103】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1、1A 情報処理装置
112 位置特定部
112A 時差特定部
113 データ管理部
114 関連データ抽出部
115 教師データ生成部
116 学習部
117A 移動条件特定部