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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】地盤高付与システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 7/02 20060101AFI20241202BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G01C7/02
G01B11/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021083608
(22)【出願日】2021-05-18
(65)【公開番号】P2022177396
(43)【公開日】2022-12-01
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390023249
【氏名又は名称】国際航業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】阿部 亮吾
(72)【発明者】
【氏名】徳岡 杜香
(72)【発明者】
【氏名】城 朋恵
(72)【発明者】
【氏名】岸本 奈都子
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-175387(JP,A)
【文献】特開2019-66519(JP,A)
【文献】特許第6762636(JP,B1)
【文献】特開2011-158278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 5/00-15/14
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線レーザとグリーンレーザを有するレーザ計測機によって取得された計測点に基づいて、計測対象とされた陸域に対して地盤高を与えるシステムであって、
前記グリーンレーザによって計測されたグリーンレーザ計測点に対して、水域クラスとノイズクラスを含む複数のクラスに分類するクラス分類手段と、
前記クラス分類手段によって前記ノイズクラスに分類された前記グリーンレーザ計測点を抽出するとともに、該ノイズクラスの該グリーンレーザ計測点に対してフィルタリング処理を行うフィルタリング手段と、
前記フィルタリング手段によってフィルタリング処理がなされた前記グリーンレーザ計測点と、前記近赤外線レーザによって計測された近赤外線レーザ計測点と、を合成する計測点合成手段と、を備え、
前記計測点合成手段によって合成された前記グリーンレーザ計測点と前記近赤外線レーザ計測点とに基づいて、前記陸域に対して地盤高を与える、
ことを特徴とする地盤高付与システム。
【請求項2】
前記近赤外線レーザ計測点の点密度があらかじめ定められた点密度閾値を下回る領域を、着目領域として抽出する着目領域抽出手段と、
フィルタリング処理がなされた前記グリーンレーザ計測点の中から、前記着目領域抽出手段によって抽出された前記着目領域内に位置する該グリーンレーザ計測点を抽出するグリーンレーザ計測点抽出手段と、をさらに備え、
前記計測点合成手段は、前記グリーンレーザ計測点抽出手段によって抽出された前記グリーンレーザ計測点と、前記近赤外線レーザ計測点と、を合成する、
ことを特徴とする請求項1記載の地盤高付与システム。
【請求項3】
前記着目領域の周辺の前記近赤外線レーザ計測点に基づいて、該着目領域の地盤面を推定する地盤面推定手段を、さらに備え、
前記グリーンレーザ計測点抽出手段は、前記地盤面推定手段によって推定された前記地盤面を基準として鉛直面内に拡張した範囲内に位置する前記グリーンレーザ計測点を抽出し、
前記計測点合成手段は、前記グリーンレーザ計測点抽出手段によって抽出された前記グリーンレーザ計測点と、前記近赤外線レーザ計測点と、を合成する、
ことを特徴とする請求項2記載の地盤高付与システム。
【請求項4】
前記着目領域の周辺の前記近赤外線レーザ計測点に基づいて、該着目領域の前記地盤面の傾斜の程度を示す地盤面傾斜値を算出する傾斜値算出手段を、さらに備え、
前記グリーンレーザ計測点抽出手段は、前記傾斜値算出手段によって算出された前記地盤面傾斜値があらかじめ定められた傾斜閾値を下回る前記着目領域に係る前記グリーンレーザ計測点を抽出し、
前記計測点合成手段は、前記グリーンレーザ計測点抽出手段によって抽出された前記グリーンレーザ計測点と、前記近赤外線レーザ計測点と、を合成する、
ことを特徴とする請求項3記載の地盤高付与システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、レーザ計測機によって取得された計測点に基づいて地盤高を与える技術に関するものであり、より具体的には、近赤外線レーザに加えてグリーンレーザによる計測点を用いて陸域に地盤高を与える地盤高付与システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
広範囲に渡って地物を計測する場合、これまでは空中写真測量によるのが主流であったが、昨今では、航空レーザ計測や、衛星写真を利用した計測、あるいは合成開口レーダを利用した計測など様々な計測手法が出現し、状況に応じて好適な手法を適宜選択できるようになった。なおここでいう「地物」とは、橋梁やオフィスビルといった人工物、あるいは河川や海、森林といった自然物など、地上に存在するあらゆる「物」の総称である。
【0003】
このうち航空レーザ計測は、計測したい対象地物の上空を航空機で飛行し、この対象地物に対して照射したレーザパルスの反射波を受けて計測する手法である。この場合航空機には通常、GNSS(Global Navigation Satellite System)などの測位計と、IMU(Inertial Measurement Unit)などの慣性測量装置が搭載されており、レーザパルスの照射時刻と受信時刻との時間差によって計測点(レーザパルスが反射した地点)までの距離が得られ、さらにGNSSとIMUによってレーザパルス照射時における照射位置(x,y,z)と照射姿勢(ω,φ,κ)を記録することができ、この結果、計測点の3次元座標を取得することができる。
【0004】
また、従来の航空レーザ計測では近赤外レーザ(波長1064ナノメートル:nm)を使用していたためレーザパルスが水面で反射して水底の地物は計測できなかったが、昨今では水底の地物(つまり水深)も取得できる航空レーザ計測が利用されるようになった。この手法は、ALB(Airborne Laser Bathymetry)と呼ばれ、近赤外レーザに加え航空機からグリーンレーザ(波長532nm)を照射することができる手法である。グリーンレーザは水中を透過して水底から反射してくることから測深が可能であり、すなわち陸域は近赤外レーザで計測し、水域部はグリーンレーザで計測するわけである。
【0005】
このような技術進歩もあって、近年ではALBを含む航空レーザ計測が多用されるようになり、これに伴って航空レーザ計測に関する新規な技術が数多く提案されてきた。例えば特許文献1では、ALBを用いて蛇行する河川を好適に計測する技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-112462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したようにALBによって計測する場合、従来では陸域に関しては近赤外レーザによる計測点を利用し、一方、水域部に関してはグリーンレーザによる計測点を利用していた。ところが本願発明の発明者らは、近赤外レーザは波長が長くフットプリントも小さいことから枝葉等に反射することがあり、これに対してグリーンレーザは近赤外レーザより波長が短くフットプリントも大きいことから地盤面まで到達して反射することがある、という事象を種々の解析の中で見出した。すなわち、陸域において近赤外レーザでは計測できない地点がグリーンレーザによれば計測可能となるケースもあり、陸域においてもグリーンレーザの計測点を利用することができるわけである。
【0008】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、グリーンレーザの計測点を有効活用したうえで陸域に地盤高を与える地盤高付与システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、近赤外レーザによる計測点に加えグリーンレーザによる計測点も活用して陸域に地盤高を与える、という点に着目したものであり、従来にはなかった発想に基づいてなされた発明である。
【0010】
本願発明の地盤高付与システムは、近赤外線レーザとグリーンレーザを有するレーザ計測機によって取得された計測点に基づいて、計測対象とされた陸域に対して地盤高を与えるシステムであって、クラス分類手段とフィルタリング手段、計測点合成手段を備えたものである。このうちクラス分類手段は、グリーンレーザによって計測されたグリーンレーザ計測点に対して複数のクラス(水域クラスとノイズクラスを含む)に分類する手段である。またフィルタリング手段は、クラス分類手段によってノイズクラスに分類されたグリーンレーザ計測点を抽出するとともに、ノイズクラスのグリーンレーザ計測点に対してフィルタリング処理を行う手段である。計測点合成手段は、フィルタリング手段によってフィルタリング処理がなされたグリーンレーザ計測点と、近赤外線レーザによって計測された近赤外線レーザ計測点を合成する手段である。そして計測点合成手段によって合成されたグリーンレーザ計測点と近赤外線レーザ計測点に基づいて、陸域に対して地盤高を与える。
【0011】
本願発明の地盤高付与システムは、着目領域抽出手段とグリーンレーザ計測点抽出手段をさらに備えたものとすることもできる。着目領域抽出手段は、近赤外線レーザ計測点の点密度があらかじめ定められた点密度閾値を下回る領域を「着目領域」として抽出する手段である。グリーンレーザ計測点抽出手段は、フィルタリング処理がなされたグリーンレーザ計測点の中から、着目領域抽出手段によって抽出された着目領域内に位置するグリーンレーザ計測点を抽出する手段である。この場合、計測点合成手段は、グリーンレーザ計測点抽出手段によって抽出されたグリーンレーザ計測点と近赤外線レーザ計測点を合成する。
【0012】
本願発明の地盤高付与システムは、地盤面推定手段をさらに備えたものとすることもできる。地盤面推定手段は、着目領域の周辺の近赤外線レーザ計測点に基づいて、着目領域の地盤面を推定する手段である。この場合、グリーンレーザ計測点抽出手段は、拡張範囲(地盤面推定手段によって推定された地盤面を基準として鉛直面内に拡張した範囲)内に位置するグリーンレーザ計測点を抽出し、計測点合成手段は、グリーンレーザ計測点抽出手段によって抽出されたグリーンレーザ計測点と近赤外線レーザ計測点を合成する。
【0013】
本願発明の地盤高付与システムは、傾斜値算出手段をさらに備えたものとすることもできる。傾斜値算出手段は、着目領域の周辺の近赤外線レーザ計測点に基づいて、着目領域の地盤面の傾斜の程度を示す地盤面傾斜値を算出する手段である。この場合、グリーンレーザ計測点抽出手段は、傾斜値算出手段によって算出された地盤面傾斜値があらかじめ定められた傾斜閾値を下回る着目領域に係るグリーンレーザ計測点を抽出し、計測点合成手段は、グリーンレーザ計測点抽出手段によって抽出されたグリーンレーザ計測点と近赤外線レーザ計測点を合成する。
【発明の効果】
【0014】
本願発明の地盤高付与システムには、次のような効果がある。
(1)近赤外線レーザでは計測できない地点をグリーンレーザによる計測点で補うことができるため、計測点密度が向上するとともに地盤高の計測精度が向上する。
(2)従来のALBをそのまま利用することができ、すなわち特段の装置や機器を要することなく高い計測精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願発明の地盤高付与システムの主な構成を示すブロック図。
図2】着目領域と非着目領域を模式的に示す平面図。
図3】着目領域内に配置されたグリーン計測点を模式的に示す平面図。
図4】(a)は地盤面推定手段によって推定された推定地盤面を模式的に示す鉛直断面図、(b)は拡張範囲を模式的に示す鉛直断面図。
図5】(a)は傾斜値算出手段によって算出される比較的大きな傾斜値を模式的に示す鉛直断面図、(b)は傾斜値算出手段によって算出される比較的小さい傾斜値を模式的に示す鉛直断面図。
図6】本願発明の地盤高付与システムを使用するときの主な処理の流れを示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明の地盤高付与システムの実施の一例を図に基づいて説明する。本願発明の地盤高付与システムは、ALBによって得られた計測点に基づいて計測対象とされた陸域に地盤高を与えるものであり、陸域であっても近赤外レーザによって得られた計測点(以下、「近赤外レーザ計測点」)に加え、グリーンレーザによって得られた計測点(以下、「グリーン計測点」)も利用したうえで盤高を与えることを特徴の一つとしている。
【0017】
図1は、本願発明の地盤高付与システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の地盤高付与システム100は、クラス分類手段101とフィルタリング手段102、計測点合成手段103を含んで構成され、さらに着目領域抽出手段104や地盤面推定手段105、傾斜値算出手段106、グリーンレーザ計測点抽出手段107、計測点記憶手段108などを含んで構成することもできる。
【0018】
地盤高付与システム100を構成する下方極値点抽出手段101とフィルタリング手段102、計測点合成手段103、着目領域抽出手段104、地盤面推定手段105、傾斜値算出手段106、グリーンレーザ計測点抽出手段107は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサと、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、タブレット型コンピュータ(iPad(登録商標)など)やスマートフォンといった携帯型端末機器、あるいはパーソナルコンピュータ(PC)やサーバーなどを例示することができる。
【0019】
また、計測点記憶手段108は、コンピュータ装置の記憶装置を利用することもできるし、そのほかデータベースサーバーに構築することもできる。データベースサーバーに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由(有線や無線通信)で保存するクラウドサーバーとすることもできる。
【0020】
以下、地盤高付与システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0021】
(計測点記憶手段)
計測点記憶手段108は、ALBによって対象範囲を計測した結果得られる計測点、すなわち近赤外レーザ計測点とグリーン計測点を記憶する手段である。近赤外レーザ計測点とグリーン計測点は、平面座標値と高さ情報からなるいわゆる3次元座標である。なお、平面座標値とは緯度と経度あるいはX座標とY座標で表される水平面上における座標であり、高さ情報とは標高など所定の基準水平面からの鉛直方向の距離を意味する。
【0022】
(クラス分類手段)
クラス分類手段101は、計測点記憶手段108から読み出したグリーン計測点を、あらかじめ設定された複数クラスのうちいずれかに分類する手段である。なお、ここで設定される複数のクラスには、「水域クラス(水面クラスや水部クラス)」、「ノイズクラス」が含まれる。つまりクラス分類手段101は、計測点記憶手段108によって記憶されたそれぞれのグリーン計測点に対して、水域クラス、ノイズクラス、あるいは他のクラスのいずれかを付与するわけである。グリーン計測点をクラス分類するにあたっては、既に市場に流通しているアプリケーションを利用するなど従来用いられている技術を採用することができる。もちろんクラス分類手段101は、グリーン計測点をクラス分類するとともに、近赤外レーザ計測点のクラス分類を行う機能を備えたものとすることもできる。
【0023】
(フィルタリング手段)
フィルタリング手段102は、クラス分類手段101によってノイズクラスに分類されたグリーン計測点を抽出し、ここで抽出されたグリーン計測点に対してフィルタリング処理を行う手段である。具体的には、グリーン計測点のうち明らかなノイズデータや外れ値などを除去する処理を行う。フィルタリング処理を行うにあたっては、既に市場に流通しているアプリケーションを利用するなど従来用いられている技術を採用することができる。もちろんフィルタリング手段102は、ノイズクラスに分類されたグリーン計測点に加えて、水域クラスに分類されたグリーン計測点や、近赤外レーザ計測点に対してフィルタリング処理を行う機能を備えたものとすることもできる。
【0024】
(着目領域抽出手段)
着目領域抽出手段104は、「着目領域」を抽出する手段である。ここで着目領域とは、近赤外線レーザ計測点の点密度(単位面積当たりの計測点数)が低い領域であり、より詳しくは近赤外線レーザ計測点の点密度があらかじめ定められた点密度の閾値(以下、「点密度閾値」という。)を下回る領域である。既述したように、波長の長さやフットプリントの大きさが原因で、陸域であっても近赤外レーザでは計測できないがグリーンレーザによれば計測可能となるケースもある。したがって、近赤外線レーザで欠測が目立つ領域に対して特にグリーン計測点で補足すれば、より効率的でしかも効果的に対象範囲の地盤高を得ることができる。そこで着目領域抽出手段104によって、着目領域を抽出するわけである。
【0025】
図2は、着目領域と、着目領域とされない領域(以下、「非着目領域」という。)を模式的に示す平面図である。この図に示すように、着目領域と非着目領域を選別するにあたっては、平面配置された近赤外線レーザ計測点PRに対して所定面積(例えば、5m×5mや10m×10mなど)の小領域(以下、「メッシュMS」という。)を設定し、赤外線レーザ計測点PRの点密度を算出する。具体的には、それぞれメッシュMS内に配置された近赤外線レーザ計測点PRの数を計上し、その点数を当該メッシュMSの面積で除すことによって点密度を算出する。そして、その点密度が点密度閾値を上回るメッシュMSは非着目領域に分類し、その点密度が点密度閾値を下回るメッシュMSは着目領域に分類する。なお、図2では9のメッシュMSを示しており、そのうち網掛された中央のメッシュMSが着目領域に分類され、周囲の8のメッシュMSが非着目領域に分類されている。
【0026】
(グリーンレーザ計測点抽出手段)
グリーンレーザ計測点抽出手段107は、着目領域抽出手段104によって抽出された着目領域内にあるグリーン計測点を抽出する手段である。ただしグリーンレーザ計測点抽出手段107は、クラス分類手段101によってノイズクラスに分類されたグリーン計測点であって、フィルタリング手段102によってフィルタリング処理がなされたグリーン計測点PG(以下、便宜上「処理後グリーン計測点PG」という。)を抽出する。例えば、図2では9のメッシュMSのうち中央のメッシュMSが着目領域に分類されていることから、この場合、グリーンレーザ計測点抽出手段107は、図3に示すように網掛された中央のメッシュMS内に配置された処理後グリーン計測点PGを抽出する。
【0027】
グリーンレーザ計測点抽出手段107は、着目領域内にあるすべての処理後グリーン計測点PGを抽出する仕様とすることもできるし、さらに選択された処理後グリーン計測点PGのみを抽出する仕様とすることもできる。例えば、周辺の赤外線レーザ計測点PRに基づいて着目領域の地盤面を推定し、その地盤面の周辺にある処理後グリーン計測点PGのみを選択して抽出することもできる。すなわち、予想される地盤面から大きく外れた処理後グリーン計測点PGは除外したうえで抽出するわけである。
【0028】
図4(a)は地盤面推定手段105によって推定された地盤面(以下、「推定地盤面」という。)を模式的に示す鉛直断面図であり、図4(b)は推定地盤面を基準として鉛直面内に拡張した範囲(以下、「拡張範囲」という。)を模式的に示す鉛直断面図である。なお、図4では便宜上、推定地盤面を線分(破線)で示しているが実際は面で設定される。図4(a)に示すように、赤外線レーザ計測点PRの点密度が低い着目領域であっても、その着目領域の周辺にある赤外線レーザ計測点PRを利用すれば、着目領域内に推定地盤面を設定することができる。具体的には、例えば最小二乗法など従来手法によって、着目領域周辺の赤外線レーザ計測点PRから平面や曲面を設定し、その設定された平面等のうち着目領域にある部分を推定地盤面とすることができる。この場合、着目領域に隣接する2または4のメッシュMS内にある赤外線レーザ計測点PRを用いることができ、例えば図2のケースでは着目領域に隣接する左右(上下)のメッシュMS、あるいは左右上下のメッシュMS内にある赤外線レーザ計測点PRを用いることができる。
【0029】
着目領域の推定地盤面が設定されると、図4(b)に示すように推定地盤面を基準とした拡張範囲を設定する。そして、グリーンレーザ計測点抽出手段107は、拡張範囲内にある処理後グリーン計測点PGを抽出する。このような仕様にすることにより、着目領域に推定される推定地盤から大きく外れた処理後グリーン計測点PGは除外したうえで、より有効な処理後グリーン計測点PGのみを抽出することができる。
【0030】
ところで本願発明の発明者らは、水平面に近い地盤に対して得られるグリーン計測点PGの方が、急傾斜地で得られるグリーン計測点PGよりも高精度である、ということを見出している。したがって、グリーンレーザ計測点抽出手段107は、推定地盤面が水平面に近い着目領域(あるいは、さらに拡張範囲)内にある処理後グリーン計測点PGのみを抽出する仕様とすることもできる。
【0031】
図5は、傾斜値算出手段106によって算出される傾斜値を模式的に示す鉛直断面図であり、(a)は比較的大きな傾斜値を示し、(b)は比較的小さい傾斜値を示している。ここで傾斜値とは、図5にも示すように、地盤面推定手段105によって推定された推定地盤面と水平面がなす角である。
【0032】
傾斜値算出手段106によって傾斜値が算出されると、グリーンレーザ計測点抽出手段107がその傾斜値とあらかじめ定められた傾斜角の閾値(以下、「傾斜閾値」という。)を照らし合わせる。そしてグリーンレーザ計測点抽出手段107は、傾斜値が傾斜閾値を下回るときはその着目領域内にある処理後グリーン計測点PGを抽出し、一方、傾斜値が傾斜閾値を上回るときはその着目領域内にある処理後グリーン計測点PGを抽出しない。このような仕様にすることにより、図5(a)に示すような急傾斜地で得られる処理後グリーン計測点PGは除外したうえで、より有効な処理後グリーン計測点PGのみを抽出することができる。
【0033】
(計測点合成手段)
計測点合成手段103は、処理後グリーン計測点PGと近赤外レーザ計測点PRとを合わせた(合成した)うえで、これら処理後グリーン計測点PGと近赤外レーザ計測点PRに基づいて対象範囲の陸域に地盤高を与える手段である。このとき計測点合成手段103は、全ての処理後グリーン計測点PGと近赤外レーザ計測点PRとを合成する仕様とすることもできるし、グリーンレーザ計測点抽出手段107によって抽出された処理後グリーン計測点PGと近赤外レーザ計測点PRとを合成する仕様とすることもできる。また計測点合成手段103は、全ての(つまり、着目領域と非着目領域にある)近赤外レーザ計測点PRを対象として処理後グリーン計測点PGと合成する仕様とすることもできるし、着目領域は除いたうえで非着目領域にある近赤外レーザ計測点PRのみを対象として処理後グリーン計測点PGと合成する仕様とすることもできる。
【0034】
(処理の流れ)
続いて、図6を参照しながら本願発明の地盤高付与システム100を使用するときの主な処理の流れについて説明する。なおこのフロー図では、中央の列に実施する行為を示し、左列にはその行為に必要なものを、右列にはその行為から生ずるものを示している。
【0035】
はじめにクラス分類手段101が、計測点記憶手段108から読み出したそれぞれのグリーン計測点PGを各クラスに分類する(図6のStep201)。そしてフィルタリング手段102が、クラス分類手段101によってノイズクラスに分類されたグリーン計測点PGを抽出するとともに、ここで抽出されたグリーン計測点PGに対してフィルタリング処理を行う(図6のStep202)。
【0036】
処理後グリーン計測点PGが得られると、着目領域抽出手段104が着目領域を抽出するとともに(図6のStep203)、地盤面推定手段105が推定地盤面を設定(図6のStep204)、さらに傾斜値算出手段106が傾斜値を算出する(図6のStep205)。着目領域や推定地盤面、傾斜値が得られると、これら着目領域や推定地盤面、傾斜値に基づいてグリーンレー計測点抽出手段107が適切な処理後グリーン計測点PGを抽出する(図6のStep206)。
【0037】
適切な処理後グリーン計測点PGが抽出されると、計測点合成手段103が処理後グリーン計測点PGと近赤外レーザ計測点PRとを合成した(図6のStep207)うえで、これら処理後グリーン計測点PGと近赤外レーザ計測点PRに基づいて対象範囲の陸域に地盤高を与える(図6のStep208)。このとき、既述したように、全ての処理後グリーン計測点PGと近赤外レーザ計測点PRとを合成することもできるし、グリーンレーザ計測点抽出手段107によって抽出されたリーン計測点PGと近赤外レーザ計測点PRとを合成することもできるし、全ての近赤外レーザ計測点PRを対象として、あるいは非着目領域にある近赤外レーザ計測点PRのみを対象としてグリーン計測点PGと合成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願発明の地盤高付与システムは、山地部や海岸部、市街地など様々な場所の地盤高を取得する際に利用することができ、特に水域部を有する場所に好適に利用することができる。本願発明によれば、高い精度で地盤高を得ることができることから、社会インフラストラクチャーの計画や防災計画などに有効活用することができ、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明である。
【符号の説明】
【0039】
100 本願発明の地盤高付与システム
101 (地盤高付与システムのl)クラス分類手段
102 (地盤高付与システムのl)フィルタリング手段
103 (地盤高付与システムのl)計測点合成手段
104 (地盤高付与システムのl)着目領域抽出手段
105 (地盤高付与システムのl)地盤面推定手段
106 (地盤高付与システムのl)傾斜値算出手段
107 グ(地盤高付与システムのl)リーンレー計測点抽出手段
108 (地盤高付与システムのl)計測点記憶手段
MS メッシュ
PG グリーン計測点
PR 近赤外レーザ計測点
図1
図2
図3
図4
図5
図6