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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】心電信号計測ベルト
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/256 20210101AFI20241202BHJP
   A61B 5/28 20210101ALI20241202BHJP
【FI】
A61B5/256 210
A61B5/28
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021088542
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181540
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2024-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148138
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡
(72)【発明者】
【氏名】日野 吉晴
(72)【発明者】
【氏名】舞田 剛
(72)【発明者】
【氏名】吉本 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】石橋 和馬
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0375537(US,A1)
【文献】特開2005-042226(JP,A)
【文献】特表2018-512243(JP,A)
【文献】特開2006-223567(JP,A)
【文献】特開2018-068596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0287770(US,A1)
【文献】特開2005-253610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/25ー5/297
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の胸周りに装着されるベルト本体(1)と、ベルト本体(1)に設けられた複数の心電電極(36)とを備えており、
ベルト本体(1)は、その右端(1b)が左端(1a)の表面に重なる状態で胸周りに装着されて、左端(1a)と右端(1b)の重合面に設けた止着構造(9)で胸周りに保持固定されるようになっており、
止着構造(9)が、ベルト本体(1)の左端(1a)の表面に形成される外止着体(7)と、ベルト本体(1)の右端(1b)の内面に形成される内止着体(8)とで構成されており、
内止着体(8)が、外止着体(7)に止着されてベルト本体(1)の左端(1a)と右端(1b)とを仮止め固定する前段固定部(8a)と、外止着体(7)に止着されてベルト本体(1)の左端(1a)と右端(1b)とを固定する本固定部(8b)とで構成されており、
ベルト本体(1)の右端(1b)の端部寄りに内止着体(8)の本固定部(8b)が形成され、本固定部(8b)より左端(1a)寄りに前段固定部(8a)が形成されていることを特徴とする心電信号計測ベルト。
【請求項2】
内止着体(8)の前段固定部(8a)が、面ファスナー対の片方と、雌雄係合するスナップ対の片方と、ゲル状粘着対の片方の、いずれかひとつの1個以上で構成されており、
外止着体(7)が、面ファスナー対の他方と、雌雄係合するスナップ対の他方と、ゲル 状粘着対の他方の、いずれかひとつの1個以上で構成されている請求項1に記載の心電信号計測ベルト。
【請求項3】
内止着体(8)の本固定部(8b)が、面ファスナー対の片方と、尾錠対の片方と、雌雄係合するホック対の片方と、雌雄係合するスナップ対の片方の、いずれかひとつの1個以上で構成されており、
外止着体(7)が、面ファスナー対の他方と、尾錠対の他方と、雌雄係合するホック対の他方と、雌雄係合するスナップ対の他方の、いずれかひとつの1個以上で構成されている請求項に記載の心電信号計測ベルト。
【請求項4】
内止着体(8)の前段固定部(8a)の幅寸法(b1)が、本固定部(8b)の幅寸法(b2)より小さく設定されている請求項1からのいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項5】
内止着体(8)の前段固定部(8a)が、本固定部(8b)の幅中心の近傍に設けられている請求項に記載の心電信号計測ベルト。
【請求項6】
内止着体(8)と外止着体(7)とが、ループ状の面ファスナーとフック状面ファスナーを備えた面ファスナー対で構成されている請求項1からのいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項7】
ベルト本体(1)の長手方向に延びる前段固定部(8a)の長さが、本固定部(8b)の長さよりも大きく設定されている請求項からのいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項8】
前段固定部(8a)がベルト本体(1)の上下2個所に形成されており、
上下の前段固定部(8a)の合計幅寸法が、本固定部(8b)の幅寸法(b2)より小さく設定されている請求項からいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項9】
前段固定部(8a)が、本固定部(8b)の上下方向の幅領域の内部に形成されている請求項からのいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項10】
本固定部(8b)が前段固定部(8a)に連続して形成されている請求項からのいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項11】
本固定部(8b)と前段固定部(8a)が、ベルト本体(1)の長手方向に分離した状態で形成されている請求項からのいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項12】
前段固定部(8a)が、本固定部(8b)の上下方向の幅領域の外部に形成されている請求項4、6、7、及び8のいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項13】
ベルト本体(1)が、第1ベルト(4L)と第2ベルト(4R)で構成されており、
第1ベルト(4L)の肌密着面側に、複数の心電電極(36)を備えた電極ユニット( 2)と上下一対の滑り止めテープ(12)が設けられており、
第2ベルト(4R)の肌密着面側に、上下一対の滑り止めテープ(25)が設けられており、
第1・第2の各ベルト(4L・4R)における滑り止めテープ(12・25)が、第1・第2の両ベルト(4L・4R)の隣接端に配置されている請求項1から12のいずれかひとつに記載の心電信号計測ベルト。
【請求項14】
ベルト本体(1)に電極ユニット(2)を保持する電極保持部(11)が設けられており、
電極ユニット(2)が、ベースマット(34)と、ベースマット(34)の複数個所に固定される電極マット(35)と、各電極マット(35)の肌密着面側に固定される複数の心電電極(36)とを備えており、
各電極マット(35)の間のベースマット(34)に、ベルト本体(1)の湾曲変形を促進する湾曲促進部(40)が設けられている請求項1に記載の心電信号計測ベルト。
【請求項15】
ースマット(34)に設けた湾曲促進部が、切欠部(40)と、1個以上の開口部(40a・40b)と、薄肉部と、低密度部のいずれかひとつで構成されている請求項1に記載の心電信号計測ベルト。
【請求項16】
電極保持部(11)が、ベルト本体(1)の肌密着面側に固定したポケット本体(16)で、電極ユニット(2)を出し入れ可能なポケット状に形成されており、
ポケット本体(16)の肌密着面側に、複数の心電電極(36)を個別に露出させる複数個の電極窓(17)が開口されており、
各心電電極(36)をポケット本体(16)に収容した状態において、各心電電極(36)の肌密着面側が、各電極窓(17)から露出しており、
心電電極(36)の肌密着面側が、ポケット本体(16)に着脱可能に装着した電極カバー(18)で覆われている請求項1、又は1に記載の心電信号計測ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心臓の拍動に伴う心電信号を計測する心電信号計測ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の心電信号計測ベルトは例えば特許文献1に公知である。特許文献1の心電信号計測ベルト(生体センサベルト)は、胸周りに装着されるベルト本体(センサベルト)と、ベルト本体の肌接触面に設けられる3個の心電電極などで構成される。心電電極の一つは、共通電極(設置電極)であって、ユーザーの背中側に配置され、残る2個の心電電極は胸部左右に配置される。ベルト本体の背中側あるいは胸部には、ベルト本体を着脱するための面ファスナー対、ホック対、スナップ対などが設けられている。特許文献1の心電信号計測ベルト(生体センサベルト)を使用する場合には、心電電極の位置を調整し確認しながらベルト本体の一端を肌面に押し付けて固定保持し、ベルト本体の他端をベルト本体の一端外面に重ねながら面ファスナー対などを止付けて、ベルト本体を胸周りに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-253610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の心電信号計測ベルトでは、心電電極を位置決めした状態でベルト本体の一端を固定保持する動作と、ベルト本体の他端をベルト本体の一端外面に重ねて、胸周りに締付ける動作と、面ファスナー対を止付ける動作とを、ベルト本体が緩まないように保持した状態で的確に行う必要がある。しかし、多くの場合には、胸周りに固定した状態のベルト本体が緩んでいることが多い。そのため、ベルト本体がずれ動くことはないにしても、心電電極が肌面に対して十分に密着していない状態で心電信号を計測していることが多く、心電信号を正しく計測しにくい点で改良の余地があった。
【0005】
本発明の目的は、心電電極を備えたベルト本体を胸周りに的確に装着して、心電電極を肌面に確実に密着させることができ、したがって心電信号を正確に計測することができる心電信号計測ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の心電信号計測ベルトは、人体の胸周りに装着されるベルト本体1と、ベルト本体1に設けられた複数の心電電極36とを備えている。ベルト本体1は、その右端1bが左端1aの表面に重なる状態で胸周りに装着されて、左端1aと右端1bの重合面に設けた止着構造9で胸周りに保持固定されている。止着構造9は、ベルト本体1の左端1aの表面に形成される外止着体7と、ベルト本体1の右端1bの内面に形成される内止着体8とで構成されている。内止着体8は、外止着体7に止着されてベルト本体1の左端1aと右端1bを仮止め固定する前段固定部8aと、外止着体7に止着されてベルト本体1の左端1aと右端1bを固定する本固定部8bとで構成されていることを特徴とする。
【0007】
ベルト本体1の右端1bの端部寄りに内止着体8の本固定部8bが形成され、本固定部8bより左端1a寄りに前段固定部8aが形成されている。
【0008】
内止着体8の前段固定部8aは面ファスナー対の片方と、雌雄係合するスナップ対の片方と、ゲル状粘着対の片方の、いずれかひとつの1個以上で構成されている。外止着体7は面ファスナー対の他方と、雌雄係合するスナップ対の他方と、ゲル状粘着対の他方の、いずれかひとつの1個以上で構成されている。
【0009】
内止着体8の本固定部8bは面ファスナー対の片方と、尾錠対の片方と、雌雄係合するホック対の片方と、雌雄係合するスナップ対の片方の、いずれかひとつの1個以上で構成されている。外止着体7は面ファスナー対の他方と、尾錠対の他方と、ホック対の他方と、雌雄係合するスナップ対の他方の、いずれかひとつの1個以上で構成されている。
【0010】
内止着体8の前段固定部8aの幅寸法b1は、本固定部8bの幅寸法b2より小さく設定されている。
【0011】
内止着体8の前段固定部8aは、本固定部8bの幅中心の近傍に設けられている。
【0012】
内止着体8と外止着体7はループ状の面ファスナーとフック状面ファスナーを備えた面ファスナー対で構成されている。
【0013】
ベルト本体1の長手方向に延びる前段固定部8aの長さは、本固定部8bの長さより大きく設定されている。
【0014】
前段固定部8aはベルト本体1の上下2個所に形成されている。上下の前段固定部8aの合計幅寸法は、本固定部8bの幅寸法b2より小さく設定されている。
【0015】
前段固定部8aは、本固定部8bの上下方向の幅領域の内部に形成されている。
【0016】
本固定部8bは前段固定部8aに連続して形成されている。
【0017】
本固定部8bと前段固定部8aは、ベルト本体1の長手方向に分離した状態で形成されている。
【0018】
前段固定部8aは、本固定部8bの上下方向の幅領域の外部に形成されている。
【0019】
ベルト本体1は、第1ベルト4Lと第2ベルト4Rで構成されている。第1ベルト4Lの肌密着面側に、複数の心電電極36を備えた電極ユニット2と上下一対の滑り止めテープ12が設けられている。第2ベルト4Rの肌密着面側に、上下一対の滑り止めテープ25が設けられている。第1・第2の各ベルト4L・4Rにおける滑り止めテープ12・25は、第1・第2の両ベルト4L・4Rの隣接端に配置されている。
【0020】
ベルト本体1に電極ユニット2を保持する電極保持部11が設けられている。電極ユニット2は、ベースマット34と、ベースマット34の複数個所に固定される電極マット35と、各電極マット35の肌密着面側に固定される複数の心電電極36とを備えている。各電極マット35の間のベースマット34に、ベルト本体1の湾曲変形を促進する湾曲促進部40が設けられている。
【0021】
ベースマット34に設けた湾曲促進部は、切欠部40と、1個以上の開口部と、薄肉部と、低密度部のいずれかひとつで構成されている。
【0022】
電極保持部11は、ベルト本体1の肌密着面側に固定したポケット本体16で、電極ユニット2を出し入れ可能なポケット状に形成されている。ポケット本体16の肌密着面側に、複数の心電電極36を個別に露出させる複数個の電極窓17が開口されている。各心電電極36をポケット本体16に収容した状態において、各心電電極36の肌密着面側が、各電極窓17から露出されている。心電電極36の肌密着面側が、ポケット本体16に着脱可能に装着した電極カバー18で覆われている。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る心電信号計測ベルトでは、ベルト本体1の左端1aと右端1bの重合面に設けた止着構造9を、左端1aの表面に形成される外止着体7と、右端1bの内面に形成される内止着体8で構成し、また、内止着体8を、ベルト本体1の左端1aと右端1bを仮止め固定する前段固定部8aと、左端1aと右端1bを固定する本固定部8bとで構成する。これによれば、前段固定部8aだけを外止着体7に止着して仮止めした状態で、心電電極36の位置や姿勢、あるいはベルト本体1の締まり具合を確かめることができ、そのうえで本固定部8bを外止着体7に本固定することで、ベルト本体1を胸周りに保持固定することができる。また、前段固定部8aを仮止めした状態で、心電電極36の位置や姿勢、あるいはベルト本体1の締まり具合が適切でない場合には、仮止め動作をやり直すことで、心電電極36の位置等を適正化することができる。このように、前段固定部8aだけを外止着体7に止着する仮止めができるように構成されていると、当該前段固定部8aが存在せず、内止着体8の全体が外止着体7に止着される形態に比べて、心電電極36の位置や姿勢、あるいはベルト本体1の締まり具合の修正動作などをより簡便に行うことができるので、より的確に心電電極36を備えたベルト本体1を胸周りに装着させることができ、また、より確実に心電電極36を肌面に密着させることができる。以上より、本発明の心電信号計測ベルトを用いれば、心電信号をより正確に計測することが可能となる。
【0024】
ベルト本体1の右端1bの端部寄りに内止着体8の本固定部8bを設け、本固定部8bより左端1a寄りに前段固定部8aを設けると、ベルト本体1を胸周りに装着する際には、前段固定部8aを外止着体7に止着したのちに、本固定部8bを外止着体7に止着する手順を踏むことができる。これにて、ベルト本体1の一端を肌面に押付けて固定した状態で、ベルト本体1の他端を胸周りに装着するだけで、仮止めし、次いで本固定することができる。
【0025】
内止着体8の前段固定部8aと外止着体7とが、面ファスナー対と、雌雄係合するスナップ対と、ゲル状粘着対のいずれかひとつの1個以上で構成されていると、前段固定部8aの外止着体7に対する止着や分離を簡単かつ迅速に行うことができるので、心電信号計測ベルトを使用する際のベルト本体1の着脱を簡便に行うことができる。また、前段固定部8aを複数個設ける場合には、前段固定部8aが外止着体7の複数個所に止着した状態で、ベルト本体1を胸周りにしっかりと仮止めできる。
【0026】
内止着体8の本固定部8bと外止着体7は、面ファスナー対と、尾錠対と、雌雄係合するホック対と、雌雄係合するスナップ対のいずれかひとつの1個以上で構成する。こうした心電信号計測ベルトによれば、本固定部8bの外止着体7に対する止着や分離を簡単かつ迅速に行うことができるので、心電信号計測ベルトを使用する際のベルト本体1の着脱を簡便に行うことができる。また、本固定部8bが複数個設けてある場合には、本固定部8bが外止着体7の複数個所に止着した状態で、ベルト本体1を胸周りにしっかりと本固定することができる。
【0027】
内止着体8の前段固定部8aの幅寸法b1が、本固定部8bの幅寸法b2より小さく設定されていると、前段固定部8aの外止着体7に対する止着や分離を、より小さな力で簡単かつ迅速に行うことができる。したがって、前段固定部8aを仮止めした状態における、心電電極36の位置や姿勢の確認と修正、あるいはベルト本体1の締まり具合の確認と修正などを簡便に行うことができる。
【0028】
内止着体8の前段固定部8aが、本固定部8bの幅中心の近傍に設けられていると、第2ベルト4Rを第1ベルト4Lに仮止め固定した状態において、ベルト本体1の上下幅の中心の近傍を締付けることができるので、本固定部8bをバランスよく外止着体7に固定することができる。
【0029】
内止着体8と外止着体7がループ状の面ファスナーとフック状面ファスナーを備えた面ファスナー対で構成されていると、止着構造9を尾錠対、ホック対、あるいはスナップ対などで構成する場合に比べて、止着構造9の構造を簡素化して低コスト化できるうえ、外止着体7と内止着体8の止着可能位置を無段階化して、ベルト本体1の締まり具合を個人の好みに応じて調整できる。
【0030】
ベルト本体1の長手方向に延びる前段固定部8aの長さが、本固定部8bの長さより大きく設定されていると、面積の大きな本固定部8bの長さを小さくできるので、本固定部8bを外止着体7から剥離する際の力を低減して、第2ベルト4Rの第1ベルト4Lに対する着脱を簡便化できる。
【0031】
前段固定部8aがベルト本体1の上下2個所に形成され、上下の前段固定部8aの合計幅寸法が、本固定部8bの幅寸法b2より小さく設定されていると、前段固定部8aが1個だけ設けられている場合に比べて、前段固定部8aを外止着体7に仮固定したときの止着力を高めて、第2ベルト4Rを第1ベルト4Lに対してしっかりと仮固定することができる。また、上下の前段固定部8aを外止着体7に止着するので、前段固定部8aが1個だけ設けられている場合に比べて、第2ベルト4Rを第1ベルト4Lに安定した状態で適正な位置に止着できる。さらに、前段固定部8aの合計幅寸法を本固定部8bの幅寸法より小さく設定するので、前段固定部8aを外止着体7から剥離するときの力を軽減できるうえ、上下の前段固定部8aの間に外止着体7に止着されない部分を形成するので、前段固定部8aを外止着体7から容易に剥離することができる。
【0032】
前段固定部8aが、本固定部8bの上下方向の幅領域の内部に形成されていると、前段固定部8aの幅寸法を必要に応じて小さくすることにより、前段固定部8aを外止着体7に仮固定したときの締付面積を小さくすることができるので、締付力を適正化して、装着心地の向上を図ることができる。
【0033】
本固定部8bが前段固定部8aに連続して形成されていると、前段固定部8aの本固定部8bとの連続端を、本固定部8bと共に外止着体7に止着させて、ベルト本体1を胸周りに装着した時の固定力を向上できる。
【0034】
本固定部8bと前段固定部8aとが、ベルト本体1の長手方向に分離した状態で形成されていると、前段固定部8aおよび本固定部8bの外止着体7に対する着脱動作を独立して行うことができる。したがって、前段固定部8aだけを外止着体7に止着した仮止め状態で、心電電極36の位置を確かめ、あるいはベルト本体1の締まり具合を確かめたのち、本固定部8bを外止着体7に止着して本固定することができる。また、分離部分の隙間55の存在によって、本固定部8bの全体が外止着体7から分離したことを確認できるので、以後はより小さな力で前段固定部8aを外止着体7から分離すればよく、本固定部8bと前段固定部8aを外止着体7から一気に剥離する場合に比べて、第2ベルト4Rの第1ベルト4Lからの剥離動作を軽快に行うことができる。
【0035】
前段固定部8aが、本固定部8bの上下方向の幅領域の外部に形成されていると、本固定部8bの幅中心付近に、外止着体7に止着されない部分が大きく形成されるので、本固定部8bを外止着体7から容易に剥離することができる。
【0036】
ベルト本体1が第1ベルト4Lと第2ベルト4Rとで構成され、第1ベルト4Lの肌密着面側に、複数の心電電極36を備えた電極ユニット2と上下一対の滑り止めテープ12とが設けられ、第2ベルト4Rの肌密着面側に、上下一対の滑り止めテープ25が設けられ、第1・第2の各ベルト4L・4Rにおける滑り止めテープ12・25が、第1・第2の両ベルト4L・4Rの隣接端に配置されていると、ベルト本体1を胸周りに装着した状態において、滑り止めテープ12・25の全体を背中から胸脇の肌面に密着させることができるので、ベルト本体1が上下にずれ動くのを確実に防止できるうえ、ベルト本体1の密着感を向上できる。
【0037】
ベルト本体1の電極保持部11に保持される電極ユニット2が、ベースマット34と、複数の電極マット35と、各電極マット35に固定される複数の心電電極36などで構成され、各電極マット35の間のベースマット34に湾曲促進部40が設けられていると、ベルト本体1を胸周りに装着するとき、他の部位に比べて湾曲変形しやすい湾曲促進部40を、胸周りの肌面に沿って湾曲させることができるので、各電極マット35を肌面に確実に密着させることができる。
【0038】
ベースマット34に設けた湾曲促進部40が切欠部、1個以上の開口部、薄肉部、および低密度部のいずれかひとつで構成されていると、湾曲促進部40におけるベースマット34の曲げ強度を低下させることができるので、第1ベルト4Lの湾曲を促進して、ベルト本体1を胸周りに装着した時のフィット感を向上できる。
【0039】
電極保持部11を、ベルト本体1とポケット本体16とで、電極ユニット2を出し入れ可能なポケット状に形成し、また、ポケット本体16に各心電電極36を個別に露出させる複数個の電極窓17を開口し、各心電電極36をポケット本体16に収容した状態において、各心電電極36の肌密着面側が各電極窓17から露出し、その肌密着面側がポケット本体16に着脱可能に装着した電極カバー18で覆われるようになっていると、肌面に触れる電極カバー18をポケット本体16から取外して、新規な電極カバー18と交換することで、電極カバー18を常に衛生的な状態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1実施形態に係る心電信号計測ベルトの要部の正面図である。
図2】心電信号計測ベルトを胸周りに装着した状態を示す正面図である。
図3】展開した心電信号計測ベルトを肌密着面側から見た背面図である。
図4】展開した心電信号計測ベルトを前面側から見た正面図である。
図5】第1ベルトを肌密着面側から見た分解背面図である。
図6図3のA-A線断面図である。
図7図3のB-B線断面図である。
図8】心電電極および制御ユニットを示すブロック図である。
図9】心電信号計測システムの概略を示す概念図である。
図10】展開した心電信号計測ベルトの概略平面図である。
図11】胸周りに装着した心電信号計測ベルトの概略平面図である。
図12】(a)~(d)は本発明の第2実施形態から第5実施形態に係る心電信号計測ベルトの背面図である。
図13】(a)~(d)は本発明の第6実施形態から第9実施形態に係る心電信号計測ベルトの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(第1実施形態) 図1から図11に本発明に係る心電信号計測ベルトの第1実施形態を示す。本実施形態における前後、左右、上下とは、図3および図10に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2ないし図4において心電信号計測ベルトは、胸周り(人体)に装着されるベルト本体1と、ベルト本体1の肌密着面側に配置される電極ユニット2と、ベルト本体1の表面側に設けられる制御ユニット3などで構成される。ベルト本体1は、図3に向かって左側の第1ベルト4Lと、右側の第2ベルト4Rと、各ベルト4L・4Rの隣接端に連結される一対の締付ベルト5・6などで構成される。ベルト本体1は、その左端1aおよび後述する心電電極36が肌面に密着し、右端1bが左端1aの表面に重なる状態で胸周りに装着されて、左端1aと右端1bの重合面に設けた止着構造9で胸周りに保持固定される。
【0042】
第1ベルト4Lは、ダブルラッセル生地に代表される通気性に富むメッシュ素材で形成されており、図5に示すように、肌密着面側に電極ユニット2を収容する電極保持部11と上下一対の市販の滑り止めテープ12とが配置され、表面側に外止着体7と制御ユニット3を収容するポケット13とが設けられている。また、第2ベルト4Rに隣接するベルト端部の下側と、表面側の上下中央の2か所には、矩形状のベルト環14・15が固定されている。電極保持部11は、非伸縮性のメッシュ素材で形成されるポケット本体16と、ポケット本体16の肌密着面側の3個所に開口される電極窓17と、電極窓17を覆う電極カバー18と、ポケット本体16の上開口の内面2か所に固定されるフラップ19などで構成される。電極カバー18はメッシュ素材で形成されている。電極窓17の上下にはループ状の面ファスナー20が、電極カバー18の上下にはフック状の面ファスナー21がそれぞれ設けられているので、電極カバー18は必要に応じてポケット本体16に対して着脱できる。フラップ19の遊端にはフック状の面ファスナー19aが設けられている(図6参照)。図5において符号22はハトメである。ポケット13の内面上部と対向する第1ベルト4Lには、ポケット13を止着する面ファスナー13aが設けられている(図7参照)。
【0043】
第2ベルト4Rは第1ベルト4Lと同様のメッシュ素材で形成されており、図3及び図4に示すように肌密着面側に、内止着体8と上下一対の市販品の滑り止めテープ25とが設けられ、表面全体にループ状の面ファスナー26が設けられている。また、第1ベルト4Lに隣接するベルト端部の上側と、表面側の上下中央の2か所には、矩形状のベルト環27・28が固定されている。締付ベルト5の遊端の表面にはループ状の面ファスナー29が設けられている。第2ベルト4Rの左右長さは、第1ベルト4Lの左右長さに比べて小さく設定されている。第1ベルト4Lと第2ベルト4Rは、締付ベルト5・6を介して連結されている。詳しくは、締付ベルト5の右半は輪奈状に形成されており(図10参照)、この輪奈部分が第1ベルト4Lの表面側のベルト環15と、第2ベルト4Rのベルト端部のベルト環27に通されている。同様に、締付ベルト6の左半は輪奈状に形成されており、この輪奈部分が第2ベルト4Rの表面側のベルト環28と、第1ベルト4Lのベルト端部のベルト環14とに通されている。したがって、各締付ベルト5・6の輪奈部分の周長の範囲内で、ベルト本体1の全長寸法を加減できる。また、各締付ベルト5・6を胸周り前方へ引っ張ることにより、第1ベルト4Lと第2ベルト4Rを互いに接近する向きに締め付けることができる。上記のように、第1・第2の各ベルト4L・4Rにおける滑り止めテープ12・25は、第1・第2の両ベルト4L・4Rの隣接端に配置されている。
【0044】
止着構造9は、第1ベルト4Lに設けた外止着体7と、第2ベルト4Rに設けた内止着体8とで構成されている。外止着体7は、第1ベルト4Lより幅狭で電極ユニット2とほぼ同じ長さのループ状の面ファスナーを第1ベルト4Lに縫着して形成されている。内止着体8は、フック状の面ファスナーを第2ベルト4Rに縫着して形成した前段固定部8aと本固定部8bとで構成されている。帯状の前段固定部8aは、外止着体7に止着されて第1ベルト4Lの左端1a(ベルト本体1の左端)と第2ベルト4Rの右端1b(ベルト本体1の右端)を仮止め固定する。また、長方形状の本固定部8bは、外止着体7に止着されて第1ベルト4Lの左端1aと第2ベルト4Rの右端1bとを固定する。
【0045】
本実施形態では、第2ベルト4Rの右端1bの端部寄りに本固定部8bを形成し、本固定部8bの第1ベルト4L側の辺部に前段固定部8aを連続して形成する。また、前段固定部8aの上下方向の幅寸法b1は、本固定部8bの上下方向の幅寸法b2より小さく設定し、当該前段固定部8aは、本固定部8bの幅中心に位置する状態で設ける。さらに、前段固定部8aの長さは、本固定部8bの長さより十分に大きく設定する。
【0046】
上記のように、本固定部8bの第1ベルト4L側の辺部に前段固定部8aを連続して形成すると、前段固定部8aの本固定部8bとの連続端が、本固定部8bと共に外止着体7に止着して、ベルト本体1を胸周りに装着した時の固定力を向上できる。また、前段固定部8aの幅寸法b1を、本固定部8bの幅寸法b2より小さく設定すると、前段固定部8aの外止着体7に対する止着や分離を、より小さな力で簡単かつ迅速に行うことができる。したがって、前段固定部8aを仮止めした状態における、心電電極36の位置や姿勢の確認と修正、あるいはベルト本体1の締まり具合の確認と修正などを簡便に行うことができる。さらに、前段固定部8aを本固定部8bの幅中心に位置する状態で設けると、第2ベルト4Rを第1ベルト4Lに仮止め固定した状態において、ベルト本体1の上下幅の中心を締付けることができるので、本固定部8bをバランスよく外止着体7に固定することができる。加えて、前段固定部8aの長さが、本固定部8bの長さより十分に大きく設定すると、面積の大きな本固定部8bの長さを小さくできるので、本固定部8bを外止着体7から剥離する際の力を低減できるので、第2ベルト4Rの第1ベルト4Lに対する着脱を簡便化できる。
【0047】
図5に示すように電極ユニット2は、左右に長い発泡ウレタン製のベースマット34と、ベースマット34の3個所に間隔をあけて固定される四角形状の発泡ウレタン製の電極マット35と、各電極マット35の肌密着面側に固定される第1~第3の心電電極36(36A・36B・36C)と、各心電電極36A・36B・36Cと制御ユニット3を接続する信号リード39とで構成されている。3個の電極マット35の間のベースマット34には、電極ユニット2を胸周りに沿って曲がりやすくするための上凹み状の切欠部(湾曲促進部)40が形成されている。各心電電極36A・36B・36Cは、耐食性に優れたチタン製またはステンレス製の薄板、あるいは可撓性に優れたフレキシブル基板などの、安価で入手しやすいシート状の電極材で形成されている。3個の心電電極36A・36B・36Cのうち、左側の第1心電電極36Aはアンプの正入力信号を出力し、右側の第3心電電極36Cはアンプの負入力信号を出力する電極からなり、中央の第2心電電極36Bはアンプ入力の同相モード信号を反転出力するRLD電極からなる。
【0048】
図6に示すように電極ユニット2は、ポケット本体16と第1ベルト4Lの間に差し込み装填されて、外止着体7に止着したフラップ19で抜け外れ不能に保持される。この状態の各心電電極36A・36B・36Cは、電極マット35の厚み相当分だけ電極窓17から突出するが、電極窓17に止着した電極カバー18で肌密着面が覆われている。つまり、各心電電極36A・36B・36Cを電極保持部11に収容した状態においては、各心電電極36A・36B・36Cの肌密着面が、ポケット本体16に着脱される電極カバー18で覆われる。制御ユニット3は、図7に示すように表面側のポケット13の内部に装着されて、ポケット13の開口上縁を面ファスナー13aで止着することで、抜け外れ不能に保持される。信号リード39は、ハトメ22を介して第1ベルト4Lの表面側へ導出されたのち、制御ユニット3に接続される。
【0049】
図8に示すように、制御ユニット3には電源となる電池(2次電池)42と、回路基板43とが設けられており、回路基板43には各心電電極36A・36B・36Cから出力された信号を処理する信号処理部44と、信号処理部44で処理された信号を発信する無線通信部45とが設けられている。図示していないが、電池42および回路基板43は四角形状のケースの内部に収容されており、ケースの外面には、電源スイッチ、充電用コネクター、および信号リード39用のコネクターなどが設けられている。心電信号計測ベルトを含む心電信号計測システムの概略を図9に示す。心電信号計測ベルトの無線通信部45から発信された信号は、スマートフォン46とインターネット回線47を介してサーバー48およびパーソナルコンピューター49へ送られ、予め蓄積されている心電信号と比較されて心臓の拍動状況が評価される。評価結果は、インターネット回線47を介してスマートフォン46に送信される。
【0050】
ベルト本体1を胸周りに正しく装着して、各心電電極36A・36B・36Cを適正な身体部位に配置し装着するために、ポケット本体16の肌密着面側であって、図5に向かって右側の電極窓17と中央の電極窓17の間に、心電電極36A・36B・36Cを適正な身体部位に装着するための位置基準となる位置指標50が形成されている。位置指標50は、ベルト本体1の長手方向線と直交する帯状の縦指標体51で形成されており、その左右中央には縦指標体51の長手方向と平行な中心表示52が線状に形成されている。縦指標体51はポケット本体16とは別の形成材で形成されており、ポケット本体16の呈色状態と、縦指標体51の呈色状態が大きく異なるものとされている。例えば、ポケット本体16が黒色のメッシュ素材で形成されている場合に、縦指標体51は青、赤、黄色などの有彩色の生地で形成されている。これにより、縦指標体51を一見するだけでその位置および姿勢を認識することができる。
【0051】
以上のように構成した心電信号計測ベルトは、使用に際して電極カバー18に水を噴霧して含浸させたうえで、図2および図11に示すように位置指標50の中心表示52が身体のみぞおちを通る縦体幹軸Pと合致し、かつ第2心電電極36Bを心臓の近傍に位置させた状態で、ベルト本体1を胸周りに装着する。詳しくは、第2心電電極36Bの位置を確認しながら、片方の手で第1ベルト4Lを肌面に押し付けて固定保持する。つぎに他方の手で第2ベルト4Rを胸周りに装着して引っ張り、第1ベルト4Lの外面に重ねながら、第2ベルト4Rの内止着体8の前段固定部8aを第1ベルト4Lの外止着体7に止着して仮止めする。さらに、本固定部8bを外止着体7に止着する。
【0052】
上記のように、前段固定部8aを第1ベルト4Lの外止着体7に止着した仮止め状態で、心電電極36A・36B・36Cの位置を確かめ、あるいはベルト本体1の締まり具合を確かめたのち、本固定部8bを外止着体7に止着して本固定する。詳しくは、左右の締付ベルト5・6を体の前側へ引っ張った状態で、第1ベルト4L側の締付ベルト5の面ファスナー30を、第2ベルト4Rの表面側の面ファスナー26に止着する。同様に、第2ベルト4R側の締付ベルト6の面ファスナー31を、締付ベルト5の表面側の面ファスナー29に止着する。図11においては、図面が煩雑になるのを避けるために制御ユニット3などを省略している。なお、心電信号計測ベルトは胸囲の違いに応じて、たとえばSサイズ、Mサイズ、Lサイズ、LLサイズなど、長さが異なる複数のサイズが供給される。
【0053】
以上のように構成した第1実施形態に係る心電信号計測ベルトによれば、内止着体8を前段固定部8aと本固定部8bで構成して、前段固定部8aだけを外止着体7に止着して仮止めした状態で、心電電極36の位置や姿勢、あるいはベルト本体1の締まり具合を確かめたうえで、本固定部8bを外止着体7に本固定して密着感を高めることができる。また、前段固定部8aを仮止めした状態で心電電極36の位置や姿勢、あるいはベルト本体1の締まり具合が適切でない場合には、仮固定動作をやり直して簡便に適正化できるので、内止着体8の全体が外止着体7に止着される場合に比べて、心電電極36の位置や姿勢、あるいはベルト本体1の締まり具合の修正動作を簡便に行うことができる。したがって、心電電極36を備えたベルト本体1を、誰もが胸周りに的確に装着して心電電極36を肌面に十分に密着させ、心電信号を常に正しく計測することができる。
【0054】
ベルト本体1の右端1bの端部寄りに内止着体8の本固定部8bを設け、本固定部8bより左端1a寄りに前段固定部8aを設けたので、ベルト本体1を胸周りに装着するとき、前段固定部8aを外止着体7に止着し、次いで、本固定部8bを外止着体7に止着する手順を踏むことができる。したがって、ベルト本体1の一端を肌面に押付けて固定した状態で、ベルト本体1の他端を胸周りに装着するだけで、前段固定部8aと本固定部8bを正しい手順で外止着体7に止着することができる。
【0055】
内止着体8と外止着体7とを、ループ状の面ファスナーとフック状面ファスナーを備える面ファスナー対で構成したので、外止着体7と内止着体8の止着可能位置を無段階化して、ベルト本体1の締まり具合を個人の好みに応じて調整することができる。また、止着構造9の構造を簡素化して、心電信号計測ベルトの低コスト化に貢献できる。
【0056】
第1ベルト4Lと第2ベルト4Rとでベルト本体1を構成し、第1ベルト4Lの肌密着面側に、複数の心電電極36を備えた電極ユニット2と上下一対の滑り止めテープ12とを設け、第2ベルト4Rの肌密着面側に、上下一対の滑り止めテープ25を設け、また、第1・第2の各ベルト4L・4Rにおける滑り止めテープ12・25を、第1・第2の両ベルト4L・4Rの隣接端に配置したので、ベルト本体1を胸周りに装着した状態において、滑り止めテープ12・25の全体が背中から胸脇の肌面に密着することで、ベルト本体1が上下にずれ動くのを確実に防止できるうえ、ベルト本体1の密着感の向上を図ることができる。
【0057】
電極保持部11を、ベルト本体1とポケット本体16で、電極ユニット2を出し入れ可能なポケット状に形成し、また、ポケット本体16に各心電電極36を個別に露出させる複数個の電極窓17を開口し、各心電電極36をポケット本体16に収容した状態において、各心電電極36の肌密着面側を各電極窓17から露出させ、その肌密着面側をポケット本体16に着脱可能に装着した電極カバー18で覆うようにしたので、肌面に触れる電極カバー18をポケット本体16から取外して、新規な電極カバー18と交換することで、電極カバー18を常に衛生的な状態とすることができる。
【0058】
上記の心電信号計測ベルトを用いた場合、心電信号計測ベルトを誰もが胸周りに的確に装着することで、心電電極36A・36B・36Cを肌面に十分に密着させて生体信号を常に正しく計測することができるので、国連の提唱する持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の目標3(すべての人に健康と福祉を)に貢献することができる。
【0059】
(第2~第5実施形態) 図12(a)~図12(d)に、本発明に係る心電信号計測ベルトにおける内止着体8の構造を変更した第2~第5実施形態を示す。
【0060】
第2実施形態に係る図12(a)の内止着体8は、第1実施形態の内止着体8と同様に、前段固定部8aを本固定部8bの上下方向の幅中心に形成するが、本固定部8bと前段固定部8aをベルト本体1の長手方向に分離した状態で形成する点が、第1実施形態の内止着体8と異なる。このように本固定部8bと前段固定部8aとを分離配置することにより、両者8a・8bの間には、外止着体7に止着しない隙間55が形成される。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。以下の各実施形態においても同じとする。
【0061】
上記のように、本固定部8bと前段固定部8aとが隙間55を介して分離配置されていると、前段固定部8aおよび本固定部8bの外止着体7に対する着脱動作を独立して行うことができる。したがって、前段固定部8aだけを外止着体7に止着した仮止め状態で、心電電極36A・36B・36Cの位置を確かめ、あるいはベルト本体1の締まり具合を確かめたのち、本固定部8bを外止着体7に止着して本固定することができる。また、隙間55の存在によって、本固定部8bの全体が外止着体7から分離したことを確認できるので、以後はより小さな力で前段固定部8aを外止着体7から分離すればよく、本固定部8bと前段固定部8aを外止着体7から一気に剥離する場合に比べて、第2ベルト4Rを第1ベルト4Lから剥離する動作を軽快に行える。
【0062】
第3実施形態に係る図12(b)の内止着体8は、前段固定部8aを本固定部8bの幅中心より下側で、本固定部8bの幅中心の近傍に設けている。このように、前段固定部8aを本固定部8bの幅中心の近傍に設けると、第1実施形態の心電信号計測ベルトと同様に、第2ベルト4Rを第1ベルト4Lに仮止め固定した状態において、ベルト本体1の上下幅の中心の近傍を締付けることができるので、本固定部8bをバランスよく外止着体7に固定することができる。
【0063】
第4実施形態に係る図12(c)の内止着体8は、本固定部8bを正方形状の上側部分8b1と、長方形状の下側部分8b2とに分離形成し、本固定部8bの下側部分8b2に連続して前段固定部8aを形成するようにした。この場合の本固定部8bの下側部分8b2の幅は、前段固定部8aの幅寸法b1と同じにした。
このように、本固定部8bが上側部分8b1と下側部分8b2に分離形成されていると、上側部分8b1と下側部分8b2を外止着体7に対してそれぞれ個別に着脱できるので、第2ベルト4Rの第1ベルト4Lに対する着脱をより簡便に行える。
【0064】
第5実施形態においては、図12(d)に示すように、内止着体8の前段固定部8aは、本固定部8bの上端および下端に連続して形成した。また、前段固定部8aの合計幅寸法は本固定部8bの幅寸法より小さく設定した。このように、前段固定部8aを本固定部8bの上下2個所に設けると、前段固定部8aを外止着体7に仮固定したときの止着力を2倍程度にまで高めて、第2ベルト4Rを第1ベルト4Lに対してしっかりと仮固定することができる。また、上下の前段固定部8aを外止着体7に止着するので、第2ベルト4Rを第1ベルト4Lに安定した状態で適正な位置に止着できる。因みに、前段固定部8aが1個だけ設けてある場合には、第2ベルト4Rが第1ベルト4Lに斜めに止着されやすい。さらに、前段固定部8aの合計幅寸法を本固定部8bの幅寸法より小さく設定し、さらに前段固定部8aを本固定部8bの上下2個所に設けるので、前段固定部8aを外止着体7から剥離するときの力を軽減できるうえ、上下の前段固定部8aの間に外止着体7に止着されない部分が形成されるので、前段固定部8aを外止着体7から容易に剥離することができる。
【0065】
第2実施形態から第5実施形態の心電信号計測ベルトにおいては、前段固定部8aを本固定部8bの上下方向の幅領域の内部に形成したので、前段固定部8aの幅寸法を必要に応じて小さくすることで、前段固定部8aを外止着体7に仮固定したときの締付面積を小さくすることができる。これにより、締付力を適正化して装着心地の向上を図ることができる。また、前段固定部8aの幅寸法を小さくした分だけ、材料費を軽減できる。
【0066】
第3実施形態から第5実施形態の心電信号計測ベルトにおいては、第1実施形態と同様に、前段固定部8aを本固定部8bに連続して形成するようにしたので、ベルト本体1を胸周りに装着した時の固定力を向上できる。
【0067】
(第6~第9実施形態) 図13(a)~図13(d)に、本発明に係る心電信号計測ベルトにおける湾曲促進部40の構造を変更した第6~第9実施形態を示す。
【0068】
第6実施形態においては、図13(a)に示すように、湾曲促進部40を、各心電電極36A・36B・36Cの間のベースマット34に形成した2個の開口40aで構成した。こうしたベルト本体1によれば、開口40aの形成部分におけるベースマット34の断面積を小さくして曲げ強度を低下させることにより、第1ベルト4Lの湾曲を促進することができる。また、ベースマット34は開口40aの上下2個所で連続するので、湾曲促進部40を切欠部で形成する場合に比べて、各心電電極36A・36B・36Cの位置関係および姿勢を常に一定に維持した状態で胸周りに装着できる。
【0069】
第7実施形態においては、図13(b)に示すように、湾曲促進部40を、各心電電極36A・36B・36Cの間のベースマット34に形成された、一群の円形開口40bで構成した。詳しくは、心電電極36Aと心電電極36Bの間のベースマット34に8個の円形開口40bを形成し、心電電極36Bと心電電極36Cの間のベースマット34に20個の円形開口40bを形成した。この実施形態から理解できるように、湾曲促進部40は、1個以上の開口40a・40bで構成することができる。以上のように構成された心電信号計測ベルトによれば、第6実施形態の湾曲促進部40と同様に、円形開口40bの形成部分におけるベースマット34の断面積を小さくして曲げ強度を低下させることにより、第1ベルト4Lの湾曲を促進することができる。また、ベースマット34は円形開口40b以外の部分で連続するので、各心電電極36A・36B・36Cの位置関係および姿勢をさらに一定に維持した状態で胸周りに装着できる。
【0070】
第8実施形態においては、図13(c)に示すように、湾曲促進部40を、各心電電極36A・36B・36Cの間のベースマット34の厚みを小さくして形成した。これによれば、第6、第7実施形態の湾曲促進部40と同様に、ベースマット34の厚みが小さい分だけ、湾曲促進部40におけるベースマット34の断面積を小さくして曲げ強度を低下させることにより、第1ベルト4Lの湾曲を促進することができる。また、各心電電極36A・36B・36Cを、厚みが小さな湾曲促進部40を介して隣接させたので、各心電電極36A・36B・36Cの位置関係および姿勢を一定に維持した状態で胸周りに装着することができる。さらに、第6実施形態から第8実施形態におけるベルト本体1によれば、湾曲促進部40におけるベースマット34の断面積を小さくして、その分だけ曲げ強度を低下できるので、第1ベルト4Lの湾曲を促進して、ベルト本体1を胸周りに装着した時のフィット感を向上できる。
【0071】
第9実施形態においては、図13(d)に示すように、湾曲促進部40を、各心電電極36A・36B・36Cの間のベースマット34に、第6実施形態と同様の2個の開口40aを形成し、各開口40aにベースマット34より目が粗い低密度の発泡ウレタン製のマット(低密度部)40cを固定して構成した。これによれば、低密度のマット40cにおける曲げ強度を小さくして、第1ベルト4Lの湾曲を促進できる。また、各心電電極36A・36B・36Cは、開口40aの上下2個所で連続し、さらにマット40cを介して隣接するので、各心電電極36A・36B・36Cの位置関係および姿勢を一定に維持した状態で胸周りに装着できる。
【0072】
上記以外に、ベルト本体1の肌密着面側には、少なくとも2個の心電電極36が設けられていてもよい。電極保持部11はポケット構造である必要はなく、各心電電極36A・36B・36Cをベルト本体1に対してずれ動かないように保持できる構造であれば足りる。例えば、第1実施形態における左右の切欠部40の上縁部をベルト本体1に固定した面ファスナーで止着保持する構造であってもよい。電極ユニット2は、1個のベースマット34と3個の電極マット35で構成する必要はなく、独立した3個のベースマット34と3個の電極マット35で構成してあってもよい。
【0073】
内止着体8の前段固定部8aと外止着体7は、面ファスナー対以外に、雌雄係合するスナップ対と、ゲル状粘着対のいずれかひとつの1個以上で構成することができる。その場合には、前段固定部8aの外止着体7に対する止着や分離を簡単かつ迅速に行えるので、心電信号計測ベルトを使用する際のベルト本体1の着脱を簡便に行える。また、前段固定部8aが複数個設けてある場合には、前段固定部8aが外止着体7の複数個所に止着した状態で、ベルト本体1を胸周りにしっかりと仮止めできる。
【0074】
同様に、内止着体8の本固定部8bと外止着体7は、面ファスナー対以外に、尾錠対と、雌雄係合するホック対と、雌雄係合するスナップ対のいずれかひとつの1個以上で構成することができる。その場合には、本固定部8bの外止着体7に対する止着や分離を簡単かつ迅速に行えるので、心電信号計測ベルトを使用する際のベルト本体1の着脱を簡便に行える。また、本固定部8bが複数個設けてある場合には、本固定部8bが外止着体7の複数個所に止着した状態で、ベルト本体1を胸周りにしっかりと本固定できる。また、内止着体8の前段固定部8aと本固定部8bは異なる止着要素で構成してあってもよく、例えば、前段固定部8aと外止着体7を面ファスナー対で構成し、本固定部8bと対応する外止着体7をスナップ対、ホック対、あるいは尾錠対などで構成してあってもよい。前段固定部8aは本固定部8bの上下方向の幅領域の外部に形成することができ、その場合には、本固定部8bの幅中心付近に、外止着体7に止着されない部分が大きく形成されるので、本固定部8bを外止着体7から容易に剥離することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 ベルト本体
1a ベルト本体の左端
1b ベルト本体の右端
2 電極ユニット
4L 第1ベルト
4R 第2ベルト
7 外止着体
8 内止着体
8a 前段固定部
8b 本固定部
9 止着構造
12 第1ベルトの滑り止めテープ
25 第2ベルトの滑り止めテープ
34 ベースマット
35 電極マット
36 心電電極
40 湾曲促進部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13