(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】固定具および天井構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20241202BHJP
F16B 9/02 20060101ALI20241202BHJP
F16B 1/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
E04B9/18 B
F16B9/02 A
F16B1/00 A
(21)【出願番号】P 2021115293
(22)【出願日】2021-07-12
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】315007581
【氏名又は名称】BXカネシン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】相馬 智明
(72)【発明者】
【氏名】安田 聡
(72)【発明者】
【氏名】氏家 大介
(72)【発明者】
【氏名】石川 真吾
(72)【発明者】
【氏名】梅森 浩
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】槙田 剛
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-66176(JP,U)
【文献】特開2020-97834(JP,A)
【文献】特開平8-438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
F16B 9/02
F16B 1/00
E04B 1/38 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系部材の下面に吊り材を固定するための固定具であって、
前記木質系部材の下面に接して配置されて一対の第1貫通孔が形成された板状の固定具本体と、
前記固定具本体に設けられて第2貫通孔が形成された一対のガイド部と、
前記固定具本体または前記ガイド部に設けられて前記吊り材が取り付け可能な支持部と、を備え、
前記第1貫通孔は、平面視で、前記支持部を中心とする円の円周上で互いに反対側の位置に設けられ、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ直線は、
平面視で前記円の接線方向であり、かつ、前記固定具本体に対して所定角度で傾斜しており、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔には、ビスが挿通可能であ
り、
前記固定具本体の前記木質系部材に接する面には、前記木質系部材に食い込む突起が複数設けられていることを特徴とする固定具。
【請求項2】
木質系部材の下面に吊り材を固定するための固定具であって、
前記木質系部材の下面に接して配置されて一対の第1貫通孔が形成された固定具本体と、
前記固定具本体に設けられて前記吊り材が取り付け可能な支持部と、
前記固定具本体上に着脱可能に配置されて第2貫通孔が形成された一対のガイド部と、を備え、
前記第1貫通孔は、平面視で、前記支持部を中心とする円の円周上で互いに反対側の位置に設けられ、
前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ直線は、
平面視で前記円の接線方向であり、かつ、前記固定具本体に対して所定角度で傾斜しており、
前記第1貫通孔および前記第2貫通孔には、ビスが挿通可能であ
り、
前記固定具本体の前記木質系部材に接する面には、前記木質系部材に食い込む突起が複数設けられていることを特徴とする固定具。
【請求項3】
前記突起は、前記固定具本体を貫通するビスまたは釘であることを特徴とする請求項
1または2に記載の固定具。
【請求項4】
木質系の天井部材の下面に、請求項1から
3のいずれかに記載の固定具を介して吊り材が固定された天井構造であって、
前記天井部材の下面に配置された前記固定具と、
前記固定具の第1貫通孔および第2貫通孔に挿通されて前記固定具を前記天井部材に固定する一対のビスと、
前記固定具の支持部に取り付けられた吊り材と、を備えることを特徴とする天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系部材の下面に吊り材を固定するための固定具、および、この固定具を用いた天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固定具を介して天井部材の下面に吊りボルト等の吊り材を取り付ける構造が知られている(特許文献1、2参照)。
特許文献1には、略L字形状の取付け板を介して、帯金を木造建物の上下階間の梁に固着する構造が示されている。取り付け板は、水平板部と、水平板部の一端側から上方に延びる垂直板部と、を備えており、垂直板部は梁の側面に釘で固定されている。
特許文献2には、天井スラブにアンカーで垂下される吊りボルトが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-170311号公報
【文献】特開平6-93676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、重量物を木質系部材から安定して吊り下げ支持できる固定具および天井構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、木質系部材の下面に吊り材を固定するための固定具について、木質系部材の下面に接して設けられた平板部と、平板部上に設けられたガイド部と、を備えるとともに、木質系部材の下面に対して、平板部およびガイド部にビスが斜め方向に挿通するように貫通孔を設けることで、このビスに、材軸方向への引き抜き力と、材軸方向に直交する方向にビスを曲げようとする力とが作用して、引き抜き抵抗機構が形成される点に着眼して、本発明に至った。これにより、ビスには、鉛直方向のみに力が加わるのではなく、ビスの材軸方向への引抜き力とビスを曲げようとする力が作用するため、ビスの脆性的な破壊モードを防止でき、木質系部材から安定して吊り材を吊り下げ可能となる。
第1の発明の固定具(例えば、後述の固定具3、6、7)は、木質系部材(例えば、後述の天井部材2)の下面に吊り材(例えば、後述の吊りボルト5)を固定するための固定具であって、前記木質系部材の下面に接して配置されて一対の第1貫通孔(例えば、後述の第1貫通孔11A、11B)が形成された固定具本体(例えば、後述の平板部10)と、前記固定具本体に設けられて第2貫通孔(例えば、後述の第2貫通孔31A、31B)が形成された一対のガイド部(例えば、後述の壁部30A、30B、ガイド板40A、40B、ハット部50)と、前記固定具本体または前記ガイド部に設けられて前記吊り材が取り付け可能な支持部(例えば、後述のナット20)と、を備え、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ直線(例えば、後述の直線LA、LB)は、前記固定具本体に対して所定角度(例えば、後述の所定角度θ)で傾斜しており、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔には、ビス(例えば、後述のビス4A、4B)が挿通可能であることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、ビスを第1貫通孔および第2貫通孔に挿通して、木質系部材にねじ込む。これにより、このビスは、木質系部材の下面に対して傾斜した角度で、木質系部材に取り付けられる。よって、吊り材に重量物を吊り下げると、固定具に鉛直方向の力が作用するが、この鉛直方向の力の分力として、ビスには、ビスの軸方向の引き抜き力と、ビスの軸方向に直交する方向にビスを曲げようとする力と、が作用する。よって、ビスが曲げ抵抗するため、ビスの脆性的な破壊モードを防止でき、重量物を木質系部材から安定して吊り下げ支持できる。
【0007】
第2の発明の固定具(例えば、後述の固定具8、9)は、木質系部材(例えば、後述の天井部材2)の下面に吊り材(例えば、後述の吊りボルト5)を固定するための固定具であって、前記木質系部材の下面に接して配置されて一対の第1貫通孔が形成された固定具本体(例えば、後述の平板部10、ハット部60)と、前記固定具本体に設けられて前記吊り材が取り付け可能な支持部(例えば、後述のナット20)と、前記固定具本体上に着脱可能に配置されて第2貫通孔(例えば、後述の第2貫通孔31A、31B)が形成された一対のガイド部(例えば、後述のガイド板40A、40B)と、を備え、前記第1貫通孔と前記第2貫通孔とを結ぶ直線(例えば、後述の直線LA、LB)は、前記固定具本体に対して所定角度(例えば、後述の所定角度θ)で傾斜しており、前記第1貫通孔および前記第2貫通孔には、ビス(例えば、後述のビス4A、4B)が挿通可能であることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、ビスを第1貫通孔および第2貫通孔に挿通して、木質系部材にねじ込む。これにより、このビスは、木質系部材の下面に対して傾斜した角度で、木質系部材に取り付けられる。よって、吊り材に重量物を吊り下げると、固定具に鉛直方向の力が作用するが、この鉛直方向の力の分力として、ビスには、ビスの軸方向の引き抜き力と、ビスの軸方向に直交する方向にビスを曲げようとする力と、が作用する。よって、ビスが曲げ抵抗するため、ビスの脆性的な破壊モードを防止でき、重量物を木質系部材から安定して吊り下げ支持できる。
【0009】
第3の発明の固定具は、前記平板部の前記木質系部材に接する面には、前記木質系部材に食い込む突起(例えば、後述の爪12)が複数設けられていることを特徴とする。
【0010】
ビスが木質系部材の下面に対して傾斜した角度でねじ込まれているので、ビスに軸方向の引抜き力が作用すると、固定具の平板部には、木質系部材の下面に対して摺動する方向に力が加わる。
そこで、この発明によれば、平板部の木質系部材に接する面に、木質系部材に食い込む突起を複数設けたので、これらの突起がビスの引き抜き力に抵抗して、平板部が木質系部材に対して摺動するのを防止できる。
【0011】
第4の発明の固定具は、前記突起は、前記平板部を貫通するビス(例えば、後述のビス70)であることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、平板部を加工することなく、平板部にビスをねじ込むだけで、平板部に容易に突起を設けることができる。
【0013】
第5の発明の天井構造は、木質系の天井部材の下面に、上述の固定具を介して吊り材が固定された天井構造であって、前記天井部材の下面に配置された前記固定具と、前記固定具の第1貫通孔および第2貫通孔に挿通されて前記固定具を前記天井部材に固定する一対のビスと、前記固定具の支持部に取り付けられた吊り材と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ビスを第1貫通孔および第2貫通孔に挿通して、天井部材にねじ込む。これにより、吊り材に重量物を吊り下げると、固定具に鉛直方向の力が作用するが、この鉛直方向の力の分力として、ビスには、ビスの軸方向の引き抜き力と、ビスの軸方向に直交する方向にビスを曲げようとする力と、が作用する。よって、本発明の天井構造では、ビスが曲げ抵抗するため、ビスの脆性的な破壊モードを防止でき、重量物を天井部材から安定して吊り下げ支持できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、重量物を木質系部材から安定して吊り下げ支持できる固定具および天井構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る天井構造の縦断面図である。
【
図3】
図2の固定具のA-A矢視図およびB-B矢視図である。
【
図4】第1実施形態に係る固定具にビスをねじ込む状況を示す模式図である。
【
図5】第1実施形態に係る固定具に作用する力を説明するための模式図である。
【
図6】第1実施形態に係る固定具に作用するモーメントを説明するための模式図である。
【
図7】固定具の引張り試験に用いる試験体一覧を示す図である。
【
図8】固定具の引張り試験の試験結果を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る固定具の平面図である。
【
図10】第2実施形態に係る固定具にビスをねじ込む状況を示す模式図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る固定具の平面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る固定具の平面図である。
【
図14】本発明の第5実施形態に係る固定具の平面図である。
【
図16】本発明の変形例に係る固定具の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、木質系部材の下面に吊り材を固定するための固定具、および、この固定具を用いた天井構造である。
第1実施形態の固定具は、木質系部材の下面に接するように設置される平板部と、平板部から延びてこの平板部に対して所定角度で傾斜した壁部と、を備えており、平板部および壁部には、ビスが斜め方向に挿通可能なように貫通孔が形成されている。第2実施形態の固定具は、木質系部材の下面に接するように設置される平板部と、平板部上に積層された板状のガイド板と、を備えており、平板部およびガイド板には、ビスが斜め方向に挿通可能なように貫通孔が形成されている。第3実施形態の固定具は、平板部上に凸部が形成されたハット部を積層し、ハット部の凸部内に吊り材の一部が固定可能である点が、第2実施形態の固定具と異なる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る天井構造1の縦断面図である。
天井構造1は、木質系部材としての天井部材2の下面に配置された固定具3と、固定具3を天井部材2に固定する一対のビス4A、4Bと、固定具3に取り付けられた吊り材としての吊りボルト5と、を備える。
【0018】
図2は、固定具3の平面図である。
図3(a)は、
図2の固定具3のA-A矢視図であり、
図3(b)は、
図2の固定具3のB-B矢視図である。
固定具3は、天井部材2の下面に吊りボルト5を固定するためのものである。この固定具3は、天井部材2の下面に接して配置されて一対の長孔である第1貫通孔11A、11Bが形成された固定具本体としての平板部10と、平板部10に設けられて吊りボルト5が取り付け可能な支持部としてのナット20と、平板部10に立設されて第2貫通孔31A、31Bが形成された一対のガイド部としての壁部30A、30Bと、を備える。
【0019】
平板部10の天井部材2側には、4つの突起としての爪12が設けられており、これら爪12は、天井部材2に食い込んでいる。これらの爪12は、板材である平板部10の一部を切断して折り曲げることで形成されている。
ナット20は、平板部10の略中央に配置されており、吊りボルト5が螺合される。
壁部30A、30Bは、平板部10に対して所定角度で延びている。よって、
図4にも示すように、平板部10の第1貫通孔11Aと壁部30Aの第2貫通孔31Aとを結ぶ直線LAは、平板部10に対して所定角度θで傾斜している。ビス4Aは、これら第1貫通孔11Aおよび第2貫通孔31Aに挿通されており、ビス4Aのねじ込み角度がθとなっている。
また、平板部10の第1貫通孔11Bと壁部30Bの第2貫通孔31Bとを結ぶ直線LBは、平板部10に対して所定角度θで傾斜している。ビス4Bは、第1貫通孔11Bおよび第2貫通孔31Bに挿通されており、ビス4Bのねじ込み角度がθとなっている。
ビス4Aとビス4Bとは、平面視で、ナット20を挟んで互いに反対側に配置されて、互いに相反する向きとなっている。
【0020】
吊りボルト5に設備機器との重量物を吊り下げると、固定具3の略中心に位置するナット20には、鉛直荷重が作用する。すると、
図5(a)に示すように、2本のビス4A、4Bのそれぞれには、引抜き力と曲げ力の2つの分力が作用する。よって、ビス4A、4Bによる引張力により、
図5(b)に示すように、回転モーメントが生じ、固定具3に回転力が作用する。この固定具3の回転に対して、爪12が天井部材2の下面に引っ掛かって抵抗(支圧抵抗)するので、ビスの軸方向の引抜き剛性が向上する。
この固定具3を天井部材2に取り付ける手順は、以下のようになる。まず、天井部材2の下面に固定具3を配置する。次に、平板部10の第1貫通孔11Aおよび壁部30Aの第2貫通孔31Aを通して、ビス4Aを天井部材2にねじ込む。また、平板部10の第1貫通孔11Bおよび壁部30Bの第2貫通孔31Bを通して、ビス4Bを天井部材2にねじ込む。
【0021】
〔爪の支圧抵抗による固定具の引き抜き剛性の向上分の計算〕
以下、爪の支圧抵抗による引抜き剛性の向上分を求める。
図6に示すように、設備等の重量物による鉛直荷重をPとする。ビスの天井部材下面に対する傾斜角をθとし、ビスの軸方向に働く引抜き力およびその変位をP
t、δ
tとし、ビスの軸方向に直交する方向に働く力およびその変位をP
b、δ
bとし、回転中心からビスまでの距離をLとする。すると、回転角γは、以下の式で表わされる。
【0022】
【0023】
爪の側面の支圧力をPnail、支圧剛性をko、支圧面積をA、回転中心から爪までの距離をhとすると、爪の側面の支圧力をPnailは、以下の式(2)で表わされる。
【0024】
【0025】
以上の式(1)と(2)から、爪の側面の支圧力をPnailは、以下の式(3)で表わされる。
【0026】
【0027】
一方、ビスの引き抜けによるモーメントと支圧抵抗によるモーメントとが等しいので、以下の式(4)が成立する。
【0028】
【0029】
式(3)および式(4)より、爪の支圧抵抗による引き抜き剛性の向上分をkv=(Pt/δt)すると、この引き抜き剛性の向上分kvは、以下の式(5)で表わされる。
【0030】
【0031】
式(5)より、爪によって加えられる引き抜き剛性kvは、回転中心から爪までの距離hと回転中心からビスまでの距離Lとの比の二乗に比例することが判る。
【0032】
〔固定具の引張り試験〕
以下、上述の固定具と同じ形状の試験体を製作し、引張力を加える引張り試験を行った。
図7に示すように、各試験体は、ビスのねじ込み角度θを30°または45°とし、爪(突起)有りまたは爪無しとした。爪有りの試験体は、木質系材料であるCLT材に爪4本を打ち込んで位置決めし、その後、ビス2本でCLT材に留め付けた。爪無しの試験体は、ビス2本のみでCLT材に留め付けた。これらの試験体の中心部に引張り荷重を加えて、その鉛直変位を記録した。
その結果、
図8に示すようになった。
図8の縦軸は、試験体に加えた鉛直荷重であり、横軸は、試験体の鉛直変位である。
図8(a)より、ビスのねじ込み角度を30とした場合、ビスのねじ込み角度を45°とした場合と比べて、剛性は下がるが、最大変形が大きくなることが確認できた。また、
図8(b)より、爪が無い場合では、剛性が1.06kN/mmであったが、爪が有る場合には、剛性が1.86kN/mmとなり、爪を設けることで剛性がおよそ1.75倍となることが確認できた。
【0033】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)ビス4A、4Bを第1貫通孔11A、11Bおよび第2貫通孔31A、31Bに挿通して、天井部材2にねじ込む。これにより、このビス4A、4Bは、天井部材2の下面に対して所定角度θで、天井部材2に取り付けられる。よって、吊りボルト5に重量物を吊り下げると、固定具3に鉛直方向の力が作用するが、この鉛直方向の力の分力として、ビス4A、4Bには、ビス4A、4Bの軸方向の引き抜き力と、ビス4A、4Bを曲げようとする力と、が作用する。よって、ビス4A、4Bが曲げ抵抗するため、ビスの脆性的な破壊モードを防止でき、重量物を天井部材2から安定して吊り下げ支持できる。
また、平板部10に壁部30A、30Bを立設したので、平板部10の曲げ変形を防止することが可能となる。
(2)平板部10の天井部材2に接する面に、天井部材2に食い込む爪12を複数設けたので、これらの爪12がビス4A、4Bの引き抜き力に支圧抵抗するため、平板部10が天井部材2に対して回転するのを防止できる。
【0034】
〔第2実施形態〕
図9は、本発明の第2実施形態に係る固定具6の平面図である。
図10は、
図9の固定具6にビス4A、4Bをねじ込む状況を示す模式図である。
本実施形態では、平板部10に壁部30A、30Bが設けられておらず、ガイド部としての板状の一対のガイド板40A、40Bが平板部10上に積層されて固定されている点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、ガイド板40A、40Bには、第2貫通孔31A、31Bが形成されている。ガイド板40A、40Bは、ガイド板40A、40Bの第2貫通孔31A、31Bが平板部10の第1貫通孔11A、11Bからずれた状態で、平板部10に積層されて固定されている。これにより、第1貫通孔11A、11Bと第2貫通孔31A、31Bとを結ぶ直線LA、LBは、平板部10に対して所定角度θで傾斜している。よって、ビス4A、4Bの平板部10に対するねじ込み角度は、θとなっている。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0035】
〔第3実施形態〕
図11は、本発明の第3実施形態に係る固定具7の平面図である。
図12は、
図11の固定具7のC-C矢視図である。なお、
図12の矢視図では固定具7を上下逆の状態で示している。すなわち、実際は、天井部材2の下面に平板部10が取り付けられ、この平板部10の下方に吊りボルト5が延びている。
本実施形態では、板状のガイド板40A、40Bではなく、中央部に凸部52が形成されたハット形状のハット部50を用いた点が、第2実施形態と異なる。
【0036】
すなわち、ハット部50は、平板部10上に積層された板状の一対の鍔部51A、51Bと、この一対の鍔部51A、51Bから突出した凸部52と、を備える。鍔部51A、51Bには、第2貫通孔31A、31Bが形成されている。ハット部50は、第2貫通孔31A、31Bが平板部10の第1貫通孔11A、11Bからずれた状態で、平板部10に積層されている。これにより、第1貫通孔11A、11Bと第2貫通孔31A、31Bとを結ぶ直線LA、LBは、平板部10に対して所定角度θで傾斜している。よって、ビス4A、4Bの平板部10に対するねじ込み角度は、θとなっている。
また、ハット部50の凸部52は、天井部材2とは反対側に向かって突出しており、この凸部52には、貫通孔53が設けられている。ナット20は、凸部52上に設けられている。吊りボルト5は、このナット20に螺合されて、貫通孔53に挿通されて、凸部52の内側まで延びている。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0037】
〔第4実施形態〕
図13は、本発明の第4実施形態に係る固定具8の平面図である。
本実施形態では、ガイド板40A、40Bが着脱可能である点が、第2実施形態と異なる。
この固定具8を天井部材2に取り付ける手順は、以下のようになる。まず、天井部材2の下面に固定具8の平板部10を配置し、平板部10の下面にガイド板40A、40Bを配置する。次に、平板部10の第1貫通孔11Aおよびガイド板40Aの第2貫通孔31Aを通して、ビス4Aを天井部材2にねじ込む。また、平板部10の第1貫通孔11Bおよびガイド板40Bの第2貫通孔31Bを通して、ビス4Bを天井部材2にねじ込む。その後、ガイド板40A、40Bをスライドさせて取り外す。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0038】
〔第5実施形態〕
図14は、本発明の第5実施形態に係る固定具9の平面図である。
図15は、
図14の固定具9のD-D矢視図である。
本実施形態では、固定具本体がハット部60である点が、第4実施形態と異なる。すなわち、ハット部60は、板状の一対の鍔部61A、61Bと、これら一対の鍔部61A、61Bから突出した凸部62と、を備える。鍔部61A、61Bには、第1貫通孔11A、11Bが形成されている。また、ガイド板40A、40Bには、第2貫通孔31A、31Bが形成されている。
また、ハット部60の凸部62は、天井部材2とは反対側に向かって突出しており、この凸部62には、貫通孔63が設けられている。ナット20は、凸部62上に設けられている。吊りボルト5は、このナット20に螺合されて、貫通孔63に挿通されて、凸部62の内側まで延びている。
【0039】
この固定具8を天井部材2に取り付ける手順は、以下のようになる。まず、天井部材2の下面に固定具8のハット部60を配置し、さらにハット部60の下面にガイド板40A、40Bを配置する。次に、ハット部60の第1貫通孔11Aおよびガイド板40Aの第2貫通孔31Aを通して、ビス4Aを天井部材2にねじ込む。また、平板部10の第1貫通孔11Bおよびガイド板40Bの第2貫通孔31Bを通して、ビス4Bを天井部材2にねじ込む。その後、ガイド板40A、40Bをスライドさせて取り外す。
本実施形態によれば、上述の(1)、(2)と同様の効果がある。
【0040】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の各実施形態では、固定具3、6、7の平板部10に爪12を設けたが、これに限らず、平板部に爪を設けなくてもよい。
また、上述の各実施形態では、平板部10に設ける爪12の個数を4つとしたが、これに限らず、爪の個数を2つや6つとしてもよい。
また、第3実施形態では、ハット部50の板状の鍔部51A、51Bを平板部10上に積層したが、これに限らず、第1実施形態と同様に、ハット部に壁部を設け、ハット部を平板部10上に配置することで、この壁部が平板部10に対して傾斜して配置されるようにしてもよい。
【0041】
また、上述の各実施形態では、板材である平板部10やハット部60の一部を切断して折り曲げることで、突起としての爪12を形成したが、これに限らず、
図16に示すように、平板部10にビス70をねじ込んで貫通させることで、このビス70を突起として機能させてもよい。このようにすれば、平板部を加工することなく、平板部10にビス70をねじ込むだけで、平板部10に容易に突起を設けることができる。なお、ビス70の代わりに釘を打ち込んでもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…天井構造 2…天井部材(木質系部材) 3、6、7、8、9…固定具
4A、4B…ビス 5…吊りボルト(吊り材)
10…平板部(固定具本体) 11A、11B…第1貫通孔 12…爪(突起)
20…ナット(支持部)
30A、30B…壁部(ガイド部) 31A、31B…第2貫通孔
40A、40B…ガイド板(ガイド部)
50…ハット部(ガイド部) 51A、51B…鍔部
52…凸部 53…貫通孔
60…ハット部(固定具本体) 61A、61B…鍔部
62…凸部 63…貫通孔
70…ビス(突起)