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特許7596229位置観測システム及び位置観測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】位置観測システム及び位置観測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
G01B11/00 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021121830
(22)【出願日】2021-07-26
(65)【公開番号】P2023017510
(43)【公開日】2023-02-07
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 博昭
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-045892(JP,A)
【文献】特開2003-097917(JP,A)
【文献】特開昭63-137309(JP,A)
【文献】中国実用新案第211346689(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B61F 1/00-99/00
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を備えた第1の対象物の前記貫通孔における第1の開口部と面するように配置され、前記貫通孔に向けて光線を走査し、前記貫通孔における第2の開口部から前記貫通孔に挿入される第2の対象物からの前記光線の反射光を受光するセンサと、
前記センサで受光された反射光に基づいて画像を生成する画像生成部と、
前記画像を表示装置に表示する表示制御部と、
前記画像に基づいて前記貫通孔に対する前記第2の対象物の位置ずれを評価する評価部と、
を具備し、
前記画像は、前記反射光の輝度を画素値とする第1の画像を含み、
前記評価部は、前記画像における前記貫通孔の位置に形成される暗部の対称性に基づいて前記貫通孔に対する前記第2の対象物の位置ずれを評価する位置観測システム。
【請求項2】
前記画像は、前記反射光に基づいて算出される前記センサに対する深度を画素値とする第2の画像さらに含み、
前記貫通孔に前記第2の対象物が挿入されたときに、前記表示制御部が前記表示装置に表示する前記画像を前記第1の画像から前記第2の画像に自動的に切り替える切替部をさらに具備する請求項に記載の位置観測システム。
【請求項3】
前記画像は、前記反射光に基づいて算出される前記センサに対する深度を画素値とする第2の画像さらに含み、
前記表示制御部が前記表示装置に表示する前記画像を前記第1の画像から前記第2の画像に切り替えるための手動操作を受け付ける操作部をさらに具備する請求項又はに記載の位置観測システム。
【請求項4】
前記光線は、赤外光線である請求項1乃至の何れか1項に記載の位置観測システム。
【請求項5】
前記センサは、前記第2の開口部の中心に対しては前記光線が正入射し、前記第2の開口部のエッジに対しては前記光線が斜め入射するように前記光線を走査する請求項1乃至の何れか1項に記載の位置観測システム。
【請求項6】
貫通孔を備えた第1の対象物の前記貫通孔における第1の開口部と面するように配置され、前記貫通孔に向けて光線を走査し、前記貫通孔における第2の開口部から前記貫通孔に挿入される第2の対象物からの前記光線の反射光を受光するセンサで受光された反射光に基づいて画像を生成することと、
前記画像を表示装置に表示することと、
前記画像に基づいて前記貫通孔に対する前記第2の対象物の位置ずれを評価することと、
をコンピュータに実行させるための位置観測プログラムであって、
前記画像は、前記反射光の輝度を画素値とする第1の画像を含み、
前記評価することは、前記画像における前記貫通孔の位置に形成される暗部の対称性に基づいて前記貫通孔に対する前記第2の対象物の位置ずれを評価すること
をコンピュータに実行させるための位置観測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、位置観測システム及び位置観測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両における車体と台車とは、例えば車体に設けられたピンを台車に設けられたピン受けに挿入することで連結される。車体は高重量のため、ピンとピン受けとの位置合わせが正確に行われないと、車体と台車との連結時に台車が破損する可能性がある。従来、ピンとピン受けとの相対的な位置の観測は、作業員による目視で行われている。この目視による観測は、例えば、台車の置かれる床に掘られたピットと呼ばれる穴から作業員がピン受けを通してピンを見ることで行われている。ピットの形成には、コストがかかるため、より低コストの観測手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2010/041371号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、低コストで挿入対象物と挿入物との相対的な位置の確認をすることができる位置観測システム及び位置観測プログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様の位置観測システムは、センサと、画像生成部と、表示制御部と、評価部とを備える。センサは、貫通孔を備えた第1の対象物の貫通孔における第1の開口部と面するように配置される。センサは、貫通孔に向けて光線を走査し、貫通孔における第2の開口部から貫通孔に挿入される第2の対象物からの光線の反射光を受光する。画像生成部は、センサで受光された反射光に基づいて画像を生成する。表示制御部は、画像を表示装置に表示する。評価部は、画像に基づいて貫通孔に対する第2の対象物の位置ずれを評価する。画像は、反射光の輝度を画素値とする第1の画像を含む。評価部は、画像における貫通孔の位置に形成される暗部の対称性に基づいて貫通孔に対する第2の対象物の位置ずれを評価する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、一実施形態に係る位置観測システムの適用例を示す図である。
図2図2は、実施形態にかかる位置観測システムの構成を示す図である。
図3図3は、位置観測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、位置観測装置の動作を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、ピンとピン受けとの間の水平方向の位置ずれが大きいときのセンサから投光される光線とピンとの関係を示す図である。
図5B図5Bは、図5Aの状況に応じて得られる赤外画像の例を示す図である。
図6A図6Aは、ピンとピン受けとの間の水平方向の位置ずれが小さいときのセンサから投光される光線とピンとの関係を示す図である。
図6B図6Bは、図6Aの状況に応じて得られる赤外画像の例を示す図である。
図7A図7Aは、ピンとピン受けとの間の水平方向の位置ずれが小さい状態でピンがピン受けに近づけられたときのセンサから投光される光線とピンとの関係を示す図である。
図7B図7Bは、図7Aの状況に応じて得られる赤外画像の例を示す図である。
図8A図8Aは、ピンとピン受けとの鉛直方向の位置関係に応じた深度画像の変化を示す図である。
図8B図8Bは、ピンとピン受けとの鉛直方向の位置関係に応じた深度画像の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。図1は、一実施形態に係る位置観測システムの適用例を示す図である。一実施形態に係る位置観測システムは、例えば鉄道車両の車体1と台車2との連結の際に用いられ得る。
【0008】
車体1は、台車2が配置される床面と平行な水平方向及び床面に対する鉛直方向に移動できるように例えば図示しないクレーンによって持ち上げられる。車体1の下部には、第2の対象物の例としてのピン10が設けられている。ピン10は、例えば略円柱状のピンであって、車体1に1つ以上形成される。ピン10の断面形状は、必ずしも円である必要はない。
【0009】
台車2は、床面の所定の位置に固定される。台車2には第1の対象物の例としてのピン受け20が設けられている。ピン受け20は、台車2に形成された貫通孔である。ピン受け20の形状は、ピン10の形状に応じて決められてよい。ピン受け20の断面形状は、ピン10の断面形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、ピン10の断面形状が円であって、ピン受け20の断面形状が楕円であってもよい。以下、ピン受け20の床面と面する側の開口部を第1の開口部、車体1と面する側の開口部を第2の開口部と記す。
【0010】
車体1と台車2との連結の際には、作業員は、実施形態にかかる位置観測システムによってピン10とピン受け20との相対的な位置の観測をしながらクレーンを操作して車体1のピン10を台車2のピン受け20に挿入する。
【0011】
図2は、実施形態にかかる位置観測システムの構成を示す図である。位置観測システムは、センサ30と、位置観測装置40とを有している。
【0012】
センサ30は、それぞれのピン受け20の第1の開口部と面する床面に配置される。より詳しくは、センサ30は、受光面の中心位置がピン受け20の貫通孔の中心軸上に配置されるように配置されている。センサ30は、例えばLiDAR(Light Detecting and Ranging)方式のデプスカメラであってよい。LiDAR方式のデプスカメラは、例えば、光源と、偏向素子と、受光素子とを有する。光源は、例えば赤外光源であって偏向素子に向けて赤外光線を出射する。偏向素子は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを有し、ミラーの制御によって光線の出射方向を変化させることでピン受け20を介してピン10を円錐状に走査する。受光素子は、例えば赤外域に感度を持つフォトダイオード、SPAD(Single-Photon Avalanche Diode)といった素子からなる画素が2次元状に配置された受光面を有する素子である。
【0013】
実施形態におけるセンサ30は、ピン受け20の下側の開口部である第1の開口部から赤外光Lを投光し、第2の開口部から出射されてピン10で反射された赤外光Lの反射光を受光する。そして、センサ30は、反射光に基づくセンサデータを位置観測装置40に送出する。センサデータは、例えば、反射光の輝度を表すデータと、投受光の時間差を表すデータとを含む。
【0014】
ここで、センサ30は、ピン受け20を介してピン10を円錐状に走査するように構成されている。センサ30は、第2の開口部の中心に対しては光線Lが正入射し、第2の開口部のエッジに対しては光線Lが斜め入射するように光線Lを走査することができるのであれば、センサ30の構成は特定の構成には限定されない。例えば、センサ30は、必ずしもミラーによって光線の走査をする構成に限定されない。
【0015】
位置観測装置40は、画像生成部41と、評価部42と、切替部43と、表示制御部44とを有している。位置観測装置40は、センサ30と通信できるように構成されている。位置観測装置40とセンサ30との通信は、無線で行われてもよいし、有線で行われてもよい。また、位置観測装置40は、表示装置50と通信できるように構成されている。表示装置50は、液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイといった表示装置である。表示装置50は、位置観測装置40から転送されたデータに基づいて各種の画像を表示する。位置観測装置40と表示装置50との通信は、無線で行われてもよいし、有線で行われてもよい。
【0016】
画像生成部41は、センサ30からのセンサデータに基づいて画像を生成する。画像生成部41は、例えば反射光の輝度を画素値とする第1の画像及び反射光に基づいて算出される深度を画素値とする第2の画像をそれぞれ生成する。第1の画像は、センサ30のそれぞれの走査位置について検出された赤外光の輝度の値に応じて個々の画素に対して値を割り当てることで生成される赤外画像である。一方、第2の画像は、センサ30のそれぞれの走査位置について検出された赤外光の例えば投受光の時間差によって算出される深度の値に応じて個々の画素に対して値を割り当てることで生成される深度画像である。
【0017】
評価部42は、画像生成部41で第1の画像又は第2の画像を評価することでピン10とピン受け20との位置ずれを評価する。位置ずれの評価手法の詳細については後で説明する。
【0018】
切替部43は、評価部42での評価結果に応じて表示制御部44に出力する画像を第1の画像と第2の画像の何れかに切り替える。切り替えの詳細については後で説明する。
【0019】
表示制御部44は、切替部43から入力された画像を表示装置50に表示する。表示制御部44は、必要に応じて切替部43から入力される画像に各種の情報を重畳して表示装置50に表示してもよい。
【0020】
図3は、位置観測装置40のハードウェア構成の一例を示す図である。位置観測装置40は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末等の各種の端末装置であり得る。図3に示すように、位置観測装置40は、プロセッサ401と、ROM402と、RAM403と、ストレージ404と、入力インタフェース405と、通信装置406とをハードウェアとして有している。
【0021】
プロセッサ401は、位置観測装置40の全体的な動作を制御するプロセッサである。プロセッサ401は、例えばストレージ404に記憶されているプログラムを実行することによって、画像生成部41と、評価部42と、切替部43と、表示制御部44として動作する。プロセッサ401は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ401は、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等であってもよい。プロセッサ401は、単一のCPU等であってもよいし、複数のCPU等であってもよい。
【0022】
ROM(Read Only Memory)402は、不揮発性のメモリである。ROM402は、位置観測装置40の起動プログラム及び各種の閾値等を記憶している。RAM(Random Access Memory)403は、揮発性のメモリである。RAM403は、例えばプロセッサ401における処理の際の作業メモリとして用いられる。
【0023】
ストレージ404は、例えばハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブといったストレージである。ストレージ404は、位置観測プログラム等のプロセッサ401によって実行される各種のプログラムを記憶している。
【0024】
入力インタフェース405は、タッチパネル、キーボード、マウス等の入力装置を含む。入力インタフェース405の入力装置の操作がされた場合、操作内容に応じた信号がプロセッサ401に入力される。プロセッサ401は、この信号に応じて各種の処理を行う。
【0025】
通信装置406は、位置観測装置40がセンサ30及び表示装置50といった外部の機器と通信するための通信装置である。通信装置406は、有線通信のための通信装置であってもよいし、無線通信のための通信装置であってもよい。
【0026】
次に位置観測システムの動作を説明する。図4は、位置観測装置40の動作を示すフローチャートである。図4の処理は、プロセッサ401によって実行される。図4の処理中、作業員は、表示装置50に表示される画像を見ながら、例えばクレーンを操作して車体1のピン10を台車2のピン受け20に挿入する。このとき、センサ30は、ピン受け20に向けて光線を投光しながら、ピン受け20を介してピン10の走査を実施する。そして、センサ30は、センサデータを逐次に位置観測装置40に送出する。センサデータを受け取ると、プロセッサ401は、図4の処理を開始する。
【0027】
ステップS1において、プロセッサ401は、センサ30からのセンサデータに基づいて第1の画像としての赤外画像及び第2の画像としての深度画像をそれぞれ生成する。前述したように、赤外画像は、センサデータから得られる赤外光の輝度に応じてそれぞれの画素値が割り当てられた画像である。また、深度画像は、センサデータから得られる赤外光の投受光の時間差に基づいて算出される深度に応じてそれぞれの画素値が割り当てられた画像である。
【0028】
ステップS2において、プロセッサ401は、赤外画像における暗部を検出する。ここで、赤外画像における暗部について説明する。
【0029】
図5Aは、ピン10とピン受け20との間の水平方向の位置ずれが大きいときのセンサ30から投光される光線とピン10との関係を示す図である。実施形態ではセンサ30からは光線が円錐状に投光される。つまり、ピン受け20の第2の開口のエッジからは光線が斜めに出射される。したがって、図5Aに示すように、ピン10の中心がピン受け20の中心Cから大きくずれているとき、センサ30から投光されてピン受け20の第2の開口から出射された一部の光線L1はピン10の先端で反射されるのに対し、一部の光線L2はピン10の先端には当たらずにピン10の側面から抜けていく。したがって、光線L2の反射光は、返ってこないか、返ってきたとしても光線L1の反射光よりも微弱になる。ここで、ピン10の中心がピン受け20の中心Cから大きくずれているときには、光線L2はピン受け20の特定の部分から出射される光線に偏る。例えば図5Aでは、光線L2は、ピン受け20の右側から出射される光線に偏っている。
【0030】
図5Bは、図5Aの状況に応じて得られる赤外画像の例を示す図である。光線L1の反射光に対して光線L2の反射光は微弱である。したがって、赤外画像200において、光線L1の反射光に基づく部分はピン10の先端の形状を表す明部201となるのに対し、光線L2の反射光に基づく部分は暗部202になる。ここで、ピン10とピン受け20との間の水平方向の位置ずれが大きいときには光線L2に偏りが生じるので、暗部202の形状はピン受け20を表す円の中心に対して非対称になる。
【0031】
図6Aは、ピン10とピン受け20との間の水平方向の位置ずれが小さいときのセンサ30から投光される光線とピン10との関係を示す図である。図6Aに示すように、ピン10の中心がピン受け20の中心Cとほぼ一致しているときも、センサ30から投光されてピン受け20の第2の開口から出射された一部の光線L2はピン10の先端には当たらずにそのまま抜けていく。しかしながら、ピン10の中心がピン受け20の中心Cとほぼ一致しているときには、光線L2はピン受け20の第2の開口のエッジからほぼ均等に射出される。
【0032】
図6Bは、図6Aの状況に応じて得られる赤外画像の例を示す図である。光線L2がピン受け20の第2の開口のエッジからほぼ均等に射出されるので、赤外画像200における暗部202の形状は、ピン受け20を表す円の中心に対してほぼ対称な帯になる。
【0033】
図7Aは、ピン10とピン受け20との間の水平方向の位置ずれが小さい状態でピン10がピン受け20に近づけられたときのセンサ30から投光される光線とピン10との関係を示す図である。図7Aに示すように、ピン10とピン受け20との距離が短くなると、ピン10の側面を抜けていく光線L2の数が少なくなる。
【0034】
図7Bは、図7Aの状況に応じて得られる赤外画像の例を示す図である。光線L2の数少なくなるので、赤外画像200における暗部202としての帯の幅は、ピン10とピン受け20との距離が遠い場合に比べて細くなる。そして、ピン10がピン受け20に挿入された後は、赤外画像200における暗部202としての帯は殆ど見えなくなる。
【0035】
このように、ピン10とピン受け20との位置ずれに応じて暗部202の形状が変化する。したがって、暗部202の形状からピン10とピン受け20とのずれ量が評価され得る。このような原理に基づき、プロセッサ401は、赤外画像200における例えば所定画素値以下の領域を暗部202として検出する。
【0036】
ステップS3において、プロセッサ401は、ピン10とピン受け20のずれ量が大きいか否かを判定する。プロセッサ401は、例えば暗部202の形状がピン受け20を表す円の中心に対してある閾値以上の対称性を有していないときにはピン10とピン受け20のずれ量が大きいと判定する。なお、ピン受け20の上にピン10が全く位置していない場合も、暗部202の形状は対称にはなり得る。しかしながら、この場合には、明部201が存在しない。このような赤外画像200において明部201と暗部202の境界が存在しない場合もプロセッサ401は、ピン10とピン受け20のずれ量が大きいと判定する。ステップS3において、ピン10とピン受け20のずれ量が大きいと判定されたときには、処理はステップS4に移行する。ステップS3において、ピン10とピン受け20とのずれ量が大きくないと判定されたときには、処理はステップS6に移行する。
【0037】
ステップS4において、プロセッサ401は、赤外画像を表示装置50に表示させる。その後、プロセッサ401は、処理をステップS5に移行させる。図5Aに示したような赤外画像が表示装置50に表示されることで、作業員は、ピン10とピン受け20との位置ずれを表示装置50から観測できる。ここで、図5Aで示した赤外画像に加えて、暗部202の対称性より判定されるピン10とピン受け20とのずれの方向に応じたクレーンの操作方向の案内表示がされてもよい。
【0038】
ステップS5において、プロセッサ401は、位置観測装置40の動作を終了するか否かを判定する。例えば、作業員の入力インタフェース405の操作によって動作の終了が指示された場合には、プロセッサ401は、位置観測装置40の動作を終了すると判定する。ステップS5において、位置観測装置40の動作を終了すると判定されたときには、処理は図4の処理は終了する。ステップS5において、位置観測装置40の動作を終了すると判定されていないときには、処理はステップS1に戻る。
【0039】
ステップS6において、プロセッサ401は、赤外画像200における暗部202としての帯の幅を算出する。
【0040】
ステップS7において、プロセッサ401は、ピン10がピン受け20に挿入されている状態でないか否かを判定する。プロセッサ401は、例えば、暗部202としての帯の幅が予め定められた閾値よりも太いときにピン10がピン受け20に挿入されている状態でないと判定する。ステップS7において、ピン10がピン受け20に挿入されている状態でないと判定されたときには、処理はステップS8に移行する。ステップS8において、ピン10がピン受け20に挿入されている状態であると判定されたときには、処理はステップS9に移行する。
【0041】
ステップS8において、プロセッサ401は、赤外画像を表示装置50に表示させる。その後、プロセッサ401は、処理をステップS5に移行させる。図6B又は図7Bに示したような赤外画像が表示装置50に表示されることで、作業員は、ピン10とピン受け20との水平方向の位置ずれが小さくなっていることを表示装置50から観測できる。また、作業員は、赤外画像における帯の幅を見ながらピン10とピン受け20との水平方向の微調整をすることができる。ここで、図6B又は図7Bで示した赤外画像に加えて、暗部202の帯の幅により判定されるピン10とピン受け20とのずれの方向に応じたクレーンの操作方向の案内表示がされてもよい。
【0042】
ステップS9において、プロセッサ401は、深度画像を表示装置50に表示させる。その後、プロセッサ401は、処理をステップS5に移行させる。前述したように、ピン10がピン受け20に挿入された後は、赤外画像200における暗部202としての帯は殆ど見えなくなる。一方で、作業員は、ピン10をピン受け20に完全に挿入するためにクレーンを操作する必要がある。作業員がクレーンを下げすぎると車体1が台車2に接触して台車2が破損してしまう可能性がある。このため、ピン10がどの程度までピン受け20に挿入されているかを確認できることが望ましい。しかしながら、赤外画像200では、ピン10とピン受け20との鉛直方向の位置関係を確認することは難しい。このため、ピン10が挿入状態となった後は、プロセッサ401は、表示装置50に表示する画像を赤外画像から深度画像に切り替える。
【0043】
図8A及び図8Bは、ピン10とピン受け20との鉛直方向の位置関係に応じた深度画像の変化を示す図である。図8Aに示すように、深度画像300では、センサ30に対する深度に応じて画素の値が割り当てられる。これにより、ピン10とピン受け20との位置関係が表され得る。つまり、ピン10とピン受け20との鉛直方向の位置関係がある関係であるときには、図8Aに示すように、深度画像300におけるピン10の部分301は、センサ30とピン10との距離に応じたある画素値を有する。一方、ピン10がピン受け20に対してさらに挿入された場合、図8Bに示すように、深度画像300におけるピン10の部分301は、図8Aとは異なる画素値を有する。このようにして、作業員は、ピン受け20に対するピン10の挿入状態を表示装置50において確認できる。
【0044】
ここで、図8Aにおけるピン10の部分301の画像と図8Bにおけるピン10の部分301の画像とは単に画素値が変えられるだけでなく、色等が変えられてもよい。ピン10とピン受け20との鉛直方向の位置関係に応じて色等が変えられることにより、作業員は、表示装置50の画像上でピン10とピン受け20との鉛直方向の位置関係をより確認しやすい。
【0045】
以上説明したように実施形態によれば、貫通孔を有する第1の対象物における貫通孔の一方の開口部から第2の対象物が挿入される際の第1の対象物と第2の対象物との相対的な位置関係の観測に、貫通孔の他方の開口部に面するように配置され、貫通孔に向けて光線を走査し、第2の対象物からの光線の反射光を受光するセンサが用いられる。この場合、貫通孔の断面方向と水平な方向の第1の対象物と第2の対象物との相対的な位置関係によって、光線の抜けが発生し得る。この光線の抜けが画像における暗部として検出されることで、第1の対象物と第2の対象物との相対的な位置関係が画像上で評価され得る。また、このような暗部を含む画像が表示されることで、作業員は、第1の対象物と第2の対象物との相対的な位置関係を観測できる。実施形態では、貫通孔に面するようにセンサが配置できればよいので、ピットの形成等は不要であり、低コストで位置観測システムが実現され得る。
【0046】
また、実施形態では対象物にマーカ等の基準位置を設定せずに、また、画像上でマーカ等の基準位置を検出することなく、相対位置の観測が行われ得る。このため、特に大型の対象物の間の相対位置の観測に好適である。
【0047】
また、実施形態では第1の対象物に対して第2の対象物が挿入された後は、表示装置に表示される画像が、反射光の輝度を画素値とする第1の画像から反射光に基づいて算出されるセンサに対する深度を画素値とする第2の画像に切り替わる。これにより、作業員は、第1の対象物に対して第2の対象物が挿入された後も第1の対象物と第2の対象物との挿入の状態を画像上で観測できる。
【0048】
また、実施形態では光線として赤外光線が用いられている。これにより、照明環境下でなくても、貫通孔を介した相対位置の観測が行われ得る。
【0049】
[変形例]
以下、実施形態の変形例について説明する。前述した実施形態では第1の対象物に対して第2の対象物が挿入された後は、表示装置に表示される画像が、反射光の輝度を画素値とする第1の画像から反射光に基づいて算出されるセンサに対する深度を画素値とする第2の画像に切り替わる。これに対し、第1の対象物に対して第2の対象物が挿入される前から、表示装置に表示される画像が第2の画像であってもよい。この場合、暗部202の部分は、相対的に遠距離を表す画像として生成されることになる。
【0050】
また、実施形態では光線として赤外光が用いられているが、貫通孔を照明できる環境下であれば光線として可視光が用いられてもよい。この場合、赤外画像に代えてカラー画像が表示装置50に表示され得る。
【0051】
また、実施形態ではステップS1において赤外画像と深度画像の両方が生成される。これに対し、深度画像は、ステップS9の処理の際に生成されてもよい。
【0052】
また、実施形態ではピン10がピン受け20に挿入されている状態であると判定されたときに表示装置50に表示される画像が赤外画像から深度画像に自動的に切り替わる。これに対し、表示装置50に表示される画像が例えば作業員が入力インタフェース405を操作することによって切り替えられてもよい。この場合、ステップS7の判定は、作業員による切り替えのための操作を受け付けたか否かに置き換えられる。そして、プロセッサ401は、切り替えのための操作を受け付けたと判定したときに、処理をステップS9に移行させる。さらには、赤外画像から深度画像への自動切替と手動切替とが併用されてもよい。この場合には、図4のステップS7で示したピン10がピン受け20に挿入されている状態でないか否かの判定と作業員による切り替えのための操作を受け付けたか否かの判定とがそれぞれ行われる。
【0053】
また、実施形態では、位置観測システムが鉄道車両の車体と台車との連結の際に用いられ得る例が示されている。これに対し、実施形態の位置観測システムは、必ずしも鉄道車両の車体と台車との連結の際に用いられるものに限らない。この場合において、センサは、必ずしも第1の対象物の下方に配置されている必要はない。例えば、第2の対象物が貫通孔の下方の開口部から挿入されるときには、センサは貫通孔の上方の開口部に面するように配置される。また、水平方向に形成された貫通孔の一方の開口部から第2の対象物が挿入されるときには、センサは貫通孔の他方の開口部に面するように配置される。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 車体、2 台車、10 ピン、20 ピン受け、30 センサ、40 位置観測装置、41 画像生成部、42 評価部、43切替部、44 表示制御部、50 表示装置、401 プロセッサ、402 ROM、403 RAM、404 ストレージ、405 入力インタフェース、406 通信装置。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B