(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】光透過性積層体の検査方法および検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20241202BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/84 C
(21)【出願番号】P 2021136809
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2024-08-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】自然 浩次
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕司
【審査官】井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-134573(JP,A)
【文献】特開2001-264259(JP,A)
【文献】特開2006-284559(JP,A)
【文献】特開2012-002676(JP,A)
【文献】特開2002-122550(JP,A)
【文献】特開2002-055058(JP,A)
【文献】特表2018-509752(JP,A)
【文献】特表2002-506526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-21/958
G01B 11/00-11/30
G01M 11/00-11/08
B32B 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉の光透過性積層体の4辺を把持して中空に固定した状態で透過検査を行い、該光透過性積層体における欠点を検出することを含む、光透過性積層体の検査方法であって、
該光透過性積層体の両面に第1の表面保護フィルムおよび第2の表面保護フィルムをそれぞれ仮着すること;
該光透過性積層体の該第1の表面保護フィルム側を吸引プレートにより吸引し、該光透過性積層体を該吸引プレートに固定すること;
該光透過性積層体を該吸引プレートに固定した状態で、該第2の表面保護フィルムを剥離すること;
該光透過性積層体を該吸引プレートに固定した状態で、該光透過性積層体を該吸引プレートと把持部材の下グリップとで挟むこと;
挟み込みの後、該吸引プレートの吸引を停止し、かつ、該下グリップの吸引を開始し、該光透過性積層体を該下グリップに固定すること;
該光透過性積層体を該下グリップに固定した状態で、該吸引プレートを離間させること;
該光透過性積層体を該下グリップに固定した状態で、該
第1の表面保護フィルムを剥離すること;
該光透過性積層体の該下グリップと反対側の面の該下グリップに対応する位置に上グリップを配置し、該上グリップと該下グリップとにより該光透過性積層体を把持すること;および、
該下グリップの吸引を停止すること;
を含む、光透過性積層体の検査方法。
【請求項2】
前記吸引プレートの長辺端部および短辺端部に、凸部である位置決め部が設けられている、請求項1に記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項3】
前記吸引プレートの長辺端部の位置決め部と短辺端部の位置決め部とは、直角の角部を形成するようそれぞれの一端が接しており、該角部に前記光透過性積層体の1つの隅部が当接されて位置決めが行われる、請求項2に記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項4】
前記下グリップは下グリップ支持部により支持され、該下グリップ支持部と該下グリップとにより、前記光透過性積層体の位置決め用の段差が規定されており、該光透過性積層体の外縁が該段差に当接されて位置決めが行われる、請求項3に記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項5】
前記段差が、前記光透過性積層体を前記吸引プレートと前記下グリップとで挟み込む際に、該吸引プレートの前記位置決め部に対応する位置に規定されている、請求項4に記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項6】
前記把持部材が平面視枠状であり、前記光透過性積層体の外縁が該把持部材の外縁に対応するよう位置決めされる、請求項1から5のいずれかに記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項7】
前記欠点の検出の後、前記光透過性積層体の少なくとも一方の表面に、前記剥離した第1の表面保護フィルムまたは第2の表面保護フィルムあるいは該第1の表面保護フィルムまたは該第2の表面保護フィルムとは別の表面保護フィルムを剥離可能に仮着することを含む、請求項1から6のいずれかに記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項8】
前記光透過性積層体に張力を付与することをさらに含む、請求項1から7のいずれかに記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項9】
前記光透過性積層体における8μm~50μmサイズの欠点を検出する、請求項1から8のいずれかに記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項10】
前記欠点の検出が、
所定倍率の光学系の焦点を前記光透過性積層体の第1主面の表面に合わせ、該光学系で該光透過性積層体を走査して欠点のXY座標マップを作成すること;
該光学系の焦点を該光透過性積層体の第1主面の表面から厚み方向内方に所定距離ずらして、該光学系で該光透過性積層体を走査して別の欠点のXY座標マップを作成すること;および
該作成した欠点のXY座標マップを統合すること;
を含む、請求項1から9のいずれかに記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項11】
前記欠点の検出が、前記光学系の焦点を前記光透過性積層体の厚み方向内方に前記所定距離さらにずらして該光学系で該光透過性積層体を走査することを所定回数繰り返し、所定数の欠点のXY座標マップを作成することを含む、請求項10に記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項12】
前記欠点の検出が、前記統合した欠点のXY座標マップの欠点発生座標のみにおいて、前記所定倍率よりも高倍率の光学系を用いて該欠点の厚み方向の位置を測定することを含む、請求項10または11に記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項13】
前記光透過性積層体が、光学フィルム、粘着剤シート、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1から12のいずれかに記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項14】
前記光学フィルムが、偏光板、位相差板、およびこれらを含む積層体から選択される、請求項13に記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項15】
前記光透過性積層体の厚みが300μm以下である、請求項1から14のいずれかに記載の光透過性積層体の検査方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の光透過性積層体の検査方法に用いられる検査装置であって、
ベースフレームと;
該ベースフレームに設けられ、光透過性積層体の4辺を把持して該光透過性積層体を中空に固定する把持部材と;
該ベースフレームの一端に設けられたプレート支持部に回転軸を介して枢動可能に取り付けられ、該回転軸を中心とした回転により該把持部材に対向する位置に配置可能に構成されている吸引プレートと;
該光透過性積層体の画像を得る撮像素子と;
該光透過性積層体を照射する照射光を発する光源と;
を有し、
該把持部材が、第1の上グリップと第1の下グリップとを有する第1の把持部材、第2の上グリップと第2の下グリップとを有する第2の把持部材、第3の上グリップと第3の下グリップとを有する第3の把持部材、および、第4の上グリップと第4の下グリップとを有する第4の把持部材で構成されており、
該第1の把持部材、該第2の把持部材、該第3の把持部材および該第4の把持部材が、該光透過性積層体の4辺のそれぞれを把持する、
光透過性積層体の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性積層体の検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置に適用される光透過性積層体(例えば、光学部材、光学積層体、光学フィルム、光透過性粘着シート)は、画像表示欠陥等を防止するために当該積層体内部の異物を排除する必要がある。そのため、このような光透過性積層体は、代表的には異物検査に供される。異物検査は、代表的には、光透過性積層体の長尺状のウェブを搬送しながら行われる透過検査であり、当該透過検査において異物および/または欠点は暗点として認識され得る。近年、画像表示装置に要求される表示性能が格段に高くなり、その結果、光透過性積層体の異物検査の精度についても格段に高いものが要求されるようになっている。具体的には、従来は50μm程度の異物および/または欠点を検出すれば許容されていたところ、10μm程度の異物および/または欠点を検出する必要が生じている。しかし、上記のような長尺状のウェブを搬送しながら行われる異物検査では、このように小さな異物および/または欠点を検出することはきわめて困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、従来に比べて格段に微小な異物および/または欠点を検出し得る光透過性積層体の検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態による光透過性積層体の検査方法は、枚葉の光透過性積層体の4辺を把持して中空に固定した状態で透過検査を行い、該光透過性積層体における欠点を検出することを含む。
1つの実施形態においては、上記検査方法は、上記光透過性積層体の両面に第1の表面保護フィルムおよび第2の表面保護フィルムをそれぞれ仮着すること;該光透過性積層体の該第1の表面保護フィルム側を吸引プレートにより吸引し、該光透過性積層体を該吸引プレートに固定すること;該光透過性積層体を該吸引プレートに固定した状態で、該第2の表面保護フィルムを剥離すること;該光透過性積層体を該吸引プレートに固定した状態で、該光透過性積層体を該吸引プレートと把持部材の下グリップとで挟むこと;挟み込みの後、該吸引プレートの吸引を停止し、かつ、該下グリップの吸引を開始し、該光透過性積層体を該下グリップに固定すること;該光透過性積層体を該下グリップに固定した状態で、該吸引プレートを離間させること;該光透過性積層体を該下グリップに固定した状態で、該第2の表面保護フィルムを剥離すること; 該光透過性積層体の該下グリップと反対側の面の該下グリップに対応する位置に上グリップを配置し、該上グリップと該下グリップとにより該光透過性積層体を把持すること;および、該下グリップの吸引を停止すること;を含む。
1つの実施形態においては、上記吸引プレートの長辺端部および短辺端部には、凸部である位置決め部が設けられている。
1つの実施形態においては、上記吸引プレートの長辺端部の位置決め部と短辺端部の位置決め部とは、直角の角部を形成するようそれぞれの一端が接しており、該角部に上記光透過性積層体の1つの隅部が当接されて位置決めが行われる。
1つの実施形態においては、上記下グリップは下グリップ支持部により支持され、該下グリップ支持部と該下グリップとにより、上記光透過性積層体の位置決め用の段差が規定されており、該光透過性積層体の外縁が該段差に当接されて位置決めが行われる。
1つの実施形態においては、上記段差は、上記光透過性積層体を上記吸引プレートと上記下グリップとで挟み込む際に、該吸引プレートの上記位置決め部に対応する位置に規定されている。
1つの実施形態においては、上記把持部材は平面視枠状であり、上記光透過性積層体の外縁は該把持部材の外縁に対応するよう位置決めされる。
1つの実施形態においては、上記検査方法は、上記欠点の検出の後、上記光透過性積層体の少なくとも一方の表面に、上記剥離した第1の表面保護フィルムまたは第2の表面保護フィルムあるいは該第1の表面保護フィルムまたは該第1の表面保護フィルムとは別の表面保護フィルムを剥離可能に仮着することを含む。
1つの実施形態においては、上記検査方法は、上記光透過性積層体に張力を付与することをさらに含む。
1つの実施形態においては、上記検査方法は、上記光透過性積層体における8μm~50μmサイズの欠点を検出する。
1つの実施形態においては、上記欠点の検出は、所定倍率の光学系の焦点を上記光透過性積層体の第1主面の表面に合わせ、該光学系で該光透過性積層体を走査して欠点のXY座標マップを作成すること;該光学系の焦点を該光透過性積層体の第1主面の表面から厚み方向内方に所定距離ずらして、該光学系で該光透過性積層体を走査して別の欠点のXY座標マップを作成すること;および、該作成した欠点のXY座標マップを統合すること;を含む。
1つの実施形態においては、上記欠点の検出は、上記光学系の焦点を上記光透過性積層体の厚み方向内方に上記所定距離さらにずらして該光学系で該光透過性積層体を走査することを所定回数繰り返し、所定数の欠点のXY座標マップを作成することを含む。
1つの実施形態においては、上記欠点の検出は、上記統合した欠点のXY座標マップの欠点発生座標のみにおいて、上記所定倍率よりも高倍率の光学系を用いて該欠点の厚み方向の位置を測定することを含む。
1つの実施形態においては、上記光透過性積層体は、光学フィルム、粘着剤シート、およびこれらの組み合わせから選択される。1つの実施形態においては、上記光学フィルムは、偏光板、位相差板、およびこれらを含む積層体から選択される。1つの実施形態においては、上記光透過性積層体の厚みは300μm以下である。
本発明の別の局面によれば、光透過性積層体の検査装置が提供される。該検査装置は、ベースフレームと;該ベースフレームに設けられ、光透過性積層体の4辺を把持して該光透過性積層体を中空に固定する把持部材と;該ベースフレームの一端に設けられたプレート支持部に回転軸を介して枢動可能に取り付けられ、該回転軸を中心とした回転により該把持部材に対向する位置に配置可能に構成されている吸引プレートと;該該光透過性積層体の画像を得る撮像素子と;該光透過性積層体を照射する照射光を発する光源と;を有する。該把持部材は、第1の上グリップと第1の下グリップとを有する第1の把持部材、第2の上グリップと第2の下グリップとを有する第2の把持部材、第3の上グリップと第3の下グリップとを有する第3の把持部材、および、第4の上グリップと第4の下グリップとを有する第4の把持部材で構成されており、該第1の把持部材、該第2の把持部材、該第3の把持部材および該第4の把持部材が、該光透過性積層体の4辺のそれぞれを把持する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態による光透過性積層体の検査方法によれば、枚葉の光透過性積層体の4辺を把持して中空に固定した状態で透過検査を行うことにより、従来に比べて格段に微小な(例えば、8μmサイズ程度の)異物および/または欠点を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)は、本発明の1つの実施形態における透過検査の一例を説明する概略斜視図であり;(b)は、
図1(a)のB-B線による概略断面図である。
【
図2】本発明の実施形態において光透過性積層体を中空に固定する装置の一例を示す概略斜視図である。
【
図3】(a)~(d)は、
図2の装置を用いて光透過性積層体を中空に固定する手順を説明する概略断面図である。
【
図4】
図2の装置に用いられ得る吸引プレートを説明する概略平面図である。
【
図5】(a)~(c)は、
図2の装置に用いられ得る把持部材ならびに把持部材による光透過性積層体の把持手順の詳細を説明する要部概略断面図である。
【
図6】本発明の実施形態において中空に固定された光透過性積層体に張力(テンション)を付与する手段を説明する概略平面図である。
【
図7】透過検査の欠点の検出における撮像素子の焦点合わせを説明する概略図である。
【
図8】透過検査の欠点の検出における撮像素子による光透過性積層体のXY平面の走査を説明する概略斜視図である。
【
図9】透過検査の欠点の検出における欠点のXY座標マップの一例を説明する概念図である。
【
図10】透過検査の欠点の検出における所定数の欠点のXY座標マップの統合の一例を説明する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、見やすくするために図面はすべて概念的および模式的に表されており、実際の状態を正確に描いたものではない。
【0009】
A.光透過性積層体の検査方法の概略
本発明の実施形態による光透過性積層体の検査方法は、 枚葉の光透過性積層体の4辺を把持して中空に固定した状態で透過検査を行い、当該光透過性積層体における欠点を検出することを含む。
図1(a)は、透過検査の一例を説明する概略斜視図であり;
図1(b)は、
図1(a)のB-B線による概略断面図である。透過検査は、例えば、光学系を用いて、枠状の把持部材20で4辺を把持された光透過性積層体10の画像を得ることを含む。把持部材20は、上グリップ22と下グリップ24とを有する。上グリップ22は、代表的には、4辺のそれぞれに対応する第1の上グリップ22a、第2の上グリップ22b、第3の上グリップ22cおよび第4の上グリップ22dで構成されている。下グリップ24は、代表的には、第1の上グリップ22a~第4の上グリップ22dのそれぞれに対応する第1の下グリップ24a、第2の下グリップ24b、第3の下グリップ24cおよび第4の下グリップ24dで構成されている。したがって、例えば、第1の上グリップ22aと第1の下グリップ24aとを有する把持部材を第1の把持部材20aと称する場合がある。光学系は、例えば、光透過性積層体10の一方の側(図示例では上方)に配され、光透過性積層体の画像を得る撮像素子30と;光透過性積層体10の他方の側(図示例では下方)に配され、光透過性積層体10を照射する照射光を発する光源40と;を含む。なお、撮像素子30が光透過性積層体10の下方に配され、光源40が光透過性積層体10の上方に配されてもよい。撮像素子30は、透過光(検査光)像を撮像し、当該撮像した画像において、異物および/または欠点(以下、文脈に応じて単に異物または欠点と称する場合がある)は暗点として認識され得る。中空固定および透過検査のより具体的な実施形態については後述する。枚葉の光透過性積層体の4辺を把持して中空に固定した状態で透過検査を行うことにより、光透過性積層体において例えば8μm~50μmサイズ、好ましくは8μm~30μmサイズ、より好ましくは8μm~20μmサイズ、さらに好ましくは8μm~15μmサイズ、特に好ましくは約10μmサイズの欠点を検出することができる。従来、光学フィルムのような光透過性積層体の異物検査は長尺状のウェブを搬送しながら行われている。このような異物検査によれば、小さな(代表的には、50μm以下のサイズの)異物を検出することは実質的に不可能である。なお、従来は50μmサイズ程度の異物を検出すれば許容されていたので、ウェブ搬送による異物検査に特段の問題は生じていなかったところ、画像表示装置の高精度化に伴い、10μmサイズ程度の異物を検出する必要が新たに生じてきた。本発明者らはこのような問題について鋭意検討した結果、搬送時のウェブのバタつきおよび/または搬送装置の振動により撮像素子による正確な画像が得られないことに起因し得ることを見出した。そして、試行錯誤の結果、光透過性積層体を枚葉状に裁断し、当該枚葉状の光透過性積層体を中空に固定した状態で(すなわち、載置せずに)透過検査を行うことにより、搬送時のウェブのバタつきおよび/または搬送装置の振動による悪影響を排除できるのみならず、載置面の異物等の悪影響も排除した。その結果、きわめて高精度の異物検査を実現し、10μmサイズ程度の異物および/または欠点を検出することを可能にした。このように、本発明は、従来になかった新たな課題を解決するものである。さらに、本発明の実施形態のような構成であれば、光透過性積層体の対向する2辺のみを支持または把持して中空に固定した状態で透過検査を行う場合に比べて撓みを顕著に抑制できるので、より精密な検査が可能となる。なお、図示例では把持部材が第1の把持部材20a~第4の把持部材20dの4つのサブ部材を有する構成を説明したが、把持部材は2つのサブ部材(例えば、2つのL字型サブ部材、1つの直線状サブ部材と1つのコの字型サブ部材)を有していてもよく、3つのサブ部材(例えば、1つのL字型サブ部材と2つの直線状サブ部材)を有していてもよい。また、透過検査は、光透過性積層体のエッジを検査するエッジ透過検査であってもよく、光透過性積層体の両側に検査用偏光板をクロスニコルに配置する、または、光透過性積層体が偏光子を含む場合に光透過性積層体の一方に検査用偏光板をクロスニコルに配置するクロス検査であってもよい。
【0010】
B.光透過性積層体
光透過性積層体としては、異物検査が必要とされる任意の適切な光透過性の積層体が挙げられる。具体例としては、光学フィルム、粘着剤シート、およびこれらの組み合わせ(例えば、粘着剤層付光学フィルム)が挙げられる。光学フィルムとしては、例えば、偏光板、位相差板、タッチパネル用導電性フィルム、表面処理フィルム、および、これらを目的に応じて適切に積層した積層体(例えば、反射防止用円偏光板、タッチパネル用導電層付偏光板)が挙げられる。粘着剤シートは、代表的には、粘着剤とその少なくとも一方の側に仮着された離型フィルムとを含む。1つの実施形態においては、光透過性積層体は、低反射層/低反射層用基材/位相差層/偏光子/保護層/ハードコート層の構成を有していてもよい。光透過性積層体の厚みは、好ましくは300μm以下であり、より好ましくは280μm以下であり、さらに好ましくは250μm以下である。本発明の実施形態によれば、このような薄型の光透過性積層体においても微小な異物を良好に検出することができる。光透過性積層体の厚みの下限は、例えば30μmであり得る。
【0011】
光透過性積層体10は、例えば、光透過性積層体を構成する各層をいわゆるロールトゥロールにより積層することにより作製され得る。作製された長尺状の光透過性積層体は、所定サイズに裁断されて異物検査に供される。当該サイズは、代表的には、最終製品が複数枚得られるサイズであり得る。検査終了後、光透過性積層体は、代表的には最終製品サイズに裁断されて出荷され得る。
【0012】
光透過性積層体10は、第1主面10aと第2主面10bとを有する。1つの実施形態においては、光透過性積層体は、異物検査に供される際、少なくとも一方の表面(代表的には、両表面)に表面保護フィルムが剥離可能に仮着されてもよい。表面保護フィルムを仮着することにより、光透過性積層体のキズの発生、光透過性積層体への異物の付着等を防止することができるので、より高精度で異物検査を行うことができる。さらに、表面保護フィルムを仮着することにより、光透過性積層体が検査に供される際の剛性(コシ)を確保することができる。表面保護フィルムは、代表的には、検査時に剥離除去される。検査終了後には、検査時に剥離された表面保護フィルムが光透過性積層体の表面に再度仮着されてもよく、別の表面保護フィルムが剥離可能に仮着されてもよい。
【0013】
1つの実施形態においては、光透過性積層体10の例えば第1主面10aに反射性保護フィルムが剥離可能に仮着されてもよい。光透過性積層体の種類・構成によっては(例えば、光透過性積層体が低反射層(AR層)を含む場合には)光透過性積層体の第1主面に撮像素子のオートフォーカスが機能しない場合があるところ、反射性保護フィルムを仮着することにより、そのような場合であっても光透過性積層体の第1主面に撮像素子のオートフォーカスを良好に機能させることができる。反射性保護フィルムは、代表的には、所定倍率の光学系の焦点を光透過性積層体の第1主面の表面に合わせるときの照射光を反射し、かつ、検査光を透過する機能を有する。表面保護フィルムが仮着される場合には、反射性保護フィルムは、代表的には、表面保護フィルムの内側に仮着され得る。
【0014】
1つの実施形態においては、反射性保護フィルムは以下の関係を満足する:
y≧0.0181x-11.142
ここで、xは650nm~800nmの波長領域での検出波長の絶対値であり、yは反射率の絶対値である。このような構成であれば、撮像素子のオートフォーカスをより良好に機能させることができる。反射性保護フィルムとしては、上記機能を有する限りにおいて任意の適切な構成が採用され得る。具体的には、反射性保護フィルムは、例えば特開2019-099751号公報の[0031]に記載の環状オレフィン系樹脂で構成され得る。環状オレフィン系樹脂としては、例えばポリノルボルネンが挙げられる。環状オレフィン系樹脂は、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、日本ゼオン製のゼオノアおよびゼオネックス、JSR製のアートン、三井化学製のアペル、TOPAS ADVANCED POLYMERS製のトパス等が挙げられる。環状オレフィン系樹脂フィルムは、環状オレフィン系樹脂を50重量%以上含有するものが好ましい。1つの実施形態においては、反射性保護フィルムの表面にハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層を形成することにより、反射性保護フィルムのキズの発生、反射性保護フィルムへの異物の付着等を防止することができるので、より高精度で異物検査を行うことができ、微小な異物および/または欠点を正確に検出することができる。
【0015】
反射性保護フィルムは、予定される検査回数に応じて、複数枚を仮着してもよい。例えば異物検査が2回予定されている場合には、反射性保護フィルムを2枚貼り合わせることにより、2回目の異物検査の前に外側の反射性保護フィルムを1枚剥離すれば、内側の反射性保護フィルムのキズの発生、内側の反射性保護フィルムへの異物の付着等を防止することができるので、より高精度で複数回の異物検査を行うことができる。なお、複数回の検査が予定されている場合であっても、反射性保護フィルムを1枚のみ仮着してもよい。
【0016】
表面保護フィルムおよび反射性保護フィルムは、ロールトゥロールにより(すなわち、裁断前に)光透過性積層体に仮着されてもよく、裁断後に仮着されてもよい。
【0017】
以下、透過検査における欠点の検出をより具体的に説明する。
【0018】
C.光透過性積層体の中空での固定
欠点の検出においては、上記のとおり、枚葉の光透過性積層体10は把持部材20で4辺を把持された状態で中空に固定される。
図2は、光透過性積層体を中空に固定する装置の一例を示す概略斜視図であり;
図3(a)~
図3(d)は、そのような装置を用いて光透過性積層体を中空に固定する手順を説明する概略断面図である。なお、
図3(a)~
図3(d)は、把持部材20b側(
図1(b)の左側)から見た断面図である。図示例の装置100は、土台となるベースフレーム50と、ベースフレーム50に設けられた把持部材20および吸引プレート60と、を有する。以下、光透過性積層体を中空に固定する手順を説明する。
【0019】
まず、
図3(a)に示すように、光透過性積層体10を吸引プレート60により吸引固定する。図示例においては、光透過性積層体10の両面に表面保護フィルム71、72が仮着されており、表面保護フィルム71が吸引プレート60側に配置されている。光透過性積層体の両面に表面保護フィルムを仮着した状態で光透過性積層体を吸引固定することにより、光透過性積層体の剛性(コシ)を保持した状態での固定が可能となって取り扱いが容易となり、かつ、シワ、撓みおよび歪みを良好に防止することができる。その結果、高精度で異物検査を実施することができ、微小な異物および/または欠点を正確に検出することができる。
【0020】
吸引プレート60は、
図4に示すように平面視矩形であり、光透過性積層体を固定する固定面と裏面とを有し、固定面側と裏面側とを連通する複数の吸引孔62を有する。吸引プレート60は、ベースフレーム50の一端に設けられたプレート支持部64に回転軸66を介して枢動可能に取り付けられている。1つの実施形態においては、吸引プレート60には、
図4に示すように、長辺端部および短辺端部に位置決め部68、68が設けられてもよい。位置決め部68、68は、例えば凸部であり、代表的には凸条である。長辺の位置決め部と短辺の位置決め部とは、直角の角部を形成するようそれぞれの一端が接しており、当該角部に光透過性積層体の1つの隅部を当接して吸引固定することにより、光透過性積層体の正確な位置決めが可能となる。その結果、さらに精密な検査が可能となる。なお、図示例では位置決め部68は長辺の1つと短辺の1つの2辺に設けられているが、4辺に(すなわち、枠状に)設けられてもよい。この状態で、光透過性積層体10から表面保護フィルム72を剥離除去する。
【0021】
次に、
図3(b)に示すように、光透過性積層体10を吸引固定した状態で吸引プレート60をベースフレーム50方向に(図示例では時計回りに)回転させて把持部材20(実質的には、下グリップ24)に対向する位置に配置し、ならびに、昇降機構80を上昇させることにより把持部材20を支持する治具90を上昇させて、光透過性積層体10を吸引プレート60と把持部材20の下グリップ24とで挟み込む。なお、図面では、第1の下グリップ24a(第1の把持部材20a)および第3の下グリップ24c(第3の把持部材20c)のみが描かれている。以下、
図3(b)~
図3(d)の説明において同様である。ここで、光透過性積層体10は、例えば上記の位置決め部68、68により、その外縁が枠状の下グリップ24(第1の下グリップ24a~第1の下グリップ24d)の外縁に対応するよう位置決めされている。下グリップ24は、光透過性積層体を固定する固定面とベースフレーム側の裏面とを有し、固定面側と裏面側とを連通する複数の吸引孔(図示せず)を有する。図示例の昇降機構80の下グリップ24側の所定の位置には位置決めピン82が設けられており、昇降機構80が上昇した際には位置決めピン82が治具90の昇降機構側に設けられた位置決め孔92に挿入され、正確に位置合わせされた状態で挟み込みが行われる。さらに、昇降機構80の昇降度合いを調整することにより、挟み込みの微調整が可能となる。光透過性積層体10を吸引プレート60と把持部材20の下グリップ24とで挟み込んだ後、吸引プレート60の吸引を停止し、かつ、下グリップ24の吸引を開始し、光透過性積層体10を下グリップ24に吸引固定する。
【0022】
次に、
図3(c)に示すように、光透過性積層体10を下グリップ24で吸引固定した状態で、吸引プレート60をベースフレーム50から離間する方向に(図示例では反時計回りに)回転させて、光透過性積層体10に仮着されている表面保護フィルム71を露出させる。その後、
図3(c)に示すように、光透過性積層体10から表面保護フィルム71を剥離除去する。
【0023】
最後に、
図3(d)に示すように、光透過性積層体10の下グリップ24と反対側の面の下グリップ24に対応する位置に上グリップ22を配置し、上グリップ22と下グリップ24とにより光透過性積層体10を把持する。これにより、光透過性積層体10の4辺が把持されて中空に固定された状態となる。この状態で、光透過性積層体10が透過検査(異物検査)に供される。枚葉の光透過性積層体の4辺を把持部材で把持した状態で異物検査を行うことにより、搬送によるバタつきおよび/または搬送装置の振動の影響を排除できるので、表面保護フィルムを剥離した後であっても高精度で異物検査を実施することができ、微小な異物および/または欠点を正確に検出することができる。加えて、表面保護フィルムを剥離することにより、表面保護フィルムの異物を検出することがなくなるので、上記効果との相乗的な効果により、より高精度で異物検査を実施することができる。なお、光透過性積層体の把持される部分は、代表的には、最終製品となった場合の非製品領域(光透過性積層体が光学フィルムである場合には、例えば画像非表示部に対応する部分)である。
【0024】
図5(a)~
図5(c)を参照して、把持部材20ならびに把持部材20による光透過性積層体10の把持手順の詳細を説明する。
図5(a)~
図5(c)は、第1の把持部材20aについてそのような手順を説明する要部概略断面図である。把持のメカニズムは、第2の把持部材20b、第3の把持部材20cおよび第4の把持部材20dについても同様である。
図5(a)に示すように、把持部材20aにおいては、下グリップ24aは下グリップ支持部25の上に設けられている。下グリップ支持部25は、ベース部28に設けられている。下グリップ支持部25は凸部25aを有し、凸部25aと下グリップ24aとにより、光透過性積層体10の位置決め用の段差25bが規定されている。段差25bは、代表的には、光透過性積層体10を吸引プレート60と下グリップ24aとで挟み込む際に、吸引プレートの位置決め部68(存在する場合)に対応する位置に規定されている。ベース部28の下グリップ支持部25の外側には、上グリップ支持部26が回転軸27を介して枢動可能に取り付けられている。上グリップ支持部26の回転軸27に対する遠位部には上グリップ22aが設けられている。なお、図示例においては、下グリップ支持部25および上グリップ支持部26はベース部に設けられているが、これらは治具90に設けられてもよい。
【0025】
次に、上記のように吸引プレート60を回転させることにより、光透過性積層体10が吸引プレート60と把持部材20aの下グリップ24aとで挟み込まれた状態となる。ここで、
図5(b)に示すように、光透過性積層体10は、その外縁が位置決め用の段差25bに当接するよう位置決めされている。その結果、光透過性積層体10の外縁が枠状の下グリップ24aの外縁に対応することとなる。次いで、上記のとおり、吸引プレート60の吸引を停止し、かつ、下グリップ24aの吸引を開始し、光透過性積層体10を下グリップ24aに吸引固定する。さらに、上記のとおり、吸引プレート60を離間させた後、光透過性積層体10から表面保護フィルム71を剥離除去する。
【0026】
次に、光透過性積層体10を下グリップ24aに吸引固定した状態で、
図5(c)に示すように、上グリップ支持部26を光透過性積層体10方向に(図示例では時計回りに)回転させて、上グリップ22aと下グリップ24aとにより光透過性積層体10を把持する。把持後に下グリップ24aの吸引を停止する。さらに、
図5(c)に示すように、固定手段29により回転軸27を固定することにより、光透過性積層体10が中空に固定された状態となる。固定手段29としては、任意の適切な構成が採用され得る。図示例では固定手段29はネジであり、ネジを締めて回転軸27に押し当てることにより回転軸27を固定することができる。
【0027】
1つの実施形態においては、中空に固定された光透過性積層体10には張力(テンション)が付与されてもよい。この場合、第1の把持部材20aと第3の把持部材20c、ならびに、第2の把持部材20bと第4の把持部材20dは、それぞれ、相対的に近接または離間可能に構成されている。例えば
図6に示すように、第1の把持部材20aが固定され、第2の把持部材20b、第3の把持部材20cおよび第4の把持部材20dに張力が付与され得る。第2の把持部材20b、第3の把持部材20cおよび第4の把持部材20dは、スライド可能に構成されてもよく、張力が適切に付与される限りにおいて遊び程度に移動可能であってもよい。張力は、代表的には弾性部材(例えば、バネ)23により対向する把持部材が相対的に離間する方向に付勢されている。このような構成であれば、光透過性積層体10の長辺方向および短辺方向のいずれにおいてもシワ、撓みおよび歪みを顕著に抑制することができる。その結果、より高精度で異物検査を行うことができ、微小な異物および/または欠点を正確に検出することができる。張力は、バネ自体の強度、バネの固定ねじの締め具合を調整することにより制御することができる。
【0028】
D.欠点の検出
欠点の検出は、上記のように、代表的には
図1に示すような光学系(撮像素子30および光源40を含む)を用いて行われる。以下、一例について具体的に説明する。まず、
図7の左側に示すように、所定倍率(以下、低倍率と称する場合がある)の光学系(実質的には、撮像素子30)の焦点を光透過性積層体10の第1主面10aの表面に合わせる。この状態で、
図8に示すようにして撮像素子30で光透過性積層体10の平面(XY平面)全体を走査し、欠点のXY座標マップ(第1のXY座標マップ)を作成する。上記A項に記載のとおり、欠点は暗点として認識されるので、第1のXY座標マップにおいては、光透過性積層体10の第1主面10a近傍(第1主面から厚み方向内方の所定の距離まで)の欠点は、例えば
図9に示すような画像上の暗点として認識される。なお、第1のXY座標マップのみでは、厚み方向の深い位置(第2主面に近い位置)の微小欠点を検出できない場合がある。これに対して、本発明の実施形態によれば、後述するように、第1主面の表面から厚み方向内方に所定距離Pずらして欠点の検出を行うことにより、光透過性積層体の厚み方向全体にわたって微小欠点を正確に検出することができる。
【0029】
次いで、
図7の中央部に示すように、撮像素子30の焦点を光透過性積層体10の第1主面10aの表面から厚み方向(Z方向)内方に所定距離Pずらして、光透過性積層体10の厚み方向内方の所定の位置に焦点を合わせる。この状態で、上記と同様に
図8に示すようにして撮像素子30で光透過性積層体10のXY平面全体を走査して、欠点のXY座標マップ(第2のXY座標マップ)を作成する。第2のXY座標マップにおいては、光透過性積層体10の厚み方向内方の所定位置近傍(当該所定位置から所定の距離まで)の欠点は、例えば
図9とは実質的に異なる位置にある画像上の暗点として認識される。なお、本明細書においては、所定距離Pを撮像ピッチと称する場合がある。撮像素子の焦点合わせは、任意の適切な手段を用いて実現され得る。例えば、撮像素子自体をZ方向に移動させてもよく、レンズ等により撮像素子の焦点距離を変更してもよく、これらを組み合わせてもよい。図示例は、レンズ等により撮像素子の焦点距離を変更する形態を示している。
【0030】
必要に応じて、
図7の右側に示すように、撮像素子30の焦点を厚み方向(Z方向)に所定距離Pさらにずらして、光透過性積層体10の厚み方向内方の次の所定の位置に焦点を合わせる。この状態で、上記と同様に
図8に示すようにして撮像素子30で光透過性積層体10のXY平面全体を走査して、欠点のXY座標マップ(第3のXY座標マップ)を作成する。この操作を必要に応じて所定回数繰り返し、所定数の欠点のXY座標マップを作成する。撮像ピッチおよび作成する欠点のXY座標マップの数は、光透過性積層体の全体厚み、光透過性積層体を構成する層の数、各層の厚み等に応じて適切に設定され得る。撮像ピッチPは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは20μm~80μmであり、より好ましくは40μm~60μmである。このような構成によれば、厚み方向全体を撮像素子で走査することなく、厚み方向に存在する実質的にすべての欠点(したがって、光透過性積層体における実質的にすべての欠点)およびその大まかな位置を検出することができる。
図7では欠点のXY座標マップを3つ作成する形態を示しているが、作成される欠点のXY座標マップの数はこれに限定されるものではなく、好ましくは2~10であり、より好ましくは3~8であり、さらに好ましくは4~6である。
【0031】
次いで、上記のようにして作成した所定数の欠点のXY座標マップを統合する。例えば
図10は、5つの欠点のXY座標マップを統合して欠点のXY座標マップ(統合XY座標マップ)を作成する一例を示す。
図10のように、各画像データを統合することにより、それぞれのXY座標マップに存在する欠点を共通のXY座標上で表すことができる。このようにして、統合XY座標マップが作成され得る。統合XY座標マップにおいては、光透過性積層体における実質的にすべての欠点がXY座標(2次元座標)に表されている。
【0032】
上記のような統合XY座標マップの作成における撮像素子の所定倍率(低倍率)は、好ましくは10倍未満であり、より好ましくは5倍以下である。当該倍率の下限は、例えば1.5倍であり得る。当該倍率がこのような範囲であれば、光透過性積層体の広範囲を効率よく撮像することができ、その結果、統合XY座標マップを効率よく作成することができる。
【0033】
次に、欠点の深度(光透過性積層体の厚み方向における位置)を測定する。ここで、光透過性積層体の平面全面かつ厚み方向全体にわたって欠点を検出することは困難であり、仮に実現できたとしてもコスト、時間および効率性を考慮すると実用的ではない。したがって、本実施形態においては、統合XY座標マップにおける欠点発生座標のみにおいて欠点の厚み方向の位置を測定する。上記のとおり、統合XY座標マップにおいては、光透過性積層体における実質的にすべての欠点が2次元座標に表されているので、欠点発生座標のみにおいて欠点の厚み方向の位置を測定することにより、光透過性積層体における実質的にすべての欠点の厚み方向の位置を検出することができる。
【0034】
欠点の深度の測定は、撮像素子の焦点を光透過性積層体の第1主面の表面に合わせること、および、当該焦点を光透過性積層体の厚み方向内方に移動させて第1主面の表面から欠点までの距離を測定すること、を含む。具体的には、撮像素子の焦点を厚み方向に移動させ、コントラストが高い位置を合焦位置として認定し、第1主面表面から当該合焦位置までの距離を欠点の厚み方向における位置とすることができる。欠点の厚み方向における正確な位置を検出することにより、製品の検査効率および出荷効率を格段に向上させることができる。
【0035】
上記のような欠点の深度測定における撮像素子の倍率(高倍率)は、好ましくは10倍以上であり、より好ましくは20倍以上である。当該倍率の上限は、例えば50倍であり得る。当該倍率がこのような範囲であれば、微小欠点の厚み方向における位置を確実に検出することができる。
【0036】
欠点の深度測定は、例えば、特開2001-124660号公報、特開2004-077261号公報、特開2009-250893号公報に記載されている。これらの公報の記載は、本明細書に参考として援用される。
【0037】
1つの実施形態においては、上記欠点の検出は、上記欠点のXY座標マップにおける撮像素子による走査距離1000μmあたりの光透過性積層体の第1主面の厚み方向(Z方向)の変動量が好ましくは±10μm以内、より好ましくは±8μm以内となるような領域で行われ得る。別の実施形態においては、上記欠点の検出は、光透過性積層体の撓み角度が水平方向に対して好ましくは±0.57°以内、より好ましくは±0.50°以内となるような領域で行われ得る。すなわち、いずれの実施形態においても、光透過性積層体の撓みが非常に小さい領域で、欠点の検出が行われ得る。このような構成であれば、光透過性積層体の第1主面への撮像素子の焦点合わせ(結果として、以降の厚み方向内方の所定の位置への焦点合わせ)をきわめて正確に行うことができる。その結果、微小欠点の厚み方向における位置を正確に検出することができる。このような光透過性積層体の撓みが非常に小さい領域は、上記C項に記載の光透過性積層体の固定方法により実現され得る。
【0038】
以上のようにして、透過検査(欠点の検出)が行われ得る。検査終了後、光透過性積層体は、上記のとおり、代表的には最終製品サイズに裁断されて出荷され得る。これも上記のとおり、検査終了後には必要に応じて、剥離した表面保護フィルムを光透過性積層体に再度剥離可能に仮着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の実施形態による光透過性積層体の検査方法は、画像表示装置の製造過程において光学フィルム、粘着剤シート等の異物の検出に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0040】
10 光透過性積層体
20 把持部材
30 撮像素子
40 光源
50 ベースフレーム
60 吸引プレート
71 表面保護フィルム
72 表面保護フィルム
80 昇降機構
100 光透過性積層体の検査装置