(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】電解コンデンサの製造方法、電解コンデンサ及び電解コンデンサの製造装置
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20241202BHJP
H01G 9/02 20060101ALI20241202BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20241202BHJP
D01D 5/04 20060101ALI20241202BHJP
D06C 23/04 20060101ALI20241202BHJP
D06M 11/34 20060101ALI20241202BHJP
D06M 10/02 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H01G9/00 290C
H01G9/02
H01G13/00 371Z
D01D5/04
D06C23/04 B
D06M11/34
D06M10/02 C
(21)【出願番号】P 2021141347
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】大城 健一
(72)【発明者】
【氏名】内田 健哉
(72)【発明者】
【氏名】松本 一紀
(72)【発明者】
【氏名】五十川 昌邦
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-266926(JP,A)
【文献】特開2012-221600(JP,A)
【文献】特開2017-137604(JP,A)
【文献】特開2021-27285(JP,A)
【文献】特開2004-235293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/02
H01G 13/00
D01D 5/04
D06C 23/04
D06M 11/34
D06M 10/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極となる基材に向かって原料液を吐出することにより、前記基材の表面にセパレータとなる繊維膜を形成することと、
前記繊維膜の形成において、幅方向について前記基材の端部で、前記幅方向について前記基材の中央部に比べて、繊維を太く形成することと、
を具備する、電解コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記基材の前記表面に前記繊維膜が形成された状態において前記繊維膜の表面に対して濡れ性を向上させる表面処理を行うことをさらに具備する、請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記基材の前記表面に前記繊維膜が形成された状態において前記繊維膜の表面に凸凹形状を形成することをさらに具備する、請求項1又は2の製造方法。
【請求項4】
前記基材とは極性が反対の電極となる板部材を前記基材に対して前記繊維膜を間に介して積層し、前記基材、前記繊維膜及び前記板部材の積層体からコンデンサ素子を形成することと、
導電性高分子が溶解された溶液に前記コンデンサ素子を浸すことにより、前記繊維膜に前記導電性高分子を含浸させることと、
をさらに具備する、請求項1乃至3のいずれか1項の製造方法。
【請求項5】
電極となる基材と、
前記基材の表面にセパレータとして形成される繊維膜であって、幅方向について前記基材の端部で、前記幅方向について前記基材の中央部に比べて、繊維が太い繊維膜と、
を具備する、電解コンデンサ。
【請求項6】
電極となる基材に向かって原料液を吐出することにより、前記基材の表面にセパレータとなる繊維膜を形成する紡糸ヘッドであって、幅方向について前記基材の中央部に向かって前記原料液を吐出する第1のノズルと、前記幅方向について前記基材の端部に向かって前記原料液を吐出し、前記第1のノズルに比べて繊維を太く形成する第2のノズルと、を備える紡糸ヘッドを具備する、電解コンデンサの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電解コンデンサの製造方法、電解コンデンサ及び電解コンデンサの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサとして電解コンデンサが、広く用いられている。電解コンデンサでは、コンデンサ素子が、ケースの内部に収納される。また、コンデンサ素子は、例えば、セパレータを間に介して陽極及び陰極を積層し、陽極、陰極及びセパレータの積層体を巻回した巻回体から形成される。そして、ケースの内部において、コンデンサ素子に、電解液が含浸される。電解コンデンサとしては、一対の電極(陽極及び陰極)の一方がセパレータと一体に形成されるものがある。このような電解コンデンサの製造では、紡糸法等によって一対の電極の一方である基材に向かって原料液を吐出することにより、基材となる電極の表面に、繊維膜がセパレータとして形成される。
【0003】
また、電解コンデンサの製造では、コンデンサ素子となる巻回体を電解液に浸す前に、導電性高分子が溶解された溶液に巻回体を浸す等して、セパレータに導電性高分子を含浸させる。これにより、電解コンデンサでは、セパレータにおいて導電性高分子が保持される。前述のように一対の電極の一方と一体の繊維膜からセパレータが形成される電解コンデンサでは、セパレータとなる繊維膜において導電性高分子の分布が不均一になることを有効に防止することが、求められている。すなわち、繊維膜における導電性高分子の分布の均一性を向上させることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-221600号公報
【文献】特開2021-27285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、電極の一方と一体にセパレータとなる繊維膜が形成され、繊維膜における導電性高分子の均一性を向上させる電解コンデンサの製造方法、電解コンデンサ、及び、電解コンデンサの製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電解コンデンサの製造方法によれば、電極となる基材に向かって原料液を吐出することにより、基材の表面にセパレータとなる繊維膜を形成する。繊維膜の形成では、幅方向について基材の端部で、幅方向について基材の中央部に比べて、繊維を太く形成する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電解コンデンサの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の電解コンデンサを、コンデンサ素子をケースから分離した状態で示す概略図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る電解コンデンサにおいて、陽極及びセパレータが一体となった帯状体の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態において、帯状体を製造する製造装置を示す概略図である。
【
図5】
図5は、
図4の製造装置の紡糸部において基材の表面に有機繊維の繊維膜を形成している状態を示し、基材(帯状体)を長手方向に直交又は略直交する断面で示す概略図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る電解コンデンサにおいて、帯状体の幅方向について帯状体の中央部を概略的に示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態に係る電解コンデンサにおいて、帯状体の幅方向について帯状体の端部を概略的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る電解コンデンサの製造において、導電性高分子が溶解された溶液にコンデンサ素子を浸す処理の一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、ある変形例において、帯状体を製造する製造装置に設けられる凸凹形成部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1及び
図2は、第1の実施形態に係る電解コンデンサ1の一例を示す。
図1及び
図2に示すように、電解コンデンサ1は、ケース2、及び、ケース2の内部に収納されるコンデンサ素子3を備える。ケース2は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される。また、ケース2の内部では、コンデンサ素子3に電解液が含浸される。なお、
図2では、コンデンサ素子3をケース2から分離した状態が、示される。
【0010】
コンデンサ素子3は、陽極5、陰極6及びセパレータ7を備える。コンデンサ素子3では、セパレータ7を間に介して陽極5及び陰極6が、積層される。そして、陽極5、陰極6及びセパレータ7の積層体を巻回した巻回体から、コンデンサ素子3が形成される。セパレータ7は、電気的絶縁性を有し、コンデンサ素子3では、セパレータ7によって、陽極5と陰極6との間が、電気的に絶縁される。
【0011】
陽極5は、導電性を有する金属層、及び、金属層の表面に形成される誘電体層を備える。ある一例では、陽極5において、金属層は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成され、誘電体層は、アルミニウムの酸化膜から形成される。また、陰極6は、導電性を有する金属層を備える。ある一例では、陰極6において、金属層は、アルミニウム又はアルミニウム合金から形成される。陽極5の金属層には、陽極側のリード端子8が接続される。また、陰極6の金属層には、陰極側のリード端子9が接続される。リード端子8,9のそれぞれは、導電性を有する金属等から形成され、ケース2の外部へ延出される。
【0012】
図2等の一例では、セパレータ7は、陽極5と一体に形成され、陽極5の表面に形成される有機繊維の繊維膜が、セパレータ7となる。
図3は、陽極5及びセパレータ7が一体となった帯状体11の一例を示す。
図3等に示すように、帯状体11では、すなわち、陽極5となる基材、及び、セパレータ7となる繊維膜のそれぞれでは、長手方向(矢印L1及び矢印L2で示す方向)、長手方向に対して交差する(直交又は略直交する)幅方向(矢印W1及び矢印W2で示す方向)、及び、長手方向及び幅方向の両方に対して交差する厚さ方向(
図3において紙面に対して直交又は略直交する方向)が、規定される。陽極5は、一対の主面Mを有する。一対の主面Mは、厚さ方向について、互いに対して反対側を向く。陽極5では、一対の主面Mの両方が、セパレータ7によって覆われる。
【0013】
また、幅方向について陽極5の両端のそれぞれには、縁Eが形成される。陽極5では、幅方向について両方の縁Eも、セパレータ7となる繊維膜によって、覆われる。そして、帯状体10では、陽極5の両端の縁Eのそれぞれから、セパレータ7が幅方向の外側へ向かって突出する(はみ出る)。
図1乃至
図3等の一例では、帯状体11に陰極6を積層した積層体を巻回することにより、コンデンサ素子3が、形成される。また、コンデンサ素子3では、帯状体11の長手方向が、コンデンサ素子3となる巻回体の周方向と一致又は略一致する。そして、コンデンサ素子3では、帯状体11の幅方向が、巻回体の中心軸に沿う方向と一致又は略一致する。
【0014】
なお、ある一例では、セパレータ7は、陰極6と一体に形成され、陰極6の表面に形成される有機繊維の繊維膜が、セパレータ7となる。この場合、陽極5とセパレータ7とが一体の帯状体11と同様にして、セパレータ7となる繊維膜と陰極6とが一体の帯状体が、形成される。そして、陰極6とセパレータ7とが一体の帯状体に陽極5を積層し、帯状体と陽極5との積層体を巻回することにより、コンデンサ素子3が、形成される。
【0015】
前述のように、本実施形態では、一対の電極(陽極5及び陰極6)の一方である基材と一体に、セパレータ7となる繊維膜が形成される。そして、基材とは極性が反対の電極になる板部材(陽極5及び陰極6の基材とは別の一方)を帯状体11に積層し、帯状体11と板部材との積層体を巻回することにより、コンデンサ素子3となる巻回体が、形成される。
【0016】
以下、電解コンデンサ1等の製造について、説明する。電解コンデンサ1の製造においては、一対の電極の一方となる基材とセパレータとなる繊維膜とが一体の帯状体11が、形成される。
図4は、帯状体11を製造する製造装置20を示す。製造装置20は、電解コンデンサ1を製造する製造装置の一部を構成する。
図4に示すように、帯状体11の製造装置20は、送出し部21、紡糸部22、表面処理部23、巻取り部25及び搬送経路Pを備える。搬送経路Pは、送出し部21から巻取り部25まで、紡糸部22及び表面処理部23を通って延設される。製造装置20では、一対の電極の一方となる基材12が、送出し部21から巻取り部25まで、搬送経路Pに沿って搬送される。
【0017】
搬送経路Pでは、基材12(帯状体11)が搬送される搬送方向、すなわち、巻取り部25へ向かう方向が下流側となる。そして、搬送経路Pでは、搬送方向とは反対方向、すなわち、送出し部21へ向かう方向が上流側となる。また、搬送経路Pでは、搬送方向に対して交差する(直交又は略直交する)幅方向となる第1の方向、及び、搬送方向及び第1の方向の両方に対して交差する(直交又は略直交する)第2の方向が規定される。
図4では、搬送経路Pの第1の方向(幅方向)は、紙面に対して直交又は略直交する。
【0018】
送出し部21は、リール31を備える。リール31には、基材12がロール状に巻かれる。送出し部21では、電動モータ等の駆動部材(図示しない)を駆動することにより、矢印R1の方向へリール31が回転する。これにより、リール31に巻かれた基材12が、搬送経路Pに繰り出される。巻取り部25は、リール32を備える。巻取り部25では、電動モータ等の駆動部材(図示しない)を駆動することにより、矢印R2の方向へリール32が回転する。これにより、搬送経路Pによって搬送された基材12が、リール32によってロール状に巻き取られる。
【0019】
製造装置20では、矢印R1の方向へリール31を回転させると同時に矢印R2の方向へリール32を回転させることにより、送出し部21から巻取り部25へ、搬送経路Pを通して基材12が搬送される。搬送経路Pでは、基材12(帯状体11)の幅方向が搬送経路Pの第1の方向(幅方向)と一致又は略一致し、かつ、基材12(帯状体11)の厚さ方向が搬送経路Pの第2の方向と一致又は略一致する状態で、基材12が搬送される。
図4では、基材12及び帯状体11のそれぞれの幅方向は、紙面に対して直交又は略直交する。また、
図4では、矢印L1及び矢印L2で示す方向が、基材12(帯状体11)の長手方向となり、矢印T1及び矢印T2で示す方向が、基材12(帯状体11)の厚さ方向となる。
【0020】
なお、搬送経路Pには、送出し部21から巻取り部25へ基材12をガイドするガイドローラ(図示しない)が、1つ以上設けられてもよい。この場合、搬送経路Pにおいて、送出し部21と紡糸部22との間、紡糸部22と表面処理部23との間、及び、表面処理部23と巻取り部25との間の少なくともいずれかに、ガイドローラが配置される。また、紡糸部22内及び表面処理部23内のいずれかに、ガイドローラが配置されてもよい。
【0021】
また、送出し部21から巻取り部25までの搬送経路Pの延設状態は、特に限定されない。ある一例では、搬送経路Pは、水平方向に沿って延設され、別のある一例では、鉛直方向に沿って延設する。また、送出し部21と巻取り部25との間に、搬送経路Pの折曲がり部分又は折返し部分等が1箇所以上設けられ、折曲がり部分又は折返し部分等において、搬送経路Pの延設方向が変更されてもよい。ある一例では、紡糸部22と表面処理部23との間に、搬送経路Pの折返し部分が設けられ、別のある一例では、紡糸部22内及び表面処理部23内のいずれかに、搬送経路Pの折返し部分が設けられる。
【0022】
紡糸部22は、搬送経路Pを搬送方向に搬送される基材12の表面に、セパレータとなる有機繊維の繊維膜13を基材12の幅方向に形成する。これにより、基材12及び繊維膜13が一体の帯状体11が形成される。紡糸部22は、1つ以上の紡糸ヘッド33を備え、
図4の一例では、紡糸部22に、6つの紡糸ヘッド33が設けられる。紡糸ヘッド33のそれぞれは、ヘッド本体35と、ヘッド本体35から突出する複数のノズル36と、を備える。紡糸ヘッド33のそれぞれでは、ヘッド本体35の内部に、例えば有機物質が溶媒に溶解された原料液を、貯留可能である。紡糸ヘッド33のそれぞれでは、ヘッド本体35の内部に貯留されている原料液が、ノズル36のそれぞれから基材12に吐出される。基材12は、紡糸ヘッド33のそれぞれに対して、原料液が吐出される側を通って搬送される。
【0023】
また、紡糸部22には、電源(図示しない)が設けられる。ある一例では、電源は直流電源である。電源は、紡糸部22において紡糸ヘッド33のそれぞれに電圧を印加し、搬送経路Pにおいて搬送される基材12とノズル36との間に電位差を発生させる。そして、ノズル36への電圧の印加によって帯電した原料液が、ノズル36のそれぞれから基材12に向かって吐出され、基材12の表面に有機繊維の繊維膜13が形成される。ノズル36からの原料液は、本実施形態では搬送方向に搬送される基材12の幅方向にわたって吐出され、繊維膜13は基材12の表面に基材12の幅方向にわたって形成される。なお、原料液は、プラスの極性に帯電してもよく、マイナスの極性に帯電してもよい。なお、本実施形態においてはノズル36からの原料液が搬送方向に搬送される基材12の幅方向にわたって吐出されて繊維膜13が基材12表面の幅方向にわたって形成されるが、基材12の幅方向の少なくともいずれかの端部を電極とする場合などでは、ノズル36からの原料液が吐出されず表面に繊維膜13が形成されない領域を基材12の幅方向の端部に設けてもよい。
【0024】
原料液では、有機物質を溶媒に溶解することにより、生成される。原料液に用いられる有機物質としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエーテル、ポリイミド、ポリケトン、ポリスルホン、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリフッ化ビニリデンのいずれか1つ以上が選択される。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン等が挙げられる。
【0025】
紡糸ヘッド33のそれぞれのノズル36と基材12との間の電圧は、原料液における溶媒及び溶質の種類、原料液の溶媒の沸点及び蒸気圧曲線、原料液の濃度及び温度、ノズル36の形状、及び、基材12とノズル36との距離等に対応して、適宜設定される。ある一例では、紡糸ヘッド33のそれぞれのノズル36と基材12との間に印加される電圧(電位差)は、1kV~100kVの間で適宜設定される。紡糸ヘッド33のそれぞれのノズル36からの原料液の吐出速度は、原料液の濃度、粘度及び温度、紡糸ヘッド33のそれぞれのノズル36と基材12との間に印加される電圧、及び、ノズル36の形状等に対応する大きさになる。
【0026】
前述のように、本実施形態の紡糸部22は、電界紡糸法(電荷紡糸法及び電荷誘導紡糸法等とも称される)により、基材12の表面に有機繊維の繊維膜13を形成する。これにより、電極(陽極5及び陰極6の一方)となる基材12とセパレータ7となる繊維膜13とが一体の帯状体11が、形成される。また、ある一例では、紡糸ヘッド33への原料液の供給源、及び、供給源と紡糸ヘッド33との間の原料液の供給経路のいずれかに、前述した電源等によって電圧を印加し、原料液を帯電させてもよい。この場合も、帯電した原料液が、ノズル36のそれぞれから基材12に向かって吐出される。
【0027】
また、紡糸部22では、基材12の表面への有機繊維の繊維膜13の形成が、電界紡糸法以外の方法によって行われてもよい。ある一例では、電界紡糸法の代わりに、ソリューションブロー法によって、基材12の表面に有機繊維の繊維膜13が形成される。この場合も、紡糸部22では、紡糸ヘッド33のそれぞれのノズル36から基材12の表面へ、有機物質を溶媒に溶解した原料液が吐出される。
【0028】
図5は、紡糸部22において基材12の表面に有機繊維の繊維膜13を形成している状態を示し、基材12(帯状体11)を長手方向に直交又は略直交する断面で示す。また、
図5では、紡糸ヘッド33は、搬送経路Pの上流側又は下流側から視た状態で示される。
図4及び
図5の一例では、6つの紡糸ヘッド33は、3つの紡糸ヘッド33A、及び、紡糸ヘッド33Aとは別の2つである紡糸ヘッド33Bから構成される。紡糸ヘッド33Aのそれぞれは、搬送経路Pの第2の方向の一方側から基材12に向かって原料液を吐出し、紡糸ヘッド33Bのそれぞれは、搬送経路Pの第2の方向について紡糸ヘッド33Bとは反対側から基材12に向かって原料液を吐出する。前述のように第2の方向の両側から原料液が基材12に向かって吐出されるため、基材12(陽極5及び陰極6の一方)では、一対の主面Mの両方が、セパレータ7となる繊維膜13によって覆われる。
【0029】
また、
図4及び
図5の一例では、紡糸ヘッド33のそれぞれは、4つのノズル36を備え、紡糸ヘッド33のそれぞれでは、4つのノズル36が搬送経路Pの第1の方向に並んだノズル列が形成される。すなわち、紡糸ヘッド33のそれぞれのノズル列では、複数のノズル36が、基材12(帯状体11)の幅方向(矢印W1及び矢印W2で示す方向)に並ぶ。また、
図5では、矢印W1及び矢印W2で示す方向が、基材12(帯状体11)の幅方向となり、矢印T1及び矢印T2で示す方向が、基材12(帯状体11)の厚さ方向となる。
【0030】
紡糸ヘッド33のそれぞれでは、複数のノズル36は、2種類のノズル36A,36Bから構成される。
図4及び
図5の一例では、紡糸ヘッド33のそれぞれは、2つのノズル(第1のノズル)36A、及び、2つのノズル(第2のノズル)36Bを備える。紡糸ヘッド33のそれぞれでは、搬送経路Pの第2の方向(基材12の幅方向)についてノズル列の両端に、ノズル36Bが配置される。そして、紡糸ヘッド33のそれぞれのノズル列では、搬送経路Pの第2の方向についてノズル36Bの間に、ノズル36Aが配置される。したがって、紡糸ヘッド33のそれぞれでは、搬送経路Pの第2の方向(基材12の幅方向)についてノズル列の中央部に、ノズル36Aが配置される。
【0031】
紡糸ヘッド33のそれぞれでは、ノズル(第1のノズル)36Aは、基材12の幅方向(搬送経路Pの第1の方向)について基材12の中央部に向かって、原料液を吐出する。このため、基材12の幅方向について主面Mのそれぞれの中央部は、繊維膜13においてノズル36Aから吐出された原料液によって形成される部分によって、覆われる。また、紡糸ヘッド33のそれぞれでは、ノズル(第2のノズル)36Bは、基材12の幅方向(搬送経路Pの第1の方向)について基材12の端部に向かって、原料液を吐出する。このため、基材12の幅方向について基材12の両方の縁E及びこれらの近傍は、繊維膜13においてノズル36Bから吐出された原料液によって形成される部分によって、覆われる。したがって、繊維膜13において基材12の両端の縁Eのそれぞれから幅方向の外側へ向かって突出する部分は、ノズル36Bから吐出された原料液によって、形成される。
【0032】
紡糸ヘッド33のそれぞれでは、ノズル(第2のノズル)36Bは、ノズル(第1のノズル)36Aに比べて、繊維膜13における繊維を太く形成する。このため、繊維膜13では、ノズル36Aから吐出された原料液によって形成される部分に比べて、ノズル36Bから吐出された原料液によって形成される部分で、繊維の径が大きい。ある一例では、ノズル36Bのそれぞれの吐出口の口径が、ノズル36Aのそれぞれの吐出口の口径に比べて、大きく形成される。これにより、ノズル36Bは、ノズル36Aに比べて、繊維を太く形成する。別のある一例では、ノズル36Bのそれぞれから吐出される原料液では、ノズル36Aのそれぞれから吐出される原料液に比べて、溶媒に溶解した有機物質の濃度が高い。これにより、ノズル36Bは、ノズル36Aに比べて、繊維を太く形成する。
【0033】
図6は、帯状体11の幅方向について帯状体11の中央部を示し、
図7は、帯状体11の幅方向について帯状体11の端部を示す。
図6及び
図7のそれぞれでは、帯状体11の幅方向に直交又は略直交する断面が示される。本実施形態では、2種類のノズル36A,36Bを用いて、前述のようにして基材12の表面に繊維膜13が形成される。このため、帯状体11の幅方向について基材12の端部では、帯状体11の幅方向について基材12の中央部に比べて、繊維膜13における繊維15が太い。したがって、帯状体11の幅方向について基材12の両方の縁E及びこれらの近傍では、帯状体11の幅方向について基材12の中央部に比べて、繊維膜13における繊維15の径が大きい。
【0034】
また、前述のように繊維膜13が形成されるため、幅方向について帯状体11の端部では、幅方向について帯状体11の中央部に比べて、繊維膜13における開口率(空隙率)が高い。ここで、繊維膜13では、所定の面積当たりにおいて流体が通過可能な面積の割合が、開口率として規定される。すなわち、所定の面積当たりにおいて空隙が占める面積の割合が、開口率となる。
【0035】
図4に示すように、紡糸部22において前述のようにして基材12の表面に繊維膜13が形成されると、基材12及び繊維膜13が一体の帯状体11は、表面処理部23へ搬送される。そして、表面処理部23において、繊維膜13の表面に対して濡れ性を向上させる表面処理がおこなわれる。
図4の一例では、表面処理部23は、照射器41を備え、照射器41は、繊維膜13に紫外線を照射する。これにより、繊維膜13の表面に付着した油成分等が取り除かれ、繊維膜13の表面の濡れ性が向上する。
【0036】
したがって、表面処理部23で繊維膜13の表面に対して表面処理が行われることにより、表面処理が行われる前に比べて、繊維膜13の表面の濡れ性が向上する。また、前述のように繊維膜13の表面の濡れ性が向上することにより、繊維膜13の表面に液体が付着し易くなる。そして、表面処理が行われることにより、繊維膜13の表面に対する液体(液滴)の接触角は、表面処理が行われる前に比べて、小さくなる。したがって、表面処理によって、繊維膜13の表面は、液体が付着し易くなる状態に、表面改質される。
【0037】
なお、ある一例では、繊維膜13の表面にオゾンガスを噴射することにより、繊維膜13の表面に対して濡れ性を向上させる表面処理が行われる。また、別のある一例では、繊維膜13の表面にプラズマを噴射することにより、繊維膜13の表面に対して濡れ性を向上させる表面処理が行われる。いずれの場合も、紫外線を繊維膜13の表面に照射する場合と同様に、繊維膜13の表面に付着した油成分等が取り除かれ、繊維膜13の表面の濡れ性が向上する。表面処理部23によって繊維膜13の表面が前述のように表面処理された帯状体11は、巻取り部25のリール32に、ロール状に巻取られる。
【0038】
電解コンデンサ1の製造では、製造装置20によって前述のように帯状体11が形成されると、帯状体11を用いてコンデンサ素子3が形成される。コンデンサ素子3の形成では、電極(陽極5又は陰極6)となる基材12及びセパレータ7となる繊維膜13が一体の帯状体11に対して、基材12とは極性が反対の電極となる板部材が、積層される。すなわち、基材12とは極性が反対の電極となる板部材が、繊維膜13を間に介して、基材12に対して積層される。この際、基材12と板部材との間が繊維膜13によって電気的に絶縁された状態で、基材12、繊維膜13及び板部材が積層される。そして、基材12、繊維膜13及び板部材の積層体を巻回することにより、コンデンサ素子3となる巻回体が形成される。前述のように、コンデンサ素子3は、基材12、繊維膜13及び板部材の積層体から形成される。
【0039】
そして、前述のようにして形成されたコンデンサ素子3を、導電性高分子が溶解された溶液に浸す。
図8は、電解コンデンサ1の製造において、導電性高分子が溶解された溶液にコンデンサ素子3を浸す処理の一例を示す。
図8の一例では、処理槽42に、導電性高分子が溶解された溶液Yが充填される。そして、処理槽42の内部において、充填された溶液Yにコンデンサ素子(巻回体)3が浸される。コンデンサ素子3は、リード端子8,9以外の部分の全体が溶液Yに浸される状態に、処理槽42の内部に配置される。ここで、溶解される導電性高分子としては、ポリアセチレン及びポリチオフェン類等が挙げられる。
【0040】
前述のように溶液Yにコンデンサ素子3が浸されることにより、セパレータ7となる繊維膜13に、導電性高分子が含浸する。そして、溶液Yにコンデンサ素子3をある程度の時間浸した後、溶液Yから取出す。溶液Yにコンデンサ素子3が浸した状態では、前述のように繊維膜13に導電性高分子が含浸するため、溶液Yから取出されたコンデンサ素子3では、セパレータ7(繊維膜13)において導電性高分子が保持される。
【0041】
また、電解コンデンサ1の製造では、繊維膜13に導電性高分子が含浸されたコンデンサ素子3を、ケース2の内部に収納する。この際、リード端子8,9がケース2の外部に延出される状態で、コンデンサ素子3がケース2の内部に配置される。そして、ケース2の内部に電解液を注入し、コンデンサ素子3に電解液を含浸させる。そして、ケース2を封止し、ケース2の内部を密閉することにより、電解コンデンサ1が形成される。
【0042】
本実施形態では、基材12への繊維膜13の形成において、前述のように、幅方向について基材12の端部で、幅方向について基材12の中央部に比べて、繊維が太く形成される。このため、幅方向について帯状体11の端部では、幅方向について帯状体11の中央部に比べて、繊維膜13における開口率が高く、流体が通過し易い。
【0043】
ここで、導電性高分子が溶解した溶液Yにコンデンサ素子3である巻回体を浸した状態では、幅方向について帯状体11の両方の端から、導電性高分子が繊維膜13に侵入する。本実施形態では、幅方向について帯状体11の端部での繊維膜13の開口率が高くなるため、繊維膜13では、幅方向について帯状体11の端部へ侵入した導電性高分子が、幅方向について帯状体11の中央部へ到達し易くなる。幅方向について帯状体11の中央部へ導電性高分子が到達し易くなることにより、前述のようにして形成された電解コンデンサ1では、セパレータ7となる繊維膜13において導電性高分子の分布が不均一になることが、有効に防止される。すなわち、電解コンデンサ1では、繊維膜13における導電性高分子の分布の均一性が、向上する。
【0044】
また、本実施形態では、基材12の表面に繊維膜13が形成された状態において、繊維膜13の表面に対して濡れ性を向上させる表面処理が行われる。そして、表面処理によって、表面処理が行われる前に比べて、繊維膜13の表面の濡れ性が向上する。繊維膜13の表面の濡れ性が向上することにより、導電性高分子が溶解した溶液Yにコンデンサ素子3を浸した状態において、繊維膜13の表面に液体が付着し易くなる。そして、繊維膜13の表面に液体が付着し易くなることにより、繊維膜13に導電性高分子が含浸し易くなる。繊維膜13に導電性高分子が含浸し易くなることにより、前述のようにして形成された電解コンデンサ1では、適切な量の導電性高分子が繊維膜13において保持される。
【0045】
前述のように、本実施形態の電解コンデンサ1では、繊維膜13における導電性高分子の分布の均一性が向上するとともに、繊維膜13において適切な量の導電性高分子が保持される。このため、電解コンデンサ1の性能が向上する。また、幅方向について帯状体11の中央部へ導電性高分子が前述のように到達し易くなることにより、電解コンデンサ1の製造において、材料効率等が向上する。これにより、電解コンデンサ1の製造において、手間及びコストを削減可能となる。
【0046】
また、基材12では、縁Eのそれぞれ及びこれらの近傍にバリが形成されることがある。ここで、本実施形態では、幅方向について帯状体11の端部において、前述のように、繊維膜13の繊維が太く形成される。このため、帯状体11では、基材12に形成されるバリ等が繊維膜13によって適切に覆われ、バリの露出等が有効に防止される。バリの露出等が有効に防止されることにより、基材12とは反対の極性の電極への基材12の接触が有効に防止される。これにより、電解コンデンサ1において、陽極5と陰極6との間での短絡が、有効に防止される。
【0047】
(変形例)
また、
図9に示すある変形例では、帯状体11を製造する製造装置20に、凸凹形成部27が設けられる。凸凹形成部27は、搬送経路Pにおいて、例えば、紡糸部22と表面処理部23との間に位置する。凸凹形成部27は、基材12の表面に繊維膜13が形成された状態において、繊維膜13の表面に凸凹形状16を形成する。
【0048】
図9の一例では、凸凹形成部27は、一対のローラ43を備える。一対のローラ43のそれぞれは、搬送経路Pの第1の方向(帯状体11の幅方向)に沿う中心軸を有し、中心軸を中心に回転可能である。また、一対のローラ43のそれぞれの外周面は、周方向(中心軸の軸回り方向)に沿って凸凹形状に形成され、周方向について全周に渡って凸凹形状に形成される。一対のローラ43は、搬送経路Pの第2の方向(帯状体11の厚さ方向)について互いに対して反対側から帯状体に当接し、ローラ43のそれぞれは、繊維膜13の表面に当接する。
【0049】
凸凹形成部27では、搬送されている帯状体11にローラ43のそれぞれが当接している状態で、矢印R3の方向へローラ43のそれぞれを回転させる。これにより、繊維膜13の表面に、凸凹形状16が形成される。
図9では、左側が搬送経路Pの上流側に相当し、右側が搬送経路Pの下流側に相当する。そして、
図9の一例では、帯状体11が一対のローラ43を上流側から下流側へ通過することにより、繊維膜13の表面に凸凹形状16が形成される。
【0050】
ここで、繊維膜13の表面では、帯状体11の長手方向に沿って凸凹形状16が形成される。また、繊維膜13の表面では、帯状体11の幅方向について帯状体11の端部にのみ凸凹形状16が、形成される。すなわち、帯状体11の幅方向について帯状体11の中央部には、凸凹形状16は形成されない。なお、
図9では、帯状体11は、搬送経路Pの第1の方向(帯状体11の幅方向)の一方側から視た状態で、示される。
【0051】
凸凹形成部27において繊維膜13の表面に凸凹形状が形成されると、表面処理部23によって、前述の実施形態等と同様にして、繊維膜13の表面に対して濡れ性を向上させる表面処理が行われる。そして、繊維膜13が表面処理された帯状体11が、巻取り部25において巻き取られる。なお、ある一例では、紡糸部22において繊維膜13が形成された後、まず、表面処理部23によって、繊維膜13の表面に対して表面処理が行われる。そして、表面処理が行われた後において、凸凹形成部27によって、繊維膜13の表面に凸凹形状16が形成される。
【0052】
本変形例でも、前述の実施形態等と同様の作用及び効果を奏する。また、本変形例では、幅方向について帯状体11の両側の端部のそれぞれでは、繊維膜13の表面に凸凹形状16が形成される。このため、幅方向について帯状体11の両側の端部のそれぞれでは、凸凹形状16の凹部分によって繊維膜13の表面に空隙が形成され、繊維膜13の開口率がさらに高くなる。このため、導電性高分子を溶解した溶液にコンデンサ素子3を浸している状態において、幅方向について帯状体11の端部へ侵入した導電性高分子が、幅方向について帯状体11の中央部へさらに到達し易くなる。これにより、前述のようにして形成された電解コンデンサ1では、繊維膜13における導電性高分子の分布の均一性が、さらに向上する。
【0053】
これらの少なくとも一つの実施形態又は実施例によれば、電極となる基材に向かって原料液を吐出することにより、基材の表面にセパレータとなる繊維膜が、形成される。そして、繊維膜の形成において、幅方向について基材の端部で、幅方向について基材の中央部に比べて、繊維を太く形成する。これにより、電極の一方と一体にセパレータとなる繊維膜が形成され、繊維膜における導電性高分子の均一性を向上させる電解コンデンサの製造方法、電解コンデンサ、及び、電解コンデンサの製造装置を提供することができる。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…電解コンデンサ、2…ケース、3…コンデンサ素子、5…陽極、6…陰極、7…セパレータ、11…帯状体、12…基材、13…繊維膜、15…繊維、20…製造装置、21…送出し部、22…紡糸部、23…表面処理部、25…巻取り部、27…凸凹形成部、33(33A,33B)…紡糸ヘッド、36A…ノズル(第1のノズル)、36B…ノズル(第2のノズル)。