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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20241202BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20241202BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G08G1/09 F
H04W88/04
G08G1/00 D
G08G1/09 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021194419
(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公開番号】P2023080877
(43)【公開日】2023-06-09
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元気
(72)【発明者】
【氏名】玉那覇 隆介
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-010482(JP,A)
【文献】特開2003-035551(JP,A)
【文献】特開2021-135965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0061812(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
H04W 88/04
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1撮影デバイスと、
第1ネットワーク環境による第1通信を行うルーター機能と、前記第1ネットワークよりも広域の第2ネットワーク環境による第2通信を行う外部通信機能と、を有し、移動通信端末との間の前記第1通信、及び前記移動通信端末以外の通信装置との間の前記第2通信を実行することにより、前記移動通信端末と前記通信装置との間の通信を中継する中継通信を実行する通信部と、
記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスにより撮影された第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する通信制御部と、
を備える通信システム。
【請求項2】
移動体において使用され、
メモリと、
前記移動体が所定速度以上で移動している間に、前記第1通信が確立された前記移動通信端末の識別情報を、前記メモリに保存する端末識別情報保存部と、を備え、
前記通信制御部は、前記メモリに前記識別情報が保存された前記移動通信端末に対して、前記第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
移動体において使用され、
前記通信制御部は、前記移動体が所定速度以上で移動しているときにのみ、前記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスでの今後の撮影時点を示す撮影時点通知情報と、前記移動通信端末に備えられた第2撮影デバイスによる撮影を前記撮影時点にて実行させることを指示する撮影指示情報と、を送信する
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記通信制御部は、前記移動通信端末に対して、前記第1通信により前記移動通信端末に送信される前記第1撮影画像のデータと、前記撮影指示情報に基づいて前記第2撮影デバイスにより撮影される第2撮影画像のデータと、を関連付けた統合画像データの生成を指示する統合画像データ生成指示情報を送信する
請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記通信制御部は、前記統合画像データを前記第1通信により前記移動通信端末から受信して、前記統合画像データを前記第2通信により前記通信装置に送信する
請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記通信部は、複数の前記移動通信端末との間の前記第1通信により、複数の前記移動通信端末について前記中継通信を実行し、
前記通信制御部は、前記第1通信が確立されている複数の前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスにより撮影された前記第1撮影画像のデータを前記第1通信により送信する
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
カメラ又はドライブレコーダーにより構成される
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数台の移動通信端末をグループ化して、各移動通信端末に備えられたカメラによる撮影画像を、移動通信端末間の無線通信によって送受信できるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-87615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術による場合には、各移動通信端末で取得可能な撮影画像が、いずれかの移動通信端末で撮影された移動通信端末の周囲の画像に限定される。そのため、各移動通信端末において、各移動通信端末の周辺の広範囲の撮影画像を取得することが困難であるという不都合がある。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、移動通信端末により得られる移動通信端末の周囲の撮影画像の範囲を拡大することができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための態様として、第1撮影デバイスと、第1ネットワーク環境による第1通信を行うルーター機能と、前記第1ネットワークよりも広域の第2ネットワーク環境による第2通信を行う外部通信機能と、を有し、移動通信端末との間の前記第1通信、及び前記移動通信端末以外の通信装置との間の前記第2通信を実行することにより、前記移動通信端末と前記通信装置との間の通信を中継する中継通信を実行する通信部と、前記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスにより撮影された第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する通信制御部と、を備える通信システムが挙げられる。
【0006】
上記通信システムにおいて、移動体において使用され、メモリと、前記移動体が所定速度以上で移動している間に、前記第1通信が確立された前記移動通信端末の識別情報を、前記メモリに保存する端末識別情報保存部と、を備え、前記通信制御部は、前記メモリに前記識別情報が保存された前記移動通信端末に対して、前記第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する構成としてもよい。
【0007】
上記通信システムにおいて、移動体において使用され、前記通信制御部は、前記移動体が所定速度以上で移動しているときにのみ、前記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する構成としてもよい。
【0008】
上記通信システムにおいて、前記通信制御部は、前記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスでの今後の撮影時点を示す撮影時点通知情報と、前記移動通信端末に備えられた第2撮影デバイスによる撮影を前記撮影時点にて実行させることを指示する撮影指示情報と、を送信する構成としてもよい。
【0009】
前記通信システムにおいて、前記通信制御部は、前記移動通信端末に対して、前記第1通信により前記移動通信端末に送信される前記第1撮影画像のデータと、前記撮影指示情報に基づいて前記第2撮影デバイスにより撮影される第2撮影画像のデータと、を関連付けた統合画像データの生成を指示する統合画像データ生成指示情報を送信する構成としてもよい。
【0010】
上記通信システムにおいて、前記通信制御部は、前記統合画像データを前記第1通信により前記移動通信端末から受信して、前記統合画像データを前記第2通信により前記通信装置に送信する構成としてもよい。
【0011】
上記通信システムにおいて、前記通信部は、複数の前記移動通信端末との間の前記第1通信により、複数の前記移動通信端末について前記中継通信を実行し、前記通信制御部は、前記第1通信が確立されている複数の前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスにより撮影された前記第1撮影画像のデータを前記第1通信により送信する構成としてもよい。
【0012】
上記通信システムは、カメラ又はドライブレコーダーにより構成されてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記通信システムによれば、移動通信端末により得られる移動通信端末の周囲の撮影画像の範囲を拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、ドライブレコーダーの使用態様の説明図である。
図2図2は、ドライブレコーダーの構成図である。
図3図3は、移動通信端末の端末識別情報を保存する処理のフローチャートである。
図4図4は、移動通信端末に対して撮影画像を送信する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[1.ドライブレコーダーの使用態様]
図1を参照して、本開示の通信システムの構成の一例であるドライブレコーダー1の使用態様について説明する。ドライブレコーダー1は、車両100に装着して使用され、カメラにより車両100の周辺や車両100の車室内を撮影する機能を有している。車両100は本開示の移動体に相当し、ドライブレコーダー1は本開示の第1撮影デバイスに相当する。
【0016】
ドライブレコーダー1は、セルラー(Cellular)通信と、Wi-Fi(登録商標)通信を行う機能を有している。ドライブレコーダー1は、各セルの基地局300との間でセルラー通信を行うことにより、或いは道路近傍のWi-Fiスポットに設置されたルーター310との間でWi-Fi通信を行うことにより、広域ネットワーク500を介して外部通信装置との間で通信行う。図1では、外部通信装置として、画像管理サーバー510と情報提供サーバー520を例示している。
【0017】
さらに、ドライブレコーダー1は、車両100に乗車している利用者U1,U2により使用される移動通信端末51,52との間でWi-Fi通信を確立して、車内Wi-Fiのネットワーク環境を実現するWi-Fiルーターの機能を有している。移動通信端末51,52は、Wi-Fi通信機能を有する、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、携帯ゲーム機等である。移動通信端末51,52にはカメラ51a,52aがそれぞれ備えられている。
【0018】
ドライブレコーダー1は、Wi-Fiルーターとして機能することにより、車内Wi-Fiのネットワーク及び広域ネットワーク500を介して、移動通信端末51,52と、画像管理サーバー510、情報提供サーバー520等の外部通信装置との間の通信を可能とする。利用者U1,U2は、移動通信端末51,52がセルラー通信機能を有していない場合であっても、ドライブレコーダー1により提供される車内Wi-Fiの環境を利用して、例えば、情報提供サーバー520との間で通信を行って情報を取得することができる。
【0019】
また、ドライブレコーダー1の車内Wi-Fiのネットワーク環境により、車両100の付近の車外の移動通信端末53,54,55との間で通信することも可能である。図1では、歩道に佇む利用者U3が使用している移動通信端末53、及び対向車両110に乗車している利用者U4,U5が使用している移動通信端末54,55と、ドライブレコーダー1との間で、車内Wi-Fiによる無線通信が確立された状況を例示している。移動通信端末53~55には、カメラ53a~55aがそれぞれ備えられている。
【0020】
ドライブレコーダー1は、カメラによる撮影画像を、広域ネットワーク500を介して画像管理サーバー510に送信する。画像管理サーバー510は、ドライブレコーダー1から受信した撮影画像を用いて、事故の解析、定点観測、道路設備の点検等の処理を行う。
【0021】
ここで、ドライブレコーダー1と移動通信端末51~55との間の無線通信は、本開示の第1通信に相当し、ドライブレコーダー1と画像管理サーバー510、情報提供サーバー520等の外部通信装置との間の無線通信は、本開示の第2通信に相当する。第1通信と第2通信により、移動通信端末51~55と外部通信装置との間の通信を中継する中継通信が実行される。
【0022】
[2.ドライブレコーダーの構成]
図2を参照して、ドライブレコーダー1の構成について説明する。ドライブレコーダー1は、プロセッサ10、メモリ20、NAD(Network Access Device)30、アンテナ31、フロントカメラ32、リアカメラ33、車内カメラ34、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ35、加速度センサ36、スイッチ37、及びディスプレイ38を備えている。フロントカメラ32、リアカメラ33、及び車内カメラ34は、本開示の第1撮影デバイスに相当する。
【0023】
NAD30は、セルラー方式の通信モジュールとWi-Fi方式の通信モジュールを統合したチップ(chip)である。アンテナ31は、セルラー通信とWi-Fi通信に対応した兼用アンテナである。NAD30とアンテナ31により、本開示の通信部が構成される。
【0024】
フロントカメラ32は、車両100の前方周辺を撮影して、撮影画像をプロセッサ10に出力する。リアカメラ33は、車両100の後方周辺を撮影して、撮影画像をプロセッサ10に出力する。車内カメラ34は、車両100の車室内を撮影して、撮影画像をプロセッサに出力する。なお、フロントカメラ32、リアカメラ33、及び車内カメラ34の全てではなく、例えば、フロントカメラ32のみを備える構成であってもよい。
【0025】
GNSSセンサ35は、測位衛星からの電波を受信してドライブレコーダー1の現在位置(緯度、経度)を検出し、位置検出信号をプロセッサ10に出力する。加速度センサ36は、ドライブレコーダー1に生じる加速度を検出し、加速度検出信号をプロセッサ10に出力する。加速度センサ36は、例えば、直交3軸方向の加速度を検出する。スイッチ37は、利用者U1,U2による操作に応じた操作信号をプロセッサ10に出力する。ディスプレイ38は、プロセッサ10からの制御入力に応じて、ドライブレコーダー1の動作状況等を表示する。
【0026】
プロセッサ10は、メモリ20に保存されたドライブレコーダー1の制御用プログラム21を読み込んで実行することにより、撮影制御部11、通信制御部12、端末識別情報保存部13、計時部15、及び速度認識部16として機能する。
【0027】
撮影制御部11は、所定の撮影タイミングで、フロントカメラ32、リアカメラ33、及び車内カメラ34の少なくともいずれかによる撮影を行って、撮影画像をメモリ20に保存する。撮影タイミングとしては、例えば、以下(1)~(4)のタイミングが設定されている。
(1)車両100が事故に遭遇した時。
撮影制御部11は、車両100が事故に遭遇したことを、加速度センサ36による所定閾値以上のレベルの加速度の検出によって認識する。なお、車両100に装着されたエアバッグ等に備えられている衝撃センサによる衝撃検出信号に基づいて、車両100が事故に遭遇したことを認識するようにしてもよい。
【0028】
(2)車両100が定点を走行する時。
撮影制御部11は、GNSSセンサ35により検出されるドライブレコーダー1の現在位置から、車両100が予め設定された定点を走行していることを認識する。定点としては、例えば、交通渋滞が発生し易い地点、メンテナンスの対象である道路設備(道路標識、電柱等)が所在する地点、観光スポット等が設定される。
【0029】
(3)車両100が撮影要請地点を走行する時。
撮影制御部11は、画像管理サーバー510から送信される撮影要請地点の情報を受信することによって撮影要請地点を認識し、GNSSセンサ35により検出されるドライブレコーダー1の現在位置から、車両100が撮影要請地点を走行していることを認識する。撮影要請地点としては、例えば、他車両による事故の発生現場、火災発生現場、迷子の発生現場等が設定される。
【0030】
(4)移動通信端末から撮影依頼情報を受信した時。
例えば、図1に示したように、車両100に乗車している利用者U1,U2は、車両100が走行している周辺の景色や、車両100の車室内を撮影したいときに、移動通信端末51,52を操作して、車内Wi-Fi通信により、ドライブレコーダー1に撮影依頼情報を送信する。撮影依頼情報を受信したドライブレコーダー1において、撮影制御部11が、フロントカメラ32、リアカメラ33、或いは車内カメラ34により撮影を行い、通信制御部12は、撮影画像(本開示の第1撮影画像に相当する)のデータを移動通信端末51,52に送信する。また、対向車両110に乗車している利用者U4,U5は、移動通信端末54,55を操作して、車内Wi-Fi通信より撮影依頼情報をドライブレコーダー1に送信することにより、撮影制御部11に、走行中の車両110の撮影等を実行させることができる。
【0031】
通信制御部12は、撮影制御部11により撮影されてメモリ20に保存された撮影画像を、NAD30により、広域ネットワーク500を介して画像管理サーバー510に送信する撮影画像送信処理を実行する。また、通信制御部12は、NAD30により、車内Wi-Fiのネットワークと広域ネットワーク500を中継して、移動通信端末51,52と情報提供サーバー520等の外部通信装置との通信を実行する車内Wi-Fi通信処理を実行する。
【0032】
通信制御部12は、車内Wi-Fiの情報データと撮影画像のデータとを併せたデータをパケット化し、パケット通信により広域ネットワーク500を介して外部通信装置との間の通信を行う。この処理により、パケットにより送信される撮像画像等の情報データに付加される制御用データのオーバーヘッド(overhead)分が減縮(shrink)されて通信量が減少するため、利用者U1,U2が負担する通信コストを低減することができる。
【0033】
端末識別情報保存部13は、車両100の走行中に、NAD30との間で車内Wi-Fi通信が確立された移動通信端末の端末識別情報を取得して、メモリ20の端末識別情報スロット22に保存する。端末識別情報は、各移動通信端末に割り当てられた固有の識別情報である。通信制御部12は、車内Wi-Fi通信が確立された移動通信端末が、登録済みの移動通信端末であることを、端末識別情報スロット22に保存された端末識別情報による照合によって認識する。
【0034】
計時部15は、現在の日時を計時する処理を行う。撮影制御部11は、フロントカメラ32、リアカメラ33、及び車内カメラ34による撮影画像に、計時部15により計時される撮影時点の日時の情報を付加して、撮影画像をメモリ20に保存する。速度認識部16は、車両100に備えられた車速センサによる速度検出信号Vcarを受信することによって、車両100の走行速度(移動速度)を認識する。ドライブレコーダー1は、車両100に備えられたECU(Electronic Control Unit)との間で、有線或いは無線通信を行うことにより、速度検出信号Vcarを受信する。速度認識部16は、撮影画像に対して所定の画像処理を行うことによって車両100の走行速度(移動速度)を認識してもよい。
【0035】
[3.撮影画像の提供処理]
図3図4に示したフローチャートに従って、ドライブレコーダー1により実行される撮影画像の提供処理について説明する。ここでは、図1に示したように、走行中の車両100に乗車した利用者U1,U2により使用される移動通信端末51,52に対して、ドライブレコーダー1のフロントカメラ32、リアカメラ33、及び車内カメラ34のうちのいずれかにより撮影された撮影画像のデータを送信する場合の処理について説明する。ドライブレコーダー1は、図3のフローチャートによる処理を繰り返し実行する。
【0036】
図3は、車両100に持ち込まれた移動通信端末の端末識別情報を取得して、メモリ20の端末識別情報スロット22に保存する処理のフローチャートである。図3のステップS1で、速度認識部16は、車両100の走行速度を認識する。続くステップS2~S3、ステップS10は、端末識別情報保存部13による処理である。
【0037】
ステップS2で、端末識別情報保存部13は、車両100の走行速度が所定速度(例えば、10km/h程度に設定される)以上であるか否かを判断する。そして、端末識別情報保存部13は、走行速度が所定速度以上であるときはステップS3に処理を進め、走行速度が所定速度未満であるときにはステップS2に処理を進める。
【0038】
ステップS3で、端末識別情報保存部13は、移動通信端末とNAD30との間で、車内Wi-Fi通信が確立されたか否かを判断する。そして、端末識別情報保存部13は、車内Wi-Fi通信が確立されたときはステップS10に処理を進め、車内Wi-Fi通信が確立されなかったときにはステップS4に処理を進める。ステップS10で、端末識別情報保存部13は、移動通信端末から送信される端末識別情報を取得して、メモリ20の端末識別情報スロット22に保存し、ステップS4に処理を進める。
【0039】
図1の例では、走行中の車両100において、移動通信端末51とドライブレコーダー1のNAD30との車内Wi-Fi通信が確立されたときに、端末識別情報保存部13は、移動通信端末51の端末識別情報をメモリ20の端末識別情報スロット22に保存する。同様に、移動通信端末52とドライブレコーダー1との車内Wi-Fi通信が確立されたときに、移動通信端末52の端末識別情報をメモリ20の端末識別情報スロット22に保存する。
【0040】
次に、図4は、メモリ20の端末識別情報スロット22に端末識別情報が保存された通信端末に対して、ドライブレコーダー1により撮影された画像のデータを提供する処理のフローチャートである。図4のステップS20で、通信制御部12は、移動通信端末とNAD間の車内Wi-Fi通信が確立されたか否かを判断する。
【0041】
そして、通信制御部12は、車内Wi-Fi通信が確立されたときはステップS21に処理を進め、車内Wi-Fi通信が確立されなかったときにはステップS20の判断を再度実行する。ステップS21で、通信制御部12は、車内Wi-Fi通信が確立された移動通信端末から送信される端末識別情報を取得する。
【0042】
続くステップS22で、通信制御部12は、ステップS21で取得した端末識別情報が、端末識別情報スロット22に保存された端末識別情報と一致するか否かを判断する。そして、通信制御部12は、端末識別情報が一致したときはステップS30に処理を進め、端末識別情報が一致しなかったときにはステップS23に処理を進める。
【0043】
ステップS30で、通信制御部12は、撮影制御部11によりメモリ20に保存された撮影画像のデータを移動通信端末に送信して、ステップS23に処理を進める。図1の例では、車両100の車室内の移動通信端末51,52について、NAD30との車内Wi-Fi通信が確立されたときに、ドライブレコーダー1から移動通信端末51,52に対して撮影画像のデータが送信される。
【0044】
また、利用者U1が車両100から降車して、移動通信端末51とNAD30との車内Wi-Fi通信が遮断された後、利用者U1が車両100に戻って、移動通信端末51とNAD30との車内Wi-Fi通信が確立されたタイミングで、ドライブレコーダー1から移動通信端末51に対して、撮影画像のデータが送信される。これにより、利用者U1は、ドライブレコーダー1により撮影された、車両100に接近する自身の画像等を取得することができる。
【0045】
[4.他の実施形態]
上記実施形態では、ドライブレコーダー1が装着される移動体として四輪の車両100を例示したが、ドライブレコーダー1が装着される移動体は、二輪車両、飛行体、船舶等であってもよい。
【0046】
上記実施形態では、広域ネットワーク500へのアクセスをセルラー方式又はWi-Fi通信により行ったが、他の通信方式により行ってもよい。また、車両100の利用者U1,U2により使用される移動通信端末51,52とドライブレコーダー1との通信を車内Wi-Fi(本開示の第2通信ネットワークに相当する)により行ったが、Bluetooth(登録商標)等の他の通信仕様により行ってもよい。
【0047】
上記実施形態では、本開示の通信システムをドライブレコーダー1により構成した例を示したが、本開示の通信システムを、カメラを備えた通信端末(スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、通信機能を有するカメラ等)等によって構成してもよい。
【0048】
上記実施形態では、図3,4に示したフローチャートによる処理によって、車両100に乗車した利用者U1,U2により使用される移動通信端末51,52の端末識別情報を保存して、移動通信端末51,52に対して、ドライブレコーダー1による撮影画像のデータを送信した。他の実施形態として、図1に示した歩道の利用者U3や、他車両110に乗車している利用者U4,U5等の車両100の利用者U1,U2以外の利用者により使用される移動通信端末に対して、ドライブレコーダー1による撮影画像を送信してもよい。この場合は、ドライブレコーダー1の車内Wi-Fi通信を認識した移動通信端末から、ドライブレコーダー1に対して接続要求をして車内Wi-Fi通信を確立し、移動通信端末からドライブレコーダー1に対して撮影の依頼と撮影画像のデータの送信、或いは撮影済みの画像のデータの送信を依頼してもよい。
【0049】
また、車両100が所定速度以上で走行しているときに、通信制御部12が、NAD30との間で車内Wi-Fi通信が確立されている移動通信端末に対して、撮影画像のデータを送信するようにしてもよい。あるいは車両100が所定速度以上で走行しているときにのみ、通信制御部12が、NAD30との間で車内Wi-Fi通信が確立されている移動通信端末に対して、撮影画像のデータを送信するようにしてもよい。これにより、図1に示したように、車両100に乗車している利用者U1,U2により使用されている移動通信端末51,52に限定して、ドライブレコーダー1による撮影画像を送信することができる。
【0050】
上記実施形態において、通信制御部12が、中継通信のための第1通信が確立されている移動通信端末に対して、カメラ32~34での今後の撮影時点を示す撮影時点通知情報と、移動通信端末に備えられたカメラ(本開示の第2撮影デバイスに相当する)による撮影を前記撮影時点にて実行させることを指示する撮影指示情報と、を送信するようにしてもよい。また、通信制御部12は、撮影時点通知情報が撮影指示情報であるようにメッセージを生成してもよい。これにより、例えば、車両100が景勝地を走行中の状況での撮影時点を通知する撮影時点通知情報と撮影指示情報とを、車両100内の移動通信端末51,52に送信することにより、移動通信端末51,52において、景勝地を走行するタイミングに同期させて、内蔵カメラ51a,52a(本開示の第2撮影デバイスに相当する)による撮影を行わせることができる。そして、景勝地を走行した際に、移動通信端末51,52のカメラによる撮影画像に加えて、フロントカメラ32、リアカメラ33、及び車内カメラ34による広範囲の撮影画像を取得することができる。
【0051】
上記実施形態において、通信制御部12が、移動通信端末に対して、第1通信により移動通信端末に送信される第1撮影画像のデータと、前記撮影指示情報に基づいて移動通信端末に備えられたカメラ(第2撮影デバイス)により撮影される第2撮影画像のデータと、を関連付けた統合画像データの生成を指示する統合画像データ生成指示情報を送信するようにしてもよい。また、通信制御部12は、撮影時点通知情報や撮影指示情報が統合画像データ生成指示情報であるようにメッセージを生成してもよい。
【0052】
さらに、通信制御部12が、前記統合画像データを第1通信により移動通信端末から受信して、前記統合画像データを第2通信により画像管理サーバー510等の移動通信端末以外の通信装置に送信するようにしてもよい。
【0053】
上記実施形態では、ドライブレコーダー1と移動通信端末51~55とが、無線による通信を行う構成を示したが、図1に示したように、移動通信端末51,52が車両100の車室内で使用される場合は、移動通信端末51,52とドライブレコーダー1を通信ケーブルで接続して、有線による通信を行うようにしてもよい。
【0054】
上記実施形態では、図1に示したように、走行中の車両100に乗車している利用者U1,U2により使用されている移動通信端末51,52について、端末識別情報保存部により、端末識別情報を端末識別情報スロット22に保存した。他の実施形態として、移動通信端末に実行される撮影依頼アプリ(アプリケーション)を実行することにより、移動通信端末から画像管理サーバー510等を経由して、移動通信端末の端末識別情報をドライブレコーダー1に送信し、端末識別情報を端末識別情報スロット22に保存するようにしてもよい。この場合は、車両100の利用者U1,U2以外の利用者についても、車両100に近づいて、所持している移動通信端末とドライブレコーダー1との車内Wi-Fi通信が確立されたときに、通信制御部12による処理によって、ドライブレコーダー1による撮影画像のデータを、移動通信端末により受信して取得することができる。
【0055】
また、端末情報識別スロット22に端末識別情報が保存されていない移動通信端末についても、NAD30との車内Wi-Fi通信が確立されたときに、通信制御部12により、カメラ32~34による撮影画像を送信するようにしてよい。
【0056】
なお、図2は、本願発明の理解を容易にするために、ドライブレコーダー1の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、ドライブレコーダー1の構成を、他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、図3図4に示したフローチャートによる各構成要素の処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0057】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
(構成1)第1撮影デバイスと、移動通信端末との間の第1通信、及び前記移動通信端末以外の通信装置との間の第2通信を実行することにより、前記移動通信端末と前記通信装置との間の通信を中継する中継通信を実行する通信部と、前記中継通信のための前記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスにより撮影された第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する通信制御部と、を備える通信システム。
構成1の通信システムによれば、通信システムによる中継通信を利用する移動通信端末に対して、通信システムの第1撮影デバイスによる撮影された第1撮影画像のデータを送信することにより、移動通信端末により得られる移動通信端末の周囲の撮影画像の範囲を拡大することができる。
【0058】
(構成2)移動体において使用され、メモリと、前記移動体が所定速度以上で移動している間に、前記中継通信のための前記第1通信が確立された前記移動通信端末の識別情報を、前記メモリに保存する端末識別情報保存部と、を備え、前記通信制御部は、前記メモリに前記識別情報が保存された前記移動通信端末に対して、前記第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する構成1に記載の通信システム。
構成2の通信システムにおいて、移動体が所定速度以上で移動している間に、通信システムによる中継通信を利用している移動通信端末は、移動体に搭乗している利用者によって使用されている移動通信端末であると判断することができる。そこで、この場合は、移動通信端末の識別情報をメモリに保存しておくことにより、利用者が移動体から離れて第1通信が遮断されている間に送信システムの第1撮影デバイスにより撮影された第1撮影画像のデータを、利用者が移動体に戻って第1無線通信が再開されたときに、移動通信端末に送信することができる。
【0059】
(構成3)移動体において使用され、前記通信制御部は、前記移動体が所定速度以上で移動しているときにのみ、前記中継通信のための前記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影画像のデータを、前記第1通信により送信する構成1に記載の通信システム。
構成3の通信システムによれば、移動体に搭乗している利用者によって使用されている移動通信端末に限定して、通信システムの第1撮影デバイスにより撮影された第1撮影画像のデータを送信することができる。
【0060】
(構成4)前記通信制御部は、前記中継通信のための前記第1通信が確立されている前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスでの今後の撮影時点を示す撮影時点通知情報と、前記移動通信端末に備えられた第2撮影デバイスによる撮影を前記撮影時点にて実行させることを指示する撮影指示情報と、を送信する構成1から構成3のうちいずれか一つの構成に記載の通信システム。
構成4の通信システムによれば、通信システムの第1撮影デバイスによる今後の撮影時点を移動通信端末に通知することにより、移動通信端末側で、通信システムのカメラの撮影タイミングと同期させて移動通信端末に備えられた第2撮影デバイスによる撮影を行うことを可能とすることができる。
【0061】
(構成5)前記通信制御部は、前記移動通信端末に対して、前記第1通信により前記移動通信端末に送信される前記第1撮影画像のデータと、前記撮影指示情報に基づいて前記第2撮影デバイスにより撮影される第2撮影画像のデータと、を関連付けた統合画像データの生成を指示する統合画像データ生成指示情報を送信する構成4に記載の通信システム。
構成5の通信システムによれば、移動通信端末において、統合画像データを生成して活用することを促すことができる。
【0062】
(構成6)前記通信制御部は、前記統合画像データを前記第1通信により前記移動通信端末から受信して、前記統合画像データを前記第2通信により前記通信装置に送信する構成5に記載の通信システム。
構成6の通信システムによれば、通信装置において、統合画像データを活用した処理を行うことを可能とすることができる。
【0063】
(構成7)前記通信部は、複数の前記移動通信端末との間の前記第1通信により、複数の前記移動通信端末について前記中継通信を実行し、前記通信制御部は、前記中継通信のための前記第1通信が確立されている複数の前記移動通信端末に対して、前記第1撮影デバイスにより撮影された前記第1撮影画像のデータを前記第1通信により送信する構成1から構成6のうちいずれか一つの構成に記載の通信システム。
構成7の通信システムによれば、第1撮影画像のデータを複数の移動通信端末に提供することができる。
【0064】
(構成8)カメラ又はドライブレコーダーにより構成される構成1から構成7のうちいずれか一つの構成に記載の通信システム。
構成8の通信システムによれば、上記構成1から構成7の通信システムを、カメラ又はドライブレコーダーの機能として実現することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…ドライブレコーダー、10…プロセッサ、11…撮影制御部、12…通信制御部、13…端末識別情報保存部、15…計時部、16…速度認識部、20…メモリ、21…制御用プログラム、22…端末識別情報スロット、30…NAD、31…アンテナ、32…フロントカメラ、33…リアカメラ、34…車内カメラ、35…GNSS、36…加速度センサ、37…スイッチ、38…ディスプレイ、51~55…移動通信端末、51a~55a…カメラ、100…車両(移動体)、110…他車両、300…セルラー通信の基地局、310…Wi-Fiスポットのルーター、500…広域ネットワーク、510…画像管理サーバー、520…情報提供サーバー、U1~U5…利用者。
図1
図2
図3
図4