(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】可溶性BCMAに対する抗体
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20241202BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241202BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20241202BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20241202BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
C12M1/34 F
C12N15/13
G01N33/53 D
C07K16/28 ZNA
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2021516763
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 US2019053433
(87)【国際公開番号】W WO2020069303
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-26
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キエルツジェフスカ,アグニェシュカ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ブライアン
【審査官】林 康子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050627(JP,A)
【文献】特開2018-087190(JP,A)
【文献】Haematologica,2017年,Volume 102, No.4,pp.785-795
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/28
C12N 15/13
C12M 1/34
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体と、
b)sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体と
を含む検出システムであって、
前記第1のモノクローナル抗体は、
i)配列番号1で示されるVH-CDR1、配列番号2で示されるVH-CDR2及び配列番号3で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号4で示されるVL-CDR1、配列番号5で示されるVL-CDR2及び配列番号6で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含む;又は
ii)配列番号11で示されるVH-CDR1、配列番号12で示されるVH-CDR2及び配列番号13で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号14で示されるVL-CDR1、配列番号15で示されるVL-CDR2及び配列番号16で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含む;
前記第2のモノクローナル抗体は、
配列番号21で示されるVH-CDR1、配列番号22で示されるVH-CDR2及び配列番号23で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号24で示されるVL-CDR1、配列番号25で示されるVL-CDR2及び配列番号26で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含み、
sBCMAへの前記第1のモノクローナル抗体の前記結合は、sBCMAに結合する前記第2のモノクローナル抗体の存在下でも生じ、及び/又はsBCMAへの前記第2のモノクローナル抗体の前記結合は、sBCMAに結合する前記第1のモノクローナル抗体の存在下でも生じる、検出システム。
【請求項2】
sBCMAは、配列番号34で示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
sBCMAへの前記第1のモノクローナル抗体の前記結合及びsBCMAへの前記第2のモノクローナル抗体の前記結合は、sBCMAに結合する第3の抗体又は抗体コンストラクトの存在下でも生じる、請求項1又は2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体は、ウサギVH領域及び/又はウサギVL領域を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項5】
前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体は、約≦10
-7M、≦10
-8M、≦10
-9M又は≦10
-10Mの、sBCMAに対する親和性(KD)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項6】
前記第1のモノクローナル抗体は、
a)配列番号7若しくは17で示されるVH領域を含むか;
b)配列番号8若しくは18で示されるVL領域を含むか;
c)配列番号7で示されるVH領域と、配列番号8で示されるVL領域とを含むか;
d)配列番号17で示されるVH領域と、配列番号18で示されるVL領域とを含むか;又は
e)c)若しくはd)の前記抗体とsBCMAへの結合に関して競合し;及び/又は
前記第2のモノクローナル抗体は、
f)配列番号27で示されるVH領域を含むか;
g)配列番号28で示されるVL領域を含むか;
h)配列番号27で示されるVH領域と、配列番号28で示されるVL領域とを含むか;又は
i)h)の前記抗体とsBCMAへの結合に関して競合する、
請求項1~5に記載の検出システム。
【請求項7】
前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体は、IgG抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体又はIgA抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項8】
前記第1のモノクローナル抗体及び/又は前記第2のモノクローナル抗体は、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体又はIgG4抗体である、請求項7に記載の検出システム。
【請求項9】
前記第1のモノクローナル抗体は、捕捉抗体として使用され、及び前記第2のモノクローナル抗体は、検出抗体として使用されるか、又は前記第1のモノクローナル抗体は、検出抗体として使用され、及び前記第2のモノクローナル抗体は、捕捉抗体として使用される、請求項1~8のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項10】
- サンプル中のsBCMAを検出すること;
- サンプル中のsBCMAを定量すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を診断すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患と診断された患者を階層化すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の進行をモニタリングすること;又は
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置への反応をモニタリングすること
のための
、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項11】
サンプル中のsBCMAを検出及び/又は定量する方法であって、
(a)サンプル中のsBCMAの含有量を決定するために
、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出システムを使用する工程と;
(b)工程(a)で決定された前記sBCMAの含有量を、
(i)前記sBCMA含有量に関する予め定義された値、
(ii)コントロールサンプル中で決定されたsBCMAの含有量、又は
(iii)以前の時点で同一の供給源若しくは対象から得られたサンプル中で決定されたsBCMAの含有量
と比較する工程と
を含む方法。
【請求項12】
sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患の診断の補助をするためのデータを提供する方法であって、
(a)サンプル中のsBCMAの含有量を決定するために
、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出システムを使用する工程と;
(b)工程(a)で決定された前記sBCMAの含有量を、
(i)前記疾患の非存在を示す、前記sBCMA含有量に関する予め定義されたカットオフ値、又は
(ii)前記疾患の非存在を表すコントロールサンプル中で決定されたsBCMAの含有量
と比較する工程と
を含み、(i)の前記予め定義されたカットオフ値又は(ii)の前記コントロールサンプル中で決定された前記sBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより高い含有量は、sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患の存在を示す、方法。
【請求項13】
sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の進行をモニタリングするか、又はsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置に対する反応をモニタリングする方法であって、
(a)前記疾患と診断された対象から得られた生体サンプル中の第1の時点でのsBCMAの含有量を決定するために
、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出システムを使用する工程と;
(b)前記対象から得られた生体サンプル中の第2の時点での又は処置後のsBCMAの含有量を決定するために
、請求項1~9のいずれか一項に記載の検出システムを使用する工程と;
(c)工程(a)で決定された前記sBCMAの含有量を、工程(b)で決定された前記sBCMAの含有量と比較する工程と
を含み、工程(b)で決定された前記sBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより高い含有量は、前記疾患が進行していることを示し、及び/又は工程(b)で決定された前記sBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより低い含有量は、前記疾患が寛解に入っていること若しくは前記疾患が前記処置に反応していることを示す、方法。
【請求項14】
前記サンプルは、生体サンプルである、請求項10に記載
の検出システム。
【請求項15】
前記生体サンプルは、ヒト生体サンプルである、請求項14に記載
の検出システム。
【請求項16】
前記ヒト生体サンプルは、血清サンプル、血漿サンプル、血液サンプル、骨髄サンプル、組織サンプル又は骨髄単核細胞若しくは末梢血単核細胞の細胞培養物から得られた上清である、請求項15に記載
の検出システム。
【請求項17】
前記サンプルは、ヒト対象から得られる、請求項10又は14~16のいずれか一項に記載
の検出システム。
【請求項18】
前記サンプルは、sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を有すると疑われているか若しくは有するヒト対象、又は、sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置を受けている対象から得られる、請求項17に記載
の検出システム。
【請求項19】
前記疾患は、多発性骨髄腫、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫、重鎖多発性骨髄腫、軽鎖多発性骨髄腫、髄外骨髄腫(髄外形質細胞腫、髄外多発性骨髄腫)、形質細胞腫、形質細胞性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)、くすぶり型骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫)、慢性リンパ性白血病(CLL)、原発性CNSリンパ腫(PCNSL)並びにB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)からなる群から選択される、請求項10又は14~18のいずれか一項に記載
の検出システム。
【請求項20】
前記サンプルは、生体サンプルである、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記生体サンプルは、ヒト生体サンプルである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ヒト生体サンプルは、血清サンプルである請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプルが、ヒト対象から得られる、請求項11~13又は20~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記サンプルは、sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を有すると疑われているか若しくは有するヒト対象、又は、sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置を受けている対象から得られる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患は、多発性骨髄腫、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫、重鎖多発性骨髄腫、軽鎖多発性骨髄腫、髄外骨髄腫(髄外形質細胞腫、髄外多発性骨髄腫)、形質細胞腫、形質細胞性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)、くすぶり型骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫)、慢性リンパ性白血病(CLL)、原発性CNSリンパ腫(PCNSL)並びにB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)からなる群から選択される、請求項12、13又は20~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性BCMA(sBCMA)に結合する抗体に関する。更に、本発明は、そのような抗体を含む検出システムに関する。この抗体又は検出システムは、sBCMAを検出又は定量するため、sBCMAに関連する疾患を診断するため、患者を階層化し、疾患進行をモニタリングし、且つ治療反応を評価するために使用され得る。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書と同時に提出されたコンピュータ可読のヌクレオチド/アミノ酸配列リストは、その全体が参照により組み込まれ、以下のように識別される:2019年9月27日に作成された「53500A_Seqlisting.txt」という名称の34,276バイトASCII(テキスト)ファイル。
【背景技術】
【0003】
多発性骨髄腫(MM)は、骨髄微小環境下での悪性形質細胞のクローン性増殖、血液又は尿中でのモノクローナルタンパク質及び関連する臓器障害を特徴とする腫瘍性形質細胞障害である。多発性骨髄腫(MM)は、全ての癌のほぼ2%を占めており、血液悪性腫瘍の20%を占めている(SEER)。多発性骨髄腫は、依然として不治の癌であるが、近年の骨髄腫の原因の理解の改善は、新規の処置の開発及び生存率の改善につながっている。処置として、腫瘍性細胞の生存及び増殖を支持するシグナル伝達経路を阻害するように設計された分子標的治療が挙げられる。そのような標的の1つは、正常な形質細胞と比べて悪性形質細胞で比較的高レベルで発現されることが多く、且つリガンドAPRIL及びBAFFの結合により増殖シグナルを誘導するB細胞成熟抗原である。
【0004】
B細胞成熟抗原(BCMA、TNFRSF17、CD269)は、TNF受容体スーパーファミリに属する膜貫通型タンパク質である。BCMAの発現は、後期の形質細胞分化中に選択的に誘導され、ナイーブ及びメモリーB細胞に存在しない。BCMAがそのリガンド(B細胞活性化因子(BAFF)及び増殖誘導リガンド(APRIL))に結合すると、骨髄形質細胞及び形質芽細胞の生存が促進される。BCMAは、正常なB細胞の恒常性を維持しないが、長寿命の形質細胞の生存に必要である。BCMAのmRNA発現は、悪性形質細胞障害で高く上昇している。対照的に、正常組織でのBCMA mRNA発現は、非常に低く、且つ正常な長寿命の形質細胞が存在するリンパ組織に限定されている。BCMAタンパク質発現は、形質細胞のみに制限され、且つ形質芽細胞及び長寿命の形質細胞に限定され、他の正常なヒト組織で検出され得ないことが報告されている。BCMAは、MM患者では、正常な形質細胞と比較して悪性形質細胞の大部分において比較的高レベルで発現される。T細胞も、骨髄細胞も、CD34+造血幹細胞もBCMAを発現しない。悪性形質細胞の大部分でのBCMAの選択的発現は、抗体ベースの治療及びキメラ抗原受容体(CAR)ベースの治療の非常に魅力的な標的となる。MM患者に関するBCMA陰性プロファイルが報告されており、これは、標的治療に患者の選択が必要な場合があることを示唆する。BCMAの検出は、タンパク発現に限定され得ない。近年の研究から、血清BCMAの変化がMMの患者の治療反応又は疾患進行のバイオマーカーとなり得ることが分かっている。
【0005】
BCMAは、細胞表面から流出され得、健常な対象だけでなく、多発性骨髄腫患者の血清サンプル中でも見出された。近年の刊行物により、可溶性BCMA(sBCMA)レベルが骨髄生検での形質細胞の割合、臨床状態と相関しており、且つMタンパク質レベルの変化で追跡され得ることが実証された。この研究では、健康なドナーは、完全に反応した患者で観察された中央値レベルと類似のsBCMA血中濃度の中央値を有した。多発性骨髄腫がくすぶっている患者は、より高い濃度を有したが、活動性の未処置多発性骨髄腫を有する患者は、最高レベルを有した。無増悪生存期間は、中央値未満のsBCMAレベルを有する患者では、レベルが中央値を超える患者と比較した場合に長かった。sBCMAレベルの変化は、MMの患者に関する処置の有効性の迅速且つ信頼性の高い指標であり得る。可溶性BCMAを疾患進行の予知又はモニタリングに使用し得、なぜなら、このバイオマーカーは、非分泌性疾患を有する低腫瘍負担の患者で検出され得、且つ腎機能に依存しないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、高い感度、再現性を有し、理想的には治療用sBCMA結合分子(例えば、抗体又は抗体コンストラクト)に干渉する可能性の存在下でも安定した結果をもたらす、生体サンプル中のsBCMAの信頼性の高い検出システムを提供することが強く求められている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A-C】実施例1に従って実行されたアッセイの仕組みを示す。
図1Aは、治療用抗BCMA abと、BCMA検出/定量用ELISAキットとの潜在的な干渉を試験するためのアッセイの仕組みを示す。
図1Bは、治療用モノクローナル抗sBCMA抗体の存在下でのBCMAへの結合に関する、XenoMouse(登録商標)抗BCMAハイブリドーマのスクリーニングでの捕捉抗体及び検出抗体の使用のための3つの異なるOctetフォーマットを示す。
図1Cは、治療用抗BCMA abによるサンドイッチに関してウサギ血清をスクリーニングするためのアッセイの仕組みを示す。
【
図2】Octetアッセイで治療用抗BCMA Ab(Ther-Ab2)によりサンドイッチするための2種のウサギモノクローナル抗sBCMA Ab(sBCMA-mAb1及びsBCMA-mAb2)のキャラクタリゼーションを示す(実施例2aを参照されたい)。
【
図3】ウサギモノクローナル抗sBCMA-mAb3をsBCMA-mAb1及び治療用抗BCMA抗体Ther-Ab2でサンドイッチし得ることを実証するOctetアッセイの結果を示す(実施例2cを参照されたい)。
【
図4】
図3で示す結果を確認するOctetアッセイの結果を示す(実施例2cを参照されたい)。
【
図5】Biacoreによるウサギモノクローナル抗sBCMAサンドイッチmAb(sBCMA-mAb1、-mAb2及び-mAb3)の親和性決定の結果を示す(実施例3を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
sBCMAを検出するための抗体対を生成するために、本発明者らは、BCMAに対して生成されている約400種のXenoMouse(登録商標)ハイブリドーマをスクリーニングし、BCMAへの結合に関するELISAアッセイで陽性を試験した。しかしながら、sBCMAに結合するモノクローナル抗体の存在下でのこれらのXenoMouse(登録商標)ハイブリドーマのスクリーニングでは、捕捉抗体及び検出抗体の使用の異なるフォーマットを試験する場合でも、いかなるサンドイッチ抗体も同定されなかった(
図1Bを参照されたい)。次に、ウサギ免疫化キャンペーンを実行し、ウサギ血清を、sBCMAに結合するモノクローナル抗体によるサンドイッチ関してスクリーニングした。この場合、抗体生成にウサギを使用する利点は、下記である:
- 異なる抗体レパートリー、異なるエピトープ空間(競合なし)
- 頑強な免疫反応
- 遺伝子変換ベースの免疫系、齧歯類と比べて高い体細胞超変異率、高い親和性につながる。
【0009】
(sBCMAに対する総数226種のウサギ抗体の中から)3種のサンドイッチ抗体の存在を実証し得た。これらの2種(sBCMA-mAb1及びsBCMA-mAb2)は、sBCMAへの結合に関して互いに競合することが示された。これらは、両方とも治療用抗BCMA抗体コンストラクトの存在下でsBCMAに結合し得た。抗体sBCMA-mAb3は、sBCMA-mAb1及び治療用抗BCMA抗体コンストラクトの両方の存在下でsBCMAに結合することが更に示された。
【0010】
従って、本発明は、一態様では、可溶性BCMA(sBCMA)に結合するモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)であって、sBCMAへのこの抗体(又は抗体コンストラクト)の結合は、sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の存在下で生じる、モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)を提供する。本発明は、可溶性BCMA(sBCMA)に結合する第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の存在下でsBCMAに結合するモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)も提供する。
【0011】
下記では、用語「モノクローナル抗体」(即ちsBCMAに結合するモノクローナル抗体)が使用される場合には常に、この用語は、「抗体コンストラクト」又は「抗体断片」も包含することを意味しており、これらは、本明細書において下記で定義される。更に、下記に記載されている本発明の「モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)」(即ちsBCMAに結合するモノクローナル抗体又は抗体コンストラクト)の定義及び仕様は、本発明の全ての「第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)」及び本発明の全ての「第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)」に同様に当てはまる。
【0012】
「抗体」(ときに免疫グロブリンとしても既知である)は、標的に免疫特異的に結合するタンパク質である。抗体は、この抗体の可変領域により、抗原と呼ばれる固有の標的を認識する。「抗体」は、任意の免疫グロブリンアイソタイプ(例えば、IgG(例えば、IgG1サブタイプ、IgG2サブタイプ、IgG3サブタイプ及びIgG4サブタイプ)、IgA(例えば、IgA1サブタイプ及びIgA2サブタイプ)、IgM並びにIgE)であり得る。用語「抗体」は、例えば、モノクローナル抗体、キメラ抗体、組換え抗体、脱免疫化抗体、親和性成熟化抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体並びに他の種(例えば、齧歯類、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター、ヤギ等)由来の抗体を含み得る。抗体は、単一の供給源のみに由来し得るか、又は「キメラ」であり得、即ち、この抗体の異なる部分(例えば、CDR、フレームワーク領域、可変領域、定常領域)は、2種の異なる抗体に由来し得る。本発明に係る「抗体」の定義は、完全長抗体を含み、ラクダ科動物抗体及びバイオテクノロジー又はプロテインエンジニアリングの方法又はプロセスにより生成された他の免疫グロブリンも含む。抗体は、ハイブリドーマでも産生され得る。
【0013】
インタクトなIgG抗体は、一般に、2つの完全長重鎖及び2つの完全長軽鎖を含む。「軽鎖」は、1つのドメインを有する可変領域(「VL」)と、1つのドメインを有する定常領域(「CL」)とを含む。軽鎖の可変領域は、このポリペプチドのアミノ末端に存在する。軽鎖には、カッパ鎖及びラムダ鎖が含まれる。「重鎖」は、1つのドメインを有する可変領域(「VH」)と、インタクトなIgG抗体の場合には下記の3つのドメイン:CH1、CH2及びCH3を有する定常領域(「CH」)とを含む。VHは、このポリペプチドのアミノ末端に存在し、これらのCHドメインは、カルボキシル末端に存在し、CH3は、このポリペプチドのカルボキシ末端に最も近い位置に存在する。
【0014】
古典的な完全長の抗体又は免疫グロブリンでは、各軽(L)鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合により重(H)鎖に連結されているが、2つのH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つ又は複数のジスルフィド結合により互いに連結されている。VHに最も近い重鎖定常(CH)ドメインは、通常、CH1と称される。定常(「C」)ドメインは、抗原結合に直接関与しないが、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び補体活性化(補体依存性細胞傷害、CDC)等の様々なエフェクター機能を呈する。抗体のFc領域は、Fc受容体と呼ばれる細胞表面受容体及び補体系の一部のタンパク質と相互作用する古典的抗体の「テール」領域である。IgG抗体アイソタイプ、IgA抗体アイソタイプ及びIgD抗体アイソタイプでは、Fc領域は、抗体の2つの重鎖の第2及び第3の定常ドメイン(CH2及びCH3)に由来する2つの同一のタンパク質断片で構成されている。IgM及びIgEのFc領域は、各ポリペプチド鎖で3つの重鎖定常ドメイン(CH2、CH3及びCH4)を含む。Fc領域は、1つ又は複数のジスルフィド及び非共有結合性相互作用により一体に保持されたいわゆる「ヒンジ」領域の一部も含む。天然に存在するIgGのFc領域は、高度に保存されたN-グリコシル化部位を担持している。Fc断片のグリコシル化は、Fc受容体媒介活性に必須である。
【0015】
本発明のモノクローナル抗体は、IgG抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体又はIgA抗体であり得ることが想定される。一実施形態によれば、このモノクローナル抗体は、IgG抗体、例えばIgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体又はIgG4抗体である。この抗体のアイソタイプ及びサブクラスは、ウサギであり得る(例えば、ウサギIgG、ウサギIgG1等)。
【0016】
本発明に関連して、用語「可変」は、抗体又は免疫グロブリンのドメインの、その配列において可変性を呈し、且つ特定の抗体の特異性及び結合親和性の決定に関与する部分(即ち「可変領域」)を指す。通常、重鎖可変領域(VH)と軽鎖可変領域(VL)とが一緒になって対をなし、単一の抗原結合部位を形成する。
【0017】
可変性は、抗体の可変領域全体にわたって均一に分布しておらず、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の各々のサブドメインに集中している。これらのサブドメインは、「超可変領域」又は「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる。可変領域の、より保存性の高い(即ち超可変性でない)部分は、「フレームワーク」(FR)領域と呼ばれ、6つのCDRが抗原結合表面を形成するための三次元空間における足場を提供する。天然に存在する抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域は、主としてβシート配置をとる4つのFR領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)をそれぞれ含む。CDRと一緒に、FR領域は、可変重鎖又は可変軽鎖内で下記の配列:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4を形成する。各鎖の超可変領域は、フレームワーク領域によりごく近接して一体に保持され、通常、他方の鎖由来の超可変領域と一緒になって抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.Bethesda,National Institute of Health.1991を参照されたい)。
【0018】
用語「CDR」及びその複数形である「CDRs」は、相補性決定領域を指し、その3つが軽鎖可変領域の結合特性を構成し(CDR-L1、CDR-L2及びCDR-L3)、3つが重鎖可変領域の結合特性を構成する(CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3)。CDRは、抗体(又は抗体コンストラクト若しくは結合ドメイン)と抗原との特異的相互作用を担う残基の大部分を含み、従って抗体分子の機能的活性に寄与し、CDRは、抗原特異性の主要な決定基である。CDRの境界及び長さの正確な定義は、様々な分類及び付番方式に依存する。従って、CDRは、本明細書で説明されている付番方式を含む、Kabat、Chothia、コンタクト又は任意の他の境界定義により言及され得る。境界が異なっていても、これらの方式の各々は、可変配列内のいわゆる「超可変領域」を構成する部分においてある程度の重複を有する。従って、これらの方式によるCDRの定義は、長さと、隣接するフレームワーク領域に関する境界領域とが相違する場合がある。例えば、Kabat(異種間の配列可変性に基づく手法)、Chothia(抗原-抗体複合体の結晶学的研究に基づく手法)及び/又はMacCallumを参照されたい(Kabat et al.,前掲;Chothia et al.,J.MoI.Biol,1987,196:901-917;及びMacCallum et al.,J.MoI.Biol,1996,262:732)。抗原結合部位の特性決定のための更に別の基準は、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用されるAbM定義である。例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains.In:Antibody Engineering Lab Manual(Ed.:Duebel,S.and Kontermann,R.,Springer-Verlag,Heidelberg)を参照されたい。2種の残基同定技術が、重複するが、同一の領域ではない領域を定義する限り、それらを組み合わせてハイブリッドCDRを定義し得る。しかしながら、いわゆるKabat方式による付番が好ましい。
【0019】
典型的には、CDRは、カノニカル構造として分類され得るループ構造を形成する。用語「カノニカル構造」は、抗原結合(CDR)ループが採用する主鎖立体構造を指す。比較構造研究から、6つの抗原結合ループの5つは、利用可能な立体構造の限られたレパートリーのみを有することが見出されている。各カノニカル構造をポリペプチド骨格のねじれ角により特徴付け得る。従って、抗体間の対応するループは、ループの大部分における高いアミノ酸配列変動性にも関わらず、非常に類似した三次元構造を有し得る(Chothia and Lesk,J.MoI.Biol.,1987,196:901、Chothia et al.,Nature,1989,342:877、Martin and Thornton,J.MoI.Biol,1996,263:800)。更に、採用されるループ構造と、その周囲のアミノ酸配列との間に関連性がある。特定のカノニカルクラスの立体構造は、ループの長さと、そのループ内の及び保存されたフレームワーク内(即ちループ外)の重要な位置に存在するアミノ酸残基とにより決定される。従って、特定のカノニカルクラスへの割り当ては、これらの重要なアミノ酸残基の存在に基づいて行われ得る。
【0020】
用語「カノニカル構造」は、例えば、Kabat(Kabat et al.,前掲)により分類されるように、抗体の線状配列に関する検討も含み得る。Kabat付番スキーム(方式)は、一貫した方法での抗体可変領域のアミノ酸残基の付番に広く採用されている標準であり、本明細書の他の部分でも言及されているように、本発明で適用される好ましいスキームである。追加の構造的考慮事項も使用して抗体のカノニカル構造を決定し得る。例えば、Kabatの付番法で十分に反映されない相違をChothiaらの付番方式により説明し得、且つ/又は他の技術(例えば、結晶学及び二次元若しくは三次元コンピュータモデリング)により明らかにし得る。従って、所与の抗体配列は、特に(例えば、様々なカノニカル構造をライブラリに含めるという要求に基づいて)適切なクラス配列の同定が可能であるカノニカルクラスに分類され得る。抗体のアミノ酸配列のKabat付番法及びChothiaら(前掲)により説明されている構造の検討並びに抗体構造のカノニカルな側面の解釈に対するそれらの意義については、文献で説明されている。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元配置は、当技術分野で公知である。抗体構造の概説については、Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,eds.Harlow et al.,1988を参照されたい。
【0021】
軽鎖のCDR3及び特に重鎖のCDR3は、軽鎖及び重鎖の可変領域内での抗原結合において最も重要な決定因子を構成する場合がある。一部の抗体、抗体コンストラクト又はドメインでは、重鎖CDR3は、抗原と抗体との間の主要な接触範囲を構成するように見える。CDR3のみが変更されるインビトロ選択スキームを使用して、抗体若しくは抗体コンストラクト/結合ドメインの結合特性を変更し得るか、又はいずれの残基が抗原の結合に寄与するかを決定し得る。従って、CDR3は、典型的には、抗体結合部位内における分子多様性の最大の供給源である。例えば、CDR-H3は、2つのアミノ酸残基のように短いか又は26超のアミノ酸であり得る。
【0022】
構築及び体細胞変異後の抗体遺伝子の配列は、極めて多様であり、これらの多様化した遺伝子は、1010種の異なる抗体分子をコードすると推定される(Immunoglobulin Genes,2nd ed.,eds.Jonio et al.,Academic Press,San Diego,CA,1995)。従って、免疫系は、免疫グロブリンのレパートリーを提供する。用語「レパートリー」は、少なくとも1種の免疫グロブリンをコードする少なくとも1つの配列に全体又は一部が由来する少なくとも1つのヌクレオチド配列を指す。この配列は、重鎖のVセグメント、Dセグメント及びJセグメント並びに軽鎖のVセグメント及びJセグメントのインビボでの再編成により生成され得る。代わりに、この配列は、再編成を生じさせる、例えばインビトロ刺激に応答して細胞から生成され得る。代わりに、この配列の一部又は全ては、DNAスプライシング、ヌクレオチド合成、変異誘発及び他の方法により得られる場合がある(例えば、米国特許第5,565,332号明細書を参照されたい)。レパートリーは、1つの配列のみを含み得るか、又は遺伝的に多様なコレクション内のものを含む複数の配列を含み得る。
【0023】
本発明の抗体(及び抗体コンストラクト)は、モノクローナルであることが想定される。本明細書で使用される場合、「モノクローナル」(mAb)と称される抗体又は抗体コンストラクトは、実質的に均一な抗体/抗体コンストラクトの集団から得られ、即ち、この集団に含まれる個々の抗体/抗体コンストラクトは、微量で存在し得る天然に存在する可能な変異及び/又は翻訳後改変(例えば、異性化、アミド化)を除いて、(特にそのアミノ酸配列に関して)同一である。モノクローナル抗体/抗体コンストラクトは、高度に特異的であり、抗原内の単一のエピトープを対象としており、これは、典型的には異なる決定基(又はエピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的である。この特異性に加えて、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ培養により合成され、従って他の免疫グロブリンによる汚染を受けない点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、抗体/抗体コンストラクトの実質的に均一な集団から得られるものとしての抗体/抗体コンストラクトの性質を示しており、任意の特定の方法による抗体の作製が必要なものと解釈されてはならない。
【0024】
モノクローナル抗体の調製には、連続細胞株培養物により作製される抗体を提供する任意の技術を使用し得る。例えば、使用されるモノクローナル抗体/抗体コンストラクトは、Koehler et al.,Nature,256:495(1975)により最初に説明されたハイブリドーマ法により作られ得るか、又は組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照されたい)により作られ得る。ヒトモノクローナル抗体を作製する更なる技術の例として、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor,Immunology Today 4(1983),72)及びEBV-ハイブリドーマ技術(Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.(1985),77-96)が挙げられる。
【0025】
次に、ハイブリドーマを、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及び表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析等の標準方法を使用してスクリーニングして、特定の抗原に免疫特異的に結合する抗体/抗体コンストラクトを作製する1種又は複数のハイブリドーマを同定し得る。例えば、組換え抗原、天然に存在する形態、キメラ抗原、抗原の任意のバリアント又は断片並びにその抗原性ペプチド等の任意の形態の関連抗原が免疫原として使用され得る。BIAcore(商標)システムで採用されている表面プラズモン共鳴を使用して、標的抗原のエピトープにファージ抗体/抗体コンストラクトが結合する効率を高め得る(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97-105;Malmborg,J.Immunol.Methods 183(1995),7-13)。
【0026】
抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインを作製する別の例示的方法として、タンパク質発現ライブラリ(例えば、ファージディスプレイライブラリ又はリボソームディスプレイライブラリ)のスクリーニングが挙げられる。ファージディスプレイについては、例えば、Ladnerらの米国特許第5,223,409号明細書;Smith(1985)Science 228:1315-1317、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)で説明されている。
【0027】
ディスプレイライブラリの使用に加えて、関連抗原を使用して、非ヒト動物(例えば、齧歯類(例えば、マウス、ハムスター、ウサギ又はラット))を免疫化し得る。一実施形態では、非ヒト動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、マウス抗体産生が欠損したマウス株をヒトIg(免疫グロブリン)遺伝子座の大きい断片で操作することが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル抗体を作製及び選択し得る。例えば、Xenomouse(商標)、Green et al.(1994)Nature Genetics 7:13-21、米国特許出願公開第2003-0070185号明細書、国際公開第96/34096号パンフレット及び同第96/33735号パンフレットを参照されたい。
【0028】
モノクローナル抗体は、非ヒト動物から得た後、当技術分野で既知の組換えDNA技術を使用して改変(例えば、ヒト化、脱免疫、キメラ化)することもできる。改変された抗体、コンストラクト又は結合ドメインの例として、非ヒト抗体/抗体コンストラクトのヒト化バリアント、「親和性成熟化した」抗体コンストラクト又は結合ドメイン(例えば、Hawkins et al.J.Mol.Biol.254,889-896(1992)及びLowman et al.,Biochemistry 30,10832-10837(1991)を参照されたい)及びエフェクター機能が変化した抗体バリアント又は変異体(例えば、米国特許第5,648,260号明細書、前掲のKontermann and Duebel(2010)及び前掲のLittle(2009)を参照されたい)が挙げられる。
【0029】
免疫学では、親和性成熟は、免疫応答の過程でB細胞が抗原親和性の増加した抗体を産生するプロセスである。同じ抗原への曝露が繰り返されると、宿主は、連続してより高い親和性の抗体を産生することになる。天然のプロトタイプと同様に、インビトロ親和性成熟は、変異及び選択の原理に基づいている。インビトロ親和性成熟は、抗体、抗体断片、抗体バリアント、抗体コンストラクト又は結合ドメインの最適化に問題なく使用されている。放射線、化学的変異原又はエラープローンPCRを使用して、CDR内部にランダム変異が導入される。加えて、チェインシャッフリングにより、遺伝的多様性を増加させ得る。通常、ファージディスプレイのようなディスプレイ法を使用した2又は3ラウンドの変異及び選択により、低ナノモル濃度範囲の親和性の抗体、抗体断片、抗体バリアント、抗体コンストラクト又は結合ドメインが得られる。
【0030】
本明細書で説明されている抗体(又は抗体コンストラクト)のアミノ酸配列改変も企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的特性を改善することが望ましい場合もある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、ペプチド合成により調製されるか、又はこの抗体をコードする核酸分子に適切なヌクレオチド変化を導入することにより調製される。下記で説明する全てのアミノ酸配列改変は、未改変の親分子の所望の生物学的活性(sBCMAへの結合)を保持する抗体をもたらすべきである。
【0031】
用語「アミノ酸」又は「アミノ酸残基」は、典型的には、下記:アラニン(Ala又はA);アルギニン(Arg又はR);アスパラギン(Asn又はN);アスパラギン酸(Asp又はD);システイン(Cys又はC);グルタミン(GIn又はQ);グルタミン酸(GIu又はE);グリシン(GIy又はG);ヒスチジン(His又はH);イソロイシン(Ile又はI):ロイシン(Leu又はL);リシン(Lys又はK);メチオニン(Met又はM);フェニルアラニン(Phe又はF);プロリン(Pro又はP);セリン(Ser又はS);トレオニン(Thr又はT);トリプトファン(Trp又はW);チロシン(Tyr又はY);及びバリン(VaI又はV)からなる群から選択されるアミノ酸等、当技術分野で認識された定義を有するアミノ酸を指すが、必要に応じて改変アミノ酸、合成アミノ酸又は希アミノ酸を使用し得る。下記の様々な側鎖により決定される基本的に4つの異なるアミノ酸クラスがある:
(1)非極性及び中性(非荷電):Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、Val
(2)極性及び中性(非荷電):Asn、Cys(わずかに極性である)、Gln、Ser、Thr、Trp(わずかに極性である)、Tyr
(3)酸性及び極性(負荷電):Asp及びGlu
(4)塩基性及び極性(正荷電):Arg、His、Lys。
【0032】
疎水性アミノ酸は、脂肪族側鎖を有するか又は芳香族側鎖を有するかに応じて分けられ得る。Phe及びTrp(疎水性が極めて高い)、Tyr及びHis(疎水性が低い)は、芳香族アミノ酸に分類される。厳密に言えば、脂肪族は、側鎖が水素原子及び炭素原子のみを含むことを意味する。この厳密な定義上、脂肪族側鎖を有するアミノ酸は、アラニン、イソロイシン、ロイシン(またノルロイシン)、プロリン及びバリンである。極めて短いアラニンの側鎖は、アラニンが特に疎水性でないことを意味し、プロリンは、タンパク質においてプロリンに特別な役割を与える独特な幾何学を有する。多くの場合、メチオニンをイソロイシン、ロイシン及びバリンと同じカテゴリーと考えることが好都合であるが、メチオニンは、硫黄原子も含む。統一テーマは、これらのアミノ酸が主に非反応性且つ可動性の側鎖を含むことである。アミノ酸アラニン、システイン、グリシン、プロリン、セリン及びトレオニンは、いずれもサイズが小さいという理由から、多くの場合に一緒にまとめられる。Gly及びProは、鎖配向に影響を及ぼし得る。
【0033】
アミノ酸改変として、例えばモノクローナル抗体(抗体コンストラクト)のアミノ酸配列からの残基の欠失、このアミノ酸配列への残基の挿入及び/又はこのアミノ酸配列内での残基の置換が挙げられる。最終モノクローナル抗体(抗体コンストラクト)に到達するために、欠失、挿入及び/又は置換の任意の組み合わせが行われ、但し、この最終抗体は、所望の特性(例えば、未改変の親分子の生物学的活性(例えば、sBCMAへの結合))を保持する。アミノ酸変化は、グリコシル化部位の数又は位置の変化等の抗体の翻訳後プロセスも変更し得る。
【0034】
例えば、CDRの各々において、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つのアミノ酸が挿入、欠失及び/又は置換され得(当然のことながら、CDRのそれぞれの長さに依存する)、FRの各々において、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は25のアミノ酸が挿入、欠失及び/又は置換され得る。アミノ酸配列の挿入として、例えば1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ又は10の残基~10超(例えば、100以上の残基)を含むポリペプチドの長さの範囲のアミノ酸のN末端付加及び/又はC末端付加並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入も挙げられる。
【0035】
アミノ酸改変(具体的にはアミノ酸置換)にとって最も興味深い部位として、重鎖及び/又は軽鎖の超可変領域(具体的には個々のCDR)が挙げられるが、本明細書では重鎖及び/又は軽鎖におけるFRの変更も企図される。置換は、本明細書で説明されているように保存的置換であり得る。好ましくは、それぞれCDR又はFRの長さに依存して、CDRでは1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ又は10のアミノ酸が置換され得、フレームワーク領域(FR)では1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は25のアミノ酸が置換され得る。例えば、CDR配列が6つのアミノ酸を含む場合、これらのアミノ酸の1つ、2つ又は3つが置換されることが想定される。同様に、CDR配列が15のアミノ酸を含む場合、これらのアミノ酸の1つ、2つ、3つ、4つ、5つ又は6つが置換されることが想定される。
【0036】
変異誘発に好ましい位置であるモノクローナル抗体(抗体コンストラクト)内の特定の残基又は領域の同定に有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれており、例えばCunningham B.C.and Wells J.A.(Science.1989 Jun 2;244(4908):1081-5)で説明されている。ここで、抗体内の残基又は残基の群が同定され(例えば、Arg、His、Lys、Asp及びGlu等の荷電残基)、中性又は非極性アミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)に置き換えられることにより、標的タンパク質のエピトープとのそれぞれのアミノ酸の相互作用に影響が及ぶ。アラニンスキャニングは、所与のタンパク質の安定性又は機能に対する特定の残基の寄与を決定するために使用される技術である。アラニンの、他のアミノ酸の多くが有する二次構造優先性を模倣するにも関わらず、嵩高くなく、化学的に不活性なメチル官能基に起因して、アラニンが使用される。ときに、変異残基のサイズの保存が必要である場合、バリン又はロイシン等の嵩高いアミノ酸が使用され得る。この技術は、特定の残基の側鎖が生物活性において重要な役割を果たすかどうかの決定にも有用であり得る。アラニンスキャニングは、通常、部位特異的変異誘発により達成されるか、又はPCRライブラリの作成により無作為に達成される。更に、理論的アラニン置換に基づいて熱力学的パラメータを推定する計算的方法が開発されている。データをIR/NMR分光法、数学的方法、バイオアッセイ等により試験し得る。
【0037】
次いで、置換部位で又は置換部位のために更なる又は他のバリアントを導入することにより、(例えば、アラニンスキャニングにより決定した場合に)置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸位置を精緻化し得る。そのため、アミノ酸配列バリエーションを導入するための部位又は領域は、予め決定されているが、変異の性質自体を予め決定する必要はない。例えば、所与の部位での変異のパフォーマンスを分析又は最適化するために、標的のコドン又は領域においてアラニンスキャニング又はランダム変異誘発を実施し得、発現されたモノクローナル抗体/抗体コンストラクトのバリアントを所望の活性の最適な組み合わせに関してスクリーニングする。既知の配列を有するDNAの所定の部位における置換変異の作成技術(例えば、M13プライマー変異誘発及びPCR変異誘発)は、公知である。変異体のスクリーニングを、例えば本明細書で説明されているような抗原(例えば、sBCMA)結合活性のアッセイを使用して行う。
【0038】
一般に、重鎖及び/又は軽鎖/可変領域のCDRの1つ若しくは複数又は全てでアミノ酸が置換される場合、そうして得られた「置換後の」配列は、「元の」又は「親」CDR配列と少なくとも60%又は65%、より好ましくは70%又は75%、更により好ましくは80%又は85%、特に好ましくは90%又は95%同一/相同/類似であることが想定される。これは、元の配列と置換後の配列との間の同一性/相同性/類似性の程度がCDRの長さに依存することを意味する。例えば、合計5つのアミノ酸を有し、且つ1つのアミノ酸置換を含むCDRは、「元の」又は「親」CDR配列と80%同一であり、合計10のアミノ酸を有し、且つ1つのアミノ酸置換を含むCDRは、「元の」又は「親」CDR配列と90%同一である。従って、本発明のモノクローナル抗体の置換後のCDRは、その元の配列と様々な程度の同一性を有し得、例えばCDRL1が80%を有し得る一方、CDRL3が90%の相同性を有し得る。同じ考察がフレームワーク領域並びにVH及びVL領域全体にも当てはまる。
【0039】
「バリアントCDR」は、本発明の親CDRと特定の配列の相同性、類似性又は同一性を有するCDRであり、親CDRと生物学的機能を共有しており、例えば、限定されないが、親CDRの特異性及び/又は活性の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%を共有している。一般に、個々のバリアントCDR間のアミノ酸の相同性、類似性又は同一性は、本明細書で示された親配列に対して少なくとも60%であり、より典型的には少なくとも65%又は70%、好ましくは少なくとも75%又は80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%及びほぼ100%という更に高い相同性、類似性又は同一性を伴う。同じことが「バリアントVH」及び「バリアントVL」にも当てはまる。一実施形態によれば、「バリアントVH」及び/又は「バリアントVL」内の配列バリエーションは、CDRに及ばない。従って、本発明は、本明細書で定義されている特定の配列(「親」VH及びVL)に対して特定の配列相同性/同一性/類似性(上記を参照されたい)を有するVH配列及びVL配列を含む、本明細書で定義されているモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)に関し、ここで、CDR配列は、本明細書で定義されている特定のCDR配列(「親」CDR)と100%同一である。
【0040】
好ましい置換(又は置き換え)は、保存的置換である。しかしながら、モノクローナル抗体(抗体コンストラクト)がsBCMAに結合する能力を保持する限り、且つ/又はこのモノクローナル抗体(抗体コンストラクト)のCDR、FR、VH及び/若しくはVLの配列が元の配列又は親配列と少なくとも60%若しくは65%、より好ましくは少なくとも70%若しくは75%、更により好ましくは少なくとも80%若しくは85%、特に好ましくは少なくとも90%若しくは95%の程度の同一性を有しているならば、任意の置換(非保存的置換又は下記の表1で列挙される「例示的置換」からの1つ若しくは複数を含む)が想定される。
【0041】
保存的置き換え(保存的変異又は保存的置換とも称される)は、所与のアミノ酸を、生化学的特性(例えば、電荷、疎水性、サイズ)が類似する別のアミノ酸に変えるアミノ酸置き換えである。タンパク質における保存的置き換えは、非保存的置き換えと比べてタンパク質機能に及ぼす影響が小さいことが多い。保存的置換を表1に示す。例示的な保存的置換は、「例示的置換」として示される。そのような置換が生物学的活性の変化をもたらす場合、アミノ酸クラスに関して本明細書で更に説明するように、より実質的な変化が導入され得、産物が所望の特性に関してスクリーニングされ得る。
【0042】
【0043】
本発明のモノクローナル抗体(抗体コンストラクト)の生物学的特性の実質的な改変は、(a)例えばシート立体構造若しくはヘリックス立体構造等の置換領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖の嵩高さの維持に対する効果が有意に異なる置換を選択することにより達成される。非保存的置換は、通常、上記で定義されたアミノ酸クラス(例えば、極性、中性、酸性、塩基性、脂肪族、芳香族、小型)の1つのメンバーから別のクラスへの交換を必然的に伴う。抗体の正しい立体構造の維持に関与しない任意のシステイン残基を概してセリンで置換して、抗体の酸化安定性を改善し得る。
【0044】
アミノ酸配列の配列同一性、配列相同性及び/又は配列類似性は、当技術分野で既知の標準的な技術(例えば、限定されないが、好ましくはデフォルト設定を使用するSmith and Waterman,1981,Adv.Appl.Math.2:482の局所配列同一性アルゴリズム、Needleman and Wunsch(J Mol Biol.1970 Mar;48(3):443-53)の配列同一性アラインメントアルゴリズム、Pearson及びLipman(Proc Natl Acad Sci USA.1988 Apr;85(8):2444-8)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WisのGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTA)、Devereux et al.(Nucleic Acids Res.1984 Jan 11;12(1 Pt 1):387-95)により説明されいてるBest Fit配列プログラム)を使用して決定されるか、又は目視検査により決定される。同一性パーセントは、下記のパラメータに基づくFastDBにより算出されることが想定される:ミスマッチペナルティ1;ギャップペナルティ1;ギャップサイズペナルティ0.33;及び結合ペナルティ30。“Current Methods in Sequence Comparison and Analysis”,Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp 127-149(1988),Alan R.Liss,Inc.も参照されたい。
【0045】
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、累進的ペアワイズアラインメントを使用して、関連配列の群から多重配列アラインメントを生成する。これは、アラインメントの生成に使用されるクラスタリング関係を示すツリーもプロットし得る。PILEUPは、Feng及びDoolittleの累進的アラインメント法(J Mol Evol.1987;25(4):351-60)を簡略化したものを使用し、この方法は、Higgins及びSharp(Comput Appl Biosci.1989 Apr;5(2):151-3)により説明されているものと類似している。有用なPILEUPパラメータとして、デフォルトギャップ加重3.00、デフォルトギャップ長加重0.10及び加重付き末端ギャップが挙げられる。
【0046】
有用なアルゴリズムの別の例は、Altschul et al.(J Mol Biol.1990 Oct 5;215(3):403-10.);Altschul et al.,(Nucleic Acids Res.1997 Sep 1;25(17):3389-402);並びにKarlin and Altschul(Proc Natl Acad Sci USA.1993 Jun 15;90(12):5873-7)で説明されいてるBLASTアルゴリズムである。特に有用なBLASTプログラムは、WU-Blast-2プログラムであり、これは、Altschul et al.,(Methods Enzymol.1996;266:460-80)から得られた。WU-Blast-2は、いくつかの検索パラメータを使用し、そのほとんどがデフォルト値に設定されている。調整可能なパラメータは、下記の値に設定されている:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値T)=II。HSP Sパラメータ及びHSP S2パラメータは、ダイナミック値であり、特定の配列の組成及び目的の配列が検索される特定のデータベースの組成に依存して、プログラム自体により確立され、しかしながら、感度を増加させるために値が調整され得る。
【0047】
追加の有用なアルゴリズムは、Altschul et al.(Nucleic Acids Res.1997 Sep 1;25(17):3389-402)により報告されているようなギャップ付きBLASTである。ギャップ付きBLASTは、BLOSUM-62置換スコア;9に設定された閾値Tパラメータ;非ギャップ化伸長を引き起こすための2ヒット法、kのギャップ長への10+kのコストの負荷;16に設定されたXu及びデータベース検索段階について40に設定され、アルゴリズムの出力段階について67に設定されたXgを使用する。ギャップ付きアラインメントは、約22ビットに対応するスコアにより開始される。
【0048】
これと一致して、本明細書で同定されているモノクローナル抗体(抗体コンストラクト)をコードする核酸配列に関する用語「パーセント(%)核酸配列同一性/相同性/類似性」は、この抗体のコード配列中のヌクレオチド残基と同一である候補配列中のヌクレオチド残基のパーセンテージとして定義される。2つの配列をアラインメントし、それによりこれらの相同性を決定する1つの方法は、オーバーラップスパン及びオーバーラップフラクションがそれぞれ1及び0.125に設定されているデフォルトパラメータ設定のWU-Blast2のBLASTNモジュールを使用する。一般に、個々のバリアントCDRをコードするヌクレオチド配列と本明細書で示されているヌクレオチド配列との間の核酸配列の相同性、類似性又は同一性は、少なくとも60%であり、より典型的には少なくとも65%、70%、75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%及びほぼ100%という更に高い相同性、類似性又は同一性を伴う。この場合も、「バリアントVH」及び/又は「バリアントVL」をコードする核酸配列に同じことが当てはまる。
【0049】
用語「抗体コンストラクト」は、構造及び/又は機能が抗体(例えば、完全長免疫グロブリン分子)の構造及び/又は機能に基づく分子を指す。従って、抗体コンストラクトは、その標的若しくは抗原に免疫特異的に結合し、且つ/又は抗体の重鎖可変領域(VH)及び/若しくは軽鎖可変領域(VL)を含むか又はこれらに由来するドメインを含む。本発明に係る抗体コンストラクトは、免疫特異的標的結合を可能にする抗体の最小限の構造要件を含む。この最小限の要件は、例えば、少なくとも3つの軽鎖CDR(即ちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)並びに/又は3つの重鎖CDR(即ちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)、好ましくは6つ全てのCDRの存在により定義され得る。従って、抗体コンストラクトは、結合ドメイン中の3つ又は6つのCDRの存在により特徴付けられ得、当業者は、結合ドメイン内でこれらのCDRがどこに(どのような順序で)位置するかを分かっている。
【0050】
本発明に係る用語「抗体コンストラクト」は、VH、VHH、VL、(s)dAb、Fv、軽鎖(VL-CL)、Fd(VH-CH1)、重鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2又は「r IgG」(重鎖と軽鎖とからなる「半抗体」)等の完全長抗体の断片も含み得る。抗体断片は、インタクトな抗体の酵素的な又は化学的な開裂により作製され得る。本発明に係る抗体コンストラクトは、抗体バリアント又は抗体誘導体とも称される抗体の改変断片も含み得る。例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:scFv、di-scFv又はbi(s)-scFv、scFv-Fc、scFv-ジッパー、scFab、Fab2、Fab3、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(Tandab’s)、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFv、下記:(VH-VL-CH3)2、(scFv-CH3)2、((scFv)2-CH3+CH3)、((scFv)2-CH3)又は(scFv-CH3-scFv)2のとおりの構造により例示される「ミニボディ」、マルチボディ(例えば、トリアボディ又はテトラボディ)及び単一ドメイン抗体(例えば、他の可変領域又はドメインと無関係に抗原又は標的に特異的に結合する、VHH、VH又はVLであり得る1つの可変領域のみを含むナノボディ又は単一可変ドメイン抗体)。本発明に係る抗体コンストラクトの更なる可能なフォーマットは、クロスボディ、マキシボディ、ヘテロFcコンストラクト、モノFcコンストラクト及びscFcコンストラクトである。これらのフォーマットの例については、本明細書において下記で説明する。
【0051】
更に、用語「抗体コンストラクト」の定義には、異なる結合ドメインを介して2種、3種又はより多くの抗原構造に特異的に結合する二価及び多価/多原子価コンストラクト並びに二重特異性及び多特異性/多重特異性コンストラクトが含まれる。例えば、抗体コンストラクトが、ある標的に対して2つの結合ドメインを有し、且つ別の標的(例えば、CD3)に対して1つの結合ドメインを有するか又はこの逆の場合、この抗体コンストラクトは、特異性よりも大きい結合価を有し得、この場合、このコンストラクトは、三価であり且つ二重特異性である。一般に、用語「二重特異性」には、抗体コンストラクトが(少なくとも)2種の異なる抗原に結合するという意味が含まれる。
【0052】
更に、用語「抗体コンストラクト」の定義には、1つのポリペプチド鎖のみからなる分子と、2つ、3つ、4つ又はより多くのポリペプチド鎖(これらの鎖は、同一であり得るか(ホモ二量体、ホモ三量体若しくはホモオリゴマー)又は異なり得る(ヘテロ二量体、ヘテロ三量体若しくはヘテロオリゴマー))からなる分子とが含まれる。上記で特定された抗体及びその断片、バリアント、誘導体並びにこれらに由来する抗体コンストラクトの例は、とりわけ、Harlow and Lane,Antibodies:A laboratory manual,CSHL Press(1988);Kontermann and Duebel,Antibody Engineering,Springer,2nd ed.2010;及びLittle,Recombinant Antibodies for Immunotherapy,Cambridge University Press 2009で説明されている。
【0053】
用語「結合ドメイン」又は「~に結合するドメイン」は、本発明に関連して、標的又は抗原(本明細書ではsBCMA)上のエピトープに免疫特異的に結合する/このエピトープと免疫特異的に相互作用する/このエピトープを免疫特異的に認識する抗体/抗体コンストラクトのドメインを特徴付ける。結合ドメインの構造及び機能は、抗体(例えば、完全長免疫グロブリン分子)の構造及び/又は機能をベースとする。従って、「結合ドメイン」又は「~に結合するドメイン」は、免疫特異的標的結合を可能にする抗体の最小限の構造要件を含み得る。結合ドメインのこの最小限の構造要件は、例えば、少なくとも3つの軽鎖CDR(即ちVL領域のCDR1、CDR2及びCDR3)並びに/又は3つの重鎖CDR(即ちVH領域のCDR1、CDR2及びCDR3)、好ましくは6つ全てのCDRの存在により定義され得る。「~に結合するドメイン」(又は「結合ドメイン」)は、典型的には、抗体軽鎖可変領域(VL)と抗体重鎖可変領域(VH)とを含み得るが、両方を含む必要はなく、VH又はVLの一方のみを含み得る。Fd断片は、例えば、インタクトな抗原結合ドメインの一部の抗原結合機能を保持していることが多い。
【0054】
「~に結合するドメイン」(若しくは「結合ドメイン」)又は抗体コンストラクトのフォーマットの例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:完全長抗体、完全長抗体の断片(例えば、VH、VHH、VL)、(s)dAb、Fv、軽鎖(VL-CL)、Fd(VH-CH1)、重鎖、Fab、Fab’、F(ab’)2又は「r IgG」(「半抗体」)、抗体バリアント又は抗体誘導体、例えばscFv、di-scFv又はbi(s)-scFv、scFv-Fc、scFv-ジッパー、scFab、Fab2、Fab3、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ、タンデムダイアボディ(Tandab’s)、タンデムdi-scFv、タンデムtri-scFv、「ミニボディ」((VH-VL-CH3)2、(scFv-CH3)2、((scFv)2-CH3+CH3)、((scFv)2-CH3)又は(scFv-CH3-scFv)2等のフォーマットから選択される)、マルチボディ(例えば、トリアボディ又はテトラボディ)及び単一ドメイン抗体(例えば、VHH、VH又はVLであり得る1つの可変領域のみを含むナノボディ又は単一可変ドメイン抗体)。「~に結合するドメイン」(又は「結合ドメイン」)のフォーマットの更なる例として、下記が挙げられる:(1)VL、VH、CL及びCH1を含む抗体断片又は抗体バリアント(例えば、Fab);(2)2つの連結したFab断片を含む抗体断片又は抗体バリアント(例えば、F(ab’)2);(3)VH及びCH1を含む抗体断片又は抗体バリアント(例えば、Fd);(4)VL及びCLを含む抗体断片又は抗体バリアント(例えば、軽鎖);(5)VL及びVHを含む抗体断片又は抗体バリアント(例えば、Fv);(5)VHドメインを有するdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(6)重鎖及び/又は軽鎖の少なくとも3つの単離されたCDRを含む抗体バリアント;並びに(7)単鎖Fv(scFv)。本発明に係る抗体コンストラクト又は結合ドメインの実施形態の例は、例えば、国際公開第00/006605号パンフレット、同第2005/040220号パンフレット、同第2008/119567号パンフレット、同第2010/037838号パンフレット、同第2013/026837号パンフレット、同第2013/026833号パンフレット、米国特許出願公開第2014/0308285号明細書、同第2014/0302037号明細書、国際公開第2014/144722号パンフレット、同第2014/151910号パンフレット及び同第2015/048272号パンフレットで説明されている。
【0055】
scFvでは、VH領域及びVL領域は、(N末端からC末端に)VH-VL又はVL-VHの順序で配置される。VH領域及びVL領域は、リンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して接続されることが想定される。一実施形態によれば、VH領域は、リンカーのN末端に位置しており、VL領域は、リンカーのC末端に位置している。抗体コンストラクトの2つのscFvドメインがリンカー、好ましくはペプチドリンカーを介して接続されることが更に可能である。抗体コンストラクトは、例えば、(N末端からC末端に)第1のドメイン-リンカー-第2のドメインの順序でドメインを含み得る。逆の順序(第2のドメイン-リンカー-第1のドメイン)も可能である。
【0056】
リンカーは、好ましくは、ペプチドリンカー、より好ましくは短鎖ペプチドリンカーである。本発明によれば、「ペプチドリンカー」は、抗体コンストラクトのあるドメインのアミノ酸配列を別の(可変及び/又は結合)ドメイン(例えば、可変ドメイン又は結合ドメイン)と接続するアミノ酸配列を含む。そのようなペプチドリンカーの必須の技術的特徴は、このペプチドリンカーがいかなる重合活性も含まないことである。好適なペプチドリンカーには、米国特許第4,751,180号明細書及び同第4,935,233号明細書又は国際公開第88/09344号パンフレットで説明されているものがある。ペプチドリンカーを使用して、本発明の抗体/抗体コンストラクトに他のドメイン、又はモジュール,又は領域(例えば、半減期延長ドメイン)を付加させることも可能である。これに関連して、「短鎖」リンカーは、2~50のアミノ酸、好ましくは3~35、4~30、5~25、6~20又は6~17のアミノ酸を有する。1つの結合ドメインの2つの可変領域間のリンカーは、2つの結合ドメイン間のリンカーと異なる長さを有する場合がある(例えば、より長い場合がある)。例えば、1つの結合ドメインの2つの可変領域間のリンカーは、7~15のアミノ酸、好ましくは9~13のアミノ酸の長さを有し得、2つの結合ドメイン間のリンカーは、3~10のアミノ酸、好ましくは4~8つのアミノ酸の長さを有し得る。ペプチドリンカーは、グリシン/セリンリンカーであることが更に想定される。グリシン/セリンリンカーのアミノ酸の大部分は、グリシン及びセリンから選択される。
【0057】
リンカーを使用して、結合特異性が異なる2つの結合ドメインを接続する場合、このリンカーは、好ましくは、これらのドメインの各々が、互いに独立して、それらの異なる結合特異性を保持し得ることを確実にするのに十分な長さ及び配列である。抗体コンストラクト中で少なくとも2つの結合ドメイン(又は1つの結合ドメインを形成する2つの可変領域)を接続するペプチドリンカーの場合、このペプチドリンカーは、ごく少数のアミノ酸残基(例えば、12以下のアミノ酸残基)を含むことが想定される。そのため、12、11、10、9つ、8つ、7つ、6つ又は5つのアミノ酸残基のペプチドリンカーが好ましい。5つ未満のアミノ酸の想定されるペプチドリンカーは、4つ、3つ、2つ又は1つのアミノ酸を含み、ここで、Glyリッチリンカーが好ましい。前記「ペプチドリンカー」との関連における「単一アミノ酸」リンカーは、Glyである。ペプチドリンカーの別の例は、アミノ酸配列Gly4Ser又はそのポリマー(即ち(Gly4Ser)x)を特徴とし、ここで、xは、1以上の整数(例えば、2又は3)である。前記ペプチドリンカーの特徴は、当技術分野で既知であり、例えばDall’Acqua et al.(Biochem.(1998)37,9266-9273)、Cheadle et al.(Mol Immunol(1992)29,21-30)並びにRaag及びWhitlow(FASEB(1995)9(1),73-80)で説明されている。いかなる二次構造も促進しないペプチドリンカーが好ましい。前記ドメインの互いの連結は、例えば、遺伝子工学により提供され得る。融合し且つ作動可能に連結された二重特異性単鎖コンストラクトを調製し、それらを哺乳動物細胞又は細菌中で発現させる方法は、当技術分野で公知である(例えば、国際公開第99/54440号パンフレット又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,2001)。
【0058】
本発明の一実施形態によれば、sBCMAに結合する本発明の抗体コンストラクトは、「単鎖抗体コンストラクト」であり得る。Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされるが、これらは、組換え法を使用して、VL及びVH領域が一価分子を形成するように対をなす単一のタンパク質鎖としてこれらが作製されることを可能にする(本明細書の上記で説明されているような)人工リンカーにより結合され得;例えば、Huston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci USA 85:5879-5883)を参照されたい。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来技術を使用して得られ、この断片は、完全長抗体又はIgGと同じように機能に関して評価される。従って、単鎖可変断片(scFv)は、通常、短鎖リンカーペプチドで接続された、免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。このリンカーは、通常、柔軟性のためにグリシンに富み、及びまた溶解性のためにセリン又はトレオニンに富み、且つVHのN末端をVLのC末端と接続し得るか又はその逆であり得る。このタンパク質は、定常領域の除去及びリンカーの導入にも関わらず、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。
【0059】
「単一ドメイン抗体」と称される抗体コンストラクトは、他の可変領域とは無関係に、特定の抗原に選択的に結合することが可能な1つの(単量体)抗体可変領域を含む。最初の単一ドメイン抗体は、ラクダで見出される重鎖抗体から操作されており、これは、VHH断片と呼ばれる。軟骨魚類も重鎖抗体(IgNAR)を有しており、この重鎖抗体から、VNAR断片と呼ばれる単一ドメイン抗体を得ることができる。代替的な手法は、共通の免疫グロブリンからの二量体可変領域を単量体に分割することであり、従ってVH又はVLが単一ドメインAbとして得られる。現在、単一ドメイン抗体に関する研究のほとんどは、重鎖可変領域をベースとしているが、軽鎖に由来するナノボディも標的エピトープに特異的に結合することが示された。単一ドメイン抗体の例は、sdAb、ナノボディ又は単一可変ドメイン抗体と呼ばれる。従って、(単一ドメインmAb)2は、VH、VL、VHH及びVNARを含む群から個別に選択される(少なくとも)2つの単一ドメインモノクローナル抗体コンストラクトで構成されたモノクローナル抗体コンストラクトである。リンカーは、好ましくは、ペプチドリンカーの形態である。同様に、「scFv単一ドメインmAb」は、上記に記載した少なくとも1つの単一ドメイン抗体と、上記に記載した1つのscFv分子とで構成されたモノクローナル抗体コンストラクトである。この場合もやはり、リンカーは、好ましくは、ペプチドリンカーの形態である。
【0060】
一実施形態によれば、sBCMAに結合する抗体又は抗体コンストラクトは、1つ又は複数のポリペプチドの形態又はタンパク質の形態である。タンパク質性部分に加えて、そのようなポリペプチド又はタンパク質は、非タンパク質性部分(例えば、化学的リンカー又は化学的架橋剤、例えばグルタルアルデヒド)を含み得る。
【0061】
ペプチドは、共有結合性ペプチド(アミド)結合により連結されたアミノ酸単量体の短鎖である。従って、ペプチドは、広範な化学的クラスの生物学的オリゴマー及びポリマーに分類される。ペプチド又はポリペプチド鎖の一部であるアミノ酸は、「残基」と称され、連続番号が付され得る。環状ペプチドを除く全てのペプチドは、このペプチドの一端にN末端残基を有し、且つ他端にC末端残基を有する。オリゴペプチドは、ごく少数のアミノ酸からなる(通常、2~20)。ポリペプチドは、より長い連続した非分枝ペプチド鎖である。ペプチドは、サイズを基準としてタンパク質と区別され、独断的な基準として約50以下のアミノ酸を含むものと理解され得る。タンパク質は、通常、生物学的に機能的な方法で配置された1つ又は複数のポリペプチドからなる。ペプチド対ポリペプチド及びタンパク質に適用される実験技術の態様(例えば、電気泳動法、クロマトグラフィー等の詳細)が異なるが、ペプチドをポリペプチド及びタンパク質と区別するサイズ境界は、絶対的ではない。従って、本発明に関連して、用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、同義的に使用され得、用語「ポリペプチド」が好ましいことが多い。
【0062】
ポリペプチドは、複数のポリペプチド分子からなる多量体(例えば、二量体、三量体及びより高次のオリゴマー)を更に形成し得る。そのような二量体、三量体等を形成するポリペプチド分子は、同一であっても又はなくてもよい。このため、より高次のそのような多量体の対応する構造は、ホモ二量体又はヘテロ二量体、ホモ三量体又はヘテロ三量体等と称される。ヘテロ多量体の一例は、その天然に存在する形態で2つの同一の軽ポリペプチド鎖と2つの同一の重ポリペプチド鎖とからなる抗体又は免疫グロブリン分子である。用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、天然の改変ペプチド/ポリペプチド/タンパク質も指し、ここで、改変は、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化及び同類のもののような翻訳後修飾により達成される。「ペプチド」、「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、本明細書において言及される場合、化学的にも改変され得る(例えば、ペグ化)。そのような改変は、当技術分野で公知であり、且つ本明細書において下記で説明する。
【0063】
用語「~に(特異的若しくは免疫特異的に)結合する」、「~を(特異的若しくは免疫特異的に)認識する」又は「~と(特異的若しくは免疫特異的に)反応する」は、本発明によれば、抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインが標的分子上の所与のエピトープ(抗原、本明細書ではsBCMA)と相互作用するか又は(免疫)特異的に相互作用することを意味する。この相互作用又は会合は、代替的物質(非標的分子)と比べて特定の標的上のエピトープに対してより高頻度に、より迅速に、より長い持続期間で、より高い親和性で又は上述の何らかの組み合わせで生じる。しかしながら、異なる種における相同タンパク質間の配列類似性のために、標的(例えば、ヒト標的)に免疫特異的に結合する抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインは、異なる種(例えば、非ヒト霊長類)からの相同標的分子と交差反応し得る。従って、用語「特異的/免疫特異的結合」は、抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインによる複数の種におけるエピトープ又は構造的に関連性のあるエピトープへの結合を含み得る。
【0064】
本発明に関連して、用語「エピトープ」は、結合ドメイン、抗体又は抗体コンストラクトにより認識される/免疫特異的に認識される抗原の一部又は領域を指す。「エピトープ」は、抗原性であり、そのため、用語エピトープは、「抗原構造」又は「抗原決定基」とも称される場合がある。結合ドメイン、抗体又は抗体コンストラクトのうち、エピトープに結合する部分は、パラトープと呼ばれる。特異的結合は、結合ドメイン、抗体又は抗体コンストラクトと抗原とのアミノ酸配列における特異的モチーフにより達成されると考えられる。そのため、結合は、その一次構造、二次構造及び/又は三次構造の結果として且つ前記構造の潜在的な二次改変の結果として実現される。パラトープとその抗原決定基との特異的相互作用により、前記部位が抗原に単純に結合し得る。いくつかの場合、代わりに又は加えて、特異的相互作用により、例えば抗原の立体構造変化の誘導、抗原のオリゴマー形成等に起因してシグナルが惹起され得る。
【0065】
タンパク質抗原のエピトープは、その構造及びパラトープとの相互作用に基づいて、立体エピトープ及び線状エピトープという2つのカテゴリーに分類される。立体エピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続なセクションで構成される。このエピトープは、抗原の三次元表面の特徴及び形状又は三次構造(折り畳み)に基づいてパラトープと相互作用する。エピトープの立体構造の決定方法として、X線結晶学、二次元核磁気共鳴(2D-NMR)分光法並びに部位特異的スピン標識及び電子常磁性共鳴(EPR)分光法が挙げられるが、これらに限定されない。対照的に、線状エピトープは、その一次構造に基づいてパラトープと相互作用する。線状エピトープは、抗原からの連続アミノ酸配列により形成され、典型的にはユニーク配列で少なくとも3つ又は少なくとも4つのアミノ酸配列を含み、より通常には少なくとも5つ、又は少なくとも6つ、又は少なくとも7つ、例えば約8~約10のアミノ酸を含む。
【0066】
BCMAのエピトープマッピングの方法を下記で説明する:ヒトBCMAタンパク質の細胞外ドメイン内の予め定義された領域(通常、連続アミノ酸ストレッチ)を、別の種(例えば、マウス、しかしながら、抗体がその種と交差反応しない限り、他の種も考えられる)のBCMAの対応する領域と交換する/この領域に置き換える。このヒトBCMA/マウス(又は他の種)BCMAキメラを宿主細胞(例えば、CHO細胞)の表面上で発現させ得る。抗体又は抗体コンストラクトの結合をFACS分析で試験し得る。このキメラ分子への抗体若しくは抗体コンストラクトの結合が完全になくなる場合又は大幅な結合の低下を観察する場合、このキメラ分子から取り除かれたヒトBCMAの領域が免疫特異的エピトープ-パラトープ認識に関連すると結論付け得る。前記結合の低下は、ヒト(野生型)BCMAへの結合と比較して、好ましくは少なくとも10%、20%、30%、40%又は50%;より好ましくは少なくとも60%、70%又は80%、最も好ましくは90%、95%又は更に100%(ここで、ヒトBCMAへの結合を100%とする)である。代わりに、上述のエピトープマッピング分析を、BCMAの配列に1つ又は複数の点変異を導入することにより改変し得る。この点変異は、例えば、ヒトBCMAとマウス(又は他の種の)BCMAとの間の差異を反映し得る。
【0067】
抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインによる認識に対する標的抗原の特定の残基の寄与を決定するための更なる方法は、分析される各残基を例えば部位特異的変異誘発によりアラニンに置き換えるアラニンスキャニング(例えば、Morrison KL&Weiss GA.Curr Opin Chem Biol.2001 Jun;5(3):302-7を参照されたい)である。アラニンの、他のアミノ酸の多くが有する二次構基準を模倣するにも関わらず、嵩高くなく、化学的に不活性なメチル官能基に起因して、アラニンが使用される。ときに、変異残基のサイズの保存が必要である場合、バリン又はロイシン等の嵩高いアミノ酸が使用され得る。
【0068】
モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)と標的抗原のエピトープとの間の相互作用は、可変領域がエピトープ/標的抗原(本明細書ではsBCMA)に対して認識可能な又は有意な親和性を呈し、概して標的抗原(本明細書ではsBCMA)以外のタンパク質又は抗原に対して(上記で考察した例えば他の種由来の相同標的との交差反応性にも関わらず)有意な親和性を呈しないことを含意する。「有意な親和性」は、約≦10-6Mの親和性(解離定数、KD)を有する結合を含む。好ましくは、結合親和性が約≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M又は≦10-10Mである場合、結合は、特異的と見なされる。従って、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、約≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M又は≦10-10Mの、sBCMAに対する親和性(KD)を有すると想定される。これらの値は、好ましくは、Biacoreアッセイ等の表面プラズモン共鳴アッセイで測定される。実施例3を参照されたい。
【0069】
モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が標的と(免疫)特異的に反応するかどうか又は標的に(免疫)特異的に結合するかどうかを、例えば所望の標的タンパク質又は標的抗原に対する前記抗体の親和性と、非標的タンパク質又は非標的抗原(本明細書ではsBCMA以外のタンパク質)に対する前記抗体の親和性とを比較することにより、容易に試験し得る。好ましくは、更なる標的に対する任意の更なる結合ドメインが本発明の抗体/抗体コンストラクトに意図的に導入されていない限り、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、sBCMA以外のタンパク質又は抗原に有意に結合しない。用語「有意に結合しない」は、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)がsBCMA以外のタンパク質又は抗原に結合しないことを意味する。従って、この抗体コンストラクトは、sBCAM以外のタンパク質又は抗原との、≦30%、好ましくは≦20%、より好ましくは≦10%、特に好ましくは≦9%、≦8%、≦7%、≦6%、≦5%、≦4%、≦3%、≦2%又は≦1%の反応性を示す(ここで、sBCMAへの結合を100%とする)。「反応性」を例えば親和性値(上記を参照されたい)で表し得る。本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、ヒトBAFF-R及び/又はヒトTACIに結合若しくは有意に結合しないか、又は相互作用しないか、認識しないか、免疫特異的に結合しないか若しくは相互作用しないことが想定される。
【0070】
本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、「インビトロ生成抗体/抗体コンストラクト」及び/又は「組換え抗体/抗体コンストラクト」であり得る。本発明に関連して、用語「インビトロ生成」は、可変領域(例えば、少なくとも1つのCDR)の全て又は一部が、タンパク質チップ上での非免疫細胞選択(例えば、インビトロファージディスプレイ)で生成されているか、又は候補アミノ酸配列をその抗原への結合能力に関して試験し得る任意の他の方法で生成されている、上記の定義に従う抗体/抗体コンストラクトを指す。従って、この用語は、好ましくは、単に動物の免疫細胞におけるゲノム再編成により生成された配列を除外する。抗体(抗体コンストラクト)は、ファージディスプレイ若しくはライブラリスクリーニング法によるか、又は既存の(モノクローナル)抗体からのCDR配列を足場に移植することにより作製されるか又は入手可能であることが想定される。「組換え抗体/抗体コンストラクト」は、(とりわけ)組換えDNA技術又は遺伝子工学を使用して生成又は作製された抗体/抗体コンストラクトである。
【0071】
本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)のアミノ酸置換バリエーションの好ましいタイプは、親抗体構造の超可変領域内の1つ又は複数の残基の置換を含む。一般に、結果として得られた、更なる開発のために選択されたバリアントは、その生成の元になった親抗体構造と比べて改善された生物学的特性を有する。そのような置換バリアントの好都合な生成方法は、ファージディスプレイを使用した親和性成熟を含む。簡潔に言えば、超可変領域のいくつかの部位(例えば、6~7箇所の部位)を変異させて、各部位に可能な全てのアミノ酸置換を生成する。そのように生成されたバリアントを、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物との融合物としての繊維状ファージ粒子から一価方式で提示させる。次に、ファージにより提示されたバリアントを、本明細書で開示されているような生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングする。抗原結合に大きく寄与する候補超可変領域部位(改変候補)を同定するために、アラニンスキャニング変異誘発も実施し得る。代わりに又は加えて、抗原と抗体/抗体コンストラクト又は結合ドメインとの間の複合体の結晶構造の解析は、抗体/抗体コンストラクトの結合ドメインとその特異的抗原との間の接触点の同定に有益であり得る。そのような接触残基及び隣接残基は、本明細書で詳述される技術による置換の候補である。そのようなバリアントが生成されると、バリアントのパネルを、本明細書で説明されているようなスクリーニングに供し、1つ又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体、その抗原結合断片、抗体コンストラクト又は結合ドメインを更なる開発のために選択し得る。
【0072】
本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、「キメラ」バージョンを特に含み、このキメラバージョンでは、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種に由来するか又は特定の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか又は相同であり、この鎖の残部が所望の生物学的活性を示す限り、別の種に由来するか又は別の抗体のクラス若しくはサブクラスに属する抗体並びにそのような抗体の断片又はバリアント中の対応する配列と同一であるか又は相同である(米国特許第4,816,567号明細書;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))。本明細書における目的のキメラ抗体、キメラ抗体コンストラクト又はキメラ結合ドメインは、例えば、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿等)に由来する可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体を含む。キメラ抗体又はキメラ抗体コンストラクトを作製する種々の手法が説明されている。例えば、Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.ScL U.S.A.81:6851,1985、Takeda et al.,Nature 314:452,1985、Cabillyらの米国特許第4,816,567号明細書;Bossらの米国特許第4,816,397号明細書;Tanaguchiらの欧州特許第0171496号明細書;同第0173494号明細書;及び英国特許第2177096号明細書を参照されたい。
【0073】
「ヒト化」モノクローナル抗体、そのバリアント又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、主としてヒト配列の免疫グロブリンをベースとし、これは、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含む。ほとんどの場合、ヒト化抗体、そのバリアント又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)をベースとし、このヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)では、超可変領域又はCDRからの残基が、所望の特異性、親和性、能力及び/又は生物学的活性を有する、げっ歯類(例えば、マウス、ハムスター、ラット又はウサギ)等の非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域又はCDRからの残基に置き換えられる。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。更に、本明細書で使用されている「ヒト化」抗体、そのバリアント又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、レシピエント抗体でもドナー抗体でも見られない残基も含み得る。これらの改変は、抗体性能を更に改良して最適化するために行われる。ヒト化抗体、そのバリアント又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインは、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分(例えば、Fc)も含み得、典型的にはヒト免疫グロブリンのものも含み得る。更なる詳細については、Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Reichmann et al.,Nature,332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)を参照されたい。
【0074】
ヒト化抗体、そのバリアント又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインを、抗原結合に直接関与しない(Fv)可変領域の配列をヒト(Fv)可変領域からの均等な配列に置き換えることにより作成し得る。そのような分子を生成するための例示的な方法は、Morrison(1985)Science 229:1202-1207;Oi et al.(1986)BioTechniques 4:214並びに米国特許第5,585,089号明細書、同第5,693,761号明細書、同第5,693,762号明細書、同第5,859,205号明細書及び同第6,407,213号明細書により提供される。これらの方法は、重鎖又は軽鎖の少なくとも一方からの免疫グロブリン(Fv)可変領域の全て又は一部をコードする核酸配列を単離すること、操作すること及び発現させることを含む。そのような核酸は、所定の標的に対する抗体を産生するハイブリドーマ(上記で説明している)及び他の供給源から入手され得る。次に、ヒト化抗体、そのバリアント若しくは断片、抗体コンストラクト又は結合ドメインをコードする組換えDNAを適切な発現ベクターにクローニングし得る。
【0075】
ヒト化抗体、そのバリアント又は断片、抗体コンストラクト及び結合ドメインを、ヒト重鎖及び軽鎖の遺伝子を発現するが、内因性マウス免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝子の発現能を有しないトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用しても作製し得る。Winterは、本明細書で説明されているヒト化分子の調製に使用し得る例示的なCDRグラフト方法を説明してる(米国特許第5,225,539号明細書)。特定のヒト配列のCDRの全てが非ヒトCDRの少なくとも一部に置き換えら得るか、又はCDRの一部のみが非ヒトCDRに置き換えられ得る。ヒト化分子が所定の抗原に結合するのに必要な数のCDRを置き換えるのみで十分である。
【0076】
ヒト化抗体、そのバリアント若しくは断片、抗体コンストラクト又は結合ドメインを保存的置換、コンセンサス配列置換、生殖細胞系列置換及び/又は復帰変異の導入により最適化し得る。そのように変更された免疫グロブリン分子を、当技術分野で既知のいくつかの技術のいずれかにより作製し得る(例えば、Teng et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:7308-7312,1983、Kozbor et al.,Immunology Today,4:7279,1983、Olsson et al.,Meth.Enzymol.,92:3-16,1982及び欧州特許第239400号明細書)。
【0077】
一実施形態によれば、モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、「ウサギ」である。用語「ウサギ抗体」、「ウサギ抗体コンストラクト」及び「ウサギ結合ドメイン」は、当技術分野で既知のウサギ生殖細胞系列免疫グロブリン配列に実質的に対応する抗体由来領域(例えば、可変領域又は可変ドメイン及び定常領域又は定常ドメイン)をそれぞれ有する抗体、抗体コンストラクト及び結合ドメインを含む。本発明のウサギ抗体コンストラクト又はウサギ結合ドメインは、ウサギ生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム変異誘発又は部位特異的変異誘発により導入されるか又はインビボで体細胞変異により導入された変異)を例えばCDR(特にCDR3)に含み得る。ウサギ抗体、ウサギ抗体コンストラクト又はウサギ結合ドメインは、ウサギ生殖細胞系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基に置き換えられる少なくとも1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所又はより多くの位置を有し得る。本明細書で使用されるウサギ抗体、ウサギ抗体コンストラクト及びウサギ結合ドメインの定義は、抗体の非人工的及び/又は遺伝子的に変更されたウサギ配列のみを含む完全なウサギ抗体、ウサギ抗体コンストラクト及びウサギ結合ドメインも企図する。
【0078】
本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、「単離された」又は「実質的に純粋な」抗体であることが想定される。「単離された」又は「実質的に純粋な」は、本明細書で説明されている抗体の説明に使用される場合、その産生環境の成分から同定、分離及び/又は回収されている抗体を意味する。好ましくは、抗体は、その産生環境からの他の全ての成分との関連を含まないか又は実質的に含まない。産生環境の夾雑成分(例えば、組換えトランスフェクト細胞から生じるもの)は、例えば、抗体(又は抗体コンストラクト)の診断的使用を妨げる可能性がある物質であり、酵素、ホルモン及び他のタンパク質性又は非タンパク質性の化合物が挙げられ得る。単離されたか又は実質的に純粋な抗体(又は抗体コンストラクト)は、状況に応じて、所与の試料における全タンパク質/ポリペプチド含量の5重量%~99.9重量%を占め得ることが理解される。所望の抗体(又は抗体コンストラクト)は、誘導性プロモーター又は高発現プロモーターを使用することにより大幅に高い濃度で産生され得る。この定義には、当技術分野で既知の多様な生物及び/又は宿主細胞における抗体(又は抗体コンストラクト)の産生が含まれる。特定の実施形態では、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーターの使用により、N末端若しくは内部アミノ酸配列の少なくとも15の残基を得るのに十分な程度まで精製されるか、又は(2)クマシーブルー若しくは好ましくは銀染色法を使用する非還元条件下又は還元条件下でのSDS-PAGEにより均一になるまで精製される。しかしながら、通常、単離された抗体又は抗体コンストラクトは、少なくとも1つの精製工程により調製される。
【0079】
本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、可溶性BCMA(sBCMA)に結合する。「可溶性BCMA」は、膜結合型BCMAの開裂断片である。開裂は、例えば、セクレターゼにより生じ、流出したBCMA(sBCMA)は、細胞表面から放出される。可溶性BCMAレベルは、通常、健康な個体と比べてMM患者で上昇しているが、他の疾患を有する患者でも上昇している。更に、患者の血清中のsBCMAレベルは、疾患の状態及び予後と相関している場合がある。sBCMAのレベルは、BCMA過剰発現又は上昇したsBCMAレベルに関連する疾患の成功した治療後にも顕著に低下し得る。sBCMAは、ヒトsBCMAであることが想定される。全(膜結合型)ヒトBCMA分子(B細胞成熟化抗原、TNFRSF17、CD269)のアミノ酸配列を配列番号33で示し、ヒトBCMAの細胞外ドメインのアミノ酸配列を配列番号34で示す。この配列は、流出した又は可溶性のBCMAにも対応する。換言すると、sBCMAは、配列番号34で示されるアミノ酸配列を有することが想定される。
【0080】
用語「~の存在下で結合が生じる」は、本発明に関連して、同一の標的(本明細書ではsBCMA)への2種(又はより多くの)抗体(又は抗体コンストラクト)の同時の結合が存在することを意味する。換言すると、2種(又はより多くの)抗体(又は抗体コンストラクト)は、標的(本明細書ではsBCMA)への結合に関して(互いに)競合しないか又は有意には競合しない。一実施形態によれば、これは、1つのモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が第2のモノクローナル抗体若しくは抗体コンストラクト(又は第3の抗体若しくは抗体コンストラクトの追加、下記を参照されたい)のsBCMAエピトープと異なるsBCMAエピトープに結合することも意味する可能性がある。
【0081】
本発明の一態様によれば、sBCMAへのモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の結合は、sBCMAへの第2モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の結合の存在下での発生に加えて、sBCMAへの第3の抗体又は抗体コンストラクトの結合の存在下で生じる。この第3の抗体又は抗体コンストラクトは、BCMAの細胞外ドメインに結合する治療用抗体又は抗体コンストラクトであり得る。
【0082】
本発明の一実施形態では、第3の抗体又は抗体コンストラクトは、BCMAのエピトープクラスター3に結合する。より好ましくは、第3の抗体又は抗体コンストラクトは、ヒトBCMAのエピトープクラスター3に結合する。ヒトBCMAのエピトープクラスター3のアミノ酸配列を配列番号35で示す。BCMAの前記エピトープクラスター3に結合するドメインを有する抗体コンストラクトは、国際公開第2013/072406号パンフレットで詳細に説明されており、この内容は、参照により本明細書に組み込まれる。この抗体コンストラクトは、非常に有益なエピトープ/活性関係を有することが示された。本発明の「第3の抗体又は抗体コンストラクト」は、国際公開第2013/072406号パンフレットで特許請求されているように、BCMAに結合し且つVH-CDR1、VH-CDR2及びVH-CDR3を含むVH領域と、VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3を含むVL領域とを含むドメインを含むことが想定される。第3の抗体又は抗体コンストラクトは、国際公開第2013/072406号パンフレットの特許請求の範囲で開示されているように、BCMAに結合し且つVH領域及び/又はVL領域を含むドメインを含むことが更に想定される。第3の抗体又は抗体コンストラクトは、国際公開第2013/072406号パンフレットで開示されており且つ特許請求されているように、BCMAに結合するドメインと、CD3(例えば、ヒトCD3、好ましくはCD3イプシロン又はヒトCD3イプシロン)に結合するドメインとを含むことも想定される。第3の抗体又は抗体コンストラクトは、国際公開第2013/072406号パンフレットで定義されており且つ特許請求されている抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか、又は国際公開第2013/072406号パンフレットで定義されており且つ特許請求されている抗体とsBCMAへの結合に関して競合することも想定される。
【0083】
(ヒト)CD3に対するか又は具体的にはCD3イプシロンに対する抗体(又は二重特異性抗体コンストラクト)は、当技術分野で既知であり、そのCDR配列、VH配列及びVL配列は、本発明の「第1」、「第2」又は「第3」の抗体/抗体コンストラクトの第2の結合ドメインのベースとしての役割を果たし得る。例えば、Kungらは、1979年に、ヒトT細胞上のCD3(具体的にはCD3のイプシロン鎖)を認識する最初のmAbであるOKT3(Ortho Kung T3)の開発を報告した。OKT3(ムロモナブ)は、ヒトにおける治療に利用可能になった最初のマウス由来モノクローナル抗体であった。最近の抗CD3モノクローナル抗体として、オテリキシズマブ(TRX4)、テプリズマブ(MGA031)、フォラルマブ及びビジリズマブが挙げられ、いずれもCD3のイプシロン鎖を標的とする。(癌)標的及びCD3に対する二重特異性抗体コンストラクトの開発及び(前)臨床試験も行われており、そのCD3結合ドメイン(CDR、VH、VL)は、本発明の第1、第2又は第3の抗体/抗体コンストラクトの第2の結合ドメインのベースとしての役割を果たし得る。例として下記が挙げられるが、これらに限定されない:ブリナツモマブ、ソリトマブ(MT110、AMG110)、カツマキソマブ、デュボルツキシズマブ、エルツマキソマブ、モスネツズマブ、FBTA05(Bi20、TPBs05)、CEA-TCB(RG7802、RO6958688)、AFM11及びMGD006(S80880)。CD3結合ドメインの他の例は、例えば、米国特許第7,994,289 B2号明細書、同第7,728,114 B2号明細書、同第7,381,803 B1号明細書、同第6,706,265 B1号明細書で開示されている。
【0084】
本発明の第3の抗体コンストラクトは、本明細書で説明されているBCMAに結合するドメインと、本明細書で説明されているCD3に結合するドメインと、この抗体コンストラクトの半減期延長をもたらすドメインとを含むことが更に想定される。この後者のドメインは、2つのポリペプチド単量体であって、それぞれヒンジ、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む2つのポリペプチド単量体を含み得、前記2つのポリペプチド単量体は、ペプチドリンカーを介して互いに融合している。そのような抗体コンストラクト及びHLEドメインは、国際公開第2017/134134号パンフレットで詳細に説明されており、この内容は、参照により本明細書に含まれる。
【0085】
更なる実施形態では、「第3の抗体又は抗体コンストラクト」は、下記のアミノ酸配列を有するとして国際公開第2014/089335号パンフレットで開示されている抗体/抗体コンストラクトである:国際公開第2014/089335号パンフレットのVH-CDR(配列番号4~6)、VL-CDR(配列番号106~108)、VH(配列番号206)、VL(配列番号240)。従って、第3の抗体又は抗体コンストラクトは、国際公開第2014/089335号パンフレットの配列番号4で示すVH-CDR1、配列番号5で示すVH-CDR2及び配列番号6で示すVH-CDR3を含むVH領域と、国際公開第2014/089335号パンフレットの配列番号107で示すVL-CDR1、配列番号107で示すVL-CDR2及び配列番号108で示すVL-CDR3を含むVL領域とを含み得る。第3の抗体又は抗体コンストラクトは、国際公開第2014/089335号パンフレットの配列番号206で示すVH領域又は国際公開第2014/089335号パンフレットの配列番号240で示すVL領域も含み得る。第3の抗体又は抗体コンストラクトは、本明細書において上記で定義された抗体と同一のsBCMAエピトープにも結合し得るか、又は本明細書において上記で定義された抗体(即ち国際公開第2014/089335号パンフレットから引用される配列を有する抗体)とsBCMAへの結合に関しても競合し得る。
【0086】
本発明のモノクローナル抗体/抗体コンストラクトは、(a)ウサギVH領域、(b)ウサギVL領域、又は(c)ウサギVH領域及びウサギVL領域を含むことが想定される。更に、モノクローナル抗体全体がウサギ抗体であり得る。従って、可変領域又は抗体/抗体コンストラクトは、それ自体がウサギに由来する。用語「ウサギ抗体」、「ウサギ抗体コンストラクト」、「ウサギ結合ドメイン」及び「ウサギVH/VL領域」は、抗体由来領域(例えば、可変領域及び定常領域)又は当技術分野で既知のウサギ生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に実質的に相当するドメインをそれぞれ含む抗体、抗体コンストラクト、結合ドメイン及びVH/VL領域を含む。本発明のウサギ抗体、ウサギ抗体コンストラクト又はウサギ結合ドメインは、ウサギ生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発若しくは部位特異的変異誘発によるか又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)を例えばCDR(特にCDR3)に含み得る。ウサギ抗体、ウサギ抗体コンストラクト及びウサギ結合ドメインの定義は、本明細書で使用される場合、抗体の非人工的及び/又は遺伝子的に変更されたウサギ配列のみを含む完全なウサギ抗体、抗体コンストラクト、VH/VL領域及び結合ドメインも企図する。これらを、例えば当技術分野で既知の標準的な技術を使用するウサギの免疫化キャンペーンにより得ることができる。本発明のモノクローナル抗体は、ウサギVH領域及び/又はウサギVL領域と、抗体定常領域とを含むこともでき、この抗体定常領域は、sBCMA検出システムの要件及び設計に応じて、例えばウサギ定常領域(例えば、配列番号31の例示的なウサギ重鎖定常領域若しくは配列番号32の例示的なウサギ軽鎖定常領域)又は他の種(ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ヤギ等)由来の定常領域である。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、モノクローナル抗体又は抗体コンストラクトは、
a)配列番号1で示されるVH-CDR1、配列番号2で示されるVH-CDR2及び配列番号3で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号4で示されるVL-CDR1、配列番号5で示されるVL-CDR2及び配列番号6で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;
b)配列番号11で示されるVH-CDR1、配列番号12で示されるVH-CDR2及び配列番号13で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号14で示されるVL-CDR1、配列番号15で示されるVL-CDR2及び配列番号16で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;又は
c)配列番号21で示されるVH-CDR1、配列番号22で示されるVH-CDR2及び配列番号23で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号24で示されるVL-CDR1、配列番号25で示されるVL-CDR2及び配列番号26で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含む。
【0088】
本発明のモノクローナル抗体が上記a)、b)若しくはc)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか、又は上記a)、b)若しくはc)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合することも更に想定される。
【0089】
抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインが、別の所与の抗体、抗体コンストラクト又は結合ドメインとsBCMA(又はBCMAの細胞外ドメイン)の同一のエピトープに結合するか否かを様々な分析(例えば、例えば国際公開第2013/072406号パンフレットで説明されているようなキメラBCMA分子又は変異BCMA分子によるエピトープマッピング)により測定し得る。エピトープを決定する他の方法(例えば、アラニンスキャニング)が本明細書で説明されており(例えば、Morrison KL&Weiss GA.Curr Opin Chem Biol.2001 Jun;5(3):302-7を参照されたい)、ここで、分析する標的アミノ酸配列内の各残基は、例えば、部位特異的変異誘発により、アラニンに置き換えられる。アラニンの、他のアミノ酸の多くが有する二次構造優先性を模倣するにも関わらず、嵩高くなく、化学的に不活性なメチル官能基に起因して、アラニンが使用される。ときに、変異残基のサイズの保存が必要である場合、バリン又はロイシン等の嵩高いアミノ酸が使用され得る。アミノ酸の系統的変異を標的タンパク質の配列に導入し、各変異タンパク質への抗体の結合を試験して、エピトープを含むアミノ酸を同定するこの方法は、「部位特異的変異誘発」とも呼ばれる。標的抗原上の抗体エピトープのマッピングに利用可能な他の方法は、ハイスループットショットガン変異誘発エピトープマッピング、架橋共役型質量分析、X線共結晶学、低温電子顕微鏡及び水素-重水素交換である。
【0090】
抗体又は抗体コンストラクトが、別の所与の抗体又は抗体コンストラクトと抗原(例えば、BCMA又はsBCMA)への結合に関して競合するか否かを競合ELISA等の競合アッセイで測定し得る。アビジンが共役したマイクロ粒子(ビーズ)も使用し得る。アビジンでコーティングされたELISAプレートと同様に、ビオチン化タンパク質と反応すると、これらのビーズの各々を、アッセイを実施し得る基質として使用し得る。抗原をビーズにコーティングし、次に第1の抗体でプレコーティングする。二次抗体を加え、任意の更なる結合を決定する。フローサイトメトリーで読み取りを行う。BCMAを天然に発現する細胞又はBCMAで安定的に若しくは一過性に形質転換された細胞のいずれかを使用して、細胞ベースの競合アッセイを使用し得る。更に、本発明の実施例2b)は、sBCMAへの結合に関する2種の抗体/抗体コンストラクト間の競合を決定するためにも使用され得るOctet競合アッセイを説明する。用語「結合に関して競合する」は、これに関連して、上記で開示されているアッセイのいずれか1つにより決定された場合、2つの試験抗体間に少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の競合が生じることを意味する。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、モノクローナル抗体は、
a)配列番号7、17若しくは27のいずれか1つで示されるVH領域を含むか;
b)配列番号8、18若しくは28のいずれか1つで示されるVL領域を含むか;
c)配列番号7で示されるVH領域と、配列番号8で示されるVL領域とを含むか;
d)配列番号17で示されるVH領域と、配列番号18で示されるVL領域とを含むか;
e)配列番号27で示されるVH領域と、配列番号28で示されるVL領域とを含むか;又は
本発明のモノクローナル抗体は、
f)c)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはc)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合するか;
g)d)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはd)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合するか;又は
h)e)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはe)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合する。
【0092】
本発明のモノクローナル抗体(若しくは「第1のモノクローナル抗体」)及び/又は本明細書で定義されている第2のモノクローナル抗体は、サンプル中のsBCMAに結合することが想定される。一実施形態によれば、このサンプルは、生体サンプルであり得る。一実施形態によれば、このサンプルは、ヒトサンプル、例えばヒト生体サンプルである。この生体サンプルは、(ヒト)血清サンプル、血漿サンプル、血液サンプル、骨髄サンプル又は組織サンプルであり得る。このサンプルは、(ヒト)骨髄単核細胞又は(ヒト)末梢血単核細胞の細胞培養物から得られた上清でもあり得る。このサンプルは、sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を有すると疑われているか若しくは有する(診断されている)対象(例えば、ヒト対象)又はsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置を受けている対象から得ることができる。
【0093】
「血液」は、必須の物質(例えば、栄養素及び酸素)を細胞に送達し且つ代謝老廃物をこの同一細胞から運び出す、ヒト及び他の動物の体液である。脊椎動物では、血液は、血漿に懸濁された血液細胞で構成されている。血漿(blood plasma)又は「血漿(plasma)」は、数種類の血液細胞が懸濁されている血液の液体成分である。血漿は、ほとんどが水であり、溶解したタンパク質(例えば、血清アルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン等)、グルコース、凝固因子、電解質、ホルモン、二酸化炭素及び酸素を含む。血清(blood serum)又は「血清(serum)」は、凝固因子を含まない血漿である。従って、血清は、凝固で使用されない全ての血漿タンパク質を含む。「骨髄」は、骨の海綿質又は海綿状の部分で見出され得る半固体組織である。「組織」とは、細胞と完全な臓器との間の細胞組織化レベルのことである。組織は、一緒に特定の機能を実行する、同様の細胞と、その同一起源からの細胞外マトリックスとの集合体である。次いで、複数の組織が共に機能的にグループ化されることにより、臓器が形成される。
【0094】
本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の共有結合的改変も本発明の範囲内に含まれ、これは、必ずしもというわけではないが、概して翻訳後に行われる。例えば、抗体のいくつかの種類の共有結合的改変は、この抗体の特定のアミノ酸残基を、選択された側鎖又はN末端残基若しくはC末端残基と反応し得る有機誘導体化剤と反応させることにより、分子内に導入される。二官能性薬剤による誘導体化は、様々な方法(特に検出方法)で使用される水不溶性支持体マトリックス又は表面に本発明の抗体を架橋させるのに有用である。グルタミニル残基及びアスパラギニル残基は、多くの場合、脱アミド化されて、それぞれ対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基になる。代わりに、これらの残基は、弱酸性条件下で脱アミド化される。これらの残基のいずれの形態も本発明の範囲内に含まれる。他の改変として、下記が挙げられる:プロリン及びリシンのヒドロキシル化、セリル残基又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リシン側鎖、アルギニン側鎖及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman&Co.,San Francisco,1983,pp.79-86)、N末端アミンのアセチル化並びに任意のC末端カルボキシル基のアミド化。
【0095】
本発明によれば、モノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)、「第1の」モノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)及び/又は第2のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)は、検出可能な標識と共役している。一部の実施形態では、本発明のモノクローナル抗体の共有結合的改変は、1つ又は複数の標識(例えば、検出標識)の付加を含む。この抗体には、潜在的な立体障害を低減するために様々な長さのスペーサーアームを介して標識又は標識基が共役され得る。様々なタンパク質標識方法が当技術分野で既知であり、本発明の実施で使用され得る。用語「標識」又は「標識基」は、任意の検出可能な標識を指す。一般に、標識は、それを検出するアッセイに応じて様々なクラスに分けられ、下記の例が挙げられるが、これらに限定されない:
a)放射性同位体又は重同位体であり得る同位体標識、例えば放射性同位体又は放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、89Zr、90Y、99Tc、111In、125I、131I)
b)磁気標識(例えば、磁気粒子)
c)酸化還元活性部分
d)光学色素(限定されないが、発色団、蛍光体及びフルオロフォアを含む)、例えば蛍光基(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、化学発光基及び「低分子」蛍光体又はタンパク質性蛍光体のいずれかであり得るフルオロフォア
e)酵素群(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)
f)ビオチン化基
g)二次レポーターにより認識される所定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ等)。
【0096】
「蛍光標識」は、その固有の蛍光特性により検出され得る任意の分子を意味する。好適な蛍光標識として下記が挙げられるが、これらに限定されない:フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン、クマリン、メチルクマリン類、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファーイエロー、Cascade BlueJ、テキサスレッド、IAEDANS、EDANS、BODIPY FL、LC Red 640、Cy 5、Cy 5.5、LC Red 705、オレゴングリーン、Alexa-Fluor色素(Alexa Fluor 350、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680)、Cascade Blue、Cascade Yellow及びR-フィコエリトリン(PE)(Molecular Probes、Eugene、OR)、FITC、ローダミン及びテキサスレッド(Pierce、Rockford、IL)、Cy5、Cy5.5、Cy7(Amersham Life Science、Pittsburgh、PA)。フルオロフォア等の好適な光学色素は、Richard P.HauglandによるMolecular Probes Handbookで説明されている。
【0097】
好適なタンパク質性蛍光標識として下記も挙げられるが、これらに限定されない:緑色蛍光タンパク質、例えばRenilla、Ptilosarcus又はAequorea種のGFP(Chalfie et al.,1994,Science 263:802-805)、EGFP(Clontech Laboratories,Inc.,Genbank(登録商標)アクセッション番号U55762)、青色蛍光タンパク質(BFP,Quantum Biotechnologies,Inc.1801 de Maisonneuve Blvd.West,8th Floor,Montreal,Quebec,Canada H3H 1J9;Stauber,1998,Biotechniques 24:462-471;Heim et al.,1996,Curr.Biol.6:178-182)、強化型黄色蛍光タンパク質(EYFP、Clontech Laboratories,Inc.)、ルシフェラーゼ(Ichiki et al.,1993,J.Immunol.150:5408-5417)、βガラクトシダーゼ(Nolan et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2603-2607)及びRenilla(国際公開第92/15673号パンフレット、同第95/07463号パンフレット、同第98/14605号パンフレット、同第98/26277号パンフレット、同第99/49019号パンフレット、米国特許第5,292,658号明細書;同第5,418,155号明細書;同第5,683,888号明細書;同第5,741,668号明細書;同第5,777,079号明細書;同第5,804,387号明細書;同第5,874,304号明細書;同第5,876,995号明細書;同第5,925,558号明細書)。
【0098】
本発明の抗体/抗体コンストラクトは、例えば、この分子の単離に役立つか又はこの分子の薬物動態プロファイルの適合に関連する追加ドメインも含み得る。抗体/抗体コンストラクトの単離に役立つドメインは、単離方法(例えば、単離カラム)で捕捉され得るペプチドモチーフ又は二次的に導入された部分から選択され得る。そのような追加ドメインの非限定的な実施形態は、Mycタグ、HATタグ、HAタグ、TAPタグ、GSTタグ、キチン結合ドメイン(CBDタグ)、マルトース結合タンパク質(MBPタグ)、Flagタグ、Strepタグ及びそのバリアント(例えば、StrepIIタグ)並びにHisタグとして既知のペプチドモチーフを含む。同定されたCDRを特徴とする、本明細書で開示されている抗体コンストラクトの全ては、分子のアミノ酸配列中の連続するHis残基(例えば、5つのHis残基又は6つのHis残基(ヘキサヒスチジン))のリピートとして一般に知られるHisタグドメインを含み得る。Hisタグは、例えば、抗体コンストラクトのN末端又はC末端に位置し得る。一実施形態では、本発明に係る抗体コンストラクトのC末端にペプチド結合によりヘキサヒスチジンタグが連結されている。
【0099】
本発明は、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)をコードするポリヌクレオチド/核酸分子を更に提供する。核酸分子は、ヌクレオチドで構成されるバイオポリマーである。ポリヌクレオチドは、鎖状で共有結合した13以上のヌクレオチド単量体で構成されるバイオポリマーである。DNA(例えば、cDNA)及びRNA(例えば、mRNA)は、別個の生物学的機能を備えたポリヌクレオチド/核酸分子の例である。ヌクレオチドは、DNA又はRNAのような核酸分子の単量体又はサブユニットとしての役割を果たす有機分子である。本発明の核酸分子又はポリヌクレオチドは、二本鎖又は一本鎖、線状又は環状であり得る。核酸分子又はポリヌクレオチドは、ベクターに含まれることが想定される。更に、そのようなベクターは、宿主細胞に含まれることが想定される。前記宿主細胞は、例えば、本発明のベクター又はポリヌクレオチド/核酸分子による形質転換又はトランスフェクション後、モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の発現能を有する。この目的のために、ポリヌクレオチド又は核酸分子は、制御配列に作動可能に連結されている。
【0100】
遺伝子コードは、遺伝物質(核酸)内でコードされる情報がタンパク質に翻訳される規則のセットである。生細胞における生物学的解読は、mRNAが指定する順序でアミノ酸を連結するリボソームが、tRNA分子を使用してアミノ酸を運び、mRNAを一度に3つのヌクレオチドずつ読み取ることにより達成される。コードは、タンパク質合成中に次にいずれのアミノ酸が付加されるかについて、コドンと呼ばれるこれらのヌクレオチドトリプレットの配列がどのように指定するかを定義する。いくつかの例外があるものの、核酸配列中の3ヌクレオチドコドンは、単一のアミノ酸を指定する。大多数の遺伝子は、正確に同じコードでコードされるため、多くの場合、この特定のコードは、カノニカル又は標準遺伝子コードと称される。
【0101】
コドンの縮重は、アミノ酸を指定する3塩基対コドンの組み合わせの多重性として示される遺伝子コードの重複性である。縮重は、コード可能なアミノ酸と比べてコドンが多いために生じる。1つのアミノ酸をコードするコドンは、その3つの位置のいずれかにおいて異なり得るが、ほとんどの場合は、この違いは、2番目又は3番目の位置である。例えば、コドンGAA及びGAGは、両方ともグルタミン酸を指定し、且つ重複性を呈するが、いずれもいかなる他のアミノ酸も指定せず、従って曖昧さを示さない。様々な生物の遺伝子コードは、他のものと比べて、同一のアミノ酸をコードするいくつかのコドンの1つを使用するように偏り得、即ち、ある1つは、偶然に予想されるよりも高頻度に見られ得る。例えば、ロイシンは、6つの別個のコドンにより指定され、そのうちのいくつかは、ほとんど使用されない。ほとんどの生物についてのゲノムコドン使用頻度を詳述するコドン使用表が利用可能である。組換え遺伝子技術では、コドン最適化と称される技術を実施することにより、この効果がよく利用され、ここで、例えばタンパク質発現を増加させるために、このコドンを使用して、それぞれの宿主細胞(例えば、ヒト、ハムスター由来の細胞、大腸菌(Escherichia coli)細胞又はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞)が優先するポリヌクレオチドを設計する。従って、本開示のポリヌクレオチド/核酸分子は、コドン最適化されることが想定される。それにも関わらず、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)をコードするポリヌクレオチド/核酸分子は、所望のアミノ酸をコードする任意のコドンを使用して設計され得る。
【0102】
一実施形態によれば、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)をコードする本発明のポリヌクレオチド/核酸分子は、1つの単一分子の形態又は2つ以上の別個の分子の形態である。本発明の抗体コンストラクトが単鎖抗体コンストラクトである場合、そのようなコンストラクトをコードするポリヌクレオチド/核酸分子も1つの単一分子の形態である可能性が最も高い。しかしながら、モノクローナル抗体(例えば、重鎖及び軽鎖)又は抗体コンストラクトの異なる成分が別個のポリペプチド鎖上に位置することも想定され、この場合、ポリヌクレオチド/核酸分子は、2つ(又はより多く)の別個の分子の形態である可能性が最も高い。
【0103】
同じことは、本発明のポリヌクレオチド/核酸分子を含むベクターにも当てはまる。本発明の抗体コンストラクトが単鎖抗体コンストラクトである場合、1つのベクターは、1つの単一の位置で(1つの単一のオープンリーディングフレーム、ORFとして)、抗体コンストラクトをコードするポリヌクレオチドを含み得る。1つのベクターは、別個の位置(個々のORFを有する)で2つ以上のポリヌクレオチド/核酸分子も含み得、これらの各々は、本発明のモノクローナル抗体の異なる成分(例えば、重鎖及び軽鎖)又は抗体コンストラクトの異なる成分をコードする。本発明のポリヌクレオチド/核酸分子を含むベクターは、1つの単一のベクター又は2つ以上の別個のベクターの形態であることが想定される。一実施形態では且つ宿主細胞中でモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)を発現させる目的のために、本発明の宿主細胞は、モノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)をコードするポリヌクレオチド/核酸分子又はそのようなポリヌクレオチド/核酸分子を含むベクターを全体として含むべきであり、これは、モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の全ての成分が、1つの単一分子としてコードされるか又は別個の分子/位置でコードされるかに関わらず、翻訳後に会合し、本発明の生物学的に活性なモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)を一緒に形成することを意味する。
【0104】
本発明は、本発明のポリヌクレオチド/核酸分子を含むベクターも提供する。ベクターは、通常、複製及び/又は発現を目的として、(外来性)遺伝物質を細胞に移入させるための媒体として使用される核酸分子である。用語「ベクター」は、限定されないが、プラスミド、ウイルス、コスミド及び人工染色体を包含する。一部のベクターは、特にクローニングのために設計されており(クローニングベクター)、他のものは、タンパク質発現のために設計されている(発現ベクター)。そのインサートを増幅するためは、いわゆる転写ベクターが主に使用される。DNAの操作は、通常、大腸菌(E.coli)ベクター上で行われ、このベクターは、大腸菌(E.coli)中でのDNAの維持に必要なエレメントを含む。しかしながら、ベクターは、酵母、植物又は哺乳動物細胞等の別の生物中でのこのベクターの維持を可能にするエレメントも有し得、このベクターは、シャトルベクターと呼ばれる。標的又は宿主細胞へのベクターの挿入は、通常、細菌細胞の場合に形質転換と呼ばれ、且つ真核細胞の場合にトランスフェクションと呼ばれるが、ウイルスベクターの挿入は、形質導入と呼ばれることが多い。
【0105】
一般に、操作されたベクターは、複製起点、多クローニング部位及び選択可能マーカーを含む。ベクター自体は、一般に、インサート(導入遺伝子)及びベクターの「骨格」としての役割を果たすより大型の配列を含むヌクレオチド配列(一般にはDNA配列)である。遺伝子コードは、所与のコード領域のポリペプチド配列を決定するが、他のゲノム領域は、このポリペプチドがいずれの時点及びいずれの箇所で産生されるかに影響し得る。従って、現代のベクターは、導入遺伝子インサート及び骨格に加えて、下記の付加的な特徴を包含し得る:プロモーター、遺伝子マーカー、抗生物質耐性、レポーター遺伝子、ターゲティング配列、タンパク質精製タグ。発現ベクター(発現コンストラクト)と呼ばれるベクターは、特に、標的細胞中での導入遺伝子の発現のためのものであり、制御配列を一般に有する。
【0106】
用語「制御配列」は、作動可能に連結されたコード配列が特定の宿主生物中で発現するのに必要なDNA配列を指す。例えば、原核生物に好適な制御配列として、プロモーター、任意選択的なオペレーター配列及びリボソーム結合部位が挙げられる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、コザック配列及びエンハンサーを利用することが知られている。
【0107】
核酸は、この核酸が別の核酸配列と機能的関係に置かれる場合、「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列又は分泌リーダーのDNAは、このDNAがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、このポリペプチドのDNAに作動可能に連結されているか、プロモーター又はエンハンサーは、これが配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されているか、又はリボソーム結合部位は、このリボソーム結合部位が翻訳を促進するような位置に置かれる場合、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、「作動可能に連結されている」とは、連結されているヌクレオチド配列が連続的であり、分泌リーダーの場合に連続的であり且つ読み取りフェーズにあることを意味する。しかしながら、エンハンサーが連続的である必要はない。連結は、好都合な制限部位におけるライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合、従来の慣習に従って合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが使用される。
【0108】
「トランスフェクション」は、標的細胞に核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)を意図的に導入するプロセスである。この用語は、真核細胞における非ウイルス方法に主に用いられる。形質導入を使用して、核酸分子又はポリヌクレオチドのウイルス媒介移入を説明することが多い。動物細胞のトランスフェクションは、典型的には、細胞膜に一過性の細孔又は「穴」を開けて材料の取り込みを可能にすることを伴う。トランスフェクションは、生物学的粒子(例えば、ウイルス形質導入とも称されるウイルストランスフェクション)、化学ベースの方法(例えば、リン酸カルシウム、リポフェクション、Fugene、カチオン性ポリマー、ナノ粒子を使用する)又は物理的処理(例えば、電気穿孔、マイクロインジェクション、遺伝子銃、細胞スクイージング、マグネトフェクション、静水圧、インペイルフェクション、音波処理、光学的トランスフェクション、熱ショック)を使用して実行することができる。
【0109】
用語「形質転換」は、細菌、更に植物細胞等の非動物真核細胞への核酸分子又はポリヌクレオチド(ベクターを含む)の非ウイルス移入を説明するために使用される。従って、形質転換は、周囲からの細胞膜を通じた直接的な取り込み及びその後の外因性遺伝物質(核酸分子)の組み込みにより生じる細菌又は非動物真核細胞の遺伝子変更である。形質転換を人為的手段により実行し得る。形質転換が起こるには、細胞又は細菌が形質転換受容性の状態でなければならず、これは、飢餓及び細胞密度等の環境条件に対する時間的に限られた反応として生じる可能性があり、且つ人為的にも誘発され得る。
【0110】
更に、本発明は、本発明のポリヌクレオチド/核酸分子又は本発明のベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」又は「レシピエント細胞」は、本発明のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)をコードするベクター、外因性核酸分子及び/若しくはポリヌクレオチドのレシピエント;並びに/又はモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)自体のレシピエントであり得るか又はあった任意の個々の細胞又は細胞培養物を含むことが意図されている。細胞へのそれぞれの物質の導入は、形質転換、トランスフェクション及び同類のものにより実行される(上記を参照されたい)。用語「宿主細胞」は、単一細胞の子孫又は潜在的子孫を含むことも意図されている。後続の世代で、天然の、偶然の又は意図的な変異のいずれかに起因したか又は環境の影響に起因した特定の改変が生じ得ることから、そのような子孫は、実際には親細胞と(形態又はゲノム若しくは全DNA相補体が)完全に同一でないこともあり得るが、それもなお本明細書で使用されるこの用語の範囲内に含まれる。好適な宿主細胞として、原核細胞又は真核細胞が挙げられ、更に、限定されないが、細菌(例えば、大腸菌(E.coli))、酵母細胞、真菌細胞、植物細胞並びに動物細胞(例えば、昆虫細胞及び哺乳動物細胞、例えばハムスター細胞、マウス細胞、ラット細胞、マカク細胞又はヒト細胞)が挙げられる。
【0111】
原核生物に加えて、糸状菌又は酵母等の真核微生物が本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)に好適なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又は一般的なパン酵母は、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかしながら、多くの他の属、種及び株が一般に利用可能であり、且つ本明細書で有用であり、例えば下記が挙げられる:シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)宿主、例えばK.ラクチス(K.lactis)、K.フラジリス(K.fragilis)(ATCC 12424)、K.ブルガリクス(K.bulgaricus)(ATCC 16045)、K.ウィッカラミイ(K.wickeramii)(ATCC 24178)、K.ワルチイ(K.waltii)(ATCC 56500)、K.ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(ATCC 36906)、K.サーモトレランス(K.thermotolerans)及びK.マルキサヌス(K.marxianus);ヤロウイア属(yarrowia)(欧州特許第402226号明細書);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(欧州特許第183070号明細書);カンジダ属(Candida);トリコデルマ・レシア(Trichoderma reesia)(欧州特許第244234号明細書);ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa);シュワニオミセス属(Schwanniomyces)、例えばシュワニオミセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);並びに糸状菌、例えばニューロスポラ属(Neurospora)、ペニシリウム属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えばA.ニデュランス(A.nidulans)及びA.ニガー(A.niger)。
【0112】
グリコシル化されたモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の発現に好適な宿主細胞は、多細胞生物に由来する。無脊椎動物細胞の例として、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルスの株及びバリアント並びに宿主由来の対応する許容される昆虫宿主細胞(例えば、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)及びカイコ(Bombyx mori))が同定されている。トランスフェクションのための様々なウイルス株(例えば、オートグラファカリフォルニア(Autographa californica)NPVのL-1バリアント及びカイコ(Bombyx mori)NPVのBm-5株)が公的に入手可能であり、そのようなウイルスを本発明に係る本明細書のウイルスとして使用し得、特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションに使用し得る。
【0113】
綿、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、シロイヌナズナ及びタバコの植物細胞培養物も宿主として使用され得る。植物細胞培養物中でのタンパク質の産生に有用なクローニング及び発現ベクターは、当業者に既知である。例えば、Hiatt et al.,Nature(1989)342:76-78,Owen et al.(1992)Bio/Technology 10:790-794,Artsaenko et al.(1995)The Plant J 8:745-750及びFecker et al.(1996)Plant Mol Biol 32:979-986を参照されたい。
【0114】
しかしながら、最も高い関心が持たれてきたのは、脊椎動物細胞であり、培養下(細胞培養下)での脊椎動物細胞の増殖は日常的手順となっている。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、下記である:SV40により形質転換されたサル腎臓CV1系統(例えば、COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胚性腎臓系統(例えば、293細胞又は懸濁培養物中での成長のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977));仔ハムスター腎臓細胞(例えば、BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(例えば、CHO、Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216 (1980));マウスセルトリ細胞(例えば、TM4、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980));サル腎臓細胞(例えば、CVI ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、VERO-76、ATCC CRL 1587);ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(例えば、BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(例えば、W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(例えば、Hep G2、1413 8065);マウス乳腺腫瘍(例えば、MMT 060562、ATCC CCL-51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y Acad.Sci.(1982)383:44-68);MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒト肝細胞腫系統(例えば、Hep G2)。
【0115】
更なる実施形態では、本発明は、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)を作製するプロセスであって、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の発現を許容する条件下において、本発明の宿主細胞を培養することと、作製されたモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)を培養物から回収することとを含むプロセスを提供する。
【0116】
本明細書で使用される場合、用語「培養」は、培地中における好適な条件下におけるインビトロでの細胞の維持、分化、成長、増殖及び/又は伝播を指す。細胞は、適切な温度及び混合気体において細胞成長培地中で成長して維持される。培養条件は、細胞型毎に幅広く異なる。典型的な成長条件は、約37℃の温度、約5%のCO2濃度及び約95%の湿度である。成長培地のレシピは、例えば、pH、炭素源(例えば、グルコース)の濃度、成長因子の性質及び濃度並びに他の栄養素(例えば、アミノ酸又はビタミン)の存在が異なり得る。補足培地に使用される成長因子は、動物血液の血清(例えば、胎仔ウシ血清(FBS)、仔ウシ血清(FCS)、ウマ血清及びブタ血清)に由来することが多い。細胞を浮遊培養液中において又は付着培養物としてのいずれかで成長させ得る。また、浮遊培養下で生存可能であるように改変されており、従って付着条件で可能であろうよりも高密度に成長し得る細胞株もある。
【0117】
用語「発現」は、本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の作製に関わる任意の工程を含み、この工程として下記が挙げられるが、これらに限定されない:転写、転写後改変、翻訳、折り畳み、翻訳後改変、特定の細胞内位置又は細胞外位置へのターゲティング及び分泌。用語「回収」は、細胞培養物からモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)を単離することが意図された一連のプロセスを指す。「回収」又は「精製」プロセスでは、細胞培養物のタンパク質部分と非タンパク質部分とが分離されて、最終的に他の全てのポリペプチド及びタンパク質から所望のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が分離され得る。分離工程は、通常、タンパク質サイズ、物理化学的特性、結合親和性及び生物学的活性の違いを利用する。分取的精製は、後続の使用のため比較的多量の精製済タンパク質を生じさせることを目指す一方、分析的精製は、様々な研究又は分析目的で比較的少量のタンパク質を生じさせる。
【0118】
組換え技術を使用する場合、モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、細胞内で産生され得るか、細胞周辺腔で産生され得るか、又は培地中に直接分泌され得る。モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が細胞内で産生される場合、最初の工程として、粒子状デブリ、宿主細胞又は溶解断片のいずれかを例えば遠心分離又は限外ろ過により除去する。本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、例えば、大腸菌(E.coli)等の細菌中で産生され得る。発現後、可溶性画分中の細菌細胞ペーストからコンストラクトを単離し、例えばアフィニティークロマトグラフィー及び/又はサイズ排除により精製し得る。最終的な精製を、哺乳動物細胞中で発現されて培地中に分泌されたモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の精製プロセスと同じように実行し得る。Carter et al.(Biotechnology(NY)1992 Feb;10(2):163-7)は、大腸菌(E.coli)の細胞周辺腔に分泌される抗体を単離する手順を説明する。
【0119】
モノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が培地中に分泌される場合、そのような発現システムからの上清を、一般に市販のタンパク質濃縮フィルタ(例えば、限外ろ過ユニット)を使用して最初に濃縮する。
【0120】
宿主細胞から調製された本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)を、例えばヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及びアフィニティークロマトグラフィーを使用して回収又は精製し得る。回収するモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクトに応じて、イオン交換カラムによる分画、混合モードイオン交換、HIC、エタノール沈殿、サイズ排除クロマトグラフィー、逆相HPLC、シリカによるクロマトグラフィー、ヘパリンセファロースによるクロマトグラフィー、陰イオン交換樹脂又は陽イオン交換樹脂によるクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、イムノアフィニティー(例えば、プロテインA/G/L)クロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、SDS-PAGE、超遠心分離及び硫安塩析等の他のタンパク質精製技術も利用可能である。上述の工程のいずれでも、タンパク質分解を阻害するためにプロテアーゼ阻害薬が含まれ得、汚染物質の成長を防止するために抗生物質が含まれ得る。
【0121】
更に、本発明は、本発明のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を含むか、又は本発明のプロセスによって作製されたモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を含む組成物又は製剤を提供する。この組成物は、好ましくは、診断用組成物である。本明細書で使用される場合、用語「診断用組成物」は、診断キット又は検出システムでの使用に適した組成物に関する。本発明の1つの可能な診断用組成物は、好ましくは、サンプル中のsBCMAの検出に有用な量で本発明のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の1つ又は複数を含む。この診断用組成物は、1種又は複数の担体、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤、保存剤及び/又は補助剤の好適な製剤を更に含み得る。本発明の診断用組成物として、液体組成物、凍結組成物及び凍結乾燥組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
この組成物は、診断上許容される担体等の担体を含み得る。一般に、本明細書で使用される場合、「診断上許容される担体」は、診断用途に適合するあらゆる水性溶液及び非水性溶液、滅菌溶液、溶媒、緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液)、水、懸濁液、エマルション(例えば、油/水エマルション)、様々な種類の湿潤剤、リポソーム、分散媒並びにコーティングを意味する。診断用組成物におけるそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野で公知であり、そのような担体を含む組成物は、公知の従来方法により製剤化され得る。
【0123】
特定の実施形態では、本発明の抗体(又は抗体コンストラクト)と、本節及び本明細書の他の箇所で例示的に説明されているもの等の更なる1種又は複数の賦形剤とを含む診断用組成物が提供される。本発明では、賦形剤を多様な目的(例えば、製剤の物理的特性、化学的特性若しくは生物学的特性の調整(例えば、粘度の調整))のために使用し得、並びに/又は有効性を改善するために、且つ/若しくは例えば製造、出荷、貯蔵、使用前調製、投与及びその後に生じるストレスに起因する分解及び変質に対してそのような製剤及びプロセスを安定化させるために本発明のプロセスで使用し得る。賦形剤は、一般に、その最低有効濃度で使用されるべきである。
【0124】
特定の実施形態では、診断用組成物は、この組成物の特定の特徴(例えば、pH、オスモル濃度、粘度、清澄性、色、等張性、匂い、無菌性、安定性、溶解速度若しくは放出速度、吸着又は透過)を改変、維持又は保存する目的で製剤化材料を含み得る(Remington’s Pharmaceutical Sciences,18”Edition,1990,Mack Publishing Companyを参照されたい)。そのような実施形態では、好適な製剤化材料として下記が挙げられ得るが、これらに限定されない:
・アミノ酸
・抗菌剤及び抗真菌剤等の抗微生物剤
・抗酸化剤
・組成物を生理的pH又はそれよりわずかに低いpHで維持し、典型的には約5~約8又は9のpH範囲内に維持するために使用される緩衝液、緩衝系及び緩衝剤
・非水性溶媒、植物油及び注射用有機エステル
・水等の水性担体、アルコール性/水性溶液、エマルション又は懸濁液、例えば生理食塩水及び緩衝媒体
・ポリエステル等の生分解性ポリマー
・増量剤
・キレート剤
・等張剤及び吸収遅延剤
・錯化剤
・充填剤
・炭水化物
・好ましくは、ヒト由来の(低分子量)タンパク質、ポリペプチド又はタンパク質性担体
・着色剤及び香味剤
・含硫還元剤
・希釈剤
・乳化剤
・親水性ポリマー
・塩形成対イオン
・保存剤
・金属錯体
・溶媒及び共溶媒
・糖類及び糖アルコール類
・懸濁剤
・界面活性剤又は湿潤剤
・安定促進剤
・等張化促進剤
・非経口送達媒体
・静脈内送達媒体。
【0125】
診断用組成物の様々な構成成分が異なる効果を有し得ることは、常識であり、例えば、アミノ酸は、緩衝液、安定剤及び/又は抗酸化剤としての役割を果たし得;マンニトールは、増量剤及び/又は等張化促進剤としての役割を果たし得;塩化ナトリウムは、送達媒体及び/又は等張化促進剤としての役割を果たし得る。
【0126】
更なる態様によれば、本発明は、検出システムであって、
a)sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)と、
b)sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)と
を含み、sBCMAへの第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の結合は、sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の存在下で生じる、検出システムを提供する。
【0127】
本発明は、検出システムであって、
a)sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)と、
b)sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)と
を含み、sBCMAへの第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の結合は、sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の存在下で生じる、検出システムも提供する。
【0128】
本発明は、検出システムであって、
a)sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)と、
b)sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)と
を含み、sBCMAへの第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の結合は、sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の存在下で生じ、sBCMAへの第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の結合は、sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)の存在下で生じる、検出システムも提供する。
【0129】
「検出システム」は、分析アッセイを実行するための試薬を含むキット若しくはツール(又は診断用キット/ツール)である。本発明に関連して、このアッセイは、サンプル(通常、液体サンプル)中のsBCMAの存在を検出及び/又は定量する。この検出システムは、sBCMAに結合する1対の抗体(第1のモノクローナル抗体及び第2のモノクローナル抗体)を含む。通常、この検出システムは、検出する抗原(例えば、「直接ELISA」の場合)又はsBCMAに結合する(モノクローナル)抗体(「捕捉抗体」)若しくはsBCMAに結合する抗体(捕捉抗体)に結合する「第2の抗体」(例えば、抗Fc抗体)のいずれかを固定するための表面として機能する固体支持体(例えば、マイクロタイタープレート又は膜)の使用を含む。一般に、この固定化は、(表面への吸着により)非特異的に生じるか又は(第2の抗体等の抗体による捕捉により)特異的に生じる。検出システムは、sBCMAに結合する(モノクローナル)検出抗体(任意選択的に、酵素、検出可能な標識又はレポーター基と共役している)と、この検出抗体に結合し、且つ酵素、検出可能な標識又はレポーター基と共役している任意選択的な第2の抗体(例えば、抗Fc抗体)とを更に含み得る。この場合、捕捉抗体は、「sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)」であり得、且つ検出抗体は、「sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)」であり得るか又はその逆であり得る。換言すると、本発明の第1又は第2のモノクローナル抗体又は抗体コンストラクトは、酵素、検出可能な標識又はレポーター基と共役し得る。
【0130】
非常に公知の検出システムは、ELISAアッセイであり、このELISAアッセイを本発明の目的のために使用し得る。「サンドイッチ」ELISAを使用して、サンプル抗原(本明細書ではsBCMA)を検出するか、又はこの抗原の未知の量を定量する。この工程は、下記を含み得る:いわゆる「捕捉抗体」の既知の量が結合している表面を準備する。この結合は、この表面への捕捉抗体の吸着により直接生じ得るか、又はこの表面に吸着されて捕捉抗体に結合する第2の抗体(例えば、抗Fc抗体)を介して生じ得る。この表面上でのあらゆる非特異的結合部位をブロックする。この表面に抗原含有サンプルを適用し、抗原を抗体で捕捉する(結合させる)。プレートを洗浄し、結合していない抗原を除去する。「検出抗体」を添加して抗原に結合させる。この検出抗体は、酵素、検出可能な標識又はレポーター基と共役し得る(例えば、共有結合的に連結され得る)。そうでない場合、酵素、検出可能な標識又はレポーター基と共役しており、且つ検出抗体(例えば、この検出抗体のFc領域)に結合する第2の抗体を適用する。プレートを洗浄し、結合していないあらゆる抗体を除去する。検出可能な形態(例えば、光シグナル(例えば、色若しくは蛍光)又は電気化学的シグナル)に(例えば酵素により)変換される化学基質を添加する。プレートウェル又は表面の吸光度又は蛍光若しくは電気化学的シグナル(例えば、電流)を測定して、抗原の存在及び/又は量を決定する。一般に使用される酵素マーカーとして、下記が挙げられる:
- OPD(o-フェニレンジアミン二塩酸塩)は、琥珀色となり、共役タンパク質として使用されることが多い西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を検出する
- TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)は、HRPを検出すると青色となり、硫酸又はリン酸を検出すると黄色になる。
- ABTS(2,2’-アジノビス[3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸]-ジアンモニウム塩)は、HRPを検出と緑色になる
- PNPP(p-ニトロフェニルリン酸二ナトリウム塩)は、アルカリホスファターゼを検出すると黄色になる。
【0131】
従来のELISAは、典型的には、抗原の存在を示すために色の変化を観察し得る発色性のレポーター及び基質を含む。新規のELISA類似の技術は、蛍光、電気化学発光及び定量的PCRレポーターを使用して、定量可能なシグナルを生じる。これらの新規のレポーターは、より高い感度及び多重化等の様々な利点を有し得る。技術用語では、これらのアッセイは、「酵素結合型」ではなく、代わりにいくつかの非酵素的レポーターに結合することから、厳密には「ELISA」ではない。しかしながら、これらのアッセイの一般手な原理がほぼ類似していることを考えると、これらのアッセイは、ELISAと同一のカテゴリーに分類されることが多い。
【0132】
本検出システムを定性フォーマットで使用し得るか、又は定量フォーマットで使用し得る。定性的な結果は、サンプルに関する単純な陽性又は陰性の結果(あり又はなし)を提供する。陽性と陰性との間のカットオフは、統計的であり得る。標準偏差(検査に内在する誤差)の2~3倍を使用して、陰性サンプルから陽性を区別することが多い。定量フォーマットでは、サンプルの光学密度(OD)又は電気化学的シグナルを標準曲線と比較し、この標準曲線は、典型的には、標的分子(sBCMA)の既知の濃度の溶液の連続希釈である。
【0133】
本発明に係るモノクローナル抗体及び本明細書において上記で提供された第2のモノクローナル抗体の定義及び仕様は、本発明の検出システム内に含まれる第1のモノクローナル抗体及び第2のモノクローナル抗体に同様に当てはまる。例えば、sBCMAは、配列番号34で示されるアミノ酸配列を有することが想定される。sBCMAへの第1のモノクローナル抗体の結合及びsBCMAへの第2のモノクローナル抗体の結合は、sBCMAに結合する第3の抗体又は抗体コンストラクトの存在下で生じることも想定される。この第3の抗体又は抗体コンストラクトは、治療用抗BCMA抗体又は抗体コンストラクト(例えば、抗体薬物コンジュゲート(ADC)又はCD3×BCMA二重特異性抗体)であり得る。この第3の抗体又は抗体コンストラクトは、本検出システムを使用して分析するサンプル(例えば、生体サンプル)中に存在し得る。sBCMAに結合する第3の抗体/抗体コンストラクトの更なる詳細に関しては、本明細書における上記を参照されたい。更に、本検出システムの第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、(a)ウサギVH領域、(b)ウサギVL領域、又は(c)ウサギVH領域及びウサギVL領域を含むことが想定される。同様に、本検出システムの第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)は、(a)ウサギVH領域、(b)ウサギVL領域、又は(c)ウサギVH領域及びウサギVL領域を含み得る。更に、本検出システムの第1のモノクローナル抗体全体及び/又は第2のモノクローナル抗体全体は、ウサギ抗体であり得る。本検出システムの第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、約≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M又は≦10-10Mの、sBCMAに対する親和性(KD)を有することも想定される。本検出システムの第1のモノクローナル抗体及び/又は本検出システムの第2のモノクローナル抗体は、IgG抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体又はIgA抗体であることも想定される。一実施形態によれば、第1及び/又は第2のモノクローナル抗体は、IgG抗体、例えばIgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体又はIgG4抗体である。抗体のアイソタイプ及びサブクラスは、ウサギであり得る(例えば、ウサギIgG、ウサギIgG1等)。
【0134】
本発明は、本検出システムの第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が、
a)配列番号1で示されるVH-CDR1、配列番号2で示されるVH-CDR2及び配列番号3で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号4で示されるVL-CDR1、配列番号5で示されるVL-CDR2及び配列番号6で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;
b)配列番号11で示されるVH-CDR1、配列番号12で示されるVH-CDR2及び配列番号13で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号14で示されるVL-CDR1、配列番号15で示されるVL-CDR2及び配列番号16で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;
c)a)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはa)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合するか;又は
d)b)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはb)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合すること、及び/又は
本検出システムの第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が、
e)配列番号21で示されるVH-CDR1、配列番号22で示されるVH-CDR2及び配列番号23で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号24で示されるVL-CDR1、配列番号25で示されるVL-CDR2及び配列番号26で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;又は
f)e)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはe)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合すること
も提供する。
【0135】
本発明は、本検出システムの第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が、
a)配列番号7又は17で示されるVH領域を含むか;
b)配列番号8又は18で示されるVL領域を含むか;
c)配列番号7で示されるVH領域と、配列番号8で示されるVL領域とを含むか;
d)配列番号17で示されるVH領域と、配列番号18で示されるVL領域とを含むか;
e)c)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはc)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合するか;又は
f)d)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはd)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合すること、及び/又は
本検出システムの第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が、
g)配列番号27で示されるVH領域を含むか;
h)配列番号28で示されるVL領域を含むか;
i)配列番号27で示されるVH領域と、配列番号28で示されるVL領域とを含むか;又は
j)i)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはi)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合すること
も提供する。
【0136】
本検出システムに関して、
a)第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が捕捉抗体として使用され、及び第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が検出抗体として使用されるか、又は
b)第1のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が検出抗体として使用され、及び第2のモノクローナル抗体(又は抗体コンストラクト)が捕捉抗体として使用されることが想定される。
【0137】
更なる態様では、本発明は、本発明のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)の使用又は本発明の検出システムの使用であって、
- サンプル中のsBCMAを検出すること;
- サンプル中のsBCMAを定量すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を診断すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患と診断された患者を階層化すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の進行をモニタリングすること;又は
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置への反応をモニタリングすること
のための、本発明のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)の使用又は本発明の検出システムの使用も提供する。
【0138】
一実施形態では、このサンプルは、生体サンプル、例えばヒト生体サンプルである。サンプル(生体サンプル/ヒト生体サンプル)は、血清サンプル、血漿サンプル、血液サンプル、骨髄サンプル又は組織サンプルであり得る。このサンプルは、骨髄単核細胞又は末梢血単核細胞の細胞培養物から得られた上清でもあり得る。このサンプルは、sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を有すると疑われているか若しくは有する(診断されている)対象(例えば、ヒト対象)又はsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置を受けている対象から得ることができる。
【0139】
疾患とは、ヒト等の生物の一部又は全ての構造又は機能に悪影響を及ぼし、且ついかなる外傷にも起因しない特定の異常状態のことである。疾患は、特定の徴候及び症状を伴う「病状」又は「障害」と解釈されることが多い。本発明に係る疾患は、sBCMA又は増加したsBCMAに関連する。このsBCMAは、例えば、例えばヒト対象の骨髄、血液、血清若しくは血漿又は例えばヒト対象の骨髄単核細胞若しくは末梢血単核細胞の細胞培養物から得られた上清中で検出及び/又は定量され得る。用語「増加」は、健康な対象(即ちそのような疾患を有しない対象)との比較で使用される。一実施形態によれば、sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患は、「BCMA陽性新生物」である。
【0140】
「新生物」は、組織の異常な成長であり、通常、腫瘤を形成するが、必ずしもそうではない。腫瘤も形成する場合、新生物は、一般に「腫瘍」と称される。脳腫瘍では、細胞の無制御な分裂は、新生物の腫瘤のサイズが増加することを意味し、頭蓋内腔等の閉鎖空間では、腫瘤が脳の空間に浸潤して脳を押しのけ、脳組織の圧迫及び頭蓋内圧の上昇及び実質の破壊につながるため、これは、急速に問題化する。本発明によれば、「新生物」又は「腫瘍」は、BCMA(特に細胞表面上で発現されたBCMA)を対象とする治療(例えば、BCMA特異的抗体、例えば裸の抗体、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)、二重特異性抗体、例えばBCMA及びCD3に対するもの並びにキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)等の細胞療法)による処置から利益を得るであろう状態も指し、そのような治療として下記が挙げられるが、これらに限定されない:AMG 420、AMG 701、GSK 916、JNJ-64007957(JNJ-7957)、PF-06863135(PF-3135)、CC-93269、REGN5458、HPN217、TNB-383B、P-BCMA-101、JNJ-68284528、JCARH125及びbb2121。この状態は、対象の状態(新生物又は腫瘍)を哺乳動物に罹らせる病理学的状態を含む慢性及び急性の障害又は疾患を含む。
【0141】
新生物又は腫瘍は、良性、潜在的に悪性(前癌性)又は悪性(癌性)であり得る。悪性新生物/腫瘍は、一般に癌と呼ばれる。これらは、通常、周囲組織に浸潤してそれを破壊し、且つ転移を形成することもあり、即ち身体の他の部分、組織又は器官に広がる。「原発腫瘍」は、腫瘍進行が始まり、進行して癌性腫瘤をもたらす解剖学的部位で成長する腫瘍である。例えば、脳腫瘍は、脳内で異常細胞が形成されると生じる。ほとんどの癌は、その原発部位で発達するが、次に身体の他の部分(例えば、組織及び器官)に転移を形成するか又は広がる。これらの更なる腫瘍は、二次性腫瘍である。ほとんどの癌は、身体の他の部分に広がった後でもその原発部位にちなんで呼ばれ続ける。
【0142】
リンパ腫及び白血病は、造血性新生物又はリンパ系新生物である。本発明の目的のために、リンパ腫及び白血病も用語「腫瘍」、「癌」又は「新生物」に包含される。リンパ腫は、リンパ球から発生する血液癌の群である(白血球のタイプ)。白血病は、通常、骨髄で始まり且つ多数の異常な白血球をもたらす癌の群である。これらの白血球は、完全には発達しておらず、芽球又は白血病細胞と呼ばれている。リンパ腫及び白血病は、造血組織及びリンパ組織の腫瘍のより広範な群の一部である。
【0143】
本発明の目的のために、用語「新生物」、「腫瘍」及び「癌」は、同義的に使用され得、これらは、原発腫瘍/癌及び二次性腫瘍/癌(又は「転移」)の両方並びに腫瘤形成新生物(腫瘍)及びリンパ系新生物(例えば、リンパ腫及び白血病)を含み、MRDも含む。
【0144】
用語「微小残存病変」(MRD)は、癌処置後、例えば患者が寛解状態(患者は、疾患の症状又は徴候を有しない)にある場合、患者に残る少数の残存癌細胞の存在のエビデンスを指す。極めて少数の残存癌細胞は、通常、常法手段により検出され得ず、なぜなら、癌の評価又は検出に使用される標準検査は、MRDを検出するのに感度が不十分であるからである。最近では、フローサイトメトリー、PCR及び次世代シーケンシング等の極めて高感度の分子生物学的MRD検査が利用可能である。これらの検査では、ときに百万個の正常細胞中のわずか1つの癌細胞ほどの組織サンプル中の最小限レベルの癌細胞を測定し得る。本発明に関連して、新生物の「予防」、「処置」又は「改善」という用語は、MRDが検出されたか否かに関わらず、「MRDの予防、処置又は改善」も包含することが想定される。
【0145】
BCMA陽性新生物は、B細胞新生物又は形質細胞新生物であることが想定される。Bリンパ球としても既知であるB細胞は、リンパ球サブタイプの白血球の一種である。B細胞は、抗体を分泌することにより、適応免疫系の体液性免疫成分で機能する。加えて、B細胞は、抗原を提示し(プロフェッショナル抗原提示細胞としても分類される)、サイトカインを分泌する。哺乳動物では、B細胞は、ほとんどの骨の中心にある骨髄で成熟する。B細胞は、他の2つのクラスのリンパ球(T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞)と異なり、細胞膜上でB細胞受容体(BCR)を発現する。BCRは、B細胞が特定の抗原に結合することを可能にし、それに対して抗体反応を開始する。形質細胞は、形質B細胞、プラズマ細胞又はエフェクターB細胞とも呼ばれ、大量の抗体を分泌する白血球である。形質細胞は、通常、血漿及びリンパ系により輸送される。形質細胞は、骨髄に由来する。B細胞は、前駆B細胞の受容体に厳密にモデル化される抗体分子を産生する形質細胞に分化する。血液及びリンパ液に放出されると、これらの抗体分子は、標的抗原に結合し、その中和又は破壊を開始する。
【0146】
「sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患」、「BCMA陽性新生物」又は「(BCMA陽性)B細胞新生物又は形質細胞新生物」は、多発性骨髄腫、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫、重鎖多発性骨髄腫、軽鎖多発性骨髄腫、髄外骨髄腫(髄外形質細胞腫、髄外多発性骨髄腫)、形質細胞腫、形質細胞性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)、くすぶり型骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫)、慢性リンパ性白血病(CLL)、原発性CNSリンパ腫(PCNSL)並びにB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)を含むが、これらに限定されない群から選択され得る。多発性骨髄腫は、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫、重鎖多発性骨髄腫、軽鎖多発性骨髄腫、髄外多発性骨髄腫及びくすぶり型多発性骨髄腫からなるか又はこれらを含む群から選択され得る。
【0147】
「診断」又は「医学的診断」は、いずれの障害又は状態が対象の症状及び徴候を説明するかを決定するプロセスである。通常、このプロセス中、診断検査又は医学的検査等の1つ又は複数の診断手順が行われる。医学では、用語「モニタリング」は、疾患、状態又は1つ若しくはいくつかの医学的パラメータの経時的な観察を指す。医療用モニターを使用して且つ/又は医学的検査を繰り返し実施して、特定のパラメータを連続的に測定することにより、モニタリングを実施し得る。診断検査又は医学的検査は、疾患、疾患経過、感受性を検出、診断若しくはモニタリングするために実施され、且つ/又は処置の過程を決定するために実施される医学的手順である。診断検査又は医学的検査は、臨床化学及び分子診断に関連しており、この手順は、典型的には、医学検査室で実施される。
【0148】
医学的な治療又は処置とは、疾患を治癒又は改善するための努力である。医療分野では、一般的な処置は、薬物治療を含む。薬物(医薬品、調合薬又は薬物とも称される)は、疾患の診断、治癒、処置又は予防に使用される。用語「処置」は、従って、治療的処置と、予防的手段又は防御的手段との両方を指す。本発明に関連して、処置は、疾患、疾患の症状又は疾患に罹り易い素因を治すか、治癒するか、軽減するか、緩和するか、変更するか、治療するか、改善するか、好転させるか、又はそれに影響を及ぼすことを目的とした、本明細書で説明されている疾患、そのような疾患の症状又はそのような疾患に罹り易い素因を有する、必要としている患者又は対象の身体、摘出組織又は細胞への抗BCMA抗体又は抗体コンストラクトの適用又は投与を含む。
【0149】
更なる態様では、本発明は、サンプル中のsBCMAを検出及び/又は定量する方法であって、
(a)サンプル中のsBCMAの含有量を決定するために、本発明のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を使用するか、又は本発明の検出システムを使用する工程と;
(b)工程(a)で決定されたsBCMAの含有量を、
(i)sBCMA含有量に関する予め定義された値、
(ii)コントロールサンプル中で決定されたsBCMAの含有量、又は
(iii)以前の時点で同一の供給源若しくは対象から得られたサンプル中で決定されたsBCMAの含有量
と比較する工程と
を含む方法も提供する。
【0150】
本発明の目的のために、(sBCMAの)用語「含有量」は、(sBCMAの)用語「レベル」、「量」又は「濃度」と互換的に使用され得る。「sBCMA含有量に関する予め定義された値」は、予め決定されている「カットオフ値」であり得る。この値は、例えば、サンプル中の特定のsBCMA含有量が、sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を示すか、又はBCMA陽性新生物を示すことを示し得る。例えば、サンプル中のsBCMA含有量が、予め決定されたカットオフ値の3倍の標準偏差を超えると決定した場合、サンプルを採取された対象は、多発性骨髄腫(又は本明細書で説明されている他の疾患)に関して陽性と見なされる。「コントロールサンプル」は、通常、分析するサンプル(例えば、血清サンプル)と同一の性質の供給源から得られる。コントロールサンプルは、「正常な」sBCMA含有量を表す(例えば、健康な対象を表す)サンプル(「陰性コントロールサンプル」)であり得るか、又は「異常に増加した」sBCMA含有量を表す(例えば、本明細書で定義されている疾患を有する対象を表す)サンプル(「陽性コントロールサンプル)であり得る。
【0151】
更なる態様では、本発明は、sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患を診断する方法であって、
(a)サンプル中のsBCMAの含有量を決定するために、本発明のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を使用するか、又は本発明の検出システムを使用する工程と;
(b)工程(a)で決定されたsBCMAの含有量を、
(i)そのような疾患の非存在を示す、sBCMA含有量に関する予め定義されたカットオフ値、又は
(ii)そのような疾患の非存在を表すコントロールサンプル中で決定されたsBCMAの含有量
と比較する工程と
を含み、(i)の予め定義されたカットオフ値又は(ii)のコントロールサンプル中で決定されたsBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより高い含有量は、sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患の存在を示す、方法を提供する。
【0152】
更なる態様では、本発明は、sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の進行をモニタリングするか、又はsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置に対する反応をモニタリングする方法であって、
(a)そのような疾患と診断された対象から得られた生体サンプル中の第1の時点でのsBCMAの含有量を決定するために、本発明のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を使用するか、又は本発明の検出システムを使用する工程と;
(b)対象から得られた生体サンプル中の第2の(後の)時点での又は処置後のsBCMAの含有量を決定するために、本発明のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を使用するか、又は本発明の検出システムを使用する工程と;
(c)工程(a)で決定されたsBCMAの含有量を、工程(b)で決定されたsBCMAの含有量と比較する工程と
を含み、工程(b)で決定されたsBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより高い含有量は、疾患が進行していることを示し、及び/又は工程(b)で決定されたsBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより低い含有量は、前記疾患が寛解に入っていること若しくは前記疾患が処置に反応していることを示す、方法も提供する。
【0153】
上記方法に関して、「サンプル」は、生体サンプル、例えばヒト生体サンプルであることが想定される。このサンプルは、(ヒト)血清サンプル、血漿サンプル、血液サンプル、骨髄サンプル、組織サンプル又は(ヒト)骨髄単核細胞若しくは(ヒト)末梢血単核細胞の細胞培養物から得られた上清であり得る。この「サンプル」は、本明細書において上記で定義されているように、ヒト対象、好ましくはsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を有すると疑われているか若しくは有する(診断されている)ヒト対象又はsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置を受けている対象から得ることもできる。
【0154】
上記方法に関して、「sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患」は、BCMA陽性新生物であり得ることが想定される。この疾患又はBCMA陽性新生物は、多発性骨髄腫、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫、重鎖多発性骨髄腫、軽鎖多発性骨髄腫、髄外骨髄腫(髄外形質細胞腫、髄外多発性骨髄腫)、形質細胞腫、形質細胞性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)、くすぶり型骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫)、慢性リンパ性白血病(CLL)、原発性CNSリンパ腫(PCNSL)並びにB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)からなる群から選択され得る。
【0155】
本発明は、下記の項目に関する。
項目1.可溶性BCMA(sBCMA)に結合するモノクローナル抗体であって、sBCMAへの抗体の結合は、sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体の存在下で生じる、モノクローナル抗体。
項目2.sBCMAは、配列番号34で示されるアミノ酸配列を有する、項目1に記載のモノクローナル抗体。
項目3.sBCMAへのモノクローナル抗体の結合は、sBCMAに結合する第3の抗体又は抗体コンストラクトの存在下で生じる、項目1又は2に記載のモノクローナル抗体。
項目4.第3のモノクローナル抗体又は抗体コンストラクトは、BCMAのエピトープクラスター3に結合し、好ましくはヒトBCMAのエピトープクラスター3に結合し、好ましくは配列番号35で示されるアミノ酸配列を有する、項目3に記載のモノクローナル抗体。
項目5.ウサギVH領域及び/又はウサギVL領域を含む、項目1~4のいずれかに記載のモノクローナル抗体。
項目6.約≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M又は≦10-10Mの、sBCMAに対する親和性(KD)を有する、項目1~5のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
項目7.親和性は、Biacoreアッセイで決定される、項目6に記載のモノクローナル抗体。
項目8.a)配列番号1で示されるVH-CDR1、配列番号2で示されるVH-CDR2及び配列番号3で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号4で示されるVL-CDR1、配列番号5で示されるVL-CDR2及び配列番号6で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;
b)配列番号11で示されるVH-CDR1、配列番号12で示されるVH-CDR2及び配列番号13で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号14で示されるVL-CDR1、配列番号15で示されるVL-CDR2及び配列番号16で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;
c)配列番号21で示されるVH-CDR1、配列番号22で示されるVH-CDR2及び配列番号23で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号24で示されるVL-CDR1、配列番号25で示されるVL-CDR2及び配列番号26で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;
d)a)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはa)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合するか;
e)b)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはb)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合するか;又は
f)c)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはc)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合する、項目1~7のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
項目9.a)配列番号7と少なくとも60%、65%若しくは70%、好ましくは少なくとも75%若しくは80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%若しくは99%相同であるアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号8と少なくとも60%、65%若しくは70%、好ましくは少なくとも75%若しくは80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%若しくは99%相同であるアミノ酸配列を含むVL領域とを含み、且つ任意選択的に、配列番号1で示されるVH-CDR1、配列番号2で示されるVH-CDR2及び配列番号3で示されるVH-CDR3を含み、且つ任意選択的に、配列番号4で示されるVL-CDR1、配列番号5で示されるVL-CDR2及び配列番号6で示されるVL-CDR3を含むか;
b)配列番号17と少なくとも60%、65%若しくは70%、好ましくは少なくとも75%若しくは80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%若しくは99%相同であるアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号18と少なくとも60%、65%若しくは70%、好ましくは少なくとも75%若しくは80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%若しくは99%相同であるアミノ酸配列を含むVL領域とを含み、且つ任意選択的に、配列番号11で示されるVH-CDR1、配列番号12で示されるVH-CDR2及び配列番号13で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号14で示されるVL-CDR1、配列番号15で示されるVL-CDR2及び配列番号16で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;又は
c)配列番号27と少なくとも60%、65%若しくは70%、好ましくは少なくとも75%若しくは80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%若しくは99%相同であるアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号28と少なくとも60%、65%若しくは70%、好ましくは少なくとも75%若しくは80%、より好ましくは少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%若しくは99%相同であるアミノ酸配列を含むVL領域とを含み、且つ任意選択的に、配列番号21で示されるVH-CDR1、配列番号22で示されるVH-CDR2及び配列番号23で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号24で示されるVL-CDR1、配列番号25で示されるVL-CDR2及び配列番号26で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含む、項目8に記載のモノクローナル抗体。
項目10.a)配列番号7、17若しくは27のいずれか1つで示されるVH領域を含むか;
b)配列番号8、18若しくは28のいずれか1つで示されるVL領域を含むか;
c)配列番号7で示されるVH領域と、配列番号8で示されるVL領域とを含むか;
d)配列番号17で示されるVH領域と、配列番号18で示されるVL領域とを含むか;
e)配列番号27で示されるVH領域と、配列番号28で示されるVL領域とを含むか;
f)c)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはc)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合するか;
g)d)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはd)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合するか;又は
h)e)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはe)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合する、項目8に記載のモノクローナル抗体。
項目11.sBCMAエピトープへの結合は、キメラBCMA分子又は変異BCMA分子によるエピトープマッピング、部位特異的変異誘発(例えば、アラニンスキャニング)、ハイスループットショットガン変異誘発エピトープマッピング、架橋共役型質量分析、X線共結晶学、低温電子顕微鏡及び水素-重水素交換を介して決定される、項目7~10のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
項目12.sBCMAへの結合に関する競合は、競合ELISAアッセイ、(本明細書の実施例2で説明されているような)Octet競合アッセイ又はアビジン共役微粒子を使用する競合アッセイで決定される、項目7~10のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
項目13.sBCMAへの結合に関する競合は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%又は少なくとも90%の、2種の試験する抗体間で生じる競合として定義される、項目7~10のいずれか1つ又は項目12に記載のモノクローナル抗体。
項目14.IgG抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体又はIgA抗体、好ましくはIgG抗体、例えばIgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体又はIgG4抗体である、項目1~13のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
項目15.モノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、生体サンプル、好ましくはヒト生体サンプル、例えば(ヒト)血清サンプル、(ヒト)血漿サンプル、(ヒト)血液サンプル、(ヒト)骨髄サンプル、(ヒト)組織サンプル又は(ヒト)骨髄単核細胞若しくは(ヒト)末梢血単核細胞の細胞培養物から得られた上清中のsBCMAに結合する、項目1~14のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体。
項目16.項目1~15のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチド。
項目17.項目16に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
項目18.項目16に記載のポリヌクレオチド又は項目17に記載のベクターで形質転換又はトランスフェクトされた宿主細胞。
項目19.項目1~15のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体を作製するプロセスであって、前記モノクローナル抗体の発現を許容する条件下において、項目18に記載の宿主細胞を培養することと、作製されたモノクローナル抗体を培養物から回収することとを含む方法。
項目20.項目1~15のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体又は項目19に記載のプロセスによって作製されたモノクローナル抗体を含む組成物。
項目21.検出システムであって、
a)sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体と、
b)sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体と
を含み、sBCMAへの第1のモノクローナル抗体の結合は、sBCMAに結合する第2のモノクローナル抗体の存在下で生じ、及び/又はsBCMAへの第2のモノクローナル抗体の結合は、sBCMAに結合する第1のモノクローナル抗体の存在下で生じる、検出システム。
項目22.sBCMAは、配列番号34で示されるアミノ酸配列を有する、項目21に記載の検出システム。
項目23.sBCMAへの第1のモノクローナル抗体の結合及びsBCMAへの第2のモノクローナル抗体の結合は、sBCMAに結合する第3の抗体又は抗体コンストラクトの存在下で生じる、項目21又は22に記載の検出システム。
項目24.第3の抗体又は抗体コンストラクトは、BCMAのエピトープクラスター3に結合し、好ましくはヒトBCMAのエピトープクラスター3に結合し、好ましくは配列番号35で示されるアミノ酸配列を有する、項目23に記載の検出システム。
項目25.第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、ウサギVH領域及び/又はウサギVL領域を含む、項目21~24のいずれか1つに記載の検出システム。
項目26.第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、約≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M又は≦10-10Mの、sBCMAに対する親和性(KD)を有する、項目21~25のいずれか1つに記載の検出システム。
項目27.第1のモノクローナル抗体は、
a)配列番号1で示されるVH-CDR1、配列番号2で示されるVH-CDR2及び配列番号3で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号4で示されるVL-CDR1、配列番号5で示されるVL-CDR2及び配列番号6で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;
b)配列番号11で示されるVH-CDR1、配列番号12で示されるVH-CDR2及び配列番号13で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号14で示されるVL-CDR1、配列番号15で示されるVL-CDR2及び配列番号16で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;又は
c)a)若しくはb)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか、又はa)若しくはb)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合し;及び/又は
第2のモノクローナル抗体は、
d)配列番号21で示されるVH-CDR1、配列番号22で示されるVH-CDR2及び配列番号23で示されるVH-CDR3を含むVH領域と、配列番号24で示されるVL-CDR1、配列番号25で示されるVL-CDR2及び配列番号26で示されるVL-CDR3を含むVL領域とを含むか;又は
e)d)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはd)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合する、項目21~26のいずれか1つに記載の検出システム。
項目28.第1のモノクローナル抗体は、
a)配列番号7若しくは17で示されるVH領域を含むか;
b)配列番号8若しくは18で示されるVL領域を含むか;
c)配列番号7で示されるVH領域と、配列番号8で示されるVL領域とを含むか;
d)配列番号17で示されるVH領域と、配列番号18で示されるVL領域とを含むか;又は
e)c)若しくはd)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか、又はc)若しくはd)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合し;及び/又は
第2のモノクローナル抗体は、
f)配列番号27で示されるVH領域を含むか;
g)配列番号28で示されるVL領域を含むか;
h)配列番号27で示されるVH領域と、配列番号28で示されるVL領域とを含むか;又は
i)h)の抗体と同一のsBCMAエピトープに結合するか若しくはh)の抗体とsBCMAへの結合に関して競合する、項目27に記載の検出システム。
項目29.第1のモノクローナル抗体及び/又は第2のモノクローナル抗体は、IgG抗体、IgD抗体、IgE抗体、IgM抗体又はIgA抗体、好ましくはIgG抗体、例えばIgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体又はIgG4抗体である、項目21~28のいずれか1つに記載の検出システム。
項目30.第1のモノクローナル抗体は、捕捉抗体として使用され、及び第2のモノクローナル抗体は、検出抗体として使用されるか、又は第1のモノクローナル抗体は、検出抗体として使用され、及び第2のモノクローナル抗体は、捕捉抗体として使用される、項目21~29のいずれか1つに記載の検出システム。
項目31.項目1~15のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体又は項目21~30のいずれか1つに記載の検出システムの、
- サンプル中のsBCMAを検出すること;
- サンプル中のsBCMAを定量すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を診断すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患と診断された患者を階層化すること;
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の進行をモニタリングすること;又は
- sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置への反応をモニタリングすること
のための使用。
項目32.サンプル中のsBCMAを検出及び/又は定量する方法であって、
(a)サンプル中のsBCMAの含有量を決定するために、項目1~15のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を使用するか、又は項目21~30のいずれか1つに記載の検出システムを使用する工程と;
(b)工程(a)で決定されたsBCMAの含有量を、
(i)sBCMA含有量に関する予め定義された値、
(ii)コントロールサンプル中で決定されたsBCMAの含有量、又は
(iii)以前の時点で同一の供給源若しくは対象から得られたサンプル中で決定されたsBCMAの含有量
と比較する工程と
を含む方法。
項目33.sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患を診断する方法であって、
(a)サンプル中のsBCMAの含有量を決定するために、項目1~15のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を使用するか、又は項目21~30のいずれか1つに記載の検出システムを使用する工程と;
(b)工程(a)で決定されたsBCMAの含有量を、
(i)そのような疾患の非存在を示す、sBCMA含有量に関する予め定義されたカットオフ値、又は
(ii)そのような疾患の非存在を表すコントロールサンプル中で決定されたsBCMAの含有量
と比較する工程と
を含み、(i)の予め定義されたカットオフ値又は(ii)のコントロールサンプル中で決定されたsBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより高い含有量は、sBCMA又は増加したsBCMAに関連する疾患の存在を示す、方法。
項目34.sBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の進行をモニタリングするか、又はsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置に対する反応をモニタリングする方法であって、
(a)そのような疾患と診断された対象から得られた生体サンプル中の第1の時点でのsBCMAの含有量を決定するために、項目1~15のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を使用するか、又は項目21~30のいずれか1つに記載の検出システムを使用する工程と;
(b)対象から得られた生体サンプル中の第2の時点での又は処置後のsBCMAの含有量を決定するために、項目1~15のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体(若しくは抗体コンストラクト)を使用するか、又は項目21~30のいずれか1つに記載の検出システムを使用する工程と;
(c)工程(a)で決定されたsBCMAの含有量を、工程(b)で決定されたsBCMAの含有量と比較する工程と
を含み、工程(b)で決定されたsBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより高い含有量は、疾患が進行していることを示し、及び/又は工程(b)で決定されたsBCMAの含有量と比較して、工程(a)で決定されたsBCMAのより低い含有量は、前記疾患が寛解に入っていること若しくは前記疾患が処置に反応していることを示す、方法。
項目35.サンプルは、生体サンプル、好ましくはヒト生体サンプル、例えば血清サンプル、血漿サンプル、血液サンプル、骨髄サンプル、組織サンプル又は骨髄単核細胞若しくは末梢血単核細胞の細胞培養物から得られた上清である、項目31に記載の使用又は項目32~34のいずれか1つに記載の方法。
項目36.サンプルは、ヒト対象、好ましくはsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患を有すると疑われているか若しくは有するヒト対象又はsBCMA若しくは増加したsBCMAに関連する疾患の処置を受けている対象から得られる、項目31若しくは35に記載の使用又は項目32~35のいずれか1つに記載の方法。
項目37.疾患は、多発性骨髄腫、再発性及び/又は難治性の多発性骨髄腫、重鎖多発性骨髄腫、軽鎖多発性骨髄腫、髄外骨髄腫(髄外形質細胞腫、髄外多発性骨髄腫)、形質細胞腫、形質細胞性白血病、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症(リンパ形質細胞性リンパ腫)、くすぶり型骨髄腫(くすぶり型多発性骨髄腫)、慢性リンパ性白血病(CLL)、原発性CNSリンパ腫(PCNSL)並びにB細胞非ホジキンリンパ腫(B-NHL)からなる群から選択される、項目31、35若しくは36のいずれか1つに記載の使用又は項目32~36のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」には、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形の言及が含まれる。従って、例えば、「試薬」への言及には、そのような様々な試薬の1つ又は複数が含まれており、「方法」への言及には、本明細書で説明されている方法のために改変又は置換される可能性がある、当業者に既知の均等な工程及び方法への言及が含まれる。
【0157】
特に指示されない限り、一連の要素に先行する用語「少なくとも」は、その一連の中にある全ての要素に言及していると理解されるべきである。当業者は、本明細書で説明されている本発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識するか、又はルーチンに過ぎない実験を使用して確認し得るであろう。そのような均等物は、本発明に包含されることが意図されている。
【0158】
用語「及び/又は」は、本明細書のいずれの箇所で使用されるにしても、「及び」、「又は」及び「前記用語により接続される要素のあらゆる他の組み合わせ」の意味を含む。
【0159】
用語「約」又は「およそ」は、本明細書で使用される場合、所与の値又は範囲の±20%以内、好ましくは±15%以内、より好ましくは±10%以内、最も好ましくは±5%以内を意味する。これには、具体的な値も含まれ、例えば、「約50」は、値「50」を含む。
【0160】
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して、文脈上特に要求されない限り、語句「含む(comprise)」並びに「含む(comprises)」及び「含んでいる」等の変化形は、記載されている完全体若しくは工程又は完全体若しくは工程の群を含むが、任意の他の完全体若しくは工程又は完全体若しくは工程の群を除外しないことを含意すると理解されるであろう。本明細書で使用される場合、用語「含む」は、用語「含有する」若しくは「包含する」又はときに本明細書で使用される場合に用語「有する」に置き換えられ得る。
【0161】
本明細書で使用される場合、「~からなる」は、請求項の構成要素で指定されていないいかなる構成要素、工程又は成分も除外する。本明細書で使用される場合、「~から本質的になる」は、請求項の基本的な且つ新規の特徴に事実上影響を与えない材料又は工程を除外しない。
【0162】
本明細書における各例において、用語「含む」、「~から本質的になる」及び「~からなる」のいずれも、他の2つの用語の一方に置き換えられ得る。
【0163】
上述の説明及び下記の実施例は、例示的構成を提供するが、本発明は、本明細書で説明されている特定の方法論、技術、プロトコル、材料、試薬、物質等に限定されず、従って異なり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、詳細な実施形態を説明することを目的としているに過ぎず、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図されていない。本発明の態様は、独立請求項で提供される。本発明の一部の任意選択的な特徴は、従属請求項で提供される。
【0164】
本明細書の本文全体において引用されている全ての刊行物及び特許(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造業者の仕様書、説明書等を含む)は、上記であっても下記であっても、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先発明によってそのような開示に先行する権利を有しないことを承認するものとして解釈すべきではない。参照により組み込まれる資料が本明細書と矛盾するか又は一致しない限り、本明細書は、いかなるそのような資料よりも優先される。
【0165】
本発明及びその利点のより適切な理解が下記の実施例から得られ、本実施例は、例示目的でのみ提供される。この実施例は、決して本発明の範囲を限定することが意図されておらず、且つそのように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0166】
実施例1:ウサギモノクローナル抗sBCMAサンドイッチmAbの生成
本試みの目的は、治療用抗BCMA抗体若しくは抗体コンストラクト(例えば、「Ther-Ab1」若しくは「Ther-Ab2」)又は他の抗体/抗体コンストラクト(例えば、同一の若しくは類似のCDRを有し、且つ/又はsBCMA内の同一のエピトープに結合するもの)の存在下でもsBCMAを検出するための非干渉抗体対(「サンドイッチ対」)を生成することであった。Ther-Ab2は、BCMA細胞外ドメインのエピトープクラスター3(配列番号35)に結合することが既に示されたCD3×BCMA二重特異性半減期延長抗体コンストラクトである(国際公開第2013/072406号パンフレットを参照されたい)。Ther-Ab1は、IgG1フォーマットを有しており、市販のELISAキット(R&D systemsヤギポリクローナル抗体BCMA捕捉及び検出)、
図1Aを参照されたい)を使用するBCMAの検出/定量に干渉することがここで示された。Ther-Ab1は、下記のアミノ酸配列を有するとして国際公開第2014/089335号パンフレットで開示されている:国際公開第2014/089335号パンフレットのVH-CDR(配列番号4~6)、VL-CDR(配列番号106~108)、VH(配列番号206)、VL(配列番号240)。
【0167】
次の工程では、約400のXenoMouse(登録商標)ハイブリドーマをBCMAに対して生成し、BCMAへの結合に関するELISAアッセイでの陽性を試験した。しかしながら、これらのXenoMouse(登録商標)ハイブリドーマのスクリーニングでは、異なるOctetフォーマット(
図1Bを参照されたい)を使用する場合でも、いかなるTher-Ab1サンドイッチ抗体も同定されなかった。
【0168】
後の工程では、免疫原としてBCMAを含むキメラタンパク質により、ウサギ免疫化キャンペーンを実行した。ウサギ血清をTher-Ab1によるサンドイッチに関してスクリーニングした。下記の物質を使用した:
・ストレプトアビジンバイオセンサー(Pall ForteBio 18-5021)
・ビオチン化BCMA
・Ther-Ab1
・ウサギ末期血液
・ウサギ無関係IgG(Abcam 172730)
・384ウェルの平底黒色ポリプロピレンマイクロプレート(Greiner BioOne 781209)
・96ウェルの平底黒色ポリプロピレンマイクロプレート(Greiner BioOne 655209)
・ForteBio Octet HTX
・Octetアッセイ緩衝液(10mM Tris、0.1% Triton、150mM NaCl、1mM CaCl2、0.1mg/mL BSA、pH7.4)。
【0169】
全てのサンプルをOctetアッセイ緩衝液で調製した。Ther-Ab1及びウサギ無関係IgGを10μg/mlで調製し、ビオチン-BCMAを0.15μg/mlで調製した。サンプルを80μL/ウェルで384ウェルプレートに入れた。96ウェルプレートを使用して、バイオセンサーをOctet緩衝液200μL中で予めインキュベートした。
【0170】
このアッセイを、下記のように実行するようにForteBio HTXで設定した(
図1Cも参照されたい):
1.ベースライン(octet緩衝液、60秒)
2.ローディング(ビオチン-BCMA、300秒)
3.会合(Ther-Ab1、900秒)
4.ベースライン(octet緩衝液、60秒)
5.サンドイッチ抗体(ウサギ血清又は無関係IgG抗体、300秒)。
【0171】
Octet上のレポーター点解析機能を使用して、抗体サンドイッチ工程での結合シグナルを決定した。抗体サンドイッチ工程を、最初に、算出されたシグナルが絶対値であるようにゼロにアラインさせた。Ther-Ab1サンドイッチ抗体をOctetによりウサギ血清中で確認した。
【0172】
BCMAに結合するウサギ由来細胞の更なる富化後、Ther-Ab2により別のOctet BCMAサンドイッチアッセイを実行し、Ther-Ab2サンドイッチ抗体の存在を確認した。
【0173】
最後に、3種の新たなウサギ抗sBCMA抗体を同定し(sBCMA-mAb1、sBCMA-mAb2及びsBCMA-mAb3)、これらの重鎖及び軽鎖可変領域を配列決定した。下記のアッセイでこれらの抗体をより詳細にキャラクタライズした。
【0174】
実施例2:Octetアッセイでのウサギモノクローナル抗sBCMAサンドイッチmAbのキャラクタリゼーション
a)精製済組換え抗体sBCMA-mAb1及びsBCMA-mAb2をTher-Ab2によるサンドイッチに関してスクリーニングした。下記の物質を使用した:
・抗huFc(動態)バイオセンサー(Pall ForteBio 18-5064)
・BCMA
・Ther-Ab2
・無関係(CD3×標的-X)二重特異性抗体コンストラクト(標的結合ドメインのみでTher-Ab2と異なる)
・未精製であるが、定量されたsBCMA-mAb2の上清
・sBCMA-mAb1
・ウサギ無関係IgG(Abcam 172730)
・384ウェルの傾斜底黒色ポリプロピレンマイクロプレート(ForteBio 18-5080)
・96ウェルの平底黒色ポリプロピレンマイクロプレート(Greiner BioOne 655209)
・ForteBio Octet HTX
・Octetアッセイ緩衝液(10mM Tris、0.1% Triton、150mM NaCl、1mM CaCl2、0.1mg/mL BSA、pH7.4)。
【0175】
全てのサンプルをOctetアッセイ緩衝液で調製した。試験抗体、ウサギ無関係IgG及び無関係二重特異性抗体コンストラクトを5μg/mLで調製した。BCMAを2μg/mLで調製した。サンプルを60μL/ウェルで384ウェルプレートに入れた。96ウェルプレートを使用して、バイオセンサーをOctet緩衝液200μL中で予めインキュベートした。
【0176】
このアッセイを、下記のように実行するようにForteBio HTXで設定した:
1.ベースライン(Octet緩衝液、60秒)
2.第1の抗体のローディング(Ther-Ab2又は無関係二重特異性抗体コンストラクト、120秒)
3.活性化(BCMA、120秒)
4.ベースライン(Octet緩衝液、60秒)
5.第2の抗体(sBCMA-mAb2、sBCMA-mAb1又は無関係ウサギ抗体、120秒)。
【0177】
Octet上のレポーター点解析機能を使用して、第2の抗体工程での結合シグナルを決定した。第2の抗体工程を、最初に、算出されたシグナルが絶対値であるようにゼロにアラインさせた。結果を
図2に示す。ウサギ抗sBCMA抗体sBCMA-mAb1及びsBCMA-mAb2は、Ther-Ab2とサンドイッチすることが分かった。
【0178】
b)実施例2a)で説明されているアッセイに従って更なるOctetアッセイを実行した。下記の設定により、抗体sBCMA-mAb1及びsBCMA-mAb2が類似のsBCMAエピトープを共有することが実証された(競合アッセイ):
1.ベースライン(Octet緩衝液)
2.第1の抗体のローディング(Ther-Ab2)
3.活性化(BCMA)
4.ベースライン(Octet緩衝液)
5.ウサギ抗体1(sBCMA-mAb1、sBCMA-mAb2又は無関係ウサギIgG抗体、下記の表2を参照されたい)
6.ウサギ抗体2(sBCMA-mAb2、sBCMA-mAb1又は無関係ウサギIgG抗体、下記の表2を参照されたい)。
【0179】
【0180】
c)注目すべきことに、sBCMAに対する226種のウサギ抗体の1つのみ(即ちsBCMA-mAb3)がTher-Ab2及びsBCMA-mAb1とサンドイッチすることができた。これは、下記の工程を含むOctetサンドイッチアッセイで実証された:
1.SA Octetセンサー上でB-ヤギ抗ウサギFcを捕捉する
2.sBCMA-mAb1を結合させる
3.無関係IgGでセンサーをブロックする
4.Ther-Ab2又は無関係二重特異性抗体コンストラクト+/-BCMAを結合させる
5.sBCMA-mAb3を結合させる。
【0181】
結果を
図3に示す。これらを、精製済組換え抗体としてsBCMA-mAb1及びsBCMA-mAb3を使用し、且つ下記のOctetサンドイッチ工程を含む更なるアッセイで確認した:
1.SA Octetセンサー上でB-ヤギ抗ウサギFcを捕捉する
2.sBCMA-mAb1を結合させる
3.無関係IgGでセンサーをブロックする
4.+/-BCMAを結合させる
5.Ther-Ab2を結合させる
6.sBCMA-mAb3を結合させる。
【0182】
結果を
図4に示す。工程2においてsBCMA-mAb1を無関係IgGに置き換えることにより、BCMA、Ther-Ab2及びsBCMA-mAb3の更なる添加後、このアッセイではいかなるシグナルも得られなかった(陰性コントロール)。
【0183】
d)下記の設定により、sBCMA/Ther-Ab2サンドイッチは、sBCMA-mAb1で捕捉してsBCMA-mAb3で検出するのに(Ther-Ab2による干渉が最小限という観点で)最適であることが実証された:
1.SA Octetセンサー上でB-ヤギ抗ウサギFcを捕捉する
2.sBCMA-mAb1を結合させるか(設定1)又はsBCMA-mAb3を結合させる(設定2)
3.無関係IgGでセンサーをブロックする
4.+/-BCMAを結合させる
5.Ther-Ab2を結合させる
6.sBCMA-mAb3を結合させるか(設定1)又はsBCMA-mAb1を結合させる(設定2)。
【0184】
BCMAを使用する設定と、BCMAを使用しない設定との間のシグナルの差違は、捕捉抗体としてsBCMA-mAb3を使用する場合と比較して、捕捉抗体としてsBCMA-mAb1を使用する場合に顕著であった。
【0185】
実施例3:ウサギモノクローナル抗sBCMAサンドイッチmAbの親和性決定
下記のウサギモノクローナル抗sBCMAサンドイッチmAbに関して結合親和性プロファイルを測定した:
- sBCMA-mAb1(ストック濃度1.43mg/ml)
- sBCMA-mAb2(ストック濃度2.251mg/ml)
- sBCMA-mAb3(ストック濃度0.78mg/ml)。
【0186】
実験を、25℃で、Biacore 3000(GE Healthcare)を使用して実施した。ランニング緩衝液は、HBS-P(10mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、0.05% Surfactant P-20)+0.1% BSAであり、キネティクスを高流量(100μl/分)で実施した。再生に10mMグリシン、pH1.7を使用した。
【0187】
表面調製:ヤギ抗ウサギIgG Fc(Jackson ResearchのProd.#111-005-046)を酢酸Na、pH5で1/20に希釈し、アミンカップリングを使用して、サンプル及びCM5センサーチップの参照Fc(Fc1)に共有結合的にカップリングさせた。個々のmAbをHBS-P+0.1% BSAで希釈し、sBCMAへの結合の動態解析のために、0.3μg/mlにおいてFc2、3又は4で捕捉した。
【0188】
相互作用パラメータ:sBCMA(1.19mg/mlストック)を分析物として600nM、300nM、150nM、75nM、37.5nM、18.8nM及び9.4nMで注入し、再現性を測定するために75nM濃縮を2回実行した。会合速度を2.5分にわたりモニタリングした。より遅いオフレートを有するmAbの場合により正確な動態を決定するために、解離時間は、20分であった。データは、参照Fcと0nM分析物濃度との両方がこのデータから減算されるという点で参照された二重バックグラウンドであった。Biacore評価ソフトウェアから、質量移動を伴う1:1 Langmuir結合モデルを使用した。
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【配列表】