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▶ ヴェーテーテー・テクニカル・リサーチ・センター・オブ・フィンランド・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】二段横波バルク弾性波フィルタ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/54 20060101AFI20241202BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20241202BHJP
   H03H 9/145 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H03H9/54 Z
H03H9/17 F
H03H9/145 Z
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021537493
(86)(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2019073891
(87)【国際公開番号】W WO2020049171
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-05
(31)【優先権主張番号】16/125,637
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521095260
【氏名又は名称】ヴェーテーテー・テクニカル・リサーチ・センター・オブ・フィンランド・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マルック・ユリランミ
(72)【発明者】
【氏名】タパニ・マッコネン
(72)【発明者】
【氏名】トゥオマス・ペンサラ
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-7239(JP,A)
【文献】特表2007-507960(JP,A)
【文献】特表2013-528996(JP,A)
【文献】特表2015-502065(JP,A)
【文献】特表2008-543157(JP,A)
【文献】特開2000-278091(JP,A)
【文献】特開2005-136761(JP,A)
【文献】国際公開第2005/060094(WO,A1)
【文献】特開2015-12397(JP,A)
【文献】特開2002-198776(JP,A)
【文献】特開平7-131291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/54
H03H 9/17
H03H 9/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の層を備える音響反射器と、
前記音響反射器の最上位層を提供する中間層であって、前記中間層が第1の領域および第2の領域を有し、前記第1の領域が第1の層の厚みを有し、前記第2の領域が前記第1の層の厚みと異なる第2の層の厚みを有する、中間層と、
前記音響反射器に接する第1の多層積層体であって、
前記中間層の前記第1の領域に接する第1の対向電極と、
前記第1の対向電極に接する第1の圧電層と、
前記第1の圧電層に接する第1の入力電極および第1の出力電極とを備え、前記第1の入力電極および前記第1の出力電極が、それぞれ第1の電極の厚みを有し、互いに平行に延び、互いに第1の間隙だけ離れている、第1の多層積層体と、
前記音響反射器に接する第2の多層積層体であって、
前記中間層の前記第2の領域に接する第2の対向電極と、
前記第2の対向電極に接する第2の圧電層と、
前記第2の圧電層に接する第2の入力電極および第2の出力電極とを備え、前記第2の入力電極および前記第2の出力電極が、それぞれ第2の電極の厚みを有し、互いに平行に延び、互いに第2の間隙だけ離れている、第2の多層積層体とを備え、
前記第1の出力電極が前記第2の入力電極に電気的に接続され、
前記第1の多層積層体および第2の多層積層体が、前記第1の入力電極と前記第1の対向電極との間への高周波電圧の印加が前記第1の入力電極と前記第1の出力電極の間の前記第1の圧電層および前記第2の入力電極と前記第2の出力電極との間の前記第2の圧電層において厚み延長音響共振モードを生み出すように構成される、弾性波フィルタデバイス。
【請求項2】
前記第2の層の厚みが前記第1の層の厚みより大きい、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項3】
前記第1の入力電極と第1の対向電極層との間の前記高周波電圧が、前記第1の入力電極と前記第1の出力電極との間の前記第1の圧電層および前記第2の入力電極と前記第2の出力電極との間の前記第2の圧電層において二次厚み剪断(TS2)音響共振モードを生み出す、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項4】
前記第1の多層積層体の前記第1の入力電極と前記第1の出力電極の間で生み出されるTS2共振モードの第1の共振周波数が前記第2の多層積層体の前記第2の入力電極と前記第2の出力電極の間で生み出されるTS2共振モードの第2の共振周波数と前記第2の共振周波数の1%から8%異なる、請求項3に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項5】
前記第1の多層積層体の前記第1の入力電極と前記第1の出力電極の間で生み出されるTS2共振モードの第1の共振周波数が前記第2の多層積層体の前記第2の入力電極と前記第2の出力電極の間で生み出されるTS2共振モードの第2の共振周波数と少なくとも50MHz異なる、請求項3に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項6】
前記第2の層の厚みが前記第1の層の厚みより前記第1の層の厚みの1%から10%大きい、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項7】
前記第2の電極の厚みが前記第1の電極の厚みより大きい、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項8】
前記第2の電極の厚みが前記第1の電極の厚みより小さい、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項9】
前記第2の電極の厚みが前記第1の電極の厚みより前記第1の電極の厚みの1%から10%薄い、請求項8に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項10】
前記第1の入力電極および前記第1の出力電極の各々が複数の第1の延長部を有し、前記第1の入力電極の前記複数の第1の延長部が前記第1の出力電極の前記複数の第1の延長部とくし型にされ、前記第2の入力電極および前記第2の出力電極の各々が複数の第2の延長部を有し、前記第2の入力電極の前記複数の第2の延長部が前記第2の出力電極の前記複数の第2の延長部とくし型にされる、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項11】
前記第1の入力電極および前記第1の出力電極の各々が前記複数の第1の延長部を有するくし構造であり、前記第2の入力電極および前記第2の出力電極の各々が前記複数の第2の延長部を有するくし構造である、請求項10に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項12】
前記複数の第1の延長部が前記複数の第2の延長部より厚い、請求項10に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項13】
前記第2の延長部の厚みが前記第1の延長部の厚みより前記第1の延長部の厚みの5%から20%小さい、請求項12に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項14】
前記複数の第2の延長部が前記複数の第1の延長部に実質的に平行である、請求項12に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項15】
前記複数の第2の延長部が、前記複数の第1の延長部に関して0より大きい角度を形成する、請求項12に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項16】
前記音響反射器がBraggミラーである、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項17】
前記第1の出力電極および前記第2の入力電極が、前記第1の多層積層体と前記第2の多層積層体との間で共有される共通の電極の部分である、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項18】
前記第1の出力電極が、導電性コネクタを通じて前記第2の入力電極に接続される、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項19】
前記導電性コネクタが、前記第1の多層積層体および前記第2の多層積層体のうちの少なくとも1つの延長部の長軸に平行に延びる、前記延長部の前記長軸に垂直に測定される前記延長部の幅より大きい長さを有する、請求項18に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項20】
前記第1の出力電極が前記第2の入力電極に実質的に平行である、請求項1に記載の弾性波フィルタデバイス。
【請求項21】
1つまたは複数の層を備える音響反射器と、
前記音響反射器の最上位層を提供する中間層であって、前記中間層が第1の領域および第2の領域を有し、前記第1の領域が第1の層の厚みを有し、前記第2の領域が前記第1の層の厚みと異なる第2の層の厚みを有する、中間層と、
前記音響反射器に接する第1の多層積層体であって、
前記中間層の前記第1の領域に接する第1の対向電極と、
前記第1の対向電極に接する第1の圧電層と、
前記第1の圧電層に接する第1の入力電極および第1の出力電極とを備え、前記第1の入力電極および前記第1の出力電極が、それぞれ第1の電極の厚みを有し、互いに平行に延び、互いに第1の間隙だけ離れている、第1の多層積層体と、
前記音響反射器に接する第2の多層積層体であって、
前記中間層の前記第2の領域に接する第2の対向電極と、
前記第2の対向電極に接する第2の圧電層と、
前記第2の圧電層に接する第2の入力電極および第2の出力電極とを備え、前記第2の入力電極および前記第2の出力電極が、それぞれ第2の電極の厚みを有し、互いに平行に延び、互いに第2の間隙だけ離れている、第2の多層積層体とを備え、
前記第1の出力電極が前記第2の入力電極に電気的に接続され、
前記第1の多層積層体および第2の多層積層体が、前記第1の入力電極と第1の対向電極層との間への高周波電圧の印加が前記第1の入力電極と前記第1の出力電極との間の前記第1の圧電層および前記第2の入力電極と前記第2の出力電極との間の前記第2の圧電層において音響モードを生み出すように構成される、弾性波フィルタデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、薄膜高周波弾性波フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
共振器およびフィルタなどの、マイクロアコースティック技術および薄膜技術に基づく高周波(「RF」)部品が、携帯電話、ワイヤレスネットワーク、衛星測位などの、無線用途において広く使用されている。集中定数素子、セラミックス、および電磁波を用いた相当品に対するそれらの優位性には、サイズの小ささや大量生産の能力がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Fattinger他、「Optimization of acoustic dispersion for high performance thin film BAW resonators」, Proc.IEEE International Ultrasonics Symposium, 2005, pp.1175-1178
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書は、バンドパス横波バルク弾性波(「LBAW」)フィルタのための技術を説明する。より具体的には、本開示は、LBAWフィルタにおける側波帯を抑制し、LBAWフィルタのバンドパスフィルタ特性を改善するための、技法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
LBAWは、バンドパスフィルタとして使用することができる。バンドパスフィルタは、1つまたは複数の望ましくない(または寄生的な)側波帯を含むことがある。本開示の実装形態は、2つ以上のLBAWをカスケード接続することによって、望ましくない側波帯を抑制するための技法を提供する。
【0006】
LBAWフィルタは、電極の2つのペアに挟まれた圧電層から形成される。各ペアからの1つの電極は、圧電層の上面に位置し、LBAWの入力または出力を形成する。入力電極および出力電極は間隙によって隔てられる。各ペアはまた、圧電層の下面に位置する対向電極を有する。入力共振器において圧電層に交流電圧を印加することによって、入力電極の下の圧電層において機械的な共振が形成される。圧電層の厚みと電極間の間隙は、この機械的な共振が間隙を介して出力共振器に結合されるように設計され得る。そのような結合が発生する周波数範囲が、LBAWフィルタの達成可能な帯域幅(または通過帯域の幅)を決定する。
【0007】
全般に、本明細書で説明される主題の1つの革新的な態様は、音響反射器と、音響反射器の最上位層を提供する、または最上位層に接する中間層と、音響反射器に接する第1の多層積層体と、音響反射器に接し第1の多層積層体に隣接する第2の多層積層体とを含む、弾性波フィルタデバイスにおいて具現化され得る。中間層は、第1の領域および第2の領域を有し、第1の領域は第1の層の厚みを有し、第2の領域は第1の層の厚みと異なる第2の層の厚みを有する。
【0008】
第1の多層積層体は、中間層の第1の領域に接する第1の対向電極と、第1の対向電極に接する第1の圧電層と、第1の圧電層に接する第1の入力電極および第1の出力電極とを含む。第1の入力電極および第1の出力電極は各々、第1の電極の厚みを有し、実質的に平行に延び、第1の間隙だけ離れている。第2の多層積層体は、中間層の第2の領域に接する第2の対向電極と、第2の対向電極に接する第2の圧電層と、第2の圧電層に接する第2の入力電極および第2の出力電極とを含む。第2の入力電極および第2の出力電極は各々、第2の電極の厚みを有し、実質的に平行に延び、第2の間隙だけ離れている。
【0009】
第1の出力電極は、第2の入力電極に電気的に接続される。第1の多層積層体および第2の多層積層体は、第1の入力電極と第1の対向電極層との間への高周波電圧の印加が、第1の入力電極と第1の出力電極との間および第2の入力電極と第2の出力電極との間の圧電層において音響モードを生み出すように構成される。いくつかの例では、第1の入力電極と第1の対向電極層との間への高周波電圧の印加は、第1の入力電極と第1の出力電極との間および第2の入力電極と第2の出力電極との間の圧電層において厚み延長音響共振モードを生み出す。
【0010】
任意選択で、前述のおよび他の実施形態は各々、以下の特徴のうちの1つまたは複数を、単独でまたは組合せで含み得る。
【0011】
第2の層の厚みは、第1の層の厚みより大きくてもよい。たとえば、第2の層の厚みは、第1の層の厚みより1%から10%大きくてもよい。
【0012】
第1の入力電極と第1の対向電極層との間の高周波電圧は、第1の入力電極と第1の出力電極との間および第2の入力電極と第2の出力電極との間の圧電層において、二次厚み剪断(TS2)音響共振モードを生み出すことができる。第2の層の厚みは第1の層の厚みと異なり得るので、第1の多層積層体の第1の入力電極と第1の出力電極との間に生み出されるTS2共振モードの第1の共振周波数は、第2の多層積層体の第2の入力電極と第2の出力電極との間に生み出されるTS2共振モードの第2の共振周波数と異なる。たとえば、第1の共振周波数は、第2の共振周波数と1%から8%異なり得る。第1の共振周波数は、第2の共振周波数と少なくとも50MHz異なり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、第2の電極の厚みは第1の電極の厚みより大きい。いくつかの実施形態では、第2の電極の厚みは第1の電極の厚みより小さい。たとえば、第2の電極の厚みは第1の電極の厚みより1%から10%薄くてもよい。
【0014】
第1の入力電極および出力電極の各々が、複数の第1の延長部を有し得る。第1の入力電極の複数の第1の延長部は、第1の出力電極の複数の第1の延長部とくし型にされ得る。第2の入力電極および出力電極の各々が、複数の第2の延長部を有し得る。第2の入力電極の複数の第2の延長部が、第2の出力電極の複数の第2の延長部とくし型にされ得る。いくつかの例では、第1の入力電極および出力電極の各々が複数の第1の延長部を有するくし構造であり、第2の入力電極および出力電極の各々が複数の第2の延長部を有するくし構造である。
【0015】
複数の第1の延長部は、複数の第2の延長部より厚くてもよい。たとえば、第2の延長部の厚みは、第1の延長部の厚みより5%から20%小さくてもよい。第2の延長部の厚みは、第1の多層積層体の第1の入力電極と出力電極との間に生み出される厚み延長(TE1)共振モードの第1の共振周波数が、第2の多層積層体の第2の入力電極と出力電極との間に生み出されるTE1共振モードの第2の共振周波数から1%以内にあるように、第1の延長部の厚みより大きくてもよい。
【0016】
複数の第2の延長部は、複数の第1の延長部に実質的に平行であり得る。複数の第2の延長部は、複数の第1の延長部に関して0より大きい角度を形成し得る。
【0017】
音響反射器はBraggミラーであり得る。
【0018】
第1の出力電極および第2の入力電極は、第1の多層積層体と第2の多層積層体との間で共有される共通の電極の部分であり得る。
【0019】
第1の出力電極は、導電性コネクタを通じて第2の入力電極に接続され得る。いくつかの例では、導電性コネクタは、第1の多層積層体と第2の多層積層体のうちの少なくとも1つの延長部の長軸に平行に延びる、延長部の長軸に垂直に測定される延長部の幅より大きい長さを有する。
【0020】
第1の出力電極は、第2の入力電極に実質的に平行であり得る。
【0021】
本明細書で説明される主題は、以下の利点のうちの1つまたは複数を実現するように、特定の実施形態において実装され得る。本明細書で説明されるバンドパスフィルタは、たとえば寄生的な側波帯を抑制することによって、LBAWフィルタのバンドパス応答を改善することができる。この抑制は、特定の周波数において、または周波数の範囲にわたって達成し得る。加えて、本明細書で説明されるLBAWフィルタは従来の弾性フィルタと比較して製造がより簡単であることがあり、それは、LBAWが、2つの垂直に積層されるバルク弾性波(BAW)結合共振フィルタと比較して、単一の圧電層しか使用しないからである。LBAWフィルタは、インターデジタル変換器(IDT)電極の寸法よりも、圧電層の厚みによってLBAWフィルタの動作が決定されるので、表面弾性波(SAW)フィルタと比較してより高い周波数で動作することもできる。いくつかの実施形態では、LBAWフィルタは、BAWフィルタより広い帯域幅も達成することができる。LBAWフィルタは、BAWにおける10個近くのリソグラフィパターニングステップと比較して単一のリソグラフィパターニングステップでフィルタとして働くことができ、SAWにおいて必要とされる反射器なしで動作することができるので、サイズがより小さい。
【0022】
本明細書の主題の1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付の図面および以下の説明に記載される。主題の他の特徴、態様、および利点が、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】多層膜(solidly-mounted)LBAWフィルタの概略透視図である。
図1B】自己支持LBAWフィルタの概略透視図である。
図1C】「IDT」電極構造の概略平面図である。
図2A】LBAW圧電層における2つのタイプの板波伝搬モードのうちの一方の概略図である。
図2B】LBAW圧電層における2つのタイプの板波伝搬モードのうちの他方の概略図である。
図3】例示的なLBAWの分散曲線の図である。
図4A】LBAWにおける2つの共振モードの概略図である。
図4B】周波数の関数としてのLBAWの例示的な伝送応答の図である。
図5】周波数の関数としてのLBAWの実験による伝送曲線の図である。
図6A】直列に接続された2つの例示的なLBAWフィルタを含む例示的なフィルタデバイスのブロック図である。
図6B】直列に接続された2つの例示的なLBAWフィルタを含む例示的なフィルタデバイスのブロック図である。
図6C】直列に接続された2つの例示的なLBAWフィルタを含む例示的なフィルタデバイスのブロック図である。
図6D】直列に接続された2つの例示的なLBAWフィルタを含む例示的なフィルタデバイスのブロック図である。
図6E図6Aに示されるフィルタデバイスの断面図の一部である。
図7A】2つの個別の例示的なLBAWの伝送曲線を示す図である。
図7B図7Aの2つの個別の例示的なLBAWの分散曲線を示す図である。
図7C】カスケード接続されたLBAWを伴う例示的なフィルタデバイスの伝送曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
様々な図面における同様の参照番号および名称は、同様の要素を示す。
【0025】
図1A図1Cは、くし型の幾何学的形状を有する入力電極150および出力電極170を伴うLBAWフィルタ(または共振器)100(「インターデジタル変換器」または「IDT」LBAWとも呼ばれる)の例を示す。LBAWフィルタ100は、厚みdを有する圧電(「ピエゾ」)層110、ピエゾ層の上面に位置するIDT電極構造102、およびピエゾ層の下面に位置する下側対向電極120を含む。IDT電極構造(「IDT」)102は、導電性材料、たとえば金属またはポリシリコンの、2つのくし状の電極150および170を含む。IDT電極150および170は、「くし」の「爪」または「歯」または「指」となる平行な延長部150aおよび170aをそれぞれ有する。電極150および対向電極120は、ピエゾ層110を伴う入力共振器を形成する。電極170および対向電極120は、ピエゾ層110を伴う出力共振器を形成する。
【0026】
入力ポート160においてIDT電極150と下側対向電極120との間に発振する(または交流の)入力電圧を印加することによって、ピエゾ層110において音響振動が生み出される。印加される電圧は、圧電効果を介して機械的な(たとえば、音響的な)振動に変換される。共振条件(たとえば、以下でさらに詳述されるような、ある音響共振モードを伴う)のもとでは、この振動は、入力電極150の下に定在波を、および間隙領域190においてエバネッセント波(指数関数的に減衰する振幅を伴う)を生み出すことができる。振動周波数および間隙幅Gを適切に選択すると、定在波が、エバネッセント波により電極150の下のピエゾ領域から電極170の下のピエゾ領域へと間隙190にまたがって機械的に結合され、電極170の下のピエゾ層170において同様の定在波を生み出すことができる。電極170の下の定在波は、逆圧電効果を介して、出力ポート180における同じ周波数の出力信号電圧をもたらす。強い圧電結合を伴う機械的な共振においてこの結合が発生する周波数範囲が、LBAWフィルタ100の通過帯域(または帯域幅)を形成する。いくつかの例では、周波数範囲は1.8GHzから1.95GHzの間である。以下でさらに論じられるように、LBAW100の様々な層の厚みおよび幾何学的形状、ならびに離隔を調整して、フィルタのRF応答および通過帯域を変更することができる。本開示全体で、幅および長さは圧電層に平行な軸に沿って測定され、厚みは圧電層に垂直な軸に沿って測定される。
【0027】
反射構造130は、ピエゾ層110における振動を背後の基板140から隔離し、音響的な漏洩を防ぐ役割を果たすことができる。反射構造は、薄い層の積層体、たとえば、交互に現れる高音響インピーダンス(「Zac」)材料層と低音響インピーダンス材料層からなるBragg反射器であり得る。これらの層の厚みは、LBAWフィルタの通過帯域の周波数とその近くの周波数がピエゾ層110へと反射され、すべての他の周波数がミラーを通過するように設計され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、LBAW100は、(図1Aに示されるように)基板140の上に直接積層されず、図1Bに示されるように自己支持される。そのような構成では、基板140およびミラー130は空隙によって置き換えられ、LBAW100が製造される領域を通って横方向に延びるピエゾ部分が基板140によって支持される。
【0029】
いくつかの実施形態では、図1Cに示されるように、延長部150aおよび170aは長方形であり、幅W、長さLを有し、間隙幅Gだけ離れている。各電極150および170はそれぞれ、1つまたは複数の延長部150aおよび170aを有する。電極延長部の総数はKとして指定される。
【0030】
図1Cは、同じ幾何学的形状と離隔Gを伴う平行な延長部150a/170aを伴う長方形のくし型電極150/170を示すが、他の電極の幾何学的形状も考えられる。設計の検討事項には、電極間の間隙、電極の長さ、ならびに、電極延長部がもしあればその数および形状がある。間隙は、入力電極と出力電極との結合を制御するために使用され得る。より長い電極は、結合を増大させることもできる。延長部の数Kは、帯域幅を制御するために、および/または、電極が占める面積を節約しながら結合を増大させるために使用され得る。いくつかの実施形態では、電極は、2つ以上の延長部(たとえば、K≧2)を伴う長方形の板からなる。たとえば、各延長部は長方形の板であり得る。いくつかの実施形態では、電極は、共通の軸を有する同心円または同心渦である。
【0031】
ピエゾ層110は、様々な圧電材料から形成され得る。例示的な材料には、ZnO、AlN、CdS、PZT、LiNbO、LiTaO、石英、KNN、BST、GaN、Sc含有AlN、または、追加の要素をドープされた、もしくはそれと合金にされた前述の材料がある。ドーピングは、ピエゾ層110の電気機械的な特性を改善し、または適合させるために使用され得る。以下でさらに詳述されるように、ピエゾ層の厚みdは、LBAWフィルタの所望の帯域幅の周波数の近くの厚み延長モードがピエゾ層において生み出されるように選択される。いくつかの実施形態では、ピエゾ層の厚みdは、λの20%から50%、またはλの30%から45%であり、λは厚み方向の圧電振動の波長である。いくつかの実施形態では、dは1500nmから2500nmであり、または1800nmから2200nmである。
【0032】
薄膜IDT102は、様々な材料からなり得る。いくつかの実施形態では、IDT電極150および170は金属である。たとえば、電極材料は、Al、Mo、Pt、Cu、Au、Ag、Ti、W、Ir、Ru、または、金属および/もしくは追加の材料をドープされた金属、たとえばAlSi、AlSiCu、ポリシリコンなどの複数の層を含み得る。ドーピングは、IDTの電気的もしくは機械的な特性を改善し、または適合させるために使用され得る。
【0033】
図1Aは単一の共通対向電極120を示すが、フィルタ100は、入力共振器および出力共振器のための別々の電極を含み得る。様々な材料が、対向電極(たとえば、電極120)に適している。たとえば、電極は、Al、Mo、Pt、Cu、Au、Ag、Ti、W、Ir、Ru、または、金属および/もしくは追加の材料をドープされた金属、たとえばAlSi、AlSiCuなどの複数の層を含み得る。ドーピングは、IDTの電気的もしくは機械的な特性を改善し、または適合させるために使用され得る。たとえば、電極は、Ti+Mo、Ti+W、AlN+Mo、またはAl+Wであり得る。電極は多層であり得る。電極は、電極の下に配設される特別な薄いシード層を有し得る。
【0034】
反射構造130は、交互に現れる異なる材料の層からなり得る。たとえば、反射構造130は、タングステン(W)、SiO、シリコン(Si)、および炭素(C)のうちの2つの交互に現れる層を含み得る。たとえば、高音響インピーダンスの層は、W、Mo、Ir、Al、ダイヤモンド、Pt、AlN、Siを含む。低音響インピーダンスの層は、SiO、ガラス、Al、Ti、C、ポリマー、または多孔質材料を含み得る。Siの層は中間の音響インピーダンスをもたらす。SiまたはSiOまたはガラス、サファイヤ、石英などの、様々な材料が基板140に適している。基板140の材料は、高い電気抵抗を有し得る。基板は、携帯電話プラットフォームへの統合などの、RF用途に適切な厚みを有し得る。たとえば、基板は、500ミクロン未満、または200ミクロン未満の厚みを有し得る。たとえば、675μmの厚みのSiウェハを購入して、たとえばモバイルプラットフォームに対する所望のデバイスの厚みを達成するために薄くすることができる。
【0035】
LBAW100の音響応答のモデリングは、所望のバンドパス特性を達成するために構造の個々の要素の設計パラメータをどのように調整すべきかということについての指針を与えることができる。たとえば、LBAW100は、特定の周波数において共振モードを有するように設計され得る。一般に、様々なLBAW100の構成要素の幾何学的形状は、様々な音響特性を達成するように選択され得る。LBAW100の特性は、互いに独立ではないことがあるこれらの幾何学的形状の組合せに依存し得る。
【0036】
圧電層110において、(たとえば、ポート160における)入力電圧の異なる励振周波数fにおいて、異なるバルク音響振動モードが生じ得る。ピエゾ層110における音響振動は、ラム波(または板波)として横方向に伝搬することができ、このとき粒子の運動は、波の伝搬の方向を含む平面、および垂直な平面(たとえば、図1Aのz軸)において存在する。2つのそのようなモードが図2A図2Bに示される。図2Aを参照すると、厚み延長(TEまたは縦)バルクモード200は、主に伝搬方向に垂直な(z方向の)粒子の変位210を有する。図2Bを参照すると、二次厚み剪断(TS2)バルクモード220は、主に伝搬方向に平行な(y方向の)粒子の変位230を有する。両方のモードに対して、厚み方向における共振が生じ得る最低の周波数は、ピエゾ層110の厚みdが波長λの半分の整数倍に等しい(電極150/170の厚みは無視する)ときである。言い換えると、
【0037】
【数1】
【0038】
であるときであり、ここでNは共振の次数を示す整数である。TE1モードでは、
【0039】
【数2】
【0040】
である。以下でさらに論じられるように、電極の幅Wと電極間の間隙Gは、エバネッセントテールを通じて間隙Gにまたがって結合して2つの機械的な共振モードを生み出すことができる、ある横方向の波長λ||を伴うTE1モードの定在波が形成され得るように設計され得る。
【0041】
LBAW共振器100の音響特性は、分散曲線で表現され得る。図3を参照すると、LBAW100の例示的な分散曲線が、周波数fの関数として、振動の横波数k||を示し、ここで
【0042】
【数3】
【0043】
である。圧電層の厚みdと電極150または170の厚みの合計が概ねバルク振動の波長の半分であるλ/2を含む、一次縦(厚み延長、TE1)振動モードと、バルク振動が主に厚み方向(図2Bのz軸)に垂直であり、圧電層の厚みdと電極150または170の厚みの合計に概ね1つの音響波長λが含まれる、二次厚み剪断(TS2)モードとが、図に示される。TE1モードは各分散曲線のより暗い部分であり、TS2モードは各分散曲線のより明るい領域である。上の曲線(「電極なし」)は、間隙190の下の圧電層の分散特性を表す。下の曲線(「電極」)は、アクティブ領域としても知られている、電極150/170の下の圧電層の分散特性を表す。より具体的には、「電極」曲線がk=0と交差する場合、TE1モードでは、約λ/2が電極150または170と圧電層の合計の厚みに含まれる。波はBragg反射器へと延び得るので、これは近似である。k=0の直線との「電極なし」曲線の交点は、約λ/2が下側電極のみの厚みと圧電層の厚みの合計に含まれるモードを示す。TE1モードにおいて周波数fの増大とともにk||が増大するこのタイプの分散は、タイプ1と呼ばれる。電極エリアと非電極エリアとの間での交点k||=0の周波数の差が、フィルタの達成可能な帯域幅のハード限界を決定した。間隙幅G、電極幅W、および延長部の数Kが、分散の差によって設定される限界内で結合強度を変化させるために使用され得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、LBAW100は、タイプ1分散を生み出すように設計され得る。たとえば、タイプ1分散が発生し得る、ピエゾ層110の材料が選択され得る。たとえば、ZnOが使用され得る。別の例では、音響Bragg反射器130の適切な設計が、タイプ1分散を達成するのを助けることができる。たとえば、ピエゾ層110に窒化アルミニウム(「AlN」)を使用することで、通常はタイプ2分散を生み出すことができ、このときTE1モードは、最初は周波数fの増大とともにk||が減少し、そして周波数fの増大とともにk||が増大する、非単調な挙動を示す(図3の分散曲線において説明されたものと概ね類似しているが、TE1とTS2が入れ替わっている)。しかしながら、いくつかの実施形態では、反射構造130(たとえば、音響Bragg反射器)の適切な設計により、LBAW100は、ピエゾ層100においてAlNを使用し、それでもタイプ1分散を達成することができる。たとえば、Fattinger他、「Optimization of acoustic dispersion for high performance thin film BAW resonators」, Proc.IEEE International Ultrasonics Symposium, 2005, pp.1175-1178を参照されたい。
【0045】
図3では、k||の正の値は実数の波数(伝搬波)を示し、負のk||の値は虚数の波数(エバネッセント波)に対応する。共振が生じるには、音響エネルギーがLBAW共振器構造の内部に閉じ込められなければならない。厚み(z軸)方向において、(反射構造130を使用した)基板からの隔離が、エネルギー閉じ込めのために使用され得る。横方向において、エネルギー閉じ込めは、エバネッセント波が電極領域の外側に(たとえば、「電極なし」曲線上に)形成するときに発生し得る。LBAWの2つの共振器(たとえば、電極150/170および120)間の共振結合を得るために、TE1モードの定在波が(電極の下の)ピエゾ層のアクティブ領域において形成し、エバネッセント波が「電極なし」領域において形成する。言い換えると、k||は、TE1「電極」曲線に対しては正であり、TE1「電極なし」曲線に対しては負である。図3によれば、これは、「閉じ込め範囲」と標識された周波数範囲において発生する。エネルギー閉じ込めは、タイプI分散においては実現がより容易であり得る。理論に限定されるものではないが、図3の太いTE1の線のように分散曲線が単調に増加するとき、「電極」に対して、閉じ込め範囲の中の単一の周波数において、利用可能な単一の虚数の波数があるか、または閉じ込め範囲の上に、単一の実数の波数があるかのいずれかである。前者は、TE1が電極の外側に伝搬しないことを意味し、後者は、TE1が電極の外側の伝搬波と結合し、したがって「漏洩」し得ることを意味する。タイプ2分散は類似する曲線によって記述され得るが、TE1曲線とTS2曲線が入れ替わっている。タイプ2における曲線が非単調であるという事実は、所与の周波数においていくつかの実数の波数があり得るということを意味する。ある周波数に対していくつかの波数があることは、伝搬波が電極の外側において利用可能であることを意味し、これは「漏洩」を引き起こし得る。
【0046】
図4A図4Bは、定在波共振モードとLBAWバンドギャップとの関係を示す。図4Aを参照すると、LBAW100の一部分は、幅Wを伴う2つの隣接する電極401および402(たとえば、図1Aのそれぞれの電極150および170の延長部150aおよび170aに対応する)を含む。LBAW100のバンドパス周波数応答は、構造において生じる2つ(またはそれより多く)の横方向の定在共振モード410および420によって形成される。横方向の定在波の共振は、板波が隣接する電極401および402の端部から反射されるときに生じ得る。偶モードの共振410では、両方の電極150と170の下の圧電層は同位相で振動し、一方で奇モードの共振420では、位相は反対である。構造の全体の幅がモードの横方向の波長λ||の半分に概ね等しいとき、偶モードの横方向の定在波共振が生じ得る。
【0047】
【数4】
【0048】
無限小の間隙幅Gの極限において、λevenは下から全体の幅に近づく。図4Aに示されるように、λevenは、Gが大きくなると小さくなり、Gが大きくなると大きくなる。小さい間隙(たとえば、ゼロ間隙)の場合、λevenは4Wに近づき、大きい間隙の場合、λevenは2Wに近づく。電極の幅がモードの横方向の波長λ||の半分に概ね等しいとき、奇モードの横方向の定在波共振が生じ得る。
【0049】
【数5】
【0050】
図4Bを参照すると、偶モード410および奇モード420は、タイプ1分散を伴うLBAWに対する入力周波数fの関数としての伝送ピークとして示される。タイプ1分散では、偶モード410は、より波長の短い奇モード420よりも、波長が長く周波数が低い。モード間の周波数の差430は、LBAWフィルタ100の達成可能な帯域幅を決定し、構造の音響的性質およびIDT共振器102の寸法に依存する。音響的な結合の強さは、偶の(対称的な)共振と奇の(非対称的な)共振との(共振)周波数の差に関して
【0051】
【数6】
【0052】
と定義されてもよく、ここでfsymmおよびfasymmはそれぞれ、対称的な固有周波数および非対称的な固有周波数であり、f=(fsymm+fasymm)/2は2つのモード間の中心周波数である。
【0053】
いくつかの実施形態では、各電極(たとえば、150および170)の延長部(たとえば、150aおよび170a)の数を増やすことで、LBAWにおける偶モードと奇モードとの周波数の差を大きくし、したがって帯域幅を拡大することができる。この効果は、奇モードの横方向の波長が電極構造の周期性(たとえば、幅W)に依存し得るのに対し、偶モードは構造の幅全体(たとえば、すべての幅Wと間隙Gと合計)に依存し得るという事実に起因し得る。たとえば、電極の延長部の総数がKであり、電極幅がWであり、間隙幅がGである場合、偶モード共振周波数における横波弾性波の波長λ||は、
【0054】
【数7】
【0055】
に近づき、またはそれよりわずかに短い。
【0056】
しかしながら、この構造における奇モードの横方向の定在波共振は、
【0057】
【数8】
【0058】
に近づき、またはそれよりわずかに大きい。
【0059】
追加または代替として、いくつかの実施形態では、構造の全体の幅K・W+K・Gは、構造に閉じ込められる高次モードが望まれる奇モード共振となるようなものであり得る。たとえば、Kは31であってもよく、Wは3μmであってもよく、Gは2μmであってもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、電極延長部の数Kは、2と200の間、または10と60の間である。いくつかの実施形態では、電極延長部の長さLは、50μmと2000μmの間、または70μmと500μmの間であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、間隙Gは、電極150および170の下に形成される定在波のエバネッセントテールの結合が可能になるように選択される。たとえば、電極延長部間の間隙Gは、0.1μmと10μmの間、または2μmと5μmの間であり得る。
【0062】
いくつかの実施形態では、電極150および170のトポロジーは、間隙幅Gが構造の幅全体にわたって単一の偶モード410を生み出すのに十分に良好な結合を電極延長部間にもたらすように設計され得る。たとえば、望まれる偶共振モードにある間隙において、間隙幅Gは、エバネッセント弾性波の減衰長、すなわち元の振幅をAとして振幅がA=A・e-1となる長さの、2%~300%、または10%~100%であり得る。間隙幅Gは最適化され得る。間隙の幅を狭くしすぎると、(1)最後には偶モードと奇モードが互いに離れすぎて通過帯域に谷が生じることがあり、(2)奇モードに対する結合係数の低下を招くことがあり、または(3)指から指までの容量性フィードスルーが増大して帯域外の減衰が悪化することがある。
【0063】
いくつかの実施形態では、間隙幅Gは、ピエゾ層の厚みdに関して定義され得る。たとえば、Gは、dの10%から300%、またはdの25%から150%となるように設計され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、電極延長部の幅Wは、0.1μmと30μmの間、または2μmと5μmの間であり得る。いくつかの実施形態では、Wは、望まれる奇モード共振周波数における横波弾性波の波長λ||であるλoddが得られるように設計され得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、電極幅Wは、半波長の倍数が電極幅内に収まらないように設計される。たとえば、Wは、望ましい奇共振モードにおける横波弾性波の波長λ||より小さくなるように設計されてもよく、たとえばλ||=λoddである。
【0066】
いくつかの実施形態では、様々なLBAW100の構成要素の厚みは、様々な音響的特性を達成するように選択されてもよく、相互に依存関係があり得る。たとえば、ピエゾ層110の厚みd(最小値および最大値)がまず、動作周波数fにおけるピエゾ材料の中での音響波長(λ)に関して決定され得る。いくつかの実施形態では、他のLBAW100の層の厚み(最小および最大)は、ピエゾ厚みdの選択に基づいて選ばれ得る。たとえば、電極(対向電極120を含む)と圧電層の厚みの合計は、使用されているモード、たとえば厚み延長モードに対するバルク縦波の波長の約半分となるように選択され得る。N=1である基本モード(第1のモード、すなわち1次高調波)はより大きい結合を可能にし得るが、N>1のモードも可能である。たとえば、電極150および170、下側電極120、ならびに反射構造130の厚みは、ピエゾ層の厚みdの百分率として定義され得る。いくつかの実施形態では、すべての厚みが選択されると、数K、幅W、および長さLなどの、電極延長部150aおよび170aの幾何学的形状が、LBAW100の電気インピーダンスをシステムインピーダンスと整合するように調整され得る。理論に限定されるものではないが、インピーダンス整合は、システムにおける損失と反射を防ぐのを助けることができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、電極150および170の厚みは、dの1%と30%の間、またはdの5%と25%の間、またはdの3%と15%の間である。
【0068】
いくつかの実施形態では、下側電極120の厚みは、dの5%と50%の間、またはdの10%と30%の間、またはdの10%と20%の間である。
【0069】
反射構造130がBragg反射器であるいくつかの実施形態では、通過帯域波長の必要とされる反射率が得られるように、反射器の代替的な層が設計され得る。たとえば、各層の厚みは、奇のTE1共振モードと偶のTE1共振モードを反射するように、厚み方向の音響波長λの4分の1に等しく、またはそれより小さく、またはそれより大きくてもよい。いくつかの実施形態では、Bragg反射器の中の単一の層は、dの15%から80%、またはdの20%から70%であり得る。
【0070】
電極150および170の厚みと材料によって決定されるIDT102の質量負荷は、電極領域のTE1モードのk||=0周波数と電極外側領域のTS2モードのk||=0周波数との周波数の差が小さくなるように設計され得る。理論に限定されるものではないが、外側領域のTS2モードと電極領域のTE1モードとの周波数の差が小さいとき、閉じ込め範囲は大きい。より具体的には、外側領域のTS2モードのk||=0周波数は、電極領域のTE1カットオフ周波数の95%~99%であり得る。外側領域のTS2モードのk||=0周波数と外側領域のTE1モードのk||=0周波数との周波数の差は大きくなるように、たとえば電極領域のTE1モードカットオフ周波数の5%~15%、たとえば6.5%~7.5%となるように設計される。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態によれば、外側領域のTS2モードのk||=0周波数は、電極領域のTE1カットオフ周波数の98%以上、または98%と99.5%の間、または98.9%である。同様に、電極領域のTE1モードのk||=0周波数と外側領域のTS2モードのk||=0周波数との間の周波数の差として表される周波数距離
【0072】
【数9】
【0073】
は小さくなければならず、たとえば1%のオーダーでなければならない。例として、前記周波数距離は、0.2%と2.1%の間、または0.5%と1.8%の間、または0.8%と1.5%との間、またはたとえば1.1%であってもよい。
【0074】
図5は、例示的なLBAW100に対する挿入損失IL対周波数fの曲線を示す。この曲線は、TE1波に対応するピーク510およびTS2波に対応するピーク520を伴う2つの通過帯域を示す。上で論じられたように、各通過帯域の幅は、それぞれのタイプの波に対する偶モードと奇モードの周波数の差によって決定される。ここで、TS2モードは側波帯520a(「TS2通過帯域」とも本明細書で呼ばれる)に対応し、TE1モードは通過帯域510a(「TE1通過帯域」とも本明細書で呼ばれる)に対応する。いくつかの実施形態では、LBAW100は、TS2モードに対応するピーク520を抑制しながら、TE1モードに対応するピーク510の特性を維持するように設計される。特定の理論に限定されるものではないが、ピエゾ薄膜材料は厚み方向により強い電気機械的な結合を有するので、TE1モードの動作が選択され得る。言い換えると、TE1縦モード振動は、ピエゾ層110の厚みにわたって電気的な励振に対してより効率的に結合する。
【0075】
いくつかの実施形態では、LBAW100は、TE1モードに対して、0.5GHzと10GHzの間または1GHzと4GHzの間の通過帯域を有するように設計され得る。いくつかの例では、TE1通過帯域は1.8GHzと3.7GHzの間である。通過帯域の限界は、設計の検討事項を織り込むことができる。たとえば、デバイスの寸法は非常に大きくまたは非常に小さくなり得る。大きすぎる寸法は、あまりにも多くの空間を占めて非効率さをもたらし得る。小さすぎる寸法は、薄く狭い電極により性能を低下させて、抵抗および損失につながり得る。いくつかの実施形態では、LBAW100は、中心周波数に対して0.5%~15%、たとえば、中心周波数に対して10%、または5%、または2%、または1%の、TE1通過帯域幅510aを有するように設計され得る。いくつかの実施形態では、通過帯域における挿入損失は-7dBから-0.5dB、または-5dBから-1.5dBである。
【0076】
本開示の実装形態は、TS2モードによって生み出されるLBAW側波帯を抑制するための技法を提供する。実装形態は、複数のLBAWをカスケード接続することによって側波帯を抑制する。カスケード接続されたLBAWフィルタは、一方のフィルタの挿入損失が他方のフィルタの側波帯を抑制するように、異なるTS2共振周波数を有するように設計され得る。
【0077】
図6A図6Dは、直列に接続された2つのLBAWフィルタを含む例示的なフィルタデバイス600のブロック図を示す。実施形態600は、第2のLBAW100bに接続された第1のLBAW100aを含む。第1のLBAW100aおよび第2のLBAW100bの各々は、図1Aまたは図1BのLBAW100に構造的に類似している。たとえば、第1のLBAW100aは、延長部150a、170a、および電極150と170を含む。第1のLBAW100aの電極150および170は、実質的に平行に延び、第1の間隙だけ互いに離れている。同様に、第2のLBAW100bは、延長部650a、670a、および電極650と670を含む。第2のLBAW100bの電極650および670は、実質的に平行に延び、第2の間隙だけ互いに離れている。
【0078】
電極150は入力電極であり、電極170は第1のLBAW100aの出力電極であり、電極670は入力電極であり、電極650は第2のLBAW100bの出力電極である。第1のLBAW100aおよび第2のLBAW100bは、第1のLBAW100aの電極(たとえば、電極150)と第1の対向電極640との間への高周波電圧の印加が、第1のLBAW100aの(たとえば、第1の圧電層の中の)電極150と170との間、および第2のLBAW100bの(たとえば、第2の圧電層の中の)電極650と670との間に、厚み延長(TE)音響共振モードおよび厚み剪断(TS)音響共振モードを生み出すように、構成される。したがって、第1のLBAW100aの入力電極150はフィルタデバイス600に対する入力を提供するが、第2のLBAW100bの出力電極650はフィルタデバイス600に対する出力を提供する。電極170は電極670と電気的に結合される。電極170および670(および存在する場合には接続660)は、第1のLBAW100aの入力電極150と第2のLBAW100bの出力電極650との間に共通のフローティング電極602を形成することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、電極170は、導電性コネクタ660を通じて電極670に接続される。図6Aおよび図6Cは、導電性コネクタ660を通じた電極170と670の接続の例を示す。図6Aに示されるように、導電性コネクタ660は、第1のLBAW100aおよび第2のLBAW100bが基本的に隣接するように、たとえば、基板上でLBAWデバイスの幅未満だけ離れているように、または電極170もしくは760の幅(幅は延長部の長軸に平行な向きに沿って測定され得る)未満だけ離れているように、比較的短くてもよい。
【0080】
代替として、図6Cに示されるように、導電性コネクタ660は、第1のLBAW100aおよび第2のLBAW100bがLBAWデバイスの幅より長く離れているような、延長された導電体または導電線であり得る。図6Cは、コネクタ660を直線として示すが、このことは必須とはされない。これにより、LBAWの実質的に任意の配置が可能になり、これは集積回路のレイアウトにとって有益であり得る。
【0081】
導電性コネクタ660は、最長で電極170、670と同じ長さ(電極170、670の長軸に沿って、たとえば延長部170a、670aの長軸に垂直に測定される)を有し得る。導電性コネクタ660は、延長部170a、670aの幅Wより長いか短い、またはそれと同じ長さ(やはり、電極170、670の長軸に沿って測定される)を有し得る。図6Aおよび図6Cに示されるように、導電性コネクタ660は、延長部170a、670aの幅より大きい長さを有し得る。電極170、670および導電性コネクタ660は、共通の電極602を一緒に形成する。
【0082】
いくつかの実施形態では、フィルタデバイスは、図6Bに示されるように、導電性コネクタ660を有しなくてもよい。この場合、図6Bに示される共通の電極602は、第1のLBAW100aの電極170と第2のLBAW100bの電極670の両方として機能する。前に述べられたように、共通の電極602は、第1のLBAW100aの入力電極150と第2のLBAW100bの出力電極650との間のフローティング電極を形成することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、共通の電極602は個別の指からなる。指は、導電性の基部から延びず、電気的に接続される必要がない。図6Dは、2つのLBAW100aと100bの間に複数の共通の電極を伴う例示的なフィルタデバイスを示す。個別の指650は、互いに電気的に絶縁され得る。指は、2つのLBAW100aと100bの電極(150、650)の延長部(150a、650a)とくし型にされ得る。
【0084】
電極150、650、および共通の電極602(くし構造の基部となる)は離れている。電極170、670、602は、長方形の物体であってもよく、実質的に平行に延びてもよい(すなわち、それらの長軸は実質的に平行である)。代替として、電極150および170は、電極650および670に関して0より大きい角度を形成するように配置され得る。2つの対向する電極(1つのLBAWの一部または共通の電極602の一部としての)は、同じまたは異なる形状や、同じまたは異なる寸法を有し得る。
【0085】
電極150、170、650、670の各々は、それぞれ、2つ以上の延長部150a、170a、650a、670aを含む。延長部は、それぞれの電極から延び、その長さに沿って離隔される。第1のLBAW100aの延長部150a、170aは、第2のLBAW100bの延長部650a、670aに実質的に平行であり得る(たとえば、5度未満の角度を形成し得る)。第1のLBAW100aの延長部の第1のセット(またはすべて)は、延長部の第1のセットが第2のLBAW100bの延長部の第2のセット(またはすべて)に関して0より大きい(たとえば、5度より大きい)角度を形成する(すなわち、平行ではない)ように配置され得る。
【0086】
第1のLBAW100aおよび第2のLBAW100bの各々において、延長部の各々は、それぞれの電極から延びるくし状の構造の一部であり得る。第1の電極(たとえば、電極150)から延びるくし構造は、第1の電極に対向する第2の電極(たとえば、電極170)から延びるくし構造と一体化され得る。各くし構造は2つ以上の延長部を含み得る。くし構造の延長部は互いに平行であり得る。2つの一体化されたくし構造の延長部は間隙により離隔される。第1のくし構造の延長部は、第1のくし構造と一体化された第2のくし構造の延長部に平行であり得る。たとえば、延長部670aは、第2のLBAW100bの延長部650aに平行であり得る。
【0087】
2つのLBAW100a、100bは、同じまたは異なる数の延長部を有し得る(たとえば、Kは両方のLBAWに対して同じであり得る)。たとえば、図6A図6Cに示されるように、電極170および670と関連付けられるくし構造は同じ数の延長部を有し、図6A図6Cの電極150および650と関連付けられるくし構造は同じ数の延長部を有するので、延長部の総数は両方のLBAW100a、100bに対して同じである。
【0088】
LBAW内の2つのくし型のくし構造は、同じまたは異なる数の延長部を有し得る。たとえば、図6Aに示されるように、電極150と関連付けられるくし構造は、電極170と関連付けられるくし構造とは異なる数の延長部を有する。
【0089】
2つのくし構造ではなく、フィルタデバイスは、複数の延長部を伴うくし構造を提供する第1の電極と、くしの延長部間に延びる単一の棒状の導電体(たとえば、単一の延長部)を含む第2の電極とを含み得る。くし構造は棒の延長部と一体化される。
【0090】
電極150、170、650、670は、同じまたは異なる材料からなり得る。延長部150a、170a、650a、670aは、同じまたは異なる材料からなり得る。1つまたは複数の電極および1つまたは複数の延長部は、同じまたは異なる材料からなり得る。いくつかの例では、延長部および電極は、アルミニウム(Al)などの1つまたは複数の金属からなる。
【0091】
図6Eは、図6Aに示されるフィルタデバイス600の断面図を示す。図6B図6Dの実装形態は、同様の断面構造を有する。簡潔さのために、フィルタデバイス600の一部だけが図6Eに示されている。
【0092】
第1のLBAW100aは、第1の音響反射器608、第1の音響反射器608の上にある(およびいくつかの実装形態ではその一部を形成する)第1の中間層606、たとえば第1の誘電層、第1の中間層606の上にある第1の対向電極604、第1の対向電極604の上にある第1の圧電層602、および第1の圧電層602の上にある1つまたは複数の第1の導電層610を含む。1つまたは複数の第1の導電層610は、電極150、170、および延長部150a、170aを形成する。
【0093】
同様に、第2のLBAW100bは、第2の音響反射器618、第2の音響反射器618の上にある(およびいくつかの実装形態ではその一部を形成する)第2の中間層616、たとえば第2の誘電層、第2の中間層616の上にある第2の対向電極614、第2の対向電極614の上にある第2の圧電層612、および第2の圧電層612の上にある1つまたは複数の第2の導電層620を含む。1つまたは複数の第2の導電層620は、電極650、670、および延長部650a、670aを形成する。いくつかの実装形態では、第1の中間層606および第2の中間層616は導電層であり得る。そのような導電層はアルミニウムでできていてもよい。
【0094】
第1および/または第2の中間層は、中間層の2つの領域であり得る。中間層は、音響反射器608の最上位層であってもよく、または音響反射器の最上位層の上に配置されてもよい。第1の中間層および第2の中間層を含む2つの領域は異なる厚みを有し得る。音響反射器608は1つまたは複数の層を有し得る。音響反射器608の最上位層は、音響反射器608の層のうちで対向電極に最も近い層である。
【0095】
いくつかの実施形態では、第1および/または第2の反射器はBraggミラーである。第1の反射器608および第2の反射器618は、第1のLBAW100aと第2のLBAW100bとの間で共有される共通の反射器の部分であり得る。第1の圧電層602および第2の圧電層612は、第1のLBAW100aと第2のLBAW100bとの間で共有される共通の圧電層の部分であり得る。
【0096】
カスケード接続されたLBAWが、TSモードによって生み出されるスプリアス側波帯を抑制するために利用され得る。たとえば、実施形態600は、第1のLBAW100aおよび第2のLBAW100bの側波帯の結果である側波帯を有し得る。第1のLBAW100aおよび/または第2のLBAW100bは、LBAW100aおよび100bの個々と比較してより低い信号伝送を有するように実施形態600の側波帯を抑制するために利用され得る。
【0097】
LBAWのTE1モードに対応する共振周波数(fTE1)およびTS2モードに対応する共振周波数(fTS2)は、LBAWの層の幾何学的形状および特性に依存する。LBAWの共振周波数の比fTE1/fTS2は、LBAWにおいて使用される材料のポアソン比の関数である。2つの材料AおよびBの積層体を伴う多層構造のポアソン比はt/tの関数であり、tは材料Aからなる層の厚みであり、tは材料Bからなる層の厚みである。したがって、LBAWの共振周波数の比fTE1/fTS2は、互いに関するLBAWの層の厚みに依存し、LBAWの1つまたは複数の層の厚みを変更することによって調整され得る。たとえば、LBAWの共振周波数の比は、LBAWの誘電層、ピエゾ層などの厚みを変更することによって調整され得る。したがって、2つのLBAW100a、100bは、異なる厚みの誘電層をそれらに設けることによって、異なる共振周波数を有し得る。
【0098】
第1の中間層606および第2の中間層616は、同じ材料、たとえば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SiN)などからなり得る。しかしながら、以下でさらに説明されるように、第1の中間層606および第2の中間層616は異なる厚みを有し得る。
【0099】
図6A図6Eに示される例示的な実施形態では、(たとえば中間層606、616について)以下で説明されるもの以外に、第2のLBAW100bは、第1のLBAW100aの層と同一の層(たとえば、同一の厚みと材料を伴う層)を有し得る。
【0100】
第1のLBAW100aのTS2共振周波数を調整するために、第2の中間層616は第1の中間層606より厚くてもよい(または薄くてもよい)。いくつかの実施形態では、第2の中間層616を厚くすることで、第2のLBAW100bの共振周波数の比fTE1/fTS2は増大するが、絶対値fTE1およびfTS2はともに低下する。中間層の厚みの変化は、TE1共振周波数の変化より大きいTS2共振周波数の移動も引き起こす。たとえば、第2の中間層を厚くするとTS2共振周波数は低下し、第2の中間層を薄くすると第2のLBAW100bのTS2共振周波数は上昇する。
【0101】
本開示では、一方の中間層が他方の中間層より厚くなるように、2つの中間層が製造される。たとえば、(図6Eに示されるように)中間誘電層616は第1の中間層606より厚くてもよく、またはその逆であってもよい。たとえば、一方の中間層、たとえば一方の誘電層は、他方の層と比較して音響反射器により多くの材料を堆積することによって、および/または、一方の中間層よりも他方の中間層を(たとえば、エッチングによって)薄くすることによって、より厚い層として製造され得る。
【0102】
図7Aは、2つの個別の例示的なLBAWの伝送曲線を示す。2つの個別のLBAWは、第1のLBAW100a、および第1の誘電層606より厚い第2の誘電層616を伴う第2のLBAW100bであり得る。図7Aに示されるように、第1のLBAW100aと関連付けられる第1の伝送曲線710と、第2のLBAW100bと関連付けられる第2の伝送曲線720とを含む。第1の伝送曲線710は、第1のピーク710aを伴う第1の側波帯を含む。第2の伝送曲線720は、第2のピーク720aを伴う第2の側波帯を含む。第2の誘電層616が第1の誘電層606より厚いことにより、第2の側波帯は第1の側波帯と比較して移動する。したがって、第2のピーク720aは第1のピーク710aと比較してより低い周波数にある。2つのLBAW100aおよび100bの側波帯の差により、2つのLBAWがカスケード接続される(たとえば、フィルタデバイス600において図示されるように)とき、カスケード接続される実施形態の側波帯全体が抑制され、LBAW100aおよび100bの各々の個々のLBAWと比較してより低い側波帯ピークを有する。
【0103】
図7Bは、図7Aの2つの個別の例示的なLBAWの分散曲線を示す。分散曲線710bは第1のLBAW100aと関連付けられ、分散曲線720bはより厚い誘電層(たとえば、より厚い第2の誘電層616)を伴う第2のLBAW100bと関連付けられる。図3を参照して説明されるように、曲線の上側部分は2つのLBAWのTE1モードに関係し、下側部分はTS2モードに関係する。より厚い第2の誘電層616は、第2のLBAW100bの周波数の比fTE1/fTS2を増大させ、第1のLBAW100aにおける共振周波数の差と比較して第2のLBAW100bのTE1共振周波数とTS2共振周波数との間の距離の増大を引き起こす。TE1通過帯域が実質的に同様である(たとえば、周波数カットオフが近い)と、TE1共振周波数とTE2共振周波数との間の距離の増大は、通過帯域はほとんどそのままでありながら、側波帯における信号伝送の抑制を引き起こす。
【0104】
図7Cは、カスケード接続されたLBAWを伴う例示的なフィルタデバイスの伝送曲線を示す。カスケード接続されたLBAWは、第1のLBAW100a、および第1の誘電層606より厚い第2の誘電層616を伴う第2のLBAW100bであり得る。図7Aと同様に、図7Cは、個別に測定されるような第1のLBAW100aと関連付けられる第1の伝送曲線710と、個別に測定されるような第2のLBAW100bと関連付けられる第2の伝送曲線720とを含む。第3の伝送曲線730は、第1のLBAW100aおよび第2のLBAW100bがカスケード接続される場合の、フィルタデバイス600の伝送を表す。
【0105】
図7A~7Cに示されるように、カスケード接続されるLBAWの側波帯732は、通過帯域740と比較して抑制される。具体的には、側波帯732は30dBより大きい損失を有し得るが、通過帯域は10dB未満の損失である。同様に、カスケード接続されるLBAWの側波帯732は、個別のLBAWと関連付けられる側波帯712および722の各々と比較して抑制され、カスケード接続されるLBAWの側波帯ピーク730a、730bは、個別のLBAWの各ピーク710aおよび720aより小さい。本開示に従ってLBAWをカスケード接続することによって、側波帯ピークは、20dBより大きく、または30dBより大きく抑制されることすらある。
【0106】
上で説明されたように、第2の中間層616は、第1の誘電層606より厚く、または薄いことがある。図6Eに示される例では、第2の中間層616は第1の中間層606より厚い。いくつかの実施形態では、第2の中間層の厚みは、第1の中間層の厚みより1%から10%、たとえば2%から7%大きい。いくつかの実施形態では、より薄い中間層、たとえば誘電層の厚みは、900nmから1100nmにわたり、より厚い中間層、たとえば誘電層の厚みは、1000nmから1200nmにわたる。いくつかの例では、より薄い中間層、たとえば誘電層の厚みは、1000nmから1050nmにわたり、より厚い中間層、たとえば誘電層の厚みは、1050nmから1100nmにわたる。
【0107】
いくつかの実施形態では、2つの中間層606と616の厚みの差は、2つのLBAW100aおよび100bのTS2モードの共振周波数(すなわち、側波帯ピーク710aおよび720aの周波数)の間に1%から10%の差を引き起こす。2つの中間層の間の2%から7%の厚みの差は、TS2周波数に1%から6%の変化を引き起こし得る。たとえば、2%の厚みの差はTS2周波数に1%から2%の変化をもたらし得る。5%の厚みの差はTS2周波数に2%から4%の変化をもたらし得る。7%の厚みの差はTS2周波数に4%から6%の変化をもたらし得る。10%の厚みの差はTS2周波数に6%から8%の変化をもたらし得る。いくつかの例では、TS2モードの共振周波数間に生じる差は、少なくとも20MHz、たとえば少なくとも50MHzである。いくつかの例では、TS2モードの共振周波数間に生じる差は、50MHzから200MHzの間であり得る。
【0108】
第2のLBAW100bのTE1通過帯域が1つまたは複数の層の厚みを変更する結果として抑制されないことを確実にするために、第2のLBAW100bのTE1共振周波数は、第1のLBAW100aのTE1共振周波数のかなり近くに(たとえば、TE1共振周波数の1%以内、たとえば20MHz以内、たとえば10MHz以内)に調整され得る。TE1共振周波数の調整は、第2(または第1)の導電層620、対向電極614、および/または圧電層612のうちの1つまたは複数の寸法を選択することによって達成され得る。たとえば、第2(または第1)のLBAW100bの延長部の厚み。たとえば、延長部650a、670a、および/または電極650、670の厚みは、堆積またはエッチングプロセスによって調整され得る。より厚い導電層はより低い共振周波数をもたらし、より薄い導電層はより高い共振周波数をもたらす。
【0109】
図6Eに示される例示的な実施形態では、延長部650a、670aは、延長部150a、170aより薄くてもよい(たとえば、薄くされてもよい)(または、2つのLBAW100aおよび100bの延長部は、異なる厚みで堆積されてもよい)。延長部の幅および長さは、ピエゾ層に平行な軸に沿って測定され(幅は延長部がそれに沿ってくし型にされる次元である)、延長部の厚みはピエゾ層に垂直な軸に沿って測定される。したがって、1つまたは複数のカスケード接続されたLBAWの複数の層の厚みを調整することによって、通過帯域に対する影響を最小にしながら(またはほとんどなくしながら)、スプリアス側波帯を抑制することができる。いくつかの実施形態では、延長部の厚みは100nmと300nmの間であり得る。より厚い延長部は、より薄い延長部より最大で20%厚くてもよい。たとえば、より厚い延長部150aは200nmから220nmの厚みを有してもよく、より薄い延長部650aは180nmから200nmの厚みを有してもよい。より厚い延長部は、より薄い延長部より約10%(たとえば、13%未満)厚くてもよい。いくつかの実施形態では、一方または両方の電極150、170の厚みは、LBAW100aおよび100bのTE1モードを合わせるために、一方または両方の電極650、670の厚みより大きくなるように調整され得る。たとえば、電極650、670の厚みは、電極150、170の厚みより5%から20%小さくてもよい。
【0110】
さらに、TE1共振周波数は、延長部の幅、延長部間の間隙、またはLBAWの少なくとも1つの延長部の数などの、適切なIDT幾何学的形状を選択することによって調整され得る。たとえば、第2の誘電層616が第1の誘電層606より厚いとき、第2のLBAW100bにおける延長部の幅および/または延長部間の間隙は、2つのLBAWのTE1通過帯域を合わせるために、第1のLBAW100aにおけるそれぞれの部分より小さくなるように選択され得る。より薄い延長部の幅は1μmから7μmにわたり得る。より厚い延長部の幅は3μmから10μmにわたり得る。いくつかの例では、より薄い延長部の幅は3μmから5μmにわたり、より厚い延長部の幅は4μmから6μmにわたる。延長部間のより薄い間隙は、0.5μmから2μmにわたり得る。延長部間のより厚い間隙は、1μmから3μmにわたり得る。いくつかの例では、延長部間のより薄い間隙は0.5μmから1.75μmにわたり、延長部間のより厚い間隙は1.5μmから3μmにわたる。
【0111】
いくつかの実施形態では、2つのLBAW100aおよび100bのTE1通過帯域を調整するために、2つのLBAWの延長部の数は互いに異なる。
【0112】
いくつかの実装形態が説明された。それでも、様々な変更が、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解されるであろう。したがって、他の実装形態が、以下の特許請求の範囲内にある。
【符号の説明】
【0113】
100 LBAWフィルタ
102 IDT電極構造
110 ピエゾ層
120 下側対向電極
130 反射構造、ミラー
140 基板
150 入力電極、IDT電極
150a 延長部
160 入力ポート
170 出力電極、IDT電極
170a 延長部
180 出力ポート
190 間隙領域
200 バルクモード
210 変位
230 変位
401 電極
402 電極
410 偶モード
420 奇モード
430 周波数の差
510 ピーク
510a 通過帯域
520 ピーク
520a 側波帯
602 共通のフローティング電極、第1の圧電層
604 第1の対向電極
606 第1の中間層、第1の誘電層
608 第1の音響反射器
610 第1の導電層
612 第2の圧電層
614 第2の対向電極
616 第2の中間層、第2の誘電層
618 第2の音響反射器
620 第2の導電層
650 出力電極、指
650a 延長部
660 導電性コネクタ
670 入力電極
670a 延長部
710 第1の伝送曲線
710a ピーク
712 側波帯
720 第2の伝送曲線
720a ピーク
722 側波帯
730 第3の伝送曲線
730a 側波帯ピーク
730b 側波帯ピーク
732 側波帯
740 通過帯域
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図7C