(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】重合体およびその製造方法、ならびにレジスト用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08F 220/26 20060101AFI20241202BHJP
C08F 212/14 20060101ALI20241202BHJP
C08F 8/12 20060101ALI20241202BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C08F220/26
C08F212/14
C08F8/12
G03F7/039 601
(21)【出願番号】P 2021539241
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2020030120
(87)【国際公開番号】W WO2021029310
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2019147848
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000157603
【氏名又は名称】丸善石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】相原 大路
(72)【発明者】
【氏名】益川 友宏
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-086284(JP,A)
【文献】特開2009-086354(JP,A)
【文献】特開2004-045448(JP,A)
【文献】特開平02-311505(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079203(WO,A1)
【文献】特開平11-310611(JP,A)
【文献】特開2001-281864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00-8/50
C08F 212/00-212/36
C08F 220/00-220/70
G03F 7/004-7/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体の製造方法であって、
該製造方法は、p-アセトキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体を、有機溶媒中、共役酸のpKaが12以上である塩基の存在下、温度0℃~50℃の範囲で脱保護反応させ、重合体中のp-アセトキシスチレンに由来する構造単位をp-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位に変換し、
前記共役酸のpKaが12以上である塩基の使用量が、脱保護させるアセチル基のモル数に対して1~50モル%であることを特徴とする、重合体の製造方法。
【請求項2】
カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位が、式(II):
【化1】
(式(II)中、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表す。R
3は炭素数1~15のアルキル基、炭素数5~15の飽和脂肪族環式基、炭素数6~15のアリール基、炭素数7~15のアルキルアリール基、炭素数7~15のアラルキル基を表す。また、R
2とR
3は結合してR
3が結合する酸素原子とともに5~8員環の複素環式基を形成しても良い。)で表される構造単位である、請求項1に記載の重合体の製造方法
【請求項3】
共役酸のpKaが12以上である塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、およびジアザビシクロウンデセンからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1または2に記載の重合体の製造方法。
【請求項4】
脱保護反応に用いる有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
脱保護反応の温度が20℃~50℃の範囲で行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体およびその製造方法に関する。詳しくは、p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体およびその製造方法に関する。さらに、本発明は、該重合体を含む、レジスト用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、フォトレジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。近年、集積回路の高集積化に伴い、サブミクロン領域やクオーターミクロン領域の超微細パターンの形成が要求されるようになってきており、露光光源もg線、i線からより波長の短いKrFエキシマレーザーおよびArFエキシマレーザーが半導体の量産において用いられるようになっている。更には、現在、電子線やX線、あるいは極紫外線(EUV)を用いたリソグラフィー技術の開発が進められている。
【0003】
これら電子線やX線、あるいはEUVによるリソグラフィーは、次世代若しくは次々世代のパターン形成技術として位置付けられ、高感度、高解像性のレジスト組成物が望まれている。特にウェハー処理時間の短縮化のため、レジストの高感度化は非常に重要な課題であるが、感度と解像性はトレードオフの関係にあり、これらの特性を同時に満足するレジスト組成物の開発が強く望まれている。
【0004】
特許文献1には、電子線あるいはEUVを使用するリソグラフィーのためのレジスト用重合体として、フェノール性水酸基を有する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体が提案されている。その重合体はフェノール性水酸基を有するモノマー(例えば、p-ヒドロキシスチレンや4-ヒドロキシフェニルメタクリレートなど)と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有するモノマーとを直接重合することにより合成されている。しかしながら、p-ヒドロキシスチレンは安定性が低く、保管中に重合してしまうなどの問題が起こることが知られており(非特許文献1)、上記方法による工業規模での生産は難しい。
【0005】
p-ヒドロキシスチレン単位を有する重合体の製造方法としては、他に、p-ヒドロキシスチレンの代わりにターシャリーブトキシスチレンやアセトキシスチレンなどを原料として重合を行い、その後ターシャリーブチル基やアセチル基を脱離させる方法(特許文献2、特許文献3)などが知られている。
【0006】
一般的に化学増幅型レジスト用のベース樹脂は、カルボキシル基などの酸性基を、酸の作用で脱離する保護基(以下、酸脱離性基という)で保護した構造を有している。上記のように、ターシャリーブトキシスチレンやアセトキシスチレンを出発原料として、p-ヒドロキシスチレン単位と酸脱離性基を有する構造単位とを含む共重合体を合成しようとする場合、重合後の脱保護工程において、ヒドロキシスチレンの保護基のみを脱離させ、それ以外の酸脱離性基を有する構造等は維持させる必要がある。
もし、酸脱離性基が脱離してしまうと、露光によって現像液に対する樹脂の溶解性が変化する部分が減少し、露光部と非露光部との現像コントラストが小さくなったり、酸脱離性基の脱離によって重合体中にカルボン酸などの強酸が生成し、アルカリ現像時に未露光部の膜減りが大きくなるなどの問題が生じる恐れがある。また、重合体中に生成したカルボン酸によって重合体の保存安定性が悪化する懸念がある。
【0007】
特許文献4には、アシル基によって保護されたフェノール性水酸基を有する単位構造を含むポリマーの脱保護反応において、より短時間で、他の部分構造を保存したままアシル基を脱離させる方法として、ClogPの値が1.00以下である第1級または第2級アミン化合物から選ばれる脱保護試薬(但し、第2級アミン化合物はアミノ基の窒素原子に結合する二つの炭素原子がいずれも第3級ではない)を用いる方法が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-41328号
【文献】特開平04-211258号
【文献】特開平10-186665号
【文献】特開2011-102386号
【非特許文献】
【0009】
【文献】ビニルフェノール基礎と応用(丸善石油化学株式会社著)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献4に記載の脱保護方法によって効果が確認されているのは、酸脱離性基の構造が脂肪族アルコール由来のエステル構造である重合体であり、脱離反応における活性化エネルギーがより低く脱離し易いアセタール型の酸脱離性基を有する単位構造を含む重合体においては、特許文献4の方法は十分なものではなかった。
【0011】
本発明は、p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体であって、製造過程でアセタール基の脱離やアセタール基の移動によって生じる構造単位が極めて少ない重合体、およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、p-アセトキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体を、有機溶媒中、共役酸のpKaが12以上である塩基の存在下、温度0℃~50℃で脱保護反応させることにより、アセタール基の脱離や移動は抑制しつつ、アセトキシスチレン単位のアシル基をのみを脱保護できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体の製造方法であって、
該製造方法は、p-アセトキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体を、有機溶媒中、共役酸のpKaが12以上である塩基の存在下、温度0℃~50℃の範囲で脱保護反応させ、重合体中のp-アセトキシスチレンに由来する構造単位をp-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位に変換することを特徴とする、重合体の製造方法。
[2] カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位が、式(II):
【化1】
(式(II)中、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表す。R
3は炭素数1~15のアルキル基、炭素数5~15の飽和脂肪族環式基、炭素数6~15のアリール基、炭素数7~15のアルキルアリール基、炭素数7~15のアラルキル基を表す。また、R
2とR
3は結合してR
3が結合する酸素原子とともに5~8員環の複素環式基を形成しても良い。)で表される構造単位である、[1]に記載の重合体の製造方法。
[3] pKa12以上の塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、およびジアザビシクロウンデセンからなる群から選ばれる少なくとも一つである、[1]または[2]に記載の重合体の製造方法。
[4] 脱保護反応に用いる有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる少なくとも一つである、[1]~[3]のいずれかに記載の重合体の製造方法。
[5] 脱保護反応の温度が20℃~50℃の範囲で行われる、[1]~[4]のいずれかに記載の重合体の製造方法。
[6] 式(I):
【化2】
で表される構造単位および式(II):
【化3】
(式(II)中、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数1~10のアルキル基を表す。R
3は炭素数1~15のアルキル基、炭素数5~15の飽和脂肪族環式基、炭素数6~15のアリール基、炭素数7~15のアルキルアリール基、炭素数7~15のアラルキル基を表す。また、R
2とR
3は結合してR
3が結合する酸素原子とともに5~8員環の複素環式基を形成しても良い。)で表される構造単位を有し、且つ、式(III):
【化4】
(式(III)中、R
1は式(II)のR
1と同義。)で表される構造単位および式(IV):
【化5】
(式(IV)中、R
2およびR
3は式(II)のR
2およびR
3と同義。)で表される構造単位の合計が、全構造単位の合計100モル%に対し1モル%以下であることを特徴とする、重合体。
[7] [6]に記載の重合体を含む、レジスト用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含み、かつ、アセタール基の脱離およびアセタール基の移動によって生じる構造単位が極めて少ない重合体を製造することができる。また、該重合体は高感度且つ高解像度で保存安定性も良好な化学増幅型レジスト用重合体として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[重合体の製造方法]
本発明の製造方法によって製造される重合体は、p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体である。
【0016】
p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位は以下の式(I)で表される。
【化6】
【0017】
重合体中に含まれる式(I)で表される構造単位の割合は、全構造単位の合計100モル%に対して、好ましくは1モル%以上99モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上90モル%以下であり、さらに好ましくは30モル%超70モル%以下である。
【0018】
カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位は特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、5-ノルボルネン-2-カルボン酸などのカルボキシル基がアセタール保護されたモノマーのビニル付加重合で生じる構造単位などが挙げられる。好ましくは、アクリル酸またはメタクリル酸のアセタール化物に由来する構造単位である。特に、以下の式(II)で表される構造単位が好ましい。
【0019】
【0020】
式(II)において、R1は水素原子またはメチル基を表す。
R2は炭素数1~10のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1~4のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
R3は炭素数1~15のアルキル基、炭素数5~15の脂肪族環式基、炭素数6~15のアリール基、炭素数7~15のアラルキル基を表す。また、R2とR3は互いに結合してR3が結合する酸素原子とともに5~8員環の複素環式基を形成しても良い。
アルキル基は、好ましくは炭素数2~10、さらに好ましくは炭素数2~6であり、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
脂肪族環式基は、好ましくは炭素数5~12、さらに好ましくは炭素数5~10であり、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの単環の基、あるいは、ノルボルナン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、デカリン、アダマンタンなどの多環式脂肪族化合物から水素原子1つを除いた基などが挙げられる。
アリール基は、好ましくは炭素数6~12、さらに好ましくは炭素数6~10であり、具体的にはフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられる。
アラルキル基は、好ましくは炭素数7~13、さらに好ましくは炭素数7~11であり、具体的には、ベンジル基、フェニルエチル基、2-フェニル-2-プロピル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、2-ナフチル-2-プロピル基等が挙げられる。
また、R2とR3が互いに結合して形成する複素環式基として、具体的には、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、オキセパニル基、オキソカニル基等が挙げられる。
【0021】
重合体中に含まれる式(II)で表される構造単位の割合は、全構造単位の合計100モル%に対して、好ましくは1モル%以上99モル%以下であり、より好ましくは10モル%以上90モル%以下であり、さらに好ましくは30モル%以上70モル%未満である。
【0022】
式(II)で表される構造単位のアセタール部が脱離すると、重合体中に式(III)で表される構造単位が副生する。
【化8】
【0023】
式(III)において、R1の定義は式(II)と同じである。
【0024】
また、脱離したアセタールがp-ヒドロキシスチレン単位のフェノール性水酸基と結合し、重合体中に式(IV)で表される構造単位が副生することがある。
【化9】
【0025】
式(IV)において、R2、R3の定義および望ましい態様は式(II)と同じである。
【0026】
重合体中に式(III)や式(IV)で表される構造単位が副生すると、現像速度などのレジスト性能において所望の数値を外れる恐れが出てくる。また、カルボン酸の影響で、式(II)単位のアセタール型保護基の脱離がさらに進行するなどして重合体の保存安定性を損なう恐れがあるので、極力、式(III)や式(IV)の副生を抑制しなくてはならない。好ましくは、重合体中に含まれる式(III)や式(IV)で表される構造単位の合計割合が、全構造単位の合計100モル%に対し1モル%以下であり、より好ましくは0.5モル%以下であり、さらに好ましくは0.1モル%以下である。
【0027】
本発明の重合体の製造方法は、p-アセトキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体中のp-アセトキシスチレンに由来する構造単位を脱保護反応させ、p-ヒドロキシスチレンに由来する構造単位に変換するものである。
【0028】
本発明において、p-アセトキシスチレンに由来する構造単位と、カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有する構造単位とを含む重合体は、少なくともp-アセトキシスチレンと共重合可能でカルボン酸がアセタール基で保護された構造を有するモノマーとを重合反応させて得ることもできる。カルボン酸がアセタール基で保護された構造を有するモノマーとしては、下記(ii)で表されるものが挙げられる。
【0029】
【0030】
式(ii)は前述の式(II)で表される構造単位を与えるモノマーであり、式(ii)においてR1、R2、R3の定義および望ましい態様は式(II)と同じである。
【0031】
また、本発明の重合体は、他の構造を含んでも良い。他の構造単位を与えるモノマーとしては、レジスト溶剤やリソグラフィー現像液への溶解性や、エッチング耐性、基板密着性等を調整するために、公知のレジスト用重合体に用いられている各種モノマーを使用することができる。例えば、スチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等から誘導されるスチレン系モノマー;アクリル酸、メタクリル酸から誘導される種々の(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;ノルボルネン、トリシクロデセン、テトラシクロドデセン等から誘導されるノルボルネン系モノマーなどが挙げられる。またインデン、アセナフチレン等も共重合可能である。
【0032】
本発明の重合体の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、その用途に応じて適宜設定され得るものであり特に限定されない。例えば、重量平均分子量(Mw)は、高分子性を発現させる観点から、好ましくは1,000~100,000であり、より好ましくは2,000~50,000であり、さらに好ましくは3,000~30,000であり、さらにより好ましくは5,000~15,000である。また、分散度(Mw/Mn)は、重合体の性質を均一化する観点から、好ましくは1.1以上2.0以下であり、より好ましくは1.2以上1.80以下であり、更に好ましくは1.3以上1.7以下である。
なお、本発明において、重合体の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、後述する測定条件にて測定することができる。
【0033】
(重合反応)
本発明の製造方法における重合反応は、特に限定されないが、ラジカル重合、カチオン重合、およびリビングアニオン重合など、従来公知の重合方法を適用することができる。
【0034】
ラジカル重合による方法の場合、原料モノマー、ラジカル重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤等を溶媒に溶解した状態で、好ましくは窒素等の不活性ガス雰囲気下、加熱撹拌することにより行われる。例えば、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤等すべての原料を溶媒に溶解して重合温度に加熱するいわゆる一括重合法や、モノマーを溶媒に溶解し重合温度に加熱した後で重合開始剤等を添加する方法、また、重合温度に加熱した溶媒に、モノマーや重合開始剤などを溶媒に溶解した溶液を滴下するいわゆる滴下重合法などにより実施することができる。中でも滴下重合法は、製造ロット毎の再現性が高いため好ましく、特にモノマーとラジカル発生源である重合開始剤とを別々に滴下するいわゆる独立滴下法が好ましい。モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤等はそれぞれ予め一部を重合系内に供給しておくこともできる。滴下法においては、供給するモノマー溶液の組成や、モノマー溶液や重合開始剤の供給スピードを変化させることにより、重合系内のモノマー濃度やラジカル濃度を調整して、生成する共重合体の分散度や組成分布を制御することができる。
【0035】
ラジカル重合開始剤は従来公知のもの、例えば、アゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤を用いることができる。アゾ系重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等を挙げることができる。アゾ系化合物の重合開始剤は取り扱いの安全性が優れる点で好ましい。過酸化物系重合開始剤の具体例としては、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルへキサノエート、tert-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等を挙げることができる。これらの重合開始剤は単独若しくは混合して用いることができる。重合開始剤の使用量は、目的とする分子量や、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、溶媒等の種類、構造単位組成、重合温度や滴下速度等に応じて選択することができる。
【0036】
連鎖移動剤は、連鎖移動剤として公知のものを、必要に応じて用いることができる。中でもチオール化合物が好ましく、公知のチオール化合物の中から幅広く選択することがでる。具体的には、t-ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸等を挙げることができる。また、2-ヒドロキシ-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基が飽和脂肪族炭化水素に結合した構造を有するチオール化合物は、リソグラフィーパターンのラフネスや欠陥を抑える効果があるため特に好ましい。連鎖移動剤の使用量は、目的とする分子量や、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤および溶媒等の種類、構造単位組成、重合温度や滴下速度等に応じて選択することができる。
【0037】
重合反応に用いる溶媒は、原料単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、および重合反応性生物を安定して溶解し得る溶媒であれば特に制限されない。重合溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等を挙げることができる。
【0038】
これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。また、エチレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン、ジエチレングリコージメチルエーテル、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド等の、単量体、重合開始剤、連鎖移動剤、重合反応性生物の溶解性が高く、高沸点の化合物を混合して用いても良い。
【0039】
重合溶媒の使用量には特に制限はないが、溶媒の使用量があまりに少なすぎると単量体が析出したり高粘度になりすぎて重合系を均一に保てなくなったりする場合があり、多すぎると単量体の転化率が不十分であったり共重合体の分子量が所望の値まで高めることができなかったりする場合がある。通常、単量体1重量部に対して0.5~20重量部、好ましくは1~10重量部である。
【0040】
滴下重合法において反応槽内に予め張り込む溶媒(以下、初期張り溶媒と言うことがある)の量は、攪拌が可能な最低量以上であればよいが、必要以上に多いと、供給できる単量体溶液量が少なくなり、生産効率が低下するため好ましくない。通常は、最終仕込み量(即ち、初期張り溶媒と、滴下する単量体溶液および開始剤溶液の総量)に対して、例えば容量比で1/30以上、好ましくは1/20~1/2、特に好ましくは1/10~1/3の範囲から選択する。なお、初期張り溶媒に単量体の一部を予め混合しても良い。
【0041】
滴下重合法における滴下時間は、短時間であると分散度が広くなりやすいことや、一度に大量の溶液が滴下されるため重合液の温度低下が起こることから好ましくない。逆に、長時間であると共重合体に必要以上の熱履歴がかかることと、生産性が低下することから好ましくない。従って、通常0.5~24時間、好ましくは1~12時間、特に好ましくは2~8時間の範囲から選択する。
【0042】
また、滴下終了後、および、一括昇温法における重合温度への昇温後は、一定時間温度を維持するか、若しくは更に昇温する等して熟成を行い、残存する未反応単量体を反応させることが好ましい。熟成時間は長すぎると時間当たりの生産効率が低下すること、共重合体に必要以上の熱履歴がかかることから好ましくない。従って、通常12時間以内、好ましくは6時間以内、特に好ましくは1~4時間の範囲から選択する。
【0043】
重合温度は、溶媒、単量体、連鎖移動剤等の沸点、重合開始剤の半減期温度等によって適宜選択することができる。低温では重合が進みにくいため生産性に問題があり、又、必要以上に高温にすると、単量体および共重合体の安定性の点で問題がある。したがって、好ましくは40~160℃、特に好ましくは60~120℃の範囲で選択する。重合温度は、共重合体の分子量や共重合組成に大きく影響するので、精密に制御する必要がある。一方、重合反応は一般的に発熱反応であり、重合温度が上昇する傾向にあるため、一定温度に制御することが難しい。このため、本発明では、重合溶媒として、目標とする重合温度に近い沸点を有する少なくとも1種以上の化合物を含有させ、重合温度を、該化合物の、重合圧力における初留点以上に設定することが好ましい。この方法によれば、重合溶媒の気化潜熱によって重合温度の上昇を抑制することができる。
【0044】
重合圧力は特に制限されず、常圧、加圧又は減圧下のいずれであってもよいが、通常、常圧である。ラジカル重合の場合は、開始剤からラジカルが発生する際に、アゾ系の場合は窒素ガスが、過酸化物径の場合は酸素ガスが発生することから、重合圧力の変動を抑制する為に、重合系を開放系とし大気圧近傍で行うことが好ましい。
【0045】
(精製)
本発明で用いる重合体は、溶媒、未反応モノマー、オリゴマー、反応副生物等の不純物を含んでいる場合、それらを除去するため、あるいは所望の分散度を持つ重合体を得るため、さらに精製を行ってもよい。
【0046】
具体的には、重合体を含む溶液を、必要に応じて良溶媒を加えて希釈した後、貧溶媒と接触させて重合体を析出させ、不純物を液相に抽出する方法(以下、沈殿精製という)か、若しくは、液-液二相として良溶媒相に重合体を、貧溶媒相に不純物を抽出する方法によって行われる。
【0047】
沈殿精製では、析出した固体を濾過やデカンテーション等の方法で固液分離した後、この固体をさらに貧溶媒等で洗浄してもよい。精製は脱保護反応の前に実施しても良く、脱保護反応の後に実施しても良い。
【0048】
精製に用いる貧溶媒および良溶媒の種類と量は、重合体を低分子量化合物と分離できれば特に制限されず、重合体の貧溶媒への溶解度、重合に用いた溶媒の種類と量、不純物の種類と量等に応じて適宜選択することができる。
【0049】
精製時の温度は、重合体の分子量、分散度、残存単量体や開始剤残査等の不純物の除去率に大きく影響するため、厳密に制御する必要がある。精製温度は、低すぎると沈殿抽出処理溶媒や洗浄溶媒への不純物の溶解性が不十分となり、不純物の除去が十分に行われないため効率的でなく、逆に高すぎると重合体が精製溶媒に溶出し、重合体の低分子領域における組成バランスが崩れたり、収率が低下したりするため好ましくない。このため、精製は0~80℃の範囲で、好ましくは0~60℃の範囲で実施することが好ましい。
【0050】
(脱保護反応)
本発明の脱保護反応では、共重合体中のアセトキシスチレン単位のアセチル基のみを脱保護させる一方、式(II)単位のアセタール保護基は脱離させないことが肝要である。
【0051】
本発明の脱保護反応は、触媒として、共役酸のpKaが12以上である塩基を用いる。ここでいうpKaは基本的に25℃、水中における値である。共役酸のpKaが12以上である塩基は、特に限定されないが、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等のアルカリ金属のアルコキシド、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ジアザビシクロウンデセンである。
【0052】
塩基触媒の使用量は、用いる塩基の種類によって異なるので一概に規定することはできないが、脱保護させるアセチル基のモル数に対して通常1~50モル%、好ましくは5~20モル%である。塩基触媒の使用量が上記範囲内であれば充分な反応速度を得られ易い。
【0053】
また、脱保護反応の温度は、0~50℃の範囲であり、好ましくは20~50℃の範囲である。反応温度がこの範囲よりも高いと、カルボン酸を保護するアセタール基の脱離および脱離したアセタールがp-ヒドロキシスチレンのフェノール性水酸基と反応するなどの好ましくない副反応が起こり、また、反応温度がこの範囲よりも低いと、脱保護反応に時間がかかり生産性が悪化するため好ましくない。
【0054】
脱保護反応に用いる溶媒は、脱保護前の共重合体、脱保護後の共重合体が溶媒であれば特に制限されない。溶媒の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテルアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等を挙げることができる。中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが好ましい。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
脱保護反応後は、脱保護反応で使用した塩基触媒を中和させるために酸を添加しても良い。但し、重合体中のアセタールが脱離することが無いよう、添加する酸の種類と量に注意しなければならない。具体的には、シュウ酸や酢酸などの弱酸を用い、添加量は、塩基1モルに対し1~8モル、好ましくは2~3モルである。
【0056】
[レジスト用樹脂組成物]
本発明の製造方法で得られたポリマーはレジスト用樹脂組成物のベースポリマーとして有用である。レジスト用樹脂組成物には、ポリマーの他に酸発生剤、酸拡散抑制剤、これらを均一に溶解する溶媒などを含み、それらは従前より公知のものを用いることができる。さらに、レジスト用組成物には、酸発生剤の感度劣化防止やレジストパターンの形状、引き置き安定性等の向上を目的とした有機カルボン酸類やリンのオキソ酸類、レジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑止剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料等、レジスト用添加剤として慣用されている化合物を必要に応じて適宜含有させることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明の形態を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において特に断りのない限り、部は質量基準である。
【0058】
本実施例における重合体の分析は以下の通り行った。
[重量平均分子量・分散度]
下記で合成した重合体の重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、ポリスチレンを標準品としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した。分析用試料は、重合体の固形分濃度が2質量%のテトラヒドロフラン溶液になるよう調製したものを用いた。装置への試料注入量は50μlとした。
測定装置:東ソー社製 HPLC-8220GPC
検出器:示差屈折率(RI)検出器
カラム:Shodex GPC KF804×3本(昭和電工製)
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
温度:40℃
検量線:ポリスチレン標準サンプル(東ソー製)を用いて作成
【0059】
[重合体組成比(副生物含有量)]
下記で合成した重合体の組成比は13C-NMRで分析した。脱保護反応およびその後の中和反応後の重合体溶液2.0gとCr(III)アセチルアセトナート0.1gを、重アセトン1.0gに溶解して分析用試料を調製した。
装置:ブルカー製「AVANCE400」
核種:13C
測定法:インバースゲートデカップリング
積算回数:6000回
測定チューブ径:10mmφ
【0060】
[実施例1]
温度計、冷却管および撹拌装置を備えた反応容器にメチルエチルケトン71部を仕込み、加熱して還流させた。別容器にp-アセトキシスチレン(以下、PACSと表記)72部、1-(ブトキシ)エチルメタクリレート(以下、BEMAと表記)83部、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート10部、メチルエチルケトン119部を仕込んで滴下液とし、これをメチルエチルケトン還流下の反応容器に2時間掛けて滴下し、その後2時間反応させた。ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート3部をメチルエチルケトン10部に溶かした溶液を反応溶液に追加投入し、さらに2時間反応させたのち冷却した。重合液をヘキサン750部に滴下して重合体を析出させ、30分間撹拌し、静置後、デカンテーションした。得られた重合体をアセトン120部に溶解し、再びヘキサン750部に滴下して重合体を析出させ、30分間撹拌し、静置後、デカンテーションした。重合体をプロピレングリコールモノメチエルエーテルアセテート(以下、PGMEAと表記)300部に溶解し、40℃、減圧下で濃縮を行い、重合体溶液の重合体濃度が45wt%となるように調整した。
【0061】
得られたPACS/BEMA重合体溶液11部に28質量%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液0.1部を加え、40℃で4時間撹拌し、PACS単位の脱保護を行った。ナトリウムメトキシドの共役酸のpKaは15.5である。脱保護反応後、20wt%酢酸/PGMEA溶液0.5部を加えて中和し、重合体溶液をGPC分析およびNMR分析に供した。
得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0062】
[実施例2]
脱保護反応の温度を50℃とした他は、実施例1と同様に行った。得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0063】
[実施例3]
実施例1で得られたPACS/BEMA樹脂溶液11部に10質量%水酸化カリウム/メタノール溶液0.4部を加え、40℃で4時間撹拌し、PACS単位の脱保護を行った。水酸化カリウムの共役酸のpKaは15.7である。脱保護反応後、20質量%酢酸/PGMEA溶液0.5部を加えて中和し、重合体溶液をGPC分析およびNMR分析に供した。
得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0064】
[実施例4]
実施例1で得られたPACS/BEMA樹脂溶液11部に10質量%ジアザビシクロウンデセン(以下、DBUと表記)/メタノール溶液1.6部を加え、40℃で4時間撹拌し、PACS単位の脱保護を行った。DBUの共役酸のpKaは12.5である。脱保護反応後、20質量%酢酸/PGMEA溶液2.2部を加えて中和し、重合体溶液をGPC分析およびNMR分析に供した。
得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0065】
[実施例5]
温度計、冷却管および撹拌装置を備えた反応容器にメチルエチルケトン39部を仕込み、加熱して還流させた。別容器にPACS37部、1-(シクロヘキシルオキシ)エチルメタクリレート(以下、CHEMAと表記)48部、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート5部、メチルエチルケトン64部を仕込んで滴下液とし、これをメチルエチルケトン還流下の反応容器に2時間かけて滴下し、その後2時間反応させた。ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート1部をメチルエチルケトン5部に溶かした溶液を反応液に追加投入し、さらに2時間反応させたのち冷却した。重合液をヘキサン375部に滴下して重合体を析出させ、30分間攪拌し、静置後、デカンテーションした。得られた重合体をアセトン60部に溶解し、再びヘキサン375部に滴下して重合体を析出させ、30分間攪拌し、静置後、デカンテーションした。重合体をPGMEA150部に溶解し、40℃、減圧下で濃縮を行い、重合体溶液の重合体濃度が45wt%となるように調整した。
【0066】
得られたPACS/CHEMA重合体溶液13部に28質量%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液0.1部を加え、40℃で4時間撹拌し、PACS単位の脱保護を行った。ナトリウムメトキシドの共役酸のpKaは15.5である。脱保護反応後、20質量%酢酸/PGMEA溶液0.5部を加えて中和し、重合体溶液をGPC分析およびNMR分析に供した。
得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0067】
[実施例6]
温度計、冷却管および撹拌装置を備えた反応容器にメチルエチルケトン70部を仕込み、加熱して還流させた。別容器にPACS37部、テトラヒドロピラニルメタクリレート(以下、THPMAと表記)78部、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート11部、メチルエチルケトン117部を仕込を仕込んで滴下液とし、これをメチルエチルケトン還流下の反応容器に2時間かけて滴下し、その後2時間反応させた。ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート3部をメチルエチルケトン11部に溶かした溶液を反応液に追加投入し、さらに2時間反応させたのち冷却した。
重合液をヘキサン750部に滴下して重合体を析出させ、30分間攪拌し、静置後、デカンテーションした。得られた重合体をアセトン120部に溶解し、再びヘキサン75050部に滴下して重合体を析出させ、30分間攪拌し、静置後、デカンテーションした。重合体をPGMEA300部に溶解し、40℃、減圧下で濃縮を行い、重合体溶液の重合体濃度が45wt%となるように調整した。
【0068】
得られたPACS/THPMA重合体溶液50部に28質量%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液0.6部を加え、40℃で4時間撹拌し、PACS単位の脱保護を行った。ナトリウムメトキシドの共役酸のpKaは15.5である。脱保護反応後、20質量%酢酸/PGMEA溶液2.5部を加えて中和し、重合体溶液をGPC分析およびNMR分析に供した。
得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0069】
[比較例1]
脱保護反応の温度を60℃とした他は、実施例1と同様に行った。得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0070】
[比較例2]
脱保護反応の温度を80℃とした他は、実施例1と同様に行った。得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0071】
[比較例3]
実施例1で得られたPACS/BEMA重合体溶液12部に10質量%トリエチルアミン/メタノール溶液1.3部を加え、50℃で40時間攪拌し、PACS単位の脱保護を行った。トリエチルアミンの共役酸のpKaは10.6である。得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0072】
[比較例4]
温度計、冷却管および撹拌装置を備えた反応容器にシクロヘキサノン16部を仕込み、85℃に加熱した。別容器に50質量%p-ヒドロキシスチレン/シクロヘキサノン溶液4部(p-ヒドロキシスチレンは、特開平04-283529号の実施例に準じて合成)、BEMA4部、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート0.4部およびシクロヘキサノン28部を仕込んで滴下液とし、これを反応容器に2時間掛けて滴下し、その後85℃を維持したままさらに2時間反応させたのち冷却した。重合液をヘキサン360部、酢酸エチル40部の混合溶媒に滴下して重合体を析出させ、30分間撹拌し、静置後、ろ過した。回収した重合体にヘキサン360部、酢酸エチル40部の混合溶媒を加え、スラリーを攪拌して重合体を洗浄後、ろ過した。回収した重合体は、40℃でひと晩減圧乾燥した。
得られた重合体の重量平均分子量、分散度、構造単位組成の分析結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
[保存安定性試験]
実施例1、比較例1で得られた重合体溶液をそれぞれ20℃で保管し、重合体中の構造単位(III)と構造単位(IV)の含有量の合計の推移を調べた。結果を表2に示す。
【0075】
【0076】
本発明の方法で製造された重合体は、アセタール保護基の脱離によるカルボン酸構造単位の生成および、脱離したアセタール基がヒドロキシスチレン単位のフェノール性水酸基と反応した構造単位の生成が高度に抑制されたものであった。また、そのような重合体は、20℃で4週間保存しても重合体の組成が変化せず、保存安定性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の重合体は、高感度なレジスト用樹脂組成物として利用できる。