(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】電子ペン及び電子ペン用本体部
(51)【国際特許分類】
G06F 3/03 20060101AFI20241202BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20241202BHJP
B43K 24/12 20060101ALI20241202BHJP
B43K 29/08 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G06F3/03 400F
G06F3/03 400B
G06F3/03 400E
G06F3/044 120
B43K24/12
B43K29/08 Z
(21)【出願番号】P 2021552301
(86)(22)【出願日】2020-09-30
(86)【国際出願番号】 JP2020037051
(87)【国際公開番号】W WO2021075257
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2019189501
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】100091546
【氏名又は名称】佐藤 正美
(74)【代理人】
【識別番号】100206379
【氏名又は名称】丸山 正
(72)【発明者】
【氏名】青木 信也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 善之
(72)【発明者】
【氏名】金田 剛典
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-224178(JP,A)
【文献】特開2018-206093(JP,A)
【文献】特開2016-153954(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143498(WO,A1)
【文献】特開2019-121389(JP,A)
【文献】特開2015-222518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03 - 3/047
B43K 29/00 -29/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンの筒状の筐体内に、少なくともペン先が、前記電子ペンの筒状の筐体の軸心方向の一方の開口から突出可能に収容される電子ペン本体部であって、
軸心方向の一端側が前記ペン先となる導電性の中心電極と、
少なくとも前記ペン先を除いて前記中心電極の周囲に配設され、前記中心電極とは絶縁されている周辺電極と、
前記周辺電極で位置検出センサとの間での電界結合を介して受信された受信信号が供給される信号受信回路と、
を備え、
前記ペン先となる前記中心電極の前記一端側が前記電子ペンの筒状の筐体の前記開口から外部に突出する使用時には、前記周辺電極の前記ペン先側の一部も前記電子ペンの筒状の筐体の前記開口から外部に突出する
ことを特徴とする電子ペン本体部。
【請求項2】
前記周辺電極の前記ペン先側は、先細のテーパー形状を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項3】
少なくとも前記中心電極に供給する信号を発生する信号発信回路が配設されている本体筒状部を備え、
前記周辺電極は、前記本体筒状部の軸心方向の前記ペン先側に結合されており、
前記本体筒状部は、前記電子ペンの筒状の筐体の前記開口から外部に突出しない
ことを特徴とする請求項1に記載の電子ペン本体部。
【請求項4】
前記周辺電極と前記本体筒状部とが結合されたものの中空部には、前記中心電極の嵌合部が配設されており、
前記中心電極は、前記嵌合部に、着脱可能に嵌合されることにより取り付けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン本体部。
【請求項5】
前記周辺電極は、前記本体筒状部の径よりも細い径からなる
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン本体部。
【請求項6】
前記周辺電極は、軸心方向において、前記電子ペンの筒状の筐体の前記開口から外部に突出する前記一部を含むペン先側の前段部と、前記本体筒状部との結合側の後段部とを備え、
前記前段部は、前記ペン先側に先細のテーパー形状を有し、前記後段部は所定の径の円筒形状を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン本体部。
【請求項7】
前記本体筒状部には、前記信号発信回路に電源電圧を供給する電池が設けられている
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン本体部。
【請求項8】
前記本体筒状部には、前記信号発信回路に電源電圧を供給する蓄電素子が設けられていると共に、前記蓄電素子を外部から充電を可能にするための端子導体が設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン本体部。
【請求項9】
前記信号発信回路から前記信号が前記中心電極に供給されるときには、前記周辺電極は接地されてシールド電極として機能するように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン本体部。
【請求項10】
前記信号発信回路から前記信号が前記周辺電極に供給されることで、前記周辺電極は傾き検出用電極として機能するように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン本体部。
【請求項11】
前記本体筒状部は、軸心方向に交差する方向に撓むことが可能に構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の電子ペン本体部。
【請求項12】
ペン先側となる軸心方向の一端側に開口が設けられている筒状の筐体を有し、少なくとも1本の電子ペン本体部が前記筒状の筐体内に収納される電子ペンであって、
前記電子ペン本体部は、
軸心方向の一端側がペン先となる導電性の中心電極と、
少なくとも前記ペン先を除いて前記中心電極の周囲に配設され、前記中心電極とは絶縁されている周辺電極と、
前記周辺電極で位置検出センサとの間での電界結合を介して受信された受信信号が供給される信号受信回路と、
を備え、
前記ペン先となる前記中心電極の前記一端側が前記筒状の筐体の前記開口から外部に突出する使用時には、前記周辺電極の前記ペン先側の一部も前記開口から外部に突出する
ことを特徴とする電子ペン。
【請求項13】
前記電子ペン本体部の前記中心電極の径及び前記周辺電極が前記開口から突出する前記一部の径は、
市販のノック式ボールペンの替え芯のペン先部の径以下とされ、前記電子ペン本体部の長さは、前記ボールペンの替え芯の長さとほぼ同一とされている
ことを特徴とする請求項12に記載の電子ペン。
【請求項14】
前記筐体は、前記ボールペンの替え芯を収納して、ボールペンとして機能する
ことを特徴とする請求項
13に記載の電子ペン。
【請求項15】
前記筐体内には、前記電子ペン本体部または前記ボールペンの替え芯についてのノック式ボールペンの機構が設けられている
ことを特徴とする請求項13または請求項14に記載の電子ペン。
【請求項16】
前記筐体内には、複数本の前記電子ペン本体部を収納して、その内の1本を選択的に、前記開口から前記ペン先となる前記中心電極の前記一端側を外部に突出させるようにするノック式多色ボールペンの機構が設けられている
ことを特徴とする請求項12に記載の電子ペン。
【請求項17】
前記筐体は、複数
本の前記電子ペン本体部の1本または複数本の代わりに、前記ボールペンの替え芯を収納して、ノック式多色ボールペンとしても機能する
ことを特徴とする請求項
13に記載の電子ペン。
【請求項18】
前記筐体の前記開口側に、前記筐体の前記開口から突出するペン先側を覆うように係合するキャップを備える
ことを特徴とする請求項12に記載の電子ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置検出センサと電界結合により信号の授受を行う静電容量方式の電子ペン及び電子ペン本体部に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量方式の電子ペンとして、位置検出装置の位置検出センサとの間の電界結合を通じて信号の授受(インタラクション)を行うことで、位置検出センサで電子ペンにより指示された位置を検出するようにする、いわゆるアクティブ静電容量方式の電子ペンが賞用されている。
【0003】
この種のアクティブ静電容量方式の電子ペンは、一次電池や二次電池を用いた電源回路と信号発信回路とを内蔵すると共に、芯体を導体で構成し、信号発信回路からの信号を、導体の芯体から、位置検出センサに対して静電結合により送信するようにするものである(例えば特許文献1(特許第5687398号公報)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年の小型化の嗜好により、携帯型の電子機器も、より小型化の要求が強くなっている。そして、電子ペンは、この種の小型の電子機器に搭載される位置検出センサと共に使用されるようになっており、より細型のものが求められている。
【0006】
さらに、最近は、電子ペンは、文具の延長として捉えられ、その内部構成をモジュール化して、ボールペンの替え芯(リフィルやカートリッジ)と同様に取り扱えるようにする要望もある。以下、この明細書では、電子ペンの内部構成部品をモジュール化して一体化し、ボールペンの替え芯のように交換可能に構成したものを電子ペン本体部と称することとする。
【0007】
静電容量方式の電子ペンと静電容量方式の位置検出センサとの間の電界結合の強度は、電磁誘導方式の電子ペンの電磁誘導結合の強度に比較すると小さい。そして、電子ペン本体部を、細型であるリフィルの構成にする場合には、より電界結合の強度が小さくなるので、そのような状態でも、静電容量方式の位置検出センサで確実に電子ペンによる指示位置を検出することができるように構成しなければならないという課題がある。
【0008】
この発明は、以上の課題を解決することができるようにした電子ペン及び電子ペン本体部を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、
電子ペンの筒状の筐体内に、少なくともペン先が、前記電子ペンの筒状の筐体の軸心方向の一方の開口から突出可能に収容される電子ペン本体部であって、
軸心方向の一端側が前記ペン先となる導電性の中心電極と、
少なくとも前記ペン先を除いて前記中心電極の周囲に配設され、前記中心電極とは絶縁されている周辺電極と、
前記周辺電極で位置検出センサとの間での電界結合を介して受信された受信信号が供給される信号受信回路と、
を備え、
前記ペン先となる前記中心電極の前記一端側が前記電子ペンの筒状の筐体の前記開口から外部に突出する使用時には、前記周辺電極の前記ペン先側の一部も前記電子ペンの筒状の筐体の前記開口から外部に突出する
ことを特徴とする電子ペン本体部を提供する。
【0010】
また、
ペン先側となる軸心方向の一端側に開口が設けられている筒状の筐体を有し、少なくとも1本の電子ペン本体部が前記筒状の筐体内に収納される電子ペンであって、
前記電子ペン本体部は、
軸心方向の一端側がペン先となる導電性の中心電極と、
少なくとも前記ペン先を除いて前記中心電極の周囲に配設され、前記中心電極とは絶縁されている周辺電極と、
前記周辺電極で位置検出センサとの間での電界結合を介して受信された受信信号が供給される信号受信回路と、
を備え、
前記ペン先となる前記中心電極の前記一端側が前記筒状の筐体の前記開口から外部に突出する使用時には、前記周辺電極の前記ペン先側の一部も前記開口から外部に突出する
ことを特徴とする電子ペンを提供する。
【0011】
上述の構成の電子ペン本体部によれば、中心電極の一端側であるペン先が電子ペンの筐体の開口から突出すると共に、周辺電極のペン先側の一部も電子ペンの筐体の開口から突出する。したがって、電子ペンの中心電極及び周辺電極と静電容量方式の位置検出センサとの距離が短くなり、両者の電界結合を良好に確保することができる。
【0012】
そして、上述の構成の電子ペン本体部の中心電極と周辺電極とを用いることで、電子ペンによる指示位置を静電容量方式の位置検出センサで確実に検出することができるようになる。
【0013】
すなわち、位置検出センサからの信号を電子ペン本体部の周辺電極で受信し、その受信信号に基づいて、電子ペン本体部の中心電極からの信号の送信を制御することで、位置検出センサで確実に電子ペン本体部からの信号を検出することができるようになる。また、中心電極から信号を送出するときに、周辺電極を接地して当該周辺電極をシールド電極として用いることで、無駄なく、中心電極の先端部(ペン先)から信号を送出させることができる。さらに、周辺電極から信号を送出することで、この周辺電極を電子ペンの傾斜角を検出用とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
【
図2】この発明による電子ペン本体部の第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
【
図3】この発明による電子ペン本体部の第1の実施形態のペン先側の構成例を説明するための図である。
【
図4】この発明による電子ペン本体部の第1の実施形態の構成例を説明するための図である。
【
図5】この発明による電子ペン本体部の第1の実施形態の電子回路の構成例を説明するためのブロック図である。
【
図6】この発明による電子ペン本体部の第1の実施形態の電子回路の構成例の動作を説明するために用いる図である。
【
図7】この発明による電子ペンの第1の実施形態と共に使用する静電容量方式の位置検出装置の構成例を説明するための図である。
【
図8】
図7の例の位置検出装置における電子ペンの傾き角の検出方法を説明するために用いる図である。
【
図9】この発明による電子ペンの第2の実施形態の構成例を説明するための図である。
【
図10】この発明による電子ペンの第3の実施形態に用いる電子ペン本体部の構成例を説明するための図である。
【
図11】この発明による電子ペンの第3の実施形態の構成例を説明するための図である。
【
図12】この発明による電子ペン本体部の他の実施形態の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明による電子ペン及び電子ペン本体部の実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0016】
第1の実施形態の電子ペンでは、カートリッジ式の構成とされる電子ペン本体部を、電子ペンの筒状の筐体内に着脱可能に収容する構成を備えている。
【0017】
ところで、近年のアクティブ静電容量方式の電子ペンにおいては、電子ペンによる指示位置を検出する位置検出センサ側からの信号を受信して、その受信した信号の要求に基づいたフォーマットの信号を発信する双方向通信型の電子ペンも登場してきている。
【0018】
この種の双方向通信型電子ペンにおいては、位置検出センサからの信号を受信するための受信部の位置が重要である。静電容量方式の電子ペンの場合、位置検出センサから送信される信号は、静電容量結合により受信可能な電界によるものであり、その到達距離は非常に短い。そのため、双方向通信型電子ペンの受信部は、位置検出センサからの信号を大きい強度で受信することができるように、ペン先に近い位置に配置すべきである。
【0019】
そこで、この実施形態の電子ペンでは、電子ペン本体部の構成を、上述の双方向通信型電子ペン用として最適なものとなるように考慮している。すなわち、以下に説明する実施形態では、電子ペン本体部に、位置検出センサからの信号の受信部を設けるが、この受信部は、導電性材料で構成されている中心電極との電気的な絶縁を考慮しつつ、この中心電極の周囲を、中心電極の先端部の近傍まで覆うように囲んで設けられた筒状の導体からならる周辺電極により構成される。
【0020】
また、最近は、電子ペンの位置検出センサ面に対する傾き角(電子ペンの軸心方向と位置検出センサ面との成す角度。以下、電子ペンの傾き角と略称する)を、位置検出装置で検出し、検出した傾き角を電子ペンの指示軌跡(筆記跡)の太さなどに反映するようにすることが提案されている。この実施形態の電子ペンの電子ペン本体部においては、上記の周辺電極を、この電子ペンの傾き角の検出にも用いることができるように構成する。
【0021】
また、この第1の実施形態では、周辺電極を、位置検出用信号を送出する中心電極に対するシールド電極の役割をするようにも構成する。
【0022】
図1は、この発明による電子ペンの第1の実施形態の構成例を示す図である。この第1の実施形態の電子ペン1は、筒状の筐体2(以下、ペン筐体2と称する)の中空部2a内に、電子ペン本体部3が収納され、ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3のペン先側が、ペン筐体2の長手方向の一端側の開口2b側から出し入れされるノック式の構成を備える。
【0023】
図1(A)は、電子ペン本体部3の全体がペン筐体2の中空部2a内に収容されている状態を示し、
図1(B)は、ノックカム機構部4により電子ペン本体部3のペン先側が、ペン筐体2の開口2bから突出した状態を示している。なお、
図1の例では、電子ペン1のペン筐体2が透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0024】
この実施形態の電子ペン1は、市販のノック式ボールペンと互換性が取れる構成とされている。
【0025】
ペン筐体2及び当該ペン筐体2内に設けられるノックカム機構部4は、周知の市販のノック式ボールペンと同一の構成とされると共に、寸法関係も同一に構成される。
【0026】
ノックカム機構部4は、
図1に示すように、カム本体41と、ノック棒42と、回転子43とが組み合わされた周知の構成とされている。カム本体41は、筒状のペン筐体2の内壁面に形成されている。ノック棒42は、使用者のノック操作を受け付けることができるように、端部42aが、ペン筐体2のペン先側とは反対側の開口2cから突出するようにされている。回転子43は、電子ペン本体部3のペン先側とは反対側の端部が嵌合される嵌合部43aを備える。
【0027】
ただし、この嵌合部43aには、電子ペン本体部3との電気的な接続の構成が追加されている点が、通常の文具のノック式ボールペンの筐体の嵌合部とは異なっている。すなわち、電子ペン本体部3は、後述するように、内部に、位置検出センサに中心電極又は周辺電極を通じて送出する信号を発生する信号発信回路を備えており、当該信号発信回路には電源電圧を供給する必要がある。
【0028】
この実施形態では、後述するように、電子ペン本体部3の内部には、信号発信回路及び当該信号発信回路に電源を供給する蓄電素子が設けられている。そして、蓄電素子は、電子ペン本体部3の外部から充電をする必要がある。そのため、この実施形態の電子ペン本体部3の嵌合部43aに嵌合される端部には、前記蓄電素子と接続される端子導体(電極)が設けられており、前記嵌合部43aには、当該蓄電素子と接続される端子導体と接続される導体が形成される。なお、電子ペン本体部3との結合部の構成は、電気的な構成が追加されるだけ、ボールペンの替え芯が結合されて装着される構成であることに変化はない。電子ペン本体部3の嵌合部43aに嵌合される端部の構成例については、嵌合部43aの構成例と共に後述する。
【0029】
そして、ペン筐体2の、この例ではペン先側とは反対側の外周側面の部分に、
図1に示すように、嵌合部43aに設けられる導体に接続される充電用電極2d,2eが形成されている点が、文具のノック式ボールペンの筐体の構成とは異なる。
【0030】
以上のような構成の電子ペン1において、
図1(A)の状態において、ノック棒42の端部42aが押下されると、ノックカム機構部4により、電子ペン本体部3は、ペン筐体2内において
図1(B)の状態にロックされ、電子ペン本体部3のペン先側が、ペン筐体2の開口2bから突出する状態になる。そして、この
図1(B)の状態から、ノック棒42の端部42aが再度押下されると、ノックカム機構部4によりロック状態が解除され、復帰用バネ5により、電子ペン本体部3のペン筐体2内の位置は、
図1(A)の状態に戻る。ノックカム機構部4の詳細な構成及びその動作は、周知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0031】
[電子ペン本体部3の実施形態]
図2は、電子ペン本体部3の構成例を、市販のノック式ボールペンの替え芯と比較して示す図である。すなわち、
図2(A)は、市販のノック式ボールペンの替え芯6を示し、また、
図2(B)は、この実施形態の電子ペン本体部3の構成例を示しており、この実施形態では、後述するように、電子ペン本体部3は、ノック式ボールペンの替え芯6と、サイズ的に同等のものとして、互換性を取れるように構成されている。
【0032】
図3は、この実施形態の電子ペン本体部3のペン先側の構成例を示す図で、
図3(A)は、その外観を示す図、
図3(B)は、その縦断面図である。また、
図4は、
図3に示した、この実施形態の電子ペン本体部3のペン先側の構成例を説明するための分解斜視図である。
【0033】
市販のノック式ボールペンの替え芯6は、
図2(A)に示すように、ボールが先端に配設されているペン先部61と、一定の外径の筒状のインク収納部62とが、一定の外径の筒状の結合部63で結合されて一体化された周知の構成を備える。ペン先部61は筒状形状を備えると共に、その先端側がテーパー形状に形成されたもので、最大外径は、ペン筐体2の開口2bの径R0よりも小さいR1とされている。結合部63とインク収納部62とは、同じ外径R2を有し、その外径R2は、ペン先部61の最大外径R1よりは若干大きくされており、例えばR2=2.2ミリメートルとされている。なお、ペン筐体2の開口2bの径R0は、R1<R0<R2とされている。
【0034】
一方、この実施形態の電子ペン本体部3においては、
図2(B)及び
図3(A),(B)に示すように、本体筒状部31のペン先側に、筒状結合部材32を介して、導電部材、例えば導電性金属からなる周辺電極33が結合されて、電子ペン本体部3の筐体30(以下、本体筐体30と称する)が構成されている。
【0035】
本体筒状部31は、この例では、
図2(B)に示すように、金属パイプ部31aのペン先側とは反対側の後端側に樹脂パイプ部31bが結合されて構成されている。そして、この例では、本体筒状部31は、金属パイプ部31aのペン先側に、周辺電極33が、筒状結合部材32を介して結合されている。筒状結合部材32は、金属パイプ部31aと周辺電極33との間の絶縁の役割もする。そして、電子ペン本体部3の樹脂パイプ部31b側の端部が、ペン筐体2内の嵌合部43aとの嵌合部となる。
【0036】
周辺電極33は、この例では、
図2及び
図3に示すように、外径が一定の径R2の円筒形状部33aと、ペン先側に向かって徐々に先細となるようにテーパー状に形成されているテーパー部33bとを有する形状とされている。本体筒状部31の金属パイプ部31aは、周辺電極33の円筒形状部33aの外径R2と等しい外径の円筒形状を有している。
【0037】
筒状結合部材32は、絶縁性材料、この例では樹脂で構成されており、
図3(B)に示すような筒状体であって、その外周面の軸心方向の中ほどの位置には、当該外周側面から軸心方向に直交する方向に突出するリング状鍔部32Fが形成されている。このリング状鍔部32Fは、軸心方向に所定の幅W(
図3参照)を有し、その端面は、
図3(A)及び(B)に示すように、本体筒状部31及び周辺電極33と段差を生じることなく面一となって本体筐体30の一部を構成するようにされている。つまり、リング状鍔部32Fの外周部の径は、周辺電極33及び本体筒状部31の金属パイプ部31aの外径と等しく選定されている。
【0038】
そして、この筒状結合部材32の、リング状鍔部32Fよりも軸心方向の一方側であるペン先側は、周辺電極33の円筒形状部33aと嵌合される第1の嵌合筒状部32aとされる。この筒状結合部材32の第1の嵌合筒状部32aの外径は、周辺電極33の円筒形状部33aの内径と等しいか僅かに小さくされており、周辺電極33の円筒形状部33aは、筒状結合部材32の第1の嵌合筒状部32aに、リング状鍔部32Fのところまで圧入嵌合されて結合されるように構成されている。
【0039】
また、筒状結合部材32のリング状鍔部32Fよりも軸心方向に後端側は、本体筒状部31の金属パイプ部31aと嵌合される第2の嵌合筒状部32bとされる。この筒状結合部材32の第2の嵌合筒状部32bの外径は、本体筒状部31の金属パイプ部31aの内径と等しいか僅かに小さくされており、本体筒状部31の金属パイプ部31aは、筒状結合部材32の第2の嵌合筒状部32bに、リング状鍔部32Fのところまで圧入嵌合されて結合されるように構成されている。
【0040】
本体筒状部31の金属パイプ部31aと、周辺電極33とが、筒状結合部材32に対して挿入されて嵌合され、結合された状態では、
図2(B)及び
図1(A)、(B)に示すように、1本の筒状体の本体筐体30が形成される。このとき、前述したように、本体筒状部31の金属パイプ部31aの外周面と、周辺電極33の外周面と、筒状結合部材32のリング状鍔部32Fの端面とは面一の状態となっている。そして、導電性材料からなる本体筒状部31の金属パイプ部31aと、周辺電極33とは、筒状結合部材32のリング状鍔部32Fの存在により接触することなく互いに電気的に分離(絶縁)されている状態となっている。
【0041】
本体筐体30の内部には、
図3(B)に示すように、中空部30aが存在する。そして、本体筐体30の周辺電極33のペン先側には、
図2(B)及び
図3(A),(B)に示すように、絶縁材からなるフロントキャップ34が装着される。フロントキャップ34は、その先端側に中心電極35の径よりも大きな径の開口34a(
図3(B)参照)を備えており、その開口34aは、本体筐体30の中空部30aに連通している。
【0042】
中心電極35は、この実施形態の電子ペン本体部3の芯体を構成するもので、導電性の部材、この例では、導電性金属で構成されている。そして、この中心電極35が、
図3(B)に示すように、フロントキャップ34の開口34aから、本体筐体30内に挿入され、ペン先側とは反対側の端部が、後述する芯体保持部材7に着脱可能に装着される。
【0043】
導電性材料からなる芯体35と周辺電極33とは、
図3(B)に示すように、絶縁材であるフロントキャップ34により、電気的に分離(絶縁)される。この実施形態の電子ペン本体部3
においては、中心電極35が装着されたときには、周辺電極33は、
図3(B)に示すように、中心電極35のペン先となる先端部35aよりも後端側を囲むように配されている。なお、以下の説明においては、中心電極35は、芯体35と記すこととする。
【0044】
この例の場合には、
図2(A)及び
図2(B)に示すように、電子ペン本体部3のペン先側の寸法は、ボールペンの替え芯6のペン先側の寸法とほぼ等しくなるように構成されている。すなわち、本体筐体30の本体筒状部31及び周辺電極33の円筒形状部33aの外径は、
図2(B)に示すように、市販のノック式ボールペンの替え芯6のインク収納部62及び結合部63の外径R2と等しくされている。
【0045】
そして、本体筐体30の周辺電極33の、ペン先側のテーパー部33bは、ペン先側に近づくにしたがって徐々に小さくなる径を有し、この実施形態では、
図2(B)に示すように、当該テーパー部33bの軸心方向の中ほどの位置からペン先側は、ペン筐体2のペン先側の開口2bの径R0以下となるように構成されている。
【0046】
そして、電子ペン本体部3に対して、フロントキャップ34の開口34aから芯体35が挿入されて装着されているときに、芯体35の先端部から周辺電極33のテーパー部33bの外径が径R1となる位置までの長さが、市販のノック式ボールペンの替え芯6のペン先部61の軸心方向の長さL1とほぼ等しくなるように構成されている。
【0047】
また、
図2(A)及び(B)に示すように、芯体35を装着した状態の電子ペン本体部3の長さ(全長)は、ボールペンの替え芯6の全長L2と等しく選定されている。
【0048】
以上のような構成の電子ペン本体部3は、その本体筒状部31をノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aに嵌合させることにより、ペン筐体2内に収納することができる。そして、この実施形態の電子ペン1においては、使用者は、位置検出装置と共に使用するときには、ノック棒42の端部42aを押下する。すると、電子ペン1においては、
図1(B)に示すように、芯体35の先端部35aと、フロントキャップ34の一部と、周辺電極33のテーパー部33bのペン先側の一部とが、ペン筐体2の開口2bから外部に突出する状態となる。
【0049】
すなわち、この実施形態では、電子ペン1のペン筐体2の開口2bからは、
図1(B)に示すように、電子ペン本体部3に装着される芯体35の先端部のみではなく、この芯体35の周囲を囲むように構成されている周辺電極33のペン先側の一部が外部に突出するように構成されている。電子ペン1の使用者は、この状態で、位置検出装置の位置検出センサ上において、指示位置の入力操作をする。
【0050】
電子ペン1の使用が終了したら、ノック棒42の端部42aを再押下することで、
図1(A)に示すように、電子ペン本体部3の全体はペン筐体2の中空部2a内に収容させる状態とすることができる。このときには、電子ペン本体部3の全体がペン筐体2の中空部2a内に収容されて、電子ペン本体部3の芯体35の先端部35aは、ペン筐体2により保護される状態となる。
【0051】
本体筐体30の中空部30a内には、
図2(B)及び
図3(A)において点線で示すように、芯体保持部材7、筆圧検出部8、信号発信回路が搭載されるプリント基板9、電源電圧供給用の蓄電素子の例としてのコンデンサ10が、ペン先側から順に、軸心方向に並べられて収納されて、配設されている。
【0052】
そして、この実施形態では、本体筐体30の中空部30a内には、
図3(B)に示すように、基板載置台部301にプリント基板9が載置された基板ホルダー300が収納されている。
【0053】
基板ホルダー300は、絶縁性の樹脂により構成され、電子ペン本体部3の軸心方向となる長手方向において、基板載置台部301側とは反対側に、筆圧検出部8を収納保持するための筆圧検出部保持部302を有している。基板ホルダー300は、
図3(B)に示すように、本体筐体30の中空部内に収納されたときに、電子ペン本体部3の軸心方向となる長手方向に、筆圧検出部保持部302と、基板載置台部301とが連続する構成とされている。筆圧検出部保持部302は、内部の中空部に筆圧検出部8の複数個の部品を収納する中空部を備える円筒形状とされる。基板載置台部301は、プリント基板9を載置して保持するボート状の形状であって、筒状体を軸芯方向に略半分切断したような形状とされている。
【0054】
基板ホルダー300は、筆圧検出部保持部302がペン先側となるように、本体筐体30内に収納される。そして、この筆圧検出部保持部302に保持されている筆圧検出部8に対して、芯体35と嵌合して当該芯体35を保持する芯体保持部材7が結合され、芯体35に印加される圧力(筆圧)が、筆圧検出部8に伝達されるように構成されている。
【0055】
基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の外径は、この実施形態では、筒状結合部材32の第2の嵌合筒状部32bの外径と等しいあるいは若干小さく選定されている。そして、
図3(B)に示すように、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の一部が、筒状結合部材32の第2の嵌合筒状部32bの一部と嵌合することで、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302と筒状結合部材32の第2の嵌合筒状部32bとが結合されて構成されている。
【0056】
基板ホルダー300は、
図3(B)に示すように、筆圧検出部保持部302が、軸心方向において、筒状結合部材32の第2の嵌合筒状部32bと嵌合結合されることで、本体筐体30内において軸心方向に移動しないように位置規制されている。
【0057】
そして、図示は省略するが、基板ホルダー300の基板載置台部301の、筆圧検出部保持部302とは反対側に配設されているコンデンサ10の両端と、プリント基板9の電源ライン及びアースラインの銅箔パターンとが電気的に接続されている。これにより、コンデンサ10の電圧が、プリント基板9に形成されている回路に、電源電圧として供給される。
【0058】
この実施形態では、導電性材料からなる本体筒状部31の金属パイプ部31aは、電気的に、プリント基板9のアースラインの銅箔パターンと接続されている。
【0059】
この実施形態では、プリント基板9上には、芯体35及び周辺電極33から送出する信号を発生する信号発信回路および当該信号発信回路からの信号の芯体35及び周辺電極33への送信を制御する制御回路を構成するIC(Integrate Circuit)100(
図3(A)及び(B)参照)及びその周辺回路部品からなる回路部が設けられている。周辺回路部には、図示を省略するが、コンデンサ10の充電回路が含まれる。コンデンサ10の充電回路は、電子ペン1の外部に設けられていてもよい。
【0060】
芯体35を嵌合保持する芯体保持部材7は、
図3(B)及び
図4に示すように、導電性弾性部材71と、芯体ホルダー72と、コイルばね73と、導体端子部材74とから構成されている。芯体35は、この実施形態では、
図3(B)に示すように、導電性弾性部材71を介して導電性材料からなる芯体ホルダー72に嵌合されることにより、芯体ホルダー72に対して結合保持されている。芯体保持部材7は、筆圧検出部8に対して、芯体35に印可される筆圧の伝達部材の役割もする。
【0061】
そして、芯体ホルダー72が、筆圧検出部保持部302に保持される筆圧検出部8の保持部材83に嵌合されることにより、芯体35に印加される圧力(筆圧)が筆圧検出部8に伝達されるように構成されている。この場合に、芯体ホルダー72は、当該芯体ホルダー72と基板ホルダー300との間に設けられる、導電性金属などの導電性材料からなる弾性部材の例としてのコイルばね73により、基板ホルダー300に対して常に芯体35側に付勢されるように構成されている。なお、コイルばね73は、導体端子部材74と共に、プリント基板9に配設されているIC100からの信号を芯体35に伝達するための電気的接続用部材を構成するものである。
【0062】
図4(A)は、芯体35、導電性弾性部材71、芯体ホルダー72、コイルばね73、導体端子部材74及び基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の部分の分解斜視図である。
【0063】
導電性弾性部材71は、例えば導電性ゴムからなり、芯体35の先端部35aとは反対側の端部が嵌合される貫通孔71aを備える円筒状形状に形成されている。この導電性弾性部材71の芯体35側は、他の部分よりも外径が小さくされて薄肉部とされると共に、スリット712が形成されて、芯体35を把持し易くする把持部711とされている。
【0065】
このように構成したことにより、芯体35は、把持部711の、スリット部712が形成された2個の薄肉部である弧状部分により把持される。したがって、芯体35は導電性弾性部材71の把持部711に対して容易に挿入嵌合され、また、所定の力で引っ張ることで、芯体35を導電性弾性部材71から容易に引き抜くことができる。
【0066】
芯体ホルダー72は、導電性材料、例えばSUS(Steel Special Use Stainless)からなり、導電性弾性部材71を収納嵌合する凹穴721aを有する収納嵌合部721と、筆圧検出部8の後述する保持部材83に嵌合する棒状部722とが一体に形成されたものである。
【0067】
上述のようにして導電性弾性部材71を収納した芯体ホルダー72の棒状部722に導電性のコイルばね73が装着された後、芯体ホルダー72の棒状部722は、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に保持される筆圧検出部8の保持部材83に嵌合される。
【0068】
この場合に、この実施形態の電子ペン本体部3においては、プリント基板9上に構成されている回路で生成される送信信号を、芯体35に供給しなければならないことを考慮する必要がある。しかし、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に収納された筆圧検出部8の保持部材83は、絶縁性の材料である樹脂で構成されているので、芯体ホルダー72と保持部材83との間で電気的な接続をすることはできない。
【0069】
そこで、この実施形態では、芯体ホルダー72と、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302との間に設けた、導電性の材料で構成されたコイルばね73と、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に設けられた導体端子部材74とにより電気的接続用部材を構成し、この電気的接続用部材により、プリント基板9の信号発信回路からの信号供給のための電気的接続を実現している。
【0070】
すなわち、この実施形態では、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302には、
図4(A)に示すように、芯体ホルダー72の棒状部722が挿入される開口部302a側を覆うように、導電性を有する材料、例えばSUSからなる導体端子部材74が装着されている。
【0071】
この導体端子部材74は、
図4(A),(B)に示すように、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の開口部302a側を覆い、かつ、芯体ホルダー72の棒状部722が挿通する貫通孔741aを備える当接板部741を有する。
【0072】
また、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の部分を跨いで、基板載置台部301の部分まで延伸する延伸部742が設けられている。そして、導体端子部材74が基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に装着された状態においては、
図3(B)に示すように、導体端子部材74から延伸する延伸部742の先端の端子部742aは、基板ホルダー300の基板載置台部301に載置されているプリント基板9の裏面側の導体と当接し、例えば半田付けされる。これにより、導体端子部材74とプリント基板9に設けられている信号発信回路と電気的に接続される。
【0073】
導電性弾性部材71が嵌合された芯体ホルダー72の棒状部722が、コイルばね73を介在させた状態で、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の中空部内に、導体端子部材74の当接板部741の貫通孔741aを通して挿入されて、筆圧検出部保持部302に嵌合される。コイルばね73の内径は、芯体ホルダー72の棒状部722の外形よりも大きいものとされている。
【0074】
したがって、コイルばね73は、芯体ホルダー72に弾性的に接触すると共に、導体端子部材74の当接板部741に当接して弾性的に接触する。コイルばね73は、導電性材料で構成されていると共に、導電性弾性部材71及び芯体ホルダー72は導電性を有するので、コイルばね73及び導体端子部材74を介して、芯体ホルダー72に嵌合されている導電性弾性部材71は、プリント基板9の回路部と電気的に接続される。
【0075】
そして、以上のように本体筐体30内に収納された芯体ホルダー72に嵌合された導電性弾性部材71の貫通孔71aに対して、芯体35が、前述したようにして挿入嵌合されて、芯体35が、芯体ホルダー72に対して、導電性弾性部材71を介して保持される。この状態では、芯体35は、プリント基板9の信号発信回路と電気的に接続されることになり、信号発信回路からの信号が芯体35に供給される状態となる。
【0076】
次に、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302及び筆圧検出部8の構成、さらに、筆圧検出部8の保持部材83と、芯体ホルダー72との嵌合について説明する。
【0077】
筆圧検出部保持部302に筆圧検出部8が収納されて
図3(B)に示すように構成されることで、筆圧検出用モジュールが構成される。そして、この筆圧検出用モジュールに、芯体ホルダー72を介して芯体35が結合されることで、芯体35の先端部35aに印加される筆圧が筆圧検出用モジュールの筆圧検出部8で検出される。この場合に、筆圧検出用モジュールは、これを構成する筆圧検出部8の部品の一部が、芯体35の先端部35aに印加される筆圧に応じて、芯体35及び芯体ホルダー72と共に軸心方向に移動することで、筆圧を検出する。
【0078】
この例の筆圧検出部8は、芯体35に印加される筆圧に応じて静電容量が変化する容量可変コンデンサを用いた場合であり、
図3(B)に示すように、誘電体81と、端子部材82と、保持部材83と、導電部材84と、弾性部材85との複数個の部品からなる。
【0079】
以上のように基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302に芯体ホルダー72が嵌合されている状態において、芯体35を、芯体ホルダー72に嵌合されている導電性弾性部材71の貫通孔71aに圧入させる。これにより、芯体35は、前述したように、導電性弾性部材71により芯体ホルダー72に対してしっかりと保持される。なお、芯体35は、芯体ホルダー72に嵌合されて保持された状態から、先端部35a側の方向に引き抜くことが可能であって、前述したように、交換が可能である。
【0080】
この電子ペン本体部3において、芯体35の先端部35aに圧力が印加されると、その圧力に応じて、芯体35は、軸心方向に後端側に変位し、この変位により、筆圧検出部保持部302内の保持部材83が弾性部材85の弾性偏倚力に抗して、誘電体81側に変位する。その結果、保持部材83に嵌合されている導電部材84が、誘電体81側に変位し、導電部材84と誘電体81との間の距離、さらには、導電部材84と誘電体81との接触面積が、芯体35に印加される圧力に応じて変化する。
【0081】
これにより、第1の電極を構成する端子部材82と、第2の電極を構成する導電部材84との間で形成される容量可変コンデンサの静電容量が、芯体35に印加される圧力に応じて変化する。この容量可変コンデンサの静電容量の変化が、プリント基板9に設けられているIC100で検出されて筆圧が検出される。
【0082】
なお、筆圧検出部8は、上述のような構成のものに限られるものではなく、例えば容量可変コンデンサをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子からなる半導体チップで構成したもの(例えば特許文献(特開2013-161307号公報)参照)を用いてもよい。
【0083】
次に、周辺電極33と、プリント基板9の回路部との電気的な接続について説明する。筒状結合部材32の外周面には、凹溝(図示は省略)が、当該筒状結合部材32の軸心方向に沿った方向に、第1の嵌合筒状部32aから、リング状鍔部32Fの下部を通って、第2の嵌合筒状部32bに亘って形成されている。
【0084】
そして、基板ホルダー300の筆圧検出部保持部302の
外周側面にも、第2の嵌合筒状部32bの凹溝と連続するような凹溝(図示は省略)が形成されている。この連続する凹溝内には、
図3(B)に示すように、導電体材料、この例では、導電体金属からなる接続端子導体11が配設される。そして、
図3(B)に示すように、筒状結合部材32の第1の嵌合筒状部32a側の凹溝に配設される接続端子導体11の端部11aは、少なくとも一部が、当該第1の嵌合筒状部32aの外周面よりも若干膨出するように配設される。ただし、当該端部11aの部分の凹溝の深さは、当該端部11aを上から押下したときには、端部11aが弾性的に下方に押下できるような深さに構成されている。
【0085】
これにより、筒状結合部材32の第1の嵌合筒状部32aに周辺電極33が嵌合されたときに、接続端子導体11の端部11aと、周辺電極33の内壁とが確実に接触して、周辺電極33と接続端子導体11とが電気的に接続される状態となるように構成されている。そして、接続端子導体11のプリント基板9側に伸びている端部11bは、
図3(B)に示すように、プリント基板9の裏面9b側に電気的に接続される。図示は省略してあるが、接続端子導体11の端部11bは、プリント基板9の表面側の回路部とはスルーホールを介して、電気的に接続されている。
【0086】
なお、接続端子導体11が配設される凹溝の深さは、第2の嵌合筒状部32bに本体筒状部31の金属パイプ部31aが嵌合されたときに、接続端子導体11と金属パイプ部31aとが接触しない深さとされる。あるいは、接続端子導体11と金属パイプ部31aとの間に絶縁物を介在させるようにしてもよい。
【0087】
次に、
図2(C)を参照して、電子ペン本体部3のペン先側とは反対側の後端部及び本体筐体30の嵌合部43aの構成例について説明する。本体筐体30の本体筒状部31の、電子ペン1のペン筐体2のノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aと嵌合される側は、この例では、樹脂パイプ部31bで構成されており、この樹脂パイプ部31bには、コンデンサ10の両端と接続される対の端子導体が施されている。そして、電子ペン1のペン筐体2のノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aには、対応する対の導体が形成されており、その対の導体は、ペン筐体2の、この例ではペン先側とは反対側の外周側面の部分に設けられている充電用電極2d,2eに電気的に接続されている。
【0088】
図2(C)は、電子ペン本体部3の本体筒状部31の樹脂パイプ部31bと、本体筐体30の本体筒状部31の嵌合部43aとの結合部分の構成を説明するための拡大断面図である。
【0089】
図2(C)に示すように、嵌合部43aは、樹脂パイプ部31bが嵌合される円柱状凹部431を備えると共に、その円柱状凹部431の中心部に、樹脂パイプ部31bの中空部に挿入される中心棒状部432を備える。この例では、嵌合部43aの円柱状凹部431の径は、樹脂パイプ部31bの外径よりもわずかに大きく、樹脂パイプ部31bが嵌合部43aに嵌合されたときに、樹脂パイプ部31bの外周側面と、嵌合部43aの円柱状凹部
431の内壁面とが接触するような寸法に構成されている。また、樹脂パイプ部31bが嵌合部43aに嵌合されたときに、樹脂パイプ部31bの内周側面と、嵌合部43aの円柱状凹部431の中心棒状部432の外周側面とが接触するような寸法に構成されている。
【0090】
そして、
図2(C)に示すように、本体筒状部31の樹脂パイプ部31bの外周側面には、本体筒状部31に収納されるコンデンサ10の一方の電極端子10aに電気的に接続される端子導体12が被着形成されている。また、本体筒状部31の樹脂パイプ部31bの内壁面には、コンデンサ10の他方の電極端子10bに電気的に接続される端子導体13が被着形成されている。端子導体12と端子導体13とは、電気的に非接続の状態とされている。
【0091】
一方、嵌合部43aの円柱状凹部431の内壁面には、ペン筐体2に形成されている充電用電極2dと接続されている導体14が形成されている。また、嵌合部43aの円柱状凹部431の中心棒状部432の外周側には、ペン筐体2に形成されている充電用電極2dと接続されている導体15が形成されている。導体14と導体15とは、電気的に非接続の状態とされている。
【0092】
この場合に、端子導体12及び端子導体13は、この例では、外周側面の全周及び内壁面の全周に形成されている。また、嵌合部43aの導体14及び導体15も、円柱状凹部431の内壁面の全周及び中心棒状部432の外周側面の全周に形成されている。これにより、電子ペン本体部3の本体筒状部31の樹脂パイプ部31bの端部が、嵌合部43aに嵌合されるときに、どのような回転角位置で互いに嵌合しても、電子ペン本体部3の端子導体12及び端子導体13が、嵌合部43aの導体14及び15と電気的な接続がなされる。なお、導体12,13,14,15は、円周方向の全周に亘ってに形成することは必須ではなく、どのような回転角位置で互いに嵌合しても、電子ペン本体部3の端子導体12及び端子導体13が、嵌合部43aの導体14及び15と電気的な接続がなされるのであれば、周方向の一部に導体の欠落部があってもよい。
【0093】
以上の構成により、電子ペン本体部3が、電子ペン1のペン筐体2のノックカム機構部4の回転子43の嵌合部43aと嵌合されたときには、電子ペン本体部3に収納されているコンデンサ10の両端は、電子ペン1のペン筐体2の充電用電極2d,2eと接続される。これにより、コンデンサ10に電源電圧が蓄積していないときには、充電用電極2d,2eを通じて、コンデンサ10が充電されて十分な電源電圧が蓄積される。
【0094】
[電子ペン本体部3の電子回路構成例]
次に、この実施形態の電子ペン本体部3の電気的な構成例を、
図5に示す。この例では、
図5に示すように、プリント基板9に載置されているIC100により制御回路101が構成される。そして、この制御回路101に対して、信号発信回路102と信号受信回路103とが接続されると共に、筆圧検出部8で構成される可変容量コンデンサ8Cが接続されている。可変容量コンデンサ8Cには、並列に抵抗8Rが接続されている。
【0095】
そして、信号発信回路102の信号出力端が、スイッチ回路104を通じて、芯体35に接続されている。この場合、芯体35と、スイッチ回路104との間には、導体端子部材74及び芯体ホルダー72並びに導電性弾性部材71が介在するのは前述した通りである。
【0096】
また、この例では、信号発信回路102の信号出力端は、切替スイッチ回路105の端子Sに接続されている。この切替スイッチ回路105の可動端子Mは、周辺電極33に接続されている。この場合、周辺電極33と切替スイッチ回路105との間には、接続端子導体11が介在する。
【0097】
切替スイッチ回路105の端子Rは、信号受信回路103の入力端に接続されている。また、切替スイッチ回路105の端子Gは、アース電極(グランド電極)に接続されている。
【0098】
そして、制御回路101は、スイッチ回路104に対して、当該スイッチ回路104をオンオフ制御する制御信号SW1を供給する。また、制御回路101は、切替スイッチ回路105に対して、可動端子Mを、端子S、端子R、端子Gのいずれに接続するかを切り替える切替制御信号SW2を供給する。
【0099】
なお、図示は省略するが、コンデンサ10の電圧が、電源電圧として、制御回路101、信号発信回路102、信号受信回路103、スイッチ回路104、切替スイッチ回路105のそれぞれに対して供給されている。
【0100】
信号受信回路103は、周辺電極33で、位置検出装置の位置検出センサとの間での静電容量結合(電界結合)を介して受信した信号を受け取り、当該受信した信号に応じた復調等の処理をして、その処理結果の信号を制御回路101に送る。
【0101】
制御回路101は、信号受信回路103からの信号を解析して、相手の位置検出装置の仕様を判断すると共に、相手の位置検出装置の位置検出センサと信号のインタラクションをするタイミングを定める。そして、制御回路101は、信号発信回路102から出力する信号のフォーマットを、相手の位置検出装置の仕様に合致するものとなるように制御し、定めたタイミングで位置検出センサとのインタラクションを行う。
【0102】
信号発信回路102は、基本的には、位置検出装置での位置検出のための所定周波数の位置検出用信号(バースト信号)と、筆圧検出部8で検出した筆圧に応じた筆圧情報とを含む信号を、制御回路101の制御の下に出力する。また、信号発信回路102は、電子ペン1の傾き角の検出用の信号も出力する。すなわち、信号発信回路102は、制御回路101による制御の下に、位置検出のための、また、電子ペン1の傾き角の検出用のバースト信号を送出する。
【0103】
そして、制御回路101は、信号発信回路102から位置検出用のバースト信号を送出している期間に、筆圧検出部8で構成される可変容量コンデンサ8Cの静電容量に基づいて筆圧を検出する動作を実行する。
【0104】
この例では、制御回路101は、まず、可変容量コンデンサ8Cを満充電の状態まで充電し、その後、充電を停止させることで、可変容量コンデンサ8Cを、抵抗8Rを通じて放電する状態にする。そして、その放電開始時点から、可変容量コンデンサ8Cの両端電圧が予め定められている所定の電圧になるまでの時間を計測し、その時間から、可変容量コンデンサ8Cのその時の静電容量を検出する。可変容量コンデンサ8Cの静電容量は、その時に芯体35に印加されている筆圧に対応したものとなっているので、その検出した静電容量に基づき筆圧を検出する。
【0105】
そして、制御回路101は、検出した筆圧を、この例では複数ビットのデジタル信号に変換し、このデジタル信号に応じた筆圧情報を、信号発信回路102から出力するように、この信号発信回路102を制御する。
【0106】
この実施形態では、制御回路101は、
図6(A)に示すように、電子ペン本体部3を、定常状態では、位置検出装置の位置検出センサからの信号を受信する信号受信モードとする。そして、この信号受信モードにおいて、位置検出装置からの信号の受信を確認して、上述した所定の処理をした後には、位置検出装置に信号を送出する信号送出モードに切り替える。
【0107】
この実施形態では、信号受信モードにおいては、制御回路101からの制御信号SW1(
図6(C)参照)により、スイッチ回路104はオフとされ、切替スイッチ回路105は、切替制御信号SW2により可動端子Mは端子Rに接続するように制御される(
図6(D)参照)。
【0108】
したがって、この信号受信モードにおいては、周辺電極33で受信された位置検出装置からの信号が、切替スイッチ回路105を通じて信号受信回路103に供給されて復調され、その復調された受信信号が制御回路101に供給される。制御回路101では、上述したように、位置検出装置からの受信信号についての解析処理をして、前述したように、相手の位置検出装置の仕様を判断する。
【0109】
また、この実施形態では、位置検出装置からの受信信号には、電子ペン本体部3が信号送出を開始するタイミングを指示する情報が含まれており、そのタイミングを指示する情報に基づいて、制御回路101は、信号受信モードから信号送出モードへの切替タイミングを決定すると共に、信号送出モード時の時分割処理のタイミングを定める等の処理をする。その後、制御回路101は、電子ペン本体部3を信号受信モードから信号送出モードへの切り替えを実行する。
【0110】
この実施形態では、この信号送出モードにおいては、
図6(B)に示すように、位置検出用のバースト信号と筆圧検出情報とを位置検出装置側に送出する位置検出期間Taと、電子ペン1の傾き角の検出用の傾き検出期間Tbとを時分割で実行するようにする。
【0111】
位置検出期間Taにおいては、制御信号SW1(
図6(C)参照)により、スイッチ回路104はオンとされ、また、切替スイッチ回路105は、切替制御信号SW2により可動端子Mは端子Gに接続される(
図6(D)参照)。したがって、位置検出期間Taにおいては、周辺電極33は、切替スイッチ回路105を通じてアース電極に接続される。そして、制御回路101は、位置検出期間Taにおいては、信号発信回路102を、位置検出用信号のバースト信号と筆圧情報とを出力するように制御する。信号発信回路102から出力される位置検出用信号と筆圧情報とは、スイッチ回路104を通じて芯体35に供給され、位置検出センサに対して送出される。この場合に、制御回路101は、信号発信回路102を、バースト信号の送出期間の終了後、筆圧情報を芯体35から送出するように制御する。
【0112】
このとき、周辺電極33はアース電極に接続されているので、芯体35は、そのペン先となる先端部35aを除いてシールドされている。したがって、信号発信回路102からの信号は、外部の影響を受けることなく、芯体35の先端部35aから送出される。
【0113】
次に、傾き検出期間Tbにおいては、制御信号SW1(
図6(C)参照)により、スイッチ回路104はオフとされ、また、切替スイッチ回路105は、切替制御信号SW2により可動端子Mは端子Sに接続される(
図6(D)参照)。そして、この傾き検出期間Tbにおいては、制御回路101は、信号発信回路102を、傾き検出用のバースト信号を発生させるように制御する。この傾き検出用のバースト信号は、この例では、位置検出用信号のバースト信号と同一周波数の信号とされる。
【0114】
したがって、この傾き検出期間Tbにおいては、信号発信回路102からの傾き検出用のバースト信号が、切替スイッチ回路105を通じて周辺電極33に供給され、位置検出センサに送出される。この傾き検出用のバースト信号を位置検出センサを通じて受けた位置検出装置では、後述するようにして、電子ペン1の傾き角を検出する。
【0115】
[位置検出装置の回路構成例]
次に、位置検出装置及び位置検出センサの回路構成例について説明する。
図7は、静電容量方式の位置検出装置200の電子ペン1からの信号の受信処理回路の構成例を説明するためのブロック図である。
【0116】
この例の位置検出装置200は、
図7に示すように、位置検出センサ210と、この位置検出センサ210に接続されるペン検出回路220とからなる。位置検出センサ210は、この例では、横方向(X軸方向)に延在した複数の第1の導体211Y
1、211Y
2、…、211Y
m(mは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、Y軸方向に配置した第1の導体群と、縦方向(Y軸方向)に延在した複数の第2の導体212X
1、212X
2、…、212X
n(nは1以上の整数)を互いに所定間隔離して並列に、X軸方向に配置した第2の導体群とで構成される。
【0117】
なお、以下の説明において、第1の導体群の複数の第1の導体及び第2の導体群の複数の第2の導体のそれぞれを区別する必要がないときには、第1の導体211Y及び第2の導体212Xと称することとする。
【0118】
ペン検出回路220は、位置検出センサ210との入出力インターフェースとされる選択回路221と、増幅回路222と、バンドパスフィルタ223と、検波回路224と、サンプルホールド回路225と、AD(Analog to Digital)変換回路226と、制御回路227とからなる。
【0119】
選択回路221は、制御回路227からの制御信号に基づいて、第1の導体群および第2の導体群の中から1本の導体211Yまたは212Xを選択する。選択回路221により選択された導体は増幅回路222に接続され、電子ペン1(の電子ペン本体部3)からの信号が、選択された導体により検出されて増幅回路222により増幅される。この増幅回路222の出力はバンドパスフィルタ223に供給されて、電子ペン1から送信される信号の周波数の成分のみが抽出される。
【0120】
バンドパスフィルタ223の出力信号は検波回路224で検波され、その出力信号はサンプルホールド回路225に供給されて、制御回路227からのサンプリング信号によりサンプルホールドされた後、AD変換回路226によってデジタル値に変換される。AD変換回路226からのデジタルデータは制御回路227によって読み取られ、処理される。
【0121】
制御回路227は、サンプルホールド回路225、AD変換回路226、および選択回路221に、それぞれ制御信号を送出すると共に、AD変換回路226からのデジタルデータから、電子ペン1によって指示された位置検出センサ210上の位置座標を算出すると共に、筆圧情報を検出する。
【0122】
また、制御回路227は、以下に説明するようにして、電子ペン1の傾き角を検出する。この位置検出装置200での電子ペン1の傾き角の検出の方法について、
図8を参照して説明する。
【0123】
図8(A)の模式図に示すように、位置検出センサ210の入力面に対して、電子ペン1の電子ペン本体部3の芯体35が垂直の状態にあるときには、位置検出期間Taでは、芯体35の先端部35aと位置検出センサ210との間で静電結合し、その静電結合する領域OBaは、
図8(B)に示すように、真円の領域となる。一方、傾き検出期間Tbでは、周辺電極33と位置検出センサ210との間で静電結合し、その静電結合する領域OBbは、
図8(C)に示すように、リング状の領域となる。
【0124】
また、
図8(D)の模式図に示すように、位置検出センサ210の入力面に対して、電子ペン1の電子ペン本体部3の芯体35が傾いている状態にあるときには、位置検出期間Taにおいて芯体35の先端部35aと位置検出センサ210との間で静電結合する領域OBaは、
図8(E)に示すように、ほぼ真円の領域のままとなる。一方、傾き検出期間Tbにおいて周辺電極33と位置検出センサ210との間で静電結合する領域OBbは、
図8(F)に示すように、傾き角に応じると共に傾きの方向に長く伸びた楕円形状の領域となる。
【0125】
したがって、位置検出装置200の制御回路227では、
図8(F)に示した領域OBbの楕円形状の長円方向の長さから電子ペン1の傾き角の大きさを検出することができ、また、
図8(E)に示した電子ペン1の指示位置を起点とした領域OBbの楕円形状の長円方向を検出することにより、電子ペン1の傾きの方向を検出することができる。
【0126】
なお、上述の例では、傾き角を検出する用途とされる周辺電極33には、芯体35に供給する信号と同一の周波数の信号を用いるようにしたが、芯体35に供給する信号の周波数と、周辺電極33に供給する信号の周波数とを異ならせてもよい。その場合には、位置検出装置200では、芯体35からの信号と、周辺電極33からの信号とを区別することができる。そのため、電子ペン1の電子ペン本体部3では、上述のように、位置検出期間Taと傾き検出期間Tbとを時分割で実行するのではなく、芯体35からの信号と、周辺電極33からの信号とを同時に位置検出センサ210に送出するように構成してもよい。
【0127】
[第1の実施形態の効果]
この第1の実施形態の電子ペン1おいては、電子ペン1のペン筐体2の開口2bから電子ペン本体部3のペン先側が外部に突出する電子ペン1の使用時には、芯体35の先端部35aのみではなく、周辺電極33のペン先側のテーパー部33bの一部もペン筐体2の開口2bから突出する。
【0128】
したがって、この第1の実施形態の電子ペン1によれば、芯体35の先端部35aのみではなく、周辺電極33のペン先側のテーパー部33bと、位置検出センサ210の入力面までの距離が短くなり、両者の静電容量結合(電界結合)が強くなる。さらに、この実施形態では、周辺電極33のペン先側は、テーパー部33bとされているので、そのペン先側の先端部の断面積が小さくなり、より位置検出センサ210と強く電界結合するようになる。
【0129】
したがって、この第1の実施形態の電子ペン1は、細型化された場合であっても、位置検出センサ210と強く電界結合することができ、位置検出装置200においては、電子ペン1による指示位置の検出を感度良く検出することができるようになる。しかも、この第1の実施形態の電子ペン1の電子ペン本体部3では、周辺電極33で位置検出装置200からの信号を受信して、その受信した信号により指示されるタイミングで、電子ペン本体部3が信号の送出を開始する。これにより、位置検出装置は、電子ペン1の電子ペン本体部3からの信号の送出を予測しながら、電子ペン本体部3からの信号の受信待ちをすることができ、電磁誘導方式に比べて結合強度が小さい電界結合であっても、良好な動作を実現することができる。
【0130】
そして、上述した第1の実施形態では、電子ペン本体部3を、市販のボールペンの替え芯と互換性を取れる構成とした。これにより、電子ペン1のペン筐体2に、電子ペン本体部3の代わりに、市販のボールペンの替え芯を装着して、使用することができる。
【0131】
[第2の実施形態]
この第2の実施形態の電子ペンは、第1の実施形態の変形例である。上述した第1の実施形態では、電子ペン本体部3を電子ペン1のペン筐体2内に1本のみを収納するようにした。この第2の実施形態では、電子ペンのペン筐体内に複数本の電子ペン本体部を収納させ、ノック機構により、その複数本の電子ペン本体部の内の1本を選択して、その選択した電子ペン本体部のペン先部の先端を、筐体のペン先側の開口から突出させて使用するようにする。
【0132】
上述したように、第1の実施形態の電子ペン1の電子ペン本体部3は、ボールペンの替え芯6と互換性を取れる構成を備えるようにされている。市販のボールペンとしては、インク色の異なる替え芯を装着した多色ボールペンが存在する。この第2の実施形態は、電子ペン本体部3を、この多色ボールペンの筐体と同様の構成の筐体に収納することで構成される電子ペンを提供するものである。
【0133】
図9は、この第2の実施形態の電子ペン1Mの外観を示す構成図である。この
図9の例も、電子ペン1Mのペン筐体2Mが透明の合成樹脂で構成されていて、その内部が透けて見える状態として示している。
【0134】
電子ペン1Mのペン筐体2Mは、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構とほぼ同様の構成を備えている。ただし、第1の実施形態の電子ペン1のペン筐体2及びノックカム機構部4と同様に、ペン筐体2Mに充電用電極2Md及び2Meが設けられる構成と、ノック機構の、電子ペン本体部3を嵌合させる嵌合部の構成とが、市販のノック式の多色ボールペンの筐体及びノック機構とは異なる。なお、
図9の例では、ペン筐体2M内には、3本の電子ペン本体部3BK,3R,3Eが収納されている。
【0135】
この電子ペン本体部3BK,3R,3Eは、多色ボールペンの替え芯と同寸法に構成されている点を除けば、外形的には、第1の実施形態の電子ペン本体部3と同様に構成される。ただし、この第2の実施形態の場合の電子ペン本体部3BK,3R,3Eにおいては、電子回路部品が配設される本体筐体30内には、前述した信号発信回路の他、自身の識別情報を位置検出装置に送信する機能を実現するためのIC及びその周辺回路が設けられる。電子ペン本体部3BK,3R,3Eのその他の構成は、第1の実施形態の電子ペン本体部3と同様とされる。
【0136】
そして、電子ペン1Mのノック機構には、電子ペン本体部3BK,3R,3Eのそれぞれが嵌合されるノック棒42BK,42R,42Eが備えられている。このノック棒42BK,42R,42Eに設けられる嵌合部は、第1の実施形態におけるノックカム機構部4の嵌合部43aと同様の構成とされている。
【0137】
ノック棒42BK,42R,42Eのいずれかが、ペン先側にスライド移動されることで、電子ペン本体部3BK,3R,3Eのいずれかの芯体35の先端部35a及び周辺電極33の一部が突出して、位置検出装置の位置検出センサと電界結合するようにされる。
【0138】
そして、この実施形態の場合、電子ペン本体部3BK,3R,3Eと共に使用される位置検出装置は、電子ペン本体部3BK,3R,3Eのそれぞれから送信されてくる識別情報を受信して、判別する機能を備える。すなわち、この実施形態の場合の位置検出装置は、電子ペン本体部3BK,3R,3Eの違いを判別して、電子ペン本体部3BK,3R,3Eのそれぞれに割り当てられた機能を実現するようにする。
【0139】
この例では、例えば、電子ペン本体部3BKは、その指示位置に応じて表示する筆記軌跡(文字や図形)を黒色で表す機能を割り当てられ、電子ペン本体部3Rは、その指示位置に応じて表示する筆記軌跡を赤色で表す機能を割り当てられ、電子ペン本体部3Eは、その指示位置に応じて、先に指示入力された筆記軌跡を消去する機能を割り当てられる。
【0140】
位置検出装置は、電子ペン本体部3BK,3R,3Eのそれぞれから送信される信号に含まれる識別情報を認識する。そして、位置検出装置は、検出した電子ペン本体部3BK,3R,3Eのそれぞれにより指示された位置の座標情報に、識別情報に応じた筆記軌跡の色の情報や消去の情報を付加して、表示画面を備えるパーソナルコンピュータなどに供給する。なお、電子ペン本体部に割り当てられる機能は、この例のような指示位置に応じた軌跡の表示色のみではなく、軌跡の太さや、実線、点線、一点鎖線などの表示する線の種別などであってもよい。
【0141】
なお、第2の実施形態の電子ペン1Mの場合には、ペン筐体2M内に複数の電子ペン本体部3を収納するので、それぞれの電子ペン本体部3の軸心方向は、ペン筐体2Mの開口2Maからずれている。このため、複数の電子ペン本体部3の内の一つのペン先部を、ノック機構を用いて、ペン筐体2Mの開口2Maから繰り出させて突出させるようにしたときに、押し出される電子ペン本体部3は、ペン筐体2Mの嵌合部に対して、若干屈曲する。
【0142】
しかし、この実施形態の電子ペン本体部3の本体筒状部31は、樹脂パイプ部31bを備えているので、この樹脂パイプ部31bの弾性により、電子ペン本体部3の先端部の繰り出し時の電子ペン本体部3の屈曲に対応することができる。樹脂パイプ部31bの軸心方向の長さは、この第2の実施形態のような多色ボールペンの筐体の機構に対応する場合には、電子ペン本体部3の先端部の繰り出し時の屈曲を、樹脂パイプ部31bで良好に吸収できる長さに調整すると良い。
【0143】
なお、この第2の実施形態では、3個のノック棒42BK,42R,42Eの嵌合部の全てを、電子ペン本体部3を嵌合させることができる、導体を備える構成としたが、複数個のノック棒の少なくとも一つを、電子ペン本体部3用として、その嵌合部を導体を備える構成のものとし、他は導体を備えないボールペンの替え芯用の構成としてもよい。
【0144】
また、第2の実施形態は、3個のノック棒を備える例であったが、ノック棒は2個でもよいし、4個以上であってもよい。
【0145】
[第3の実施形態]
この第3の実施形態の電子ペン本体部3Bは、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態の電子ペン本体部3と、電子ペンのペン筐体と嵌合する部分の構成が異なり、その他は同様に構成されている。したがって、この第3の実施形態の電子ペン本体部3Bが嵌合される電子ペン1Bのペン筐体2Bに設けられる嵌合部の構成も、上述した第1の実施形態及び第2の実施形態と異なる。
【0146】
図10は、この第3の実施形態の電子ペン本体部3Bの構成例を示す図である。
図10(A)は、この実施形態の電子ペン本体部3Bの第1の例であり、また、
図10(C)は、この実施形態の電子ペン本体部3Bの第2の例を示している。ここで、第1の例と第2の例とでは、第3の実施形態の電子ペン1Bのペン筐体2Bの嵌合部と嵌合する部分の構成が異なるのみで、他の部分は、ほぼ同一の構成となっている。以下の説明において、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態の電子ペン本体部3と同様の部分には、同一参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0147】
また、
図11(A)は、この第3の実施形態の電子ペン本体部3Bが装着されている第3の実施形態の電子ペン1Bの構成例を示すものである。この
図11(A)は、第3の実施形態の電子ペン1Bにおいて、電子ペン本体部3Bのペン先側を、ペン筐体2Bの開口から突出させている状態を示す図であり、前述の第1の実施形態の電子ペン1についての
図1(B)に示したものに対応する図である。
【0148】
この第3の実施形態の電子ペン1Bのペン筐体2Bにおいては、
図11に示すように、この第3の実施形態の電子ペン本体部3Bが嵌合される嵌合部43apが設けられると共に、ペン筐体2Bの側面に、サイドスイッチ2Sが設けられ、また、使用者が使用時に把持する位置に導体帯2fが設け
られている点が、第1の実施形態の電子ペン1とは異なり、その他は同様である。サイドスイッチ2Sは、押し釦スイッチやスライドスイッチの構成であり、電子ペンにおいては周知のものであるので、ここでは、その詳細な構造の例については省略する。
【0149】
この第3の実施形態の電子ペン1Bにおいては、サイドスイッチ2Sの操作情報を、電子ペン本体部3Bに対して、嵌合部43apを通じて伝達する。この第3の実施形態の電子ペン本体部3Bは、位置検出用信号及び筆圧情報に加えて、このサイドスイッチ2Sの操作情報を、位置検出装置に送出する。位置検出装置には、このサイドスイッチ2Sの操作情報に対応する機能が設定されており、電子ペン本体部3Bから受信したサイドスイッチ2Sの操作情報に応じて、設定されている機能に応じた処理を行う。
【0150】
また、導体帯2fは、例えば導電ゴム等の導電材料からなる筒状体からなるもので、ペン筐体2の軸心方向の一部の外周を覆うように設けられている。この第3の実施形態では、嵌合部43apを通じて、電子ペン本体部3Bのアース電極に接続されるように構成されている。使用者が使用時に、この導体帯2fの部分を把持することで、当該導体帯2f及び、これに接続される電子ペン本体部3Bのアース電極(本体筒状部31の金属パイプ部31aも接続されている)は、使用者の人体を通じて、大地に接続(接地)される。
【0151】
この実施形態の電子ペン本体部3Bにおいても、
図10(A)及び(C)に示すように、本体筒状部31のペン先側に、筒状結合部材32を介して周辺電極33が結合されて構成された電子ペン本体部3Bの本体筐体30のペン先側には、フロントキャップ34が装着されると共に、そのフロントキャップ34の開口を通じて、芯体35が挿入されて装着される。本体筐体30の中空部には、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態の電子ペン本体部3と同様に、芯体保持部材7、筆圧検出部8、信号発信回路が搭載されるプリント基板9、電源電圧供給用の蓄電素子の例としてのコンデンサ10が軸心方向に並べられて収納されている。
【0152】
この第3の実施形態の電子ペン本体部3Bにおいても、本体筒状部31は、金属パイプ部31aと、樹脂パイプ部31bとが結合されて構成されている。そして、樹脂パイプ部31bの後端部に、電子ペン1Bのペン筐体2B内に設けられている嵌合部43apに嵌合されるコネクタ、この例ではコネクタプラグ50が設けられる。
【0153】
このコネクタプラグ50は、電子ペン本体部3B内に収納されているコンデンサ10及びプリント基板9に形成されている電子回路に電気的に接続されていると共に、互いに絶縁されている複数個の端子部、この例では、5個の端子部51a,52a,53a,54a,55aを備える。
【0154】
図10(A)の第1の例の電子ペン本体部3Bにおいては、コネクタプラグ50の5個の端子部51a,52a,53a,54a,55aは、以下のように構成されている。すなわち、この例においては、端子部51aが、中心の心棒を構成する導体金属で構成される。そして、コネクタプラグ50は、
図10(A)の例では、この端子部51aの棒状の導体金属に対して、それぞれの内壁面に絶縁層が形成されている円筒状の端子部52a,53a,54a,55aが同心円状に組合されて構成されている。
【0155】
この場合に、中心の心棒を構成する導体金属の端子部51aが軸心方向の先端部とされて、軸心方向に所定長さだけその環状周面及び先端が露出するようにされると共に、円筒状の端子部52a,53a,54a,55aは、それぞれが、軸心方向に所定長さだけその環状周面が露出するようにされる。すなわち、コネクタプラグ50の5個の端子部51a,52a,53a,54a,55aは、軸心方向の異なる位置に円環状の導体接触部が露出する状態となっている。なお、端子部51aは、円柱状形状であるが、その環状周側面及び先端部が導体接触部を構成する。
【0156】
このコネクタプラグ50は、電子ペン1Bのペン筐体2Bの中空内に配置されている回転子43に設けられている嵌合部43apに形成されているコネクタジャック90の嵌合凹部に挿入されると、
図10(B)に示すように、コネクタジャック90に設けられている5個の接点端子91,92,93,94,95のそれぞれに弾性的に接続される状態となる。5個の接点端子91,92,93,94,95のそれぞれは、導電性の弾性金属からなり、ペン筐体2Bに設けられている充電用電極2d,2e,サイドスイッチ2Sおよび導体帯2fのそれぞれに電気的に接続されている(
図11(B)参照)。
【0157】
したがって、コネクタプラグ50が、コネクタジャック90に挿入されて結合されることで、電子ペン本体部3Bの内部の電子回路部品と、電子ペン1Bのペン筐体2Bに配置されている電子回路部品とが、電気的に接続される。
図11(B)は、コネクタプラグ50がコネクタジャック90に挿入されて結合されることで、電子ペン本体部3Bの内部の電子回路部品と電気的に接続される、電子ペン1Bのペン筐体2Bに配置されている電子回路部品の例を、模式的に示す図である。
【0158】
この
図11(B)の例においては、コネクタプラグ50の端子部51a,52a,53a,54a,55aは、それぞれは、コネクタジャック90に設けられている5個の接点端子91,92,93,94,95(
図11(B)では、コネクタジャック90の接点端子の図示は省略)を通じて、充電用電極2e,2d、サイドスイッチ2Sの両端2Sa及び2Sb、導体帯2fのそれぞれに電気的に接続されている。
【0159】
このとき、コネクタプラグ50の端子部51a,52a,53a,54a,55aの円環状の導体接触部が、コネクタジャック90の接点端子91,92,93,94,95のそれぞれと接続されるので、電子ペン本体部3Bが、軸心方向の中心線を中心として回転をしても、電気的な接続は常に保たれていて、電気的な非接触を回避することができる。
【0160】
図10(C)の電子ペン本体部3Bの第2の例においては、コネクタプラグ50の5個の端子部51b,52b,53b,54b,55bは、以下のように構成されている。この例のコネクタプラグ50は、オーディオ用のピンプラグ(例えばノイズキャンセル機能付の5極のピンプラグ)と同様の構成を有するもので、この例においては、5個の端子部51b,52b,53b,54b,55bは、軸心方向に異なる位置において、同一の径の円環状の導体接触部が露出する状態となっている。
【0161】
すなわち、5個の端子部51b,52b,53b,54b,55bの内の先端の端子部51bはチップ端子とされ、中間の3個の端子部52b,53b,54bは、それぞれ絶縁リング56a,56b,56c,56dにより、他の端子部と絶縁されているリング端子とされ、電子ペン本体部3Bの根元側の端子部55bはスリーブ端子とされている。
【0162】
この
図10(C)の電子ペン本体部3Bのコネクタプラグ50と結合されるコネクタジャック90も、
図10(B)と同様に、5個の端子部51b,52b,53b,54b,55bの円環状の導体接触部のそれぞれに接触して電気的な接続を構成する5個の接点端子を備える。したがって、この
図10(C)に示した第2の例の電子ペン本体部3Bのコネクタプラグ50とコネクタジャック90とが結合される場合にも、第1の例と同様となる。
【0163】
なお、上述の例では、電子ペン本体部3Bの本体筒状部31のペン先側とは反対側の後端部にコネクタプラグを設けると共に、ペン筐体2Bの嵌合部43apにコネクタジャックを設ける構成としたが、電子ペン本体部3Bの本体筒状部31のペン先側とは反対側の後端部にコネクタジャックを設けると共に、ペン筐体2Bの嵌合部43apにコネクタプラグを設ける構成としてもよい。
【0164】
なお、この第3の実施形態におけるコネクタの構造は、第2の実施形態の多色ボールペンの場合にも適用可能であることが言うまでもない。その場合に、サイドスイッチは、ペン筐体の複数個の嵌合部のそれぞれに嵌合される複数個の電子ペン本体部のそれぞれに対応して設けてもよいし、複数個の電子ペン本体部で共用する1個としてもよい。ペン筐体の複数個の嵌合部の一つを電子ペン本体部用とし、他はボールペンの替え芯用の構成とする場合には、その一つの電子ペン本体部用として1個のサイドスイッチを設ければよいことは言うまでもない。
【0165】
[他の実施形態]
図12に、電子ペン本体部の他の実施形態を示す。
図12(A)は、上述した第1の実施形態の電子ペン本体部3の変形例を示すもので、この例は、第1の実施形態と同様に、ボールペンの替え芯6との互換性をとれるように構成されている例である。そこで、この実施形態の電子ペン本体部3Cにおいては、第1の実施形態と同様の構成部分については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0166】
この実施形態の電子ペン本体部3Cにおいては、第1の実施形態の電子ペン本体部3の周辺電極33とは形状が異なる周辺電極33Cを用いる。すなわち、
図12(A)に示すように、この実施形態の電子ペン本体部3Cの周辺電極33Cは、外径が軸心方向に一定である筒状形状とされ、かつ、その外径が、電子ペンのペン筐体2の開口2bの径よりも小さい前記径R1(
図2参照)とされている。
【0167】
このため、この実施形態の電子ペン本体部3Cにおいては、周辺電極33Cの構成が、第1の実施形態の電子ペン本体部3とは異なることから、本体筒状部31に対して周辺電極33Cを結合する筒状結合部材32Cは、周辺電極33Cの構成に合わせて、当該周辺電極33Cを本体筒状部31にリング状鍔部32CFを介して結合することができるように構成されている。また、フロントキャップ34Cも、周辺電極33Cの構成に合わせて変更されて構成されている。その他は、第1の実施形態の電子ペン本体部3と同様の構成とされる。
【0168】
この
図12(A)の例の電子ペン本体部3Cも、電子ペン1のペン筐体2に収納されて、嵌合部43aに、本体筒状部31の樹脂パイプ部31b側を嵌合させることができる。そして、ノックカム機構部4のノック棒42を押下することで、電子ペン本体部3Cのペン先側の、芯体
35の先端部35a、フロントキャップ34C及び周辺電極33Cのペン先側の一部を、開口2bから突出させる状態とすることができる。
【0169】
したがって、この
図12(A)の例の電子ペン本体部3Cにおいても、第1の実施形態の電子ペン本体部3と同様の作用効果を得ることができ、使用時には、
図10(A)において点線で示す電子ペンの筐体2Cの開口から、芯体35と、フロントキャップ34Cと、周辺電極33Cのペン先側の一部が外部に突出する。この場合に、筐体2Cの開口の部分では、周辺電極33Cの一定の外径の円筒状部が位置するようになるので、この周辺電極33Cの円筒状部の外径を調整することで、筐体2Cの開口で、電子ペン本体部3Cのペン先側が、がたつくことがないようにすることが容易にできる。
【0170】
次に、
図12(B)の例も、上述した第1の実施形態の電子ペン本体部3の変形例を示すものである、この実施形態の電子ペン本体部3Dの本体筒状部31D及び筒状結合部材32Dの部分が、第1の実施形態の電子ペン本体部3とは異なり、その他の部分は同様の構成とされる。そこで、この実施形態の電子ペン本体部3Dにおいても、第1の実施形態と同様の構成部分については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0171】
この実施形態の電子ペン本体部3Dの本体筒状部31Dは、第1の実施形態の電子ペン本体部3の本体筒状部31の外径R2よりも大きい外径R3を備える。そして、この実施形態の電子ペン本体部3Dの本体筒状部31Dの内径も、第1の実施形態の電子ペン本体部3の本体筒状部31の内径よりも大きな径とされている。
【0172】
このため、この実施形態の電子ペン本体部3Dにおいては、本体筒状部31Dの構成が、第1の実施形態の電子ペン本体部3とは異なることから、本体筒状部31Dに対して周辺電極33を結合する筒状結合部材32Dは、本体筒状部31Dの構成に合わせて、周辺電極33を本体筒状部31Dにリング状鍔部32DFを介して結合することができるように構成されている。
【0173】
このように、この実施形態の電子ペン本体部3Dの本体筒状部31Dは、大きなスペースの中空部を備える。そして、この実施形態の電子ペン本体部3Dにおいては、この本体筒状部31Dの大きな中空部のスペースを利用して、第1の実施形態の電子ペン本体部3で用いた蓄電素子としてのコンデンサ10の代わりに、当該中空部内に、
図12(B)に示すように、一次電池(バッテリー)10BTを収納するように構成する。本体筒状部31D内のその他の電子回路部品は、第1の実施形態と同様にして、当該本体筒状部31D内に収納されており、必要な各部への電源電圧が、一次電池10BTから供給される。
【0174】
したがって、この実施形態の電子ペン本体部3Dにおいては、外部からコンデンサ10を充電するための構成が不要となっている。本体筒状部31Dは、この例では、金属パイプで構成されており、そのペン先側とは反対側の後端部には、閉塞キャップ31Deが着脱可能に装着されている。この実施形態の電子ペン本体部3Dでは、閉塞キャップ31Deを外して、本体筒状部31Dに収納されている一次電池10BTの交換が可能に構成されている。なお、本体筒状部31Dは、上述の実施形態と同様に、金属パイプ部と、樹脂パイプ部とを結合させた構成としても勿論良い。
【0175】
この実施形態の電子ペン本体部3Dを収納する電子ペンの筐体は、上述の実施形態の電子ペンの筐体とは構成が異なる。すなわち、この電子ペン本体部3D用の電子ペンの筐体として、上述の実施形態と同様に、ノックカム機構やノック機構を備えるものを用いる場合であっても、当該電子ペンの筐体の、電子ペン本体部3Dと嵌合する嵌合部には、電気的な構成を設ける必要はない。ただし、当該筐体のペン先側には、径R1よりも大きな径の開口を備え、使用状態においては、電子ペン本体部3Dのペン先側の、芯体35の先端部35a、フロントキャップ34及び周辺電極33のペン先側の一部が、その筐体の開口から外部に突出するようにされるのは、上述の実施形態と同様である。
【0176】
また、ボールペンの替え芯としては、
図2(A)に示したようなインク収納部が細型の樹脂パイプからなるもの限らず、種々のタイプのものが知られており、この例の電子ペン本体部3Dの本体筒状部31Dのように、インク収納部が太型のカートリッジタイプのものがある。この実施形態の電子ペン本体部3Dは、そのようなカートリッジタイプのボールペンの筐体に装着することも可能である。
【0177】
なお、この実施形態の電子ペン本体部3Dのように本体筒状部31Dを太型に構成する場合においても、一次電池10BTを本体筒状部31Dの中空部に設ける代わりに、二次電池や、コンデンサなどの蓄電素子を設けるようにすると共に、本体筒状部31Dの後端側の構成を、第1の実施形態の電子ペン本体部3と同様にしたり、第3の実施形態の電子ペン本体部3Bと同様に構成してもよい。
【0178】
この
図12(B)の例の電子ペン本体部3Cを用いた電子ペンにおいても、第1の実施形態の電子ペン1と同様の作用効果を得ることができ、使用時には、
図12(B)において点線で示す電子ペンの筐体2Dの開口から、芯体35と、フロントキャップ34と、周辺電極33のペン先側のテーパー部の一部が外部に突出する。
【0179】
図12(C)は、
図12(A)の電子ペン本体部3Cの変形例である。この
図12(C)の例の電子ペン本体部3C´の周辺電極33C´は、ペン先側がテーパー部33C´bとされている点が、
図12(A)の例の電子ペン本体部3の周辺電極33Cと異なる。すなわち、この例の電子ペン本体部3C´の周辺電極33C´は、その外径が電子ペンのペン筐体2の開口2bの径R0(
図1参照)よりも小さい径R1とされている円筒形状部33C´aのペン先側にテーパー部33C´bが形成された形状とされている。この例では、フロントキャップ34C´が、周辺電極33C´のテーパー部33C´bの先端部に設け
られている。その他は、
図12(A)の例の電子ペン本体部3Cと同様に構成されている。
【0180】
この
図12(C)の例の電子ペン本体部3C´の場合においても、使用時には、電子ペンの筐体2Cの開口から、芯体35と、フロントキャップ34C´と、周辺電極33C´のペン先側の一部が外部に突出する。この場合に、外部に突出する周辺電極33C´の一部は、テーパー部33C´bだけでなく、円筒形状部33C´aの一部も含み、筐体2Cの開口に位置するのは、円筒形状部33C´aとなるので、
図12(A)の例と同様の作用効果を奏する。
【0181】
[その他の実施形態又は変形例]
以上の実施形態の説明においては、電子ペン本体部は、筆記具のボールペンの替え芯と互換性をとれるように構成することを企図したが、専用の電子ペン用として構成することもできることは言うまでもない。
【0182】
また、上述の実施形態では、電子ペン本体部をノック式に筐体内に出し入れするように構成したが、このようなノック式のものに限られるものではなく、単純に、電子ペン本体部をペン筐体内に収納した形態の電子ペンであってもよい。その場合には、ペン筐体の開口から電子ペン本体部のペン先側が常に突出する状態となるが、その突出しているペン先側を保護するようにキャップをねじ込み式あるいは圧入式にペン筐体に係合させ、電子ペン本体部のペン先側をキャップで覆うように構成してもよい。
【0183】
また、周辺電極は、筒状の導体により構成するようにしたが、円周方向に複数個に分割した導体により筒状に構成したものとしてもよい。
【0184】
また、芯体35は、導電性金属で構成するようにしたが、導電性を有するものであればよいので、例えば、導体粉を混入した硬質の樹脂で構成するようにしてもよい。
【0185】
なお、電子ペン本体部の本体筒状部は、金属パイプ部と、樹脂パイプ部とを結合する構成ではなく、金属パイプ単体で構成したり、樹脂パイプ単体で構成してもよい。ただし、金属パイプ単体で構成する場合には、筐体に設けられる電子部品と電気的な接続が必要があるときには、樹脂などの絶縁物を介して、電気的な接続用の導体が形成された部材が、本体筒状部のペン先側と反対側の後端部に設けられる。
【符号の説明】
【0186】
1…電子ペン、2…電子ペンの筐体、3…電子ペン本体部、4…ノックカム機構、7…芯体保持部材、8…筆圧検出部、9…プリント基板、10…蓄電用のコンデンサ、10BT…一次電池、30…電子ペン本体部の筐体、31…本体筒状部、32…筒状結合部材、33…周辺電極、34…フロントキャップ、35…中心電極(芯体)