(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】歯科用口腔内装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61C 7/08 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
A61C7/08
(21)【出願番号】P 2021558421
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020042974
(87)【国際公開番号】W WO2021100752
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2019208222
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301069384
【氏名又は名称】クラレノリタケデンタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 美咲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 憲司
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/118200(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/068032(WO,A1)
【文献】特表2008-531234(JP,A)
【文献】特開2005-342133(JP,A)
【文献】特表2020-503919(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0091060(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内に装着する歯科用口腔内装置であって、
樹脂製の歯部を備え、
前記歯部の少なくとも一部は、孔を有する単位領域が略規則的に配置されてメッシュ状に形成され、
前記単位領域は、
中実状又は一部に孔を有する側壁によって筒状に形成され、上下方向に貫通した前記孔を有する
ことを特徴とする、歯科用口腔内装置。
【請求項2】
前記単位領域の断面形状は、平面充填できる図形で形成されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の歯科用口腔内装置。
【請求項3】
前記単位領域の断面形状は、平面充填できる多角形で形成されている
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯科用口腔内装置。
【請求項4】
前記単位領域の断面形状は、平面充填できる正多角形で形成されている
ことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の歯科用口腔内装置。
【請求項5】
前記単位領域の断面形状は、一種類で平面充填できる多角形で形成されている
ことを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の歯科用口腔内装置。
【請求項6】
前記単位領域の断面形状は、一種類で平面充填できる正多角形で形成されている
ことを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載の歯科用口腔内装置。
【請求項7】
請求項1に記載の歯科用口腔内装置の製造方法であって、
前記歯科用口腔内装置の3次元データを生成する工程と、
前記3次元データに基づき、前記歯科用口腔内装置を3次元造形装置によって造形する工程と、を含み、
前記工程を実行することで樹脂製の歯部を備え、
前記歯部の少なくとも一部は、孔を有する単位領域が略規則的に配置されてメッシュ状に形成され、
前記単位領域は、
中実状又は一部に孔を有する側壁によって筒状に形成され、上下方向に貫通した前記孔を有する前記歯科用口腔内装置を得る
ことを特徴とする、歯科用口腔内装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内に装着する歯科用口腔内装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯部に孔を有する歯科用口腔内装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、患者によって装着されたときに、患者の歯群の咬合面を実質的に露出させるように構成された歯科用装置が開示されている。これにより、歯間の空気及び唾液の流入による衛生性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の歯科用装置は、咬合面を露出させるために大きな孔を形成しており、必要な強度が確保できない、という問題がある。頬側の歯頚部を被覆する樹脂と舌側もしくは口蓋側の歯頚部を被覆する樹脂が咬合面で連結できていないと、両者の間で張力が生じにくく、強度が損なわれてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、衛生性を改善しても必要な強度を確保できる歯科用口腔内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の歯科用口腔内装置は、口腔内に装着する歯科用口腔内装置であって、樹脂製の歯部を備え、前記歯部の少なくとも一部は、メッシュ状に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明の歯科用口腔内装置は、衛生性を改善しても必要な強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の歯列矯正用アライナーと上顎を示す分解斜視図である。
【
図2】実施例1の歯列矯正用アライナーを口腔内に装着した状態を示す前歯における断面図である。
【
図3】実施例1の歯列矯正用アライナーを口腔内に装着した状態を示す臼歯における断面図である。
【
図4】実施例1の歯部の単位領域を示す斜視図である。
【
図5】実施例1の変形例の単位領域を示す斜視図である。
【
図6】実施例1の変形例の単位領域を示す斜視図である。
【
図7】実施例2の歯部の単位領域を示す斜視図である。
【
図8】実施例3の歯列矯正用アライナーと上顎を示す分解斜視図である。
【
図9】実施例3の矯正対象の歯を覆う歯部を示す斜視図である。
【
図10】別の実施例の単位領域を示す斜視図である。
【
図11A】別の実施例の床部の単位領域を示す平面図である。
【
図11B】別の実施例の床部の単位領域を示す平面図である。
【
図12A】別の実施例の床部の単位領域を示す平面図である。
【
図12B】別の実施例の床部の単位領域を示す平面図である。
【
図13A】別の実施例の床部の単位領域を示す平面図である。
【
図13B】別の実施例の床部の単位領域を示す平面図である。
【
図14】別の実施例の床部の単位領域を示す平面図である。
【
図15】別の実施例の床部の単位領域を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明による歯科用口腔内装置を実現する実施形態を、図面に示す実施例1~3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1における歯科用口腔内装置は、上顎の歯を覆うように口腔内に装着される歯列矯正用アライナーに適用される。
【0012】
[歯列矯正用アライナーの構成]
図1は、実施例1の歯列矯正用アライナーと上顎を示す分解斜視図である。
図2は、実施例1の歯列矯正用アライナーを口腔内に装着した状態を示す前歯における断面図である。
図3は、実施例1の歯列矯正用アライナーを口腔内に装着した状態を示す臼歯における断面図である。
図4は、実施例1の歯部の単位領域を示す斜視図である。
図5は、実施例1の変形例の単位領域を示す斜視図である。
図6は、実施例1の変形例の単位領域を示す斜視図である。以下、実施例1の歯列矯正用アライナーの構成を説明する。
【0013】
歯列矯正用アライナー20は、3次元データに基づいて、3次元造形装置によって形成される。歯列矯正用アライナー20は、矯正前の歯10に装着されて、歯10を矯正目標位置に矯正する。
【0014】
図1の紙面上図に示すように、歯10は、歯10の根元を取り巻く歯肉15によって支持される。歯10は、前歯11と臼歯12とで構成される。
【0015】
歯列矯正用アライナー20は、前歯11を覆う歯部としての前歯部21と、臼歯12を覆う歯部としての臼歯部22と、を備える。
【0016】
図1の紙面下図及び
図2に示すように、前歯部21は、前歯11の先端11aを覆う頂部としての先端部21aと、前歯11の頬側面11bを覆う側部としての頬側部21bと、前歯11の口蓋側面11cを覆う側部としての口蓋側部21cと、で凹溝状に形成される。
【0017】
図3に示すように、臼歯部22は、臼歯12の咬合面12aを覆う頂部としての咬合部22aと、臼歯12の頬側面12bを覆う側部としての頬側部22bと、臼歯12の口蓋側面12cを覆う側部としての口蓋側部22cと、で凹溝状に形成される。
【0018】
図1及び
図4に示すように、前歯部21と臼歯部22は、孔31bを有する単位領域31が略規則的に配置されてメッシュ状に形成される。メッシュ状とは、規則的な、あるいは少なくとも一部がランダムな立体網目構造を指す。なお、
図1では、一部の単位領域31を拡大して示している。実施例1では、
前歯部21及び臼歯部22の全体がメッシュ状に形成されているが、
前歯部21及び臼歯部22の一部がメッシュ状に形成されていてもよい。
図4~
図6に、単位領域31の一例を示す。
【0019】
(単位領域が正六角形)
図4に示すように、単位領域31の断面形状は、本実施形態では一種類で平面充填できる正多角形である正六角形で形成される。単位領域31は、頂部においては、平面視で正六角形の側壁31aによって筒状に形成され、上下方向に貫通した孔31bを有する。単位領域31は、側部においては、側面視で正六角形の側壁31aによって筒状に形成され、水平方向に貫通した孔31bを有する。
【0020】
単位領域31は、前歯部21において、前歯11の先端11aと、頬側面11bと、口蓋側面11cとに沿うように平面充填される。また、単位領域31は、臼歯部22において、臼歯12の咬合面12aと、頬側面12bと、口蓋側面12cとに沿うように平面充填される。
【0021】
単位領域31の一辺の長さLは、唾液の通過性の面から、例えば、0.1[mm]以上とすることが好ましく、強度を担保する観点から、5.0[mm]以下とすることが好ましい。単位領域31の高さHは、所定の値(例えば、0.05[mm])にすることができる。側壁31aの厚さTは、所定の値(例えば、0.02[mm])にすることができる。長さLに対する厚さTの比L/Tは、1.25~50が好ましく、1.5~40がより好ましく、2.0~30がさらに好ましい。長さLに対する厚さTの比L/Tが1.25以上であることで唾液が通過しやすくなり、長さLに対する厚さTの比L/Tが50以下であることで辺を構成する側壁31aが座屈しにくくなる。
【0022】
(単位領域が正三角形)
図5に示すように、他の例の単位領域31の断面形状は、一種類で平面充填できる正多角形である正三角形で形成されてもよい。単位領域31は、頂部においては、平面視で正三角形の側壁31aによって筒状に形成され、上下方向に貫通した孔31bを有する。単位領域31は、側部においては、側面視で正三角形の側壁31aによって筒状に形成され、水平方向に貫通した孔31bを有する。
【0023】
単位領域31は、前歯部21において、前歯11の先端11aと、頬側面11bと、口蓋側面11cとに沿うように平面充填される。また、単位領域31は、臼歯部22において、臼歯12の咬合面12aと、頬側面12bと、口蓋側面12cとに沿うように平面充填される。
【0024】
単位領域31の一辺の長さLは、唾液の通過性の面から、例えば、0.1[mm]以上とすることが好ましく、強度を担保する観点から、5.0[mm]以下とすることが好ましい。単位領域31の高さHは、所定の値(例えば、0.05[mm])にすることができる。側壁31aの厚さTは、所定の値(例えば、0.02[mm])にすることができる。長さLに対する厚さTの比L/Tは、2.5~100が好ましく、3.0~90がより好ましく、3.5~80がさらに好ましい。長さLに対する厚さTの比L/Tが2.5以上であることで唾液が通過しやすくなり、長さLに対する厚さTの比L/Tが100以下であることで辺を構成する側壁31aが座屈しにくくなる。
【0025】
(単位領域が正四角形)
図6に示すように、さらに異なる例の単位領域31の断面形状は、一種類で平面充填できる正多角形である正四角形で形成されてもよい。単位領域31は、頂部においては、平面視で正四角形の側壁31aによって筒状に形成され、上下方向に貫通した孔31bを有する。単位領域31は、側部においては、側面視で正四角形の側壁31aによって筒状に形成され、水平方向に貫通した孔31bを有する。
【0026】
単位領域31は、前歯部21において、前歯11の先端11aと、頬側面11bと、口蓋側面11cとに沿うように平面充填される。また、単位領域31は、臼歯部22において、臼歯12の咬合面12aと、頬側面12bと、口蓋側面12cとに沿うように平面充填される。
【0027】
単位領域31の一辺の長さLは、唾液の通過性の面から、例えば、0.1[mm]以上とすることが好ましく、強度を担保する観点から、5.0[mm]以下とすることが好ましい。単位領域31の高さHは、所定の値(例えば、0.05[mm])にすることができる。側壁31aの厚さTは、所定の値(例えば、0.02[mm])にすることができる。長さLに対する厚さTの比L/Tは、2.0~80が好ましく、2.5~70がより好ましく、3.0~60がさらに好ましい。長さLに対する厚さTの比L/Tが2.0以上であることで唾液が通過しやすくなり、長さLに対する厚さTの比L/Tが80以下であることで辺を構成する側壁31aが座屈しにくくなる。
【0028】
歯列矯正用アライナー20は、予め3次元ソフトウェアで作成した歯列矯正用アライナー20の3次元データに基づいて、3次元造形装置が紫外線レーザ光を光硬化性樹脂に照射することで積層造形される。光硬化性樹脂は、例えば、(メタ)アクリル系モノマー等のラジカル重合性化合物と、エポキシ化合物等のカチオン重合化合物を含む重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有するものを使用することができる。
【0029】
このように構成された歯列矯正用アライナー20は、上顎の歯10を覆うように装着される。歯列矯正用アライナー20が装着された歯10は、矯正目標位置に矯正される。
【0030】
歯列矯正用アライナー20は、複数用意され、歯10を段階的に、最終矯正目標位置に矯正する。
【0031】
なお、単位領域31の断面形状は、正六角形や、正三角形や、正四角形で形成される態様に限定されず、一種類で平面充填できる正多角形とすることができる。
【0032】
[歯科用口腔内装置の作用]
以下、実施例1の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)の作用を説明する。実施例1の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)は、口腔内に装着する歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)であって、樹脂製の歯部(前歯部21,臼歯部22)を備え、歯部(前歯部21,臼歯部22)の少なくとも一部は、メッシュ状に形成される(
図1)。
【0033】
歯部(前歯部21,臼歯部22)がメッシュ状に形成されることで、所定の強度を確保しつつ、咬合面を露出することができる。そのため、歯間の空気及び唾液の流入による衛生性を改善することができる。また、歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)の装着時の異物感を少なくして、装着性を向上させたり嘔吐感を軽減したりすることができる。
【0034】
また、一般的に歯列矯正用アライナーにおいては、頬側の歯頚部を被覆する樹脂と舌側もしくは口蓋側の歯頚部を被覆する樹脂が連結していることが、矯正力を適正に発揮する上で重要である。頬側の歯頚部を被覆する樹脂と、舌側もしくは口蓋側の歯頚部を被覆する樹脂との何れか一方が、矯正前の歯によって圧迫されて変位しようとするとき、連結部である咬合面を介してもう一方(他方)に引っ張られることで、変位しようとする方向と逆方向の張力が生じる。この張力が矯正力として利用される。一方、歯の切端部に大きな孔があり、連結部が少なくなっている場合は、変位に対して、逆方向へ引っ張る作用が小さく、張力が生じにくい。そのため、矯正力が発揮されにくくなる。実施例1では、メッシュ状の構造を有することで、咬合面における連結部を有するため、矯正力を補いながらも、咬合面を露出することができる。
【0035】
ところで、一般的な歯科用口腔内装置を用いると、咬合面が被覆されるために、副作用として歯の圧下や歯周組織の退縮、咬合の高さの変化、それらに伴う全身の不調感を招く場合がある。実施例1の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)は、患者の歯への接触面積ならびに荷重を低減することができるため、このような症状を緩和することも期待することができる。さらに、歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)を軽量化することができるため、患者の異物感を低減し、自重による歯科用口腔内装置の脱落を抑制することができる。
【0036】
また、実施例1の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)は、歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)を取り外すときに、歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)と歯10との間に空気を入れることができる。そのため、歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)を取り外し易くすることができる。
【0037】
さらに、実施例1の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)は、唾液の通過性が改善されるため口腔内の乾燥を抑制し、乾燥に伴う潰瘍やう蝕の予防、ならびに創傷治癒の促進に有効である。また、メッシュ状に形成されることで歯科用口腔内装置にかかる応力が分散され、しなやかで壊れにくくすることができる。
【0038】
実施例1の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)では、歯部(前歯部21,臼歯部22)の少なくとも一部は、孔31bを有する単位領域31が略規則的に配置されて形成される(
図4~
図6)。
【0039】
これにより、歯部(前歯部21,臼歯部22)にかかる力を等方的に分散させて、応力の集中を防ぐことができる。そのため、塑性変形や破壊を生じさせないようにすることができる。
【0040】
実施例1の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)では、単位領域31の断面形状は、一種類で平面充填できる正多角形で形成されている(
図4~
図6)。
【0041】
これにより、歯部(前歯部21,臼歯部22)を、均一な形状の単位領域31で隙間なく敷き詰めることができる。そのため、所定の強度を確保しつつ、咬合面を露出させて衛生性を改善することができる。
【0042】
実施例1の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)では、単位領域31は、一辺の長さが0.1mm以上である(
図4~
図6)。
【0043】
これにより、歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)を3次元造形装置で製造した際に、単位領域31を形成する孔31bから樹脂を流出し易くして、樹脂溜まり等を回避することができる。
【実施例2】
【0044】
実施例2の歯科用口腔内装置は、歯部の構成が異なる点で、実施例1の歯科用口腔内装置と相違する。
【0045】
[歯科用口腔内装置の構成]
図7は、実施例2の歯部の単位領域を示す斜視図である。以下、実施例2の歯科用口腔内装置の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0046】
図7に示すように、実施例2の歯部(前歯部21,臼歯部22)は、孔131bを有する単位領域131が略規則的に配置されてメッシュ状に形成される。単位領域131は、一種類で空間充填できる多面体である正六面体で形成される。
【0047】
単位領域131は、前歯部21において、前歯11の先端11aと、頬側面11bと、口蓋側面11cとに沿った所定の高さ(厚さ)Hの空間に、空間充填される正六面体で形成される。また、単位領域131は、臼歯部22において、臼歯12の咬合面12aと、頬側面12bと、口蓋側面12cとに沿った所定の高さHの空間に、空間充填される正六面体で形成される。
【0048】
単位領域131は、六面体の辺の部分を構成する枠131cによって、枠状に形成され、各面には、孔131bが形成される。
【0049】
単位領域131は、
図2に示すように、前歯部21において、前歯11の先端11aと、頬側面11bと、口蓋側面11cとに沿った所定の高さHの空間に、空間充填されることで、前歯部21が形成される。単位領域131は、
図3に示すように、臼歯部22において、臼歯12の咬合面12aと、頬側面12bと、口蓋側面12cとに沿った所定の高さHの空間に、空間充填されることで、臼歯部22が形成される。
【0050】
図7に示すように、単位領域131の一辺の長さLは、例えば、0.1[mm]以上5.0[mm]以下とすることができる。枠131cの幅Wは、所定の値(例えば、0.02[mm])にすることができる。長さLに対する幅Wの比L/Wは、2.0~80が好ましく、2.5~70がより好ましく、3.0~60がさらに好ましい。長さLに対する幅Wの比L/Wが2.0以上であることで唾液が通過しやすくなり、長さLに対する幅Wの比L/
Wが80以下であることで辺を構成する枠131cが座屈しにくくなる。
【0051】
なお、単位領域131は、正六面体で形成される態様に限定されず、一種類で空間充填できる多面体、例えば、切頂八面体や菱形十二面体にすることができる。
【0052】
また、単位領域131の辺を構成する枠の形状は、特に限定されないが、枠の長軸を中心として対称的な形状であることが好ましい。具体的には、単位領域131の辺を構成する枠の形状は、円柱、正三角柱、正四角柱、正五角柱、正六角柱、その他任意の正角柱、円錐、正三角錐(正四面体)、正四角錐、その他任意の正角錐等が挙げられる。なかでも、単位領域131の辺を構成する柱の形状は、円柱、正三角柱、正四角柱、正五角柱、正六角柱、その他任意の正角柱がより好ましく、円柱、正三角柱、正四角柱、正六角柱がさらに好ましい。
【0053】
[歯科用口腔内装置の作用]
以下、実施例2の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)の作用を説明する。実施例2の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)では、単位領域131は、一種類で空間充填できる多面体で形成されている(
図7)。
【0054】
これにより、歯部(前歯部21,臼歯部22)を、均一な形状の単位領域131で隙間なく敷き詰めることができる。そのため、所定の強度を確保しつつ、咬合面を露出させて衛生性を改善することができる。
【0055】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0056】
実施例3の歯科用口腔内装置は、歯部の構成が異なる点で、実施例1の歯科用口腔内装置と相違する。
【0057】
[歯科用口腔内装置の構成]
図8は、実施例3の歯列矯正用アライナーと上顎を示す分解斜視図である。
図9は、実施例3の矯正対象の歯10を覆う歯部を示す斜視図である。以下、実施例3の歯科用口腔内装置の構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0058】
図8及び
図9に示すように、矯正対象である臼歯12Aを覆う臼歯部22Aは、孔31bを有する単位領域31が略規則的に配置されてメッシュ状に形成される。臼歯部22A以外の歯列矯正用アライナー20は、中実に形成されてもよい。
【0059】
図9に示すように、臼歯部22Aの側部(頬側部22b,口蓋側部22c)は、臼歯部22Aの咬合部22aより、高い剛性の単位領域で形成される。すなわち、臼歯部22Aの側部(頬側部22b,口蓋側部22c)の単位領域31Aは、臼歯部22Aの頂部(咬合部22a)の単位領域31Bより、高い剛性で形成される。なお、
図9では、一部の単位領域31A,31Bを拡大して示している。
【0060】
例えば、臼歯部22Aの側部(頬側部22b,口蓋側部22c)の単位領域31Aは、臼歯部22Aの頂部(咬合部22a)の単位領域31Bより、小さい形状で形成することで、単位領域31Bよりも高い剛性を持たせることができる。より具体的には、例えば、臼歯部22Aの側部(頬側部22b,口蓋側部22c)の単位領域31Aの辺の長さを0.1[mm]とし、臼歯部22Aの頂部(咬合部22a)の単位領域31Bの辺の長さを0.5[mm]とすることができる。
【0061】
臼歯部22Aの側部(頬側部22b,口蓋側部22c)の単位領域31Aの側壁の厚さを、臼歯部22Aの頂部(咬合部22a)の単位領域31Bの側壁の厚さより、厚くしても、単位領域31Bの剛性を単位領域31Aの剛性よりも高くすることができる。
【0062】
[歯科用口腔内装置の作用]
以下、実施例3の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)の作用を説明する。実施例3の歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)では、矯正対象の歯(臼歯12A)を覆う歯部(臼歯部22A)の側部(頬側部22b,口蓋側部22c)は、歯部(臼歯部22A)の頂部(咬合部22a)より、高い剛性の単位領域で形成されている(
図9)。
【0063】
例えば、歯部(臼歯部22A)の側部(頬側部22b,口蓋側部22c)の単位領域31Aを、歯部(臼歯部22A)の頂部(咬合部22a)の単位領域31Bより小さい形状にすることで、歯部(臼歯部22A)の側部(頬側部22b,口蓋側部22c)の強度を、歯部(臼歯部22A)の頂部(咬合部22a)より高くすることができる。
【0064】
また、例えば、歯部(臼歯部22A)の側部(頬側部22b,口蓋側部22c)の単位領域31Aを、歯部(臼歯部22A)の頂部(咬合部22a)の単位領域31Bより密な形状にすることで、歯部(臼歯部22A)の側部(頬側部22b,口蓋側部22c)の強度を、歯部(臼歯部22A)の頂部(咬合部22a)より高くすることができる。
【0065】
そのため、歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)で歯(臼歯12A)を矯正する際に、歯部(臼歯部22A)の側部(頬側部22b,口蓋側部22c)から強い矯正力を加えることができる。その結果、歯科用口腔内装置(歯列矯正用アライナー20)の歯の矯正力を向上させることができる。
【0066】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0067】
以上、本発明の歯科用口腔内装置を実施例1~3に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更、追加、各実施例の組み合わせ等は許容される。
【0068】
実施例1~3では、3次元造形装置を、紫外線レーザ光によって硬化する光硬化性樹脂を使用した光造形装置を例として示した。しかし、3次元造形装置としては、プロジェクターの光を利用して光硬化性樹脂を硬化させ積層していくプロジェクション方式であってもよいし、液状の光硬化性樹脂を噴射して、紫外線を照射することにより硬化させ積層させるインクジェット方式であってもよいし、熱可塑性樹脂を1層ずつ積み上げていく熱溶解積層方式であってもよいし、粉末状の材料に高出力のレーザ光線をあて焼結させる粉末焼結方式であってもよい。
【0069】
実施例1,3では、歯部(前歯部21,臼歯部22)は、1層の単位領域で形成される例を示した。しかし、歯部(前歯部21,臼歯部22)は、
図10に示すように、2層の単位領域で形成されてもよいし、3層以上の単位領域で形成されてもよい。
【0070】
実施例1,3では、単位領域31の断面形状は、一種類で平面充填できる正多角形とする例を示した。しかし、単位領域の断面形状は、一種類で平面充填できる多角形としてもよい。
【0071】
例えば、一種類で平面充填できる多角形としては、
図11Aに示すような平行四辺形にすることができる。また、一種類で平面充填できる多角形としては、
図11Bに示すような合同な三角形を2つ組み合わせることで平行四辺形にすることもできる。また、一種類で平面充填できる多角形としては、
図12Aに示すような平行六辺形にすることもできる。また、一種類で平面充填できる多角形としては、
図12Bに示すような合同な四角形を2つ組み合わせることで平行六辺形にすることもできる。また、一種類で平面充填できる多角形としては、
図13Aに示すような合同な五角形を2つ組み合わせることで平行六辺形にすることもできる。また、一種類で平面充填できる多角形としては、
図13Bに示すような平面充填可能な五角形とすることもできる。
【0072】
また、二種類以上で平面充填できる多角形としては、アルキメデスの平面充填の形状である正多角形とすることができる。例えば、二種類以上で平面充填できる多角形は、
図14に示すように、正三角形8枚に、正六角形1枚からなる形状とすることができる。
【0073】
平面充填できる多角形は、好ましくは三角形、四角形、五角形、正多角形、平行六辺形のうち1種類以上の組み合わせとすることができる。平面充填できる多角形は、より好ましくは、正多角形、平行四辺形、平行六辺形のうち1種類以上の組み合わせとすることができる。平面充填できる多角形は、さらに好ましくは、正三角形、正四角形、正六角形のうち1種類以上の組み合わせとすることができる。単位領域の対称性が向上することで、与えられた荷重が集中しにくくなり、塑性変形や破壊が生じにくくなる。特に、正三角形、正四角形、正六角形においては、与えられた荷重が等方的に分散するため、塑性変形や破壊が著しく抑制される。
【0074】
すなわち、単位領域の断面形状は、平面充填できる正多角形で形成することができるし、平面充填できる多角形で形成することができるし、平面充填できる図形で形成することができる。
【0075】
実施例2では、単位領域131は、一種類で空間充填できる正六面体(アルキメデスの正四角柱)とする例を示した。しかし、単位領域は、一種類で空間充填できる一様多面体としてもよい。
【0076】
一種類で空間充填できる一様多面体としては、例えば、アルキメデスの正三角柱や、アルキメデスの正六角柱や、切頂八面体や、菱形十二面体等にすることができる。
【0077】
単位領域は、一種類で空間充填できる多面体としてもよい。一種類で空間充填できる多面体としては、例えば、異相双三角柱(ジョンソンの立体26番)等にすることができる。
【0078】
単位領域は、二種類以上で空間充填できる一様多面体としてもよい。二種類以上で空間充填できる一様多面体としては、例えば、正四面体と正八面体からなるものや、正四面体と切頂四面体からなるものや、正八面体と切頂六面体からなるものや、正八面体と立方八面体からなるものや、斜方切頂立方八面体と正八角柱からなるものとすることができる。
【0079】
また、二種類以上で空間充填できる一様多面体としては、例えば、切頂四面体と切頂八面体と立方八面体からなるものや、切頂四面体と切頂六面体と斜方切頂立方八面体からなるものや、正四面体と立方体と斜方立方八面体からなるものや、立方体と立方八面体と斜方立方八面体からなるものや、立方体と切頂八面体と斜方切頂立方八面体からなるものとすることができる。
【0080】
また、二種類以上で空間充填できる一様多面体としては、例えば、立方体と切頂六面体と斜方切頂立方八面体と正八角柱を組み合わせたものや、等面菱形多面体の各種を組み合わせたものとすることもできる。
【0081】
単位領域は、二種類以上で空間充填できる多面体としてもよい。二種類以上で空間充填できる多面体としては、例えば、ジョンソンの立体1番(正四角錐)とジョンソンの立体3番(正三角台塔)とからなるものや、ジョンソンの立体1番(正四角錐)とジョンソンの立体7番(正三角錐柱)とからなるものや、ジョンソンの立体1番とジョンソンの立体27番(同相双三角台塔)とからなるものや、正四面体とジョンソンの立体1番とからなるものや、正四面体とジョンソンの立体4番(正四角台塔)とからなるものや、正四面体とジョンソンの立体8番(正四角錐柱)とからなるものや、正四面体とジョンソンの立体28番(同相双四角台塔)とからなるものや、正八面体とジョンソンの立体3番とからなるものや、正八面体とジョンソンの立体7番(正三角錐柱)とからなるものや、正八面体とジョンソンの立体12番(双三角錐)とからなるものや、切頂四面体とジョンソンの立体12番とからなるものや、切頂六面体とジョンソンの立体1番とからなるものや、立方八面体とジョンソンの立体1番とからなるものとすることができる。
【0082】
また、二種類以上で空間充填できる多面体としては、例えば、正四面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体18番(正三角台塔柱)とからなるものや、正四面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体35番(同相双三角台塔柱)とからなるものや、正四面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体36番(異相双三角台塔柱)とからなるものや、正四面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体15番(双四角錐柱)とからなるものや、正四面体と正六面体とジョンソンの立体28番とからなるものや、正四面体と正八面体とジョンソンの立体15番とからなるものや、正六面体と正十二面体とジョンソンの立体91番(双三日月双丸塔)とからなるものや、正六面体と立方八面体とジョンソンの立体4番とからなるものや、正六面体と立方八面体とジョンソンの立体19番(正四角台塔柱)とからなるものや、正六面体と立方八面体とジョンソンの立体28番とからなるものや、正六面体と正四面体とジョンソンの立体19番とからなるものや、正八面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体3番とからなるものや、正八面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体7番とからなるものとすることができる。
【0083】
また、二種類以上で空間充填できる多面体としては、例えば、正四面体と正六面体と立方八面体と[ジョンソンの立体28番、ジョンソン立体29番(異相双四角台塔)]のいずれかまたは組み合わせからなるものや、正四面体とジョンソンの立体1番と[正六面体、ジョンソンの立体8番、ジョンソンの立体15番]のいずれかまたは組み合わせと[ジョンソンの立体28番、ジョンソン立体29番]のいずれかまたは組み合わせからなるものや、正四面体と正六面体と立方八面体とジョンソンの立体37番(異相双四角台塔柱)からなるものや、正四面体と正六面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体8番からなるものや、正四面体と正八面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体15番からなるものや、正四面体とジョンソンの立体8番とジョンソンの立体15番とジョンソンの立体19番からなるものや、正四面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体28番と[正六面体、ジョンソンの立体8番、ジョンソンの立体15番]のいずれかまたは組み合わせからなるものや、正四面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体37番と[正六面体、ジョンソンの立体8番、ジョンソンの立体15番]のいずれかまたは組み合わせからなるものや、正四面体と正六面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体19番と[ジョンソンの立体8番、ジョンソンの立体15番]のいずれかまたは組み合わせからなるものや、正四面体とジョンソンの立体1番とジョンソンの立体4番と[正六面体、ジョンソンの立体8番、ジョンソンの立体15番]のいずれかまたは組み合わせからなるものとすることができる。
【0084】
空間充填できる多面体は、好ましくは正多面体、半正多面体、正角柱、正反角柱、ジョンソンの立体、のうち1種類以上の組み合わせとすることができる。空間充填できる多面体は、より好ましくは正多面体、立方八面体、正多角柱、菱形十二面体などの等面菱形多面体、平行六面体、切頂八面体、長菱形十二面体などの平行多面体、斜方立方八面体、斜方切頂立方八面体、のうち1種類以上の組み合わせとすることができる。空間充填できる多面体は、さらに好ましくは1種類以上の正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正三角柱、正四角柱(直方体)、正六角柱、切頂八面体、菱形十二面体、長菱形十二面体の組み合わせとすることができる。
【0085】
単位領域の対称性が向上することで、与えられた荷重が集中しにくくなり、塑性変形や破壊が生じにくくなる。特に、正四面体、正六面体(立方体)、正八面体、正三角柱、正四角柱(直方体)、正六角柱、切頂八面体、菱形十二面体、長菱形十二面体においては、与えられた荷重が等方的に分散するため、塑性変形や破壊が著しく抑制される。
【0086】
すなわち、単位領域は、空間充填できる一様多面体で形成することができるし、空間充填できる多面体で形成することができるし、空間充填できる立体で形成することができる。
【0087】
実施例1,2では、歯部(前歯部21,臼歯部22)の全体が、孔31b,131bを有する単位領域31,131が略規則的に配置されてメッシュ状に形成される例を示した。しかし、歯部の一部を、孔を有する単位領域が略規則的に配置されてメッシュ状に形成されてもよい。例えば、臼歯部だけが孔を有する単位領域が略規則的に配置されてメッシュ状に形成されることで、噛み合わせ時に前歯部より力がかかる臼歯部を、前歯部より高い剛性にすることができる。また、この孔の形状は、特に限定されないが、対称性の高い形状であることが好ましい。具体的には、孔の形状は、断面が円、正三角形、正四角形、正五角形、正六角形、その他正多角形となる形状とすることができる。孔の形状は、断面が円、正三角形、正四角形、正六角形であるものがより好ましい。孔の形状は、破断の起点となるノッチ部を形成しない点から断面が円となる形状がさらに好ましい。
【0088】
実施例1~3では、単位領域を構成する辺が直線である例を示した。しかし、本発明の効果を損なわない範囲で単位領域を構成する辺が曲線であっても良い。例えば、単位領域の辺の長さLに対して曲率半径Rは0.3倍以上であることが好ましく、0.5倍以上であることがより好ましく、1.0倍以上であることがさらに好ましい。曲率半径Rの上限は特に限定されないが、例えば単位領域の辺の長さLの100倍以下とすることができる。
【0089】
実施例1,3では、側壁31a,131aが中実状である例を示した。しかし、側壁は、一部に孔を有していてもよい。この孔の形状は、特に限定されないが、対称性の高い形状であることが好ましい。具体的には、孔の形状は、断面が円、正三角形、正四角形、正五角形、正六角形、その他正多角形とすることができる。孔の形状は、断面が円、正三角形、正四角形、正六角形がより好ましい。孔の形状は、破断の起点となるノッチ部を形成しない点から断面が円となる形状がさらに好ましい。
【0090】
実施例1,3では、側壁の間に補強の構造を含まない例を示した。しかし、
図15に示すように、側壁31aの間に筋交い35などの補強の構造を含んでいてもよい。
【0091】
実施例3では、矯正対象の臼歯部22Aの頬側部22bと口蓋側部22cは、臼歯部22Aの咬合部22aより、高い剛性の単位領域で形成される例を示した。しかし、矯正対象の臼歯部の頬側部と口蓋側部は、臼歯部の咬合部と、同じ剛性の単位領域で形成されてもよい。
【0092】
実施例3では、矯正対象の歯10を臼歯12Aとする例を示した。しかし、矯正対象の歯は、前歯であってもよい。
【0093】
実施例3では、矯正対象の臼歯部22A以外の歯列矯正用アライナー20は、中実に形成される例を示した。しかし、臼歯部22A以外の歯列矯正用アライナー20がメッシュ状に形成されてもよい。また、歯列矯正用アライナーは、特に強い力を加えたい領域や、特に強い力に対する耐久性が求められる領域のみを、局所的に、より高い剛性の単位領域で形成してもよい。例えば、移動させたい歯の歯頚部を被覆する領域のみを、より高い剛性の単位領域で形成してもよいし、移動させたい歯の中でも歯根に近い領域のみをより高い剛性の単位領域で形成してもよいし、着脱時に応力が集中しやすい前歯部の頬側部、口蓋側部、並びに咬合部のみをより高い剛性の単位領域で形成してもよい。
【0094】
また、歯部の前歯部分が、歯部の他の部分より、高い剛性の単位領域で形成されてもよい。この場合、歯科用口腔内装置の着脱時に大きな応力がかかる前歯部分の強度を高くすることができる。
【0095】
また、歯部の側部は、歯部の頂部より、高い剛性の単位領域で形成されてもよい。この場合、歯部の頂部では歯への接触をできるだけ低減し、歯部の側部では歯科用口腔装置として必要なだけの厚みを有している。そのため、歯部の頂部の被覆により副作用として生じる歯の圧下を抑制しながらも、歯科用口腔装置の機能を発揮することができる。例えば、矯正用アライナーの場合は矯正力、矯正用リテイナーの場合は歯を保持する性能、スポーツ用マウスガードの場合は衝撃吸収性能が発揮される。また、歯部の前歯部分が、歯部の他の部分より、高い剛性の単位領域で形成され、かつ、歯部の側部は、歯部の頂部より、高い剛性の単位領域で形成されてもよい。
【0096】
実施例1~3では、本発明の歯科用口腔内装置を、上顎の歯10を覆うように口腔内に装着される歯列矯正用アライナー20に適用される例を示した。しかし、本発明の歯科用口腔内装置は、下顎の歯を覆うように口腔内に装着される歯列矯正用アライナーに適用することもできる。
【0097】
実施例1~3では、本発明の歯科用口腔内装置を、床を有しない歯列矯正用アライナー20に適用する例を示した。しかし、本発明の歯科用口腔内装置を、床を有する歯列矯正用アライナーに適用することもできる。
【0098】
実施例1~3では、本発明の歯科用口腔内装置を矯正用アライナーに適用する例を示した。しかし、本発明の歯科用口腔内装置は、歯列矯正用アライナーに限定されず、歯列矯正用リテイナー、歯ぎしり防止用の歯科用口腔内装置、睡眠時無呼吸症候群のOral Appliance、ホワイトニング用の歯科用口腔内装置、スポーツ用マウスガード、入れ歯装置(全部床義歯、部分床義歯)等、歯を覆うようにして装着される装置等に適用することができる。
【関連出願の相互参照】
【0099】
本出願は、2019年11月18日に日本国特許庁に出願された特願2019-208222に基づいて優先権を主張し、その全ての開示は完全に本明細書で参照により組み込まれる。