(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】炎症性障害を治療するための化合物および方法
(51)【国際特許分類】
C07C 217/60 20060101AFI20241202BHJP
A61K 31/137 20060101ALI20241202BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241202BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241202BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241202BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241202BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241202BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241202BHJP
A61P 27/14 20060101ALI20241202BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C07C217/60 CSP
A61K31/137
A61P1/04
A61P3/10
A61P9/10
A61P11/00
A61P17/06
A61P19/02
A61P25/00
A61P27/02
A61P27/14
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2021559994
(86)(22)【出願日】2020-04-13
(86)【国際出願番号】 US2020027981
(87)【国際公開番号】W WO2020210823
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-12
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520061826
【氏名又は名称】ザ ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステート ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ チャールズ ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ビラック ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】ニコルズ デイビッド イー.
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/064031(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/028796(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/204354(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0055791(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0025063(US,A1)
【文献】Quantitative Structure-Activity Relationships,1997年,16(6),447-458
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry,2003年,11(18),3861-3868
【文献】J. Med. Chem.,1990年,33(2),687-702
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩
。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項3】
経口、鼻腔内、または肺投与用に製剤化される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
治療有効量の請求項1に記載の化合物を含む、炎症性障害の治療を必要とする対象において炎症性障害を治療するための医薬組成物。
【請求項5】
前記化合物が20μg/kg体重未満の量で投与される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
週に1~3回の頻度で投与される、請求項4または5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記炎症性障害が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、神経炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、敗血症、および結膜炎からなる群から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
経口、鼻腔内、または吸入によって投与される、請求項4~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年4月12日に出願された米国仮特許出願第62/833,140号の利益を主張し、その全内容が、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
一般に、本発明は、炎症性障害を治療するための組成物および方法を特徴とする。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
炎症は、病原体などの外来刺激に生物がさらされると発生する、自然かつ必要な生理学的プロセスである。しかし、炎症性シグナル伝達は、時折、誤った方向に向けられる可能性があり、生物に対する正当な脅威がない場合に発生する可能性がある。このような異常な炎症性シグナル伝達は、宿主細胞組織に損傷を与える可能性があり、様々な長期的な合併症を引き起こす可能性がある。現在、TNF-αシグナル伝達などの炎症の主要な経路は、モノクローナル抗体(インフリキシマブおよびアダリムマブ)および可溶性TNF-α受容体(エタネルセプト)などの生物学的薬剤を使用して標的とされている。
【0004】
しかし、例えば、炎症状態の治療のための、小分子抗炎症化合物の開発の分野における必要性が存在している。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、強力な抗炎症特性を有する化合物および医薬組成物を開示する。本発明の化合物または組成物を使用する方法、例えば、炎症性障害の治療を必要とする対象において炎症性障害を治療するための方法もまた提供される。
【0006】
本発明の一態様は、式(X)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩(例えば、塩酸塩)もしくはプロドラッグを特徴とし、式中、R’はHまたはCH
3であり得、R’’はHまたはCH
3であり得る。特定の実施形態では、R’はHであり得る。他の実施形態では、R’はCH
3であり得る(例えば、R立体化学において)。いくつかの実施形態において、R’’はHであり得る。なおさらなる実施形態において、Rは、小さな分岐アルキル基(例えば、-CH(CH
3)
2、-C(CH
3)
3、または-CH(CH
2)
2)、
であり得る。いくつかの実施形態において、Rが
である場合、これは、すべての立体異性体を含む1つ以上のCH
3基で置換され得る
。いくつかの実施形態において、Rが
である場合、これは、すべての立体異性体を含む1つ以上のCH
3基で置換され得る
。
【0007】
本発明の一態様は、式(Y)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩(例えば、塩酸塩)もしくはプロドラッグを特徴とし、式中、Rは、CH(CH
3)
2、C(CH
3)
3、CH(CH
2)
2)、
であり得る。
【0008】
一態様では、本発明は、式(I)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩(例えば、塩酸塩)もしくはプロドラッグを特徴とする。
【0009】
別の態様では、本発明は、式(II)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩(例えば、塩酸塩)もしくはプロドラッグを特徴とする。
【0010】
さらに別の態様では、本発明は、式(III)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩(例えば、塩酸塩)もしくはプロドラッグを特徴とする。
【0011】
別の態様では、本発明は、前述の態様のいずれか(例えば、式(I)、(II)、または(III)の化合物)またはその酸付加塩もしくはプロドラッグと、薬学的に許容される賦形剤との組成物を含む。そのような医薬組成物は、経口、鼻腔内、または肺投与用に製剤化することができる。
【0012】
別の態様では、本明細書で提供されるのは、炎症性障害の治療を必要とする対象において炎症性障害を治療する方法であって、治療有効量の化合物または前述の態様のいずれかの医薬組成物を対象に投与することを含む方法である。いくつかの実施形態において、化合物は、20ng/mL未満の循環薬物血漿レベル(例えば、0.05から20ng/mL、例えば、0.1から15ng/mL、0.5から10ng/mL、または1~5ng/mL、例えば、0.05~0.1ng/mL、0.1~0.2ng/mL、0.2~0.3ng/mL、0.3~0.4ng/mL、0.4~0.5ng/mL、0.5~1.0ng/mL、1.0~5ng/mL、5~10ng/mL、10~15ng/mL、または15~20ng/mL、例えば、約0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.2ng/mL、0.5ng/mL、1.0ng/mL、2.0ng/mL、2.5ng/mL、5.0ng/mL、7.5ng/mL、10ng/mL、12ng/mL、15ng/mL、または20ng/mL)を生じる量で投与される。いくつかの実施形態において、化合物の循環薬物血漿レベルは、検出限界より下である(例えば、0.1ng/mL以下)。いくつかの実施形態において、投与される化合物の量は、20μg/kg体重以下(例えば、20μg/kg未満、15μg/kg未満、10μg/kg未満、または5μg/kg体重未満)である。体重、例えば、1~20μg/kg体重、例えば、1~5μg/kg、5~10μg/kg、10~15μg/kg、または15~10μg/kg、例えば、約5μg/kg、約10μg/kg、約15μg/kg、または約20μg/kg)である。いくつかの実施形態において、この化合物は、週に1回または複数回の頻度(例えば、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、週に7回、またはそれ以上、例えば、1日1回、1日2回、1日3回など)で投与される。いくつかの実施形態において、この化合物は、例えば、隔日、隔週、月に1回など、断続的に投与される。
【0013】
前述の実施形態のいずれかまたは本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態において、炎症性障害は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、神経炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、敗血症、または結膜炎である。
【0014】
本明細書で提供される方法のいずれにおいても、この化合物は、任意の適切な投与経路、例えば、経口、鼻腔内、または吸入によって投与することができる。いくつかの実施形態において、本発明の化合物またはその医薬組成物は、鼻、頬、経口を含む様々な経路のうちの1つ以上によって、吸入(例えば、経口スプレー、ネブライザー、鼻スプレー、またはエアロゾルとして)、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、および/または滴剤による)、粘膜、腸、硝子体、腫瘍内、舌下、気管内注入、気管支注入、および/または門脈カテーテルを介して投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、全身静脈内注射によって投与される。特定の実施形態において、組成物は、静脈内および/または経口的に投与される。
【0015】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語が、本開示の下および全体を通して定義される。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における用語は、本発明の特定の実施形態を説明するために使用されるが、それらの用法は、特許請求の範囲に概説される場合を除いて、本発明を限定するものではない。
【0016】
本明細書で使用される場合、「酸付加塩」は、任意の薬学的に許容される塩を指す。
【0017】
本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、酵素的に活性化されるか、またはより活性な親形態に変換され得る薬学的に活性な物質の不活性な前駆体形態を指す。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy”Biochemical Society Transactions,14,pp.375-382,615th Meeting Belfast(1986)およびStella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,”Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247-267,Humana Press(1985)を参照のこと。
【0018】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、医薬組成物中の賦形剤または希釈剤を指す。例えば、薬学的に許容される担体は、活性化合物(例えば、本明細書に記載の組成物)を懸濁または溶解することができるビヒクルであり得る。薬学的に許容される担体は、製剤の他の成分と適合性でなければならず、レシピエントに対して有害であってはならない。本開示において、薬学的に許容される担体は、本明細書に記載の化合物に適切な薬学的安定性を提供しなければならない。キャリアの性質は、投与の様式によって異なる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「治療する」または「治療すること」という用語は、治療目的のための化合物または医薬組成物の投与を指す。「障害を治療する」こと、または「治療的処置」のための使用は、すでに疾患を患っている患者に治療を施して、疾患またはその1つ以上の症状を改善し、患者の状態を改善することを指す(例えば、炎症の1つ以上の症状を低減することによって)。「治療的」という用語は、特定の炎症過程の有害な臨床効果(すなわち、炎症の症状ではなく、炎症の結果)を軽減する効果を含む。本発明の方法は、一次予防手段として、すなわち、状態を予防するために、または状態を発症するリスクを低減するために使用することができる。予防とは、状態または障害を完全には発症していない可能性があるが、その状態にかかりやすいか、またはそうでなければその状態のリスクがある患者の予防的処置を指す。したがって、特許請求の範囲および実施形態において、本発明の方法は、治療目的または予防目的のいずれかのために使用することができる。
【0020】
「投与」または「投与すること」という用語は、対象に化合物または医薬組成物の投与量を与える方法を指す。
【0021】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、対象において所望の効果を誘導する際の、または本明細書に記載の状態または障害(例えば、炎症性障害)を有する対象を治療する際の有効な量、例えば、医薬用量を指す。本明細書において、「治療有効量」は、1回以上の用量もしくは任意の投与量もしくは経路で摂取され、かつ/または単独でもしくは他の治療薬と組み合わせて摂取される、所望の治療的および/または予防的効果を与える量として解釈することができることもまた理解される。例えば、障害または状態の治療のために使用される本明細書に記載の組成物を投与する状況において、化合物の有効量は、例えば、化合物の投与なしで得られた応答と比較した場合の、障害または状態の進行を予防、減速、または逆転させるために十分な量である。
【0022】
「a」、「an」、「the」などの用語は、単数形の実態のみを指すことを意図するものではなく、特定の例を例示のために使用できる一般的なクラスも含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記載されている値よりも10%上以内または10%下以内の値を指す。
[本発明1001]
式(I)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩もしくはプロドラッグ。
[本発明1002]
本発明1001の化合物、および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
[本発明1003]
経口、鼻腔内、または肺投与用に製剤化される、本発明1002の医薬組成物。
[本発明1004]
炎症性障害の治療を必要とする対象において炎症性障害を治療する方法であって、治療有効量の本発明1001の化合物または本発明1002もしくは1003の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1005]
前記化合物が20μg/kg体重未満の量で投与される、本発明1004の方法。
[本発明1006]
前記化合物が週に1~3回の頻度で投与される、本発明1004または1005の方法。
[本発明1007]
前記炎症性障害が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、神経炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、敗血症、および結膜炎からなる群から選択される、本発明1004~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記化合物が経口、鼻腔内、または吸入によって投与される、本発明1004~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
式(II)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩もしくはプロドラッグ。
[本発明1010]
本発明1009の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
[本発明1011]
経口、鼻腔内、または肺投与用に製剤化される、本発明1010の医薬組成物。
[本発明1012]
炎症性障害の治療を必要とする対象において炎症性障害を治療する方法であって、治療有効量の本発明1009の化合物または本発明1010もしくは1011の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1013]
前記化合物が20μg/kg体重未満の量で投与される、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記化合物が週に1~3回の頻度で投与される、本発明1012または1013の方法。
[本発明1015]
前記炎症性障害が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、神経炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、敗血症、および結膜炎からなる群から選択される、本発明1012~1014のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記化合物が経口、鼻腔内、または吸入によって投与される、本発明1012~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
式(III)の化合物
またはその薬学的に許容される酸付加塩もしくはプロドラッグ。
[本発明1018]
本発明1017の化合物および薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
[本発明1019]
経口、鼻腔内、または肺投与用に製剤化される、本発明1018の医薬組成物。
[本発明1020]
炎症性障害の治療を必要とする対象において炎症性障害を治療する方法であって、治療有効量の本発明1017の化合物または本発明1018もしくは1019の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
[本発明1021]
前記化合物が20μg/kg体重未満の量で投与される、本発明1020の方法。
[本発明1022]
前記化合物が週に1~3回の頻度で投与される、本発明1020または1021の方法。
[本発明1023]
前記炎症性障害が、喘息、慢性閉塞性肺疾患、神経炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、敗血症、および結膜炎からなる群から選択される、本発明1020~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
前記化合物が経口、鼻腔内、または吸入によって投与される、本発明1020~1023のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図面は、本発明の特定の実施形態を例示するものであり、本発明に含まれる様々な実施形態に限定されるものではない。
【0025】
【
図1A】2,5-ジメトキシ-4-イソブチルフェネチルアミン(2C-iBu)の合成を示す略図である。
【
図1B-1】2C-iBuの液体クロマトグラフィー-UV(LCUV)の特性を示す一連のグラフである。
【
図1C-1】2C-iBuの液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)の特性を示す一連のグラフである。
【
図2A】
図2A~2Gは、成体雄性Brown Norwayラットにおけるメタコリンチャレンジの関数としての増強された休止(ΔPenh)の変化を示す一連のグラフであり、その詳細は実施例3に記載されている。ラットは、未処理(ナイーブ、丸)か、オボアルブミン(OVA、四角)で処理したか、またはOVAと組み合わせた様々な実験化合物(三角)で処理した。実験化合物には、1.0mg/kgのR-DOI(
図2A、*p<0.05、OVAからナイーブへの有意差、#p<0.05 OVA対OVA+R-DOI)、1.0mg/kgの25-I-NBOMe(
図2B、*p<0.05、OVAからナイーブへの有意差、#p<0.05、OVAからOVA+25-I-NBOMeへの有意差、^p<0.05、OVA+25-I-NBOMeからナイーブへの有意差)、1.0mg/kgのDOB(
図2C、#p<0.05、OVAからOVA+DOBへの有意差、*p<0.05、OVAからナイーブへの有意差、^p<0.05、OVA+DOBからナイーブへの有意差)、0.5mg/kgの2C-B-Fly.HCl(
図2D、*p<0.05、OVAからナイーブへの有意差、および2C-B-Fly.HCl+OVAからナイーブへの有意差)、0.5mg/kgの2CB2(
図2E、#p<0.05、OVAからOVA+TCB2への有意差、*p<0.05、OVAからナイーブへの有意差、^p<0.05、OVA+TCB2からナイーブへの有意差)、0.5mg/kgのDOTFM(
図2F、^p<0.05、OVA+DOTFMからナイーブへの有意差)、および2C-iBu(
図2G、*p<0.05、OVA+2C-iBu.HClからナイーブへの有意差)が含まれる。各実験化合物の構造は、対応するグラフの左側に示される。
【
図3】様々なDOxおよび2C化合物の機能特性を要約する構造活性相関表である。*:効果的ではない(-)、中程度に効果的(+)、非常に効果的(++);**:2019年1月に実施された文献検索に基づくデータ;(NT)試験されていない;(NR)報告されていない、すなわち、公的に入手可能な特性データが不十分である。
【
図4】ラットOVAアレルギー性喘息モデルにおける2C-iBu濃度の関数としてのΔPenhの阻害%を示す用量反応曲線である。
【
図5】
図5Aは、R-DOIが頭のけいれん反応(HTR)に及ぼす影響を示すグラフである。データは、30分間の試験セッション全体のグループ平均±SEMとして表示される。薬物用量は、等価な遊離塩基重量を指す。**p<0.01、ビヒクル対照グループとの有意差(テューキーの検定)。
図5Bは、R-DOIによって誘発されたHTRの経時的研究の結果を示すグラフである。データは、2分間の時間ブロック中のグループ平均±SEMとして表示される。薬物用量は、等価な遊離塩基重量を指す。
【
図6】
図6Aは、2C-iBuがHTRに及ぼす影響を示すグラフである。データは、30分間の試験セッション全体のグループ平均±SEMとして表示される。薬物用量は、等価な遊離塩基重量を指す。*p<0.05、**p<0.01、ビヒクル対照グループとの有意差(テューキーの検定)。
図6Bは、2C-iBuによって誘発されたHTRの経時的研究の結果を示すグラフである。データは、2分間の時間ブロック中のグループ平均±SEMとして表示される。薬物用量は、等価な遊離塩基重量を指す。
【
図7】1.0mg/kgのR-DOIおよび3.0mg/kgの2C-iBuによって誘発されたHTRの経時的研究の結果を示すグラフである。データは、5分間の時間ブロック中のグループ平均±SEMとして表示される。薬物用量は、等価な遊離塩基重量を指す。*p<0.01、グループ間の有意差(Sidakの多重比較検定)。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、式(I)、(II)、および(III)の構造を有する2C化合物、
ならびにその酸付加塩およびプロドラッグを特徴とする。また、本明細書には、上記2C化合物を含む医薬組成物、ならびに上記化合物および医薬組成物を使用する治療方法、例えば、炎症性障害の治療を必要とする対象において炎症性障害を治療する方法が提供される。
【0027】
I.化合物
幻覚剤フェネチルアミンには、主環の側鎖にアルファメチルを伴うアンフェタミン構造を有する化合物が含まれる。このクラスの化合物はDOxと呼ばれ、この構造は以下に示され、ここで、Rは任意の適切な基(例えば、メチル、ヨウ素、エチルなど)にすることができる。薬物(R)-DOIなどの特定のDOX化合物は、セロトニン5-HT
2受容体の強力なアゴニストであり得る。
【0028】
5-HT
2受容体へのDOXの化合物の結合親和性は、典型的には、低ナノモル濃度範囲であり(例えば、0.1~10nM、Nichols,WIREs Membr.Transp.Signal 2012,1:559-579、参照により本明細書に組み込まれる)、そしてGq経路などの、5-HT
2A受容体におけるエフェクター経路活性化のためのEC
50の値は、低ナノモル濃度範囲(例えば、1~10nM、
図3)であり得る。
【0029】
第2のクラスの化合物は、DOxクラスと比較して、側鎖アルファメチルが存在しないことに関連して、本明細書では「2Cx化合物」と呼ばれる。したがって、2C側鎖には、2つのみの炭素原子(2C)が含まれる。2CX化合物の5-HT
2受容体への結合親和性は、典型的には、ナノモル濃度範囲(例えば、1~10nM、Johnson et al.,Pharmacol.Biochem.Behav.1990,35(1):211-7、参照により本明細書に組み込まれる)にあり、そしてG1経路などの5-HT
2A受容体でのエフェクター経路活性化についてのEC
50の値は、低ナノモル範囲にあり得(例えば、1~10nM)、そして彼らは、彼らのDOx対応物よりも低い効力を示す傾向がある(
図3)
【0030】
本発明は、RがCH
2CH(CH
3)
2(式(I))、CH
2C(CH
3)
3(式(II))、またはCH
2CH(CH
2)
2(式(III))である2C化合物を提供する。
【0031】
本発明は、部分的に、これらの2C化合物が、5-HT2A受容体の活性化について高い効力、高い抗炎症効力を有し得るが、重要なことに、DOx化合物と比較して行動に影響を与える際の効力が一般に低いという発見に基づく。したがって、本明細書に開示される化合物は、中枢神経系(CNS)における作用によって媒介される行動効果を誘発することなく、抗炎症効果を提供することができる。
【0032】
これらの化合物の薬学的に許容される酸付加塩およびそのプロドラッグも本明細書に開示される。
【0033】
II.医薬組成物。
前述の化合物のいずれかの医薬組成物(例えば、式(I)、(II)、または(III)の2C化合物)は、非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中にこの化合物を含有する経口使用のための錠剤を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または充填剤(例えば、ショ糖、ソルビトール、糖、マンニトール、微結晶性セルロース、馬鈴薯澱粉を含む澱粉、塩化ナトリウム、またはラクトース)であり得る。造粒剤および崩壊剤(例えば、微結晶性セルロースを含むセルロース誘導体、ジャガイモデンプンを含むデンプン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸塩、またはアルギン酸)、結合剤(例えば、スクロース、グルコース、ソルビトール、アカシア、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、デンプン、アルファ化デンプン、微結晶性セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはポリエチレングリコール)、ならびに潤滑剤、流動促進剤、および付着防止剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、水素化植物油、またはタルク)であり得る。他の薬学的に許容される賦形剤は、着色剤、香味剤、可塑剤、保湿剤、緩衝剤などであり得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%純粋である。いくつかの実施形態において、賦形剤は、ヒトでの使用および獣医学的な使用が承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態では、賦形剤は医薬品グレードである。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、および/または国際薬局方の基準を満たす。
【0035】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、例えば、頬腔を介した肺投与に適した製剤中で調製、包装、および/または販売される。そのような製剤は、活性成分を含み、約0.5nmから約7nmまたは約1nmから約6nmの範囲の直径を有する乾燥粒子を含んでもよい。そのような組成物は、便利なことに、粉末を分散させるために推進剤の流れを向けることができる乾燥粉末貯蔵器を含む装置を使用する、ならびに/または密閉容器内の低沸点推進剤に溶解および/または懸濁された活性成分を含む装置などの自己推進式溶媒/粉末分配容器を使用する、投与のための乾燥粉末の形態である。そのような粉末は、重量で粒子の少なくとも98%が0.5nmより大きい直径を有し、数で粒子の少なくとも95%が7nm未満の直径を有する粒子を含む。あるいは、重量で粒子の少なくとも95%が1nmよりも大きい直径を有し、数で粒子の少なくとも90%が6nm未満の直径を有する。乾燥粉末組成物は、糖などの固体微粉末希釈剤を含んでもよく、単位剤形で都合よく提供される。
【0036】
低沸点推進剤には、一般に、大気圧で65°F未満の沸点を有する液体推進剤が含まれる。推進剤は、組成物の50%~99.9%(w/w)を構成してもよく、活性成分は、組成物の0.1%~20%(w/w)を構成してもよい。推進剤は、液体非イオン性および/もしくは固体アニオン性界面活性剤ならびに/または固体希釈剤(活性成分を含む粒子と同じオーダーの粒子サイズを有し得る)などの追加の成分をさらに含んでもよい。
【0037】
肺送達用に製剤化された医薬組成物は、溶液および/または懸濁液の液滴の形態で活性成分を提供し得る。そのような製剤は、水性および/もしくは希薄なアルコール溶液および/または懸濁液として、場合により、活性成分を含み、無菌で、調製、包装、および/または販売され得、任意の噴霧および/または微粒子化装置を使用して都合よく投与することができる。そのような製剤は、サッカリンナトリウムなどの香味剤、揮発性油、緩衝剤、界面活性剤、および/またはヒドロキシ安息香酸メチルなどの保存料を含むがこれらに限定されない1種以上の追加の成分をさらに含んでもよい。この投与経路によって提供される液滴は、約0.1nmから約200nmの範囲の平均直径を有し得る。
【0038】
肺送達に有用であるとして本明細書に記載されている製剤は、医薬組成物の鼻腔内送達のために有用である。鼻腔内投与に適した別の製剤は、活性成分を含み、約0.2μmから500μmの平均粒子を有する粗い粉末である。そのような製剤は、嗅ぎタバコが摂取される方法、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を通した急速吸入によって投与される。
【0039】
経鼻投与に適した製剤は、例えば、約0.1%(w/w)から100%(w/w)までの活性成分を含んでもよく、そして本明細書に記載の1つ以上の追加の成分を含んでもよい。医薬組成物は、肺投与に適した製剤で調製、包装、および/または販売することができる。あるいは、口腔内投与に適した製剤は、粉末、ならびに/またはエアロゾル化および/もしくは噴霧化された溶液、ならびに/または活性成分を含む懸濁液を含んでもよい。そのような粉末、エアロゾル化および/またはエアロゾル化製剤は、分散される場合、約0.1nmから約200nmの範囲の平均粒子サイズおよび/または液滴サイズを有し得、そして本明細書に記載の任意の追加成分の1つ以上をさらに含んでもよい。
【0040】
医薬組成物は、従来の方法を使用して製造された錠剤および/またはトローチの形態であり得、0.1%~20%(w/w)の活性成分を含んでもよく、残りは、経口溶解性および/または分解性組成物、および任意選択で、本明細書に記載の1つ以上の追加の成分を含む。錠剤は、コーティングされていない場合もあれば、または公知の技術によってコーティングされている場合もあり、必要に応じて、胃腸管における崩壊および吸収を遅らせ、それによって長期間にわたって持続的な作用を提供する。例えば、コーティングは、(例えば、制御放出製剤を達成するために)所定のパターンで化合物を放出するように適合され得、または胃を通過するまで化合物を放出しないように適合され得る。このコーティングは、糖コーティング、フィルムコーティング(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルピロリドンに基づく)、または腸溶コーティング(例えば、メタクリル酸コポリマー、酢酸フタレートセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート、ポリビニルアセテートフタレート、シェラック、および/またはエチルセルロースに基づく)であり得る。追加的または代替的に、例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を錠剤に組み込むことができる。
【0041】
固体錠剤組成物は、望ましくない化学変化(例えば、化合物の放出前の化学的分解)から化合物を保護するように適合されたコーティングを含んでもよい。コーティングは、Encyclopedia of Pharmaceutical Technology(eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New York)に記載されているものと同様の固体剤形で適用され得る。
【0042】
経口使用のための医薬組成物はまた、チュアブル錠として、または化合物が不活性固体希釈剤(例えば、ジャガイモデンプン、ラクトース、微結晶性セルロース、リン酸カルシウム、またはカオリン)と混合される硬質ゼラチンカプセルとして、または、この化合物は、水または油媒体、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、またはオリーブ油と混合される 軟質ゼラチンカプセルとして提示され得る。粉末および顆粒は、例えば、ミキサー、流動床装置または噴霧乾燥装置を使用する従来の方法で、錠剤およびカプセルの下で上述の成分を使用して調製してもよい。
【0043】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した粉末、分散性粉末、または顆粒は、化合物の経口投与のための便利な剤形である。懸濁液としての製剤は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1つ以上の保存料との混合物中の化合物を提供する。適切な分散剤または湿潤剤は、例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチンまたはエチレンオキシドと脂肪酸、長鎖脂肪族アルコール、または脂肪酸に由来する部分エステルとの縮合生成物)およびヘキシトールまたはヘキシトール無水物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど)である。適切な懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウムなどである。
【0044】
医薬組成物はまた、剤形、製剤での注射、注入または移植(静脈内、筋肉内、皮下など)によって、または従来の非毒性の薬学的に許容される担体およびアジュバントを含有する適切な送達デバイスもしくは移植片を介して非経口的に投与され得る。そのような組成物の製剤化および調製は、医薬製剤の当業者には周知である。製剤は、Hayes(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,volume I and volume II.Twenty-second edition.Philadelphia,2012)において見出すことができる。
【0045】
非経口使用(例えば、静脈内投与)用の組成物は、単位剤形(例えば、単回投与アンプル)で、またはいくつかの用量を含有し、適切な防腐剤が添加され得るバイアルで提供され得る(下記参照)。この組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、注入装置、または移植用の送達装置の形態であり得るか、またはそれは、使用前に水または他の適切なビヒクルで再構成される乾燥粉末として提示され得る。化合物(例えば、式(I)、(II)、または(III)の構造を有する化合物)とは別に、この組成物は、適切な非経口的に許容される担体および/または賦形剤を含んでもよい。化合物は、制御放出のためにミクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソームなどに組み込まれてもよい。さらに、この組成物は、懸濁剤、可溶化剤、安定剤、pH調整剤、および/または分散剤を含んでもよい。
【0046】
本明細書に示されるように、本発明による医薬組成物は、無菌注射に適した形態であり得る。そのような組成物を調製するために、化合物は、非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解または懸濁される。使用できる許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウムまたは適切な緩衝液の添加により適切なpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。水性製剤はまた、1種以上の防腐剤(例えば、メチル、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート)を含んでもよい。化合物の1つが水に難溶性またはわずかにしか溶けない場合、溶解促進剤または可溶化剤を添加することができ、または溶媒は、10~60%w/wのプロピレングリコールなどを含んでもよい。
【0047】
III.方法
本明細書で提供されるのは、対象の炎症性障害を治療するために本明細書に記載の化合物または医薬組成物を使用する方法である。炎症性障害を治療する方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物または医薬組成物を投与することを含む。例えば、炎症性障害を治療する方法は、本発明の化合物(例えば、式(I)、(II)、または(III)の構造を有する2C化合物、またはその酸付加塩もしくはプロドラッグ)、あるいはその医薬組成物の投与を含む。あるいは、本明細書の方法は、そのような化合物またはその医薬組成物の投与による炎症性障害の治療を提供する。
【0048】
治療効果のために必要とされる化合物または組成物の正確な量は、対象の種、年齢、体重、および全身状態、疾患の重症度、特定の組成物、その投与様式、その活動モードなどに応じて、対象ごとに異なり得る。本開示に従う医薬組成物は、典型的には、投与の容易さおよび投与量の均一性のために投与単位形態で製剤化される。しかし、本開示の組成物の毎日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解される。特定の対象に対する特定の治療上有効なレベルは、治療される特定の炎症性障害およびその重症度、利用される特定の化合物の活性、利用される特定の組成物、対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、および食事、投与時間、投与経路、ならびに利用した特定の化合物の排泄速度、治療期間、利用される特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、医療分野で周知である同様の要因を含む様々な要因に依存する。
【0049】
本明細書に記載される方法のいずれかのいくつかの実施形態において、炎症性障害は、喘息、慢性閉塞性肺疾患、神経炎症、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症、乾癬、II型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、多発性硬化症、敗血症、または結膜炎である。
【0050】
本明細書に記載される組成物は、ヒト患者、あるいは、家畜化された動物、猫、犬、マウス、またはラットなどの他の哺乳動物などの対象に投与することができる。
【0051】
本明細書に記載の組成物は、任意の経路で投与することができる。いくつかの実施形態において、本化合物またはその医薬組成物は、鼻、頬、経口、吸入(例えば、経口スプレー、鼻スプレー、またはエアロゾルとして)、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮間、直腸、膣内、腹腔内、局所(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、および/または滴による)、粘膜、腸、硝子体、腫瘍内、舌下、気管内注入、気管支注入、および/または門脈カテーテルを介して、を含む様々な経路のうちの1つ以上によって投与される。いくつかの実施形態において、この組成物は、全身静脈内注射によって投与される。特定の実施形態において、組成物は、静脈内および/または経口的に投与される。
【0052】
本発明の化合物は、治療有効量(例えば、炎症を軽減するために十分な用量と精神活性効果を誘発する用量との間の治療ウィンドウ内で、例えば、所望の治療効果をもたらす量(約10倍の違い))で投与できる。いくつかの実施形態において、化合物は、例えば、ヒトの対象において、20ng/mL未満の循環薬物血漿レベル(例えば、0.05~20ng/mL、例えば、0.1~15ng/mL、0.5~10ng/mL、または1~5ng/mL、例えば0.05~0.1ng/mL、0.1~0.2ng/mL、0.2~0.3ng/mL、0.3~0.4ng/mL、0.4~0.5ng/mL、0.5~1.0ng/mL、1.0~5ng/mL、5~10ng/mL、10~15ng/mL、または15~20ng/mL、例えば、約0.05ng/mL、0.1ng/mL、0.2ng/mL、0.5ng/mL、1.0ng/mL、2.0ng/mL、2.5ng/mL、5.0ng/mL、7.5ng/mL、10ng/mL、12ng/mL、15ng/mL、または20ng/mL)で投与される。いくつかの実施形態において、この化合物の循環薬物血漿レベルは、検出限界未満である(例えば、0.1ng/mL以下)。いくつかの実施形態において、この化合物の治療有効量は、約20μg/kg体重未満(例えば、20μg/kg未満、15μg/kg未満、10μg/kg未満、または5μg/kg体重未満、例えば、1~20μg/kg体重、例えば、1~5μg/kg、5~10μg/kg、10~15μg/kg、または15~10μg/kg、例えば、約5μg/kg、約10μg/kg、約15μg/kg、または約20μg/kg)であり得る。
【0053】
特定の実施形態において、本開示に従う組成物は、所望の治療効果を得るために、1日1回以上、1日あたり対象体重あたり、約0.0001μg/kg~約100μg/kg、約0.01μg/kg~約50μg/kg、約0.1μg/kg~約40μg/kg、約0.5μg/kg~約30μg/kg、約0.01μg/kg~約10μg/kg、約0.1μg/kg~約10μg/kg、または約1μg/kg~約25μg/kgを送達するために十分な投与量レベルで投与され得る。所望の投与量は、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日おき、毎週、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごとに送達され得る。いくつかの実施形態において、この化合物は、週に1~3回の頻度で投与される(例えば、週に1回、週に2回、週に3回、週に4回、週に5回、週に6回、週に7回、またはそれ以上、例えば、1日1回、1日2回、1日3回など)。いくつかの実施形態において、この化合物は、間欠的に、例えば、1日おき、隔週、月に1回などで投与される。特定の実施形態において、所望の投与量は、複数回の投与を使用して送達され得る(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、またはそれ以上の投与)。
【0054】
本明細書に記載の組成物は、1つ以上の他の治療薬、予防薬、診断薬、または造影剤と組み合わせて使用することができる。「と組み合わせて」とは、これらの送達方法が本開示の範囲内であるが、薬剤が同時に投与され、および/または一緒に送達されるように製剤化されなければならないことを意図するものではない。医薬組成物は、1つ以上の他の所望の治療または医療手順と同時に、その前に、またはその後に投与することができる。一般に、各薬剤は、その薬剤について決定された用量および/またはタイムスケジュールで投与される。いくつかの実施形態において、本開示は、それらの生物学的利用能を改善し、それらの代謝を低減および/もしくは改変し、それらの排泄を阻害し、ならびに/またはそれらの体内でのそれらの分布を改変する薬剤と組み合わせた医薬組成物、予防組成物、診断組成物、または画像化組成物の送達を包含する。
【0055】
組み合わせて利用される化合物または組成物は、単一の組成物で一緒に投与され得るか、または異なる組成物で別々に投与され得ることがさらに理解される。一般に、組み合わせて利用される薬剤は、それらが個別に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが期待される。いくつかの実施形態では、組み合わせて利用されるレベルは、個別に利用されるレベルよりも低い。
【実施例】
【0056】
以下の実施例は、当業者に、本明細書で特許請求されている組成物および方法をどのように実施、製造、および評価することができるかについての説明を提供するために提示され、本発明の純粋な例示を意図するものであり、本発明者が自分の発明と見なす範囲を制限することを意図しているものではない。
【0057】
実施例1.2C-iBuの合成および特性評価
2C-iBuの合成は、参照により本明細書に組み込まれる、Oberlender et al.,J.Med.Chem.1984,27(6),788-792に記載されているDOiBuの合成経路の改変である。簡単に説明すると、アルデヒド10をニトロメタンと酢酸アンモニウムで処理して、対応するニトロエテンを明るい黄色の針状結晶として得た。LiAlH4の溶液を用いるニトロエテンの還元および標準的な後処理によりアミンが生成され、これを塩酸塩に変換して結晶化した。この合成経路を
図1Aに示す。
【0058】
2C-iBuの純度は、LCUVおよびLCMS分析を使用して評価した。DMSO中の10mM 2C-iBuのストック溶液を、25%メタノール/25%アセトニトリル/50%H2Oで200μMに希釈した。同じやり方で等量のDMSOを希釈してブランクサンプルを調製した。
【0059】
2C-iBuの希釈サンプルは、次の方法を使用してLCUVおよびLCMSで分析した。
LCUV
移動相A:水中の12mMギ酸アンモニウム/6mMギ酸
移動相B:水/アセトニトリル中の6mMギ酸アンモニウム/3mMギ酸(1/9、v/v)
カラム:Thermo DASH aQ C18、3ミクロン、2.1×20mm(#25003-022150)
グラジエントプログラム:
(表1)
Dionex UltiMate3000ダイオードアレイ検出器による検出
波長:UV-Vis_1:205nm+/-10nm
UV-Vis_2:230nm+/-10nm
UV-Vis_3:260nm+/-10nm
UV-Vis_4:300nm+/-10nm
LCMS
移動相A:水中の0.1%ギ酸
移動相B:アセトニトリル中の0.1%ギ酸
カラム:Acquity HSS T3、1.8ミクロン、2.1×100mm(#186003539)
グラジエントプログラム:
(表2)
Xevo G2 QTof(Waters)質量分析計による検出
取得方法:ポジティブ、感度モード、MS
E
ソース温度:150℃
脱溶媒和温度:475℃
キャピラリー電圧:1.5kV
サンプリングコーン電圧:125V
抽出コーン電圧:7.0V
コーンガス:100L/h
脱溶媒和ガス:500L/h
質量範囲:100~1000Da
【0060】
図1Bは、1.1分に溶出する単一の一次ピークを示す。1.27分で溶出する1つの小さな追加ピークは、2C-iBuクロマトグラムにあるように見え、ブランクサンプルでは観察されなかったが、しかし、LCMS分析では、クロマトグラムにおいて、親よりも遅く溶出するいかなる有意な分析物も示されなかった。
【0061】
図1Cに示すように、質量スペクトルに219m/zのイオンがあるLCMSクロマトグラムでは、4.11分に早く溶出するピークが観察された。親化合物は、221m/zに豊富な前駆体イオンを有しており、これは、おそらくMSソースのアミノ基の喪失から発生する。4.11分のピークは、同じようにフラグメント化する親化合物より2質量単位少ない不純物を表す可能性がある。結論として、2C-iBuは、この研究で使用された方法の検出限界内で99%を超える純度である。
【0062】
実施例2.受容体薬理学
安定にヒト5-HT
2A受容体を発現しているHEK細胞(Braden et al.,Mol.Pharmacol.2006,70(6):1956-1964、参照により本明細書に組み込まれる)を、2C-iBu(表3)および他の化合物(
図3)によるGq-に媒介性カルシウムトランジェントについてEC
50およびE
MAX値を決定するために使用した。細胞を、実験の24時間前に約50000細胞/ウェルで、96ウェルポリ-D-リジンプレートに播種し、4%透析ウシ胎児血清を補充したOpti-MEM還元血清培地中37°Cで培養した。実験当日、細胞を、20mM HEPESを添加したHBSSで1回洗浄し、HBSS-HEPES緩衝液で希釈した3μMFluo-4AM(分子プローブ)75μLをロードし、室温で1.5時間インキュベートし、HBSS-HEPESで2回洗浄し、25°Cで50μLのHBSS-HEPES中に維持した。色素をロードした細胞のプレートをFlexStationIIIマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,LLC)に入れ、蛍光(励起、488nm、発光、525nm、カットオフ、515nm)をモニターした。試験化合物は、スキャン開始の30秒後に50μLのHBSS-HEPES中2倍の濃度で添加され、2秒間隔でさらに200秒間蛍光をモニターした。各サンプルのカルシウム動員トレースを取得した後、試験化合物についてのカルシウム応答を、ベースライン蛍光レベル(Fで表示)からの変化のパーセンテージ(ピーク蛍光-ベースライン蛍光レベル、ΔFで表示)として定量化した。ΔF/F(%)。対照として、緩衝液のみのシグナルはベースライン応答を構成し、セロトニンアゴニストのピークシグナルは100%の応答を構成した。棒グラフと曲線フィッティングルーチンは、Graph-Pad Prism 3.0(GraphPad Software,Inc.)を使用して実行した。
【0063】
Kroezeらに記載されているように、2C-IBUによる測定βアレスチン-2動員を測定するために、HTLA細胞を、5-HT2AR-タンゴ構築物でトランジェントにトランスフェクトし、これは以下に記載されている(Nat.Struct.Mol.Biol.2015,22:362-369、参照により本明細書に組み込まれる)。次に、Kroeze et al.に記載されているように、ルミネセンスを測定することによりPRESTO-Tango動員アッセイを行って、EC50およびEmax値を決定した。結果を以下の表3に示す。
【0064】
【0065】
DOx対2C化合物の直接比較
上記の方法を使用して、カルシウム動員およびベータアレスチンの動員に関して、2C化合物をDOx化合物に対して直接比較した。データは、5-HT応答のパーセンテージとしてのEMAX、およびpEC50を決定するために、GraphPad Prismソフトウェアを使用して分析した。結果を以下の表4および5に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
実施例3.アレルギー性喘息モデル
Nau et al.(Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.2015,308(2):L191-L198、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような、アレルギー性喘息のオボアルブミンモデルおよび全身プレチスモグラフィープロトコルの改変を使用して、成体雄性Brown Norwayラットにおけるメタコリンチャレンジに応答して、気道過敏性(AHR)の尺度であるΔPenhを決定した。
図2A~2Gに示される結果は、噴霧吸入薬物についてマウスで測定された
図2Cを除いて、ラットのオボアルブミンアレルギー性喘息アッセイで測定されたPenH変化を表す。統計は、多重比較のためにテューキー事後検定を用いる2元配置分散分析を使用して実行した。
【0069】
アレルギー性喘息は、気道の慢性炎症性障害として定義されている。この疾患は、気道の炎症、持続性の気道AHR、および断続的で可逆的な気道閉塞を特徴としている。げっ歯類における慢性的なアレルゲン曝露は、アレルゲン依存性感作、気道粘膜への好酸球流入を特徴とするTh2依存性アレルギー性炎症、およびAHRを含む喘息の特徴のいくつかを再現することが示されている。
【0070】
図2Aに示されるように、(R)-DOIを用いる治療は、アレルゲンOVAに応答して、ラットにおいてPenHによって測定されるように、AHRを予防することにおいて完全な効力を実証した。ナイーブ(青い線)グループと(R)-DOI+OVA(赤い線)グループとの間でPenH値の間に統計的差異は存在しない。
図2Bに示されるように、R-DOIと比較してアミノ基の修飾を含む25I-NBOMeは、効力の低下を示した。25I-NBOMeはPenHを減少させたが、PenHはナイーブ対照よりも有意に上昇した。
図2Cに示されるように、R-DOI中の4位のヨウ素を臭素に変更すること(それによりDOBを得る)は、効力を低下させなかった。しかし、2,5、ジメトキシを環化し、アルファ炭素を除去すると、TCB-2を得るために側鎖を環化および剛性化したものと同様(
図2E)、効力が低下した(
図2D)。TCB-2はPenHを減少させたが、それでもナイーブ対照よりも有意に上昇していた。
図2Fに示されるように、4位をトリフルオロメチルで置き換えると、効力が失われた。PenH値に関して、OVAグループとdrug+OVAグループとの間に統計的差異はなかった。
図2Gは、2C-iBuを得るためのアルファ炭素の除去および4位へのイソブチルの配置が、(R)-DOIと比較して効力の低下をもたらさなかったことを示す。この結果は、そうでなければメタコリンに対する反応の増加を誘発したであろう、気管支の炎症を阻止するための完全に有効な抗炎症効果を表す。
【0071】
AHRの予防に際してラットにおける0.5mg/kg投与量での様々なDOxおよび2Cx化合物の効力の要約を
図3に提供する。メタコリンの漸増用量に反応したPenH値の曲線下面積(PenH-AUC)を、ナイーブ、OVA処理、およびOVA+薬物処理の動物の各試験グループについて計算した。対照値(OVAのみ)の75%を超えるPenH-AUC値の減少は、強力な効力として注釈を付けた。中程度の有効性は25~75%の阻害であり、25%未満の阻害は不活性として注釈を付けた。この情報に加えて、5-HT
2AR異種細胞ベースのカルシウムトランジェントアッセイで試験された化合物のR-DOI EC
50値(比率)との相対値が提供される。さらに、R-DOIと比較した、各化合物のヒトにおける精神活性用量の推定比率が提供されている。
図3は、炎症媒介性アレルゲン誘発性AHRに対するフェニルエチルアミンクラスの化合物の治療効力の非相関性、ならびにヒトにおいてこれらの化合物で経験される精神活性障害のために必要な用量の報告された証拠、またはカルシウムトランジェントアッセイにおける5-HT
2ARに対するこれらの化合物の効力および強度を例証する。
【0072】
2C-iBu濃度の関数としてのΔPenhの阻害は、上記のように、雄性成体Brown Norwayラットへの2C-iBuの噴霧の鼻のみの投与によって研究した。結果を
図4に示す。X軸上の2C-iBuの濃度に対して、ΔPenhの2C-iBuの所定の用量での各治療グループの曲線下面積をY軸にプロットする。ED
50は、0.0027ミリグラム/kgであって、(R)-DOIと等しく同程度であった。まとめると、この実施例に示されている結果は、2C-iBuが(R)-DOIと同様の効力を示すことを示している。
【0073】
実施例4.行動研究
頭のけいれん反応(HTR)は、幻覚剤と非幻覚剤の5-HT2A受容体アゴニストを確実に区別できるため、ヒトの幻覚作用のげっ歯類における行動の代用として使用できる。幻覚剤の弁別刺激効果と同様に、HTRは、5-HT2A活性化の行動読み出しとして機能し、5-HT2A受容体アゴニストのインビボでの効力を比較するために使用することができる。HTR研究は、C57BL/6Jマウスにおいて、(R)-DOIおよび2C-iBuを用いて実施した。
【0074】
材料および方法
本実施例で報告されている結果を取得するために、以下の方法を使用した。
【0075】
動物
Jackson Laboratories(Bar Harbor、ME,USA)から入手した雄性C57BL/6Jマウス(6~8週齢)を、逆光サイクル(1900時で点灯、0700時にオフ)で温度管理された部屋にケージあたり最大4匹で飼育し、行動試験中を除いて、食物と水への自由なアクセスを提供した。試験は1000時から1800時の間に実施した。
【0076】
薬物
薬物用量は、等価な遊離塩基重量に基づいている。試験物質を滅菌等張食塩水に溶解し、5mL/kgの量で皮下(SC)注射した。
【0077】
頭のけいれん反応研究
HTRは、公知の方法に従って、ヘッドマウント磁石と磁力計検出コイルを使用して評価した。簡単に説明すると、マウスに麻酔をかけ、頭皮に小さな切開を入れ、歯科用セメントを使用して頭蓋の背面に小さなネオジム磁石を取り付けた。2週間の回復期間の後、HTR実験は、キャリーオーバーの影響を回避するために、セッションの間に少なくとも7日間、明るい部屋で実行した。試験化合物は、試験の直前に注射した。マウスに薬物またはビヒクルを注射し、次に磁力計コイルで囲まれたガラスシリンダーの中でHTR活性を記録した。コイル電圧は、LabChart v 7.3.2((ADInstruments,Colorado Springs,CO,USA)を備えたPowerlab/8SPを使用して、ローパスフィルター処理(2~10kHzカットオフ周波数)、増幅、およびデジタル化(20kHzサンプリングレート)され、次いでオフラインフィルター処理した(40~200Hz帯域通過)。頭のけいれんは、次の判断基準に基づいて手動で識別した。1)正弦波、2)周波数が40Hz以上の少なくとも3回の連続した頭の動き(通常は双極ピークとして示される)の証拠、3)バックグラウンドノイズのレベルを超える振幅、4)持続時間<0.15秒、および5)各反応の直前と直後の安定したコイル電圧。
【0078】
実験計画およびデータ分析
実験1.マウスの5つのグループ(n=6/グループ、合計30)をビヒクルまたはR-DOI(0.1、0.3、1、または3mg/kg)で処理し、HTR活性を30分間評価した。実験2.マウスの5つのグループ(n=6~7/グループ、合計34)をビヒクルまたは2C-iBu(0.3、1、3、または10mg/kg)で処理し、HTR活性を30分間評価した。実験3.マウスの2つのグループ(n=7/グループ、合計14)をR-DOI(1mg/kg)または2C-iBu(3mg/kg)で処理し、HTR活性を210分間評価した。
【0079】
実験1と実験2では、30分間の記録全体で頭のけいれんを調べ、一元配置分散分析(ANOVA)を使用して頭のけいれんカウントを分析した。さらに、HTRカウントは、反復測定としての時間を用いて、一元配置ANOVAを使用して2分間の時間ブロックで分析した。選択したグループ間の事後ペアワイズ比較は、テューキーのスチューデント化範囲法を使用して実行した。有意性は、0.05のαレベルを超えることによって実証した。
【0080】
有効用量の中央値(ED
50値)と95%信頼区間(95%CI)は、非線形回帰(Prism 7.00,GraphPad Software、San Diego,CA,USA)によって計算した。ガウス分布を使用して、二相性HTR用量反応データを適合させた。
これらの式で、Eは薬物の効果、ベースラインは対照グループの反応、範囲はベースラインから曲線の最上部までの距離、[A]は薬物の用量、空中は曲線の上端に対応する用量の対数である。効力差が個々の化合物の間に存在するかどうかを決定するために、エクストラ二乗和のF検定を使用して、ED
50値を比較した。有意性は、0.05のαレベルを超えることによって実証した。
【0081】
実験3では、HTRカウントを5分間の時間ブロックで調べた。薬物反応の半減期を決定するために、データの下降相に一相指数関数的減衰関数をフィットさせた。R-(-)-DOI(1mg/kg)またはELEU02によって生成された応答は、反復測定としての時間を用いて、一元配置ANOVAを使用して分析した。グループ間の事後ペアワイズ比較は、Sidakの多重比較検定を使用して実行した。有意性は、0.05のαレベルを超えることによって実証した。
【0082】
結果
実験1
(表6)R-DOIによって誘発されるHTR
**p<0.01対ビヒクル対照、テューキーの検定。
【0083】
R-DOIの投与により、HTRカウントの用量依存的な増加を生じた(F(4,25)=13.70、p<0.0001、
図5Aおよび表6)。R-DOIによって誘発されたHTRは、逆U字型の用量反応関数に従い、1mg/kgの投与後にピーク反応が発生した(128.0±13.2[平均±SEM]カウント/30分)。
【0084】
R-DOIは、ED50が0.20(95%CI 0.11~0.35)mg/kgのHTRを誘発した。モル質量に基づくと、R-DOIのED50は0.63(95%CI 0.35~1.10)μmol/kgである。興味深いことに、R-(-)-DOIを他の点では同一の実験条件下でIP投与すると、ED50が0.66(95%CI 0.47~0.93)μmol/kgのHTRが誘導される。エクストラ平方和のF検定を使用するED50の値の比較は、R-DOIの効力が有意にその投与経路(F(1,52)=0.03、P=0.87)の影響を受けないことを確認した。
【0085】
R-DOIへの応答も2分間の時間ブロックで分析した。
図5Bに示されるように、R-DOIに対する応答は時間依存性であった(薬物×時間:F(56,350)=2.93、p<0.0001)。注射と最大効果の間隔は、R-DOIの投与量に反比例した。最大応答は、0.3mg/kgの投与後24~26分、1mg/kgの投与後4~6分、および3mg/kgの投与後2~4分間で発生した。
【0086】
実験2
(表7)2C-iBuによって誘発されるHTR
*p<0.05、**p<0.01対ビヒクル対照、テューキーの検定。
【0087】
2C-iBuの投与により、HTRカウントが用量依存的に生成した(F(4,29)=28.36、p<0.0001、
図6A)。R-DOIと同様に、2C-iBuによって誘発されたHTRは、逆U字型の用量反応関数に従い、3mg/kg(111.1±4.7カウント/30分)の投与後にピーク反応が発生した。
【0088】
2C-iBuは、ED50が0.70(95%CI 0.52~0.93)mg/kgのHTRを誘発した。モル質量に基づくと、2C-iBuのED50は2.17(95%CI 1.63~2.89)μmol/kgであり、これは、R-DOIの約3分の1の行動効力があることを意味する。エクストラ二乗和のF検定により、2C-iBuはR-DOIよりも行動効力が有意に低いことを確認した(F(1,58)=12.92、p=0.0007)。
【0089】
2C-iBuへの応答も2分の時間ブロックで分析した。
図6Bに例証されるように、2C-iBuに対する応答は時間依存性であった(薬物×時間:F(56,406)=3.80、p<0.0001)。注射と最大効果の間隔は、2C-iBuの投与量に反比例した。最大応答は、1mg/kgの投与後24~28分、3mg/kgの投与後18~24分、および10mg/kgの投与後2~4分で発生した。
【0090】
実験3
次に、R-DOIおよび2C-iBuによって生成された応答の時間経過を特徴付けした。この実験のために、マウスを最大有効用量のR-DOI(1mg/kg SC)および2C-iBu(3mg/kg SC)で処理し、HTR活性を210分間継続的にモニターした。
【0091】
1mg/kg R-DOIによって誘発されたHTRは、投与後5~10分でピークに達し(23.3±3.5カウント/5分)、その後、試験セッションの残りの部分で徐々に減少した(
図7)。ピーク後のデータを1相指数関数的減衰関数でフィッティングすると、応答の半減期は84.64分(95%CI:77.65~93.0分;r
2=0.684)であることが示された。
【0092】
3mg/kgの2C-iBuによって誘発されたHTRは、投与の20~25分後にピークに達し(20.1±3.5カウント/5分)、その後、試験セッションの残りにわたって徐々に減少した(
図7)。ピーク後のデータを1相指数関数的減衰関数でフィッティングすると、応答の半減期は111.4分(95%CI:100.1~125.4分;r
2=0.5709)であることが示された。
【0093】
R-DOIおよび2C-iBuによって生成された応答の時間経過を分析することに加えて、本発明者らはまた、それらの効果を直接比較した。薬物治療の主な効果はなかったが(F(1,12)=0.33、p=0.58)、時間の主な効果(F(41,192)=39.55、p<0.0001)および、薬物治療と時間との間の有意な相互作用が存在した(F(41,492)=4.36、p<0.0001)。事後のペアワイズ比較では、最初と2番目の5分間の時間ブロックの間、R-DOIと2C-iBuの効果の間のみに有意差が存在したことを示した(p<0.0001、Sidakの多重比較検定)。
【0094】
これらのデータは、2C-iBuが、5-HT2A受容体媒介性精神活性の齧歯類モデルにおける頭部けいれん応答の誘発におけるR-DOIよりも効力が約3倍程度低かったことを実証する。さらに、2C-iBuは、R-DOIと比較して、頭のけいれん行動を誘発する際のピーク応答までの時間の有意な遅延を実証した。他方、実施例3は、2C-iBuの治療効力が、齧歯類喘息性炎症モデルにおいてAHRを低下させる点でR-DOIと同様であることを実証した。したがって、2C-iBuは炎症の疾患モデルにおいて関心のある治療特性を保持するが、これらの結果は、この化合物が望ましくない精神活性効果を誘発する際にR-DOIと同じ傾向を共有しないことを示す。
【0095】
実施例5.5-HT受容体結合研究
この実施例では、様々な5-HT受容体の結合アッセイにおけるR-DOIと2C-iBuの試験について説明する。放射性リガンド結合は、Auld et al.(Receptor Binding Assays for HTS and Drug Discovery.2012.In:Sittampalam et al.,editors.Assay Guidance Manual[Internet],Bethesda(MD):Eli Lilly & Company and the National Center for Advancing Translational Sciences;2004)に記載されるように、一般的に受け入れられている方法論に従って、Cerep Eurofins Discovery and gold standard filtration法における標準状態を使用して、膜の調製から組換え発現したヒト受容体において、表8に示すリガンドを使用して、平衡状態で評価した。各試験化合物を滴定し、競合結合条件下でいくつかの濃度で試験して、最大阻害濃度の半分(IC50)とその見かけの結合親和性(平衡解離定数(Ki))を決定した。IC50値(対照特異的結合の最大阻害の半分を引き起こす濃度)およびHill係数(nH)は、Hill方程式曲線フィッティングを使用する平均複製値を用いて生成された競合曲線の非線形回帰分析によって決定した。この分析は、Cerepで開発されたソフトウェア(Hill software)を使用して実施され、商用ソフトウェアSigmaPlot(登録商標)4.0forWindows(登録商標)((著作権)1997 by SPSS Inc.)によって生成されたデータとの比較によって検証した。抑制定数(Ki)は、ChengPrusoffの方程式を使用して計算した。pKi値は、平衡解離定数の10を底とする負の対数、モル濃度単位のKiとして計算され、以下の表8にリストされている。表9は、一般的に同様の実験条件下で試験された各受容体の1つの参照リガンドのpIC50の例を示す。一般に、両方の試験化合物のpKi値は、内因性リガンドであるセロトニンよりも、それらの一次または共一次受容体標的に対する親和性が高いことを示す。5-HT受容体への見かけの親和性に関するR-DOIの特異性は、_2A>_2C>_2B>>_1A=_1Bであった。5-HT受容体への見かけの親和性に関する2C-iBuの特異性は、_2C>_2A>_2B>_1A=_1B=_1C>_7>_6であった。
【0096】
【0097】
【0098】
実施例6.R-DOIおよび2C-ibuの毒性研究
R-DOIと2C-iBuの間のインビトロADME/toxメトリックの数を比較するために、インビトロタンパク質結合、吸収、およびミクロソーム固有クリアランス研究を実施した。各アッセイは標準化され、方法は、薬物開発における非GLP研究の判断基準の受け入れに合致するように、そして以下に記載されるような一般に受け入れられている方法論に従うように検証した。Chung et al.(In Vitro and In Vivo Assessment of ADME and PK Properties During Lead Selection and Lead Optimization-Guidelines,Benchmarks and Rules of Thumb.2015;In:Sittampalam et al.Assay Guidance Manual[Internet].Bethesda(MD):Eli Lilly & Company and the National Center for Advancing Translational Sciences;2004)。
【0099】
ヒト血漿中の試験化合物(R-DOIまたは2C-iBu)を使用して、インビトロタンパク質結合アッセイを実施した。R-DOIと2C-iBuは、それぞれ1.0×10-5Mの濃度で試験した。結果を以下の表10に示す。
【0100】
【0101】
インビトロ吸収アッセイは、pH6.5/7.4でCaco-2細胞とインキュベートした試験化合物(R-DOIまたは2C-iBu)を使用して実施した。R-DOIおよび2C-iBuは、それぞれ1.0×10-5Mの濃度で試験した。結果を以下の表11に示す。
【0102】
【0103】
ヒト肝ミクロソームと様々な時間(0分間、15分間、30分間、45分間、および60分間)インキュベートした試験化合物(R-DOIまたは2C-iBu)を使用して、内因性クリアランスについて試験するためにインビトロ代謝アッセイを実施した。R-DOIおよび2C-iBuは、それぞれ1.0×10-7Mの濃度で試験された。結果を以下の表12に示す。
【0104】
【0105】
一般に、両方の化合物は、PBSおよびシミュレートされた腸液水性環境で200マイクロモル濃度の最大試験濃度で完全に溶解した。2C-iBuは、R-DOIと比較して親水性プロファイルの減少を示し、生理学的pHでのlogDがR-DOIの1.04から2C-iBuの1.64に増加した。物理化学的特性のこの違いは、R-DOIおよびCaco-2 AB/BA透過性プロファイルの適度な変化と比較して、2Ci-Buの観察された血漿タンパク結合能力の増加の推進力の1つである可能性がある。R-DOIと2C-iBuは両方とも代謝的に安定した化合物であり、ヒト肝ミクロソームの内因性クリアランスアッセイではクリントが115.5未満であった。
【0106】
実施例7.炎症性関節炎の治療のための概念実証研究
コラーゲン誘発性関節炎は、ヒト関節リウマチの動物モデルである。マウスはII型コラーゲン(CII)(例えば、ウシCII)で免疫される。このモデルは、ヒトの関節リウマチを特徴付ける自然免疫および獲得免疫のメカニズムの多くを要約し、ヒトの治療法としてその後開発された治療法を試験するために使用されてきた。
【0107】
関節炎は3つのステップでC57/Bl6マウスに誘発される。マウスは、0日目に、皮下投与(sc)された、完全フロイントアジュバント中のウシCIIで免疫される。21日目に、不完全フロイントアジュバントに懸濁されたCIIによる2回目の免疫が皮下投与される。最後に、24日目に、25μgのリポ多糖が腹腔内注射を介して投与される。
【0108】
マウスは、例えば、本明細書に記載の方法に従って、投与された投与量および頻度で、非行動的に強力であることが確認された用量で、2C化合物の尾静脈注射を介して週に2回投与される。対照マウスはCIIで免疫されておらず、治療もプラセボも受けていません。マウスの10%から30%が関節炎を発症した後に治療が開始する。
【0109】
マウスは、毎日の累積疾患スコアによって評価する。最初の3週間は、週に1~2回マウスの体重を測定し、足の厚さを週に2回測定する。血液、リンパ節、脾臓、および関節は、組織病理学および免疫学的分析のために採取され、これには、血液中の抗CII抗体の力価、および炎症性サイトカインなどの、細胞によって発現され、血液中を循環する他の炎症マーカーが含まれる。
【0110】
2C化合物を受容したマウスは、対照マウスと比較して、累積スコアが低く、関節炎の四肢の頻度が低く、そして平均の足の厚さが薄い。2C化合物を受容したマウスはまた、対照マウスと比較して、より低いレベルの抗CII抗体(例えば、IgG2a)、および活性化免疫細胞および循環炎症性サイトカインなどの炎症誘発性マーカーを有する。
【0111】
実施例8.多発性硬化症の治療のための概念実証研究
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、多発性硬化症のマウスモデルであり、広範な自己免疫疾患と多くの病原性の基盤を共有している。本実施例では、2C化合物によるEAEの治療を要約する。
【0112】
EAEは、完全フロイントアジュバント中の200μgMOG35-55を皮下注射することによって、C57BL/6マウスにおいて誘発される。さらに、200ngの百日咳毒素を0日目と2日目に腹腔内(ip)投与する。
【0113】
2C化合物は、例えば、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して、非行動的に強力であることが確認された量および頻度で静脈内投与される。EAEの臨床的兆候について、マウスを10日目から開始して24日目まで連続して毎日モニターする。EAEのスコアは次のとおりであり、0、疾患の兆候なし;1、尾のトーンの喪失;2、後肢不全麻痺;3、後肢麻痺;4、四肢麻痺;そして5、瀕死である。平均スコアは、マウスの各グループについて計算する。実験の終わりに、脳、リンパ節、および脾臓を採取し、2C化合物の免疫学的効果を評価するために以下の実験を行う。
【0114】
脾臓は単一細胞懸濁液に解離し、1、10、または100μg/ mLの濃度のMOG35-55ペプチドで刺激して免疫想起を測定する。細胞増殖は、MTT細胞増殖アッセイを使用して72時間後に測定する。脳と脊髄を採取し、単一細胞懸濁液に解離する。T細胞は、磁気ビーズを使用して単離し、インターロイキン17(IL-17)およびインターフェロンガンマ(IFNγ)に対する抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析する。
【0115】
行動用量以下の用量の2C化合物を投与されたマウスは、例えば、MTTアッセイを使用する細胞増殖の低下を特徴とするように、対照マウスと比較してMOG35-55ペプチドに対してより低い想起応答を示す。行動用量以下の用量の2C化合物を受容したマウスの脳および脊髄組織からのT細胞は、対照マウスと比較して、IL-17およびIFNγなどの炎症マーカーの発現量が少ない。
【0116】
他の実施形態
本明細書に言及されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれの独立した刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0117】
本発明はその特定の実施形態に関連して説明されてきたが、それはさらなる改変が可能であり、そして、本出願は、一般に、本発明の原理に従い、そして本発明が関連し、かつ前述の本質的な特徴に適用することができ、そして特許請求の範囲に続く当技術分野における公知のまたは慣習的な慣行の範囲内にある本開示からのこのような逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、または適合を網羅することを意図することが理解される。
【0118】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。