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特許7596299建設現場における少なくとも1つの使用目的に対するコンクリートの有用性の自動的な予測
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】建設現場における少なくとも1つの使用目的に対するコンクリートの有用性の自動的な予測
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20241202BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20241202BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20241202BHJP
   E04G 21/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06N3/02
G06Q50/08
E04G21/00 ESW
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021560490
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2020057832
(87)【国際公開番号】W WO2020200847
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】102019108779.1
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521441386
【氏名又は名称】ぺリ ソシエタス ヨーロピア
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】ベヒレ ヘルムート
(72)【発明者】
【氏名】スターヴ ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】ベルンハルト ヴァネサ
(72)【発明者】
【氏名】バウマン リュディガー
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-077659(JP,A)
【文献】特開2012-159892(JP,A)
【文献】特開2017-087716(JP,A)
【文献】特開2019-211247(JP,A)
【文献】中国特許第104991051(CN,B)
【文献】特開平11-077660(JP,A)
【文献】特開平07-227832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06N 3/02
E04G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工ニューラルネットワークANN(1)を訓練するための、前記ANN(1)を備えるコンピュータによって実行される方法(100)であって、
前記ANN(1)は、コンクリートバッチ(2)に関して、前記バッチ(2)の材料組成を特徴付ける特徴量(21)のセットと、前記バッチ(2)の力学的なコンシステンシについての少なくとも1つの尺度(22)を入力として、建設現場における少なくとも1つの使用目的に対する前記バッチ(2)の有用性を特徴付ける品質尺度(23a,23b)を予測および/または分類するよう、前記コンピュータを機能させるものであり、前記ANN(1)の挙動は、パラメータ(12)のセットによって特徴付けられており、
当該方法(100)は、
・前記バッチ(2)の材料組成を特徴付ける特徴量(21)のセットと、前記バッチ(2)の力学的なコンシステンシについての少なくとも1つの尺度(22)と、前記建設現場における少なくとも1つの使用目的に対する前記バッチ(2)の有用性を特徴付ける品質尺度(23a,23b)についての少なくとも1つの値とをそれぞれ含む、一連の学習データセット(3)を受け付けるステップ(110)と、
・それぞれの前記学習データセット(3)に関して、当該学習データセット(3)に含まれている前記特徴量(21)のセットと、当該学習データセット(3)に含まれている前記力学的なコンシステンシについての尺度(22)とを、それぞれ入力(11)としてを受け付け、前記少なくとも1つの品質尺度(23a,23b)についての予測および/または分類(23a*,23b*)を出力する(13)ステップ(120)と、
・前記品質尺度(23a,23b)についての前記予測および/または分類(23a*,23b*)を、前記学習データセット(3)に含まれている前記品質尺度(23a,23b)についての値と比較するステップ(130)と、
・前記比較(130)において決定された偏差Δに依存しているコスト関数(14)を評価するステップ(140)と、
・前記ANN(1)の前記パラメータ(12)を、前記コスト関数(14)の値を改善するという最適化目標によって適応化するステップ(150)と
を有し、
・前記ANN(1)は、前記コンクリートバッチ(2)に帰せられる気候影響についての特徴量である少なくとも1つの気候量(23c)を追加的に予測および/または分類するように、前記コンピュータを機能させ、
・学習データセット(3)は、当該学習データセット(3)が関連するそれぞれの前記コンクリートバッチ(2)についての前記気候量(23c)の値もそれぞれ含み、
・前記ANN(1)は、前記学習データセット(3)の前記特徴量(21)と前記力学的なコンシステンシについての尺度(22)とから、前記気候量(23c)についての予測(23c*)も追加的に決定する(121)ように、前記コンピュータを機能させ、
・前記気候量(23c)についての前記予測(23c*)を、それぞれの前記学習データセット(3)に含まれている前記気候量(23c)についての値と比較し(131)、
・前記コスト関数(14)は、前記比較(131)において決定された偏差Δ’に追加的に依存している(141)、
方法(100)。
【請求項2】
前記気候量(23c)は、前記コンクリートバッチ(2)の製造および/または使用により放出される、かつ/または前記コンクリートバッチ(2)に結び付けられる少なくとも1つの温室効果ガスの量についての尺度を含む、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記学習データセット(3)は、
・前記コンクリートバッチ(2)のために使用される少なくとも1つの原材料が入手された場所の識別子(24)、および/または
・前記コンクリートバッチ(2)の納入者の識別子(25)、および/または
・前記品質尺度(23a,23b)が規定された時点における周囲温度についての尺度(26)、および/または
・前記建設現場に何が構築されているかに関する情報、および/または
・前記コンクリートバッチ(2)がどこに納入されるかに関する情報、および/または
・建設されるべき建築物に関する、少なくとも抜粋の形態での計画データ、および/または
・建設されるべき建築物のビルディングインフォメーションモデルBIMからの少なくとも抜粋、および/または
・前記コンクリートバッチ(2)の少なくとも1つの成分の原産地、種類、および/またはコンシステンシに関する情報、および/または
・前記コンクリートバッチの少なくとも1つの成分が、どのくらいの割合で天然に入手された材料であるのか、および当該成分がどのくらいの割合でリサイクル材料であるのかに関する情報
を、前記ANN(1)に供給されるべきさらなる入力(11)として追加的に含む、
請求項1または2記載の方法(100)。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法(100)によって訓練された、人工ニューラルネットワークANN(1)。
【請求項5】
建設現場におけるコンクリートバッチ(2)の有用性を予測および/または分類するための、ANN(1)を備えるコンピュータによって実行される方法(200)であって、
当該方法(200)は、
・前記バッチ(2)の材料組成を特徴付ける特徴量(21)のセットを決定するステップ(210)と、
・前記バッチ(2)の力学的なコンシステンシについての少なくとも1つの尺度(22)が決定するステップ(220)と、
・前記特徴量(21)と、前記力学的なコンシステンシについての尺度(22)とを、訓練されたANN(1)に入力(11)として供給されるステップ(230)と、
・前記建設現場における少なくとも1つの使用目的に対する前記バッチ(2)の有用性についての品質尺度(23a,23b)の少なくとも1つの予測および/または分類(23a*,23b*)を、前記ANN(1)からの出力(13)として取得するステップ(240)と
を有し、
前記訓練されたANN(1)から、前記コンクリートバッチ(2)に帰せられる気候影響についての特徴量である気候量(23c)の少なくとも1つの予測および/または分類(23c*)が、出力(13)として追加的に取得される(242)、方法(200)。
【請求項6】
前記気候量(23c)は、前記コンクリートバッチ(2)の製造および/または使用により放出される、かつ/または前記コンクリートバッチ(2)に結び付けられる少なくとも1つの温室効果ガスの量についての尺度を含む、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ANN(1)には、
・前記コンクリートバッチ(2)のために使用される少なくとも1つの原材料が入手された場所の識別子(24)、および/または
・前記コンクリートバッチ(2)の納入者の識別子(25)、および/または
・前記建設現場における周囲温度についての尺度(26)
が、入力(11)として追加的に供給される、
請求項5または6記載の方法(200)。
【請求項8】
第1の使用目的に対して予測された品質尺度(23a*)が所定の品質基準を満たしていないことに応答して、第2の使用目的に対するさらなる予測および/または分類(23b*)が、訓練されたANN(1)から出力として取得される(241)、
請求項5から7までのいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項9】
或る使用目的に対して予測された品質尺度(23a*,23b*)が所定の品質基準を満たしていることに応答して、前記バッチ(2)を当該使用目的に供給するための手段が駆動される(250)、
請求項5から8までのいずれか1項記載の方法(200)。
【請求項10】
前記所定の品質基準は、前記コンクリートバッチ(2)についての予測された気候量(23c*)に追加的に依存している、
請求項9記載の方法(200)。
【請求項11】
コンクリートバッチ(2)の使用を追跡するためのコンピュータにより実行される方法(300)であって、
当該方法(300)は、
・前記バッチ(2)の材料組成を特徴付ける特徴量(21)のセット、および/または前記特徴量(21)から形成される1つまたは複数のハッシュ値を、前記バッチ(2)に関連付けてブロックチェーン(4)内に格納するステップ(310)と、
・前記バッチ(2)の力学的なコンシステンシについての尺度(22)を、物理的に決定し(320)、前記バッチ(2)に関連付けられて前記ブロックチェーン(4)内に格納するステップ(330)と、
・建設現場における少なくとも1つの使用目的に対する前記バッチ(2)の有用性についての品質尺度(23a,23b)を、前記特徴量(21)と前記力学的なコンシステンシに基づいて決定し(340)、前記バッチ(2)に関連付けて前記ブロックチェーン(4)内に格納するステップ(350)と
を有し、
前記コンクリートバッチ(2)に帰せられる気候影響についての特徴量である少なくとも1つの気候量(23c)を追加的に決定するステップ(343)と、前記少なくとも1つの気候量を前記バッチ(2)に関連付けて前記ブロックチェーン(4)内に格納する(353)ステップと、
をさらに有する、方法(300)。
【請求項12】
追加的に、
・前記コンクリートバッチ(2)のために使用される少なくとも1つの原材料が入手された場所の識別子(24)、および/または
・前記コンクリートバッチ(2)の納入者の識別子(25)、および/または
・前記品質尺度(23a,23b)が規定された時点における周囲温度についての尺度(26)
が、前記バッチ(2)に関連付けて前記ブロックチェーン(4)内に格納される(335)、
請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記品質尺度(23a,23b)は、
請求項5から10までのいずれか1項記載の方法(200)によって予測および/または分類(23a*,23b*)として決定され(341)、かつ/または
請求項5から10までのいずれか1項記載の方法(200)によって得られた予測および/または分類(23a*,23b*)によって妥当性チェックされる(342)、
請求項11または12記載の方法(300)。
【請求項14】
前記建設現場において前記コンクリートバッチ(2)が使用される実際の使用目的(27)が、前記バッチ(2)に関連付けられて前記ブロックチェーン(4)内に格納される(360)、
請求項11から13までのいずれか1項記載の方法(300)。
【請求項15】
前記ブロックチェーン(4)上で動作するスマートコントラクト(5)により、前記バッチ(2)に関連付けられて前記ブロックチェーン(4)内に格納されたデータに基づいて、事前に規定された基準(5a)に即して、前記バッチ(2)に対する価格(2a)が決定され(370)、前記バッチ(2)の前記納入者に貸方記入される(380)、
請求項12記載の方法(300)。
【請求項16】
前記建設現場において前記コンクリートバッチ(2)が使用される実際の使用目的(27)が、前記バッチ(2)に関連付けられて前記ブロックチェーン(4)内に格納され(360)、
前記ブロックチェーン(4)上で動作するスマートコントラクト(5)により、前記バッチ(2)に関連付けられて前記ブロックチェーン(4)内に格納されたデータに基づいて、事前に規定された基準(5a)に即して、前記バッチ(2)に対する価格(2a)が決定され(370)、前記バッチ(2)の前記納入者に貸方記入され(380)、
前記事前に規定された基準(5a)は、少なくとも、
前記建設現場における前記少なくとも1つの使用目的に対する前記バッチ(2)の有用性についての前記品質尺度(23a,23b)に依存しており、かつ/または
前記建設現場において前記バッチ(2)が使用された前記実際の使用目的に依存している、
請求項12記載の方法(300)。
【請求項17】
前記事前に規定された基準(5a)は、前記バッチ(2)についての前記気候量(23c)に追加的に依存している、
請求項16記載の方法(300)。
【請求項18】
1つまたは複数のコンピュータ上で実行された場合に、前記1つまたは複数のコンピュータに、請求項1から3、5から17までのいずれか1項記載の方法(100,200,300)を実行させるための機械可読命令を含む、1つまたは複数のコンピュータプログラム。
【請求項19】
請求項18記載の1つまたは複数のコンピュータプログラムを有する、機械可読媒体。
【請求項20】
請求項18記載の1つまたは複数のコンピュータプログラムが読み込まれたコンピュータシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設現場における外部から納入されたコンクリートバッチの評価および後続処理に関する。
【0002】
関連出願の参照
本願は、2019年4月3日に出願された独国特許出願公開第102019108779.1号明細書の優先権を主張するものであり、その全範囲を参照により本明細書に援用するものとする。
【0003】
従来技術
建設現場におけるコンクリートの処理は、ある程度までしか事前に計画することができない。1つの建設現場は、ある意味で常に1のバッチサイズであり、すなわちワンオフの製作物である。例えば、使用されるべきコンクリートの要件は、具体的な型枠の条件に多方面で依存している。また、コンクリートの特性は、事前に規定されたレシピが正確に遵守されたとしても、いつどこでも同じになるとは限らない。なぜなら、例えば砂および砂利の物理的な特性は、これらの天然の原材料の入手元となった天然の貯蔵所ごとにそれぞれ異なっているからである。
【0004】
したがって、具体的に納入されたコンクリートバッチが、建設現場において具体的に企図された使用目的に適していないという状況が発生することがある。このような状況は、そのバッチを具体的にどのように取り扱うべきかについての迅速な解決策を必要とし、既に型枠を組み終えた現場において、使用可能なコンクリートを待たなければならなくなるので、遅延につながる。
【0005】
課題および解決策
したがって、本発明の課題は、具体的なコンクリートバッチの有用性をより良好に予測可能にすることである。
【0006】
上記の課題は、本発明によれば、独立請求項に記載の人工ニューラルネットワークを訓練するための方法と、別の独立請求項によるコンクリートバッチの有用性を予測および/または分類するための方法と、さらに別の独立請求項によるコンクリートバッチの使用を追跡するための方法とによって解決される。さらなる有利な実施形態は、これらの独立請求項を引用する従属請求項から明らかになる。
【0007】
発明の開示
本発明の枠内において、人工ニューラルネットワークANNを訓練するための方法が開発された。このANNは、建設現場におけるコンクリートバッチの有用性についての少なくとも1つの品質尺度を予測および/または分類する。ANNの挙動は、パラメータのセットによって特徴付けられており、これらのパラメータのセットは、例えば重みを含むことができ、これらの重みを用いて、ニューロンおよび/またはその他の計算ユニットにそれぞれ供給される、ニューロンを活性化させるための入力が計算される。
【0008】
当該方法では、一連の学習データセットが用意される。それぞれの学習データセットは、コンクリートバッチに関して、バッチの材料組成を特徴付ける特徴量のセットを含む。材料組成は、例えばコンクリートの成分の種類および混合比を含むことができる。
【0009】
学習データセットは、例えば規格化された広がり試験を用いて決定することができる例えば流動性のような、バッチの力学的なコンシステンシについての少なくとも1つの尺度をさらに含む。
【0010】
学習データセットは、建設現場における少なくとも1つの使用目的に対するバッチの有用性を特徴付ける品質尺度についての少なくとも1つの値をさらに含む。この品質尺度は、例えばそれぞれのコンクリートバッチに関して、人間の専門家によって経験的に決定されたものであり得る。品質尺度は、最も単純なケースではバイナリ(それぞれの使用目的に対する承認または拒否)であり得るが、例えば、それぞれの使用目的に関連するスカラーの品質指標を示すこともできる。建設現場における複数の異なる使用目的に関する品質尺度を、ただ1つのANNがとりわけ同時に提供することができ、これらの品質尺度は、例えば1つのベクトルに統合される。とりわけ例えば、コンクリートバッチの硬化の時間-温度挙動は、品質尺度に対して決定的な影響を与える可能性がある。例えば、コンクリートから型枠を取り外して、その型枠部材を次のサイクルの型枠を組むために利用することが可能となる程度までコンクリートが所定の温度で硬化するために、どのくらいの時間がかかったかを問い合わせることができる。コンクリートバッチの多数の状態におけるパターンの認識を、例えばコンクリートの品質を改善するために利用することができる。
【0011】
訓練時には、それぞれの学習データセットに関して、当該学習データセットに含まれている特徴量のセットと、当該学習データセットに含まれている力学的なコンシステンシについての尺度とが、それぞれ入力としてANNに供給されて、ANNから少なくとも1つの品質尺度についての予測および/または分類が出力として得られる。品質尺度についてのこの予測および/または分類が、学習データセットに含まれている品質尺度についての値と比較される。比較において決定された偏差Δに依存しているコスト関数が使用される。ANNのパラメータおよび/または学習データセットが、コスト関数の値を改善するという最適化目標によって適応化される。学習データセットの適応化は、例えば、データ内にエラーまたは不確実性を有している学習データセットを、このような学習データセットが訓練の結果を改ざんしないように、過小評価または破棄することを含むことができる。
【0012】
ANNのパラメータは、例えばランダムな開始値から出発してそのような訓練の過程で発展して、ANNが、それぞれの学習データセットに含まれている特徴量に関して、力学的なコンシステンシについてのそれぞれの尺度と一緒に、学習データセットに含まれている有用性についての品質尺度を多かれ少なかれ良好に予測するようにする。このことはつまり、学習データセットとなるように収集された、複数の異なるコンクリートバッチの有用性に関する経験を利用して、将来のバッチの有用性についての的確な予測を出力することが可能であるということを意味する。一連の学習データセットが十分に大量かつ多様である場合には、ANNは、学習データセットに含まれている知識を一般化することにより、その後も、特徴量と力学的なコンシステンシとの完全に未知の組み合わせに関して、建設現場における具体的な使用目的に対する該当のコンクリートバッチの有用性についての品質尺度を十分に正確に予測することができる。正にこのANNの一般化する能力が、コンクリートの評価に関連して重要となる。冒頭で述べたようにコンクリートは、それぞれの納入者の地元の貯蔵所から入手される天然資源から製造される。同種の建築物が同じ型枠を用いて遠く離れた場所に建設される場合には、例えば砂および砂利が、他の天然の貯蔵所に由来し、したがって最初の建設現場とは異なる物理的特性を有することとなる可能性が非常に高い。
【0013】
例えば、第1の建設現場から近隣の第2の建設現場への移行中に、例えば前任の納入者が目下多忙であるという理由でコンクリートの納入者を変更しなければならなくなった場合にも、同様の影響が発生する可能性がある。それぞれ異なる納入者同士は、基本的に各自の原材料源を互いに共有していない。
【0014】
さらに、複数の異なるコンクリートバッチ間の違いは、例えば温度に応じて異なる強さで出現する可能性がある。したがって、例えば、真夏における材料組成の変更は、コンクリートの流動性に対して殆ど影響を与えないが、その一方で、コンクリートの同じ変更を冬に行うと、格段に粘性が高くなる可能性がある。
【0015】
したがって、さらなる特に有利な実施形態では、学習データセットは、
・コンクリートバッチのために使用される少なくとも1つの原材料が入手された場所の識別子、および/または
・コンクリートバッチの納入者の識別子、および/または
・品質尺度が規定された時点における周囲温度についての尺度、および/または
・建設現場に何が構築されているかに関する情報、および/または
・コンクリートバッチがどこに納入されるかに関する情報、および/または
・建設されるべき建築物に関する、少なくとも抜粋の形態での計画データ、および/または
・建設されるべき建築物のビルディングインフォメーションモデルBIMからの少なくとも抜粋、および/または
・コンクリートバッチの少なくとも1つの成分の原産地、種類、および/またはコンシステンシに関する情報、および/または
・コンクリートバッチの少なくとも1つの成分が、どのくらいの割合で天然に入手された材料であるのか、および当該成分がどのくらいの割合でリサイクル材料であるのかに関する情報
を、ANNに供給されるべきさらなる入力として追加的に含む。
【0016】
BIMは、建設されるべき建築物の「デジタルツイン」として見なされるべきであり、例えば、建築物の幾何学的構造に加えてさらに、どの現場でどのコンクリート品質を使用すべきであるかに関する情報を含むことができる。少なくとも1つの成分のコンシステンシ、および全体としてのコンクリートバッチのコンシステンシも、例えば広がり試験を用いて測定することができる。コンクリートバッチの少なくとも1つの成分がどの程度までリサイクル材料であるかに関する情報を利用して、例えば、全体としてのコンクリートの品質に悩むことなく、資源を節約する目的で、天然で入手される材料のうちのどのくらいの割合をリサイクル材料によって置き換えることができるかを調べることができる。
【0017】
特に有利な実施形態では、訓練されるべきANNは、コンクリートバッチの少なくとも1つの気候量を追加的に予測および/または分類するように構成されている。気候量は、コンクリートバッチに帰せられる気候影響についての特徴量である。
【0018】
相応にして、学習データセットのうちの少なくともいくつか、好ましくは全ての学習データセットは、これらの学習データセットが関連するそれぞれのコンクリートバッチについての気候量の値もそれぞれ含む。訓練中に、ANNは、学習データセット内の特徴量と力学的なコンシステンシについての尺度とから、気候量についての予測も追加的に決定する。この予測は、それぞれの学習データセットに含まれている気候量についての値と比較される。したがって、訓練のために使用されるコスト関数は、この比較において決定された偏差Δ’にも依存している。
【0019】
このようにして、訓練が完了したANNは、それぞれのコンクリートバッチの気候影響も定量化することが可能となる。これによって例えば、多数のコンクリートバッチから建築された建築物全体の気候影響をより高精度に決定することが可能となる。種々異なる国々および地域において官製の管理システムが議論または構築されており、このシステムによれば、特定の活動を通じて気候影響の原因となっているあらゆる市民および企業は、この影響に応じて等級付けされた税金または課税の義務を負い、かつ/または国内的または国際的な排出権取引において相応の汚染権を購入する必要がある。したがって、建築物を建設するためにかかる総コストは、将来的に、使用されるコンクリートの気候影響に大きく依存することになるであろう。環境法がさらに厳しくなると、過度の気候影響に基づいて建築プロジェクトを中断しなければならなくなるか、または最初から全く開始してはいけなくなるおそれもある。
【0020】
今日でも既に、気候影響の見込みは、建築物の建設をめぐる入札競争における、かつ建築物の環境認証のための、重要な要因である。例えば、建築物の建設に対する公的財政支援は、建築物が環境認証のための基準を満たしているという条件に結び付けられている場合がある。建築許可も、そのような条件に結び付けられる場合がある。
【0021】
気候量は、とりわけ例えば、コンクリートバッチの製造および/または使用により放出される、かつ/またはコンクリートバッチに結び付けられる少なくとも1つの温室効果ガスの量についての尺度を含むことができる。温室効果ガスとして、ここではとりわけ、例えばセメントの製造中および処理中に発生するCO2が問題となる。気候量は、例えば重み付けシステムまたはポイントシステムに従って、種々異なる種類の気候影響を集約することもできる。
【0022】
訓練が完了したANNは、建設現場におけるコンクリートバッチの有用性を予測および/または分類するための方法において利用される。上述のように、ANNは、一度訓練されるだけでよく、その後は、多数の完全に未知の状況においても利用可能となる。訓練されたANNからのこのいわゆる推論は、訓練よりも格段に少ない計算能力しか必要とせず、したがって、例えば、建設現場において利用可能な移動機器によっても良好に実行可能である。
【0023】
有用性を予測および/または分類するために、バッチの材料組成を特徴付ける特徴量のセットが決定される。さらに、バッチの力学的なコンシステンシについての少なくとも1つの尺度が決定される。この決定は、それぞれ製造者情報に基づいて、(例えば、広がり試験を用いた)測定に基づいて、または製造者情報と測定との任意の組み合わせに基づいて実施可能である。
【0024】
特徴量と、力学的なコンシステンシについての尺度とが、訓練されたANNに入力として供給される。建設現場における少なくとも1つの使用目的に対するバッチの有用性についての品質尺度の少なくとも1つの予測および/または分類が、ANNから出力として取得される。
【0025】
上記と同様に、訓練されたANNから、コンクリートバッチに帰せられる気候影響についての特徴量である気候量の少なくとも1つの予測および/または分類を、出力として追加的に取得することができる。この気候量は、とりわけ例えば、コンクリートバッチの製造および/または使用により放出される、かつ/またはコンクリートバッチに結び付けられる少なくとも1つの温室効果ガスの量についての尺度を含むことができる。
【0026】
上記と同様に、ANNには、
・コンクリートバッチのために使用される少なくとも1つの原材料が入手された場所の識別子、および/または
・コンクリートバッチの納入者の識別子、および/または
・建設現場における周囲温度についての尺度
を、入力として追加的に供給することができ、これにより、これらの影響量が有用性に対して与える影響を考慮することができる。
【0027】
さらなる特に有利な実施形態では、第1の使用目的に対して予測された品質尺度が所定の品質基準を満たしていないことに応答して、第2の使用目的に対するさらなる予測および/または分類が、訓練されたANNから出力として取得される。上述のように、例えば1つのベクトルに統合される、複数の異なる使用目的に対する複数の品質尺度についての予測および/または分類を、同じ1つのANNが一度に提供することができる。換言すれば、ANNの同じ1つの学習データプールを評価することにより、非常に相異なる複数の使用目的に対する1つまたは複数の予測を提供することができる。
【0028】
このようにして、例えば、所定のレシピを名目上遵守しているにもかかわらずコンクリートバッチが第1の使用目的に適していないことが判明するという冒頭で述べた驚くべき状況において、使用するための迅速な代替物を用意することが可能となる。一度混合されたコンクリートは、絶えず動かされなければならず、動きが止まるとすぐに硬化し始めるので、基本的に、代替物を探索するためにあまり多くの時間を利用することはできない。ANNを介した自動的な探索により、とりわけコンクリートバッチが、高価値で依然として利用可能な用途へと供給されることが保証される。これにより、建設現場においてコンクリートバッチを全く使用することができずに廃棄物として処分しなければならなくなる蓋然性が低減される。
【0029】
さらなる有利な実施形態では、或る使用目的に対して予測された品質尺度が所定の品質基準を満たしている場合に、バッチを当該使用目的へと供給するための手段を駆動することができる。例えば、コンクリートのための少なくとも1つの分配装置または圧送装置を、使用目的に従ってバッチが必要とされる場所へと導かれるように駆動することができる。例えば、建設現場におけるバッチのための企図された使用場所へと移動するように、かつ所定の空間にバッチを充填するように、人間によってまたは自動的に制御されるコンクリート輸送車へ電子的な命令を送信することもできる。
【0030】
さらなる特に有利な実施形態では、品質基準は、コンクリートバッチについての予測された気候量に追加的に依存することができる。気候影響が建設プロジェクト全体の枠内でどのくらいの相対的意義を有するかに応じて、気候量を、本来の品質尺度に対して任意に重み付けすることができる。
【0031】
この場合、気候量によって定量化可能な気候影響と、意図された用途に関連する品質尺度によって定量化可能なコンクリートの品質とを、例えば互いに非線形に結合することができる。したがって、例えば、コンクリートの品質が向上して、その品質尺度が80%から100%に増加した場合に、気候影響を5倍に引き上げるようなエネルギ投入および材料投入が必要となる可能性がある。
【0032】
このこと自体が既に、建設プロジェクトの計画段階に対して影響を与える可能性がある。わずかなコンクリート量で対処することができ、かつこのために100%の品質と、最高のエコロジカル「フットプリント」とを有するコンクリートを必要とするような幅狭のコンクリート建造物は、前述の管理システムによれば非常に高いペナルティが課せられる可能性があるので、2倍のコンクリート量を有するもののこのために80%の品質を有するだけでよい比較的嵩高の建造物の方が、より経済的である。
【0033】
本発明は、上記の方法に密接に関係している、コンクリートバッチの使用を追跡するための方法にも関する。当該方法では、バッチの材料組成を特徴付ける特徴量のセット、および/またはこれらの特徴量から形成される1つまたは複数のハッシュ値が、バッチに関連付けられてブロックチェーン内に格納される。
【0034】
ブロックチェーンは、この文脈では分散型データメモリであり、分散型データメモリでは、それぞれペイロードを含むブロックが、前のブロックの1つまたは複数のハッシュ値も追加的に含む。このようにして、ブロック同士が互いにチェーンされており、チェーン内の後続する全てのブロックも相応に適応化されない限り、チェーン内の複数のブロックのうちの1つのブロック内のペイロードを気付かれずに変更することが不可能になっている。しかしながら、ブロックチェーンは、とりわけインターネットのような分散型ネットワークでは、ネットワークの複数の参加者が、複雑な計算タスクを解くことにより次のブロックをブロックチェーンに追加可能にすることを求めて「応募」する必要があるように、管理されていることが多い。したがって、履歴を後から変更するためには、大抵、技術的および経済的にもはや負担しきれないコストが必要となる。ブロックチェーンの著名な例は、世界中に存在する全てのビットコインのためのグローバルな「登記簿」として機能するビットコイン・ブロックチェーンと、イーサリアム・ブロックチェーンとである。後者のイーサリアム・ブロックチェーンは、ビットコイン・ブロックチェーンと同様に、暗号通貨エーテルの全てのユニットのための「登記簿」として機能するだけでなく、あらゆる種類のペイロードを保存するように、かつ「スマートコントラクト」を自動的に実行させるようにも明示的に設計されている。
【0035】
すなわち、ビットコイン・ブロックチェーンまたはイーサリアム・ブロックチェーンのような正にパブリック型のブロックチェーンの最も重要な特徴は、失われることがないように、かつ後から変更できないように、データをブロックチェーン内に格納することができることである。それと同時に、データは、全ての人にとってパブリックに利用可能である。これが望ましくない場合には、プライベート型のブロックチェーンネットワークを利用することもできる。
【0036】
材料組成を特徴付ける特徴量のハッシュ値を格納しておくと、例えばパブリック型のブロックチェーンを利用する場合に、正確な材料組成を秘匿することができる。
【0037】
「バッチに関連付けられて」保存するとは、所与のバッチに関して、正にこのバッチに所属する情報をブロックチェーンから取得するための経路が存在することを意味する。この目的のために情報を、例えばバッチの識別特徴と組み合わせてブロックチェーン内に格納することができる。
【0038】
バッチの材料組成を特徴付ける特徴量、またはそのハッシュ値は、例えばバッチの製造者によって、例えばセメント工場によってブロックチェーン内に格納可能である。
【0039】
さらに、バッチの力学的なコンシステンシについての尺度が、例えば広がり試験を用いて物理的に決定され、バッチに関連付けられてブロックチェーン内に格納される。このことは、例えば建設現場においてコンクリートの受取人によって実施可能であり、セメント工場から建設現場への輸送途中でコンクリートの特性がさらに変化した可能性がある場合に、有意義である。
【0040】
さらに、建設現場における少なくとも1つの使用目的に対するバッチの有用性についての品質尺度が決定され、バッチに関連付けられてブロックチェーン内に格納される。このことも、例えば建設現場においてコンクリートの受取人によって実施可能である。
【0041】
ブロックチェーン内に情報を格納することにより、この文脈では、複数の異なる情報源からの情報をマージすることが可能となり、それと同時に、パスワードまたは中央管理されるべき他のアクセスデータを用いることなく事後的な不正操作から保護されるという特別な利点が提供される。データは証拠目的で後々必要になる可能性があるので、不正操作に対する保護は重要である。例えば、後々、コンクリートの製造者に対する品質欠如の苦情に基づいて、このコンクリートを用いて製造された建築物の安定性についての背景を探ることができる。同様に例えば、後々、比較的低水準の目的にしか使用できないような劣悪品質のものが所定の期間中に何度も納入されたという主張を以て、コンクリート価格の一部の返金を製造者に要求することができる。
【0042】
特に有利な実施形態では、コンクリートバッチに帰せられる気候影響についての特徴量である少なくとも1つの気候量が追加的に決定され、バッチに関連付けられてブロックチェーン内に格納される。この気候量は、例えば上記の方法によって決定可能であるが、任意の他の手法によっても決定可能である。例えば、ブロックチェーン内への不正操作から保護された保存により、建築物の完全なエコロジカル「フットプリント」を、証拠力を以てかつ永続的に文書化することができる。
【0043】
特に有利な実施形態では、品質尺度は、上記の方法によって、訓練されたANNから予測および/または分類として取得され、かつ/またはこのようにして得られた予測および/または分類によって少なくとも妥当性チェックされる。例えば、訓練されたANNに基づき、その他の条件が同じで品質尺度について非常に良好な値が予期されていた場合には、品質尺度についての非常に劣悪な値をブロックチェーン内に格納することを拒否することができる。これに対して、この同じ状況では、品質尺度についての平均値が仮定される。なぜなら、「非常に良好」と「中程度」との間のばらつきは、プロセスの物理的変動に基づいて妥当であるからである。
【0044】
このようにして、特に劣悪な評価を、詐欺的な意図によって故意にブロックチェーン内に格納することを、少なくともより困難にすることができる。詐欺的な意図とは、例えば、コンクリートの製造者を恐喝すること、または劣悪に見せかけられた品質を指摘して、支払われた価格の一部の返金をコンクリートの製造者に後々要求することであり得る。
【0045】
さらなる特に有利な実施形態では、建設現場においてコンクリートバッチが使用される実際の使用目的が、バッチに関連付けられてブロックチェーン内に格納される。上述のように、この情報を、例えば品質欠如に基づく価格の低下に関連させることができる。したがって、例えば、名目上は品質的に高価値であるバッチが、実際にはさほど要求の厳しくない目的のためにしか使用できなかった場合には、こうした比較的低品質のバッチが本来販売されていたであろう価格のみを支払うべきであるということを、契約上規定することができる。
【0046】
さらなる特に有利な実施形態では、ブロックチェーン上で動作するスマートコントラクトにより、バッチに関連付けられてブロックチェーン内に格納されたデータに基づいて、事前に規定された基準に即して、バッチに対する価格が決定され、バッチの納入者に貸方記入される。
【0047】
スマートコントラクトは、この文脈では、ブロックチェーンに参加している全てのノード上で同期して実行されるプログラム、すなわち、同じオペレーションを実行するプログラムである。スマートコントラクトは、とりわけ、ブロックチェーン内に保存されている全てのデータにアクセスすることができるが、ブロックチェーンに追加するための新しい情報を登録することもできる。ブロックチェーンの内部では、とりわけ、ブロックチェーンの基礎となっている暗号通貨の形態で資金を受け取って、独立して管理することができるエンティティとして、スマートコントラクトを管理することができる。したがって、例えばスマートコントラクトは、まず始めにコンクリートの購入者から最大購入価格を受け取り、後で、設定された価格を納入者に振り込み、その一方で購入者は、残りの金額を返金してもらうことができる。
【0048】
このようにして、とりわけ品質欠如による価格変更を、明確に追跡可能な客観的基準に即して企図し、自動施行することができる。相応に時間のかかる議論は省略される。
【0049】
したがって、有利には、事前に規定された基準は、少なくとも、建設現場における少なくとも1つの使用目的に対するバッチの有用性についての品質尺度に依存しており、かつ/または建設現場においてバッチが使用された実際の使用目的に依存している。
【0050】
同様に、事前にスマートコントラクトの枠組みにおいて規定された基準は、バッチについての気候量にも依存することができる。この気候量は、とりわけ例えばブロックチェーンから取得可能であるが、任意の他のソースから入手することも可能である。例えば、気候影響に対して支払い期限のきた課税を、前述の管理システムの決定に基づいてこれが発生した時点に、納税義務者に権利がある金額から差し引いて、管轄当局に支払うことができる。
【0051】
スマートコントラクト内に一度格納された基準は、基本的にもはや後から変更することはできない。ここでの変更可能性は、いかなるものであっても、スマートコントラクトのプログラムコードにおいて最初から明示的に企図すべきであろうし、このこと自体は、プログラムコードにおいて見て取ることができる。
【0052】
スマートコントラクトを用いた契約条件の規定および自動施行を、建設現場に関連するさらなる行為主体にも拡張することができる。したがって、例えば、建設現場自体およびセメント工場に加えて、計画事務所、ゼネコン、および型枠製造者も関与していることが多い。例えば、建設プロジェクトの全体的な計画をブロックチェーン内に格納することができる。建設の進捗を、建設現場における任意のインジケータを用いて電子的に検出して、同様にブロックチェーン内に格納することができる。スマートコントラクトは、例えば、全体的な計画において規定された所定のマイルストーンに到達したときに、所定の行為主体への分割払いを自動的に命令することができる。
【0053】
このようにして、建設プロジェクト全体を、関係者のうちのいずれかが欺かれることからより良好に保護することができる。例えば、スマートコントラクトは、建設プロジェクトの開始時に建築主が建設費の一部または全部を信託管理のためにスマートコントラクトに付託しなければならないということを規定することができる。これにより、建設プロジェクトに関連してサービスを供与する全ての行為主体が、各自のそれぞれのサービスを供与した後に流動資金から報酬を受け取るということが保証されている。建築主が支払いに支障をきたし、前もってサービスを供与した行為主体側が、法的手段を通じて未払金を回収している間に流動性の問題に遭うという、納入時およびサービス時における未決済勘定に関してよくあるリスクが存在しなくなる。
【0054】
これとは逆に、建築主は、常に実際に供与された納入およびサービスに対してのみ支払いが行われるという確実性を得る。したがって、建築主は、金銭を信託管理のためにスマートコントラクトに付託しなければならないが、ただし、このことは、何らかの行為主体に対して前払いをしなければならないことと同義ではない。すなわち、例えば行為主体のうちのいずれか、例えばセメント工場が破産した場合でも、建築主の資本が失われることはない。
【0055】
スマートコントラクトによる資金の信託管理は、何らかの人間がこれらの資金への直接的なアクセスを獲得してこの資金を横領する機会を得ることをさらに排除することができる。信託管理のためにスマートコントラクトに一度付託された資金は、例えば、所定のマイルストーンに到達した場合のように、スマートコントラクトにおいて規定された条件下でのみ返金される。スマートコントラクトは、例えば解除条件を含むこともでき、この解除条件は、例えば、一定期間にわたって建築の進捗がない場合に、建設プロジェクトが正式に失敗したと宣言されることや、全ての行為主体が、各自の既に供与したサービスに対して報酬を受け取った後に、建築主が、スマートコントラクトに供託された金銭を返金してもらうことなどである。
【0056】
ブロックチェーン内には、例えば、納品書を格納することもできる。その場合、この納品書は、失われることがないように、かつ不正操作から保護された状態で保管されている。
【0057】
ブロックチェーン内に格納されたデータを、例えば、コンクリートの製造者の元で復元し、そこでコンクリート品質を改善するために利用することができる。さらに、ブロックチェーン内に永続的にデータを保存することにより、建築物のライフサイクルのオーダーの期間にわたってさえも、使用されたコンクリートの仕様への、安定性に鑑みて重要である準拠を文書化することができる。したがって、例えば建設期間からのデータに欠陥が露呈したことに応答して、後から、建築物の一部の調査を指示すること、またはこれに関連する定期的な検査期限を短縮することが可能である。
【0058】
本発明は、上記の訓練方法によって訓練された人工ニューラルネットワークにも関する。本発明は、前述の訓練方法によって得られた、ANNを特徴付けるパラメータのデータセットにも関する。例えば、桁外れに大容量のビデオメモリを有するGPUを必要とすることが多い非常に計算量の多い訓練を、サービス業務として提供することができ、このサービス業務の作業結果として、データセットを納入することができる。
【0059】
本発明は、1つまたは複数のコンピュータ上および/またはブロックチェーン上で実行された場合に、1つまたは複数のコンピュータおよび/またはブロックチェーンに、上記の方法のうちの1つまたは複数を実施させる機械可読命令を有する、1つまたは複数のコンピュータプログラムにも関する。例えば、ブロックチェーン上で実行されているプログラムは、ブロックチェーンとの間で情報を送信または受信する他のプログラムと協働することができる。
【0060】
1つまたは複数のコンピュータプログラムは、例えば、機械可読データ担体上で、またはネットワークを介して取得可能およびロード可能なダウンロード製品上で、具現化可能である。
【0061】
詳細な説明部分
以下、本発明の対象を図面に基づいて説明するが、本発明の対象は、図面によって限定されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】ANN1を訓練するための方法100の実施例を示す図である。
図2】コンクリートバッチ2の有用性を予測および/または分類するための方法200の実施例を示す図である。
図3】コンクリートバッチ2の使用を追跡するための方法300の実施例を示す図である。
図4】建設現場において方法200を適用する具体例を示す図である。
【0063】
図1は、ANN1を訓練するための方法100の例示的なフローチャートを示す。ステップ110において、ANNに「フィードする」ために学習データセット3が用意される。図1に示されている例では、具体的なコンクリートバッチ2に関するそれぞれの学習データセットは、
・例えば成分の重量比のような、バッチ2の材料組成を特徴付ける特徴量21のセットと、
・例えば広がり試験を用いて決定された、バッチ2の力学的なコンシステンシについての尺度22と、
・建設現場における少なくとも1つの目的に対するバッチの有用性を特徴付け、例えばバッチ2を受け取った人間の専門家によって設定される、品質尺度23a,23bについての少なくとも1つの値と、
・バッチ2のために使用される原材料が入手された場所の識別子24と、
・バッチ2の納入者の識別子25と、
・品質尺度23a,23bが規定された時点における周囲温度についての尺度26と
を含む。
【0064】
ステップ120において、品質尺度23a,23bを除いたこれら全ての情報が、入力11としてANN1に供給される。次いで、ANN1は、品質尺度23a,23bについての予測および/または分類23a*,23b*を提供する。ステップ130において、この予測および/または分類23a*,23b*は、学習データセットに含まれている品質尺度23a,23bについての値と比較される。比較により、偏差Δが提供される。
【0065】
ステップ140において、偏差Δに依存しているコスト関数(「損失関数」)14が評価される。ステップ150において、ANNのパラメータ12が、コスト関数14の値を改善するという最適化目標によって適応化される。例えば、全ての学習データセット3にわたって得られるコスト関数14の平均値が所定の閾値を下回るまで、勾配降下法によってパラメータ12を連続的に適応化することができる。
【0066】
ブロック121によれば、ANN1は、気候量23cについての予測23c*も提供する。ブロック131によれば、この予測23c*は、それぞれの学習データセット3に含まれている気候量23cについての値と比較される。その場合、ブロック141によれば、コスト関数14は、比較131において決定された偏差Δ’に追加的に依存している。
【0067】
図2は、建設現場におけるコンクリートバッチ2の有用性を予測および/または分類するための方法200の実施例を示す。方法200は、例えば上記の方法100によって訓練が完了したANNが利用可能であることを前提としている。
【0068】
ステップ210において、バッチ2の材料組成を特徴付ける特徴量21のセットが決定される。ステップ220において、バッチ2の力学的なコンシステンシについての少なくとも1つの尺度が、例えば広がり試験を用いて決定される。さらに、バッチ2のための原材料が入手された場所の識別子24と、バッチ2の製造者の識別子25と、建設現場における周囲温度についての尺度26とを使用することもできる。
【0069】
収集された情報は、ステップ230において入力11としてANN1に供給される。次いで、ANN1は、建設現場における少なくとも1つの使用目的に対するバッチ2の有用性に関連する少なくとも1つの品質尺度23a,23bについての予測および/または分類23a*,23b*を出力する。したがって、予測および/または分類23a*,23b*は、その時々の使用目的に常に関連している。この予測および/または分類23a*,23b*は、ステップ240においてANN1から取得される。
【0070】
この場合にはとりわけ、バッチ2が第1の使用目的にとっておそらく不適当であるということを、第1の予測および/または分類23a*が示唆するという事態が発生することがある。この場合には、ブロック241によれば、他の使用目的に対する有用性についての品質尺度23bに関連する第2の予測および/または分類23b*を取得することができる。例えば、建設されるべき建築物または建築物の一部のうちの、特に複雑であると同時に高負荷である構造物を製造するためには適していないバッチ2を、さほど重要ではない構造物をコンクリート処理するために利用できる可能性がある。
【0071】
ブロック242によれば、バッチ2に帰せられる気候影響についての特徴量である気候量23cの少なくとも1つの予測および/または分類23c*を、ANN1の出力13として追加的に取得することができる。
【0072】
ステップ250において、予測および/または分類23a*,23b*に従って適しているとされた使用目的へとバッチ2を供給するための手段を駆動することができる。
【0073】
対応する品質基準は、バッチ2に関して予測された気候量23c*に追加的に依存することもできる。上述のように、例えば、分類23a*に関して最高要件ではなく最低要件をわずかにだけ超えて満たしているが、それ故にエコロジカル「フットプリント」が格段に低減されているようなコンクリートが、最適であり得る。
【0074】
図3は、コンクリートバッチ2の使用を追跡するための方法300の例示的なフローチャートを示す。ステップ310において、バッチ2の材料組成を特徴付ける特徴量21が、このバッチ2に関連付けられてブロックチェーン4内に格納される。ステップ320において、バッチ2の力学的なコンシステンシについての尺度22が、例えば規格化された広がり試験を用いて物理的に決定される。その結果は、ステップ330において、バッチ2に関連付けられてブロックチェーン4内に格納される。
【0075】
ステップ340において、建設現場における少なくとも1つの使用目的に対するバッチ2の有用性についての品質尺度23a,23bが決定される。この品質尺度23a,23bは、ステップ350において、バッチ2に関連付けられてブロックチェーン4内に格納される。
【0076】
ブロック341によれば、品質尺度23a,23bを、上記の方法200によって予測および/または分類23a*,23b*として決定することができる。ブロック342によれば、例えば、バッチ2の不当で過度に否定的な評価を阻止するために、品質尺度23a,23bを、そのような予測および/または分類23a*,23b*によって妥当性チェックすることができる。
【0077】
ブロック343によれば、バッチ2に帰せられる気候影響についての特徴量である少なくとも1つの気候量23cも決定することができ、ブロック353によれば、バッチ2に関連付けられてブロックチェーン4内に格納することができる。
【0078】
さらに、ステップ335において、バッチ2のための原材料が入手された場所の識別子24、および/またはバッチ2の製造者の識別子25、および/またはバッチ2の有用性についての品質尺度23a,23bが決定された時点における周囲温度についての尺度26もさらに、ブロックチェーン4内に格納することができる。
【0079】
ステップ360において、建設現場においてコンクリートバッチ2が使用される実際の使用目的27が、バッチ2に関連付けられてブロックチェーン4内に格納される。
【0080】
ステップ370において、ブロックチェーン4上で動作するスマートコントラクト5が、事前にバッチ2に関連付けられてブロックチェーン4内に格納された全てのデータ22,23a,23b,24,25,26,27に基づいて、バッチ2に対する価格2aを決定する。この際に適用される基準5aは、スマートコントラクト5に固定的に記入されていて、いわば「はんだ付け」されており、もはや後から変更することはできない。ステップ380において、スマートコントラクト5は、この価格2aをバッチ2の納入者に貸方記入する。
【0081】
図4は、建設現場におけるコンクリートバッチ2の使用を、方法200によってどのように制御することができるかについての具体例を示す。この例では、バッチ2は、砂6a、砂利6b、セメント6c、および水6dの4つのコンポーネントから混合されたものである。特徴量21は、これらのコンポーネント6a~6dの混合比を示す。砂6aおよび砂利6bは、場所24にある天然の貯蔵所に由来する。バッチ2は、製造者25によって製造されたものである。
【0082】
ここでまず始めに、バッチ2の力学的なコンシステンシについての尺度22を決定するために、建設現場において広がり試験が実施される。この尺度22は、特徴量21、場所の識別子24、製造者の識別子25、および建設現場における温度についての尺度26と一緒に、訓練されたANN1に供給される。
【0083】
これらの情報に基づいて、ANN1は、第1の使用目的、ここではコンクリートアーチ7aのうちの現在型枠が組まれている部分7a’のコンクリート処理に関連する品質尺度23についての第1の予測および/または分類23a*を決定する。予測および/または分類23a*によるバッチ2の品質が、この使用目的に対して十分である場合(真理値1)には、バッチ2は、この使用目的のために使用される。
【0084】
これに対してバッチ2の品質が、この使用目的に対して十分でない場合(真理値0)には、バッチ2に対する要求がより少ない使用目的、ここでは建設道路7bのコンクリート処理に関連する品質尺度23bについての第2の予測および/または分類23b*が取得される。予測および/または分類23b*に即して、バッチ2が後者の使用目的に適している場合(真理値1)には、これに相応してバッチ2が使用される。これに対してバッチ2が、要求がより少ない後者の使用目的にも適していない場合(真理値0)には、このバッチ2は、廃棄物として廃棄される。
【符号の説明】
【0085】
1 人工ニューラルネットワークANN
11 ANN1の入力
12 ANN1のパラメータ
13 ANN1の出力
14 ANN1を訓練するためのコスト関数
2 コンクリートバッチ
2a バッチ2に対する価格
21 バッチ2の組成を特徴付ける特徴量
22 バッチ2の力学的なコンシステンシについての尺度
23a 第1の目的に対するバッチ2の有用性についての品質尺度
23a* ANN1によって提供される品質尺度23aの予測/分類
23b 第2の目的に対するバッチ2の有用性についての品質尺度
23b* ANN1によって提供される品質尺度23bの予測/分類
23c バッチ2の気候影響についての尺度である気候量
23c* ANN1によって提供される気候量23cの予測/分類
24 バッチ2のための原材料が入手された場所の識別子
25 バッチ2の製造者の識別子
26 温度についての尺度
27 バッチ2の実際の使用
3 ANN1を訓練するための学習データセット
4 ブロックチェーン
5 ブロックチェーン4上で動作するスマートコントラクト
5a スマートコントラクト5における価格設定のための基準
6a 砂
6b 砂利
6c セメント
6d 水
7a コンクリートアーチ
7a’ コンクリートアーチ7aのうちの型枠が取り外されている部分
7b 建設道路
100 ANN1を訓練するための方法
110 学習データセット3を用意する
120 入力11をANN1に供給する
121 ANN1による予測/分類23c*も提供する
130 予測/分類23a*,23b*を品質尺度23a,23bと比較する
131 予測/分類23c*を気候量23cと比較する
140 コスト関数14を評価する
141 比較131において決定された偏差Δ’も評価する
150 ANN1のパラメータ12を適応化する
200 バッチ2の有用性を予測/分類するための方法
210 特徴量21を決定する
220 バッチ2の力学的なコンシステンシについての尺度を決定する
230 入力11をANN1に供給する
240 ANN1から予測/分類23a*,23b*を取得する
241 さらなる予測/分類23a*,23b*を取得する
242 気候量23cの予測/分類23c*も取得する
250 使用するためにバッチ2を供給するための手段を駆動する
300 バッチ2の使用を追跡するための方法
310 特徴量21またはハッシュ値をブロックチェーン4内に格納する
320 バッチ2の力学的なコンシステンシについての尺度22を決定する
330 尺度22をブロックチェーン4内に格納する
335 さらなる情報24,25,26をブロックチェーン4内に格納する
340 品質尺度23a,23bを決定する
341 品質尺度23a,23bを予測/分類23a*,23b*として決定する
342 予測/分類23a*,23b*によって品質尺度23a,23bを妥当性チェックする
343 気候量23cを決定する
350 品質尺度23a,23bをブロックチェーン4内に格納する
353 気候量23cもブロックチェーン4内に格納する
360 実際の使用27をブロックチェーン4内に格納する
370 基準5aに基づいて価格2aを決定する
380 価格2aをバッチ2の納入者に貸方記入する
Δ 比較130において決定される偏差
Δ’ 追加的な比較131において決定される偏差
図1
図2
図3
図4