(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】搬送システム及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 23/44 20060101AFI20241202BHJP
【FI】
B65G23/44
(21)【出願番号】P 2021568227
(86)(22)【出願日】2020-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2020063458
(87)【国際公開番号】W WO2020229598
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】102019112868.4
(32)【優先日】2019-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516300678
【氏名又は名称】ホマッグ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ガン,イーミン
(72)【発明者】
【氏名】ホフバウアー,ロルフ
(72)【発明者】
【氏名】ベック,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】サム,ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】アルブレヒト,ルドウィグ
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-527098(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101948045(CN,A)
【文献】特開2016-017319(JP,A)
【文献】特開2017-007799(JP,A)
【文献】特開平02-233412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 23/44
B65G 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に木材、木質系材料、プラスチック等からなる、ワークピース(2)を搬送するための搬送システム(1)であって、
少なくとも1つの循環搬送手段(15)と、
前記少なくとも1つの循環搬送手段(15)をガイドするためのガイドアセンブリ(4)と、
少なくとも1つの状態変数、特に前記少なくとも1つの循環搬送手段(15)の予張力及び/又は瞬間的負荷、及び/又は、前記搬送システム(1)の少なくとも1つの部分(6,8)の動的挙動、を捕捉するための少なくとも1つのセンサ(10,11,12)と、
前記搬送システム(1)の少なくとも1つの状態変数に影響を与えるための少なくとも1つの調整要素(13,20)と、
を備え
、
前記搬送システムは、制御モジュール(30)を備え、前記制御モジュールは、前記少なくとも1つのセンサ(10,11,12)の捕捉結果に依存して、前記循環搬送手段を駆動するための駆動手段(14)及び/又は前記少なくとも1つの調整要素(13,20)を制御し、又は閉ループ制御する、ように構成されており、
制御モジュール(30)と通信し、前記搬送システム(1)の前記少なくとも1つの状態変数をデータバンク(40)に送信し及び/又はデータバンク(40)からデータを受信し、これを前記制御モジュールに転送するように調整されているインタフェース(32)をさらに備え、
前記インタフェース(32)は、インターネット又は他のデータ遠隔伝送接続を介して前記データバンク(40)と通信するように構成されている、搬送システム。
【請求項2】
前記ガイドアセンブリ(4)は少なくとも2つの部分(6,8)を備え、
前記少なくとも1つの調整要素(13,20)は、前記少なくとも2つの部分(6,8)のうちの第1部分(6)と第2部分(8)との間に配置されている、
請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記搬送システム(1)は、状態変数を捕捉するための少なくとも1つの第1センサ(11)を備え、前記状態変数は、好ましくは、前記少なくとも1つの循環搬送手段(15)の、予張力、瞬間的負荷、
伸長、変位、速度、加速度の中から選択される、
請求項1又は2記載の搬送システム。
【請求項4】
前記搬送システム(1)は、前記搬送システム(1)の、特に前記循環搬送手段(15)及び/又は前記ガイドアセンブリ(4)の、少なくとも1つの部分の動的挙動を捕捉するための少なくとも1つの第2センサ(12,10)を備える、
請求項1乃至3いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項5】
第2センサ(12,10)のうちの少なくとも1つのセンサ(10)が前記循環搬送手段(15)に配置されており、及び/又は、前記第2センサ(12,10)のうちの少なくとも1つのセンサ(15)が前記ガイドアセンブリ(4)に配置されている、
請求項1乃至4いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項6】
少なくとも1つの調整要素はアクチュエータを備え、前記アクチュエータは、前記搬送システム(1)の前記少なくとも1つの状態変数を、力の印加又は位置設定によって、開ループ制御又は閉ループ制御することができ、
気圧式アクチュエータ、液圧式アクチュエータ、電磁式アクチュエータ、圧電アクチュエータ、ネジ式スピンドル、サーボモータ及びリニアモータから選択される、
請求項1乃至5いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項7】
少なくとも1つの調整要素は、調整可能な減衰要素(20)を備え、その減衰特性は、
引っ張りステップ及び/又は押圧ステップにおいて調整可能
であるか、
開ループ制御可能又は閉ループ制御可能である、
請求項1乃至6いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項8】
前記制御モジュールは、前記少なくとも1つの調整要素(13,20)が少なくとも時間的に、少なくとも1Hz、
少なくとも10Hz、
又は30Hzの周波数で開ループ制御又は閉ループ制御するように構成されている、
請求項
1乃至7いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項9】
前記制御モジュールは、前記少なくとも1つの調整要素(13,20)を、前記少なくとも1つの循環搬送手段(15)の搬送動作中に開ループ制御又は閉ループ制御するように
構成されている、
請求項
1乃至8いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項10】
前記循環搬送手段(15)を駆動するための駆動手段(14)をさらに備える、
請求項1乃至
9いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項11】
前記循環搬送手段(15)は、連結搬送手段、
搬送チェーン及び/又はベルト、を有する、
請求項1乃至
10いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つのセンサ及び/又は前記調整要素のアクチュエータからのデータ、を可視化するように調整された表示装置(50)をさらに備える、
請求項1乃至
11いずれか1項記載の搬送システム。
【請求項13】
請求項1乃至
12いずれか1項記載の搬送システムの前記循環搬送手段(15)を用いてワークピース(2)を搬送する搬送方法であって、
前記搬送中に、
前記少なくとも1つの循環搬送手段(15)の予張力及び/又は瞬間的負荷、及び/又は、前記搬送システムの少なくとも1つの部分(6,8)の動的挙動を
含む前記少なくとも1つの状態変数を捕捉し、
前記捕捉されたデータに基づいて、少なくとも1つの調整要素(13,20)を開ループ制御及び/又は閉ループ制御する、
搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送システム及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工装置(Bearbeitungsmaschinen)は、連続的に供給されるワークピースワークピースに対して、切断(spanende)や分離(trennende)などのさまざまなタイプの加工操作を実行するように設計されることができる。この目的のために、加工されるべきワークピースは、1つ以上の搬送手段を使用して加工装置の加工領域を通って搬送されることができる。ワークピースが1つ以上の加工領域を連続的に通過する加工装置は、スルーフィードマシンとも称される。
【0003】
スルーフィードマシンの加工領域を通って加工されるワークピースを搬送するために使用することができる搬送システムは、例えば、EP2377786A1に開示されている。
【0004】
ワークピースを搬送する目的で、搬送システムは、チェーン、ベルト、又はその他の循環搬送手段などの、加工されるべきワークピースと直接コンタクトする搬送構造を備えることができる。ワークピースを搬送するために必要な、(循環)搬送手段とワークピースとの間の接続は、例えば、ワークピースと搬送構造との間の重力に起因する静的摩擦によって、又はキャッチ要素(Mitnehmerelemente)によって生成されることができる。さらに、上部圧力ベルト(Oberdruckriemen)を使用することができる。加工装置内部で、この種の搬送システムは、通常、搬送手段のハウジング内に配置される。
【0005】
循環搬送手段を有する輸送システムの機能、信頼性及び寿命(Lebensdauer)は、いくつかの要因、例えば適切な予圧(Vorspannung)、咬合の位置精度(Positionsgenauigkeit der Verzahnung)及び循環搬送方法の摩耗の程度(Verschleissgrad des Umlauftransportsystems)、に依存する。これらのパラメータは、機械的及び熱的ストレスにより稼働中に変化する。これにより、運搬動作(des Foerderbetriebes)の精度が低下する可能性があり、加工装置において、低減された加工品質及び加工精度に反映される可能性がある。
【0006】
搬送システムは、摩耗の程度に依存して変化するパラメータを再調整(nach zu justieren)又は適合させるために、所定の実行時間後にメンテナンス(eine Wartung)が必要であることも知られている。適時なメンテナンスと適合無しでは、輸送システムが早期に摩耗したり、故障したりすることさえある。これは大きな経済的損失を引き起こす可能性がある。周知の解決策の1つは、2週間毎のような短いメンテナンスサイクルでメンテナンスを行うことである。しかしながら、この予防措置は、機器の可用性(Verfuegbarkeit)が低下するため、経済的に不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本発明の課題は、正確な運搬動作、高い信頼性及び長い寿命、並びに低いメンテナンスコストを有する搬送システム又は搬送方法を提供することである。
【0009】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載の輸送システムによって、及び請求項16に記載の輸送方法によって達成される。好ましい改良は、従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明は、上記の問題の原因を早期に検知又は特定し、それらを排除又は緩和するためにシステムに能動的に影響を与えるという思想に基づく。
この目的のために、本発明による搬送システムは、
少なくとも1つの状態変数(Zustandsgroesse)、特に少なくとも1つの循環搬送手段の予張力(Vorspannkraft)及び/又は瞬間的負荷(Momentanlast)、及び/又は、搬送システムの少なくとも1つの部分の動的挙動を捕捉するための少なくとも1つのセンサと、
搬送システムの少なくとも1つの状態変数に影響を与えるための少なくとも1つの調整要素(Stellglied)と、
を備える。
【0011】
少なくとも1つの状態変数を捕捉するための少なくとも1つのセンサが設けられることによって、本発明による搬送システムの運搬動作が連続的にモニタリング(stets ueberwacht)されることができる、その結果、可能性のある問題及び場合によってはその原因も早期に検知又は特定することができる。
これに基づいて、問題及び可能な場合にはその原因を排除又は少なくとも緩和するために、システムに能動的に影響を与えることができる。
【0012】
さらに、これに基づいて、チェーン予張力(Kettenvorspannkraft)のより正確で再現可能な設定が、特に少なくとも1つの調整要素との組み合わせにおいて可能になる。
【0013】
振動及びノイズの放出(Die Schwingungs- und Laermemission)は、最適化されたチェーン予張力によって最小化することができる。さらに、搬送システムは、誤ったプロセスパラメータ(falschen Prozessparametern)を検知することによって、プロセスの安全性の向上をもたらす。さらに、部品の欠陥を早期に検出することにより、メンテナンスコストの低減と、機器の耐用年数(Standzeit)及び可用性の大幅な改善を達成することができる。さらに、少なくとも1つのセンサによって、摩耗及び短期的な力及び応力ピーク(Kraft- und Spannungsspitzen)などの特殊な事象も検出することができ、この場合、搬送システムは自動的に停止することができる。また、測定データや統計モデルに基づく予防的メンテナンス(die vorbeugende Wartung)を容易にすることができる。最終的に、本発明による搬送システムを備える加工機器により、工具の耐用年数、加工対象ワークピースの加工品質、加工精度を向上させることができる。
【0014】
これは、また、特に、搬送システムが、いわゆる両面機器(doppelseitigen Maschinen)の場合のように、複数の循環搬送手段を備える場合にも適用される。発明によれば、特に、循環搬送手段の同期動作を達成することができ、したがって、上記の利点を特に顕著な方法で達成することができる。
【0015】
本発明の発展形態によれば、ガイドアセンブリが少なくとも2つの部分を備えるように構成され、好ましくは、ガイドアセンブリの第1部分と第2部分との間に少なくとも1つの調整要素が設けられている。このようにして、少なくとも1つの調整要素によって、搬送システムの動的及び他の特性に影響を与えるための特に多様で効果的な可能性を開き、その結果、前述の利点を特に容易かつ効果的に達成することができる。
【0016】
本発明による搬送システムは、複数のセンサを備えることができる。その際、特に好ましくは、搬送システムは、状態変数を捕捉するための少なくとも1つの第1センサを備え、状態変数は、好ましくは、少なくとも1つの循環搬送手段の、予張力、瞬間的負荷、伸長、変位、速度、加速度の中から選択される。これにより、少なくとも1つの搬送手段の状態及び現在の特性を直接的に(unmittelbar)捕捉することができ、その結果、正確な結論を導き出すことができ、必要に応じて、それに基づいて適切な措置を講じることができる。結果として、このことによって、本発明による搬送システムの、精密な運搬動作、高い信頼性、長い寿命、及び低いメンテナンス要件を再び得ることができる。
【0017】
さらに、本発明の発展形態によれば、搬送システムは、搬送システムの、特に循環搬送手段及び/又はガイドアセンブリの、少なくとも1つの部分の動的挙動を捕捉するための少なくとも1つの第2センサを備える。このようにして、特に、本発明による搬送システムの動的挙動、ならびに動的信頼性及び耐久性を最適化することができる。少なくとも1つのセンサを少なくとも1つの循環搬送手段上に配置することは、循環搬送手段の振動挙動を可及的速やかにかつ歪みなく(unverfaelscht)捕捉するために特に好ましい。あるいは又はさらに、本発明の発展形態によれば、少なくとも1つのセンサをガイドアセンブリ上に配置することも有利であり得る。このようにして、例えば、振動の原因がガイドアセンブリの領域に存在する可能性があるかかどうか、又はガイドアセンブリが循環搬送手段の振動に影響を及ぼすかどうか、及びどの程度影響するかを決定することができる。このような背景に基づいて、本発明の上述の態様の場合と同様に、例えば、少なくとも1つの調整要素を使用するシステムの適合又は他の適合措置又はメンテナンス措置などの、適切な最適化措置を講じることができる。
【0018】
本発明の範囲における調整要素として、様々な部品又は装置が適用され得る。特に好ましくは、少なくとも1つの調整要素はアクチュエータを備え、アクチュエータは、搬送システムの少なくとも1つの状態変数を、力の印加又は位置設定によって、開ループ制御又は閉ループ制御することができ、好ましくは気圧式アクチュエータ、液圧式アクチュエータ、電磁式アクチュエータ、圧電アクチュエータ、ネジ式スピンドル(Gewindespindel)、サーボモータ及びリニアモータから選択される。「能動的」調整要素としてアクチュエータを使用することによって、特に搬送システムの動的な特性が特に有効に最適化されることができ、少なくとも1つのセンサによって検出されたデータにアクセスする(zurueckgegriffen)ことができる。このようにして、運搬速度、運搬負荷、温度、摩耗状態、汚れの程度などの広範な影響変数及びパラメータにその特性を適合させることができる能動的搬送システムを得ることができる。
【0019】
代替的又は付加的に、本発明の発展形態によれば、少なくとも1つの調整要素は、減衰特性を調節可能であり、特に閉ループ制御又は開ループ制御可能である調節可能な減衰要素が設けられる。また、このようにして、本発明による搬送システムの動的特性を、所期のように、それぞれの要件又はそれぞれの動作パラメータに適合させることができる。その際、少なくとも1つの調節可能な減衰要素は二重の機能を果たし、搬送システムの振動減衰を常に可能にするが、この減衰挙動は、全体として、要件と動作パラメータに常に適合できる搬送システムの最適な挙動になるように、能動的かつコントロールして(kontrolliert)適合させることができる。
【0020】
本発明の発展形態によれば、開ループ制御又は閉ループ制御に関して、少なくとも1つの調整要素が設けられており、搬送システムは制御モジュールを備え、制御モジュールは、少なくとも1つのセンサの捕捉結果に依存して、少なくとも1つの調整要素及び/又は少なくとも1つの駆動手段を循環搬送手段の駆動のために開ループ制御又は閉ループ制御するように設計されている。このようにして、すでに上述したように、本発明は、それぞれの要件及び動作パラメータに迅速かつ効果的に適合させることができる能動的搬送システムを提供する。これは、基礎となる課題を解決するために大きな寄与をもたらし、詳しくは、搬送システムにおいて、正確な送り動作、高い信頼性及び長い寿命並びに低いメンテナンスコストを実現することができる。
【0021】
本発明の範囲内では、原則として、例えば動作モードを変更するときに、搬送システムの少なくとも1つの状態変数に影響を与えるために、より大きな時間間隔でのみ少なくとも1つの調整要素を使用することが可能である。しかしながら、本発明の発展形態によれば、少なくとも1つの調整要素を少なくとも1Hzの周波数で少なくとも時間的に開ループ制御又は閉ループ制御するように構成された制御モジュールを提供する。その結果、能動的搬送システムの思想は特に一貫して実装され、振動が増加したり、損傷が伝播したり、加工の不正確さが増加することができる時間は生じない。改めて、これは冒頭で述べた根本的な問題の解決に貢献する。その際、特に好ましくは、開ループ制御又は閉ループ制御の際に、少なくとも10Hz、特に好ましくは少なくとも30Hzの周波数に基づく。これにより、可能性のある振動やその他の不所望な影響が大きくならないうちに抑えられ(im Keim erstickt)、したがって、正確で安定したメンテナンスの少ない搬送プロセスのまったく新しい次元(Dimension)が実現される。
【0022】
上述の利点を達成するために、本発明の発展形態によれば、制御モジュールは、少なくとも1つの調整要素が搬送システムの休止状態において駆動制御されるだけでなく、少なくとも1つの調整要素が少なくとも1つの循環搬送手段の搬送動作中に開ループ制御又は閉ループ制御されるように、設計されている。したがって、少なくとも1つの調整要素を駆動制御する目的で機器を停止する必要はない。むしろ、この発展形態によれば、ある特定のワークピースの送り動作中であっても、各動作パラメータに対して常に柔軟に反応することができる。例えば、搬送システム上で輸送されるワークピースが加工機器に接触すると直ぐに、少なくとも1つのアクチュエータの駆動制御を行うことができ、その結果、加工機器からワークピースに、したがって搬送システムにかかる振動及び力でさえ、本発明による搬送システムによって補償することができる。翻って、このようにして、加工精度及び加工品質の大幅な改善が達成され得ることは明らかであり、同時に、搬送システム及び場合によっては存在する加工アセンブリ(Bearbeitungsaggregate)に対する損傷も回避される。
【0023】
本発明による搬送システムは、搬送される物品が別の方法で前進(vorgeschoben)される受動搬送システムであることもでき、本発明の発展形態によれば、搬送システムが循環搬送手段を駆動する駆動手段を備えるようになっている。このようにして、例えば、少なくとも1つのセンサの捕捉結果に基づいて駆動手段が開ループ制御又は閉ループ制御されるという点で、搬送システムの搬送動作にさらに大きな影響を与えることができる。
【0024】
循環搬送手段は、本発明の範囲内で様々な方法で設計されることができる。
しかしながら、本発明のさらなる発展形態によれば、循環輸送手段は、特に、搬送チェーン及び/又はベルトなどの連結搬送手段を有することが提供される。これらの循環搬送手段は、実際に実証されている(in der Praxis bewaehrt)。同時に、本発明の利点は、そのような循環輸送手段を用いて特に効果的に実施することができる。特に連結搬送手段の場合、いわゆるポリゴン効果は、本発明によって補償することができ、その結果、シンプルな手段で高い信頼性及び耐用年数並びに低いメンテナンスコスト(Wartungsaufwand)を備えたロバストで正確な搬送システムが得られる。同様の考察は、設計に応じてポリゴン効果も発生する可能性があり、長手方向の剛性に応じて動的特徴が発生する可能性があるベルトにも当てはまり、本発明による輸送システムによって有利に補償できる。
【0025】
本発明の発展形態によれば、搬送システムは、制御モジュールと通信し、搬送システの少なくとも1つの状態変数をデータバンクに送信し及び/又はデータバンクからデータを受信し、これを制御モジュールに転送するように構成されているインタフェースをさらに備える。このようにして、他の生産ユニットとの搬送システムの一般的なネットワーク化だけでなく、動作パラメータの最適化や搬送システムのメンテナンス及び修理の全く新しい可能性が開かれる。したがって、インタフェース及びデータベースを介して、様々な搬送システムの動作パラメータをまとめて、比較することができ、それらに基づいて、例えば少なくとも1つの調整要素について、最適な設定を同定することができる。さらに、所期の状態モニタリング(状態モニタリング)の可能性が開かれ、メンテナンス措置及び修理措置をより所期のように、したがってより少ない生産動作の障害しか伴わずに(mit geringerer Beeintraechtigung des Produktionsbetriebes)、計画及び実行することができる。(「予測メンテナンス(predictive maintenance)」)。特に、潜在的なメンテナンス要求及び修理要求を早期に特定することができる。このようにして、少なくとも1つのセンサからのデータに基づいて、所定の部品の摩耗状態に関する結論を引き出すことができ、必要な場合には、交換部品の発注を良好な時期に開始することができ、メンテナンス又は修理のための日程を生産プロセスにスケジューリングすることができる。これは、機器の可用性を著しく向上させ、そして、特に、搬送システムにおける致命的事故のリスクを低減させる。
【0026】
本発明の枠組みにおいて、データベースは、ローカルに提供されてもよく、例えば、搬送システムと又は場合によっては複数のデバイスでネットワーク接続されてもよい。しかしながら、本発明の発展形態によれば、インタフェースが、インターネット又は他の遠隔データ伝送接続を介してデータベースと通信するように構成されるように設計されている。その結果、上記の利点は、特に包括的な方法で達成することができる。特に、必要に応じて搬送システムのオペレータ、搬送システムのメンテナンス会社、搬送システムの製造会社と他の業者の間に通信するためのデータベース接続を使用することも、できる。
【0027】
さらに、本発明の発展形態によれば、搬送システムは、表示装置を備え、表示装置は、データ、特に少なくとも1つのセンサ及び/又はアクチュエータからのデータを可視化するように設計されている。データは、生データ及び/又は処理されたデータであってもよい。このようにして、オペレータは、搬送システムの現状を常に知らされ(「状態モニタリング」)、必要に応じて必要な措置を講じることができる。
【0028】
本発明による搬送システムを使用する本発明による搬送方法は、請求項16の主題である。これは、少なくとも1つの状態変数の捕捉が実際の搬送プロセスの間に行われることを特徴とする。そのため、装置を停止したり、特別なキャリブレーション動作を行ったりする必要がない。さらに、この方法は、直接的なフィードバックを可能にする、すなわち、搬送動作中に連続的に開ループ制御又は閉ループ制御を行うことができ、これは、上記の利点を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の有利な実施形態及びさらなる実施形態並びに利点は、以下の図面の説明において現される。
【
図1】本発明による搬送システムの側面を模式的に示す図である。
【
図2】本発明による搬送システムの部分側的面を模式的に示す図である。
【
図3】本発明による搬送システムの部分側的面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好ましい実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
本発明の一実施形態としての搬送システム1の側面図を
図1に概略的に示す。この実施形態では、搬送システム1は、ワークピース2を加工するために使用される加工装置100の一部である。ワークピースは、例えば、少なくとも、家具及び部品産業(Moebel- und Bauelementeindustrie)の分野で広く使用されているように、木材、木質系材料、プラスチック等のセクションで構成することができる。これらのワークピースを加工するために、加工装置100は、加工ツール102を備える加工ユニット101を有する。しかしながら、加工装置100の他のいくつかの実施形態が可能であることに留意されたい。さらにまた、搬送装置1は、スタンドアロンマシンとして使用することもできるし、あるいは、搬送システム1を全く異なる装置と組み合わせることもできることに留意されたい。
【0032】
搬送システム1は、本実施形態では搬送チェーンによって形成される循環搬送手段15を有する。代替的に又は付加的にベルト等の他の循環搬送手段を使用することもできる。循環搬送手段15は、ガイドアセンブリ4によって案内され、適切なホイール(図示せず)によってガイドアセンブリ4の2つの自由端で偏向される。本実施形態では、ガイドアセンブリは、複数の部品から形成される。
図2に見られるように、例えば、ガイドアセンブリは、第1部分6及び第2部分8を含むことができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、搬送システムは、複数のセンサ10、11及び12を有し、これらセンサは、搬送システムの様々な状態変数を検出するために使用される。例えば、第1センサ11はガイドユニット4の第1部分6に配置されており、循環搬送手段15にかかる予荷重又は瞬間的負荷を捕捉するために使用される。第2センサ12は、ガイドアセンブリの第2部分8上に配置され、ガイドアセンブリの第2部分8の振動挙動又は動的挙動、ならびに循環搬送手段15の間接的な振動挙動又は動的挙動を捕捉するために使用される。さらなるセンサ10が、循環搬送手段15上又は内に直接設けられ、循環搬送手段15の振動挙動を直接捕捉する。偏向ホイールの領域では、搬送システムは循環搬送手段15を駆動するための駆動部14を備える。
【0034】
さらに、搬送システム1は、本実施形態ではガイドアセンブリの第1部分6と第2部分8との間に配置されたアクチュエータ13を有し、
図2に示すように、アクチュエータ13とガイドアセンブリ4の第1部分6との間には、なお、第1センサ11が挿入されている。
【0035】
アクチュエータ13は搬送システムの1つ以上の状態変数に影響するために役立ち、例えば、ガイドアセンブリの第1部分6と第2部分8との間のクリアランス(den lichten Abstand)を変化させ、したがって循環搬送手段15の予荷重又は瞬間的負荷に直接影響を及ぼす。
しかしながら、このようにして、循環搬送手段15の張力を変化させることができるだけでなく、循環搬送手段15の振動を直接食い止め又は緩和することができる。この目的のために、本実施形態では、調整要素13は、アクチュエータ要素として設計され、例えば、気圧式アクチュエータ、液圧式アクチュエータ、ピエゾアクチュエータ、ねじ付きスピンドル、サーボモータ又はリニアモータであり得る。もちろん、これらのアクチュエータと他のアクチュエータとの組み合わせも可能である。
【0036】
図2に、最もよく示されているように、搬送システム1はまた、制御モジュール、例えばコントローラ30を備えており、コントローラ30は、センサ10、11、12によって捕捉されたデータを入力データとして取得し、それに基づいて、(少なくとも1つの)調整要素13及び、必要に応じて、駆動部14を開ループ制御又は閉ループ制御する。「開ループ制御(Steuert)」又は「閉ループ制御(regelt)」とは、最も単純な場合には開ループ制御を意味することができるが、好ましくは閉ループ制御を意味することもできる。
【0037】
本実施形態では、コントローラ30は、10Hzの周波数で動作するが、他の周波数も可能であり、例えば、少なくとも1Hz~100Hz又はそれ以上の範囲である。この周波数では、コントローラ30は、センサ10、11及び12によって捕捉されたデータに基づいて、少なくとも1つのアクチュエータ13を開ループ制御又は閉ループ制御する。ここでの目的は、循環搬送手段15内で生じる振動を最小限にすることである。しかしながら、用途に応じて、例えば、摩耗の最小化、騒音の放出の最小化、動作安全性の最大化などの追加的な目的がある場合もあり、複数の目的を同時に追求又は評価することができる場合が多い。
【0038】
コントローラ30の閉ループ制御動作は、原則として、いつでも行うことができ、コントローラ30は、本実施形態では、少なくとも1つの循環搬送手段15の搬送中に少なくとも1つの調整要素を開ループ制御又は閉ループ制御するように構成される。
【0039】
図2はまた、センサ10、11、12とアクチュエータ13とを含む異なるデータを可視化するために使用される表示装置50を示している。表示装置50はまた、機器を操作するために使用されてもよく、又は、他の機能を有してもよい。
【0040】
搬送システム1はさらに、
図2に示されるように、データインタフェース32を備え、データインタフェース32は、コントローラ30と通信し、搬送システム1の少なくとも1つの状態変数をデータバンク40に送信し及び/又はデータバンク40からデータを受信し、これを再びコントローラ30に転送するように調整されている。本実施形態では、データベース40は「クラウド」に記憶されており、すなわち、インタフェース32は、インターネット又は他の適切なリモートデータ伝送リンクを介してデータベース40と通信する。
【0041】
コントローラ30のデータベースへの接続は、一方では、生産システム全体、あるいは様々な場所における独立した機器の所期のデータ収集及びネットワーキングを容易にする。しかしながら、同時に、このネットワーキングはまた、例えば、それに基づいて、メンテナンス及び修理の必要性に関する結論を引き出すために、搬送システムの現在の状態変数を所定のターゲットパラメータと比較することを可能にする。このようにして、メンテナンス・修理の予測コンセプト(「予測メンテナンス」)を実現し、新たな(sich abzeichnender)メンテナンス・修理要件を早期に把握することができ、したがって交換部品の発注、メンテナンス・修理作業のスケジュール設定等、早期に適切な措置を講じることができる。さらに、異なる搬送システムの状態変数を互いに比較することができ、それらに基づいて、同一又は類似の搬送システムのための最適化された動作パラメータを導出することができ、これは、例えば、最小限の摩耗又は最小限の振動をもたらす。そうすると、このような比較データをコントローラ30に開ループ制御又は閉ループ制御データとしてフィードバックして、搬送システム1の動作をさらに最適化することができる。
【0042】
本発明による搬送システム1の代替の実施形態が、
図3に概略的に示されている。これは、主に、
図2に示す実施形態とは異なり、アクチュエータ13の代わりに、可変(開ループ制御可能又は閉ループ制御可能)減衰要素20が、ガイドユニット4の第1部分6と第2部分8との間に設けられる。従って、ガイドユニットの第1部分6と第2部分8との間の距離を調整することに焦点を合わせるのではなく、第1部分6に関して第2部分1のバネ負荷装着を提供する、より能動的でない調整要素(ein weniger aktives Stellglied)が使用される。このようにしてまた、循環搬送手段15の振動を効果的に最小化することを可能にする。この点に関し、両方の概念の組み合わせは、例えば、ガイドアセンブリ4の第1部分6と第2部分8との間に、アクチュエータ及び可変減衰要素の両方を設けることによっても可能であり、これらは、例えば、互いに直列に配置することができることに留意されたい。
【符号の説明】
【0043】
1 搬送システム(Transportsystem)
2 ワークピース(Werkstueck)
6 ガイドアセンブリの第1部分(erster Abschnitt der Fuehrungsanordnung)
8 ガイドアセンブリの第2部分(zweiter Abschnitt der Fuehrungsanordnung)
10 循環センサ(Umlaufsensor)
11 第1センサ(erster Sensor)
12 第2センサ(zweiter Sensor)
13 アクチュエータ(Aktor)
14 駆動手段(Triebmittel)
15 循環搬送手段(Umlauftransportmittel)
20 ダンパ(Daempfer)
30 制御モジュール(Steuermodul)
32 インタフェース(Schnittstelle)
40 データベース(Datenbank)
50 表示装置(Anzeigeeinrichtung)