IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クラリティー・ファーマシューティカルズ・プロプライエタリー・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-PSMAイメージング剤の製剤 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】PSMAイメージング剤の製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20241202BHJP
   A61K 31/395 20060101ALI20241202BHJP
   A61K 33/34 20060101ALI20241202BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20241202BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241202BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20241202BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241202BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20241202BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241202BHJP
   A61K 103/00 20060101ALN20241202BHJP
   C07D 487/18 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
A61K38/00
A61K31/395
A61K33/34
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/18
A61K9/08
A61K51/04
A61P13/08
A61P35/00
A61K103:00
C07D487/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021568969
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-28
(86)【国際出願番号】 AU2020050509
(87)【国際公開番号】W WO2020237290
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-16
(31)【優先権主張番号】2019901765
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519156661
【氏名又は名称】クラリティー・ファーマシューティカルズ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ドネリー ポール スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ジア ニコラス アラン
(72)【発明者】
【氏名】スペア ローソン カイル
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダム エレン マリアン
(72)【発明者】
【氏名】クアン ケヴィン カール ウェン
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/223180(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/081860(WO,A1)
【文献】Shuang Liu et al.,"Stabilization of 90Y-Labeled DOTA-Biomolecule Conjugates Using Gentisic Acid and Ascorbic Acid",Bioconjugate Chemistry,2001年,Vol.12, No.4,p.554-558,DOI: 10.1021/BC000145V
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
9/00-9/72
38/00-38/58
51/00-51/12
103/00
A61P 1/00-43/00
C07D 487/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cuイオンと錯体を形成した式(I)の化合物またはその塩を含む非経口投与用の水性製剤であって、アスコルビン酸又はその塩と、ゲンチジン酸、L-メチオニン、ピリドキシン、またはそれらの塩のうちの少なくとも1種をさらに含む、前記水性製剤。
【化1】
式 (I)
【請求項2】
緩衝溶液をさらに含む、請求項1に記載の水性製剤。
【請求項3】
式(I)の化合物が式(Ia)の構造を有する、請求項1に記載の水性製剤。
【化3】
式 (Ia)
【請求項4】
ゲンチジン酸またはその塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性製剤。
【請求項5】
L-メチオニンまたはその塩を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の水性製剤。
【請求項6】
CuイオンがCu放射性同位元素である、請求項1~のいずれか1項に記載の水性製剤。
【請求項7】
Cu放射性同位元素が64Cuである、請求項に記載の水性製剤。
【請求項8】
Cu放射性同位元素が67Cuである、請求項に記載の水性製剤。
【請求項9】
pHが4~8の間である、請求項1~のいずれか1項に記載の水性製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前立腺特異的膜抗原(PSMA)に関連する放射線療法および画像診断に使用される放射性標識化合物の製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
前立腺がんは男性のがん関連死の主な原因であり、死亡率は多くの場合、該疾患の検出とその後の治療が困難であることに起因する。前立腺関連腫瘍では多くの場合、前立腺特異的膜抗原(PSMA)発現の増加が示される。PSMAは、通常、前立腺組織で発現する酵素であるが、一部の前立腺がんでは増加することが多い。これは、PSMAがイメージング、診断、予後の目的のための優れたバイオマーカーまたは標的であることを意味する。ただし、PSMAは他の組織においても正常組織と悪性組織の両方で発現しているため、前立腺がんのイメージングを成功させることは困難である。
放射性標識錯体は、前立腺がんなどのがんのイメージングおよび治療に使用できるが、放射性同位元素または放射性核種と標的指向化配位子とを含有する一部の錯体は、不安定で解離しやすい場合がある。形成された錯体が十分に強くない場合、解離は形成直後、すなわち放射性標識プロセス中に起こり得る。放射性標識のプロセスは公知であるが、これらのプロセスでは、錯体が十分な収率で形成されないか、または錯体溶液全体が放射化学的に純粋でない場合がある。さらに、放射性標識錯体を生成することができたとしても、完全な錯体を良好な収率で得ることを可能にする精製および単離手順が好ましい。
【0003】
放射性標識錯体が得られたとしても、錯体は不安定で分解されやすい場合がある。これにより、放射性同位元素の解離、放射化学的収率および錯体含有製剤の純度の低下、ならびに製剤の限られた効率がもたらされる場合がある。放射性同位元素が失われ、目的のがん部位に送達されない場合、イメージングおよび/または治療は品質が低下するか、不十分であるかのいずれかである。
放射性標識錯体ではまた、放射性同位元素の自然崩壊により、放射性同位元素の活性が配位子の破壊および分解をもたらす放射線分解が起こりやすい場合がある。これは放射性同位元素の放出につながる。循環器系の結果として他の領域へ遊離放射性同位元素が拡散されると、送達が望まれない場所への放射能の送達をもたらす可能性がある。前立腺がんのイメージングおよび治療に適した放射性標識錯体の安定した製剤が必要とされている。このような安定した製剤を調製するための効果的な方法も必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様において、Cuイオンと錯体を形成した式(I)の化合物またはその塩を含む非経口投与用の水性製剤であって、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、L-メチオニン、ピリドキシン、またはそれらの塩のうちの少なくとも1種をさらに含む、水性製剤が提供される。
【化1】
式 (I)
【0005】
さらなる態様において、Cuイオンと錯体を形成した式(Ia)の化合物またはその塩を含む非経口投与用の水性製剤であって、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、L-メチオニン、ピリドキシン、またはそれらの塩のうちの少なくとも1種をさらに含む、水性製剤が提供される。
【化2】
式 (Ia)
【0006】
本発明の別の態様において、Cuイオンと錯体を形成した式(I)の化合物またはその塩を含む非経口投与用の水性製剤であって、緩衝溶液をさらに含む、水性製剤が提供される。
【化3】
式 (I)
【0007】
さらなる態様において、Cuイオンと錯体を形成した式(Ia)の化合物またはその塩を含む非経口投与用の水性製剤であって、緩衝溶液をさらに含む、水性製剤が提供される。
【化4】
式 (Ia)
【0008】
一実施形態において、水性製剤は、ゲンチジン酸またはその塩を含む。
別の実施形態において、水性製剤は、アスコルビン酸またはその塩を含む。
別の実施形態において、水性製剤は、L-メチオニンまたはその塩を含む。
本発明の別の態様において、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を含む製剤を調製する方法であって、
i)ある量の式(I)の化合物を酢酸緩衝液に添加する工程、
ii)Cu放射性同位元素の塩酸溶液を、式(I)の化合物および酢酸緩衝液に添加する工程、ならびに
iii)工程ii)の混合物を、式(I)とCu放射性同位元素との錯体を形成するための時間および条件下で加熱する工程
を含む、方法が提供される。
【0009】
【化5】
式 (I)
【0010】
本発明の別の態様において、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を含む製剤を調製する方法であって、
i)ある量の式(I)の化合物をリン酸緩衝液に添加する工程、
ii)Cu放射性同位元素の塩酸溶液を、式(I)の化合物およびリン酸緩衝液に添加する工程、ならびに
iii)工程ii)の混合物を、式(I)とCu放射性同位元素との錯体を形成するための時間および条件下で反応させる工程
を含む、方法が提供される。
【化6】
式 (I)
【0011】
本明細書で定義される錯体を調製する方法の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物の構造を有する。
【化7】
式 (Ia)
一実施形態において、Cu放射性同位元素は61Cuである。
一実施形態において、Cu放射性同位元素は64Cuである。
別の実施形態において、Cu放射性同位元素は67Cuである。
さらなる実施形態において、製剤のpHは、約4~約8の間の範囲に維持される。
本発明の別の態様において、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を精製する方法であって、
i)Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物の溶液を、固相抽出カートリッジに充填する工程、
ii)水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含む溶離液を用いて、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を溶出する工程
を含む、方法が提供される。
【0012】
【化8】
式 (I)
【0013】
本明細書で定義される錯体を精製する方法の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物の構造を有する。
【化9】
式 (Ia)
一実施形態において、先の態様に従って精製された、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の精製化合物またはその塩は、本発明の別の態様に従って調製される。
一実施形態において、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物またはその塩は、本発明の別の態様に従って調製される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】精製された式(Ia)と64Cuとの錯体溶液の放射化学的純度のグラフである。該溶液は、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、またはL-メチオニンのいずれかを含有し、48時間にわたって監視された。
【発明を実施するための形態】
【0015】
式(I)の錯体の製剤
本発明は、特定の放射性同位元素-配位子錯体の安定した製剤に関する。本発明者らは、本明細書に開示される錯体の製剤が、配位子からの放射性同位元素の解離を最小限に抑え、および/または放射性同位元素に起因する配位子の放射線分解を最小限に抑えることを見出した。
本明細書で言及される放射性同位元素-配位子錯体の製剤は、溶液中および生理学的条件下でしばらくの間安定している。製剤の安定性は、錯体の安定性に関連している。放射性同位元素は錯体から解離する場合があり、これにより、配位子が結合する部位に送達される放射能が少なくなる。放射性同位元素は自然崩壊またはエネルギーの放出を起こすため、放出された時のこのエネルギーは、放射線分解と呼ばれる配位子の分解につながる場合がある。錯体の放射安定性(radiostability)は、製剤の放射化学的純度を考慮することによって測定できる。放射化学的純度は、サルコファジン配位子で錯化された放射性同位元素の量として定義され、製剤中に存在する放射性同位元素の総量の百分率として表される。放射性同位元素は、サルコファジン配位子との錯体として、遊離放射性同位元素として、または放射線分解生成物の一部として、製剤中に存在し得る。
【0016】
尿素ベースモチーフを含有する配位子は、通常前立腺組織で発現し、一部の前立腺がんで増加する前立腺特異的膜抗原(PSMA)の触媒部位に結合することが知られていることがこれまでに見出された。このようなモチーフを含有する配位子の例は、大環状配位子である1,8-ジアミノ-3,6,10,13,16,19-ヘキサアザビシクロ[6.6.6]イコサン(サルコファジンまたは「Sar」としても知られている)であるSar-bisPSMAである。該化合物において、各末端アミン基は、リンカー基および尿素ベースのモチーフに結合している。
Sar-bisPSMAは式(I)に示されている。
【化10】
式 (I)
式(I)の化合物は、サルコファジン配位子、リンカー、および尿素モチーフの間の一連のカップリング反応によって生成してもよい。式(I)の化合物の調製手順は、WO2018/223180中に見出すことができる。
【0017】
式(I)の化合物は、以下に示す式(Ia)の構造を有し得、ここで、化合物の立体化学が決定される。
【化11】
式 (Ia)
特に明記されていない場合、以下の式(I)の化合物に対するあらゆる言及は、式(Ia)の化合物への言及も含むと解釈されるべきである。
【0018】
本発明は、製剤における式(I)および(Ia)の化合物の使用に関する。式(I)および(Ia)の化合物は、薬学的に許容可能な塩として使用することができる。式(I)および(Ia)の化合物は、PSMAの触媒部位に独立して結合することができる2つの尿素モチーフを含有する。本発明者らは、式(I)の化合物の所望の部位における結合親和性の増加は、第2の尿素モチーフの存在によるものであると考えている。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、尿素モチーフを1つだけ有する類似化合物の2倍量の使用よりも効果的であると思われる式(I)の化合物の付加的な結合親和性は、第2の尿素モチーフの存在に関連していると考えている。続いて、式(I)または(Ia)の化合物を含有する本明細書に記載される製剤は、尿素モチーフを含有する類似化合物の製剤よりも優れた有効性を示す。
【0019】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、上記で特定された化合物の、所望の生物活性を保持する塩を指し、薬学的に許容可能な酸付加塩および塩基付加塩を含む。式(I)および(Ia)の化合物の適切な薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸または有機酸から調製してもよい。そのような無機酸の例は、塩酸、硫酸、およびリン酸である。適切な有機酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式カルボン酸およびスルホン酸のクラスの有機酸から選択することができ、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、アルキルスルホン酸およびアリールスルホン酸である。薬学的に許容可能な塩に関する追加情報は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 19th Edition, Mack Publishing Co., Easton, PA 1995に見出すことができる。固体である薬剤の場合、本発明の化合物、薬剤および塩は、種々の結晶形または多形形態で存在する可能性があり、それらはすべて、本発明および規定の処方の範囲内にあることが意図されていると当業者によって理解される。
【0020】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、酢酸塩として提供される。
本発明の製剤は、式(I)の化合物またはその塩、および放射性同位元素を含む。放射性核種とも呼ばれる放射性同位元素は、金属または金属イオンであり得る。本明細書の式(I)の化合物は、銅イオン、とりわけCu2+イオンの錯化に特に効果的であることが見出された。当業者は、式(I)の化合物を所望の放射性同位元素と接触させることによって、式(I)の化合物の錯体を生成できることを理解するであろう。ここで、放射性同位元素はCu2+イオンである。
一実施形態において、配位子は、Cuイオンと錯体を形成している。銅イオンは放射性であってもよく、したがって銅の放射性核種または放射性同位元素であってもよい。一実施形態において、配位子は、60Cuと錯体を形成している。別の実施形態において、配位子は61Cuと錯体を形成している。別の実施形態において、配位子は64Cuと錯体を形成している。別の実施形態において、配位子は67Cuと錯体を形成している。好ましい実施形態において、配位子は64Cuと錯体を形成している。別の好ましい実施形態において、配位子は、67Cuと錯体を形成している。
式(I)とCu放射性同位元素との錯体は不安定で、溶液中にあると放射線分解が起こりやすい場合がある。本発明者らは、錯体を含む製剤に1種または複数の安定剤が添加されると、可溶化された錯体が安定化され得ることを見出した。そのような安定剤は、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、L-メチオニン、ピリドキシンおよびそれらの塩を含む。
【0021】
本発明の製剤は、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、L-メチオニンおよびピリドキシン、またはそれらの塩のうちの少なくとも1種を含み得る。本発明者らは、本発明の製剤へのゲンチジン酸、アスコルビン酸、L-メチオニンおよび/またはピリドキシンの添加が、式(I)の錯体の放射線分解を防止するまたは最小限に抑えるのを助け、したがって、錯体およびその製剤の放射安定性を向上させることを確認した。
ゲンチジン酸は、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、5-ヒドロキシサリチル酸またはヒドロキノンカルボン酸としても知られている。ゲンチジン酸の塩は、ナトリウム塩およびナトリウム塩水和物を含み得る。ゲンチジン酸に対するあらゆる言及は、関連する場合、その塩への言及を含み得る。ジヒドロキシ安息香酸の他の異性体もまた検討される。他の異性体の例には、2,4-ジヒドロキシ安息香酸および2,5-ジヒドロキシ安息香酸、ならびにそれらの塩が含まれる。
一実施形態において、ゲンチジン酸は、約0.02%~約0.1%(w/v)の量で製剤中に存在する。一実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.02%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.025%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.03%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.035%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.04%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.045%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.05%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.055%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.6%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.065%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.07%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.075%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.08%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.085%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.09%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.095%(w/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、約0.1%(w/v)の量で製剤中に存在する。他の実施形態において、本発明では、前述した量の間の範囲であるゲンチジン酸またはその塩も検討される。好ましい実施形態において、ゲンチジン酸またはその塩は、0.056%(w/v)以下の量で製剤中に存在する。
【0022】
L-メチオニンはチオールエーテル側鎖を含むアミノ酸であり、MetまたはL-Metとしても知られている。L-メチオニンの塩にはナトリウム塩が含まれる。L-メチオニンに対するあらゆる言及は、関連する場合、その塩への言及を含み得る。
一実施形態において、L-メチオニンまたはその塩は、約1mg/mL~約4mg/mLの量で製剤中に存在する。一実施形態において、L-メチオニンまたはその塩は、約1.0mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニンまたはその塩は、約1.5mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニンまたはその塩は、約2.0mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニンまたはその塩は、約2.5mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニンまたはその塩は、約3.0mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニンまたはその塩は、約3.5mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、L-メチオニンまたはその塩は、約4.0mg/mLの量で製剤中に存在する。他の実施形態において、本発明では、前述した量の間の範囲であるL-メチオニンまたはその塩も検討される。好ましい実施形態において、L-メチオニンは、約3mg/mLの量で製剤中に存在する。
【0023】
アスコルビン酸は、2,3-ジデヒドロ-L-スレオ-ヘキサノ-1,4-ラクトンまたはビタミンCとしても知られている。アスコルビン酸の塩には、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸カルシウム、およびアスコルビン酸マグネシウムが含まれる。アスコルビン酸に対するあらゆる言及は、関連する場合、その塩への言及を含み得る。
【0024】
一実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約5mg/mL~約50mg/mLの量で製剤中に存在する。一実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約5mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約6mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約7mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約8mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約9mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約10mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約11mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約12mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約13mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約14mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約15mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約20mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約25mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約30mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約35mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約40mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約45mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、アスコルビン酸またはその塩は、約50mg/mLの量で製剤中に存在する。他の実施形態において、本発明では、前述した量の間の範囲であるアスコルビン酸またはその塩も検討される。好ましい実施形態において、アスコルビン酸は、約10mg/mLの量で製剤中に存在する。
【0025】
ピリドキシンは、4,5-ビス(ヒドロキシメチル)-2-メチルピリジン-3-オールまたはビタミンB6としても知られている。
ピリドキシンの塩には、塩酸塩が含まれ得る。一実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約5mg/mL~約15mg/mLの量で製剤中に存在する。一実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約5mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約6mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約7mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約8mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約9mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約10mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約11mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約12mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約13mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約14mg/mLの量で製剤中に存在する。別の実施形態において、ピリドキシンまたはその塩は、約15mg/mLの量で製剤中に存在する。好ましい実施形態において、ピリドキシンは、約10mg/mLの量で製剤中に存在する。
【0026】
本発明の製剤は、成分としてエタノールを含み得る。製剤に使用されるエタノールは、無水エタノールであり得る。あるいは、製剤に使用されるエタノールは、乾燥プロセスにかけられていなくてもよく、水和されていてもよい。エタノールは、好ましくは医薬品グレードのエタノールである。製剤中に存在するエタノールは、式(I)の放射性標識錯体の放射線分解を防止するのをさらに助ける場合がある。
【0027】
一実施形態において、エタノールは、約7%~約13%(v/v)の量で製剤中に存在する。一実施形態において、エタノールは、約7%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約8%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約9%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約10%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約11%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約12%(v/v)の量で製剤中に存在する。別の実施形態において、エタノールは、約13%(v/v)の量で製剤中に存在する。好ましい実施形態において、エタノールは、約10%(v/v)の量で製剤中に存在する。他の実施形態において、本発明では、前述した量の間の範囲であるエタノールも検討される。
【0028】
本発明の製剤はまた、成分として塩化ナトリウムを含み得る。本発明の製剤中の塩化ナトリウムは、食塩水として提供されてもよい。食塩水は、塩化ナトリウムの水溶液として定義される。例えば、生理食塩水は、0.9%(w/v)の濃度の塩化ナトリウムの水溶液として定義される。本発明の一実施形態において、製剤の塩化ナトリウムは、食塩水によって提供される。
一実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.6%~1.2%(w/v)の量で製剤中に存在する。一実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.6%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.7%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.8%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.9%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約1.0%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約1.1%(w/v)の量で存在する。別の実施形態において、塩化ナトリウムは、約1.2%(w/v)の量で存在する。好ましい実施形態において、塩化ナトリウムは、約0.9%(w/v)の量で製剤中に存在する。他の実施形態において、本発明では、前述した量の間の範囲である塩化ナトリウムも検討される。
【0029】
本発明の製剤は、約4~約8のpHを有する。当業者は、製剤のpHが、式(I)の化合物またはその錯体と、製剤の残りの賦形剤との組み合わせに起因する、製剤の固有特性であることを理解するであろう。あるいは、製剤のpHは、1種または複数の緩衝剤の添加によって所望の値に変更されてもよい。適切な緩衝溶液の例には、酢酸ナトリウムと酢酸との混合物を含み得る酢酸緩衝液が含まれる。特定の実施形態において、本発明の製剤は、酢酸緩衝液を含む。別の適切な緩衝溶液には、さまざまなリン酸塩またはその水和物の混合物を含み得るリン酸緩衝液が含まれる。適切なリン酸塩の例には、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)およびリン酸水素二カリウム(K2HPO4)が含まれる。一実施形態において、リン酸緩衝液はリン酸ナトリウム塩を含有する。別の実施形態において、リン酸緩衝液はリン酸カリウム塩を含有する。別の実施形態において、リン酸緩衝液は、リン酸ナトリウム塩およびリン酸カリウム塩の混合物を含有する。
【0030】
本明細書で使用される場合、「緩衝液」という用語は、それが添加される媒体のpHを一定レベルに維持する成分を指す。本開示の文脈において、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、L-メチオニンおよびピリドキシン、それらの塩または水溶液は、緩衝液とはみなされない。
一実施形態において、製剤のpHは、約4~約8である。一実施形態において、製剤のpHは、約4である。別の実施形態において、製剤のpHは、約4.5である。別の実施形態において、製剤のpHは、約5.0である。一実施形態において、製剤のpHは、約5.5である。別の実施形態において、製剤のpHは、約5.6である。別の実施形態において、製剤のpHは、約5.7である。別の実施形態において、製剤のpHは、約5.8である。別の実施形態において、製剤のpHは、約5.9である。別の実施形態において、製剤のpHは、約6.0である。別の実施形態において、製剤のpHは、約6.1である。別の実施形態において、製剤のpHは、約6.2である。別の実施形態において、製剤のpHは、約6.3である。別の実施形態において、製剤のpHは、約6.4である。別の実施形態において、製剤のpHは、約6.5である。別の実施形態において、製剤のpHは、約7.0である。別の実施形態において、製剤のpHは、約7.5である。別の実施形態において、製剤のpHは、約8.0である。好ましい実施形態において、製剤のpHは、約6.0である。別の好ましい実施形態において、製剤のpHは、約5.0である。
【0031】
本発明者の手により、式(I)の化合物が水溶液として処方される場合、化合物は比較的不安定であり、酸化および分解されやすいことが確認された。認められた不安定性を克服するための1つの手法は、酸化防止剤および/または安定剤である1種または複数の成分を製剤に添加することであり得るが、製剤にさらなる成分を含めることで、式(I)の化合物とこれらの添加された成分との間に潜在的な反応性問題がもたらされる。例えば、酸化防止剤を添加すると、実際には式(I)の化合物と反応する場合があり、したがって、該化合物の構造および機能を潜在的に変化させる場合があるが、これは望ましくない。
しかし本発明者らは今や、特定の安定剤の添加が、場合によっては、式(I)の化合物を含有する製剤を提供するのに十分であり得ることを見出した。本明細書に開示されるように、ゲンチジン酸、アスコルビン酸、L-メチオニンまたはピリドキシンなどの安定剤は式(I)の化合物と反応しないようであり、かつ必要な安定性を提供することができるため、これらの安定剤を含有する式(I)の化合物の製剤が検討される。
【0032】
しかし、緩衝液および式(I)の化合物を含有する製剤が、必要な安定性を化合物に提供することが今では判明している。したがって、本発明者らは、非経口投与に適切なpHを有する製剤を提供することに加えて、緩衝液の存在により、式(I)の化合物が必要な安定性を有する製剤が提供されることを見出した。
驚くべきことに、本発明者らは、ゲンチジン酸、アスコルビン酸および本明細書で述べられる他の薬剤などの安定剤の添加は必要な安定性を提供し得るが、製剤の安定性はまた、緩衝液のみの使用によって、すなわち、安定剤の非存在下でも達成され得ることを見出した。
【0033】
式(I)の錯体を調製する方法
本発明はまた、式(I)の化合物の放射性標識錯体、およびその製剤を調製する方法に関する。前述したように、式(I)の化合物は、Cuイオンなどの放射性同位元素と錯体を形成することができる。したがって、本発明は、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を含む製剤を調製する方法であって、
i)ある量の式(I)の化合物を酢酸緩衝液に添加する工程、
ii)Cu放射性同位元素の塩酸溶液を、式(I)の化合物および酢酸緩衝液に添加する工程、ならびに
iii)工程ii)の混合物を、式(I)とCu放射性同位元素との錯体を形成するための時間および条件下で加熱する工程
を含む、方法を提供する。
【0034】
【化12】
式 (I)
本発明はまた、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を含む製剤を調製する方法であって、
i)ある量の式(I)の化合物をリン酸緩衝溶液に添加する工程、
ii)Cu放射性同位元素の塩酸溶液を、式(I)の化合物およびリン酸緩衝溶液に添加する工程、ならびに
iii)工程ii)の混合物を、式(I)とCu放射性同位元素との錯体を形成するための時間および条件下で反応させる工程
を含む、方法を提供する。
【0035】
【化13】
式 (I)
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物の構造を有する。
【化14】
式 (Ia)
【0036】
一実施形態において、本方法は、式(I)の化合物とCu放射性同位元素との間の反応が完了したら、式(I)の化合物とCu放射性同位元素との混合物にアスコルビン酸ナトリウム溶液を添加する工程をさらに含む。
式(I)の化合物は、ストック溶液の一部として提供され得る。式(I)のストック溶液を調製する前に、化合物は、凍結乾燥などの乾燥工程に供され得る。式(I)の化合物をエタノールと水との混合物に溶解させて、式(I)の化合物のストック溶液を生じることができる。一実施形態において、式(I)の化合物は、エタノールと水が約1:1の比率で存在するエタノールと水との混合物に溶解される。一実施形態において、式(I)の化合物は、約1nmol/μLの濃度でストック溶液として提供される。
【0037】
式(I)の化合物は、約1nmol~約10nmolの間の量で存在し得る。一実施形態において、式(I)の化合物は、約1nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約2nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約3nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約4nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約5nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約6nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約7nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約8nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約9nmolの量で存在する。別の実施形態において、式(I)の化合物は、約10nmolの量で存在する。当業者は、化合物式(I)のストック溶液の必要量がストック溶液の初期濃度に依存することを理解するであろう。当業者はまた、式(I)の化合物をより大量に使用してもよく、その後、他の試薬、緩衝液、および溶媒の量をそれに応じて変更してもよいことを理解するであろう。
一実施形態において、緩衝溶液は酢酸緩衝液であってもよい。この方法で使用される酢酸緩衝液は、酢酸ナトリウムと酢酸から調製してもよい。酢酸緩衝液は、式(I)の化合物とCu放射性同位元素との錯体形成に適した範囲でpHを維持する。緩衝溶液のpHは約5.0であり得る。酢酸緩衝液は、約1.0Mの濃度を有し得る。酢酸緩衝液はまた、エタノールを含み得る。一実施形態において、酢酸緩衝液は、約10%~約30%の間の量のエタノールを含む。一実施形態において、酢酸緩衝液は、約10%の量のエタノールを含む。一実施形態において、酢酸緩衝液は、約20%の量のエタノールを含む。一実施形態において、酢酸緩衝液は、約30%の量のエタノールを含む。好ましい実施形態において、酢酸緩衝液は、約20%の量のエタノールを含む。
【0038】
別の実施形態において、緩衝溶液はリン酸緩衝液であってもよい。リン酸緩衝液は、さまざまなリン酸塩またはその水和物の混合物を含み得る。適切なリン酸塩の例には、リン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)、リン酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)、リン酸二水素カリウム(KH2PO4)およびリン酸水素二カリウム(K2HPO4)が含まれる。一実施形態において、リン酸緩衝液はリン酸ナトリウム塩を含有する。別の実施形態において、リン酸緩衝液はリン酸カリウム塩を含有する。別の実施形態において、リン酸緩衝液は、リン酸ナトリウム塩およびリン酸カリウム塩の混合物を含有する。リン酸緩衝液はまた、食塩水および/または水を含有し得る。一実施形態において、リン酸緩衝液は、リン酸水素ナトリウム塩と食塩水との混合物を含む。
エタノールと水との混合物中の式(I)の化合物のストック溶液から、ある量の式(I)の化合物を含有するアリコートを採取し、ある量の酢酸緩衝液と混合する。一実施形態において、式(I)の化合物は、酢酸緩衝液に添加されるが、ここで、酢酸緩衝液は、約20%のエタノールを含む。一実施形態において、式(I)の化合物は、室温で酢酸緩衝液に添加される。
【0039】
上述のように、式(I)の化合物は、Cuイオンを錯化する。一実施形態において、Cuイオンは、Cuの放射性同位元素である。一実施形態において、Cu放射性同位元素は60Cuである。別の実施形態において、Cu放射性同位元素は61Cuである。別の実施形態において、Cu放射性同位元素は64Cuである。別の実施形態において、Cu放射性同位元素は67Cuである。Cu放射性同位元素はCu塩として提供される。一実施形態において、Cu塩は、Cu2+塩化物塩として提供される。一実施形態において、Cu塩は、[64Cu]CuCl2塩として提供される。Cu放射性同位元素は塩酸溶液として提供される。一実施形態において、Cu放射性同位元素は64Cuであり、塩酸溶液として提供され、該塩酸は約0.02Mの濃度を有する。一実施形態において、Cu放射性同位元素は塩酸溶液中の[64Cu]CuCl2溶液として提供され、該塩酸は約0.02Mの濃度を有する。当業者は、Cu塩が他の濃度の塩酸で提供され得ることを理解するであろう。別の実施形態において、Cu放射性同位元素は、Cu2+酢酸塩として提供される。一実施形態において、Cu塩は、[64Cu]Cu(OAc)2塩として提供される。
【0040】
塩酸溶液として提供されるCu塩の溶液は、特定の出発放射能を有するであろう。溶液の出発放射能は、放射性同位元素の特定のバッチに応じて変動する場合がある。当業者は、Cuイオンと錯体を形成した式(I)の化合物の最終放射能が、式(I)の化合物を錯化するために使用されるCu塩の放射能に依存し、該Cu塩の放射能は塩酸中のCu塩の溶液の放射能に依存することを理解するであろう。式(I)と銅塩との錯体の放射化学的総収率は、Cu塩の溶液中に最初に存在する放射能の量を用いて求めることができる。塩酸溶液中Cu放射性同位元素のアリコートを、酢酸緩衝液中の式(I)の化合物に添加する。当業者は、放射化学的純度が、ラジオHPLCまたは類似の方法によって測定され得ることを理解するであろう。
【0041】
一実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約100~約5000MBqの間の放射能を有する。一実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約100MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約250MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約750MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約1000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約1500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約2000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約2500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約3000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約4000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、64Cu放射性同位元素の溶液は、約5000MBqの放射能を有する。
【0042】
一実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約100~約5000MBqの間の放射能を有する。一実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約100MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約250MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約750MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約1000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約1500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約2000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約2500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約3000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約4000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、61Cu放射性同位元素の溶液は、約5000MBqの放射能を有する。
【0043】
一実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約100~約3000MBqの間の放射能を有する。一実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約100MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約250MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約750MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約1000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約1500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約2000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約2500MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約3000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約4000MBqの放射能を有する。別の実施形態において、67Cu放射性同位元素の溶液は、約5000MBqの放射能を有する。
Cu放射性同位元素は塩酸溶液として提供されてもよい。一実施形態において、Cu放射性同位元素は、約0.01M~約0.05Mの間の濃度を有する塩酸溶液で提供される。一実施形態において、塩酸溶液の濃度は約0.01Mである。別の実施形態において、塩酸溶液の濃度は約0.02Mである。別の実施形態において、塩酸溶液の濃度は約0.03Mである。別の実施形態において、塩酸溶液の濃度は約0.04Mである。別の実施形態において、塩酸溶液の濃度は約0.05Mである。さらなる実施形態において、塩酸溶液の濃度は、約0.02M~約0.05Mの間である。
【0044】
次いで、Cu放射性同位元素と、式(I)の化合物と、酢酸緩衝液との混合物を含む溶液を、式(I)の化合物とCu放射性同位元素との錯体形成を可能にするため、一定時間、特定の温度で混合させる。溶液は、適切な装置を使用して混合することができる。例えば、使用される量が少ない場合、Eppendorfチューブが適切な容器である場合があり、その結果、Eppendorfサーモミキサーを使用して、溶液を混合すること、必要に応じて加熱することの両方ができる。一実施形態において、溶液は室温で混合される。一実施形態において、溶液は約40℃で混合される。本発明者らは、溶液が約40℃の温度で混合される場合、放射性同位元素の錯化が約5分以内に完了することを見出した。混合にはより低温の約21℃、すなわち室温を使用することができ、錯体形成反応は5分で完了しない場合があるが、約15分で完了する。本発明者らはまた、約40℃より高い温度、例えば60℃により、式(I)の化合物のいくらかの分解がもたらされ、したがって、錯体の収率が低下することを見出した。一実施形態において、溶液は、約40℃で約5分間混合される。一実施形態において、溶液は、約40℃で約10分間混合される。別の実施形態において、溶液は、約40℃で約15分間混合される。別の実施形態において、溶液は、約21℃で約10分間混合される。別の実施形態において、溶液は、約21℃で約15分間混合される。
【0045】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、リン酸緩衝溶液に添加され、これに、塩酸中にCu放射性同位元素を含有する溶液が添加される。式(I)の化合物と、リン酸緩衝液と、Cu放射性同位元素とを含有する混合物を、式(I)とCu放射性同位元素との錯体をもたらすように、一定時間および条件下で反応させる。一実施形態において、溶液は室温で混合される。一実施形態において、溶液は、室温で約10分間混合される。別の実施形態において、溶液は、室温で約15分間混合される。別の実施形態において、溶液は、室温で約20分間混合される。さらなる実施形態において、溶液は、室温で約25分間混合される。
式(I)とCu放射性同位元素との錯体が形成されたら、溶液をアスコルビン酸ナトリウム溶液で希釈する。アスコルビン酸ナトリウムを添加することで、混合物に還元剤が導入され、式(I)とCu放射性同位元素との錯体に放射安定化効果(radiostabilising effect)がもたらされる。次いで、これにより、製剤全体の安定性が高められ、錯体含有製剤のより長い貯蔵寿命がもたらされる。アスコルビン酸ナトリウム溶液は、約25mg/mL~約75mg/mLの間の濃度を有し得る。一実施形態において、アスコルビン酸ナトリウム溶液は、約25mg/mLの濃度を有し得る。別の実施形態において、アスコルビン酸ナトリウム溶液は、約50mg/mLの濃度を有し得る。別の実施形態において、アスコルビン酸ナトリウム溶液は、約75mg/mLの濃度を有し得る。残存するCu放射性同位元素が十分に希釈されることを確実にするように、特定の濃度のアスコルビン酸ナトリウム溶液を一定量添加する。当業者は、添加される溶液の量が、錯化されていないCu放射性同位元素の量およびアスコルビン酸ナトリウム溶液の濃度に依存することを理解するであろう。
【0046】
本発明者らは、本明細書に開示されるCu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を調製する方法が、化合物の効率的な放射性標識を可能にし、高い放射化学的収率を得ることを可能にすることを見出した。本発明者らは、ある量のエタノールを含む酢酸緩衝液が使用される場合、式(I)の化合物とCu放射性同位元素との錯体形成がより速いことを見出した。本発明の一実施形態によれば、本方法は、エタノールを含む酢酸緩衝液に式(I)の化合物を添加することを含む。
一実施形態において、方法は、
i)ある量の式(I)の化合物を、エタノールを含む酢酸緩衝液に添加する工程、
ii)塩酸中[64Cu]CuCl2の溶液を、式(I)の化合物、およびエタノールを含む酢酸緩衝液に添加する工程、ならびに
iii)工程ii)の混合物を40℃で約5分間加熱する工程
を含む。
【0047】
別の実施形態において、方法は、
i)ある量の式(I)の化合物を、エタノールおよびゲンチジン酸ナトリウムを含むリン酸緩衝液に添加する工程、
ii)塩酸中[64Cu]CuCl2の溶液を、式(I)の化合物、およびゲンチジン酸ナトリウムを含むリン酸緩衝液に添加する工程、ならびに
iii)工程ii)の混合物を、式(I)とCu放射性同位元素との錯体を形成するための時間および条件下で反応させる工程
を含む。
式(I)の錯体を精製するプロセス
Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を調製するプロセスが完了したら、錯体を精製および単離しなければならない。当業者は、精製および単離プロセス中に、材料の損失が起こり、したがって、化学的および放射化学的総収率が低下する場合があることを理解するであろう。これらの損失は、運搬管理工程、シリンジおよび精製プロセスで使用される他の器具における材料の損失、または反応容器内における材料の保持に起因し得る。精製プロセスには通常、固相媒体を使用するろ過工程が含まれ、固相による材料の保持は、多くの場合収率の低下をもたらす。精製プロセスは多くの場合、錯体を溶出するためにさまざまな溶媒で固相を洗浄することに依存するが、大量の溶媒を使用すると、錯体の希薄溶液になり、望ましくない。錯体の分解は精製中にも起こる場合があり、その結果、錯体の収率が低下し、遊離放射性同位元素が失われる場合がある。本発明者らは、式(I)とCu放射性同位元素との錯体の精製が有利に達成され、その結果、錯体が高い化学的および放射化学的収率で単離されることを見出した。
【0048】
本発明の別の態様によれば、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を精製する方法であって、
i)Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物の溶液を、固相抽出カートリッジに充填する工程、
ii)水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含む溶離液を用いて、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を溶出する工程
を含む、方法が提供される。
【化15】
式 (I)
【0049】
方法の一実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物の構造を有する。
【化16】
式 (Ia)
【0050】
一実施形態において、Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物の溶液が、本発明の別の実施形態に従って得られる。式(I)とCu放射性同位元素との錯体を調製する反応が完了すると、得られた溶液は精製プロセスに供される。
式(I)とCu放射性同位元素との錯体を含む溶液を固相抽出カートリッジに充填する。固相抽出カートリッジは、溶液中に存在する錯体およびその他の成分を保持する固定相を含有する。本明細書で使用される場合、「固定相」という用語は、固相抽出カートリッジ内に保持され、化合物の極性に基づいてその分離を可能にする樹脂様材料を指す。
本明細書に記載の固相抽出プロセスは、逆相固定相を使用することができる。本明細書で使用される場合、固定相に関する「逆相」という用語は、固定相が疎水性または非荷電分子に対して親和性を有するように、事実上疎水性である固定相を指す。逆相固定相の例には、C8、C18、light C18、light CN、light tC2、またはHLBカートリッジなどのWaters Sep-Pakカートリッジが含まれ得る。式(I)の錯体を含有する溶液を充填する前に、カートリッジは、エタノールで洗浄し、空気で乾燥させ、水で平衡化することによって準備される。一実施形態において、固相抽出カートリッジは、Waters C18カートリッジである。別の実施形態において、固相抽出カートリッジは、Waters tC2カートリッジである。別の実施形態において、固相抽出カートリッジは、Waters CNカートリッジである。別の実施形態において、固相抽出カートリッジは、Waters HLBカートリッジである。
【0051】
続いて、式(I)とCu放射性同位元素との錯体を含有する精製溶液を使用して、錯体を含む製剤を生成することができる。例えば、1種または複数の薬学的に許容可能な希釈剤、補助剤および/または賦形剤を、式(I)とCu放射性同位元素との錯体を含有する溶液に添加してもよい。希釈剤、補助剤および賦形剤は、組成物の他の成分と相容性であるという点で「許容可能」でなければならず、そのレシピエントに有害であってはならない。Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th Edition, Williams & Wilkins, Pennsylvania, USAなどの教科書に記載されるように、医薬組成物を調製するための医薬担体は当技術分野において公知である。担体は投与経路に依存し、また当業者は、それぞれの特定の場合に最も適切な処方を容易に決定することができる。
【0052】
本明細書における任意の先行文献(もしくは先行文献に由来する情報)、または任意の公知事項への言及は、該先行文献(もしくは先行文献に由来する情報)、または公知事項が、本明細書に関連する試みの範囲における一般的知識の一部を形成するという承認もしくは容認またはいかなる形式の提案でもなく、そのように解釈されるべきではない。
本明細書および添付の特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解釈すべき場合を除き、「含む(comprise)」という単語、および「含む(comprises)」および「含む(comprising)」などの変形は、記述された完全体または部分(integer or step)あるいは複数の完全体または部分のグループの包含を意味するが、いかなるその他の完全体または部分、あるいは複数の完全体または部分のグループの除外を意味するものではないと理解されるであろう。
【実施例
【0053】
全体的な実験の詳細
放射性標識用の酢酸ナトリウム緩衝液は、酢酸ナトリウム(TraceSELECT、Fluka、バッチ番号BCBM4793V)、酢酸(TraceSELECT、Fluka、バッチ番号BCBM5177V)およびMilliQ水を酸洗浄ガラス瓶に入れて使用して調製し、酸洗浄プラスチックボトルに保存した。すべての緩衝液は、使用しない間は2~4℃で保存した。
放射性標識用のリン酸緩衝液は、リン酸水素二ナトリウム(無水)、リン酸二水素ナトリウム、およびTraceSELECT水を使用して調製した。すべての緩衝液は、使用しない間は室温で保存した。銅64(64Cu)は、SAHMRI、SA、Australiaから、450μLの量で2.39GBq@08:39の出発放射能を有する0.02M HCl中の[64Cu]CuCl2として、バッチ番号19-0075-902Rで入手した。
放射性標識生成物のSPE精製は、Waters Sep-Pakカートリッジlight C8(ロット番号:002836047A)を使用して実施した。カートリッジは、EtOH(10mL)で洗浄し、続いて空気ボーラス(bolus of Air)(3×10mL)、次いでMilliQ H2O(10mL)および空気(3×10mL)で平衡化することによってコンディショニングした。
【0054】
HPLC用MeCN(Honeywell、ロット番号:S1RA1H)、およびHPLC用トリフルオロ酢酸(TFA、ReagentPlus、99%、Sigma Aldrich、ロット番号:SHBG2783V)、(+)-L-アスコルビン酸ナトリウム(Sigma Aldrich、>99%、ロット番号:BCBV4424)、L-メチオニン(Sigma Aldrich、>99.5%、ロット番号:BCBS2107V)およびゲンチジン酸ナトリウム塩水和物(Sigma Aldrich、>99%、ロット番号:MKCC2280)を受け取ったまま使用した。すべてのHPLC移動相は、使用前に調製し、ろ過し(0.45μmの水性または有機フィルタを使用)、真空下で10分間の超音波照射を組み合わせて脱気した。使用したすべてのEtOHは100%エチルアルコール(分子生物学グレード)であった。使用したすべてのシリンジは「B Braun Injekt-F」であった。
溶出緩衝液は1:1EtOH:H2O+0.9%NaClとして調製した。
すべての反応バイアルは、使用前に酸洗浄された。プラスチック製マイクロ遠心チューブに4M HClを充填し、少なくとも一晩静置し、4M HClを除去し、バイアルをMilliQ H2Oで入念に洗浄し、50℃にてオーブンで乾燥させた。乾燥後、さらなる汚染を防ぐためにバイアルを密封した。ガラス器具は、4M HNO3に最低12時間浸して酸洗浄し、4M HNO3を適切な廃棄物容器にデカントした後、ガラス器具をMilliQ H2Oで入念に洗浄し、50℃にてオーブンで乾燥させた。乾燥後、さらなる汚染を防ぐためにガラス器具を密封した。
EtOH:H2O(1:1)中のSar-bis(PSMA)、すなわち式(Ia)の化合物のストック溶液を調製し、1nmol/μLの濃度で式(Ia)の化合物を含む溶液を得た。
【0055】
Cu放射性同位元素による式(I)の放射性標識
(実施例1)
酸洗浄した500μLのマイクロ遠心チューブに、標識緩衝液(酢酸緩衝液、50μL、1M、pH5.0)を添加し、続いて式Iのストック溶液10μLを添加した。緩衝溶液に、0.02M HCl中の[64Cu]CuCl2(25μL、116MBq)を添加した。マイクロ遠心チューブを密閉し、反応物中に存在する放射能を、ドーズキャリブレータを使用して測定した。チューブをEppendorfサーモミキサーCに移し、40℃で20分間加熱した。20分で反応物をサーモミキサーから取り出し、サンプル(5μL)を反応物から採取し、1:1EtOH:H2O(5μL)で希釈し、ラジオHPLCシステム(QC1、5μL)に注入した。放射化学的収率が95%超であるかどうかを測定するために7分で最終分析が行われている間、反応混合物は室温にあった。
【0056】
(実施例2)
酸洗浄した500μLのマイクロ遠心チューブに、標識緩衝液(酢酸緩衝液、50μL、1M、pH5.0)を添加し、続いて式Iのストック溶液5μLを添加した。緩衝溶液に、0.02M HCl中の[64Cu]CuCl2(25μL、109MBq)を添加した。マイクロ遠心チューブを密閉し、反応物中に存在する放射能を、ドーズキャリブレータを使用して測定した。チューブをEppendorfサーモミキサーCに移し、40℃で20分間加熱した。20分で反応物をサーモミキサーから取り出し、サンプル(5μL)を反応物から採取し、1:1EtOH:H2O(5μL)で希釈し、ラジオHPLCシステム(QC1、5μL)に注入した。放射化学的収率が95%超であるかどうかを測定するために7分で最終分析が行われている間、反応混合物は室温にあった。
(実施例3)
酸洗浄した1500μLのマイクロ遠心チューブに、標識緩衝液(酢酸緩衝液、600μL、1M、pH5.0)を添加し、続いて式Iのストック溶液20μLを添加した。緩衝溶液に、0.02M HCl中の[64Cu]CuCl2(300μL、1136MBq)を添加した。マイクロ遠心チューブを密閉し、反応物中に存在する放射能を、ドーズキャリブレータを使用して測定した。チューブをEppendorfサーモミキサーCに移し、40℃で20分間加熱した。20分で反応物をサーモミキサーから取り出し、サンプル(5μL)を反応物から採取し、1:1EtOH:H2O(5μL)で希釈し、ラジオHPLCシステム(QC1、5μL)に注入した。放射化学的収率が95%超であるかどうかを測定するために7分で最終分析が行われている間、反応混合物は室温にあった。
【0057】
(実施例4)
酸洗浄した500μLのマイクロ遠心チューブに、標識緩衝液(酢酸緩衝液中20%EtOH、100μL、1M、pH5.0)を添加し、続いて式Iのストック溶液10μLを添加した。緩衝溶液に、0.02M HCl中の[64Cu]CuCl2(50μL、183MBq)を添加した。マイクロ遠心チューブを密閉し、反応物中に存在する放射能を、ドーズキャリブレータを使用して測定した。チューブをEppendorfサーモミキサーCに移し、40℃で20分間加熱した。20分で反応物をサーモミキサーから取り出し、サンプル(5μL)を反応物から採取し、1:1EtOH:H2O(5μL)で希釈し、ラジオHPLCシステム(QC1、5μL)に注入した。放射化学的収率が95%超であるかどうかを測定するために7分で最終分析が行われている間、反応混合物は室温にあった。
(実施例5)
酸洗浄した500μLのマイクロ遠心チューブに、標識緩衝液(酢酸緩衝液、100μL、1M、pH5.0)を添加し、続いて式Iのストック溶液5μLを添加した。緩衝溶液に、0.02M HCl中の[64Cu]CuCl2(50μL、174MBq)を添加した。マイクロ遠心チューブを密閉し、反応物中に存在する放射能を、ドーズキャリブレータを使用して測定した。チューブをEppendorfサーモミキサーCに移し、21℃で20分間加熱した。5分および15分で、反応が完了したかどうかを判断するための分析用にアリコート(5μL)を採取した。これらのサンプルを1:1EtOH:H2O(5μL)で希釈し、ラジオHPLCシステム(QC1、5μL)に注入した。放射化学的収率が95%超であるかどうかを測定するために7分で最終分析が行われている間、反応混合物は再びサーモミキサーに置かれた。
【0058】
(実施例6)
ゲンチジン酸ナトリウム(5mg、0.03mmol)含有0.1M Na/Naリン酸緩衝液(5mL)中のSar-bis(PSMA)(50μg、24.8nmol)の溶液に、0.02M~0.05M HCl中の[64Cu]CuCl2(NMT500μL、NMT5000MBq)を室温で添加した。得られた混合物を室温で最大25分間反応させた。完了次第、反応混合物を50mg/mLアスコルビン酸ナトリウム溶液(15mL)でクエンチした。次いで、得られた混合物を、0.22μmベントフィルタを通して滅菌バイアルに移し、64Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を得る。
【0059】
(実施例7)
ゲンチジン酸ナトリウム(5mg、0.03mmol)およびエタノール(ニート、0.5mL)含有0.1M Na/Naリン酸緩衝液(4.5mL)中のSar-bis(PSMA)(50μg、24.8nmol)の溶液に、0.02M~0.05M HCl中の[64Cu]CuCl2(NMT500μL、NMT5000MBq)を室温で添加した。得られた混合物を室温で最大25分間反応させた。完了次第、反応混合物を50mg/mLアスコルビン酸ナトリウム溶液(15mL)でクエンチした。次いで、得られた混合物を、0.22μmベントフィルタを通して滅菌バイアルに移し、64Cu放射性同位元素と錯体を形成した式(I)の化合物を得る。
精製手順
(実施例8)
実施例1で得られた溶液を、C8 SPEカートリッジを使用して精製し、生成物を0.5mLの1:1EtOH:H2O+0.9%NaClで溶出した。生成物の62%がSPEから溶出され、「遊離銅」がゼロで、94.3%の高い放射化学的純度を有することが示された。希釈/充填シリンジで4%が失われ、12%が反応バイアルから離れず、SPEで9%が失われた。SPE充填および洗浄工程で1%未満が失われた。
【0060】
(実施例9)
実施例2で得られた溶液を、C8 SPEカートリッジを使用して精製し、生成物を0.5mLの1:1EtOH:H2O+0.9%NaClで溶出した。生成物の73%がSPEから溶出され、「遊離銅」が0.2%で、94.3%の高い放射化学的純度を有することが示された。希釈/充填シリンジで7%が失われ、1%が反応バイアルから離れず、SPEで14%が失われた。SPE充填および洗浄工程で1%未満が失われた。
(実施例10)
実施例3で得られた溶液を、C8 SPEカートリッジを使用して精製し、生成物を0.5mLの1:1EtOH:H2O+0.9%NaClで溶出した。生成物の64%がSPEから溶出され、「遊離銅」が0.1%で、96.6%の高い放射化学的純度を有することが示された。希釈/充填シリンジで4%が失われ、1.5%が反応バイアルから離れなかった。
【0061】
(実施例11)
実施例4で得られた溶液を、C8 SPEカートリッジを使用して精製し、生成物を0.5mLの1:1EtOH:H2O+0.9%NaClで溶出した。生成物の71%がSPEから溶出され、「遊離銅」がゼロで、96.3%の高い放射化学的純度を有することが示された。希釈/充填シリンジで6%が失われ、3%が反応バイアルから離れず、SPEで15%が失われた。SPE充填および洗浄工程で1%未満が失われた。
(実施例12)
実施例5で得られた溶液を、C8 SPEカートリッジを使用して精製し、生成物を0.5mLの1:1EtOH:H2O+0.9%NaClで溶出した。生成物の59%がSPEから溶出され、「遊離銅」が0.1%で、96.9%の高い放射化学的純度を有することが示された。希釈/充填シリンジで11%が失われ、7%が反応バイアルから離れず、SPEで20%が失われた。SPE充填および洗浄工程で1%未満が失われた。
【0062】
製剤の調製
(実施例13)
実施例10の精製溶液のアリコートを採取し、食塩水中エタノールの混合物で希釈して、最終濃度が食塩水中エタノール約10%である溶液を得た。ゲンチジン酸(0.63mg/mL)、アスコルビン酸(10mg/mL)、またはL-メチオニン(3mg/mL)のうちの1種を添加し、各サンプルの放射化学的純度を48時間にわたって監視した。
図1