IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オックスフォード インストゥルメンツ テクノロジーズ オサケユイチアの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】プリアンプ回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/08 20060101AFI20241202BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
H03F3/08
G01T1/17 F
G01T1/17 G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021575998
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-31
(86)【国際出願番号】 FI2020050405
(87)【国際公開番号】W WO2020260753
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】19182191.7
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519249033
【氏名又は名称】オックスフォード インストゥルメンツ テクノロジーズ オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランタラ、アルト
(72)【発明者】
【氏名】アンデション、ハンス
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-279410(JP,A)
【文献】特開平09-008563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0007438(US,A1)
【文献】特開平05-180944(JP,A)
【文献】特開平06-169247(JP,A)
【文献】特表2000-505927(JP,A)
【文献】特開2001-196877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0028950(US,A1)
【文献】特開2016-025416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00-3/72
G01T 1/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を増幅するためのプリアンプ回路(220)であって、
前記プリアンプ回路(220)の入力ノード(In)と出力ノード(Out)との間の第1の電流経路に配置された増幅器(221)と、
前記入力ノード(In)と前記出力ノード(Out)の間の第2の電流経路に配置された帰還容量(Cf)と、
前記入力ノード(In)と前記出力ノード(Out)との間の第3の電流経路に配置された調整可能な伝達関数を有するフィードバック回路(222)と、
前記第3の電流経路に配置され、前記フィードバック回路(222)の出力を前記増幅器(221)の入力に選択的に結合させ、前記フィードバック回路(222)の出力を前記増幅器(221)の入力から切り離すことを可能にするリセットスイッチ(S2)と、
外部リセット信号または前記プリアンプ回路(220)の電圧のいずれかに依存して前記リセットスイッチ(S2)を選択的に開閉して前記プリアンプ回路(220)を通常動作モードまたはリセットモードのいずれかに設定するループコントローラ(224)と、
を備え、
前記ループコントローラ(224)は、前記プリアンプ回路(220)の現在適用されている動作モードに依存して前記フィードバック回路(222)に対する所定の伝達関数の1つを選択するように配置され、前記現在適用されている動作モードは、通常動作モードまたはリセットモードのうちの1つを含み、
前記フィードバック回路(222)および前記ループコントローラ(224)の一方は、前記プリアンプ回路(220)の現在の動作モードに応じて前記リセットスイッチ(S2)のバイアスを調整するように構成されている
プリアンプ回路(220)。
【請求項2】
前記ループコントローラ(224)は、前記増幅器(221)の利得を、前記プリアンプ回路(220)の現在の動作モードに少なくとも部分的に依存して設定するように配置される、請求項1に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項3】
前記リセットスイッチ(S2)のバイアスを調整することは、前記プリアンプ回路(220)の現在の動作モードに応じて、前記リセットスイッチ(S2)のバイアス電圧およびバイアス電流の少なくとも一方を設定することを含む、請求項1または請求項2に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項4】
前記リセットスイッチ(S2)のバイアスを調整することは前記プリアンプ回路(220)の通常動作モード中に、前記バイアス電圧および前記バイアス電流の少なくとも一方を、前記リセットスイッチ(S2)を通る、および/または前記リセットスイッチ(S2)のノードから半導体基板へのリーク電流の低減をもたらすそれぞれの値に設定することを含む、請求項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項5】
前記ループコントローラ(224)は、前記プリアンプ回路(220)の出力端子(Out)の電圧、前記フィードバック回路(222)の出力の電圧のうちの1つ以上に応じて、前記リセットスイッチ(S2)の開閉をトリガするように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項6】
前記ループコントローラ(224)は、
前記プリアンプ回路(220)の出力端子(Out)における電圧が第1の所定の電圧閾値を超えたことに応答して前記リセットスイッチ(S2)を閉じるようトリガすること、
前記フィードバック回路(222)の出力端子における電圧が第2の所定の電圧閾値を超えたことに応答して前記リセットスイッチ(S2)を閉じるようトリガすること、
の少なくとも1つを実行するように構成される、請求項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項7】
前記ループコントローラ(224)は、
前記プリアンプ回路(220)の出力端子(Out)における電圧が第3の所定の電圧閾値よりも下がることに応答して前記リセットスイッチ(S2)を閉じるようトリガすること、
前記フィードバック回路(222)の出力端子における電圧が第4の所定の電圧閾値よりも下がることに応答して前記リセットスイッチ(S2)を閉じるようトリガすること、
の少なくとも1つを実行するように構成される、請求項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項8】
前記ループコントローラ(224)は、
前記増幅器(221)の出力における電圧および前記フィードバック回路(222)の出力における電圧の少なくとも1つにさらに依存して、前記増幅器(221)の利得を調整すること、
前記増幅器(221)の出力における電圧および前記フィードバック回路(222)の出力における電圧の少なくとも1つにさらに依存して、前記フィードバック回路(222)の伝達関数を調整すること、
の少なくとも1つを実行するように構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項9】
前記ループコントローラ(224)は、
前記増幅器(221)の利得を前記プリアンプ回路(220)の現在の動作モードに依存してそれぞれの所定値に設定するうに構成される、請求項1~のいずれか一項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項10】
前記ループコントローラ(224)は、リセットモード中に前記増幅器(221)の利得を前記プリアンプ回路(220)の通常動作モードで適用される値よりも小さい値に設定するように配置される、請求項1~の何れか一項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項11】
前記プリアンプ回路(220)のリセットモード中に前記フィードバック回路(222)の伝達関数を前記プリアンプ回路(220)の出力電圧の更なる低下をもたらす値に調整するように前記ループコントローラ(224)が配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項12】
前記リセットスイッチ(S2)は、基板とは別個にバルク端子をバイアスすることを可能にする絶縁NMOSトランジスタを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項13】
前記プリアンプ回路(220)と並列に結合された出力段(228)をさらに備え、前記出力段(228)は、抵抗と直列に接続された基板とは別にバルク端子をバイアスすることを可能にする絶縁NMOSトランジスタを備えるプルアップ回路またはプルダウン回
路を備える、請求項1~12のいずれか一項に記載のプリアンプ回路(220)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプリアンプ回路(220)と、前記プリアンプ回路(220)の入力ノード(In)に結合された出力を有する放射線検出器素子(110)とを備える放射線検出器アセンブリ(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放射線検出器のためのプリアンプ回路(前置増幅器回路)に関し、特に、信号の増幅のために電荷感応増幅器(CSA)を採用し、放射線検出装置での使用に適したプリアンプ回路のための制御構成に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線検出器は、ガンマ線、X線、紫外線(UV)放射、可視放射、または荷電粒子放射などの放射線(電離放射線または非電離放射線)を検出するための構成要素として、例えば分析装置、分光計、または電子顕微鏡に適用することができる。放射線検出器は、典型的には検出された放射線レベルを記述する電気出力信号を出力する役割を果たす。以下では、放射線検出器からの電気出力信号を検出器信号と呼ぶ。
【0003】
放射線検出器の非限定的な実施例は半導体ドリフト検出器(SDD)であり、ここでは、一組のフィールド電極が半導体材料のブロックの内側に横電場を生成するように配置され、電界が半導体材料のブロックの一方の表面上の放射誘起信号電荷を、半導体材料のブロックの反対側の表面上に典型的に位置する収集電極に駆動する。その結果、SDDにより検出される放射線レベルを記述する検出器信号を、収集電極から読み出すことができる。
【0004】
放射線検出器の開発は、感度の向上、エネルギー分解能の向上、電子ノイズの低減、および能動検出器の大領域化を達成することを目的としている。そのような放射線検出器の特性は結果としての検出性能において重要な役割を果たすが、この点においてさらに重要な要素は信号処理システムによるさらなる処理のために、検出器信号を通過させる前に、検出器信号を増幅するために適用されるプリアンプである。一般に、適用可能なプリアンプの重要な特性は、小さな物理的サイズ、低ノイズレベル、小さな立ち上がりおよび整定時間、ならびに所望の範囲の入力信号レベルにわたる線形応答を含む。
【0005】
固体電荷感応増幅器(CSA)は放射線検出器からの電気出力信号の増幅のためのプリアンプとして広く使用されてきた。CSAは、ソースキャパシタンスに依存しない利得を有する入力電流の増幅を可能にする。したがって、CSAは、放射線検出器から出力される検出器信号内で発生する電荷パルスを測定するためのX線および粒子検出器用途におけるプリアンプとしての役割を果たすのによく適している。CSAは例えば、増幅器要素をフィードバックコンデンサと並列に接続することによって提供されてもよく、ここで、増幅器要素は例えば、トランスインピーダンス増幅器として提供されてもよい。
【0006】
図1は、放射線検出器からの検出器信号の増幅のためのプリアンプ回路の構成要素としてCSAを使用する例を概略的に示す。特に、図1は放射線検出器要素110とプリアンプ回路120とを含む検出器アセンブリ100を描いており、放射線検出器要素110からの検出器信号がプリアンプ回路120の入力に結合され、増幅された検出器信号を処理するために適用される信号処理システムに結合され得る増幅された検出器信号をその出力で生成する。プリアンプ回路120の入力は増幅器121の入力に結合され、一方、増幅器121の出力はプリアンプ回路120の出力に結合される。プリアンプ120は、帰還容量CとリセットスイッチSとがアンプ121と並列に接続されている。すなわち、帰還容量CとリセットスイッチSは、アンプ121の入出力間に接続されている。図1では、アンプ121と帰還容量Cとで構成されている。リセットスイッチSが開放されると、検出器110で発生し、前置増幅部120に供給された電荷が帰還容量Cに蓄積される。したがって、プリアンプ回路120は、基本的に積分器として動作する。プリアンプ回路120を適切に動作させるためには、帰還容量Cに蓄積された電荷を周期的に放電してプリアンプ回路120が飽和しないようにする必要がある。なお、図1の例では、リセットスイッチSを比較的短時間周期的に閉じることにより、帰還容量Cの排出を行うようにしてもよい。
【0007】
プリアンプ回路120の出力は任意に、プルダウン回路またはプルアップ回路(図1には示されていない)を介して増幅された検出器信号を処理するために適用される信号処理システムに結合されてもよい。プルダウン/プルアップ回路の使用から生じる利点は、増幅された検出器信号における電気的ノイズの低減に寄与し得ること、および/または静電放電(ESD)保護を提供し得ることである。
【0008】
さらに図1の例を参照すると、リセットスイッチSが閉じられている(したがって、帰還容量Cに蓄積された電荷が放電している)期間を、(プリアンプ回路120の)リセット期間と呼ぶことができる。リセット期間中、プリアンプ回路120の出力は不定であってもよく、増幅された検出器信号として適用できない場合がある。このため、リセット期間は、プリアンプ回路120の出力の「デッドタイム」を構成する。したがって、リセット期間をできるだけ短く保つことが有利である。また、リセット期間はプリアンプ回路120の増幅動作に中断を与えるため、リセット期間後の正常動作の迅速な再開は、リセット期間から生じる検出性能の乱れをできるだけ小さく抑えるために非常に望ましい。
【0009】
この点に関し、図1の例によるアプローチはリセット期間を実施するための単純な解決策を提供し、一方で、そのようなアプローチの単純な適用はリセット期間中の高いループゲインの結果としての発振をもたらし、電子フィルタリングによって発振を低減しようとするいかなる試みも、典型的には、比較的遅いリセットおよび/またはプリアンプ回路120の出力での発振信号の周期をもたらす。上述したように、これらの両側面は不利であり、図1に概略的に説明したもののようなプリアンプによる解決策においてリセット期間を実施及び/又は制御するための改善された解決策が非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、リセット期間の短いリセット期間と、リセット期間後のプリアンプ回路の通常動作の迅速な再開を可能にするプリアンプ回路のための改良されたリセット配置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下では、改善されたCSA設計の基本的な理解を容易にするために、本発明のいくつかの実施形態の簡略化された概要が提供される。この概要は、本発明の広範な概要ではない。これは、本発明の重要なまたは重要な要素を識別することも、本発明の範囲を描写することも意図していない。以下の概要は単に、本発明の例示的な実施形態のより詳細な説明の前置きとして、本発明のいくつかの概念を簡略化された形態で提示する。
【0012】
例示的な実施形態によれば、プリアンプ回路が提供され、プリアンプ回路はプリアンプ回路の入力ノードと出力ノードとの間の第1の電流経路に配置された増幅器と、前記入力ノードと前記出力ノードとの間の第2の電流経路に配置された帰還容量と、前記入力ノードと前記出力ノードとの間の第3の電流経路に配置された調整可能な伝達関数を有するフィードバック回路と、前記第3の電流経路に配置されて、前記フィードバック回路の出力を前記増幅器の入力に選択的に結合し、前記増幅器の入力から前記フィードバック回路の出力を減結合することを可能にするリセットスイッチと、プリアンプ回路内の電圧に応じて、前記プリアンプ回路を通常動作モードに設定し、前記リセットスイッチを閉じて前記プリアンプ回路をリセットモードに設定するリセットスイッチのうちの1つを選択的に開くように配置されたループコントローラとを備え、前記ループコントローラは、前記プリアンプ回路の現在の動作モードに少なくとも部分的に応じて、前記フィードバック回路の伝達関数を調整するように配置される。
【0013】
別の実施例によれば、放射線検出器アセンブリが提供され、放射線検出器アセンブリは、前述した実施例に係るプリアンプ回路と、プリアンプ回路の入力ノードに結合されたその出力を有する放射線検出器素子と、を備える。
【0014】
本発明の特徴と考えられる新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、本発明自体はその構造およびその動作方法の両方に関して、その追加の目的および利点と共に、添付の図面と関連して読まれるとき、特定の実施形態の以下の説明から最もよく理解されるのであろう。
【0015】
「有する」及び「含む」という動詞は本明細書において、列挙されていない特徴の存在を排除することも要求することもない開放的な限定として使用され、従属請求項に記載された特徴は特に明記しない限り、相互に自由に組み合わせることができ、更に、本明細書全体を通じて「1つの」又は「1つの」、すなわち単数形の使用は、複数を排除しないことを理解されたい。
【0016】
本発明の実施形態は、添付の図面の図において、限定としてではなく、例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】当該技術分野で公知の電荷感応増幅器を含むプリアンプ回路の一般的な構造を概略的に示す図である。
図2A】一例によるプリアンプ回路を概略的に示す図である。
図2B】一例によるプリアンプ回路を概略的に示す図である。
図2C】一例によるプリアンプ回路を概略的に示す図である。
図3A】一例によるフィードバック回路のいくつかの構成要素のブロック図を示す。
図3B】一例によるフィードバック回路のいくつかの構成要素のブロック図を示す図である。
図4】一例によるプリアンプ回路のためのループコントローラの幾つかの構成要素のブロック図を示す図である。
図5A】一例によるプリアンプ回路のためのリセットスイッチを概略的に示す。
図5B】一例によるプリアンプ回路のリセットスイッチを概略的に示す図である。
図5C】一例によるプリアンプ回路のリセットスイッチを概略的に示す図である。
図6】一例による出力段を概略的に示す。
図7A】一例によるプリアンプ回路のプルダウン回路を概略的に示す。
図7B】一例によるプリアンプ回路のプルダウン回路を概略的に示す。
図7C】一例によるプリアンプ回路のプルダウン回路を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
前述の図1を参照して説明した方針に沿って、CSAに依存するプリアンプ回路120はプリアンプ回路120の出力における信号の電圧がプリアンプ回路120の特性に依存する所定の範囲内に維持される場合にのみ、良好で信頼性のある増幅性能を提供する。放射線検出器素子110からの検出器信号を増幅するためのプリアンプとして使用される場合、プリアンプ回路120の出力は基本的に、帰還容量Cに蓄積された放射線誘起信号電荷と放射線検出器素子110内の漏れ電流によってそこに蓄積された電荷との複合作用を記述し、したがって、検出器アセンブリ100がその周囲の放射線を検出するために適用されるとき、プリアンプ回路120は、帰還容量Cに蓄積された電荷がある電荷閾値に達する前に(したがって、プリアンプ回路120の出力における増幅された検出器信号が対応する電圧閾値に達する前に)リセットされる必要がある。さらに、前述の方針に沿って、プリアンプ回路120の通常動作のためにリセットスイッチSを開いたままにし、プリアンプ回路120を短時間リセットするためにリセットスイッチSを定期的に閉じたままにする直接的な手法はプリアンプ回路120の遅いリセットおよび/またはプリアンプ回路120の出力信号の発振(リンギングとも呼ばれる)のいずれかにつながり、これらはいずれもプリアンプ回路120の総合性能にとって有害である。
【0019】
図2Aは、検出器アセンブリ200を概略的に示す。検出器アセンブリはプリアンプ回路220の入力ノードに結合されたその出力を有する放射線検出器要素110を含む。従って、プリアンプ回路220は、その入力ノードに設けられた検出器信号を増幅された検出器信号に増幅して、その出力ノードを介して供給するように構成され、増幅された検出器信号を処理するために適用される信号処理システムに結合することができる。非限定的な実施例として、放射線検出器素子110は、SDDのような半導体放射線検出器を含んでもよい。以下では、説明の簡潔さと明確さのために、プリアンプ回路220の入力ノードは単に入力(プリアンプ回路220の)と呼ばれ、プリアンプ回路220の出力ノードは単に出力(プリアンプ回路220の)と呼ばれる。本開示で提供される例は放射線検出器素子110からの検出器信号の増幅のためのプリアンプ回路220の使用を記載するが、これは明瞭さおよび簡潔さのために選択される非限定的な例であり、一方、プリアンプ回路220は放射線検出器素子110とは異なる源からの信号の増幅のために適用可能である。しかも、開示した例ではプリアンプとして指定されているが、これは非限定的な例であり、プリアンプ回路220は必ずしもプリアンプとして機能しない増幅器回路として使用するのに適用可能である。
【0020】
図2Aの例ではプリアンプ回路220がプリアンプ回路220の入力に結合されたその入力を有する増幅器221を備え、一方、増幅器221の出力はプリアンプ回路220の出力に結合される。プリアンプ回路120と同様に、図2Aの例においても、プリアンプ回路220において、帰還容量Cは増幅器221と並列に、言い換えれば、増幅器221、増幅器221および帰還容量Cの入出力間に結合され、それによって、CSAを構成する。増幅器221は例えば、折り畳みカスコード増幅器を含むことができる。増幅器221の入力段は例えば、電界効果トランジスタ(FET)を含んでもよく、このトランジスタは線形、丸形または凸形の多角形(例えば、八角形)の形成を有する可能性がある。増幅器221の出力はフィードバック回路222の入力にさらに結合され、フィードバック回路222の(シグナル)出力はリセットスイッチSを介して増幅器221の入力に結合される。増幅器221は、調整可能な利得を有する増幅回路を備える。フィードバック回路222は、調整可能な伝達関数を有する回路構成を備える。いくつかの例では、フィードバック制御回路222がループコントローラ224から受信された1つまたは複数の制御信号(以下で提供される例を介してより詳細に説明される)に従って、リセットスイッチSのバイアスを調整または修正するように構成され得る。この点に関して、フィードバック回路222は、フィードバック回路222の制御アウトプットを介してリセットスイッチSのバイアスを制御するように構成され得る。
【0021】
リセットスイッチSは、通常動作モードまたはリセットモードで動作するようにプリアンプ220を設定するために印加される。リセットスイッチSは、いくつかの例では調整可能なバイアスを有することができる好適なトランジスタ構成を使用することによって実施することができる。以下では、リセットスイッチSの非限定的な実装例について説明する。フィードバック回路222はループコントローラ224の制御のもとでリセットスイッチSのバイアスを調整することができ、バイアス調整はフィードバック回路222の入力で受信される信号の特性(例えば、電圧および/または電流)に少なくとも部分的に依存して実行することができる。特定の例として、フィードバック回路222は、プリアンプ回路220の現在の動作形態に応じて、および/またはフィードバック回路222の電流伝達機能に応じて、リセットスイッチSのバイアスを異なって設定または調整することができる。
【0022】
増幅器221からの出力信号は、フィードバック回路222を介して処理される。前述のように、フィードバック回路222は調整可能な(例えば、選択可能である)伝達関数を有してもよく、フィードバック回路222の(信号)出力は、現在適用されている伝達関数に従って、増幅器221からの出力信号に基づいて導出されてもよい。フィードバック回路222の内部構造および/または動作に関連するこれらの態様および他の態様は、以下の例を介して説明される。
【0023】
図2Aの例では、プリアンプ回路220がさらに、フィードバック回路222の出力およびプリアンプ回路220の出力(したがって、増幅器221の出力)が結合されたループコントローラ224を含む。ループコントローラ224は、フィードバック回路222の出力における電圧および/または増幅器221の出力における電圧に少なくとも部分的に基づいてリセットスイッチSを制御するように構成され、ループコントローラ224はさらに、増幅器221の動作および/またはフィードバック回路222の動作を、プリアンプ回路220の現在の動作モードに少なくとも部分的に依存して調整するように構成される。この点に関する調整は例えば、以下のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0024】
ループコントローラ224は増幅器221の利得を、少なくとも部分的にはプリアンプ回路220の現在の動作モードに依存して調整するように構成されてもよい。
【0025】
ループコントローラ224はプリアンプ回路220の現在の動作モードに少なくとも部分的に依存してフィードバック回路222の伝達機能を調整(例えば、選択)し、および/またはフィードバック回路222を制御して、それに応じてリセットスイッチSのバイアスを調整または選択するように構成されてもよい。
【0026】
すなわち、リセットスイッチS、アンプ221、フィードバック222は、ループコントローラ224の制御によって少なくとも部分的に動作することができる。ループコントローラ224は、1つまたは複数の制御信号231(図2に破線で示す)を介してリセットスイッチSの制御を提供することができる。同様の方針に沿って、ループコントローラは、1つまたは複数のそれぞれの制御信号232、233(図2Aにそれぞれの破線として同様に示される)を介して、増幅器221および/またはフィードバック回路222の調整を提供することができる。リセットスイッチSに発行される制御信号231は、リセットスイッチSをオープン状態にセットするか、またはリセットスイッチSを閉鎖状態にセットする1つ以上の制御信号を含むことができる。増幅器221に発行される制御信号232は、それに応じて増幅器221の利得を設定または調整する1つまたは複数の制御信号を含むことができる。同様の方針に沿って、フィードバック回路222に発行される制御信号233は、それに応じてフィードバック回路222の伝達関数を調整または選択させる1つまたは複数の制御信号を含むことができる。制御信号(複数可)233は例えば、プリアンプ回路220の現在の動作モードの指示を含むことができる。
【0027】
図2Aに図示するように、ループコントローラ224は、電圧トラッカ225およびリセットコントローラ227を含んでもよい。ループコントローラ224のこれら2つの要素によって提供される動作は、非限定的な例を介して以下に説明される。リセットスイッチSの制御に関して、ループコントローラ224はリセットスイッチSを開状態および閉鎖状態のうちの一方に設定することによって、プリアンプ回路220を通常動作モードおよびリセットモードのうちの一方に設定することを制御するように構成され、リセットスイッチSを開状態に設定することはプリアンプ回路220を通常動作モードで動作させることになり、その間、プリアンプ回路220の増幅器221は検出器信号を増幅された検出器信号に増幅する役割を果たし、一方、リセットスイッチSを閉鎖状態に設定することはプリアンプ回路220をリセットモードで動作させることになり、その間、増幅器221の出力は定義されておらず、したがって、増幅された検出器信号として適用結果ないことがある。リセットモードでプリアンプ回路220を動作させる期間は前述したように、リセット期間と呼ばれ、プリアンプ回路220の出力の「デッドタイム」と考えられる。
【0028】
図2Bは、ループコントローラ224の一部のみがプリアンプ回路220の一部として提供される、図2Aに描かれた検出器アセンブリ200の変形を概略的に示す。特に、図2Bの例ではリセットコントローラ227がプリアンプ回路220の一部として提供され、一方、電圧トラッカ225はプリアンプ回路220の外部に提供される。その結果、図2Bの例では、プリアンプ回路220内に設けられたリセットコントローラ227がプリアンプ回路220の外部にある電圧トラッカ225から制御信号を受け取り、増幅器221の動作および/またはフィードバック回路222の動作を調整するためのそれぞれの制御信号232、233、231、ならびにリセットスイッチSを開状態および閉状態の一方に設定するための制御信号を導出する。
【0029】
プリアンプ回路220は、図2Aおよび図2Bの図に描かれているものに加えて、さらなる要素を含んでもよい。したがって、概して、プリアンプ回路220はプリアンプ回路220の入力ノードと出力ノードとの間の第1の電流経路に配置された増幅器221を備え、帰還容量Cはプリアンプ回路220の入力ノードと出力ノードとの間の第2の電流経路に配置される。さらに、プリアンプ回路はフィードバック回路222と、プリアンプ回路220の入力ノードと出力ノードとの間の第3の電流経路の間に配置されたリセットスイッチSとを備え、それによって、リセットスイッチSはフィードバック回路222の出力を増幅器221の入力に選択的に結合すること(プリアンプ回路220をリセットモードで動作するように設定すること)、またはフィードバック回路222の出力を増幅器221の入力から切り離すこと(プリアンプ回路220を通常動作モードで動作するように設定すること)を可能にする。
【0030】
プリアンプ回路220の通常動作モードでは、すなわち、リセットスイッチSが開いているとき、増幅器221の利得は(例えば、ループコントローラ224からの制御信号232に応じて)増幅器がプリアンプ回路220の入力に供給される信号(例えば、放射検出器要素110からの検出器信号)の(期待される)特性を考慮して、および/またはプリアンプ回路220の出力に結合された回路またはシステム(例えば、増幅された検出器信号を処理するように意図された信号処理システム)の特性を考慮して、所望の増幅性能を提供するように機能する所定の静止利得を適用するように制御されてもよい。非限定的な例として、通常動作モード中の増幅器221の利得は例えば、数デシベル(dB)から100dBまでの範囲で所望の増幅をもたらす適切な値であってもよい。
【0031】
一例ではプリアンプ回路220の通常動作モードにおいて、フィードバック回路222の伝達関数は予め定義された方法で選択または調整されてもよい。プリアンプ回路220の通常動作モードで適用される伝達関数はリセットスイッチSの端子(例えば、「入力ノード」および/または「出力ノード」)から(半導体)基板へ、および/またはリセットスイッチSのバルクノードから(半導体)基板へ、リセットスイッチSを通る漏れ電流を低減または最小化するように構成されてもよい。この点に関する一例として、通常動作モード中のフィードバック回路222の伝達関数は、固定された所定の伝達関数であってもよい。別の例では、通常動作モード中の伝達関数がフィードバック回路222の出力における電圧に依存して、および/またはプリアンプ回路220の出力における電圧に依存して、(さらに)選択または調節されてもよい。
【0032】
さらに、通常動作モードにおけるプリアンプ回路220の動作を参照すると、フィードバック回路222はリセットスイッチSの端子(例えば、「入力ノード」および/または「出力ノード」)から(半導体)基板へ、および/またはリセットスイッチSのバルクノードから(半導体)基板への、リセットスイッチSを通る漏れ電流を低減または最小化するために、リセットスイッチSのバイアスを設定または調整するように構成されてもよい。この点に関して、バイアス制御は例えば、フィードバック回路222の制御アウトプットを介して、リセットスイッチSのバイアス電圧および/またはバイアス電流をそれに応じて設定または調整する1つ以上のバイアス制御信号234を発行するフィードバック回路222を含んでもよい。この点に関して、非限定的な例として、リセットスイッチSのバイアス電圧はリセットスイッチSの電圧を最小化するために、アンプ221のインプット電圧を追跡するように設定されてもよい。別の非限定的な例は例えば、プリアンプ220の入力に結合された検出器要素110によって引き起こされる任意の他の電流による増幅器221の入力における電圧変化を補償するために、バイアス電圧を、リセットスイッチSを通る小さな漏れ電流を引き起こす値に設定することを含む。
【0033】
図2C図2Aに示された検出器アセンブリ200の別の変形例を概略的に示し、バイアス制御信号234を介したリセットスイッチSのバイアス制御はフィードバック回路222の代わりにループコントローラ224(例えば、リセットコントローラ227)によって提供される。図2Aの例による検出器アセンブリ200の変形として図2Cに示されているが、図2Bの例による検出器アセンブリ200においても、リセットスイッチSのバイアス制御の提供に関する同様の修正を適用することができる。
【0034】
本明細書では、バイアス制御信号234が例えば、リセットスイッチSを、それぞれの制御信号に従ってバイアス電圧を供給する電圧源に接続すること、および/またはそれぞれの制御信号に従ってバイアス電流を供給することを可能にする、実際のバイアス電圧および/またはバイアス電流、またはそれぞれの制御信号を包含して、広く解釈されるべきである。バイアス制御信号234を実施する方法にかかわらず、バイアス電圧を供給するための電圧源は、プリアンプ回路220の一部として提供されてもよく、または外部電圧源が印加されてもよい。同様の方針に沿って、代替的にまたは追加的に、バイアス制御信号234を実施する方法にかかわらず、バイアス電流を提供するための電流源は、プリアンプ回路220の一部として提供されてもよく、または外部電流源が適用されてもよい。
【0035】
図3Aは、非限定的な実施例による、フィードバック回路222の幾つかの論理構成要素のブロック図を示す。図3の概略図ではアンプ221の出力が第1の伝達関数F(s)および第2の伝達関数F(s)に結合されているのに対し、第1および第2の伝達関数F(s)のうちの1つはループコントローラ224から(例えば、リセットコントローラ227から)受信した制御信号233に従ってスイッチ223を設定することによって、フィードバック回路222の出力に選択的に結合されている。ここで、例えば、第1の伝達関数Fはプリアンプ回路220の通常動作モードを示す制御信号233に応答して選択されてもよく、第2の伝達関数Fはプリアンプ回路220のリセットモードを示す制御信号233に応答して選択されてもよい。第1および第2の伝達関数F(s)、F(s)は、それらが提供する振幅および/または周波数反応において互いに異なることがある。この点において、第2の伝達関数F(s)から生じる振幅は、第1の伝達関数F(s)から生じる振幅および/または第2の伝達関数F(s)の周波数応答から生じる振幅よりも、第1の伝達関数F(s)から生じる振幅よりも広い周波数に及ぶ可能性がある。
【0036】
図3Bは別の非限定的な実施形態によるフィードバック回路222のいくつかの論理構成要素の構成図を示し、リセットスイッチSのバイアスもフィードバック回路222を介して提供される。それに加えて、図3Aを参照して上述した動作に加えて、フィードバック回路222の伝達関数の選択はループコントローラ224から(例えば、リセットコントローラ227から)受信された制御信号233に従ってバイアス制御信号234を選択することをさらに意味し、それによって、プリアンプ回路220の現在の動作モードに応じてリセットスイッチ222のバイアスを調整する。
【0037】
しかしながら、図3Aおよび図3Bの実施例を参照する第1および第2の伝達関数F(s)、F(s)の記述は概念的なものであり、図3Aおよび図3Bに、図を分かりやすくするために別個の独立した論理ブロックとして示したとしても、第1および第2の伝達関数F(s)、F(s)は、第1および第2の伝達関数F(s)、F(s)を提供する回路の1つ以上の構成要素および/または1つ以上の構成要素を共有するそれぞれの回路によって提供されてもよく、通常動作モードおよびリセットモードではF(s)が異なって動作するように調整される。
【0038】
リセットスイッチSのバイアスを制御すること、および/または、プリアンプ回路220の前述のような通常動作モード中にフィードバック回路222の伝達機能を選択または調整することから生じる有利な点がリセットスイッチSを通る(例えば、リセットスイッチSを実装するために適用され得るトランジスタ構成を通る)漏れ電流が低減されるか、または完全に排除されることによって、プリアンプ回路220の出力における(増幅された)信号の雑音レベルが低減されることである。
【0039】
前述のように、ループコントローラ224はフィードバック回路222の出力とプリアンプ回路220の出力(すなわち、増幅器221の出力)に結合され、従って、フィードバック回路222から、及び増幅器221からそれぞれの出力信号を受信する。図4は、一例によるループコントローラ224のいくつかの構成要素のブロック図を示す。図2A図2B、および図2Cにも示されるように、ループコントローラ224は電圧トラッカ225およびリセットコントローラ227を備えることができ、ループコントローラ224(例えば、リセットコントローラ227)は、リセットスイッチSを選択的に開閉するための1つまたは複数の制御信号231と、アンプ221のゲインを設定または調整するための1つまたは複数の制御信号232と、フィードバック回路222の伝達機能を調整または選択するための1つまたは複数の制御信号233とを発行することができる。さらに、リセットスイッチSのバイアス制御がループコントローラ224によって提供される例ではループコントローラ224(例えば、リセットコントローラ227)は1つまたは複数のバイアス制御信号234を発行することができる。
【0040】
例えば、プリアンプ回路220の通常動作中、電圧トラッカ225はフィードバック回路222の出力における電圧を所定の閾値電圧Vth,222と比較し、フィードバック回路222の出力における電圧が電圧閾値Vth,222を超えることに応じてリセット周期をトリガする。そのようなトリガは、リセットスイッチSをそれに応じて動作させるために制御信号231を印加することができるトリガ信号またはトリガコマンドをリセットコントローラ227に発行する電圧トラッカ225を含むことができる。一例によれば、リセットコントローラ227は、リセット期間のトリガに応じて直接的にリセットスイッチSを閉じ、それによって追加の遅延なしにリセット期間を開始する。別の例によれば、リセット期間のトリガにより、リセットコントローラ227はタイマを最初の所定の期間実行するように設定し、リセットコントローラ227は、タイマの経過に応じてリセットスイッチSを閉じ、それによって、最初の所定の期間が経過した後にリセット期間を開始する。
【0041】
別の例では、電圧トラッカ225がフィードバック回路222の出力における電圧の代わりに、増幅器221の出力における(すなわち、プリアンプ回路220の出力における)電圧を監視し、増幅器221の出力における電圧が所定の電圧しきい値Vth,221を超えることに応じて、リセット周期をトリガするように構成されてもよい。さらなる実施形態では、電圧トラッカがフィードバック回路222の出力における電圧および増幅器221の出力における電圧の両方を監視し、電圧閾値Vth,222を超えるフィードバック回路222の出力における電圧および/または電圧閾値Vth,221を超える増幅器221の出力における電圧に応じて、リセット周期をトリガするように構成されてもよい。
【0042】
電圧トラッカ225がフィードバック回路222の出力における電圧が電圧しきい値Vth,222を超えること、および/または増幅器221の出力における電圧が電圧しきい値Vth,221を超えることに応じて、リセット周期をトリガする上記の例ではそれぞれの出力電圧が(増幅器221の特性に依存する)特定のそれぞれの最高電圧に向かって飽和するという基本的な想定がある。代替の実施形態ではフィードバック回路222および増幅器221の出力電圧が接地電位に向かって飽和し、そのような手法ではプリアンプ回路220の通常動作モード中に、電圧トラッカ225はフィードバック回路222の出力における電圧を所定のしきい値電圧V’th,222と比較し、かつ/または増幅器221の出力における電圧を所定のしきい値電圧V’th,221と比較し、フィードバック回路222の出力における電圧が電圧しきい値V’th,222を超えない(すなわち、電圧しきい値V’th,222を下回る)こと、および/または増幅器221の出力における電圧が電圧しきい値V’th,221を超えない(すなわち、電圧しきい値V’th,221を下回る)ことに応じて、リセット周期をトリガする。上述の方針に沿って、リセット期間のトリガはリセットコントローラ227が制御信号231を介して、遅延なしに、または第1の期間によって規定される遅延の後に、リセット期間を開始することをもたらし得る。
【0043】
さらなる例では、ループコントローラ224が(図2A図2B、および図4に示すように)外部リセット信号を受信するための入力を任意選択でさらに備えることができる。この入力を介した外部リセット信号(例えば、リセットコマンドまたはリセットパルス)の受信はループコントローラ224にリセット期間をトリガさせ、その結果、リセットコントローラ227に、遅延なしに、または第1の期間によって規定される遅延の後にリセット期間を開始させる。さらに別の例では、ループコントローラ224が電圧トラッカ225を省略(動作)し、代わりに、例えば所定の時間隔で、所定のプロファイルに従ってリセット期間をトリガすることができる。このシナリオでは、リセット期間のトリガが通常、リセットコントローラ227が遅延なしにリセット期間を開始することになる。
【0044】
リセットモードでは増幅器221の動作が1つ以上の制御信号232を介してリセットコントローラ227によって調整され、増幅器221の利得はプリアンプ回路220の通常動作モード中に印加される所定の静的値よりも小さい値に設定または調整される。利得制御は、増幅器221の利得を直接設定または調整すること、またはその利得が所望の方法で調整されるように増幅器221の動作を調整することを含んでもよい。リセットモードでは、増幅器221の利得(例えば、開ループ利得)は1未満(例えば、増幅器221の利得を定義または表現する正確な方法に応じて、1dB未満または0dB未満)の小さな値に下げられる。この点に関する非限定的な例には、リセットコントローラ227がプリアンプ回路220の通常動作モード中に印加される所定の静的値よりも小さい第2の所定の静的値に増幅器221の利得を設定影響調整することを引き起こす1つ影響複数の制御信号を発行すること、リセットコントローラ227が所定の時間関数に従って増幅器の利得を設定影響調整することをもたらす1つ影響複数の制御信号を発行すること、影響リセットコントローラ227が増幅器221の出力における電圧に応じて、および/影響フィードバック回路222の出力における電圧に応じて、リセットモード中に増幅器221の利得を調整することをもたらす1つ影響複数の制御信号を発行することが含まれる。リセットモード中に増幅器221の利得を低減することは例えば、リセット期間の迅速な完了に寄与し、及び/又はリセット期間中及びリセット期間の直後にプリアンプ回路220の出力信号における発振(いわゆるリンギング効果)及び/又は他の望ましくない非線形効果を低減することに寄与する。
【0045】
リセット制御部227はリセットモードでの動作を参照すると、帰還容量Cに蓄積された電荷の制御された放電を容易にするために、プリアンプ220の少なくとも一つの側面の動作を調節するように動作する。この点に関して、リセットコントローラ227は帰還容量Cの迅速な放電を可能にするように、リセットスイッチSのバイアスを設定または調整するように、フィードバック回路222の動作を調整するように構成されてもよい。この点に関して、前述のように、バイアス制御は例えば、フィードバック回路222が、リセットスイッチSのバイアス電圧および/またはバイアス電流をそれに応じて設定または調整する1つまたは複数のバイアス制御信号234を発行することを含むことができる。これに関連する非限定的な例として、リセットスイッチSのバイアス電圧はリセット電流を増大させるため、および/またはリセットタイムを短縮するために、回路内で利用可能な最低電位に設定されてもよい。別の例では、上述のように、リセットスイッチSのバイアス制御は代わりに、ループコントローラ224を介して(例えば、リセット制御装置227によって)提供されてもよい。
【0046】
リセットモードにおけるプリアンプ回路220の動作を調整するリセットコントローラ227の別の例として、リセットコントローラ227からの1つまたは複数の制御信号233はリセット期間中、例えば、以下のいずれかの方法で、フィードバック回路222の動作を設定または調整する結果となり得る。
【0047】
一例では、フィードバック回路222の伝達関数が時間の予め定義された関数に従って調整または選択される。この点に関して、フィードバック回路222の動作は、その伝達関数が所定のサイクル、パターン、または規則に従って変化するように調整され得る。
【0048】
別の例では、フィードバック回路222の伝達関数が増幅器221の出力における電圧に依存して調整または選択される。
【0049】
したがって、リセット期間中、フィードバック回路222の伝達関数は、時間とともに変化してもよい。リセット期間中のフィードバック回路222の動作の変化は、リセット期間中のフィードバック回路222および増幅器221を通るフィードバックループの全体的な伝達関数の変化をもたらし得る。これは、次に、プリアンプ回路220の出力電圧の低下、したがって、フィードバック回路222の入力電圧の低下をもたらし、その結果、その入力電圧がその所定の入力電圧範囲外であるために、フィードバック回路222の異常な動作が生じる可能性がある。
【0050】
リセットモード中の増幅器221のゲインの減少と同様に、プリアンプ回路220のリセットモード中のフィードバック回路222の伝達関数の選択または調節、および/またはリセットスイッチSのバイアス制御も、例えば、リセット期間の迅速な完了に寄与し、および/またはリセット期間中およびその直後のプリアンプ回路220の出力信号における発振(いわゆるリンギング効果)および/または他の望ましくない非線形効果を減少させる。
【0051】
リセット期間は固定された所定の持続時間を有してもよく、またはリセット期間の持続時間は可変であってもよく、プリアンプ回路220のある点における特性、例えば、増幅器221の出力における電圧(すなわち、プリアンプ回路220の出力における電圧)に依存してもよい。前者のアプローチの一例として、リセットコントローラ227はリセット期間の開始時に、第2の所定の期間にわたって動作し、タイマが経過するのに応じてフィードバックスイッチSを開くように設定され、それによって、所定の期間を有するリセット期間を提供するように構成されてもよい。後者の手法の非限定的な例として、リセット制御装置227は増幅器221の出力における電圧に応答して、またはフィードバック増幅器220の他の所定の点における電圧が所定の電圧しきい値Vth,resetを超えないことに応答して、フィードバックスイッチSを開くように構成されてもよく、それによって、帰還容量Cの(充分な程度の)放電が生じたことを検出した後に、リセット周期を終了させる。
【0052】
上述したように、リセットスイッチSは、適当なトランジスタ構成を用いて設けることができる。リセットスイッチSの有利な設計は通常モード、すなわちリセットスイッチSがオープン状態にあるときの動作中に、リセットスイッチSを通る漏れ電流から生じる雑音を最小にすることを目的とする。典型的には、1つまたは複数のFETに依存するトランジスタ構成における重要なノイズ源が抵抗性チャネル熱ノイズおよびチャネルフリッカ(1/f)ノイズを含む。さらに、非常に低いノイズソリューションを対象とする場合、さらなるノイズ源としては、ゲートおよび基板抵抗に起因する熱ノイズ、ドレイン-基板およびソース-基板ダイオードからのリーク電流誘起ショットノイズが挙げられる。この点に関して、リセットスイッチSを実施する際に1つ以上の絶縁MOSデバイス(PMOSまたはNMOS)を使用することは、それらがそのような雑音源の影響を低減するのに役立つので、好都合である。この点に関する例として、例えば、IEEE Circuits & Devices Magazine、Vol.のAhmed Helmy及びMohammed Ismailによる論文「the CHIP-A Design Guide for Reducing Substrate Noise Coupling in RF Applications」を参照されたい。22, 2006年9月~10月の5日に、MOSデバイスなどのチップにおける信号分離に関する詳細な議論を行う。
【0053】
絶縁されたNMOSデバイスの使用は、回路の基板とは別にバルク端子のバイアスを可能にする。これにより、隔離されたMOSトランジスタを用いて構成されたスイッチのリーク電流を最小限に抑える結果となる方法で、バルクおよび基板バイアス電圧を選択することが可能となる。また、トランジスタバルクと回路基板との間に付加的な逆バイアスpn接合が形成されるので、基板からのノイズ結合は、分離されたMOSトランジスタの助けによって最小化することができる。さらに、絶縁されたMOS装置は、また、通常、低いノイズレベルに達することを可能にするために適用される、小さなサイズのそのようなMOS装置においても、その中に適用されるダイオード-スタック構造に起因する静電放電(ESD)に対する保護を提供する。以下に、このようなリセットスイッチSの設計の非限定的な事例を説明する。
【0054】
図5Aは、リセットスイッチSが4端子NMOS装置として設けられている例によるNMOSベースのリセットスイッチSを概略的に示す。この場合、NMOS装置のソースは増幅器221の入力に結合され、NMOS装置のドレインはフィードバック回路222の出力に結合され、NMOS装置のゲートはリセットコントローラ227の制御出力に結合される。(おそらくフィードバック回路222またはループコントローラ224からのバイアス制御信号の制御下にある)NMOS装置のバイアスは、NMOS装置のバルク/基板端子を介して提供されてもよい。
【0055】
図5Bは一例による別のNMOSベースのリセットスイッチSを概略的に示しており、ここでは、リセットスイッチSが6端子NMOS装置として設けられている。この場合、NMOS装置のソースは増幅器221の入力に結合され、NMOS装置のドレインはフィードバック回路222の出力に結合され、NMOS装置のゲートはリセットコントローラ227の制御出力に結合される。NMOS装置のバイアス(おそらく、フィードバック回路222からのバイアス制御信号)またはループコントローラ224からのバイアス制御信号)は、NMOS装置のバルク、基板、又はディープNウェル端子を介して供給されてもよい。
【0056】
図5Cは例えば、PMOSベースのリセットスイッチSを示し、リセットスイッチSは、5端末PMOS装置として提供される。これにより、PMOS装置のソースは増幅器221の入力に結合され、PMOS装置のドレインはフィードバック回路222の出力に結合され、PMOS装置のゲートはリセットコントローラ227の制御出力に結合される。PMOS装置のバイアスは(おそらくフィードバック回路222またはループコントローラ224からのバイアス制御信号の制御下で)、PMOS装置のバルク/nウェル端子を介して提供されてもよい。
【0057】
図6に概略的に示すように、プリアンプ回路220の出力は、プリアンプ回路220を安定化させ、リセット期間中に帰還容量Cをディスチャージするのにかかる時間を短縮するために設けられた出力段228を含む、増幅された検出器信号を処理するために適用される回路または信号処理系に結合されてもよい。出力段228は基本的に、プリアンプ回路220と並列に結合された可変インピーダンスを有する回路として機能し、出力段228の使用から生じる有利な効果は、(さらに)増幅された検出器信号における低減された電気ノイズおよび/または(改善された)ESD保護を含み得る。
【0058】
出力段228は、プルダウン回路またはプルアップ回路を備えることができる。プリアンプ回路220とは別個の実体として図6の例に図示されているが、出力段228はプリアンプ回路220に含まれる要素として設けられてもよい。このような例では、出力段228の出力がプリアンプ回路220の出力を構成する。出力段228として使用するために適用可能なプルダウン回路およびプルアップ回路の非限定的な例は、図7A~7Cに概略的に示され、以下に簡単に説明される。
【0059】
図7Aは、ダイオード接続されたNMOSトランジスタとして出力段228を設ける例を概略的に示す。
【0060】
図7Bは、出力段228に電流源NMOSトランジスタ(4端子NMOSデバイス)を設ける例を概略的に示す。トランジスタバルク端子は、標準的な配置でシリコン基板に接続されている。
【0061】
図7Cは、出力段228を電流源NMOSトランジスタ(6端子NMOSデバイス)として設ける例を概略的に示す。トランジスタサブ端子は、標準的な配置でシリコン基板に接続されている。他の端子(ゲート、バルク、又はドレイン)はノイズおよびリセット動作に関して最高の性能を達成するために、自由な方法でバイアス電圧に接続することができる。
【0062】
したがって、出力段228は、(n個の絶縁された)NMOSデバイスおよび抵抗器を含む回路を含んでもよい。そのような出力段228は2つの目的、すなわち、プルダウン(またはプルアップ)回路およびESD保護回路を果たすことができる。この点に関する一例として、例えば、ソース縮退抵抗と共にバイアスされたMOSFETを含む出力段228内の増幅器はプルダウン回路を果たすことができるが、MOSFETの寄生ダイオードはESD保護構造を果たすことができる。絶縁されたMOSFETを使用することは、寄生ダイオードを、例えば(半導体)基板に向かうだけでなく、最適化された方法でバイアスする、または接続するという追加の利点を提供する。ここで、出力段228内の増幅器は、抵抗のみが印加される場合と比較して、より高い出力インピーダンスを提供する。この点に関し、(半導体)基板内に配置された高値抵抗器は通常、コストが増加し、出力に余分な寄生容量が生じる、より大きな面積を必要とするのであろう。出力段228内の増幅器はダイオードなどの別個のESD装置が適用される場合と比較して、出力内の(熱的な)ノイズを最適化(例えば、最小化)することをさらに可能にする。
【0063】
上記では、通常動作モードまたはリセットモードでプリアンプ回路220を選択的に動作させることを参照した。これらの2つのモードの各々において費やされる期間の間の正確な関係は例えば、プリアンプ回路220の入力に供給される信号の特性(例えば、その電流、電圧、及び/又は時間にわたるその変動)、プリアンプ回路220を実施するために適用される構成要素の特性、及びプリアンプ回路220の所望の性能に依存するが、一般に、2つのリセット期間の間の通常動作モードにおける単一の期間は典型的にはミリ秒のオーダーの持続時間を有し、一方、通常動作モードにおける2つの期間の間のリセットモードにおける単一の期間は典型的にはナノ秒のオーダーの持続時間を有する。
【0064】
前述の説明に記載された特徴は、明示的に記載された組み合わせ以外の組み合わせで使用されてもよい。特定の特徴を参照して機能を説明したが、これらの機能は説明されているか否かにかかわらず、他の特徴によって実行可能であってもよい。特定の実施形態を参照して特徴を説明してきたが、これらの特徴は説明されているか否かにかかわらず、他の実施形態にも存在し得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図7C