(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】ダクチノマイシン組成物並びに骨髄異形成症候群及び急性骨髄性白血病の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/12 20060101AFI20241202BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241202BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241202BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241202BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241202BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241202BHJP
【FI】
A61K38/12
A61K45/00
A61P35/00
A61P35/02
A61P19/00
A61P25/00
A61P1/00
A61P43/00 121
A61K9/14
A61K9/51
A61K47/34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022025700
(22)【出願日】2022-02-22
(62)【分割の表示】P 2019535217の分割
【原出願日】2017-09-13
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523384654
【氏名又は名称】ティツィアナ・ライフ・サイエンシズ・ピーエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クンワル・シャイルバーイ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-122620(JP,A)
【文献】特表2013-503113(JP,A)
【文献】特表2006-503871(JP,A)
【文献】New England Journal of Medicine,2015年,Vol. 373, No. 12,p. 1180-1182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/12
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLA-mPEGを含むナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を
含む医薬組成物であって、ナノ粒子の平均サイズが約100nm~約200nmである、組成物。
【請求項2】
PLA-mPEGが約5重量%のmPEG~約50重量%のmPEGを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
PLA-mPEGの分子量が約25,000Da~約35,000Daである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
PLA-mPEGの分子量が約30,000Daである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
PLGA-mPEGを含むナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含
む医薬組成物であって、ナノ粒子の平均サイズが約100nm~約200nmである、組成物。
【請求項6】
PLGAが約40:60~約60:40の乳酸:グリコール酸のモル比を有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
PLGAが約50:50の乳酸:グリコール酸のモル比を有する、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
PLGA-mPEGが約5重量%のmPEG~約50重量%のmPEGを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
PLGA-mPEGの分子量が約17,000Da~約27,000Daである、請求項5~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
PLGA-mPEGの分子量が約22,000Daである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
約5重量%~約15重量%のダクチノマイシンを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物
は全身的に、静脈内に、注入により、又は経口的に、対象に投
与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物
は、1週間、2週間、又は3週間にわたり1回又は2回、対象に投与され、場合により
、投与期間の間に、1週間、2週間、3週間、又は4週間の休薬期
間が含まれる、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物は対象に投与され、対象が、粘膜炎を発症しているか又は発症するリスクがあり、場合により
i.前記対象が、粘膜炎の症状に対して、一つ又は複数の抗炎症剤及び/又は抗酸化剤を用いて同時に治療されている;または
ii.前記対象が、粘膜炎の症状に対して、一つ又は複数の抗炎症剤及び/又は抗酸化剤を用いて、前記組成物の投与前に前処置されている、
請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
ダクチノマイシンの治療有効量が約0.05~約2.0mg・分/Lの対象のAUC
∞をもたらす、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
ダクチノマイシンの治療有効量が約1ng/mL~約20ng/mLの対象のC
maxをもたらす、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
対象に投与すると、ダクチノマイシンの約70%~約80%が、3日後にナノ粒子から放出される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
対象における骨髄障害の治療において使用するための、請求項1~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
対象における骨髄異形成症候群の治療において使用するための、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年9月13日に出願された米国仮出願第62/394,104号、2017年1月9日に出願された米国仮出願第62/444,330号、及び2017年5月2日に出願された米国仮出願第62/500,459号の利益及び優先権を主張するものであり、これらの出願それぞれの内容はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、骨髄異形成症候群又は癌を持つ患者を、遺伝子検査、診断、及び治療することに関する分子生物学の分野を対象とする。
【背景技術】
【0003】
NPM1-変異型の急性骨髄性白血病(AML)は、成人においてAMLの3分の1のケースを占める特有の白血病である。
【0004】
骨髄異形成症候群(MDS)は、骨髄中の赤血球、白血球、血小板に影響を与える種々の骨髄障害の一群を包含するものである。前駆幹細胞が成熟できずに骨髄に蓄積するか、又は短い寿命を有することがあり、その結果、循環血液中の成熟血球が通常よりも少なくなることになる。MDSの罹患率は、人口10万人当たりおよそ4人~5人であり、60歳を超えると10万人当たり20人~50人に増加する。MDSは、罹患した場合のおよそ30%において急性骨髄性白血病(AML)に進行する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Hill,C.R.et al.Clin.Pharmacokinet.(2014)53:741-751
【文献】Walsh,C.et al.Br J Clin Pharmacol(2016)81:989-998
【文献】Falini,B.et al.“Cytoplasmic nucleo-phosmin in acute myelogenous leukemia with a normal karyo-type”N.Engl.J.Med.2005;352:254-266
【文献】Cancer Genome Atlas Research Network.“Genomic and epigenomic landscapes of adult de novo acute myeloid leukemia“N.Engl.J.Med.2013;368:2059-2074
【文献】Falini,B.et al.“Acute myeloid leukemia with mutated nucleophosmin (NPM1):any hope for a targeted therapy?”Blood Rev.2011;25:247-254
【文献】「Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0(CTCAE)」、発行日2006年8月9日
【文献】Osathanondh,R.et al.Cancer 1975;36:863-866
【文献】Burger K.et al.J.Biol.Chem.2010;285:12416-12425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
NPM1-変異型AMLを含めたMDS及びAMLの効果的な治療には、長年検討されているが未だ対処されていないニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、PLA-mPEGを含み、該ナノ粒子の平均サイズが約100nm~約200nmである、組成物を提供する。
【0008】
一実施形態では、PLA-mPEGは約5重量%のmPEG~約50重量%のmPEG(例えば25重量%)を含む。
【0009】
一実施形態では、PLA-mPEGは約15重量%のmPEG~約35重量%のmPEG(例えば25重量%)を含む。
【0010】
一実施形態では、PLA-mPEGの分子量は約25,000Da~約35,000Daである。
【0011】
一実施形態では、PLA-mPEGの分子量は約30,000Daである。
【0012】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、PLA-mPEGを含み、該PLA-mPEGの分子量が約25,000Da~約35,000Daである、組成物を提供する。
【0013】
一実施形態では、PLA-mPEGの分子量は約30,000Daである。
【0014】
一実施形態では、PLA-mPEGは約5重量%のmPEG~約50重量%のmPEG(例えば25重量%)を含む。
【0015】
一実施形態では、PLA-mPEGは約15重量%のmPEG~約35重量%のmPEG(例えば25重量%)を含む。
【0016】
一実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは約100nm~約200nmである。
【0017】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、PLGA-mPEGを含み、該ナノ粒子の平均サイズが約100nm~約200nmである、組成物を提供する。
【0018】
一実施形態では、PLGAの乳酸:グリコール酸のモル比は約40:60~約60:40である。
【0019】
一実施形態では、PLGAの乳酸:グリコール酸のモル比は約50:50である。
【0020】
一実施形態では、PLGA-mPEGは約5重量%のmPEG~約50重量%のmPEG(例えば35重量%)を含む。
【0021】
一実施形態では、PLA-mPEGは約25重量%のmPEG~約45重量%のmPEG(例えば35重量%)を含む。
【0022】
一実施形態では、PLGA-mPEGの分子量は約17,000Da~約27,000Daである。
【0023】
一実施形態では、PLGA-mPEGの分子量は約22,000Daである。
【0024】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、PLGA-mPEGを含み、該PLGA-mPEGの分子量が約17,000Da~約27,000Daである、組成物を提供する。
【0025】
一実施形態では、PLGA-mPEGの分子量は約22,000Daである。
【0026】
一実施形態では、PLGAの乳酸:グリコール酸のモル比は約40:60~約60:40である。
【0027】
一実施形態では、PLGAの乳酸:グリコール酸のモル比は約50:50である。
【0028】
一実施形態では、PLGA-mPEGは約5重量%のmPEG~約50重量%のmPEG(例えば35重量%)を含む。
【0029】
一実施形態では、PLA-mPEGは約25重量%のmPEG~約45重量%のmPEG(例えば35重量%)を含む。
【0030】
一実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは約100nm~約200nmである。
【0031】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、ポリ(乳酸)(PLA)を含み、該ナノ粒子の平均サイズが約100nm~約200nmである、組成物を提供する。
【0032】
一実施形態では、PLAはエステル終端されている。
【0033】
一実施形態では、PLAの分子量は約10,000Da~約18,000Daである。
【0034】
一実施形態では、PLAは酸終端されている。
【0035】
一実施形態では、PLAの分子量は約18,000Da~約24,000Daである。
【0036】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、ポリ(乳酸)(PLA)を含み、該PLAの分子量が約10,000Da~約18,000Daである、組成物を提供する。
【0037】
一実施形態では、PLAはエステル終端されている。
【0038】
一実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは約100nm~約200nmである。
【0039】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、ポリ(乳酸)(PLA)を含み、該PLAの分子量が約18,000Da~約24,000Daである、組成物を提供する。
【0040】
一実施形態では、PLAは酸終端されている。
【0041】
一実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは約100nm~約200nmである。
【0042】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、界面活性剤をさらに含む、組成物を提供する。
【0043】
一実施形態では、界面活性剤は、各ナノ粒子の約0.1重量%~約5重量%を構成する。
【0044】
一実施形態では、界面活性剤はポリビニルアルコールである。
【0045】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、該ナノ粒子の平均サイズが、約100nm、101nm、102nm、103nm、104nm、105nm、106nm、107nm、108nm、109nm、110nm、111nm、112nm、113nm、114nm、115nm、116nm、117nm、118nm、119nm、120nm、121nm、122nm、123nm、124nm、125nm、126nm、127nm、128nm、129nm、130nm、131nm、132nm、133nm、134nm、135nm、136nm、137nm、138nm、139nm、140nm、141nm、142nm、143nm、144nm、145nm、146nm、147nm、148nm、149nm、150nm、151nm、152nm、153nm、154nm、155nm、156nm、157nm、158nm、159nm、160nm、161nm、162nm、163nm、164nm、165nm、166nm、167nm、168nm、169nm、170nm、171nm、172nm、173nm、174nm、175nm、176nm、177nm、178nm、179nm、180nm、181nm、182nm、183nm、184nm、185nm、186nm、187nm、188nm、189nm、190nm、191nm、192nm、193nm、194nm、195nm、196nm、197nm、198nm、199nm、又は200nmである、組成物を提供する。
【0046】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、該ナノ粒子の平均サイズが、約100nm~約110nm、約105nm~約115nm、約110nm~約120nm、約115nm~約125nm、約120nm~約130nm、約125nm~約135nm、約130nm~約140nm、約135nm~約145nm、約130nm~約140nm、約135nm~約145nm、約140nm~約150nm、約145nm~約155nm、約150nm~約160nm、約155nm~約165nm、約160nm~約170nm、約165nm~約175nm、約170nm~約180nm、約175nm~約185nm、約180nm~約190nm、約185nm~約195nm、又は約190nm~約200nmである、組成物を提供する。
【0047】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、約5重量%~約15重量%のダクチノマイシンを含む、組成物を提供する。
【0048】
本開示は、治療を必要とする対象における骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法であって、本明細書に記載の一つ又は複数のポリマーを含有する、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物のうちのいずれかの治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0049】
本開示は、治療を必要とする対象における癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の一つ又は複数のポリマーを含有する、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物のうちのいずれかの治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0050】
一実施形態では、癌は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、大腸癌、神経内分泌癌、食道癌、及び/又は消化管間質腫瘍(GIST)である。
【0051】
本開示は、治療を必要とする対象における骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法であって、本明細書に記載の一つ又は複数のポリマーを含有する、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物のうちのいずれかの治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法は、少なくとも一つの追加の化学療法薬の治療有効量を投与することをさらに含み、該化学療法薬は、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FMS様チロシンキナーゼ3(FLT3)阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択され、該トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤と、ダクチノマイシンとのモル比は、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1未満:1、又はその間の任意の比である、方法を提供する。
【0052】
本開示は、治療を必要とする対象における癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の一つ又は複数のポリマーを含有する、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物のうちのいずれかの治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法は、少なくとも一つの追加の化学療法薬の治療有効量を投与することをさらに含み、該化学療法薬は、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択され、該トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤と、ダクチノマイシンとのモル比は、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1未満:1、又はその間の任意の比である、方法を提供する。
【0053】
本明細書に記載の組成物のいずれも、対象における癌(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、大腸癌、神経内分泌癌、食道癌、及び/又は消化管間質腫瘍(GIST))の治療に使用するのに適しており、及び/又は対象におけるMDSの治療に使用するのに適している。本開示の組成物のいずれも、全身的に、静脈内に、注入により、又は経口的に、対象に投与される。
【0054】
本開示の組成物のいずれも、1日1回、1週間に1回、1週間に2回、又は3週間に1回、対象に投与される。
【0055】
一部の実施形態では、本開示の組成物のいずれも、1日1回、1週間に1回、1週間に2回、又は3週間に1回、対象に投与され、該治療は、投与期間又は投与の間に、1週間、2週間、3週間、又は4週間の休薬期間をさらに含む。
【0056】
本開示の組成物のいずれも、1週間、2週間、又は3週間にわたり1回又は2回、対象に投与される。
【0057】
一部の実施形態では、本開示の組成物のいずれも、1週間、2週間、又は3週間にわたり1回又は2回、対象に投与され、該治療は、投与期間又は投与の間に、1週間、2週間、3週間、又は4週間の休薬期間をさらに含む。
【0058】
一実施形態では、本開示の方法は、対象が粘膜炎を発症しているか又は発症するリスクがある場合の方法を含む。
【0059】
本開示の方法は、対象が粘膜炎の症状に対して、一つ又は複数の抗炎症剤及び/又は抗酸化剤を用いて同時に治療されている場合の方法を含む。
【0060】
本開示の方法は、対象が粘膜炎の症状に対して、一つ又は複数の抗炎症剤及び/又は抗酸化剤を用いて、本明細書に記載の組成物のいずれかを投与する前に前処置されている場合の方法を含む。
【0061】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの治療有効量が約0.05~約2.0mg・分/LのAUC∞をもたらす場合の組成物及び方法を含む。
【0062】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの治療有効量が、約0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.0、1.05、1.10、1.15、1.20、10.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、又は2.0mg・分/LのAUC∞をもたらす場合の組成物及び方法を含む。
【0063】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの治療有効量が約0.05~約1.0mg・分/LのAUC∞をもたらす場合の組成物及び方法を含む。
【0064】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの治療有効量が約1ng/mL~約30ng/mLのCmaxをもたらす場合の組成物及び方法を含む。
【0065】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの治療有効量が、約1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、14.5、15、15.5、16、16.5、17、17.5、18、18.5、19、19.5、20、20.5、21、21.5、22、22.5、23、23.5、24、24.5、25、25.5、26、26.5、27、27.5、28、28.5、29、29.5、又は30ng/mLのCmaxをもたらす場合の組成物及び方法を含む。
【0066】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの治療有効量が約1ng/mL~約20ng/mLのCmaxをもたらす場合の組成物及び方法を含む。
【0067】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの治療有効量が、約1ng/mL~約5ng/mL、約5ng/mL~約10ng/mL、約10ng/mL~約15ng/mL、又は約15ng/mL~約20ng/mLのCmaxをもたらす場合の組成物及び方法を含む。
【0068】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの約60%~約90%が、2日後、3日後、4日後、又は5日後にナノ粒子から放出される場合の組成物及び方法を含む。
【0069】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、2日後、3日後、4日後、又は5日後にナノ粒子から放出される場合の組成物及び方法を含む。
【0070】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの約60%~約90%が、3日後にナノ粒子から放出される場合の組成物及び方法を含む。
【0071】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの約60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、又は90%が、3日後にナノ粒子から放出される場合の組成物及び方法を含む。
【0072】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの約70%~約80%が、2日後、3日後、4日後、又は5日後にナノ粒子から放出される場合の組成物及び方法を含む。
【0073】
一実施形態では、本開示の組成物及び方法は、ダクチノマイシンの約70%~約80%が、3日後にナノ粒子から放出される場合の組成物及び方法を含む。
【0074】
本開示はまた、本開示の組成物のいずれかを調製するためのプロセスであって、
(i)ダクチノマイシンの有機溶媒溶液を、ポリマーの有機溶媒溶液に、ポリマー:APIの比が10:1の比(重量/重量)になるまで加えることと、
(ii)(i)の溶液を均一になるまでボルテックスすることと、
(iii)9,000~10,000Daの分子量を有し80%加水分解された2%(w/w)のポリビニルアルコールを含有した水相に、水相を高速でボルテックスしながら、(ii)の溶液を(ii)の溶液と水相の体積比が約1:7になるまで滴加して、ナノ粒子乳濁液を形成することと、
(iv)(iii)の乳濁液をボルテックスすることと、
(v)(iv)の乳濁液を0℃で数分間超音波処理した後に、該乳濁液を2%(w/w)のポリビニルアルコールを含有した攪拌水相溶液に注ぎ、有機溶媒が蒸発するまで攪拌し続けることと、任意選択的に、
(vi)得られた組成物を14,000×rpmで約30分間の遠心分離により精製することと、
(vii)(vi)の上澄み液を捨てた後に、得られたナノ粒子をddH2Oで洗浄し、14,000×rpmで30分間遠心分離することと、
(viii)(viii)の生成物をddH2Oに再懸濁した後に、3500×rpmで5分間遠心分離することと、
(ix)(viii)の上澄み液を採取して、Amicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(50kDカットオフ)により濃縮した後に、14,000×rpmで10分間遠心分離して遊離ダクチノマイシンを除去することと、を含むプロセスを提供する。
【0075】
一実施形態では、本開示の組成物のいずれかを調製するためのプロセスにおいて、該組成物における遊離ダクチノマイシンの量は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの量の5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、又は1重量%未満である。
【0076】
本開示は、ダクチノマイシン組成物、すなわち、ダクチノマイシンを含む組成物、例えば、ナノ粒子に封入された又はナノ粒子と会合したダクチノマイシンを提供する。本明細書で使用される場合、ダクチノマイシンは、アクチノマイシン-D、Act-D、ActD、又はAct Dなどと互換的に称されてもよい。
【0077】
本開示は、治療を必要とする対象における癌を治療するための方法であって、本開示の組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、癌は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、大腸癌、神経内分泌癌、食道癌、又は消化管間質腫瘍(GIST)であり得る。特定の実施形態では、癌は急性骨髄性白血病(AML)であり得る。特定の実施形態では、AMLはNPM1-変異型AML又は野生型AMLであり得る。特定の実施形態では、AMLはNPM1-変異型AMLであり得る。
【0078】
本開示は、治療を必要とする対象における骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法であって、本開示の組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0079】
特定の実施形態では、方法は、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択される一つ又は複数の追加の化学療法薬の治療有効量を投与することをさらに含むことができる。特定の実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤にはエトポシドが含まれ得る。特定の実施形態では、白金系治療剤にはシスプラチンが含まれ得る。特定の実施形態では、アントラサイクリンには、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、又はイダルビシンが含まれ得る。特定の実施形態では、タキサンには、パクリタキセル又はドセタキセルが含まれ得る。特定の実施形態では、チロシンキナーゼ阻害剤にはイマチニブが含まれ得る。特定の実施形態では、ヌクレオシド類似体には、シタラビン、ゲムシタビン、又はカペシタビンが含まれ得る。特定の実施形態では、FLT3阻害剤には、Rydapt(登録商標)(ミドスタウリン)、ソラフェニブ、レスタウルチニブ、キザルチニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、又はギルテリチニブが含まれ得る。特定の実施形態では、高メチル化阻害剤には、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンが含まれ得る。
【0080】
特定の実施形態では、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、又はヌクレオシド類似体と、ダクチノマイシンとのモル比は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は約5:1である。特定の実施形態では、モル比は5:1である。
【0081】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本開示の組成物と、エトポシド、シトシンアラビノシド(ara-C、シタラビン)、及びオキサリプラティヌムのうちの少なくとも各一つとの治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0082】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本開示の組成物とシタラビンとの治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0083】
本開示の組成物は、抗炎症剤、抗酸化剤、又はこれらの組み合わせの治療有効量をさらに含んでもよい。本開示の方法は、抗炎症剤、抗酸化剤、又はこれらの組み合わせの治療有効量を対象に投与することをさらに含んでもよい。
【0084】
本開示の抗炎症剤には、ペントキシフィリン及び/又は非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)が含まれていてもよい。
【0085】
本開示の抗酸化剤には、ビタミンC、N-アセチルシステイン、アミホスチン、又はレチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)が含まれていてもよい。特定の実施形態では、本開示の抗酸化剤には、ビタミンC、レチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0086】
特定の実施形態では、抗炎症剤には、ペントキシフィリン及び/又はNSAIDsが含まれ得、抗酸化剤には、ビタミンC、又はレチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)が含まれ得る。特定の実施形態では、抗炎症剤には、ペントキシフィリン及び/又はNSAIDsが含まれ得、抗酸化剤には、ビタミンC、レチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。
【0087】
特定の実施形態では、抗炎症剤、抗酸化剤、又はこれらの組み合わせと、ダクチノマイシンとのモル比は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、又はその間の任意の比である。
【0088】
本開示の方法は、本開示の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物と、
(a)抗炎症剤、
(b)抗酸化剤、及び
(c)該抗炎症剤と該抗酸化剤の組み合わせのうちの少なくとも一つとの投与であって、該ダクチノマイシンと、該抗炎症剤、該抗酸化剤、又はそれらの任意の組み合わせとが同時に投与される、投与を含む。
【0089】
本開示の方法は、本開示の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物と、
(a)抗炎症剤、
(b)抗酸化剤、及び
(c)該抗炎症剤と該抗酸化剤の組み合わせのうちの少なくとも一つとの投与であって、該ダクチノマイシンと、該抗炎症剤、該抗酸化剤、又はそれらの任意の組み合わせとが逐次的に投与される、投与を含む。
【0090】
ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、対象に全身的に投与されてもよい。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、静脈内に、又は注入によって投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、経口投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、錠剤又はカプセル剤の形態で投与され得る。
【0091】
ダクチノマイシンを含む本開示の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物は、1~30μg/kg/日(端点を含む)の組成物の治療有効量で投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、10~20μg/kg/日(端点を含む)又は10~15μg/kg/日(端点を含む)の組成物の治療有効量で投与され得る。
【0092】
特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、約1μg/kg/日、2μg/kg/日、3μg/kg/日、4μg/kg/日、5μg/kg/日、6μg/kg/日、7μg/kg/日、8μg/kg/日、9μg/kg/日、10μg/kg/日、11μg/kg/日、12μg/kg/日、13μg/kg/日、14μg/kg/日、15μg/kg/日、16μg/kg/日、17μg/kg/日、18μg/kg/日、19μg/kg/日、20μg/kg/日、21μg/kg/日、22μg/kg/日、23μg/kg/日、24μg/kg/日、25μg/kg/日、26μg/kg/日、27μg/kg/日、28μg/kg/日、29μg/kg/日、又は30μg/kg/日の組成物の治療有効量で投与され得る。
【0093】
ダクチノマイシンを含む本開示の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物は、約5μg/kg/日~約15μg/kg/日の組成物の治療有効量で投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、5μg/kg/日~15μg/kg/日の組成物の治療有効量で投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、約12.5μg/kg/日の組成物の治療有効量で投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、12.5μg/kg/日の組成物の治療有効量で投与され得る。
【0094】
ダクチノマイシンを含む本開示の組成物、つまりナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物は、1日1回投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、1日2回投与され得る。
【0095】
ダクチノマイシンを含む本開示の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物は、1週間に2回投与され得る。ある特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、1週間に1回投与され得る。ある特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、2週間に1回投与され得る。
【0096】
治療過程にわたって投与される総投与量は、投与毎に投与される量、投与頻度、及び/又は治療期間の長さに依存することになる。
【0097】
例えば、投与される組成物の量が10μg/kg/日、投与頻度が1日1回、治療期間の長さが1週間である場合、総投与量は70μg/kgとなるであろう。
【0098】
例えば、投与される組成物の量が10μg/kg/日、投与頻度が1週間に2回(例えば、1日目と4日目)、治療期間の長さが1週間である場合、その週の間に35μg/kgで2回供給され、総投与量は70μg/kgとなるであろう。
【0099】
例えば、投与される組成物の量が10μg/kg/日、投与頻度が1週間に1回、治療期間の長さが1週間である場合、その週の間に70μg/kgで1回供給され、総投与量は70μg/kgとなるであろう。
【0100】
例えば、投与される組成物の量が10μg/kg/日、投与頻度が2週間に1回、治療期間の長さが2週間である場合、その2週間の間に1回供給され、総投与量は140μg/kgとなるであろう。
【0101】
対象に投与される総投与量の決定は、当業者の常套的なレベルの範囲内である。
【0102】
ダクチノマイシンを含む本開示の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物は、少なくとも1サイクル投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、少なくとも2サイクル投与され得る。1サイクルは、本開示の一態様では、本開示の組成物を用いた連続5日の治療を含み得る。一実施形態では、1サイクルは、本開示の組成物を用いた、毎日、1週間に2回、1週間に1回、又は2週間に1回の治療を含み得る。
【0103】
特定の実施形態では、治療は、投与間及び/又は治療サイクル間に、1週間、2週間、3週間、4週間、又はそれを超える週の休薬期間をさらに含む。一実施形態では、二つの連続した治療サイクルの間の休薬期間は、少なくとも2週であり得る。一実施形態では、二つの連続した治療サイクルの間の休薬期間は、少なくとも4週であり得る。
【0104】
本開示の方法は、対象に輸血を投与する工程をさらに含んでもよい。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物と、輸血とは、同時に投与され得る。あるいは、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物と輸血とは逐次的に投与され得る。特定の実施形態では、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、輸血の前に投与され得る。例えば、ダクチノマイシンを含む組成物の投与サイクルを完了してもよく、輸血を、ダクチノマイシン療法サイクルの後、又はダクチノマイシン療法の二つのサイクル間に投与してもよい。特定の実施形態では、輸血は、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物を用いた治療の少なくとも1サイクル後に投与され得る。
【0105】
本開示の対象は、ダクチノマイシンを用いた治療の開始前又は開始後に粘膜炎を患っている場合がある。本開示の対象は、粘膜炎を発症しやすい傾向にあるか、又は発症するリスクがあり得る。対象が粘膜炎を既に発症しているか、又は発症する可能性がある特定の実施形態では、ダクチノマイシン又はダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量は、対象において粘膜炎を誘発するか又は悪化させることなく、癌(例えば、AML、又はNPM1-変異型AML)を治療するのに十分な量であり得る。
【0106】
対象が粘膜炎を既に発症しているか、又は発症する可能性がある特定の実施形態では、ダクチノマイシン又はダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量は、対象において粘膜炎を誘発するか又は悪化させることなく、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するのに十分な量であり得る。
【0107】
対象が粘膜炎を発症する可能性があるか、又は粘膜炎に感受性を有する可能性がある特定の実施形態では、本開示の方法は、粘膜炎の症状に対して、一つ又は複数の抗炎症剤及び/又は抗酸化剤を用いて対象に併用療法を行うことを含む。
【0108】
対象が粘膜炎を既に発症している特定の実施形態では、本開示の方法は、粘膜炎の症状に対して、一つ又は複数の抗炎症剤及び/又は抗酸化剤を用いて、本明細書に記載の組成物のいずれかを投与する前に対象に前処置を行うことを含む。
【0109】
本開示の方法によると、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、望ましい最先端の療法として、新規診断済及び/又は以前未治療のAMLを患う対象に対して投与されてもよい。特定の実施形態では、対象は、強化化学療法に不適応であり得る。特定の実施形態では、対象は少なくとも50歳であり得る。特定の実施形態では、対象は少なくとも60歳であり得る。特定の実施形態では、対象は少なくとも70歳であり得る。特定の実施形態では、強化化学療法に不適応である可能性のある対象として、以下に限定されないが、免疫系不全、血液障害、腸管障害、又は感染を有し得る対象が挙げられる。
【0110】
本開示の方法によると、対象は、本開示のダクチノマイシン組成物の投与前、別の癌療法には反応していなかった。特定の実施形態では、他の癌療法にはアザシチジンが含まれている。特定の実施形態では、対象に、他の癌療法の後に再発が見られ得る。特定の実施形態では、本開示のダクチノマイシン組成物のうちのいずれかを用いて治療した後に、対象に寛解が得られ得る。特定の実施形態では、寛解という用語には、形態学的寛解及び/又は分子的寛解が含まれる。
【0111】
特定の実施形態では、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量は、1ng/mL~30ng/mL(端点を含む)のCmaxをもたらす。例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量は、約1ng/mL、2ng/mL、3ng/mL、4ng/mL、5ng/mL、6ng/mL、7ng/mL、8ng/mL、9ng/mL、10ng/mL、11ng/mL、12ng/mL、13ng/mL、14ng/mL、15ng/mL、16ng/mL、17ng/mL、18ng/mL、19ng/mL、20ng/mL、21ng/mL、22ng/mL、23ng/mL、24ng/mL、25ng/mL、26ng/mL、27ng/mL、28ng/mL、29ng/mL、又は30ng/mLのCmaxをもたらす。
【0112】
特定の実施形態では、ナノ粒子に封入された及び/又はナノ粒子と会合したダクチノマイシンの治療有効量は、1ng/mL~20ng/mL(端点を含む)のCmaxをもたらす。
【0113】
特定の実施形態では、ナノ粒子に封入された及び/又はナノ粒子と会合したダクチノマイシンの治療有効量は、10ng/mL~15ng/mLの間である。
【0114】
特定の実施形態では、ナノ粒子に封入された及び/又はナノ粒子と会合したダクチノマイシンの治療有効量は、約0.05~2.0mg・分/LのAUC∞をもたらす。一実施形態では、ナノ粒子に封入された及び/又はナノ粒子と会合したダクチノマイシンの治療有効量は、約0.05~約1.0mg・分/LのAUC∞をもたらす。
【0115】
本開示は、ダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、該ダクチノマイシンがナノ粒子に封入され、及び/又はナノ粒子と会合しており、一つ又は複数の追加の化学療法薬の治療有効量をさらに含み、該化学療法薬が、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択され、該化学療法薬がナノ粒子に封入されている、及び/又はナノ粒子と会合している、組成物を提供する。
【0116】
本開示は、ダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、該ダクチノマイシンがナノ粒子に封入され、及び/又はナノ粒子と会合しており、一つ又は複数の追加の化学療法薬の治療有効量をさらに含み、該化学療法薬が、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択され、該化学療法薬がナノ粒子に封入され、及び/又はナノ粒子と会合しており、トポイソメラーゼ阻害剤にはエトポシドが含まれていてもよく、白金系治療剤にはシスプラチンが含まれていてもよく、アントラサイクリンには、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、若しくはイダルビシンが含まれていてもよく、タキサンには、パクリタキセル若しくはドセタキセルが含まれていてもよく、チロシンキナーゼ阻害剤にはイマチニブが含まれていてもよく、ヌクレオシド類似体には、シタラビン、ゲムシタビン、若しくはカペシタビンが含まれていてもよく、FLT3阻害剤にはRydapt(登録商標)(ミドスタウリン)、ソラフェニブ、レスタウルチニブ、キザルチニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、若しくはギルテリチニブが含まれてもいてもよく、並びに/又は高メチル化阻害剤には、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンが含まれていてもよい、組成物を提供する。
【0117】
本開示は、ダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、該ダクチノマイシンがナノ粒子に封入され、及び/又はナノ粒子と会合しており、化学療法薬の治療有効量をさらに含み、該化学療法薬が、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、高メチル化阻害剤からなる群から選択され、該トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、又はヌクレオシド類似体と、ダクチノマイシンとのモル比が、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、又はその間の任意の比である、組成物を提供する。特定の実施形態では、モル比は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は約5:1である。特定の実施形態では、モル比は5:1である。
【0118】
本開示は、ダクチノマイシン及びエトポシドの治療有効量を含む組成物であって、該ダクチノマイシン及びエトポシドがナノ粒子に封入され、及び/又はナノ粒子と会合しており、エトポシドの治療有効量が50μg/mL未満のCmaxをもたらす、組成物を提供する。特定の実施形態では、ナノ粒子に封入された及び/又はナノ粒子と会合したエトポシドの治療有効量は、1~50μg/mL(端点を含む)の間にCmaxをもたらす。
【0119】
特定の実施形態では、ナノ粒子に封入された及び/又はナノ粒子と会合したエトポシドの治療有効量は、30~45mg/kg/日の間である。
【0120】
特定の実施形態では、ナノ粒子に封入された及び/又はナノ粒子と会合したエトポシドの治療有効量は、約50~約60μg・時/mL/時のAUC∞をもたらす。
【0121】
本開示は、ダクチノマイシン及びエトポシドの治療有効量を含む組成物であって、該ダクチノマイシン及びエトポシドがナノ粒子に封入されており、エトポシドとダクチノマイシンのモル比が、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、又はその間の任意の比である、組成物を提供する。特定の実施形態では、モル比は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は約5:1である。特定の実施形態では、モル比は5:1である。
【0122】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供する。特定の実施形態では、癌は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、大腸癌、神経内分泌癌、食道癌、又は消化管間質腫瘍(GIST)である。一実施形態では、癌は急性骨髄性白血病(AML)である。好ましい実施形態では、癌はNPM1-変異型AMLである。
【0123】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該組成物が1週間に1回投与される、方法を提供する。特定の実施形態では、組成物は1週間に2回投与される。特定の実施形態では、組成物は2週間に1回投与される。特定の実施形態では、組成物は1か月に1回投与される。
【0124】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該組成物が1週間に1回、1週間に2回、2週間に1回、又は1か月に1回投与され、該組成物が、1週間、2週間、3週間、4週間、又はそれを超える週の休薬期間の後に再度投与される、方法を提供する。一実施形態では、二つの連続した治療サイクルの間の休薬期間は、少なくとも2週であり得る。一実施形態では、二つの連続した治療サイクルの間の休薬期間は、少なくとも4週であり得る。
【0125】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法が、抗炎症剤、抗酸化剤、又はそれらの組み合わせの治療有効量を対象に投与することをさらに含む、方法を提供する。特定の実施形態では、抗炎症剤にはペントキシフィリン及び/又はNSAIDsが含まれる。特定の実施形態では、抗酸化剤には、ビタミンC、及び/又はレチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)が含まれる。特定の実施形態では、抗炎症剤には、ペントキシフィリン及び/又はNSAIDsが含まれ、抗酸化剤には、ビタミンC、又はレチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)が含まれる。
【0126】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法が、抗炎症剤、抗酸化剤、又はそれらの組み合わせの治療有効量を対象に投与することをさらに含み、該抗炎症剤、抗酸化剤、又はそれらの組み合わせと、ダクチノマイシンとのモル比が、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、又はその間の任意の比である、方法を提供する。
【0127】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法が、抗炎症剤、抗酸化剤、又はそれらの組み合わせの治療有効量を該対象に投与することをさらに含み、該組成物と、
(a)抗炎症剤、
(b)抗酸化剤、及び
(c)該抗炎症剤と該抗酸化剤の組み合わせ、のうちの少なくとも一つとであり、
該ダクチノマイシンと、該抗炎症剤、該抗酸化剤、又はそれらの組み合わせとが、同時に投与される、方法を提供する。
【0128】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法が、抗炎症剤、抗酸化剤、又はそれらの組み合わせの治療有効量を該対象に投与することをさらに含み、該組成物と、
(a)抗炎症剤、
(b)抗酸化剤、及び
(c)該抗炎症剤と該抗酸化剤の組み合わせ、のうちの少なくとも一つとであり、
該ダクチノマイシンと、該抗炎症剤、該抗酸化剤、又はそれらの組み合わせとが、逐次的に投与される、方法を提供する。
【0129】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該組成物が薬学的に許容できる担体をさらに含む、方法を提供する。
【0130】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該組成物が薬学的に許容できる担体をさらに含み、該組成物が全身的に投与される、方法を提供する。特定の実施形態では、組成物は静脈内に投与される。特定の実施形態では、組成物は注入により投与される。
【0131】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該組成物が薬学的に許容できる担体をさらに含み、該組成物が経口投与される、方法を提供する。特定の実施形態では、組成物は錠剤の形態である。特定の実施形態では、組成物はカプセル剤の形態である。
【0132】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法が、該対象に輸血を投与することをさらに含む、方法を提供する。特定の実施形態では、組成物と輸血とは同時に投与される。特定の実施形態では、組成物と輸血とは逐次的に投与される。特定の実施形態では、組成物は輸血の前に投与される。特定の実施形態では、輸血は、組成物を用いた治療の少なくとも1サイクル後に投与される。
【0133】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該対象が粘膜炎を有する、方法を提供する。一実施形態では、治療は、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択される少なくとも一つの追加の化学療法薬を用いた治療をさらに含む。
【0134】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該対象が粘膜炎を発症する場合があるか、又は粘膜炎に感受性がある、方法を提供する。一実施形態では、治療は、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択される少なくとも一つの追加の化学療法薬を用いた治療をさらに含む。
【0135】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該対象が少なくとも50歳である、方法を提供する。ある特定の実施形態では、対象は少なくとも60歳である。ある特定の実施形態では、対象は少なくとも70歳である。
【0136】
本開示は、治療を必要とする対象における癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該対象が、該組成物の投与前、別の癌療法には反応しなかった、方法を提供する。特定の実施形態では、他の癌療法はアザシチジンである。
【0137】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該対象には、他の癌療法の後に再発が見られていた、方法を提供する。特定の実施形態では、他の癌療法はアザシチジンである。特定の実施形態では、寛解は形態学的寛解である。特定の実施形態では、寛解は分子的寛解である。
【0138】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法が、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択される一つ又は複数の追加の化学療法薬の治療有効量を投与することをさらに含む、方法を提供する。
【0139】
特定の実施形態では、白金系治療剤にはシスプラチンが含まれる。
【0140】
特定の実施形態では、アントラサイクリンには、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、又はイダルビシンが含まれる。
【0141】
特定の実施形態では、タキサンには、パクリタキセル又はドセタキセルが含まれる。
【0142】
特定の実施形態では、ヌクレオシド類似体には、シタラビン、ゲムシタビン、又はカペシタビンが含まれる。
【0143】
特定の実施形態では、FLT3阻害剤には、Rydapt(登録商標)(ミドスタウリン)、ソラフェニブ、レスタウルチニブ、キザルチニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、又はギルテリチニブが含まれる。
【0144】
特定の実施形態では、高メチル化阻害剤には、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンが含まれる。
【0145】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法は、少なくとも一つの追加の化学療法薬の治療有効量を投与することをさらに含み、該化学療法薬は、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤からなる群から選択され、該トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、又は高メチル化阻害剤と、ダクチノマイシンとのモル比は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、又はその間の任意の比である、方法を提供する。特定の実施形態では、モル比は、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、又はその間の任意の比である。特定の実施形態では、モル比は約5:1である。特定の実施形態では、モル比は5:1である。
【0146】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、本明細書に記載の任意の組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含み、該方法が、レチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)、バルプロ酸、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、p53安定剤、又はそれらの任意の組み合わせを対象に投与することをさらに含む、方法を提供する。
【0147】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、ダクチノマイシンを含む組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0148】
本開示は、AMLの治療、特にNPM1-変異型AMLの治療であって、AMLの臨床症状に加えて基礎病理に対処する治療のための組成物及び方法を提供する。(Dohner,H.et al.N.Engl.J.Med.2015,373:1136-1152)。
【0149】
本開示は、治療を必要とする対象における、急性骨髄性白血病(AML)を治療するための方法であって、ダクチノマイシンを含む組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物の治療有効量を、該対象に投与することを含む方法を提供し、好ましい方法では、AMLはNPM1-変異型AMLである。特定の実施形態では、NPM1-変異型AMLは、FLT3内部タンデム重複リピートを有していない。
【0150】
本開示の方法によると、組成物の治療有効量は、1~30μg/kg/日(端点を含む)又は1~20μg/kg/日(端点を含む)である。低用量は、長期の間にわたって効果的である。例えば、1μg/kg/日の用量を、長期連日投与及び/又は維持投与に使用して、再発を防ぐことができる。高用量は、短期の間にわたって安全に使用され得る。例えば、30μg/kg/日を、1日使用した後に、用量を減少させるか、又は未治療の期間、例えば、1日治療サイクル間に未治療の2週間の期間を設けることができる。あるいは、高用量を使用して、血漿レベルを最小有効閾値を超えるまで迅速に増加させるか又は急増させ、翌日も続けるか、又は低用量での未治療の期間を設けて、ダクチノマイシンの血漿濃縮を維持することができる。本開示の方法の特定の実施形態では、組成物の治療有効量は約5μg/kg/日~約15μg/kg/日、又は5μg/kg/日~15μg/kg/日である。あるいは、組成物の治療有効量は約12.5μg/kg/日であるか、又は12.5μg/kg/日である。組成物の治療有効量は、1日1回若しくは少なくとも1日1回、1週間に2回、1週間に1回、又は2週間に1回投与され得る。
【0151】
本開示の方法によると、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物は、望ましい最先端の療法として、新規診断済及び/又は以前未治療のAMLを有し、強化化学療法に不適応であるか又は高齢者である(すなわち60歳以上である)対象に対して投与されてもよい。強化化学療法に不適応であり得る対象として、以下に限定されないが、免疫系不全、血液障害、腸管障害、又は感染を有する対象が挙げられる。
【0152】
本開示の方法によると、ダクチノマイシン組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物で治療された対象には、続いて寛解が得られてもよい。本明細書で使用する場合、寛解という用語には、形態学的寛解及び/又は分子的寛解が含まれる。
【0153】
本開示の方法のいずれかは、対象に、レチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)、バルプロ酸、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、p53安定剤、又はこれらの任意の組み合わせを投与することをさらに含んでもよい。
【0154】
本開示は、ダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、ダクチノマイシンの治療有効量が、約15μg/kg/日であるか又は15μg/kg/日である、組成物を提供する。
【0155】
本開示は、治療を必要とする対象における、骨髄異形成症候群(MDS)を治療するための方法、及び/又は癌を治療するための方法であって、ダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物、例えば、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物を対象に投与することを含み、ダクチノマイシンの治療有効量が、約15μg/kg/日であるか又は15μg/kg/日である、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【
図1A】
図1A~
図1Bは、ダクチノマイシンの経時的な全身濃度を示す各グラフである。これらのグラフのデータは、ダクチノマイシン1mg/m
2(27μg/kg)を投与した16歳~53歳の21人の患者から取得したものである。(Hill,C.R.et al.Clin.Pharmacokinet.(2014)53:741-751;及びWalsh,C.et al.Br J Clin Pharmacol(2016)81:989-998を参照)
【
図2】
図2は、C
max(ng/mL)(グラフA)とAUC
0-6時間(mg/L・分)(グラフB)をダクチノマイシン投与量(mg/m
2)の関数として示す一対のグラフである。
【
図3】
図3は、NPM1-変異型細胞株OCI/AML3におけるAct-Dにより誘発された核小体の崩壊とアポトーシスを示す一連の写真である。NPM1=ヌクレオフォスミン、DAPI=4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール-DNAのA-Tに富む領域に強く結合する蛍光染色剤。
【
図4】
図4は、患者M.M.のインビトロ又はインビボで接触したNPM1-変異型AML腫瘍細胞へのダクチノマイシン投与によるp53の活性化を示すウェスタンブロット(処置後に生検用に採取した細胞)の一連の写真である(患者は、60歳の女性で、汎血球減少症、骨髄の広範囲の芽細胞浸潤があり、NPM1-変異型AMLと診断、心筋梗塞の既往歴による低左室駆出率のために化学療法に不適応、最初にアザシチジンで処置したが疾患が進行したため、アクチノマイシンD(心毒性無のため)を用いて連続5日の2サイクルにて各12.5μg/kgで処置された)。
【
図5】
図5は、TruSight Myeloid Panelによるシーケンシングを示すチャートである。-変異遺伝子(*)。患者M.M.NMP1、IDH2、及びSTAG2の変異はAct-D後に検出されていない。
【
図6A】
図6A~
図6Bはダクチノマイシン処置前における再発時の骨髄生検のヘマトキシリン・エオシン染色(H-E染色)を示す一連の写真である。PGM1=ホスホグルコムターゼ1、MPO=ミエロペルオキシダーゼ。
【
図7】
図7は、ダクチノマイシンを15μg/kgで5日間投与された対象の間質性肺炎を示すコンピューター断層撮影(CT)スキャンの写真である。
【
図8】
図8は、ダクチノマイシン処置の1サイクル後の血液学的回復を示す一対のグラフである。
【
図9A】
図9A~
図9Bは、ダクチノマイシン単体を用いた処置前後の骨髄(BM)検査結果を示す一対の写真である。ActDで処置した後のBM検査は、白血病芽細胞の浸潤の著しい減少と、部分的正常な造血回復とを示した。
【
図10】
図10は、ダクチノマイシンと低用量のシタラビン(LDAC)とを用いた処置による相同的回復を示す一対のグラフである。全血球計算(CBC)d=46、白血球4130/mm
3、好中球割合(N=66%)、ヘモグロビン(Hb)=7.7g/dL、血小板(PLT)カウント192.000/mm
3。エリスロポエチン(EPO)投与量=17.8mUl/ml(異常反応)。ダルベポエチンαで処置を開始した患者。
【
図11】
図11は、白血病芽細胞のクリアランスを示す一連のフローサイトメトリープロットである。
【
図12】
図12は、ダクチノマイシンとLDACとを用いた処置(右)前後の骨髄(BM)検査結果を示す一対の写真であり、正常な3本線の造血回復が見られる完全な血液学的寛解を示している。
【
図13】
図13は、ダクチノマイシンとLDACとでの処置後の骨髄生検結果を示す一連の写真である。
【
図14】
図14は、赤血球生成の回復を示す写真である。GlyC=セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ、細胞質型。
【
図15】
図15は、ダクチノマイシンとResomer(登録商標)R 203 H(PLA)とを用いて調製した組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。
【
図16】
図16は、ダクチノマイシンとResomer(登録商標)100 DL mPEG 5000(25%mPEG)(PLA-mPEG)とを用いて調製した組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。
【
図17】
図17は、ダクチノマイシンとResomer(登録商標)R 203 H(PLA)とを用いて調製した組成物であって、組成物が界面活性剤を含まない200nmの酢酸セルロース膜フィルタを通過した後(下の線)の、組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。
【
図18】
図18は、ダクチノマイシンとResomer(登録商標)100 DL mPEG 5000(25%mPEG)(PLA-mPEG)とを用いて調製した組成物であって、組成物が界面活性剤を含まない200nmの酢酸セルロース膜フィルタを通過した後(上の線)の、組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。
【
図19】
図19は、ダクチノマイシンとResomer(登録商標)R 202 Sとを用いて調製した組成物であって、種々の条件で組成物の安定性を評価した後の組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。(T0
=
【
図20】
図20~
図21は、ダクチノマイシンとResomer(登録商標)R 203 Hとを用いて調製した組成物であって、種々の条件で組成物の安定性を評価した後の組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。
【
図22】
図22~
図23は、ダクチノマイシンとResomer(登録商標)100DL mPEG 5000(25%)とを用いて調製した組成物であって、種々の条件で組成物の安定性を評価した後の組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。
【
図24】
図24~
図25は、ダクチノマイシンとResomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%)とを用いて調製した組成物であって、種々の条件で組成物の安定性を評価した後の組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。
【
図26】
図26は、ダクチノマイシンとペグ化されたポリD,Lラクチドとを用いて調製した組成物であって、種々の条件で組成物の安定性を評価した後の組成物のナノ粒子サイズ分布を示すグラフである。
【
図27】
図27は、ダクチノマイシンと、Resomer(登録商標)R 202 S、Resomer(登録商標)R 203 H、Resomer(登録商標)100DL mPEG 5000(25%)、Resomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%)とで調製された4種の組成物と比較した場合の、遊離ダクチノマイシンのインビトロでの放出を示す一連のグラフである。
【
図28A】
図28A~
図28Dは、本出願の4種の組成物を4℃で2か月保管した後の、該組成物からのダクチノマイシンのインビトロでの放出を示す一連のグラフである。(
図28A:100DL mPEG 5000(25%)、
図28B:Resomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%)、
図28C:Resomer(登録商標)R 203 H、
図28D:Resomer(登録商標)R 202 S)。
【
図29】
図29は、本出願の4種の組成物(Resomer(登録商標)R 202 S、Resomer(登録商標)R 203 H、Resomer(登録商標)100DL mPEG 5000(25%)、Resomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%))と比較した場合の、遊離ダクチノマイシンでインビボ処置した後のラット体重への経時的な作用を示す一連のグラフである。
【
図30】
図30は、本出願の4種の組成物(Resomer(登録商標)R 202 S、Resomer(登録商標)R 203 H、Resomer(登録商標)100DL mPEG 5000(25%)、Resomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%))と比較した場合の、遊離ダクチノマイシンでインビボ処置した後のC
MAXへの経時的な作用を示す一連のグラフである。
【
図31】
図31は、本出願の4種の組成物(Resomer(登録商標)R 202 S、Resomer(登録商標)R 203 H、Resomer(登録商標)100DL mPEG 5000(25%)、Resomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%))と比較した場合の、遊離ダクチノマイシンでインビボ処置した後のC
MAXへの経時的な作用を示す一連のグラフである。
【
図32】
図32は、本出願の4種の組成物(Resomer(登録商標)R 202 S、Resomer(登録商標)R 203 H、Resomer(登録商標)100DL mPEG 5000(25%)、Resomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%))と比較した場合の、遊離ダクチノマイシンでインビボ処置した後のラット体重への経時的な作用を示す一連のグラフである。
【
図33】
図33は、本出願の4種の組成物(Resomer(登録商標)R 202 S、Resomer(登録商標)R 203 H、Resomer(登録商標)100DL mPEG 5000(25%)、Resomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%))と比較した場合の、遊離ダクチノマイシンでインビボ処置した後の生存率の経時変化を示す一連のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0157】
NPM1-変異型の急性骨髄性白血病(AML)は、成人においてAMLの3分の1のケースを占める特有の白血病である。NPM1は、正常な核小体の完全性及び機能に極めて重要なタンパク質である。この疾患では非変異NPM1が低レベルであるため(NPM1変異による非変異NPM1のハプロ不全及び細胞質保持に起因)、NPM1-変異型AML細胞の核小体は、核小体のストレス反応を誘発する薬剤の影響を受けやすい場合がある。腫瘍抑制因子p53は、タンパク質のダウンレギュレーション又は機能喪失型変異のいずれかによって、癌において不活性化されることが多い。したがって、p53を安定化させれば、野生型(WT)p53を保有する癌を治療することができる。本明細書では、SIRT1阻害剤Tenovin-1及びポロ様キナーゼ1(Plk1)阻害剤BI2536を用いて、p53を安定化させた。(Chen,L et al.Cell Cycle 2016,15(6):840-849を参照)。核小体ストレスに対するp53依存性反応についてもp53非依存性反応についても報告されている。重要なことには、p53媒介性核小体ストレス反応がNPM1-変異型AMLで保持されることであり、これは、NPM1-変異型AML細胞がp53変異又は欠失を持たないことによる。
【0158】
活性を示す可能性がある薬剤の中で、本開示がダクチノマイシンに着目しているのは、これが、RNAポリメラーゼIの阻害によりリボソーム生合成を妨害することによって核小体ストレスを誘発するからである。ダクチノマイシンは、ウィルムス腫瘍やいくつかの他の腫瘍に活性を示す。これに対し、本開示は、ダクチノマイシンをAMLに使用した最初の研究を記述している。
【0159】
さらに、本開示は、ダクチノマイシンを含む組成物を投与することを含む骨髄異形成症候群(MDS)を治療する方法を提供する。
【0160】
本開示はまた、ダクチノマイシンを含む組成物を投与することを含む癌を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、癌は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、大腸癌、神経内分泌癌、食道癌、又は消化管間質腫瘍(GIST)であり得る。特定の実施形態では、癌は急性骨髄性白血病(AML)であり得る。特定の実施形態では、AMLはNPM1-変異型AML又は野生型AMLであり得る。特定の実施形態では、AMLはNPM1-変異型AMLであり得る。
【0161】
本開示の方法によると、ダクチノマイシンを含む本開示の組成物は、望ましい最先端の療法として、新規診断済及び/又は以前未治療の癌を有し、強化化学療法に不適応であるか又は高齢者である(すなわち60歳以上である)対象に対して投与されてもよい。強化化学療法に不適応であり得る対象として、以下に限定されないが、免疫系不全、血液障害、腸管障害、又は感染を有する対象が挙げられる。
【0162】
本開示の特定の実施形態では、ダクチノマイシン組成物は、望ましい最先端の療法として、新規診断済及び/又は以前未治療のAMLを有し、強化化学療法に不適応であるか又は高齢者である(すなわち60歳以上である)対象に対して投与されてもよい。強化化学療法に不適応であり得る対象として、以下に限定されないが、免疫系不全、血液障害、腸管障害、又は感染を有する対象が挙げられる。
【0163】
急性骨髄性白血病(AML)
AML急性骨髄性白血病(AML)は、代替的に、急性骨髄性白血病(acute myelocytic leukemia)、急性骨髄性白血病(acute myelogenous leukemia)、急性顆粒球性白血病、又は急性非リンパ性白血病と称される容態の最も一般的な名前である。(Falini,B.et al.“Cytoplasmic nucleo-phosmin in acute myelogenous leukemia with a normal karyo-type”N.Engl.J.Med.2005;352:254-266;Cancer Genome Atlas Research Network.“Genomic and epigenomic landscapes of adult de novo acute myeloid leukemia“N.Engl.J.Med.2013;368:2059-2074を参照)。
【0164】
AMLは初めは骨髄に発症する。しかしながら、AML細胞は血液中に直ちに進行する。一旦対象の血液中に存在するようになると、癌性細胞は、リンパ節、肝臓、脾臓、中枢神経系(脳及び/又は脊髄)、皮膚、及び/又は精巣に限定されない身体のあらゆる部分に広がる可能性がある。
【0165】
白血病の急性型としては、癌細胞は、正常状態下で急速に分裂して多くの血球型を提供する幹細胞様の性質を有した、未熟血球である。これらの細胞が発癌性形質転換を起こしている場合、急速分裂することで、成熟細胞型及び/又は最終分化細胞型に影響を及ぼす癌よりも速い速度で癌細胞が生じる。
【0166】
白血病の骨髄型としては、癌細胞は、正常状態下で分裂して、赤血球と、白血球と、血小板を生成する巨核球とに分化する細胞を生成する幹様骨髄細胞から形質転換する。これらの細胞が発癌性形質転換を起こしている場合、未熟骨髄細胞は、直ちに分裂して、その後、通常は循環血液になるはずの赤血球、白血球、及び血小板の数及び/又は割合を増やすことはない。その結果、発癌状況下では、骨髄細胞は骨で分裂かつ凝集し、これらの細胞の産生が増えることで、骨髄における健康な非癌性細胞の正常機能を有する供給源と競合し、またその正常機能を妨害する。さらに、発癌状況下では、骨髄細胞は、血液を介して一つ又は複数の器官に正常レベルの酸素を運ぶのに十分な量の赤血球を産生せず、感染に対する適正な免疫反応を開始させるのに十分な量の白血球を産生せず、及び/又は血液凝固を促進するのに十分な量の血小板を産生しないことになる。
【0167】
本開示の対象は、AMLを発症する一つ又は複数のリスク因子を呈し得る。リスク因子の例として、以下に限定されないが、癌の個人歴及び/又は家族歴、加齢、男性であること、化学療法及び/又は放射線での治療歴、放射線への曝露(原子炉事故の生存者を含む)、有害化学物質(例えばベンゼンを含む)への曝露、過去又は現在の喫煙の習慣、副流煙への曝露、他の血液障害(例えば、脊髄形成異常症、真性多血症、及び/又は血小板血症を含む)の個人歴、遺伝性障害(例えば、ダウン症候群を含む)が挙げられる。本開示の対象が任意の性別であってもよいが、遺伝的に男性である対象は、遺伝的に女性である対象に比べてAMLを発症するリスクが高くなっている。本開示の対象は任意の年齢であってもよいが、少なくとも40歳、少なくとも50歳、少なくとも60歳、少なくとも70歳、少なくとも80歳、又は少なくとも90歳の対象は、若年の対象に比べてAMLを発症するリスクが高くなっている。
【0168】
本開示の対象は、AMLの一つ又は複数の徴候又は症状を呈する場合があり、この徴候には、以下に限定されないが、熱、骨痛、嗜眠及び/又は疲労、息切れ、青白い皮膚、頻発する感染症、易傷性、異常出血(例えば、鼻及び歯茎、並びに/又は血液凝固の低下若しくは不十分な血液凝固由来)が挙げられる。
【0169】
本開示の方法によると、ダクチノマイシンは、望ましい最先端の療法として、新規診断済及び/又は以前未治療のAMLを有し、強化化学療法に不適応であるか又は高齢者である(すなわち60歳以上である)対象に対して投与されてもよい。強化化学療法に不適応であり得る対象として、以下に限定されないが、免疫系不全、血液障害、腸管障害、又は感染を有する対象が挙げられる。
【0170】
本開示の対象は、別の療法でAMLを治療されてきた場合もあり、その療法に抵抗性があったか、又はその療法の結果としていかなる改善も見られなかった可能性がある。したがって、本開示の対象は、本開示の方法のダクチノマイシンを用いる治療の前に、一つ又は複数の療法に失敗した個人を含む。
【0171】
AMLを治療することで、部分的又は完全な血液学的寛解がもたらされ得る。完全な血液学的寛解は、骨髄スメア及び/又は骨髄切断部の形態学的検査で、白血病細胞が骨髄細胞の5%未満まで減少することとして定義される。部分的な血液学的寛解は、骨髄スメア及び/又は骨髄切断部の形態学的検査により算出した結果、白血病細胞が骨髄細胞の5%超であるが、骨髄細胞中の初期割合未満となるまで減少することとして定義される。骨髄細胞中の白血病細胞の初期割合は、診断時及び/又は治療の開始時に算出され得る。初期割合の減少量は、治療中又は治療完了後の任意の時点で測定され得る。
【0172】
さらに、AMLを治療することで、細胞増殖領域又は細胞増殖帯、特に髄外白血病腫瘤のサイズを減少させることができる。好ましくは、治療後、細胞増殖領域又は細胞増殖帯のサイズは、治療前のサイズと比べて少なくとも5%減少し、より好ましくは少なくとも10%減少し、より好ましくは少なくとも20%減少し、より好ましくは少なくとも30%減少し、より好ましくは少なくとも40%減少し、より好ましくは少なくとも50%減少し、さらにより好ましくは少なくとも50%減少し、最も好ましくは少なくとも75%減少する。細胞増殖領域又は細胞増殖帯のサイズは、任意の再現できる測定手段によって測定され得る。細胞増殖領域又は細胞増殖帯のサイズは、細胞増殖領域又は細胞増殖帯の直径又は幅として測定され得る。
【0173】
AMLを治療することで、異常外観又は形態(すなわち形態学的退行)を持つ細胞の数又は割合を減少させることができる。好ましくは、治療後、異常形態を持つ細胞の数は、治療前のサイズと比べて少なくとも5%減少し、より好ましくは少なくとも10%減少し、より好ましくは少なくとも20%減少し、より好ましくは少なくとも30%減少し、より好ましくは少なくとも40%減少し、より好ましくは少なくとも50%減少し、さらにより好ましくは少なくとも50%減少し、最も好ましくは少なくとも75%減少する。異常細胞外観又は形態は、任意の再現できる測定手段によって測定され得る。異常細胞形態は、顕微鏡を用いて、例えば倒立型組織培養顕微鏡を用いて測定することができる。異常細胞形態は、核多態性の形態をとることができる。
【0174】
NPM1-変異型急性骨髄性白血病(AML)
NPM1-変異型の急性骨髄性白血病(AML)は、成人においてAMLの3分の1のケースを占める特有の白血病である。NPM1は、正常な核小体の完全性及び機能に極めて重要なタンパク質である。(Falini,B.et al.“Acute myeloid leukemia with mutated nucleophosmin (NPM1):any hope for a targeted therapy?”Blood Rev.2011;25:247-254を参照)。
【0175】
慢性リンパ性白血病(CLL)
慢性リンパ性白血病(CLL)は、高齢者において最も一般的なタイプの白血病である。これは、血液、骨髄、リンパ節、及び脾臓にCD5/CD19/CD23陽性Bリンパ球が蓄積することによって特徴付けられる。この疾患の臨床経過は極めて変化に富んでおり、10年間にわたって自覚症状のないままである患者から、診断直後に積極的治療を必要とする患者までと様々である。
【0176】
骨髄異形成症候群(MDS)
本明細書で使用される場合、「骨髄異形成症候群(MDS)」という用語及び/又は同様のものは、骨髄における不完全に形成された血球又は機能不全の血球によって引き起こされる、一つ又は複数の障害の群に言及するものである。
【0177】
一実施形態では、骨髄異形成症候群(MDS)は、骨髄中の赤血球、白血球、血小板に影響を与える種々の骨髄障害の一群である。
【0178】
前駆幹細胞が成熟できずに骨髄に蓄積するか、又は短い寿命を有する場合があり、その結果、循環血液中の成熟血球が通常よりも少なくなることになる。
【0179】
MDSの罹患率は、人口10万人当たりおよそ4人~5人であり、60歳を超えると10万人当たり20人~50人に増加する。
【0180】
MDSは、罹患した場合のおよそ30%において急性骨髄性白血病(AML)に進行する。
【0181】
本明細書で使用される場合、「症状」という用語は、疾患、病気、傷害、又は身体の調子が悪いことを示すものとして定義される。症状は、症状を経験する個人によって感じるか又は気付くものであるが、他者が気付くのは容易ではないことがある。他者とは、非医療専門家として定義される。
【0182】
本明細書で使用される場合、「徴候」という用語は、身体の調子が悪いことを示すものとして定義される。しかしながら、徴候は、医師、看護師、又は他の医療専門家にはわかることのできるものとして定義される。
【0183】
本明細書で使用される場合、「有害事象」又は「AE」という用語は、任意の好ましくなくかつ意図されない、医薬品(治験薬)の使用に一時的に関連する徴候(異常検査所見を含む)、症状、又は疾患のことであり、これらは治療又は医療的処置に関連するとみなされていてもみなされていなくてもよい。(「Common Terminology Criteria for Adverse Events v3.0(CTCAE)」、発行日2006年8月9日を参照)。
【0184】
本明細書で使用される場合、「寛解」という用語は、癌の徴候及び症状が軽減するか又は消失することを表す。部分的な寛解では、癌の一部(全てではない)の徴候及び症状が消失している。完全寛解では、癌が依然として身体中にある可能性があるが、癌の全ての徴候及び症状が消失している。一態様では、寛解は本質的に形態学的なものであり得る。一態様では、寛解は本質的に分子的なものであり得る。一態様では、寛解は本質的に形態学的かつ分子的なものであり得る。
【0185】
本明細書で使用される場合、「癌」という用語は、身体の他の部分に広がる可能性を持った異常な細胞増殖に関わる疾患を表す。非限定的な例として、造血性腫瘍及びリンパ性腫瘍(急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL))、大腸癌、神経内分泌癌、食道癌(バレット症候群)、消化管間質腫瘍(GIST)、骨髄腫瘍、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性疾患、リンパ節腫瘍及びリンパ系腫瘍、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、又はこれらの任意の転移が挙げられる。
【0186】
本明細書で使用される場合、「選択的」という用語は、一集団において、別の集団よりも高い頻度で起こる傾向にあることを意味する。比較される集団は、細胞集団であり得る。好ましくは、本開示のダクチノマイシン又はダクチノマイシン組成物は、癌細胞又は前癌細胞に選択的に作用するが、正常細胞には作用しない。好ましくは、本開示のダクチノマイシン又はダクチノマイシン組成物は、一つの分子標的(例えば、リボソーム生合成の阻害によるRNA/DNA鎖延長)を調節するように選択的に作用するが、別の分子標的(例えば、細胞修復酵素)を有意に調節することはない。好ましくは、ある事象が集団Bと比べて集団Aで2倍を超える頻度で発生する場合に、その事象は集団Bに比べて集団Aで選択的に発生するものである。ある事象が集団Aで5倍を超える頻度で発生する場合に、その事象は選択的に発生するものである。ある事象が、集団Aで10倍を超える頻度で、より好ましくは、集団Bと比べて集団Aで50倍を超える頻度で、さらにより好ましくは100倍を超える頻度で、最も好ましくは、1000倍を超える頻度で発生する場合に、その事象は選択的に発生するものである。例えば、細胞死は、細胞死が正常細胞と比べて癌細胞で2倍を超える頻度で発生する場合に、癌細胞で選択的に発生するということになる。
【0187】
本開示のダクチノマイシン組成物は、分子標的(例えば、リボソーム)の活性を調節することができる。調節することとは、分子標的の活性を刺激又は阻害することを表す。好ましくは、本開示のダクチノマイシン組成物は、分子標的の活性を、化合物を含まないことのみを除いて同じ条件下での分子標的の活性に比べて少なくとも2倍刺激又は阻害する場合に、分子標的の活性を調節している。より好ましくは、本開示のダクチノマイシン組成物は、分子標的の活性を、化合物を含まないことのみを除いて同じ条件下での分子標的の活性に比べて、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍刺激するか又は阻害する場合に、分子標的の活性を調節している。分子標的の活性は、任意の再現できる測定手段によって測定され得る。分子標的の活性は、インビトロ又はインビボで測定され得る。例えば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイ又はDNA結合アッセイによりインビトロで測定され得るか、又は分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現についてアッセイすることによりインビボで測定され得る。
【0188】
ダクチノマイシンは、ストレプトマイセス・パルブルス(streptomyces parvullus)から誘導されたフェノキサジンに結合している二つの環状ペプチドから構成される、ポリペプチド抗腫瘍性抗生剤である。ダクチノマイシンはDNAに結合し、mRNA転写物の鎖延長を特異的に妨害することによってRNA合成(転写)を阻害する。ダクチノマイシンは、強固ではあるが可逆的にDNA分子に結合する。mRNAの産生が阻害された結果、ダクチノマイシン療法の後には、タンパク質合成、リボソーム生合成、及び細胞分裂が減少する。ダクチノマイシンは、細胞分裂を抑制するため、骨髄においてAMLに伴う発癌性の細胞分裂を阻害するという仮説が提唱されている。
【0189】
ダクチノマイシンは、主として子供に発生する稀な腫瘍(ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、妊娠性絨毛疾患、ユーイング肉腫など)に対して承認された極めて効果的な化学療法剤として、現在用いられている。(Osathanondh,R.et al.Cancer 1975;36:863-866;Burger K.et al.J.Biol.Chem.2010;285:12416-12425を参照)。したがって、ダクチノマイシンは既知のリスクプロファイルを有する。
【0190】
本開示のダクチノマイシン組成物及びダクチノマイシン製剤は、いち早くCLLの高リスク患者の治療に使用される可能性がある。
【0191】
ダクチノマイシンは極めて腐食性が高く、多くの有害な副作用、例えば組織壊死を生み出す場合があり、注入部に投与してから数日から数週間後に溢血に続いて粘膜炎が生じることがある。粘膜炎とは、激しい苦痛を伴う、胃腸管を被覆する粘膜の水疱形成、炎症、及び潰瘍形成のことであり、癌及び/又はMDSの化学療法治療及び放射線療法治療の有害作用である。
【0192】
粘膜炎は、ダクチノマイシンを用いて治療を受けている対象が、治療の継続や完了ができないほど有害でありかつ衰弱化させる可能性がある。口に生じる粘膜炎、すなわち口腔粘膜炎が一般的であり、癌及び/又はMDSの治療(例えば、ダクチノマイシンを用いた治療)の消耗性合併症となることが多い。
【0193】
粘膜炎は、ダクチノマイシンを用いて治療を受けている対象が治療の継続や完了ができなくなる程度に衰弱化させる有害性を持ち、癌治療において問題となるが、これは多くの場合に、ダクチノマイシン治療を中止するか又は完了できない対象は、癌の再発をきたす可能性があるからである。
【0194】
粘膜炎の発症は用量依存性がある場合があり、本出願のダクチノマイシンナノ粒子組成物のいずれかにつき10~20μg/kg/日の範囲でダクチノマイシン用量を放出制御して投与することによって、MDS及び/又は癌(例えばAMLなど)の治療の有効性を依然として維持しつつ、粘膜炎の発症を軽減することができる。一実施形態では、粘膜炎の発症は、抗炎症剤、抗酸化剤、及び/又は成長分化促進剤と併用療法することによって軽減することができる。
【0195】
粘膜炎はまた、抗炎症剤、例えば、ペントキシフィリン、NSAIDs、抗酸化剤(例えば、ビタミンC及びレチノイン酸(例えば全てのトランス-レチノイン酸))、成長分化促進剤(例えば、グルタミン)を用いて前処置することによって軽減することができる。
【0196】
さらに、粘膜炎は、投与期間の間に「休薬期間」を設ける投与レジメンを用いることによって軽減することができる。休薬期間は、1週間、2週間、3週間、又は4週間であり得る。
【0197】
一実施形態では、本出願のダクチノマイシンナノ粒子組成物のいずれかの投与期間は、1週間、2週間、又は3週間にわたり1回又は2回である。
【0198】
一実施形態では、代表的な投与サイクルは、抗炎症剤を用いた粘膜炎前処理の後に、本出願のナノ粒子組成物のいずれかを用いて1週間、2週間、又は3週間にわたり1回又は2回治療し、その後に1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、又は6週間の休薬期間を設け、続いて本出願のナノ粒子組成物のいずれかを用いて1週間、2週間、又は3週間にわたり1回又は2回治療することを含む。
【0199】
ダクチノマイシンは、2-アミノ-N,N’-ビス(ヘキサデカヒドロ-2,5,9-トリメチル-6,13-ビス(1-メチルエチル)-1,4,7,11,14-ペンタオキソ-1H-ピロロ(2,1-I)(1,4,7,10,13)オキサテトラ-アザシクロヘキサデシン-10-イル)-4,6-ジメチル-3-オキソ-3H-フェノキサジン-1,9-ジカルボキサミド、ActD、アクチノマイシンC1、アクチノマイシンD、アクチノマイシンiv、ダクチノマイシン(dactinomicina)、ダクトマイシン(dactomycin)、ダクチノマイシン(dactinomycine)、ダクチノマイシン(dactinomycinum)、又はメラクチノマイシン(meractinomycin)と称されることもある。ダクチノマイシンは、環状デプシペプチドとして知られる有機化合物の分類に属する。環状デプシペプチドには、環状に連結されたアミノ酸残基及びヒドロキシカルボン酸残基(通例αアミノ酸及びαヒドロキシ酸)の配列を含む天然化合物及び/又は非天然(すなわち、合成)化合物が含まれる。ダクチノマイシンのアミノ酸残基及びヒドロキシカルボン酸残基は、繰り返しパターンで交互になっていてもよい。
【0200】
医薬組成物
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含む、組成物を提供する。ポリマーとして、以下に限定されないが、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリメチルシアノアクリレート、及び、ポリ酸無水物類、ポリ(オルト)エステル類、又はそれらのポリウレタン類が挙げられ、ポリマーは任意選択的に、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレングリコールメチルエーテル(mPEG)、及び/又はそれらの任意の組み合わせをさらに含む。
【0201】
本開示は、混合物、すなわち、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリメチルシアノアクリレート、及び、ポリ酸無水物類、ポリ(オルト)エステル類、又はそれらのポリウレタン類から選択される一つ又は複数のポリマーの混合物を含む組成物を提供する。
【0202】
本開示はまた、混合物、すなわち、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリメチルシアノアクリレート、及び、ポリ酸無水物類、ポリ(オルト)エステル類、又はそれらのポリウレタン類から選択される一つ又は複数のポリマーの混合物を含む組成物であって、該ポリマーが、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールメチルエーテル(mPEG)、及び/又はそれらの任意の組み合わせをさらに含む、組成物を提供する。
【0203】
当業者は、これらのポリマーの種々の組み合わせを選択することによって、放出特性及び/又は動態が変わり得る(例えば、増加又は減少する)ことを認識しているであろう。所望の放出速度を達成するように適切なポリマーの組み合わせを決定することは、当業者の常套的なレベルの範囲内である。
【0204】
ナノ粒子は、本明細書で使用される場合、約1~500ナノメートル(nm)の大きさの粒子を表す。例えば、一実施形態では、約100nm~約200nmである。
【0205】
一実施形態では、本開示の組成物は、ナノ粒子に封入された及び/又はナノ粒子と会合したダクチノマイシンを含む組成物を包含する。
【0206】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、ポリ乳酸(PLA)ポリマーを含む、組成物を提供する。PLAは通例、乳酸のDエナンチオマー型とLエナンチオマー型の混合物である、アモルファス(非結晶性)の生分解性ポリマーである。PLAは、乳酸の単一のエナンチオマーのみを用いて合成される場合には、結晶性ポリマーとして使用することもできる。
【0207】
一実施形態では、本開示は、PLAを含むナノ粒子に封入されたダクチノマイシンであって、該PLAが約10,000~約24,000Daの範囲の分子量を有し、ダクチノマイシンの放出制御を可能にする、ダクチノマイシンを提供する。
【0208】
一実施形態では、PLAの分子量は約10,000Da~約18,000Daである。
【0209】
一実施形態では、PLAの分子量は約18,000Da~約24,000Daである。
【0210】
一実施形態では、PLAの分子量は、約10,000Da~約14,000Da、11,000Da~約15,000Da、12,000Da~約16,000Da、13,000Da~約17,000Da、14,000Da~約18,000Da、15,000Da~約19,000Da、16,000Da~約20,000Da、17,000Da~約21,000Da、18,000Da~約22,000Da、19,000Da~約23,000Da、20,000Da~約24,000Daである。
【0211】
一実施形態では、PLAの分子量は、約10,000Da、約11,000Da、約12,000Da、約13,000Da、約14,000Da、約15,000Da、約16,000Da、約17,000Da、約18,000Da、約19,000Da、約20,000Da、約21,000Da、約22,000Da、約23,000Da、約24,000Daである。
【0212】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、PLAを含み、該PLAがエステル終端されている、組成物を提供する。
【0213】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、PLAを含み、該PLAが酸終端型である、組成物を提供する。PLAのエステル終端型はPLAの酸終端型よりも疎水性が高く、酸終端型は親水性が高い。
【0214】
一実施形態では、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、エステル終端されたPLAを含む組成物は、酸終端されたPLAを含有するナノ粒子に封入されたダクチノマイシンよりもゆっくりと分解し、ナノ粒子からダクチノマイシンをゆっくりと放出させることになる。
【0215】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)ポリマーを含む、組成物を提供する:
【0216】
【0217】
水性環境では、PLGAはエステル結合の加水分解によって生分解する。
【0218】
PLAのメチル側鎖は、そのポリマーをPGAよりも疎水性にする。一実施形態では、ラクチドに富むPLGAコポリマーは、ラクチドがより少ないコポリマーに比べて親水性が低く、水をあまり吸収せずにゆっくりと分解する。
【0219】
一実施形態では、分子量のより高いPLGAは、分子量のより低いPLGAに比べてゆっくりと分解する。
【0220】
一実施形態では、本開示は、PLGAを含むナノ粒子に封入されたダクチノマイシンであって、該PLGAが、約7,000~約54,000Daの範囲の分子量を有し、ダクチノマイシンの放出制御を可能にする、ダクチノマイシンを提供する。
【0221】
一実施形態では、PLGAの分子量は、約7,000Da~約17,000Da、17,000Da~約27,000Da、27,000Da~約37,000Da、37,000Da~約47,000Da、又は47,000Da~約54,000Daである。
【0222】
一実施形態では、PLGAの分子量は、約12,000Da~約22,000Da、22,000Da~約32,000Da、32,000Da~約42,000Da、42,000Da~約52,000Da、又は44,000Da~約54,000Daである。
【0223】
一実施形態では、PLGAの分子量は、約7,000Da、約8,000Da、約9,000Da、約10,000Da、約11,000Da、約12,000Da、約13,000Da、約14,000Da、約15,000Da、約16,000Da、約17,000Da、約18,000Da、約19,000Da、約20,000Da、約21,000Da、約22,000Da、約23,000Da、約24,000Da、約25,000Da、約26,000Da、約27,000Da、約28,000Da、約29,000Da、約30,000Da、約31,000Da、約32,000Da、約33,000Da、約34,000Da、約35,000Da、約36,000Da、約37,000Da、約38,000Da、約39,000Da、約40,000Da、約41,000Da、約42,000Da、約43,000Da、約44,000Da、約45,000Da、約46,000Da、約47,000Da、約48,000Da、約49,000Da、約50,000Da、約51,000Da、約52,000Da、約53,000Da、又は約54,000Daである。
【0224】
一実施形態では、本開示は、PLGAを含むナノ粒子に封入されたダクチノマイシンであって、該PLGAの乳酸:グリコール酸のモル比が約95:5、約90:10、約85:15、約80:20、約75:25、約70:30、約65:35、約60:40、約55:45、約50:50、約45:55、約40:60、約35:65、約30:70、約25:75、約20:80、約15:85、約10:90、又は約5:95である、ダクチノマイシンを提供する。
【0225】
一実施形態では、本開示は、PLGAを含むナノ粒子に封入されたダクチノマイシンであって、該PLGAの乳酸:グリコール酸のモル比が約50:50である、ダクチノマイシンを提供する。
【0226】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、ポリ乳酸(PLA)ポリマーを含み、該PLAポリマーがポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレングリコールメチルエーテル(mPEG)で合成されて、ジブロックコポリマー(PLA-PEG及びPLA-mPEG)を調製し、ダクチノマイシンの放出制御を可能にすることができる、組成物を提供する。
【0227】
一実施形態では、PLA-mPEGコポリマーは、以下のスキームに従って調製され得る:
【0228】
【0229】
親水性PEG(及びmPEG)部分は、ナノ粒子の表面方向に配向しており、立体反発及び水和反発によって外部分子との相互作用を低減するバリアとして働く。これらの組成物は、非修飾のナノ粒子(すなわち、「非PEG化」又は「非mPEG化」のナノ粒子)に比べて、体循環で長い半減期を持つことができる。
【0230】
一実施形態では、PLA-PEG及びPLA-mPEGのナノ粒子からの薬剤放出は、拡散により生じる。一実施形態では、PLA-PEG及びPLA-mPEGのナノ粒子からの薬剤放出は、ポリマー分解により生じる。一実施形態では、PLA-PEG及びPLA-mPEGのナノ粒子からの薬剤放出は、拡散とポリマー分解とにより生じる。
【0231】
PEG又はmPEGとPLGAとの比は、体循環からのナノ粒子のクリアランスに影響を及ぼし得る。
【0232】
一実施形態では、PLA-PEG又はPLA-mPEGのジブロックコポリマーにおけるPEG又はmPEGの重量パーセントは、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、約61重量%、約62重量%、約63重量%、約64重量%、約65重量%、約66重量%、約67重量%、約68重量%、約69重量%、約70重量%、約71重量%、約72重量%、約73重量%、約74重量%、約75重量%、約76重量%、約77重量%、約78重量%、約79重量%、約80重量%、約81重量%、約82重量%、約83重量%、約84重量%、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、又は約99重量%である。
【0233】
一実施形態では、PLA-PEG又はPLA-mPEGのジブロックコポリマーにおけるPEG又はmPEGの重量パーセントは、約1重量%~99重量%、2重量%~95重量%、3重量%~90重量%、4重量%~75重量%、5重量%~50重量%、10重量%~45重量%、15重量%~40重量%、18重量%~35重量%、又は20重量%~30重量%である。
【0234】
一実施形態では、PLA-PEG又はPLA-mPEGのジブロックコポリマーにおけるPEG又はmPEGの重量パーセントは、約25重量%である。
【0235】
一実施形態では、PLA-mPEGのジブロックコポリマーにおけるmPEGの重量パーセントは、約25重量%である。
【0236】
本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)ポリマーを含み、該PLGAポリマーがポリエチレングリコール(PEG)又はポリエチレングリコールメチルエーテル(mPEG)で合成されて、ジブロックコポリマー(PLGA-PEG及びPLGA-mPEG)を調製し、ダクチノマイシンの放出制御を可能にすることができる、組成物を提供する。一実施形態では、PLGA-mPEGコポリマーは以下のスキームに示す一般構造を有する:
【0237】
【0238】
親水性PEG(及びmPEG)部分は、ナノ粒子の表面方向に配向しており、立体反発及び水和反発によって外部分子との相互作用を低減するバリアとして働く。これらの組成物は、非修飾のナノ粒子(すなわち、「非PEG化」又は「非mPEG化」のナノ粒子)に比べて、体循環で長い半減期を持つことができる。
【0239】
一実施形態では、PLGA-PEG及びPLGA-mPEGのナノ粒子からの薬剤放出は、拡散により生じる。一実施形態では、PLGA-PEG及びPLGA-mPEGのナノ粒子からの薬剤放出は、ポリマー分解により生じる。一実施形態では、PLGA-PEG及びPLGA-mPEGのナノ粒子からの薬剤放出は、拡散とポリマー分解とにより生じる。
【0240】
PEG又はmPEGとPLGAとの比は、体循環からのナノ粒子のクリアランスに影響を及ぼし得る。
【0241】
一実施形態では、PLGA-PEG又はPLGA-mPEGのジブロックコポリマーにおけるPEG又はmPEGの重量パーセントは、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約11重量%、約12重量%、約13重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約17重量%、約18重量%、約19重量%、約20重量%、約21重量%、約22重量%、約23重量%、約24重量%、約25重量%、約26重量%、約27重量%、約28重量%、約29重量%、約30重量%、約31重量%、約32重量%、約33重量%、約34重量%、約35重量%、約36重量%、約37重量%、約38重量%、約39重量%、約40重量%、約41重量%、約42重量%、約43重量%、約44重量%、約45重量%、約46重量%、約47重量%、約48重量%、約49重量%、約50重量%、約51重量%、約52重量%、約53重量%、約54重量%、約55重量%、約56重量%、約57重量%、約58重量%、約59重量%、約60重量%、約61重量%、約62重量%、約63重量%、約64重量%、約65重量%、約66重量%、約67重量%、約68重量%、約69重量%、約70重量%、約71重量%、約72重量%、約73重量%、約74重量%、約75重量%、約76重量%、約77重量%、約78重量%、約79重量%、約80重量%、約81重量%、約82重量%、約83重量%、約84重量%、約85重量%、約86重量%、約87重量%、約88重量%、約89重量%、約90重量%、約91重量%、約92重量%、約93重量%、約94重量%、約95重量%、約96重量%、約97重量%、約98重量%、又は約99重量%である。
【0242】
一実施形態では、PLGA-PEG又はPLGA-mPEGのジブロックコポリマーにおけるPEG又はmPEGの重量パーセントは、約1重量%~99重量%、2重量%~95重量%、3重量%~90重量%、4重量%~75重量%、5重量%~50重量%、10重量%~47重量%、15重量%~45重量%、20重量%~42重量%、又は25重量%~45重量%である。
【0243】
一実施形態では、PLGA-PEG又はPLGA-mPEGのジブロックコポリマーにおけるPEG又はmPEGの重量パーセントは、約35重量%である。
【0244】
一実施形態では、PLGA-mPEGのジブロックコポリマーにおけるmPEGの重量パーセントは、約35重量%である。
【0245】
本開示はまた、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む本明細書に開示された組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、該ナノ粒子の平均サイズが、約100nm、101nm、102nm、103nm、104nm、105nm、106nm、107nm、108nm、109nm、110nm、111nm、112nm、113nm、114nm、115nm、116nm、117nm、118nm、119nm、120nm、121nm、122nm、123nm、124nm、125nm、126nm、127nm、128nm、129nm、130nm、131nm、132nm、133nm、134nm、135nm、136nm、137nm、138nm、139nm、140nm、141nm、142nm、143nm、144nm、145nm、146nm、147nm、148nm、149nm、150nm、151nm、152nm、153nm、154nm、155nm、156nm、157nm、158nm、159nm、160nm、161nm、162nm、163nm、164nm、165nm、166nm、167nm、168nm、169nm、170nm、171nm、172nm、173nm、174nm、175nm、176nm、177nm、178nm、179nm、180nm、181nm、182nm、183nm、184nm、185nm、186nm、187nm、188nm、189nm、190nm、191nm、192nm、193nm、194nm、195nm、196nm、197nm、198nm、199nm、又は200nmである、組成物のいずれかを提供する。
【0246】
さらに、本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む本明細書に開示された組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、該ナノ粒子の平均サイズが、約100nm~約110nm、約105nm~約115nm、約110nm~約120nm、約115nm~約125nm、約120nm~約130nm、約125nm~約135nm、約130nm~約140nm、約135nm~約145nm、約130nm~約140nm、約135nm~約145nm、約140nm~約150nm、約145nm~約155nm、約150nm~約160nm、約155nm~約165nm、約160nm~約170nm、約165nm~約175nm、約170nm~約180nm、約175nm~約185nm、約180nm~約190nm、約185nm~約195nm、又は約190nm~約200nmである、組成物のいずれかを提供する。
【0247】
一実施形態では、ナノ粒子サイズは、当該技術分野で既知の方法を用いて、例えば、Malvern Nano-ZSゼータサイザーを用いて算出することができる。
【0248】
本開示はまた、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む本明細書に開示された組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、界面活性剤をさらに含む組成物のいずれかを提供する。
【0249】
一実施形態では、界面活性剤は、各ナノ粒子の約0.01重量%~約10.0重量%を構成する。一実施形態では、界面活性剤は、各ナノ粒子の約0.1重量%~約5.0重量%を構成する。例えば、界面活性剤は、各ナノ粒子の約0.2重量%~約4.0重量%、各ナノ粒子の約0.5重量%~約3.0重量%、各ナノ粒子の約1.0重量%~約2.5重量%を構成する。
【0250】
一実施形態では、界面活性剤は、各ナノ粒子の約0.001重量%、約0.005重量%、約0.01重量%、約0.05重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約1.1重量%、約1.2重量%、約1.3重量%、約1.4重量%、約1.5重量%、約1.6重量%、約1.7重量%、約1.8重量%、約1.9重量%、約2.0重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、約2.5重量%、約2.6重量%、約2.7重量%、約2.8重量%、約2.9重量%、約3.0重量%、約3.1重量%、約3.2重量%、約3.3重量%、約3.4重量%、約3.5重量%、約3.6重量%、約3.7重量%、約3.8重量%、約3.9重量%、約4.0重量%、約4.1重量%、約4.2重量%、約4.3重量%、約4.4重量%、約4.5重量%、約4.6重量%、約14.7重量%、約4.8重量%、約4.9重量%、又は約5.0重量%を構成する。
【0251】
一実施形態では、界面活性剤は各ナノ粒子の2.0重量%未満を構成する。
【0252】
本開示はまた、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む本明細書に開示された組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、界面活性剤をさらに含み、該界面活性剤が、ポリビニルアルコール、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、ビタミンE TPGS、コール酸ナトリウム、胆汁酸塩(例えば、タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG600、PEG、PEG4500、Brij(登録商標)(例えば、20、35、58など))、及び/又はポロキサマー(例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー407)である、組成物のいずれかを提供する。一実施形態では、界面活性剤はポリビニルアルコールである。一実施形態では、界面活性剤はポリビニルアルコールであり、該ポリビニルアルコールは80%加水分解されており、約9,000~約10,000Daの分子量を有する。
【0253】
本開示はまた、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む本明細書に開示された組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、約1重量%~約50重量%のダクチノマイシンをさらに含む、組成物のいずれかを提供する。
【0254】
さらに、本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む本明細書に開示された組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、約1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%、26重量%、27重量%、28重量%、29重量%、30重量%、31重量%、32重量%、33重量%、34重量%、35重量%、36重量%、37重量%、38重量%、39重量%、40重量%、41重量%、42重量%、43重量%、44重量%、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、又は50重量%のダクチノマイシンをさらに含む、組成物のいずれかを提供する。
【0255】
本開示はまた、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む本明細書に開示された組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、約5重量%~約15重量%のダクチノマイシンさらに含む、組成物のいずれかを提供する。
【0256】
さらに本開示は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、液状結晶の形成が可能な液体界面活性剤として機能するリン脂質を含み、精製水、緩衝剤(例えばグリシン)、オイル成分(例えば、D,L-アルファ-トコフェロール)、及び界面活性剤(例えば、デオキシコール酸ナトリウム又はポリビニルアルコール)をさらに含む、組成物を提供する。これらの組成物のリン脂質の例として、以下に限定されないが、負に帯電したリン脂質を有するホスファチジルコリン(ホスホリポン(phospholipon)(登録商標)80)、ホスファチジルコリンに富むレシチン部分(ホスホリポン(登録商標)85G)、0.1%のアスコルビン酸パルミテートで安定化させたホスファチジルコリン(ホスホリポン(登録商標)90G)が挙げられる。(例えば、米国特許第7,713,440号、Particle Sciences Technical Brief,2012,Vol.4、Anderson,D.et al.CRC Concise Encyclopedia of Nanotechnology,Taylor&Francis Group,LLC,2016,5ページを参照されたく、これらの文献の全てが参照により本明細書に援用される)。
【0257】
一実施形態では、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む組成物であって、リン脂質を含む組成物は、当該技術分野で既知の任意の方法によって調製され得る。例えば、ブランクのリン脂質組成物(例えば、ホスホリポン(登録商標)90G、精製水、グリシン、D,L-アルファ-トコフェロール、ジカルボン酸ナトリウムを含むリン脂質組成物25mL)と、ダクチノマイシン(例えば、375mg)とを、数時間(例えば5時間)強力に攪拌することによって混合し、続いて0.45μmのCA(酢酸セルロース)フィルタを用いて濾過する。
【0258】
本開示は、少なくとも一つの薬学的に許容できる賦形剤又は担体と合わせてナノ粒子に封入されたダクチノマイシンを含む組成物を提供する。
【0259】
本明細書で使用される場合、「封入」、「封入された」などという用語は、ダクチノマイシン及び/又は他の薬剤若しくは作用剤がナノ粒子に(例えば、完全に又は部分的に)封入されている、該ナノ粒子と会合している、及び/又は該ナノ粒子に若しくは該ナノ粒子上に吸着している、ことを意味する。
【0260】
「組成物」とは、本明細書に記載のダクチノマイシンナノ粒子組成物を含有する、対象への投与に適した形態の任意の製剤のことである。一実施形態では、組成物は、バルク又は単位剤形の形態である。単位剤形は、例えば、カプセル剤、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器のシングルポンプ、又はバイアルを含めた様々な形態のいずれかである。組成物の単位用量における活性成分(例えば、開示された化合物、又はその塩、その水和物、その溶媒和物、若しくはその異性体の製剤)の量は、有効量であり、関与する個々の治療によって様々である。当業者は、患者の年齢及び状態に応じて投与量のルーチンを変えることが必要になる場合があることを認識するであろう。また、投与量は、投与経路に依存することになる。本開示の組成物は任意の経路で投与され得るが、投与の好ましい経路には、静脈内注射又は注入が含まれる。一実施形態では、活性化合物は、無菌状態下で、薬学的に許容できる担体と、かつ必要な任意の防腐剤、緩衝材、又は噴射剤と混合される。
【0261】
本明細書で使用される場合、語句「薬学的に許容できる」は、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織と接触して使用することに適し、合理的な利益/リスク比に見合った、化合物、物質、組成物、担体及び/又は剤形を意味する。
【0262】
「薬学的に許容できる賦形剤」は、概して安全、無毒性であり、生物学的にもその他の点でも有害ではない組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、ヒトの薬学的使用だけではなく、家畜への使用にも適用できる賦形剤を含む。「薬学的に許容できる賦形剤」は、本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、一つの賦形剤及び二つ以上の賦形剤の両方を含む。
【0263】
本開示はまた、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの治療有効量を含む本明細書に開示された組成物であって、一つ又は複数のポリマーを含み、ダクチノマイシンに加えて一つ又は複数の他の化学療法薬をさらに含む、組成物を提供する。他の化学療法薬は、ダクチノマイシンと合わせてナノ粒子に封入される場合があり、及び/又はダクチノマイシンと同じナノ粒子に封入されない場合もある。
【0264】
一実施形態では、他の化学療法薬として、以下に限定されないが、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシド、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ラメラリンD、テニポシド、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプチシン、アウリントリカルボン酸、HU-331)、白金系治療剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン)、アントラサイクリン系抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン)、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、バッカチンIII、10-デアセチルバッカチン)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ、エンザスタウリン、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、エベロリムス、シロリムス、テムシロリムス)、ヌクレオシド類似体(例えば、シタラビン、ゲムシタビン、カペシタビン)、FLT3阻害剤(例えば、Rydapt(登録商標)(ミドスタウリン)、ソラフェニブ、レスタウルチニブ、キザルチニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、及びギルテリチニブ)、並びに高メチル化阻害剤(例えば、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリン)が挙げられる。
【0265】
「抗酸化剤」という用語は、本明細書で使用される場合、以下に限定されないが、ビタミンC、レチノイン酸(例えば、全てのトランス-レチノイン酸)、アミホスチン、N-アセチルシステインを含む。
【0266】
「抗炎症剤」という用語は、本明細書で使用される場合、以下に限定されないが、ペントキシフィリン、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)(例えばイブプロフェン)を含む。
【0267】
「成長分化促進剤」という用語は、以下に限定されないが、グルタミンを含む。
【0268】
本開示のナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物は、予定投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例として、静脈内投与が挙げられる。静脈内用途に用いられる溶液又は懸濁液は、以下の成分を含み得る:注射用の水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール類、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒などの無菌希釈液;ベンジルアルコール又はメチルパラベン類などの抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤;酢酸塩類、クエン酸塩類、又はリン酸塩類などの緩衝液、及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張性を調節するための作用剤。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調節され得る。非経口製剤は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与バイアルに封入され得る。
【0269】
本開示のナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物は、それを必要とする対象に、化学療法剤治療に一般的に使用される一つ又は複数経路で投与され得る。例えば、本開示のナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物は、対象の血流に注射されるか、又は注入(例えば、静脈内に投与)され得る。選択される用量は、有効な治療となるのに十分であるが、許容できない副作用(例えば、粘膜炎)を引き起こすほど多くはならないようにすべきである。患者の病状の状態(例えば、癌及び前癌など)や健康状態は、好ましくは、治療の間、及び治療後の適正な期間の間に綿密にモニタすべきである。
【0270】
「治療有効量」という用語は、本明細書で使用される場合、同定された疾患若しくは症状を治療、寛解、若しくは予防するか、又は検出可能な治療効果又は抑制効果を示す、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物の量を表す。効果は、当該技術分野で既知の任意のアッセイ方法により検出することができる。対象に対しての厳密な有効量というのは、対象の体重、サイズ、健康状態;症状の性質及び程度;投与用に選択された治療剤又は治療剤の組み合わせによって決まることになる。所定の状況での治療有効量は、臨床医の技術及び判断の範囲内である常套的な実験によって算出され得る。一態様では、治療される疾患又は症状はMDSである。一態様では、治療される疾患又は症状は癌である。別の態様では、治療される疾患又は症状はAMLである。
【0271】
「休薬期間」という用語は、本明細書で使用される場合、MDS及び/又は癌の治療に対する、本開示のナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物のいずれかの投与と投与の間における時間の長さを表す。一態様では、休薬期間は、1週間、2週間、3週間、4週間、又はその間の任意の時間の長さである。例えば、治療される癌はAMLである。
【0272】
本開示の任意の組成物について、治療有効量は最初に、細胞培養アッセイ(例えば、腫瘍細胞のアッセイ)で、又は動物モデル(通常ラット、マウス、ウサギ、イヌ、又はブタ)で概算されてもよい。動物モデルは、適正な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用されてもよい。こうした情報は、その後、ヒトにおける有用な用量及び投与経路を決定するために使用することができる。治療/予防有効性及び毒性は、細胞培養又は実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効である用量)、及びLD50(集団の50%に致死的な用量)によって判定され得る。用量の有毒作用と治療作用との比は治療指数であり、比LD50/ED50として表すことができる。大きい治療指数を示す組成物が好ましい。投与量は、使用される剤形、患者の感受性、及び投与経路に応じて、この範囲内で様々となり得る。
【0273】
投与量及び投与は、活性剤の十分なレベルを提供するか、又は所望の効果を維持するように調整される。考慮に入れることができる因子には、病態、対象の全身健康状態、対象の年齢、重量、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、併用製剤、反応感受性、並びに治療法への耐性/反応が含まれる。長時間作用型の組成物は、特定の製剤の半減期及びクリアランス速度に応じて、3~4日毎、毎週、又は2週間に1回投与され得る。
【0274】
本開示のナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物は、従来の手段により、例えばMcCall,R.L.et al.J.Vis.Exp.(82),e51015に開示された方法で製造することができる。
【0275】
本明細書に開示されているナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物のいずれかが、以下の一般的な手順に従って調製され得る:
A.ダクチノマイシンの保存溶液(25mg/mL)を有機溶媒で調製する。
B.ポリマーの保存溶液(例えば、Resomer(登録商標)R 202S及びR 203HなどのPLAポリマーを用いる場合には25mg/mL、又はResomer(登録商標)D5050 DLG mPEG 5000(35重量%、PEG)及び100 DL mPEG 5000(25重量%、PEG)を用いる場合には50mg/mL)を有機溶媒で調製する。
C.ダクチノマイシン溶液をポリマー溶液に、ポリマーとAPIの量の比が10:1(w/w)に達するまで加える。
D.最終溶液を均一になるまでボルテックスする。
E.界面活性剤水溶液(水相)を調製する。
F.ダクチノマイシンナノ粒子乳濁液は、ポリマー/ダクチノマイシン溶液を少量の水相に加えることによって形成するが、その間、ポリマー溶液全体が添加されて有機相:水相の体積比が約1:7に到達するまで、水相を高速でボルテックスする。
G.ボルテックスを続けた後、混合物を超音波処理器に約0℃で移し、所望のナノ粒子サイズ(例えば、約100nm~約200nm)が得られるまで数分間超音波処理する。
H.界面活性剤溶液の攪拌バルク水相に注ぎ、有機溶媒が完全に蒸発するまで室温で強力に攪拌する。
【0276】
この手順の封入効率は約1~50%(例えば30%)である。例えば、この手順を100mgの遊離ダクチノマイシンを用いて行う場合には、約1~50mg(例えば、約30mg)のダクチノマイシンがナノ粒子に封入されるであろう。
【0277】
一実施形態では、本明細書に開示されているナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物のいずれかを、固化又は硬化したナノ粒子を遠心分離することによって精製し、上澄み液を除去し、ダクチノマイシンナノ粒子をddH2Oで洗浄した後に、数分間さらに遠心分離してペレット剤を得る。
【0278】
一実施形態では、本明細書に開示されているナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物のいずれかを、固化又は硬化したナノ粒子を遠心分離することによって遊離ダクチノマイシンを除去するように精製し、上澄み液を除去し、ダクチノマイシンナノ粒子をddH2Oで洗浄した後に、数分間さらに遠心分離してペレット剤を得る。
【0279】
一実施形態では、本明細書に開示されているナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物のいずれかを精製して、組成物に残留している遊離(封入されていない)ダクチノマイシンの95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上を除去することができる。したがって、本明細書に記載の組成物又は製剤のいずれかにおいて、遊離ダクチノマイシンの量は、ナノ粒子に封入されたダクチノマイシンの量の約5重量%未満(すなわち、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満)となる。一実施形態では、ペレット剤をddH2Oに再懸濁し、数分間遠心分離することによって、本明細書に開示されているナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物のいずれかから大きめのナノ粒子を除去し、その後、上澄み液を採取して、遠心分離フィルタを用いて濃縮し、14,000×rpmで追加の数分間遠心分離して遊離ダクチノマイシンを除去する。
【0280】
一実施形態では、この方法で調製されたナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物を、直接使用することができる。
【0281】
一実施形態では、本明細書に開示されているナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物のいずれも、最大数週間4℃で保管することができる。
【0282】
一実施形態では、本明細書に開示されているナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物を、保管する前にスクロース(10~30%)で凍結乾燥保護及び凍結保護することができ、また使用前に凍結乾燥することができる。当該技術分野で既知である任意の他の適した凍結保存剤が使用されてもよい。
【0283】
本明細書に開示されているナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物を充填した薬物を、HPLCを用いて評価した。
【0284】
ActDナノ粒子製剤の調製に関するさらなる指針は、実施例のセクションと、McCall,R.L.et al.J.Vis.Exp.(82),e51015とに記載されており、この文献はその全体が参照により援用される。
【0285】
本開示のナノ粒子に封入されたダクチノマイシン組成物は、より大きい規模で製造することができる。そのプロセスを簡易化するために、超音波処理器の替わりに高圧ホモジナイザを用いて、ナノ粒子を作製することもできる。さらに、遠心分離の替わりに接線流濾過/透析濾過を用いて、遊離ダクチノマイシンを除去し、ナノ粒子を濃縮することができる。また、保管の際には、凍結乾燥保護賦形剤(例えば、スクロース、トレハロース、及びマンニトールなど)をナノ粒子に加えることができ、その後、使用前に凍結乾燥することができる。
【0286】
注射用に適した組成物には、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌注射溶液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。静脈内投与用に適切な担体として、生理食塩水、注射用静菌水、クレモフォールELTM(BASF、ニュージャージー州パッシパニー)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は無菌であり、容易に注射針を通過する程度に流動性があるべきである。組成物は、製造及び保管条件下で安定でなくてはならず、かつ細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒又は分散媒であり得る。例えばレシチンなどのコーティングを使用することによって、分散物の場合には所要粒子サイズを維持することによって、また界面活性剤を使用することによって、適正な流動性を保持することができる。微生物の作用は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、及びチメロサールなどの種々の抗菌剤及び抗真菌剤によって阻止することができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物では、吸収を遅らせる作用剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを該組成物中に含めることによって、持続的な吸収が可能になる。
【0287】
無菌の注射用溶液は、適切な溶媒中のダクチノマイシンナノ粒子組成物の所要量と、上記に列挙した成分のうちの一つ又はその組み合わせとを混合し、必要に応じて濾過滅菌することによって、調製することができる。分散液は通例、活性ダクチノマイシン化合物を、基本分散媒と、上記に列挙した成分とは別の必要成分とを含む無菌媒体に混合することによって調製する。無菌注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合には、調製方法は、真空乾燥方式及び凍結乾燥方式であり、これは、活性成分の粉末、それに加えて予め滅菌濾過したその溶液から得られる任意の付加的な所望成分の粉末を産するものである。
【0288】
活性化合物(例えば、ダクチノマイシン、及びナノ粒子に封入されたダクチノマイシン)は、その化合物が身体から急速に排除されないように保護する、薬学的に許容できる担体(例えば、植込錠及びマイクロカプセル送達システムを含めた放出制御製剤など)を用いて調製することができる。生分解性の生体適合性ポリマーを用いることができ、これには例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物類、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル類、及びポリ乳酸などがある。こうした製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。また、原料は、主にAlza Corporation社、Evonik社、Nova Pharmaceuticals社からの市販品として入手することができる。
【0289】
経口組成物又は非経口組成物を投与単位の形態で製剤化することは、投与の簡易性と投与の均一性に特に有利である。本明細書で使用される場合、投与単位の形態とは、治療される対象に対して、単位投与量として適する物理的に分離した単位を表すものであり、各単位は、必要とされる医薬担体も含めて所望の治療効果を生じるように算出された所定の量の活性化合物を含んでいる。本開示の投与単位の形態についての仕様は、活性化合物の固有の特性と、達成すべき特定の治療効果とによって決定され、またこれらに直接左右されるものである。
【0290】
治療用途において、本開示に従って使用されるダクチノマイシンナノ粒子組成物の投与量は、選択投与量に影響を及ぼす因子の中でも特に、受容患者の年齢、体重、及び臨床症状、並びに療法を行う臨床医又は開業医の経験及び判断によって異なる。一般的に、投与量は、腫瘍の増殖を遅くし、好ましくは退縮させ、また好ましくはMDS及び/又は癌の完全退縮をもたらすのに十分であるべきである。投与量は、単回用量、分割用量、又は持続用量で、1日当たり約1μg/kg~1日当たり約30μg/kgの範囲であり得る(この投与量は、患者の体重(kg)、体表面積(m2)、年齢(歳)に応じて調整され得る)。医薬品の有効量は、臨床医又は他の専門的な観察者によって確認されるような客観的に認識できる改善をもたらす量である。例えば、患者における腫瘍の退縮は、腫瘍の直径を基準にして測定することができる。腫瘍の直径の減少は退縮を示している。退縮はまた、治療が完了した後に腫瘍が再発しないことによっても示される。本明細書で使用される場合、「有効投与量」という用語は、対象又は細胞において所望の生物学的作用をもたらす活性化合物の量を表す。
【0291】
組成物を、投与の説明書と合わせて、容器、パック、又はディスペンサーに入れることができる。
【0292】
ダクチノマイシンは、塩を形成することができる。これらの塩の形態の全ても、本開示の範囲内に考慮される。
【0293】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容できる塩」は、親化合物がその酸性塩又は塩基性塩を作製することによって修飾された、本開示の化合物の誘導体を表す。薬学的に許容できる塩の例として、以下に限定されないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸塩又は有機酸塩、カルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩又は有機塩などが挙げられる。薬学的に許容できる塩には、例えば、非毒性の無機酸又は有機酸から形成された親化合物の一般的な非毒性塩又は第四アンモニウム塩が含まれる。例えば、こうした一般的な非毒性塩として、以下に限定されないが、2-アセトキシ安息香酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2-エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバム酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロ酸、プロピオン酸、サリチル酸、ステアリン酸、スバセチン酸(subacetic)、コハク酸、スルファミン酸、スルファニル酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、及び一般的に存在するアミン酸(例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなど)から選択される無機酸及び有機酸から得られる塩が挙げられる。
【0294】
薬学的に許容できる塩の他の例として、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタリンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]-オクト-2-エン-1-カルボン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、及びムコン酸などが挙げられる。本開示はまた、親化合物に含まれる酸性プロトンが、金属イオン(例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、又はアルミニウムイオン)で置換されているか、又は有機塩基(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミン、及びメグルミンなど)と配位結合している場合に形成される塩を包含する。
【0295】
薬学的に許容できる塩への全ての言及が、同一の塩の、本明細書で定義されている溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形)を含むことを理解すべきである。
【0296】
ダクチノマイシンは、エステルとして、例えば、薬学的に許容できるエステルとして調製されてもよい。例えば、化合物のカルボン酸官能基が、その対応するエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル又は他のエステル)に変換され得る。さらに、化合物のアルコール基が、その対応するエステル(例えば、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、又は他のエステル)に変換され得る。
【0297】
ダクチノマイシンは、プロドラッグとして、例えば、薬学的に許容できるプロドラッグとして調製されてもよい。「プロ-ドラッグ」及び「プロドラッグ」という用語は、本明細書で交換可能に用いられ、活性親薬剤をインビボで放出する任意の化合物を表す。プロドラッグは、医薬品の望ましい種々の質(例えば、溶解度、バイオアベイラビリティ、生産性など)を高めるものである。したがって、本開示の化合物は、プロドラッグの形態で送達され得る。それゆえに、本開示は、本特許請求される化合物のプロドラッグと、それを送達する方法と、それを含む組成物とに及ぶように意図されている。「プロドラッグ」は、かかるプロドラッグを対象に投与した際に、本開示の活性親薬剤をインビボで放出する任意の共有結合した担体を含むことが意図されている。本開示のプロドラッグは、化合物に含まれる官能基を修飾することによって調製され、この修飾は、常套的な操作又はインビボのいずれかで切り離されて親化合物をもたらす。プロドラッグは、本開示の化合物であって、ヒドロキシ基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボキシ基、又はカルボニル基が、インビボで切り離され得る任意の基に結合して、それぞれ遊離ヒドロキシル基、遊離アミノ基、遊離スルフヒドリル基、遊離カルボキシ基、又は遊離カルボニル基を形成する、化合物を含む。
【0298】
プロドラッグの例として、以下に限定されないが、本開示の化合物における、ヒドロキシ官能基のエステル類(例えば、酢酸塩、ジアルキルアミノ酢酸塩類、ギ酸塩類、リン酸塩類、硫酸塩類、及び安息香酸塩の誘導体)及びカルバメート類(例えば、N,N-ジメチルアミノカルボニル)、カルボキシル官能基のエステル類(例えば、エチルエステル類、モルホリノエタノールエステル類)、アミノ官能基のN-アシル誘導体(例えば、N-アセチル)、N-マンニッヒ塩基類、シッフ塩基類及びエナミノン類、並びにケトン官能基及びアルデヒド官能基のオキシム類、アセタール類、ケタール類、エノールエステル類などが挙げられる。Bundegaard,H.,Design of Prodrugs,p1-92,Elsevier,New York-Oxford(1985)を参照されたい。
【0299】
本開示の組成物は、経口的、経鼻的、経皮的、経肺的、吸入的、頬側、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、経直腸的、胸膜内、髄腔内、及び非経口的に投与され得る。一実施形態において、化合物は経口的に投与される。当業者は、特定の投与経路の優位性を認識するであろう。
【0300】
経口投与用に製剤化された本開示の組成物は、伝統的な薬学的方法を用いて顆粒状にされた物質を含むか、又は薬学的に許容できる賦形剤(例えば、微結晶性セルロース、マニトール、ソルビトール、デンプン、イオン交換樹脂など)に吸着され、錠剤に押し固められているか、若しくはカプセル剤に充填された、組成物を含む。錠剤又はカプセル剤は、小腸又は結腸に送達されるように、任意選択的に腸溶コーティングをされていてもよい。
【0301】
本出願に開示されたダクチノマイシンのナノ粒子製剤は、腸粘膜を通過する粒子取り込み経路によって、ダクチノマイシンの経口バイオアベイラビリティを改善することができる。
【0302】
また、本出願のナノ粒子組成物を、放出制御錠剤又はマトリックスに組み込んで、ダクチノマイシンの放出をさらに調整しつつ、有効性を維持することができる。
【0303】
あるいは、本出願のナノ粒子組成物は、押出球形化を用いて製造されるか、又は流動層ワースターコーティングを用いてノンパレイル(non-pareil)上に薬剤層形成された、ペレット剤又はビーズとして製剤化されてもよい。ビーズを、放出制御ポリマー又は腸溶ポリマーでコーティングして、薬剤放出をさらに調節してもよい。
【0304】
ダクチノマイシンビーズを、他の化学療法薬のビーズと所定の比で組み合わせ、カプセル剤に装填して有効的な投与を行うこともできる。
【0305】
該化合物、又はその薬学的に許容できる塩、そのエステル、若しくはそのプロドラッグは、経口的、経鼻的、経皮的、経肺的、吸入的、頬側、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、経直腸的、胸膜内、髄腔内、及び非経口的に投与される。一実施形態において、化合物は経口的に投与される。当業者は、特定の投与経路の優位性を認識するであろう。
【0306】
全身投与は、経粘膜的又は経皮的な手段によって行われ得る。経粘膜的投与又は経皮的投与に対しては、浸透させるバリアに適切な浸透剤を製剤に用いる。こうした浸透剤は、当該技術分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜的投与に対しては、界面活性剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体などがある。経粘膜的投与は、鼻内噴霧又は座薬の使用により実施することができる。経皮的投与に対しては、当該技術分野で一般的に知られるように、活性化合物を、軟膏、塗剤、ゲル、又はクリームに製剤化する。
【0307】
無菌の注射用溶液は、適切な溶媒中の活性化合物の所要量と、上記に列挙した成分のうちの一つ又はその組み合わせとを混合し、必要に応じて濾過滅菌することによって、調製することができる。分散液は通例、活性化合物を、基本分散媒と、上記に列挙した成分とは別の必要成分とを含む無菌媒体に混合することによって調製する。無菌注射用溶液の調製用の無菌粉末の場合には、調製方法は、真空乾燥方式及び凍結乾燥方式であり、これは、活性成分の粉末、それに加えて予め滅菌濾過したその溶液から得られる任意の付加的な所望成分の粉末を産するものである。
【0308】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤又は食用薬学的に許容できる担体を含む。それらを、ゼラチンカプセル内に封入するか、錠剤に圧縮することができる。治療的経口投与の目的のために、活性化合物を賦形剤と混合し、錠剤、トローチ剤、又はカプセル剤の形態で用いることができる。口腔用組成物はまた、口腔洗浄剤として使用するために流動性担体を用いて調製してもよく、この場合、流動性担体中の化合物は、経口的に塗布され、濯いで吐き出されるか、又は飲み込まれる。医薬適合性のある結合剤、及び/又は補助物質を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸薬、カプセル剤、トローチ剤などには、任意の以下の成分、又は類似した性質の化合物:結合剤、例えば微晶質セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン;賦形剤、例えばデンプン若しくはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、プリモゲル(Primogel)、若しくはコーンスターチ;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム若しくはステロテ(Sterotes);流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素;甘味剤、例えばスクロース若しくはサッカリン;又はフレーバー剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、若しくはオレンジフレーバー、を含むことができる。
【0309】
吸入による投与に対しては、化合物は、加圧容器、又はディスペンサー(適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素などのガス)を含む)、又は噴霧器からのエアロゾル噴霧の形態で送達される。
【0310】
本化合物を用いる投与レジメンは、患者の型、種、年齢、体重、性別、病状;治療する症状の重症度;投与経路;患者の腎機能及び肝機能;使用される特定の化合物又はその塩などを含めた種々の因子に従って選択される。通常の知識を有する医師又は獣医は、その症状の進行を防ぐか、阻止するか、又は抑えるのに必要な薬剤の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0311】
投与レジメンは、本開示の化合物の毎日の投与(例えば24時間毎)であり得る。投与レジメンは、連日の、例えば、少なくとも連続2日間、少なくとも連続3日間、少なくとも連続4日間、少なくとも連続5日間、少なくとも連続6日間、少なくとも連続7日間の毎日の投与であり得る。投与は、1日に2回以上、例えば、1日に(24時間当たり)2回、3回、又は4回であり得る。投与レジメンは、毎日の投与の後に、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、又は少なくとも6日の投与しない日を設けた投与であり得る。例えば、本開示の化合物は、24時間に少なくとも1回投与された後、少なくとも6日間投与されず、その後に必要とする対象に投与される。
【0312】
本開示の開示された化合物の製剤化及び投与の技術は、Remington:the Science and Practice of Pharmacy,19th edition,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1995)に記載されている。ある実施形態では、本明細書に記載の化合物及びその薬学的に許容できる塩は、薬学的に許容できる担体又は希釈剤と組み合わせて医薬製剤に用いられる。好適な薬学的に許容できる担体には、不活性な固体充填剤又は希釈剤、及び無菌水溶液又は有機溶液が含まれる。化合物は、こうした組成物中に、本明細書に記載の範囲内の望ましい投与量を与えるのに十分な量で含まれることになる。
併用療法
【0313】
本開示のダクチノマイシン組成物は、一つ又は複数の他の化学療法剤、例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、又は高メチル化阻害剤と合わせて投与され得る。
【0314】
一態様では、ダクチノマイシンナノ粒子と他の化学療法剤とが同時に投与され得る。
【0315】
一態様では、ダクチノマイシンと他の化学療法剤とは、この両方が同じナノ粒子に封入された状態で、同時に投与され得る。
【0316】
一態様では、ダクチノマイシンと他の化学療法剤とは、同時に又は逐次的に投与され得るが、異なるナノ粒子に封入された状態である。
【0317】
一態様では、ダクチノマイシンと他の化学療法剤とは、ダクチノマイシンがナノ粒子に封入され、他の化学療法剤がナノ粒子に封入されない状態で、同時に又は逐次的に投与され得る。
【0318】
一態様では、ダクチノマイシンナノ粒子と他の化学療法剤とは、別々に、すなわち逐次的に投与され得る。例えば、ダクチノマイシンナノ粒子は、他の化学療法剤の前に投与されてもよい。あるいは、ダクチノマイシンナノ粒子は、他の化学療法剤の後に投与されてもよい。
【0319】
一態様では、ダクチノマイシンナノ粒子と他の化学療法剤の投与の間隔は、分単位、時間単位、又は日単位であり得る。例えば、ダクチノマイシンナノ粒子と他の化学療法剤の投与の間隔は、5分、15分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、1日、1.5日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、又は30日である。一態様では、ダクチノマイシンナノ粒子と他の化学療法剤の投与の間隔は1か月よりも長い。
【0320】
トポイソメラーゼ阻害剤の例としては、以下に限定されないが、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ラメラリンD、エトポシド、テニポシド、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプチシン、アウリントリカルボン酸、及びHU-331が挙げられる。
【0321】
白金系治療剤の例としては、以下に限定されないが、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、ピコプラチン、及びサトラプラチンが挙げられる。
【0322】
アントラサイクリン系抗生物質の例としては、以下に限定されないが、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、又はイダルビシンが挙げられる。
【0323】
タキサンの例としては、以下に限定されないが、パクリタキセル、ドセタキセル、バッカチンIII、及び10-デアセチルバッカチンが挙げられる。
【0324】
チロシンキナーゼ阻害剤の例としては、以下に限定されないが、イマチニブ、エンザスタウリン、ダサチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、ニロチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、エベロリムス、シロリムス、及びテムシロリムスが挙げられる。
【0325】
ヌクレオシド類似体の例としては、以下に限定されないが、シタラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、ジダノシン、ビダラビン、BCX4430、エムトリシタビン、ラミブジン、ザルシタビン、アバカビル、アシクロビル、エンテカビル、スタブジン、テルビブジン、ジドブジン、イドクスウリジン、及びトリフルリジンが挙げられる。
【0326】
FLT3阻害剤の例としては、以下に限定されないが、Rydapt(登録商標)(ミドスタウリン)、ソラフェニブ、レスタウルチニブ、キザルチニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、及びギルテリチニブが挙げられる。(Fathi,A.T.et al.Eur.J.Haematol.2017,98:330-336)。
【0327】
高メチル化阻害剤の例としては、以下に限定されないが、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンが挙げられる。(Flotho,C.et al.Leukemia(2009)23,1019-1028及びFigueroa,M.E.et al.Blood(2009)114(16),3448-3458)。
【0328】
本開示のダクチノマイシン組成物は、FLT3阻害剤と共に投与され得る。臨床試験の結果、治療を受けた患者の約60%でダクチノマイシンの有効性が示された。サブセット分析の結果、ダクチノマイシンに反応しない者は、FLT3変異に対して陽性であり、これは試験したAML患者の約30%に見られている。FLT3変異には2種類あり、受容体の膜近傍ドメイン近傍の遺伝子内縦列重複(ITD)と、チロシンキナーゼドメインの活性化ループの点変異(TKD変異)とがある。TKD変異は、患者の約7%を占める一方、ITD変異は、小児科及びMDSを有するとして予め分類されたAML患者ではあまり見られない。(Fathi,A.T.et al.Eur.J.Haematol.2017,98:330-336)。
【0329】
本開示のダクチノマイシン組成物とFLT3阻害剤(例えば、Rydapt(登録商標)(ミドスタウリン)、ソラフェニブ、レスタウルチニブ、キザルチニブ、ポナチニブ、クレノラニブ、及びギルテリチニブ)との組み合わせは、AML患者の治療にさらに高い有効性をもたらす場合がある。
【0330】
本開示のダクチノマイシン組成物は、高メチル化阻害剤と共に投与され得る。高メチル化阻害剤の例としては、以下に限定されないが、アザシチジン、デシタビン、及びゼブラリンが挙げられる。(Flotho,C.et al.Leukemia(2009)23,1019-1028及びFigueroa,M.E.et al.Blood(2009)114(16),3448-3458)。
【0331】
ダクチノマイシン、すなわちナノ粒子に封入されたダクチノマイシンに加えて、一つ又は複数の他の化学療法薬(例えば、トポイソメラーゼ阻害剤、白金系治療剤、アントラサイクリン系抗生物質、タキサン、チロシンキナーゼ阻害剤、ヌクレオシド類似体、FLT3阻害剤、及び高メチル化阻害剤)の投与を含む方法のいずれかに関して、他の化学療法薬の適正な治療有効量を決定することは、当業者の通常の技術水準の範囲内である。これらの追加の化学療法薬の任意の一般的に用いられる治療有効量が使用され得る。
【0332】
本開示の方法は、追加の作用剤、例えば、以下に限定されないが、レチノイン酸(例として、全てのトランス-レチノイン酸)、バルプロ酸、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、p53安定剤、これらの任意の組み合わせなどのさらなる投与と組み合わされてもよい。
【0333】
一態様では、ダクチノマイシンナノ粒子と追加の作用剤とが別々に、すなわち逐次的に投与され得る。例えば、ダクチノマイシンナノ粒子は、追加の作用剤の前に投与されてもよい。あるいは、ダクチノマイシンナノ粒子は、追加の作用剤の後に投与されてもよい。
【0334】
一態様では、ダクチノマイシンナノ粒子と追加の作用剤の投与の間隔は、分単位、時間単位、又は日単位であり得る。例えば、ダクチノマイシンナノ粒子と他の化学療法剤の投与の間隔は、5分、15分、30分、45分、1時間、1.5時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、12時間、18時間、1日、1.5日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、又は30日である。一態様では、ダクチノマイシンナノ粒子と追加の作用剤の投与の間隔は1か月よりも長い。
【0335】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤には、以下に限定されないが、クラスI阻害剤(HDAC-1、HDAC-2、HDAC-3、及びHDAC-8)、クラスII阻害剤(HDAC-4、HDAC-5、HDAC-6、HDAC-7、HDAC-9、及びHDAC-10)、クラスII阻害剤(サーチュイン)、及びクラスIV阻害剤(HDAC-11)が含まれる。例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸誘導体(例えばバルプロ酸マグネシウム)、モセチノスタット、アベキシノスタット、エンチノスタット、SB939、レスミノスタット、ギビノスタット、キシノスタット、HBI-8000、ケベトリン、CUDC-101、AR-42、CHR-2845、CHR-3996、4SC-202、CG200745、ACY-1215、ME-344、又はスルホラファンである。
【0336】
プロテアソーム阻害剤としては、以下に限定されないが、ラクタシスチン、ジスルフィラム、エピガロカテキン-3-ガラート、マリゾミブ(サリノスポラミドA)、オプロゾミブ、デランゾミブ、エポキソミシン、MG132、ベータ-ヒドロキシ・ベータ-酪酸メチル、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、及びイキサゾミブが挙げられる。
【0337】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤としては、以下に限定されないが、ティピファニブ、ロナファーニブ、ケトメリン酸A、クラバリン酸、FPT阻害剤I(sc-221625)、FPT阻害剤II(sc-221626)、FPT阻害剤III(sc-221627)、FPTアーゼ阻害剤I(sc-221632)、FPTアーゼ阻害剤II(sc-221633)、FTI-277トリフルオロ酢酸塩、CGTI-297、L-744,832二塩酸塩、マニュマイシンA、ギンゲロール、グリオトキシン、及びアルファ-ヒドロキシルファルネシルホスホン酸が挙げられる。
【0338】
p53安定剤としては、以下に限定されないが、Tenovin-1、BI2536、CP-31398、RbBP6アイソフォーム3、CBS9106(Chen,L et al.Cell Cycle 2016,15(6):840-849;Journal of Clinical Oncology,2009 ASCO Annual Meeting Proceedings(Post-Meeting Edition).Vol 27,No 15S,2009:8601;Dlamini,Z.et al.Proceedings:AACR 101st Annual Meeting 2010 Apr 17-21,2010)が挙げられる。
【0339】
「約」という用語は、他の文脈において本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、列挙された値(例えば、量、分子量、用量、温度、時間、割合など)の±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、又は±1%を表す。
【0340】
本明細書で用いられる全ての割合及び比は、特に明記しない限り、重量基準である。本開示の他の特徴及び利点は、種々の実施例から明らかになる。提供される実施例は、本開示の実施に有益な種々の構成要素及び方法を示している。実施例は、特許請求される発明を制限するものではない。本開示に基づいて、当業者は、本開示の実施に有益な他の構成要素及び方法を特定し、使用することができる。
【実施例】
【0341】
本明細書に記載された開示がさらに効果的に理解されるように、実施例を以下に提供する。これらの実施例は、単に例示を目的とするものであり、本開示を何ら制限するものと解釈されるべきではない。
実施例1:ダクチノマイシンの薬物動態
【0342】
図1A及び
図1Bはそれぞれ、ダクチノマイシンの経時的な全身濃度を示すグラフである。これらのグラフのデータは、ダクチノマイシン1mg/m
2(27μg/kg)を投与した16歳~53歳の21人の患者から取得したものである。これらのデータによると、ダクチノマイシンの大部分が、対象への投与後の最初の1時間に高濃度で放出されている。初期の高放出は、ダクチノマイシン投与に関連する毒性及び有害事象の一因となり得る。
【0343】
図2は、C
max(ng/mL)(グラフA)とAUC
0-6時間(mg/L・分)(グラフB)とをダクチノマイシン投与量(mg/m
2)の関数として示す一対のグラフである。30歳よりも若い対象へのIV投与は1mg/m
2(27μg/kg)であり、30歳以上の対象へのIV投与は1.5mg/m
2(40μg/kg)である。AUC
0-6時間が大きい対象は、一層の有害事象を示した。有害事象を示した患者のAUC
0-6時間(4mg/L・分)は、有害事象を示していない対象のそれ(2.67mg/L・分)よりも1.46倍大きかった。
実施例2:アクチノマイシンD封入ナノ粒子の調製
【0344】
アクチノマイシンDをジクロロメタン(DCM)に溶解して25mg/mLの保存溶液(「API溶液」)とした。Resomer R 202S及びR 203HをDCM中にて同じ濃度で調製し、Resomer D5050 DLG mPEG 5000(35重量%、PEG)及び100 DL mPEG 5000(25重量%、PEG)をDCM中にて50mg/mLで調製した。API溶液をポリマー溶液に、ポリマーとAPIの量の比が10:1(w/w)に達するまで加えた。最終溶液を、使用前に均一になるまでボルテックスした。2%ポリ(ビニルアルコール)(PVA)(分子量9,000~10,000Da、80%加水分解)を界面活性剤を用いて水相として調製した。ナノ粒子乳濁液を作製するために、ポリマー/アクチノマイシンD溶液を少量の水相に、水相を高速でボルテックスしながら滴加した。ポリマー溶液全体を加えた後に(有機相:水相の体積比が約1:7)、形成された乳濁液をさらに20秒間十分ボルテックスした。混合物を直ちに超音波処理器(Fisher Scientific Sonic Dismembrator Model 500)に移した。乳濁液を氷水浴(0℃)に浸漬し、所望の粒子サイズ(200nm未満)が得られるまで5~8分間超音波処理(65%振幅、20秒入、8秒切)した。ナノ粒子サイズをMalvern Nano-ZSゼータサイザーを用いて定期的に調べた。続いて、乳濁液を攪拌バルク水相(2%PVA)溶液に注ぎ、DCMが完全に蒸発するまで室温で少なくとも3時間攪拌した(500rpm)。
【0345】
ナノ粒子の精製については、固化又は硬化したナノ粒子を固定角ローター(Eppendorf Centrifuge 5415C)を用いて14,000×rpmで30分間遠心分離した。上澄み液を廃棄し、ナノ粒子をddH2Oで洗浄し、14,000×rpmでさらに30分間遠心分離した。大きい粒子を取り除くために、ペレットをddH2Oに再懸濁し、3,500×rpmで5分間遠心分離した。続いて、採取した上澄み液をAmicon(登録商標)Ultra Centrifugalフィルタ(50kDカットオフ)で濃縮し、14,000×rpmで10分間遠心分離して遊離薬剤を除去した。精製したナノ粒子を最大数週間4℃で保管するか、又はスクロース(10~30%)で凍結乾燥保護及び凍結保護した後に凍結乾燥して、新鮮な状態で使用することができる。薬剤負荷をHPLCを用いて評価した。
【0346】
ActDナノ粒子製剤の調製に関するさらなる指針は、McCall,R.L.et al.J.Vis.Exp.(82),e51015に記載されており、この文献はその全体が参照により援用される。
実施例3:代表的なActDナノ粒子製剤
【0347】
以下のActDナノ粒子製剤を前述の実施例に従って調製した。
【0348】
【0349】
例えば、Resomer(登録商標)R 203 Hを含むダクチノマイシン封入ナノ粒子は、平均サイズが176.9nmのナノ粒子を用いており、純度が96.3%であると算出された。(
図15)。ゼータ電池:-23.63±0.49。
【0350】
【0351】
例えば、Resomer(登録商標)100 DL mPEG 5000(25%mPEG)を含むダクチノマイシン封入ナノ粒子は、平均サイズが143.5nmのナノ粒子を用いており、純度が96.7%であると算出された。(
図16)。ゼータ電池:-45.93±2.54。
【0352】
【0353】
上述の二つのダクチノマイシン封入ナノ粒子の例(Resomer(登録商標)R 203 H(
図17)及びResomer(登録商標)100 DL mPEG 5000(25%mPEG)(
図18))を、200nmの界面活性剤を含まない酢酸セルロース膜フィルタに通した。回収率:79.3%(Resomer(登録商標)R 203 H);55.2%(Resomer(登録商標)100 DL mPEG 5000(25%mPEG))。
実施例4:ActDナノ粒子製剤の安定性
【0354】
上述のダクチノマイシン封入ナノ粒子の4種全ては、精製水中にて、-20℃、4℃、及び25℃で1か月間安定であることがわかった。
【0355】
例えば、Resomer(登録商標)R 202 Sを含むダクチノマイシン封入ナノ粒子は、これら全ての条件下で94%を超える純度を1か月間保持した。ゼータ電池:-11.90±2.18mV(-20℃で1か月)、-5.77±0.98mV(4℃で1か月)、-14.37±0.47mV(25℃/60RHで1か月)。保管条件:30%スクロース(-20℃)、精製水(4℃及び25℃/60RH)。(
図19)
【0356】
【0357】
例えば、Resomer(登録商標)R 203 Hを含むダクチノマイシン封入ナノ粒子は、これら全ての条件下で95%を超える純度を1か月間保持した。ゼータ電池:-23.63±0.49mV(T
0)、-0.59±3.07mV(-20℃で1か月)、-9.06±1.37mV(4℃で1か月)、-13.76±0.51mV(25℃/60RHで1か月)。保管条件:30%スクロース(-20℃)、精製水(4℃及び25℃/60RH)。(20℃:
図20、4℃及び25℃/60RH:
図21)
【0358】
【0359】
例えば、Resomer(登録商標)100DL mPEG 5000(25%)を含むダクチノマイシン封入ナノ粒子は、これら全ての条件下で95%を超える純度を1か月間保持した。ゼータ電池:-45.93±2.54mV(T
0)、-8.74±0.56mV(-20℃で1か月)、-11.07±0.23mV(4℃で1か月)、-9.89±0.71mV(25℃/60RHで1か月)。保管条件:30%スクロース(-20℃)、精製水(4℃及び25℃/60RH)。(-20℃:
図22、4℃及び25℃/60RH:
図23)。
【0360】
【0361】
例えば、Resomer(登録商標)5050DLG mPEG 5000(35%)を含むダクチノマイシン封入ナノ粒子は、これら全ての条件下で94%を超える純度を1か月間保持した。ゼータ電池:-45.93±2.54mV(T0)、-3.83±0.61mV(-20℃で1か月)、-9.74±0.95mV(4℃で1か月)、-17.63±1.06mV(25℃/60RHで1か月)。保管条件:30%スクロース(-20℃)、精製水(4℃及び25℃/60RH)。
【0362】
【0363】
【0364】
例えば、ペグ化されたポリD,Lラクチドを含むダクチノマイシン封入ナノ粒子は、これら全ての条件下で95%を超える純度を1か月間保持した。ゼータ電池:-11.07±0.23mV(4℃で1か月)、-9.89±0.71mV(25℃/60RHで1か月)。(
図26)。
【0365】
【0366】
実施例5:ダクチノマイシン封入ナノ粒子のインビトロ放出-mPEG化ナノ粒子と非mPEG化ナノ粒子の比較
【0367】
4種のプロトタイプであるダクチノマイシン封入ナノ粒子組成物をインビトロで3~10日持続放出させた。
【0368】
非PEG化ポリマー(R203H)は、mPEG化(100 DL-PEG及び50:50 DLG PEG)ポリマーに比べて、12日間にわたってダクチノマイシンのゆっくりとした持続放出を示した。
【0369】
インビボ状況下では、非mPEG化ポリマーから放出したAPIは、mPEG化ポリマーよりも速い速度で除去された。(
図27)。
【0370】
別の実験では、mPEG化ナノ粒子及び非mPEG化ナノ粒子におけるダクチノマイシン封入ナノ粒子のインビトロ放出を、4℃で2か月保管した後に評価した。(
図28)。
【0371】
4℃で2か月保管した後に、PEG化ポリD,Lラクチドナノ粒子からのダクチノマイシンのゆっくりとした持続放出を観察した(A)。PEG化DLGナノ粒子(B)からのダクチノマイシン放出は非製剤化APIで観察される放出と同様であり、これは、ナノ粒子が4℃で2か月経つと安定ではないことを示唆している。
実施例6:遊離アクチノマイシンDとmPEG化ナノ粒子及び非mPEG化ナノ粒子に封入されたアクチノマイシンDとのラットにおける忍容性
【0372】
遊離アクチノマイシンDと製剤化されたアクチノマイシンD(0.5mg/kg)とをIV投与した。
【0373】
体重の有意な減少が遊離API投与ラットで見られ、治療7日後にわたって徐々に回復した。
【0374】
比較的に少ない体重減少が、PEG化ポリD,Lラクチド(DL-PEG25%)及び非PEG化ポリD,Lラクチド(R203H)に封入されたダクチノマイシンを投与した動物で示された。
【0375】
7日目で通常レベルに戻った遊離アクチノマイシンと比較すると、DL-PEG(25%)投与ラットでは体重の有意な増加が4日目に観測された。
【0376】
また、R203H投与ラットは7日目で体重の増加を示した。
【0377】
体循環における被処理ダクチノマイシン濃度の薬物動態評価:PEG化ポリマーに対応するダクチノマイシンの総量(遊離及び封入されたもの)を算出するためにメタノールとギ酸の混合液に抽出した全血漿サンプルのCMAXは、非製剤化ポリマー又は非PEG化ポリマーで観察された値よりも有意に高かった。PEG化ポリマーに封入されたダクチノマイシンの十分なレベルが、6時間経った抽出でも依然として循環していたが、これは非PEG化ポリマー又は非製剤化APIとは対照的である。
【0378】
また別の実験では、ラットに、単一用量(0.5mg/kg)の遊離Act D及び製剤化Act DをIV(静脈内)注射経由で投与した。
【0379】
体重の有意な減少が遊離ダクチノマイシンの投与後にラットで見られ、治療7日後にわたって徐々に回復した。(
図29)
【0380】
PEG化ポリD,Lラクチドナノ粒子(DL-PEG25%)及び非PEG化ポリD,Lラクチドナノ粒子(R203H)を投与したラットでは、比較的に少ない体重減少を示した。(
図29)
【0381】
7日目で通常レベルに戻った遊離ダクチノマイシンと比較すると、DL-PEG(25%)投与ラットでは体重の有意な増加が4日目に観測された。(
図29)
【0382】
PEG化ポリマーに封入されたAct DのC
MAXは、非製剤化API及び遊離APIよりも有意に高い。(
図30)
【0383】
非製剤化APIのCMAX観測値の方が低いが、これは体重に及ぼす有害作用と関連している。
【0384】
投与6時間後、PEG化ポリマーに封入された十分なAct Dが、非PEG化ポリマーに封入されたAct Dに比べて、血漿内に保持された。(
図30)
【0385】
DL-PEG25%ナノ粒子は、最小限の有害作用で高い全身APIレベルを示している。
実施例7:遊離アクチノマイシンDとmPEG化ナノ粒子及び非mPEG化ナノ粒子に封入されたアクチノマイシンDとのラットにおける薬物動態
【0386】
ラットに非製剤化アクチノマイシンD及び製剤化アクチノマイシンDの単一用量(0.3mg/kg)をIV注射により投与した。(
図31)
【0387】
所定の時間に処理した血漿サンプルを、体循環におけるAPIの総量(遊離及び封入されたもの)を算出するためにメタノール及びギ酸の混合液に抽出した。
【0388】
PEG化ポリマー製剤化API(DL-PEG25%及びDLG-PEG35%)は、非PEG化ポリマー(R202S及びR203H)で観測されたAPIに比べて、最大48時間まで体循環に存在した。
【0389】
PKプロファイルは、ラット忍容性の検討(前出の実施例)で観測されたプロファイルと類似している。
【0390】
4種の製剤化されたプロトタイプのうち、DL-PEG(25%)は、最小限の有害作用で最も良好なPKプロファイルを示している。
【0391】
これらの実験から、遊離アクチノマイシンDとナノ粒子製剤のヒト等価用量(HED)及びCmax値を以下に示すように算出した:
【表9】
実施例8:ラットにおける遊離アクチノマイシンD又はナノ粒子封入アクチノマイシンDの単一用量静脈内投与
【0392】
ラットにおいて静脈内投与で投与された場合の、遊離アクチノマイシンD(すなわちナノ粒子封入ではない)と、アクチノマイシンDナノ粒子(NP-ActD)製剤を含む4種の組成物との忍容性の対比。
【0393】
投与時に6~8週齢で150~175gである雌のスプラーグドーリーラット(HSd:SD)をこれらの検討に用いた。これは、投与後14日間観察した単一用量試験である。試験の1日目に、各動物は、以下の表の試験デザインに従って、1mL/kgの固定容量中の900μg/kgの遊離アクチノマイシンD又はNP-ActD製剤(900μg/kgの活性物質)を受けた。
【0394】
【0395】
日々の臨床観察、死亡率、体重、及び摂食量といったパラメータをモニタした。投与後14日目に完全剖検を行い、その際に器官の重量及び肉眼的所見を調べることになる。器官を将来の組織学的検査のために保存し、アクチノマイシンD/NP-ActDの蓄積を測定するために、肺、肝臓、膵臓、脾臓、脳、及び腎臓を液体窒素で凍結する。
【0396】
1日目の投与後に薬物動態評価を行うために、投与0.083時間後、0.25時間後、0.5時間後、1時間後、2時間後、6時間後、及び24時間後に血液を採取した。血清サンプルを臨床化学検査用に採取し、全血サンプルを血液学的検査用に採取する。
【0397】
体重分析(
図32)。Act D及びNP-ActD(900μg/kg)の静脈内投与の後、遊離Act Dを投与した動物は体重が一様に減少し、投与7日後でも回復できなかった。対照的に、4種のNP-ActD製剤を投与された動物には、薬剤に関連した体重減少が見られなかった。したがって、遊離ActDを投与された動物とNP-ActDを投与された動物の間で、体重減少の程度に明らかな違いが観察された。
【0398】
遊離Act D群の動物では、投与3日後に、立毛、活性の低下、鼻孔での出血、及び背を丸めた姿勢などの毒性を示し、これらは経時的に悪化した。
【0399】
一方、ナノ粒子-Act D製剤を投与した動物は、何ら毒性の徴候もなく正常であるように見えた。しかしながら、投与後7日目には、NP-ActD R202S製剤及びNP-ActD DLG-PEG 35%製剤を投与した各群の2~3匹の動物に注射部位の痂皮形成とわずかな活性低下が見られたが、重篤ではなく進行性でもなかった。
【0400】
死亡率(
図33)。投与後6日目に、遊離ActD群の1匹の動物が瀕死の状態となり、安楽死させられた(疼痛と苦痛を緩和するためにIACUC規則に従って行った)。投与後7日目に、遊離Act D群のさらに2匹の動物を、極めて悪い健康状態のために安楽死させなければならなかった。
【0401】
9日目、遊離ActD群のさらなる2匹の動物を、悪い健康状態と健康不全のために安楽死させた。
【0402】
したがって、遊離ActD群の投与後13日後、6分の1の動物のみが残ったが、立毛及び変色尿などの毒性の徴候を継続して示した。
【0403】
ActD群の投与13日後、1匹の動物だけが残り、依然として悪い健康状態を示した(進行中の研究)。したがって、ActD群における死亡率は約80%である。対照的に、NP-ActD製剤群の全動物は、注射部位の炎症や立毛などの最小限の毒性を示す傾向を伴って生存し(100%生存率)、これはナノ粒子から遊離ActDがゆっくりと放出されることに起因すると考えられている。また、体重の増加には全く影響を与えなかった。遊離アクチノマイシンDはインビボで毒性があるので、これらの結果は、ナノ粒子ActD製剤が宿主毒性を低減する方法として有効であることを示している。
【0404】
本出願は、その精神又は基本的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具現化され得る。したがって、前述の実施形態は、本明細書に記載の用途に限定されることなく、あらゆる点において例示的なものであるとみなされるべきである。それゆえに、本出願の適用範囲は、前述の説明よりもむしろ特許請求の範囲によって示されており、その特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内に入る全ての変更が本明細書に包含されるように意図されている。