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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】スロットル制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02D 9/02 20060101AFI20241202BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
F02D9/02 361A
F02D9/02 361J
F02D9/02 321
F02D41/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022057172
(22)【出願日】2022-03-30
(65)【公開番号】P2023148893
(43)【公開日】2023-10-13
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 洋行
(72)【発明者】
【氏名】武井 智也
(72)【発明者】
【氏名】川住 岳児
(72)【発明者】
【氏名】松永 拓也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 陽一
(72)【発明者】
【氏名】出口 寿明
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109079(JP,A)
【文献】特開2010-255541(JP,A)
【文献】特開2008-248774(JP,A)
【文献】特開2006-342769(JP,A)
【文献】特表2019-517953(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012208765(DE,A1)
【文献】特開2004-183558(JP,A)
【文献】特開2010-249078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 9/00
F02D 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットル操作子(21)と、多気筒のエンジン(11)と、前記エンジン(11)が有する各気筒への空気量を調整する複数のスロットル弁(12)とを備えると共に、各気筒への燃料制御と点火制御を行う車両(10)に対し、エンジン回転数、及びスロットル操作子(21)の開度を含む車体情報を取得し、前記車体情報に基づいて前記スロットル弁(12)を制御するコントローラ(70)とを備えるスロットル制御システムにおいて、
前記複数のスロットル弁(12)は、第1系統及び第2系統を含む複数の系統のいずれかに割り振られ、
前記コントローラ(70)は、エンジン回転数、及びスロットル操作子(21)の開度の情報に基づいて気筒の燃焼安定性を判断し、気筒の燃焼が不安定な状況であると判断した場合、前記車両(10)の目標トルクを得る開度の組み合わせのうち、少なくとも第1系統及び第2系統については、前記第1系統のスロットル弁(TH1)と前記第2系統のスロットル弁(TH2)とが異なる開度であって、前記第1系統のスロットル弁(TH1)の開度を、前記第2系統のスロットル弁(TH2)の開度よりも大きい開度に制御し、
前記状況を除く他の状況の場合、前記第1系統及び第2系統のスロットル弁(TH1,TH2)の開度を、同じ開度に制御し、
前記コントローラ(70)は、前記第1系統のスロットル弁(TH1)を制御するためのメインECU(71)と、前記第2系統のスロットル弁(TH2)を制御するためのサブECU(72)を備え、前記メインECU(71)は、前記目標トルクを、前記複数の系統に分配する分配トルクを特定し、前記第1系統に分配する分配トルクを実現するように前記第1系統のスロットル弁(TH1)の開度を制御するとともに、前記第2系統に分配する分配トルクを前記サブECU(72)に送信する処理を行い、前記サブECU(72)は、受信した、前記第2系統に分配する分配トルクを実現するように、前記第2系統のスロットル弁(TH2)の開度を制御することを特徴とするスロットル制御システム。
【請求項2】
前記エンジン(11)の全ての気筒への燃料制御や点火制御は、前記メインECU(71)によって行われることを特徴とする請求項1に記載のスロットル制御システム。
【請求項3】
前記サブECU(72)は、前記複数のスロットル弁(12)をモータ駆動するスロットルバイワイヤ方式に関する故障情報のうちの第2系統側の故障情報を前記メインECU(71)に送信し、
前記メインECU(71)は、前記第2系統側の故障情報を受信した場合、その故障情報を報知する処理を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスロットル制御システム。
【請求項4】
記不安定な状況であると判断した場合、前記メインECU(71)は、前記第1系統に分配する分配トルクを、前記第2系統に分配する分配トルクよりも多くすることを特徴とする請求項1に記載のスロットル制御システム。
【請求項5】
前記目標トルクに応じて、前記複数の系統に分配する分配トルクを規定するトルク分配用マップデータを記憶し、
前記メインECU(71)は、前記トルク分配用マップデータに基づいて、前記複数の系統に分配する分配トルクを特定することを特徴とする請求項に記載のスロットル制御システム。
【請求項6】
前記エンジン(11)は、多気筒の等間隔爆発エンジンであることを特徴とする請求項1に記載のスロットル制御システム。
【請求項7】
前記気筒の燃焼が不安定な状況は、エンジン回転数が予め定めた低回転領域、及び前記複数のスロットル弁(12)が予め定めた低開度領域の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載のスロットル制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットル制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
多気筒のエンジンのスロットル駆動方式として、複数のスロットル弁をモータ駆動するスロットルバイワイヤ方式(TBW方式)や、ケーブルで駆動させるスロットル弁とモータ駆動のスロットル弁との組み合わせにより、複数のスロットル弁のうち少なくとも1つを他とは独立して開閉駆動する方式などが知られている(例えば特許文献1)。これにより、スロットル弁の動作をECUによって適宜に制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-273596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、各気筒の燃焼安定性を判断する指標の一つとして、燃焼COV(Coefficient Of Variance)が知られている。燃焼COVは、最も安定性の悪い失火から最も安定性の良い完全燃焼までの度合を示す指数であり、その値が小さいほど燃焼の安定性が高いことを示している。燃焼COVは、燃焼安定指数、燃焼変動率、熱発生率の変動率、及び単にCOVと称される場合もある。以下、燃焼COVを、COVと表記する。
エンジンが低負荷のときにCOVが高いことがあり、期待するトルクが得られないことがある。例えば、限られた排気量で高出力を得るために吸気通路を大径化したスポーツ車両の場合、エンジン回転数が低いときやスロットル開度が小さいときに十分な吸気量が得られず、期待するトルクが得られないことがある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、多気筒のエンジンにおいて、期待するトルクを得やすくしたスロットル制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
スロットル操作子と、多気筒のエンジンと、前記エンジンが有する各気筒への空気量を調整する複数のスロットル弁とを備えると共に、各気筒への燃料制御と点火制御を行う車両に対し、エンジン回転数、及びスロットル操作子の開度を含む車体情報を取得し、前記車体情報に基づいて前記スロットル弁を制御するコントローラとを備えるスロットル制御システムにおいて、前記複数のスロットル弁は、第1系統及び第2系統を含む複数の系統のいずれかに割り振られ、前記コントローラは、エンジン回転数、及びスロットル操作子)の開度の情報に基づいて気筒の燃焼安定性を判断し、気筒の燃焼が不安定な状況であると判断した場合、前記車両の目標トルクを得る開度の組み合わせのうち、少なくとも第1系統及び第2系統については、前記第1系統のスロットル弁と前記第2系統のスロットル弁とが異なる開度であって、前記第1系統のスロットル弁の開度を、前記第2系統のスロットル弁の開度よりも大きい開度に制御し、前記状況を除く他の状況の場合、前記第1系統及び第2系統のスロットル弁の開度を、同じ開度に制御し、前記コントローラ(70)は、前記第1系統のスロットル弁(TH1)を制御するためのメインECU(71)と、前記第2系統のスロットル弁(TH2)を制御するためのサブECU(72)を備え、前記メインECU(71)は、前記目標トルクを、前記複数の系統に分配する分配トルクを特定し、前記第1系統に分配する分配トルクを実現するように前記第1系統のスロットル弁(TH1)の開度を制御するとともに、前記第2系統に分配する分配トルクを前記サブECU(72)に送信する処理を行い、前記サブECU(72)は、受信した、前記第2系統に分配する分配トルクを実現するように、前記第2系統のスロットル弁(TH2)の開度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
多気筒のエンジンにおいて、期待するトルクを得やすくしたスロットル制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のスロットル制御システムの実施形態に係る車両制御システムを示す図である。
図2】自動二輪車を側方から見た場合のコントローラの位置を示す図である。
図3】自動二輪車を上方から見た場合のコントローラの位置を示す図である。
図4】コントローラの機能構成を示すブロック図である。
図5】トルク分配用データによって規定される目標トルクと分配トルクの分配比率の一例を示した図である。
図6】自動二輪車のエンジンのCOV特性の一例を示す図である。
図7】トルク分配の説明に供する図である。
図8】スロットル開度とエンジン出力の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のスロットル制御システムの実施形態に係る車両制御システム1を示す図である。
車両制御システム1は、自動二輪車10に搭載されるシステムである。
自動二輪車10は、多気筒のエンジン11と、各気筒への空気量をそれぞれ調整する複数のスロットル弁12(12A~12D)を有するスロットルボディ13を備えると共に、各気筒への燃料供給や点火を行うためのインジェクタ14やイグニッション(点火装置とも称される)15を備える。エンジン11が有するクランク軸の回転は、変速機16を介して駆動輪である後輪46(図2)に伝達される。
図1中、符号18は、自動二輪車10の制動力を調整するABS(Antilock Brake System)モジュレータであり、符号19は警告ユニットである。
【0010】
車両制御システム1は、自動二輪車10の各部を制御するコントローラ70を備えている。なお、自動二輪車10の各部の構成は特に限定されるものではなく、例えば、エンジン11の気筒数、スロットル弁12の数、及びエンジン11以外の構成についても特に限定されるものではない。以下の説明では、エンジン11が四気筒であり、スロットル弁12が4個であり、変速機16が有段の変速機の場合を例に説明する。
【0011】
エンジン11は、等間隔(等角度間隔に相当)で各気筒が爆発する等間隔爆発エンジンである。各気筒の爆発順は予め規定されており、各気筒を進行方向の左側から順に1番、2番、3番、4番と表記した場合、例えば、1-4-2-3、又は1-2-4-3の順で爆発する。なお、爆発順は上記に限定しなくてもよい。
【0012】
自動二輪車10は、乗員であるライダーが操作するスロットルグリップ21と、スロットルグリップ21の開度THGを検出するスロットルセンサ22と、スロットルセンサ22以外のセンサからなるセンサ群23を有している。センサ群23は、自動二輪車10の車体情報を検出するセンサであり、車速センサ24、回転数センサ25、慣性センサ26、外気温センサ27、及びギアポジションセンサ28、及び車輪速センサ28S等を含んでいる。
【0013】
車速センサ24は、自動二輪車10の車速を検出するセンサであり、回転数センサ25は、エンジン回転数NEを検出するセンサである。慣性センサ26は、IMU(Inertial Measurement Unit)とも称され、前後左右の加速度と、三軸の角速度等を検知する。三軸の角速度はローリングの角速度を含み、この角速度に基づき自動二輪車10のロール角(バンク角とも言う)、換言すると車体左右への傾斜角を算出できる。外気温センサ27は、自動二輪車10の外気温度(例えば吸気温度)を検出するセンサである。ギアポジションセンサ28は、変速機16の変速段を検出するセンサである。車輪速センサ28Sは、前輪の回転速度(車輪速に相当)を検出する車輪速センサと、後輪の回転速度(車輪速に相当)を検出する車輪速センサとを含んでいる。この自動二輪車10では、車輪速センサ28S、車速センサ24及び慣性センサ26等の検出結果を適宜に用いることによって、前後輪のスリップ率が算出される。なお、前後輪のスリップ率を算出(検出)する構成や算出方法は、公知の構成や算出方法を広く適用可能である。
【0014】
この自動二輪車10においては、複数のスロットル弁12を2系統に分別し、各系統のスロットル弁12を独立した駆動モータ30A,30Bでそれぞれ駆動する2モータTBW方式を採用している。以下、複数のスロットル弁12を区別して表記する場合、進行方向の左側から順に、12A,12B,12C,12Dとそれぞれ表記する。
本構成では、左側2つのスロットル弁12A,12Bを第1系統に割り振り、第1系統のスロットル弁TH1として、一方の駆動モータ30A(以下、第1駆動モータ30Aと言う)が開閉制御する。また、右側2つのスロットル弁12C,12Dを第2系統に割り振り、第2系統のスロットル弁TH2として、他方の駆動モータ30B(以下、第2駆動モータ30Bと言う)が開閉制御する。
スロットルボディ13には、第1系統のスロットル弁TH1の開度を検出する開度センサ29Aと、第2系統のスロットル弁TH2の開度を検出する開度センサ29Bが設けられている。
【0015】
コントローラ70は、2つのECU71,72及び記憶部73等からなり、スロットルセンサ22、センサ群23、及び開度センサ29A,29B等を介して自動二輪車10の各部の情報を取得し、これら情報に基づいて各気筒への燃料制御、点火制御、及びスロットル制御を行う。つまり、コントローラ70は、燃料制御装置、点火制御装置、及びスロットル制御装置として機能する。
【0016】
この自動二輪車10では、第1系統のスロットル弁TH1のスロットル制御と、第2系統のスロットル弁TH2のスロットル制御とを異なるECU71,72で行うようにしている。本構成では、一方のECU71(以下、メインECU71と言う)が、第1系統のスロットル弁TH1のスロットル制御と、全ての気筒への燃料制御及び点火制御等を行う。また、他方のECU72(以下、サブECU72と言う)が、第2系統のスロットル弁TH2のスロットル制御を行う。
【0017】
メインECU71は、車内通信用の通信線L1を介してABSモジュレータ18及び警告ユニット19等と通信可能である。メインECU71とサブECU72とは、上記通信線L1とは別系統の通信線L2を介して通信可能に接続されている。
なお、ECUの数は2個に限定されず、1個でもよいし、3個以上でもよい。1個の場合は配線数を少なくでき、コンパクトかつシンプルに配置し易くなる。これに対し、複数のECUに分散するメリットとして、1個の場合よりも小型で低コストのECUを使うことができる。
【0018】
記憶部73は、公知の記憶デバイスを広く適用できる。記憶部73には、コントローラ70が使用する各種のデータが記憶され、例えば、ライダーの要求トルクを特定するための要求トルク特定用データD1、要求トルク等を考慮して目標トルクを特定するための目標トルク特定用データD2、及び、目標トルクを、第1系統と第2系統とに分配するためのトルク分配用データD3等が記憶されている。
【0019】
図2は、自動二輪車10を側方から見た場合のコントローラ70の位置を示す図である。図3は、自動二輪車10を上方から見た場合のコントローラ70の位置を示す図である。なお、説明中の前後左右、及び上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体を基準とした方向である。また、図2等に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示している。
自動二輪車10の車体フレーム41は、車体前部から斜め下方に延びるフロントフレーム42と、フロントフレーム42から後方に延びるリアフレーム43(図3)とを備える。フロントフレーム42の上方に燃料タンク44が支持され、フロントフレーム42の下方にエンジン11が支持される。フロントフレーム42には、エンジン11の後方にピボット軸45を介して、後輪46を支持するスイングアーム47が支持される。リアフレーム43の上方にはシート48が支持される。また、図2及び図3中の符号49は、乗員が足を載せるステップである。
【0020】
図2に示すように、車両側面視で、燃料タンク44の下方、シート48の下方、かつ、後輪46よりも上方に形成されるスペースを利用して、ECU71,72が配置される。コントローラ70は、水平に近い角度に傾斜した略矩形形状に形成される。例えば、コントローラ70は、ECU71,72等を実装した実装基板、及び、実装基板を収容する矩形形状の筐体で構成される。コントローラ70の後上方のスペース、つまり、燃料タンク44の後方、シート48の下方、かつ、後輪46よりも上方に形成されるスペースに、慣性センサ26が配置される。
図3に示すように、車両上面視で、コントローラ70には、左右に間隔を空けてメインECU71、及びサブECU72が配置される。
【0021】
図2及び図3に示すように、コントローラ70とシート48との間に空くスペースに、慣性センサ26が配置される。慣性センサ26は、コントローラ70の一部に上下方向で重なる位置に配置されるので、コントローラ70及び慣性センサを前後方向にコンパクトに配置できる。コントローラ70及び慣性センサ26の上方は、シート48等が位置するので、上方からの雨水等がコントローラ70及び慣性センサ26に付着する事態を適切に防止できる。
【0022】
図3に示すように、コントローラ70及び慣性センサ26の後方、かつ、シート48の下方には、ABSモジュレータ18及びバッテリー50が配置される。つまり、コントローラ70、慣性センサ26、ABSモジュレータ、及びバッテリー等からなる電装品が集約して配置され、配線長を短くできると共に、シート48によって上方を覆うことができる。また、シート48を取り外すことによってこれら電装品へのアクセスが容易となる。
なお、上記図2及び図3に示すコントローラ70及び慣性センサ26等の配置は一例であり、各部品の配置は適宜に変更してもよい。
【0023】
図4は、コントローラ70の機能構成を示すブロック図である。
コントローラ70において、要求トルク特定部75は、エンジン回転数NE、とスロットルグリップ21の開度THG(以下、グリップ開度THGと表記する)に基づき、要求トルクTRQ_RQを特定する。要求トルクTRQ_RQは、ライダーが要求しているとみなせるトルクであり、記憶部73に記憶された要求トルク特定用データD1を利用することによって、エンジン回転数NE及びグリップ開度THGに基づいて特定される。
【0024】
トルクマネージャ76は、要求トルクTRQ_RQと各種アプリケーションからの要求とに基づいて、目標トルクTRQ_Tを特定する。各種アプリケーションは、自動二輪車10の状態や動作モードを含み、例えば、トラクションコントロール、変速、及びクルーズコントロールを実現するアプリケーションである。例えば、トルクマネージャ76は、要求トルクTRQ_RQと各種アプリケーションからの要求トルクを比較し、実現すべきトルクを、目標トルクTRQ_Tとして特定する。この場合、記憶部73に記憶された目標トルク特定用データD2を利用することによって、目標トルクTRQ_Tが特定される。
なお、要求トルクTRQ_RQや目標トルクTRQ_Tを特定する処理、要求トルク特定用データD1、及び、目標トルク特定用データD2については、公知の処理やデータを広く適用可能である。
【0025】
コントローラ70において、トルク分配部77は、目標トルクTRQ_Tを第1及び第2系統のそれぞれに分配する分配トルクTRQ_TA,TRQ_TBを特定する。この場合、記憶部73に記憶されたトルク分配用データD3を利用することによって、分配トルクTRQ_TA,TRQ_TBが特定される。
トルク分配用データD3は、各系統で実現するべきトルクの比率を特定するデータであり、図4に例示するような、分配トルクTRQ_TA,TRQ_TBの比率を規定するマップデータである。マップデータを用いることにより、簡易に分配トルクTRQ_TA,TRQ_TBの比率を特定し、特定した比率に基づいて、目標トルクTRQ_Tから分配トルクTRQ_TA,TRQ_TBを特定できる。
【0026】
コントローラ70において、第1開度算出部78Aは、分配トルクTRQ_TAとエンジン回転数NEに基づき、分配トルクTRQ_TAに相当するトルクを得るのに必要な第1系統のスロットル弁TH1の開度TH_Aを算出する。
また、第2開度算出部78Bは、分配トルクTRQ_TBとエンジン回転数NEに基づき、分配トルクTRQ_TBに相当するトルクを得るのに必要な第2系統のスロットル弁TH2の開度TH_Bを算出する。
【0027】
コントローラ70において、第1系統制御部79Aは、第1開度算出部78Aが算出した開度TH_Aとなるように、第1駆動モータ30Aを制御する。また、第2系統制御部79Bは、第2開度算出部78Bが算出した開度TH_Bとなるように、第2駆動モータ30Bを制御する。この場合、第1系統制御部79A及び第2系統制御部79Bは、予め規定されたアイドル分の開度を考慮して、第1駆動モータ30A及び第2駆動モータ30Bを制御することによって、分配トルクTRQ_TA,TRQ_TBが適切に得られるように、各系統のスロットル弁TH1,TH2の開度を制御する。
【0028】
図4に示すように、第2開度算出部78B及び第2系統制御部79Bは、サブECU72によって実現され、残りの構成はメインECU71によって実現される。より具体的には、メインECU71は、両系統の分配トルクTRQ_TA,TRQ_TBを特定し、第2系統の分配トルクTRQ_TBをメインECU71がサブECU72に送信する処理を行う。さらに、メインECU71は、分配トルクTRQ_TAを実現するように、第1系統のスロットル弁TH1を制御する。一方、サブECU72は、受信した分配トルクTRQ_TBを実現するように、第2系統のスロットル弁TH2を制御する。
【0029】
サブECU72は、第2系統のスロットル弁TH2の開度や、第2系統側のTBWの故障情報をメインECU71に送信する機能も有している。メインECU71は、第2系統側のTBWの故障情報を受信した場合、又は、第2系統側のTBWの故障情報を検出した場合、警告ユニット19を利用して、その故障情報を表示又は音声等で報知する処理を行う。また、メインECU71は、第1系統側のTBWの故障情報を受信した場合、又は、第1系統側のTBWの故障情報を検出した場合、警告ユニット19を利用して、その故障情報を表示又は音声等で報知する処理を行う。これによって、メインECU71を介して、第1系統及び2系統側の不具合を外部に報知することができる。
なお、警告ユニット19には、各種の報知デバイスを広く適用可能である。
【0030】
エンジン11への燃料制御や点火制御は、メインECU71によって行われる。このため、スロットルセンサ22やセンサ群23の検出結果はメインECU71に入力され、サブECU72には入力されない。燃料制御や点火制御については公知の技術を適用可能である。
本構成において、各系統のスロットル弁TH1,TH2の開度が異なる場合が存在するため、各気筒に供給される空気量も異なる事態が生じる。メインECU71は、各気筒への空気量に合わせて燃料制御を実行する。
【0031】
次いで、トルク分配部77のトルク分配について説明する。
トルク分配用データD3は、エンジン11が低負荷領域の場合に相当する所定状況の場合に、第1系統のスロットル弁TH1と第2系統のスロットル弁TH2とが異なる開度であって、第1系統のスロットル弁TH1の開度を、第2系統のスロットル弁TH2の開度よりも燃焼安定性を高める開度にするデータに形成されている。
【0032】
図5は、トルク分配用データD3によって規定される目標トルクTRQ_Tと、分配トルクTRQ_TA,TRQ_TBの分配比率の一例を示した図である。この図に示すように、目標トルクTRQ_Tが低いほど、分配トルクTRQ_TAの比率が高くなり、分配トルクTRQ_TBの比率が低くなる。図5の例では、目標トルクTRQ_Tの閾値TRQ_TK以上では、目標トルクTRQ_Tが等分割となる場合を示している。
【0033】
目標トルクTRQ_Tの分配比率は、エンジン11のCOV特性を考慮して設定することが好ましい。
図6は、自動二輪車10のエンジン11のCOV特性の一例を示す図である。
図6中のTHはスロットル弁12の開度である。また、図6において、COVが最も小さい領域を領域R1で示し、領域R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9の順でCOVが大きくなる場合を示している。つまり、燃焼が最も安定する領域は領域R1であり、領域R2,R3,R4,R5,R6,R7,R8,R9の順で燃焼が不安定となる。
【0034】
図6に示すように、エンジン11が低負荷領域(エンジン回転数NEが低い場合)にCOVが領域R3以上(R3からR9)の範囲となっている。
図6中の符号COV_Kは、期待するトルクが得られる燃焼安定性の閾値の一例を示しており、領域R2及びR3の境界位置の値である。この閾値COV_K以下の場合、つまり、領域R1及びR2の場合、燃焼安定性が高く、期待するトルクが得やすくなる。
【0035】
本構成のコントローラ70は、トルク分配用データD3に従って目標トルクTRQ_Tを分配することによって、閾値COV_Kを基準にして、エンジン11が低負荷領域の場合に、少なくとも第1系統に対応する気筒が領域R1,R2のいずれかの範囲となるように分配トルクTRQ_TAを設定するように構成されている。
例えば、図7には、ある目標トルクTRQ_Tを同じスロットル開度THで得た場合の位置を位置P0で示している。位置P0は、COVが閾値COV_K以上であり、つまり、燃焼安定性が低く、期待するトルクを得にくい燃焼状態である。
【0036】
本構成では、コントローラ70がトルク分配用データD3に従って目標トルクTRQ_Tを分配することによって、図7に示すように、少なくとも第1系統に対応する気筒が位置PAに対応する燃焼状態となるように第1系統のスロットル開度THが設定される。位置PAは、領域R1の範囲にあるので、燃焼状態が良好となり、期待するトルクが得られる。
一方、第2系統のスロットル開度THは、位置PBに対応する燃焼状態となる値に設定される。位置PBは、領域R3の範囲にあるものの、第1系統のスロットル開度THによって期待するトルクが得られるので、位置P0の場合と比べて安定したトルクが得られる。これにより、自動二輪車10のコントロール性が向上する。
【0037】
また、コントローラ70は、燃焼安定性の閾値COV_Kを基準にして、エンジン11が高負荷領域の場合、全てのスロットル弁12を同じ開度にする。この場合、燃焼安定性が高いので、全ての気筒で安定したトルクが得られる。
図8は、スロットル開度THGとエンジン出力(Power)の関係を示す図であり、所定のエンジン回転数NEの場合を示している。図8中、符号fAは、トルク分配した場合の第1系統に対応する気筒で得られるエンジン出力の特性曲線を示している。また、符号fBは、トルク分配した場合の第2系統に対応する気筒によって得られるエンジン出力の特性曲線を示している。また、符号fCは、トルク分配しない場合の各系統に対応する気筒で得られるエンジン出力の特性曲線を示している。また、符号fDは、トルク分配した場合のトータルのエンジン出力の特性曲線を示している。
【0038】
特性曲線fCで示すように、トルク分配しない場合、グリップ開度THGが16degまでは、COVが閾値COV_Kを超える不安定な領域(図5に示す領域R3~R9の範囲に相当)を使用している。
これに対し、トルク分配することによって、特性曲線fAで示すように、グリップ開度THGが5deg以上から、COVが閾値COV_K未満の安定した領域(図5に示す領域R1~R2の範囲に相当)を使用していることが判る。このことから、グリップ開度THGが16deg以下の領域RGで燃焼が安定し、期待するトルクを得やすくなることが判る。
【0039】
このように、本構成では、トルク分配しない場合に燃焼が不安定となる低負荷領域において、トルク分配により燃焼が安定化し、期待するトルクを安定して得やすくなる。これにより、自動二輪車10のコントロール性が向上する。
しかも、トルク分配により、第1系統に対応する気筒で期待するトルクが得られる一方、第2系統に対応する気筒では期待するトルクが得られない場合が生じるので、系統が異なる気筒の爆発間隔でトルクが変動する。このようなトルク変動によって、トラクション性能や加速感の向上を期待できると共に、四気筒の等間隔爆発エンジンでありながら、二気筒エンジンを疑似したトルク変動を実現することができる。トラクション性能が向上することによって、旋回性の向上も期待できる。
【0040】
図8の例では、エンジン11がより低負荷の領域(グリップ開度THGが0deg~6deg)に、コントローラ70が、第2系統に対応する気筒への燃料供給をカットした場合を示している(図8中の「Fuel cut」)。これによって、第2系統に対応する気筒への燃料カットによって、第2系統に対応する気筒でのトルク変動を回避できる。これにより、燃焼不安定を原因とするトルク変動を抑制し、トラクション性能、加速感及び旋回性の向上を図り、自動二輪車10のコントロール性をより向上させ易くなる。
【0041】
以上説明したように、複数のスロットル弁12は、第1系統及び第2系統のいずれかに割り振られ、コントローラ70は、エンジン回転数NE、及びグリップ開度THGの少なくともいずれかが、トルク分配しないと燃焼安定性に不利な所定状況である場合、トルク分配を行う。このトルク分配によって、自動二輪車10の目標トルクTRQ_Tを得る開度の組み合わせのうち、第1系統のスロットル弁TH1と第2系統のスロットル弁TH2とが異なる開度であって、第1系統のスロットル弁TH1の開度を、第2系統のスロットル弁TH2の開度よりも燃焼安定性を高める開度に制御される。
これにより、少なくとも第1系統に対応する気筒の燃焼安定性を高めて期待するトルクを得やすくなり、自動二輪車10のコントロール性が向上する。
【0042】
所定状況は、本構成では、トルク分配しないとCOVが閾値COV_K以上となる状況である。但し、所定状況は、これに限定されず、気筒の燃焼安定性に不利な状況を適宜に適用可能である。
【0043】
なお、スロットルグリップ21は、本発明の「スロットル操作子」に相当する。また、複数のスロットル弁12を第1系統及び第2系統のいずれか一方に割り振る場合を例示したが、これに限定されない。例えば、複数のスロットル弁12を3以上の系統に振り分け、各系統毎に駆動モータで駆動するTBW方式を採用してもよい。この場合、トルク分配によって、自動二輪車10の目標トルクTRQ_Tを得る開度の組み合わせのうち、少なくとも第1系統及び第2系統については、第1系統のスロットル弁TH1と第2系統のスロットル弁TH2とが異なる開度であって、第1系統のスロットル弁TH1の開度を、第2系統のスロットル弁TH2の開度よりも燃焼安定性を高める開度に制御する。これにより、期待するトルクを得やすくなり、自動二輪車10のコントロール性が向上する。
【0044】
また、所定状況の場合、トルク分配部77は、第1系統に分配する分配トルクを、第2系統に分配する分配トルクよりも多くするので、分配トルクに応じた吸気量を得るために第1系統のスロットル弁TH1の開度が大きくなり、スロットル弁TH1が低開度であることに起因する燃焼が不安定な状態を抑制できる。したがって、第1系統に対応する気筒の燃焼安定性を高め、期待するトルクを得やすくなる。
【0045】
また、目標トルクTRQ_Tに応じて、複数の系統に分配する分配トルクを規定するマップデータからなるトルク分配用データD3を記憶し、トルク分配部77は、トルク分配用データD3に基づいて、複数の系統に分配する分配トルクを特定する。これにより、トルク分配用データD3からなるマップデータを目標トルクTRQ_Tを得るのに好適なデータにしておくことで、適切なトルクを出力でき、自動二輪車10のコントロール性が向上する。
なお、トルク分配用データD3は、本発明の「トルク分配用マップデータ」に相当する。
【0046】
また、エンジン11は、多気筒の等間隔爆発エンジンである。等間隔爆発エンジンで、第1系統のスロットル弁TH1と第2系統のスロットル弁TH2とが異なる開度に制御される。この構成によれば、等間隔で爆発しながら各爆発で得られるトルクが変動する出力特性が得られ、トラクション性能や加速感の向上に有利である。
【0047】
また、所定状況は、エンジン回転数NEが予め定めた低回転領域、及び複数のスロットル弁12が予め定めた低開度領域の少なくともいずれかを含んでいる。これにより、エンジン回転数NEが低回転であったり、スロットル弁12が低開度であったりした場合の自動二輪車10のコントロール性が向上する。例えば、高いエンジン出力を得るために吸気通路を大口径化した車両の場合、本発明を適用することで、エンジン回転数NEが低回転であったり、スロットル弁12が低開度であったりした場合の車両のコントロール性を効果的に高めることできる。
【0048】
また、コントローラ70は、所定状況を除く他の状況の場合、第1系統及び第2系統のスロットル弁TH1,TH2を同じ開度に制御する。これにより、期待するトルクが得られる場合には、第1系統及び第2系統に属するスロットル弁TH1,TH2の開度を異なせる制御を不要にできる。
【0049】
また、コントローラ70は、少なくとも第1系統のスロットル弁TH1を制御するためのメインECU71と、少なくとも第2系統のスロットル弁TH2を制御するためのサブECU72とをそれぞれ備える。複数のスロットル弁12の制御を複数のECU71,72に分散させることで、1個のECUの場合よりも小型で低コストのECUを使うことができ、コスト低減が可能になる場合がある。
【0050】
なお、上述の実施形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、細部等の構成は適宜に変更してもよい。例えば、TBWに通信を利用する場合、スロットル弁12を動かすまでに遅れが生じ、この遅れが応答性に不利となる。また、スロットル弁12を動かした後にスロットル弁12の位置がどこにあるかの情報が返ってくる場合にも時間を要するので、応答性に不利となる。TBWの応答性を向上させるために、各TBWの温度特性、加速度、将来与える(要求)駆動力、現在のスロットル開度位置等から将来のスロットル開度を推定する自己回帰モデルを利用してもよい。
【0051】
また、本発明を、等間隔爆発エンジンのスロットル制御システムに適用する場合を説明したが、本発明を、等間隔爆発エンジン以外のエンジンのスロットル制御システムに適用してもよい。
また、本発明を、図2等に示す自動二輪車10のスロットル制御システムに適用する場合を説明したが、これに限定されず、本発明を、自動二輪車以外も含む任意の鞍乗り型車両、四輪車も含む任意の車両のスロットル制御システムに適用してもよい。
【0052】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0053】
(構成1)スロットル操作子と、多気筒のエンジンと、前記エンジンが有する各気筒への空気量を調整する複数のスロットル弁とを備えると共に、各気筒への燃料制御と点火制御を行う車両に対し、エンジン回転数、及びスロットル操作子の開度を含む車体情報を取得し、前記車体情報に基づいて前記スロットル弁を制御するコントローラとを備えるスロットル制御システムにおいて、前記複数のスロットル弁は、第1系統及び第2系統を含む複数の系統のいずれかに割り振られ、前記コントローラは、エンジン回転数、及びスロットル操作子の開度の少なくともいずれかが気筒の燃焼安定性に不利な所定状況の場合、前記車両の目標トルクを得る開度の組み合わせのうち、少なくとも第1系統及び第2系統については、前記第1系統のスロットル弁と前記第2系統のスロットル弁とが異なる開度であって、前記第1系統のスロットル弁の開度を、前記第2系統のスロットル弁の開度よりも燃焼安定性を高める開度に制御することを特徴とするスロットル制御システム。
この構成によれば、多気筒のエンジンにおいて、少なくとも第1系統に対応する気筒の燃焼安定性を高めて期待するトルクを得やすくなり、車両のコントロール性が向上する。
【0054】
(構成2)前記コントローラは、前記目標トルクを、前記複数の系統に分配するトルク分配部を有し、前記所定状況の場合、前記トルク分配部は、前記第1系統に分配する分配トルクを、前記第2系統に分配する分配トルクよりも多くすることを特徴とする構成1に記載のスロットル制御システム。
この構成によれば、分配トルクに応じた吸気量を得るために第1系統のスロットル弁の開度が大きくなり、スロットル弁が低開度であることに起因する燃焼が不安定な状態を抑制できる。したがって、第1系統に対応する気筒の燃焼安定性を高め、期待するトルクを得やすくなる。
【0055】
(構成3)前記目標トルクに応じて、前記複数の系統に分配する分配トルクを規定するトルク分配用マップデータを記憶し、前記トルク分配部は、前記トルク分配用マップデータに基づいて、前記複数の系統に分配する分配トルクを特定することを特徴とする構成2に記載のスロットル制御システム。
この構成によれば、トルク分配用マップデータを目標トルクを得るのに好適なデータにしておくことで、適切なトルクを出力でき、車両のコントロール性が向上する。
【0056】
(構成4)前記エンジンは、多気筒の等間隔爆発エンジンであることを特徴とする構成1から3のいずれか一項に記載のスロットル制御システム。
等間隔爆発エンジンで、第1系統のスロットル弁と第2系統のスロットル弁とが異なる開度に制御されるので、等間隔で爆発しながら各爆発で得られるトルクが変動する出力特性が得られ、トラクション性能や加速感の向上に有利である。
【0057】
(構成5)前記所定状況は、エンジン回転数が予め定めた低回転領域、及び前記複数のスロットル弁が予め定めた低開度領域の少なくともいずれかを含むことを特徴とする構成1から4のいずれか一項に記載のスロットル制御システム。
これにより、エンジン回転数が低回転であったり、スロットル弁が低開度であったりした場合の車両のコントロール性が向上する。
【0058】
(構成6)前記コントローラは、前記所定状況を除く他の状況の場合、前記第1系統及び第2系統のスロットル弁の開度を、同じ開度に制御することを特徴とする構成1から5のいずれか一項に記載のスロットル制御システム。
これにより、期待するトルクが得られる場合には、第1系統及び第2系統に属するスロットル弁の開度を異なせる制御を不要にできる。
【0059】
(構成7)前記コントローラは、少なくとも前記第1系統のスロットル弁を制御するためのECUと、少なくとも前記第2系統のスロットル弁を制御するためのECUとをそれぞれ備えることを特徴とする構成1から6のいずれか一項に記載のスロットル制御システム。
スロットル弁の制御を複数のECUに分散させることで、1個のECUの場合よりも小型で低コストのECUを使うことができ、コスト低減が可能になる場合がある。
【符号の説明】
【0060】
1 車両制御システム(スロットル制御システム)
10 自動二輪車
11 エンジン
12,12A~12D スロットル弁
13 スロットルボディ
21 スロットルグリップ(スロットル操作子)
22 スロットルセンサ
23 センサ群
30A,30B 駆動モータ
70 コントローラ
71 メインECU
72 サブECU
73 記憶部
75 要求トルク特定部
76 トルクマネージャ
77 トルク分配部
78A 第1開度算出部
78B 第2開度算出部
TH1 第1系統のスロットル弁
TH2 第2系統のスロットル弁
D1 要求トルク特定用データ
D2 目標トルク特定用データ
D3 トルク分配用データ(トルク分配用マップデータ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8