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特許7596354抗原送達のためのシルクポリペプチドを含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】抗原送達のためのシルクポリペプチドを含む物品
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/435 20060101AFI20241202BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241202BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241202BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20241202BHJP
   C07K 14/77 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
C07K14/435 ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
C07K14/77
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022200396
(22)【出願日】2022-12-15
(62)【分割の表示】P 2018566567の分割
【原出願日】2017-06-13
(65)【公開番号】P2023030043
(43)【公開日】2023-03-07
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】16175724.0
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511092996
【氏名又は名称】アムシルク・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】ローマン, リン
(72)【発明者】
【氏名】スロッタ, ウテ
(72)【発明者】
【氏名】エンガート, ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンター, ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ルーク, マティアス
(72)【発明者】
【氏名】シャイベル, トーマス
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521801(JP,A)
【文献】特表2013-538211(JP,A)
【文献】特表2013-503159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0171059(US,A1)
【文献】特表2013-512265(JP,A)
【文献】FAN W et al.,“Cathepsin S-cleavable, multi-block HPMA copolymers for improved SPECT/CT imaging of pancreatic cancer.”,Biomaterials,2016年06月08日,Vol. 103,p.101-115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドにより形成された粒子であって、
前記ポリペプチドが、
(i)少なくとも2個の反復単位を含むスパイダーシルクポリペプチドであって、前記反復単位が、配列番号3による配列を有するモジュールCまたはこれと少なくとも94%の配列同一性を有するバリアント、配列番号4による配列を有するモジュールC Cys またはこれと少なくとも94%の配列同一性を有するバリアント、および、配列番号18による配列を有するモジュールC kappa またはこれと少なくとも94%の配列同一性を有するバリアントからなる群から非依存的に選択される、スパイダーシルクポリペプチド、
(ii)治療または薬理のために使用する抗原性のペプチドまたはポリペプチド、および
(iii)カテプシンS切断可能なリンカー
を含み、
前記抗原性のペプチドまたはリペプチドが、前記カテプシンS切断可能なリンカーを介して、前記少なくとも2個の反復単位を含むスパイダーシルクポリペプチドにつながっている、粒子。
【請求項2】
前記カテプシンS切断可能なリンカーが、配列番号1による配列またはこれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有するか、または、配列番号2による配列またはこれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列を有する、請求項に記載の粒子。
【請求項3】
前記スパイダーシルクポリペプチドが、組換えスパイダーシルクポリペプチドである、請求項1または請求項2に記載の粒子。
【請求項4】
前記粒子が、負の表面電荷を有する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項5】
前記粒子が、50nmから1000nmまでの範囲内の平均直径を有する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シルクポリペプチドおよび抗原を含むポリペプチドに関する。さらに、本発明は、前記ポリペプチドを含む物品に関する。さらに、本発明は、前記物品を含む薬学的組成物に関する。加えて、本発明は、医薬品としての使用のための、免疫応答を誘導するための、ならびに/または疾患の予防的および/もしくは治療的処置における使用のための前記物品または薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
動物細胞、例えば、ヒト細胞への抗原送達は、医学分野において重要である。それは、例えば、ワクチン接種の商業領域において高い潜在能力をもつ。加えて、それは、動物、例えば、ヒトを処置するための治療的アプローチの向上に関して大いに関係している。癌、自己免疫疾患、真菌症、ウイルスおよび細菌の感染、またはB/C型肝炎もしくはHIVに対する治療的ワクチン接種は、例えば、免疫療法的処置の有望な標的である。
【0003】
ワクチン接種による免疫化は、現代の医療行為において最も生産的なツールの一つである。身体の、外来病原体から自分自身を防御する能力は、適応免疫応答として知られた過程において、いったん感染性物質が宿主免疫細胞に提示されたならば、その感染性物質を認識し、かつ反応する身体の能力に依存する。現在使用される、免疫化のための組成物は、安定剤、保存剤、およびアジュバントの混合物と共に抗原を送達する。抗原は、典型的には、細菌またはウイルスのタンパク質構成成分である。抗原を含むワクチンは、該抗原に対する体液性応答と細胞性応答の両方を誘導する。そのようなワクチン接種の有効性は、抗原の免疫原性に大きく依存し、その免疫原性は、次には、抗原のサイズ、分子の複雑性、「外来性」の程度、および抗原提示細胞(APC)によるペプチドへ切断される能力の相関である。抗原により刺激され、かつ活性化されたAPCは、流入領域リンパ節(DLN)へ遊走し、その後、そこで、抗原は、ナイーブTヘルパー細胞へ提示される。その後、抗原は、B細胞に提示され、全身性抗体産生、ならびにメモリーB細胞のプライミングを生じる。最初の抗体産生は、およそ、一次曝露から3週間後に、減退し始めるが、同じ抗原との二次接触によりさらに増強することができる。したがって、ブースター注射が、強く推奨され、一般的には、高濃度の抗原特異的抗体を誘導する。特殊化した抗原提示細胞(APC)としての樹状細胞(DC)は、自然免疫と適応免疫の両方において重要な役割を果たす。DCは、抗原を捕獲およびプロセシングし、末梢からリンパ器官へ遊走し、主要組織適合複合体(MHC)拘束性様式で、抗原を、休止T細胞に提示する独特な能力を有する、特殊化した抗原提示細胞である。
【0004】
しかしながら、現在利用可能な抗原送達物質の弱点の一つは、この物質が標的細胞へ生じる細胞毒性効果である。送達物質の可能な治療的および臨床的使用を考えると、固有のシグナル伝達経路および系に影響することなく、抗原を様々な細胞へ運ぶために、より細胞毒性の低い物質が必要とされる。加えて、抗原を含むワクチンは、十分に細胞により吸収/細胞へ内部移行されないことが多い。したがって、優先的に細胞により吸収/細胞へ内部移行される構造を有する、抗原を含む無細胞毒性物品の必要性がある。さらに、担体ポリペプチドおよび抗原を含む単鎖ポリペプチドで構成される人工抗原担体媒介物は当技術分野において知られていない。
【0005】
本特許出願の発明者らは、抗原に加えて、担体ポリペプチドとしてシルクポリペプチドを含む単鎖ポリペプチドで構成される抗原担体物品を初めて作製した。さらに、本特許出願の発明者らは、驚くべきことに、シルクポリペプチドを含む物品、例えば、粒子の一部である抗原が、動物細胞、例えば、ヒト細胞により優先的に取り込まれることを見出した。この文脈において、本特許出願の発明者らは、主にシルクで構成される物品、例えば、粒子が、抗原を安定化し、かつそれを輸送可能にする補助物質として機能することに驚いた。その物品、例えば、粒子は、生物体(例えば、ヒト身体)内で跡形もなく分解され得る。さらに、本特許出願の発明者らは、驚くべきことに、シルクポリペプチドを含む物品、例えば、粒子の一部である抗原を含む薬学的組成物におけるアジュバントの使用は、もはや必要とされないことを見出した。アジュバントなしの組成物に含まれる抗原の有効性は、アジュバントありの組成物に含まれる同じ抗原と少なくとも同じくらいか、または匹敵する。アジュバントの省略は、副作用およびワクチン不適合性が低下し得、場合によっては、回避することさえできるというプラス効果を生じる。加えて、シルクポリペプチドおよび抗原を含む物品、例えば、粒子は、無毒性、特に無細胞毒性、および非免疫原性である。その物品、例えば、粒子は、有機溶媒も毒性物質も必要とせず、1段階生産工程で容易に製造することができる。加えて、1段階生産工程は、有害な不純物または汚染のリスクを低下させ、考証および規制面に関して有意な利点をもつ。1段階生産工程は、物品形成後に追加の負荷ステップを必要としないことを意味する。1段階生産工程は、それが、製造スケールへ容易にスケールアップ可能であるため、特に望ましい。さらに、抗原は、そのポリペプチドにおける遺伝暗号により正確に定義され、したがって、さもなければ必要とされる負荷手順の過程において分解されることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2006/008163号パンフレットA2
【文献】国際公開第2011/120690号パンフレットA2
【文献】国際公開第2007/014755号パンフレットA1
【非特許文献】
【0007】
【文献】「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」、Leuenberger,H.G.W、Nagel,B.およびKolbl,H.編(1995)、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland)
【文献】Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R Gennaro編、1985)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様において、本発明は、
(i)シルクポリペプチド、および
(ii)抗原
を含むポリペプチドに関する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、第1の態様のポリペプチドをコードする核酸分子に関する。
【0010】
第3の態様において、本発明は、
(a)細胞において第2の態様の核酸分子を発現させ、それにより該細胞において該ポリペプチドを産生するステップを含む、ポリペプチドを産生する方法に関する。
【0011】
第4の態様において、本発明は、第1の態様のポリペプチドを含む物品に関する。
【0012】
第5の態様において、本発明は、
(a)第1の態様のポリペプチドを含む水溶液を供給するステップと、
(b)(a)で供給された該溶液から(out of/from)物品を形成するステップと、を含む、物品を作製する方法に関する。
【0013】
第6の態様において、本発明は、第4の態様の物品を含む薬学的組成物に関する。
【0014】
第7の態様において、本発明は、医薬品として使用するための、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物に関する。
【0015】
第8の態様において、本発明は、免疫応答を誘導するための、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物に関する。
【0016】
第9の態様において、疾患の予防的および/または治療的処置において使用するための、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物に関する。
【0017】
第10の態様において、本発明は、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、抗原を細胞へ送達する方法に関する。
【0018】
第11の態様において、本発明は、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象において免疫応答を誘導する方法に関する。
【0019】
第12の態様において、本発明は、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象における予防的および/または治療的処置方法に関する。
【0020】
第13の態様において、本発明は、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象においてT細胞を刺激し、プライミングし、および/または増殖させる方法に関する。
【0021】
本発明のこの概要は、必ずしも本発明の全特徴を記載するとは限らない。他の実施形態が、保証された詳細な説明の再検討から明らかになるであろう。
【0022】
以下の図および実施例は、単に、本発明の例証となるだけであり、添付の特許請求の範囲により意図されるような本発明の範囲を限定すると決して解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のスパイダーシルク粒子のいずれもインビトロでBMDC細胞毒性を誘導しないことを示す図である。図1Aは、ヨウ化プロピジウム(PI)およびアネキシンVでのフローサイトメトリーからのドットプロットを示す。BMDC(5×10細胞/ウェル)を、505μg粒子/mL(=10μg SIINFEKL(配列番号11)/mL)のスパイダーシルク粒子と培養した。24時間のインキュベーション後、BMDC生存率を、フローサイトメトリーおよびMTTアッセイにより評価した。(A)ヨウ化プロピジウム(PI)およびアネキシンVでのフローサイトメトリーからの代表的なドットプロット。(B)生きている健康な細胞(アネキシンV-/PI-)を定量化するためのゲート設定ストラテジーのスキーム。(C)生きている健康な細胞(アネキシンV-/PI-)のパーセンテージ。(D)MTTアッセイからの、ホルマザン生成と相関する、570nmにおける光学密度(OD)。細胞を含まない条件(媒体のみ)を対照として用いた。n.d.:未実施。アスタリスク(****、P<0.0001)は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)、続いてダネットの多重比較検定を用いた、未処理の対照群との有意差を示す(CおよびD)。各バーは、二連で実施された3回の独立した実験の平均±SEMを表す(パネルC、C16-SIIN(二連で1回、試験された)を除く)。媒体のみを対照として用いた。未処理:未処理の対照群;SIIN:SIINFEKL(配列番号11)ペプチド単独;C16:天然C16粒子;C16-SIIN;C16-CathBseq-SIIN、C16-CathSseq-SIINハイブリッドタンパク質粒子。
図2】本発明のスパイダーシルク粒子がインビトロでBMDC免疫学的活性化を誘導しないことを示す図である。図2Aは、未処理の試料と比較した、SIIN、CathBseq-SIIN、およびC16-CathSseq-SIINと培養されたBMDC細胞のBMDC表面活性化マーカーMHC IおよびMHC IIの蛍光強度中央値(MFI)を示す。図2Bは、ELISAでのサイトカイン定量化を示す。TLR7アゴニストである、R848(R8)を陽性対照として用いた。BMDC(5×10細胞/ウェル)を、50μg粒子/mLのスパイダーシルク粒子と共に培養した。24時間のインキュベーション後、BMDCをフローサイトメトリーにより分析し、一方、サイトカイン定量化のために上清を収集した。(A)BMDC表面活性化マーカーの蛍光強度中央値(MFI):未処理の試料と比較した、倍数変化。(B)ELISAでのサイトカイン定量化。TLR7アゴニストである、R848(R8)を陽性対照として用いた(0.25μg/mL)。アスタリスク(***、P<0.001)は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)、続いてダネットの多重比較検定を用いた、未処理の対照群との有意差を示す。各バーは、二連で実施された4回の独立した実験の平均±SEMを表す。
図3】スパイダーシルク粒子が抗原提示細胞により効率的に取り込まれることを示す図である。図3Aは、SIINを含まないC16粒子(C16)、C16ハイブリッド粒子C16-SIIN、カテプシンB切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathBseq-SIIN)、およびカテプシンS切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathSseq-SIIN)の取り込みを示す。未処理の細胞(未処理)およびSIINポリペプチド(SIIN)は対照としての役割を果たす。図3Bは、未処理の細胞と比較した、規定された免疫細胞集団:T細胞(CD3+)、樹状細胞(CD11c+CD11b+)、および単球/マクロファージ(CD11c-CD11b+)において決定されたFITC陽性細胞のパーセンテージを示す。(A)BMDC(5×10細胞/ウェル)を、50μg粒子/mLのFITC標識スパイダーシルク粒子と共に培養した。24時間のインキュベーション後、BMDCを、フローサイトメトリー分析のために単離した。BMDC(CD11c+)集団内のFITC陽性細胞のパーセンテージを決定した。各バーは、二連で実施された2回の独立した実験の平均±SEMを表す(C16-SIIN(二連で1回、試験された)を除く)。(B)新鮮に単離された脾細胞(5×10細胞/ウェル)を、FITC標識スパイダーシルク粒子と共に6時間、培養した。6時間のインキュベーション後、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。規定された免疫細胞集団:T細胞(CD3+)、樹状細胞(CD11c+CD11b+)、および単球/マクロファージ(CD11c-CD11b+)において、FITC陽性細胞のパーセンテージを決定した。グラフは、3つのうちの1つの代表的な実験を描く。各実験は二連で実施された。
図4】カテプシンS配列が、SIINFEKL(配列番号11)依存性インビトロT細胞増殖を誘導するのに最も効果的であることを示す図である。図4は、T細胞集団(CD3+CD8+)内の増殖性CD8 T細胞のパーセンテージを示す。C16 CathSseq-SIINFEKL粒子およびC16 CathBseq-SIINFEKL粒子を有するBMDC細胞に曝露されたCD8 T細胞の増殖性のパーセンテージは、未処理の対照と比較して有意により高かった。C16 CathSseq-SIINFEKL粒子を有するBMDC細胞に曝露されたCD8 T細胞の増殖性のパーセンテージは、C16 CathBseq-SIINFEKL粒子を有するBMDC細胞に曝露されたCD8 T細胞の増殖性のパーセンテージよりさらに有意に高かった。BMDC(5×10細胞/ウェル)を、50μg粒子/mLのスパイダーシルク粒子と共に培養した。R848(0.25μg/mL)をBMDC活性化のためのアジュバントとして用いた。24時間のインキュベーション後、CFSE標識CD3+CD8+ OT-I細胞(10細胞/ウェル)を加えた。3日間の共培養後、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。T細胞集団(CD3+CD8+)内の増殖性細胞のパーセンテージ。各バーは、四連で実施された2回の独立した実験の平均±SEMを表す。アスタリスク(**、P<0.01)は、二元配置分散分析(two-way ANOVA)、続いてチューキーの多重比較検定を用いた、R848処理群間の有意差を示す。
図5】ハイブリッドスパイダーシルク粒子が、インビボで流入領域リンパ節に蓄積することを示す図である。図5Aは、いくつかの組織(DLN、非DLN、および脾臓)において、3匹のPBS処理されたマウスの対照群と比較した、3匹のFITC粒子処理されたマウスの流入領域リンパ節(DLN)におけるFITC陽性細胞(FITC標識C16-CathSseq-SIINFEKL粒子を含む)の数を示す。FITC標識C16-CathSseq-SIINFEKL粒子を、3匹のマウスの右脇腹へ皮下注射した(1匹のマウスあたり100μL PBS中505μg粒子)。PBSを陰性対照として用いた。24時間後、同側流入領域リンパ節(DLN)、対側リンパ節(非DLN)、および脾臓をフローサイトメトリー分析のために単離した。(A)異なるリンパ器官におけるFITC陽性細胞の数(B)規定された免疫細胞集団内のFITC陽性細胞のパーセンテージ各ドットは1匹のマウスを表す。バーは、平均±SEMを表す。アスタリスク(***、P<0.001)は、二元配置分散分析(two-way ANOVA)、続いてボンフェローニの多重比較検定を用いた、FITC粒子処理されたマウスをPBS処理されたマウスと比較した場合の有意差を示す。図5Aは、C16-CathSseq-SIINFEKL粒子が、投与後、流入領域リンパ節(DLN)に蓄積したことを示す。図5Bに示された結果は、マクロファージ(CD11c-CD11b+)または白血球(CD11b-)によるよりむしろ、樹状細胞(CD11c+CD11b+)による取り込みへの傾向を指摘している。
図6】SIINFEKL(配列番号11)含有スパイダーシルク粒子が、インビボで抗原依存性T細胞増殖を誘導することを示す図である。図6は、C16-CathSseq-SIINFEKL粒子で免疫化されたマウスのCD8 T細胞の増殖を示す。CD8 T細胞の増殖は、R848アジュバントなしで、有意により高かった。100μLのPBS中10個のCFSE標識CD3+CD8+ OT-I細胞を、マウスへ静脈内注射した(各ドットは1匹のマウスを表す)。18時間後、マウスにスパイダーシルク粒子(1匹のマウスあたり100μL PBS中505μg粒子)をワクチン接種した。R848(25μg)をアジュバントとして用いた。ワクチン接種から3日後、DLNをフローサイトメトリー分析のために単離して、CD3+CD8+ CFSE標識OT-I細胞の増殖を決定した。各ドットは1匹のマウスを表す。バーは、平均±SEMを表す。アスタリスク(****、P<0.0001)は、一元配置分散分析(one-way ANOVA)、続いてダネットの多重比較検定を用いた、R848処理された対照との有意差を示す。CD8 T細胞の増殖は、R848アジュバントなしで、より高かった。C16-CathSseq-SIINFEKLタンパク質粒子が、免疫賦活性アジュバントR848の使用があってもなくても、それぞれ類似した、より高いレベルの増殖性CD8+ T細胞を誘導し得ることが示されたといえる。
図7】インビトロでの、カテプシンSおよびカテプシンB酵素とのC16粒子、C16-CathB-SIINFEKLおよびC16-CathS-SIINFEKLのインキュベーションを示す図である。異なるカテプシン酵素での抗原の異なる放出。配列LPGSIINFEKLG(配列番号17)が、C16-CathS-SIINFEKLハイブリッドタンパク質粒子から放出され、一方、配列IGSIINFEKLG(配列番号16)が、C16-CathB-SIINFEKLハイブリッドタンパク質粒子から放出された。前記配列は、SIINFEKL(配列番号11)を含む。データは、3つの独立した反復試験の平均およびSD(標準偏差)である。カテプシンS酵素は、カテプシンBより、両方のC16ハイブリッドタンパク質粒子からのSIINFEKL(配列番号11)ペプチドのより良好な切断を示す。カテプシンSはまた、カテプシンBによる放出のために設計された粒子からもSIINFEKL(配列番号11)ペプチドを切断する。(A)カテプシンS酵素と96時間、インキュベートされたeADF4(C16)ハイブリッドタンパク質粒子。(B)カテプシンB酵素と96時間、インキュベートされたeADF4(C16)ハイブリッドタンパク質粒子。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本発明が下で詳細に記載される前に、この発明が、本明細書に記載された特定の方法論、プロトコール、および試薬に限定されず、これらが変化し得るためであることは、理解されるべきである。本明細書に用いられる用語法が、特定の実施形態のみを記載することを目的とし、かつ添付された特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定することを意図するものではないこともまた、理解されるべきである。他に規定がない限り、本明細書に用いられる全ての技術的および科学的用語は、当業者により一般的に理解されているのと同じ意味をもつ。
【0025】
好ましくは、本明細書で用いられる用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」、Leuenberger,H.G.W、Nagel,B.およびKolbl,H.編(1995)、Helvetica Chimica Acta、CH-4010 Basel、Switzerland)に記載されているように定義される。
【0026】
いくつかの文書が、この明細書の本文を通して引用されている。上記下記に関わらず、本明細書に引用された文書(全ての特許、特許出願、科学刊行物、製造会社の仕様書、説明書、GenBankアクセッション番号提出等を含む)のそれぞれは、全体として参照により本明細書に組み入れられている。先行発明の理由で、本発明がそのような開示に先行する権利がないという承認として解釈されるべきものは本明細書にはない。そのような組み入れられた参考文献の定義または教示と、本明細書に列挙された定義または教示との間に矛盾がある場合、本明細書の本文が優先する。
【0027】
本発明による用語「含む(comprise)」、または「含む(comprises)」もしくは「含むこと(comprising)」などの語尾変化は、述べられた整数または整数の群の包含を意味するだけでなく、任意の他の整数または整数の群の排除を意味するものではない。本発明による用語「から本質的になること」は、述べられた整数または整数の群の包含と同時に、その述べられた整数に実質的に影響し、または変化させるであろう修飾または他の整数を排除することを意味する。本発明による用語「からなる」または「からなること」などの語尾変化は、述べられた整数または整数の群の包含、および任意の他の整数または整数の群の排除を意味する。
【0028】
本発明を記載する文脈において(特に、特許請求の範囲の文脈において)用いられる用語「1つの(a)」および「1つの(an)」および「その(the)」および類似した表示は、本明細書に他に指示がない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、単数形と複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。
【0029】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本発明の文脈において交換可能に用いられる。それらは、アミノ酸の長いペプチド結合鎖、例えば、典型的には、40アミノ酸長または40アミノ酸より長いものを指す。
【0030】
本明細書に用いられる場合、用語「ペプチド」は、アミノ酸の短いペプチド結合鎖、例えば、典型的には、長さが約40アミノ酸未満、より典型的には、約30アミノ酸未満であるものを指す。
【0031】
用語「融合タンパク質」または「ハイブリッドタンパク質」(文字通り、異なる源由来の部分でできた)は、本発明の文脈において交換可能に用いられる。それらは、本来、別々のタンパク質/ペプチドをコードした2つ以上の遺伝子の連結を通して生み出されるタンパク質を指す。この融合遺伝子の翻訳は、元のタンパク質/ペプチドのそれぞれに由来した機能的特性を有する単鎖ポリペプチドを生じる。
【0032】
用語「組換え融合タンパク質」または「組換えハイブリッドタンパク質」は、本発明の文脈において交換可能に用いられる。それらは、組換えDNAテクノロジーにより人工的に生み出される単鎖ポリペプチドを指す。
【0033】
一実施形態において、本発明のポリペプチドは、シルクポリペプチドおよび抗原を含む融合またはハイブリッドポリペプチドである。一つの好ましい実施形態において、本発明のポリペプチドは、シルクポリペプチド、抗原、および酵素切断可能なリンカーを含む融合またはハイブリッドポリペプチドであって、前記抗原が、前記酵素切断可能なリンカーを介して前記シルクポリペプチドに付着しており、または前記酵素切断可能なリンカーが、前記シルクポリペプチドと前記抗原との間に位置している。酵素切断可能なリンカーの配列は、さらなる非機能性アミノ酸を付加することにより修飾され得る。
【0034】
本明細書に用いられる場合、用語「シルクポリペプチド」は、他のポリペプチドと比較して、全く異常なアミノ酸組成を示すポリペプチドを指す。特に、シルクポリペプチドは、グリシンまたはアラニンなどの疎水性アミノ酸を大量に有するが、例えば、トリプトファンを有しない(または非常に少量のみ有する)。加えて、シルクポリペプチドは、高度に反復したアミノ酸配列または反復単位(繰り返し単位、モジュール)を、特にそれらの大きなコアドメインにおいて、含有する。DNA分析に基づいて、全てのシルクポリペプチドが、別個のより短いペプチドモチーフの限られたセットをさらに含む反復単位の鎖であることが示された。「ペプチドモチーフ」および「コンセンサス配列」という表現は、本明細書で交換可能に用いることができる。一般的に、シルクコンセンサス配列は、4つの主要なカテゴリー:GPGXX、GGX、A、または(GA)およびスペーサーへ分類することができる。シルクポリペプチドにおけるペプチドモチーフのこれらのカテゴリーは、構造的役割を割り当てられている。例えば、GPGXXモチーフは、β-ターンスパイラルに関与し、おそらく、弾性を与えていることが示唆されている。GGXモチーフは、グリシンリッチな3-ヘリックスに関与することが知られている。GPGXXモチーフとGGXモチーフの両方は、結晶領域をつなぐ非結晶性マトリックスの形成に関与し、それにより、そのファイバーの弾性を与えると考えられている。アラニンリッチなモチーフは、典型的には、6~9個の残基を含有し、結晶性β-シートを形成することが見出されている。スペーサーは、典型的には、荷電基を含有し、反復されたペプチドモチーフをクラスターへと分離する。好ましくは、シルクポリペプチドは、スパイダーシルクポリペプチドである。より好ましくは、シルクポリペプチド、例えば、スパイダーシルクポリペプチドは、組換えポリペプチドである。
【0035】
本明細書に用いられる場合、用語「抗原」は、免疫応答が生じ得るエピトープを含む分子に関する。用語「抗原」は、タンパク質またはペプチドを含む。用語「抗原」はまた、変換を通して(例えば、その分子において中間に在って、または身体タンパク質と共に完成することにより)のみ抗原性となる分子も含む。抗原は、好ましくは、樹状細胞(DC)またはマクロファージのような抗原提示細胞(APC)などの免疫系の細胞により提示可能である。加えて、抗原またはそのプロセシング生成物は、好ましくは、T細胞受容体もしくはB細胞受容体により、または抗体などの免疫グロブリン分子により認識可能である。抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原などの疾患関連抗原であり得る。
【0036】
本発明の文脈において、用語「疾患関連抗原」は、それの最も広い意味において、疾患に関連した任意の抗原を指すように用いられる。疾患関連抗原は、疾患に対して細胞性抗原特異的免疫応答および/または体液性抗体応答を生じるように宿主の免疫系を刺激するであろうエピトープを含有する分子である。したがって、疾患関連抗原は、治療を目的として用いられ得る。疾患関連抗原は、好ましくは、微生物、典型的には微生物抗原による感染に関連し、または癌、典型的には腫瘍に関連している。
【0037】
本明細書に用いられる場合、用語「疾患」は、個体の身体に影響する異常状態を指す。疾患は、特定の症状および徴候を伴う医学的状態と解釈される場合が多い。疾患は、感染性疾患などの、本来、外部の源からの因子により引き起こされ得、またはそれは、自己免疫疾患などの、内的機能障害により引き起こされ得る。ヒトにおいて、「疾患」は、より広くは、冒された個体に痛み、機能障害、苦悩、社会問題、もしくは死を、またはその個体に接触した者について同様の問題を引き起こす任意の状態を指すように用いられる場合が多い。このより広い意味において、それは、時々、傷害、能力障害、障害、症候群、感染症、単発症状、逸脱行動、ならびに構造および機能の非定型バリエーションを含むが、他の文脈において、および他の目的として、これらは、区別できるカテゴリーとみなされ得る。疾患は、通常、個体に、肉体的だけでなく、感情的にも影響し、多くの疾患に罹り、かつそれらと共に生きることは、人の人生の見方および人の性格を変化させ得るからである。
【0038】
上記で言及されているように、疾患は、感染性疾患または自己免疫疾患であり得る。疾患はまた、癌疾患、または単に癌であり得る。
【0039】
本明細書に用いられる場合、用語「感染性疾患」は、個体から個体へ、または生物体から生物体へ伝染し得る任意の疾患を指し、微生物因子により引き起こされる(例えば、風邪)。感染性疾患は、当技術分野において知られており、それには、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、または寄生虫性疾患が挙げられる。前記疾患は、それぞれ、ウイルス、細菌、および寄生虫により引き起こされる。この点において、感染性疾患は、例えば、肝炎、性行為感染症(例えば、クラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、およびインフルエンザであり得る。
【0040】
本明細書に用いられる場合、用語「自己免疫疾患」は、身体が、それ自体の組織のある構成要素に対して免疫原性(すなわち、免疫系)応答を生じる任意の疾患を指す。言い換えれば、免疫系が、身体内のある組織または系を自己として認識する能力を喪失し、それがあたかも外来であるかのようにそれを標的にして、攻撃する。自己免疫疾患は、主に1つの器官が冒されているもの(例えば、溶血性貧血および自己免疫性甲状腺炎)、および自己免疫疾患過程が多くの組織を通して拡散されているもの(例えば、全身性エリテマトーデス)へ分類することができる。例えば、多発性硬化症は、脳および脊髄の神経線維を囲む鞘を攻撃するT細胞によって引き起こされると考えられている。これは、結果として、協調の喪失、脱力、および霧視を生じる。自己免疫疾患は、当技術分野において知られており、それには、例として、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、関節リウマチ、溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、乾癬その他が挙げられる。
【0041】
本明細書に用いられる場合、用語「癌疾患」または「癌」は、典型的には未制御の細胞成長により特徴づけられる、個体における生理学的状態を指し、または記載する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、それらに限定されない。より具体的には、そのような癌の例には、骨癌、血液癌、肺癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部の癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、膀胱の癌、腎臓の癌、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄の軸の腫瘍、グリオーマ、髄膜腫、および下垂体腺腫が挙げられる。本発明による用語「癌」はまた、癌転移を含む。
【0042】
上記で言及されているように、抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、または細菌抗原であり得る。
【0043】
本明細書に用いられる場合、用語「腫瘍抗原」は、細胞質、細胞表面、および細胞核に由来し得る、癌細胞の構成要素を指す。特に、それは、好ましくは大量に、細胞内に、または腫瘍細胞上の表面抗原として、産生されるそれらの抗原を指す。腫瘍抗原についての例には、HER2、EGFR、VEGF、CAMPATH1-抗原、CD22、CA-125、HLA-DR、ホジキンリンパ腫、またはムチン-1が挙げられるが、それらに限定されない。
【0044】
本明細書に用いられる場合、用語「ウイルス抗原」は、抗原特性を有する、すなわち、個体において免疫応答を誘発できる、任意のウイルス構成成分を指す。ウイルス抗原は、ウイルスリボ核タンパク質またはエンベロープタンパク質であり得る。
【0045】
本明細書に用いられる場合、用語「微生物抗原」は、抗原特性を有する、すなわち、個体において免疫応答を誘発できる、任意の微生物構成成分を指す。
【0046】
本明細書に用いられる場合、用語「細菌抗原」は、抗原特性を有する、すなわち、個体において免疫応答を誘発できる、任意の細菌構成成分を指す。細菌抗原は、細菌の細胞壁または細胞膜に由来し得る。
【0047】
本明細書に用いられる場合、用語「真菌抗原」は、抗原特性を有する、すなわち、個体において免疫応答を誘発できる、任意の真菌構成成分を指す。
【0048】
本明細書に用いられる場合、用語「動物寄生虫抗原」は、抗原特性を有する、すなわち、個体において免疫応答を誘発できる、動物の寄生虫の任意の構成成分を指す。前記寄生虫は、ノミ、シラミ、または蠕虫であり得る。
【0049】
本明細書に用いられる場合、用語「免疫応答」は、細菌、ウイルス、細胞、または物質などの免疫原性生物体に対する免疫系の反応に関する。用語「免疫応答」は、自然免疫応答および適応免疫応答を含む。好ましくは、免疫応答は、免疫細胞の活性化、サイトカイン生合成の誘導、および/または抗体産生に関係している。本発明の物品により(または、より具体的には、それの一部である抗原により)誘導される免疫応答が、樹状細胞(DC)および/またはマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)の活性化のステップ、前記抗原提示細胞による抗原またはその断片の提示のステップ、ならびにこの提示による細胞傷害性T細胞の活性化のステップを含む。
【0050】
本明細書に用いられる場合、用語「免疫細胞」は、個体の身体を防御することに関与している免疫系の細胞を指す。用語「免疫細胞」は、特定の型の免疫細胞およびそれらの前駆体を包含し、それには、マクロファージ、単球(マクロファージの前駆体)、好中球、好酸球、および好塩基球などの顆粒球、樹状細胞、マスト細胞、ならびにB細胞、T細胞、およびナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球を含む白血球が挙げられる。マクロファージ、単球(マクロファージの前駆体)、好中球、樹状細胞(DC)、およびマスト細胞は、食細胞である。
【0051】
本明細書に用いられる場合、用語「抗原提示細胞(APC)」は、それの細胞表面上に(または細胞表面に)少なくとも1つの抗原または抗原断片をディスプレイし、獲得し、および/または提示する能力がある細胞または様々な細胞である。抗原提示細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞および非プロフェッショナル抗原提示細胞において区別され得る。
【0052】
本明細書に用いられる場合、用語「プロフェッショナル抗原提示細胞」は、ナイーブT細胞との相互作用に必要とされる主要組織適合複合体クラスII(MHCクラスII)分子を構成的に発現する抗原提示細胞を指す。T細胞が、抗原提示細胞の膜上のMHCクラスII分子複合体と相互作用したならば、抗原提示細胞は、T細胞の活性化を誘導する共刺激分子を産生する。プロフェッショナル抗原提示細胞は、樹状細胞(DC)およびマクロファージを含む。
【0053】
本明細書に用いられる場合、用語「非プロフェッショナル抗原提示細胞」は、MHCクラスII分子を構成的には発現しないが、インターフェロン-ガンマなどのある特定のサイトカインによる刺激で発現する抗原提示細胞に関する。例示的な非プロフェッショナル抗原提示細胞には、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵ベータ細胞、または血管内皮細胞が挙げられる。
【0054】
本明細書に用いられる場合、用語「樹状細胞(DC)」は、抗原提示細胞(APC)のクラスに属する食細胞の別のサブタイプを指す。好ましくは、樹状細胞は、造血骨髄前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞は、最初に、未熟樹状細胞へ変換する。これらの未熟細胞は、高い食作用活性および低いT細胞活性化潜在能力により特徴づけられる。未熟樹状細胞は、ウイルスおよび細菌などの病原体についての周囲環境を絶えず、サンプリングする。いったんそれらが提示可能な抗原と接触したならば、それらは成熟樹状細胞へと活性化し、脾臓またはリンパ節へ遊走し始める。未熟樹状細胞は病原体を貪食し、それらのタンパク質を小片へと分解し、成熟により、MHC分子を用いて、細胞表面にそれらの病原体を提示する。同時に、それらは、T細胞を活性化する能力を大いに増強するCD80、CD86、およびCD40などのT細胞活性化において共受容体として働く細胞表面受容体を上方制御する。それらはまた、CCR7(血流を通して脾臓へ、またはリンパ系を通してリンパ節へ移動するように樹状細胞を誘導する走化性受容体)を上方制御する。ここで、それらは、抗原提示細胞として働き、非抗原特異的共刺激シグナルと共に抗原を提示することにより、ヘルパーT細胞およびキラーT細胞、加えてB細胞を活性化する。したがって、樹状細胞は、T細胞またはB細胞関連免疫応答を活発に誘導することができる。好ましくは、樹状細胞は脾臓樹状細胞である。
【0055】
本明細書に用いられる場合、用語「マクロファージ」は、単球の分化により生成される食細胞のサブグループを指す。炎症、免疫サイトカイン、または微生物産物により活性化されるマクロファージは、非特異的に、マクロファージ内の外来病原体を加水分解的および酸化的攻撃により貪食し、死滅させ、病原体の分解を生じる。分解されたタンパク質からのペプチドは、マクロファージ細胞表面上にディスプレイされ、その細胞表面上で、それらは、T細胞により認識され得、それらは、B細胞表面上の抗体と直接的に相互作用し、結果として、T細胞およびB細胞活性化、ならびに免疫応答のさらなる刺激を生じ得る。マクロファージは抗原提示細胞(APC)のクラスに属する。好ましくは、マクロファージは、脾臓マクロファージである。
【0056】
本明細書に用いられる場合、用語「T細胞」または「Tリンパ球」は、細胞性免疫において中心的役割を果たすリンパ球の型に関する。T細胞またはTリンパ球は、その細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在により、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞などの他のリンパ球から区別することができる。それらは、抗原提示特性をもたない(というより、それの抗原提示特性のためにB細胞またはNK細胞を必要とする)。それらはT細胞と呼ばれ、それらが胸腺内で成熟するからである。T細胞は、1つもしくは複数のMHC分子または1つもしくは複数の非古典的MHC分子と共に、抗原提示細胞の表面またはマトリックス上にディスプレイされた時、抗原を認識する能力がある。
【0057】
本明細書に用いられる場合、用語「T細胞を刺激すること」または「T細胞の刺激」は、T細胞抗原受容体を通しての抗原-MHCクラスII複合体との相互作用によるなどの一次シグナルによる、T細胞応答の誘導または活性化を指す。その用語はまた、サイトカイン(例えば、CD80またはCD86タンパク質)を通してなどのT細胞の共刺激を含む。T細胞は、T細胞による免疫応答を惹起する一次シグナル伝達事象をT細胞が受けたならば、活性化される。
【0058】
本明細書に用いられる場合、用語「T細胞をプライミングすること」は、T細胞のそれの特異的抗原との最初の接触(例えば、樹状細胞(DC)が抗原をT細胞に提示することによる)の誘導を指し、それは、T細胞のエフェクターT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞またはTヘルパー細胞)への分化を引き起こす。
【0059】
本明細書に用いられる場合、用語「T細胞を増殖させること」または「T細胞の増殖」は、T細胞、好ましくは、抗原を特異的に認識するT細胞の数の増加を指す。本発明の物品に含まれる抗原、または抗原のプロセシング生成物を特異的に認識するT細胞の数が増加することが好ましい。抗原または抗原のプロセシング生成物は、好ましくは、樹状細胞(DC)またはマクロファージのような抗原提示細胞(APC)の表面上などで、MHC分子の文脈において提示される。
【0060】
本明細書に用いられる場合、用語「免疫療法」は、免疫応答を誘導し、増強し、または抑制することによる、疾患または状態の処置を指す。免疫応答を誘発し、または増幅するように設計された免疫療法は、活性化免疫療法として分類され、一方、免疫応答を低下させ、または抑制する免疫療法は、抑制免疫療法として分類される。用語「免疫療法」は、抗原免疫化または抗原ワクチン接種、加えて、腫瘍免疫化または腫瘍ワクチン接種を含む。用語「免疫療法」はまた、関節リウマチ、アレルギー、糖尿病、または多発性硬化症などの自己免疫疾患の関連において、不適切な免疫応答がより適切な免疫応答へ調節されるような免疫応答の操作を指す。
【0061】
本明細書に用いられる場合、用語「免疫化」または「ワクチン接種」は、例えば、治療または予防を理由として、免疫応答を誘導することを目的に、抗原を個体に投与する工程を記載する。
【0062】
本明細書に用いられる場合、用語「治療的処置」は、健康状態を改善し、および/または個体の寿命を延ばす(増加させる)任意の処置に関する。前記処置は、個体において疾患を排除し、個体において疾患の発生を阻止し、阻害し、もしくは遅らせ、個体において症状の頻度もしくは重症度を減少させ、ならびに/または疾患に、現在罹っており、もしくは以前、罹ったことがある個体において再発を減少させ得る。
【0063】
本明細書に用いられる場合、用語「予防的処置」または「防止的処置」は、疾患が個体に起こるのを防ぐことを意図される任意の処置に関する。用語「予防的処置」または「防止的処置」は、交換可能に本明細書で用いられる。
【0064】
本明細書に用いられる場合、用語「防御する」、「防ぐ」、「予防的な」、「防止的な」、または「防御的な」は、個体における、疾患、例えば、腫瘍の発生および/または伝播の防止および/または処置に関する。例として、例えば、本発明の物品または薬学的組成物を投与することによる、免疫療法の予防的投与は、その受ける個体を腫瘍の発生から防御することができる。例として、例えば、本発明の物品または薬学的組成物を投与することによる、免疫療法の治療的投与は、疾患の発生を停止すること、例えば、腫瘍の進行/成長の阻害をもたらすことができる。これは、腫瘍の進行/成長の減速、特に、好ましくは腫瘍の排除をもたらす、腫瘍の進行の崩壊を含む。免疫療法の治療的投与は、存在する腫瘍の内転移または転移から個体を防御し得る。
【0065】
用語「個体」および「対象」は、本発明の文脈において交換可能に用いられる。個体または対象は、健康であり、疾患もしくは障害(例えば、癌)に苦しめられており、または疾患もしくは障害(例えば、癌)に罹りやすくあり得る。個体または対象は動物、例えば、ヒトであり得る。好ましくは、個体または対象は、ヒトまたは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)である。他に明記されない限り、用語「個体」および「対象」は、特定の年齢を表さず、したがって、成体、高齢者、小児、および新生児を包含する。「個体」または「対象」は「患者」であり得る。
【0066】
本明細書に用いられる場合、用語「患者」は、罹患している、すなわち、疾患または障害を患っている個体または対象を意味する。患者は、動物、例えば、ヒトであり得る。好ましくは、動物は、ヒトまたは別の哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)である。
【0067】
本発明の物品は、任意の適切な薬学的組成物の形で投与され得る。前記薬学的組成物は、アジュバント、薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含み得る。前記薬学的組成物は、疾患または障害を処置し、防止し、またはその重症度を低下させるのに有用である。それは、局所的に、または全身的に、好ましくは全身的に、投与され得る。
【0068】
本明細書に用いられる場合、用語「全身投与」は、本発明の物品が、有意な量で個体の身体に広く分布し、生物学的効果を生じるような、その物品(またはより具体的には、それに含まれる抗原)の投与を指す。典型的な全身投与経路には、物品を脈管系へ直接的に導入することによる投与、または物品が吸収され、脈管系へ入り、血液を介して1つもしくは複数の所望の部位へ運ばれる、経口の、肺の、もしくは筋肉内の投与が挙げられる。
【0069】
全身投与は、非経口投与により得る。本明細書に用いられる場合、用語「非経口投与」は、本発明の物品が腸を通過しないような、その物品の投与を指す。用語「非経口投与」には、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、または動脈内投与が挙げられるが、それらに限定されない。
【0070】
上記で言及されているように、本発明の薬学的組成物は、アジュバントを含み得る。本明細書に用いられる場合、用語「アジュバント」は、抗原または抗原ペプチドと組み合わせて個体に投与された場合、免疫応答を長くし、増強し、または加速する化合物に関する。アジュバントは、1つまたは複数の機構によりそれらの生物学的活性を発揮すると想定され、その機構には、抗原の表面の増加、身体における抗原の保持の延長、抗原放出の遅延、抗原のマクロファージへのターゲティング、抗原の取り込みの増加、抗原プロセシングの増強、サイトカイン放出の刺激、B細胞、マクロファージ、樹状細胞、T細胞などの免疫細胞の刺激および活性化、ならびに免疫細胞の非特異的活性化が挙げられる。アジュバントは、油乳濁液(例えば、フロイントアジュバント)、ミネラル化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌毒など)、または免疫賦活性複合体などの化合物の不均一な群を含む。アジュバントについての例には、サポニン、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、トコフェロール、またはアルミニウムが挙げられるが、それらに限定されない。しかしながら、アジュバントはまた、マイナスの副作用を有する場合がある。例えば、アルミニウム塩は、無菌性腫瘍、好酸球増加、および筋膜炎を含む重篤な局所的および全身的副作用を引き起こす可能性があるが、幸いなことに、そのより重篤な副作用の大部分は、比較的まれである。加えて、アルツハイマー病などの神経変性疾患におけるアルミニウムの可能性のある役割に関する社会の懸念もある。結果的に、ヒト使用に適したより安全で、かつより効果的なアジュバントの大きな満たされていない要求がある。アジュバントの使用が余分であるならば、それに越したことはないであろう。
【0071】
本発明による薬学的組成物は、一般的に、「薬学的有効量」で適用される。本明細書に用いられる場合、用語「薬学的有効量」は、所望の反応または所望の効果を単独で、またはさらなる投与と共に、達成する量を指す。特定の疾患の処置の場合、所望の反応は、好ましくは、疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を減速させること、および、特に、疾患の進行を妨害し、または逆転させることを含む。疾患の処置における所望の反応はまた、疾患の発症の遅延、または発症の防止であり得る。本明細書に記載された物品または組成物の有効量は、処置されるべき状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズ、および体重を含む患者/対象の個々のパラメータ、処置の期間、(存在する場合)付随的な治療の型、特定の投与経路、ならびに類似した因子に依存する。したがって、本明細書に記載された物品または組成物の用量は、様々なそのようなパラメータに依存し得る。患者/対象における反応が最初の用量で不十分である場合、より高い用量(または異なる、より限局化された投与経路により達成される、効果がより高い用量)が用いられ得る。
【0072】
上記で言及されているように、本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含み得る。
【0073】
本明細書に用いられる場合、用語「賦形剤」は、結合剤、潤滑剤、増粘剤、表面活性剤、保存剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤などの活性成分ではない、薬学的組成物内の全ての物質を示すことを意図される。
【0074】
本明細書に用いられる場合、用語「希釈剤」は、希釈する、および/または薄める作用物質に関する。さらに、用語「希釈剤」は、溶液、懸濁物(例えば、液体または固体懸濁物)、および/または媒体を含む。
【0075】
本明細書に用いられる場合、用語「担体」は、例えばヒトへの、投与に適している、1つまたは複数の適合性の固体または液体増量剤に関する。用語「担体」は、活性構成成分の適用を促進するために活性構成成分と組み合わせられる天然または合成の有機または無機構成成分に関する。好ましくは、担体構成成分は、無菌の、水または油などの液体であり、それには、鉱油に由来するもの、動物に由来するもの、またはピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、ヒマワリ油などの植物に由来するものが挙げられる。塩溶液および水性デキストロースおよびグリセリン溶液もまた、水性担体化合物として用いられ得る。
【0076】
治療的使用のための薬学的に許容される担体または希釈剤は、薬学的分野においてよく知られており、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R Gennaro編、1985)に記載されている。適切な担体の例には、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター等が挙げられる。適切な希釈剤の例には、エタノール、グリセロール、および水が挙げられる。
【0077】
薬学的担体、希釈剤、および/または賦形剤は、意図された投与経路および標準薬務に関して選択され得る。本発明の薬学的組成物は、担体、賦形剤、もしくは希釈剤として、またはそれらに加えて、任意の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、および/または可溶化剤を含み得る。適切な結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、グルコース、無水ラクトース、フリーフローラクトース、ベータ-ラクトース、コーンシロップなどの天然糖、アラビアゴム、トラガカントゴムなどの天然および合成ゴム、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、およびポリエチレングリコールが挙げられる。適切な潤滑剤の例には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。保存剤、安定剤、色素、およびさらに香味剤が、薬学的組成物内に供給され得る。保存剤の例には、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、およびp-ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤および懸濁剤もまた用いられ得る。
【0078】
本発明の文脈において、用語「粒子」は、ポリペプチドにより形成された構造化実体を指す。本発明によれば、ポリペプチドにより形成された構造化実体は、シルクポリペプチドおよび抗原を含む。一実施形態において、粒子は、シルクポリペプチドおよび抗原を含む融合またはハイブリッドポリペプチドを含む。一つの好ましい実施形態において、粒子は、シルクポリペプチド、抗原、および酵素切断可能なリンカーを含む融合またはハイブリッドポリペプチドを含み、前記抗原が、前記酵素切断可能なリンカーを介して前記シルクポリペプチドにつながっており、または前記酵素切断可能なリンカーが前記シルクポリペプチドと前記抗原の間に位置する。本明細書に用いられる場合、用語「粒子」はさらに、ある特定の条件下でタンパク質凝集により形成され得るマイクロサイズまたはナノサイズの球構造を指す。粒子がマトリックスおよび表面を含み、またはそれらからなることが好ましい。好ましくは、マトリックスは、均一であり、より好ましくは、(例えば、電子顕微鏡法により決定された)いかなる明確な目に見える包含物も含まない。この点において、前記包含物は、空気、および本発明のポリペプチドには関係していないポリペプチドであり得ることは留意されるべきである。本明細書に用いられる場合、用語「表面」は、粒子の外側の球面を定義し、それは、周囲空間、例えば、周囲媒体または体液に直接、曝されているそれらの球面区画を含む。粒子は滑らかで均一に見えるが、超顕微鏡的レベルでのそれの表面は、不規則かつ拡散構造を有する薄いマントルを示す。したがって、表面は、周囲空間、例えば、周囲媒体または体液と界面を共有する粒子の最外層の輪郭をたどる。
【0079】
本明細書に用いられる場合、用語「マトリックス」は、粒子の内側の球体を定義し、それは表面ではない、すなわち、それは、上記定義によれば、周囲空間、例えば、周囲媒体または体液とのいかなる界面も含まない。マトリックスは、半径を有し、かつしたがって、通常、粒子の体積より小さい体積を有する固体球として理解されるべきである。マトリックスの体積は、通常、全体積の50%より大きく、好ましくは、60%、70%、80%、90%より大きく、最も好ましくは、95%より大きく、例えば、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、または95%より大きい。
【0080】
本明細書に用いられる場合。用語「凝集」または「相分離」は、特に液液相分離とみなすことができる、塩析機構による粒子形成を指す。「一相状態」が、単量体の、内因的に折り畳まれていないタンパク質分子の溶液により示された最初の状態である。例えば、コスモトロピックイオンの添加によりイオン強度などの束縛を変化させることは、系の自由エネルギーを変更して、タンパク質リッチな相と溶媒リッチな相への相分離をもたらす。この相分離された状態は、エネルギー的に有利であり、「タンパク質相」におけるタンパク質濃度は臨界レベルまで増加する。核形成のための臨界濃度に達すると、いくつかの構造化核が、タンパク質リッチな相に同時に形成される。核は、追加の単量体と相互作用し、それにより、構造を変えて、球状に成長し始める。タンパク質リッチな相におけるタンパク質濃度が溶解度の平衡より下にある時、球の成長は停止する。このため、球サイズはもう増加しない。したがって、相分離は、タンパク質リッチな相と溶媒リッチな相が分離することを意味する。理論に縛られるつもりはないが、球サイズは、一般的に、タンパク質濃度および混合条件に依存する。しかしながら、当技術分野において、タンパク質の凝集を引き起こすための様々な他の方法が存在する。
【0081】
ミクロスフェアの構築の過程は、典型的には、凝集の惹起後、光散乱によりモニターされる。特に、生じた粒子のコロイド安定性は、ある特定の波長での散乱光の強度を測定することにより分析することができる。また、平均粒子サイズおよび粒子サイズ分布は、静的光散乱(SLS)とも呼ばれる、レーザー回折により決定することができる。
【0082】
得られた粒子はまた、走査型電子顕微鏡法(SEM)およびフーリエ変換赤外分光法(FTIR)などの方法を用いて分析され得る。これらの方法のさらなる説明は、以下の説明および実施例に見出すことができる。
【0083】
相分離後、生成された粒子は、遠心分離、濾過、または沈降などの日常的な方法により分離することができる。調製された粒子は、その後、洗浄され、および/または、例えば、乾燥した、もしくは凍結乾燥した形で、保存され得る。
【0084】
用語「粒子の表面の正味電荷」は、粒子の表面における、正電荷および負電荷などの電荷の総和に関する。例えば、粒子が、それの表面上に、正電荷より多い数の負電荷を含む場合には、粒子の表面の正味電荷は負である。粒子が、それの表面上に、負電荷より多い数の正電荷を含む場合には、粒子の表面の正味電荷は正である。粒子が、それの表面上に、同数の正電荷と負電荷を含む場合には、粒子の表面の正味電荷は中性、特に、電気的中性である。したがって、本発明による粒子の表面の正味電荷は、負、正、または中性であり得る。好ましくは、本発明の粒子は、正味負の表面電荷を有する。
【0085】
用語「平均直径」は、粒子の平均直径を指し、各粒子の直径の和を粒子の総数で割ることにより計算され得る。用語「直径」は、球体の中心を通って、球体の外面上の2点をつなぐ線分の最大の長さを指すように通常、用いられるが、実質的に球の形または他の形を有する粒子の中心を通って、粒子の外面上の2点をつなぐ線分の最大の長さを指すようにも本明細書に用いられる。
【0086】
本明細書に用いられる場合、用語「プロテアーゼ(ペプチダーゼまたはプロテイナーゼとも名付けられる)」は、タンパク質分解を実施する、すなわち、ポリペプチド鎖においてアミノ酸を互いに連結するペプチド結合の加水分解によるタンパク質異化反応を始める任意の酵素を指す。プロテアーゼは、複数回、進化しており、異なるクラスのプロテアーゼが、完全に異なる触媒機構により同じ反応を実施し得る。プロテアーゼは、動物、植物、細菌、古細菌、およびウイルスに見出すことができる。
【0087】
本明細書に用いられる場合、用語「カテプシン(CTS)」は、全ての動物、加えて、他の生物体に見出されるプロテアーゼ(タンパク質を分解する酵素)を指す。構造、触媒機構、およびどのタンパク質を切断するかにより区別される、異なるファミリーメンバーが存在する。メンバーの大部分は、リソソーム中に見出される低いpHで活性化する。したがって、このファミリーの活性は、もっぱらそれらのオルガネラ内だけに存在する。カテプシンは、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンF、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンL1、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンW、またはカテプシンZであり得る。好ましくは、カテプシンは、カテプシンSまたはBである。より好ましくは、カテプシンはカテプシンSである。
【0088】
一実施形態において、本発明のポリペプチド、または本発明に用いられるポリペプチドは、プロテアーゼ切断可能なリンカー、例えば、カテプシンS切断可能なリンカーまたはカテプシンB切断可能なリンカーを含む。好ましくは、カテプシンS切断可能なリンカーは、配列番号1による配列を有し、もしくはそのバリアントであり、または配列番号2による配列を有し、もしくはそのバリアントであり、あるいはカテプシンB切断可能なリンカーは、配列番号2による配列を有し、またはそのバリアントである。この点において、カテプシンSは、それ自体の切断部位(配列番号1内に含まれる)、およびまた、カテプシンBにより通常、切断される切断部位(配列番号2内に含まれる)も切断することができることは留意されるべきである。配列番号1(GPMGLPG)による配列は、切断部位PMGLP(配列番号20)を含み、配列番号2(GAVGFLGIG)による配列は切断部位GFLG(配列番号21)を含む。切断部位GFLG(配列番号21)の代わりに、ジペプチドVal-Cit、またはテトラペプチドALAL(配列番号22)もしくはGGGF(配列番号23)が、カテプシンB切断部位として用いることができる。切断部位Val-Cit、ALAL(配列番号22)、またはGGGF(配列番号23)は、C16 CathBseq-SIINFEKL(配列番号15)粒子と組み合わせて、有効であり得る。この場合、配列番号15による配列内の切断部位GFLG(配列番号21)が、Val-Cit、ALAL(配列番号22)、またはGGGF(配列番号23)に置き換えられる。本発明のポリペプチド内に含まれるカテプシン切断可能なリンカーが、切断部位Val-Citまたは配列番号20~23による切断部位からなることも可能である。
【0089】
本発明の実施形態
本特許出願の発明者らは、驚くべきことに、シルクポリペプチドを含む物品、例えば、粒子の一部である抗原が、動物細胞、例えば、ヒト細胞により優先的に取り込まれることを見出した。この文脈において、主にシルクで構成される物品、例えば、粒子が、抗原を安定化し、かつそれを輸送可能にする補助物質として機能することに、本特許出願の発明者らは驚いた。その物品、例えば、粒子は、生物体(例えば、ヒト身体)内で跡形もなく分解され得る。その物品、例えば、粒子は、無毒性、特に無細胞毒性、および非免疫原性である。
【0090】
したがって、第1の態様において、本発明は、
(i)シルクポリペプチド、および
(ii)(ポリペプチド)抗原
を含むポリペプチドに関する。
【0091】
ポリペプチドは、同じmRNA分子から単鎖ポリペプチドとして翻訳され得るか、または、少なくとも2つの構成成分の別々の翻訳、およびその後の、例えば化学反応による、カップリングにより生成され得るかのいずれかである、少なくとも2つの構成成分で構成される分子であり得る。1番目の場合、シルクポリペプチドは、抗原に融合/付着している。2番目の場合、シルクポリペプチドは、抗原に連結/カップリングされる。好ましくは、ポリペプチドは、ハイブリッドポリペプチドまたは融合ポリペプチドとも名付けられ得る単鎖ポリペプチドである。
【0092】
一つの好ましい実施形態において、ポリペプチドは、酵素切断可能なリンカーをさらに含む。前記リンカーは、酵素により切断可能である任意のリンカーであり得る。酵素切断可能なリンカーが存在する場合、抗原が、前記リンカーを介してシルクポリペプチドにつながっており、または前記リンカーがシルクポリペプチドと抗原の間に位置する。ポリペプチドが単鎖ポリペプチド(ハイブリッドポリペプチドまたは融合ポリペプチドとも名付けられ得る)として産生される場合には、抗原は、酵素切断可能なリンカーを介してシルクポリペプチドに付着/融合している。ポリペプチドが少なくとも2つの構成成分の別々の翻訳、およびその後の、例えば化学反応による、カップリングにより生成される場合には、抗原は、酵素切断可能なリンカーを介して、シルクポリペプチドに連結/カップリングされる。酵素切断可能なリンカーが、例えば宿主細胞内の、酵素により細胞内で切断可能であることが特に好ましい。
【0093】
好ましくは、酵素切断可能なリンカーは、プロテアーゼ切断可能なリンカーである。前記リンカーは、プロテアーゼにより切断可能である任意のリンカーであり得る。
【0094】
より好ましくは、プロテアーゼ切断可能なリンカーはカテプシン切断可能なリンカーである。カテプシンは、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンF、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンL1、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンW、またはカテプシンZであり得る。カテプシン切断可能なリンカーは、カテプシンA、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンD、カテプシンE、カテプシンF、カテプシンG、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンL1、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンW、またはカテプシンZ切断可能なリンカーであり得る。
【0095】
さらにより好ましくは、カテプシン切断可能なリンカーは、カテプシンB切断可能なリンカーまたはカテプシンS切断可能なリンカーである。カテプシンS切断可能なリンカーが特に好ましい。
【0096】
カテプシンBは、ペプチダーゼC1ファミリーのメンバーである。それは、エンドペプチダーゼ活性とエキソペプチダーゼ活性の両方を有するリソソームシステインプロテアーゼである。それは、タンパク質代謝回転において役割を果たす。それはまた、アミロイド前駆体タンパク質セクレターゼとしても知られており、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質プロセシングに関与する。カテプシンBは、ほとんどあらゆる組織において遍在性に発現している。それとは対照的に、カテプシンSは、ある特定の組織においてのみに発現している。特に、カテプシンSは、マクロファージ、Bリンパ球、樹状細胞、およびミクログリアを含む抗原提示細胞により発現している。加えて、カテプシンSは、いくつかの上皮細胞により発現している。カテプシンSはまた、ペプチダーゼC1ファミリーのメンバーである。それは、リソソームシステインプロテアーゼである。それは、MHCクラスII経路による、抗原性タンパク質の分解およびそれらのさらなるプロセシングにおいて鍵となる役割を果たす。カテプシンSは、それ自体の切断部位(例えば、配列番号1参照)、およびカテプシンBにより通常、切断される切断部位(例えば、配列番号2参照)を切断することができる。この点において、カテプシンSは、通常カテプシンBにより切断されるその切断部位を、より低い程度で切断することは留意されるべきである。
【0097】
最も好ましくは、
(i)カテプシンS切断可能なリンカーは、配列番号1による配列を有し、もしくはそのバリアントであり、または配列番号2による配列を有し、もしくはそのバリアントであり、あるいは、
(ii)カテプシンB切断可能なリンカーは、配列番号2による配列を有し、もしくはそのバリアントである。
【0098】
本特許出願の発明者らは、カテプシンSが、カテプシンS切断可能なリンカー、例えば、配列番号1による配列を有するカテプシンS切断可能なリンカー、加えて、カテプシンB切断可能なリンカー、例えば、配列番号2による配列を有するカテプシンB切断可能なリンカーを切断し得ることを見出した。
【0099】
配列番号1または配列番号2バリアントは、それが由来する参照配列とは、アミノ酸配列において最高1個、2個、3個、または4個のアミノ酸変化(すなわち、置換、付加、挿入、欠失、N末端切り詰め、および/またはC末端切り詰め)だけ異なる。そのようなバリアントは、それが由来する参照モジュールとの配列同一性のある特定の程度により、代替として、または追加として特徴づけられ得る。したがって、配列番号1バリアントまたは配列番号2バリアントは、それぞれの参照配列との少なくとも60%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらに99.9%の配列同一性を有する。好ましくは、配列同一性は、それぞれの配列の全長に対してである。
【0100】
配列番号1または配列番号2の断片(または欠失バリアント)は好ましくは、それのN末端および/またはそれのC末端において最高1個、2個、3個、または4個のアミノ酸の欠失を有する。欠失はまた、内部にあり得る。
【0101】
加えて、配列番号1または配列番号2のバリアントまたは断片は、そのバリアントまたは断片が基づいているアミノ酸配列に関するその改変が、カテプシン、例えば、カテプシンSまたはBの、この配列を切断する能力にマイナスに影響しない場合のみ、本発明の文脈内で、配列番号1または配列番号2のバリアントまたは断片としてみなされる。カテプシンSまたはBが、配列番号1バリアントまたは配列番号2バリアントを切断する能力がまだあるかどうかを、例えば、その改変された配列を含む試験基質に対して酵素アッセイを実施することにより、当業者は容易に評価することができる。
【0102】
シルクポリペプチドは、スパイダーシルクポリペプチド、例えば、円網クモ(例えば、コガネグモ科(Araneidae)またはコガネグモ上科(Araneoids))の、牽引シルクポリペプチドなどの大瓶状腺シルクポリペプチド、小瓶状腺シルクポリペプチド、もしくは鞭毛状シルクポリペプチド、昆虫シルクポリペプチド、ムール貝足糸シルクポリペプチド、またはそれらの混合物であり得る。円網クモは、ニワオニグモ(Araneus diadematus)、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)、およびツヤクロゴケグモ(Latrodectus hesperus)からなる群から選択され得る。昆虫シルクポリペプチドは、チョウ目(Lepidoptera)、特にカイコガ(Bombyx mori)などのカイコガ科(Bombycidae)のであり得る。昆虫シルクポリペプチドはまた、ハチ目(Hymenoptera)、特にハナバチ(Anthophila)などのミツバチ上科(Apoidea)のであり得る。好ましくは、シルクポリペプチドはスパイダーシルクポリペプチドである。
【0103】
シルクポリペプチドが、少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%の反復単位の複数コピーを含み、またはそれからなるアミノ酸配列を有するポリペプチドであることが好ましい。シルクポリペプチドが、少なくとも95%の反復単位の複数コピーを含み、またはそれからなるアミノ酸配列を有するポリペプチドであることがより好ましい。前記反復単位は、同一または異なり得る。シルクポリペプチドは少なくとも2個の同一の反復単位を含むことが特に好ましい。例えば、シルクポリペプチドは、2~100個の間の反復単位、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、51個、52個、53個、54個、55個、56個、57個、58個、59個、60個、61個、62個、63個、64個、65個、66個、67個、68個、69個、70個、71個、72個、73個、74個、75個、76個、77個、78個、79個、80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、または100個の反復単位を含み得る。
【0104】
シルクポリペプチドが40~3000個の間のアミノ酸からなることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。シルクポリペプチドが40~1500個の間のアミノ酸からなることがより好ましい。シルクポリペプチドが200~1200個の間のアミノ酸からなることがさらにより好ましい。シルクポリペプチドが250~600個の間のアミノ酸からなることが最も好ましい。
【0105】
シルクポリペプチドが組換えシルクポリペプチドであることもまた(代替として、または追加として)好ましい。
【0106】
上記で言及されているように、シルクポリペプチドが少なくとも2個の同一の反復単位を含むことは特に好ましい。一実施形態において、反復単位は、モジュールC(配列番号3)またはそのバリアント、モジュールCCys(配列番号4)およびモジュールCカッパ(配列番号18)からなる群から非依存的に選択される。モジュールCCys(配列番号4)はモジュールC(配列番号3)のバリアントである。このモジュールにおいて、位置25におけるアミノ酸S(Ser)は、アミノ酸C(Cys)によって置き換えられている。モジュールCカッパ(配列番号18)もまた、モジュールC(配列番号3)のバリアントである。このモジュールにおいて、位置20におけるアミノ酸E(Glu)は、アミノ酸K(Lys)によって置き換えられている。
【0107】
モジュールCバリアントは、それが由来する参照モジュールCとは、アミノ酸配列において最高1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個のアミノ酸変化(すなわち、置換、付加、挿入、欠失、N末端切り詰め、および/またはC末端切り詰め)だけ異なる。そのようなモジュールバリアントは、それが由来する参照モジュールとの配列同一性のある特定の程度により、代替として、または追加として特徴づけられ得る。したがって、モジュールCバリアントは、それぞれの参照モジュールCとの少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはさらに99.9%の配列同一性を有する。好ましくは、配列同一性は、それぞれの参照モジュールCの少なくとも5個、10個、15個、18個、20個、24個、27個、28個、30個、34個、35個、またはそれ以上のアミノ酸の連続したひと続きに対して、好ましくは全長に対してである。
【0108】
配列同一性が、それぞれの参照モジュールCの全長に対して少なくとも80%であり、全長に対して少なくとも85%であり、全長に対して少なくとも90%であり、全長に対して少なくとも95%であり、全長に対して少なくとも98%であり、または全長に対して少なくとも99%であることが特に好ましい。配列同一性が、それぞれのモジュールCの少なくとも5個、10個、15個、18個、20個、24個、28個、もしくは30個のアミノ酸の連続したひと続きに対して少なくとも80%であり、少なくとも5個、10個、15個、18個、20個、24個、28個、もしくは30個のアミノ酸の連続したひと続きに対して少なくとも85%であり、少なくとも5個、10個、15個、18個、20個、24個、28個、もしくは30個のアミノ酸の連続したひと続きに対して少なくとも90%であり、少なくとも5個、10個、15個、18個、20個、24個、28個、もしくは30個のアミノ酸の連続したひと続きに対して少なくとも95%であり、少なくとも5個、10個、15個、18個、20個、24個、28個、もしくは30個のアミノ酸の連続したひと続きに対して少なくとも98%であり、または少なくとも5個、10個、15個、18個、20個、24個、28個、もしくは30個のアミノ酸の連続したひと続きに対して少なくとも99%であることがさらに特に好ましい。
【0109】
モジュールCの断片(または欠失)バリアントは、好ましくは、それのN末端および/またはそれのC末端における最高1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個のアミノ酸の欠失を有する。欠失はまた、内部にあり得る。
【0110】
加えて、モジュールCバリアントまたは断片は、そのバリアントまたは断片が基づいているアミノ酸配列に関するその改変が、シルクポリペプチドの、抗原を標的細胞へ内部移行する能力にマイナスに影響しない場合のみ、本発明の文脈内で、モジュールCバリアントまたは断片としてみなされる。モジュールCバリアントまたは断片を含むシルクポリペプチドが、抗原を標的細胞へ内部移行する能力がまだあるかどうかを、例えば、標的細胞、例えば、BMDCを、蛍光標識された、例えば、FITC標識された、抗原を含むスパイダーシルク粒子と培養し、かつフローサイトメトリー分析を行うことにより、当業者は容易に評価することができる(実験セクションの実施例11参照)。
【0111】
CysまたはCカッパバリアントもまた、本発明により包含され得る。CCysまたはCカッパバリアントに関して、モジュールCバリアントに関してなされているのと同じ説明/定義が適用される(上記参照)。
【0112】
モジュールC(配列番号3)またはそのバリアントの使用とは対照的に、Cカッパ(配列番号18)などの正荷電タンパク質の使用は、中性pHにおいて物品の正の表面電荷を生じる。正の表面電荷は細胞への取り込みを向上させ得る。
【0113】
シルクポリペプチドが少なくとも1個の非反復(NR)単位を含むことも特に好ましい。前記非反復(NR)単位は、N末端および/またはC末端に含まれ得る。一実施形態において、NR単位は、NR3(配列番号7)またはそのバリアント、NR4(配列番号8)またはそのバリアント、NR5(配列番号9)またはそのバリアント、およびNR6(配列番号10)またはそのバリアントからなる群から選択される。NR3(配列番号7)単位は、クモのニワオニグモ(Araneus diadematus)のADF-3のアミノ酸配列に基づいており、NR4(配列番号8)単位は、クモのニワオニグモ(Araneus diadematus)のADF-4のアミノ酸配列に基づいている(国際公開第2006/008163号パンフレット)。加えて、NR5(配列番号9)単位およびNR6(配列番号10)単位は、ツヤクロゴケグモ(Latrodectus hesperus)に由来する。
【0114】
NR3、NR4、NR5、またはNR6単位のバリアントに関して、モジュールCバリアントに関してなされているのと同じ説明/定義が適用される(上記参照)。
【0115】
NR3、NR4、NR5、またはNR6単位のバリアントまたは断片は、そのバリアントまたは断片が基づいているアミノ酸配列に関するその改変が、シルクポリペプチドの、抗原を標的細胞へ内部移行する能力にマイナスに影響しない場合のみ、本発明の文脈内で、NR3、NR4、NR5、またはNR6単位のバリアントまたは断片としてみなされる。NR3、NR4、NR5、またはNR6単位のバリアントまたは断片を含むシルクポリペプチドが、抗原を標的細胞へ内部移行する能力がまだあるかどうかを、例えば、標的細胞、例えば、BMDCを、蛍光標識された、例えば、FITC標識された、抗原を含むスパイダーシルク粒子と培養し、かつフローサイトメトリー分析を行うことにより、当業者は容易に評価することができる(実験セクションの実施例11参照)。
【0116】
シルクポリペプチドが少なくとも1個のタグ(配列)を含むことはさらに特に好ましい。タグは、N末端および/またはC末端に含まれ得る。タグは、好ましくは、非反復性である。それは、シルクポリペプチドの精製および/または検出に適している。タグは、HisタグまたはT7タグであり得る。好ましくは、T7タグは、配列番号5による配列、または配列番号6による配列を有する。
【0117】
一つの好ましい実施形態において、シルクポリペプチドは、(C)、(CCys、(Cカッパm、(C)Cys、CCys(C)、(C)Cys(C)、(C)NR、NR(C)、およびNR(C)NRからなる群から選択され、式中、mは8~96の整数、すなわち、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61,62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、または96であり、zは、1~3の整数、すなわち、1、2、または3であり、NRは非反復単位を表す。
【0118】
一つのより好ましい実施形態において、シルクポリペプチドは、C、C16、C32、C48、カッパ 、Cカッパ 16、Cカッパ 32、Cカッパ 48、CCys、C16Cys、C32Cys、およびC48Cysからなる群から選択される。
【0119】
好ましくは、抗原は疾患関連抗原である。より好ましくは、抗原、特に、疾患関連抗原は、ウイルス抗原、細菌または真菌抗原などの微生物抗原、動物寄生虫抗原、および腫瘍抗原からなる群から選択される。
【0120】
例示的な抗原として、本特許出願の発明者らは、アミノ酸配列SIINFEKL(配列番号11)を有するニワトリオボアルブミンのエピトープ(OVA257~264)を用いた。アミノ酸配列SIINFEKL(配列番号11)を有するニワトリオボアルブミンエピトープが選択され、それが、ペプチド-エピトープの免疫反応への効果を実証/モニターするための最も良く特徴づけられ、かつ一般的に適用された系であるからである。このアミノ酸配列SIINFEKL(配列番号11)を有するニワトリオボアルブミンエピトープ系は、最先端のツールであり、過剰の抗原の免疫系への提示のための普遍的に妥当な例に似ている。本明細書に示された実験について、本特許出願の発明者らは、配列番号12による配列を有するC16を含む組換えスパイダーシルクポリペプチドを用いた。本特許出願の発明者らは、シルクポリペプチドおよび抗原、またはシルクポリペプチド、酵素切断可能なリンカー、および抗原を含む異なるポリペプチドを組換え的に作製した。スパイダーシルクポリペプチドC16およびニワトリオボアルブミンのエピトープ(OVA257~264)を含むポリペプチドは、配列番号13による配列を有する。スパイダーシルクポリペプチドC16、カテプシン切断可能なリンカー、およびニワトリオボアルブミンのエピトープ(OVA257~264)を含むポリペプチドは、配列番号14による配列を有する。スパイダーシルクポリペプチドC16、カテプシンB切断可能なリンカー、およびニワトリオボアルブミンのエピトープ(OVA257~264)を含むポリペプチドは、配列番号15による配列を有する。
【0121】
第2の態様において、本発明は、第1の態様のポリペプチドをコードする核酸分子に関する。
【0122】
核酸分子がベクターに含まれることが好ましい。ベクターは、当業者に知られた任意のベクターであり得る。例えば、ベクターは、プラスミドベクター、アデノウイルスベクターまたはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、コスミドベクター、またはラムダファージベクターなどのファージベクターであり得る。前記ベクターは、クローニングベクターに加えて、発現ベクターも含む。発現ベクターは、一般的に、特定の宿主生物体(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫、または哺乳類)において、またはインビトロ発現系において、所望のコード配列、および作動可能に連結されたコード配列の発現を調節するための適切なDNA配列を含有する。発現調節配列は、(i)発現を調節する配列、例えば、プロモーター、TATAボックス、エンハンサー、(ii)転写後事象を調節する配列、例えば、ポリアデニル化、および(iii)核酸配列の翻訳を調節する配列であり得る。クローニングベクターは、一般的に、ある特定の所望のDNA断片を操作し、かつ増幅するために用いられ、所望のDNA断片の発現に必要な機能性配列を欠き得る。上記で言及されたベクターは好ましくは、組換えベクターである。
【0123】
細胞は、核酸分子または核酸分子を含むベクターで形質転換され、トランスフェクションされ、または感染し得る。細胞は、核酸分子を発現し、または核酸分子もしくは核酸分子を含むベクターを増幅するために用いることができる。細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。原核細胞は大腸菌(E.coli)細胞または枯草菌(Bacillus subtilis)細胞であり得る。真核細胞は、哺乳類細胞、植物細胞、酵母細胞、または昆虫細胞であり得る。哺乳類細胞は、CHO、COS、HeLa、293T、HEH、またはBHK細胞であり得る。酵母細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)細胞、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)細胞、またはハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)細胞であり得る。昆虫細胞は、チョウ類(Lepidoptera)昆虫細胞であり得る。植物細胞は、タバコ細胞、ジャガイモ細胞、トウモロコシ細胞、エンドウ細胞、またはトマト細胞であり得る。上記で言及された細胞はまた、宿主細胞とも呼ばれ得る。それらは好ましくは組換え細胞である。
【0124】
第3の態様において、本発明は、ポリペプチドを産生するための方法であって、
(a)細胞において第2の態様の核酸分子を発現し、それにより該細胞において該ポリペプチドを産生するステップ
を含む方法に関する。
【0125】
その細胞はまた、宿主細胞とも呼ばれ得る。細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。原核細胞は大腸菌(E.coli)細胞または枯草菌(Bacillus subtilis)細胞であり得る。真核細胞は、哺乳類細胞、植物細胞、酵母細胞、または昆虫細胞であり得る。哺乳類細胞は、CHO、COS、HeLa、293T、HEH、またはBHK細胞であり得る。酵母細胞は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)細胞、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)細胞、またはハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)細胞であり得る。昆虫細胞は、チョウ類(Lepidoptera)昆虫細胞であり得る。植物細胞は、タバコ細胞、ジャガイモ細胞、トウモロコシ細胞、エンドウ細胞、またはトマト細胞であり得る。上記で言及された細胞は、好ましくは組換え細胞である。
【0126】
核酸分子は、細胞内部で、(i)それ自体、自由に分散して、(ii)ベクター中に組み入れられて、または(iii)細胞ゲノムもしくはミトコンドリアDNAへ組み込まれて、見出され得る。好ましくは、ベクター、例えば、プラスミドまたはウイルスベクターは、発現ベクターである。
【0127】
細胞は、核酸分子または核酸分子を含むベクターで形質転換され、トランスフェクションされ、または感染し得る。
【0128】
好ましくは、方法は、
(b)ポリペプチドを細胞から単離するステップ
をさらに含む。
【0129】
ポリペプチドの細胞からの単離は、遠心分離、沈降、および/または濾過により、例えば、遠心分離と濾過により、沈降と濾過により、沈降と遠心分離により、または遠心分離と沈降と濾過により、前記ポリペプチドを前記細胞から分離することにより達成され得る。採取されるべきポリペプチドによって、遠心分離、沈降、または濾過についてのパラメータは異なり得る。当業者は、前記細胞によって産生された前記ポリペプチドを採取するために、適切な分離パラメータ、例えば、分離のために遠心分離を用いる、加速力/G力および/もしくは時間、分離のために濾過を用いる、フィルターサイズ、ならびに/または分離のために沈降を用いる、沈降時間を容易に適合させることができる。
【0130】
ステップ(b)後、単離されたポリペプチドのさらなる精製が必要とされる場合がある。前記精製は、クロマトグラフィ、好ましくは、カラムクロマトグラフィ、より好ましくはサイズ排除クロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、もしくは高圧液体クロマトグラフィ、電気泳動、好ましくはゲル電気泳動、または超遠心により達成され得る。ポリペプチドの産生のための好ましい単離方法は、国際公開第2011/120690号パンフレットA2に記載されている。
【0131】
一つの好ましい実施形態において、精製されたポリペプチドはエンドトキシンフリーである。エンドトキシン除去は、濾過、(例えば、オートクレーブ内での)蒸気滅菌、または両方の組合せ、すなわち、濾過と(例えば、オートクレーブ内での)蒸気滅菌により達成される。
【0132】
第4の態様において、本発明は、第1の態様のポリペプチドを含む物品に関する。その物品は、抗原担体または抗原担体媒介物とも呼ばれ得る。
【0133】
物品は、粒子、カプセル、繊維、フィルム、顆粒、ゲル、繊維で作られた布、棒またはその束からなる群から選択され得る。好ましくは、棒は、繊維を含み、またはそれからなる。好ましくは、布は、織った、または不織の布である。前記物品が細胞毒性でなく、かつ免疫原性でないことが好ましい。前記物品が滅菌できることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。
【0134】
好ましくは、前記物品は粒子である。粒子が細胞毒性でなく、かつ免疫原性でないことが好ましい。前記物品が滅菌できることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。粒子は、好ましくは、ナノ粒子であり、細胞の取り込みが、それの作用経路の主要な局面であり、それゆえに、望ましいからである。
一実施形態において、粒子は、50nmから1000nmまで、例えば、100nmから900nmまで、200nmから800nmまで、200nmから700nmまで、300nmから600nmまで、300nmから500nmまで、または300nmから400nmまでの範囲の平均直径を有する。250nmから520nmまでの範囲が特に好ましい。一つのさらなる実施形態において、粒子は、少なくとも50nm、少なくとも60nm、少なくとも70nm、少なくとも80nm、少なくとも90nm、少なくとも100nm、少なくとも150nm、少なくとも200nm、少なくとも250nm、少なくとも300nm、少なくとも400nm、少なくとも500nm、少なくとも600nm、少なくとも700nm、少なくとも800nm、少なくとも900nmの平均直径を有し、および/または粒子は、1000nm以下、900nm以下、800nm以下、700nm以下、600nm以下、520nm以下、500nm以下、400nm以下、300nm以下、250nm以下、200nm以下、150nm以下、100nm以下、90nm以下、80nm以下、70nm以下、60nm以下の平均直径を有する。
一つの好ましい実施形態において、粒子は、(i)50nmから400nmまで、好ましくは50nmから200nmまでの範囲、または(ii)200nmから1000nmまで、好ましくは200nmから800nmまで、より好ましくは250nmから520nmまでもしくは300nmから600nmまでの範囲の平均直径を有する。
【0135】
第5の態様において、本発明は、物品を作製するための方法であって、
(a)第1の態様のポリペプチドを含む水溶液を供給するステップ、および
(b)(a)で供給された該溶液から(out of/from)物品を形成するステップ
を含む方法に関する。
【0136】
上記物品は、抗原担体または抗原担体媒介物とも呼ばれ得る。
【0137】
シルクポリペプチドおよび抗原が同じポリペプチドの一部であるため、物品形成後、追加の負荷ステップが必要ではない。
【0138】
主にシルクで構成される物品は、抗原を安定化し、かつそれを輸送可能にする補助物質として機能する。物品は、生物体(例えば、ヒト身体)内で跡形もなく分解され得る。
【0139】
上記の物品形成工程は、有機溶媒を必要としない。有機溶媒の回避は、有機溶媒感受性の抗原がそれらの特徴的な特性を保持するという利点をもつ。
【0140】
好ましくは、水溶液中のポリペプチドの濃度は、0.1重量%/体積から30重量%/体積の間、より好ましくは1重量%/体積から20重量%/体積の間、さらにより好ましくは1重量%/体積から20重量%/体積の間、最も好ましくは2~8重量%/体積または4~6重量%/体積である。したがって、例えば、水溶液中のポリペプチドの濃度は、0.1、0.4、0.6、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、9.0、10.0、12.0、15.0、18.0、20.0、25.0、または30.0重量%/体積である。
【0141】
水溶液は、緩衝水溶液、または工業用HOもしくは脱イオンHOなどの水(HO)であり得る。緩衝水溶液は、例えば、Tris/HClであり得る。好ましくは、緩衝水溶液のpHは、pH5.0からpH9.0の間、より好ましくはpH6.0からpH8.0の間、さらにより好ましくはpH6.7からpH7.2の間、例えば、Tris/HCl、pH7.0、pH7.5、またはpH8.0である。好ましくは、緩衝水溶液は、10mMから100mMの間のTris/HCl、より好ましくは、10から50mMの間のTris/HCl、最も好ましくは、10から20mMの間のTris/HCl、例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、または100mM Tris/HClの溶液である。
【0142】
前記物品は、粒子、カプセル、繊維、フィルム、顆粒、ゲル、繊維で作られた布、棒またはその束からなる群から選択され得る。好ましくは、棒は、繊維を含み、またはそれからなる。好ましくは、布は、織った、または不織の布である。前記物品が細胞毒性でなく、かつ免疫原性でないことが好ましい。前記物品が滅菌できることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。
【0143】
一実施形態において、前記物品は粒子である。粒子が細胞毒性でなく、かつ免疫原性でないことが好ましい。前記粒子が滅菌できることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。一般的に、水溶液から出発して、ポリペプチドの凝集は、粒子を形成するためのある特定の条件下で引き起こすことができる。物品が粒子である場合、ステップ(b)は、ポリペプチドの凝集を引き起こすことを含む。したがって、一つの好ましい実施形態において、方法は、粒子を作製するためであり、
(a)第1の態様のポリペプチドを含む水溶液を供給するステップ、および
(b)(a)で供給された該溶液から(out of/from)粒子を形成するステップであって、該形成がポリペプチドの凝集を引き起こすことを含むステップ
を含む。凝集は、pHシフト、イオン交換、ずり応力、アルコールの添加、塩の添加、水の除去、温度変化により、およびそれらの組合せにより、引き起こされ得る。アルコールはエタノールまたはメタノールであり得る。塩は、好ましくはリオトロピック塩である。リオトロピック塩は、硫酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、およびリン酸カリウムからなる群から選択され得る。一つのさらなる(代替として、または追加としての)好ましい実施形態において、方法はさらに、
(c)粒子を相分離により分離するステップ
を含む。相分離後、生成された粒子は、遠心分離、沈降、および/または濾過などの日常的な方法によりさらに分離することができる。粒子サイズは、以下のパラメータの1つまたは複数を調整することにより最適化され得る:シルクポリペプチドおよび/もしくは塩濃度、調製中の温度、混合強度、ならびに/またはタンパク質沈殿に用いられる有機溶媒もしくは水性溶媒。代替として、または追加として、粒子サイズは、撹拌機、静的ミキサーその他のような混合装置の形状大きさを調整することにより最適化され得る。調製された粒子は、その後、洗浄され得る。粒子はまた、例えば、乾燥または凍結乾燥した形で保存され得る。その工程は、無菌条件下で行われ得る。粒子は、好ましくは、ナノ粒子であり、細胞の取り込みが、それの作用経路の主要な局面であり、それゆえに、望ましいからである。
【0144】
一つの代替の実施形態において、物品は繊維である。この場合、水溶液はまた、紡糸液とも呼ばれ得る。繊維が細胞毒性でなく、かつ免疫原性でないことが好ましい。繊維が滅菌できることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。物品が繊維である場合、ステップ(b)は、水溶液/紡糸液から繊維を引き出すこと、または水溶液/紡糸液から繊維を押し出して、引き出すことを含む。したがって、一つの好ましい実施形態において、方法は繊維を作製するためであり、
(a)第1の態様のポリペプチドを含む水溶液を供給するステップ、および
(b)(a)で供給された該溶液から(out of/from)繊維を形成するステップであって、該形成が水溶液/紡糸液から繊維を引き出し、または水溶液/紡糸液から繊維を押し出して、引き出すことを含むステップ
を含む。湿式紡糸方法または電界紡糸方法などの紡糸方法は、当業者に知られている。例えば、水溶液/紡糸液が、紡糸口金を通して押し出されて、繊維を形成する。生じた繊維はさらに、引き出され、または引き伸ばされ得る。分子の結晶配置と非結晶配置の両方が繊維に存在する時はいつでも、引き出すことまたは引き伸ばすことが、分子が繊維の壁に、より平行になって、繊維の引張強度および強靱性を増加させるように分子を配向するのに十分なずり応力を与える。繊維は、布、例えば、織った、または不織の布を作製するために用いられ得る。当業者は、布を作製する、例えば、製織工程を可能にする技術を心得ている。したがって、代替の実施形態において、物品は繊維で作られた布であり得る。繊維はまた、棒の一部でもあり得る。好ましくは、棒は、繊維を含み、またはそれからなる。棒の束もまた、本発明に包含され得る。
【0145】
一つの代替の実施形態において、物品はフィルムである。この場合、水溶液は流延溶液とも呼ばれ得る。フィルムが細胞毒性でなく、かつ免疫原性でないことが好ましい。フィルムが滅菌できることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。物品がフィルムである場合、ステップ(b)は、ポリペプチドを含む水溶液/流延溶液を支持体上に流延することを含む。したがって、一つの好ましい実施形態において、方法はフィルムを作製するためであり、
(a)第1の態様のポリペプチドを含む水溶液を供給するステップ、および
(b)(a)で供給された該溶液から(out of/from)フィルムを形成するステップであって、該形成が、該ポリペプチドを含む水溶液/流延溶液を支持体上に流延することを含むステップ
を含む。一つのさらなる(代替として、または追加としての)好ましい実施形態において、方法はさらに、
(c)フィルムを支持体から分離する/取り出すステップ
を含む。
【0146】
一つの代替の実施形態において、物品はカプセルである。カプセルが細胞毒性でなく、かつ免疫原性でないことが好ましい。カプセルが滅菌できることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。
【0147】
物品がカプセルである場合、ステップ(b)は、少なくとも2つの相の乳濁液を生成するステップであって、該乳濁液が、第1の相として(a)に供給された溶液、および前記第1の相と実質的に混ざらない少なくとも1つのさらなる相を含有するステップ、および前記少なくとも2つの相の界面でポリペプチドのポリマーネットワークを形成するステップを含む。したがって、一つの好ましい実施形態において、方法はカプセルを作製するためであり、
(a)第1の態様のポリペプチドを含む水溶液を供給するステップ、および
(b)(a)で供給された該溶液から(out of/from)カプセルを形成するステップであって、該形成が、少なくとも2つの相の乳濁液を生成するステップであって、該乳濁液が、第1の相として(a)に供給された溶液、および前記第1の相と実質的に混ざらない少なくとも1つのさらなる相を含有するステップ、および前記少なくとも2つの相の界面でポリペプチドのポリマーネットワークを形成するステップを含む、ステップ
を含む。一つのさらなる(代替として、または追加としての)好ましい実施形態において、方法はさらに、
(c)タンパク質ポリマーネットワーク(カプセル)を乳濁液から分離するステップ
を含む。これは、遠心分離、沈降、および/または濾過により行われ得る。ポリペプチドからカプセルを作製するための好ましい方法は、国際公開第2007/014755号パンフレットA1に記載されている。
【0148】
物品はまた、顆粒またはゲルであり得る。ポリペプチドからゲルを作製するための好ましい方法は、国際公開第2007/014755号パンフレットA1に記載されている。
【0149】
第6の態様において、本発明は、第4の態様の物品を含む薬学的組成物に関する。
【0150】
本物品はまた、抗原担体または抗原担体媒介物とも呼ばれ得る。
【0151】
本物品は、粒子、カプセル、繊維、およびフィルムからなる群から選択され得る。前記物品が細胞毒性でなく、かつ免疫原性でないことが好ましい。前記物品が滅菌できることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。
【0152】
本特許出願の発明者らは、驚くべきことに、本物品の全身投与後、局所リンパ節中、ならびに/または抗原提示細胞、特に樹状細胞および/もしくはマクロファージ中の物品の蓄積が起こることを見出した。加えて、本物品は、皮膚の下に貯蔵所を形成した。本物品により運ばれた抗原は、前記細胞において免疫応答を誘導した。
【0153】
前記薬学的組成物は、疾患または障害を処置し、防止し、またはその重症度を低下させるのに有用である。それは、局所的に、または全身的に投与され得る。薬学的組成物が、局所投与または全身投与用に製剤化されることが好ましい。特に、局所投与は、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与により、全身投与は、動脈内投与による。好ましくは、前記組成物は、皮下に、皮内に、または筋肉内に投与される。
【0154】
前記組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含む。アジュバントが追加として存在し得る。
【0155】
本特許出願の発明者らは、驚くべきことに、シルクポリペプチドを含む物品、例えば、粒子の一部である抗原を含む薬学的組成物におけるアジュバントの使用が、もはや必要とされないことを見出した。アジュバントなしの組成物に含まれる抗原の有効性は、アジュバントありの組成物に含まれる同じ抗原より良く、または少なくともそれと同じくらい良い。アジュバントの省略は、副作用およびワクチン不適合性が低下し得、場合によっては、回避することさえできるというプラス効果を生じる。したがって、前記組成物がアジュバントをさらに含まないことは二者択一的に好ましい。
【0156】
第7の態様において、本発明は、医薬品としての使用のための、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物に関する。医薬品は、例えば、免疫化もしくはワクチン接種、または抗癌薬物などの、免疫応答を誘導するための、または免疫療法のための、ワクチンであり得る。
【0157】
第8の態様において、本発明は、免疫応答を誘導するための、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物に関する。
【0158】
癌に対する免疫応答が誘導されることが好ましい。癌は、例えば、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、または白血病であり得る。より具体的には、癌は、例えば、骨癌、血液癌、肺癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部の癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、膀胱の癌、腎臓の癌、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄の軸の腫瘍、グリオーマ、髄膜腫、または下垂体腺腫であり得る。
【0159】
感染性疾患または自己免疫疾患に対する免疫応答が誘導されることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。感染性疾患は、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、または寄生虫性疾患であり得る。より具体的には、感染性疾患は、例えば、肝炎、性行為感染症(例えば、クラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、またはインフルエンザであり得る。自己免疫疾患は、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、関節リウマチ、溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、または乾癬であり得る。
【0160】
免疫応答の誘導は、処置される対象/患者の免疫化またはワクチン接種において生じ得る。
【0161】
第9の態様において、本発明は、疾患の予防的および/または治療的処置における使用のための、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物に関する。
【0162】
疾患が癌であることが好ましい。癌は、例えば、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、または白血病であり得る。より具体的には、癌は、例えば、骨癌、血液癌、肺癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部の癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、膀胱の癌、腎臓の癌、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄の軸の腫瘍、グリオーマ、髄膜腫、または下垂体腺腫であり得る。
【0163】
疾患が感染性疾患または自己免疫疾患であることがさらにさらに(代替として、または追加として)好ましい。感染性疾患は、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、または寄生虫性疾患であり得る。より具体的には、感染性疾患は、例えば、肝炎、性行為感染症(例えば、クラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、またはインフルエンザであり得る。自己免疫疾患は、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、関節リウマチ、溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、または乾癬であり得る。疾患が呼吸器疾患であることがさらに好ましい。
【0164】
本明細書に記載されているような抗原は、好ましくは、標的区域へ直接、適用される。抗原の標的区域への直接的適用は、より高い局所的活性薬学的成分(API)濃度を可能にし、一方、同時に、全身適用の有害な副作用が最小化される。噴霧される物品(粒子、微小粒子、またはカプセル)の使用は、下気道においてAPI沈着を向上させ得る。肺への抗原送達または肺ワクチン接種は、免疫応答を全身的に誘導することを可能にし、多数の免疫細胞が、口、鼻、または肺の組織の粘膜に位置するからである。物品(粒子、微小粒子、またはカプセル)の肺への投与は、肺ワクチン接種のための魅力的な送達の試みであり、ペプチドが、粒子により保護され、かついったん粒子が抗原提示細胞によって取り込まれると放出されるからである。エアロゾル化工程中に、負荷された抗原を喪失するリスクが常にあるため、第4の態様の物品、第6の態様の薬学的組成物、または第7~第9の態様により用いられる物品もしくは薬学的組成物は、有望な代替物である。活性薬学的部分の、抗原担体分子のアミノ酸配列への組込みにより、噴霧中の抗原喪失のリスクが非常に低い。
【0165】
さらなる態様において、本発明は、対象においてT細胞を刺激し、プライミングし、および/または増殖させるための、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物に関する。
【0166】
第10の態様において、本発明は、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、抗原を細胞に送達するための方法に関する。
【0167】
好ましい実施形態において、投与するステップは、物品を細胞へ内部移行し、物品から抗原を放出することを含む。抗原が酵素により物品から放出され、その酵素が、酵素切断可能なリンカーを切断し(細胞内で、細胞内部で)、それにより、抗原を細胞に送達することが好ましい。好ましくは、酵素切断可能なリンカーは、プロテアーゼ切断可能なリンカー、より好ましくは、カテプシン切断可能なリンカー、さらにより好ましくはカテプシンSまたはB切断可能なリンカー、最も好ましくは(i)配列番号1による配列もしくはそのバリアントを有するカテプシンS切断可能なリンカー、または配列番号2による配列もしくはそのバリアントを有するカテプシンS切断可能なリンカー、あるいは(ii)配列番号2による配列を有するカテプシンB切断可能なリンカーである。酵素は、好ましくはプロテアーゼ、より好ましくはカテプシン、さらにより好ましくはカテプシンSまたはBである。
【0168】
細胞は抗原提示細胞であることが好ましい。抗原提示細胞が樹状細胞および/またはマクロファージであることがより好ましい。
【0169】
対象は健康であってもよく、抗原は、免疫化またはワクチン接種のために送達される。対象はまた、罹患していてもよく(すなわち、患者)、例えば、癌を患っており、抗原は、疾患を治癒させるために送達される。
【0170】
第11の態様において、本発明は、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象において免疫応答を誘導するための方法に関する。
【0171】
癌に対する免疫応答が誘導されることが好ましい。癌は、例えば、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、または白血病であり得る。より具体的には、癌は、例えば、骨癌、血液癌、肺癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部の癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、膀胱の癌、腎臓の癌、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄の軸の腫瘍、グリオーマ、髄膜腫、または下垂体腺腫であり得る。
【0172】
感染性疾患または自己免疫疾患に対する免疫応答が誘導されることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。感染性疾患は、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、または寄生虫性疾患であり得る。より具体的には、感染性疾患は、例えば、肝炎、性行為感染症(例えば、クラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、またはインフルエンザであり得る。自己免疫疾患は、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、関節リウマチ、溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、または乾癬であり得る。
【0173】
免疫応答の誘導は、処置される対象/患者の免疫化またはワクチン接種において生じ得る。
【0174】
第12の態様において、本発明は、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象における疾患の予防的および/または治療的処置に関する。
【0175】
疾患が癌であることが好ましい。癌は、例えば、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、または白血病であり得る。より具体的には、癌は、例えば、骨癌、血液癌、肺癌、肝癌、膵癌、皮膚癌、頭頚部の癌、皮膚または眼球内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌腫、ホジキン病、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、膀胱の癌、腎臓の癌、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄の軸の腫瘍、グリオーマ、髄膜腫、または下垂体腺腫であり得る。
【0176】
疾患が感染性疾患または自己免疫疾患であることがさらに(代替として、または追加として)好ましい。感染性疾患は、例えば、ウイルス性疾患、細菌性疾患、または寄生虫性疾患であり得る。より具体的には、感染性疾患は、例えば、肝炎、性行為感染症(例えば、クラミジアまたは淋病)、結核、HIV/後天性免疫不全症候群(AIDS)、ジフテリア、B型肝炎、C型肝炎、コレラ、重症急性呼吸器症候群(SARS)、鳥インフルエンザ、またはインフルエンザであり得る。自己免疫疾患は、例えば、橋本甲状腺炎、グレーブス病、ループス、多発性硬化症、関節リウマチ、溶血性貧血、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、セリアック病、クローン病、大腸炎、糖尿病、強皮症、または乾癬であり得る。
【0177】
第13の態様において、本発明は、第4の態様の物品または第6の態様の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象においてT細胞を刺激し、プライミングし、および/または増殖させるための方法に関する。
【0178】
本発明は以下のように要約される:
1.(i)シルクポリペプチド、および
(ii)抗原
を含むポリペプチド。
2.前記ポリペプチドが酵素切断可能なリンカーをさらに含む、項目1に記載のポリペプチド。
3.前記抗原が前記酵素切断可能なリンカーを介して前記シルクポリペプチドとつながっている、項目2に記載のポリペプチド。
4.前記酵素切断可能なリンカーがプロテアーゼ切断可能なリンカーである、項目2または3に記載のポリペプチド。
5.前記プロテアーゼ切断可能なリンカーがカテプシン切断可能なリンカーである、項目4に記載のポリペプチド。
6.前記カテプシン切断可能なリンカーがカテプシンS切断可能なリンカーまたはカテプシンB切断可能なリンカーである、項目5に記載のポリペプチド。
7.(i)前記カテプシンS切断可能なリンカーが、配列番号1による配列を有し、もしくはそのバリアントであり、または配列番号2による配列を有し、もしくはそのバリアントであり、あるいは
(ii)前記カテプシンB切断可能なリンカーが、配列番号2による配列を有し、もしくはそのバリアントである、項目6に記載のポリペプチド。
8.前記シルクポリペプチドが組換えシルクポリペプチドである、項目1から7のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
9.前記シルクポリペプチドが少なくとも2個の同一の反復単位を含む、項目1から8のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
10.前記反復単位が、配列番号3による配列またはそのバリアントを有するモジュールC、配列番号4による配列を有するモジュールCCys、および配列番号18による配列を有するモジュールCカッパからなる群から非依存的に選択される、項目9に記載のポリペプチド。
11.前記シルクポリペプチドが少なくとも1個の非反復(NR)単位および/またはタグを含む、項目1から10のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
12.前記抗原が、ウイルス抗原、微生物抗原、好ましくは細菌抗原または真菌抗原、動物寄生虫抗原、および腫瘍抗原からなる群から選択される、項目1から11のいずれか一項目に記載のポリペプチド。
13.項目1から12のいずれか一項目に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
14.ポリペプチドを産生するための方法であって、
(a)細胞において項目13に記載の核酸分子を発現させ、それにより該細胞において該ポリペプチドを産生するステップを含む方法。
15.(b)前記細胞から前記ポリペプチドを単離するステップをさらに含む、項目14に記載のポリペプチド。
16.項目1から12のいずれか一項目に記載のポリペプチドを含む物品。
17.前記物品が、粒子、カプセル、繊維、フィルム、顆粒、ゲル、繊維で作られた布、棒またはその束からなる群から選択される、項目16に記載の物品。
18.前記粒子が50nmから1000nmまでの範囲の平均直径を有する、項目17に記載の物品。
19.前記粒子が正味負の表面電荷を有する、項目17または18のいずれか一項目に記載の物品。
20.前記粒子が細胞毒性でなく、かつ免疫原性でない、項目17から19のいずれか一項目に記載の物品。
21.前記粒子が滅菌できる、項目17から20のいずれか一項目に記載の物品。
22.物品を作製するための方法であって、
(a)項目1から12のいずれか一項目に記載のポリペプチドを含む水溶液を供給するステップと、
(b)(a)で供給された該溶液から(out of/from)物品を形成するステップと、を含む方法。
23.前記水溶液中の前記ポリペプチドの濃度が、0.1重量%/体積から30重量%/体積の間、好ましくは1重量%/体積から20重量%/体積の間である、項目22に記載の方法。
24.前記物品が粒子であり、かつステップ(b)が前記ポリペプチドの凝集を引き起こすことを含む、項目22または23に記載のポリペプチド。
25.凝集が、pHシフト、イオン交換、ずり応力、アルコールの添加、塩、好ましくはリオトロピックな塩の添加、水の除去、温度変化により、およびそれらの組合せにより、引き起こされる、項目24に記載の方法。
26.(i)前記アルコールがエタノールもしくはメタノールであり、または
(ii)前記リオトロピック塩が、硫酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、およびリン酸カリウムからなる群から選択される、項目25に記載の方法。
27.(c)前記粒子を相分離により分離するステップをさらに含む、項目24から26のいずれか一項目に記載の方法。
28.項目16から21のいずれか一項目に記載の物品を含む薬学的組成物。
29.1つまたは複数の薬学的に許容される担体、希釈剤、および/または賦形剤をさらに含む、項目28に記載の薬学的組成物。
30.アジュバントをさらに含む、項目28または29に記載の薬学的組成物。
31.アジュバントをさらに含むことがない、項目28または29に記載の薬学的組成物。
32.医薬品としての使用のための、項目16から21のいずれか一項目に記載の物品、または項目28から31のいずれか一項目に記載の薬学的組成物。
33.免疫応答を誘導するための、項目16から21のいずれか一項目に記載の物品、または項目28から31のいずれか一項目に記載の薬学的組成物。
34.疾患の予防的および/または治療的処置における使用のための、項目16から21のいずれか一項目に記載の物品、または項目28から31のいずれか一項目に記載の薬学的組成物。
35.項目16から21のいずれか一項目に記載の物品、または項目28から31のいずれか一項目に記載の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、抗原を細胞に送達するための方法。
36.前記細胞が抗原提示細胞である、項目35に記載の方法。
37.前記抗原提示細胞が樹状細胞および/またはマクロファージである、項目36に記載の方法。
38.項目16から21のいずれか一項目に記載の物品、または項目28から31のいずれか一項目に記載の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象において免疫応答を誘導するための方法。
39.項目16から21のいずれか一項目に記載の物品、または項目28から31のいずれか一項目に記載の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象における疾患の予防的および/または治療的処置のための方法。
40.項目16から21のいずれか一項目に記載の物品、または項目28から31のいずれか一項目に記載の薬学的組成物を対象に投与するステップを含む、対象においてT細胞を刺激し、プライミングし、および/または増殖させるための方法。
【0179】
配列表は以下の配列を含む:
配列番号1 カテプシンS切断可能なリンカー
配列番号2 カテプシンSおよびB切断可能なリンカー
配列番号3 モジュールC
配列番号4 モジュールCCys
配列番号5 T7-タグ
配列番号6 T7-タグ
配列番号7 NR3単位
配列番号8 NR4単位
配列番号9 NR5単位
配列番号10 NR6単位
配列番号11 ニワトリオボアルブミンのエピトープ(OVA257~264)、SIINFEKL
配列番号12 C16
配列番号13 C16-SIINFEKL
配列番号14 C16-CathS-SIINFEKL
配列番号15 C16-CathB-SIINFEKL
配列番号16 カテプシンB切断可能なリンカーおよびニワトリオボアルブミンのエピトープ(OVA257~264)を含むハイブリッドポリペプチドから切断されたIGSIINFEKLG配列
配列番号17 カテプシンS切断可能なリンカーおよびニワトリオボアルブミンのエピトープ(OVA257~264)を含むハイブリッドポリペプチドから切断されたLPGSIINFEKLG配列
配列番号18 モジュールCカッパ
【0180】
配列番号12~配列番号15に関して、C末端のG(Gly)が存在してもしなくてもいいことは留意されるべきである。
【0181】
本発明の様々な改変およびバリエーションは、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明らかであろう。本発明は、特定の好ましい実施形態に関して記載されているが、主張されているような本発明が、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないことは、理解されているはずである。実際、当業者に明白である、本発明を行うための記載された様式の様々な改変は、本発明により網羅されることを意図される。
【0182】
実施例
下記に示された実施例は、例証のみを目的とし、上記の発明を決して限定するものではない。用語「SIIN」と「SIINFEKL」だけでなく、用語「NP」と「スパイダーシルク粒子」、用語「SIIN」と「SIINFEKL」、用語「C16-CathB-SIINFEKL」と「C16-CathB-SIIN」と「eADF4(C16) CathB」と「SSP25 - eADF4(C16-CathB-CD8)」、用語「C16-CathS-SIINFEKL」と「C16-CathS-SIIN」と「eADF4(C16)CathS」と「SSP26 - eADF4(C16-CathS-CD8)」は、本明細書では交換可能に用いられる。SIINFEKL(配列番号11)は、ニワトリオボアルブミンのエピトープ(OVA257~264)のアミノ酸配列を表す。この抗原は、MHC IおよびCD8 T細胞受容体との相互作用を介して免疫応答を刺激する。
【0183】
実施例1:シルクポリペプチド抗原粒子の産生
ポリペプチドSSP25 - eADF4(C16-CathS-CD8)(1)、SSP26 - eADF4(C16-CathB-CD8)(2)、C16-SIIN(3)、およびC16(4)を、Geneart(Regensburg)において遺伝子合成により合成した。
(1)C16-CathS-SIINFEKL、それぞれ、SSP26 - eADF4(C16-CathS-CD8)(配列番号14)
(C16)GPMGLPG SIINFEKL
C16、カテプシンSプロテアーゼ切断部位、およびSIINFEKL(配列番号11)を含むハイブリッドポリペプチド。
(2)C16-CathB-SIINFEKL、それぞれ、SSP25 - eADF4(C16-CathB-CD8)(配列番号15)
(C16)GAVGFLGIG SIINFEKL
C16、カテプシンBプロテアーゼ切断部位、およびSIINFEKL(配列番号11)を含むハイブリッドポリペプチド。
(3)C16-SIINFEKL(配列番号13)
(C16)GGSG SIINFEKL
C16およびSIINFEKL(配列番号11)を含むハイブリッドポリペプチド。
(4)C16(配列番号12)
C16
抗原(SIINFEKL(配列番号11))を含まないハイブリッドポリペプチド。
【0184】
SSP25 - eADF4(C16-CathB-CD8)、SSP26 - eADF4(C16-CathS-CD8)、C16-SIINFEKL、およびC16をコードするポリペプチドを、国際公開第2006/008163号パンフレットA2に記載されているように、産生し、精製した。
【0185】
実施例2:オートクレーブ処理による滅菌
第1のステップにおいて、約150mgのタンパク質(C16-CathB-SIINFEKL、C16-CathS-SIINFEKL、C16-SIINFEKL、およびC16)を計量して、ガラスのバイアルへ入れた(DIN 10R)。その後、C16タンパク質を、7.5ml HPW(高純度水)で懸濁した。バイアルを、ゴム栓で塞ぎ、アルミニウムキャップで覆った。蒸気滅菌を、GTA 50オートクレーブ(Fritz Gossner、Hamburg、Germany)において121℃で15分間、実施した。冷却後、C16タンパク質懸濁液を、10,000rpmで(SIGMA 4K15、Sigma Laborzentrifugen、Osterode am Harz、Germany)、30分間、遠心分離し、上清を捨てた。遠心分離されたC16タンパク質を、6M チオシアン酸グアニジン溶液中に溶解し、エンドトキシンフリー10mM TRIS/HCl溶液、pH8.0に対して、24時間、透析した。
【0186】
透析後のC16-CathB-SIINFEKLのタンパク質濃度は3.91mg/mlであり、C16-CathS-SIINFEKLのタンパク質濃度は3.56mg/mlであり、C16-SIINFEKLのタンパク質濃度は3.81mg/mlであり、C16のタンパク質濃度は3.88mg/mlであった。全ての溶液のタンパク質濃度を1mg/mlに調整した。溶液のエンドトキシン値は<0.200EU/mgであった。スパイダーシルク粒子の滅菌は、粒子サイズ、二次構造、および熱安定性に有害な効果を生じなかった。オートクレーブ処理による滅菌後、粒子のサイズまたは二次構造の変化、および機能的変化は観察されなかった。滅菌後の機能の保持は、先行技術の系を考えると、有利である。
【0187】
実施例3:粒子調製
エンドトキシンの除去後、タンパク質溶液(C16-CathB-SIINFEKL、C16-CathS-SIINFEKL、C16-SIINFEKL、およびC16)を、粒子調製のために、エンドトキシンフリー10mM TRIS/HClバッファー、pH8.0で、1mg/mlに調整した。粒子調製は、高圧シリンジポンプシステムを用いるミクロ混合により行った。シリンジポンプシリンダーを、70%(v/v)エタノールにより48時間に渡って、発熱物質を除去した。その後、シリンダーを、HPWで3回、洗浄して、いかなる有機溶媒も除去した。発熱物質除去後、シリンジポンプシステム(Model 100 DXおよびSeries Dポンプコントローラー、Teledyne Isco、Lincoln、USA)の両方のシリンダーを、80°の、あらかじめ調合されたC16溶液、およびあらかじめ調合された、エンドトキシンフリー2Mリン酸カリウムバッファー、pH8.0または4M硫酸アンモニウムで満たした。溶液を、懸濁液収集のために、50ml/分の高流速で、排出チュービング(内径0.5mm、1532 PEEKチュービング、Upchurch Scientific、Oak Harbor、USA)へと導くT字形混合エレメント(内径0.5mm、P-727 PEEK tee、Upchurch Scientific、Oak Harbor、USA)へポンプで汲み上げた。その後、C16粒子懸濁液を、14,000rpm(SIGMA 4K15、Sigma Laborzentrifugen、Osterode am Harz、Germany)で遠心分離し、HPWで3回、洗浄した。最後に2分間の超音波処理(Sonopuls HD 3200、Bandelin electronic、Berlin、Germany)ステップを行って、粒子調製手順を完了した。mg/mlでの粒子濃度を、減圧(13mbar)下で一晩、粒子を乾燥させた後、重量測定法で決定した。
【0188】
C16-CathB-SIINFEKLの粒子濃度は32.75mg/mlであり、C16-CathS-SIINFEKLのタンパク質濃度は34.72mg/mlであり、C16-SIINFEKLのタンパク質濃度は30.06mg/mlであり、C16のタンパク質濃度は32.52mg/mlであった。
【0189】
実施例4:C16粒子サイズの最適化
ミクロ混合粒子調製工程を、最終的な粒子サイズのさらなる低下のために分析した。上記の調製工程と比較して変化されるべきいくつかのパラメータを選択した。粒子調製に用いられるC16溶液の濃度を、0.5~1.0mg/mlに調整した。これまで粒子沈殿に用いられた2Mリン酸カリウム溶液を、2M、3M、および4M硫酸アンモニウム溶液によって補完した。塩溶液の流速を50ml/分に維持したが、タンパク質溶液の流速を25~50ml/分に設定した。この研究について、天然C16タンパク質を用いた。全ての他のパラメータを上記の通り維持し、ここに記載された改変シリンジポンプ設定での粒子調製後に、最終的な粒子サイズを分析した。その結果生じた粒子は、250nmから520nmまでの範囲の平均直径を有する。
【0190】
実施例5:ハイブリッドC16粒子からのSIINFEKL(配列番号11)のインビトロ放出(インビトロ)
ハイブリッドポリペプチドSSP25 - eADF4(C16-CathB-CD8)およびSSP26 - eADF4(C16-CathS-CD8)からの抗原配列SIINFEKL(配列番号11)の放出を、カテプシン酵素の添加により試験した。ハイブリッドポリペプチドは、カテプシンSおよびカテプシンB酵素についての切断可能なリンカー配列を含有するため、これらの2つのカテプシンもまた、インビトロ放出研究に用いた。
【0191】
C16ハイブリッドポリペプチド粒子を、カテプシンS酵素とのインキュベーションのために、1mM EDTAおよび2mM DTTを含有する50mM酢酸ナトリウムバッファー、pH5.5で、2mg/mlの最終濃度まで懸濁した。カテプシンSを、0.9mU/mlの最終濃度まで同じバッファー中に希釈した。カテプシンB酵素については、そのバッファーのわずかなpH改変が実現された。
【0192】
C16ハイブリッドポリペプチド粒子を、カテプシンB酵素とのインキュベーションのために、1mM EDTAおよび2mM DTTを含有する50mM酢酸ナトリウムバッファー、pH5.0で、2mg/mlの最終濃度まで懸濁した。カテプシンBを、0.1U/mlの最終濃度まで同じバッファー中に希釈した。粒子のその酵素とのインキュベーションを、ウェービングプラットフォームシェーカー(Heidolph Polymax 1040、Heidolph Instruments GmbH、Schwabach、Germany)上、10rpm、37℃で行った。試料(上清)を、1、6、24、48、72、および96時間後、引き出し、RP-HPLCによる分析のために用いた。
【0193】
切断されたSIINFEKL(配列番号11)ペプチド断片をRP-HPLCにより分析した。各試料の上清を、遠心分離(12,000rpmで30分間を2回)により粒子から取り出した。ペレットを捨て、180μlの上清を、HPLCガラスのインサートへと満たし、RP-HPLC(220nmにおけるUV-Visによる検出)により分析した。対応する上清の50μlの体積を、Waters 2695分離モジュール(Waters Corporation、Milford、MA、USA)を用いる逆相YMC-Triart C18カラム(YMC Europe GmbH、Dinslaken、Germany)により、30℃で分離した。水+0.1%[m/m]TFA(移動相A)および100%アセトニトリル+0.1%[m/m]TFA(移動相B)を用いる、2つの移動相でのグラジエントを適用した。各流動を、2分間の95%移動相Aで開始し、その後、28分間に渡る移動相Bの5%から100%までの線形増加が続いた。100%移動相Bでの5分間の洗浄ステップを用いて、カラムから残留ペプチド/タンパク質を洗浄した。分離流動は、95%移動相Aにおけるカラムの5分間の平衡で停止した。検出を、Waters UV-Vis検出器2487(Waters Corporation、Milford、MA、USA)において、SIINFEKL(配列番号11)ペプチドを検出するために220nmの波長で行った。放出されたSIINFEKL(配列番号11)ペプチドの量を、標準曲線を用いて分析した。特に、カテプシンS切断可能なリンカーを有するハイブリッドポリペプチドのSIINFEKL(配列番号11)ペプチドを切断することは、配列IGSIINFEKLG(配列番号16)を生じた。加えて、カテプシンS切断可能なリンカーを有するハイブリッドポリペプチドのSIINFEKL(配列番号11)ペプチドを切断することは、配列LPGSIINFEKLG(配列番号17)を生じた。SIINFEKL(配列番号11)は、IGSIINFEKLG(配列番号16)、加えて、LPGSIINFEKLG(配列番号17)に含まれる。これらの2つのペプチドを、50%DMSO/50%水中に溶解した10μg/mL、20μg/mL、30μg/mL、50μg/ml、および100μg/mlの濃度における標準曲線のために用いた。クロマトグラムにおけるペプチドのそれぞれの面積を積分して、注入および分析後の較正曲線の計算のために用いた。データ解析を、Chromeleon(登録商標)6.80ソフトウェア(Dionex GmbH、Germering、Germany)で実施した。
【0194】
図7Aは、時間(1、6、24、48、72、および96時間)の関数として、ハイブリッドポリペプチドSSP25 - eADF4(C16-CathB-CD8)およびSSP26 - eADF4(C16-CathS-CD8)についての切断されたSIINFEKL(配列番号11)ペプチドのパーセントでの総放出を示す。
【0195】
カテプシンS酵素は、両方のハイブリッドポリペプチド粒子からのSIINFEKL(配列番号11)ペプチドのより良好な切断を示す。カテプシンSはまた、カテプシンBによる放出のために設計された粒子からもSIINFEKL(配列番号11)ペプチドを切断するが、よりゆっくりで、かつより低い程度で切断する。カテプシンS酵素による切断のために割り当てられたリンカー(PMGLP、配列番号20)は、カテプシンBリンカー配列(GFLG、配列番号21)の切断のために割り当てられていなかったため、このことは予想できなかった。
【0196】
カテプシンBとは対照的に、カテプシンSは、ある特定の組織においてのみ発現する。カテプシンSは、抗原性タンパク質の分解、および主要組織適合複合体クラスII経路によるさらなるプロセシングにおいて鍵となる役割を果たす。カテプシンSリンカー粒子を、インビボのマウス研究のために選択した。
【0197】
図7Aは、ハイブリッドタンパク質粒子のカテプシンS酵素とのインキュベーションを示し、一方、図7Bは、ハイブリッドタンパク質粒子のカテプシンB酵素とのインキュベーションを示す。SIINFEKL(配列番号11)ペプチドのSSPハイブリッドタンパク質粒子からの酵素切断は、インビトロで成功し、それは、さらなるインビトロおよびインビボの研究への基盤となる。
【0198】
実施例6:スパイダーシルクハイブリッド粒子はBMDC細胞毒性を誘導しない
骨髄由来樹状細胞(BMDC)の調製
BMDCは、C57BL/6Rjマウスの脛骨および大腿骨に冷PBSを流すことにより得られた一次骨髄細胞から生成された。赤血球溶解を、BD Pharm Lyse(BD Biosciences、USA)で1分間、実施した。その後、細胞を、40ng/ml GM-CSF(PeproTech,USA)を補充した、10%FCS(Biological Industries、Israel)、1% L-グルタミン、50U/mLペニシリン、50U/mLストレプトマイシン、50μM 2-メルカプトエタノール、および0.5mMのピルビン酸ナトリウム(全て、PAA Laboratories、Austria製)を補充したRPMI 1640(Biowest、France)からなる完全BMDC培地に再懸濁した。6日間の分化後、軽く付着した細胞を採取した。CD11c+CD11b+ 細胞のパーセンテージは、日常的に、70%を超えた。
【0199】
スパイダーシルク粒子への曝露
BMDC(1ウェルあたり5×10細胞)を、平底96ウェルプレート(Corning、New York、USA)に、1ウェルあたり100μLの完全培地に希釈された505μgの粒子/mL(=10μg SIINFEKL(配列番号11)/mL)(これは、他のインビトロ実験で用いられる濃度の10倍である)におけるC16粒子(未処理)、C16ハイブリッド粒子(SIINポリペプチド(SIIN)、配列番号13を含む)、カテプシンB切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathBseq-SIIN、配列番号15)、およびカテプシンS切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathSseq-SIIN、配列番号14)の存在下で播種した。TLR7アゴニストR848(Invitrogen、USA)を免疫賦活剤として用いた。24時間のインキュベーション後、細胞を、フローサイトメトリー分析のために収集し、一方、上清をサイトカイン定量化のために保存した。BMDC生存率を、フローサイトメトリーおよびMTTアッセイにより評価した。
【0200】
蛍光標識
C16-、C16-SIIN-、C16-CathBseq-SIIN-、およびC16-CathSseq-SIIN-ポリペプチドのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)での標識を、C16の末端アミン基を用いて、Spiessら(Spiessら、2010)による発表された方法に基づいて実施した。SIINポリペプチドは、GenScript Inc.、Piscataway Township、NJ、USAから入手した。インビボ研究に用いられる粒子の調製について、HPW中に懸濁されたC16タンパク質粉末乾燥タンパク質を、前に記載されているようにオートクレーブした。蒸気滅菌後、オートクレーブされたC16粉末を、6Mチオシアン酸グアニジン溶液に溶解したが、今回は、エンドトキシンフリー20mM HEPES溶液、pH8.0に対して、2~8℃で24時間、透析した。透析、遠心分離、および濾過後、溶液を、溶液中のカップリングのために、エンドトキシンフリー20mM HEPES溶液、pH8.0で2.0mg/mlの濃度に調整した。(DMSO中に溶解した)FITCの20倍モル濃度過剰をC16溶液にゆっくり加えた。溶解したFITCの全量の添加後、その溶液を、暗闇中、室温で3時間、インキュベートした。インキュベーション後、FITCカップリング化C16タンパク質溶液を、まず、0.2μm PESフィルダー(VWR International、Radnor、USA)で、その後、事前フラッシングされたMustang(登録商標)Eフィルターで濾過した。濾過されたFITCカップリング化C16タンパク質溶液を、80℃におけるシリンジポンプシステムによる粒子調製のために1mg/mlのタンパク質濃度に調整した。全ての他のパラメータは、前に記載された粒子調製工程を同一であった。インビトロ研究のためのみに用いられる粒子の蛍光標識を、最終粒子において行った。C16粒子を、エンドトキシンフリー20mM HEPES溶液、pH8.0中に2.5mg/mlの濃度で懸濁した。(DMSO中に溶解した)FITCの20倍モル濃度過剰を粒子懸濁液に液滴式に加えた。暗闇中72時間のインキュベーション後、粒子を遠心分離し、HPWで3回、洗浄した。最後に2分間の追加の超音波処理を行って、最終C16ポリペプチド粒子のFITC標識工程を終了した。
【0201】
動的光散乱(DLS)
サブミクロン粒子の粒子サイズおよびサイズ分布を、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Worcestershire、UK)を用いる動的光散乱(DLS)により三連で測定した。粒子サイズは、Z平均値として示され、粒子サイズ分布は、多分散性指数(PDI)により表示されている。各測定の直前に、試料を、HPWで0.01mg/mlの最終濃度に希釈した。全ての測定を25℃で行った。
【0202】
細胞毒性
細胞毒性を、ヨウ化プロピジウム(PI)およびアネキシンV染色を用いるフローサイトメトリーにより、ならびにアッセイにより評価した。フローサイトメトリー分析について、BMDCを、アネキシンVバッファー中に1:100希釈されたAPC-アネキシンV(両方ともBiolegend、USA製)と室温で30分間、インキュベートした。PBS中1:2希釈された0.2μL PI(Sigma-Aldrich、USA)を、分析の直前に、MACS定量分析器(Miltenyi Biotec、Germany)により自動添加した。全てのフローサイトメトリーデータを、FlowJoバージョン10.0.8r1を用いて解析した。スタウロスポリン(1nM)(Sigma-Aldrich、USA)を陽性対照として用いた(未呈示)。MTTアッセイについて、Vybrant MTT細胞増殖アッセイキット(Molecular Probes、USA)を、製造会社のプロトコールに従って用いた。このアッセイについて、フェノールレッドを含まない完全BMDC培地(Biowest、France)を用いた。
【0203】
BMDC細胞表現型
2mM EDTA(Calbiochem、Germany)および0.5%BSA(PAA laboratories、Austria)を補充したPBS(Eurobio、France)からなるFACSバッファーでの洗浄後、BMDC細胞を、Fc受容体をブロックするために抗マウスCD16/32(Biolegend、USA)とインキュベートした。4℃での10分間のインキュベーション後、活性化マーカーまたはそれらのそれぞれのアイソタイプ対照に対する抗体:PB-CD80、PE-CD86、APC-MHCI、およびFITC-CD11b(全てBiolegend、USA製)を加えた。死細胞を、ゾンビバイオレット色素(Biolegend、USA)を用いて排除した。4℃での30分間のインキュベーション後、細胞を、獲得前にFACSバッファー中、洗浄し、再懸濁した。
【0204】
図1Aは、ヨウ化プロピジウム(PI)およびアネキシンVでのフローサイトメトリーからのドットプロットを示す。C16粒子を含まない細胞(未処理)、SIINポリペプチド(SIIN)、C16粒子(C16)、カテプシンB切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathBseq-SIIN)、およびカテプシンS切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathSseq-SIIN)の間での細胞生存率の差は、検出することができなかった。
【0205】
図1Bは、生きている健康な細胞、死細胞、およびアポトーシス細胞の概略図を示す。
【0206】
図1Cは、未処理の細胞およびC16粒子を含む細胞と比較した、SIIN、C16-CathBseq-SIIN、およびC16-CathSseq-SIINを有する生細胞のパーセンテージを示す。C16粒子を含まない細胞(未処理)、SIINポリペプチド(SIIN)、C16粒子(C16)、カテプシンB切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathBseq-SIIN)、およびカテプシンS切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathSseq-SIIN)の間での細胞生存率の差は、検出することができなかった。
【0207】
図1Dは、MTTアッセイからの、ホルマザン生成に相関する570nmにおける光学密度(OD)を示す。対照(未処理)と比較した、スパイダーシルク粒子、加えてスパイダーシルクハイブリッド粒子との間での光学密度の差はない。これは、スパイダーシルク粒子、加えてスパイダーシルクハイブリッド粒子がBDMC細胞毒性を誘導しなかったことを示す。
【0208】
実施例7:スパイダーシルク粒子はインビトロでBMDC免疫学的活性化を誘導しない
骨髄由来樹状細胞(BMDC)の調製
BMDCは、C57BL/6Rjマウスの脛骨および大腿骨に冷PBSを流すことにより得られた一次骨髄細胞から生成された。赤血球溶解を、BD Pharm Lyse(BD Biosciences、USA)で1分間、実施した。その後、細胞を、40ng/ml GM-CSF(PeproTech, USA)を補充した、10%FCS(Biological Industries、Israel)、1% L-グルタミン、50U/mLペニシリン、50U/mLストレプトマイシン、50μM 2-メルカプトエタノール、および0.5mMのピルビン酸ナトリウム(全て、PAA Laboratories、Austria製)を補充したRPMI 1640(Biowest、France)からなる完全BMDC培地に再懸濁した。6日間の分化後、軽く付着した細胞を採取した。CD11c+CD11b+ 細胞のパーセンテージは、日常的に、70%を超えた。
【0209】
BMDC(5×10細胞/ウェル)を、50μg粒子(スパイダーシルク粒子)/mLのスパイダーシルク粒子と共に培養した。
【0210】
BMDC表現型
2mM EDTA(Calbiochem、Germany)および0.5%BSA(PAA laboratories、Austria)を補充したPBS(Eurobio、France)からなるFACSバッファーでの洗浄後、細胞を、Fc受容体をブロックするために抗マウスCD16/32(Biolegend、USA)とインキュベートした。4℃での10分間のインキュベーション後、免疫活性化マーカーまたはそれらのそれぞれのアイソタイプ対照に対する抗体:PB-CD80、PE-CD86、APC-MHCI、およびFITC-CD11b(全てBiolegend、USA製)を加えた。死細胞を、ゾンビバイオレット色素(Biolegend、USA)を用いて排除した。4℃での30分間のインキュベーション後、細胞を、獲得前にFACSバッファー中、洗浄し、再懸濁した。
【0211】
24時間のインキュベーション後、BMDCをフローサイトメトリーにより分析し、一方、上清をサイトカイン定量化のために収集した。
【0212】
ELISAによるサイトカイン産生の分析
マウスIL-6についてのELISA Maxデラックスセット(Biolegend、USA)を、製造会社のプロトコールに従って用いた。タンパク質濃度について、Infinite 200 PROプレートリーダー(TECAN、Switzerland)により、570nmにおける吸光度を測定し、450nmにおける吸光度から引き算した。濃度を、二連で実施された標準曲線に従って計算した。
【0213】
図2Aは、未処理の試料と比較した、SIIN、C16-SIIN、CathBseq-SIIN、およびC16-CathSseq-SIINと培養されたBMDC細胞のBMDC表面活性化マーカーMHC IおよびMHC IIの蛍光強度中央値(MFI)を示す。TLR7アゴニストである、R848(R8)を陽性対照として用いた。免疫活性化マーカーMHC IおよびMHC IIの有意な増加は検出することができなかった。これは、スパイダーシルク粒子、加えてスパイダーシルクハイブリッド粒子が免疫原性ではないことを示す。
【0214】
図2Bは、ELISAでのサイトカイン定量化を示す。TLR7アゴニストである、R848(R8)を陽性対照として用いた。これは、スパイダーシルク粒子、加えてスパイダーシルクハイブリッド粒子が内因性免疫賦活活性を有しないことを示す。
【0215】
実施例8:スパイダーシルク粒子は、抗原提示細胞により効率的に取り込まれる
実施例6に従って、BMDC(5×10細胞/ウェル)を、50μg粒子/mLのFITC標識スパイダーシルク粒子(C16-SIIN、C16-CathBseq-SIIN、およびC16-CathSseq-SIIN)と共に培養した。24時間のインキュベーション後、BMDCをフローサイトメトリー分析のために分離した。
【0216】
BMDCによるスパイダーシルク粒子の取り込みを、フローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡法により評価した。フローサイトメトリーについて、死細胞を、ゾンビバイオレット色素(Biolegend、USA)を用いて排除した。Fc受容体ブロッキング後、以下の抗体を加えた:APC-CD11b、APC-Cy7-CD11c(両方ともBiolegend、USA製)。その後、CD11b+CD11c+ 集団におけるFITC+ 陽性細胞のパーセンテージを決定した。共焦点顕微鏡法について、BMDCを、Blue DND-22 Lysotracker(Molecular Probes、USA)と1時間、インキュベートし、共焦点顕微鏡法(Zeiss、Germany)での画像化の前に、さらに4時間、FITC陽性粒子とインキュベートした。BMDC(CD11c+)集団内のFITC陽性細胞のパーセンテージを決定した。SIINポリペプチドは陰性対照としての役割を果たした。
【0217】
図3Aは、SIINを含まないC16粒子(C16)、C16ハイブリッド粒子C16-SIIN、カテプシンB切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathBseq-SIIN)、およびカテプシンS切断部位を有するC16ハイブリッド粒子(C16-CathSseq-SIIN)の取り込みを示す。未処理の細胞(未処理)およびSIINポリペプチド(SIIN)は対照としての役割を果たした。90%より高い粒子取り込みが、ハイブリッド粒子について得ることができた。ハイブリッドポリペプチドC16-CathBseq-SIINおよびC16-CathSseq-SIINと、抗原を含まない粒子(C16)との間での取り込みの有意差は検出することができなかった。これは、ハイブリッド粒子が、抗原を含まない粒子(C16)と同様に取り込まれることを示す。
【0218】
脾細胞を、C57BL/6JRjマウスから単離し、20μmセルストレーナーに通過させ、赤血球溶解を実施した。死細胞を、バイオレットゾンビ色素(Biolegend、USA)を用いて排除した。新鮮に単離された脾細胞(5×10細胞/ウェル)を、FITC標識スパイダーシルク粒子と共に6時間、培養した。Fc受容体ブロッキング後、以下の抗体を加えた:PerCP-CD3、APC-CD11b、APC-Cy7-CD11c(全て、Biolegend、USA製)。6時間のインキュベーション後、細胞をフローサイトメトリーにより分析した。図3Bは、未処理の細胞と比較した、規定された免疫細胞集団:T細胞(CD3+)、樹状細胞(CD11c+CD11b+)、および単球/マクロファージ(CD11c-CD11b+)において決定されたFITC陽性細胞のパーセンテージを示す。ハイブリッド粒子C16-CathSseq-SIINは、樹状細胞により、続いて、単球/マクロファージおよびT細胞により効率的に取り込まれた。
【0219】
実施例9:カテプシンS配列は、SIINFEKL(配列番号11)依存性インビトロT細胞増殖を誘導するのにより効果的である
インビトロT細胞増殖
BMDC(5×10細胞/ウェル)を、50μg粒子/mLのスパイダーシルク粒子と共に培養した。R848(0.25μg/mL)を、BMDC活性化を誘導するためのアジュバントとして用いた。24時間のインキュベーション後、CFSE標識CD3+CD8+ OT-I細胞(10細胞/ウェル)を加えた。3日間の共培養後、CFSE陽性CD3+CD8+ 細胞の検出を、フローサイトメトリーにより分析した。
【0220】
24時間のインキュベーション後、CD8+ T細胞を、CD8+ T細胞単離キット(Miltenyi Biotech、Germany)を用いて、OT-I脾細胞からネガティブ選択した。その後、これらの細胞を、CFSE(Molecular Probes、USA)で、製造会社のプロトコールに従って染色し、BMDC培養物(10細胞/ウェル)に加えた。3日後、細胞をフローサイトメトリー分析のために染色した。Fcブロッキング後、以下の抗体を加えた:PB-CD3、APC-Cy7-CD8(全てBiolegend、USA製)。増殖を、CD3+CD8+ 細胞集団内のCFSEDIM細胞のパーセンテージにより決定した。
【0221】
図4Aは、T細胞集団(CD3+CD8+)内の増殖性CD8+ T細胞のパーセンテージを示す。C16 CathSseq-SIINFEKL粒子およびC16 CathBseq-SIINFEKL粒子を有するBMDC細胞に曝露されたCD8 T細胞の増殖性のパーセンテージは、未処理の対照と比較して有意に高かった。C16 CathSseq-SIINFEKL粒子を有するBMDC細胞に曝露されたCD8 T細胞の増殖のパーセンテージは、C16 CathBseq-SIINFEKLを有するBMDC細胞に曝露されたCD8 T細胞のパーセンテージよりさらに有意に高かった。
【0222】
ハイブリッドタンパク質粒子は、SIINFEKL(配列番号11)ペプチドの放出によりT細胞増殖を誘導することができる。C16-CatS-SIIN粒子は、C16-CatB-SIIN粒子より効果的である。
【0223】
実施例10:ハイブリッドスパイダーシルク粒子は、インビボで流入領域リンパ節に蓄積する
インビボでの体内分布研究について、粒子をマウスの脇腹に注射し、24時間後、マウスを屠殺し、分析のために器官を採取した。
【0224】
雌C57BL/6JRj(Janvier、France)およびOVA-TCRトランスジェニックOT-Iマウス(Charles River、Germany)を、特定の病原体を含まない条件下で飼育し、週齢6~12週間で用いた。動物実験を、動物実験についてのスイス連邦法に従い、行った。
【0225】
C57BL/6JRjマウスに、3匹のマウスの右脇腹に1匹のマウスあたり100μL PBS中505μg FITC標識C16-CathSseq-SIINFEKL粒子を皮下注射した。PBSを陰性対照として用いた。24時間後、同側鼠径部流入領域リンパ節(DLN)、対側鼠径部(非DLN)、および脾臓を、フローサイトメトリー分析のために単離し、単一細胞懸濁液を上記のように作製した。死細胞を、バイオレットゾンビ色素(Biolegend、USA)を用いて排除した。Fc受容体ブロッキング後、以下の抗体を加えた:PerCP-CD3、Pe-Cy7-CD11b、APC-CD11c(全て、Biolegend、USA製)。
【0226】
図5Aは、いくつかの組織(DLN、非DLN、および脾臓)において、3匹のPBS処理されたマウスの対照群と比較した、3匹のFITC粒子処理されたマウスの流入領域リンパ節(DLN)におけるFITC陽性細胞(FITC標識C16-CathSseq-SIINFEKL粒子を含む)の数を示す。
【0227】
分析により、カテプシンSリンカー粒子(C16-CathSseq-SIINFEKL)が、局所リンパ節に、優先的には、樹状細胞に蓄積し、非DLN細胞にも脾臓にも蓄積しなかったことが示された。器官採取のための手術の間、粒子は、注射の場所に留まっていた。C16ハイブリッド粒子は、皮膚の下に貯蔵所を形成し、優先的には、局所リンパ節に蓄積する。
【0228】
図5Bは、単球/マクロファージ(CD11c-CD11b+)とは対照的に、樹状細胞(CD11c+CD11b+)においてのみのカテプシンSリンカー粒子(C16-CathSseq-SIINFEKL)の取り込みを示す。樹状細胞は、抗原提示細胞の最も強力なクラスである。抗原の提示が局所リンパ節に起こるならば、粒子は、身体を通して制御不可能に拡散することはない。
【0229】
実施例11:SIINFEKL含有スパイダーシルク粒子はインビボで抗原依存性T細胞増殖を誘導する
インビボでのT細胞増殖
OT-I脾細胞からのCD8+ T細胞単離後、細胞を、FCSの非存在下で、CFSEで製造会社のプロトコールに従って染色した。100μLのPBS中10個のCFSE標識CD3+CD8+ OT-I細胞をマウスへ静脈内注射した。18時間後、マウスを、505μg C16およびC16-CathSseq-SIINFEKL粒子(1マウスあたり100μL PBS中505μg粒子)で皮下に免疫化した。R848(100μL中25μg)をアジュバントとして用いた。ハイブリッド粒子を含まないPBSおよびR848アジュバントは陰性対照としての役割を果たした。ワクチン接種から3日後、鼠径部DLNを、フローサイトメトリー分析のために単離して、CD3+CD8+ CFSE標識OT-I細胞の増殖を決定した。単一細胞懸濁液を、20μmセルストレーナーに通過させることにより得た。Fc受容体ブロッキング後、以下の抗体を加えた:PB-CD3、APC-Cy7-CD8(全て、Biolegend、USA製)。増殖を、CD3+CD8+ 細胞集団内のCFSEDIM細胞のパーセンテージにより決定した。
【0230】
統計的解析
全てのグラフを、GraphPad prismソフトウェア バージョン6.0g(GraphPad Software、San Diego、USA)で作成し、誤差バーは、平均値の標準誤差(SEM)を示す。複数群の対照群(未処理の試料)に対する統計的有意性を、一元配置分散分析(one-way ANOVA)、続いてダネットの多重比較検定を用いて実施した。
【0231】
図6は、C16-CathSseq-SIINFEKL粒子で免疫されたマウスのCD8 T細胞の増殖を示す。CD8 T細胞の増殖は、R848アジュバントなしで、顕著に、より高かった。アジュバントなしのC16-CathSseq-SIINFEKLでの免疫化が、アジュバントありのC16-CathSseq-SIINFEKLでの免疫化よりCD8 T細胞のそれぞれ類似した、より高い増殖を生じた。免疫応答が通常は免疫賦活性アジュバントの同時投与後により高いため、このことは予想できなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
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