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特許7596382二次電池、その製造方法及び当該二次電池を含む装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】二次電池、その製造方法及び当該二次電池を含む装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20241202BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241202BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241202BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20241202BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/505
H01M4/525
H01M4/58
H01M4/587
H01M10/0525
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022532689
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2020088464
(87)【国際公開番号】W WO2021217639
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】王育文
(72)【発明者】
【氏名】武宝珍
(72)【発明者】
【氏名】叶永煌
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0038168(KR,A)
【文献】特開2013-041826(JP,A)
【文献】特開2005-044775(JP,A)
【文献】国際公開第2019/225534(WO,A1)
【文献】特開2014-146471(JP,A)
【文献】特開2017-062911(JP,A)
【文献】特表2015-537347(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035289(WO,A1)
【文献】特開2015-018663(JP,A)
【文献】特開2008-186732(JP,A)
【文献】特開2014-067587(JP,A)
【文献】特開2015-088450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/052
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と負極フィルムシートを含む負極シートとを備え、
前記負極フィルムシートは、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層とを含み、
前記第1の負極フィルム層は、前記負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、且つ、人造黒鉛を含み、ケイ素系材料を選択的に含む第1の負極活性材料を備え、
前記第2の負極フィルム層は、前記第1の負極フィルム層の表面に設けられ、且つ、人造黒鉛とケイ素系材料とを含む第2の負極活性材料を備え、
前記第1の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW1とし、前記第2の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW2とする場合、前記負極シートは、W2≧W1、及び0%<W2≦5%を満たし、
前記第2の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は≧95%であり、且つ前記第1の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は≧97%である、二次電池。
【請求項2】
1%≦W2≦3%である、請求項に記載の二次電池。
【請求項3】
0%≦W1≦3%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項4】
W1=0%である、請求項に記載の二次電池。
【請求項5】
W1+W2≦6%である、請求項1~のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項6】
W1+W2≦3%である、請求項に記載の二次電池。
【請求項7】
前記ケイ素系材料は、第1のケイ素系材料と第2のケイ素系材料とを含み、且つ、前記第1のケイ素系材料の平均粒径は、前記第2のケイ素系材料の平均粒径よりも小さい、請求項1~のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項8】
前記第1のケイ素系材料の平均粒径は、0.05μm~7μmであり、及び/又は、
前記第2のケイ素系材料の平均粒径は、7μm~15μmである、請求項に記載の二次電池。
【請求項9】
前記第1の負極活性材料における前記人造黒鉛の質量比率は、100%である、請求項1に記載の二次電池。
【請求項10】
前記第1の負極活性材料は、一次粒子を含み、且つ、前記第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率は、≧60%である、請求項1~のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項11】
前記第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率は、80%~100%である、請求項10に記載の二次電池。
【請求項12】
前記第2の負極活性材料は、二次粒子を含み、且つ、前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率は、≧50%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項13】
前記第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率は、≧70%である、請求項12に記載の二次電池。
【請求項14】
前記第1の負極活性材料の体積平均粒径D50は、前記第2の負極活性材料の体積平均粒径D50よりも大きい、請求項1~13のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項15】
前記第1の負極活性材料の体積平均粒径D50は、12μm~18μmであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の体積平均粒径D50は、9μm~15μmである、請求項1~14のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項16】
前記第1の負極活性材料の体積平均粒径D50は、13μm~17μmであり、及び/又は、
前記第2の負極活性材料の体積平均粒径D50は、10μm~13μmである、請求項15に記載の二次電池。
【請求項17】
前記ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸素化合物、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素化合物及びケイ素合金のうちの1種類又は複数種類である、請求項1~16のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項18】
前記負極フィルムシートは、さらに、下記(1)~(5)のうちの1つ又は複数を満たす、請求項1~17のいずれか1項に記載の二次電池。
(1)前記負極フィルムシートの面密度が、8mg/cm~13mg/cmである。
(2)前記負極フィルムシートの圧縮密度が、1.4g/cm~1.7g/cmである。
(3)前記第2の負極フィルム層の孔隙率が、前記第1の負極フィルム層の孔隙率よりも大きい。
(4)前記第1の負極フィルム層と前記第2の負極フィルム層との面密度の比が、2:3~3:2である。
(5)前記第1の負極フィルム層と前記第2の負極フィルム層との厚さ比が、4:6~7:3である。
【請求項19】
前記二次電池は、正極シートを含み、
前記正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、且つ正極活性材料を含む正極フィルム層とを備え、
前記正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩及びそれらのそれぞれの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項20】
前記正極活性材料は、式1で表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含み、
LiNiCo 式1
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1であり、Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される1種類又は複数種類であり、Aは、N、F、S及びClから選択される1種類又は複数種類である、請求項19に記載の二次電池。
【請求項21】
二次電池の製造方法であって、
負極集電体の少なくとも1つの表面に、人造黒鉛を含み、ケイ素系材料を選択的に含む第1の負極活性材料を備える第1の負極フィルム層を形成することと、
前記第1の負極フィルム層の表面に、人造黒鉛とケイ素系材料とを含む第2の負極活性材料を備える第2の負極フィルム層を形成することと、
により前記二次電池の負極シートを製造し、
そのうち、前記第1の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW1とし、前記第2の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW2とする場合、前記負極シートはW2≧W1、及び0%<W2≦5%を満たし、
前記第2の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は≧95%であり、且つ前記第1の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は≧97%である、二次電池の製造方法。
【請求項22】
請求項1~20のいずれか1項に記載の二次電池を含む装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、二次電池技術分野に属し、具体的には、二次電池、その製造方法及び当該二次電池を含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池を初めとする二次電池は、高比エネルギー、長寿命、低コスト等の利点があるため、新エネルギー業界で広く応用されている。例えば、環境及びエネルギー問題の日々の増長に伴い、新エネルギー電気自動車の発展に対して切実な需要がある。これは二次電池業界にチャンスをもたらすと同時に、二次電池に対してより高い要求が突き付けられている。
【0003】
高いエネルギー密度を有する前提で、如何に二次電池に優れた電気化学性能及び安全性能をさらに兼ね備えさせることは、二次電池分野における重要な課題となる。
【発明の概要】
【0004】
上記目的を達成するために、本願の第1の態様は、二次電池であって、負極集電体と負極フィルムシートとを含む負極シートとを備え、
前記負極フィルムシートは、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層とを含み、
前記第1の負極フィルム層は、前記負極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、且つ、黒鉛を含み、ケイ素系材料を選択的に含む第1の負極活性材料を備え、
前記第2の負極フィルム層は、前記第1の負極フィルム層の表面に設けられ、且つ、人造黒鉛とケイ素系材料とを含む第2の負極活性材料を備え、
前記第1の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW1とし、前記第2の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW2とする場合、前記負極シートは、W2≧W1を満たす、二次電池を提供する。
【0005】
本願の第2の態様は、前記二次電池の負極シートを製造する二次電池の製造方法であって、
負極集電体の少なくとも1つの表面に、黒鉛を含み、ケイ素系材料を選択的に含む第1の負極活性材料を備える第1の負極フィルム層を形成する工程と、
前記第1の負極フィルム層の表面に、人造黒鉛とケイ素系材料とを含む第2の負極活性材料を備える第2の負極フィルム層を形成する工程と、を含み、
ここで、前記第1の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW1とし、前記第2の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW2とする場合、前記負極シートは、W2≧W1を満たす、二次電池の製造方法を提供する。
【0006】
本願の第3の態様は、本願の第1の態様に係る二次電池、又は本願の第2の態様に係る方法により製造された二次電池を含む装置を提供する。
【0007】
本願は、従来技術と比較して、少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0008】
驚くべきことに、本願に係る二次電池において、負極シートを、二重フィルム層構造(即ち、負極集電体に近い第1の負極フィルム層と、第1の負極フィルム層に設けられる第2の負極フィルム層と)を備えるように設け、且つ第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層は、いずれも特定の負極活性材料を含むと、二次電池は高いエネルギー密度を有する前提で、優れた急速充電能力とサイクル性能を兼ね備えることができる。より好ましくは、二次電池は、より高い安全性能を更に有する。本願に係る装置は、前記二次電池を含むので、少なくとも前記二次電池と同じ利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下は本願の実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下に説明された図面は、本願のいくつかの実施例だけである。当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本願に係る二次電池の一実施形態の模式図である。
図2】本願に係る二次電池における負極シートの一実施形態の模式図である。
図3】本願に係る二次電池における負極シートの他の実施形態の模式図である。
図4】本願に係る二次電池の一実施形態の分解模式図である。
図5】本願に係る電池モジュールの一実施形態の模式図である。
図6】本願に係る電池パックの一実施形態の模式図である。
図7図6の分解図である。
図8】本願に係る二次電池が電源として用いられる装置の一実施形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願の発明目的、技術案及び有益な技術効果をより明確にするために、以下に実施例を参照して、本願をさらに詳細に説明する。理解すべきことは、ここで説明された実施例は単に本願を解釈するためのものであり、本願を限定するものではない。
【0011】
簡略化するために、本明細書にいくつかの数値範囲のみを具体的に開示する。しかしながら、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。任意の下限は、他の下限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。同様に、任意の上限は、任意の他の上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。また、明確に記載されていないが、範囲の端点間の各点又は単一の数値は何れもその範囲内に含まれる。したがって、各点又は単一の数値は自身の下限又は上限として、任意の他の点又は単一の数値と組み合わせて若しくは他の下限又は上限と組み合わせて明確に記載されていない範囲を形成することができる。
【0012】
なお、本明細書の記載において、特に説明がない限り、「以上」及び「以下」は、その数も含む。「1種類又は複数種類」のうち「複数種類」は、2種類又は2種類以上を意味することに留意すべきである。
【0013】
本願の上記発明内容は、本願の開示された各実施形態または各実現形態を説明することを意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本願全体を通して、様な組み合わせで使用することができる一連の実施例によって教示が提供される。各実施例において、列挙は代表的なグループのみであり、網羅的であると解釈されるべきではない。
二次電池
【0014】
本願の第1の態様の実施形態は、二次電池を提供する。当該二次電池は、正極シートと、負極シートと、電解質とを備える。電池の充放電時において、正極シートと負極シートとの間で活性イオンが往復して挿入・脱離する。電解質は、正極シートと負極シートとの間でイオンを伝導する役割を果たす。
[負極シート]
【0015】
負極シートは、負極集電体及び負極フィルムシートを含む。前記負極フィルムシートは、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層を含む。前記第1の負極フィルム層は、前記負極集電体の少なくとも一方の表面に設けられ、且つ第1の負極活性材料を含む。前記第1の負極活性材料は、黒鉛を含み、且つケイ素系材料を選択的に含む。前記第2の負極フィルム層は、前記第1の負極フィルム層の表面に設けられ、且つ第2の負極活性材料を含む。前記第2の負極活性材料は、人造黒鉛とケイ素系材料とを含む。前記第1の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW1とし、前記第2の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW2とし、前記負極シートは、W2≧W1を満たす。
【0016】
本発明者らが鋭意検討した結果から分かるように、二次電池の負極シートが二重フィルム層構造を含み、且つ、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層が特定の負極活性材料を含む(第1の負極活性材料は、黒鉛を含み、且つケイ素系材料を選択的に含み、第2の負極活性材料は、人造黒鉛及びケイ素系材料を含み、且つ負極シートはW2≧W1を満たす)場合、負極フィルムシートは高い可逆容量を有するとともに、負極フィルムシート全体の厚さを薄くし、負極フィルムシートにおける活性イオンの輸送経路を短くすることができる。また、ケイ素系材料は、電極シートの冷間プレス又は電池サイクル膨張等の過程で優れたホール支持作用を発揮することができ、且つ充放電過程で発生するケイ素系材料の体積変化により負極フィルムシートの外層のホール構造をさらに改善することができるため、負極シートは電解液の浸潤及び還流を良好に維持したホール構造を有することができる。これより、二次電池の急速充電能力を改善すると共に、サイクル性能を効果的に改善することができる。また、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層には特定の負極活性材料が含まれ、電池の急速充電過程で、負極が正極からの活性イオンを十分に受け取って負極表面での活性イオンの還元析出現象(例えば、リチウム析出)を低減させるため、電池の急速充電性能の向上に役に立ち、電池のサイクル性能及び安全性能を向上させることができる。
【0017】
従って、負極シートを上記の最適設計により、それを用いた二次電池は、高いエネルギー密度を有する前提で、優れた急速充電能力、サイクル性能及び安全性能を兼ね備えることができる。
【0018】
いくつかの好ましい実施形態において、第2の負極活性材料におけるケイ素系材料の質量比率W2は、0%<W2≦6%を満たし、例えば、0%<W2≦5%、0%<W2≦4%、0%<W2≦3%、0%<W2≦2%等であってもよい。具体的に、W2は、0.5%、1.0%、1.2%、1.4%、1.5%、1.6%、1.8%、2.0%、2.5%、3%又は5%等であってもよい。第2の負極フィルム層は、人造黒鉛及び適量のケイ素系材料を配合することで、負極フィルムシートの急速なリチウム挿入性能を改善すると同時に、サイクル充放電過程における電池の体積膨張を低下させ、且つ負極界面の副反応も減少させ、電池のエネルギー密度とサイクル性能をさらに改善することができる。そのため、二次電池は、エネルギー密度と急速充電能力とサイクル性能をより良く兼ね備えることができる。より好ましくは、1%≦W2≦3%である。最も好ましくは、1%≦W2≦2%である。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極活性材料におけるケイ素系材料の質量比率は、0%≦W1≦5%である。例えば、0%≦W1≦4%、0%≦W1≦3%、0%≦W1≦2%、0%≦W1≦1%等であってもよい。具体的に、W1は、0%、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%又は4%等であってもよい。本発明者らが検討した結果から分かるように、第1の負極フィルム層が黒鉛及び適量のケイ素系材料を配合すると、電池のエネルギー密度はさらに改善するが、急速充電能力の改善が顕著ではなく、また電池のサイクル性能にもある程度の影響を与える。より好ましくは、0%≦W1≦3%である。特に好ましくは、0%≦W1≦2%である。最も好ましくは、W1=0%(即ち、第1の負極フィルム層には、ケイ素系材料を含まない)である。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態では、第1の負極活性材料におけるケイ素系材料の質量比率W1及び第2の負極活性材料におけるケイ素系材料の質量比率W2は、W1+W2≦10%、好ましくはW1+W2≦6%を満たす。より好ましくは、W1+W2≦3%である。特に好ましくは、1%≦W1+W2≦3%である。W1+W2を所定の範囲内にすると、二次電池のエネルギー密度、急速充電能力及びサイクル性能をさらにバランスよくすることができる。
【0021】
本発明者らが鋭意検討した結果から分かるように、本願に係る二次電池の負極シートが上記設計条件を満たす前提で、負極活性材料が、さらに下記の設計条件のうちの1つ又は複数を選択的に満たす場合、二次電池の性能をさらに向上させることができる。
【0022】
本発明者らは、異なる粒径で配合したケイ素系材料を使用すると、電池の性能がさらに改善されることを見出した。具体的に、第1の負極活性材料に異なる粒径のケイ素系材料を含有させることができ、及び/又は、第2の負極活性材料に異なる粒径のケイ素系材料を含有させることができる。いくつかの好ましい実施形態では、前記異なる粒径で配合したケイ素系材料は、第1のケイ素系材料及び第2のケイ素系材料を含み、第1のケイ素系材料の粒径は、第2のケイ素系材料の粒径よりも小さい。粒径がより小さい第1のケイ素系材料と粒径がより大きい第2のケイ素系材料が互いに係合して活性イオンの挿入により多くの活性サイトを提供し、且つ活性イオンの粒子での拡散経路を短縮することができる。同時に、両者が互いに係合するケイ素系材料の体積変化による新界面が少なくなり、電解液の新界面での反応による固体電解質界面(Solid Electrolyte Interphase、SEI)膜の厚さの過大及び/又は電解液の消耗の問題も減少させるため、二次電池の急速充電能力、サイクル性能及び貯蔵性能をさらに向上させることができる。
【0023】
第1のケイ素系材料の粒径は、好ましくは0.05μm~7μmであり、より好ましくは0.1μm~5μmである。第1のケイ素系材料の粒径が所定の範囲内であれば、二次電池の急速充電能力をさらに向上させることができる。
【0024】
第2のケイ素系材料の粒径は、好ましくは7μm~15μmでり、より好ましくは8μm~12μmである。第2のケイ素系材料の粒径が所定の範囲内であれば、二次電池のサイクル性能及び貯蔵性能をさらに向上させることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1のケイ素系材料と第2のケイ素系材料との重量比は、5:95~30:70であってもよく、好ましくは10:90~20:80である。
【0026】
いくつかの実施形態において、ケイ素系材料は、ケイ素単体、ケイ素酸素化合物、ケイ素炭素複合体、ケイ素窒素複合体、及びケイ素合金のうちの1つ又は複数を含むことができる。好ましくは、前記ケイ素系材料は、ケイ素酸素化合物を含む。ケイ素酸素化合物は、化学式SiOx、0.6≦x<2を満たすことができる。さらに好ましくは、0.9≦x≦1.2である。
【0027】
第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料がいずれもケイ素系材料を含む場合、第1の負極活性材料におけるケイ素系材料と第2の負極活性材料におけるケイ素系材料とは、同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
ケイ素系材料が上記第1のケイ素系材料及び第2のケイ素系材料を含む場合、第1のケイ素系材料及び第2のケイ素系材料は、それぞれ独立に、ケイ素単体、ケイ素酸素化合物、ケイ素炭素複合体及びケイ素合金から選択される1種類又は複数種類である。好ましくは、第1のケイ素系材料及び第2のケイ素系材料は、それぞれ独立に、ケイ素酸素化合物(例えば、上記のSiOx)を含む。
【0029】
いくつかの好ましい実施形態において、第2の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は、≧90%であり、より好ましくは≧95%であり、より好ましくは≧97%であり、特に好ましくは≧98%である。第2の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率が所定の範囲内にあると、電池のサイクル性能を向上させることができる。
【0030】
いくつかの好ましい実施形態において、第2の負極活性材料は、二次粒子を含み、且つ第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率は、≧50%である。例えば、第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率は、50%~95%、60%~90%、70%~95%、又は80%~90%等であってもよい。具体的に、第2の負極活性材料における二次粒子の数量比率は、50%、60%、70%、80%、90%等であってもよい。第2の負極活性材料中に二次粒子が一定量含まれると、第2の負極フィルム層における脱離活性イオンチャネルを増加させるとともに、活性イオンが還元析出するリスクをさらに低減することもできるため、電池の急速充電性能やサイクル性能をさらに向上させることができる。より好ましくは、第2の負極活性材料における前記二次粒子の数量比率は、≧70%である。
【0031】
特に好ましくは、前記第2の負極活性材料において、人造黒鉛が二次粒子を含み、ケイ素系材料が一次粒子を主とする。ケイ素系材料における一次粒子の数量比率は、80%~100%、90%~100%、95%~100%、又は98%~100%等であってもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、第1の負極活性材料の黒鉛は、人造黒鉛、天然黒鉛のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。好ましくは、第1の負極活性材料の黒鉛は、人造黒鉛を含む。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は、≧50%であり、より好ましくは60%~100%である。第2の負極活性材料が人造黒鉛とケイ素系材料とを含み、且つ第1の負極フィルム層の第1の負極活性材料が人造黒鉛を多く含む場合、サイクル過程における負極シートの体積膨張をさらに低減することができるため、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。また、高温での人造黒鉛の熱安定性も優れており、電池の使用過程における安全性能を効果的に改善することができる。具体的に、第1の負極活性材料における人造黒鉛の質量比率は、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は100%であってもよい。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極活性材料は一次粒子を含み、且つ第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率は、≧60%である。例えば、第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率は、60%~100%、70%~95%、80%~100%、90%~100%等であってもよい。具体的に、第1の負極活性材料における一次粒子の数量比率は、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%等であってもよい。第1の負極活性材料において、一次粒子がより多いことが好ましく、この場合は電池の容量が高い。同時に、一次粒子の比率が大きくなると、第1の負極フィルム層と集電体との接着性を向上させることができるため、電池のサイクル性能がさらに改善される。より好ましくは、第1の負極活性材料における一次粒子の数量比率は、80%~100%である。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料の体積平均粒径D50は、前記第2の負極活性材料の体積平均粒径D50よりも大きい。本発明者らの検討から分かるように、第1の負極活性材料のD50が第2の負極活性材料のD50よりも大きい場合、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のホール構造の最適化に有利であり、これにより、電池の急速充電性能がさらに改善される。同時に、ホール構造の最適化は、電極の局所分極を減少させ、電池のサイクル性能をさらに向上させるのに役立つ。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第1の負極活性材料のD50は、12μm~18μmであり、より好ましくは13μm~17μmである。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態において、前記第2の負極活性材料のD50は、9μm~15μmであり、より好ましくは10μm~13μmである。
【0038】
本願に係る二次電池において、前記第1の負極活性材料及び/又は第2の負極活性材料は、本願の上記負極活性材料以外、選択的に通常の他の負極活性材料、例えば、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、スズ系材料、チタン酸リチウムのうちの1種類又は複数種類を一定量で含んでもよい。前記スズ系材料は、単体スズ、スズ酸素化合物、スズ合金から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0039】
本願で使用される負極活性材料は、いずれも市販されている。当業者であれば、実際の使用状況に応じて適宜に選択することができる。
【0040】
本願に係る二次電池において、前記負極フィルムシートは、通常負極活性材料、選択可能な接着剤、選択可能な導電剤及びその他の選択可能な助剤を含み、通常負極スラリーを塗布、乾燥して得られるものである。負極スラリーは、通常負極活性材料と、選択可能な導電剤や接着剤等とを溶媒に分散させ、均一に攪拌して形成されるものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)又は脱イオン水であってもよい。
【0041】
例として、導電剤は、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0042】
例として、接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水溶性不飽和樹脂SR-1B、水性アクリル樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、カルボキシメチルキトサン(CMCS)のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0043】
他の選択可能な助剤は、例えば、増粘剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムCMC-Na)、PTCサーミスタ材料等である。
【0044】
本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、本願に係る二次電池の負極シートが、上記設計条件を満たした上で、負極フィルムシートが、さらに、下記の設計条件のうちの1つ又は複数を選択的に満たすと、二次電池の性能をさらに向上させることができることを発見した。
【0045】
いくつかの好ましい実施形態において、前記負極フィルムシートの面密度は、8mg/cm~13mg/cmであり、より好ましくは9mg/cm~12.5mg/cmである。なお、前記負極フィルムシートの面密度は、負極フィルムシート全体の面密度(即ち、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との面密度の合計)を指す。
【0046】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との面密度比は、2:3~3:2、例えば4:5~5:4である。第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との面密度比が所定の範囲内にあると、二次電池はエネルギー密度、急速充電能力及びサイクル性能をより良好に両立することができる。
【0047】
いくつかの好ましい実施形態において、負極フィルムシートの圧縮密度は、1.4g/cm~1.7g/cmである。より好ましくは、前記負極フィルム層の圧縮密度は、1.5g/cm~1.65g/cmである。なお、前記負極フィルムシートの圧縮密度とは、負極フィルムシート全体の圧縮密度(即ち、負極フィルムシートの面密度と厚さとの比)を指す。負極フィルムシートの圧縮密度が所定の範囲内にあることで、負極シートが高い可逆容量を有すると同時に、優れた低サイクル膨張性能と動力学性能を更に有し、これにより、電池のエネルギー密度、急速充電能力及びサイクル性能がさらに改善される。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態において、第2の負極フィルム層の孔隙率は、第1の負極フィルム層の孔隙率よりも大きい。孔隙率がより大きい第2の負極フィルム層及び孔隙率がより小さい第1の負極フィルム層が互いに係合して電池の急速充電性能及びサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0049】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極フィルム層の孔隙率は、好ましくは15%~35%であり、より好ましくは20%~30%である。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態において、第2の負極フィルム層の孔隙率は、好ましくは20%~40%であり、より好ましくは25%~35%である。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との厚さ比は、4:6~7:3であり、より好ましくは5:5~5:3である。第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との厚さ比が所定の範囲内にあると、二次電池はエネルギー密度、急速充電能力及びサイクル性能をより良好に両立することができる。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態において、負極フィルムシートの厚さは、60μm~90μmであってもよく、より好ましくは65μm~80μmである。前記負極フィルムシートの厚さは、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層の厚さの合計である。
【0053】
本願に係る二次電池において、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体(高分子基材に金属材料を設けて複合集電体を形成してもよい)を用いることができる。例として、負極集電体は銅箔を用いることができる。
【0054】
本願に係る二次電池において、負極フィルムシートは、負極集電体の1つの表面に設けられていてもよいし、負極集電体の2つの面に同時に設けられてもよい。例えば、負極集電体は、それ自体の厚さ方向で対向する2つの表面を有する。負極フィルムシートは、負極集電体の対向する2つの表面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0055】
図2は、本願に係る負極シート10の一実施形態の模式図を示している。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体101の2つの表面にそれぞれ設けられる第1の負極フィルム層103と、第1の負極フィルム層103に設けられる第2の負極フィルム層102とから構成する。
【0056】
図3は、本願に係る負極シート10の他の実施形態の模式図を示す。負極シート10は、負極集電体101と、負極集電体の1つの表面に設けられる第1の負極フィルム層103と、第1の負極フィルム層103に設けられる第2の負極フィルム層102とから構成する。
【0057】
なお、本願における各負極フィルムシートのパラメータ(例えば、フィルムシートの厚さ、孔隙率、圧縮密度、面密度等)は、いずれも片面フィルムシートのパラメータ範囲を意味する。負極集電体の2つの表面に負極フィルムシートが設けられる場合、いずれか一方の表面のフィルムシートのパラメータが本願を満たすと、本願に係る保護範囲内にあると考えられる。なお、本願におけるフィルム層の厚さ、孔隙率、圧縮密度、面密度等の範囲とは、いずれも冷間圧密後に電池の組み立てに用いられるフィルム層のパラメータを意味する。
【0058】
なお、本願に係る二次電池において、負極シートは、負極フィルムシート以外の付加機能層を排除するものではない。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の負極シートは、負極集電体と第1の負極フィルム層との間に挟まれ、負極集電体の表面に設けられる導電性コーティング層(例えば、導電剤及び接着剤からなる)をさらに含む。他の実施形態において、本願に記載の負極シートは、第2の負極フィルム層の表面に被覆された被覆保護層をさらに含む。
【0059】
本願において、負極活性材料におけるケイ素系材料の質量比率は、本技術分野で公知の意味であり、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)により負極フィルムシートの断面(例えば、フィルムシートの厚さ方向の断面)を観察し、エネルギー分散型X線分析(例えば、エネルギー分散型X線分光器を備えるZEISS Sigma 300)を用いて定量マッピングを行う。これにより、断面の走査位置について負極フィルムシートの元素含有量を測定し、元素分布を求める。断面内の1つの領域において、Siの元素分布を積分することにより、領域におけるSiの含有量を求めることができる。測定の精度を向上させるために、複数の領域(例えば、10個)を集計して平均値を測定結果とすることができる。
【0060】
本願において、ケイ素系材料の粒径は、本技術分野で公知の意味であり、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて測定することができる。試料の調製は以下のとおりである。まず、負極シートを一定の大きさの測定試料(例えば、2cm×2cm)に裁断し、パラフィンワックスにより負極シートを試料台に固定する。次に、試料台を試料ホルダーに固定し、アルゴンイオン断面バフ研磨機(例えば、IB-19500CP)の電源を投入し、真空(例えば、10-4Pa)を引き、アルゴンガス流量(例えば、0.15MPa)と電圧(例えば、8KV)及びバフ研磨時間(例えば、2時間)を設定し、試料台を揺動モードに調整してバフ研磨する。試料の測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の精度を確保するため、測定試料からランダムに複数(例えば、10個)の異なる区域を選んで走査測定を行うことができる。一定の拡大倍率(例えば、500倍)で、標尺で測定領域における全部のケイ素系材料の粒径を読み取る。測定の精度をさらに向上させるために、複数の領域の測定結果を集計することができる。
【0061】
本願において、一次粒子及び二次粒子は、本技術分野で公知の意味である。一次粒子とは、凝集状態を形成していない粒子を意味する。二次粒子とは、2つ又は2つ以上の一次粒子により凝集された凝集状態の粒子を意味する。一次粒子及び二次粒子は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影したSEM像により容易に区別することができる。
【0062】
負極活性材料における一次粒子又は二次粒子の数量比率は、本技術分野の既知の器械及び方法を用いて測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。二次粒子の数量比率の測定方法は、負極活性材料を導電性接着剤に敷き詰めて付着させ、長さ6cm×幅1.1cmの測定試料を作製し、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて粒子形態を測定するものであってもよい。測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の精度を確保するため、測定試料からランダムに複数(例えば、20個)の異なる区域を選んで走査測定を行うことができる。一定の拡大倍率(例えば、1000倍)で、各領域において二次粒子の数量が全粒子の数量に対する百分率を算出する。即ち、当該領域における二次粒子の数量比率である。複数の測定領域の測定結果の平均値を測定結果とする。同様に、第1の負極活性材料における前記一次粒子の数量比率を測定することもできる。
【0063】
本願において、負極活性材料のD50は、本技術分野で公知の意味であり、本技術分野で既知の器械及び方法を用いて測定することができる。例えば、標準GB/T19077.1-2016を参照し、レーザー粒度分析器(Malvern Master Size 3000)を使用して測定することができる。ここで、D50は、前記負極活性材料の累積体積分布百分率が50%に達した時に対応する粒径である。
【0064】
本願において、負極フィルムシートの厚さは、本技術分野で公知の意味であり、本技術分野での既知の方法を用いて測定することができる。例えば、Mitutoyo 293-100型、精度が0.1μmであるテントウサンドマイクロメータ(tenthousandth micrometer)で測定することができる。
【0065】
本願において、第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のそれぞれの厚さは、走査型電子顕微鏡(例えば、ZEISS Sigma 300)を用いて測定することができる。試料の調製は以下のとおりである。まず、負極シートを一定の大きさの測定試料(例えば、2cm×2cm)に裁断し、パラフィンワックスにより負極シートを試料台に固定する。次に、試料台を試料ホルダーに固定し、アルゴンイオン断面バフ研磨機(例えば、IB-19500CP)の電源を投入し、真空(例えば、10-4Pa)を引き、アルゴンガス流量(例えば、0.15MPa)、電圧(例えば、8KV)、バフ研磨時間(例えば、2時間)を設定し、試料台を揺動モードに調整してバフ研磨する。試料の測定は、JY/T010-1996を参照することができる。測定結果の精度を確保するため、測定試料からランダムに複数(例えば、10個)の異なる区域を選んで走査測定を行うことができる。一定の拡大倍率(例えば、500倍)で、標尺で測定領域における第1の負極フィルム層及び第2の負極フィルム層のそれぞれの厚さを読み取り、複数の測定領域の平均値を測定結果とする。
【0066】
本願において、負極フィルムシートの面密度は、本技術分野で公知の意味を有し、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。例えば、片面コーティングされ冷間プレスされた負極シート(両面コーティングされた負極シートであれば、その片面の負極フィルムシートを先に拭き取ることができる)を取り、面積S1の小さな円形シートに切断し、その重さを秤量してM1と記録する。次に、上記秤量後の負極シートの負極フィルムシートを拭き取り、負極集電体の重量を秤量してM0と記録する。負極フィルムシートの面密度=(負極シートの重量M1-負極集電体の重量M0)/S1。
【0067】
本願において、負極フィルムシートの圧縮密度は、本技術分野で公知の意味であり、本技術分野の既知の方法を用いて測定することができる。負極フィルムシートの圧縮密度=負極フィルムシートの面密度/負極フィルムシートの厚さ。
【0068】
なお、上記負極活性材料についての各種パラメータ測定は、塗布前にサンプリング測定してもよいし、冷間プレス後の負極フィルム層からサンプリング測定してもよい。
【0069】
上記測定試料を冷間プレス後の負極フィルムシートからサンプリングして測定した場合、例えば、以下のようにしてサンプリングすることができる。
【0070】
(1)まず、冷間プレス後の負極フィルムシートを任意に選択し、第2の負極活性材料をサンプリング(ブレードで切粉をサンプリングすることを選択できる)し、切粉の深さは、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との境界領域を超えない。
【0071】
(2)次に、第1の負極活性材料をサンプリングする。負極フィルムシートの冷間プレスの過程において、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との間の境界領域には融合層が存在する(即ち、融合層に第1の負極活性材料と第2の負極活性材料とが同時に存在する)可能性がある。測定の精度のために、第1の負極活性材料をサンプリングする際に、融合層を切削した後、第1の負極活性材料に対して切粉をサンプリングすることができる。
【0072】
(3)上記収集された第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料をそれぞれ脱イオン水中に置き、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料を吸引濾過して乾燥し、乾燥後の各負極活性材料を一定温度及び時間(例えば400℃、2時間)で焼成して接着剤及び導電性カーボンを除去することにより、第1の負極活性材料及び第2の負極活性材料の測定試料を得る。
【0073】
上記サンプリング過程において、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との境界領域の位置を、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて補助的に判断することができる。
[正極シート]
【0074】
本願に係る二次電池では、正極シートは、正極集電体と、正極集電体の少なくとも1つの表面に設けられ、且つ正極活性材料を含む正極フィルムシートとを含む。例えば、正極集電体は、それ自体の厚さ方向で対向する2つの表面を有する。正極フィルムシートは、正極集電体の2つの対向する表面のいずれか一方又は両方に設けられる。
【0075】
本願に係る二次電池において、前記正極活性材料は、本技術分野で公知の二次電池に用いられる正極活性材料を用いることができる。例えば、正極活性材料は、リチウム遷移金属酸化物、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、及びこれらのそれぞれの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。リチウム遷移金属酸化物の例として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物及びこれらの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができるが、これらに限定されない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例として、リン酸鉄リチウム、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料及びこれらの改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含むことができるが、これらに限定されない。本願は、これらの材料に限定されるものではなく、二次電池の正極活性材料として用いられる従来の公知の他の材料を用いることもできる。
【0076】
いくつかの好ましい実施形態では、電池のエネルギー密度をさらに向上させるために、正極活性材料は、式1で表されるリチウム遷移金属酸化物及びその改質化合物のうちの1種類又は複数種類を含んでいてもよい。
【0077】
【0078】
前記式1において、0.8≦a≦1.2、0.5≦b<1、0<c<1、0<d<1、1≦e≦2、0≦f≦1である。Mは、Mn、Al、Zr、Zn、Cu、Cr、Mg、Fe、V、Ti及びBから選択される1種類又は複数種類である。Aは、N、F、S及びClから選択される1種類又は複数種類である。
【0079】
本願において、上記各材料の改質化合物は、正極活性材料に対してドープ改質及び/又は表面被覆の改質を行ったものであってもよい。
【0080】
本願に係る二次電池において、前記正極フィルムシートは、通常正極活性材料と、選択可能な接着剤と、選択可能な導電剤とを含み、通常正極スラリーが塗布され、乾燥され、冷間プレスされて得られるものである。正極スラリーは、通常正極活性材料と、選択可能な導電剤及び接着剤等とを溶媒に分散させ、均一に攪拌することにより形成されるものである。溶媒は、N-メチルピロリドン(NMP)であってもよい。
【0081】
一例として、正極フィルムシートに用いられる接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0082】
一例として、正極フィルムシートに用いられる導電剤は、例えば、黒鉛、超導電カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンナノファイバーのうちの1種類又は複数種類を含むことができる。
【0083】
本願に係る二次電池において、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体(高分子基材に金属材料を設けて複合集電体を形成してもよい)を用いることができる。一例として、正極集電体は、アルミニウム箔を用いることができる。
[電解質]
【0084】
本願に係る二次電池において、電解質の種類は、特に限定されず、必要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、固体電解質及び液体電解質(即ち、電解液)から選択される少なくとも1種類であってもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、電解質は、電解液を使用する。電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0086】
いくつかの実施形態では、電解質塩は、LiPF(六フッ化リン酸リチウム)、LiBF(テトラフルオロホウ酸リチウム)、LiClO(過塩素酸リチウム)、LiAsF(六フッ化ヒ酸リチウム)、LiFSI(リチウムビスフルオロスルホニルイミドリチウム)、LiTFSI(リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド)、LiTFS(トリフルオロメタンスルホン酸リチウム)、LiDFOB(リチウムジフルオロ(オキサレート)ボレート)、LiBOB(リチウムビスオキサレートボラート)、LiPO(ジフルオロリン酸リチウム)、LiDFOP(リチウムジフルオロビス(オキサレート)ホスフェート)及びLiTFOP(リチウムテトラフルオロオキサラートホスフェート)から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、溶媒は、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ブチレンカーボネート(BC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ギ酸メチル(MF)、酢酸メチル(MA)、酢酸エチル(EA)、酢酸プロピル(PA)、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル(EP)、プロピオン酸プロピル(PP)、酪酸メチル(MB)、酪酸エチル(EB)、1、4-ブチロラクトン(GBL)、スルホラン(SF)、ジメチルスルホン(MSM)、メチルエチルスルホン(EMS)及びジエチルスルホン(ESE)から選択される1種類又は複数種類であってもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、電解液には、添加剤がさらに選択的に含まれてもよい。例えば、添加剤は、負極成膜用添加剤を含んでもよいし、正極成膜用添加剤を含んでもよいし、電池の特定の性能を改善できる添加剤(例えば、電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温性能を改善する添加剤、電池の低温性能を改善する添加剤等)を含んでもよい。
[セパレータ]
【0089】
電解液を用いた二次電池及びいくつかの固体電解質を用いた二次電池の中には、セパレータが更に含まれる。セパレータは、正極シートと負極シートとの間に設けられ、隔離の作用を果たす。本願において、セパレータの種類は特に限定されず、化学的安定性及び機械的安定性に優れた公知の多孔質構造のセパレータを任意に選択することができる。いくつかの実施形態において、セパレータの材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンから選択される1種類又は複数種類であってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよいし、多層複合フィルムであってもよい。セパレータが多層複合フィルムである場合、各層の材料は同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、正極シート、負極シート、及びセパレータは、巻回工程又は積層工程によって電極アセンブリを作製することができる。
【0091】
いくつかの実施形態において、二次電池は、外装を含むことができる。この外装は、上記電極アセンブリ及び電解質を封止するために用いることができる。
【0092】
いくつかの実施形態において、二次電池の外装は、硬質プラスチックシェル、アルミニウムシェル、鋼シェル等のような硬質シェルであってもよい。二次電池の外装は、袋状のソフトパック等のようなソフトパックであってもよい。ソフトパックの材質は、プラスチックであってもよく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)等のうちの1種類又は複数種類であってもよい。
【0093】
本願において、二次電池の形状は特に限定されず、円筒形、方形、又は他の任意の形状であってよい。図1には、一例としての方形構造の二次電池5が示されている。
【0094】
いくつかの実施形態において、図4を参照すると、外装は、ケース51とカバープレート53とを含むことができる。ここで、ケース51は、底板と、底板に接続された側板とを含み、底板及び側板の嵌合で収容室を形成する。ケース51は、収容室と連通する開口を有し、カバープレート53は、前記収容室を密閉するように前記開口を覆っているために用いられる。正極シート、負極シート及びセパレータは、巻回工程又は積層工程を経て電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容室内に封止される。電解液は、電極アセンブリ52内に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、1個又は数個であってもよく、必要に応じて調整することができる。
【0095】
いくつかの実施形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てられてもよい。電池モジュールに含まれる二次電池の数は、複数であってもよい。具体的な数は、電池モジュールの用途及び容量に応じて調整されてもよい。
【0096】
図5は、一例としての電池モジュール4である。図5を参照して、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長さ方向に沿って順に並んで設けられてもよい。もちろん、他の任意の方法で配列することも可能である。さらに、この複数の二次電池5を締結具により固定することができる。
【0097】
選択可能に、電池モジュール4は、複数の二次電池5が収容される収容空間を有するハウジングをさらに備えていてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、上記電池モジュールは、電池パックに組み込まれてもよい。電池パックに含まれる電池モジュールの数は、電池パックの用途及び容量に応じて調節されてもよい。
【0099】
図6及び図7は、一例としての電池パック1である。図6及び図7を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと、電池ボックス内に配置される複数の電池モジュール4とが含まれていてもよい。電池バックスは、上部筐体2と下部筐体3とを備える。上部筐体2は、下部筐体3を覆うことに用いられ、また電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成する。複数の電池モジュール4は、任意の方法で電池ボックス内に配列されることができる。
製造方法
【0100】
本願の第2の態様の実施形態は、前記二次電池の負極シートを製造する二次電池の製造方法であって、
負極集電体の少なくとも1つの表面に、黒鉛を含み、ケイ素系材料を選択的に含む第1の負極活性材料を備える第1の負極フィルム層を形成する工程S10と、
第1の負極フィルム層の負極集電体と対相する表面に、人造黒鉛とケイ素系材料とを含む第2の負極活性材料を備えた第2の負極フィルム層を形成する工程S20と、を含み、
前記第1の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW1とし、前記第2の負極活性材料における前記ケイ素系材料の質量比率をW2とする場合、前記負極シートは、W2≧W1を満たす、二次電池の製造方法を提供する。
【0101】
本願に係る二次電池の製造方法において、第1の負極活性材料のスラリーと第2の負極活性材料のスラリーは、一回で同時に塗布されてもよいし、二回に分けて塗布されてもよい。
【0102】
好ましくは、第1の負極活性材料のスラリーと第2の負極活性材料スラリーは、一回で同時に塗布される。一回で同時に塗布されることは、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との接着性を向上させることができ、電池のサイクル性能をさらに向上させることができる。
【0103】
本願に係る負極シートの製造方法に加えて、本願に係る二次電池の他の構成及び製造方法は公知である。例えば、本願に係る正極シートは、以下の製造方法で製造することができる。正極活性材料と、選択可能な導電剤及び接着剤等とを混合して溶媒(例えば、NMP)に分散させ、均一に攪拌して正極集電体に塗布する。乾燥、冷間プレスした後、正極シートを得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、負極シート、正極シート、セパレータ、及び電解液は組み立てられて二次電池を形成することができる。一例として、正極シート、セパレータ、負極シートを巻回工程又は積層工程により電極アセンブリに形成する。この電極アセンブリを外装に収納して電解液を注入し、真空封止、静置、化成、整形等の工程を経て、二次電池を得る。
【0105】
本願に係る二次電池の好ましい技術的特徴は、本願に係る製造方法にも同様に適用する。
装置
【0106】
本願の第3の態様の実施形態は、本願の第1の態様に係る二次電池、及び/又は本願の第2の態様に係る方法によって製造された二次電池を含む装置を提供する。前記二次電池は、前記装置の電源として用いられてもよいし、前記装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記装置は、モバイル機器(例えば、携帯電話、ノートパソコン等)、電気自動車(例えば、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクーター、電動ゴルフカート、電動トラック等)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システム等であってもよいが、これらに限定されない。
【0107】
前記装置は、その使用要求に応じて、二次電池、電池モジュール、又は電池パックに選択することができる。
【0108】
図8は、一例としての装置である。当該装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車等である。当該装置の高電力及び高エネルギー密度の要求を満たすために、電池パック又は電池モジュールを使用することができる。
【0109】
他の装置の例として、携帯電話、タブレット、ノートパソコン等であってもよい。当該装置は、通常薄型化を要求し、二次電池を電源として採用することができる。
実施例
【0110】
以下の実施例は、本明細書の開示内容をより具体的に説明する。これらの実施例は、単に説明のためのものであり、本願の開示の範囲内で様な修正及び変更を行うことは、当業者には自明である。特に断りのない限り、以下の実施例において報告される全ての部、百分率、及び比は、重量に基づいて計算されるものである。実施例において使用された全ての試薬は市販されているか、又は常法に従って合成されている。また、さらに処理されていなくても直接使用することができ、実施例で使用した器械も市販されている。
実施例1
負極シートの作製
【0111】
第1の負極活性材料である人造黒鉛、導電剤であるカーボンブラック(Super P)、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)及び増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を96:1.5:1.5:1の質量比で適量の溶剤である脱イオン水において十分に攪拌混合し、均一な第1の負極スラリーを形成させる。ここで、第1の負極活性材料の体積平均粒径D50は、15.7μmである。第1の負極活性材料における一次粒子の数量比率は95%である。
【0112】
第2の負極活性材料である人造黒鉛とケイ素系材料SiOx(x≒1.05)とを97:3の質量比で混合した後、さらに導電剤(Super P)、接着剤であるスチレンブタジエンゴム(SBR)及び増粘剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)と96:1.5:1.5:1の質量比で適量の溶剤である脱イオン水において十分に攪拌混合し、均一な第2の負極スラリーを形成させる。ここで、第2の負極活性材料の体積平均粒径D50は、11.5μmであり、第2の負極活性材料における二次粒子の数量比率は90%である。
【0113】
第1の負極スラリーと第2の負極スラリーは、ダブルキャビティ塗布装置により同時に押出される。第1の負極スラリーを集電体に塗布して第1の負極フィルム層を形成し、第2の負極スラリーを第1の負極フィルム層に塗布して第2の負極フィルム層を形成する。乾燥、冷間プレスした後、負極シートを得る。ここで、負極フィルムシートの面密度は、11mg/cmであり、圧縮密度は1.65g/cmであり、第1の負極フィルム層と第2の負極フィルム層との面密度の比は5:5である。
正極シートの作製
【0114】
正極活性材料であるLiNi0.8Co0.1Mn0.1(NCM811)、導電剤であるSuper P、接着剤であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)を97:1.5:1.5の質量比で適量の溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)において十分に攪拌混合し、均一な正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体であるアルミニウム箔の表面に塗布する。乾燥、冷間プレスした後、正極シートを得る。ここで、正極フィルムシートの面密度は17.5mg/cmであり、圧縮密度は3.4g/cmである。
電解液の調製
【0115】
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を4:3:3の体積比で混合した後、LiPFを上記溶液に均一に溶解させて電解液を得る。ここで、LiPFの濃度を1mol/Lである。
セパレータ
【0116】
PEセパレータを用いる。
二次電池の製造
【0117】
正極シート、セパレータ、負極シートを順次に積層し、巻回した後に電極アセンブリを得る。電極アセンブリを外装に入れ、上記電解液を添加し、封止、静置、化成、エージング等の工程を経た後、二次電池を得る。
実施例2~27及び比較例1~6
【0118】
負極シートの製造工程における関連パラメータを調整し、対応する二次電池を得る以外は、実施例1と同様にして製造する。詳細は表1を参照する。
測定内容 1)電池の急速充電能力の測定
【0119】
25℃で、上記各実施例及び比較例の電池を1C(即ち、1h以内で理論容量を完全に放電する電流値)の電流で1回目の充電及び放電する。具体的に、電池を1C倍率で電圧4.25Vまで定電流充電した後、電流≦0.05Cまで定電圧充電し、5分間静置した後、0.33C倍率で電圧2.8Vまで定電流放電し、その実際容量をC0として記録する。
【0120】
次に、電池を順に1.0C0、1.3C0、1.5C0、1.8C0、2.0C0、2.3C0、2.5C0、3.0C0で全電池充電カットオフ電圧4.25V又は0Vの負極カットオフ電位(先に達成したものに準じる)まで定電流充電する。毎回の充電が完了すると、1C0で全電池の放電カットオフ電圧2.8Vまで放電する必要がある。異なる充電倍率で10%、20%、30%、…、80%SOC(State of Charge、充電状態)まで充電した時に対応する負極電位を記録し、異なるSOC状態での充電倍率-負極電位曲線を描き、線形フィッティングした後に、異なるSOC状態での負極電位が0Vである時に対応する充電倍率を得る。当該充電倍率は、当該SOC状態での充電ウィンドウであり、それぞれC10%SOC、C20%SOC、C30%SOC、C40%SOC、C50%SOC、C60%SOC、C70%SOC、C80%SOCと記す。式(60/C20%SOC+60/C30%SOC+60/C40%SOC+60/C50%SOC+60/C60%SOC+60/C70%SOC+60/C80%SOC)×10%に基づいて、当該電池が10%SOCから80%SOCまで充電する充電時間T(電池がリチウム析出しないことを前提とする)を算出し、単位がminである。当該時間が短いほど、電池の急速充電性能が優れることを示す。 2)電池のサイクル性能の測定
【0121】
25℃で、各実施例及び比較例で製造した二次電池を、1C倍率で充電カットオフ電圧4.25Vまで定電流充電した後、電流≦0.05Cまで定電圧充電し、5min静置し、さらに1C倍率で放電カットオフ電圧2.8Vまで定電流放電し、5min静置し、これを1回の充放電サイクルとする。電池容量が80%に減衰するまで、この方法で電池のサイクル充放電測定を行う。この時のサイクル回数は、電池の25℃におけるサイクル寿命である。
【0122】
【表1】
【0123】
表の結果から分かるように、本願の実施例に係る二次電池において、負極シートが二重フィルム層構造を有し、且つ上層の負極フィルム層と下層の負極フィルム層がいずれも特定の負極活性材料を備えるため、二次電池は高いエネルギー密度を有する前提で、優れた急速充電能力及びサイクル性能を兼ね備える。
【0124】
比較例1~6は、W2≧W1を満たさないため、二次電池の急速充電能力及びサイクル寿命がいずれも劣っている。
【0125】
また、実施例6、9~11及び実施例8、12~14から分かるように、第1の負極フィルム層もケイ素系材料を含み、且つW2≧W1を満たすと、電池のエネルギー密度を増加するが、電池の急速充電性能及びサイクル性能にわずかな影響を与える。
【0126】
以上、本願の具体的な実施形態について説明したが、本願に係る保護範囲はこれに限定されるものではない。当業者であれば、本願に開示された技術的範囲内において、様な等価な修正又は置換が容易に想到され、これらの修正又は置換も、本願に係る保護範囲内に含まれるべきである。したがって、本願に係る保護範囲は、特許請求の範囲に準ずるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8