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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】半導体装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06G 7/60 20060101AFI20241202BHJP
   G06G 7/14 20060101ALI20241202BHJP
   G06G 7/16 20060101ALI20241202BHJP
   G06N 3/063 20230101ALI20241202BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20241202BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20241202BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20241202BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20241202BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20241202BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20241202BHJP
   H01L 21/82 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G06G7/60
G06G7/14
G06G7/16 510
G06N3/063
H01L27/04 U
H01L27/04 C
H01L27/04 A
H01L29/78 613Z
H01L29/78 618B
H01L29/78 617N
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 J
H01L21/82 D
H01L21/82 L
H01L27/088 331E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022541318
(86)(22)【出願日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 IB2021056484
(87)【国際公開番号】W WO2022029532
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2024-06-28
(31)【優先権主張番号】P 2020131616
(32)【優先日】2020-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】長塚 修平
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/234919(WO,A1)
【文献】特開2018-25759(JP,A)
【文献】特開平6-131482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06G 7/60
G06G 7/14
G06G 7/16
G06N 3/063
H01L 21/822
H01L 29/786
H01L 21/8234
H01L 21/82
H01L 27/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第1容量と、を有し、
前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、のそれぞれは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記第1トランジスタの第1端子は、前記第2トランジスタの第1端子に電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記第3トランジスタの第1端子と、前記第1容量の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第2端子は、前記第1容量の第2端子と、前記第4トランジスタの第1端子と、前記第5トランジスタのゲートと、前記第7トランジスタの第1端子と、前記第8トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第5トランジスタの第1端子は、前記第6トランジスタの第1端子と、前記第7トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第8トランジスタの第1端子は、前記第9トランジスタの第1端子と、前記第10トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、のそれぞれのソース-ドレイン間に流れる電流量は、そのトランジスタがサブスレッショルド領域で動作するときに流れる電流量である、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
第2容量を有し、
前記第1トランジスタのゲートは、前記第2容量の第1端子に電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記第2容量の第2端子に電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2において、
前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、の少なくとも一は、マルチゲート構造のトランジスタである、
半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
第11トランジスタと、第3容量と、を有し、
前記第11トランジスタの第1端子は、前記第3容量の第1端子に電気的に接続され、
前記第11トランジスタの第1端子が、前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、のいずれか一のバックゲートに電気的に接続されている場合、前記第3容量の第2端子は、前記第11トランジスタの第1端子に電気的に接続されているバックゲートを有するトランジスタのソースに電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第1トランジスタのバックゲートは、前記第3トランジスタのバックゲートと、前記第4トランジスタのバックゲートと、に電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項6】
第1トランジスタと、第2トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第12トランジスタと、第13トランジスタと、第1容量と、を有し、
前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、前記第12トランジスタと、前記第13トランジスタと、のそれぞれは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記第1トランジスタの第1端子は、前記第2トランジスタの第1端子に電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記第12トランジスタの第1端子と、前記第13トランジスタのゲートと、前記第1容量の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第12トランジスタの第2端子は、前記第13トランジスタの第1端子に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第2端子は、前記第1容量の第2端子と、前記第4トランジスタの第1端子と、前記第5トランジスタのゲートと、前記第7トランジスタの第1端子と、前記第8トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第5トランジスタの第1端子は、前記第6トランジスタの第1端子と、前記第7トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第8トランジスタの第1端子は、前記第9トランジスタの第1端子と、前記第10トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、前記第13トランジスタと、のそれぞれのソース-ドレイン間に流れる電流量は、そのトランジスタがサブスレッショルド領域で動作するときに流れる電流量である、
半導体装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、前記第12トランジスタと、前記第13トランジスタと、の少なくとも一は、マルチゲート構造のトランジスタである、
半導体装置。
【請求項8】
請求項6、又は請求項7において、
第11トランジスタと、第3容量と、を有し、
前記第11トランジスタの第1端子は、前記第3容量の第1端子に電気的に接続され、
前記第11トランジスタの第1端子が、前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、前記第12トランジスタと、前記第13トランジスタと、のいずれか一のバックゲートに電気的に接続されている場合、前記第3容量の第2端子は、前記第11トランジスタの第1端子に電気的に接続されているバックゲートを有するトランジスタのソースに電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項9】
請求項6、又は請求項7において、
前記第1トランジスタのバックゲートは、前記第4トランジスタのバックゲートと、前記第12トランジスタのバックゲートと、に電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項10】
第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第14トランジスタと、第15トランジスタと、第1容量と、フォトダイオードと、を有し、
前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、前記第14トランジスタと、前記第15トランジスタと、のそれぞれは、チャネル形成領域に金属酸化物を有し、
前記第1トランジスタの第1端子は、前記第2トランジスタの第1端子に電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記第3トランジスタの第1端子と、前記第1容量の第1端子と、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタの第2端子は、前記第1容量の第2端子と、前記第4トランジスタの第1端子と、前記第5トランジスタのゲートと、前記第7トランジスタの第1端子と、前記第8トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第5トランジスタの第1端子は、前記第6トランジスタの第1端子と、前記第7トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第8トランジスタの第1端子は、前記第9トランジスタの第1端子と、前記第10トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第14トランジスタの第1端子は、前記フォトダイオードの入力端子に電気的に接続され、
前記第14トランジスタの第2端子は、前記第15トランジスタの第1端子と、前記第15トランジスタのゲートと、前記第6トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、
前記第2トランジスタ、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、前記第15トランジスタと、のそれぞれのソース-ドレイン間に流れる電流量は、そのトランジスタがサブスレッショルド領域で動作するときに流れる電流量である、
半導体装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、前記第14トランジスタと、前記第15トランジスタと、の少なくとも一は、マルチゲート構造のトランジスタである、
半導体装置。
【請求項12】
請求項10、又は請求項11において、
第11トランジスタと、第3容量と、を有し、
前記第11トランジスタの第1端子は、前記第3容量の第1端子に電気的に接続され、
前記第11トランジスタの第1端子が、前記第1トランジスタと、前記第2トランジスタと、前記第3トランジスタと、前記第4トランジスタと、前記第5トランジスタと、前記第6トランジスタと、前記第7トランジスタと、前記第8トランジスタと、前記第9トランジスタと、前記第10トランジスタと、前記第14トランジスタと、前記第15トランジスタと、のいずれか一のバックゲートに電気的に接続されている場合、前記第3容量の第2端子は、前記第11トランジスタの第1端子に電気的に接続されているバックゲートを有するトランジスタのソースに電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項13】
請求項10、又は請求項11において、
前記第1トランジスタのバックゲートは、前記第3トランジスタのバックゲートと、前記第4トランジスタのバックゲートと、に電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項14】
請求項10乃至請求項13のいずれか一において、
第2容量を有し、
前記第1トランジスタのゲートは、前記第2容量の第1端子に電気的に接続され、
前記第2トランジスタのゲートは、前記第2容量の第2端子に電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一において、
前記第1トランジスタの第1端子は、前記第5トランジスタの第2端子と、前記第8トランジスタの第2端子と、に電気的に接続されている、
半導体装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか一において、
前記金属酸化物は、インジウム酸化物を有する、
半導体装置。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか一の半導体装置と、筐体と、を有し、
前記半導体装置によって積和演算が行われる、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体装置、及び電子機器に関する。
【0002】
なお本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の技術分野は、物、駆動方法、又は、製造方法に関するものである。又は、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、蓄電装置、撮像装置、記憶装置、信号処理装置、プロセッサ、電子機器、システム、それらの駆動方法、それらの製造方法、又はそれらの検査方法を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
現在、人間の脳の仕組みを模した集積回路の開発が盛んに進められている。当該集積回路は、脳の仕組みが電子回路として組み込まれており、人間の脳の「ニューロン」と「シナプス」に相当する回路を有する。そのため、そのような集積回路を、「ニューロモーフィック」、「ブレインモーフィック」、「ブレインインスパイア」などと呼ぶこともある。当該集積回路は、非ノイマン型アーキテクチャを有し、処理速度の増加に伴って消費電力が大きくなるノイマン型アーキテクチャと比較して、極めて少ない消費電力で並列処理を行えると期待されている。
【0004】
「ニューロン」と「シナプス」とを有する神経回路網を模した情報処理のモデルは、人工ニューラルネットワーク(ANN)と呼ばれる。例えば、非特許文献1、及び非特許文献2には、SRAM(Static Random Access Memory)を用いて、人工ニューラルネットワークを構成した演算装置について開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】M.Kang et al.,”IEEE Journal Of Solid-State Circuits”,2018,Volume 53,No.2,p.642-655.
【文献】J.Zhang et al.,“IEEE Journal Of Solid-State Circuits”,2017,Volume 52,No.4,p.915-924.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人工ニューラルネットワークでは、2つのニューロン同士を結合するシナプスの結合強度(重み係数という場合がある。)と、2つのニューロン間で伝達する信号と、を乗じる計算が行われる。特に、階層型の人工ニューラルネットワークでは、第1層の複数の第1ニューロンと第2層の第2ニューロンの一との間のそれぞれのシナプスの結合強度と、第1層の複数の第1ニューロンから第2層の第2ニューロンの一に入力されるそれぞれの信号と、を乗じて足し合わせる必要があり、つまり積和演算を行う必要があり、人工ニューラルネットワークの規模に応じて、例えば、当該結合強度の数、当該信号を示すパラメータの数が決まる。また、第2ニューロンは、シナプスの結合強度と第1ニューロンが出力した信号との積和演算の結果を用いて、活性化関数による演算を行って、当該演算結果を信号として、第3層目の第3ニューロンに対して出力する。つまり、人工ニューラルネットワークは、階層の数、ニューロン数などが多くなる程、「ニューロン」及び「シナプス」のそれぞれに相当する回路の数が多くなり、演算量も膨大になることがある。これにより、回路の消費電力が大きくなり、また、演算効率も低くなることがある。
【0007】
また、デジタル演算回路で人工ニューラルネットワークの演算を行う場合、その演算性能としては、概ね10TOPS(Tera Operations Per Second)/Wが限界とされている。演算性能を高くするため、アナログ演算回路で人工ニューラルネットワークの演算を行うことが提案されている。
【0008】
また、人工ニューラルネットワークの演算を行うアナログ演算回路としては、トランスリニア原理を用いた回路などが挙げられる。しかし、当該回路をシリコンがチャネル形成領域に含まれるトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼称する)で構成する場合、例えば、Siトランジスタでアナログメモリを構成することは難しい。そのため、アナログ演算回路に入力するデータは、デジタルメモリから読み出してデジタルアナログ変換回路によってアナログデータに変換する必要がある。
【0009】
また、Siトランジスタを含む、トランスリニア原理を用いた乗算回路を作製した場合、Siトランジスタに流れる電流としては、例えば、10pA以上、好ましくは、1nA以上とする必要がある。逆に、これらよりも低い電流では、Siトランジスタにおけるサブスレッショルド領域の指数特性を維持することが難しいとされている。
【0010】
また、一般的には、回路の規模を大きくすると、当該回路の電圧入力端子において、電圧降下の影響を受ける場合がある。Siトランジスタを含む、トランスリニア原理を用いた乗算回路の場合、Siトランジスタに上述した電流値を流すために、当該回路の電圧入力端子には適切な電圧を与える必要がある。
【0011】
また、トランスリニア原理を用いた乗算回路は、含まれているトランジスタのしきい値電圧のばらつきの影響が計算結果に表れる場合がある。逆に言えば、しきい値電圧のばらつきを無くすことで演算精度を高めることができる。
【0012】
本発明の一態様は、積和演算、及び/又は関数演算を行う半導体装置などを提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、AI(Artificial Intelligence)向けの半導体装置などを提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、DNN(Deep Neural Network)向けの半導体装置などを提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、演算性能が高い半導体装置を提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、消費電力が低い半導体装置などを提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、トランジスタのしきい値電圧のばらつきの影響を受けにくい半導体装置などを提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、電流源の特性ばらつきの影響を受けにくい半導体装置などを提供することを課題の一とする。又は、本発明の一態様は、新規な半導体装置などを提供することを課題の一とする。
【0013】
なお本発明の一態様の課題は、上記列挙した課題に限定されない。上記列挙した課題は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお他の課題は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない課題である。本項目で言及していない課題は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した課題、及び他の課題のうち、少なくとも一つの課題を解決するものである。なお、本発明の一態様は、上記列挙した課題、及び他の課題の全てを解決する必要はない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)
本発明の一態様は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第1容量と、を有する半導体装置である。また、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、のそれぞれは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する。第1トランジスタの第1端子は、第2トランジスタの第1端子に電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、第3トランジスタの第1端子と、第1容量の第1端子と、に電気的に接続されている。また、第2トランジスタの第2端子は、第1容量の第2端子と、第4トランジスタの第1端子と、第5トランジスタのゲートと、第7トランジスタの第1端子と、第8トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている。また、第5トランジスタの第1端子は、第6トランジスタの第1端子と、第7トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、第8トランジスタの第1端子は、第9トランジスタの第1端子と、第10トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている。なお、第2トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、のそれぞれのソース-ドレイン間に流れる電流量は、そのトランジスタがサブスレッショルド領域で動作するときに流れる電流量である。
【0015】
(2)
又は、本発明の一態様は、上記(1)において、第2容量を有する構成とすることが好ましい。特に、第1トランジスタのゲートは、第2容量の第1端子に電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、第2容量の第2端子に電気的に接続されていることが好ましい。
【0016】
(3)
又は、本発明の一態様は、上記(1)、又は(2)において、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、の少なくとも一は、マルチゲート構造のトランジスタである構成とすることが好ましい。
【0017】
(4)
又は、本発明の一態様は、上記(1)乃至(3)のいずれか一において、第11トランジスタと、第3容量と、を有する構成とすることが好ましい。特に、第11トランジスタの第1端子は、第3容量の第1端子に電気的に接続されていることが好ましい。また、第11トランジスタの第1端子が、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、のいずれか一のバックゲートに電気的に接続されている場合、第3容量の第2端子は、第11トランジスタの第1端子に電気的に接続されているバックゲートを有するトランジスタのソースに電気的に接続されていることが好ましい。
【0018】
(5)
又は、本発明の一態様は、上記(1)乃至(3)のいずれか一において、第1トランジスタのバックゲートは、第3トランジスタのバックゲートと、第4トランジスタのバックゲートと、に電気的に接続されている構成とすることが好ましい。
【0019】
(6)
又は、本発明の一態様は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第12トランジスタと、第13トランジスタと、第1容量と、を有する半導体装置である。また、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第12トランジスタと、第13トランジスタと、のそれぞれは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する。第1トランジスタの第1端子は、第2トランジスタの第1端子に電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、第12トランジスタの第1端子と、第13トランジスタのゲートと、第1容量の第1端子と、に電気的に接続され、第12トランジスタの第2端子は、第13トランジスタの第1端子に電気的に接続されている。また、第2トランジスタの第2端子は、第1容量の第2端子と、第4トランジスタの第1端子と、第5トランジスタのゲートと、第7トランジスタの第1端子と、第8トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている。第5トランジスタの第1端子は、第6トランジスタの第1端子と、第7トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、第8トランジスタの第1端子は、第9トランジスタの第1端子と、第10トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている。なお、第2トランジスタ、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第13トランジスタと、のそれぞれのソース-ドレイン間に流れる電流量は、そのトランジスタがサブスレッショルド領域で動作するときに流れる電流量である。
【0020】
(7)
又は、本発明の一態様は、上記(6)において、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第12トランジスタと、第13トランジスタと、の少なくとも一は、マルチゲート構造のトランジスタである構成とすることが好ましい。
【0021】
(8)
又は、本発明の一態様は、上記(6)、又は(7)において、第11トランジスタと、第3容量と、を有する構成とすることが好ましい。第11トランジスタの第1端子は、第3容量の第1端子に電気的に接続されていることが好ましい。また、第11トランジスタの第1端子が、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第12トランジスタと、第13トランジスタと、のいずれか一のバックゲートに電気的に接続されている場合、第3容量の第2端子は、第11トランジスタの第1端子に電気的に接続されているバックゲートを有するトランジスタのソースに電気的に接続されている構成とすることが好ましい。
【0022】
(9)
又は、本発明の一態様は、上記(6)、又は(7)において、第1トランジスタのバックゲートは、第4トランジスタのバックゲートと、第12トランジスタのバックゲートと、に電気的に接続されている構成とすることが好ましい。
【0023】
(10)
又は、本発明の一態様は、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第14トランジスタと、第15トランジスタと、第1容量と、フォトダイオードと、を有する半導体装置である。また、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第14トランジスタと、第15トランジスタと、のそれぞれは、チャネル形成領域に金属酸化物を有する。また、第1トランジスタの第1端子は、第2トランジスタの第1端子に電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、第3トランジスタの第1端子と、第1容量の第1端子と、に電気的に接続されている。また、第2トランジスタの第2端子は、第1容量の第2端子と、第4トランジスタの第1端子と、第5トランジスタのゲートと、第7トランジスタの第1端子と、第8トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている。また、第5トランジスタの第1端子は、第6トランジスタの第1端子と、第7トランジスタのゲートと、に電気的に接続され、第8トランジスタの第1端子は、第9トランジスタの第1端子と、第10トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている。また、第14トランジスタの第1端子は、フォトダイオードの入力端子に電気的に接続され、第14トランジスタの第2端子は、第15トランジスタの第1端子と、第15トランジスタのゲートと、第6トランジスタのゲートと、に電気的に接続されている。なお、第2トランジスタ、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第15トランジスタと、のそれぞれのソース-ドレイン間に流れる電流量は、そのトランジスタがサブスレッショルド領域で動作するときに流れる電流量である。
【0024】
(11)
又は、本発明の一態様は、上記(10)において、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第14トランジスタと、第15トランジスタと、の少なくとも一は、マルチゲート構造のトランジスタである構成とすることが好ましい。
【0025】
(12)
又は、本発明の一態様は、上記(10)、又は(11)において、第11トランジスタと、第3容量と、を有する構成とすることが好ましい。また、第11トランジスタの第1端子は、第3容量の第1端子に電気的に接続されていることが好ましい。また、第11トランジスタの第1端子が、第1トランジスタと、第2トランジスタと、第3トランジスタと、第4トランジスタと、第5トランジスタと、第6トランジスタと、第7トランジスタと、第8トランジスタと、第9トランジスタと、第10トランジスタと、第14トランジスタと、第15トランジスタと、のいずれか一のバックゲートに電気的に接続されている場合、第3容量の第2端子は、第11トランジスタの第1端子に電気的に接続されているバックゲートを有するトランジスタのソースに電気的に接続されていることが好ましい。
【0026】
(13)
又は、本発明の一態様は、上記(10)、又は(11)において、第1トランジスタのバックゲートは、第3トランジスタのバックゲートと、第4トランジスタのバックゲートと、に電気的に接続されている構成とすることが好ましい。
【0027】
(14)
又は、本発明の一態様は、上記(10)乃至(13)のいずれか一において、第2容量を有する構成とすることが好ましい。特に、第1トランジスタのゲートは、第2容量の第1端子に電気的に接続され、第2トランジスタのゲートは、第2容量の第2端子に電気的に接続されている構成とすることが好ましい。
【0028】
(15)
又は、本発明の一態様は、上記(1)乃至(14)のいずれか一において、第1トランジスタの第1端子は、第5トランジスタの第2端子と、第8トランジスタの第2端子と、に電気的に接続されている構成とすることが好ましい。
【0029】
(16)
又は、本発明の一態様は、上記(1)乃至(15)のいずれか一の半導体装置と、筐体と、を有し、半導体装置によって積和演算が行われる電子機器である。
【0030】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用した装置であり、半導体素子(トランジスタ、ダイオード、フォトダイオード等)を含む回路、同回路を有する装置等をいう。また、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップ、パッケージにチップを収納した電子部品などは半導体装置の一例である。また、記憶装置、表示装置、発光装置、照明装置及び電子機器等は、それ自体が半導体装置である場合があり、半導体装置を有している場合がある。
【0031】
また、本明細書等において、XとYとが接続されていると記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図又は文章に示された接続関係に限定されず、図又は文章に示された接続関係以外のものも、図又は文章に開示されているものとする。X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層など)であるとする。
【0032】
XとYとが電気的に接続されている場合の一例としては、XとYとの電気的な接続を可能とする素子(例えば、スイッチ、トランジスタ、容量素子、インダクタ、抵抗素子、ダイオード、表示デバイス、発光デバイス、負荷など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、スイッチは、オンオフが制御される機能を有している。つまり、スイッチは、導通状態(オン状態)、又は、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有している。
【0033】
XとYとが機能的に接続されている場合の一例としては、XとYとの機能的な接続を可能とする回路(例えば、論理回路(インバータ、NAND回路、NOR回路など)、信号変換回路(デジタルアナログ変換回路、アナログデジタル変換回路、ガンマ補正回路など)、電位レベル変換回路(電源回路(昇圧回路、降圧回路など)、信号の電位レベルを変えるレベルシフタ回路など)、電圧源、電流源、切り替え回路、増幅回路(信号振幅又は電流量などを大きくできる回路、オペアンプ、差動増幅回路、ソースフォロワ回路、バッファ回路など)、信号生成回路、記憶回路、制御回路など)が、XとYとの間に1個以上接続されることが可能である。なお、一例として、XとYとの間に別の回路を挟んでいても、Xから出力された信号がYへ伝達される場合は、XとYとは機能的に接続されているものとする。
【0034】
なお、XとYとが電気的に接続されている、と明示的に記載する場合は、XとYとが電気的に接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟んで接続されている場合)と、XとYとが直接接続されている場合(つまり、XとYとの間に別の素子又は別の回路を挟まずに接続されている場合)とを含むものとする。
【0035】
また、例えば、「XとYとトランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とは、互いに電気的に接続されており、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yの順序で電気的に接続されている。」と表現することができる。又は、「トランジスタのソース(又は第1の端子など)は、Xと電気的に接続され、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)はYと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この順序で電気的に接続されている」と表現することができる。又は、「Xは、トランジスタのソース(又は第1の端子など)とドレイン(又は第2の端子など)とを介して、Yと電気的に接続され、X、トランジスタのソース(又は第1の端子など)、トランジスタのドレイン(又は第2の端子など)、Yは、この接続順序で設けられている」と表現することができる。これらの例と同様な表現方法を用いて、回路構成における接続の順序について規定することにより、トランジスタのソース(又は第1の端子など)と、ドレイン(又は第2の端子など)とを、区別して、技術的範囲を決定することができる。なお、これらの表現方法は、一例であり、これらの表現方法に限定されない。ここで、X、Yは、対象物(例えば、装置、素子、回路、配線、電極、端子、導電膜、層、など)であるとする。
【0036】
なお、回路図上は独立している構成要素同士が電気的に接続しているように図示されている場合であっても、1つの構成要素が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合もある。例えば配線の一部が電極としても機能する場合は、一の導電膜が、配線の機能、及び電極の機能の両方の構成要素の機能を併せ持っている。したがって、本明細書における電気的に接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0037】
また、本明細書等において、「抵抗素子」とは、例えば、0Ωよりも高い抵抗値を有する回路素子、0Ωよりも高い配線などとすることができる。そのため、本明細書等において、「抵抗素子」は、抵抗値を有する配線、ソース-ドレイン間に電流が流れるトランジスタ、ダイオード、コイルなどを含むものとする。そのため、「抵抗素子」という用語は、「抵抗」、「負荷」、「抵抗値を有する領域」などの用語に言い換えることができる場合がある。逆に「抵抗」、「負荷」、「抵抗値を有する領域」という用語は、「抵抗素子」などの用語に言い換えることができる場合がある。抵抗値としては、例えば、好ましくは1mΩ以上10Ω以下、より好ましくは5mΩ以上5Ω以下、更に好ましくは10mΩ以上1Ω以下とすることができる。また、例えば、1Ω以上1×10Ω以下としてもよい。
【0038】
また、本明細書等において、「容量素子」とは、例えば、0Fよりも高い静電容量の値を有する回路素子、0Fよりも高い静電容量の値を有する配線の領域、寄生容量、トランジスタのゲート容量などとすることができる。そのため、本明細書等において、「容量素子」は、一対の電極と、当該電極の間に含まれている誘電体と、を含む回路素子などを含むものとする。また、「容量素子」、「寄生容量」、「ゲート容量」などという用語は、「容量」などの用語に言い換えることができる場合がある。逆に、「容量」という用語は、「容量素子」、「寄生容量」、「ゲート容量」などの用語に言い換えることができる場合がある。また、「容量」の「一対の電極」という用語は、「一対の導電体」、「一対の導電領域」、「一対の領域」などに言い換えることができる。なお、静電容量の値としては、例えば、0.05fF以上10pF以下とすることができる。また、例えば、1pF以上10μF以下としてもよい。
【0039】
また、本明細書等において、トランジスタは、ゲート、ソース、及びドレインと呼ばれる3つの端子を有する。ゲートは、トランジスタの導通状態を制御する制御端子である。ソース又はドレインとして機能する2つの端子は、トランジスタの入出力端子である。2つの入出力端子は、トランジスタの導電型(nチャネル型、pチャネル型)及びトランジスタの3つの端子に与えられる電位の高低によって、一方がソースとなり他方がドレインとなる。このため、本明細書等においては、ソース及びドレインの用語は、互いに言い換えることができる場合がある。また、本明細書等では、トランジスタの接続関係を説明する際、「ソース又はドレインの一方」(又は第1電極、又は第1端子)、「ソース又はドレインの他方」(又は第2電極、又は第2端子)という表記を用いる。なお、トランジスタの構造によっては、上述した3つの端子に加えて、バックゲートを有する場合がある。この場合、本明細書等において、トランジスタのゲート又はバックゲートの一方を第1ゲートと呼称し、トランジスタのゲート又はバックゲートの他方を第2ゲートと呼称することがある。更に、同じトランジスタにおいて、「ゲート」と「バックゲート」の用語は互いに入れ換えることができる場合がある。また、トランジスタが、3以上のゲートを有する場合は、本明細書等においては、それぞれのゲートを第1ゲート、第2ゲート、第3ゲートなどと呼称することがある。
【0040】
例えば、本明細書等において、トランジスタの一例としては、ゲート電極が2個以上のマルチゲート構造のトランジスタを用いることができる。マルチゲート構造にすると、チャネル形成領域が直列に接続されるため、複数のトランジスタが直列に接続された構造となる。よって、マルチゲート構造により、オフ電流の低減、トランジスタの耐圧向上(信頼性の向上)を図ることができる。または、マルチゲート構造により、飽和領域で動作する時に、ドレインとソースとの間の電圧が変化しても、ドレインとソースとの間の電流があまり変化せず、傾きがフラットである電圧・電流特性を得ることができる。傾きがフラットである電圧・電流特性を利用すると、理想的な電流源回路、又は非常に高い抵抗値をもつ能動負荷を実現することができる。その結果、特性のよい差動回路又はカレントミラー回路などを実現することができる。
【0041】
また、回路図上では、単一の回路素子が図示されている場合でも、当該回路素子が複数の回路素子を有する場合がある。例えば、回路図上に1個の抵抗が記載されている場合は、2個以上の抵抗が直列に電気的に接続されている場合を含むものとする。また、例えば、回路図上に1個の容量が記載されている場合は、2個以上の容量が並列に電気的に接続されている場合を含むものとする。また、例えば、回路図上に1個のトランジスタが記載されている場合は、2個以上のトランジスタが直列に電気的に接続され、かつそれぞれのトランジスタのゲート同士が電気的に接続されている場合を含むものとする。また、同様に、例えば、回路図上に1個のスイッチが記載されている場合は、当該スイッチが2個以上のトランジスタを有し、2個以上のトランジスタが直列、又は並列に電気的に接続され、それぞれのトランジスタのゲート同士が電気的に接続されている場合を含むものとする。
【0042】
また、本明細書等において、ノードは、回路構成、デバイス構造等に応じて、端子、配線、電極、導電層、導電体、不純物領域等と言い換えることが可能である。また、端子、配線等をノードと言い換えることが可能である。
【0043】
また、本明細書等において、「電圧」と「電位」は、適宜言い換えることができる。「電圧」は、基準となる電位からの電位差のことであり、例えば基準となる電位をグラウンド電位(接地電位)とすると、「電圧」を「電位」に言い換えることができる。なお、グラウンド電位は必ずしも0Vを意味するとは限らない。また、電位は相対的なものであり、基準となる電位が変わることによって、配線に与えられる電位、回路などに印加される電位、回路などから出力される電位なども変化する。
【0044】
また、本明細書等において、「高レベル電位」、「低レベル電位」という用語は、特定の電位を意味するものではない。例えば、2本の配線において、両方とも「高レベル電位を供給する配線として機能する」と記載されていた場合、両方の配線が与えるそれぞれの高レベル電位は、互いに等しくなくてもよい。また、同様に、2本の配線において、両方とも「低レベル電位を供給する配線として機能する」と記載されていた場合、両方の配線が与えるそれぞれの低レベル電位は、互いに等しくなくてもよい。
【0045】
「電流」とは、電荷の移動現象(電気伝導)のことであり、例えば、「正の荷電体の電気伝導が起きている」という記載は、「その逆向きに負の荷電体の電気伝導が起きている」と換言することができる。そのため、本明細書等において、「電流」とは、特に断らない限り、キャリアの移動に伴う電荷の移動現象(電気伝導)をいうものとする。ここでいうキャリアとは、電子、正孔、アニオン、カチオン、錯イオン等が挙げられ、電流の流れる系(例えば、半導体、金属、電解液、真空中など)によってキャリアが異なる。また、配線等における「電流の向き」は、正電荷となるキャリアが移動する方向とし、正の電流量で記載する。換言すると、負電荷となるキャリアが移動する方向は、電流の向きと逆の方向となり、負の電流量で表現される。そのため、本明細書等において、電流の正負(又は電流の向き)について断りがない場合、「素子Aから素子Bに電流が流れる」等の記載は「素子Bから素子Aに電流が流れる」等に言い換えることができるものとする。また、「素子Aに電流が入力される」等の記載は「素子Aから電流が出力される」等に言い換えることができるものとする。
【0046】
また、本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものである。従って、構成要素の数を限定するものではない。また、構成要素の順序を限定するものではない。例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素が、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において「第2」に言及された構成要素とすることもありうる。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素を、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において省略することもありうる。
【0047】
また、本明細書等において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている場合がある。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書等で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。例えば、「導電体の上面に位置する絶縁体」の表現では、示している図面の向きを180度回転することによって、「導電体の下面に位置する絶縁体」と言い換えることができる。
【0048】
また、「上」、又は「下」の用語は、構成要素の位置関係が直上又は直下で、かつ、直接接していることを限定するものではない。例えば、「絶縁層A上の電極B」の表現であれば、絶縁層Aの上に電極Bが直接接して形成されている必要はなく、絶縁層Aと電極Bとの間に他の構成要素を含むものを除外しない。
【0049】
また、本明細書等において、「膜」、「層」などの語句は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、場合によっては、又は、状況に応じて、「膜」、「層」などの語句を使わずに、別の用語に入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」又は「導電膜」という用語を、「導電体」という用語に変更することが可能な場合がある。又は、例えば、「絶縁層」、「絶縁膜」という用語を、「絶縁体」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0050】
また、本明細書等において「電極」、「配線」、「端子」などの用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」、又は「配線」の用語は、複数の「電極」、又は/及び「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。また、例えば、「端子」は「配線」、又は「電極」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。更に、「端子」の用語は、複数の「電極」、「配線」、「端子」などが一体となって形成されている場合なども含む。そのため、例えば、「電極」は「配線」又は「端子」の一部とすることができ、また、例えば、「端子」は「配線」又は「電極」の一部とすることができる。また、「電極」、「配線」、「端子」などの用語は、場合によって、「領域」などの用語に置き換える場合がある。
【0051】
また、本明細書等において、「配線」、「信号線」、「電源線」などの用語は、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「配線」という用語を、「信号線」という用語に変更することが可能な場合がある。また、例えば、「配線」という用語を、「電源線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で、「信号線」、「電源線」などの用語を、「配線」という用語に変更することが可能な場合がある。「電源線」などの用語は、「信号線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で「信号線」などの用語は、「電源線」などの用語に変更することが可能な場合がある。また、配線に印加されている「電位」という用語を、場合によっては、又は、状況に応じて、「信号」などという用語に変更することが可能な場合がある。また、その逆も同様で、「信号」などの用語は、「電位」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0052】
本明細書等において、半導体の不純物とは、例えば、半導体層を構成する主成分以外をいう。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることにより、例えば、半導体の欠陥準位密度が高くなること、キャリア移動度が低下すること、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が酸化物半導体である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特に、例えば、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、窒素などがある。具体的には、半導体がシリコン層である場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族元素、第2族元素、第13族元素、第15族元素など(但し、酸素、水素は含まない)がある。
【0053】
本明細書等において、スイッチとは、導通状態(オン状態)、又は、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有するものをいう。又は、スイッチとは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有するものをいう。そのため、スイッチは、制御端子とは別に、電流を流す端子を2つ、又は3つ以上有する場合がある。一例としては、電気的なスイッチ、機械的なスイッチなどを用いることができる。つまり、スイッチは、電流を制御できるものであればよく、特定のものに限定されない。
【0054】
電気的なスイッチの一例としては、トランジスタ(例えば、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタなど)、ダイオード(例えば、PNダイオード、PINダイオード、ショットキーダイオード、MIM(Metal Insulator Metal)ダイオード、MIS(Metal Insulator Semiconductor)ダイオード、ダイオード接続のトランジスタなど)、又はこれらを組み合わせた論理回路などがある。なお、スイッチとしてトランジスタを用いる場合、トランジスタの「導通状態」とは、例えば、トランジスタのソース電極とドレイン電極が電気的に短絡されているとみなせる状態、ソース電極とドレイン電極との間に電流を流すことができる状態などをいう。また、トランジスタの「非導通状態」とは、トランジスタのソース電極とドレイン電極が電気的に遮断されているとみなせる状態をいう。なおトランジスタを単なるスイッチとして動作させる場合には、トランジスタの極性(導電型)は特に限定されない。
【0055】
機械的なスイッチの一例としては、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システムズ)技術を用いたスイッチがある。そのスイッチは、機械的に動かすことが可能な電極を有し、その電極が動くことによって、導通と非導通とを制御して動作する。
【0056】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」又は「概略平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」又は「概略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【発明の効果】
【0057】
本発明の一態様によって、積和演算、及び/又は関数演算を行う半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、AI(Artificial Intelligence)向けの半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、DNN(Deep Neural Network)向けの半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、演算性能が高い半導体装置を提供することができる。又は、本発明の一態様によって、消費電力が低い半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、トランジスタのしきい値電圧のばらつきの影響を受けにくい半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、電流源の特性ばらつきの影響を受けにくい半導体装置などを提供することができる。又は、本発明の一態様によって、新規な半導体装置などを提供することができる。
【0058】
なお本発明の一態様の効果は、上記列挙した効果に限定されない。上記列挙した効果は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお他の効果は、以下の記載で述べる、本項目で言及していない効果である。本項目で言及していない効果は、当業者であれば明細書又は図面等の記載から導き出せるものであり、これらの記載から適宜抽出することができる。なお、本発明の一態様は、上記列挙した効果、及び他の効果のうち、少なくとも一つの効果を有するものである。従って本発明の一態様は、場合によっては、上記列挙した効果を有さない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1は、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図2A、及び図2Bは、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図3は、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図4は、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図5は、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図6A、及び図6Bは、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図7A乃至図7Cは、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図8A乃至図8Dは、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図9A乃至図9Dは、半導体装置の積層構造の構成例を示す斜視図である。
図10は、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図11は、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図12は、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図13Aは、半導体装置に含まれている回路の構成例を示すブロック図であり、図13Bは、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図14A乃至図14Dは、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図15A、及び図15Bは、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図16は、半導体装置に含まれている回路の構成例を示す回路図である。
図17は、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図18は、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図19は、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図20は、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図21A、及び図21Bは、階層型のニューラルネットワークを説明する図である。
図22は、半導体装置の構成例を示すブロック図である。
図23は、半導体装置の構成例を示す断面模式図である。
図24A乃至図24Cは、トランジスタの構成例を示す断面模式図である。
図25は、半導体装置の構成例を示す断面模式図である。
図26A、及び図26Bは、トランジスタの構成例を示す断面模式図である。
図27は、トランジスタの構成例を示す断面模式図である。
図28Aは結晶構造の分類を説明する図であり、図28Bは結晶性IGZOのXRDスペクトルを説明する図であり、図28Cは結晶性IGZOの極微電子線回折パターンを説明する図である。
図29Aは半導体ウェハの一例を示す斜視図であり、図29Bはチップの一例を示す斜視図であり、図29C及び図29Dは電子部品の一例を示す斜視図である。
図30は、電子機器の一例を示す斜視図である。
図31A乃至図31Cは、電子機器の一例を示す斜視図である。
図32Aは、理論上期待される半導体装置から出力される電流と、シミュレーションによって得られた半導体装置の出力電流と、の関係を示したグラフであり、図32Bは、当該半導体装置の演算効率を示すグラフである。
図33は、シミュレーションで用いた回路構成を示す回路図である。
図34は、シミュレーションによって得られた、トランジスタのしきい値電圧と、トランジスタのバックゲート-ソース間電圧と、の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
人工ニューラルネットワーク(以後、ニューラルネットワークと呼称する。)において、シナプスの結合強度は、ニューラルネットワークに既存の情報を与えることによって、変化することができる。このように、ニューラルネットワークに既存の情報を与えて、結合強度を決める処理を「学習」と呼ぶ場合がある。
【0061】
また、「学習」を行った(結合強度を定めた)ニューラルネットワークに対して、何らかの情報を与えることにより、その結合強度に基づいて新たな情報を出力することができる。このように、ニューラルネットワークにおいて、与えられた情報と結合強度に基づいて新たな情報を出力する処理を「推論」又は「認知」と呼ぶ場合がある。
【0062】
ニューラルネットワークのモデルとしては、例えば、ホップフィールド型、階層型などが挙げられる。特に、多層構造としたニューラルネットワークを「ディープニューラルネットワーク」(DNN)と呼称し、ディープニューラルネットワークによる機械学習を「ディープラーニング」と呼称する場合がある。
【0063】
本明細書等において、金属酸化物(metal oxide)とは、広い意味での金属の酸化物である。金属酸化物は、酸化物絶縁体、酸化物導電体(透明酸化物導電体を含む)、酸化物半導体(Oxide Semiconductor又は単にOSともいう)などに分類される。例えば、トランジスタのチャネル形成領域に金属酸化物が含まれている場合、当該金属酸化物を酸化物半導体と呼称する場合がある。つまり、金属酸化物が増幅作用、整流作用、及びスイッチング作用の少なくとも1つを有するトランジスタのチャネル形成領域を構成し得る場合、当該金属酸化物を、金属酸化物半導体(metal oxide semiconductor)と呼称することができる。また、OSトランジスタと記載する場合においては、金属酸化物又は酸化物半導体を有するトランジスタと換言することができる。
【0064】
また、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0065】
また、本明細書等において、各実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて、本発明の一態様とすることができる。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、互いに構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0066】
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)と、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)との少なくとも一つの内容に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことができる。
【0067】
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
【0068】
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)と、一つ若しくは複数の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)との少なくとも一つの図に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることができる。
【0069】
本明細書に記載の実施の形態について図面を参照しながら説明している。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなく、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態の発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、斜視図などにおいて、図面の明確性を期すために、一部の構成要素の記載を省略している場合がある。
【0070】
本明細書等において、複数の要素に同じ符号を用いる場合、特に、それらを区別する必要があるときには、符号に“_1”、“[n]”、“[m,n]”等の識別用の符号を付記して記載する場合がある。また、図面等において、符号に“_1”、“[n]”、“[m,n]”等の識別用の符号を付記している場合、本明細書等において区別する必要が無いときには、識別用の符号を記載しない場合がある。
【0071】
また、本明細書の図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
【0072】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様である半導体装置の構成について説明する。
【0073】
<構成例1>
図1は、本発明の一態様の半導体装置である、乗算セルの構成例について示している。当該乗算セルは、一例として、トランスリニア原理を用いて乗算を行う構成となっている。また、当該乗算セルは、一例として、第1データを保持する機能を有し、また、当該乗算セルに第2データが入力されることによって、第1データと第2データの積を出力する機能を有する。
【0074】
図1に示す回路MCは、トランジスタM1乃至トランジスタM10と、容量C1と、容量CGと、を有する。
【0075】
トランジスタM1乃至トランジスタM10としては、例えば、OSトランジスタとすることができる。特に、OSトランジスタのチャネル形成領域に含まれる金属酸化物としては、例えば、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等とすること好ましい。また、OSトランジスタ以外のトランジスタとしては、例えば、Geなどがチャネル形成領域に含まれているトランジスタ、ZnSe、CdS、GaAs、InP、GaN、SiGeなどの化合物半導体がチャネル形成領域に含まれているトランジスタ、カーボンナノチューブがチャネル形成領域に含まれるトランジスタ、有機半導体がチャネル形成領域に含まれるトランジスタ等を用いることができる。
【0076】
トランジスタM1、トランジスタM3、及びトランジスタM4のそれぞれは、特に断りがない場合は、例えば、スイッチング素子として機能する場合を含むものとする。すなわち、これらのトランジスタのそれぞれのゲート、ソース、及びドレインには、これらのトランジスタがスイッチング素子として動作する範囲での電圧が適切に入力されている場合を含むものとする。ただし、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、これらのトランジスタの少なくとも一は、オン状態のときは飽和領域、又は線形領域で動作することができる。又は、これらのトランジスタに流れる電流量を小さくするために、トランジスタM1、トランジスタM3、及びトランジスタM4の少なくとも一は、サブスレッショルド領域で動作することができる。又は、トランジスタM1、トランジスタM3、及びトランジスタM4の少なくとも一は、線形領域で動作する場合と、飽和領域で動作する場合と、サブスレッショルド領域で動作する場合と、が混在することができる。又は、トランジスタM1、トランジスタM3、及びトランジスタM4の少なくとも一は、線形領域で動作する場合と、飽和領域で動作する場合と、が混在することができ、又は、飽和領域で動作する場合と、サブスレッショルド領域で動作する場合と、が混在することができ、又は、線形領域で動作する場合と、サブスレッショルド領域で動作する場合と、が混在することができる。
【0077】
ところで、本明細書等において、飽和領域とは、ゲート-ソース間電圧がしきい値電圧よりも大きく、かつゲート-ソース間電圧としきい値電圧との差がソース-ドレイン間電圧よりも大きい領域をいう。又は、飽和領域は、ソース-ドレイン間電圧を変化させても、トランジスタのドレイン電流がほぼ変わらない領域をいう。又は、飽和領域は、ドレイン電流は、ゲート-ソース間電圧の2乗に比例する領域をいう。又は、飽和領域とは、前述の各説明の領域をみなせる領域を含むものとする。
【0078】
また、本明細書等において、線形領域とは、ゲート-ソース間電圧がしきい値電圧よりも大きく、ゲート-ソース間電圧としきい値電圧との差がソース-ドレイン間電圧よりも小さい領域をいう。又は、線形領域は、チャネル形成領域が抵抗として働き、ソース-ドレイン間電圧の変化によって、トランジスタのドレイン電流が線形的に変化するように振る舞う領域をいう。又は、線形領域とは、前述の各説明の領域をみなせる領域を含むものとする。
【0079】
また、本明細書などにおいてサブスレッショルド領域とは、トランジスタのゲート電圧(Vg)-ドレイン電流(Id)特性を示すグラフにおいて、ゲート電圧がしきい値電圧よりも低い領域をいう。またはサブスレッショルド領域とは、グラデュアルチャネル近似(ドリフト電流しか考慮しないモデル)から外れた、キャリアの拡散による電流が流れる領域をいう。またはサブスレッショルド領域とは、ゲート電圧の増加に対してドレイン電流が指数関数的に増大する領域をいう。またはサブスレッショルド領域とは、前述の各説明の領域とみなせる領域を含むものとする。
【0080】
また、トランジスタがサブスレッショルド領域で動作する際のドレイン電流を、サブスレッショルド電流という。サブスレッショルド電流は、ドレイン電圧によらず、ゲート電圧に対して指数関数的に増大する。サブスレッショルド電流を用いた回路動作では、ドレイン電圧のばらつきの影響を小さくすることができる。
【0081】
OSトランジスタは、1×10-20A未満、1×10-22A未満、あるいは1×10-24A未満といったチャネル幅1μm当たりのドレイン電流をもつ。またOSトランジスタは、トランジスタのしきい値電圧において、1.0×10-8A以下、1.0×10-12A以下、あるいは1.0×10-15A以下といったチャネル幅1μm当たりのドレイン電流が流れる。つまり、OSトランジスタは、サブスレッショルド領域で動作するゲート電圧の範囲を大きくとることができる。具体的には、OSトランジスタのしきい値電圧をVthとしたとき、サブスレッショルド領域では、Vth-1.0V以上Vth以下、またはVth-0.5V以上Vth以下の電圧範囲のゲート電圧を用いた回路動作を行うことができる。
【0082】
一方、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼称する。)では、オフ電流が大きく、サブスレッショルド領域で動作するゲート電圧の範囲が狭い。サブスレッショルド電流を利用する場合、OSトランジスタは、Siトランジスタよりも広いゲート電圧の範囲で回路動作を行うことができる。
【0083】
なお、本明細書等において、トランジスタのオフ領域とは、ゲート-ソース間電圧がサブスレッショルド領域の電圧よりも低い領域をいう。また、トランジスタのゲート-ソース間電圧がオフ領域であるとき、トランジスタはオフ状態をとるものとする。また、本明細書等において、トランジスタがオフ状態のときに流れる電流をオフ電流、又はリーク電流と記載する。
【0084】
また、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10のそれぞれは、特に断りがない場合は、サブスレッショルド領域で動作する場合を含むものとする。
【0085】
トランジスタM1の第1端子は、配線VDEに電気的に接続され、トランジスタM1の第2端子は、トランジスタM2の第1端子に電気的に接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WWLBと、容量CGの第1端子と、に電気的に接続されている。また、トランジスタM3の第1端子は、配線WDLに電気的に接続され、トランジスタM3の第2端子は、トランジスタM2のゲートと、容量CGの第2端子と、容量C1の第1端子と、に電気的に接続されている。また、トランジスタM2の第2端子は、トランジスタM4の第1端子と、容量C1の第2端子と、トランジスタM5のゲートと、トランジスタM7の第1端子と、トランジスタM8のゲートと、に電気的に接続されている。また、トランジスタM4の第2端子は、配線VGEに電気的に接続され、トランジスタM4のゲートは、トランジスタM3のゲートと、配線WWLと、に電気的に接続されている。また、トランジスタM5の第1端子は、配線VDEに電気的に接続され、トランジスタM5の第2端子は、トランジスタM6の第1端子と、トランジスタM7のゲートと、に電気的に接続されている。トランジスタM6のゲートは、配線XDLに電気的に接続され、トランジスタM6の第2端子は、配線VGEに電気的に接続されている。また、トランジスタM7の第2端子は、配線VGEに電気的に接続されている。また、トランジスタM8の第1端子は、配線VDEに電気的に接続され、トランジスタM8の第2端子は、トランジスタM9の第1端子と、トランジスタM10のゲートと、に電気的に接続されている。また、トランジスタM9のゲートは、配線BDLに電気的に接続され、トランジスタM9の第2端子は、配線VGEに電気的に接続されている。また、トランジスタM10の第1端子は、配線OLに電気的に接続され、トランジスタM10の第2端子は、配線VGEに電気的に接続されている。
【0086】
配線VDEは、一例として、定電圧を与える配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、高電源電圧とすることができる。
【0087】
配線VGEは、一例として、定電圧を与える配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、低電源電圧、接地電位などとすることができる。
【0088】
配線WWLは、一例として、回路MCに対して、第1データを書き込むための書き込み信号線として機能する。
【0089】
配線WWLBは、一例として、配線WWLに送信される書き込み信号に対する反転信号を送信する配線として機能する。なお、配線WWLBは、当該反転信号ではなく、可変電位(例えば、高レベル電位、低レベル電位など)を供給する配線としてもよい。
【0090】
配線WDLは、一例として、回路MCに第1データに応じた電圧を書き込むための書き込みデータ線として機能する。
【0091】
配線XDLは、一例として、回路MCに第2データに応じた電圧を入力するための信号線として機能する。
【0092】
そのため、配線XDLに電気的に接続されているゲートを有するトランジスタM6は、電流源として機能する。また、上述したとおり、トランジスタM6は、サブスレッショルド領域で動作する場合を含むため、トランジスタM6の第1端子-第2端子間には、サブスレッショルド領域の電流が流れる。
【0093】
配線BDLは、一例として、回路MCに、第1データと第2データとの演算結果に応じた電流の量を調整するための電圧を入力する信号線として機能する。
【0094】
そのため、配線BDLに電気的に接続されているゲートを有するトランジスタM9は、電流源として機能する。また、上述したとおり、トランジスタM9は、サブスレッショルド領域で動作する場合を含むため、トランジスタM9の第1端子-第2端子間には、サブスレッショルド領域の電流が流れる。
【0095】
なお、トランジスタM9に流れる電流量としては、例えば、後述する回路ACTVに含まれている関数系に従った演算を行う回路に適用する変数、定数などとすることができる。
【0096】
配線OLは、一例として、第1データと、第2データと、の積に応じた電流を出力するための配線として機能する。
【0097】
<動作例>
次に、図1の回路MCの動作例について説明する。なお、本動作例において、配線VDEが与える電位を高電源電位とし、配線VGEが与える電位を接地電位(VGND)とする。
【0098】
<<書き込み動作>>
初めに、回路MCへの第1データを書き込む動作の一例について説明する。
【0099】
配線WWLには、高レベル電位が入力される。これにより、トランジスタM3と、トランジスタM4と、のそれぞれのゲートには、当該高レベル電位が入力されるため、トランジスタM3とトランジスタM4はオン状態となる。
【0100】
このとき、トランジスタM4を介して、配線VGEと、容量C1の第2端子(トランジスタM2の第2端子)と、の間は導通状態となるため、容量C1の第2端子(トランジスタM2の第2端子)の電位は、VGNDとなる。
【0101】
また、このとき、トランジスタM3を介して、配線WDLと容量C1の第1端子(容量CGの第2端子、トランジスタM2のゲートなど)の間が導通状態となる。ここで、配線WDLに第1データに応じた信号(以下、電圧Vとする。)を送信することで、容量C1の第1端子(容量CGの第2端子、トランジスタM2のゲートなど)には第1データに応じた電圧Vが書き込まれる。
【0102】
また、配線WWLBには、配線WWLに送信される信号の反転信号が入力される。具体的には、配線WWLBには、低レベル電位が入力される。そのため、トランジスタM1のゲート(容量CGの第1端子)には、当該低レベル電位が印加される。これにより、トランジスタM1は、オフ状態となる。
【0103】
容量C1の第1端子(容量CGの第2端子、トランジスタM2のゲートなど)には電圧Vが書き込まれたあと、配線WWLには、低レベル電位が入力される。これにより、トランジスタM3と、トランジスタM4と、のそれぞれのゲートには、当該低レベル電位が入力されるため、トランジスタM3とトランジスタM4はオフ状態となる。また、これにより、容量C1の第1端子がフローティング状態となるため、容量C1の第1端子-第2端子間の電圧V-VGNDが保持される。
【0104】
厳密には、トランジスタM3のゲートに与えられる電位が高レベル電位から低レベル電位に変化するとき、トランジスタM3のゲート-第2端子間の寄生容量によって、容量C1の第1端子に書き込まれている電圧Vが降圧する場合がある。なお、本明細書では、便宜上、トランジスタM3のゲート-第2端子間の寄生容量によって電圧Vから降圧した電圧も第1データに応じた電圧ということができるものとする。図1の回路MCには、電圧Vの降圧を防ぐため、容量CGを設けている。トランジスタM3のゲートに与えられる電位が高レベル電位から低レベル電位に変化するとき、つまり、配線WWLが与える電位が高レベル電位から低レベル電位に変化するとき、配線WWLBでは、配線WWLに送信される信号の反転信号が入力されるため、配線WWLBの電位は低レベル電位から高レベル電位に変化する。このとき、容量CGの第1端子の電位は、低レベル電位から高レベル電位まで高くなるため、容量CGの第2端子の電位(容量C1の第1端子、トランジスタM2のゲートなど)は、容量CGの容量結合によって、理想的には、高レベル電位と低レベル電位の電位差だけ昇圧する。ここで、昇圧する電位差を、トランジスタM3のゲート-第2端子間の寄生容量による電圧Vが降圧した電位差と等しくすることで、トランジスタM3をオフ状態にしたときの電圧Vの降圧を防ぐことができる。なお、容量CGの容量結合によって昇圧する電位差を、トランジスタM3のゲート-第2端子間の寄生容量によって降圧する電位差と等しくするための容量CGの構成については、後述する。
【0105】
また、このとき、配線WWLBに、配線WWLに送信される信号の反転信号ではなく、低レベル電位を供給して、トランジスタM1をオフ状態にしてもよい。これにより、回路MCへの第1データの保持と、トランジスタM2の第1端子への高電源電位の供給の停止と、を同時に行うことができる。
【0106】
<<乗算動作>>
次に、回路MCにおいて、第1データと第2データとの乗算動作の一例について説明する。
【0107】
配線WWLBに高レベル電位が入力されることによって、トランジスタM1がオン状態となるため、トランジスタM2の第1端子には高電源電位が入力されて、トランジスタM2の第1端子-第2端子間には、トランジスタM2のゲート-第2端子間の電圧に応じた電流が流れる。また、ここで、トランジスタM2の第1端子-第2端子間に流れる電流の量をIとする。なお、トランジスタM2がサブスレッショルド領域で動作する場合、Iは、サブスレッショルド領域における電流範囲の電流量となる。
【0108】
また、トランジスタM2の第1端子-第2端子間に流れる電流は、トランジスタM7を介して、配線VGEに流れる。ここで、トランジスタM7もサブスレッショルド領域で動作するものとして、トランジスタM7の第1端子-第2端子間には、電流量Iの電流が流れるものとする。このとき、電流量Iは、下記の式で表すことができる。
【0109】
【数1】
【0110】
なお、VM7gsは、トランジスタM7のゲート-第2端子間の電圧である。また、Iは、VM7gsが0のときに流れる電流値であって、トランジスタM7のしきい値電圧、温度、デバイス構造などによって決められる。また、Jは、温度、デバイス構造などによって定められる補正係数である。
【0111】
また、配線XDLに第2データに応じた電圧としてVが入力されるものとする。このとき、トランジスタM6のゲート-第2端子間の電圧はV-VGNDとなり、トランジスタM6の第1端子-第2端子間には、V-VGNDに応じた電流が流れる。また、ここで、トランジスタM6の第1端子-第2端子間に流れる電流の量をIとする。なお、トランジスタM6がサブスレッショルド領域で動作する場合、Iは、サブスレッショルド領域における電流範囲の電流量となる。
【0112】
また、トランジスタM6の第1端子-第2端子間に流れる電流は、配線VDEから、トランジスタM5を介して、トランジスタM6の第1端子に流れる電流となる。ここで、トランジスタM5もサブスレッショルド領域で動作するものとして、トランジスタM5の第1端子-第2端子間には、電流量Iの電流が流れるものとする。このとき、電流量Iは、下記の式で表すことができる。
【0113】
【数2】
【0114】
なお、VM5gsは、トランジスタM5のゲート-第2端子間の電圧である。また、Iは、VM5gsが0のときに流れる電流値であって、トランジスタM5のしきい値電圧、温度、デバイス構造などによって決められる。また、Jは、温度、デバイス構造などによって定められる補正係数である。なお、式(1.2)に用いられている、I及びJのそれぞれは、式(1.1)に用いられているI及びJと等しいものとする。
【0115】
また、配線BDLに出力電流を調整するための電圧としてVが入力されるものとする。このとき、トランジスタM9のゲート-第2端子間の電圧はV-VGNDとなり、トランジスタM9の第1端子-第2端子間には、V-VGNDに応じた電流が流れる。また、ここで、トランジスタM9の第1端子-第2端子間に流れる電流の量をIとする。なお、トランジスタM9がサブスレッショルド領域で動作する場合、Iは、サブスレッショルド領域における電流範囲の電流量となる。
【0116】
また、トランジスタM9の第1端子-第2端子間に流れる電流は、配線VDEから、トランジスタM8を介して、トランジスタM9の第1端子に流れる電流となる。ここで、トランジスタM8もサブスレッショルド領域で動作するものとして、トランジスタM8の第1端子-第2端子間には、電流量Iの電流が流れるものとする。このとき、電流量Iは、下記の式で表すことができる。
【0117】
【数3】
【0118】
なお、VM8gsは、トランジスタM8のゲート-第2端子間の電圧である。また、Iは、VM8gsが0のときに流れる電流値であって。トランジスタM8のしきい値電圧、温度、デバイス構造などによって決められる。また、Jは、温度、デバイス構造などによって定められる補正係数である。なお、式(1.3)に用いられている、I及びJのそれぞれは、式(1.1)、及び式(1.2)に用いられているI及びJと等しいものとする。
【0119】
また、トランジスタM10の第1端子-第2端子間に流れる電流は、トランジスタM10のゲート-第2端子間の電圧に応じて決められる。また、トランジスタM10の第1端子-第2端子間に流れる電流量をIとしたとき、電流量Iは、下記の式で表すことができる。
【0120】
【数4】
【0121】
なお、VM10gsは、トランジスタM10のゲート-第2端子間の電圧である。また、Iは、VM10gsが0のときに流れる電流値であって。トランジスタM10のしきい値電圧、温度、デバイス構造などによって決められる。また、Jは、温度、デバイス構造などによって定められる補正係数である。なお、式(1.4)に用いられている、I及びJのそれぞれは、式(1.1)乃至式(1.3)に用いられているI及びJと等しいものとする。
【0122】
ここで、配線VGE、トランジスタM7の第2端子、トランジスタM7のゲート、トランジスタM5の第2端子、トランジスタM5のゲート、トランジスタM8のゲート、トランジスタM8の第2端子、トランジスタM10のゲート、トランジスタM10の第2端子、配線VGEという順の閉回路を考える。当該閉回路では、キルヒホッフの第二法則(電圧則)により、下記の式が成り立つ。
【0123】
【数5】
【0124】
また、式(1.5)の各電圧の項を、式(1.1)乃至式(1.4)を用いて書き直すことにより、次の式が得られる。
【0125】
【数6】
【0126】
つまり、トランジスタM10の第1端子-第2端子間に流れる電流Iは、IとIとの積で表すことができる。そのため、配線OLから流れる電流量Iを計測することによって、IとIとの積に応じた値を算出することができる。
【0127】
<構成例2>
本発明の一態様の半導体装置に含まれる乗算セルの構成は、図1に示す回路MCに限定されない。本発明の一態様の半導体装置に含まれる乗算セルは、状況に応じて、図1に示す回路MCを変更した構成とすることができる。
【0128】
<<変更例1>>
図1に図示しているトランジスタM1乃至トランジスタM10は、一例としては、チャネルの上下にゲートを有する構造のnチャネル型トランジスタとしており、トランジスタM1乃至トランジスタM10のそれぞれは第1ゲートと第2ゲートとを有する。但し、本明細書等において、便宜上、一例として、第1ゲートをゲート(フロントゲートと記載する場合がある。)、第2ゲートをバックゲートとして区別するように記載しているが、第1ゲートと第2ゲートは互いに入れ替えることができる。そのため、本明細書等において、「ゲート」という語句は「バックゲート」という語句と入れ替えて記載することができる。同様に、「バックゲート」という語句は「ゲート」という語句と入れ替えて記載することができる。具体例としては、「ゲートは第1配線に電気的に接続され、バックゲートは第2配線に電気的に接続されている」という接続構成は、「バックゲートは第1配線に電気的に接続され、ゲートは第2配線に電気的に接続されている」という接続構成として置き換えることができる。
【0129】
また、本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタのバックゲートの接続構成に依らない。図1に図示されているトランジスタM1乃至トランジスタM10には、バックゲートが図示され、当該バックゲートの接続構成については図示されていないが、当該バックゲートの電気的な接続先は、設計の段階で決めることができる。例えば、バックゲートを有するトランジスタにおいて、そのトランジスタのオン電流を高めるために、ゲートとバックゲートとを電気的に接続してもよい。また、例えば、バックゲートを有するトランジスタにおいて、そのトランジスタのしきい値電圧を変動させるため、または、そのトランジスタのオフ電流を小さくするために、外部回路などと電気的に接続されている配線を設けて、当該外部回路などによってトランジスタのバックゲートに固定電位、又は可変電位を与えてもよい。具体的には、例えば、図1に示す構成は、図2Aに示すとおり、トランジスタM1とトランジスタM3とトランジスタM4とのそれぞれのバックゲートを配線BGLに電気的に接続した構成としてもよい。図2Aの構成において、配線BGLに低レベル電位、接地電位、負電位などを与えることで、トランジスタM1とトランジスタM3とトランジスタM4とのそれぞれのしきい値電圧を高くすることができるため、トランジスタM1とトランジスタM3とトランジスタM4のそれぞれのオフ電流を下げることができる。なお、上述したトランジスタのバックゲートの接続構成については、図1だけでなく、明細書の他の箇所に記載されているトランジスタ、又は他の図面に図示されているトランジスタについても同様に設計段階で決めることができる。
【0130】
<<変更例2>>
また、図1の回路MCは、トランジスタM1乃至トランジスタM10の少なくとも一のバックゲートの電位が保持される構成としてもよい。図3に示す回路MCは、図1の変形例であって、トランジスタM2、及びトランジスタM5乃至トランジスタM10のそれぞれのバックゲートの電位を保持するための回路HC2、回路HC5乃至回路HC10を有する構成となっている。
【0131】
回路HC2、回路HC5乃至回路HC10のそれぞれは、トランジスタBTrと、容量BCと、を有する。
【0132】
トランジスタBTrとしては、例えば、トランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4などに適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタBTrのゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4などが動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。
【0133】
また、容量BCとしては、本明細書等で説明する、容量C1、容量CGなどに適用することができる容量を用いることができる。
【0134】
回路HC2、回路HC5乃至回路HC10のそれぞれにおいて、トランジスタBTrの第1端子は容量BCの第1端子に電気的に接続されている。
【0135】
また、回路HC2において、トランジスタBTrの第1端子は、トランジスタM2のバックゲートに電気的に接続されている。また、容量BCの第2端子は、トランジスタM2の第2端子に電気的に接続されている。また、トランジスタBTrのゲートは、配線BWL2に電気的に接続され、トランジスタBTrの第2端子は、配線BGL2に電気的に接続されている。
【0136】
同様に、回路HC5乃至回路HC10のトランジスタBTrの第1端子は、それぞれトランジスタM5乃至トランジスタM10のバックゲートに電気的に接続されている。また、回路HC5乃至回路HC10の容量BCの第2端子は、それぞれトランジスタM5乃至トランジスタM10の第2端子に電気的に接続されている。また、回路HC5乃至回路HC10のトランジスタBTrのゲートは、それぞれ配線BWL5乃至配線BWL10に電気的に接続され、回路HC5乃至回路HC10のトランジスタBTrの第2端子は、それぞれ配線BGL5乃至配線BGL10に電気的に接続されている。
【0137】
配線BGL2、及び配線BGL5乃至配線BGL10のそれぞれは、一例として、回路HC2、及び回路HC5乃至回路HC10に後述する補正電位を供給する配線として機能する。
【0138】
また、配線BWL2、及び配線BWL5乃至配線BWL10は、一例として、回路HC2、及び回路HC5乃至回路HC10のそれぞれに含まれているトランジスタBTrのオン状態とオフ状態との切り替えを制御する配線として機能する。
【0139】
例えば、回路HC2は、配線BWL2によってトランジスタBTrがオン状態となっているときに、配線BGL2から容量BCの第1端子に、トランジスタM2のしきい値電圧を調整するための補正電位を書き込むことができる。なお、このとき、トランジスタM2の第2端子は、フローティング状態でない(定電圧を与える配線と導通状態となっている)ことが好ましい。
【0140】
また、回路HC5乃至回路HC10のそれぞれも、上記と同様に、回路HC5乃至回路HC10の容量BCの第1端子に補正電位を書き込むことで、トランジスタM5乃至トランジスタM10のしきい値電圧を調整することができる。
【0141】
特に、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10のそれぞれは、しきい値電圧が所望の値よりもずれている場合、それぞれのトランジスタの第1端子-第2端子間に流れる電流量が大きく変化する。そのため、回路MCは、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10のそれぞれに対して、しきい値電圧を調整するための補正電位を保持する回路HC2、及び回路HC5乃至回路HC10を有することが好ましい。
【0142】
また、配線BGL2、及び配線BGL5乃至配線BGL10は、例えば、1本の配線としてまとめてもよい。また、このとき、配線BWL2、及び配線BWL5乃至配線BWL10のそれぞれは、補正電位を書き込み先として、回路HC2、及び回路HC5乃至回路HC10のいずれか一を選択する選択信号線として機能させることが好ましい。
【0143】
また、図3では、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10のそれぞれに対して、回路HC2、及び回路HC5乃至回路HC10が電気的に接続されている構成を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10の全てではなく一部のみに補正電位を保持する回路を電気的に接続していてもよい。また、例えば、トランジスタM1、トランジスタM3、及び/又はトランジスタM4についても、回路HC2、及び回路HC5乃至回路HC10と同様の補正電位を保持する回路を電気的に接続してもよい。つまり、例えば、図1の回路MCに含まれている一以上のトランジスタを選択して、選択されたトランジスタに対して、補正電位を保持する回路を設けてもよい。
【0144】
<<変更例3>>
また、図1の回路MCにおいて、容量C1、及び/又は容量CGは、一例として、プレーナ型、トレンチ型などのいずれか一の容量素子を適用することができる。また、容量C1、及び/又は容量CGは、トランジスタを含む容量素子とすることができる。
【0145】
例えば、図2Aの回路MCにおいて、容量CGがトランジスタを含む構成とした場合の回路MCの構成を図2Bに示す。容量CGは、トランジスタCTを有しており、トランジスタCTのゲートが配線WWLBと、トランジスタM1のゲートと、に電気的に接続され、トランジスタCTの第1端子及び第2端子が、トランジスタM3の第2端子と、トランジスタM2のゲートと、容量C1の第1端子と、に電気的に接続されている。つまり、図2Bの回路MCに含まれている容量CGとして、トランジスタCTのゲート容量を用いた構成となっている。
【0146】
図2Bのとおり、回路MCに含まれている容量CGとして、トランジスタCTのゲート容量を用いることによって、トランジスタM3がオン状態からオフ状態に遷移したときに起こる、トランジスタM3のゲート-第2端子間の寄生容量による容量C1の第1端子(トランジスタM2のゲート)の電圧降下の電位差と、容量CGの第1端子が低レベル電位から高レベル電位に遷移したことによる容量CGの第2端子の電圧上昇の電位差と、を概ね等しくすることができる。上記より、回路MCに含まれている容量CGとして、トランジスタCTのゲート容量を用いることで、トランジスタM3のゲート-第2端子間の寄生容量による、容量C1の第1端子に書き込まれている電圧Vの降圧を防ぐことができる。この場合、トランジスタCTのサイズは、トランジスタM3のサイズと等しいことが好ましい。なお、本明細書等におけるトランジスタのサイズとは、例えば、チャネル長、チャネル幅、トランジスタ構造などを指す。
【0147】
なお、図1乃至図3、後述する図4図5などでは、回路MCが容量CGを有する構成を図示しているが、本発明の一態様の半導体装置に係る回路MCの構成は、これらに限定されない。例えば、本発明の一態様の半導体装置に係る回路MCは、図1乃至図3、後述する図4図5などにおいて、容量CGを設けない構成としてもよい。この場合、容量C1の第1端子に書き込む電圧としては、トランジスタM3のゲート-第2端子間の寄生容量によって降圧する電位差を考慮して、第1データに応じた電圧Vに当該電位差を足した電圧とすることが好ましい。
【0148】
<<変更例4>>
また、図1の回路MCにおいて、例えば、トランジスタM2の第1端子-第2端子間に流れる電流量は、トランジスタM2のゲート-第2端子間の電圧によって決まるが、トランジスタM2の第1端子に高電源電位が与えられることによって、トランジスタM2にドレイン誘起障壁低下(DIBL)が起こる場合がある。トランジスタM2でドレイン誘起障壁低下が起こることで、トランジスタM2のしきい値電圧が低下するため、トランジスタM2が動作するサブスレッショルド領域の電圧範囲が変化することがある。
【0149】
そのため、図1の回路MCに含まれているトランジスタは、トランジスタを2つ以上直列に接続したトランジスタの構成としてもよい。このようにトランジスタを2つ以上直列に接続された構成をマルチゲート構造のトランジスタと呼称する場合がある。
【0150】
図4は、図2Aにおいて、トランジスタM2乃至トランジスタM10のそれぞれを、2つのトランジスタを直列に接続されたマルチゲート構造のトランジスタに置き換えた構成例を示している。
【0151】
図4では、例えば、トランジスタM2は、トランジスタM2aと、トランジスタM2bと、を有し、トランジスタM3は、トランジスタM3aと、トランジスタM3bと、を有し、トランジスタM4は、トランジスタM4aと、トランジスタM4bと、を有する。また、トランジスタM5は、トランジスタM5aと、トランジスタM5bと、を有し、トランジスタM6は、トランジスタM6aと、トランジスタM6bと、を有し、トランジスタM7は、トランジスタM7aと、トランジスタM7bと、を有する。また、トランジスタM8は、トランジスタM8aと、トランジスタM8bと、を有し、トランジスタM9は、トランジスタM9aと、トランジスタM9bと、を有し、トランジスタM10は、トランジスタM10aと、トランジスタM10bと、を有する。
【0152】
トランジスタM2a、及びトランジスタM2bのそれぞれのゲートは、図2AにおけるトランジスタM2のゲートに相当し、トランジスタM2a、及びトランジスタM2bのそれぞれのバックゲートは、図2AにおけるトランジスタM2のバックゲートに相当し、トランジスタM2aの第1端子は、図2AにおけるトランジスタM2の第1端子に相当する。トランジスタM2aの第2端子は、トランジスタM2bの第1端子に電気的に接続されている。また、トランジスタM2bの第2端子は、図2AにおけるトランジスタM2の第2端子に相当する。
【0153】
トランジスタM3a、トランジスタM3b、トランジスタM4a、トランジスタM4b、トランジスタM5a、トランジスタM5b、トランジスタM6a、トランジスタM6b、トランジスタM7a、トランジスタM7b、トランジスタM8a、トランジスタM8b、トランジスタM9a、トランジスタM9b、トランジスタM10a、及びトランジスタM10bについても、上記のトランジスタM2a、及びトランジスタM2bの接続構成の説明を参酌する。
【0154】
また、図4に示すとおり、回路MCに含まれるトランジスタM3、及びトランジスタM4のそれぞれをマルチゲート構造のトランジスタにすることによって、トランジスタM3、及びトランジスタM4のそれぞれがオフ状態のときに流れるリーク電流をより低くすることができる。また、トランジスタM3、又はトランジスタM4がオン状態において、そのトランジスタで起こるドレイン誘起障壁低下を防ぐことができる。
【0155】
なお、図4では、トランジスタM2乃至トランジスタM10のそれぞれをマルチゲート構造のトランジスタとして図示しているが、本発明の一態様の半導体装置に係る回路MCに含まれるトランジスタM2乃至トランジスタM10は、少なくとも一がマルチゲート構造のトランジスタであってもよい。また、図4には、回路MCに含まれているトランジスタM1をマルチゲート構造のトランジスタに置き換えていない構成を示しているが、トランジスタM1をマルチゲート構造のトランジスタに置き換えた構成としてもよい(図示しない。)。
【0156】
上記では、図2Aの回路MCに含まれているトランジスタをマルチゲート構造のトランジスタに置き換えることで、トランジスタのドレイン誘起障壁低下の対策、及び/又はオフ状態でのトランジスタのリーク電流の低減を図ることができると説明したが、別の構成で、トランジスタのドレイン誘起障壁低下の対策、及び/又はオフ状態でのトランジスタのリーク電流の低減を図ってもよい。例えば、図2Aに示す回路MCのトランジスタのチャネル長を適切な長さにすることでも、トランジスタのドレイン誘起障壁低下の対策、及び/又はオフ状態のトランジスタのリーク電流の低減を図ることができる。
【0157】
例えば、図2Aにおいて、トランジスタM1乃至トランジスタM10のそれぞれのチャネル長(L長と呼称される場合がある。)としては、具体的には、200nmとすることが好ましく、300nmとすることがより好ましく、400nmとすることがより好ましい。また、図4において、マルチゲート構造のトランジスタM2乃至トランジスタM10のそれぞれに含まれているトランジスタのチャネル長としては、具体的には、100nmとすることが好ましく、150nmとすることがより好ましく、200nmとすることがより好ましい。
【0158】
<<変更例5>>
図1の回路MCの構成では、トランジスタM1のオン状態又はオフ状態によって、トランジスタM2の第1端子に、配線VDEが与える高電源電位の供給が行われるか否かが決まる。ところで、配線VDEは、トランジスタM5の第1端子、及びトランジスタM8の第1端子にも電気的に接続されているため、トランジスタM5の第1端子、及びトランジスタM8の第1端子にも、配線VDEが与える高電源電位の供給を制御するスイッチング素子を設けてもよい。
【0159】
図5に示す回路MCは、図1の回路MCの変更例であって、トランジスタM5の第1端子、及びトランジスタM8の第1端子が、トランジスタM1の第2端子に電気的に接続された構成となっている。
【0160】
図1の回路MCは、トランジスタM5の第1端子、及びトランジスタM8の第1端子に配線VDEが電気的に接続されていたため、定常的にトランジスタM5、トランジスタM8のそれぞれの第1端子-第2端子間に電流が流れる構成となっている。一方、図5の回路MCは、トランジスタM1がオン状態になったときに、トランジスタM2、トランジスタM5、及びトランジスタM8のそれぞれの第1端子-第2端子間に電流が流れる構成となっている。そのため、回路MCは、乗算を行わないとき、高電源電位の供給を停止することができ、消費電力を低減することができる。
【0161】
また、トランジスタM1をオフ状態にするために、配線WWLBに低レベル電位を入力することで、配線WWLには高レベル電位が入力される。また、このとき、配線WDLに高レベル電位を入力することで、トランジスタM2がオン状態となるため、トランジスタM5、及びトランジスタM8のそれぞれの第1端子は、トランジスタM2の第1端子-第2端子間とトランジスタM4の第1端子-第2端子間とを介して、配線VGEと導通状態となる。ここで、配線VGEが与える定電圧を接地電位とすることによって、トランジスタM2の第2端子、トランジスタM1の第2端子、トランジスタM5の第1端子、及びトランジスタM8の第1端子のそれぞれを接地電位にすることができる。このように、図5の回路MCにおいて乗算を行う前に、回路MCのトランジスタM2の第2端子、トランジスタM1の第2端子、トランジスタM5の第1端子、トランジスタM8の第1端子などをあらかじめ接地電位にすることによって、回路MCは乗算動作を安定して行うことができる。
【0162】
なお、本発明の一態様に係る回路MCは、上述した複数の構成例を選択して、適宜組み合わせた構成とすることができる。
【0163】
<半導体装置の構成例1>
ここでは、図1に示した回路MCを適用することができる半導体装置の構成例について、説明する。
【0164】
図6Aは、図1図4などの回路MCを適用することができる半導体装置の構成例を示した回路図である。図6Aに示す半導体装置SDV1は、一例として、回路WDCと、回路XDCと、回路BDCと、回路WWCと、セルアレイCAと、回路ACTVと、を有する。また、回路ACTVは、一例として、回路ADR[1]乃至回路ADR[n]を有する。
【0165】
セルアレイCAは、一例として、図1図4などの回路MCを複数有する。具体的には、セルアレイCAにおいて、複数の回路MCは、m行n列(mは1以上の整数であり、nは1以上の整数である)のマトリクス状に配置されている。図6Aでは、一例として、セルアレイCA内に、回路MCとして、回路MC[1,1]、回路MC[m,1]、回路MC[1,n]、及び回路MC[m,n]を抜粋して図示している。
【0166】
回路MC[1,1]は、配線WDL[1]と、配線WWL[1]と、配線WWLB[1]と、配線XDL[1]と、配線BDL[1]と、配線OL[1]と、に電気的に接続されている。また、回路MC[m,1]は、配線WDL[1]と、配線WWL[m]と、配線WWLB[m]と、配線XDL[m]と、配線BDL[m]と、配線OL[1]と、に電気的に接続されている。また、回路MC[1,n]は、配線WDL[n]と、配線WWL[1]と、配線WWLB[1]と、配線XDL[1]と、配線BDL[1]と、配線OL[n]と、に電気的に接続されている。また、回路MC[m,n]は、配線WDL[n]と、配線WWL[m]と、配線WWLB[m]と、配線XDL[m]と、配線BDL[m]と、配線OL[n]と、に電気的に接続されている。
【0167】
つまり、iを1以上m以下の整数とし、jを1以上n以下の整数としたとき、回路MC[i,j](図6Aには図示しない)は、配線WDL[j]と、配線WWL[i]と、配線WWLB[i]と、配線XDL[i]と、配線BDL[i]と、配線OL[j]と、に電気的に接続されている、ということができる。
【0168】
なお、配線WDL[j]は、図1などに示した配線WDLに相当する。また、配線WWL[i]は、図1などに示した配線WWLに相当し、また、配線WWLB[i]は、図1などに示した配線WWLBに相当する。また、配線XDL[i]は、図1などに示した配線XDLに相当し、配線BDL[i]は、図1などに示した配線BDLに相当する。また、配線OL[j]は、図1などに示した配線OLに相当する。
【0169】
回路WDCは、配線WDL[1]乃至配線WDL[n]に電気的に接続されている。また、回路XDCは、配線XDL[1]乃至配線XDL[m]に電気的に接続されている。また、回路BDCは、配線BDL[1]乃至配線BDL[m]に電気的に接続されている。また、回路WWCは、配線WWL[1]乃至配線WWL[m]、及び配線WWLB[1]乃至配線WWLB[m]に電気的に接続されている。また、回路ADR[1]乃至回路ADR[n]のそれぞれは、配線OL[1]乃至配線OL[n]と、配線ZL[1]乃至配線ZL[n]と、に電気的に接続されている。
【0170】
回路WDCは、一例として、配線WDL[1]乃至配線WDL[n]のそれぞれに、セルアレイCAに含まれている回路MCに書き込むための第1データに応じた電圧を与える駆動回路として機能する。
【0171】
回路XDCは、一例として、配線XDL[1]乃至配線XDL[m]のそれぞれに、セルアレイCAに含まれている回路MCに入力するための第2データに応じた電圧を与える駆動回路として機能する。
【0172】
回路BDCは、一例として、配線BDL[1]乃至配線BDL[m]のそれぞれに、セルアレイCAに含まれている回路MCに入力するための、配線OLに流れる演算結果に応じた電流量を調整するための電圧を与える駆動回路として機能する。
【0173】
回路WWCは、一例として、配線WWL[1]乃至配線WWL[m]のそれぞれに、セルアレイCAが有する回路MCに第1データを書き込む際に、第1データの書き込み先となる回路MCを選択する機能を有する。具体的には、例えば、セルアレイCAのi行目に位置する回路MC[i,1]乃至回路MC[i,n]に第1データを書き込むとき、回路WWCは、配線WWL[i]に高レベル電位を与え、また、配線WWL[i]以外の配線WWL[1]乃至配線WWL[m]に低レベル電位を与えることで、第1データの書き込み先として、回路MC[i,1]乃至回路MC[i,n]を選択することができる。
【0174】
また、回路WWCは、一例として、配線WWLB[i]に、配線WWL[i]に送信される選択信号の反転信号を送信する機能を有する。また、回路WWCは、配線WWLB[i]には当該反転信号ではなく、異なる信号を送信してもよい。例えば、回路WWCは、配線WWL[i]に低レベル電位が入力されているとき、配線WWLB[i]にも低レベル電位を入力する機能を有していてもよい。これにより、図1などの回路MCは、第1データの保持と、トランジスタM2の第1端子への高電源電位の供給の停止と、を同時に行うことができる。
【0175】
ところで、セルアレイCAのj列目に着目すると、配線OLには、電流量として、回路MC[1,j]乃至回路MC[m,j]のそれぞれが出力するIの和が流れる。ここで、回路MC[i,j]のトランジスタM2に流れる電流をI[i,j]とし、回路MC[i,j]のトランジスタM6に流れる電流をI[i]とし、配線OLから回路MC[i,j]に流れる電流量をI[i,j]とする。更に、回路MC[1,j]乃至回路MC[m,j]のそれぞれのトランジスタM9に流れる電流量をIとしたとき、配線OLに流れる電流量I[j]は、下式で表すことができる。
【0176】
【数7】
【0177】
回路ADR[j]は、一例として、例えば、配線OL[j]から回路ADR[j]に流れる電流量に応じた電圧を出力する機能と、当該電圧を用いてあらかじめ定義された関数系に従った演算を行う機能と、当該関数の演算の結果を配線ZL[j]に出力する機能と、を有する。
【0178】
例えば、回路ADR[j]は、図7Aに示す回路ADRの構成を適用することができる。図7Aの回路ADRは、一例として、トランジスタM11と、トランジスタM12と、容量C2と、回路ACFと、を有する。また、回路ACFは、入力端子とする端子ITと、出力端子とする端子OTと、を有する。
【0179】
トランジスタM11、及びトランジスタM12としては、例えば、トランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4などに適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタM11、又はトランジスタM12のゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4などが動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。
【0180】
図7Aにおいて、トランジスタM11の第1端子は、配線VDEに電気的に接続され、トランジスタM11のゲートは配線RSLに電気的に接続されている。また、トランジスタM12の第1端子は、配線OLに電気的に接続され、トランジスタM12の第2端子は、トランジスタM11の第2端子と、容量C2の第1端子と、回路ACFの端子ITと、に電気的に接続され、トランジスタM12のゲートは、配線TXLに電気的に接続されている。また、容量C2の第2端子は、配線CVLに電気的に接続されている。また、回路ACFの端子OTは、配線ZLに電気的に接続されている。
【0181】
図6Aの半導体装置SDV1の回路ADR[j](図示しない)として、図7Aの回路ADRを適用した場合、図7Aに示す配線OLは、図6Aの配線OL[j](図示しない)に相当し、図7Aに示す配線ZLは、図6Aの配線ZL[j](図示しない)に相当する。
【0182】
配線CVLは、一例として、容量C2の第1端子-第2端子間の電位を保持するため、容量C2の第2端子に定電圧を与える配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、低レベル電位、接地電位、負電位などとすることができる。また、配線CVLが与える電位は、例えば、配線VGEが与える電位と等しくてもよい。又は、配線CVLは、配線VGEと同じ配線としてもよい。
【0183】
配線RSLは、一例として、回路ADRにおいて、容量C2の第1端子に初期化用の電位を書き込むための、リセット信号を送信する配線として機能する。具体的には、例えば、容量C2の第1端子に初期化用の電位を与えるとき、初めに、配線TXLに低レベル電位を入力してトランジスタM12をオフ状態にし、配線RSLに高レベル電位を入力してトランジスタM11をオン状態にして、配線VDEから容量C2の第1端子に高電源電位(初期化用の電位)を与える。その後、配線RSLに低レベル電位を入力して、トランジスタM11をオフ状態にすることで、容量C2の第1端子の電位の初期化が完了する。
【0184】
配線TXLは、一例として、配線OLに流れる電流を読み出すための、信号を送信する配線として機能する。具体的には、例えば、配線OLに流れる電流を読み出すとき、前述したとおり、容量C2の第1端子の電位を初期化用の電位として、その後、配線TXLに高レベル電位を入力してトランジスタM12をオン状態にして、容量C2の第1端子と、配線OLと、の間を導通状態にする。ここで、図6Aの回路ADR[j](図示しない)として、図7Aの回路ADRが適用されているとき、回路ADR[j]から配線OL[j](図示しない)に、式(1.7)に記載した電流量I[j]の電流が流れる。このとき、一定期間だけ配線TXLに高レベル電位を与えることで、容量C2の第1端子に保持される電荷量は、配線TXLに高レベル電位を与えた時間と電流量I[j]の積によって決まる。このため、容量C2の容量値と当該電荷量によって、容量C2の第1端子の電位が決まる。
【0185】
回路ACFは、一例として、回路ACFの入力端子の電位、つまり、容量C2の第1端子の電位に応じた電圧を回路ACFの出力端子に出力する機能を有する。なお、回路ACFの具体的な回路構成については、後述する。
【0186】
なお、図6Aの半導体装置SDV1に適用できる回路ADRは、図7Aの構成に限定されない。半導体装置SDV1に適用できる回路ADRとしては、例えば、図7Bに示す回路ADRの構成としてもよい。図7Bの回路ADRは、トランジスタM11、及びトランジスタM12のそれぞれのバックゲートに配線BGLAを電気的に接続した構成となっている。特に、図7Bの構成において、配線BGLAに低レベル電位、接地電位、負電位などを与えることで、トランジスタM11とトランジスタM12とのそれぞれのしきい値電圧を高くすることができるため、トランジスタM11とトランジスタM12のそれぞれのオフ電流を下げることができる。また、配線BGLAに与える電位としては、図2Aの配線BGLの説明と同様に、固定電位でなく、可変電位であってもよい。
【0187】
また、半導体装置SDV1に適用できる回路ADRとしては、例えば、図7Cに示すとおり、図7Bの回路ADRにおける、トランジスタM11、及びトランジスタM12のそれぞれをマルチゲート構造のトランジスタに置き換えてもよい。図7Cでは、例えば、トランジスタM11は、トランジスタM11aと、トランジスタM11bと、を有し、トランジスタM12は、トランジスタM12aと、トランジスタM12bと、を有する。
【0188】
トランジスタM11a、及びトランジスタM11bのそれぞれのゲートは、図7BにおけるトランジスタM11のゲートに相当し、トランジスタM11a、及びトランジスタM11bのそれぞれのバックゲートは、図7BにおけるトランジスタM11のバックゲートに相当し、トランジスタM11aの第1端子は、図7BにおけるトランジスタM11の第1端子に相当する。トランジスタM11aの第2端子は、トランジスタM11bの第1端子に電気的に接続されている。また、トランジスタM11bの第2端子は、図7BにおけるトランジスタM11の第2端子に相当する。
【0189】
トランジスタM12a、及びトランジスタM12bについても、上記のトランジスタM11a、及びトランジスタM11bの接続構成の説明を参酌する。
【0190】
図7Cに示すとおり、回路ADRに含まれるトランジスタM11、及びトランジスタM12のそれぞれをマルチゲート構造のトランジスタにすることによって、トランジスタM11、及びトランジスタM12のそれぞれがオフ状態のときに流れるリーク電流をより低くすることができる。また、トランジスタM11、又はトランジスタM12がオン状態において、そのトランジスタに起こるドレイン誘起障壁低下を防ぐことができる。
【0191】
回路ACFの具体的な構成としては、例えば、図8Aに示すソースフォロワ回路を適用することができる。図8Aに示す回路ACFは、トランジスタM13と、トランジスタM14と、を有する。
【0192】
トランジスタM13、及びトランジスタM14としては、例えば、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10などに適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタM13、又はトランジスタM14のゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10などが動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。
【0193】
トランジスタM13のゲートは、回路ACFの端子ITに電気的に接続され、トランジスタM13の第1端子は、配線VDE2に電気的に接続され、トランジスタM13の第2端子は、トランジスタM14の第1端子と、端子OTと、に電気的に接続されている。また、トランジスタM14の第2端子は、配線VGE2に接続され、トランジスタM14のゲートは、配線BILに電気的に接続されている。
【0194】
配線VDE2は、一例として、定電圧を与える配線として機能する。当該定電圧は、高電源電位などとすることができる。なお、配線VDE2が与える高電源電位は、配線VDEが与える高電源電位と等しくすることができる。又は、配線VDE2が与える高電源電位は、配線VDEが与える高電源電位と異なっていてもよい。
【0195】
配線VGE2は、一例として、定電圧を与える配線として機能する。当該定電圧は、低電源電位などとすることができる。なお、配線VGE2が与える高電源電位は、配線VGEが与える低電源電位と等しくすることができる。又は、配線VGE2が与える低電源電位は、配線VGE2が与える低電源電位と異なっていてもよい。
【0196】
配線BILは、一例として、トランジスタM14のゲートに入力する、定電圧を与える配線として機能する。
【0197】
図7A乃至図7Cの回路ACFとして、図8Aのソースフォロワ回路を適用することにより、回路ACFは、回路ACFの端子ITに入力された電位と概ね等しい電位を端子OTから出力することができる。
【0198】
また、図7A乃至図7Cの回路ACFの具体的な構成としては、例えば、図8Bに示すソース接地回路を適用することができる。図8Bに示す回路ACFは、一例として、トランジスタM15と、負荷LEと、を有する。
【0199】
負荷LEとしては、例えば、抵抗、ダイオード、トランジスタなどを用いることができる。
【0200】
トランジスタM15としては、例えば、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10などに適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタM15のゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10などが動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。
【0201】
トランジスタM15のゲートは、回路ACFの端子ITに電気的に接続され、トランジスタM15の第1端子は、負荷LEの第1端子と、回路ACFの端子OTに電気的に接続され、トランジスタM15の第2端子は、配線VGE2に電気的に接続されている。また、負荷LEの第2端子は、配線VDE2に電気的に接続されている。
【0202】
配線VDE2、及び配線VGE2については、図8Aの回路ACFの配線VDE2、及び配線VGE2の説明を参酌する。
【0203】
図7A乃至図7Cの回路ACFとして、図8Bのソース接地回路を適用することにより、回路ACFは、回路ACFの端子ITに入力された電位に応じた電位を端子OTから出力することができる。例えば、電流量I[j]が大きいとき、容量C2の第1端子の電位は、初期化用の電位から大きく低下するため、トランジスタM15の第1端子-第2端子に流れる電流は小さくなり、端子OTから出力する電圧は高くなる(配線VDE2が与える電圧に近づく。)。一方、電流量I[j]が小さいとき、容量C2の第1端子の電位は、初期化用の電位からの電圧降下は小さくなるため、トランジスタM15の第1端子-第2端子に流れる電流は大きくなり、端子OTから出力する電圧は低くなる(配線VGE2が与える電圧に近づく)。
【0204】
また、図7A乃至図7Cの回路ACFの具体的な構成としては、例えば、デジタル回路を適用することができる。当該デジタル回路としては、例えば、図8Cに示すバッファ回路を適用することができる。図8Cに示す回路ACFは、一例として、インバータ回路INV1と、インバータ回路INV2と、を有する。
【0205】
インバータ回路INV1の入力端子は、回路ACFの端子ITに電気的に接続され、インバータ回路INV1の出力端子は、インバータ回路INV2の入力端子に電気的に接続され、インバータ回路INV2の出力端子は、回路ACFの端子OTに電気的に接続されている。
【0206】
図7A乃至図7Cの回路ACFとして、図8Cのバッファ回路を適用することにより、回路ACFは、回路ACFの端子ITに入力された電位に応じて、高レベル電位又は低レベル電位の一方を端子OTから出力することができる。例えば、電流量I[j]が大きいとき、容量C2の第1端子の電位は、初期化用の電位から大きく低下するため、インバータ回路INV1の入力端子に与えられる電位は小さくなり、端子OTから出力する電圧は低レベル電位となる。一方、電流量I[j]が小さいとき、容量C2の第1端子の電位は、初期化用の電位からの電圧降下は小さくなる。このとき、インバータ回路INV1の入力端子に与えられる電位が、インバータ回路INV1のしきい値電圧よりも下回らない場合、端子OTから出力する電圧は高レベル電位となる。
【0207】
また、図7A乃至図7Cの回路ACFに適用するバッファ回路の構成としては、図8Cの構成に限定されない。図7A乃至図7Cの回路ACFに適用するバッファ回路の構成としては、例えば、図8Dに示す構成としてもよい。図8Dに示す回路ACFは、NAND回路NDと、インバータ回路INV3と、を有する。
【0208】
NAND回路NDの第1入力端子は、回路ACFの端子ITに電気的に接続され、NAND回路NDの第2入力端子は、配線PIに電気的に接続され、NAND回路NDの出力端子は、インバータ回路INV3の入力端子に電気的に接続され、インバータ回路INV3の出力端子は、回路ACFの端子OTに電気的に接続されている。
【0209】
図8Dの回路ACFは、配線PIに低レベル電位が入力されているときに、図8Cに示した回路ACFと同様に、回路ACFの端子ITに入力された電位に応じて、高レベル電位又は低レベル電位の一方を端子OTから出力する。つまり、図8Dの回路ACFは、配線PIに信号(パルス電圧など)を入力することで、図8Cに示した回路ACFと同様に、バッファ回路として動作する。
【0210】
なお、図8Dの回路ACFにおいて、NAND回路NDの代わりにNOR回路を用いてもよい。NOR回路の第1入力端子が端子ITに電気的に接続され、NOR回路の第2入力端子が配線PIに電気的に接続され、NOR回路の出力端子がインバータ回路INV3の入力端子に電気的に接続されている場合、配線PIに高レベル電位が入力されているときに、図8Cに示した回路ACFと同様に、バッファ回路として動作する。
【0211】
なお、図8A乃至図8Dなどに示す回路ACFにおいて、回路MC[1,1]乃至回路MC[m,n]に含まれるトランジスタM9の第1端子-第2端子に流れる電流量Iは、回路ACFで行われる演算の変数、定数などとして扱うことができる。具体的には、例えば、図8A、及び図8Bの回路ACFにおいて、回路ACFの端子ITに式(1.7)の電流Iが入力されたとき、1/Iは、回路ACFがΣI×Iに乗ずる定数としてみなすことができる。なお、当該定数としては、例えば、ΣI×Iを0以上1以下の範囲に規格化するための係数とすることができる。また、例えば、図8C、及び図8Dの回路ACFにおいて、回路ACFの端子ITに式(1.7)の電流Iが入力されたとき、1/Iは、回路ACFで行われる活性化関数のしきい値を変化させる変数としてみなすことができる。具体的には、例えば、1/Iを小さくすることでIが小さくなるため、当該しきい値を相対的に高くすることができる。また、例えば、1/Iを大きくすることでIが大きくなるため、当該しきい値を相対的に低くすることができる。
【0212】
なお、図6Aの半導体装置SDV1の演算としては、例えば、ニューラルネットワークの積和演算、及び活性化関数の演算を行うことができる。特に、ニューラルネットワークにおける活性化関数の演算回路として、図8Bのソース接地回路、図8C、又は図8Dのバッファ回路を適用することができる。
【0213】
<半導体装置の構成例2>
次に、図6Aに示した半導体装置SDV1とは異なる、図1等の回路MCを適用することができる半導体装置について説明する。
【0214】
図6Bに示す半導体装置SDV2は、図6Aの半導体装置SDV1の変更例であって、回路BGCを有する。回路BGCは、配線BGL[1]乃至配線BGL[m]に電気的に接続されている。
【0215】
回路BGCは、一例として、配線BGL[1]乃至配線BGL[m]のそれぞれに所望の定電圧を入力する機能を有する。つまり、回路BGCは、回路MC[1,1]乃至回路MC[m,n]に含まれている各トランジスタのバックゲートに定電圧を供給する回路として機能する。
【0216】
そのため、図6Bの半導体装置SDV2の回路MC[1,1]乃至回路MC[m,n]に適用できる回路としては、例えば、上述した図2A図2B図4などの回路MCとすることができる。
【0217】
<半導体装置の積層構造の例>
次に、半導体装置SDV1、半導体装置SDV2などを積層構造とした場合の構成例について説明する。
【0218】
図9Aには、基板BSEの上方に、構造体SILと、構造体OSLと、が設けられた構成を一例として示している。つまり、半導体装置SDV1、半導体装置SDV2などは、例えば、1枚の基板BSEに回路素子などを形成することで、作製することができる。
【0219】
基板BSEとしては、例えば、様々な基板を用いることができる。様々な基板としては、例えば、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、サファイアガラス基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどがある。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ樹脂、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。特に、半導体基板、単結晶基板、又はSOI基板などを用いてトランジスタを製造することによって、特性、サイズ、又は形状などのばらつきが少なく、電流能力が高く、サイズの小さいトランジスタを製造することができる。このようなトランジスタによって回路を構成すると、回路の低消費電力化、又は回路の高集積化を図ることができる。
【0220】
また、基板BSEとして、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタを形成してもよい。または、基板とトランジスタの間に剥離層を設けてもよい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板より分離し、他の基板に転載するために用いることができる。その際、トランジスタは耐熱性の劣る基板、可撓性の基板などにも転載できる。なお、上述の剥離層には、例えば、タングステン膜と酸化シリコン膜との無機膜の積層構造の構成、基板上にポリイミド等の有機樹脂膜が形成された構成等を用いることができる。
【0221】
つまり、ある基板を用いてトランジスタを形成し、その後、別の基板にトランジスタを転置し、更に別の基板(例えば、基板BSE)の上にトランジスタを配置してもよい。トランジスタが転置される基板の一例としては、上述したトランジスタを形成することが可能な基板に加え、紙基板、セロファン基板、アラミドフィルム基板、ポリイミドフィルム基板、石材基板、木材基板、布基板(天然繊維(絹、綿、麻)、合成繊維(ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル)若しくは再生繊維(アセテート、キュプラ、レーヨン、再生ポリエステル)などを含む)、皮革基板、又はゴム基板などがある。これらの基板を用いることにより、特性のよいトランジスタの形成、消費電力の小さいトランジスタの形成、壊れにくい装置の製造、耐熱性の付与、軽量化、又は薄型化を図ることができる。
【0222】
なお、所定の機能を実現させるために必要な回路の全てを、同一の基板(例えば、ガラス基板、プラスチック基板、単結晶基板、又はSOI基板など)に形成することが可能である。こうして、部品点数の削減によるコストの低減、又は回路部品との接続点数の低減による信頼性の向上を図ることができる。
【0223】
なお、所定の機能を実現させるために必要な回路の全てを同じ基板に形成しないことが可能である。つまり、所定の機能を実現させるために必要な回路の一部は、ある基板に形成され、所定の機能を実現させるために必要な回路の別の一部は、別の基板に形成されていることが可能である。例えば、所定の機能を実現させるために必要な回路の一部は、ガラス基板に形成され、所定の機能を実現させるために必要な回路の別の一部は、単結晶基板(又はSOI基板)に形成されることが可能である。そして、所定の機能を実現させるために必要な回路の別の一部が形成される単結晶基板(ICチップともいう)を、COG(Chip On Glass)によって、ガラス基板に接続して、ガラス基板にそのICチップを配置することが可能である。または、ICチップを、TAB(Tape Automated Bonding)、COF(Chip On Film)、SMT(Surface Mount Technology)、又はプリント基板などを用いてガラス基板と接続することが可能である。このように、回路の一部が画素部と同じ基板に形成されていることにより、部品点数の削減によるコストの低減、又は回路部品との接続点数の低減による信頼性の向上を図ることができる。特に、駆動電圧が大きい部分の回路、又は駆動周波数が高い部分の回路などは、消費電力が大きくなってしまう場合が多い。そこで、このような回路を、画素部とは別の基板(例えば単結晶基板)に形成して、ICチップを構成する。このICチップを用いることによって、消費電力の増加を防ぐことができる。
【0224】
例えば、基板BSEを半導体基板とすることで、基板BSEの上面にその半導体をチャネル形成領域に含むトランジスタを形成することができる。なお、本実施の形態では、基板BSEの上面に形成された当該トランジスタは、構造体SILに含まれているものとする。つまり、構造体SILは、当該トランジスタを含む回路を有するということができる。
【0225】
例えば、基板BSEをシリコンが含まれる半導体基板とすることで、構造体SILに含まれるトランジスタは、Siトランジスタとすることができる。そのため、構造体SILは、Siトランジスタを含む回路を有するということができる。
【0226】
また、図9Aの積層構造の例では、構造体SILの上方に構造体OSLが設けられている。構造体OSLは、一例として、OSトランジスタを含む回路を有する。詳しくは、実施の形態5で説明するが、OSトランジスタは、例えば、平坦化された絶縁体、導電体などの上方に設けることができる。つまり、本発明の一態様の半導体装置に、図9Aの積層構造の例を適用することによって、当該半導体装置に、チャネル形成領域に含まれる半導体材料が異なる、2つ以上のトランジスタを用いることができる。
【0227】
例えば、基板BSEをシリコンが含まれる半導体基板とし、構造体OSLに含まれるトランジスタをOSトランジスタとして、上述した半導体装置SDV1、半導体装置SDV2などに図9Aの積層構造の例を適用することによって、その半導体装置に含まれる回路などに、OSトランジスタ、Siトランジスタを用いることができる。
【0228】
具体的には、構造体OSLは、例えば、回路WDC、回路XDC、回路BDC、回路WWC、回路MC、回路ACTVなどを有し、それらの回路はOSトランジスタを含む構成とすることができ、かつ構造体SILは、例えば、それらの回路に電圧を供給するための電圧源などを有し、当該電圧源はSiトランジスタを含む構成とすることができる。また、構造体OSLは、例えば、回路WDC、回路XDC、回路BDC、回路WWC、回路MC、回路ACTVなどから選ばれた回路を有し、選ばれた回路はOSトランジスタを含む構成とすることができ、かつ構造体SILは、例えば、選ばれなかった残りの回路を有し、その残りの回路はSiトランジスタを含む構成とすることができる。
【0229】
また、構造体OSLは、例えば、回路WDC、回路XDC、回路BDC、回路WWC、回路MC、回路ACTVなどを有し、それらの回路はOSトランジスタを含む構成とし、かつ構造体SILは、例えば、デジタル演算回路などを有し、デジタル演算回路はSiトランジスタを含む構成としてもよい。このような半導体装置を構成することによって、当該半導体装置は、例えば、構造体OSLで演算を行った結果を構造体SILのデジタル演算回路に送信して、当該結果を用いたデジタル演算を行うことができる。例えば、ニューラルネットワークの演算を当該半導体装置で行う場合、ニューラルネットワークの1層目の演算を構造体OSLで行い、ニューラルネットワークの2層目以降の演算を構造体SILに含まれるデジタル演算回路などで行うことができる。
【0230】
また、半導体装置SDV1、半導体装置SDV2などを積層構造にする場合の構成例としては、図9Bに示す積層構造を適用してもよい。図9Bの積層構造は、構造体SILの上方に構造体OSL1が設けられ、構造体OSL1の上方に構造体OSL2が設けられている点で、図9Aの積層構造と異なっている。構造体OSL1、及び構造体OSL2のそれぞれは、図9Aの構造体OSLと同様に、OSトランジスタを含む回路を有することができる。つまり、OSトランジスタを有する構造体の上方にさらに別のOSトランジスタを有する構造体を積層することができる。また、図9Bでは、構造体SILの上方に構造体OSL1、及び構造体OSL2の2つの構造体を設けた積層構造を示しているが、構造体SILの上方に設けられるOSトランジスタを有する構造体は3つ以上としてもよい。回路規模が大きくなる場合、OSトランジスタを有する構造体を複数積層することによって、回路が形成される基板BSEの面積を低減することができる。
【0231】
また、基板BSEを、半導体基板、絶縁体基板などとする場合、半導体装置SDV1、半導体装置SDV2などとしては、図9Cに示すとおり、基板BSEの上方に構造体OSLが設けられた構造とすることができる。つまり、基板BSE上にOSトランジスタを有する構造体を設けてもよい。換言すると、基板BSE上にOSトランジスタを含む回路を作製してもよい。
【0232】
また、図9A乃至図9Cの上方にセンサを設けてもよい。図9Dには、一例として、図9Aの構造体OSLの上方にセンサを有する構造体PDLを設けた積層構造を示している。構造体PDLに含まれているセンサは、一例として、外界からの情報をセンシングして電流又は電圧に変換することができる。当該センサとしては、例えば、光センサ(フォトダイオード)、圧力センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、聴覚センサ、温度センサ、湿度センサ、味覚センサ、臭覚センサなどとすることができる。ここで、センサによって得られた情報を第2データ(電流、又は電圧)として、半導体装置SDV1、半導体装置SDV2などに入力する構成とすることにより、センサによって得られた情報を基に演算を行うことができる。特に、半導体装置SDV1、半導体装置SDV2などでニューラルネットワークの演算を行う場合、センサによって得られた情報を入力データとして、その入力データの推論を行うことができる。なお、実施の形態3では、構造体PDLに含まれているセンサとして光センサ(フォトダイオード)を適用した場合の半導体装置について説明している。
【0233】
上述したとおり、図1乃至図5のいずれかに示した回路MCを用いることによって、第1データに応じた電圧を回路MCに書き込むことができる。また、回路MCによって、第1データと第2データとの積に応じた電流Iを配線OLに出力することができる。また、図6Aの半導体装置SDV1、又は図6Bの半導体装置SDV2を用いることによって、複数の第1データと複数の第2データとの積和を演算することができる。
【0234】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0235】
(実施の形態2)
実施の形態1で説明したそれぞれの回路MCは、容量C2の第1端子に第1データに応じた電圧を書き込むことによって、トランジスタM2において電流Iを生成する構成(電圧書き込み式)としたが、本発明の一態様の半導体装置としては、第1データに応じた電流を書き込むことで、トランジスタM2において電流Iを生成する構成(電流書き込み式)としてもよい。本実施の形態では、電流書き込みによって電流Iを生成する回路MCについて、説明する。
【0236】
図10に示す回路MCは、図1の回路MCの変更例であって、トランジスタM3及び容量CGを有さず、トランジスタM3A及びトランジスタM2Aを有する構成となっている。
【0237】
トランジスタM3Aとしては、例えば、図1の回路MCに含まれているトランジスタM3に適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタM3Aのゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM3が動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。
【0238】
また、トランジスタM2Aとしては、例えば、図1の回路MCに含まれているトランジスタM2に適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタM2Aのゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM2が動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。また、トランジスタM2Aのサイズとしては、図10に示すトランジスタM2のサイズと等しいことが好ましい。特に、トランジスタM2と、トランジスタM2Aと、のサイズを概ね等しくすることによって、トランジスタM2と、トランジスタM2Aと、は、その電気的な接続によってカレントミラー回路として機能するため、トランジスタM2の第1端子-第2端子間に流れる電流量を、トランジスタM2Aの第1端子-第2端子間に流れる電流量とほぼ等しくすることができる。
【0239】
トランジスタM3Aの第1端子は、トランジスタM2Aの第1端子と、配線WDILと、に電気的に接続され、トランジスタM3Aの第2端子は、トランジスタM2のゲートと、トランジスタM2Aのゲートと、容量C1の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタM3Aのゲートは、配線WWLに電気的に接続されている。また、トランジスタM2Aの第2端子は、配線VGEに電気的に接続されている。
【0240】
なお、上記以外の図10の回路MCの接続構成については、図1の回路MCの説明を参酌する。
【0241】
配線WDILは、一例として、回路MCに第1データに応じた電流を流すための書き込みデータ線(電流線)として機能する。特に、トランジスタM2と、トランジスタM2Aと、を含む回路がカレントミラー回路として機能する場合、配線WDILからの第1データに応じた電流の量と概ね等しい電流量を、トランジスタM2の第1端子-第2端子間に流すことができる。
【0242】
次に、回路MCに第1データに応じた電流を書き込むときの動作例を説明する。なお、本動作例において、配線VDEが与える電位を高電源電位とし、配線VGEが与える電位を接地電位(VGND)とする。
【0243】
初めに、配線WWLに高レベル電位が入力される。これにより、トランジスタM3Aと、トランジスタM4と、のそれぞれのゲートには、当該高レベル電位が入力されるため、トランジスタM3AとトランジスタM4はオン状態となる。
【0244】
このとき、トランジスタM4を介して、配線VGEと、容量C1の第2端子(トランジスタM2の第2端子)と、の間は導通状態となるため、容量C1の第2端子(トランジスタM2の第2端子)の電位は、VGNDとなる。
【0245】
また、このとき、トランジスタM3Aを介して、配線WDILと容量C1の第1端子(トランジスタM2のゲートなど)の間が導通状態となる。そのため、トランジスタM2Aは、ダイオード接続の構成となる。
【0246】
ここで、配線WDILから回路MCに第1データに応じた電流量(以下、Iとする。)の電流が流れることで、トランジスタM2Aの第1端子、及びゲートの電位は、当該電流に応じた電位(以下、Vとする。)となる。このとき、容量C1の第1端子には、電圧Vが書き込まれる。また、トランジスタM2Aの第1端子-第2端子間には電流量Iの電流が流れる。
【0247】
また、配線WWLBには、配線WWLに送信される信号の反転信号が入力される。具体的には、配線WWLBには、低レベル電位が入力される。そのため、トランジスタM1のゲートには、当該低レベル電位が印加される。これにより、トランジスタM1は、オフ状態となる。
【0248】
容量C1の第1端子(トランジスタM2のゲート)には電圧Vが書き込まれたあと、配線WWLには、低レベル電位が入力される。これにより、トランジスタM3Aと、トランジスタM4と、のそれぞれのゲートには、当該低レベル電位が入力されるため、トランジスタM3AとトランジスタM4はオフ状態となる。また、これにより、容量C1の第1端子がフローティング状態となるため、容量C1の第1端子-第2端子間の電圧V-VGNDが保持される。つまり、トランジスタM2のゲート-第2端子間の電圧は、トランジスタM2Aのゲート-第2端子間の電圧と概ね等しくなる。
【0249】
また、配線WWLBには、配線WWLに送信される信号の反転信号が入力されるため、このとき、配線WWLBには高レベル電位が入力される。そのため、トランジスタM1のゲートには、当該高レベル電位が印加されて、トランジスタM1は、オン状態となる。このため、配線VDEは、トランジスタM2の第1端子と導通状態となり、配線VDEの高電源電位が、トランジスタM2の第1端子に与えられる。
【0250】
また、トランジスタM2のゲート-第2端子間の電圧V-VGNDは、トランジスタM2Aのゲート-第2端子間の電圧と概ね等しいため、このとき、トランジスタM2のサイズがトランジスタM2Aのサイズと等しい場合、トランジスタM2の第1端子-第2端子間に流れる電流は、トランジスタM2Aの第1端子-第2端子間に流れる電流量Iと概ね等しい量となる。
【0251】
上記の動作によって、回路MCに第1データに応じた電流として電流量Iを書き込むことができる。
【0252】
また、図10の回路MCに含まれているトランジスタとして、図4の回路MCと同様に、マルチゲート構造のトランスタを適用してもよい。図11に示す回路MCは、図10の回路MCに含まれているトランジスタM2、トランジスタM2A、トランジスタM3A、トランジスタM4乃至トランジスタM10を、マルチゲート構造のトランジスタに置き換えた構成例を示している。具体的には、トランジスタM2はトランジスタM2aとトランジスタM2bとを有する構成となり、トランジスタM2AはトランジスタM2AaとトランジスタM2Abとを有する構成となり、トランジスタM3AはトランジスタM3AaとトランジスタM3Abとを有する構成となり、トランジスタM4はトランジスタM4aとトランジスタM4bとを有する構成となり、トランジスタM5はトランジスタM5aとトランジスタM5bとを有する構成となり、トランジスタM6はトランジスタM6aとトランジスタM6bとを有する構成となり、トランジスタM7はトランジスタM7aとトランジスタM7bとを有する構成となり、トランジスタM8はトランジスタM8aとトランジスタM8bとを有する構成となり、トランジスタM9はトランジスタM9aとトランジスタM9bとを有する構成となり、トランジスタM10はトランジスタM10aとトランジスタM10bとを有する構成となっている。図11のとおり、トランジスタM2、トランジスタM2A、トランジスタM3A、トランジスタM4乃至トランジスタM10を、マルチゲート構造のトランジスタに置き換えることによって、各トランジスタにおいて、オン状態のときに起こるドレイン誘起障壁低下の対策、及び/又はオフ状態でのトランジスタのリーク電流の低減を図ることができる。
【0253】
なお、図11では、トランジスタM2、トランジスタM2A、トランジスタM3A、トランジスタM4乃至トランジスタM10のそれぞれをマルチゲート構造のトランジスタとして図示しているが、本発明の一態様の半導体装置に係る回路MCに含まれるトランジスタM2、トランジスタM2A、トランジスタM3A、トランジスタM4乃至トランジスタM10は、少なくとも一がマルチゲート構造のトランジスタであってもよい。また、図11には、回路MCに含まれているトランジスタM1をマルチゲート構造のトランジスタに置き換えていない構成を示しているが、トランジスタM1をマルチゲート構造のトランジスタに置き換えた構成としてもよい(図示しない。)。
【0254】
<半導体装置の構成例1>
次に、図10、又は図11に示した回路MCを適用することができる半導体装置の構成例について、説明する。
【0255】
図12は、図10、又は図11に示した回路MCを適用することができる半導体装置の構成例を示した回路図である。なお、図12に示す半導体装置SDV3は、図6Aに示す半導体装置SDV1の変更例であって、回路WDCではなく回路WDICを有している。また、図12の半導体装置SDV3は、配線WDL[1]乃至配線WDL[n]の代わりに配線WDIL[1]乃至配線WDIL[n]が延設されている。
【0256】
また、図12の半導体装置SDV3は、図6Aの半導体装置SDV1の変更例であるため、半導体装置SDV3の構成において、半導体装置SDV1と共通する箇所については、半導体装置SDV1の説明を参酌する。
【0257】
回路WDICは、配線WDIL[1]乃至配線WDIL[n]のそれぞれに第1データに応じた量の電流を供給する機能を有する。例えば、回路WDICは、配線WDIL[1]乃至配線WDIL[n]のそれぞれに電気的に接続されている。
【0258】
次に、回路WDICの具体的な構成例について説明する。図13Aは、回路WDICの一例を示したブロック図である。なお、図13Aには、回路WDICの周辺の回路との電気的な接続を示すため、配線WDILも図示している。
【0259】
回路WDICは、例えば、配線WDILの数だけ回路WDICaを有する。つまり、回路WDICは、回路WDICaをn個有する。このため、図13Aに示す配線WDILは、図12の半導体装置SDV3に含まれている配線WDIL[1]乃至配線WDIL[n]のいずれか一とすることができる。したがって、配線WDIL[1]乃至配線WDIL[n]のそれぞれには、別々の回路WDICaが電気的に接続されている。
【0260】
図13Aに示す回路WDICaは、一例として、スイッチSWWを有する。スイッチSWWの第1端子は、配線WDILに電気的に接続され、スイッチSWWの第2端子は、配線VINIL1に電気的に接続されている。配線VINIL1は、配線WDILに初期化用の電位を与える配線として機能し、初期化用の電位としては、負電位、接地電位(GND)、低レベル電位、高レベル電位などとすることができる。また、当該初期化用の電位としては、一例として、第1データを“0”としたときの電位とすることができる。
【0261】
スイッチSWWとしては、例えば、アナログスイッチ、トランジスタなどの電気的なスイッチなどを適用することができる。なお、スイッチSWWとして、例えば、トランジスタを適用する場合、当該トランジスタは、トランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4と同様の構造のトランジスタとすることができる。また、電気的なスイッチ以外では、機械的なスイッチを適用してもよい。
【0262】
また、図13Aの回路WDICaは、一例として、複数の電流源CSを有する。具体的には、回路WDICaはKビット(2値)(Kは1以上の整数)の第1データを電流量として出力する機能を有し、この場合、回路WDICaは、2-1個の電流源CSを有する。なお、回路WDICaは、1ビット目の値に相当する情報を電流として出力する電流源CSを1個有し、2ビット目の値に相当する情報を電流として出力する電流源CSを2個有し、Kビット目の値に相当する情報を電流として出力する電流源CSを2K-1個有している。
【0263】
図13Aにおいて、それぞれの電流源CSは、端子T1と、端子T2と、を有する。それぞれの電流源CSの端子T1は、配線WDILに電気的に接続されている。また、1個の電流源CSの端子T2は配線DW[1]に電気的に接続され、2個の電流源CSの端子T2のそれぞれは配線DW[2]に電気的に接続され、2K-1個の電流源CSの端子T2のそれぞれは配線DW[K]に電気的に接続されている。
【0264】
回路WDICaが有する複数の電流源CSは、それぞれ同一の定電流としてIWutを端子T1から出力する機能を有する。なお、実際には、半導体装置SDV3の作製段階において、それぞれの電流源CSに含まれているトランジスタの電気特性のバラツキによって誤差が現れることがある。そのため、複数の電流源CSの端子T1のそれぞれから出力される定電流IWutの誤差は10%以内が好ましく、5%以内であることがより好ましく、1%以内であることがより好ましい。なお、本実施の形態では、回路WDICaに含まれている複数の電流源CSの端子T1から出力される定電流IWutの誤差は無いものとして説明する。
【0265】
配線DW[1]乃至配線DW[K]は、電気的に接続されている電流源CSから定電流IWutを出力するための制御信号を送信する配線として機能する。具体的には、例えば、配線DW[1]に高レベル電位が与えられているとき、配線DW[1]に電気的に接続されている電流源CSは、定電流としてIWutを配線WDILに流し、また、配線DW[1]に低レベル電位が与えられているとき、配線DW[1]に電気的に接続されている電流源CSは、IWutを出力しない。また、例えば、配線DW[2]に高レベル電位が与えられているとき、配線DW[2]に電気的に接続されている2個の電流源CSは、合計2IWutの定電流を配線WDILに流し、また、配線DW[2]に低レベル電位が与えられているとき、配線DW[2]に電気的に接続されている電流源CSは、合計2IWutの定電流を出力しない。また、例えば、配線DW[K]に高レベル電位が与えられているとき、配線DW[K]に電気的に接続されている2K-1個の電流源CSは、合計2K-1Wutの定電流を配線WDILに流し、また、配線DW[K]に低レベル電位が与えられているとき、配線DW[K]に電気的に接続されている電流源CSは、合計2K-1Wutの定電流を出力しない。
【0266】
配線DW[1]に電気的に接続されている1個の電流源CSが流す電流は、1ビット目の値に相当し、配線DW[2]に電気的に接続されている2個の電流源CSが流す電流は、2ビット目の値に相当し、配線DW[K]に電気的に接続されているK個の電流源CSが流す電流量は、Kビット目の値に相当する。ここで、Kを2とした場合の回路WDICaを考える。例えば、1ビット目の値が“1”、2ビット目の値が“0”とき、配線DW[1]には高レベル電位が与えられ、配線DW[2]には低レベル電位が与えられる。このとき、回路WDICaから、配線WDILに定電流としてIWutが流れる。また、例えば、1ビット目の値が“0”、2ビット目の値が“1”のとき、配線DW[1]には低レベル電位が与えられ、配線DW[2]には高レベル電位が与えられる。このとき、回路WDICaから、配線WDILに定電流として2IWutが流れる。また、例えば、1ビット目の値が“1”、2ビット目の値が“1”のとき、配線DW[1]及び配線DW[2]には高レベル電位が与えられる。このとき、回路WDICaから、配線WDILに定電流として3IWutが流れる。また、例えば、1ビット目の値が“0”、2ビット目の値が“0”のとき、配線DW[1]及び配線DW「2」には低レベル電位が与えられる。このとき、回路WDICaから、配線WDILに定電流は流れない。
【0267】
なお、図13AではKが3以上の整数である場合の回路WDICaを図示しているが、Kが1である場合は、図13Aの回路WDICaを、配線DW[2]乃至配線DW[K]に電気的に接続されている電流源CSを設けない構成にすればよい。また、Kが2である場合は、図13Aの回路WDICaを、配線DW[3](図示しない)乃至配線DW[K]に電気的に接続されている電流源CSを設けない構成にすればよい。
【0268】
次に、電流源CSの具体的な構成例について説明する。
【0269】
図14Aに示す電流源CS1は、図13Aの回路WDICaに含まれる電流源CSに適用できる回路であって、電流源CS1は、トランジスタTr1と、トランジスタTr2と、を有する。
【0270】
トランジスタTr1の第1端子は、配線VDDLに電気的に接続され、トランジスタTr1の第2端子は、トランジスタTr1のゲートと、トランジスタTr1のバックゲートと、トランジスタTr2の第1端子と、に電気的に接続されている。トランジスタTr2の第2端子は、端子T1に電気的に接続され、トランジスタTr2のゲートは、端子T2に電気的に接続されている。また、端子T2は、配線DWに電気的に接続されている。
【0271】
配線DWは、図13Aの配線DW[1]乃至配線DW[K]のいずれか一である。
【0272】
配線VDDLは、定電圧を与える配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、高レベル電位とすることができる。
【0273】
配線VDDLが与える定電圧を高レベル電位としたとき、トランジスタTr1の第1端子には高レベル電位が入力される。また、トランジスタTr1の第2端子の電位は、当該高レベル電位よりも低い電位とする。このとき、トランジスタTr1の第1端子はドレインとして機能し、トランジスタTr1の第2端子はソースとして機能する。また、トランジスタTr1のゲートと、トランジスタTr1の第2端子と、は、電気的に接続されているため、トランジスタTr1のゲート-ソース間電圧は0Vとなる。このため、トランジスタTr1のしきい値電圧が適切な範囲内である場合、トランジスタTr1の第1端子-第2端子間には、サブスレッショルド領域の電流範囲の電流(ドレイン電流)が流れる。
【0274】
トランジスタTr2は、スイッチング素子として機能する。ところで、トランジスタTr2の第1端子の電位がトランジスタTr2の第2端子の電位よりも高い場合、トランジスタTr2の第1端子はドレインとして機能し、トランジスタTr2の第2端子はソースとして機能する。また、トランジスタTr2のバックゲートと、トランジスタTr2の第2端子と、は、電気的に接続されているため、バックゲート-ソース間電圧は0Vとなる。このため、トランジスタTr2のしきい値電圧が適切な範囲内である場合、トランジスタTr2のゲートに高レベル電位が入力されることで、トランジスタTr2はオン状態となるものとし、トランジスタTr2のゲートに低レベル電位が入力されることで、トランジスタTr2はオフ状態となるものとする。具体的には、トランジスタTr2がオン状態のとき、上述したサブスレッショルド領域の電流範囲の電流がトランジスタTr1の第2端子から端子T1に流れ、トランジスタTr2がオフ状態のとき、当該電流はトランジスタTr1の第2端子から端子T1に流れないものとする。
【0275】
なお、図13Aの回路WDICaに含まれる電流源CSに適用できる回路は、図14Aの電流源CS1に限定されない。例えば、電流源CS1は、トランジスタTr2のバックゲートとトランジスタTr2の第2端子とが電気的に接続されている構成となっているが、トランジスタTr2のバックゲートは別の配線に電気的に接続されている構成としてもよい。このような構成例を図14Bに示す。図14Bに示す電流源CS2は、トランジスタTr2のバックゲートが配線VTHLに電気的に接続されている構成となっている。電流源CS2は、配線VTHLが外部回路などと電気的に接続されることで、当該外部回路などによって配線VTHLに所定の電位を与えて、トランジスタTr2のバックゲートに当該所定の電位を与えることができる。これにより、トランジスタTr2のしきい値電圧を変動させることができる。特に、トランジスタTr2のしきい値電圧を高くすることによって、トランジスタTr2のオフ電流を小さくすることができる。
【0276】
また、図14Aの電流源CS1は、トランジスタTr1のバックゲートとトランジスタTr1の第2端子とが電気的に接続されている構成となっているが、例えば、トランジスタTr2のバックゲートと第2端子との間は容量によって電圧を保持する構成としてもよい。このような構成例を図14Cに示す。図14Cに示す電流源CS3は、トランジスタTr1、及びトランジスタTr2に加えて、トランジスタTr3と、容量C6と、を有する。電流源CS3は、トランジスタTr1の第2端子とトランジスタTr1のバックゲートとが容量C6を介して電気的に接続されている点と、トランジスタTr1のバックゲートとトランジスタTr3の第1端子とが電気的に接続されている点で電流源CS1と異なる。また、電流源CS3は、トランジスタTr3の第2端子が配線VTLに電気的に接続され、トランジスタTr3のゲートが配線VWLに電気的に接続されている構成となっている。電流源CS3は、配線VWLに高レベル電位を与えて、トランジスタTr3をオン状態にすることによって、配線VTLとトランジスタTr1のバックゲートとの間を導通状態にすることができる。このとき、配線VTLからトランジスタTr1のバックゲートに所定の電位を入力することができる。そして、配線VWLに低レベル電位を与えて、トランジスタTr3をオフ状態にすることによって、容量C6により、トランジスタTr1の第2端子とトランジスタTr1のバックゲートとの間の電圧を保持することができる。つまり、配線VTLがトランジスタTr1のバックゲートに与える電圧を定めることによって、トランジスタTr1のしきい値電圧を変動させることができ、かつトランジスタTr3と容量C6とによって、トランジスタTr1のしきい値電圧を固定することができる。
【0277】
また、例えば、図13Aの回路WDICaに含まれる電流源CSに適用できる回路としては、図14Dに示す電流源CS4としてもよい。電流源CS4は、図14Cの電流源CS3において、トランジスタTr2のバックゲートをトランジスタTr2の第2端子でなく、配線VTHLに電気的に接続した構成となっている。つまり、電流源CS4は、図14Bの電流源CS2と同様に、配線VTHLが与える電位によって、トランジスタTr2のしきい値電圧を変動させることができる。
【0278】
電流源CS4において、トランジスタTr1の第1端子-第2端子間に大きな電流が流れる場合、端子T1から電流源CS4の外部に当該電流を流すために、トランジスタTr2のオン電流を大きくする必要がある。この場合、電流源CS4は、配線VTHLに高レベル電位を与えて、トランジスタTr2のしきい値電圧を低くして、トランジスタTr2のオン電流を高くすることによって、トランジスタTr1の第1端子-第2端子間に流れる大きな電流を、端子T1から電流源CS4の外部に流すことができる。
【0279】
図13Aの回路WDICaに含まれる電流源CSとして、図14A乃至図14Dに示した電流源CS1乃至電流源CS4を適用することによって、回路WDICaは、Kビットの第1データに応じた電流を出力することができる。また、当該電流の量は、例えば、トランジスタM2Aがサブスレッショルド領域で動作する範囲内における第1端子-第2端子間に流れる電流量とすることができる。
【0280】
また、図13Aの回路WDICaとしては、図13Bに示す回路WDICaを適用してもよい。図13Bの回路WDICaは、配線DW[1]乃至配線DW[K]のそれぞれに、図14Aの電流源CS1が1つずつ接続された構成となっている。また、トランジスタTr1[1]のチャネル幅をw[1]、トランジスタTr1[2]のチャネル幅をw[2]、トランジスタTr1[K]のチャネル幅をw[K]としたとき、それぞれのチャネル幅の比は、w[1]:w[2]:w[K]=1:2:2K-1となっている。サブスレッショルド領域で動作するトランジスタのソース-ドレイン間に流れる電流は、チャネル幅に比例するため、図13Bに示す回路WDICaは、図13Aの回路WDICaと同様に、Kビットの第1データに応じた電流を出力することができる。
【0281】
なお、トランジスタTr1(トランジスタTr1[1]乃至トランジスタTr2[K]を含む)、トランジスタTr2(トランジスタTr2[1]乃至トランジスタTr2[K]を含む)、及びトランジスタTr3は、例えば、トランジスタM1乃至トランジスタM10などに適用できるトランジスタを用いることができる。特に、トランジスタTr1(トランジスタTr1[1]乃至トランジスタTr1[K]を含む)、トランジスタTr2(トランジスタTr2[1]乃至トランジスタTr2[K]を含む)、及びトランジスタTr3としては、OSトランジスタを用いることが好ましい。
【0282】
図10に示した回路MCを用いることによって、第1データに応じた電流を回路MCに書き込むことができる。また、トランジスタM2と、トランジスタM2Aと、のそれぞれのサイズを概ね等しくすることによって、配線WDILからの第1データに応じた電流の量と概ね等しい電流量を、トランジスタM2の第1端子-第2端子間に流すことができる。これにより、回路MCによって、第1データと第2データとの積に応じた電流Iを配線OLに出力することができる。
【0283】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0284】
(実施の形態3)
本実施の形態では、撮像素子で撮像された画像データを第2データとして、上記実施の形態で説明した回路MCに入力する構成について説明する。
【0285】
<構成例1>
図15Aは、本実施の形態で説明する半導体装置に含まれる回路MCと、回路ISCと、の構成例を示す回路図である。図15Aの回路MCは、図1に示す回路MCの説明を参酌する。また、図15Aの回路ISCは、撮像素子を含む画素回路の一例であって、フォトダイオードPDと、回路PEと、を有する。また、回路PEは、トランジスタM6Aと、トランジスタM16と、を有する。
【0286】
トランジスタM6Aとしては、例えば、図1の回路MCに含まれているトランジスタM6に適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタM6Aのゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM6が動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。また、トランジスタM6Aのサイズとしては、トランジスタM6のサイズと等しいことが好ましい。特に、トランジスタM6と、トランジスタM6Aと、のサイズを概ね等しくすることによって、トランジスタM6と、トランジスタM6Aと、は、その電気的な接続によってカレントミラー回路として機能するため、トランジスタM6の第1端子-第2端子間に流れる電流量を、トランジスタM6Aの第1端子-第2端子間に流れる電流量とほぼ等しくすることができる。
【0287】
また、トランジスタM16としては、例えば、図1の回路MCに含まれているトランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4などに適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタM16のゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4などが動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。
【0288】
トランジスタM6Aの第1端子は、トランジスタM6Aのゲートと、トランジスタM16の第1端子と、に電気的に接続され、トランジスタM6Aの第2端子は、配線VGE3に電気的に接続されている。また、トランジスタM6Aの第1端子及びゲートは、配線XDLに電気的に接続されている。トランジスタM16の第2端子は、フォトダイオードPDの入力端子(アノード)に電気的に接続され、フォトダイオードPDの出力端子(カソード)は、配線VDE3に電気的に接続されている。また、トランジスタM16のゲートは、配線IMLに電気的に接続されている。
【0289】
配線VDE3は、一例として、定電圧を与える配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、高電源電圧とすることができる。
【0290】
配線VGE3は、一例として、定電圧を与える配線として機能する。当該定電圧としては、例えば、低電源電圧、接地電位などとすることができる。また、配線VGE3と、配線VGEと、のそれぞれが与える定電圧が等しい場合、配線VGE3は、配線VGEとして扱ってもよい。
【0291】
配線IMLは、一例として、トランジスタM6Aの第1端子-第2端子間に、フォトダイオードPDで生成された電流を流すための信号を送信する配線として機能する。具体的には、例えば、トランジスタM6Aの第1端子-第2端子間に、フォトダイオードPDで生成された電流を流すとき、配線IMLに高レベル電位を入力してトランジスタM16をオン状態にして、フォトダイオードPDの入力端子と、トランジスタM6Aの第1端子と、の間を導通状態にする。このとき、フォトダイオードPDに光が照射された時、フォトダイオードPDで生成された電流が、トランジスタM6Aの第1端子-第2端子間に流れる。
【0292】
なお、このとき、配線VDE3が与える定電圧としては、高電源電位などとする。このため、フォトダイオードPDに光が照射されると、フォトダイオードPDの出力端子から入力端子の方向に正の電流が流れる。このため、フォトダイオードPDに光が照射されると、配線VDE3から、フォトダイオードPDの出力端子を介して、入力端子に電流が流れる。
【0293】
また、図15Aにおいて、フォトダイオードPDの入力端子と出力端子とを入れ替えてもよい(図示しない)。この場合、例えば、フォトダイオードPDの入力端子(アノード)は、配線VDE3(高電源電位側)に電気的に接続され、フォトダイオードPDの出力端子(カソード)は、配線VGE3(低電源電位側)に電気的に接続される構成にすることにより、回路ISCを動作することができる場合がある。また、この場合、必要に応じて、回路ISCと、回路MCと、に含まれているトランジスタの一以上をnチャネル型トランジスタからpチャネル型トランジスタに変更してもよい。
【0294】
次に、回路ISCによって、回路MCに第2データに応じた電流が書き込まれるときの動作例を説明する。なお、本動作例において、配線VDE、及び配線VDE3が与える電位を高電源電位とし、配線VGE、及び配線VGE3が与える電位を接地電位(VGND)とする。
【0295】
初めに、配線IMLに高レベル電位が入力される。これにより、トランジスタM16のゲートには、当該高レベル電位が入力されるため、トランジスタM16はオン状態となる。
【0296】
このとき、トランジスタM6Aの第1端子とフォトダイオードPDの入力端子は、トランジスタM16を介して、導通状態となる。
【0297】
ここで、フォトダイオードPDに光が照射されることで、フォトダイオードPDによって第2データ(光の強度)に応じた電流量(以下、Iとする。)が生成される。フォトダイオードPDの入力端子からトランジスタM16を介して、トランジスタM6Aの第1端子に電流量Iの電流が流れることで、トランジスタM6Aの第1端子、及びゲートの電位は、当該電流に応じた電位(以下、Vとする。)となる。このとき、容量C1の第1端子には、電圧Vが書き込まれる。また、トランジスタM6Aの第1端子-第2端子間には電流量Iの電流が流れる。
【0298】
このとき、トランジスタM6のゲート-第2端子間の電圧はV-VGNDとなり、トランジスタM6Aのゲート-第2端子間の電圧はV-VGNDとなる。つまり、トランジスタM6のゲート-第2端子間の電圧は、トランジスタM6Aのゲート-第2端子間の電圧と概ね等しくなる。
【0299】
また、トランジスタM6のゲート-第2端子間の電圧V-VGNDは、トランジスタM2Aのゲート-第2端子間の電圧と概ね等しいため、このとき、トランジスタM6のサイズがトランジスタM6Aのサイズと等しい場合、トランジスタM6の第1端子-第2端子間に流れる電流は、トランジスタM6Aの第1端子-第2端子間に流れる電流量Iと概ね等しい量となる。
【0300】
上記の動作によって、回路MCに第2データに応じた電流として電流量Iを入力することができる。
【0301】
<構成例2>
また、図15Aの回路ISC、及び回路MCは、配線IMLに高レベル電位が入力されている期間(トランジスタM16がオン状態になっている期間)にのみ、トランジスタM6の第1端子-第2端子にIの電流が流れる構成となっているが、例えば、回路MCにトランジスタM6のゲート-第2端子間の電圧を保持する容量を設け、かつトランジスタM6のゲートをフローティング状態にするためのトランジスタを設けて、トランジスタM6のゲートの電位(V)を保持する構成としてもよい。
【0302】
この場合の回路ISC、及び回路MCの構成を図15Bに示す。図15Bの回路ISC、及び回路MCは、図15Aの回路ISC、及び回路MCの変更例であって、回路MCは、トランジスタM6Aと、トランジスタM17と、容量C3と、を有する。また、図15Bの回路ISCは、図15Aの回路ISCと異なり、トランジスタM6Aを有さない。
【0303】
トランジスタM17としては、例えば、図1の回路MCに含まれているトランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4などに適用できるトランジスタを用いることができる。また、トランジスタM17のゲート、ソース、及びドレインには、トランジスタM1、トランジスタM3、トランジスタM4などが動作する範囲と同様の電圧が適切に入力されているものとする。
【0304】
容量C3としては、例えば、本明細書等で説明する、容量C1、容量CGなどに適用することができる容量を用いることができる。
【0305】
トランジスタM17の第1端子はトランジスタM6Aの第1端子に電気的に接続され、トランジスタM17の第2端子は、トランジスタM6Aのゲートと、トランジスタM6のゲートと、に電気的に接続され、トランジスタM17のゲートは、配線XWLに電気的に接続されている。また、容量C3の第1端子は、トランジスタM6Aのゲートと、トランジスタM6のゲートと、に電気的に接続され、容量C3の第2端子は、配線VGEに電気的に接続されている。
【0306】
配線XWLは、一例として、トランジスタM17のオン状態とオフ状態との切り替えを制御する配線として機能する。具体的には、例えば、配線XWLは、第2データに応じた電流が書き込まれる回路MCを選択するための選択信号線として機能する。
【0307】
具体的な動作例としては、トランジスタM16がオン状態で、フォトダイオードPDで電流が生成されているとき、配線XWLに高レベル電位を入力してトランジスタM17をオン状態にして、容量C3の第1端子にVを書き込む。容量C3の第1端子にVを書き込んだ後、配線XWLに低レベル電位を入力してトランジスタM17をオフ状態にすることで、容量C3の第1端子にVを保持することができる。これにより、配線IMLに低レベル電位を入力してトランジスタM16をオフ状態にしても、トランジスタM6のゲート-第2端子間の電圧が容量C3によって保持されるため、トランジスタM6の第1端子-第2端子間に電流を流すことができる。
【0308】
<構成例3>
また、図15Aの回路MC、及び回路ISCに含まれているトランジスタM6、及びトランジスタM6Aとして、図4の回路MCと同様に、マルチゲート構造のトランジスタを適用してもよい。図16に示す回路MC、及び回路ISCは、図15Aの回路MCに含まれているトランジスタM6、及びトランジスタM6Aを、マルチゲート構造のトランジスタに置き換えた構成例を示している。図16のとおり、トランジスタM6、及びトランジスタM6Aをマルチゲート構造のトランジスタに置き換えることによって、各トランジスタにおいて、オン状態のときに起こるドレイン誘起障壁低下の対策、及び/又はオフ状態でのトランジスタのリーク電流の低減を図ることができる。
【0309】
なお、図16では、例えば、トランジスタM6は、トランジスタM6aと、トランジスタM6bと、を有し、トランジスタM6Aは、トランジスタM6Aaと、トランジスタM6Abと、を有する。また、トランジスタM6a、及びトランジスタM6bのそれぞれのゲートは、図15AにおけるトランジスタM6のゲートに相当し、トランジスタM6aの第1端子は、図15AにおけるトランジスタM6の第1端子に相当する。トランジスタM6aの第2端子は、トランジスタM6bの第1端子に電気的に接続されている。また、トランジスタM6bの第2端子は、図15AにおけるトランジスタM6の第2端子に相当する。また、トランジスタM6Aa、及びトランジスタM6Abのそれぞれのゲートは、図15AにおけるトランジスタM6Aのゲートに相当し、トランジスタM6Aaの第1端子は、図15AにおけるトランジスタM6Aの第1端子に相当する。トランジスタM6Aaの第2端子は、トランジスタM6Abの第1端子に電気的に接続されている。また、トランジスタM6bの第2端子は、図15AにおけるトランジスタM6の第2端子に相当する。
【0310】
なお、図16では、トランジスタM6、トランジスタM6Aのそれぞれをマルチゲート構造のトランジスタとして図示しているが、本発明の一態様の半導体装置に係るトランジスタM1乃至トランジスタM10、トランジスタM6A、トランジスタM16は、少なくとも一がマルチゲート構造のトランジスタであってもよい。また、図15Bの場合、トランジスタM1乃至トランジスタM10、トランジスタM6A、トランジスタM16、トランジスタM17は、少なくとも一がマルチゲート構造のトランジスタであってもよい。
【0311】
<半導体装置の構成例1>
次に、図15A図16などの回路MC、及び回路ISCを適用することができる半導体装置について説明する。
【0312】
図17は、図15A図16などの回路MC、及び回路ISCを含む半導体装置の構成例を示している。図17に示す半導体装置SDV4は、一例として、回路PDAと、回路PEAと、セルアレイCAと、を有する。
【0313】
図17の半導体装置SDV4において、回路PEAは、一例として、セルアレイCAの上方に位置している。また、回路PDAは、一例として、回路PEAの上方に位置している。なお、回路PEAに含まれているトランジスタが、セルアレイCAに含まれているトランジスタと同様の構造となっている場合、回路PEAとセルアレイCAとは、同じ層内として、同一の工程によって同時に作製することができる(図示しない)。
【0314】
回路PDAは、フォトダイオードPD[1]乃至フォトダイオードPD[m](ここでのmは1以上の整数である)を有する。また、回路PDAにおいて、フォトダイオードPD[1]乃至フォトダイオードPD[m]は、m/h行h列(hは1以上の整数であり、かつmの約数である)のマトリクス状に配置されている。フォトダイオードPD[1]乃至フォトダイオードPD[m]のいずれか一は、図15A図16に示した回路ISCに含まれているフォトダイオードPDに相当する。
【0315】
回路PEAは、回路PE[1]乃至回路PE[m]を有する。また、回路PEAにおいて、回路PE[1]乃至回路PE[m]は、回路PDAと同様に、m/h行h列のマトリクス状に配置されている。また、回路PE[1]乃至回路PE[m]のいずれか一は、図15A図16に示した回路ISCに含まれている回路PEに相当する。
【0316】
セルアレイCAは、回路MC[1]乃至回路MC[m]を有する。また、セルアレイCAにおいて、回路MC[1]乃至回路MC[m]は、m行1列のマトリクス状に配置されている。また、回路MC[1]乃至回路MC[m]のいずれか一は、図15A図16に示した回路MCに相当する。
【0317】
なお、図17には図示していないが、セルアレイCAの周辺には、図6Aの半導体装置SDV1、図6Bの半導体装置SDV2、又は図12の半導体装置SDV3と同様に、回路WDC、回路BDC、回路WWC、回路ACTVなどが設けられていてもよい。
【0318】
図17において、フォトダイオードPD[1]は、回路PE[1]及び配線XDL[1]を介して、回路MC[1]に電気的に接続されている。また、フォトダイオードPD[h]は、回路PE[h]及び配線XDL[h]を介して、回路MC[h]に電気的に接続されている。フォトダイオードPD[m-h+1]は、回路PE[m-h+1]及び配線XDL[m-h+1]を介して、回路MC[m-h+1]に電気的に接続されている。また、フォトダイオードPD[m]は、回路PE[m]及び配線XDL[m]を介して、回路MC[m]に電気的に接続されている。
【0319】
図17に示す半導体装置SDV4を構成することにより、回路PDAに含まれるフォトダイオードPD[1]乃至フォトダイオードPD[m]によって、複数の第2データとして、画像データを撮像することができる。また、セルアレイCAの回路MC[1]乃至回路MC[m]にあらかじめ複数の第1データを書き込んでおき、その後、複数の第2データのそれぞれを回路MC[1]乃至回路MC[m]に送信することによって、第1データと第2データの積和演算を実行することができる。また、当該積和演算の結果を用いて関数の演算を行ってもよい。
【0320】
特に、回路MC[1]乃至回路MC[m]のそれぞれに書き込まれる複数の第1データを、画像処理などに用いられるフィルタ値とすることにより、上記の積和演算は、フォトダイオードPD[1]乃至フォトダイオードPD[m]によって撮像された画像データに対する畳み込み処理とみなすことができる。また、畳み込み処理を行う場合、上述した関数の演算としては、例えば、ReLU関数などを用いることができる。
【0321】
上記の内容を換言すると、図17の半導体装置SDV4のセルアレイCAで、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の第1層の演算を行うことができる。また、半導体装置SDV4を、図9Dなどの積層構造として、構造体SILにデジタル演算回路を設けた構成とすることによって、畳み込みニューラルネットワークの第2層目以降の演算は、例えば、当該デジタル演算回路などを用いて行うことができる。
【0322】
また、図17の半導体装置SDV4は、m/h行h列のマトリクス状にフォトダイオードPDが配置された回路PDAによって画像データを取得する構成となっているが、本発明の一態様は、これに限定されない。例えば、本発明の一態様は、図18に示すとおり、複数の半導体装置SDV4を、回路PDAが上面となるようにマトリクス状に設けられた構成としてもよい。図18に示す半導体装置では、上部に撮像領域IMAが設けられており、撮像領域IMAは、複数の回路PDAを有する。換言すると、撮像領域IMAに含まれる複数のフォトダイオードPDは、複数の回路PDAによって分割されている。図18のとおり、撮像領域IMAに含まれる複数のフォトダイオードPDを複数の回路PDAに分割することによって、撮像領域IMA全体で取得された画像データは、複数の回路PDAによって分割されて取得される。分割されたそれぞれの画像データが各々の半導体装置SDV4によって、第1データ(重み係数、フィルタ値など)と分割された画像データとの積和演算を行うことができる。このように、本発明の一態様は、図18の半導体装置のように、撮像領域を複数の領域に分割して、それぞれの領域で取得した画像データを用いて積和演算を行う構成としてもよい。
【0323】
<半導体装置の構成例2>
次に、図15Bなどの回路MC、及び回路ISCを適用することができる半導体装置について説明する。
【0324】
図19に示す半導体装置SDV5は、図15Bの回路MC、及び回路ISCを適用した回路構成例である。なお、図19の半導体装置SDV5は、セルアレイCAにおいて回路MCを複数列設けることができる点と、回路XWCを有する点と、で図17の半導体装置SDV4と異なっている。
【0325】
また、図20には、図19の半導体装置SDV5のセルアレイCAの周辺回路を含めた回路構成の一例を示している。つまり、図19の半導体装置SDV5のセルアレイCAは、回路XWCに加え、回路WDCと、回路WWCと、回路BDCと、回路ACTVと、を有するものとする。なお、回路WDCと、回路WWCと、回路BDCと、回路ACTVと、については、図6Aの半導体装置SDV1の回路構成の説明を参酌する。
【0326】
なお、回路PDA、及び回路PEAは、図19のとおり、セルアレイCAの上方に位置するよう設けられているが、図20では、回路PDA、及び回路PEAは便宜的にセルアレイCAの同一平面上に図示している。
【0327】
セルアレイCAに含まれる複数の回路MCとしては、例えば、図19に示すとおり、m行n列(ここでのnは1以上の整数とする)のマトリクス状に配置された回路MC[1,1]乃至回路MC[m,n]とすることができる。また、セルアレイCAのj列目(ここでのjは1以上n以下の整数とする)に位置する回路MC[1,j]乃至回路MC[m,j]は、配線XWL[j]に電気的に接続されている。具体的には、例えば、セルアレイCAの1列目に位置する回路MC[1,1]乃至回路MC[m,1]は、配線XWL[1]に電気的に接続され、また、例えば、セルアレイCAのn列目に位置する回路MC[1,n]乃至回路MC[m,n]は、配線XWL[n]に電気的に接続されている。
【0328】
また、配線XWL[1]乃至配線XWL[n]は、回路XWCに電気的に接続されている。回路XWCは、一例として、配線XWL[1]乃至配線XWL[m]のそれぞれに、セルアレイCAが有する回路MCに第2データを書き込む際に、第2データの書き込み先となる回路MCを選択する機能を有する。具体的には、例えば、セルアレイCAのj列目に位置する回路MC[1,j]乃至回路MC[m,j]に第2データを書き込むとき、回路WWCは、配線XWL[j]に高レベル電位を与え、また、配線XWL[j]以外の配線XWL[1]乃至配線XWL[m]に低レベル電位を与えることで、第2データの書き込み先として、回路MC[1,j]乃至回路MC[m,j]を選択することができる。
【0329】
上述したとおり、図15Bに示す回路MC、及び回路ISCは、第2データとして入力される電流に応じた電圧(V)を保持することができる点で、図15Aに示す回路MC、及び回路ISCと異なっている。そのため、フォトダイオードPD[1]乃至フォトダイオードPD[m]のそれぞれに光が照射されて、フォトダイオードPD[1]乃至フォトダイオードPD[m]のそれぞれで電流が生成されたとき、トランジスタM16をオン状態にし、かつ回路XWCによってセルアレイCAの列毎に回路MCを選択することによって、各列の複数の回路MCに第2データとして入力される電流に応じた電圧を書き込むことができる。上述した動作によって、セルアレイCAの各列の複数の回路MCは、それぞれ同一の第2データが書き込まれる。
【0330】
また、半導体装置SDV5において、半導体装置SDV4と同様に画像処理を行う場合を考える。半導体装置SDV5のセルアレイCAは回路MCがn列に配置されているため、半導体装置SDV5のセルアレイCAの各列には、n個のフィルタを割り当てることができる。また、1個のフィルタは、m個のフィルタ値を有するものとする。そのため、セルアレイCAのある一列に配置されているm個の回路MCのそれぞれにm個のフィルタ値を第1データとして保持することができる。
【0331】
上述したとおりに、n個のフィルタに含まれるフィルタ値をセルアレイCAの回路MCに保持することによって、フィルタに含まれているフィルタ値(第1データ)と、画像データ(第2データ)との積を、それぞれのフィルタ毎に演算することができる。例えば、セルアレイCAの1列目に配置されている回路MC[1,1]乃至回路MC[m,1]には、第1フィルタに含まれているm個のフィルタ値が保持され、セルアレイCAのn列目に配置されている回路MC[1,n]乃至回路MC[m,n]には、第nフィルタに含まれているm個のフィルタ値が保持されているとき、半導体装置SDV5は、セルアレイCAの1列目では、第1フィルタに含まれているm個のフィルタ値と画像データとの積和演算が行われて、その演算結果に応じた電流が回路ADR[1]に入力される。また、セルアレイCAのn列目では、第nフィルタに含まれているm個のフィルタ値と画像データとの積和演算が行われて、その演算結果に応じた電流が回路ADR[n]に入力される。これにより、セルアレイCAに入力された画像データに対して、複数のフィルタによる畳み込み処理が行われて、それらの結果が、回路ACTVから配線ZL[1]乃至配線ZL[n]に出力される。
【0332】
上記のとおり、図15A図15B図16などに示した回路MC、及び回路ISCを用いて、図17の半導体装置SDV4、図19の半導体装置SDV5などを構成することにより、フォトダイオードPDで取得した画像データを第2データとして、第1データ(重み係数、フィルタ値など)との積和演算を行うことができる。
【0333】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0334】
(実施の形態4)
本実施の形態では、階層型のニューラルネットワークについて説明する。なお、階層型のニューラルネットワークの演算は、上記の実施の形態で説明した半導体装置を用いることによって行うことができる。
【0335】
<階層型のニューラルネットワーク>
階層型のニューラルネットワークは、一例としては、一の入力層と、一又は複数の中間層(隠れ層)と、一の出力層と、を有し、合計3以上の層によって構成されている。図21Aに示す階層型のニューラルネットワーク100はその一例を示しており、ニューラルネットワーク100は、第1層乃至第R層(ここでのRは4以上の整数とすることができる。)を有している。特に、第1層は入力層に相当し、第R層は出力層に相当し、それら以外の層は中間層に相当する。なお、図21Aには、中間層として第(k-1)層、第k層(ここでのkは3以上R-1以下の整数とする。)を図示しており、それ以外の中間層については図示を省略している。
【0336】
ニューラルネットワーク100の各層は、一又は複数のニューロンを有する。図21Aにおいて、第1層はニューロンN (1)乃至ニューロンN (1)(ここでのpは1以上の整数である。)を有し、第(k-1)層はニューロンN (k-1)乃至ニューロンN (k-1)(ここでのmは1以上の整数である。)を有し、第k層はニューロンN (k)乃至ニューロンN (k)(ここでのnは1以上の整数である。)を有し、第R層はニューロンN (R)乃至ニューロンN (R)(ここでのqは1以上の整数である。)を有する。
【0337】
なお、図21Aには、ニューロンN (1)、ニューロンN (1)、ニューロンN (k-1)、ニューロンN (k-1)、ニューロンN (k)、ニューロンN (k)、ニューロンN (R)、ニューロンN (R)に加えて、第(k-1)層のニューロンN (k-1)(ここでのiは1以上m以下の整数である。)、第k層のニューロンN (k)(ここでのjは1以上n以下の整数である。)を抜粋して図示している。
【0338】
次に、前層のニューロンから次層のニューロンへの信号の伝達、及びそれぞれのニューロンにおいて入出力される信号について説明する。なお、本説明では、第k層のニューロンN (k)に着目する。
【0339】
図21Bには、第k層のニューロンN (k)と、ニューロンN (k)に入力される信号と、ニューロンN (k)から出力される信号と、を示している。
【0340】
具体的には、第(k-1)層のニューロンN (k-1)乃至ニューロンN (k-1)のそれぞれの出力信号であるz (k-1)乃至z (k-1)が、ニューロンN (k)に向けて出力されている。そして、ニューロンN (k)は、z (k-1)乃至z (k-1)に応じてz (k)を生成して、z (k)を出力信号として第(k+1)層(図示しない。)の各ニューロンに向けて出力する。
【0341】
前層のニューロンから次層のニューロンに入力される信号は、それらのニューロン同士を接続するシナプスの結合強度(以後、重み係数と呼称する。)によって、信号の伝達の度合いが定まる。ニューラルネットワーク100では、前層のニューロンから出力された信号は、対応する重み係数を乗じられて、次層のニューロンに入力される。iを1以上m以下の整数として、第(k-1)層のニューロンN (k-1)と第k層のニューロンN (k)との間のシナプスの重み係数をw (k-1) (k)としたとき、第k層のニューロンN (k)に入力される信号は、式(4.1)で表すことができる。
【0342】
【数8】
【0343】
つまり、第(k-1)層のニューロンN (k-1)乃至ニューロンN (k-1)のそれぞれから第k層のニューロンN (k)に信号が伝達するとき、当該信号であるz (k-1)乃至z (k-1)には、それぞれの信号に対応する重み係数(w (k-1) (k)乃至w (k-1) (k))が乗じられる。そして、第k層のニューロンN (k)には、w (k-1) (k)・z (k-1)乃至w (k-1) (k)・z (k-1)が入力される。このとき、第k層のニューロンN (k)に入力される信号の総和u (k)は、式(4.2)となる。
【0344】
【数9】
【0345】
また、重み係数w (k-1) (k)乃至w (k-1) (k)と、ニューロンの信号z (k-1)乃至z (k-1)と、の積和の結果には、偏りとしてバイアスを与えてもよい。バイアスをbとしたとき、式(4.2)は、次の式に書き直すことができる。
【0346】
【数10】
【0347】
ニューロンN (k)は、u (k)に応じて、出力信号z (k)を生成する。ここで、ニューロンN (k)からの出力信号z (k)を次の式で定義する。
【0348】
【数11】
【0349】
関数f(u (k))は、階層型のニューラルネットワークにおける活性化関数であり、シグモイド関数、tanh関数、ソフトマックス関数、ReLU関数(ランプ関数)、しきい値関数などを用いることができる。なお、活性化関数は、全てのニューロンにおいて同一の関数を適用することができ、又は異なる関数を適用することができる。加えて、ニューロンの活性化関数は、層毎において、同一の関数を適用することができ、又は異なる関数を適用することができる。
【0350】
ところで、各層のニューロンが出力する信号、重み係数w、または、バイアスbは、アナログ値とすることができ、又はデジタル値とすることができる。デジタル値としては、例えば、2値、又は3値以上のビット数の値とすることができる。さらに大きなビット数の値でもよい。一例として、アナログ値の場合、活性化関数として、例えば、線形ランプ関数、シグモイド関数などを用いればよい。デジタル値の2値の場合、例えば、出力を-1若しくは1、又は、0若しくは1、とするステップ関数を用いればよい。また、各層のニューロンが出力する信号は3値以上することができ、この場合、活性化関数は3値、例えば出力は-1、0、若しくは1とするステップ関数、又は、0、1、若しくは2とするステップ関数などを用いればよい。また、例えば、5値を出力する活性化関数として、-2、-1、0、1、若しくは2とするステップ関数などを用いてもよい。各層のニューロンが出力する信号、重み係数w、または、バイアスbについて、少なくとも一つについて、デジタル値を用いることにより、回路規模を小さくすること、消費電力を低減すること、または、演算スピードを速くすること、などができる。また、各層のニューロンが出力する信号、重み係数w、または、バイアスbについて、少なくとも一つについて、アナログ値を用いることにより、演算の精度を向上させることができる。
【0351】
ニューラルネットワーク100は、第1層(入力層)に入力信号が入力されることによって、第1層(入力層)から最後の層(出力層)までの各層において順次に、前層から入力された信号を基に、式(4.1)、式(4.2)(又は式(4.3))、式(4.4)を用いて出力信号を生成して、当該出力信号を次層に出力する動作を行う。最後の層(出力層)から出力された信号が、ニューラルネットワーク100によって計算された結果に相当する。
【0352】
実施の形態1で述べた半導体装置SDV1を、上述した隠れ層として適用する場合、重み係数ws[k-1] (k-1) s[k] (k)(s[k-1]は1以上m以下の整数とし、s[k]は1以上n以下の整数とする)を第1データとして、第1データに応じた電圧を回路MCの容量C1の第1端子に保持させて、第(k-1)層のニューロンNs[k-1] (k-1)からの出力信号zs[k-1] (k-1)を第2データとして、第2データに応じた電流量を回路XDCから配線XDLに対して流すことで、回路ADRに流れる電流量Iから第1データと第2データとの積和を求めることができる。加えて、回路ADRの回路ACFにより当該積和の値を用いて活性化関数の値を求めることによって、活性化関数の値を信号として第k層のニューロンNs[k] (k)の出力信号zs[k] (k)とすることができる。
【0353】
また、実施の形態1で述べた半導体装置SDV1を、上述した出力層として適用する場合、重み係数ws[R-1] (R-1) s[R] (R)(s[R-1]は1以上の整数とし、s[R]は1以上q以下の整数とする)を第1データとして、第1データに応じた電圧を回路MCの容量C1の第1端子に保持させて、第(R-1)層のニューロンNs[R-1] (R-1)からの出力信号zs[R-1] (R-1)を第2データとして、第2データに応じた電流量を回路XDCから配線XDLに対して流すことで、回路ADRに流れる電流量Iから第1データと第2データとの積和を求めることができる。加えて、回路ADRの回路ACFにより当該積和の値を用いて活性化関数の値を求めることによって、活性化関数の値を信号として第R層のニューロンNs[R] (R)の出力信号zs[R] (R)とすることができる。
【0354】
なお、本実施の形態で述べた入力層は、入力信号を第2層に出力するバッファ回路として機能してもよい。
【0355】
また、実施の形態1で述べた、半導体装置SDV1を上述した隠れ層として適用する場合、重み係数ws[k-1] (k-1) s[k] (k)を第1データとして、第1データに応じた電圧を回路MC[1,1]乃至回路MC[m,n]に記憶させて、第(k-1)層のニューロンNs[k-1] (k-1)からの出力信号zs[k-1] (k-1)を第2データとして、第2データに応じた電圧を回路XDCから配線XDL[1]乃至配線XDL[m]に対して入力することで、回路ADRに入力される電流量I[j]から第1データと第2データとの積和に応じた活性化関数の値を算出することができる。つまり、当該値を信号として第k層のニューロンNs[k] (k)の出力信号zs[k] (k)とすることができる。また、例えば、回路ADRは、当該値に応じた電圧を出力する構成としたとき、第(k+1)層の複数のニューロンに入力される、第k層のニューロンNs[k] (k)の出力信号zs[k] (k)は、当該電圧とすることができる。つまり、第(k+1)層の隠れ層として半導体装置SDV1を適用する場合、半導体装置SDV1の配線XDL[1]乃至配線XDL[m]に入力される第k層のニューロンNs[k] (k)の出力信号zs[k] (k)は、回路XDCで生成せず、第k層の隠れ層の半導体装置SDV1の回路ADRから出力された当該電圧とすることができる。
【0356】
具体的には、図22に示す半導体装置を用いることによって、上述した階層型のニューラルネットワークの演算を行うことができる。図22の半導体装置は、一例として、図6Aの半導体装置SDV1と同様の構成の半導体装置SDV1-1と、図6Aの半導体装置SDV1において回路XDCを設けていない構成の半導体装置SDV1-2と、を有する。なお、半導体装置SDV1-1のセルアレイCAは、回路MC[1,1]乃至回路MC[m,n]を有する。また、半導体装置SDV1-2のセルアレイCAは、回路MC[1,1]乃至回路MC[n,t]を有する(tは1以上の整数とする。)。また、半導体装置SDV1-1の配線ZL[1]乃至配線ZL[n]のそれぞれは、半導体装置SDV1-2の配線XDL[1]乃至配線XDL[n]に電気的に接続されている。
【0357】
例えば、図22の半導体装置SDV1-1で、第(k-1)層のニューロンと第k層のニューロンとの間の重み係数を第1データとして、回路MC[1,1]乃至回路MC[m,n]に保持し、第(k-1)層のニューロンNs[k-1] (k-1)からの出力信号zs[k-1] (k-1)を第2データとして、第2データに応じた電圧を回路XDCから配線XDL[1]乃至配線XDL[m]に入力することで、配線ZL[1]乃至配線ZL[n]のそれぞれから第k層のニューロンN (k)乃至ニューロンN (k)の出力信号z (k)乃至z (k)を出力することができる。なお、出力信号z (k)乃至z (k)のそれぞれの値は、回路ADRから出力される電圧として表すことができる。
【0358】
ここで、図22の半導体装置SDV1-2で、第k層のニューロンと第(k+1)層のニューロンとの間の重み係数を第1データとして、回路MC[1,1]乃至回路MC[n,t]に保持し、配線XDL[1]乃至配線XDL[n]に入力される電圧、すなわち第k層のニューロンN (k)乃至ニューロンN (k)の出力信号z (k)乃至z (k)を第2データとすることで、配線ZL[s[k+1]](ここでのs[k+1]は1以上t以下の整数とする)から第(k+1)層のニューロンNs[k+1] (k+1)の出力信号zs[k+1] (k+1)を出力することができる。
【0359】
上述した通り、階層型のニューラルネットワークの演算を、図22に示す演算回路を構成することにより、半導体装置SDV1-1で出力したニューロンの出力信号の値(電圧)をそのまま半導体装置SDV1-2に入力することができるため、階層型のニューラルネットワークの演算を、一例として、第1層から連続して行うことができる。また、半導体装置SDV1-1の配線ZL[1]乃至配線ZL[n]から出力された出力信号を、外部回路等によって一時的に記憶する必要が無いため、一時記憶に必要な記憶装置を別途設けなくてもよい。つまり、図22の半導体装置を構成することによって、回路面積を低減することができ、また、一時記憶のためのデータ送信に必要な電力を低減することができる。
【0360】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0361】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置の構成例、及び上記の実施の形態で説明した半導体装置に適用できるトランジスタの構成例について説明する。
【0362】
<半導体装置の構成例>
図23は、一例として、上記実施の形態で説明した半導体装置であって、当該半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500と、容量素子600と、を有する。また、図24Aにはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図、図24Bにはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図を示しており、図24Cにはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図を示している。
【0363】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、オフ電流が小さく、また、高温でも電界効果移動度が変化しにくい特性を有する。トランジスタ500を、半導体装置、例えば、上記実施の形態で説明した半導体装置SDV1、半導体装置SDV2、半導体装置SDV3、半導体装置SDV4、半導体装置SDV5などに含まれるトランジスタに適用することにより、高温でも動作能力が低下しにくい半導体装置を実現できる。特に、オフ電流が小さい特性を利用して、トランジスタ500を、例えば、トランジスタM3に適用することにより、回路MCの容量C1の第1端子に書き込んだ電位を長時間保持することができる。
【0364】
トランジスタ500は、例えば、トランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600は、例えば、トランジスタ300、及びトランジスタ500の上方に設けられている。なお、容量素子600は、上記実施の形態で説明した半導体装置SDV1、半導体装置SDV2、半導体装置SDV3、半導体装置SDV4、半導体装置SDV5などに含まれる容量などとすることができる。なお、回路構成によっては、図23に示す容量素子600は必ずしも設けなくてもよい。
【0365】
トランジスタ300は、基板310上に設けられ、素子分離層312、導電体316、絶縁体315、基板310の一部からなる半導体領域313、ソース領域又はドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bを有する。なお、トランジスタ300は、例えば、上記実施の形態で説明した半導体装置SDV1、半導体装置SDV2、半導体装置SDV3、半導体装置SDV4、半導体装置SDV5などに含まれるトランジスタなどに適用することができる。具体的には、例えば、図8A、及び図8Bに示した回路ACFが有するインバータ回路、NAND回路などに含まれているトランジスタとすることができる。なお、図23では、トランジスタ300のゲートが、容量素子600の一対の電極を介して、トランジスタ500のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている構成を示しているが、半導体装置SDV1、半導体装置SDV2、半導体装置SDV3、半導体装置SDV4、半導体装置SDV5などの構成によっては、トランジスタ300のソース又はドレインの一方が、容量素子600の一対の電極を介して、トランジスタ500のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている構成とすることができ、また、トランジスタ300のソース又はドレインの一方が、容量素子600の一対の電極を介して、トランジスタ500のゲートに電気的に接続されている構成とすることができ、また、トランジスタ300の各端子は、トランジスタ500の各端子、容量素子600の各端子のそれぞれに電気的に接続されない構成とすることができる。
【0366】
また、基板310としては、半導体基板(例えば単結晶基板又はシリコン基板)を用いることが好ましい。
【0367】
トランジスタ300は、図24Cに示すように、半導体領域313の上面及びチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0368】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0369】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、又はドレイン領域となる低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。又は、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)、GaN(窒化ガリウム)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。又はGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0370】
低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、又はホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0371】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0372】
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタン、窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステン、アルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0373】
素子分離層312は、基板310上に形成されている複数のトランジスタ同士を分離するために設けられている。素子分離層は、例えば、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法、STI(Shallow Trench Isolation)法、メサ分離法などを用いて形成することができる。
【0374】
なお、図23に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成、駆動方法などに応じて適切なトランジスタを用いればよい。例えば、トランジスタ300は、図24Cに示すFIN型ではなく、プレーナ型の構造としてもよい。また、例えば、半導体装置をOSトランジスタのみの単極性回路とする場合、図25に示すとおり、トランジスタ300の構成を、酸化物半導体を用いているトランジスタ500と同様の構成にすればよい。なお、トランジスタ500の詳細については後述する。なお、本明細書等において、単極性回路とは、nチャネル型トランジスタ又はpチャネル型トランジスタの一方のみの極性のトランジスタを含む回路のことをいう。
【0375】
なお、図25において、トランジスタ300は、基板310A上に設けられているが、この場合、基板310Aとしては、図23の半導体装置の基板310と同様に半導体基板を用いてもよい。また、基板310Aとしては、例えば、SOI基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、サファイアガラス基板、金属基板、ステンレス・スチル基板、ステンレス・スチル・ホイルを有する基板、タングステン基板、タングステン・ホイルを有する基板、可撓性基板、貼り合わせフィルム、繊維状の材料を含む紙、又は基材フィルムなどを用いることができる。ガラス基板の一例としては、バリウムホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、又はソーダライムガラスなどがある。可撓性基板、貼り合わせフィルム、基材フィルムなどの一例としては、以下のものがあげられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)に代表されるプラスチックがある。または、一例としては、アクリル等の合成樹脂などがある。または、一例としては、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフッ化ビニル、又はポリ塩化ビニルなどがある。または、一例としては、ポリアミド、ポリイミド、アラミド、エポキシ樹脂、無機蒸着フィルム、又は紙類などがある。
【0376】
図23に示すトランジスタ300には、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、絶縁体326が、基板310側から順に積層して設けられている。
【0377】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0378】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書中において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0379】
絶縁体322は、絶縁体320及び絶縁体322に覆われているトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0380】
また、絶縁体324には、基板310、又はトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素、不純物などが拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0381】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0382】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm以下、好ましくは5×1015atoms/cm以下であればよい。
【0383】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0384】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326には容量素子600、又はトランジスタ500と接続する導電体328、及び導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、及び導電体330は、プラグ又は配線としての機能を有する。また、プラグ又は配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、及び導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0385】
各プラグ、及び配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステン、モリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。又は、アルミニウム、銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0386】
絶縁体326、及び導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、図23において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が、絶縁体326、及び導電体330の上方に、順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0387】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素、水などの不純物に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、絶縁体352、及び絶縁体354としては、絶縁体326と同様に、配線間に生じる寄生容量を低減するために、比誘電率が比較的低い絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素、水などの不純物に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0388】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0389】
また、絶縁体354、及び導電体356上には、絶縁体360と、絶縁体362と、絶縁体364が順に積層されている。
【0390】
絶縁体360は、絶縁体324などと同様に、水、水素などの不純物に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。そのため、絶縁体360としては、例えば、絶縁体324などに適用できる材料を用いることができる。
【0391】
絶縁体362、及び絶縁体364は、層間絶縁膜、及び平坦化膜としての機能を有する。また、絶縁体362、及び絶縁体364は、絶縁体324と同様に、水、水素などの不純物に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。このため、絶縁体362、及び/又は絶縁体364としては、絶縁体324に適用できる材料を用いることができる。
【0392】
また、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364のそれぞれの、一部の導電体356と重畳する領域に開口部が形成されて、当該開口部を埋めるように導電体366が設けられている。また、導電体366は、絶縁体362上にも形成されている。導電体366は、一例として、トランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。なお、導電体366は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0393】
絶縁体364、及び導電体366上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516のいずれかは、酸素、水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0394】
例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、例えば、基板310、又はトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500が設けられている領域に、水素、不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0395】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0396】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0397】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0398】
また、例えば、絶縁体512、及び絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、及び絶縁体516として、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0399】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516には、導電体518、及びトランジスタ500を構成する導電体(例えば、図24A、及び図24Bに示す導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0400】
特に、絶縁体510、及び絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0401】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0402】
図24A、及び図24Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514上の絶縁体516と、絶縁体514または絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503(導電体503a、および導電体503b)と、絶縁体516上、および導電体503上の絶縁体522と、絶縁体522上の絶縁体524と、絶縁体524上の酸化物530aと、酸化物530a上の酸化物530bと、酸化物530b上の導電体542aと、導電体542a上の絶縁体571aと、酸化物530b上の導電体542bと、導電体542b上の絶縁体571bと、酸化物530b上の絶縁体552と、絶縁体552上の絶縁体550と、絶縁体550上の絶縁体554と、絶縁体554上に位置し、酸化物530bの一部と重なる導電体560(導電体560a、および導電体560b)と、絶縁体522、絶縁体524、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、導電体542b、絶縁体571a、および絶縁体571b上に配置される絶縁体544と、を有する。ここで、図24A、及び図24Bに示すように、絶縁体552は、絶縁体522の上面、絶縁体524の側面、酸化物530aの側面、酸化物530bの側面および上面、導電体542の側面、絶縁体571の側面、絶縁体544の側面、絶縁体580の側面、および絶縁体550の下面と接する。また、導電体560の上面は、絶縁体554の上部、絶縁体550の上部、絶縁体552の上部、および絶縁体580の上面と高さが概略一致するように配置される。また、絶縁体574は、導電体560の上面、絶縁体552の上部、絶縁体550の上部、絶縁体554の上部、および絶縁体580の上面の少なくともいずれかの一部と接する。
【0403】
絶縁体580、および絶縁体544には、酸化物530bに達する開口が設けられる。当該開口内に、絶縁体552、絶縁体550、絶縁体554、および導電体560が配置されている。また、トランジスタ500のチャネル長方向において、絶縁体571a、および導電体542aと、絶縁体571b、および導電体542bと、の間に導電体560、絶縁体552、絶縁体550、および絶縁体554が設けられている。絶縁体554は、導電体560の側面と接する領域と、導電体560の底面と接する領域と、を有する。
【0404】
酸化物530は、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、を有することが好ましい。酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0405】
なお、トランジスタ500では、酸化物530が、酸化物530a、および酸化物530bの2層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、トランジスタ500は、酸化物530bの単層、または3層以上の積層構造を有する構成とすることができる。又は、酸化物530a、および酸化物530bのそれぞれが積層構造を有する構成とすることができる。
【0406】
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう。)電極として機能し、導電体503は、第2のゲート(バックゲートともいう。)電極として機能する。また、絶縁体552、絶縁体550、及び絶縁体554は、第1のゲート絶縁体として機能し、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁体として機能する。なお、ゲート絶縁体は、ゲート絶縁層、またはゲート絶縁膜と呼ぶ場合もある。また、導電体542aは、ソースまたはドレインの一方として機能し、導電体542bは、ソースまたはドレインの他方として機能する。また、酸化物530の導電体560と重畳する領域の少なくとも一部はチャネル形成領域として機能する。
【0407】
ここで、図24Aにおけるチャネル形成領域近傍の拡大図を図26Aに示す。酸化物530bに酸素が供給されることで、導電体542aと導電体542bの間の領域にチャネル形成領域が形成される。よって、図26Aに示すように、酸化物530bは、トランジスタ500のチャネル形成領域として機能する領域530bcと、領域530bcを挟むように設けられ、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域530baおよび領域530bbと、を有する。領域530bcは、少なくとも一部が導電体560と重畳している。言い換えると、領域530bcは、導電体542aと導電体542bの間の領域に設けられている。領域530baは、導電体542aに重畳して設けられており、領域530bbは、導電体542bに重畳して設けられている。
【0408】
チャネル形成領域として機能する領域530bcは、領域530baおよび領域530bbよりも、酸素欠損(本明細書等では、金属酸化物中の酸素欠損をV(oxygen vacancy)と呼称する場合がある。)が少なく、または不純物濃度が低いため、キャリア濃度が低い高抵抗領域である。よって領域530bcは、i型(真性)または実質的にi型であるということができる。
【0409】
金属酸化物を用いたトランジスタは、金属酸化物中のチャネルが形成される領域に不純物または酸素欠損(V)が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸素欠損(V)近傍の水素が、酸素欠損(V)に水素が入った欠陥(以下、VHと呼称する場合がある。)を形成し、キャリアとなる電子を生成する場合がある。このため、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性(ゲート電極に電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れる特性)となりやすい。したがって、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域では、不純物、酸素欠損、およびVHはできる限り低減されていることが好ましい。
【0410】
また、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域530baおよび領域530bbは、酸素欠損(V)が多く、または水素、窒素、金属元素などの不純物濃度が高い、ことでキャリア濃度が増加し、低抵抗化した領域である。すなわち、領域530baおよび領域530bbは、領域530bcと比較して、キャリア濃度が高く、低抵抗なn型の領域である。
【0411】
ここで、チャネル形成領域として機能する領域530bcのキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域として機能する領域530bcのキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0412】
また、領域530bcと領域530baまたは領域530bbとの間に、キャリア濃度が、領域530baおよび領域530bbのキャリア濃度と同等、またはそれよりも低く、領域530bcのキャリア濃度と同等、またはそれよりも高い、領域が形成されていてもよい。つまり、当該領域は、領域530bcと領域530baまたは領域530bbとの接合領域として機能する。当該接合領域は、水素濃度が、領域530baおよび領域530bbの水素濃度と同等、またはそれよりも低く、領域530bcの水素濃度と同等、またはそれよりも高くなる場合がある。また、当該接合領域は、酸素欠損が、領域530baおよび領域530bbの酸素欠損と同等、またはそれよりも少なく、領域530bcの酸素欠損と同等、またはそれよりも多くなる場合がある。
【0413】
なお、図26Aでは、領域530ba、領域530bb、および領域530bcが酸化物530bに形成される例について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、上記の各領域が酸化物530bだけでなく、酸化物530aまで形成されてもよい。
【0414】
また、酸化物530において、各領域の境界を明確に検出することが困難な場合がある。各領域内で検出される金属元素、ならびに水素、および窒素などの不純物元素の濃度は、領域ごとの段階的な変化に限らず、各領域内でも連続的に変化していてもよい。つまり、チャネル形成領域に近い領域であるほど、金属元素、ならびに水素、および窒素などの不純物元素の濃度が減少していればよい。
【0415】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530(酸化物530a、および酸化物530b)に、半導体として機能する金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)を用いることが好ましい。
【0416】
また、半導体として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0417】
酸化物530として、例えば、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有するIn-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、錫、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物、インジウム酸化物を用いてもよい。
【0418】
ここで、酸化物530bに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0419】
このように、酸化物530bの下に酸化物530aを配置することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物からの、酸化物530bに対する、不純物および酸素の拡散を抑制することができる。
【0420】
また、酸化物530aおよび酸化物530bが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、酸化物530aと酸化物530bの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。酸化物530aと酸化物530bとの界面における欠陥準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、高いオン電流が得られる。
【0421】
酸化物530bは、結晶性を有することが好ましい。特に、酸化物530bとして、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)を用いることが好ましい。
【0422】
CAAC-OSは、結晶性の高い、緻密な構造を有しており、不純物、欠陥(例えば、酸素欠損(Vなど)が少ない金属酸化物である。特に、金属酸化物の形成後に、金属酸化物が多結晶化しない程度の温度(例えば、400℃以上600℃以下)で加熱処理することで、CAAC-OSをより結晶性の高い、緻密な構造にすることができる。このようにして、CAAC-OSの密度をより高めることで、当該CAAC-OS中の不純物または酸素の拡散をより低減することができる。
【0423】
一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0424】
酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に不純物および酸素欠損が存在すると、電気特性が変動しやすく、信頼性が悪くなる場合がある。また、酸素欠損近傍の水素が、酸素欠損に水素が入った欠陥(以下、VHと呼ぶ場合がある。)を形成し、キャリアとなる電子を生成する場合がある。このため、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性(ゲート電極に電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れる特性)となりやすい。したがって、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域では、不純物、酸素欠損、およびVHはできる限り低減されていることが好ましい。言い換えると、酸化物半導体中のチャネルが形成される領域は、キャリア濃度が低減され、i型(真性化)または実質的にi型であることが好ましい。
【0425】
これに対して、酸化物半導体の近傍に、加熱により脱離する酸素(以下、過剰酸素と呼ぶ場合がある。)を含む絶縁体を設け、熱処理を行うことで、当該絶縁体から酸化物半導体に酸素を供給し、酸素欠損、およびVHを低減することができる。ただし、ソース領域またはドレイン領域に過剰な量の酸素が供給されると、トランジスタ500のオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を引き起こすおそれがある。さらに、ソース領域またはドレイン領域に供給される酸素が基板面内でばらつくことで、トランジスタを有する半導体装置の特性にばらつきが出ることになる。
【0426】
よって、酸化物半導体中において、チャネル形成領域として機能する領域530bcは、キャリア濃度が低減され、i型または実質的にi型であることが好ましいが、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域530baおよび領域530bbは、キャリア濃度が高く、n型であることが好ましい。つまり、酸化物半導体の領域530bcの酸素欠損、およびVHを低減し、領域530baおよび領域530bbには過剰な量の酸素が供給されないようにすることが好ましい。
【0427】
そこで、本実施の形態では、酸化物530b上に導電体542aおよび導電体542bを設けた状態で、酸素を含む雰囲気でマイクロ波処理を行い、領域530bcの酸素欠損、およびVHの低減を図る。ここで、マイクロ波処理とは、例えばマイクロ波を用いて高密度プラズマを発生させる電源を有する装置を用いた処理のことを指す。
【0428】
酸素を含む雰囲気でマイクロ波処理を行うことで、マイクロ波、またはRF等の高周波を用いて酸素ガスをプラズマ化し、当該酸素プラズマを作用させることができる。このとき、マイクロ波、またはRF等の高周波を領域530bcに照射することもできる。プラズマ、マイクロ波などの作用により、領域530bcのVHを分断し、水素Hを領域530bcから除去し、酸素欠損Vを酸素で補填することができる。つまり、領域530bcにおいて、「VH→H+V」という反応が起きて、領域530bcの水素濃度を低減することができる。よって、領域530bc中の酸素欠損、およびVHを低減し、キャリア濃度を低下させることができる。
【0429】
また、酸素を含む雰囲気でマイクロ波処理を行う際、マイクロ波、またはRF等の高周波、酸素プラズマなどの作用は、導電体542aおよび導電体542bに遮蔽され、領域530baおよび領域530bbには及ばない。さらに、酸素プラズマの作用は、酸化物530b、および導電体542を覆って設けられている、絶縁体571、および絶縁体580によって、低減することができる。これにより、マイクロ波処理の際に、領域530baおよび領域530bbで、VHの低減、および過剰な量の酸素供給が発生しないので、キャリア濃度の低下を防ぐことができる。
【0430】
また、絶縁体552となる絶縁膜の成膜後、または絶縁体550となる絶縁膜の成膜後に、酸素を含む雰囲気でマイクロ波処理を行うとことが好ましい。このように絶縁体552、または絶縁体550を介して、酸素を含む雰囲気でマイクロ波処理を行うことで、効率良く領域530bc中へ酸素を注入することができる。また、絶縁体552を導電体542の側面、および領域530bcの表面と接するように配置することで、領域530bcへ必要量以上の酸素の注入を抑制し、導電体542の側面の酸化を抑制することができる。また、絶縁体550となる絶縁膜の成膜時に導電体542の側面の酸化を抑制することができる。
【0431】
また、領域530bc中に注入される酸素は、酸素原子、酸素分子、酸素ラジカル(Oラジカルともいう、不対電子をもつ原子または分子、あるいはイオン)など様々な形態がある。なお、領域530bc中に注入される酸素は、上述の形態のいずれか一または複数であれば好ましく、特に酸素ラジカルであると好適である。また、絶縁体552、および絶縁体550の膜質を向上させることができるので、トランジスタ500の信頼性が向上する。
【0432】
このようにして、酸化物半導体の領域530bcで選択的に酸素欠損、およびVHを除去して、領域530bcをi型または実質的にi型とすることができる。さらに、ソース領域またはドレイン領域として機能する領域530baおよび領域530bbに過剰な酸素が供給されるのを抑制し、n型を維持することができる。これにより、トランジスタ500の電気特性の変動を抑制し、基板面内でトランジスタ500の電気特性のばらつきを少なくすることができる。
【0433】
以上のような構成にすることで、トランジスタ特性のばらつきが少ない半導体装置を提供することができる。また、信頼性が良好な半導体装置を提供することができる。また、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。
【0434】
また、図24Bに示すように、トランジスタ500のチャネル幅方向の断面視において、酸化物530bの側面と酸化物530bの上面との間に、湾曲面を有してもよい。つまり、当該側面の端部と当該上面の端部は、湾曲してもよい(以下、ラウンド状ともいう。)。
【0435】
上記湾曲面での曲率半径は、0nmより大きく、導電体542と重なる領域の酸化物530bの膜厚より小さい、または、上記湾曲面を有さない領域の長さの半分より小さいことが好ましい。上記湾曲面での曲率半径は、具体的には、0nmより大きく20nm以下、好ましくは1nm以上15nm以下、さらに好ましくは2nm以上10nm以下とする。このような形状にすることで、絶縁体552、絶縁体550、絶縁体554、および導電体560の、酸化物530bへの被覆性を高めることができる。
【0436】
酸化物530は、化学組成が異なる複数の酸化物層の積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、主成分である金属元素に対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、主成分である金属元素に対する元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。
【0437】
また、酸化物530bは、CAAC-OSなどの結晶性を有する酸化物であることが好ましい。CAAC-OSなどの結晶性を有する酸化物は、不純物、欠陥(酸素欠損など)が少なく、結晶性の高い、緻密な構造を有している。よって、ソース電極またはドレイン電極による、酸化物530bからの酸素の引き抜きを抑制することができる。これにより、熱処理を行っても、酸化物530bから酸素が引き抜かれることを低減できるので、トランジスタ500は、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対して安定である。
【0438】
ここで、酸化物530aと酸化物530bの接合部において、伝導帯下端はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530aと酸化物530bの接合部における伝導帯下端は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面に形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0439】
具体的には、酸化物530aと酸化物530bが、酸素以外に共通の元素を主成分として有することで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-M-Zn酸化物の場合、酸化物530aとして、In-M-Zn酸化物、M-Zn酸化物、元素Mの酸化物、In-Zn酸化物、インジウム酸化物などを用いてもよい。
【0440】
具体的には、酸化物530aとして、In:M:Zn=1:3:4[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはIn:M:Zn=1:1:0.5[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。また、酸化物530bとして、In:M:Zn=1:1:1[原子数比]もしくはその近傍の組成、またはIn:M:Zn=4:2:3[原子数比]もしくはその近傍の組成の金属酸化物を用いればよい。なお、近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。また、元素Mとして、ガリウムを用いることが好ましい。
【0441】
なお、金属酸化物をスパッタリング法により成膜する場合、上記の原子数比は、成膜された金属酸化物の原子数比に限られず、金属酸化物の成膜に用いるスパッタリングターゲットの原子数比であってもよい。
【0442】
また、図24Aなどに示すように、酸化物530の上面および側面に接して、酸化アルミニウムなどにより形成される絶縁体552を設けることにより、酸化物530と絶縁体552の界面およびその近傍に、酸化物530に含まれるインジウムが偏在する場合がある。これにより、酸化物530の表面近傍が、インジウム酸化物に近い原子数比、またはIn-Zn酸化物に近い原子数比になる。このように酸化物530、特に酸化物530bの表面近傍のインジウムの原子数比が大きくなることで、トランジスタ500の電界効果移動度を向上させることができる。
【0443】
酸化物530aおよび酸化物530bを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は大きいオン電流、および高い周波数特性を得ることができる。
【0444】
絶縁体512、絶縁体514、絶縁体544、絶縁体571、絶縁体574、絶縁体576、及び絶縁体581の少なくとも一は、水、水素などの不純物が、基板側から、または、トランジスタ500の上方からトランジスタ500に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体544、絶縁体571、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体581の少なくとも一は、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料を用いることが好ましい。
【0445】
なお、本明細書において、バリア絶縁膜とは、バリア性を有する絶縁膜のことを指す。本明細書において、バリア性とは、対応する物質の拡散を抑制する機能(透過性が低いともいう)とする。または、対応する物質を、捕獲、および固着する(ゲッタリングともいう)機能とする。
【0446】
絶縁体512、絶縁体514、絶縁体544、絶縁体571、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体581としては、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体を用いることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物、窒化シリコン、または窒化酸化シリコンなどを用いることができる。例えば、絶縁体512、絶縁体544、および絶縁体576として、より水素バリア性が高い、窒化シリコンなどを用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体514、絶縁体571、絶縁体574、および絶縁体581として、水素を捕獲および水素を固着する機能が高い、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムなどを用いることが好ましい。これにより、水、水素などの不純物が絶縁体512、および絶縁体514を介して、基板側からトランジスタ500側に拡散するのを抑制することができる。または、水、水素などの不純物が絶縁体581よりも外側に配置されている層間絶縁膜などから、トランジスタ500側に拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体524などに含まれる酸素が、絶縁体512、および絶縁体514を介して基板側に、拡散するのを抑制することができる。または、絶縁体580などに含まれる酸素が、絶縁体574などを介してトランジスタ500より上方に、拡散するのを抑制することができる。この様に、トランジスタ500を、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体512、絶縁体514、絶縁体571、絶縁体544、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体581で取り囲む構造とすることが好ましい。
【0447】
ここで、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体544、絶縁体571、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体581として、アモルファス構造を有する酸化物を用いることが好ましい。例えば、AlO(xは0より大きい任意数)、またはMgO(yは0より大きい任意数)などの金属酸化物を用いることが好ましい。このようなアモルファス構造を有する金属酸化物では、酸素原子がダングリングボンドを有しており、当該ダングリングボンドで水素を捕獲または固着する性質を有する場合がある。このようなアモルファス構造を有する金属酸化物をトランジスタ500の構成要素として用いる、またはトランジスタ500の周囲に設けることで、トランジスタ500に含まれる水素、またはトランジスタ500の周囲に存在する水素を捕獲または固着することができる。特にトランジスタ500のチャネル形成領域に含まれる水素を捕獲または固着することが好ましい。アモルファス構造を有する金属酸化物をトランジスタ500の構成要素として用いる、またはトランジスタ500の周囲に設けることで、良好な特性を有し、信頼性の高いトランジスタ500、および半導体装置を作製することができる。
【0448】
また、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体544、絶縁体571、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体581は、アモルファス構造であることが好ましいが、一部に多結晶構造の領域が形成されていてもよい。また、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体544、絶縁体571、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体581は、アモルファス構造の層と、多結晶構造の層と、が積層された多層構造であってもよい。例えば、アモルファス構造の層の上に多結晶構造の層が形成された積層構造でもよい。
【0449】
絶縁体512、絶縁体514、絶縁体544、絶縁体571、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体581の成膜は、例えば、スパッタリング法を用いて行えばよい。スパッタリング法は、成膜ガスに水素を含む分子を用いなくてよいので、絶縁体512、絶縁体514、絶縁体544、絶縁体571、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体581の水素濃度を低減することができる。なお、成膜方法は、スパッタリング法に限られるものではなく、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法、パルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法などを適宜用いてもよい。
【0450】
また、絶縁体512、絶縁体544、および絶縁体576の抵抗率を低くすることが好ましい場合がある。例えば、絶縁体512、絶縁体544、および絶縁体576の抵抗率を概略1×1013Ωcmとすることで、半導体装置作製工程のプラズマ等を用いる処理において、絶縁体512、絶縁体544、および絶縁体576が、導電体503、導電体542、導電体560などのチャージアップを緩和することができる場合がある。絶縁体512、絶縁体544、および絶縁体576の抵抗率は、好ましくは、1×1010Ωcm以上1×1015Ωcm以下とする。
【0451】
また、絶縁体516、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体581は、絶縁体514よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体516、絶縁体580、および絶縁体581として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0452】
また、絶縁体581は、一例として、層間膜、平坦化膜などとして機能する絶縁体とすることが好ましい。
【0453】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と、重なるように配置する。ここで、導電体503は、絶縁体516に形成された開口に埋め込まれて設けることが好ましい。また、導電体503の一部が絶縁体514に埋め込まれる場合がある。
【0454】
導電体503は、導電体503a、および導電体503bを有する。導電体503aは、当該開口の底面および側壁に接して設けられる。導電体503bは、導電体503aに形成された凹部に埋め込まれるように設けられる。ここで、導電体503bの上部の高さは、導電体503aの上部の高さおよび絶縁体516の上部の高さと概略一致する。
【0455】
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(NO、NO、NOなど)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0456】
導電体503aに、水素の拡散を低減する機能を有する導電性材料を用いることにより、導電体503bに含まれる水素などの不純物が、絶縁体524等を介して、酸化物530に拡散するのを防ぐことができる。また、導電体503aに、酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。したがって、導電体503aとしては、上記導電性材料を単層または積層とすればよい。例えば、導電体503aは、窒化チタンを用いればよい。
【0457】
また、導電体503bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。例えば、導電体503bは、タングステンを用いればよい。
【0458】
導電体503は、第2のゲート電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のしきい値電圧(Vth)を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のVthをより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0459】
また、導電体503の電気抵抗率は、上記の導電体503に印加する電位を考慮して設計され、導電体503の膜厚は当該電気抵抗率に合わせて設定される。また、絶縁体516の膜厚は、導電体503とほぼ同じになる。ここで、導電体503の設計が許す範囲で導電体503および絶縁体516の膜厚を薄くすることが好ましい。絶縁体516の膜厚を薄くすることで、絶縁体516中に含まれる水素などの不純物の絶対量を低減することができるので、当該不純物が酸化物530に拡散するのを低減することができる。
【0460】
なお、導電体503は、上面から見て、酸化物530の導電体542aおよび導電体542bと重ならない領域の大きさよりも、大きく設けるとよい。特に、図24Bに示すように、導電体503は、酸化物530aおよび酸化物530bのチャネル幅方向の端部よりも外側の領域においても、延伸していることが好ましい。つまり、酸化物530のチャネル幅方向における側面の外側において、導電体503と、導電体560とは、絶縁体を介して重畳していることが好ましい。当該構成を有することで、第1のゲート電極として機能する導電体560の電界と、第2のゲート電極として機能する導電体503の電界によって、酸化物530のチャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。本明細書において、第1のゲート、および第2のゲートの電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0461】
なお、本明細書等において、S-channel構造のトランジスタとは、一対のゲート電極の一方および他方の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を表す。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造およびプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0462】
また、図24Bに示すように、導電体503は延伸させて、配線としても機能させている。ただし、これに限られることなく、導電体503の下に、配線として機能する導電体を設ける構成にしてもよい。また、導電体503は、必ずしも各トランジスタに一個ずつ設ける必要はない。例えば、導電体503を複数のトランジスタで共有する構成にしてもよい。
【0463】
なお、トランジスタ500では、導電体503は、導電体503a、および導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0464】
絶縁体522、および絶縁体524は、ゲート絶縁体として機能する。
【0465】
絶縁体522は、水素(例えば、水素原子、水素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。また、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体522は、絶縁体524よりも水素および酸素の一方または双方の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。
【0466】
絶縁体522は、絶縁性材料であるアルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。当該絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530から基板側への酸素の放出、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の拡散を抑制する層として機能する。よって、絶縁体522を設けることで、水素等の不純物が、トランジスタ500の内側へ拡散することを抑制し、酸化物530中の酸素欠損の生成を抑制することができる。また、導電体503が、絶縁体524、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0467】
または、上記絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。または、これらの絶縁体を窒化処理してもよい。また、絶縁体522は、これらの絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0468】
また、絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウムなどの、いわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、絶縁体522として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、(Ba,Sr)TiO(BST)などの誘電率が高い物質を用いることができる場合もある。
【0469】
酸化物530と接する絶縁体524は、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。
【0470】
また、トランジスタ500の作製工程中において、酸化物530の表面が露出した状態で、加熱処理を行うと好適である。当該加熱処理は、例えば、100℃以上600℃以下、より好ましくは350℃以上550℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物530に酸素を供給して、酸素欠損(V)の低減を図ることができる。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で行ってもよい。または、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理した後に、連続して窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理を行ってもよい。
【0471】
なお、酸化物530に加酸素化処理を行うことで、酸化物530中の酸素欠損を、供給された酸素により修復させる、別言すると「V+O→null」という反応を促進させることができる。さらに、酸化物530中に残存した水素に供給された酸素が反応することで、当該水素をHOとして除去する(脱水化する)ことができる。これにより、酸化物530中に残存していた水素が酸素欠損に再結合してVHが形成されるのを抑制することができる。
【0472】
なお、絶縁体522、および絶縁体524が、2層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。また、絶縁体524は、酸化物530aと重畳して島状に形成してもよい。この場合、絶縁体544が、絶縁体524の側面および絶縁体522の上面に接する構成になる。
【0473】
導電体542a、および導電体542bは酸化物530bの上面に接して設けられる。導電体542aおよび導電体542bは、それぞれトランジスタ500のソース電極またはドレイン電極として機能する。
【0474】
導電体542(導電体542a、および導電体542b)としては、例えば、タンタルを含む窒化物、チタンを含む窒化物、モリブデンを含む窒化物、タングステンを含む窒化物、タンタルおよびアルミニウムを含む窒化物、チタンおよびアルミニウムを含む窒化物などを用いることが好ましい。本発明の一態様においては、タンタルを含む窒化物が特に好ましい。また、例えば、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いてもよい。これらの材料は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。
【0475】
なお、酸化物530bなどに含まれる水素が、導電体542aまたは導電体542bに拡散する場合がある。特に、導電体542aおよび導電体542bに、タンタルを含む窒化物を用いることで、酸化物530bなどに含まれる水素は、導電体542aまたは導電体542bに拡散しやすく、拡散した水素は、導電体542aまたは導電体542bが有する窒素と結合することがある。つまり、酸化物530bなどに含まれる水素は、導電体542aまたは導電体542bに吸い取られる場合がある。
【0476】
また、導電体542の側面と導電体542の上面との間に、湾曲面が形成されないことが好ましい。当該湾曲面が形成されない導電体542とすることで、チャネル幅方向の断面における、導電体542の断面積を大きくすることができる。これにより、導電体542の導電率を大きくし、トランジスタ500のオン電流を大きくすることができる。
【0477】
絶縁体571aは、導電体542aの上面に接して設けられており、絶縁体571bは、導電体542bの上面に接して設けられている。絶縁体571は、少なくとも酸素に対するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体571は、酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。例えば、絶縁体571は、絶縁体580よりも酸素の拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体571としては、例えば、窒化シリコンなどのシリコンを含む窒化物を用いればよい。また、絶縁体571は、水素などの不純物を捕獲する機能を有することが好ましい。その場合、絶縁体571としては、アモルファス構造を有する金属酸化物、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムなどの絶縁体を用いればよい。特に、絶縁体571として、アモルファス構造を有する酸化アルミニウム、またはアモルファス構造の酸化アルミニウムを用いることで、より効果的に水素を捕獲または固着できる場合があるため好ましい。これにより、良好な特性を有し、信頼性の高いトランジスタ500、および半導体装置を作製することができる。
【0478】
絶縁体544は、絶縁体524、酸化物530a、酸化物530b、導電体542、および絶縁体571を覆うように設けられる。絶縁体544として、水素を捕獲および水素を固着する機能を有することが好ましい。その場合、絶縁体544としては、窒化シリコンまたは、アモルファス構造を有する金属酸化物、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化マグネシウムなどの絶縁体を含むことが好ましい。また、例えば、絶縁体544として、酸化アルミニウムと、当該酸化アルミニウム上の窒化シリコンの積層膜を用いてもよい。
【0479】
上記のような絶縁体571および絶縁体544を設けることで、酸素に対するバリア性を有する絶縁体で導電体542を包み込むことができる。つまり、絶縁体524、および絶縁体580に含まれる酸素が、導電体542に拡散するのを防ぐことができる。これにより、絶縁体524、および絶縁体580に含まれる酸素によって、導電体542が直接酸化されて抵抗率が増大し、オン電流が低減するのを抑制することができる。
【0480】
絶縁体552は、ゲート絶縁体の一部として機能する。絶縁体552としては、酸素に対するバリア絶縁膜を用いることが好ましい。絶縁体552としては、上述の絶縁体574に用いることができる絶縁体を用いればよい。絶縁体552として、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。当該絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、ハフニウムおよびシリコンを含む酸化物(ハフニウムシリケート)などを用いることができる。本実施の形態では、絶縁体552として、酸化アルミニウムを用いる。この場合、絶縁体552は、少なくとも酸素と、アルミニウムと、を有する絶縁体となる。
【0481】
図24Bに示すように、絶縁体552は、酸化物530bの上面および側面、酸化物530aの側面、絶縁体524の側面、および絶縁体522の上面に接して設けられる。つまり、酸化物530a、酸化物530b、および絶縁体524の導電体560と重なる領域は、チャネル幅方向の断面において、絶縁体552に覆われている。これにより、熱処理などを行った際に、酸化物530aおよび酸化物530bで酸素が脱離するのを、酸素に対するバリア性を有する絶縁体552でブロックすることができる。よって、酸化物530aおよび酸化物530bに酸素欠損(Vo)が形成されるのを低減することができる。これにより、領域530bcに形成される、酸素欠損(Vo)、およびVHを低減することができる。よって、トランジスタ500の電気特性を良好にし、信頼性を向上させることができる。
【0482】
また、逆に、絶縁体580および絶縁体550などに過剰な量の酸素が含まれていても、当該酸素が酸化物530aおよび酸化物530bに過剰に供給されるのを抑制することができる。よって、領域530bcを介して、領域530baおよび領域530bbが過剰に酸化され、トランジスタ500のオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を起こすのを抑制することができる。
【0483】
また、図24Aに示すように、絶縁体552は、導電体542、絶縁体544、絶縁体571、および絶縁体580、それぞれの側面に接して設けられる。よって、導電体542の側面が酸化され、当該側面に酸化膜が形成されるのを低減することができる。これにより、トランジスタ500のオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を起こすのを抑制することができる。
【0484】
また、絶縁体552は、絶縁体554、絶縁体550、および導電体560と、ともに、絶縁体580などに形成された開口に設ける必要がある。トランジスタ500の微細化を図るにあたって、絶縁体552の膜厚は薄いことが好ましい。絶縁体552の膜厚は、0.1nm以上、0.5nm以上、又は1.0nm以上とすることが好ましく、かつ1.0nm以下、3.0nm以下、又は5.0nm以下とすることが好ましい。なお、上述した下限値、及び上限値はそれぞれ組み合わせることができるものとする。この場合、絶縁体552は、少なくとも一部において、上記のような膜厚の領域を有していればよい。また、絶縁体552の膜厚は絶縁体550の膜厚より薄いことが好ましい。この場合、絶縁体552は、少なくとも一部において、絶縁体550より膜厚が薄い領域を有していればよい。
【0485】
絶縁体552を上記のように膜厚を薄く成膜するには、ALD法を用いて成膜することが好ましい。ALD法は、プリカーサ及びリアクタントの反応を熱エネルギーのみで行う熱ALD(Thermal ALD)法、プラズマ励起されたリアクタントを用いるPEALD(Plasma Enhanced ALD)法などがある。PEALD法では、プラズマを利用することで、より低温での成膜が可能となり好ましい場合がある。
【0486】
ALD法は、原子の性質である自己制御性を利用し、一層ずつ原子を堆積することができるので、極薄の成膜が可能、アスペクト比の高い構造への成膜が可能、ピンホールなどの欠陥の少ない成膜が可能、被覆性に優れた成膜が可能、低温での成膜が可能、などの効果がある。よって、絶縁体552を絶縁体580などに形成された開口の側面などに被覆性良く、上記のような薄い膜厚で成膜することができる。
【0487】
なお、ALD法で用いるプリカーサには炭素などを含むものがある。このため、ALD法により設けられた膜は、他の成膜法により設けられた膜と比較して、炭素などの不純物を多く含む場合がある。なお、不純物の定量は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)、またはX線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて行うことができる。
【0488】
絶縁体550は、ゲート絶縁体の一部として機能する。絶縁体550は、絶縁体552の上面に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。この場合、絶縁体550は、少なくとも酸素とシリコンと、を有する絶縁体となる。
【0489】
絶縁体550は、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水、水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上、又は0.5nm以上とすることが好ましく、かつ15.0nm以下、又は20nm以下とすることが好ましい。なお、上述した下限値、及び上限値はそれぞれ組み合わせることができるものとする。この場合、絶縁体550は、少なくとも一部において、上記のような膜厚の領域を有していればよい。
【0490】
図24A、及び図24Bなどでは、絶縁体550を単層とする構成について示したが、本発明はこれに限られず、2層以上の積層構造としてもよい。例えば図26Bに示すように、絶縁体550を、絶縁体550aと、絶縁体550a上の絶縁体550bの2層の積層構造にしてもよい。
【0491】
図26Bに示すように、絶縁体550を2層の積層構造とする場合、下層の絶縁体550aは、酸素を透過しやすい絶縁体を用いて形成し、上層の絶縁体550bは、酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁体を用いて形成することが好ましい。このような構成にすることで、絶縁体550aに含まれる酸素が、導電体560へ拡散するのを抑制することができる。つまり、酸化物530へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、絶縁体550aに含まれる酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。例えば、絶縁体550aは、上述した絶縁体550に用いることができる材料を用いて設け、絶縁体550bは、アルミニウムおよびハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。当該絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、ハフニウムおよびシリコンを含む酸化物(ハフニウムシリケート)などを用いることができる。本実施の形態では、絶縁体550bとして、酸化ハフニウムを用いる。この場合、絶縁体550bは、少なくとも酸素と、ハフニウムと、を有する絶縁体となる。また、絶縁体550bの膜厚は、0.5nm以上、又は1.0nm以上とすることが好ましく、かつ3.0nm以下、又は5.0nm以下とすることが好ましい。なお、上述した下限値、及び上限値はそれぞれ組み合わせることができるものとする。この場合、絶縁体550bは、少なくとも一部において、上記のような膜厚の領域を有していればよい。
【0492】
なお、絶縁体550aに酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどを用いる場合、絶縁体550bは、比誘電率が高いhigh-k材料である絶縁性材料を用いてもよい。ゲート絶縁体を、絶縁体550aと絶縁体550bとの積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、ゲート絶縁体の物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。よって、絶縁体550の絶縁耐圧を高くすることができる。
【0493】
絶縁体554は、ゲート絶縁体の一部として機能する。絶縁体554としては、水素に対するバリア絶縁膜を用いることが好ましい。これにより、導電体560に含まれる水素などの不純物が、絶縁体550、および酸化物530bに拡散するのを防ぐことができる。絶縁体554としては、上述の絶縁体576に用いることができる絶縁体を用いればよい。例えば、絶縁体554としてPEALD法で成膜した窒化シリコンを用いればよい。この場合、絶縁体554は、少なくとも窒素と、シリコンと、を有する絶縁体となる。
【0494】
また、絶縁体554が、さらに酸素に対するバリア性を有してもよい。これにより、絶縁体550に含まれる酸素が、導電体560へ拡散するのを抑制することができる。
【0495】
また、絶縁体554は、絶縁体552、絶縁体550、および導電体560と、ともに、絶縁体580などに形成された開口に設ける必要がある。トランジスタ500の微細化を図るにあたって、絶縁体554の膜厚は薄いことが好ましい。絶縁体554の膜厚は、0.1nm以上、0.5nm以上、又は1.0nm以上とすることが好ましく、かつ3.0nm以下、又は5.0nm以下とすることが好ましい。なお、上述した下限値、及び上限値はそれぞれ組み合わせることができるものとする。この場合、絶縁体554は、少なくとも一部において、上記のような膜厚の領域を有していればよい。また、絶縁体554の膜厚は絶縁体550の膜厚より薄いことが好ましい。この場合、絶縁体554は、少なくとも一部において、絶縁体550より膜厚が薄い領域を有していればよい。
【0496】
導電体560は、トランジスタ500の第1のゲート電極として機能する。導電体560は、導電体560aと、導電体560aの上に配置された導電体560bと、を有することが好ましい。例えば、導電体560aは、導電体560bの底面および側面を包むように配置されることが好ましい。また、図24Aおよび図24Bに示すように、導電体560の上部の高さの位置は、絶縁体550の上部の高さの位置と概略一致している。なお、図24Aおよび図24Bでは、導電体560は、導電体560aと導電体560bの2層構造として示しているが、導電体560は、当該2層構造以外としては、単層構造、又は3層以上の積層構造とすることができる。
【0497】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0498】
また、導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、チタン、窒化チタン、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。
【0499】
また、導電体560は、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは、積層構造とすることができる。具体的には、例えば、導電体560bは、チタン、または窒化チタンと上記導電性材料との積層構造とすることができる。
【0500】
また、トランジスタ500では、導電体560は、絶縁体580などに形成されている開口を埋めるように自己整合的に形成される。導電体560をこのように形成することにより、導電体542aと導電体542bとの間の領域に、導電体560を位置合わせすることなく確実に配置することができる。
【0501】
また、図24Bに示すように、トランジスタ500のチャネル幅方向において、絶縁体522の底面を基準としたときの、導電体560の、導電体560と酸化物530bとが重ならない領域の底面の高さは、酸化物530bの底面の高さより低いことが好ましい。ゲート電極として機能する導電体560が、絶縁体550などを介して、酸化物530bのチャネル形成領域の側面および上面を覆う構成とすることで、導電体560の電界を酸化物530bのチャネル形成領域全体に作用させやすくなる。よって、トランジスタ500のオン電流を増大させ、周波数特性を向上させることができる。絶縁体522の底面を基準としたときの、酸化物530aおよび酸化物530bと、導電体560とが、重ならない領域における導電体560の底面の高さと、酸化物530bの底面の高さと、の差は、0nm以上、3nm以上、又は5nm以上とすることが好ましく、かつ20nm以下、50nm以下、又は100nm以下とすることが好ましい。なお、上述した下限値、及び上限値はそれぞれ組み合わせることができるものとする。
【0502】
絶縁体580は、絶縁体544上に設けられ、絶縁体550、および導電体560が設けられる領域に開口が形成されている。また、絶縁体580の上面は、平坦化されていてもよい。
【0503】
層間膜として機能する絶縁体580は、誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。絶縁体580は、例えば、絶縁体516と同様の材料を用いて設けることが好ましい。特に、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、空孔を有する酸化シリコンなどの材料は、加熱により脱離する酸素を含む領域を容易に形成することができるため好ましい。
【0504】
絶縁体580は、絶縁体580中の水、水素などの不純物濃度は低減されていることが好ましい。例えば、絶縁体580は、酸化シリコン、酸化窒化シリコンなどのシリコンを含む酸化物を適宜用いればよい。
【0505】
絶縁体574は、水、水素などの不純物が、上方から絶縁体580に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましく、水素などの不純物を捕獲する機能を有することが好ましい。また、絶縁体574は、酸素の透過を抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体574としては、アモルファス構造を有する金属酸化物、例えば、酸化アルミニウムなどの絶縁体を用いればよい。この場合、絶縁体574は、少なくとも酸素と、アルミニウムと、を有する絶縁体となる。絶縁体512と絶縁体581に挟まれた領域内で、絶縁体580に接して、水素などの不純物を捕獲する機能を有する、絶縁体574を設けることで、絶縁体580などに含まれる水素などの不純物を捕獲し、当該領域内における、水素の量を一定値にすることができる。特に、絶縁体574として、アモルファス構造を有する酸化アルミニウムを用いることで、より効果的に水素を捕獲または固着できる場合があるため好ましい。これにより、良好な特性を有し、信頼性の高いトランジスタ500、および半導体装置を作製することができる。
【0506】
絶縁体576は、水、水素などの不純物が、上方から絶縁体580に拡散するのを抑制するバリア絶縁膜として機能する。絶縁体576は、絶縁体574の上に配置される。絶縁体576としては、窒化シリコンまたは窒化酸化シリコンなどの、シリコンを含む窒化物を用いることが好ましい。例えば、絶縁体576としてスパッタリング法で成膜された窒化シリコンを用いればよい。絶縁体576をスパッタリング法で成膜することで、密度が高い窒化シリコン膜を形成することができる。また、絶縁体576として、スパッタリング法で成膜された窒化シリコンの上に、さらに、PEALD法または、CVD法で成膜された窒化シリコンを積層してもよい。
【0507】
また、トランジスタ500の第1端子、又は第2端子の一方は、プラグとして機能する導電体540aに電気的に接続され、トランジスタ500の第1端子、又は第2端子の他方は、導電体540bに電気的に接続されている。なお、本明細書等では、導電体540a、及び導電体540bをまとめて導電体540と呼ぶこととする。
【0508】
導電体540aは、一例として、導電体542aと重畳する領域に設けられている。具体的には、導電体542aと重畳する領域において、図24Aに示す絶縁体571、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体576、及び絶縁体581、更に図23に示す絶縁体582、及び絶縁体586には開口部が形成されており、導電体540aは、当該開口部の内側に設けられている。また、導電体540bは、一例として、導電体542bと重畳する領域に設けられている。具体的には、導電体542bと重畳する領域において、図24Aに示す絶縁体571、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体576、及び絶縁体581、更に図23に示す絶縁体582、及び絶縁体586には開口部が形成されており、導電体540bは、当該開口部の内側に設けられている。なお、絶縁体582、及び絶縁体586については後述する。
【0509】
さらに、図24Aに示すとおり、導電体542aと重畳する領域の開口部の側面と導電体540aとの間には、不純物に対してバリア性を有する絶縁体として、絶縁体541aを設けてもよい。同様に、導電体542bと重畳する領域の開口部の側面と導電体540bとの間には、不純物に対してバリア性を有する絶縁体として、絶縁体541bを設けてもよい。なお、本明細書等では、絶縁体541a、及び絶縁体541bをまとめて絶縁体541と呼ぶこととする。
【0510】
導電体540aおよび導電体540bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体540aおよび導電体540bは積層構造としてもよい。
【0511】
また、導電体540を積層構造とする場合、絶縁体574、絶縁体576、絶縁体581、絶縁体580、絶縁体544、および絶縁体571の近傍に配置される第1の導電体には、水、水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。例えば、タンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、水、水素などの不純物の透過を抑制する機能を有する導電性材料は、単層または積層で用いてもよい。また、絶縁体576より上層に含まれる水、水素などの不純物が、導電体540aおよび導電体540bを通じて酸化物530に混入することを抑制することができる。
【0512】
絶縁体541aおよび絶縁体541bとしては、絶縁体544などに用いることができるバリア絶縁膜を用いればよい。例えば、絶縁体541aおよび絶縁体541bとして、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化酸化シリコンなどの絶縁体を用いればよい。絶縁体541aおよび絶縁体541bは、絶縁体574、絶縁体576、および絶縁体571に接して設けられるので、絶縁体580などに含まれる水、水素などの不純物が、導電体540aおよび導電体540bを通じて酸化物530に混入するのを抑制することができる。特に、窒化シリコンは水素に対するブロッキング性が高いので好適である。また、絶縁体580に含まれる酸素が導電体540aおよび導電体540bに吸収されるのを防ぐことができる。
【0513】
絶縁体541aおよび絶縁体541bを、図24Aに示すように積層構造にする場合、絶縁体580などの開口の内壁に接する第1の絶縁体と、その内側の第2の絶縁体は、酸素に対するバリア絶縁膜と、水素に対するバリア絶縁膜を組み合わせて用いることが好ましい。
【0514】
例えば、第1の絶縁体として、ALD法で成膜された酸化アルミニウムを用い、第2の絶縁体として、PEALD法で成膜された窒化シリコンを用いればよい。このような構成にすることで、導電体540の酸化を抑制し、さらに、導電体540に水素が混入するのを低減することができる。
【0515】
なお、トランジスタ500では、絶縁体541の第1の絶縁体および絶縁体541の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、絶縁体541を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体540の第1の導電体および導電体540の第2の導電体を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体540を単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0516】
また、図23に示すとおり、導電体540aの上部、および導電体540bの上部に接して配線として機能する導電体610、導電体612などを配置してもよい。導電体610、導電体612は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、当該導電体は、積層構造としてもすることができる。具体的には、例えば、当該導電体は、チタン、または窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。なお、当該導電体は、絶縁体に設けられた開口に埋め込むように形成してもよい。
【0517】
なお、本発明の一隊の半導体装置に含まれるトランジスタの構造は、図23図24A図24B、及び図25に示したトランジスタ500に限定されない。本発明の一隊の半導体装置に含まれるトランジスタの構造は、状況に応じて、変更してもよい。
【0518】
例えば、図23図24A図24B、及び図25に示すトランジスタ500は、図27に示す構成としてもよい。図27のトランジスタは、酸化物543a、及び酸化物543bを有する点で、図23図24A図24B、及び図25に示すトランジスタ500と異なっている。なお、本明細書等では、酸化物543a、及び酸化物543bをまとめて酸化物543と呼ぶこととする。また、図27のトランジスタのチャネル幅方向の断面の構成については、図24B示すトランジスタ500の断面と同様の構成とすることができる。
【0519】
酸化物543aは、酸化物530bと導電体542aの間に設けられ、酸化物543bは、酸化物530bと導電体542bの間に設けられる。ここで、酸化物543aは、酸化物530bの上面、および導電体542aの下面に接することが好ましい。また、酸化物543bは、酸化物530bの上面、および導電体542bの下面に接することが好ましい。
【0520】
酸化物543は、酸素の透過を抑制する機能を有することが好ましい。ソース電極、ドレイン電極として機能する導電体542と酸化物530bとの間に酸素の透過を抑制する機能を有する酸化物543を配置することで、導電体542と、酸化物530bとの間の電気抵抗が低減されるので好ましい。このような構成とすることで、トランジスタ500の電気特性、電界効果移動度、および信頼性を向上させることができる場合がある。
【0521】
また、酸化物543として、元素Mを有する金属酸化物を用いてもよい。特に、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、または錫を用いるとよい。また、酸化物543は、酸化物530bよりも元素Mの濃度が高いことが好ましい。また、酸化物543として、酸化ガリウムを用いてもよい。また、酸化物543として、In-M-Zn酸化物等の金属酸化物を用いてもよい。具体的には、酸化物に用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物543の膜厚は、0.5nm以上、又は1nm以上であることが好ましく、かつ2nm以下、3nm以下、又は5nm以下であることが好ましい。なお、上述した下限値、及び上限値はそれぞれ組み合わせることができるものとする。また、酸化物543は、結晶性を有すると好ましい。酸化物543が結晶性を有する場合、酸化物530中の酸素の放出を好適に抑制することが出来る。例えば、酸化物543としては、六方晶などの結晶構造であれば、酸化物530中の酸素の放出を抑制できる場合がある。
【0522】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられ、絶縁体582上には絶縁体586が設けられている。
【0523】
絶縁体582は、酸素、水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0524】
また、絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0525】
続いて、図23、及び図25に示す半導体装置に含まれている。容量素子600、及びその周辺の配線、又はプラグについて説明する。なお、図23、及び図25に示すトランジスタ500の上方には、容量素子600と、配線、及び/又はプラグが設けられている。
【0526】
容量素子600は、一例として、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0527】
導電体540a又は導電体540bの一方、導電体546、及び絶縁体586上には、導電体610が設けられている。導電体610は、容量素子600の一対の電極の一方としての機能を有する。
【0528】
また、導電体540a、又は導電体540bの他方、及び絶縁体586上には、導電体612が設けられる。導電体612は、トランジスタ500と、上方に配置される回路素子、配線等と、を電気的に接続するプラグ、配線、端子などとしての機能を有する。具体的には、例えば、導電体612は、実施の形態1で説明する半導体装置SDV1における配線WDLなどとすることができる。
【0529】
なお、導電体612、及び導電体610は、同時に形成してもよい。
【0530】
導電体612、及び導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0531】
図23では、導電体612、及び導電体610は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、及び導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0532】
絶縁体586、導電体610上には、絶縁体630が設けられている。絶縁体630は、容量素子600の一対の電極に挟まれる誘電体として機能する。
【0533】
絶縁体630としては、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム、窒化酸化ハフニウム、窒化ハフニウム、酸化ジルコニウムなどを用いることができる。また、絶縁体630は、上述した材料を用いて、積層または単層として設けることができる。
【0534】
また、例えば、絶縁体630には、酸化窒化シリコンなどの絶縁耐力が大きい材料と、高誘電率(high-k)材料との積層構造を用いてもよい。当該構成により、容量素子600は、高誘電率(high-k)の絶縁体を有することで、十分な容量を確保でき、絶縁耐力が大きい絶縁体を有することで、絶縁耐力が向上し、容量素子600の静電破壊を抑制することができる。
【0535】
なお、高誘電率(high-k)材料(高い比誘電率の材料)の絶縁体としては、酸化ガリウム、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化物、アルミニウムおよびハフニウムを有する酸化窒化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化物、シリコンおよびハフニウムを有する酸化窒化物またはシリコンおよびハフニウムを有する窒化物などがある。
【0536】
または、絶縁体630は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)または(Ba、Sr)TiO(BST)などのhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いてもよい。また、絶縁体630としては、ハフニウムと、ジルコニウムとが含まれる化合物などを用いても良い。半導体装置の微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体、および容量素子に用いる誘電体の薄膜化により、トランジスタ、容量素子のリーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体、および容量素子に用いる誘電体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減、および容量素子の容量の確保が可能となる。
【0537】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。導電体610は、容量素子600の一対の電極の一方としての機能を有する。また、例えば、導電体620は、実施の形態1で説明する半導体装置SDV1における配線WWLBなどとすることができる。
【0538】
なお、導電体620は、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステン、モリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)、Al(アルミニウム)等を用いればよい。また、例えば、導電体620は、導電体610に適用できる材料を用いることができる。また、導電体620は、単層構造ではなく、2層以上の積層構造としてもよい。
【0539】
導電体620、及び絶縁体630上には、絶縁体640が設けられている。絶縁体640としては、例えば、トランジスタ500が設けられている領域に、水素、不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0540】
絶縁体640上には、絶縁体650が設けられている。絶縁体650は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体650は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。そのため、絶縁体650としては、例えば、絶縁体324に適用できる材料とすることができる。
【0541】
ところで、図23、及び図25に示す容量素子600は、プレーナ型としているが、容量素子の形状はこれに限定されない。容量素子600は、プレーナ型ではなく、例えば、シリンダ型としてもよい。
【0542】
また、容量素子600の上方には、配線層を設けてもよい。例えば、図23において、絶縁体411、絶縁体412、絶縁体413、及び絶縁体414が、絶縁体650の上方に、順に設けられている。また、絶縁体411、絶縁体412、及び絶縁体413には、プラグ、又は配線として機能する導電体416が設けられている構成を示している。また、導電体416は、一例として、後述する導電体660に重畳する領域に設けることができる。
【0543】
また、絶縁体630、絶縁体640、及び絶縁体650には、導電体612と重畳する領域に開口部が設けられ、当該開口部を埋めるように導電体660が設けられている。導電体660は、上述した配線層に含まれている導電体416に電気的に接続するプラグ、配線として機能する。
【0544】
絶縁体411、及び絶縁体414は、例えば、絶縁体324などと同様に、水、水素などの不純物に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。そのため、絶縁体411、及び絶縁体414としては、例えば、絶縁体324などに適用できる材料を用いることができる。
【0545】
絶縁体412、及び絶縁体413は、例えば、絶縁体326と同様に、配線間に生じる寄生容量を低減するために、比誘電率が比較的低い絶縁体を用いることが好ましい。
【0546】
また、導電体612、及び導電体416は、例えば、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0547】
酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置として、本実施の形態で説明した本構造を適用することにより、当該トランジスタの電気特性の変動を抑制するとともに、信頼性を向上させることができる。又は、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化又は高集積化を図ることができる。
【0548】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0549】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上記の実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物(以下、酸化物半導体ともいう。)について説明する。
【0550】
金属酸化物は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウム、コバルトなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0551】
<結晶構造の分類>
まず、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、図28Aを用いて説明を行う。図28Aは、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
【0552】
図28Aに示すように、酸化物半導体は、大きく分けて「Amorphous(無定形)」と、「Crystalline(結晶性)」と、「Crystal(結晶)」と、に分類される。また、「Amorphous」の中には、completely amorphousが含まれる。また、「Crystalline」の中には、CAAC(c-axis-aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)が含まれる(excluding single crystal and poly crystal)。なお、「Crystalline」の分類には、single crystal、poly crystal、及びcompletely amorphousは除かれる。また、「Crystal」の中には、single crystal、及びpoly crystalが含まれる。
【0553】
なお、図28Aに示す太枠内の構造は、「Amorphous(無定形)」と、「Crystal(結晶)」との間の中間状態であり、新しい境界領域(New crystalline phase)に属する構造である。すなわち、当該構造は、エネルギー的に不安定な「Amorphous(無定形)」及び、「Crystal(結晶)」とは全く異なる構造と言い換えることができる。
【0554】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)スペクトルを用いて評価することができる。ここで、「Crystalline」に分類されるCAAC-IGZO膜のGIXD(Grazing-Incidence XRD)測定で得られるXRDスペクトルを図28Bに示す(横軸は2θ[deg.]とし、また、縦軸は強度(Intensity)を任意単位(a.u.)で表している)。なお、GIXD法は、薄膜法またはSeemann-Bohlin法ともいう。以降、図28Bに示すGIXD測定で得られるXRDスペクトルを、単にXRDスペクトルと記す。なお、図28Bに示すCAAC-IGZO膜の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、図28Bに示すCAAC-IGZO膜の厚さは、500nmである。
【0555】
図28Bに示すように、CAAC-IGZO膜のXRDスペクトルでは、明確な結晶性を示すピークが検出される。具体的には、CAAC-IGZO膜のXRDスペクトルでは、2θ=31°近傍に、c軸配向を示すピークが検出される。なお、図28Bに示すように、2θ=31°近傍のピークは、ピーク強度が検出された角度を軸に左右非対称である。
【0556】
また、膜または基板の結晶構造は、極微電子線回折法(NBED:Nano Beam Electron Diffraction)によって観察される回折パターン(極微電子線回折パターンともいう。)にて評価することができる。CAAC-IGZO膜の回折パターンを、図28Cに示す。図28Cは、電子線を基板に対して平行に入射するNBEDによって観察される回折パターンである。なお、図28Cに示すCAAC-IGZO膜の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、極微電子線回折法では、プローブ径を1nmとして電子線回折が行われる。
【0557】
図28Cに示すように、CAAC-IGZO膜の回折パターンでは、c軸配向を示す複数のスポットが観察される。
【0558】
<<酸化物半導体の構造>>
なお、酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、図28Aとは異なる分類となる場合がある。例えば、酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、上述のCAAC-OS、及びnc-OSがある。また、非単結晶酸化物半導体には、多結晶酸化物半導体、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、非晶質酸化物半導体、などが含まれる。
【0559】
ここで、上述のCAAC-OS、nc-OS、及びa-like OSの詳細について、説明を行う。
【0560】
[CAAC-OS]
CAAC-OSは、複数の結晶領域を有し、当該複数の結晶領域はc軸が特定の方向に配向している酸化物半導体である。なお、特定の方向とは、CAAC-OS膜の厚さ方向、CAAC-OS膜の被形成面の法線方向、またはCAAC-OS膜の表面の法線方向である。また、結晶領域とは、原子配列に周期性を有する領域である。なお、原子配列を格子配列とみなすと、結晶領域とは、格子配列の揃った領域でもある。さらに、CAAC-OSは、a-b面方向において複数の結晶領域が連結する領域を有し、当該領域は歪みを有する場合がある。なお、歪みとは、複数の結晶領域が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。つまり、CAAC-OSは、c軸配向し、a-b面方向には明らかな配向をしていない酸化物半導体である。
【0561】
なお、上記複数の結晶領域のそれぞれは、1つまたは複数の微小な結晶(最大径が10nm未満である結晶)で構成される。結晶領域が1つの微小な結晶で構成されている場合、当該結晶領域の最大径は10nm未満となる。また、結晶領域が多数の微小な結晶で構成されている場合、当該結晶領域の大きさは、数十nm程度となる場合がある。
【0562】
また、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズ、チタンなどから選ばれた一種、または複数種)において、CAAC-OSは、インジウム(In)、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛(Zn)、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能である。よって、(M,Zn)層にはインジウムが含まれる場合がある。また、In層には元素Mが含まれる場合がある。なお、In層にはZnが含まれる場合もある。当該層状構造は、例えば、高分解能TEM像において、格子像として観察される。
【0563】
CAAC-OS膜に対し、例えば、XRD装置を用いて構造解析を行うと、θ/2θスキャンを用いたOut-of-plane XRD測定では、c軸配向を示すピークが2θ=31°またはその近傍に検出される。なお、c軸配向を示すピークの位置(2θの値)は、CAAC-OSを構成する金属元素の種類、組成などにより変動する場合がある。
【0564】
また、例えば、CAAC-OS膜の電子線回折パターンにおいて、複数の輝点(スポット)が観測される。なお、あるスポットと別のスポットとは、試料を透過した入射電子線のスポット(ダイレクトスポットともいう。)を対称中心として、点対称の位置に観測される。
【0565】
上記特定の方向から結晶領域を観察した場合、当該結晶領域内の格子配列は、六方格子を基本とするが、単位格子は正六角形とは限らず、非正六角形である場合がある。また、上記歪みにおいて、五角形、七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないこと、金属原子が置換することで原子間の結合距離が変化すること、などによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0566】
なお、明確な結晶粒界が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(polycrystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、電界効果移動度の低下などを引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、及びIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0567】
CAAC-OSは、結晶性が高く、明確な結晶粒界が確認されない酸化物半導体である。よって、CAAC-OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入、欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物、欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0568】
[nc-OS]
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。別言すると、nc-OSは、微小な結晶を有する。なお、当該微小な結晶の大きさは、例えば、1nm以上10nm以下、特に1nm以上3nm以下であることから、当該微小な結晶をナノ結晶ともいう。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OS、及び非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、XRD装置を用いて構造解析を行うと、θ/2θスキャンを用いたOut-of-plane XRD測定では、結晶性を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、ナノ結晶よりも大きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子線回折(制限視野電子線回折ともいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-OS膜に対し、ナノ結晶の大きさと近いかナノ結晶より小さいプローブ径(例えば1nm以上30nm以下)の電子線を用いる電子線回折(ナノビーム電子線回折ともいう。)を行うと、ダイレクトスポットを中心とするリング状の領域内に複数のスポットが観測される電子線回折パターンが取得される場合がある。
【0569】
[a-like OS]
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆又は低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。また、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、膜中の水素濃度が高い。
【0570】
<<酸化物半導体の構成>>
次に、上述のCAC-OSの詳細について、説明を行う。なお、CAC-OSは材料構成に関する。
【0571】
[CAC-OS]
CAC-OSとは、例えば、金属酸化物を構成する元素が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで偏在した材料の一構成である。なお、以下では、金属酸化物において、一つまたは複数の金属元素が偏在し、該金属元素を有する領域が、0.5nm以上10nm以下、好ましくは、1nm以上3nm以下、またはその近傍のサイズで混合した状態をモザイク状、またはパッチ状ともいう。
【0572】
さらに、CAC-OSとは、第1の領域と、第2の領域と、に材料が分離することでモザイク状となり、当該第1の領域が、膜中に分布した構成(以下、クラウド状ともいう。)である。つまり、CAC-OSは、当該第1の領域と、当該第2の領域とが、混合している構成を有する複合金属酸化物である。
【0573】
ここで、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSを構成する金属元素に対するIn、Ga、およびZnの原子数比のそれぞれを、[In]、[Ga]、および[Zn]と表記する。例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSにおいて、第1の領域は、[In]が、CAC-OS膜の組成における[In]よりも大きい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、CAC-OS膜の組成における[Ga]よりも大きい領域である。または、例えば、第1の領域は、[In]が、第2の領域における[In]よりも大きく、且つ、[Ga]が、第2の領域における[Ga]よりも小さい領域である。また、第2の領域は、[Ga]が、第1の領域における[Ga]よりも大きく、且つ、[In]が、第1の領域における[In]よりも小さい領域である。
【0574】
具体的には、上記第1の領域は、インジウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。また、上記第2の領域は、ガリウム酸化物、ガリウム亜鉛酸化物などが主成分である領域である。つまり、上記第1の領域を、Inを主成分とする領域と言い換えることができる。また、上記第2の領域を、Gaを主成分とする領域と言い換えることができる。
【0575】
なお、上記第1の領域と、上記第2の領域とは、明確な境界が観察できない場合がある。
【0576】
例えば、In-Ga-Zn酸化物におけるCAC-OSでは、エネルギー分散型X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray spectroscopy)を用いて取得したEDXマッピングにより、Inを主成分とする領域(第1の領域)と、Gaを主成分とする領域(第2の領域)とが、偏在し、混合している構造を有することが確認できる。
【0577】
CAC-OSをトランジスタに用いる場合、第1の領域に起因する導電性と、第2の領域に起因する絶縁性とが、相補的に作用することにより、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSに付与することができる。つまり、CAC-OSとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。導電性の機能と絶縁性の機能とを分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。よって、CAC-OSをトランジスタに用いることで、高いオン電流(Ion)、高い電界効果移動度(μ)、および良好なスイッチング動作を実現することができる。
【0578】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、CAC-OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0579】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0580】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0581】
トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。例えば、酸化物半導体のキャリア濃度は1×1017cm-3以下、好ましくは1×1015cm-3以下、さらに好ましくは1×1013cm-3以下、より好ましくは1×1011cm-3以下、さらに好ましくは1×1010cm-3未満であり、1×10-9cm-3以上である。なお、酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性又は実質的に高純度真性と言う。なお、キャリア濃度の低い酸化物半導体を、高純度真性又は実質的に高純度真性な酸化物半導体を呼称する場合がある。
【0582】
また、高純度真性又は実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0583】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0584】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0585】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0586】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコン、又は炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコン又は炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコン、又は炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0587】
また、酸化物半導体にアルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属又はアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0588】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。または、酸化物半導体において、窒素が含まれると、トラップ準位が形成される場合がある。この結果、トランジスタの電気特性が不安定となる場合がある。このため、SIMSにより得られる酸化物半導体中の窒素濃度を、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下にする。
【0589】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満にする。
【0590】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0591】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0592】
(実施の形態7)
本実施の形態は、上記実施の形態に示す半導体装置などが形成された半導体ウェハ、及び当該半導体装置が組み込まれた電子部品の一例を示す。
【0593】
<半導体ウェハ>
初めに、半導体装置などが形成された半導体ウェハの例を、図29Aを用いて説明する。
【0594】
図29Aに示す半導体ウェハ4800は、ウェハ4801と、ウェハ4801の上面に設けられた複数の回路部4802と、を有する。なお、ウェハ4801の上面において、回路部4802の無い部分は、スペーシング4803であり、ダイシング用の領域である。
【0595】
半導体ウェハ4800は、ウェハ4801の表面に対して、前工程によって複数の回路部4802を形成することで作製することができる。また、その後に、ウェハ4801の複数の回路部4802が形成された反対側の面を研削して、ウェハ4801の薄膜化してもよい。この工程により、ウェハ4801の反りなどを低減し、部品としての小型化を図ることができる。
【0596】
次の工程としては、ダイシング工程が行われる。ダイシングは、一点鎖線で示したスクライブラインSCL1及びスクライブラインSCL2(ダイシングライン、又は切断ラインと呼称する場合がある)に沿って行われる。なお、スペーシング4803は、ダイシング工程を容易に行うために、複数のスクライブラインSCL1が平行になるように設け、複数のスクライブラインSCL2が平行になるように設け、スクライブラインSCL1とスクライブラインSCL2が垂直になるように設けることが好ましい。
【0597】
ダイシング工程を行うことにより、図29Bに示すようなチップ4800aを、半導体ウェハ4800から切り出すことができる。チップ4800aは、ウェハ4801aと、回路部4802と、スペーシング4803aと、を有する。なお、スペーシング4803aは、極力小さくなるようにすることが好ましい。この場合、隣り合う回路部4802の間のスペーシング4803の幅が、スクライブラインSCL1の切りしろと、又はスクライブラインSCL2の切りしろとほぼ同等の長さであればよい。
【0598】
なお、本発明の一態様の素子基板の形状は、図29Aに図示した半導体ウェハ4800の形状に限定されない。例えば、矩形の形状の半導体ウェハあってもよい。素子基板の形状は、素子の作製工程、及び素子を作製するための装置に応じて、適宜変更することができる。
【0599】
<電子部品>
図29Cに電子部品4700および電子部品4700が実装された基板(実装基板4704)の斜視図を示す。図29Cに示す電子部品4700は、モールド4711内にチップ4800aを有している。なお、図29Cに示すとおり、チップ4800aは、回路部4802が積層された構成としてもよい。図29Cは、電子部品4700の内部を示すために、一部を省略している。電子部品4700は、モールド4711の外側にランド4712を有する。ランド4712は電極パッド4713と電気的に接続され、電極パッド4713はチップ4800aとワイヤ4714によって電気的に接続されている。電子部品4700は、例えばプリント基板4702に実装される。このような電子部品が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板4702上で電気的に接続されることで実装基板4704が完成する。
【0600】
図29Dに電子部品4730の斜視図を示す。電子部品4730は、SiP(System in package)またはMCM(Multi Chip Module)の一例である。電子部品4730は、パッケージ基板4732(プリント基板)上にインターポーザ4731が設けられ、インターポーザ4731上に半導体装置4735、および複数の半導体装置4710が設けられている。
【0601】
電子部品4730では、半導体装置4710を有する。半導体装置4710としては、例えば、上記実施の形態で説明した半導体装置、広帯域メモリ(HBM:High Bandwidth Memory)などとすることができる。また、半導体装置4735は、CPU、GPU、FPGA、記憶装置などの集積回路(半導体装置)を用いることができる。
【0602】
パッケージ基板4732は、セラミック基板、プラスチック基板、またはガラスエポキシ基板などを用いることができる。インターポーザ4731は、シリコンインターポーザ、樹脂インターポーザなどを用いることができる。
【0603】
インターポーザ4731は、複数の配線を有し、端子ピッチの異なる複数の集積回路を電気的に接続する機能を有する。複数の配線は、単層または多層で設けられる。また、インターポーザ4731は、インターポーザ4731上に設けられた集積回路をパッケージ基板4732に設けられた電極と電気的に接続する機能を有する。これらのことから、インターポーザを「再配線基板」または「中間基板」と呼称する場合がある。また、インターポーザ4731に貫通電極を設けて、当該貫通電極を用いて集積回路とパッケージ基板4732を電気的に接続する場合もある。また、シリコンインターポーザでは、貫通電極として、TSV(Through Silicon Via)を用いることも出来る。
【0604】
インターポーザ4731としてシリコンインターポーザを用いることが好ましい。シリコンインターポーザでは能動素子を設ける必要が無いため、集積回路よりも低コストで作製することができる。一方で、シリコンインターポーザの配線形成は半導体プロセスで行なうことができるため、樹脂インターポーザでは難しい微細配線の形成が容易である。
【0605】
HBMでは、広いメモリバンド幅を実現するために多くの配線を接続する必要がある。このため、HBMを実装するインターポーザには、微細かつ高密度の配線形成が求められる。よって、HBMを実装するインターポーザには、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0606】
また、シリコンインターポーザを用いたSiP、MCMなどでは、集積回路とインターポーザ間の膨張係数の違いによる信頼性の低下が生じにくい。また、シリコンインターポーザは表面の平坦性が高いため、シリコンインターポーザ上に設ける集積回路とシリコンインターポーザ間の接続不良が生じにくい。特に、インターポーザ上に複数の集積回路を横に並べて配置する2.5Dパッケージ(2.5次元実装)では、シリコンインターポーザを用いることが好ましい。
【0607】
また、電子部品4730と重ねてヒートシンク(放熱板)を設けてもよい。ヒートシンクを設ける場合は、インターポーザ4731上に設ける集積回路の高さを揃えることが好ましい。例えば、本実施の形態に示す電子部品4730では、半導体装置4710と半導体装置4735の高さを揃えることが好ましい。
【0608】
電子部品4730を他の基板に実装するため、パッケージ基板4732の底部に電極4733を設けてもよい。図29Dでは、電極4733を半田ボールで形成する例を示している。パッケージ基板4732の底部に半田ボールをマトリクス状に設けることで、BGA(Ball Grid Array)実装を実現できる。また、電極4733を導電性のピンで形成してもよい。パッケージ基板4732の底部に導電性のピンをマトリクス状に設けることで、PGA(Pin Grid Array)実装を実現できる。
【0609】
電子部品4730は、BGAおよびPGAに限らず様々な実装方法を用いて他の基板に実装することができる。例えば、SPGA(Staggered Pin Grid Array)、LGA(Land Grid Array)、QFP(Quad Flat Package)、QFJ(Quad Flat J-leaded package)、またはQFN(Quad Flat Non-leaded package)などの実装方法を用いることができる。
【0610】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0611】
(実施の形態8)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した半導体装置を有する電子機器の一例について説明する。なお、図30には、当該半導体装置を有する電子部品4700が各電子機器に含まれている様子を図示している。
【0612】
[携帯電話]
図30に示す情報端末5500は、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)である。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
【0613】
情報端末5500は、上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、会話を認識してその会話内容を表示部5511に表示するアプリケーション、表示部5511に備えるタッチパネルに対してユーザが入力した文字、図形などを認識して、表示部5511に表示するアプリケーション、指紋、声紋などの生体認証を行うアプリケーションなどが挙げられる。
【0614】
[ウェアラブル端末]
また、図30には、ウェアラブル端末の一例として腕時計型の情報端末5900が図示されている。情報端末5900は、筐体5901、表示部5902、操作ボタン5903、操作子5904、バンド5905などを有する。
【0615】
ウェアラブル端末は、先述した情報端末5500と同様に、上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、ウェアラブル端末を装着した人の健康状態を管理するアプリケーション、目的地を入力することで最適な道を選択して誘導するナビゲーションシステムなどが挙げられる。
【0616】
[情報端末]
また、図30には、デスクトップ型情報端末5300が図示されている。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303と、を有する。
【0617】
デスクトップ型情報端末5300は、先述した情報端末5500と同様に、上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、設計支援ソフトウェア、文章添削ソフトウェア、献立自動生成ソフトウェアなどが挙げられる。また、デスクトップ型情報端末5300を用いることで、新規の人工知能の開発を行うことができる。
【0618】
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、デスクトップ用情報端末、ウェアラブル端末を例として、それぞれ図30に図示したが、スマートフォン、デスクトップ用情報端末、ウェアラブル端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、デスクトップ用情報端末、ウェアラブル端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどが挙げられる。
【0619】
[電化製品]
また、図30には、電化製品の一例として電気冷凍冷蔵庫5800が図示されている。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
【0620】
電気冷凍冷蔵庫5800に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、人工知能を有する電気冷凍冷蔵庫5800を実現することができる。人工知能を利用することによって電気冷凍冷蔵庫5800は、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材、その食材の消費期限などを基に献立を自動生成する機能、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材に合わせた温度に自動的に調節する機能などを有することができる。
【0621】
本一例では、電化製品として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電気オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH(Induction Heating)調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
【0622】
[ゲーム機]
また、図30には、ゲーム機の一例である携帯ゲーム機5200が図示されている。携帯ゲーム機5200は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
【0623】
更に、図30には、ゲーム機の一例である据え置き型ゲーム機7500が図示されている。据え置き型ゲーム機7500は、本体7520と、コントローラ7522を有する。なお、本体7520には、無線または有線によってコントローラ7522を接続することができる。また、図30に示していないが、コントローラ7522は、ゲームの画像を表示する表示部、ボタン以外の入力インターフェースとなるタッチパネル、スティック、回転式つまみ、スライド式つまみなどを備えることができる。また、コントローラ7522は、図30に示す形状に限定されず、ゲームのジャンルに応じて、コントローラ7522の形状を様々に変更してもよい。例えば、FPS(First Person Shooter)などのシューティングゲームでは、トリガーをボタンとし、銃を模した形状のコントローラを用いることができる。また、例えば、音楽ゲームなどでは、楽器、音楽機器などを模した形状のコントローラを用いることができる。更に、据え置き型ゲーム機は、コントローラを使わず、代わりにカメラ、深度センサ、マイクロフォンなどを備えて、ゲームプレイヤーのジェスチャー、及び/又は音声によって操作する形式としてもよい。
【0624】
また、上述したゲーム機の映像は、テレビジョン装置、パーソナルコンピュータ用ディスプレイ、ゲーム用ディスプレイ、ヘッドマウントディスプレイなどの表示装置によって、出力することができる。
【0625】
携帯ゲーム機5200に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、低消費電力の携帯ゲーム機5200を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0626】
更に、携帯ゲーム機5200に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、人工知能を有する携帯ゲーム機5200を実現することができる。
【0627】
本来、ゲームの進行、ゲーム上に登場する生物の言動、ゲーム上で発生する現象などの表現は、そのゲームが有するプログラムによって定められているが、携帯ゲーム機5200に人工知能を適用することにより、ゲームのプログラムに限定されない表現が可能になる。例えば、プレイヤーが問いかける内容、ゲームの進行状況、時刻、ゲーム上に登場する人物の言動が変化するといった表現が可能となる。
【0628】
また、携帯ゲーム機5200で複数のプレイヤーが必要なゲームを行う場合、人工知能によって擬人的にゲームプレイヤーを構成することができるため、対戦相手を人工知能によるゲームプレイヤーとすることによって、1人でもゲームを行うことができる。
【0629】
図30では、ゲーム機の一例として携帯ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様の電子機器はこれに限定されない。本発明の一態様の電子機器としては、例えば、家庭用の据え置き型ゲーム機、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどが挙げられる。
【0630】
[移動体]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、移動体である自動車、及び自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0631】
図30には移動体の一例である自動車5700が図示されている。
【0632】
自動車5700の運転席周辺には、スピードメーター、タコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することができるインストゥルメントパネルが備えられている。また、運転席周辺には、それらの情報を示す表示装置が備えられていてもよい。
【0633】
特に当該表示装置には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない。)からの映像を映し出すことによって、ピラーなどで遮られた視界、運転席の死角などを補うことができ、安全性を高めることができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。
【0634】
上記実施の形態で説明した半導体装置は人工知能の構成要素として適用できるため、例えば、当該半導体装置を自動車5700の自動運転システムに用いることができる。また、当該半導体装置を道路案内、危険予測などを行うシステムに用いることができる。当該表示装置には、道路案内、危険予測などの情報を表示する構成としてもよい。
【0635】
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様の半導体装置を適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
【0636】
[カメラ]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、カメラに適用することができる。
【0637】
図30には、撮像装置の一例であるデジタルカメラ6240が図示されている。デジタルカメラ6240は、筐体6241、表示部6242、操作ボタン6243、シャッターボタン6244等を有し、また、デジタルカメラ6240には、着脱可能なレンズ6246が取り付けられている。なお、ここではデジタルカメラ6240を、レンズ6246を筐体6241から取り外して交換することが可能な構成としたが、レンズ6246と筐体6241とが一体となっていてもよい。また、デジタルカメラ6240は、ストロボ装置、ビューファインダー等を別途装着することができる構成としてもよい。
【0638】
デジタルカメラ6240に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、低消費電力のデジタルカメラ6240を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0639】
更に、デジタルカメラ6240に上記実施の形態で説明した半導体装置を適用することによって、人工知能を有するデジタルカメラ6240を実現することができる。人工知能を利用することによって、デジタルカメラ6240は、顔、物体など被写体を自動的に認識する機能、又は当該被写体に合わせたピント調節、環境に合わせて自動的にフラッシュを焚く機能、撮像した画像を調色する機能などを有することができる。
【0640】
[ビデオカメラ]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、ビデオカメラに適用することができる。
【0641】
図30には、撮像装置の一例であるビデオカメラ6300が図示されている。ビデオカメラ6300は、第1筐体6301、第2筐体6302、表示部6303、操作キー6304、レンズ6305、接続部6306等を有する。操作キー6304及びレンズ6305は第1筐体6301に設けられており、表示部6303は第2筐体6302に設けられている。そして、第1筐体6301と第2筐体6302とは、接続部6306により接続されており、第1筐体6301と第2筐体6302の間の角度は、接続部6306により変更が可能である。表示部6303における映像を、接続部6306における第1筐体6301と第2筐体6302との間の角度に従って切り替える構成としてもよい。
【0642】
ビデオカメラ6300で撮影した映像を記録する際、データの記録形式に応じたエンコードを行う必要がある。人工知能を利用することによって、ビデオカメラ6300は、エンコードの際に、人工知能によるパターン認識を行うことができる。このパターン認識によって、連続する撮像画像データに含まれる人、動物、物体などの差分データを算出して、データの圧縮を行うことができる。
【0643】
[PC用の拡張デバイス]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、PC(Personal Computer)などの計算機、情報端末用の拡張デバイスに適用することができる。
【0644】
図31Aは、当該拡張デバイスの一例として、持ち運びのできる、演算処理が可能なチップが搭載された、PCに外付けする拡張デバイス6100を示している。拡張デバイス6100は、例えば、USB(Universal Serial Bus)などでPCに接続することで、当該チップによる演算処理を行うことができる。なお、図31Aは、持ち運びが可能な形態の拡張デバイス6100を図示しているが、本発明の一態様に係る拡張デバイスは、これに限定されず、例えば、冷却用ファンなどを搭載した比較的大きい形態の拡張デバイスとしてもよい。
【0645】
拡張デバイス6100は、筐体6101、キャップ6102、USBコネクタ6103及び基板6104を有する。基板6104は、筐体6101に収納されている。基板6104には、上記実施の形態で説明した半導体装置などを駆動する回路が設けられている。例えば、基板6104には、チップ6105(例えば、上記実施の形態で説明した半導体装置、電子部品4700、メモリチップなど。)、コントローラチップ6106が取り付けられている。USBコネクタ6103は、外部装置と接続するためのインターフェースとして機能する。
【0646】
拡張デバイス6100をPCなど用いることにより、当該PCの演算処理能力を高くすることができる。これにより、処理能力の足りないPCでも、例えば、人工知能、動画処理などの演算を行うことができる。
【0647】
[放送システム]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、放送システムに適用することができる。
【0648】
図31Bは、放送システムにおけるデータ伝送を模式的に示している。具体的には、図31Bは、放送局5680から送信された電波(放送信号)が、各家庭のテレビジョン受信装置(TV)5600に届くまでの経路を示している。TV5600は、受信装置を備え(図示しない。)、アンテナ5650で受信された放送信号は、当該受信装置を介して、TV5600に送信される。
【0649】
図31Bでは、アンテナ5650は、UHF(Ultra High Frequency)アンテナを図示しているが、アンテナ5650としては、BS・110°CSアンテナ、CSアンテナなども適用できる。
【0650】
電波5675A、電波5675Bは地上波放送用の放送信号であり、電波塔5670は受信した電波5675Aを増幅して、電波5675Bの送信を行う。各家庭では、アンテナ5650で電波5675Bを受信することで、TV5600で地上波放送を視聴することができる。なお、放送システムは、図31Bに示す地上波放送に限定せず、人工衛星を用いた衛星放送、光回線によるデータ放送などとしてもよい。
【0651】
上述した放送システムは、上記実施の形態で説明した半導体装置を適用して、人工知能を利用した放送システムとしてもよい。放送局5680から各家庭のTV5600に放送データを送信するとき、エンコーダによって放送データの圧縮が行われ、アンテナ5650が当該放送データを受信したとき、TV5600に含まれる受信装置のデコーダによって当該放送データの復元が行われる。人工知能を利用することによって、例えば、エンコーダの圧縮方法の一である動き補償予測において、表示画像に含まれる表示パターンの認識を行うことができる。また、人工知能を利用したフレーム内予測などを行うこともできる。また、例えば、解像度の低い放送データを受信して、解像度の高いTV5600で当該放送データの表示を行うとき、デコーダによる放送データの復元において、アップコンバートなどの画像の補間処理を行うことができる。
【0652】
上述した人工知能を利用した放送システムは、放送データの量が増大する超高精細度テレビジョン(UHDTV:4K、8K)放送に対して好適である。
【0653】
また、TV5600側における人工知能の応用として、例えば、TV5600に人工知能を有する録画装置を設けてもよい。このような構成にすることによって、当該録画装置にユーザの好みを人工知能に学習させることで、ユーザの好みにあった番組を自動的に録画することができる。
【0654】
[認証システム]
上記実施の形態で説明した半導体装置は、認証システムに適用することができる。
【0655】
図31Cは、掌紋認証装置を示しており、筐体6431、表示部6432、掌紋読み取り部6433、配線6434を有している。
【0656】
図31Cには、掌紋認証装置が手6435の掌紋を取得する様子を示している。取得した掌紋は、人工知能を利用したパターン認識の処理が行われ、当該掌紋が本人のものであるかどうかの判別を行うことができる。これにより、セキュリティの高い認証を行うシステムを構築することができる。また、本発明の一態様に係る認証システムは、掌紋認証装置に限定されず、指紋、静脈、顔、虹彩、声紋、遺伝子、体格などの生体情報を取得して生体認証を行う装置であってもよい。
【0657】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例1】
【0658】
本実施例では、実施の形態1で説明した回路MCが乗算セルとして適切に動作するかを確認するためのシミュレーションを行った結果について説明する。
【0659】
当該シミュレーションとしては、図4に示す回路MCの構成を回路シミュレータに入力して、トランジスタM2の第1端子-第2端子間に流れる電流Iと、トランジスタM6の第1端子-第2端子間に流れる電流Iと、トランジスタM9の第1端子-第2端子間に流れる電流Iとして、トランジスタM10の第1端子-第2端子間(配線OL)に流れる出力電流を計算した。
【0660】
なお、当該シミュレーションに入力した図5の回路MCに含まれる容量CGは省略し、図5に示した、トランジスタM1によるパワーゲーティング(高電源電位の供給、又は停止を行う動作)をおこなっている。
【0661】
トランジスタM2のゲートに保持する電圧は、一例として、0.01V刻みとして、0.25Vから0.32Vまでの電圧範囲の電位とした。
【0662】
また、配線XDLに入力した電位、つまりトランジスタM6のゲートに入力した電位は、一例として、0.02V刻みとして、0.2Vから0.34Vまでの電圧範囲の電位とした。
【0663】
また、配線BDLに入力した電位、つまりトランジスタM9のゲートに入力した電位は、一例として、常に0.34Vとした。
【0664】
ここで、上述した電圧の入力条件で、シミュレーションで得られた出力電流のグラフを図32Aに示す。図32Aの横軸は、理論上期待される出力電流の大きさを示し、縦軸は、シミュレーションで計算された出力電流の大きさを示している。図32Aのグラフの結果から、シミュレーションで計算された出力電流の大きさは、理論上期待される出力電流の大きさと、概ね一致していることが確認できた。
【0665】
また、上記のシミュレーションで用いた回路の演算効率を図32Bに示す。図32Bの横軸は、シミュレーションで計算された出力電流の大きさを示し、図32Bの縦軸は、演算効率を示している。図32Bのとおり、演算効率は出力電流毎に異なっているが、全ての出力電流において、その演算効率が100TOPS/W以上となっていることを確認できた。
【実施例2】
【0666】
次に、実施の形態1で説明した回路HC2、回路HC5乃至回路HC10などが設けられたトランジスタにおいて、当該トランジスタのしきい値電圧とそのバックゲート-ソース間電圧の関係について、説明する。
【0667】
初めに、シミュレーションで用いた回路構成について説明する。図33は、当該シミュレーションに用いた回路構成であって、トランジスタMSと、トランジスタBTrと、容量BCと、を有する。しきい値電圧を調整するトランジスタは、トランジスタMSであって、トランジスタMSは、例えば、図3の回路MCにおけるトランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10に相当する。また、トランジスタBTrと、容量BCと、は、回路HCに含まれており、回路HCは、例えば、図3の回路MCにおける回路HC2、回路HC5、回路HC6、回路HC7、回路HC8、回路HC9、回路HC10に相当する。また、トランジスタMSのバックゲート-ソース(端子ST1)間の電圧Vbsは、容量BCによって保持できるものとする。
【0668】
トランジスタMSのしきい値電圧Vshがおよそ0.1Vから0.45Vまでの範囲であるとき、ゲート(端子GT)-ソース(端子ST1)間電圧が0Vの条件でトランジスタMSの第1端子-第2端子間に1.0×10-14Aの電流を流す場合を考える。図33の回路構成、及び上記条件を基にシミュレーションを行った結果、Vbsを0Vから2.5Vまでの電圧範囲で制御することによって、ゲート(端子GT)-ソース(端子ST1)間電圧が0Vの条件でトランジスタMSの第1端子-第2端子間に概ね1.0×10-14Aの電流を流すことができる結果となった。また、トランジスタMSのしきい値電圧Vshと、トランジスタMSのバックゲート-ソース(端子ST1)間の電圧Vbsと、の関係は図34のとおりとなった。
【0669】
上記のシミュレーションの結果より、図33に示す回路HC(図3の回路HC2、回路HC5乃至回路HC10に相当)を、しきい値電圧の制御を行うトランジスタMS(図3のトランジスタM2、トランジスタM5乃至トランジスタM10に相当)のバックゲートに電気的に接続することによって、トランジスタMSのしきい値電圧が適切に制御できることが確認できた。
【符号の説明】
【0670】
SDV1:半導体装置、SDV1-1:半導体装置、SDV1-2:半導体装置、SDV2:半導体装置、SDV3:半導体装置、SDV4:半導体装置、SDV5:半導体装置、CA:セルアレイ、MC:回路、MC[1,1]:回路、MC[1,n]:回路、MC[h,1]:回路、MC[h,n]:回路、MC[m-h+1,1]:回路、MC[m-h+1,n]:回路、MC[m,1]:回路、MC[m,n]:回路、MC[1]:回路、MC[h]:回路、MC[m-h+1]:回路、MC[m]:回路、WDC:回路、WDIC:回路、WDICa:回路、XDC:回路、BDC:回路、WWC:回路、XWC:回路、BGC:回路、ACTV:回路、ADR[1]:回路、ADR[n]:回路、ACF:回路、HC2:回路、HC5:回路、HC6:回路、HC7:回路、HC8:回路、HC9:回路、HC10:回路、HC:回路、ISC:回路、PE:回路、PE[1]:回路、PE[h]:回路、PE[m-h+1]:回路、PE[m]:回路、PEA:回路、PDA:回路、IMA:撮像領域、CS:電流源、INV1:インバータ回路、INV2:インバータ回路、INV3:インバータ回路、ND:NAND回路、LE:負荷、CS1:電流源、CS2:電流源、CS3:電流源、CS4:電流源、M1:トランジスタ、M2:トランジスタ、M2a:トランジスタ、M2b:トランジスタ、M2A:トランジスタ、M2Aa:トランジスタ、M2Ab:トランジスタ、M3:トランジスタ、M3a:トランジスタ、M3b:トランジスタ、M3A:トランジスタ、M3Aa:トランジスタ、M3Ab:トランジスタ、M4:トランジスタ、M4a:トランジスタ、M4b:トランジスタ、M5:トランジスタ、M5a:トランジスタ、M5b:トランジスタ、M6:トランジスタ、M6a:トランジスタ、M6b:トランジスタ、M6A:トランジスタ、M6Aa:トランジスタ、M6Ab:トランジスタ、M7:トランジスタ、M7a:トランジスタ、M7b:トランジスタ、M8:トランジスタ、M8a:トランジスタ、M8b:トランジスタ、M9:トランジスタ、M9a:トランジスタ、M9b:トランジスタ、M10:トランジスタ、M10a:トランジスタ、M10b:トランジスタ、M11:トランジスタ、M11a:トランジスタ、M11b:トランジスタ、M12:トランジスタ、M12a:トランジスタ、M12b:トランジスタ、M13:トランジスタ、M14:トランジスタ、M15:トランジスタ、M16:トランジスタ、M17:トランジスタ、MS:トランジスタ、CT:トランジスタ、BTr:トランジスタ、Tr1:トランジスタ、Tr1[1]:トランジスタ、Tr1[2]:トランジスタ、Tr1[K]:トランジスタ、Tr2:トランジスタ、Tr2[1]:トランジスタ、Tr2[2]:トランジスタ、Tr2[K]:トランジスタ、Tr3:トランジスタ、SWW:スイッチ、PD:フォトダイオード、PD[1]:フォトダイオード、PD[h]:フォトダイオード、PD[m-h+1]:フォトダイオード、PD[m]:フォトダイオード、C1:容量、C2:容量、C3:容量、C6:容量、CG:容量、BC:容量、WWL:配線、WWL[1]:配線、WWL[m]:配線、WWLB:配線、WWLB[1]:配線、WWLB[m]:配線、WDL:配線、WDL[1]:配線、WDL[n]:配線、WDIL:配線、WDIL[1]:配線、WDIL[n]:配線、XDL:配線、XDL[1]:配線、XDL[h]:配線、XDL[m-h+1]:配線、XDL[m]:配線、BDL:配線、BDL[1]:配線、BDL[m]:配線、BGL:配線、BGL[1]:配線、BGL[m]:配線、XWL[1]:配線、XWL[n]:配線、OL:配線、OL[1]:配線、OL[n]:配線、RSL:配線、TXL:配線、CVL:配線、VTL:配線、VWL:配線、VDE:配線、VDE2:配線、VDE3:配線、VGE:配線、VGE2:配線、VGE3:配線、VINIL1:配線、VDDL:配線、BWL2:配線、BWL5:配線、BWL6:配線、BWL7:配線、BWL8:配線、BWL9:配線、BWL10:配線、BGL2:配線、BGL5:配線、BGL6:配線、BGL7:配線、BGL8:配線、BGL9:配線、BGL10:配線、BGLA:配線、ZL:配線、ZL[1]:配線、ZL[n]:配線、BIL:配線、DW[1]:配線、DW[2]:配線、DW[K]:配線、IML:配線、PI:配線、VTHL:配線、IT:端子、OT:端子、T1:端子、T2:端子、GT:端子、ST:端子、BSE:基板、SIL:構造体、OSL:構造体、OSL1:構造体、OSL2:構造体、PDL:構造体、SCL1:スクライブライン、SCL2:スクライブライン、300:トランジスタ、310:基板、310A:基板、312:素子分離層、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、411:絶縁体、412:絶縁体、413:絶縁体、414:絶縁体、416:導電体、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、510:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、522:絶縁体、524:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530ba:領域、530bb:領域、530bc:領域、540a:導電体、540b:導電体、541a:絶縁体、541b:絶縁体、542a:導電体、542b:導電体、543a:酸化物、543b:酸化物、544:絶縁体、546:導電体、550:絶縁体、550a:絶縁体、550b:絶縁体、552:絶縁体、554:絶縁体、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、571a:絶縁体、571b:絶縁体、574:絶縁体、576:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、610:導電体、612:導電体、620:導電体、630:絶縁体、640:絶縁体、650:絶縁体、660:導電体、4700:電子部品、4702:プリント基板、4704:実装基板、4710:半導体装置、4711:モールド、4712:ランド、4713:電極パッド、4714:ワイヤ、4730:電子部品、4731:インターポーザ、4732:パッケージ基板、4733:電極、4735:半導体装置、4800:半導体ウェハ、4800a:チップ、4801:ウェハ、4801a:ウェハ、4802:回路部、4803:スペーシング、4803a:スペーシング、5200:携帯ゲーム機、5201:筐体、5202:表示部、5203:ボタン、5300:デスクトップ型情報端末、5301:本体、5302:ディスプレイ、5303:キーボード、5500:情報端末、5510:筐体、5511:表示部、5600:TV、5650:アンテナ、5670:電波塔、5675A:電波、5675B:電波、5680:放送局、5700:自動車、5800:電気冷凍冷蔵庫、5801:筐体、5802:冷蔵室用扉、5803:冷凍室用扉、5900:情報端末、5901:筐体、5902:表示部、5903:操作ボタン、5904:操作子、5905:バンド、6100:拡張デバイス、6101:筐体、6102:キャップ、6103:USBコネクタ、6104:基板、6105:チップ、6106:コントローラチップ、6240:デジタルカメラ、6241:筐体、6242:表示部、6243:操作ボタン、6244:シャッターボタン、6246:レンズ、6300:ビデオカメラ、6301:第1筐体、6302:第2筐体、6303:表示部、6304:操作キー、6305:レンズ、6306:接続部、6431:筐体、6432:表示部、6433:掌紋読み取り部、6434:配線、6435:手、7500:据え置き型ゲーム機、7520:本体、7522:コントローラ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図25
図26A
図26B
図27
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図29C
図29D
図30
図31A
図31B
図31C
図32A
図32B
図33
図34