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特許7596389統合されたレーダーセンサを有する乗り物のための複合ペイン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】統合されたレーダーセンサを有する乗り物のための複合ペイン
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20241202BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
C03C27/12 N
B60J1/00 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022543153
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-17
(86)【国際出願番号】 EP2021050148
(87)【国際公開番号】W WO2021144180
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】20151969.1
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500374146
【氏名又は名称】サン-ゴバン グラス フランス
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ギレッセン
(72)【発明者】
【氏名】マルセル クライン
(72)【発明者】
【氏名】バレンティーン シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト ベスラー
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0240022(US,A1)
【文献】国際公開第2020/008720(WO,A1)
【文献】特表2017-507873(JP,A)
【文献】特開2006-244316(JP,A)
【文献】特表平09-501120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12,
B32B 17/10,
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性中間層(3)を介して互いに結合している外側ペイン(1)及び内側ペイン(2)を有している、乗り物のためのルーフパネルとしての複合ペイン(100)であって、
前記複合ペイン(100)は、外部環境から乗員のための乗り物内部を分離するために提供され、
少なくとも1つのレーダーセンサ(4)が、前記熱可塑性中間層(3)内に統合されており、前記レーダーセンサ(4)が前記乗り物内部にレーダービームを射出しかつ反射されたレーダービームを受け取るように、設計されかつ配置されており、かつ、
前記レーダーセンサが、前記乗り物内部における人又は動物の動き及び/又は存在を判定するための評価ユニットに接続されており、
前記レーダーセンサが、1mm未満の厚みを有する、
複合ペイン(100)。
【請求項2】
前記熱可塑性中間層(3)が、1又は複数の熱可塑性フィルムから形成されており、前記熱可塑性中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、及び/若しくはポリウレタンを含有し、又はこれらでできている、請求項1に記載の複合ペイン(100)。
【請求項3】
前記レーダーセンサ(4)が、前記熱可塑性中間層(3)に埋め込まれて配置されている、請求項1又は2に記載の複合ペイン(100)。
【請求項4】
前記レーダーセンサが、前記外側ペイン(1)及び/又は前記内側ペイン(2)上の黒色プリント又は白色プリントによって光学的に隠されている、請求項1に記載の複合ペイン(100)。
【請求項5】
前記レーダーセンサ(4)が、少なくとも2GHzの周波数帯域幅及び/又は76GHz~150GHzの周波数帯域でレーダーデータを受け取るために作動することができる、請求項1又は2に記載の複合ペイン(100)。
【請求項6】
前記レーダーセンサ(4)が、好ましくは、30cm~10mの検出範囲を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合ペイン(100)。
【請求項7】
前記レーダーセンサ(4)が、少なくとも1つのレーダートランシーバを実施する半導体チップを有している、請求項1に記載の複合ペイン(100)。
【請求項8】
前記半導体チップが、追加的に、前記レーダーセンサ(4)のデジタルシグナル処理コンポーネント及び/若しくは制御ユニットを実装しており、かつ/又は、前記レーダーセンサの前記半導体チップ及びアンテナアセンブリが、パッケージとして実施されており、かつ前記中間層(3)内に統合されている、請求項7に記載の複合ペイン(100)。
【請求項9】
前記レーダーセンサ(4)及び/又は前記評価ユニットが、前記乗り物の車載電子機器に接続しており、かつ/又は前記乗り物の警告システムに接続しており、若しくは警告を出力するための外部出力装置に接続している、請求項1又は2に記載の複合ペイン(100)。
【請求項10】
前記複合ペイン(100)、特には前記中間層(3)が、少なくとも1つのさらなるセンサ及び/又は少なくとも1つのさらなる機能素子を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合ペイン(100)。
【請求項11】
下記の工程を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合ペイン(100)の製造方法:
- 外側ペイン(1)と、内側ペイン(2)と、これらの間に配置されている、前記熱可塑性中間層(3)を形成するための少なくとも1つの熱可塑性フィルムと、から構成されるスタック配列を提供すること、
ここで、少なくとも1つの熱可塑性フィルムが、少なくとも1つのレーダーセンサを有しており、又は、レーダーセンサ(4)が、前記熱可塑性フィルムと、前記外側ペイン(1)及び/又は前記内側ペイン(2)との間に配置されている、
- 前記スタック配列を積層して、複合ペイン(100)を形成すること。
【請求項12】
前記レーダーセンサ(4)を、前記熱可塑性中間層(3)の少なくとも1つの熱可塑性フィルムにおける切り欠き部に、形状適合的に挿入する、請求項11に記載の複合ペイン(100)の製造方法。
【請求項13】
前記レーダーセンサ(4)が、CANバスを介して、他のセンサに接続しておりかつ/又は車載電子機器に接続している、請求項11又は12に記載の複合ペイン(100)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合されたレーダーセンサを有する乗り物のための複合ペイン、及びその製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代的な乗り物は、今や、可能な限り最高度の効率性及び最適な乗員安全性のために開発されており、種々の運転者支援システム(ドライバーアシストシステム)を備えている。これらとしては、例えば、雨センサ、日光センサ、バックライトセンサ、超音波センサ、光学カメラ、及びレーダーセンサが挙げられる。これらは、一般に、交通監視のために用いられ、例えば、道路標識を認識することができ、又は、乗り物の外の物の位置及び速度を検出することができ、例えば道路上に位置している他の道路使用者又は障害物を検出することができる。現在、この目的のために、光学カメラ又はレーダーシステムが主に用いられる。
【0003】
現在、カメラシステム、例えば、赤外線カメラシステムは、主に乗り物内部を監視するために用いられ、例えば、運転者の監視、しぐさ(ジェスチャ)の認識、及び疲労検出のために用いられている。人の顔領域、例えば運転者の顔領域を、カメラで探索し監視することができる。そして、記録された画像から、目領域(目の開閉)を分離し評価することができる。そして、まぶたを閉じる頻度から、疲労の状態に関する結論を導くことができる。しかしながら、光学センサシステムの機能及びデータ品質は、通常は、環境的な影響及び周囲の明るさに高度に依存し、カメラシステムは、正確に位置合わせされている必要もあり、妨害なく検出領域を「見る」必要もある。原則として、カメラは、乗り物内部において、人及び人の位置を検出し判定することができる。しかしながら、布によって太陽から保護されるべき、チャイルドシート内の子供は、覆いを通して検出されないことがある。赤外線カメラによれば、乗り物内部における物から人を区別することができ、すなわち、例えば、チャイルドシート内の子供と空のチャイルドシートとを区別することができる。
【0004】
太陽が照っているときにカギがかけられた乗り物内に子供又は動物が取り残された場合、過熱に起因して、重篤な健康状態又はさらには死が、非常に急速に起こる可能性がある。米国だけでも、2018年に、車内に残された50超の子供が、過熱によって死亡している。しかしながら、監視のために現在用いられている、赤外線カメラの画像及びデータ品質は、太陽放射及び加熱された内部によって非常に悪影響を受け、そのため、一定の条件下では、信頼性のある監視及び評価を提供することができない。さらには、データの評価における計算のための費用が非常に高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
結果として、本発明の目的は、乗り物内部及びそこに位置している人に関する向上した安全機能を有する乗り物のための、経済的でありかつ容易に生産される、複合ペインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的及び他の目的は、本発明の提案に従って、独立請求項に係る複合ペインによって、達成される。本発明の有利な態様が、従属請求項から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、乗り物のルーフパネルの例を用いた、本発明に係る複合ペインの実施態様の平面図である。
図2図2は、乗り物に設置された図1のルーフパネルの平面図である。
図3図3は、図1の分割線X-X´に沿う、複合ペインの断面図である。
図4図4は、本発明に係る方法の実施態様のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、熱可塑性中間層を介して互いに結合した外側ペイン及び内側ペインを有する乗り物用の複合ペインに関し、この複合ペインは、乗員のための乗り物内部を外部環境から分離するために提供され、少なくとも1つのレーダーセンサが、熱可塑性中間層中に統合されており、レーダーセンサが乗り物内部にレーダービームを射出しかつ反射したレーダービームを受け取るように、設計されかつ配置されており、かつ、レーダーセンサは、乗り物内部における人又は動物の動き及び/又は存在を判定するための評価ユニットに接続されている。
【0009】
本発明に従って複合ペインに少なくとも1つのレーダーセンサを統合することは、有利には、乗り物内部の、又は乗り物内部の人及び/若しくは動物の、信頼性の高い監視を提供することを可能にする。有利には、レーダーセンサ又はレーダーデータの判定が、暗闇の場合、又は強い太陽光及び熱の場合であっても、可能である。さらに、繊維製品で覆われた人及び動物並びにその動きも、容易に検出し監視することができる。レーダーセンサは、熱可塑性中間層の中に統合され、そのようにしてそれに封入され、固定され、かつ環境的な影響に対して保護される。有利には、レーダーシグナルが、ガラス及びプラスチックを貫通することができ、また、振動に対して非感受性である。そして、受け取られたデータの評価を、レーダーセンサに接続された評価ユニットによって実行する。
【0010】
原則として、本発明に係る複合ペインの製造及び使用の条件下で熱的かつ化学的に安定でありかつ寸法的に安定であるすべての電気絶縁性の物質が、外側ペイン及び内側ペインとして適している。
【0011】
用語「外側ペイン」及び「内側ペイン」は、単に、本発明に係る複合ペインにおける2つのペインを区別するために選択されている。これらの用語は、幾何学的な配置に関するいかなる規定も暗示しない。本発明に係る複合ペインが、例えば、開口部、例えば、乗り物又は建物の開口部に提供されて、内部を外部環境から分離する場合には、通常、外側ペインは、外部環境に面し、内側ペインは、内部に面する。
【0012】
ペインは、好ましくは、ガラスを含み又はガラスでできており、特に好ましくは、平坦ガラス、最も特に好ましくは、フロートガラス、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、若しくは石英ガラス、を含み、又はこれらでできている。代替的には、ペインが、クリアプラスチックを含み又はクリアプラスチックでできていてよく、好ましくは、剛性のクリアプラスチック、特には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルクロリド、及び/若しくはこれらの混合体を含み、又はこれらでできている。ペインは、好ましくは透明であり、特に、乗り物のウィンドシールド若しくはリアウィンドウとしてのペインの使用のために透明であり、又は、高い光透過率が所望される他の使用のために透明である。本発明に関して、「透明」は、この場合、可視スペクトル領域において70%超の透過率を有するペインを意味する。しかしながら、運転者の交通に関係する視界に位置しないペインに関して、例えば、ルーフパネルに関して、透過率は、はるかに比較的低くてもよく、例えば、5%超であってよい。
【0013】
ペインの厚みは、広い範囲で種々の値であってよく、したがって、個々の場合の要件に適合させてよい。好ましくは1.0mm~25mm、例えば1.1mm~2.0mm、好ましくは1.4mm~2.5mm、例えば1.6mm又は2.1mmの個々のペインの標準的な厚みが、乗り物ガラスのために用いられる。ペインのサイズは、広い範囲で種々の値であってよく、本発明に係る使用のサイズに依存する。例えば、第1ペイン及び第2ペインは、200cm~20mの面積を有し、これは、乗り物構造で慣用的である。
【0014】
本発明に係る複合ペインの1つの実施態様では、熱可塑性中間層が、1又は複数の熱可塑性フィルムから形成される。熱可塑性中間層は、好ましくは、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、音響PVB、赤外放射(IR)反射性PVB、ポリエチレン、及び/若しくはポリウレタン、を含み、又はこれらでできている。言及された材料は、複合ペインの製造において特に適していることが示されている。それぞれの熱可塑性フィルムの厚みは、好ましくは、0.2mm~2mm、特に好ましくは0.3mm~1mm、特には0.3mm~0.9mmであり、例えば、0.38mm、0.51mm、0.78mm、0.81mm又は0.86mmである。そのような熱可塑性フィルムは、市販されている。
【0015】
本発明の別の実施態様では、レーダーセンサが、熱可塑性中間層に埋め込まれて配置されている。本発明によれば、用語「埋め込まれている」は、中間層の材料が、レーダーセンサを、全ての側及び表面から取り囲んでいることを意味する。換言すると、この実施態様では、レーダーセンサが、中間層の熱可塑性材料によって、サンドイッチ状で取り囲まれてもいる。結果として、レーダーセンサは、一方では、環境的な影響、例えば湿分、に対して保護されうるだけでなく、振動に対しても保護されうる。さらには、この実施態様では、また、レーダーセンサが、中間層の材料を介して、内側ペイン及び外側ペインに接続し、かつ強固に付着している。また、複合ペインの外観が、この設計によって、さらに向上しうる。
【0016】
別の実施態様では、本発明に係る複合ペインにおけるレーダーセンサが、外側ペイン及び/又は内側ペイン上の黒色若しくは白色のプリントによって又はステッカーによって、視覚的に覆われる(マスキングされる)ようにされる。マスキング(覆い)は、外側ペインの外部側表面I、外側ペインの内部側表面II、内側ペインの内部側表面III、及び/又は内側ペインの外部側表面IVに適用されてよい。結果として、複合ペインの外観が向上しうる。マスキングは、例えば接続リード線を隠す黒色又は白色のプリントによって慣用的な端部マスキングを提供する際に慣用的される方法と同様にして、適用し又は実施することができる。マスキングは、例えば、スクリーンプリントによって、内側ペイン及び/又は外側ペインに適用されてよい。有利には、レーダーセンサの機能は、そのようなマスキングによって妨害されず、又は影響されない。
【0017】
本発明の別の実施態様によれば、レーダーデータを受け取るためのレーダーセンサが、少なくとも2GHz、例えば、4、6、8又は10GHzの周波数帯域幅、かつ/又は76GHz~150GHzの周波数帯域で、作動することができる。例えば、レーダーセンサは、76GHz~140GHz、76GHz~120GHzの周波数帯域で作動することができる。例示的な実施態様では、レーダーセンサが、約140GHzにおいて10GHzの周波数帯域幅にわたって作動することができる。
【0018】
本発明に係る複合ペインの別の実施態様では、レーダーセンサが、好ましくは、30cm~10mの検出範囲を有する。乗り物内部を含めるように本発明に従って意図されているこの小さい範囲は、レーダーセンサ及びアンテナの送信電力及びサイズを小さく維持することも可能にする。一方では、これは、本発明に従う複合ペインへのレーダーセンサの統合を促進し、他方では、レーダーセンサのエネルギー効率的な作動も可能にする。
【0019】
本発明に係る複合ペインの別の実施態様では、レーダーセンサが、好ましくは1mm未満、特に好ましくは0.5mm未満の厚みを有する。「厚み」は、換言すると、レーダーセンサの高さを意味する。有利には、レーダーセンサの高さは、複合ガラスペインの中間層へと容易に統合しうるように選択される。例えば、レーダーセンサの寸法は、5cm×5cm×0.75mm(長さ×幅×厚み)であってよい。センサ領域、すなわち、用いられるレーダーセンサの長さ及び幅に関して、サイズは、たとえ美的な理由から小型化が常に求められるものの、原則として重要ではない。複合ペインへのレーダーセンサの統合は、既に利用可能なレーダーセンサ及びレーダセンサシステムの既に可能な小さい寸法に起因して、容易に達成可能である。有利には、レーダーシグナルは、ガラス及びプラスチックを貫通することができ、振動に対して非感受性である。
【0020】
別の実施態様では、レーダーセンサが、少なくとも1つのレーダー送受信機(レーダートランシーバ)を実施する半導体チップを有する。そのようなレーダーセンサの例は、FMCWレーダー技術で実施されるシングルチップシステム、例えば、77GHz又は140GHzのシングルチップレーダーセンサである。そのようなレーダーセンサによれば、大きな動き、例えばしぐさ、だけでなく、生命機能、例えば人の心音又は呼吸及び乗り物内部における人の存在を、特に容易に検出することができ、そのようなセンサシステムの寸法は、有利には特にコンパクトかつ小型に設計され、これは、複合ペインの中間層への統合をさらに促進する。
【0021】
本発明によれば、半導体チップは、さらに、レーダーセンサのデジタルシグナル処理コンポーネント及び/又は制御ユニットを追加的に実施することができる。代替的に、又は追加的に、レーダーセンサの半導体チップ及びアンテナアセンブリは、パッケージとして実施されてよく、中間層に統合されてよい。有利には、半導体チップ上の非常にコンパクトなCMOSレーダーセンサ、すなわち、レーダーシグナルを処理するための、オンチップメモリ、シグナル処理素子、マイクロコントローラ、及び/又は統合されたアンテナを有するいわゆる「レーダーオンチップシステム」が、既に利用可能であり、特にコンパクトであり乗り物内部での短距離用途に特に適している。アンテナの追加的な統合は、短いシグナル経路及び比較的低いシグナル対ノイズ比を保証し、高い周波数及び比較的広くかつ可変的な周波数帯域幅に適している。
【0022】
別の実施態様では、レーダーセンサ及び/又は評価ユニットが、乗り物の車載電子機器に接続されており、かつ/又は警告システムに接続されており、若しくは警告シグナルを出力するための外部出力装置に接続している。このようにして、例えば、乗り物において子供の存在を検知し、その乗り物にその子供以外にいない場合に、乗り物の警告システムが、音響的及び/又は視覚的なシグナルを出力することができる。異なる又は追加的な可能性としては、自動緊急システムeCallへのリンクがありうる。これは、迅速な対応を保証する。
【0023】
別の実施態様では、複合ペイン、特には中間層が、少なくとも1つのさらなるセンサ、例えば、1又は複数のレーダーセンサ、及び/又は少なくとも1つのさらなる機能性素子を含むようにする。これは、一方では、追加的な機能、例えば、盗難防止、乗り物監視、又は運転支援を可能にする。さらに、例えば、追加的な機能を有する1又は複数のカメラ又は他のセンサを、複合ペインに統合することができる。しかしながら、特に、レーダーセンサの安全機能を追加的に支援し、かつ/又は、随意に、機能的にそれらに接続し、若しくはそれらと相互作用する、追加のセンサ又は機能素子を提供することもできる。これは、例えば、CANバスシステムを介して互いに接続しておりそのようなCANネットワークにおいて同時に作動する1又は複数の追加のレーダーセンサによって、行うことができる。そして、種々のセンサのレーダーデータを、一緒に処理し評価することができ、もたらされる計測データの正確性及び信頼性がさらに増加する。
【0024】
本発明は、さらに、上述の複合ペインを製造する方法に関し、この方法は、下記の工程を含む:
- 外側ペイン、内側ペイン、及び、熱可塑性中間層を形成するためにそれらの間に配置された少なくとも1つの熱可塑性フィルム、から構成されるスタック配列(積層体配列)を、提供すること、
ここで、少なくとも1つの熱可塑性フィルムは、少なくとも1つのレーダーセンサを有し、又は、レーダーセンサ(4)が、熱可塑性フィルムと、外側ペイン(1)及び/又は内側ペイン(2)との間に配置されている、
- スタック配列を積層処理して、複合ペイン(100)を形成すること。
【0025】
換言すると、本発明によれば、外側ペイン、内側ペイン、及び、それらの間に配置された少なくとも1つの熱可塑性フィルム、並びに少なくとも1つのレーダーセンサを、スタックとして配置することができる。レーダーセンサは、積層方向において外側ペイン及び/又は内側ペインに隣接しうる。2つのペイン及びこれらの間に配置されたフィルムは、通常、積層方向で、かつ実質的に一致して、互いの上に重なって配置されている。レーダーセンサは、有利には、設置状態で、結果として生ずる複合ペインにおいて所望の検出範囲を有するように、ペイン表面内に位置する。好ましくは、積層処理の前に、レーダーセンサを、例えば、平坦伝導体と共に、例えばすべての所望される電気接続又は電子接続と共に、提供する。これらの接続及びリード線は、既知の慣用的な様式で製造し提供することができる。
【0026】
積層処理、すなわち、形成された層配列を結合して複合ペインを形成することは、好ましくは、熱、真空、及び/又は圧力の作用の下で行われる。それ自体知られている複合ペインの製造方法を用いることができる。積層処理の間に、加熱され流れることができる熱可塑性材料が、空間及びレーダーセンサの周囲へと流れ込み、それにより、安定的な結合が形成され、レーダーセンサが中間層中に封入され、中間層中で固定される。
【0027】
例えば、いわゆる「オートクレーブ法」を、約10bar~15barの上昇した圧力で、かつ130℃~145℃の温度で、約2時間にわたって、行うことができる。それ自体知られている真空バッグ法又は真空リング法は、例えば、約200mbar及び80℃~110℃で行われる。外側ペイン、熱可塑性中間層、及び内側ペインを、カレンダーにおいて、少なくとも1対のローラーの間で押圧して、ペインを形成することもできる。このタイプのシステムは、ペインの製造に関して既知であり、通常は、押圧ユニットの上流に、少なくとも1つの加熱トンネルを有する。押圧操作の間の温度は、例えば、40℃~150℃である。カレンダー法とオートクレーブ法との組み合わせは、実施において特に効果的であることが示されている。代替的には、真空ラミネータを用いることができる。これは、1又は複数の加熱可能かつ排気可能なチャンバからなり、この中で、ペインを、例えば、約60分以内で、0.01mbar~800mbarの減圧下で、かつ80℃~170℃の温度で、積層処理する。
【0028】
方法の1つの態様では、レーダーセンサを、形状適合的に、熱可塑性中間層の少なくとも1つの熱可塑性フィルムにおける切り欠き部に挿入することができる。熱可塑性層は、連続的な熱可塑性フィルムによって形成することができ、これに、例えば、切断又はパンチングによって、切り欠きが導入されており、又は切り欠きが導入され、そこに、レーダーセンサを挿入し又は配置することができる。熱可塑性層は、換言すると、この場合、レーダーセンサの周囲の枠のようにして実施される。代替的には、層の熱可塑性フィルムが、レーダーセンサの周囲に配置された複数のフィルム部分から構成されていてもよい。連続的に又は部分からこのようにして形成された熱可塑性層は、好ましくは、その厚みにおいて、レーダーセンサの高さ(厚み)におおよそ適合する。結合の間の光学的ゆがみ又はガラス破損が、このようにして実施される厚みの補償によって、大部分、回避される。
【0029】
また、同様に、中間層が、互いに重なり合って配置された複数の熱可塑性フィルム及び/又はフィルム部分から形成されることも可能であり、レーダーセンサを受容する切り欠き部が、隣接して配置されており互いに直接に重なり合っている2以上のフィルム層に提供されてもよい。本発明によれば、切り欠き部は、熱可塑性層にわたる連続的な穴部であってよく、又は、1又は複数のフィルム内でのくぼみであってよい。積層処理の間に、このようにして互いに重なり合って配置される熱可塑性層が、一緒に結合し、中間層を形成する。フィルム層及び/又はフィルム部分は、同一の材料又は異なる材料から形成されてよく、例えば、PVBから形成されてよい。したがって、異なる熱可塑性フィルム及び/又はフィルム部分が一緒に均一に融合し、結果として生じる複合ペインにおいて互いをもはや区別できないようになっていることもあり得る。
【0030】
少なくとも1つの熱可塑性フィルム又は複数の熱可塑性フィルムのフィルムスタック(フィルム積層体)における切り欠き部は、サイズ、位置及び配置において、少なくとも1つのレーダーセンサに適合している。これは、切り欠き部の寸法が、レーダーセンサの寸法に、本質的に対応していること、又は、わずかに大きいこと、特には、レーダーセンサの寸法の最大で150%、好ましくは最大で120%であることを意味する。切り欠き部の位置は、製造される複合ペインにおけるレーダーセンサの所望の配置に対応する。関連する切り欠き部も、レーダーセンサを、製造の間に1又は複数の熱可塑性フィルム中に固定して、中間層を形成する。製造の間に、確実性のための追加の固定処理、及び正確な位置合わせは、必要でない。
【0031】
レーダーセンサの位置を、製造のために特定することができ、これは、大量生産の観点から有利である。熱可塑性フィルムにおける切り欠き部は、積層処理の前に形成してよい。規定された切り欠き部を有するフィルムを、有利には、大量にあらかじめ準備することができ、又は、適合するように注文し、フィルム供給者から直接に取得することができる。
【0032】
互いに重なり合って配置された1又は複数の熱可塑性フィルムにおいてレーダーセンサを受容するために適切に適合された切り欠き部を提供することによって、形成された高さの違いが、有利には補償され、そのようにして、光学的なゆがみのない製造された複合ペインにおける低ストレスな接続が確保される。熱可塑性層の厚みは、用いられるそれぞれのレーダーセンサに適合してよく、それによって、例えば、厚みにおける局所的な違いに起因する用いられる外側ペイン及び内側ペインにおけるガラス破損又は応力が回避され、また、光学的に欠陥のない接続がもたらされる。
【0033】
複合ペインを製造するための方法の別の実施態様では、レーダーセンサが、例えば、CANバスネットワークを介して、他のセンサに接続されてよく、かつ/又は車載電子機器(車載エレクトロニクス)に接続されてよい。
【0034】
本発明は、さらに、本発明に係る複合ペインの、陸、空中、又は水における交通のための輸送手段における使用を含み、特には、自動車における複合ペインとしての使用、特にはルーフパネル又はウィンドシールドとしての使用を含む。
【0035】
本発明の種々の実施態様は、別個に又は任意の組み合わせで実施することができる。特に、上記で言及され、下記で説明される特徴を、示されている組み合わせのみでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせで又は単独で用いることもできる。ただし、例示的な実施態様及び/又はそれらの特徴が、代替態様に過ぎないこと又は互いに排他的であることが明示されている場合は除く。
【0036】
下記で、本発明を、図面を参照してさらに詳細に示す。別個に又は組み合わせて用いることができる異なる側面が記載されていることに留意すべきである。換言すると、純粋に代替態様であることが明示的に示されていないかぎりは、任意の側面を、本発明の異なる態様とともに用いることができる。
【0037】
図面は、単純な概略図であり、縮尺どおりではない。図面は、決して本発明を限定しない。
【0038】
また、単純性のために、下記では、参照は、一般に常に、1つのものに対してのみなされる。しかしながら、明示的に記載されない限り、本発明は、対象となるものを複数有することもできる。この点に関して、単語「a」、「an」及び「1つ」の使用は、単純な実施態様では少なくとも1つのものが使用されることを示しているに過ぎないことが理解されるべきである。
【0039】
図1は、乗り物のためのルーフパネルの例を用いて、本発明に係る複合ペイン100の実施態様の平面図を描写している。有利なことに、レーダーセンサ4が、ルーフパネル100のおおよそ中央位置に配置されており、それにより、レーダーデータを受け取るための可能な限り広い検出範囲を有するようになっている。複合ペイン100に配置されている1又は複数のレーダーセンサ4が、乗り物内部へとレータービームを照射し、反射されるレーダービームを受け取る。センサの電子接続及び電気接続は示していない。本発明によれば、レーダーセンサ4が、乗り物内部における人又は動物の動き及び/又は存在を判定するための(図示していない)評価ユニットに接続されている。例えば、複数のレーダーセンサ4が、CANバスシステムを介して互いに接続してよく、そのようなCANネットワークにおいて同時に作動してよい。そして、種々のセンサのレーダーデータを、一緒に処理しかつ分析してよく、そのようにして、もたらされる計測データ及び安全機能の正確性及び信頼性が、さらに向上する。描写されている実施態様では、レーダーセンサ4が、随意に、マスキング5によって乗り物内部から隠されている。マスキング5は、例えば、例えば周縁端部における慣用的なマスキングプリント6と同時に製造プロセス中に適用することができるブラックプリントであってよい。マスキングプリント6の適用は、現在慣用的であり、主に、複合ペイン100の中又は上におけるコネクタ及び接続を隠すために用いられる。レーダーセンサのマスキング5及びマスキングプリント6を実施するためのブラックプリントは、例えば、スクリーンプリントによって、内側ペインの内部表面IIIに、又は内側ペイン2の外部表面IVに適用できる。代替的には、マスキング5は、1又は複数のステッカーを配置することによって行うことができる。マスキング5によって、さらにはマスキングプリント6によって、美的印象が大幅に向上する。示されている実施態様では、2つの追加的なレーダーセンサ4が、複合ペイン100の周縁端部において、マスキングプリント6の領域に配置されている。これは、すでにレーダーセンサ4を隠し、それにより、複合ペインの視覚的に良好な印象を得るために追加的なマスキング5を適用する必要がないようになる。追加的に、又は代替的に、レーダーセンサ4のさらなるマスキング5を、同様にして、外側ペイン1に、外部に向かう方向で、実施することができる。
【0040】
1つの実施態様では、レーダーセンサ4及び/又は評価ユニットが、車載エレクトロニクスに、及び/又は、乗り物の警告システムに、若しくは警告シグナルを出力するための外部出力装置に、接続されている。このようにして、例えば、他には乗員がいない乗り物内で、レーダーセンサ4によって子供の存在が検出されたときに、乗り物の警告システムによって音響的及び/又は視覚的なシグナルを出力することができる。異なる又は追加的な可能性は、自動緊急連絡システムeCallへの連結である。このようにして、迅速な対応を確保することができる。
【0041】
図2は、図1のルーフパネルとしての乗り物(自動車)7内に設置された本発明に係る複合ペイン100の平面図を描写している。複合ペインの記載は、図1の記載に対応する。複合ペイン100の周縁端部でのマスキングプリント6の領域におけるレーダーセンサ4は、示されていない。
【0042】
図3は、図1の切断線X-X´に沿う、複合ペイン100の断面図を描写している。示されている実施態様は、外側ペイン1及び内側ペイン2を有する複合ペイン100を描写しており、外側ペイン1と内側ペイン2との間に、熱可塑性中間層3が配置されており、この中に、レーダーセンサ4が統合されている。レーダーセンサ4は、中間層3の切り欠き部に配置されており、外側ペイン1の内部表面IIに積層方向で隣接している。レーダーセンサは、このようにして、中間層3内に封入され、環境的な影響に対して保護される。中間層3の形成後の厚みは、用いられるレーダーセンサ4の高さ(厚み)に適合している。複合ペイン100を形成するための積層処理の間の光学的な歪み又はガラスの損傷が、このようにして実施される厚みの補償によって、大部分、回避されうる。マスキング5が、乗り物内部からレーダーセンサ4を隠しており、内側ペイン2の内部表面IIIに配置されている。これは、複合ペイン100の視覚的に魅力的な外観を可能にする。レーダーセンサ4は、好ましくは、1mm未満の厚み、特に好ましくは、0.5mm未満の厚みを有する。例えば、レーダーセンサの寸法は、3cm×3cm×0.5mm(長さ×幅×厚み)であってよい。センサ領域に関するサイズ、すなわち、用いられるレーダーセンサの長さ及び幅は、原則として、重要ではなく、ただし、美的な理由であれば、小型化は常に目標とされる。
【0043】
図4は、本発明に係る方法の実施態様のフローチャートを描写している。上述の複合ペイン100の製造は、下記の工程を含む:
S1:外側ペイン1、内側ペイン2、及びこれらの間に配置された、熱可塑性中間層3を形成するための少なくとも1つの熱可塑性フィルムから構成されるスタック配列を提供すること、
ここで、少なくとも1つの熱可塑性フィルムは、少なくとも1つのレーダーセンサ4を有し、又は、レーダーセンサ4が、熱可塑性フィルムと、外側ペイン1及び/又は内側ペイン2との間に配置される、
S2:スタック配列を積層して、複合ペイン100を形成すること。
【0044】
換言すると、本発明によれば、第1工程S1において、外側ペイン1、内側ペイン2、及び、これらの間に配置されている、中間層3を形成するための少なくとも1つの熱可塑性フィルム、並びに、少なくとも1つのレーダーセンサ4が、スタック(積層体)として配置され、提供される。レーダーセンサ4は、外側ペイン1及び/又は内側ペイン2に積層方向で隣接してよい。2つのペイン1及び2並びにこれらの間に配置される少なくとも1つの熱可塑性フィルムは、通常どおりに、積層方向に配置され、本質的に一致して互いに重なり合う。レーダーセンサ4は、有利には、設置状態における完成した複合ペイン100においてレーダーデータを受け取るために望ましい検出範囲を有するように、ペイン表面内に位置する。本発明に係るレーダーセンサ4は、乗り物内部へとレーダービームを射出し、反射されるレーダービームを受け取る。本発明によれば、レーダーセンサ4は、乗り物内部における人又は動物の動き及び/又は存在を判定するための(図示されない)評価ユニットに接続される。好ましくは、レーダーセンサ4に、積層処理の前に、工程2において、例えば、平坦伝導体が提供され、これは、例えばレーダーセンサ4を評価ユニット及び/又は車載エレクトロニクスに接続するための、所望される全ての電気又は電子コネクタ及び接触部を有する。評価ユニットは、例えば、車載エレクトロニクスに統合されてよい。そのようなコネクタ、接続部、及びリード線は、既知の慣用的な様式で製造し提供してよく、それについて詳細な説明は不要である。
【0045】
複合ペインを形成するための、形成された層配列の、積層処理、したがってその結合は、好ましくは、熱、真空、及び/又は圧力の作用の下で行われる。それ自体知られている方法を、複合ペインを製造するために用いることができる。積層処理の間に、加熱され流れることができる熱可塑性材料が、空間内及びレーダーセンサの周りに流れ込み、そのようにして、安定的な結合が形成され、レーダーセンサが、中間層内で封入され固定される。
【0046】
例えば、いわゆる「オートクレーブ法」は、約10bar~15barの加圧下で、130℃~145℃の温度で約2時間にわたって行うことができる。それ自体知られている真空バッグ法又は真空リング法は、例えば、約200mbar及び80℃~110℃で行われる。外側ペイン、熱可塑性中間層、及び内側ペインを、カレンダーにおいて、少なくとも1対のローラーの間で押圧することもでき、それによって、ペインを形成する。このタイプのシステムは、ペインの製造に関して既知であり、通常は、押圧ユニットの上流の少なくとも1つの加熱トンネルを有する。押圧操作の間の温度は、例えば、40℃~150℃である。カレンダー法とオートクレーブ法との組み合わせは、実際上、特に効果的であることが示されている。代替的には、真空ラミネータを用いることができる。これらは、1又は複数の、加熱可能で排気可能なチャンバからなり、ここにおいて、ペインが、例えば、約60分以内に、0.01mbar~800mbarの減圧下でかつ80℃~170℃の温度で、積層される。
【0047】
本発明によれば、乗り物内での乗員の安全性がさらに向上しうる複合ペインが利用可能になる。特に、他の光学システムに関しては不利な環境条件、例えば、暗闇、又は高温及び強い太陽光であっても、人又は動物の動き及び/又は存在に関する信頼性の高い計測及びデータの評価が、統合されたレーダーセンサを有する本発明に係る解決策によって、乗り物内部で提供される。例えば、他には誰もいない乗り物内に取り残された子供又は動物を検知することができ、迅速な対応を可能にすることができる。さらには、運転者監視をも、さらに向上させることができ、信頼性高く提供することができる。
【0048】
統合されたレーダーセンサを有する本発明に係る複合ペインの製造は、簡便かつ経済的に行うことができ、連続生産であっても適している。
本開示は、下記の態様を含む:
<態様1>
熱可塑性中間層(3)を介して互いに結合している外側ペイン(1)及び内側ペイン(2)を有している、乗り物のための複合ペイン(100)であって、
前記複合ペイン(100)は、外部環境から乗員のための乗り物内部を分離するために提供され、
少なくとも1つのレーダーセンサ(4)が、前記熱可塑性中間層(3)内に統合されており、前記レーダーセンサ(4)が前記乗り物内部にレーダービームを射出しかつ反射されたレーダービームを受け取るように、設計されかつ配置されており、かつ、
前記レーダーセンサが、前記乗り物内部における人又は動物の動き及び/又は存在を判定するための評価ユニットに接続されている、
複合ペイン(100)。
<態様2>
前記熱可塑性中間層(3)が、1又は複数の熱可塑性フィルムから形成されており、前記熱可塑性中間層が、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、及び/若しくはポリウレタンを含有し、又はこれらでできている、態様1に記載の複合ペイン(100)。
<態様3>
前記レーダーセンサ(4)が、前記熱可塑性中間層(3)に埋め込まれて配置されている、態様1又は2に記載の複合ペイン(100)。
<態様4>
前記レーダーセンサが、前記外側ペイン(1)及び/又は前記内側ペイン(2)上の黒色プリント又は白色プリントによって光学的に隠されている、態様1に記載の複合ペイン(100)。
<態様5>
前記レーダーセンサ(4)が、少なくとも2GHzの周波数帯域幅及び/又は76GHz~150GHzの周波数帯域でレーダーデータを受け取るために作動することができる、態様1又は2に記載の複合ペイン(100)。
<態様6>
前記レーダーセンサ(4)が、好ましくは、30cm~10mの検出範囲を有する、態様1~5のいずれか一項に記載の複合ペイン(100)。
<態様7>
前記レーダーセンサ(4)が、好ましくは、1mm未満の厚みを有する、態様1~5のいずれか一項に記載の複合ペイン(100)。
<態様8>
前記レーダーセンサ(4)が、少なくとも1つのレーダートランシーバを実施する半導体チップを有している、態様1に記載の複合ペイン(100)。
<態様9>
前記半導体チップが、追加的に、前記レーダセンサ(4)のデジタルシグナル処理コンポーネント及び/若しくは制御ユニットを実装しており、かつ/又は、前記レーダーセンサの前記半導体チップ及びアンテナアセンブリが、パッケージとして実施されており、かつ前記中間層(3)内に統合されている、態様4に記載の複合ペイン(100)。
<態様10>
前記レーダーセンサ(4)及び/又は前記評価ユニットが、前記乗り物の車載電子機器に接続しており、かつ/又は前記乗り物の警告システムに接続しており、若しくは警告を出力するための外部出力装置に接続している、態様1又は2に記載の複合ペイン(100)。
<態様11>
前記複合ペイン(100)、特には前記中間層(3)が、少なくとも1つのさらなるセンサ及び/又は少なくとも1つのさらなる機能素子を有することを特徴とする、態様1~10のいずれか一項に記載の複合ペイン(100)。
<態様12>
下記の工程を含む、態様1~10のいずれか一項に記載の複合ペイン(100)の製造方法:
- 外側ペイン(1)と、内側ペイン(2)と、これらの間に配置されている、前記熱可塑性中間層(3)を形成するための少なくとも1つの熱可塑性フィルムと、から構成されるスタック配列を提供すること、
ここで、少なくとも1つの熱可塑性フィルムが、少なくとも1つのレーダーセンサを有しており、又は、レーダーセンサ(4)が、前記熱可塑性フィルムと、前記外側ペイン(1)及び/又は前記内側ペイン(2)との間に配置されている、
- 前記スタック配列を積層して、複合ペイン(100)を形成すること。
<態様13>
前記レーダーセンサ(4)を、前記熱可塑性中間層(3)の少なくとも1つの熱可塑性フィルムにおける切り欠き部に、形状適合的に挿入する、態様11に記載の複合ペイン(100)の製造方法。
<態様14>
前記レーダーセンサ(4)が、CANバスを介して、他のセンサに接続しておりかつ/又は車載電子機器に接続している、態様11又は12に記載の複合ペイン(100)の製造方法。
<態様15>
態様1~9のいずれか一項に記載の複合ペインの、陸上、空中、又は水上における輸送のための乗り物における使用、特には自動車のための使用、特にはルーフパネル又はウィンドシールドとしての、使用。
【符号の説明】
【0049】
100 複合ペイン
1 外側ペイン
2 内側ペイン
3 中間層
4 レーダーセンサ
5 マスキング
6 マスキングプリント
7 乗り物
I 外側ペインの外部表面
II 外側ペインの内部表面
III 内側ペインの内部表面
IV 内側ペインの外部表面
図1
図2
図3
図4