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特許7596391無線通信システム、基地局、端末、及び無線通信制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】無線通信システム、基地局、端末、及び無線通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 72/0453 20230101AFI20241202BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20241202BHJP
【FI】
H04W72/0453
H04W88/02 150
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022545235
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032789
(87)【国際公開番号】W WO2022044302
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大出 高義
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10080173(US,B1)
【文献】特表2017-521911(JP,A)
【文献】Qualcomm Incorporated,SUL+SDL vs FDD usage [online],3GPP TSG RAN WG4 #88Bis R4-1812342,3GPP,2018年09月28日,pages 1-4,[retrieved on 2024.08.26], Internet:<URL:https://www.3gpp.org/ftp/tsg_ran/WG4_Radio/TSGR4_88Bis/Docs/R4-1812342.zip>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
DB名 3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末と基地局との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記端末は
記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく上り無線周波数の制御要求を、前記基地局に送信する送信機を備え、
前記基地局は、
前記端末から送信された前記端末の温度の測定結果、又は前記制御要求を受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り無線回線品質又は下り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の上り無線周波数を前記使用中の上り無線周波数より低いSUL周波数に変更し、使用中の下り無線周波数を維持する回線制御部と、
前記SUL周波数への変更に関する制御情報を前記端末に送信する送信装置と、を備え、
前記SUL周波数は、複数の上り無線周波数のうち、前記使用中の上り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
無線通信システム。
【請求項2】
端末と基地局との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記端末は、前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく下り無線周波数の制御要求を、前記基地局に送信する送信機を備え、
前記基地局は、
前記端末から送信された前記端末の温度の測定結果、又は前記制御要求を受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の下り無線回線品質又は上り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の下り無線周波数を前記使用中の下り無線周波数より低いSDL周波数に変更し、使用中の上り無線周波数を維持する回線制御部と、
前記SDL周波数への変更に関する制御情報を前記端末に送信する送信装置と、を備え、
前記SDL周波数は、複数の下り無線周波数のうち、前記使用中の下り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局の送信装置は、前記上り無線周波数の変更に伴うフロー又はベアラの所要伝送品質を変更する制御情報を前記端末及び前記基地局の上位装置に送信する
請求項に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局の送信装置は、前記下り無線周波数の変更に伴うフロー又はベアラの所要伝送品質を変更する制御情報を前記端末及び前記基地局の上位装置に送信する
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基地局の送信装置は、前記上り無線周波数の変更に伴うパケットの所要伝送品質を変更する制御情報を前記端末及び前記基地局の上位装置に送信する
請求項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記基地局の送信装置は、前記下り無線周波数の変更に伴うパケットの所要伝送品質を変更する制御情報を前記端末及び前記基地局の上位装置に送信する
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項7】
基地局と無線通信を行う端末であって
記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく上り無線周波数の制御要求を前記基地局に送信する送信機と、
前記基地局が前記端末の温度の測定結果又は前記制御要求を受信し、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り無線回線品質又は下り無線回線品質の測定結果に基づいて前記使用中の上り無線周波数を前記使用中の上り無線周波数より低いSUL周波数に変更し、使用中の下り無線周波数を維持する場合に、前記SUL周波数への変更に関する制御情報を前記基地局から受信する受信機とを備え、
前記SUL周波数は、複数の上り無線周波数のうち、前記使用中の上り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数であ
端末。
【請求項8】
基地局と無線通信を行う端末であって、
前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく下り無線周波数の制御要求を前記基地局に送信する送信機と、
前記基地局が前記端末の温度の測定結果又は前記制御要求を受信し、前記端末と前記基地局との間において使用中の下り無線回線品質又は上り無線回線品質の測定結果に基づいて前記使用中の下り無線周波数を前記使用中の下り無線周波数より低いSDL周波数に変更し、使用中の上り無線周波数を維持する場合に、前記SDL周波数への変更に関する制御情報を前記基地局から受信する受信機とを備え、
前記SDL周波数は、複数の下り無線周波数のうち、前記使用中の下り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
端末。
【請求項9】
端末と無線通信を行う基地局であって、
前記端末の温度の測定結果、又は前記端末の温度の測定結果に基づく上り無線周波数の制御要求を前記端末から受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り無線回線品質又は下り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の上り無線周波数を前記使用中の上り無線周波数より低いSUL周波数に変更し、使用中の下り無線周波数を維持する回線制御部と、
前記SUL周波数への変更に関する制御情報を前記端末に送信する送信装置と、
を備え、
前記SUL周波数は、複数の上り無線周波数のうち、前記使用中の上り無線周波数にお
ける電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
基地局。
【請求項10】
端末と無線通信を行う基地局であって、
前記端末の温度の測定結果、又は前記端末の温度の測定結果に基づく下り無線周波数の制御要求を前記端末から受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の下り無線回線品質又は上り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の下り無線周波数を前記使用中の下り無線周波数より低いSDL周波数に変更し、使用中の上り無線周波数を維持する回線制御部と、
前記SDL周波数への変更に関する制御情報を前記端末に送信する送信装置と、
を備え、
前記SDL周波数は、複数の下り無線周波数のうち、前記使用中の下り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
基地局。
【請求項11】
基地局と無線通信を行う端末が、前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく上り無線周波数の制御要求を前記基地局に送信することと、
前記基地局が、前記端末の温度の測定結果、又は前記制御要求を受信し、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り無線回線品質又は下り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の上り無線周波数を前記使用中の上り無線周波数より低いSUL周波数に変更し、使用中の下り無線周波数を維持する場合に、前記SUL周波数への変更に関する制御情報を前記端末に送信することと、を含み、
前記SUL周波数は、複数の上り無線周波数のうち、前記使用中の上り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
無線通信制御方法。
【請求項12】
基地局と無線通信を行う端末が、前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく下り無線周波数の制御要求を、前記基地局に送信することと、
前記基地局が、前記端末の温度の測定結果、又は前記制御要求を受信し、前記端末と前記基地局との間において使用中の下り無線回線品質又は上り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の下り無線周波数を前記使用中の下り無線周波数より低いSDL周波数に変更し、使用中の上り無線周波数を維持する場合に、前記SDL周波数への変更に関する制御情報を前記端末に送信することと、を含み、
前記SDL周波数は、複数の下り無線周波数のうち、前記使用中の下り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
無線通信制御方法。
【請求項13】
基地局と無線通信を行う端末が
記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく上り無線周波数の制御要求を前記基地局に送信することと、
前記基地局が前記端末の温度の測定結果又は前記制御要求を受信し、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り無線回線品質又は下り無線回線品質の測定結果に基づいて前記使用中の上り無線周波数を前記使用中の上り無線周波数より低いSUL周波数に変更し、使用中の下り無線周波数を維持する場合に、前記SUL周波数への変更に関する制御情報を前記基地局から受信することと、を含み、
前記SUL周波数は、複数の上り無線周波数のうち、前記使用中の上り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数であ
無線通信制御方法。
【請求項14】
基地局と無線通信を行う端末が、
前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく下り無線周波数の制御要求を前記基地局に送信することと、
前記基地局が前記端末の温度の測定結果又は前記制御要求を受信し、前記端末と前記基地局との間において使用中の下り無線回線品質又は上り無線回線品質の測定結果に基づいて前記使用中の下り無線周波数を前記使用中の下り無線周波数より低いSDL周波数に変更し、使用中の上り無線周波数を維持する場合に、前記SDL周波数への変更に関する制御情報を前記基地局から受信することと、を含み、
前記SDL周波数は、複数の下り無線周波数のうち、前記使用中の下り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
無線通信制御方法。
【請求項15】
端末と無線通信を行う基地局が、
前記端末の温度の測定結果、又は前記端末の温度の測定結果に基づく無線周波数の制御要求を前記端末から受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り無線回線品質又は下り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の上り無線周波数を前記使用中の上り無線周波数より低いSUL周波数に変更し、使用中の下り無線周波数を維持することと、
前記SUL周波数への変更に関する制御情報を前記端末に送信することと、
を含み、
前記SUL周波数は、複数の上り無線周波数のうち、前記使用中の上り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
無線通信制御方法。
【請求項16】
端末と無線通信を行う基地局が、
前記端末の温度の測定結果、又は前記端末の温度の測定結果に基づく無線周波数の制御要求を前記端末から受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の下り無線回線品質又は上り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の下り無線周波数を前記使用中の下り無線周波数より低いSDL周波数に変更し、使用中の上り無線周波数を維持することと、
前記SDL周波数への変更に関する制御情報を前記端末に送信することと、
を含み、
前記SDL周波数は、複数の下り無線周波数のうち、前記使用中の下り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる無線周波数である
無線通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局、端末、及び無線通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5th Generation:5G)では、使用周波数を高周波(例えば28GHz)とすることにより、使用帯域幅を広帯域化することで、第4世代移動通信システム(4G)よりも高速な伝送を実現する。4Gと比べた5Gの特徴としては、高速伝送通信の実現のための高周波数化(高周波化)、広帯域化、超高信頼低遅延通信の実現のためのサブキャリア間隔、時間軸方向のシンボル長やシンボル数が異なるサブフレームの採用が上げられる。3GPP(Third Generation Partnership Project)において、5G(NR:New Radio)仕様の策定が進められており、既にRelease15が策定され、現在Release16仕様の検討が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-097170号公報
【文献】特開2011-193141号公報
【文献】特表2014-519289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
5Gでは、広帯域化のために、既存の800MHz帯や2GHz帯より高い28GHz帯の使用が決まっている。高周波の利用による広帯域化により、伝送速度の向上、回線容量の増加を図ることができる。
【0005】
しかしながら、高周波化により、無線通信に用いる増幅器(アンプ)の電力付加効率(Power Added Efficiency(PAE)、単に電力効率(Power Efficiency)と呼ばれる場合もある)が劣化し、消費電力が増加する。電力付加効率は、アンプの出力電力からアンプの入力電力を除算し、アンプの印加電力で除した値に100を乗じた値[%]である。アンプの印加電力がすべてアンプの出力電力に変換されることが理想であるが、実際にはすべてが出力電力とはならない。このため、アンプの性能を示す指標として電力付加効率が用いられている。アンプの出力電力に変換されない電力は、主に熱に変換される。すなわち、電力付加効率の劣化は、熱損失(熱量)の増加を意味する。具体的には、アンプが発熱し、アンプを収容する端末が発熱する。
【0006】
開示の技術は、端末が備えるアンプの電力付加効率を改善して端末の発熱量を制御可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術は、端末と基地局との間で無線通信を行う無線通信システムである。無線通信システムにおいて、端末は、端末の温度を測定する温度測定回路と、端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく無線周波数の制御要求を、上り無線周波数及び下り無線周波数を制御可能な基地局に送信する送信機と、を備える。
【0008】
開示の技術は、無線通信システムを形成する基地局及び端末、プログラム、プログラムを記録した媒体、並びに、無線通信システムにおける無線通信制御方法、を含み得る。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、端末が備えるアンプの電力付加効率を改善して端末の発熱量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A及び図1Bは、アンプの効率特性例を示すグラフである。
図2図2は、SULの説明図である。
図3A図3Aは、SULの実施に関する基地局及び端末の動作例を示す。
図3B図3Bは、SDLの実施に関する基地局及び端末の動作例を示す。
図4図4A及び4Bは、端末が主導で行う基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。
図5図5は、第1の方法(第1の周波数変更方法)の動作例を示すシーケンス図である。
図6図6は、第1の方法における端末及び基地局の処理フローを示す。
図7図7は、第1の方法における基地局の処理フローを示す。
図8図8は、第2の方法(第2の周波数変更方法)の動作例を示すシーケンス図である。
図9図9は、第2の方法における端末及び基地局の処理フローを示す。
図10図10は、第2の方法における基地局の処理フローを示す。
図11図11は、第3の方法(第3の周波数変更方法)の動作例を示すシーケンス図である。
図12図12は、第3の方法における端末及び基地局の処理フローを示す。
図13図13Aは、5Gネットワークの全体構成を示し、図13Bは、5GCのシステム構成を示す。
図14図14は、第1の所要伝送品質低減方法に係る、パケットの伝送品質制御の動作例を示すシーケンス図である。
図15図15は、第2の所要伝送品質低減方法に係る、パケットの伝送品質制御の動作例を示すシーケンス図である。
図16図16は、パケットのヘッダに、無線回線品質情報(変更後の所要伝送品質を係る情報)を付加又は追加する例を示す。
図17図17は、MACパケットのフォーマットを示す。
図18A図18Aは、基地局の構成例を示す。
図18B図18Bは、基地局の構成例を示す。
図19A図19Aは、端末の構成例を示す。
図19B図19Bは、端末の構成例を示す。
図20図20は、SDAP処理部の構成例を示す図である。
図21図21は、PDCP処理部の構成例を示す。
図22図22は、RLC処理部の構成例を示す。
図23図23は、MAC処理部の構成例を示す。
図24図24は、PCFの構成例を示す。
図25図25は、AMF/SMFの構成例を示す。
図26図26は、UPFの構成例を示す。
図27図27は、変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
5Gでは、伝送速度を改善するため、使用帯域幅の広帯域化が行われる。既存の800MHz帯や2GHz帯では、周波数の空きがなく広帯域化は難しい。このため、4G(LTE)では比較的空いている高周波(例えば5GHz)の使用が決まっている。また、5G(NR)では、更なる高周波(28GHz帯)が導入される(TS38.101-2V15.0.0、TS38.104V15.0.0等参照)。28GHz帯の導入により、従来の800MHz帯の帯域幅(例えば20MHz)を例えば100MHz以上に広帯域化することができる。
【0012】
高周波利用の長所としては、広帯域化により高速伝送を実現可能となること、伝送速度の向上、及び回線容量の増加を図ることができることが挙げられる。一方、高周波利用の短所としては、以下が考えられる。すなわち、周波数が高くなると電波の直進性が強くなり、見通し通信が専ら行われる。換言すれば、反射波や透過波の使用ができないため、伝搬損失が大きくなり、セル半径が短縮する。また、上述したように、アンプの電力付加効率が劣化し消費電力が増加するため、上り方向(端末から基地局への方向:アップリンク方向)のセル半径が短縮する。
【0013】
図1A及び図1Bは、電力増幅器(アンプ)の効率特性例を示すグラフである。アンプの動作点と電力付加効率との間には、以下の関係がある。すなわち、電力付加効率は、アンプの動作点に依存する。入力電力及び出力電力が小さい動作点での電力付加効率は大きく劣化(低下)する。図1Bに示すように、電力付加効率が最も良い動作点は、非線形領域にあり、アンプ出力が大きく歪む。QPSKや16QAMなどの位相又は振幅と位相を用いた変調方式の場合、歪みは通信の品質に与える影響が少なくない。このため、アンプは、歪みがないか歪が小さい、アンプ動作の線形領域において電波の送受信に用られる。以上のことから、歪みがない線形領域をアンプの出力として確保した場合、アンプの電力付加効率が劣化する。なお、端末が備えるアンプの種類には、送信用アンプであるPA(Power Amplifier)と、送信アンプであるHPA(High Power Amplifier)と、受信用アンプであるLNA(Low Noise Amplifier)がある。
【0014】
例えば、電力付加効率が30%である場合、残りの70%は熱となる。線形領域の使用のために出力電力が減少すると、電力付加効率は急激に劣化する。電力付加効率の劣化は、アンプ、ひいてはアンプを収容する端末の発熱を意味する。また、一般的に、周波数が高くなるほど、アンプの電力付加効率が劣化する。5Gでは、28GHz帯などの高周波数を用いることから、入出力電力に関わらず、電力付加効率が劣化する。実施形態に係る無線通信システムは、このような電力付加効率の劣化に対する改善を図り、アンプ(端末)の発熱量を低減しようとするものである。
【0015】
また、5Gに関して、周波数と伝搬損(伝搬距離)について説明する。伝搬損は伝搬距離の累乗で増加する。28GHz帯は、従来の2GHz帯に比べて伝搬距離の減少が大きい。コンクリートなどの電波の反射係数や透過係数も、周波数に依存して小さくなる。その結果、建物等による電波の反射や透過は、大きく減少する。このため、反射波や透過波を用いた無線通信が難しくなる(一般的に、都市部では直接波(見通し)ではなく、反射波や透過波を用いた見通し外(NLOS(Non Line Of Sight:非見通し)で通信しているケースが多い)。以上より、伝搬距離が短く見通し(LOS(Line Of Sight))での通信となる。よって、5Gにおいて伝搬距離を長くするためには、ビームフォーミングの実施が重要である。
【0016】
また、5Gでは、高周波化に伴い、SUL(Supplementary Up Link:予備的アップリンク)、及びSDL(Supplementary Down Link:予備的ダウンリンク)を導入することになっている。従来のFDD(Frequency Division Duplexing:周波数分割二重通信)は、通信の上り(アップリンク:UL)と下り(ダウンリンク:DL)で異なる周波数帯域を組とするオペレーションバンドとして定義され、上りと下りで異なる周波数帯域を用いる。なお、上り通信と下り通信を同時に実施することから、全二重通信とも呼ばれる。また、TDD(Time Division Duplex:時間分割二重通信)では、上りと下りは同一周波数帯域を用いて、送受信の時間によって上りか下りかを認識する(TS38.101V15.4.0(2018-10) 5.2、TS38.104V15.4.0(2018-10)5.2等、参照)。なお、上り通信と下り通信を同時には実施しないことから、半二重通信とも呼ばれる。
【0017】
SULにおいて、端末の総送信電力の上限は、基地局の総送信電力の上限より小さい。端末はバッテリ駆動であり省電力が要求されるため、送信電力を大きくできない。端末の送信電力は基地局より小さく、伝搬損が大きいため、上り回線品質が劣化する。上り周波数の無線回線品質が劣化した場合、組の(元の)上り周波数を、元の上り周波数より低い予備の上り周波数(低周波数)に切り替える。なお、予備の上り周波数は、TDDに対しても導入する。この場合、予備の上り周波数の周波数帯域はFDDに類似したものとなる。
【0018】
図2は、SULの説明図である。基地局1と端末2とは、FDDに係るオリジナルの周波数帯域の組として、上り通信(UL通信)に1745MHzを用い、下り通信(DL通信)に2155MHzを用いる。ULの無線回線が劣化すると、元のUL回線の周波数(1745MHz)より低いSULの回線(900MHz)に切り替えられる。
【0019】
SULの導入により、上りの無線回線品質が改善する。SULの使用判断は、基地局が行うことが考えられる。但し、現状では、厳密には仕様で規定されていない。もっとも、端末が測定して基地局に通知された下り無線回線品質(CQI(Channel Quality Indicator)、RSRP等)を元に基地局がSULを用いるか否かを判断すると思われる(TS38.213参照)。
【0020】
SULは、上り無線回線の周波数(上り無線周波数)を変更するものであり、周波数を追加するCA(Carrier Aggregation)及びDC(Dual Connectivity)と異なる。また、SULでは、上り無線周波数をSULの周波数へ切り替えた後も、組をなす下り無線回線の周波数(下り無線周波数)が維持されるため、ハンドオーバ(Hand Over:HO)とも異なる。
【0021】
SULとして使用する周波数は、以下のようにシステム情報(System Information)として通知される。3GPPで規定されたLTEのシステム情報を例として説明する。すなわち、TS38.331V15.2.1 (2018-06)の6.2.2節において、SIB1(System Information Block Type 1)に、SULに関する通知(SupplementalUplinkとして、UplinkConfigCommon IE)が定義されている。UplinkConfigCommon IEには、FrequencyInfoUL IEが含まれており、FrequencyInforUL IEには、UL周波数バンドリスト(frequencyBandListとして、MultiFrequenxyBandListNR)と、周波数(absoluteFrequencyPointAとして、ARFCN-ValueNR IE)とが含まれる。MultiFrequenxyBandListNR IEは、使用する複数の周波数バンド、すなわちオペレーションバンドを示す。また、ARFCN-ValueNR IEは、DL周波数を示す。以上より、システム情報として、SULとして使用する周波数を基地局が端末に通知することが規定されている。なお、5Gのシステム情報においてもその目的が同じであれば本願技術を適用可能である。
【0022】
上り無線周波数選択に関して、下り無線回線の品質が閾値以下の場合、SULの無線周波数を選択する(TS38.300V15.2.0)。ここに、TDDの場合、上りと下りの無線周波数が同じであるため、一般的に上りと下りの無線回線品質は同じである。これに対し、FDDでは、上り無線回線と下り無線回線の無線周波数が異なるため、夫々の無線品質特性は異なる。このため、下り無線回線の品質判定、すなわち、周波数選択の判定の精度がFDDよりも低い。但し、TDDにおいても、実際には上り無線回線の品質が下り無線回線の品質を測定した時点のものと異なっている可能性がある。このため、上り無線周波数の選択の精度は低い可能性がある。このように、仕様では、端末が上り無線周波数を選択する仕組みになっていない。
【0023】
仕様(TS38.300V15.2.0 (2018-06) 9.2.6 Random Access Procedure)には、上り無線周波数選択に関して以下の記載がある。すなわち、「SULで構成されたセルにおける初期アクセスのために、測定されたDLの品質がブロードキャスト閾値より低い場合に、端末(UE(User Equipment))はSULキャリアを選択する。一旦開始されると、ランダムアクセス手順の全てのUL送信は、選択されたキャリア上に残る(For initial access in a cell configured with SUL, the UE selects the SUL carrier if and only if the measured quality of the DL is lower than a broadcast threshold. Once started, all uplink transmissions of the random access procedure remain on the selected carrier.)」との記載がある。
【0024】
ところで、5Gでは、上りのRS(Reference Signal:参照信号、一般的にはパイロット信号)の種類には、以下がある。
・Demodulation RS for PUSCH (TS38.211 6.4.1.1)
・Phase-tracking RS for PUSCH (TS38.211 6.4.1.2)
・Demodulation RS for PUCCH (TS38.211 6.4.1.3)
・SRS(Sounding RS) (TS38.211 6.4.1.4)
【0025】
LTEの仕様では、端末送信(上り送信)で使用する無線リソースの選択を行うための上り無線回線品質測定を実施するために、端末個別の上りRS送信が規定されている。上りデータ送信に際して送信される上りRSを用いて、無線回線品質測定を実施するだけでなく、基地局からの指定により、端末が周期(periodic)又は非周期(aperiodic)でRSを送信するように制御している。この仕組みがSRSと呼ばれる。SRSの送信は、FDD(全二重通信)であればDL周波数と組をなすUL周波数帯域に関して、その周波数帯域が複数に分割され、分割された帯域毎に行われる。
【0026】
上記したRSのうち、SRS以外は送信データ、又は制御信号と一緒に送信される。このため、何らかの送信データ又は制御信号がなければRSを送信できない。また、無線回線設定後に上り無線チャネルが設定されなければ送信できない。しかし、隣接基地局との間には無線回線が設定されていない状態では、上り無線チャネルの設定がされておらず、隣接基地局への送信データもない。よって、SRS以外のRSの送信はできない。以上より、上り無線回線品質測定に用いるRSとしては、送信データなしでも送信可能なSRSを用いる。
【0027】
上り無線回線品質測定に関しては。3GPPでは規定されていない。そのため、下り無線回線品質測定と同じ測定を実施することにする。すなわち、基地局はSRSを受信し、そのSRSのRSRPを上り無線回線品質として測定する。SRS送信に用いられる無線リソースは端末毎に規定されている。このため、基地局は、SRSを受信することで、端末を識別することができる。
【0028】
上り無線回線品質として、RSRPの代わりにRSRQ(Reference Signal Received Quality:RS受信品質)を用いてもよい。基地局は、SRS(干渉がなく、振幅の減衰や位相回転のない理想的なSRS)を生成し、端末から受信したSRS(干渉を受けた状態、伝搬による振幅の減衰や位相回転が生じた状態の受信したSRS)と比較することで、RSRQを測定又は算出し、品質判定に用いることができる。
【0029】
上記はSULに対する説明であるが、SDLの場合は、下り無線回線品質が閾値より低い場合に、上り無線周波数が維持されて、下り無線周波数が元の周波数より低いSDLの周波数に変更される。すなわち、下り無線回線品質が劣化した(閾値を下回った)場合、上り無線周波数と組となっている元の下り無線周波数の代わりに、元の下り無線周波数より低い予備的な下り無線周波数(SDL)を用いる。例えば、元の下り無線周波数が4.5GHzである場合に、予備的な下り無線周波数として890MHzを用いる。
【0030】
なお、SDLは、TDDに対しても導入する。TDDにおいてSDLが使用される場合、上り無線周波数と下り無線周波数とが異なる結果となるため、使用する周波数についてFDDに類似したものとなる。しかし、TDDであり半二重通信である。また、SDLは、下り無線周波数を変更するものであり、周波数を追加するCAとは異なる。SDLの採用によって、下り無線回線の品質改善を図ることができる。SDLを使用するか否かの判断は、基地局が行う。例えば、端末が測定して基地局に通知された下り無線回線品質(CQI、RSRP等)を元にSULを用いるか否かを判断することがNR仕様(5G仕様)で規定されている(TS38.213参照)。これに倣って基地局でSDLを実施するかを判定することが考えられる。
【0031】
図3Aは、SULの実施に関する基地局及び端末の動作例を示す。図3Aにおいて、S01では、基地局は、システム情報(SUL周波数、RSRP(Reference Signal Received Power:RS受信電力)の閾値など)を端末へ送信する。S02では、ペアの上り無線周波数でのSRS送信要求を端末へ送信する。S03では、基地局は、端末から送信されるSRSのRSRPの値が閾値より小さい(品質が閾値より低い)か否かを判定する、。RSRP値が閾値より小さいと判定される場合には、処理がS04へ進み、そうでない場合には、ペア周波数を基地局は選択する(S07)。S04に処理が進んだ場合、基地局は、SUL周波数を選択し、S05でSUL周波数を端末に通知し、S06で無線回線設定(ランダムアクセス)を行う。
【0032】
図3Aにおいて、S01aでは、端末は、システム情報として、SUL周波数及びRSRPの閾値などを基地局から受信する。S02aでは、端末は、ペアの上り無線周波数でのSRS送信要求を受信する。S03aでは、端末は基地局にSRSを送信する。S04aでは、端末は、基地局からS05にて通知されたSUL周波数を受信したか否かを判定する。SUL周波数を受信したと判定される場合には、無線回線設定(ランダムアクセス)を端末は行い(S05a)、そうでない場合には、特に処理を行わない。
【0033】
図3Aは、端末から送信される上りSRSを元に、基地局において無線回線品質(RSRP)を測定し、無線回線品質の測定結果に基づいて、SULの使用又は不使用を基地局が判定する場合を示す。また、基地局及び端末は、基地局から送信される下りCSI RSを元に、端末において下り無線回線品質(RSRP)を測定して基地局へ送信し、基地局が無線回線品質の端末に基づいてSDLの使用又は未使用を判定してもよい。その場合の動作を図3Bに示す。
【0034】
図3Bにおいて、S01bでは、基地局は、システム情報(SUL周波数、RSRPを端末へ送信する。S02bでは、基地局は、ペアの下り無線周波数での下り無線回線品質測定要求を端末へ送信する。S03bでは、基地局は、CSI RSを端末へ送信する。S04bでは、基地局は、下り無線品質測定結果(RSRP)を端末から受信する。S05bでは、基地局は、CSI RSのRSRPの値が閾値より小さい(品質が閾値より低い)か否かを判定する、。RSRP値が閾値より小さいと判定される場合には、処理がS06bへ進み、そうでない場合には、ペア周波数を基地局は選択する(S09b)。S06bに処理が進んだ場合、基地局は、SDL周波数を選択し、S07bでSDL周波数を端末に通知し、S08bで無線回線設定(ランダムアクセス)を行う。
【0035】
図3Bにおいて、S01cでは、端末は、システム情報として、SDL周波数及びRSRPの閾値などを基地局から受信する。S02cでは、端末は、ペアの下り無線回線品質測定要求を受信する。S03cでは、端末は、CSI RSを受信し、CSI RSのM下り無線回線品質(RSRP)を測定し、RSRPの測定結果を基地局へ送信する(S04c)。S05cでは、端末は、基地局からS07bにて通知されたSDL周波数を受信したか否かを判定する。SDL周波数を受信したと判定される場合には、無線回線設定(ランダムアクセス)を端末は行い(S06c)、そうでない場合には、特に処理を行わない。
【0036】
上記では予め決められたSDL周波数が一つである場合で説明したが、予め決められたSDL周波数が複数ある場合は、ペアの下り無線回線品質に加え複数のSDL周波数のそれぞれの下り無線回線品質(RSRP)も測定し、最も下り無線回線品質が良いSDL周波数を選択してもよい。
【0037】
上述した技術を有する、5Gをサポートする端末を運用した場合に、端末が発熱することが考えられる。発熱の原因としては、上述したような、アンプの電力付加効率の低下によるアンプの発熱が考えられる。また、MIMO(multiple-input and multiple-output)を用いた高速伝送を実施することによる信号処理量の増加に伴い、端末に備えられ、信号処理を行うプロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、及びDSP(Digital Signal Processor)等)の発熱が考えられる。アンプの電力付加効率の低下の要因としては、使用周波数の高周波化、MIMOの実施によるアンプの使用数の増加が考えられる。
【0038】
以下、アンプの電力付加効率の改善を図り、端末の発熱量を低減するための、実施形態における無線通信システム、基地局、端末、及びその無線通信制御方法の詳細について、適宜、図面を用いて説明する。実施形態の構成は例示であり、実施形態の構成に制限されない。
【0039】
<無線通信システム>
実施形態に係る無線通信システムは、無線通信を行う、基地局と、端末とを含む。実施形態に係る端末は、端末自身(自端末)が、自端末の温度(自端末の所定部位の温度)を測定し、温度の閾値を超過した(又は閾値以上となった)場合、或いは閾値を下回った(又は閾値以下となった)場合に、基地局が、基地局と端末との間で使用される無線回線の周波数(使用周波数)の制御(変更)を行い、端末の温度を変化(低下又は上昇)させる。
【0040】
閾値としては、高温対策用の閾値、又は、低温対策用の閾値を設定する。対策としての動作モードから、通常の動作モードに戻るための閾値を設定してもよい。夫々の閾値は、基地局から通知する。もっとも、基地局以外から通知する場合もあり得る。端末に予め記憶しておく場合もある。また、通知以外の方法、端末に対する入力、外部の記憶媒体からの読み込み、ファームウェア(ROM)の搭載などの方法で、端末が閾値を基地局以外から取得できるようにしてもよい。閾値は、温度の閾値である。端末の外部環境を考慮し、設定温度(閾値)を適応的に変更することができる。外部環境は、例えば、季節、地域、外気温度などである。
【0041】
制御の内容は、端末が使用する無線周波数(使用周波数)を変更(低下又は上昇)させることである。以下の説明では、使用周波数の低下によって、端末の温度を低下させる場合について説明する。使用周波数の低下のために、例えば、SUL又はSDLへの切り替えが行われる。SULやSDLへの切り替えによって、使用周波数を800MHz帯や2GHz帯に低下させる。SULやSDLの使用以外の方法で、使用周波数を低くすることも可能である。
【0042】
使用周波数の低下によって、伝搬損が減少し、所要の伝送品質を満たす伝搬距離が伸びる、又は、伝送品質が改善する。また、低下の前後で送信電力が同じである場合、電力付加効率が改善するため、アンプの発熱量を低減することができる。もっとも、使用周波数の低下によって、帯域幅が狭くなり、伝送速度が低下する。
【0043】
端末は、温度測定素子(温度測定部)を備える。温度測定部は、例えば、温度を測定するセンサ(温度センサ)である。センサによる温度の測定原理は問わない。温度センサは、端末の所定の部位の温度又は所定の部位の周囲の温度を測定するために、該当の部位の上又は周辺、或いは端末の筐体の付近に配置される。
【0044】
所定の部位(所定箇所)は、例えば、端末に搭載された、送信アンプ(例えば、PA、及びHPA等)、受信アンプ(例えばLNA)、信号処理を行うプロセッサ(CPU、及びDSP等)などである。但し、所定の部位は上記に制限されない。通常、PAやHPAは、信号の送信部(送信回路(transmission circuit)、或いは送信機(transmitter))に備えられる。LNAは、信号の受信部(受信回路(reception circuit)、或いは受信機(receiver))に備えられる。CPUは、信号処理やアプリケーション層に係る処理等を行う。DSPは、信号処理を行う。温度センサは、端末が備えるPA、HPA、LNA、CPU、DSPなどの複数の部位の全てに対して設けられてもよく、複数の部位の少なくとも一つに設けられるようにしてもよい。
【0045】
温度を測定するタイミングは、端末の通信時、充電時、待ち受け時のいずれであってもよい。温度の測定は、一定周期で行われるのが好ましい。温度を測定する周期は、端末の状態(例えば、通信時、充電時や待ち受け時、連続通信時間など)や外部環境に基づいて変更可能である。
【0046】
温度の閾値は、端末が予め記憶している構成(プリセット)を採用することができる。但し、基地局が端末に閾値を通知する構成を採用するのが好ましい。基地局は、外部環境や端末の稼働状態等を考慮して閾値を制御及び通知することができる。
【0047】
図4Aは、端末(UE)が主導で行う基地局(gNB、eNBでもよい)とのやりとりの例を示すシーケンス図である。図4Aにおいて、端末が備える記憶装置には、温度センサを用いた測定対象(端末の所定箇所)の温度測定のアルゴリズム(CPUによって実行されるプログラム)と、温度の閾値とが予め記憶されている。閾値は、基地局から受信してもよい。
【0048】
端末は、プログラムに従って、温度測定を行い、閾値との比較を行う(S51)。このとき、測定された温度が高温対策用の閾値より高い、又は測定された温度が低温対策用の閾値より低い場合には、端末は、基地局に対し、使用周波数の制御要求を送信する(S52)。使用周波数の制御に係る制御情報は、端末装置が制御要求とともに送信しても、基地局に予め記憶されていてもよい。基地局は、制御要求に従って、使用周波数の制御を開始する。
【0049】
図4Bは、基地局が主導で行う端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。基地局は、端末に対し、温度制御情報を送信する(S61)温度制御情報は、端末に対する、測定対象の温度測定要求を含む。端末は、温度測定要求に従って、測定対象の温度を測定し(S62)、測定結果を基地局に送信する(S63)。
【0050】
基地局は、測定結果と、基地局が予め保持する閾値とを比較し、使用周波数の制御要否の判定を行う(S64)。このとき、測定された温度が高温対策用の閾値より高い場合には、基地局は、使用周波数の低下を決定し、使用周波数の制御を開始し、使用周波数を低下させるための制御情報を端末へ送信する(S65)。
【0051】
このように、基地局は、制御要求又は温度測定結果を受信した場合に、端末の温度が閾値を上回る(超過する)場合に、使用周波数の制御を開始する。使用周波数の制御(周波数変更方法)として、以下の第1~第4の方法がある。
(第1の方法)上り無線回線品質を用いて、SUL周波数を選択し、使用周波数を選択したSUL周波数に変更する。
(第2の方法)下り無線回線品質を用いて、SDL周波数を選択し、使用周波数を選択したSDL周波数に変更する。
(第3の方法)下り無線回線品質を用いて、SUL周波数を選択し、使用周波数を選択したSUL周波数に変更する。
(第4の方法)上り無線回線品質を用いて、SDL周波数を選択し、使用周波数を選択したSDL周波数に変更する。
【0052】
<第1の方法>
図5は、第1の方法(第1の周波数変更方法)の一例を示すシーケンス図である。S71では、基地局は、温度制御情報を端末に送信する。温度制御情報には、温度の閾値などが含まれる。
【0053】
S72では、端末は、端末の温度を測定する。端末は、温度の測定結果と閾値とを比較して、端末の温度が閾値より高いこと、すなわち、端末が高温になっていることを検知すると、PUCCH又はPUSCHを用いてSUL使用要求を基地局へ送信する(S73)。
【0054】
基地局は、PDCCH又はPDSCHを用いて、上り送信周波数(上り無線周波数)及び上り無線周波数を用いたSRS送信要求を、端末に送信する(S74)。端末は、PDCCH又はPDSCHを用いてSRSを基地局へ送信する(S75)。基地局は、PUCCH又はPUSCHを用いてSRSを用いて上り無線回線品質測定を行い(S76)、SUL周波数を選択し、選択したSUL周波数に使用周波数を変更することを決定する(S77)。
【0055】
S78では、基地局は、SULの使用及び使用するSUL周波数を端末に通知する。端末は、通知に従って、上りの使用周波数をSUL周波数に変更する(S79)。その後、基地局は、上り制御情報として、上り送信に用いるリソース割り当てを行い(S80)、端末は、割り当てられたリソースを用いてユーザデータを送信する(S81)。
【0056】
図6は、第1の方法における端末及び基地局の処理フローを示し、SRSによる上り無線回線品質測定を用いたSUL実施のフローを示す。S11では、端末は、端末の対応周波数帯域(f1,f2, … ,fn)を確認する。S12では、端末は、基地局から、周波数fm(m=1,2, … ,n)でのSRS送信要求を受信する。S13では、端末は、現在の上り無線周波数である周波数fm(fm=f0)でSRSを送信する。
【0057】
基地局では、S11と同様の処理が行われ(S21)、SRSが受信されると、周波数fmの上り無線回線品質測定を行い(S22)、無線回線品質の測定結果に基づくSUL実施制御を行う(S23)。S23では、基地局は、無線回線品質の測定結果を用いて、電力付加効率が最大となる周波数fxを算出し、その周波数fxをSUL周波数として選択(決定)する。その結果、使用周波数が変更(SUL実施)となる場合には、SUL実施に係る制御情報を端末へ送信し(S24:S78に対応)、SUL周波数へ使用周波数を変更する(S25)。
【0058】
図7は、S22及びS23の処理例を示すフローチャートである。S21の処理の後に行われるS151で、基地局は、周波数の番号mの値を0,電力付加効率η_maxの値を0に設定する。周波数f0は、現在使用中の無線周波数を示す。S152において、基地局は、周波数fmでのSRSの送信要求を端末に送信する。S153において、基地局は、周波数fmでSRSを受信する。S154でにおいて、基地局は、周波数fmの上り無線回線品質測定を行う。
【0059】
S155では、基地局は、周波数fmでの端末の送信電力を算出する。S156では、周波数fmにおける、1アンテナ当たりの送信電力(Pant_m)を確認する。Pant_mの値は、送信電力の総計Ptotalをアンテナ数Nで割ることで求められる。
【0060】
S157では、基地局は、アンプの動作点Omと、電力付加効率ηmとを算出する。S158では、基地局は、電力付加効率ηmの値が、現在の電力付加効率の最大値η_maxを上回っているか否かを判定する。ηmがη_maxを上回っている場合には、処理がS159に進み、そうでない場合には、処理がS160に進む。
【0061】
S159では、基地局は、電力付加効率ηmの値を最大値η_maxの値に設定する(最大値を更新する)とともに、fmの値を使用周波数fxに設定する。S160では、基地局は、mの値をインクリメントする。S161では、mの値が最後の周波数番号nを超えているか(全ての周波数についての処理が完了したか)を判定する。n<mが成立しないと判定される場合には、処理がS152に戻り、インクリメントされたfmについての処理が行われる。これに対し、n<mが成立すると判定される場合には、上り無線周波数をfxに設定する。このとき、周波数f0=fmの電力付加効率が最大である場合には、周波数の変更は行われない。これに対し、周波数f0以外の周波数の電力付加効率が最大となる場合には、その周波数に使用周波数が変更されることが決定される。使用周波数がSUL周波数に変更される場合には、変更のための制御情報が端末へ送信される(S25、S80)。
【0062】
なお、図7に示す処理では、電力付加効率ηが最大となる周波数を求めているが、電力付加効率ηの代わりに、RSRP又はRSRQによって示される品質が最も良くなる周波数を求めてもよい。
【0063】
第1の方法によれば、使用周波数がSUL周波数に変更され、上り無線周波数が低下する。これによって、端末のアンプの電力付加効率が改善され、アンプの発熱量が低減し、端末の温度を低下させることができる。また、上りの無線周波数の低下により、帯域幅が減少する。これによって、伝送速度が低減し、端末の信号処理量が低減し、信号処理を行うプロセッサ(CPU、DSP等)の発熱も低減することができる。これによっても、端末の温度を低下させることができる。
【0064】
<第2の方法>
図8は、第2の方法(第2の周波数変更方法)の一例を示すシーケンス図である。S91では、基地局は、温度制御情報を端末に送信する。温度制御情報には、温度の閾値などが含まれる。
【0065】
S92では、端末は、端末の温度を測定する。端末は、温度の測定結果と閾値とを比較して、端末の温度が閾値より高いこと、すなわち、端末が高温になっていることを検知すると、PUCCH又はPUSCHを用いて、SDL使用要求を基地局へ送信する(S93)。
【0066】
基地局は、PDCCH又はPDSCHを用いて、下り無線回線品質の測定要求を、端末に送信する(S94)。基地局は、PDCCH又はPDSCHを用いて、現在の下り無線周波数を用いたCSI RSを端末へ送信する(S95)。端末は、CSI RSを用いて下り無線回線品質測定を行い(S96)、下り無線回線品質(RSRP,RSRQなど)の測定結果を、PUCCH又はPUSCHを用いて基地局へ送信する(S97)。
【0067】
基地局は、SDL周波数選択を行い(S98)、現在の下り無線周波数(使用周波数)がSDL周波数に変更される場合には、SDL使用及び使用するSDL周波数を端末に通知する(S99)。端末は、通知に従って、下りの使用周波数をSDL周波数に変更する(S100)。その後、基地局は、下り制御情報として、下り送信に用いるリソースを端末に通知し(S101)、端末は、通知されたリソースを用いて送信されるユーザデータを取得する(S102)。
【0068】
図9は、CSI RSを用いた下り無線回線品質の測定結果を用いた、SDL実施のフローを示す。S11bにおいて、端末は、端末の対応周波数帯域を確認する。S12bでは、端末は、基地局から、周波数fm(fm=f0)のCSI RSでの下り無線回線品質の測定要求を受信する。S13bでは、端末は、基地局から受信された、周波数fmのCSI RSで下り無線回線品質測定を行い、下り無線品質測定結果を基地局に送信する。S14bでは、端末は、基地局からSDL実施に係る制御情報を受信する。S15aでは、端末は、制御情報に基づいて、SDL実施を行う。
【0069】
図9におけるS21bでは、基地局は、端末の対応周波数帯域を確認する。S22bでは、基地局は、端末が送信した周波数fmの下り無線回線品質測定結果を受信する。S23bでは、基地局は、SDL実施の制御を行う。S24bでは、基地局は、S23aでの制御の結果に基づく、SDL実施に係る制御情報を端末に送信する。S25bでは、基地局は、SDL実施(SDL周波数への変更)を行う。このようにして、端末と基地局との間の下り無線回線の周波数がSDL周波数に変更される。
【0070】
上記では予め決められたSDL周波数が一つである場合で説明したが、予め決められたSDL周波数が複数ある場合は、ペアの下り無線回線品質に加え複数のSDL周波数のそれぞれの下り無線回線品質(RSRP)も測定し、最も下り無線回線品質が良いSDL周波数を選択してもよい。
【0071】
図10は、S22b及びS23bの処理例を示すフローチャートである。図10に示す処理は、S152~S155及びS162の代わりにS152a~S155a及びS162aが設けられている点で、図7の処理と異なる。
【0072】
S152aでは、基地局は、周波数fmでの下り無線回線品質の測定結果の送信要求を端末に送信する。S153aでは、基地局は、周波数fmのCSI RSを端末に送信する。S154aでは、基地局は、周波数fmでの下り無線回線品質の測定結果を受信し、取得する(S155a)。
【0073】
S162aでは、基地局は、下り無線周波数をfx、すなわち、SDL周波数として選択された周波数に変更することを決定し、下り無線周波数をfxに設定する。第2の方法によっても、使用周波数の低下によって、アンプの電力付加効率を改善し、端末の発熱量を低下させることができる。また、処理量の低下によっても、端末の発熱量を低下させることができる。
【0074】
<第3の方法>
図11は、第3の方法(第3の周波数変更方法)の一例を示すシーケンス図である。S111では、基地局は、温度制御情報を端末に送信する。温度制御情報には、温度の閾値などが含まれる。
【0075】
S112では、端末は、端末の温度を測定する。端末は、温度の測定結果と閾値とを比較して、端末の温度が閾値より高いこと、すなわち、端末が高温になっていることを検知すると、PUCCH又はPUSCHを用いてSUL使用要求を基地局へ送信する(S113)。
【0076】
基地局は、PDCCH又はPDSCHを用いて、下り無線回線品質の測定要求を、端末に送信する(S114)。基地局は、PDCCH又はPDSCHを用いて、現在の下り無線周波数を用いたCSI RSを端末へ送信する(S115)。端末は、CSI RSを用いて下り無線回線品質測定を行い(S116)、下り無線回線品質(RSRP,RSRQなど)の測定結果を、PUCCH又はPUSCHを用いて基地局へ送信する(S117)。
【0077】
基地局は、SUL周波数選択を行い(S118)、現在の上り無線周波数(使用周波数)がSUL周波数に変更される場合には、SUL使用及び使用するSUL周波数を端末に通知する(S119)。端末は、通知に従って、上りの使用周波数をSUL周波数に変更する(S120)。その後、基地局は、上り制御情報として、上り送信に用いるリソース割り当てを端末に通知し(S121)、端末は、割り当てられたリソースを用いてユーザデータの上り送信を行う(S122)。
【0078】
図12は、CSI RSを用いた下り無線回線品質の測定結果を用いた、SUL実施のフローを示す。図12において、S11aでは、端末は、端末の対応周波数帯域を確認する。S12aでは、端末は、基地局から、周波数fmのCSI RSでの下り無線回線品質の測定要求を受信する。S13aでは、端末は、基地局から受信された、周波数fmのCSI RSで下り無線回線品質測定を行い、下り無線品質測定結果を基地局に送信する。S14aでは、端末は、基地局からSUL実施に係る制御情報を受信する。S15aでは、端末は、制御情報に基づいてSUL実施を行う。
【0079】
図12において、S21aでは、基地局は、端末の対応周波数帯域を確認する。S22aでは、基地局は、端末が送信した周波数fmの下り無線回線品質測定結果を受信する。S23aでは、基地局は、SUL実施の制御を行う。S24aでは、基地局は、S23aでの制御の結果に基づく、SUL実施に係る制御情報を端末に送信する。S25aでは、基地局は、SUL実施を行う。このようにして、下り無線回線品質の測定結果に基づき、端末と基地局との間の上り無線周波数に関して、SULへの変更が行われる。
【0080】
第3の方法における、上り無線周波数の選択方法は、図10に示した処理を用いて行うことができる。但し、S162aにおいて、周波数fxを、上り無線周波数(SUL周波数)として選択及び設定する点で、図2の方法と異なる。
【0081】
第3の方法によっても、上り無線周波数がSUL周波数に低下することで、アンプの電力付加効率を改善して端末の発熱量を低減することができる。また、プロセッサの処理量減少による発熱量の低下も図ることができる。
【0082】
なお、第4の方法、すなわち、上り無線回線品質に基づいて下り無線周波数(SDL周波数)を決定する方法も採用し得る。
【0083】
<第1の所要伝送品質低減方法>
上述した、使用周波数の低下によって、電力付加効率の改善を図り、発熱量を低減することができる。但し、使用周波数の低下は、帯域幅の低減、伝送速度の低減を招来するため、所要伝送速度やQoS(Quality of Service)等を満たせなくなって回線(上位の回線及び/又は無線回線)が切断される可能性がある。
【0084】
そこで、以下のような構成(第4の所要伝送品質低減方法)を採用することが考えられる。すなわち、端末の温度が閾値を超過している場合に、上り無線周波数又は下り無線周波数をSUL周波数又はSDL周波数に変更する処理を行い、さらに所要伝送品質(QoS(Quality of Service)やQCI(QoS Class Identifier))を軽減する。すなわち、フロー又はベアラの所要伝送品質(例えば伝送速度や伝送遅延)を軽減する。
【0085】
具体的には、端末の温度が閾値を超える場合は、一時的にQoSやQCIを変更する。例えば、QoSやQCIの所要伝送遅延(Packet Delay Budget、Maximum delay Budget等)を増加させる。すなわち、許容遅延を甘くする。その後、端末の温度が閾値以下となった場合は、元のQoSやQCIに戻す。所要伝送速度(GBR(Guaranteed Bit Rate), MBR(Maximum Bit Rate), AMBR(Aggregated Maximum Bit Rate)等)やプライオリティを変更してもよい。
【0086】
<<5Gのシステム構成>>
ここで、5G(NR)のシステム構成について説明する。図13Aは、5Gネットワークの全体構成を示し、図13Bは、5Gコアネットワーク(5GC)のシステム構成を示す。図13Aにおいて、5G網は、無線アクセスネットワークであるRANと、コアネットワークである5GCとからなる。NG-RANは、網構成が4Gから5Gへ移行する過渡期の無線アクセスネットワークであり、5G対応の基地局であるgNB(5G基地局)と、5GCに接続される4G(LTE)対応の基地局であるng-eNB(LTE基地局)とを含む。NG-RANでは、5G基地局及びLTE基地局に関してNE-DC (NR E-UTRA-Dual Connectivity)が実施され、5G基地局がMaster(主基地局)となり、LTE基地局はSecondary (第2基地局)となる。なお、MasterをMgNBと呼び、SecondaryをSeNBと呼ぶこともある。
【0087】
また、4Gから5Gへ移行の初期において5GC(5Gコアネットワーク)が未構築である場合、4Gコアネットワーク(EPC)に接続される4G(LTE)対応の基地局であるeNB(LTE基地局)と、5G対応の基地局であるen-gNB(5G基地局)とを含む。4G-RANでは、5G基地局及びLTE基地局に関してEN-DC (E-UTRA NR-Dual Connectivity)が実施され、LTE基地局がMaster(主基地局)となり、5G基地局はSecondary (第2基地局)となる。なお、MasterをMeNBと呼び、SecondaryをSgNBと呼ぶこともある(TS37.340V15.1.0 (2018-03) Figure 4.1.2-1)。
【0088】
図13Bにおいて、5GCは、NSSF (Network Slice Selection Function)と、AUSF (Authentication Server Function: subscriber)と、UDM (Unified Data Management: subscriber)とを含む。NSSFは、スライス毎のSMFの選択を行う。AUSFは認証用サーバである。UDMは加入者関連情報を保持する。スライスとは、ネットワークに設定され、QoS毎、サービス毎やオペレータ毎に設定される仮想的又は物理的なネットワークである。ネットワークスライスと呼ばれることもある。
【0089】
また、5GCは、無線アクセスネットワークであるRAN(基地局及び端末)と、AMF(Access and Mobility Management Function)と、SMF(Session Management Function)と、PCF(Policy Control Function)と、AF(Application Function)と、UPF(User Plane Function)とを含む。DN(Data Network)とを含む。AMFは、加入者(ユーザ)認証、セキュリティ、端末の位置管理を司る。SMFは、セッション管理を行う。PCFは、ポリシー制御を行う。AFは、外部アプリケーションサーバである。UPFは、ユーザデータのパケット転送を行う。DN(Data Network)は、5GC外部のデータネットワーク(インターネット等)である。UEは端末であり、RAN及びAMFに接続される。
【0090】
コアネットワークの構成要素(AMF、SMF、PCF、UPF等の夫々)は、「基地局の上位装置」に該当する。コアネットワークを構成する構成要素の夫々が行う処理または動作は、ネットワークに接続された情報処理装置(コンピュータ)におけるプロセッサ及びメモリを用いたソフトウェア処理、或いは集積回路など(ASIC、FPGA、SoC等)のハードウェアによる処理によって行われる。
【0091】
ベアラ(DB: Data Bearer、DRB: Dedicated Radio Bearer)は、ノード間をつなぐデータの通り道であり、1つ以上のフロー(flow:データの流れ)を含む。ベアラ及びフローの夫々は、「データの伝送路」の一例である。4Gでは、ベアラ単位での制御が行われる。5Gでは、フロー単位での制御が行われる。ベアラは、端末間、又は、端末とサービスを実施するサーバとの間に存在する。また、ベアラは、端末とUPFとの間(NRの場合。LTEの場合は端末とPGWとの間)、端末と基地局との間、基地局とUPFとの間(NRの場合。LTEの場合は基地局とSGWとの間、及びSGWとPGWとの間)に存在する。
【0092】
DRB(Data Radio Bearer)は、端末と基地局との間にあるベアラであり、基地局とUPFとの間には、DB(Data Bearer)及びNG-U Tunnelが存在する。以下の説明では、上述したベアラのうち、端末とUPFとの間、 又は端末と基地局との間、及び基地局とUPFとの間にあるベアラを例にして説明する。なお、QoS及びQCIは、端末間での設定を基本とする。QoS及びQCIは、PCFが管理するQoS Ruleを基に制御される(TS23.203参照)。換言すれば、各装置はPCFからの指示でQoSやQCIの制御を実施する。なお、5Gの仕様では、QCIは5QI(5G QCI)と呼ばれる。
【0093】
<<動作例1>>
図14は、第1の所要伝送品質低減方法に係る、ベアラ(又はフロー)に対するQCI(伝送品質の一例)制御の動作例(動作例1)を示すシーケンス図である。図14において、基地局と端末との間で、第1の方法に係るS71~S77の処理(図5)が行われる。S71~S77の処理の再度の説明は省略する。S207にてSUL周波数の使用が決定された場合に、基地局は、SUL実施のための上り制御情報を端末に送信し(S209:図5のS78に相当)、端末は、使用周波数をSULの周波数に変更する(S210:図5のS79に相当)。SULの周波数として、無線回線品質を維持できる、或いは、無線回線品質の劣化が許容範囲内に納まるような上り周波数に変更される。
【0094】
また、基地局は、上り無線回線の品質測定結果を基に、設定されたQCIに対応する無線品質(例えば所要伝送遅延)の変更が必要か否かを判定する。例えば上り無線回線の品質測定結果から伝送品質を算出し、算出した伝送品質から伝送速度を算出し、算出した伝送速度から伝送遅延を算出し、算出した伝送遅延と所要伝送遅延と比較することでQCIの変更が必要か否かを判定する(S208)。無線品質の変更、すなわちQCIの制御が必要と判定された場合には、基地局は、上りQCIの変更要求をAMF経由でPCFに送信する(S211,S212)。
【0095】
このように、基地局は、上り無線周波数の変更(低下)に伴って、少なくとも端末と基地局との間、及び基地局と基地局の上位装置との間におけるデータの伝送路(ベアラやフロー)に対する所要伝送品質の変更が必要である場合に、基地局、端末及び上位装置の夫々が所要伝送品質の設定を変更するための制御情報を送信する。
【0096】
基地局は、上りQCIの変更要求を直接にPCFに送信してもよい。なお、周波数変更が上り及び下りの双方について行われる場合には、上り及び下りの双方のQCIの変更要求が送信される。変更要求は、具体的なQCI(QoSクラス)への変更を要求するものであってもよく、QoSルールの変更を要求するものであってもよい。
【0097】
PCFでは、QCIの変更要求を受けて、QCIの制御を行う(S213)。すなわち、PCFは、例えば所要伝送遅延を緩和するQCI、或いは、要求で指定されたQCIへの変更を行う。QCIの変更によって、例えば、所要遅延時間が長くなる。また、QCIの変更によって、帯域保証(GBR又はAMBR)を止めたり、優先順位を下げたりしてもよい。
【0098】
PCFは、上りQCIの変更通知をAMFに送信する(S214)。AMFは、上りQCIの変更通知に従って、端末に対応するベアラに係る上りQCIを変更する(S215)。また、AMFは、上りQCIの変更通知を基地局に送信する(S216)。基地局は、上りQCIの変更通知に従って、端末に対応するベアラに係る上りQCIを変更する(S217)。また、基地局は、上りQCIの変更通知を端末に送信する(S218)。端末は、変更通知を受けて、上りQCIを変更する(S219)。
【0099】
AMFは、上りQCIを変更すると、SMF経由で、UPFに対し、上りQCIの変更通知を送信する(S220)。その後、基地局とUPFとの間で送受信されるユーザデータ(S221)、及び端末と基地局との間で送受信されるユーザデータ(S222)の伝送が、変更後の上りQCIが適用されたベアラを用いて行われる。
【0100】
なお、QCI制御がベアラに対して行われる例を説明したが、QCI制御がフローに対して行われてもよい。また、図14の動作例1では、基地局がQCI制御の要否を判断し、PCFがQCI制御を実施している。もっとも、QCI制御を基地局が行ってもよい。また、QCI制御にPCFが関与せず、AMF又はSMFがQCI制御の主体となってもよい。図14の動作例では、所要無線品質の変更のためにQCI制御を行う例を示しているが、QoS制御であってもよい。このように、使用周波数の変更(SUL/SDLへの切り替えを含む)が行われる場合に、QCI又はQoS制御が行われることで、要求を満たさないことによるベアラやフローの切断を回避して、通信を継続することができる。
【0101】
<第2の所要伝送品質の低減方法>
また、以下のような構成(第2の所要伝送品質の低減方法)を採用してもよい。端末の温度が閾値以上となり、使用周波数の変更が行われる場合に、伝送されるパケットの品質をパケット毎に設定し、且つ所要伝送品質を軽減する。パケットは、IP Packet, PDCP PDU(Protocol Data Unit), RLC PDU. MAC PDUなどを含む。
【0102】
第2の所要伝送品質低減方法では、端末の温度が閾値以上となっている期間のパケットの所要伝送品質を、一時的に変更する。所要伝送品質は、QoS、QCI、所要伝送遅延、所要伝送速度、プライオリティの少なくとも1つとする。パケットのヘッダに、変更後の所要伝送品質を含めることで、パケット毎に所要伝送品質を変更することができる。端末の温度が閾値以下となった場合は、所要伝送品質を元に戻し、ヘッダに付加した変更後の所要伝送品質を削除する(ヘッダに対する変更後の所要伝送品質の付加を停止する)。
【0103】
<<動作例2>>
図15は、第2の所要伝送品質低減方法に係る、パケットの伝送品質制御の動作例(動作例2)を示すシーケンス図である。図15において、S71~S77の動作は、図14におけるS71~S77の動作と同じであるので説明を省略する。
【0104】
S308において、基地局は、上り無線回線品質測定結果を基に、QCIとして設定された所要伝送品質(例えば所要伝送遅延)の変更が必要か否かを判断する。必要と判断された場合、基地局はAMFを介して(又は直接に)、PCFに対して所要伝送品質の変更を要求する(S311及びS312)。S311及びS312に係る動作は、実質的にS211及びS212の動作と同じである。
【0105】
要求を受けたPCFは、伝送品質制御(S313)によって、QCIとして設定された所要伝送品質を変更する。変更後の所要伝送品質に関する制御情報は、基地局、AMF/SMF、及び基地局を介して端末に通知される(S314、S316、S318)。このように、基地局は、伝送路(ベアラやフロー)を流れるパケットのヘッダに対する所要伝送品質に関する情報の変更、付加、削除及び付加と、ヘッダ中の前記所要伝送品質に関する情報に従ったパケットの伝送を、基地局、端末及び基地局の上位装置(AMF/SMF)の夫々が行うための制御情報を送信する。
【0106】
通知を受けた基地局、AMF/SMF、及び端末のそれぞれは、通知に基づく伝送品質制御を行う(S315、S317、S319)。すなわち、基地局、AMF/SMF、及び端末の夫々は、ユーザデータの送受信(S322、S324)に関して、伝送対象のパケットのヘッダに、変更後の(緩和された)所要伝送品質を示す情報(例えば所要伝送品質に対応するQoSを示す情報)を付加し(S321、S323)、変更した所要伝送品質に基づいてデータを伝送する。パケットの送信及び中継は、パケットのヘッダに格納された変更後の所要伝送品質を示す情報に従って行われる。なお、基地局とUPFとの間は、パケットとしてIPパケットが送受信される。一方、基地局と端末との間では、パケットとしてMAC PDU、RLC PDU、PDCP PDU、SDAP PDUが送受信される。
【0107】
第2の所要伝送品質の低減方法によれば、パケット毎に付加された、変更後の所要伝送品質に基づくデータ伝送が実施される。これによって、変更後の所要伝送品質を満たした伝送が実現され、使用周波数の変更によって所要伝送品質を満たされなくなることによる回線断を防止できる。
【0108】
以上のように、第2の所要伝送品質の低減方法は、パケットのヘッダに変更後の所要伝送品質を示す情報を付加すること以外は、第1の所要伝送品質低減方法とほぼ同じである。このため、第1の所要伝送品質低減方法に関して説明した変形例は、第2の所要伝送品質低減方法に適用可能である。但し、所要伝送品質としては、例えば最大許容伝送遅延(所要伝送遅延)や伝送速度、パケット誤り率等の少なくとも一つを含む。なお、変更後の所要伝送品質を示す情報は、既設の(変更前の)QCIやQoSで規定された所要伝送品質に係数を乗算したものとし、ヘッダには、変更後の所要伝送品質に係る情報として、係数を付加するようにしてもよい。
【0109】
図16は、パケットのヘッダに、無線回線品質情報(変更後の所要伝送品質を係る情報)を付加又は追加する例を示す。図16には、IPパケットのフォーマットが示されている。IPパケットのヘッダは、サービスタイプのフィールドを有し、このフィールドに、QCIやQoSの情報が格納される。また、ヘッダは、オプション部のフィールドを有し、このフィールドに、変更後の所要伝送品質に係る情報として、識別情報、すなわち、パケット単位の属性を示す情報が格納される。なお、サービスタイプのフィールドに格納されたQCIやQoSの情報を変更してもよいし、一旦サービスタイプを削除し、新たに別なQCIやQoSの情報のサービスタイプを付加してもよい。
【0110】
図17は、MACパケットのフォーマットを示す。MACパケットのヘッダには、MCE(MAC Control Element)を格納するフィールドが設けられている。ここに、上述した識別情報(パケット単位の属性を示す情報)を通知するための新たなMCEフィールドを定義し、そのMCEフィールドをヘッダに含める。MCEは、TS36.321 6.1.2で規定されている。RLC PDU、PDCP PDU、SDAP PDUのヘッダに関しては、TS37.324, TS36.322, TS36.323で規定されている。識別情報は、ヘッダの空き領域に格納、又は識別情報を格納したフィールドの追加によって、ヘッダに付加される。
【0111】
以下、上述した基地局、端末、AMF/SMF、PCF及びUPFの夫々に適用可能な基地局100、端末200、AMF/SMF300、PCF400、及びUPF500の構成について説明する。
【0112】
<基地局の構成例>
図18A及び図18Bは、基地局100の構成例を示す。図18Bにおいて、基地局100は、CPU121と、メモリ(記憶装置)122と、送信機(送信無線回路)107と、受信機(受信無線回路)111と、インタフェース回路123と、送受信アンテナ114とを含む。
【0113】
基地局100は、CPU121が記憶装置122に記憶された様々なプロセッサを実行することによって、制御部102と、SDAP処理部103と、PDCP処理部104と、RLC処理部105と、MAC処理部106と、無線制御部と、送信機107と、受信機111とを含んだ装置として動作可能である。
【0114】
記憶装置122は、ROMやRAMなどのメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの記憶媒体である。記憶装置122は、データ及びプログラムの記憶領域、CPU121の作業領域、通信データのバッファ領域として使用される。
【0115】
CPU121は、記憶装置122に記憶されたプログラムの実行によって、基地局100全体の動作を制御する制御部(コントローラ)として動作する。また、CPU101は、制御情報の受信及び生成を行い、図2,3A、3B、4A、4B、5~17に示した基地局の動作に係る処理を行うことができる。制御情報は、これまでに説明した、基地局が送受信する、温度制御情報、SUL又はSDLの使用要求、CSI RS又はSRSの送信要求、CSI RS又はSRS、上り又は下り無線回線品質の測定要求、上り又は下り無線回線品質測定結果、SUL又はSDL実施に係る制御情報、QCI又はQoSの変更要求などである。CPU121は、例えば、無線回線の無線周波数の変更の要否を判定する判定部として動作する。
【0116】
制御部102は、QCI制御部又はQoS制御部として動作する。制御部102は、無線制御部110とともに、伝送遅延等の所要伝送品質を考慮した制御(QCI又はQoSの変更等の制御)を行う。
【0117】
SDAP処理部103は、夫々入力される送信データ及び受信データに関して、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤに係る処理を行う。SDAPレイヤではIPフローとベアラとのマッピングを行うレイヤであり、SDAPレイヤでは、IPパケットがカプセリングされ、そのヘッダ内で対応するQoSを示す識別子が通知される。
【0118】
PDCP処理部104は、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤに係る処理を行う。PDCPレイヤでは、秘匿、正当性確認、順序整列、IPヘッダの暗号化(encryption)、及び解凍(decryption)などが行われる。RLC処理部105は、RLC(Radio Link Protocol)レイヤに係る処理を行う。RLCレイヤでは、再送制御、重複検出、順序整列などが行われる。MAC処理部106は、MAC(Media Access Control)レイヤに係る処理を行う。MACレイヤでは、無線リソース割り当て、データマッピング、再送制御などが行われる。
【0119】
CPU121は、プロセッサの実行によって、制御部102、SDAP処理部103、PDCP処理部104、RLC処理部105、MAC処理部106、及び無線制御部110として動作する。制御部102、SDAP処理部103、PDCP処理部104、RLC処理部105、MAC処理部106、及び無線制御部110の夫々は、1又は2以上の回路(ASIC、FPGA、DSP、SoCなど)を用いて構成してもよい。
【0120】
送信機107は、送信部(トランスミッタ)108と、制御信号作成部109とを備える。送信無線回路108は、MAC処理部106からの信号の変調回路、信号の周波数を所定の送信周波数に上げるアップコンバータ(UC)、UCからの信号を増幅するPAなどを含み、PAからの出力信号はデュプレクサ又はスイッチを介して送受信アンテナ114に接続され、電波として送信される。制御信号作成部109は、端末向けの制御情報を無線制御部110から受け取り、制御情報を含む制御信号を生成し、送信無線回路108へ送られる信号に含める。
【0121】
受信機111は、受信無線回路(レシーバ)112と、制御信号抽出部113Aと上り無線回線品質測定部113Bとを含む。受信無線回路112は、送受信アンテナ114からデュプレクサ又はスイッチを介して受信された電波を低雑音増幅するLNAと、LNAの出力信号の周波数をダウンコンバートするダウンコンバータ(DC)と、DCの出力信号に対する復調を行う復調回路とを含む。制御信号抽出部113は、受信無線回路112から出力された信号から制御信号を抽出し、無線制御部110に渡す。無線制御部110は、CPU101又は制御部102からの制御情報を制御信号作成部109に渡す。また、無線制御部110は、制御信号抽出部113Aから得られた制御信号中の制御情報を、CPU101又は制御部102向けに送出する。上り無線回線品質測定部113Bは、受信無線回路112で受信された信号を用いて、上り回線品質を測定し、測定結果を無線制御部110に渡す。無線制御部110は、変更部の一例として、無線周波数の変更に関する制御情報に従って、使用する無線周波数を低下させる処理を行う。
【0122】
<端末の構成例>
図19A及び図19Bは、端末200の構成例を示す。図19Bにおいて、端末200は、CPU201と、メモリ(記憶装置)219と、送信機207と、受信機211と、送受信アンテナ214とを備える。CPU201が記憶装置219に記憶されたプログラムを実行することによって、端末200は、CPU201と、QCI又はQoSの制御部202と、SDAP処理部204と、PDCP処理部205と、RLC処理部206と、MAC処理部203と、送信機(送信回路)207と、無線制御部210と、受信機(受信回路)211と、温度測定部216と、送受信アンテナ214とを含んだ装置として動作する。
【0123】
記憶装置219は、記憶装置122と同様のものを使用できる。CPU201は、記憶装置216に記憶されたプログラムの実行によって、端末200全体の動作を制御する。CPU201は、制御情報の受信及び生成を行い、図2図16に係る端末の動作に係る処理を行う。
【0124】
制御部202は、QCI制御部又はQoS制御部として動作する。制御部102は、無線制御部210とともに、伝送遅延等の所要伝送品質を考慮した制御(QCI又はQoSの変更等の制御)を行う。制御部202が行う処理または動作の少なくとも一部は、CPU201によって行われてもよい。
【0125】
SDAP処理部203、PDCP処理部204、RLC処理部205、MAC処理部206及び無線制御部210は、SDAP処理部103、PDCP処理部104、RLC処理部105、MAC処理部106、無線制御部110と同様のものである。制御部202、SDAP処理部203、PDCP処理部204、RLC処理部205、MAC処理部206及び無線制御部210の夫々も、1又は2以上の回路(ASIC、FPGA、DSP、SoCなど)を用いて構成することができる。
【0126】
送信機207(送信回路の一例)は、送信無線回路208と、制御信号作成部209とを備える。送信無線回路208は、送信無線回路108と同様の構成を有し、PAを含んでいる。制御信号作成部209は、制御信号作成部109と同様の動作を行う。
【0127】
受信機211(受信回路の一例)は、受信無線回路212と、制御信号抽出部213と、下り無線回線品質測定部215とを含む。受信無線回路212は受信無線回路112と同様の構成を有し、LNAを含む。制御信号抽出部213は、制御信号抽出部113と同様に、制御信号を抽出する処理を行う。下り無線回線品質測定部215は、受信無線回路212で受信されたRSの無線品質を測定する。無線制御部210は、無線制御部110と同様に、制御信号中の制御情報をCPU201や制御部202向けに送出する処理、制御情報を制御信号作成部209に供給する処理などを行う。また、無線制御部210は、変更部の一例として、無線周波数の変更に関する制御情報に従って、使用する無線周波数を低下させる処理(HO、SUL/SDLへの切り替えや設定)を行う。
【0128】
CPU201、送信無線回路208のPA、受信無線回路212のLNAの夫々のUEには、これらの温度を測定する温度センサ218が設けられており、温度測定部216は、温度センサ218の出力信号から端末200の温度を測定する。測定された温度は、CPU201に供給される。CPU201は、適宜のタイミング又は適宜の周期に基づいたタイミングで、温度測定部216から温度を示す情報を取得する。このようにして、測定対象の温度測定が行われる。
【0129】
<SDAP処理部の構成例>
図20は、SDAP処理部103(203)の構成例を示す図である。SDAP処理部103(203)は、マッピング部131と、ヘッダ付加部132と、マッピング部133と、ヘッダ除去部134と、SDAP制御部135とを含む。
【0130】
マッピング部131、133の夫々は、SDAP制御部135の制御情報に基づく指示に従って、受信データのフローをベアラ(DRB)にマッピングする処理を行う。ヘッダ付加部132は、SDAP制御部135からの、QoS又はQCI制御情報に従った指示に応じて、QCIやQoSの所要伝送品質情報をヘッダに付加する処理を行う。ヘッダ除去部134は、SDAP制御部135からの指示に従って、ヘッダを受信データから除去する処理を行う。ヘッダ除去部134において、QoSの所要伝送品質情報の削除が行われる。SDAP制御部135は、マッピング制御と、所要伝送品質(QCIやQoS)の制御を行う。
【0131】
<PDCP処理部の構成例>
図21は、PDCP処理部104(204)の構成例を示す。PDCP処理部104(204)は、送信データに対するデータ圧縮部141と、暗号化部142と、セグメンテーション/コンカチネーション部143と、ヘッダ付加部144と、PDCP制御部145とを含む。また、PDCP処理部104(204)は、受信データに対するヘッダ除去部146と、SDUリアッセンブリ(再組立)部147と、解読部(復号部)148と、データ伸長部149と、リオーダリング部(順序整列部)150とを含む。
【0132】
PDCP制御部145は、制御情報に従って、データの圧縮・解凍、暗号化・復号、順序整列などの制御を行う。また、PDCP制御部145は、QCI又はQoS制御情報に従って、QCI及びQoSの制御を行うことができる。PDCP制御部145は、ヘッダ付加部144及びヘッダ除去部146に指示を出す。ヘッダ付加部144は、指示に従って、QCIやQoS等の所要伝送品質情報の付加を行い、ヘッダ除去部146は、指示に従って、所要伝送品質情報の削除を実施する。
【0133】
<RLC処理部の構成例>
図22は、RLC処理部105(205)の構成例を示す。RLC処理部105(205)は、送信データに対するセグメンテーション/コンカチネーション部151と、ヘッダ付加部152と、RLC制御部152と、受信データに対するリオーダリング(順序整列)部154と、ヘッダ除去部155と、SDUリアッセンブリ(再組立)部156とを含む。
【0134】
RLC制御部153は、制御情報に従って、再送制御、重複検出、順序整列などの制御を行う。また、RLC制御部153は、QCI又はQoS制御情報に従って、QCI及びQoSの制御を行うことができる。RLC制御部153は、ヘッダ付加部152及びヘッダ除去部154に指示を出す。ヘッダ付加部152は、指示に従って、QCIやQoS等の所要伝送品質情報の付加を行い、ヘッダ除去部146は、指示に従って、所要伝送品質情報の削除を行う。
【0135】
<MAC処理部の構成例>
図23は、MAC処理部106(206)の構成例を示す。MAC処理部106(206)は、送信データに対するセグメンテーション/コンカチネーション、複数の論理チャネルの合成及び分離を行うマルチプレクサ161と、スケジューラ/HARQ制御部162と、無線回線設定制御部163と、MAC制御部164と、SDUリアッセンブリを行うデマルチプレクサ165とを含む。MAC制御部164は、制御情報に基づいて、通信する端末の選択、無線リソース割り当て(スケジューリング)、変調方法の選択などの送信方法の制御、データマッピング、再送制御などを行う。すなわち、スケジューラ/HARQ制御部162は、QCIやQoS等の所要伝送品質情報や無線回線品質に基づいたスケジューリングを実施する。また、無線回線設定制御部163は、スケジューリング結果に基づいた無線回線制御情報を送信データに設定する。また、MAC制御部164において、QCIやQoS等の、所要伝送品質の制御を行う。
【0136】
<PCFの構成例>
図24は、PCF300の構成例を示す。PCF300は、QoS課金制御管理部301を含む。QoS課金制御管理部301は、所要伝送品質(QoS)、又はQoSポリシーの変更と、変更されたポリシーを適用(実現)する機能を有する。QoS課金制御管理部301は、図14及び図15を用いて説明した動作を行う。
【0137】
<AMF/SMFの構成例>
図25は、AMF/SMF400の構成例を示す。AMF/SMF400は、図14及び図15の動作例におけるAMF/SMFの動作を行う。AMF/SMF400は、接続制御部401と、QoS制御部402とを含む。SMFは、セッション(無線回線ではない上位の回線、ベアラ又はフロー)の設定を行い、ベアラ又はフローにQoSを設定する。AMFは、PCFから受信したQoSポリシーをアクセス(接続)やモビリティに適用する処理を行う。AMF/SMF400のQoS制御部402は、セッション(ベアラ又はフロー)に対し、変更後のQoSを設定する。接続制御部401は、変更後のQoS又はQoSポリシーを、アクセス(接続)やモビリティに適用する。
【0138】
<UPFの構成例>
図26は、UPF500の構成例を示す。UPF500は、図14及び図15の動作例におけるUPFの動作を行う。UPF500は、パケット伝送制御部501と、QoS制御部502とを含む。パケット伝送制御部は、パケット(ユーザデータ)の経路選択(routing)制御と、QoSに基づいたパケットの伝送(forwarding)の制御とを行う。QoSが変更された場合、変更後のQoSに基づいた伝送制御を行う。
【0139】
QoS制御部502は、ユーザデータ(Uプレーン)にQoSを適用する処理を行う。QoS(ToS)に基づいて、伝送(取り扱い(handling))を制御する。IPパケットのヘッダには、QoSに相当するToS (Type of Service)が付加されている。QoSが変更された場合、QoS制御部502は、変更後のQoS(ToS)に基づく伝送制御を行う。また、QoS制御部502は、変更後のQoSに基づいて、パケットヘッダに付加されたQoSに係る情報を変更する。
【0140】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係る無線通信システムは、端末200と、端末200と無線通信を行う基地局100とを含む。基地局100は、端末200と基地局100との無線通信に用いる上り無線周波数及び下り無線周波数を制御可能である。端末200は、端末200の温度を測定する温度測定部216(温度測定回路の一例)と、端末200の温度の測定結果、又は、端末200の温度の測定結果に基づく無線周波数の制御要求を、上り無線周波数及び下り無線周波数を制御可能な前記基地局に送信する送信機207とを備える。
【0141】
基地局100は、端末200と基地局200との間における、上り無線回線品質と下り無線回線品質との一方の測定結果に基づく上り無線周波数又は下り無線周波数の変更に関する制御情報を端末200に送信する送信機(送信装置)107を備える。
【0142】
無線通信システム(基地局100及び端末200)及びその無線通信制御方法によれば、端末200の温度が閾値を超える場合に、上り又は下りの使用周波数を、元の使用周波数より低いSUL周波数又はSDL周波数に、制御情報を用いて変更する(切り替える)ことができる。これによって、使用周波数が低下することで、アンプの電力付加効率が改善し、端末200の発熱量を低減することができる。また、帯域減少に伴うCPU201の処理量の減少によって、端末200の発熱量を低減することもできる。
【0143】
実施形態における第1の周波数変更方法では、基地局100の送信機(送信装置)107は、使用中の上り無線周波数を、使用中の上り無線回線品質、又は使用中の上り無線回線品質と1つ以上のSUL周波数の上り無線回線品質に基づいて選択されたSUL周波数に変更する制御情報を端末200に送信する。また、第2の周波数変更方法では、基地局100の送信機(送信装置)107は、使用中の下り無線周波数を、使用中の下り無線周波数、又は使用中の下り無線周波数と1つ以上のSDL周波数の下り無線回線品質に基づいて選択されたSDL周波数に変更する制御情報を端末200に送信する。また、第3の周波数変更方法では、基地局100の送信機(送信装置)107は、使用中の上り無線周波数を、使用中の下り無線周波数の無線回線品質に基づいて選択されたSUL周波数に変更する制御情報を端末200に送信する。
【0144】
第1の周波数変更方法において、基地局200のCPU201(制御部)は、複数の上り無線周波数のうち、使用中の上り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる場合の無線周波数をSUL周波数として選択する。また、第2及び第3の周波数変更方法において、基地局200のCPU201(制御部)は、複数の下り無線周波数のうち、使用中の下り無線周波数における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる場合の無線周波数をSDL周波数又はSUL周波数として選択する。このように、第1~第3の周波数変更方法のいずれにおいても、電力付加効率が使用中の無線周波数より高くなる(最大になる)場合の無線周波数が、SUL又はSDL周波数として選択される。このように、電力付加効率が改善する周波数への変更によって、発熱量を抑えることができる。
【0145】
また、基地局100の送信機(送信装置)107は、上り無線周波数又は下り無線周波数の変更に伴うフロー又はベアラの所要伝送品質を変更する制御情報を端末200及び基地局200の上位装置に送信することができる。また、基地局100の送信機(送信装置)107は、上り無線周波数又は下り無線周波数の変更に伴うパケットの所要伝送品質を変更する制御情報を端末200及び基地局100の上位装置に送信する。
【0146】
すなわち、実施形態における無線崇信システムでは、使用周波数を低下させる場合に、フロー又はベアラ、或いはパケットの所要伝送品質(QCI又はQoS)の緩和が行われる。これによって、使用周波数の低下による帯域減少によって所要伝送品質を満たさないとして回線(上位の回線及び/又は無線回線)が切断されることを回避することができる。変更後の所要伝送品質を示すQoS又はQoSポリシーの情報は、パケットのヘッダに含められ、基地局、端末、UPFにおけるユーザデータの伝送制御に使用される。
【0147】
<変形例>
なお、実施形態における第1~第3の周波数変更方法では、端末が使用周波数の制御要求(SUL使用要求、SDL使用要求)を基地局に要求している。但し、端末が、端末の温度測定結果を基地局に通知し、基地局が使用周波数の変更を判断する構成を採用してもよい。
【0148】
図27は、変形例の説明図である。図27において、端末(端末200)は、測定対象(所定部位)の温度測定を行い(S401)、温度の測定結果を基地局(基地局100)へ送信する(S402)。基地局は、温度の閾値を有し、温度の測定結果が閾値を超過するか否かの判定を以て、無線回線の品質測定の要否を判定する(S403)。
【0149】
品質測定が必要と判定された場合、基地局は、無線回線の品質測定要求を送信し(S404)、無線回線の品質測定用信号(CSI RS)を送信する(S405)。端末は、品質測定要求に応じて、受信されたCSI RSを用いた品質測定を行い(S406)、品質の測定結果を基地局へ送信する(S407)。基地局は、品質測定結果に基づいて、無線回線の周波数の変更(低下)の要否(SUL/SDLへの切り替え要否)を判定する(S408)。変更要と判定された後の動作は、実施形態と同様である。
【0150】
また、実施形態と異なり、端末の温度が閾値を超える程度に上昇する前に、アンプの電力付加効率の低下を予想し、使用周波数変更(SUL/SDLへの切り替え)を実行することで、電力付加効率の低下を防止し、事前に端末の温度上昇を抑圧する構成を採用してもよい。
【0151】
また、高温の検出に伴う制御がバタつかないように、ヒステリシスを設定してもよい。例えば、温度の閾値1を越えている期間が時間長の閾値T1を超過した場合に、周波数変更の制御を行い、温度の閾値2を下回っている期間が時間長の閾値T2を超過した場合に、周波数変更の制御を停止する(使用周波数を元に戻す)。上記の温度の閾値1及び2、時間長の閾値T1及びT2を、基地局は端末に通知する。或いは、以下の構成を採用してもよい。基地局は、閾値1及び2を端末に通知する。端末は、温度が閾値1を超えたことを示す第1の通知、又は温度が閾値2を下回ったことを示す第2の通知を、周期的に基地局に送信する。基地局では、第1の通知が届いている時間をカウントすることで、温度が閾値1を超えている時間が閾値T1を超えているかを判定することができる。また、第2の通知が届いている時間をカウントすることで、温度が閾値2を下回っている時間が閾値T2を超えているかを判定することができる。閾値1及び2、閾値T1及びT2は、無線回線設定制御情報(RRCConnecetionReconfiguration message)に追加して、端末に通知することができる。また、閾値1及び2、閾値T1及びT2は、システム情報(例えば、SIB(System Information Block)に追加してもよい。
【0152】
また、実施形態では、発熱を低減することを目的としているが、寒冷地などの環境温度が極めて低い場合や、体温低下を防止する場合は、敢えて端末を発熱させてもよい。例えば、端末が外気温を測定する温度センサを備え、測定した外気温を基地局に通知する。基地局は、端末(又は端末のアンプ及び/又はCPU)の発熱量を増加させ、一定温度になるように制御する。例えば、外気温が閾値より低い間は、周波数変更の決定を回避する。以上説明した実施形態の構成は、適宜変更可能であり、必要に応じて適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0153】
100・・・基地局
101、201・・・CPU
102、202・・・制御部
103、203・・・SDAP処理部
104、204・・・PDCP処理部
105、205・・・RLC処理部
106、206・・・MAC処理部
110、210・・・無線制御部
108、208・・・送信無線回路
112、212・・・受信無線回路
200・・・端末
300・・・PCF
400・・・AMF/SMF
500・・・UPF
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
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図25
図26
図27