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特許7596392無線通信システム、基地局、端末、及び無線通信制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】無線通信システム、基地局、端末、及び無線通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/28 20090101AFI20241202BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20241202BHJP
【FI】
H04W16/28 130
H04W88/02 140
H04W88/02 150
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022545236
(86)(22)【出願日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2020032790
(87)【国際公開番号】W WO2022044303
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大出 高義
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0342843(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0100099(US,A1)
【文献】特表2017-521911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4、6
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末と基地局との間で無線通信を行う無線通信システムにおいて、
前記端末は、
前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく前記端末の上り送信方法の変更要求を、前記基地局に送信する送信回路を備え
前記基地局は、
前記測定結果又は前記変更要求を受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り送信方法における上り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の上り送信方法における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる上り送信方法を選択する制御部と、
前記制御部によって選択された上り送信方法への変更に関する制御情報を前記端末に送信する送信装置と、を備え
前記上り送信方法の変更は、アンテナ数、ランク数、又はプリコーディング行列の変更である
無線通信システム。
【請求項2】
前記上り送信方法の変更が、送信に用いるアンテナ数の変更である
請求項に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記上り送信方法の変更が、MIMOのランク数の変更である
請求項に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記上り送信方法の変更が、MIMO送信に使用するプリコーディング行列の変更である
請求項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基地局の送信装置は、前記上り送信方法の変更に伴うフロー又はベアラの所要伝送品質を変更する制御情報を前記端末及び前記基地局の上位装置に送信する
請求項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記基地局の送信装置は、前記上り送信方法の変更に伴うパケットの所要伝送品質を変更する制御情報を前記端末及び前記基地局の上位装置に送信する
請求項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
基地局と無線通信を行う端末であって
記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく前記端末の上り送信方法の変更要求を、前記基地局に送信する送信回路と、
前記測定結果又は前記変更要求を受信した前記基地局が前記端末と前記基地局との間において使用中の上り送信方法における上り無線回線品質の測定結果に基づいて選択した、前記使用中の上り送信方法における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる上り送信方法への変更に関する制御情報を前記基地局から受信する受信回路とを備え、
前記上り送信方法の変更は、アンテナ数、ランク数、又はプリコーディング行列の変更であ
端末。
【請求項8】
端末と無線通信を行う基地局であって、
前記端末の温度の測定結果、又は前記端末の温度の測定結果に基づく前記端末の上り送信方法の変更要求を前記端末から受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り送信方法における上り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の上り送信方法における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる上り送信方法を選択する制御部と、
前記制御部によって選択された上り送信方法への変更に関する制御情報を前記端末に送信する送信装置と、を備え、
前記上り送信方法の変更は、アンテナ数、ランク数、又はプリコーディング行列の変更である
基地局。
【請求項9】
基地局と無線通信を行う端末が、前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく前記端末の上り送信方法の変更要求を、前記基地局に送信することと、
前記測定結果又は前記変更要求を受信した前記基地局が、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り送信方法における上り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の上り送信方法における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる上り送信方法を選択し、選択した上り送信方法への変更に関する制御情報を前記端末に送信することと、を含み、
前記上り送信方法の変更は、アンテナ数、ランク数、又はプリコーディング行列の変更である
無線通信制御方法。
【請求項10】
基地局と無線通信を行う端末が、
前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく前記端末の上り送信方法の変更要求を、前記基地局に送信することと、
前記測定結果又は前記変更要求を受信した前記基地局が前記端末と前記基地局との間において使用中の上り送信方法における上り無線回線品質の測定結果に基づいて選択した、前記使用中の上り送信方法における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる上り送信方法への変更に関する制御情報を前記基地局から受信することとを備え、
前記上り送信方法の変更は、アンテナ数、ランク数、又はプリコーディング行列の変更である
線通信制御方法。
【請求項11】
端末と無線通信を行う基地局が、
前記端末の温度の測定結果、又は前記端末の温度の測定結果に基づく前記端末の上り送信方法の変更要求を前記端末から受信した場合に、前記端末と前記基地局との間において使用中の上り送信方法における上り無線回線品質の測定結果に基づいて、前記使用中の上り送信方法における電力付加効率よりも電力付加効率が高くなる上り送信方法を選択することと、
選択した上り送信方法への変更に関する制御情報を前記端末に送信することと、を含み、
前記上り送信方法の変更は、アンテナ数、ランク数、又はプリコーディング行列の変更である
線通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局、端末、及び無線通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5th Generation:5G)では、使用周波数を高周波(例えば28GHz)とすることにより、使用帯域幅を広帯域化することで、第4世代移動通信システム(4G)よりも高速な伝送を実現する。4Gと比べた5Gの特徴としては、高速伝送通信の実現のための高周波数化(高周波化)、広帯域化、超高信頼低遅延通信の実現のためのサブキャリア間隔、時間軸方向のシンボル長やシンボル数が異なるサブフレームの採用が上げられる。3GPP(Third Generation Partnership Project)において、5G(NR:New Radio)仕様の策定が進められており、既にRelease15が策定され、現在Release16仕様の検討が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-097170号公報
【文献】特開2011-193141号公報
【文献】特表2014-519289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
5Gでは、広帯域化のために、既存の800MHz帯や2GHz帯より高い28GHz帯の使用が決まっている。高周波の利用による広帯域化により、伝送速度の向上、回線容量の増加を図ることができる。
【0005】
しかしながら、高周波化により、無線通信に用いる増幅器(アンプ)の電力付加効率(Power Added Efficiency(PAE)、単に電力効率(Power Efficiency)と呼ばれる場合もある)が劣化し、消費電力が増加する。電力付加効率は、アンプの出力電力からアンプの入力電力を除算し、アンプの印加電力で除した値に100を乗じた値[%]である。アンプの印加電力がすべてアンプの出力電力に変換されることが理想であるが、実際にはすべてが出力電力とはならない。このため、アンプの性能を示す指標として電力付加効率が用いられている。アンプの出力電力に変換されない電力は、主に熱に変換される。すなわち、電力付加効率の劣化は、熱損失(熱量)の増加を意味する。具体的には、アンプが発熱し、アンプを収容する端末が発熱する。
【0006】
伝送速度向上のために、端末と基地局とは複数のアンテナを備え、MIMO(multiple-input and multiple-output)を用いて通信を行う。アンテナ数が増える程、アンテナ1つ当たりの送信電力が低下し、アンテナ毎のアンプの動作点が下がり、電力付加効率が劣化する。電力付加効率の劣化は、熱損失(熱量)の増加を意味する。具体的には、アンプが発熱し、アンプを収容する端末が発熱する。
【0007】
開示の技術は、端末が備えるアンプの電力付加効率を改善して端末の発熱量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術は、端末と基地局との間で無線通信を行う無線通信システムである。無線通信システムにおいて、端末は、前記端末の温度の測定結果、又は、前記端末の温度の測定結果に基づく送信方法の変更要求を、送信方法を変更可能な前記基地局に送信する送信機と、を備える。
【0009】
開示の技術は、無線通信システムを形成する基地局及び端末、並びに、無線通信システムにおける無線通信制御方法を含み得る。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、端末が備えるアンプの電力付加効率を改善して端末の発熱量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1A及び図1Bは、電力増幅器の効率特性例を示すグラフである。
図2図2は、電力増幅器の効率特性例を示すグラフである。
図3図3Aは、端末が主導で行う端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。図3Bは、基地局が主導で行う端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。
図4図4は、第1の変更方法が適用される第1の実施方法における、端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。
図5図5は、第2の変更方法が適用される第1の実施方法における端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。
図6図6は、第3の変更方法が適用される第1の実施方法における端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。
図7図7は、第1の実施方法における、基地局の処理例を示すフローチャートである。
図8図8は、第1の実施方法における端末の処理例を示すフローチャートである。
図9図9は、第1の変更方法に係る、アンテナ数選択処理の例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2の変更方法に係るランク変更処理の例を示すフローチャートである。
図11図11は、無線回線品質とランク数との対応テーブルの一例を示す図である。
図12図12は、無線回線品質とプリコーディング行列との対応テーブルの一例示す図である。
図13図13は、第2又は3の変更方法が適用される第2の実施方法における、端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。
図14図14は、第2又は3の変更方法が適用される第3の実施方法における、端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。
図15図15Aは、5Gネットワークの全体構成を示し、図15Bは、5GCのシステム構成を示す。
図16図16は、第1の所要伝送品質の低減方法に係る動作例を示すシーケンス図である。
図17図17は、第2の所要伝送品質の低減方法に係る動作例を示すシーケンス図である。
図18図18は、パケットのヘッダに、無線回線品質情報(変更後の所要伝送品質を係る情報)を付加又は追加する例を示す。
図19図19は、MACパケットのフォーマットを示す。
図20図20は、図16又は図17の動作例に適用可能な基地局の処理例を示すフローチャートである。
図21図21は、図16又は図17の動作例に適用可能な端末の処理例を示すフローチャートである。基地局の構成例を示す。
図22図22は、基地局の構成例を示す。
図23図23は、基地局の構成例を示す。
図24図24は、端末の構成例を示す。
図25図25は、端末の構成例を示す。
図26図26は、SDAP処理部の構成例を示す図である。
図27図27は、PDCP処理部の構成例を示す。
図28図28は、RLC処理部の構成例を示す。
図29図29は、MAC処理部の構成例を示す。
図30図30は、PCFの構成例を示す。
図31図31は、AMF/SMFの構成例を示す。
図32図32は、UPFの構成例を示す。
図33図33は、変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
5Gでは、伝送速度を改善するため、使用帯域幅の広帯域化が行われる。既存の800MHz帯や2GHz帯では、周波数の空きがなく広帯域化は難しい。このため、4G(LTE)では比較的空いている高周波(例えば5GHz)の使用が決まっている。また、5Gでは、更なる高周波(28GHz帯)が導入される(TS38.101V15.0.0、TS38.104V15.0.0等参照)。28GHz帯の導入により、従来の800MHz帯の帯域幅(例えば20MHz)を例えば100MHz以上に広帯域化することができる。
【0013】
高周波利用の長所としては、広帯域化により高速伝送を実現可能となること、伝送速度の向上、及び回線容量の増加を図ることができることが挙げられる。一方、高周波利用の短所としては、以下が考えられる。すなわち、周波数が高くなると電波の直進性が強くなり、見通し通信が専ら行われる。換言すれば、反射波や透過波の使用ができないため、伝搬損失が大きくなり、セル半径が短縮する。また、上述したように、 アンプの電力付加効率が劣化し消費電力が増加するため、上り方向(端末から基地局への方向:アップリンク(UL)方向)のセル半径が短縮する。
【0014】
図1A及び図1Bは、電力増幅器(パワーアンプ:PA)の効率特性例を示すグラフである。アンプの動作点と電力付加効率との間には、以下の関係がある。すなわち、電力付加効率は、アンプの動作点に依存する。入力電力及び出力電力が小さい動作点での電力付加効率は大きく劣化(低下)する。図1Bに示すように、電力付加効率が最も良い動作点は、非線形領域にあり、アンプ出力が大きく歪む。QPSKや16QAMなどの位相又は振幅と位相を用いた変調方式の場合、歪みは通信の品質に与える影響が少なくない。このため、アンプは、歪みがないか歪が小さい、アンプ動作の線形領域において電波の送受信に用いられる。以上のことから、歪みがない線形領域をアンプの出力として確保した場合、アンプの電力付加効率が劣化する。なお、端末が備えるアンプの種類には、送信用アンプであるPA(Power Amplifier)と、送信アンプであるHPA(High Power Amplifier)と、受信用アンプであるLNA(Low Noise Amplifier)がある。
【0015】
例えば、電力付加効率が30%である場合、残りの70%は熱となる。線形領域の使用のために出力電力が減少すると、電力付加効率は急激に劣化する。電力付加効率の劣化は、アンプ、ひいてはアンプを収容する端末の発熱を意味する。また、一般的に、周波数が高くなるほど、アンプの電力付加効率が劣化する。5Gでは、28GHz帯などの高周波数を用いることから、入出力電力に関わらず、電力付加効率が劣化する。実施形態に係る無線通信システムは、このような電力付加効率の劣化に対する改善を図り、アンプ(端末)の発熱量を低減しようとするものである。
【0016】
次に、アンテナ数と端末総送信電力との関係について説明する。アンテナ数に関わらず、、端末の総送信電力の上限は一定である。アンテナ数が2であれば、1つのアンテナの送信電力上限は1/2である。アンテナ数が4であれば、1つのアンテナの送信電力上限は1/4である。
【0017】
MIMOを実施するためには、アンテナ毎に位相と振幅を変更するプリコーディング(Precoding)を実施することが一般的である。すなわち、アンテナ毎にアンプで増幅を実施する必要がある。これより、総送信電力とアンテナ毎の電力の関係が成り立つ。技術的には増幅後のアナログ信号の位相と振幅を制御することは可能であるが、高精度の制御は難しい。
【0018】
ビームフォーミングに関して、ベースバンドのみ、又は無線周波数(アナログ)及びベースバンドで、送信信号の位相を制御する場合も、上述した総送信電力とアンテナ毎の電力の関係が上記と同様に成り立つ。無線周波数(アナログ)においてのみ送信信号の位相を制御する場合は、共通増幅が可能であり、複数のアンテナで1つのアンプになるので上記の関係とは異なる。
【0019】
図2は、電力増幅器(パワーアンプ)の効率特性例を示すグラフである。1つのアンテナに1つのアンプを用いる場合(MIMOのみを実施する場合)、アンテナ数が増える程、送信電力が低下し、アンテナ毎のアンプの動作点が下がり、電力付加効率が低下する。すなわち、送信アンテナ数の増加に伴って、アンテナ毎のアンプの電力付加効率が劣化する。これより、電力付加効率の劣化によって発熱量が増加し、端末が熱くなることが、解決すべき課題となる。
【0020】
次に、MIMOのランクとアンテナ数との関係について説明する。MIMOランクに関して、3GPP(LTE、NR)におけるプリコーディング行列は、2×2(ランク2)から4×4(ランク4)まで仕様化されている。ランク2の最大アンテナ数は2であり、ランク4の最大アンテナ数は4である。なお、ランク2で、4×4アンテナが使用されてもよい。このように、アンテナ数とランクとは一致するとは限らない。例えば、4つのアンテナを2アンテナ×2とし、2アンテナで1ランクとして同一の情報を送信することにより、ランク2とすることができる。
【0021】
ランクとアンプ数、又はビームフォーミングとアンプ数に関して、次のことが言える。1ランクに対して、複数アンテナで送信する場合(送信ダイバーシチ)は1つのアンプで増幅してもよい。また、ビームフォーミングを実施する場合も、1つのアンプで増幅してもよい。1つのアンプが使用される場合、増幅後、タップドディレイライン等を用いて位相回転制御を実施することなどが行われる。但し、位相回転の制御精度は粗い。
【0022】
MIMOを用いることで、複数のデータストリームを伝送することができる。MIMOのランクがランク2であれば、2倍の伝送量(2倍の伝送速度)となる。ランク4であれば、4倍の伝送速度となる (これらは概算である)。MIMOの本質は、従来では伝送路が1つであったことに対し、複数の伝送路を設定することで、伝送量(伝送速度)を改善することにある。ここに、データストリームは、データリンク、又はデータの流れを指し、動画像等を配信するストリーミング(サービス)とは異なる。
【0023】
次に、サウンディング参照信号(SRS(Sounding Reference Signal))について説明する。SRSは、基地局側で上りリンクのチャネル品質や受信タイミングなどを測定するための上りリンク参照信号である。LTEの仕様では、端末送信(上り送信)で使用する無線リソースの選択を行うための上り無線回線品質測定を実施するために、端末個別の上りRS(参照信号、一般的にはパイロット信号)送信が規定されている。上りデータ送信に際して送信される上りRSを用いて、無線回線品質測定を実施するだけでなく、基地局からの指定により、端末が周期(periodic)又は非周期(aperiodic)でRSを送信するように制御している。この仕組みがSRSと呼ばれる。SRSの送信は、FDDであればDL周波数と組をなすUL周波数帯に関して、その周波数帯域が複数に分割され、分割された帯域毎に行われる。
【0024】
上述した背景技術を有する5Gをサポートする端末を運用した場合に、端末が発熱することが考えられる。発熱の原因としては、上述したような、アンプの電力付加効率の低下によるアンプの発熱が考えられる。また、MIMO(multiple-input and multiple-output)を用いた高速伝送を実施することによる信号処理量の増加に伴い、端末が備えるプロセッサ(CPU(Central Processing Unit)及びDSP(Digital Signal Processor)など)の発熱が考えられる。アンプの電力付加効率の低下の要因としては、使用周波数の高周波化、MIMOの実施によるアンプの使用数の増加が考えられる。
【0025】
以下、送信方法の制御によって、アンプの電力付加効率の改善を図り、端末の発熱量を低減するための、実施形態における無線通信システム、基地局、端末、及びその無線通信制御方法の詳細について、適宜、図面を用いて説明する。実施形態の構成は例示であり、実施形態の構成に制限されない。
【0026】
<無線通信システム>
実施形態に係る無線通信システムは、無線通信を行う、基地局と、端末とを含む。実施形態に係る端末は、端末自身(自端末)が、自端末の温度(自端末の所定部位の温度)を測定し、温度の閾値を超過した(又は閾値以上となった)場合、或いは閾値を下回った(又は閾値以下となった)場合に、基地局が、基地局と端末との間で使用される送信方法の制御(変更)を行い、端末の温度を変化(低下又は上昇)させる。
【0027】
閾値としては、高温対策用の閾値、又は、低温対策用の閾値を設定する。対策としての動作モードから、通常の動作モードに戻るための閾値を設定してもよい。夫々の閾値は、基地局から通知する。もっとも、基地局以外から通知する場合もあり得る。端末に予め記憶しておく場合もある。また、通知以外の方法、端末に対する入力、外部の記憶媒体からの読み込み、ファームウェア(ROM)の搭載などの方法で、端末が閾値を基地局以外から取得できるようにしてもよい。閾値は、温度の閾値である。端末の外部環境を考慮し、設定温度(閾値)を適応的に変更することができる。外部環境は、例えば、季節、地域、外気温度などである。
【0028】
<送信方法の変更方法>
端末の発熱を低減する送信方法の変更方法のうち、第1の送信方法の変更方法(第1の変更方法)は、端末がビームフォーミングで使用するアンテナ数(送信アンテナ数)を制御(変更)することである。アンテナ数を変更(例えば低減)することで、1アンテナあたりの送信電力を増加させる。これによって、PAの動作点を変更し、電力付加効率を改善する。これにより、端末の発熱量を低減する。
【0029】
第2の送信方法の変更方法(第2の変更方法)は、MIMOのランク数を制御(変更)することである。ランク数の変更は、アンテナ数を変更することと一致するとは限らない。送信アンテナ数又はMIMOのランク数を変更(例えば低減)することで、第1の変更方法と同様に、アンプの動作点を変更し、電力付加効率を改善し、発熱量を抑えることができる。例えば、端末からのランク変更要求、及び/又はRI(Rank Indicator)に基づいて、ランク数を制御する。
【0030】
第3の送信方法の変更方法(第3の変更方法)は、MIMO送信に使用するプリコーディング行列(Precoding Matrix(PM))を変更することで、MIMOのランク数を制御(変更)することである。ここで制御(変更)とは、プリコーディング行列の大きさを制御することであり、たとえば、8x8のプリコーディング行列から4x4のプリコーディング行列に変更するものである。端末からのPMI(Precoding Matrix Indicator、端末の希望するプリコーディング行列を示す)に基づいて、PMの制御を行う。PMの制御によってMIMOのランク数を変更(例えば低減)し、電力付加効率の改善を図り、発熱量を抑えることができる。
【0031】
端末の温度測定に係る構成に関して、端末は、温度測定素子(温度測定部)を備える。温度測定部は、例えば、温度を測定するセンサ(温度センサ)である。センサによる温度の測定原理は問わない。温度センサは、端末の温度として扱われる、端末の所定の部位又は所定の部位の周囲の温度を測定するために、該当の部位の上又は周辺、或いは端末の筐体の付近に配置される。
【0032】
所定の部位(所定箇所)は、例えば、端末に搭載された、送信アンプ(例えば、PA、及びHPA等)、受信アンプ(例えばLNA)、信号処理を行うプロセッサ(CPU、及びDSP等)などである。但し、所定の部位は上記に制限されない。通常、PAやHPAは、信号の送信部(送信回路(transmission circuit)、或いは送信機(transmitter))に備えられる。LNAは、信号の受信部(受信回路(reception circuit)、或いは受信機(receiver))に備えられる。CPUは、信号処理やアプリケーション層に係る処理等を行う。DSPは、信号処理を行う。温度センサは、端末が備えるPA、HPA、LNA、CPU、DSPなどの複数の部位の全てに対して設けられてもよく、複数の部位の少なくとも一つに設けられるようにしてもよい。
【0033】
温度を測定するタイミングは、端末の通信時、充電時、待ち受け時のいずれであってもよい。温度の測定は、一定周期で行われるのが好ましい。温度を測定する周期は、端末の状態や外部環境に基づいて変更可能である。
【0034】
温度の閾値は、端末が予め記憶している構成(プリセット)を採用することができる。但し、基地局が端末に閾値を通知する構成を採用するのが好ましい。基地局は、外部環境や端末の稼働状態等を考慮して閾値を制御及び通知することができる。
【0035】
図3Aは、端末(UE)が主導で行う基地局(gNB、eNBでもよい)とのやりとりの例を示すシーケンス図である。図3Aにおいて、端末が備える記憶装置には、温度センサを用いた測定対象(端末の所定個所)の温度測定のアルゴリズム(CPUによって実行されるプログラム)と、温度の閾値とが予め記憶されている。閾値は、基地局から受信してもよい。
【0036】
端末は、プログラムに従って、温度測定を行い、閾値との比較を行う(S51)。このとき、測定された温度が高温対策用の閾値より高い、又は測定された温度が低温対策用の閾値より低い場合には、端末は、基地局に対し、送信方法の制御要求を送信する(S52)。送信方法の制御に係る制御情報は、端末装置が制御要求とともに送信しても、基地局に予め記憶されていてもよい。基地局は、制御要求に従って、送信方法の制御(第1~第の変更方法)を開始する。
【0037】
図3Bは、基地局が主導で行う端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。基地局は、端末に対し、温度制御情報を送信する(S61)。温度制御情報は、端末に対する、測定対象の温度測定要求と、温度測定結果の通知とを含む。端末は、温度測定要求に従って、測定対象の温度を測定し(S62)、測定結果を基地局に送信する(S63)。
【0038】
基地局は、測定結果と、基地局が予め保持する閾値とを比較し、使用周波数の制御要否の判定を行う(S64)。このとき、測定された温度が高温対策用の閾値より高い場合には、基地局は、送信方法の制御を開始し、送信方法を変更させるための制御情報を端末へ送信する(S65)。
【0039】
以下の詳細な説明では、一例として、閾値を超える測定対象の温度が検出された場合について説明する。但し、測定対象の温度が閾値を下回る場合にも同様の処理が行われる。基地局は、制御要求又は温度測定結果が閾値を上回る場合に、送信方法の制御を開始する。上述した第1~第3の変更方法は、以下の第1~第4の実施方法に適用することができる。
【0040】
(第1の実施方法)
第1の実施方法は、上り無線回線の品質測定を実施する。第1の実施方法では、複数の上り周波数で上り無線回線品質が測定され、基地局が、最も上り無線回線品質の良い周波数において、アンテナ数、ランク数又はプリコーディング行列の選択を実施してもよい。第1の実施方法では、上り無線回線品質を基に、基地局が変更実施の判断、及び/又は送信法右方の選択を実施する。第1の実施方法では、基地局が、上り無線回線品質測定、及び送信方法変更を判断する。無線回線品質測定には、端末から送信されたSRS(UL RS)が用いられる。
【0041】
(第2の実施方法)
第2の実施方法は、下り無線回線の品質測定を実施する。下りの無線周波数において、下り無線回線品質が測定され、RI及びPMIを選択(算出)し、RI及びPMIを基地局に通知する。第2の実施方法では、下り無線回線品質を基に、基地局が変更実施の判断、及び/又は送信方法の制御(アンテナ数、ランク数、又はプリコーディング行列の選択)を実施する。第2の実施方法では、端末において、下り無線回線品質測定が実施される。下り無線回線品質の測定には、基地局から送信されたCSI(Channel State Information) RS(DL RS)が用いられる。第2の実施方法において、端末が基地局に対してCSI RSの送信要求を通知する必要はない。
【0042】
(第3の実施方法)
第3の実施方法は、下り無線回線品質測定を実施する。第3の実施方法では、上り周波数のペアとなる複数の下り周波数で下り無線回線品質が測定される。下り無線回線品質の測定結果が基地局に通知される。第3の実施方法では、測定結果を基に、RI及びPMIを算出(選択)し、測定結果、RI及びPMIが基地局に通知される。基地局は、測定結果、RI及び/又はPMIを基に、アンテナ数、ランク数又はプリコーディング行列を選択する。すなわち、下り無線回線品質を基に、基地局が変更実施の判断、及び/又は送信方法選択を実施する。第3の実施方法では、端末において、下り無線回線品質測定が実施され、基地局が伝送方法変更を判断する。測定には、基地局から送信されたCSI RS(DL RS)が用いられる。第3の実施方法において、端末が基地局に対してCSI RSの送信要求を通知する必要はない。
【0043】
(第4の実施方法)
以下のような、第4の実施方法を採用し得る。第4の実施方法は、上り無線回線品質測定を実施する。すなわち、下り周波数のペアとなる複数の上り周波数で測定を実施し、最も上り無線回線品質の良い上り周波数のペアの下り周波数でランク数又はプリコーディング行列を選択してもよい。第4の実施方法では、 上り無線回線品質を基に、基地局が変更実施の判断、及び/又は伝送方法の制御(アンテナ数、ランク数、プリコーディング行列の選択)が実施される。上り無線回線品質測定には、端末から送信されたSRSが用いられる。
【0044】
<第1の実施方法(第1の変更方法が適用)>
図4は、第1の変更方法が適用される第1の実施方法における、端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。基地局は、温度の閾値を含む温度制御情報を端末に送信する(S70)。端末は、適宜のタイミングで測定対象の温度測定を行う。測定対象は、例えば、送信アンプ(PA又はHPA)である。端末は、測定対象の温度が閾値よりも高温になったことを検出した場合には(S71)、基地局に対して上り送信方法変更要求を送信する(S72)。
【0045】
基地局は、上り送信方法変更要求を受信すると、端末に対して、無線回線の品質測定用の信号の一例である、RS(SRS)の送信要求を端末に送信する(S73)。端末は、受信した送信要求に従って、RS(SRS)を基地局へ送信する(S74)。基地局は、受信されたRSを元に、上り無線回線品質を測定する(S75)。この無線回線品質の測定結果に基づいて、上りアンテナ数を制御(選択)する(S76)。基地局は、上りアンテナ数に関する制御情報を端末へ送信する(S77)。
【0046】
端末は、制御情報を受けると、上りアンテナ数の変更に対応する処理を行う(S78)。対応によって、端末は、上りアンテナ数を変更する。その後、基地局は、上り制御情報(上り送信リソースの割り当て)を端末に送信し(S79)、端末は、割り当てられたリソース(無線リソース)を用いて、ユーザデータを基地局に送信する(S80)。
【0047】
図4は、第1の実施方法において、第1の変更方法(アンテナ数の変更)を適用している。ここに、アンテナ数が多い程、ビーム幅は狭くなり、ビーム中心の送信電力は大きくなる。一方で、アンテナ数が少ない程、ビーム幅は広くなり、ビームの中心の送信電力は小さくなる。基地局は、上り受信品質から、例えば上り伝送品質を満たす最も小さい送信電力になるようにビーム幅を拡げ、アンテナ数を減らす。これによって、端末の送信アンプ(PA又はHPA)の動作点が上昇し、電力付加効率が改善する。電力付加効率の改善によって、送信アンプの発熱量が低下するため、端末の発熱量を低減することができる。
【0048】
換言すると、基地局は、受信されたRSを元に、上り無線回線品質及び上り受信電力を測定する。上り送信アンテナ数が多い程、送信ビームが細く電力が集中しており、着信電力が大きい。一方で、所要伝送品質(例えばBLER (BLock Error Rate)=0.1)以下になるような受信電力の場合、過剰品質となる。よって、所要伝送品質を満たせば、アンテナ数を減少させビームを広くしても問題ない。よって、アンテナ数を削減して、発熱量を抑えることができる。なお、5G/LTEの仕様には、ビームフォーミングのための送信アンテナ数に係る記述はない。
【0049】
ここに、ビーム幅とは、ビームの中心の電力(ピーク電力)の半値(3dB down)となる位置のビームの幅であり、半値幅と呼ばれることもある。なお、ビーム形状を表すグラフの半径方向の軸は、真値ではなく、対数軸(dB)になっている点に注意が必要である。アンテナ素子数とビーム幅との関係は、八木アンテナを例とすると、ディレクター(導波器)が多いほどビームが細くなり、ビーム中心の電力(ピーク電力)が大きくなる。また、アンテナ利得が大きくなる。同様に、ビームフォーミングにおいてアンテナ本数が多いほど、ビームを細くすることができる。
【0050】
第1の変更方法によると、総送信電力を一定としアンテナ数を削減することにより、1アンテナ当たりの送信電力を増加させる。すると、アンプの出力電力が増加し、電力付加効率が改善する。電力付加効率の改善により、アンプの発熱量が低減し、端末温度が低下する。このように、第1の変更方法によれば、端末の温度を適正にすることができる、また、端末を持てなくなるなどの障害を回避できる。また、端末が備えるCPU等のプロセッサの熱暴走を回避することができる。また、熱雑音低下による伝送品質の改善や、消費電力の削減を図ることもできる。
【0051】
<第1の実施方法(第2の変更方法が適用)>
図5は、第2の変更方法が適用される第1の実施方法における端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。図5において、基地局は、温度制御情報を端末に送信する(S91)。温度制御情報は、測定対象の温度と比較する温度の閾値を含む。
【0052】
端末は、適宜のタイミングで端末の温度を測定し、閾値との比較を行う。閾値を超える温度を検出した場合に(S92)、端末は、基地局に対し、上り送信方法の変更要求を送信する(S93)。
【0053】
上り送信方法の変更要求を受信した基地局は、端末に、RS(SRS)の送信要求を送信する(S94)。端末は、SRSを基地局に送信する(S95)。基地局は、上り送信に関するランク数の算出、又は上り無線回線品質測定及び上りランク数算出を行う(S96)。基地局は、上りランク数の制御を行う(S97)。基地局は、上りランク数に関する制御情報を端末に送信する(S98)。
【0054】
端末は、上りランク数に関する制御情報に対する対応を行う(S99)。対応によって、端末は、上りランク数を変更する。その後、基地局は、端末のデータ送信に関して、上り制御情報(上り送信に用いるリソースの割り当て結果)を端末に通知する(S100)。端末は、割り当てられたリソースを用いてデータを基地局へ送信する(S101)。
【0055】
第2の変更方法によって、MIMOのランクが低減される場合に、1つのアンプ当たりの送信電力が増加し、アンプの電力付加効率が改善する。よって、アンプ(端末)の発熱量を低減することができる。また、ランクの低減によって、伝送速度が低下し、それに伴い信号処理量が低下する。これによって、信号処理を行うCPU等の発熱量が低減され、端末の温度を下げることができる。
【0056】
<第1の実施方法(第3の変更方法が適用)>
図6は、第3の変更方法が適用される第1の実施方法における端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。図6において、基地局は、温度制御情報を端末に送信する(S111)。温度制御情報は、測定対象の温度と比較する温度の閾値を含む。
【0057】
端末は、適宜のタイミングで端末の温度を測定し、閾値との比較を行う。閾値を超える温度を検出した場合に(S112)、端末は、基地局に対し、上り送信方法の変更要求を送信する(S113)。
【0058】
上り送信方法の変更要求を受信した基地局は、端末に、RS(CSI RS)の送信要求を送信する(S114)。端末は、CSI RSを基地局に送信する(S115)。基地局は、上り送信に関するプリコーディング行列(上りプリコーディング行列)の算出、又は上り無線回線品質測定及び上りプリコーディング行列の算出を行う。なお、予め設定した複数のプリコーディング行列の中から使用するプリコーディング行列を選択してもよい(S116)。基地局は、上りプリコーディング行列の制御を行う(S117)。基地局は、上りプリコーディング行列に関する制御情報(例えば、プリコーディング行列を識別するための情報(例えばインデックス))を端末に送信する(S118)。
【0059】
端末は、上りプリコーディング行列に関する制御情報に対する対応を行う(S119)。対応によって、端末は、上りプリコーディング行列を変更し、この結果、上りランク数が変更される。その後、基地局は、端末のデータ送信に関して、上り制御情報(上り送信に用いるリソースの割り当て結果)を端末に通知する(S120)。端末は、割り当てられたリソースを用いてデータを基地局へ送信する(S121)。
【0060】
第3の変更方法によれば、プリコーディング行列(PM)の選択結果によっては、MIMOのランクが低減され、第2の変更方法における作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
<基地局における処理>
図7は、第1の実施方法における、基地局の処理例を示すフローチャートである。図7の処理は、例えば、基地局が有するプロセッサ(CPU等)によって実行される。S151において、基地局は、上り送信方法(上りアンテナ数、上りランク数、又は上りプリコーディング行列)の変更要求を端末から受信する。
【0062】
S152において、基地局は、上り(UL)のRS(SRS)の送信要求を端末に送信する。S153において、基地局は、SRSを端末から受信する。S154において、基地局は、上り無線回線の品質測定を行う。S155において、基地局は、上り送信方法の制御を行う。S156では、基地局は、変更後の上り送信方法の制御情報を端末に送信する。
【0063】
<端末における処理>
図8は、第1の実施方法における端末の処理例を示すフローチャートである。図8における処理は、端末が有するプロセッサ(CPU等)によって実行される。S161では、端末は、上り送信方法の変更要求を基地局に送信する。
【0064】
S162では、端末は、SRSの送信要求を基地局から受信する。S163では、端末は、SRSを基地局に送信する。S164では、端末は、上り送信方法の制御信号を基地局から受信する。
【0065】
<アンテナ数の選択方法>
図9は、第1の変更方法に係る、アンテナ数選択処理の例を示すフローチャートである。アンテナ数選択処理は、例えば、基地局が有するプロセッサ(CPU等)によって実行される。S131において、基地局は、アンテナ数Nを確認する。Nの値は、例えば、N=8,7,6,5,4,3,2,又は1である。S132において、基地局は、アンテナ数Mを現在のアンテナの数Nに設定する。
【0066】
S133では、基地局は、総送信電力Ptotalを確認する。S134では、基地局は、1アンテナ当たりの送信電力Pant1を確認する。Pant1は、Ptotalの値をNで割ることによって求められる。S135では、アンプ(LNA、PA、又はHPA)の動作点O1と電力付加効率ηとを算出する。
【0067】
S136では、基地局は、Nの値をN-1とするか、Nの値を4,2,又は1にする。S137では、基地局は、アンテナ数Nと、1アンテナ当たりの送信電力Pant2を確認する。Pant2は、Ptotalの値をNで割ることによって求められる。S138では、基地局は、アンテナ数Nにおける、アンプの動作点Onと電力付加効率ηnとを算出する。
【0068】
S139では、基地局は、ηn>η、且つηn>ηmaxの条件が満たされるか否かを判定する。このとき、上記条件が満たされると判定される場合には、Mの値が現在のNの値に設定され(S140)、処理がS136に戻る。これに対し、S139で条件が満たされないと判定される場合に、アンテナ数がMに設定される(S141)。このようにして、基地局は、電力付加効率が最大となるアンテナ数に変更する(減少させる)。
【0069】
<ランク数の変更方法>
図10は、第2の変更方法に係るランク変更処理の例を示すフローチャートである。図10に示す処理は、以下の点で、図9に示した処理(アンテナ数変更処理)と異なる。すなわち、S131の前に、S130の処理が追加されている。また、S141の代わりにS141Aの処理が行われる。さらに、S142及びS143の処理が行われる。
【0070】
S130では、基地局は、ランク数Rを確認する。S142に処理が進んだ場合には、ランクRの値がアンテナ数Nより少ないか否かが判定される。ランクRの値がアンテナ数より少ないと判定される場合には、処理がS136に戻され、そうでない場合には、Rの値がデクリメント、又は、Rの値が4,2,1の何れかに設定される。4,2,1のうち、数の多い順で1つ選択される。その後、処理がS136に戻る。S141Aに処理が進んだ場合には、アンテナ数をMに設定することに加えて、ランクを現在のRが示す値に設定する。以上を除き、図10の処理は図9の処理と同じであるので説明を省略する。
【0071】
ランクの変更にあたり、図11に示すように、無線回線品質の値又は値の範囲とランク数との対応テーブルと基地局が有し、S155の処理において、基地局はテーブルを参照し、S154で行った無線回線品質に対応するランク数を選択する構成を採用してもよい。
【0072】
また、プリコーディング行列の変更にあたり、図12に示すように、無線回線品質の値又は値の範囲とプリコーディング行列との対応テーブルと基地局が有し、S155の処理において、基地局はテーブルを参照し、S154で行った無線回線品質に対応するプリコーディング行列を選択する構成を採用してもよい。図11及び図12に示したテーブルは、第2~第4の実施方法における第2及び第3の変更方法に適用可能である。
【0073】
<第2の実施方法(第2,3の変更方法が適用)>
図13は、第2又は3の変更方法が適用される第2の実施方法における、端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。基地局は、温度の閾値を含む温度制御情報を端末に送信する(S70A)。
【0074】
端末は、適宜のタイミングで測定対象の温度測定を行う。測定対象は、例えば、送信アンプ(PA又はHPA)である。端末は、測定対象の温度が閾値よりも高温になったことを検出した場合には(S71A)、基地局に対して下り送信方法変更要求を送信する(S72A)。
【0075】
S73Aにおいて、基地局は、下り送信方法変更要求を受信すると、下り無線回線品質及びランク数情報の通知要求を端末に送信する(第2の変更方法が適用される場合)。或いは、基地局は、下り無線回線品質及びプリコーディング行列情報の通知要求を端末に送信する(第3の変更方法が適用される場合)。S74Aにおいて、基地局は、端末に対し、CSI RSを送信する。
【0076】
S75Aでは、端末は、CSI RSを受信して、CSI RSを用いた下り無線回線品質の測定と下りランク数の算出を行う(第2の変更方法が適用される場合)。或いは、基地局は、下り無線回線品質の測定及び下りプリコーディング行列の選択を行う(第3の変更方法が適用される場合)。
【0077】
S76Aにおいて、端末は、下り無線回線品質の測定結果及びランク数情報を基地局に送信する(第2の変更方法が適用される場合)。或いは、端末は、又は下り無線回線品質の測定結果及びプリコーディング行列情報を基地局に送信する(第3の変更方法が適用される場合)。
【0078】
S77Aにおいて、基地局は、下り送信方法の制御を行う。第2の変更方法が適用される場合、基地局は、下り無線回線品質の測定結果及びランク数情報を用いて、MIMOのランク数を選択する。第3の変更方法が適用される場合、基地局は、下り無線回線品質の測定結果及びプリコーディング情報を用いて、プリコーディング行列を選択する。
【0079】
S78Aにおいて、ランク数又はプリコーディング行列が変更される場合、基地局は、ランク数及び制御情報(第2の変更方法の場合)、又はプリコーディング行列及び制御情報(第3の変更方法の場合)を端末へ送信する。
【0080】
S79Aでは、端末は、ランク数及び制御情報に基づいて、下りのMIMOのランク数を変更する(第2の変更方法の場合)。或いは、端末は、プリコーディング行列及び制御情報に基づいて、下りのプリコーディング行列を変更する。これによって、下りのMIMOのランク数が変更される。
【0081】
その後、基地局は、端末へのデータ送信にあたり、下り制御情報(下り送信に用いるリソースの割り当て情報)を端末に送信する(S80A)。端末は、割り当てられたリソースを用いて送信されるデータを受信する(S81A)。
【0082】
<第3の実施方法(第2,3の変更方法が適用)>
図14は、第2又は3の変更方法が適用される第3の実施方法における、端末と基地局とのやりとりの例を示すシーケンス図である。基地局は、温度の閾値を含む温度制御情報を端末に送信する(S70B)。
【0083】
端末は、適宜のタイミングで測定対象の温度測定を行う。端末は、測定対象の温度が閾値よりも高温になったことを検出した場合には(S71B)、基地局に対して上り送信方法変更要求を送信する(S72B)。
【0084】
S73Bにおいて、上り送信方法変更要求を受信した基地局は、下り無線回線品質及びランク数情報の通知要求を端末に送信する(第2の変更方法が適用される場合)。或いは、基地局は、下り無線回線品質及びプリコーディング行列情報の通知要求を端末に送信する(第3の変更方法が適用される場合)。S74Bにおいて、基地局は、端末に対し、CSI RSを送信する。
【0085】
S75Bでは、端末は、CSI RSを受信して、CSI RSを用いた下り無線回線品質の測定と下りランク数の算出を行う(第2の変更方法が適用される場合)。或いは、基地局は、下り無線回線品質の測定及び下りプリコーディング行列の選択を行う(第3の変更方法が適用される場合)。
【0086】
S76Bにおいて、端末は、下り無線回線品質の測定結果及びランク数情報を基地局に送信する(第2の変更方法が適用される場合)。或いは、端末は、又は下り無線回線品質の測定結果及びプリコーディング行列情報を基地局に送信する(第3の変更方法が適用される場合)。
【0087】
S77Bにおいて、基地局は、上り送信方法の制御を行う。第2の変更方法が適用される場合、基地局は、下り無線回線品質の測定結果及びランク数情報を用いて、上りのMIMOのランク数を選択する。第3の変更方法が適用される場合、基地局は、下り無線回線品質の測定結果及びプリコーディング情報を用いて、上りのプリコーディング行列を選択する。
【0088】
S78Bにおいて、ランク数又はプリコーディング行列が変更される場合、基地局は、上り送信方法に関する制御情報を端末へ送る。第2の変更方法が適用される場合は、ランク数の変更に係る制御情報が送信され、第3の変更方法が適用される場合は、プリコーディング行列の変更に係る制御情報が送信される。
【0089】
S79Bでは、端末は、ランク数に関する制御情報に基づいて、上りのMIMOのランク数を変更する(第2の変更方法が適用される場合)。或いは、端末は、プリコーディング行列及び制御情報に基づいて、プリコーディング行列を変更する(第3の変更方法が適用される場合)。これによって、MIMOのランク数が変更される。
【0090】
その後、基地局は、端末からのデータ受信にあたり、上り制御情報(上り送信に用いるリソースの割り当て情報)を端末に送信する(S80B)。端末は、割り当てられたリソースを用いて送信されるデータを受信する(S81B)。
【0091】
<第1の所要伝送品質の低減方法>
上述した、送信方法の変更、すなわち、アンテナ数、ランク数、又はプリコーディング行列の変更によって、電力付加効率の改善を図り、発熱量を低減することができる。但し、アンテナ数やランクの低下は、伝送速度の低減を招来するため、所要伝送速度やQoS(Quality of Service)等を満たせなくなって回線(上位の回線及び/又は無線回線)が切断される可能性がある。
【0092】
そこで、以下のような構成(第1の所要伝送品質の低減方法)を採用することが考えられる。第1の所要伝送品質低減方法として、第1~第4の実施方法(夫々第1~第3の変更方法を適用可能)の夫々に、以下を追加する。
【0093】
すなわち、ビームフォーミングに使用するアンテナ数、MIMOのランク数、又はプリコーディング行列を制御したことによって、QCI(QoS Class Indictor)或いはQoS(Quality of Service:例えば所要伝送速度や所要最大伝送遅延)が満たされなくなってしまう場合、QCI(QoS Class Indictor)又はQoSを変更する。
【0094】
具体的には、端末又は基地局が基地局の上位装置(例えばPCRF(Policy and Charging Function)やSMF(Session Management Function)に要求し、要求された上位装置はQCIやQoSを変更する。これによって、QCIやQoSを満たさなくなることによる、RLF(Radio Link Failure (無線回線接続失敗))や回線断を回避することができる。なお、QoSには、属性(Attribute)が含まれる。属性は、例えば所要伝送速度、所要最大送信遅延等を含む。
【0095】
第1の所要伝送品質の低減方法では、端末の温度が閾値以上となっている期間において、アンテナ数やランク数の低減、或いはPMの縮小を実施し、更に所要伝送品質(QoSやQCI)を軽減する。すなわち、端末の温度が閾値を超過する場合には、一時的にQoSやQCIを変更する。例えば、QoSやQCIの所要伝送遅延(Packet Delay Budget、Maximum delay Budget)を増加させる。すなわち、許容遅延を甘くする。端末の温度が閾値を下回った場合は、元のQoSやQCIに戻す。所要伝送遅延とともに、又はその代わりに、所要伝送速度(GBR(Guaranteed Bit Rate),MBR(Maximum Bit Rate), AMBR(Aggregated Maximum Bit Rate)等)やプライオリティを変更してもよい。
【0096】
<<5Gのシステム構成>>
ここで、5G(NR)のシステム構成について説明する。図15Aは、5Gネットワークの全体構成を示し、図15Bは、5Gコアネットワーク(5GC)のシステム構成を示す。図15Aにおいて、5G網は、無線アクセスネットワークであるRANと、コアネットワークである5GCとからなる。NG-RANは、網構成が4Gから5Gへ移行する過渡期の無線アクセスネットワークであり、5G対応の基地局であるgNB(5G基地局)と、5GCに接続される4G(LTE)対応の基地局であるng-eNB(LTE基地局)とを含む。NG-RANでは、5G基地局及びLTE基地局に関してNE-DC (NR-E-UTRA-Dual Connectivity)が実施され、5G基地局がMaster(主基地局)となり、LTE基地局はSecondary (第2基地局)となる。なお、MasterをMgNBと呼び、SecondaryをSeNBと呼ぶこともある。
【0097】
また、4Gから5Gへ移行の初期において5GC(5Gコアネットワーク)が未構築である場合、4Gコアネットワーク(EPC)に接続される4G(LTE)対応の基地局であるeNB(LTE基地局)と、5G対応の対応の基地局であるen-gNB(5G基地局)とを含む。4G-RANでは、5G基地局及びLTE基地局に関してEN-DC (E-UTRA NR-Dual Connectivity)が実施され、LTE基地局がMaster(主基地局)となり、5G基地局はSecondary (第2基地局)となる。なお、MasterをMeNBと呼び、SecondaryをSgNBと呼ぶこともある(TS37.340V15.1.0 (2018-03) Figure 4.1.2-1)。
【0098】
図15Bにおいて、5GCは、NSSF (Network Slice Selection Function)と、AUSF(Authentication Server Function: subscriber)と、UDM(Unified Data Management: subscriber)とを含む。NSSFは、スライス毎のSMFの選択を行う。AUSFは認証用サーバである。UDMは加入者関連情報を保持する。スライスとは、ネットワークに設定され、QoS毎、サービス毎やオペレータ毎に設定される仮想的又は物理的なネットワークである。ネットワークスライスと呼ばれることもある。
【0099】
また、5GCは、無線アクセスネットワークであるRAN(基地局及び端末)と、AMF(Access and Mobility Management Function)と、SMF(Session Management Function)と、PCF(Policy Control Function)と、AF(Application Function)と、UPF(User Plane Function)とを含み、UPFはDN(Data Network)に接続されている。AMFは、加入者(ユーザ)認証、セキュリティ、端末の位置管理を司る。SMFは、セッション管理を行う。PCFは、ポリシー制御を行う。AFは、外部アプリケーションサーバである。UPFは、ユーザデータのパケット転送を行う。DN(Data Network)は、5GC外部のデータネットワーク(インターネット等)である。UEは端末であり、RAN及びAMFに接続される。
【0100】
コアネットワークの構成要素(AMF、SMF、PCF、UPF等の夫々)は、「基地局の上位装置」に該当する。コアネットワークを構成する構成要素の夫々が行う処理または動作は、ネットワークに接続された情報処理装置(コンピュータ)におけるプロセッサ及びメモリを用いたソフトウェア処理、或いは集積回路など(ASIC、FPGA、SoC等)のハードウェアによる処理によって行われる。
【0101】
ベアラ(DB: Data Bearer、DRB: Dedicated Radio Bearer)は、ノード間をつなぐデータの通り道であり、1つ以上のフロー(flow:データの流れ)を含む。ベアラ及びフローの夫々は、「データの伝送路」の一例である。5Gでは、フロー単位での制御が行われる。ベアラは、端末間、又は、端末とサービスを実施するサーバとの間に存在する。また、ベアラは、端末とUPFとの間 (NRの場合。LTEの場合は端末とPGWとの間)、端末と基地局との間、基地局とUPFとの間(NRの場合。LTEの場合は基地局とSGWとの間、及びSGWとPGWとの間)に存在する。
【0102】
DRB(Data Radio Bearer)は、端末と基地局との間にあるベアラであり、基地局とUPFとの間には、DB(Data Bearer)及びNG-U Tunnelが存在する。以下の説明では、上述したベアラのうち、端末とUPFとの間、 又は端末と基地局との間、及び基地局とUPFとの間にあるベアラを例にして説明する。なお、QoS及びQCIは、端末間での設定を基本とする。QoS及びQCIは、PCFが管理するQoS Ruleを基に制御される(TS23.203参照)。換言すれば、各装置はPCFからの指示でQoSやQCIの制御を実施する。なお、5Gの仕様では、QCIは5QI(5G QCI)と呼ばれる。
【0103】
<<動作例1>>
図16は、第1の所要伝送品質の低減方法に係る、ベアラ(又はフロー)に対するQCI(伝送品質の一例)制御の動作例(動作例1)を示すシーケンス図である。図16において、例えば、第1の変更方法が適用された第1の実施方法におけるS70~S76の処理(図4)が実行される。S70~S76の再度の説明は省略する。
【0104】
S76で、上りアンテナ数の制御が行われると、上りアンテナ数に関する制御情報が端末に送信され(S209)、端末は、上り送信アンテナ数の変更の制御を行う(S210)。S209及びS210の処理は、図4におけるS77及びS78の処理である。
【0105】
また、基地局は、上り無線回線の品質測定結果を基に、設定されたQCIに対応する無線回線品質(例えば所要伝送遅延)の変更が必要か否かを判定する。例えば上り無線回線の品質測定結果から伝送品質を算出し、算出した伝送品質から伝送速度を算出し、算出した伝送速度から伝送遅延を算出し、算出した伝送遅延と所要伝送遅延と比較することでQCIの変更が必要か否かを判定する(S208)。無線回線品質の変更、すなわちQCIの制御が必要と判定された場合には、基地局は、上りQCIの変更要求をAMF経由でPCFに送信する(S211,S212)。
【0106】
このように、基地局は、上り送信アンテナ数の変更に伴って、少なくとも端末と基地局との間、及び基地局と基地局の上位装置との間におけるデータの伝送路(ベアラ又はフロー)に対する所要伝送品質の変更が必要である場合に、基地局、端末及び上位装置の夫々が所要伝送品質の設定を変更するための制御情報を送信する。
【0107】
基地局は、上りQCIの変更要求を直接にPCFに送信してもよい。なお、周波数変更が上り及び下りの双方について行われる場合には、上り及び下りの双方のQCIの変更要求が送信される。変更要求は、具体的なQCI(QoSクラス)への変更を要求するものであってもよく、QoSルールの変更を要求するものであってもよい。
【0108】
PCFでは、QCIの変更要求を受けて、QCIの制御を行う(S213)。すなわち、PCFは、例えば所要伝送遅延を緩和するQCI、或いは、要求で指定されたQCIへの変更を行う。QCIの変更によって、例えば、所要遅延時間が長くなる。また、QCIの変更によって、帯域保証を止めたり、プライオリティ(優先順位)を下げたりしてもよい。
【0109】
PCFは、上りQCIの変更通知をAMFに送信する(S214)。AMFは、上りQCIの変更通知に従って、端末に対応するベアラに係る上りQCIを変更する(S215)。また、AMFは、上りQCIの変更通知を基地局に送信する(S216)。基地局は、上りQCIの変更通知に従って、端末に対応するベアラに係る上りQCIを変更する(S217)。また、基地局は、上りQCIの変更通知を端末に送信する(S218)。端末は、変更通知を受けて、上りQCIを変更する(S219)。
【0110】
AMFは、上りQCIを変更すると、SMF経由で、UPFに対し、上りQCIの変更通知を送信する(S220)。その後、基地局とUPFとの間で送受信されるユーザデータ(S221)、及び端末と基地局との間で送受信されるユーザデータ(S222)の伝送が、変更後の上りQCIが適用されたベアラを用いて行われる。
【0111】
なお、図16の動作例では、第1の実施方法において、上り送信アンテナ数を変更する場合が示されているが、S211以降の処理は、第1~第3の変更方法を夫々適用可能な第1~第4の実施方法に適用可能である。換言すれば、S211以降の処理は、上り送信アンテナ数の変更だけでなく、下りアンテナ数の変更、上り及び/又は下りランク数の変更、上り及び/又は下りPMの変更が行われる場合にも適用可能である。具体的には、図16におけるS70~S76の処理はS70A~S76Aであってもよい。或いは、図16におけるS70~S76の処理はS70B~S76Bであってもよい。
【0112】
なお、QCI制御がベアラに対して行われる例を説明したが、QCI制御がフローに対して行われてもよい。また、図16の動作例では、基地局がQCI制御の要否を判断し、PCFがQCI制御を実施している。もっとも、QCI制御を基地局が行ってもよい。また、QCI制御にPCFが関与せず、AMF又はSMFがQCI制御の主体となってもよい。図16の動作例では、所要無線品質の変更のためにQCI制御を行う例を示しているが、QoS制御であってもよい。このように、上りの送信アンテナ数の変更(下りの送信アンテナ数の変更、上り及び/又は下りのランクの変更、上り及び/又は下りのPMの変更)が行われる場合に、QCI又はQoS制御が行われることで、要求を満たさないことによるベアラやフローの切断を回避して、通信を継続することができる。
【0113】
<第2の所要伝送品質の低減方法>
第2の所要伝送品質の低減方法として、第1~第3の変更方法を適用可能な第1~第4の実施方法の夫々に、以下を追加することができる。すなわち、ビームフォーミングで使用するアンテナ数、MIMOのランク数、又はプリコーディング行列を制御(変更)する期間において伝送される各パケットのQCIやQoSを一時的に変更する。
【0114】
具体的には、第1の所要伝送品質の低減方法と同様に、基地局又は端末が上記制御期間中のパケット毎のQCI又はQoSの変更を上位装置に要求し、上位装置がパケット毎のQCI又はQoSを変更する。なお、一部のサービス又は一部のQoSのパケットに対して実施することとしてもよい。制御対象のパケットは、IPパケット、PDCP PDU、RLC PDU、又はMAC PDUの何れかとする。
【0115】
第2の所要伝送品質の低減方法では、端末の温度が閾値以上となっている期間のパケットの所要伝送品質を、一時的に変更する。 所要伝送品質は、QoS、QCI、所要伝送遅延、所要伝送速度、プライオリティの少なくとも1つとする。パケットのヘッダに、変更後の所要伝送品質を含めることで、パケット毎に所要伝送品質を変更することができる。端末の温度が閾値以下となった場合は、所要伝送品質を元に戻し、ヘッダに付加した変更後の所要伝送品質を削除する(ヘッダに対する変更後の所要伝送品質の付加を停止する)。
【0116】
<<動作例2>>
図17は、第2の所要伝送品質の低減方法に係る、パケットの伝送品質制御の動作例(動作例2)を示すシーケンス図である。例えば、第1の変更方法が適用された第1の実施方法におけるS70~S76の処理(図4)が実行される。S70~S76の再度の説明は省略する。
【0117】
S76で、上りアンテナ数の制御が行われると、上りアンテナ数に関する制御情報が端末に送信され(S309)、端末は、上り送信アンテナ数の変更の制御を行う(S310)。S309及びS310の処理は、図4におけるS77及びS78の処理と同じである。
【0118】
また、基地局は、上り無線回線の品質測定結果を基に、設定されたQCIに対応する無線品質(例えば所要伝送遅延)の変更が必要か否かを判定する(S308)。無線品質の変更、すなわちQCIの制御が必要と判定された場合には、基地局は、上りQCIの変更要求をAMF経由でPCFに送信する(S311,S312)。S311及びS312に係る動作は、実質的にS211及びS212の動作と同じである。
【0119】
要求を受けたPCFは、伝送品質制御(S313)によって、QCIとして設定された所要伝送品質を変更する。変更後の所要伝送品質に関する制御情報は、基地局、AMF/SMF、及び基地局を介して端末に通知される(S314、S316、S318)。このように、基地局は、伝送路(ベアラやフロー)を流れるパケットのヘッダに対する所要伝送品質に関する情報の変更、付加、削除及び付加と、ヘッダ中の前記所要伝送品質に関する情報に従ったパケットの伝送を、基地局、端末及び基地局の上位装置(AMF/SMF)の夫々が行うための制御情報を送信する。
【0120】
通知を受けた基地局、AMF/SMF、及び端末のそれぞれは、通知に基づく伝送品質制御を行う(S315、S317、S319)。すなわち、基地局、AMF/SMF、及び端末の夫々は、ユーザデータの送受信(S322、S324)に関して、伝送対象のパケットのヘッダに、変更後の(緩和された)所要伝送品質を示す情報(例えば所要伝送品質に対応するQoSを示す情報)を付加し(S321、S323)、変更した所要伝送品質に基づいてデータを伝送する。パケットの送信及び中継は、パケットのヘッダに格納された変更後の所要伝送品質を示す情報に従って行われる。なお、基地局とUPFとの間は、パケットとしてIPパケットが送受信される。一方、基地局と端末との間では、パケットとしてMAC PDU、RLC PDU、PDCP PDU、SDAP PDUが送受信される。
【0121】
なお、図17の動作例では、第1の実施方法において、上りアンテナ数を変更する場合が示されているが、S311以降の処理は、第1~第3の変更方法を夫々適用可能な第1~第4の実施方法に適用可能である。換言すれば、S311以降の処理は、上り送信アンテナ数の変更だけでなく、下りアンテナ数の変更、上り及び/又は下りランク数の変更、上り及び/又は下りPMの変更が行われる場合にも適用可能である。具体的には、図17におけるS70~S76の処理がS70A~S76Aであってもよい。或いは、図17におけるS70~S76の処理がS70B~S76Bであってもよい。
【0122】
第2の所要伝送品質の低減方法によれば、パケット毎に付加された、変更後の所要伝送品質に基づくデータ伝送が実施される。これによって、変更後の所要伝送品質を満たした伝送が実現され、使用周波数の変更によって所要伝送品質を満たされなくなることによる回線断を防止できる。
【0123】
第2の所要伝送品質の低減方法は、パケットのヘッダに変更後の所要伝送品質を示す情報を付加すること以外は、第1の所要伝送品質の低減方法とほぼ同じである。このため、第1の所要伝送品質の低減方法に関して説明した変形例は、第2の所要伝送品質の低減方法に適用可能である。但し、所要伝送品質としては、例えば最大許容伝送遅延(所要伝送遅延)や伝送速度、パケット誤り率等の少なくとも一つを含む。なお、変更後の所要伝送品質を示す情報は、既設の(変更前の)QCIやQoSで規定された所要伝送品質に係数を乗算したものとし、ヘッダには、変更後の所要伝送品質に係る情報として、係数を付加するようにしてもよい。なお、サービスタイプのフィールドに格納されたQCIやQoSの情報を変更してもよいし、一旦サービスタイプを削除し、新たに別なQCIやQoSの情報のサービスタイプを付加してもよい。
【0124】
図18は、パケットのヘッダに、無線回線品質情報(変更後の所要伝送品質を係る情報)を付加又は追加する例を示す。図18には、IPパケットのフォーマットが示されている。IPパケットのヘッダは、サービスタイプのフィールドを有し、このフィールドに、QCIやQoSの情報が格納される。また、ヘッダは、オプション部のフィールドを有し、このフィールドに、変更後の所要伝送品質に係る情報として、識別情報、すなわち、パケット単位の属性を示す情報が格納される。
【0125】
図19は、MACパケットのフォーマットを示す。MACパケットのヘッダには、MCE(MAC Control Element)を格納するフィールドが設けられている。ここに、上述した識別情報(パケット単位の属性を示す情報)を通知するための新たなMCEフィールドを定義し、そのMCEフィールドをヘッダに含める。MCEは、TS36.321 6.1.2で規定されている。RLC PDU、PDCP PDU、SDAP PDU のヘッダに関しては、TS37.324, TS36.322, TS36.323で規定されている。識別情報は、ヘッダの空き領域に格納、又は識別情報を格納したフィールドの追加によって、ヘッダに付加される。
【0126】
<<基地局の処理例>>
図20は、図16又は図17の動作例に適用可能な基地局の処理例を示すフローチャートである。図20の処理例は、S155A、S155B及びS157が追加されている点で、図7に示した処理例と異なっている。S155Aでは、基地局は、制御後の伝送品質を算出する。S155Bでは、基地局は、QoS又はQCIの制御(ベアラ設定変更)を行う。S157では、基地局は、QoS又はQCI変更を示す通知(制御情報)の送信を行う。上記を除き、図20の処理例は図7の処理例と同じであるので説明を省略する。
【0127】
<<端末の処理例>>
図21は、図16又は図17の動作例に適用可能な端末の処理例を示すフローチャートである。図21の処理例は、S165及びS166が追加されている点で、図8に示した処理例と異なっている。S165では、端末は、QoS又はQCIの変更を示す通知(制御情報)を受信し、S166では、端末は、制御情報に従ったQoS又はQCI制御(ベアラ設定変更)を行う。上記を除き、図21の処理例は図8の処理例と同じであるので説明を省略する。
【0128】
<ネットワーク構成要素の構成例>
以下、上述した通信システムを構成するネットワーク要素、すなわち、基地局、端末、AMF/SMF、PCF及びUPFの夫々に適用可能な基地局100、端末200、AMF/SMF300、PCF400、及びUPF500の構成について説明する。
【0129】
<<基地局の構成例>>
図22及び図23は、上り送信方法及び下り送信方法を制御可能な基地局100の構成例を示す。図23において、基地局100は、CPU121と、メモリ(記憶装置)122と、送信機(送信回路)107と、受信機(受信回路)111と、インタフェース回路123と、送受信アンテナ114とを含む。
【0130】
基地局100は、CPU121が記憶装置122に記憶された様々なプロセッサを実行することによって、図22に示すように、制御部102と、SDAP処理部103と、PDCP処理部104と、RLC処理部105と、MAC処理部106と、無線制御部と、送信機(送信回路)107と、受信機(受信回路)111とを含んだ装置として動作可能である。
【0131】
記憶装置122は、ROMやRAMなどのメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの記憶媒体である。記憶装置122は、データ及びプログラムの記憶領域、CPU121の作業領域、通信データのバッファ領域として使用される。
【0132】
CPU121は、記憶装置122に記憶されたプログラムの実行によって、基地局100全体の動作を制御する制御部(コントローラ)として動作する。また、CPU121は、制御情報の受信及び生成を行い、図3図21を用いて説明した基地局の動作に係る処理を行うことができる。制御情報は、これまでに説明した、基地局が送受信する、温度制御情報、上り又は下りの送信方法の変更要求、CSI RS又はSRSの送信要求、CSI RS又はSRS、上り又は下り無線回線品質の測定要求、上り又は下り無線回線品質測定結果、上り又は下りの送信方法の変更に係る制御情報、QCI又はQoSの変更要求などである。CPU121は、例えば、無線回線の無線周波数の変更の要否を判定する判定部として動作可能である。
【0133】
制御部102は、QCI制御部又はQoS制御部として動作する。制御部102は、無線制御部110とともに、伝送遅延等の所要伝送品質を考慮した制御(QCI又はQoSの変更等の制御)を行う。
【0134】
SDAP処理部103は、夫々入力される送信データ及び受信データに関して、SDAP(Service Data Adaptation Protocol)レイヤに係る処理を行う。SDAPレイヤではIPフローとベアラとのマッピングを行うレイヤであり、SDAPレイヤでは、IPパケットがカプセリングされ、そのヘッダ内で対応するQoSを示す識別子が通知される。
【0135】
PDCP処理部104は、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤに係る処理を行う。PDCPレイヤでは、秘匿、正当性確認、順序整列、IPヘッダの暗号化(encryption)、及び解凍(decryption)などが行われる。RLC処理部105は、RLC(Radio Link Protocol)レイヤに係る処理を行う。RLCレイヤでは、再送制御、重複検出、順序整列などが行われる。MAC処理部106は、MAC(Media Access Control)レイヤに係る処理を行う。MACレイヤでは、無線リソース割り当て、データマッピング、再送制御などが行われる。
【0136】
CPU121は、プロセッサの実行によって、制御部102、SDAP処理部103、PDCP処理部104、RLC処理部105、MAC処理部106、及び無線制御部110として動作する。制御部102、SDAP処理部103、PDCP処理部104、RLC処理部105、MAC処理部106、及び無線制御部110の夫々は、1又は2以上の回路(ASIC、FPGA、DSP、SoCなど)を用いて構成してもよい。
【0137】
送信機107は、送信部(トランスミッタ)108と、制御信号作成部109とを備える。送信無線回路108は、MAC処理部106からの信号の変調回路、信号の周波数を所定の送信周波数に上げるアップコンバータ(UC)、UCからの信号を増幅するPAなどを含み、PAからの出力信号はデュプレクサ又はスイッチを介して送受信アンテナ114に接続され、電波として送信される。制御信号作成部109は、端末向けの制御情報を無線制御部110から受け取り、制御情報を含む制御信号を生成し、送信無線回路108へ送られる信号に含める。
【0138】
受信機111は、受信無線回路(レシーバ)112と、制御信号抽出部113Aと上り無線回線品質測定部113Bとを含む。受信無線回路112は、送受信アンテナ114からデュプレクサ又はスイッチを介して受信された電波を低雑音増幅するLNAと、LNAの出力信号の周波数をダウンコンバートするダウンコンバータ(DC)と、DCの出力信号に対する復調を行う復調回路とを含む。制御信号抽出部113は、受信無線回路112から出力された信号から制御信号を抽出し、無線制御部110に渡す。無線制御部110は、CPU101又は制御部102からの制御情報を制御信号作成部109に渡す。また、無線制御部110は、制御信号抽出部113Aから得られた制御信号中の制御情報を、CPU101又は制御部102向けに送出する。上り無線回線品質測定部113Bは、受信無線回路112で受信された信号を用いて、上り回線品質を測定し、測定結果を無線制御部110に渡す。無線制御部110は、変更部の一例として、送信方法の変更に関する制御情報に従って、使用するアンテナ数、ランク数、PMを変更する処理を行う。
【0139】
<<端末の構成例>>
図24及び図25は、端末200の構成例を示す。図25において、端末200は、CPU201と、メモリ(記憶装置)219と、送信機207と、受信機211と、送受信アンテナ214とを備える。CPU201が記憶装置219に記憶されたプログラムを実行することによって、端末200は、図24に示すように、CPU201と、QCI又はQoSの制御部202と、SDAP処理部204と、PDCP処理部205と、RLC処理部206と、MAC処理部203と、送信機(送信回路)207と、無線制御部210と、受信機(受信回路)211と、温度測定部216と、送受信アンテナ214とを含んだ装置として動作する。。
【0140】
記憶装置219は、記憶装置122と同様のものを使用できる。CPU201は、記憶装置219に記憶されたプログラムの実行によって、端末200全体の動作を制御する。CPU201は、制御情報の受信及び生成を行い、図3図21を用いて説明した端末の動作に係る処理を行うことができる。
【0141】
制御部202は、QCI制御部又はQoS制御部として動作する。制御部102は、無線制御部210とともに、伝送遅延等の所要伝送品質を考慮した制御(QCI又はQoSの変更等の制御)を行う。制御部202が行う処理または動作の少なくとも一部は、CPU201によって行われてもよい。
【0142】
SDAP処理部203、PDCP処理部204、RLC処理部205、MAC処理部206及び無線制御部210は、SDAP処理部103、PDCP処理部104、RLC処理部105、MAC処理部106、無線制御部110と同様のものである。制御部202、SDAP処理部203、PDCP処理部204、RLC処理部205、MAC処理部206及び無線制御部210の夫々も、1又は2以上の回路(ASIC、FPGA、DSP、SoCなど)を用いて構成することができる。
【0143】
送信機207(送信回路の一例)は、送信無線回路208と、制御信号作成部209とを備える。送信無線回路208は、送信無線回路108と同様の構成を有し、PAを含んでいる。制御信号作成部209は、制御信号作成部109と同様の動作を行う。
【0144】
受信機211(受信回路の一例)は、受信無線回路212と、制御信号抽出部213と、無線回線品質測定部215とを含む。受信無線回路212は受信無線回路112と同様の構成を有し、LNAを含む。制御信号抽出部213は、制御信号抽出部113と同様に、制御信号を抽出する処理を行う。無線回線品質測定部215は、受信無線回路212で受信されたRSの無線品質を測定する。無線制御部210は、無線制御部110と同様に、制御信号中の制御情報をCPU201や制御部202向けに送出する処理、制御情報を制御信号作成部209に供給する処理などを行う。また、無線制御部210は、変更部の一例として、無線周波数の変更に関する制御情報に従って、使用する無線周波数を低下させる処理(HO、SUL/SDLへの切り替えや設定)を行う。
【0145】
CPU201、送信無線回路208のPA、受信無線回路212のLNAの夫々の上には、これらの温度を測定する温度センサ218が設けられており、温度測定部(温度測定回路の一例)216は、温度センサ218の出力信号から端末200の温度を測定する。測定された温度は、CPU201に供給される。CPU201は、適宜のタイミング又は適宜の周期に基づいたタイミングで、温度測定部216から温度を示す情報を取得する。このようにして、測定対象の温度測定が行われる。
【0146】
<<SDAP処理部の構成例>>
図26は、SDAP処理部103(204)の構成例を示す図である。SDAP処理部103(204)は、マッピング部131と、ヘッダ付加部132と、マッピング部133と、ヘッダ除去部134と、SDAP制御部135とを含む。
【0147】
マッピング部131、133の夫々は、SDAP制御部135の制御情報に基づく指示に従って、受信データのフローをベアラ(DRB)にマッピングする処理を行う。ヘッダ付加部132は、SDAP制御部135からの、QoS又はQCI制御情報に従った指示に応じて、QCIやQoSの所要伝送品質情報をヘッダに付加する処理を行う。ヘッダ除去部134は、SDAP制御部135からの指示に従って、ヘッダを受信データから除去する処理を行う。ヘッダ除去部134において、QoSの所要伝送品質情報の削除が行われる。SDAP制御部135は、マッピング制御と、所要伝送品質(QCIやQoS)の制御を行う。
【0148】
<<PDCP処理部の構成例>>
図27は、PDCP処理部104(205)の構成例を示す。PDCP処理部104(205)は、送信データに対するデータ圧縮部141と、暗号化部142と、セグメンテーション/コンカチネーション部143と、ヘッダ付加部144と、PDCP制御部145とを含む。また、PDCP処理部104(205)は、受信データに対するヘッダ除去部146と、SDUリアッセンブリ(再組立)部147と、解読部(復号部)148と、データ伸長部149と、リオーダリング部(順序整列部)150とを含む。
【0149】
PDCP制御部145は、制御情報に従って、データの圧縮・解凍、暗号化・復号、順序整列などの制御を行う。また、PDCP制御部145は、QCI又はQoS制御情報に従って、QCI及びQoSの制御を行うことができる。PDCP制御部145は、ヘッダ付加部144及びヘッダ除去部146に指示を出す。ヘッダ付加部144は、指示に従って、QCIやQoS等の所要伝送品質情報の付加を行い、ヘッダ除去部146は、指示に従って、所要伝送品質情報の削除を実施する。
【0150】
<<RLC処理部の構成例>>
図28は、RLC処理部105(206)の構成例を示す。RLC処理部105(206)は、送信データに対するセグメンテーション/コンカチネーション部151と、ヘッダ付加部152と、RLC制御部152と、受信データに対するリオーダリング(順序整列)部154と、ヘッダ除去部155と、SDUリアッセンブリ(再組立)部156とを含む。
【0151】
RLC制御部153は、制御情報に従って、再送制御、重複検出、順序整列などの制御を行う。また、RLC制御部153は、QCI又はQoS制御情報に従って、QCI及びQoSの制御を行うことができる。RLC制御部153は、ヘッダ付加部152及びヘッダ除去部154に指示を出す。ヘッダ付加部152は、指示に従って、QCIやQoS等の所要伝送品質情報の付加を行い、ヘッダ除去部146は、指示に従って、所要伝送品質情報の削除を行う。
【0152】
<<MAC処理部の構成例>>
図29は、MAC処理部106(203)の構成例を示す。MAC処理部106(203)は、送信データに対するセグメンテーション/コンカチネーションを行うマルチプレクサ161と、スケジューラ/HARQ制御部162と、無線回線設定制御部163と、MAC制御部164と、SDUリアッセンブリを行うデマルチプレクサ165とを含む。MAC制御部164は、制御情報に基づいて、無線リソース割り当て(スケジューリング)、データマッピング、再送制御などを行う。すなわち、スケジューラ/HARQ制御部162は、QCIやQoS等の所要伝送品質情報に基づいたスケジューリングを実施する。また、無線回線設定制御部163は、 スケジューリング結果に基づいた無線回線制御情報を送信データに設定する。また、MAC制御部164において、QCIやQoS等の、所要伝送品質の制御を行う。
【0153】
<<PCFの構成例>>
図30は、PCF300の構成例を示す。PCF300は、QoS課金制御管理部301を含む。QoS課金制御管理部301は、所要伝送品質(QoS)、又はQoSポリシーの変更と、変更されたポリシーを適用(実現)する機能を有する。QoS課金制御管理部301は、図19及び図20を用いて説明した動作を行う。
【0154】
<AMF/SMFの構成例>
図31は、AMF/SMF400の構成例を示す。AMF/SMF400は、図16及び図17の動作例におけるAMF/SMFの動作を行う。AMF/SMF400は、接続制御部401と、QoS制御部402とを含む。SMFは、セッション(ベアラ又はフロー)の設定を行い、ベアラ又はフローにQoSを設定する。AMFは、PCFから受信したQoSポリシーをアクセス(接続)やモビリティに適用する処理を行う。AMF/SMF400のQoS制御部402は、セッション(ベアラ又はフロー)に対し、変更後のQoSを設定する。接続制御部401は、変更後のQoS又はQoSポリシーを、アクセス(接続)やモビリティに適用する。
【0155】
<<UPFの構成例>>
図32は、UPF500の構成例を示す。UPF500は、図16及び図17の動作例におけるUPFの動作を行う。UPF500は、パケット伝送制御部501と、QoS制御部502とを含む。パケット伝送制御部は、パケット(ユーザデータ)の経路選択(routing)制御と、QoSに基づいたパケットの伝送(forwarding)の制御とを行う。QoSが変更された場合、変更後のQoSに基づいた伝送制御を行う。
【0156】
QoS制御部502は、ユーザデータ(Uプレーン)にQoSを適用する処理を行う。QoS(ToS)に基づいて、伝送(取り扱い(handling))を制御する。IPパケットのヘッダには、QoSに相当するToS (Type of Service)が付加されている。QoSが変更された場合、QoS制御部502は、変更後のQoS(ToS)に基づく伝送制御を行う。また、QoS制御部502は、変更後のQoSに基づいて、パケットヘッダに付加されたQoSに係る情報を変更する。
【0157】
<実施形態の作用効果>
実施形態に係る無線通信システムでは、端末200と基地局100との間で無線通信が行なわれる。端末200は、端末200の温度の測定結果、又は、端末の温度の測定結果に基づく送信方法の変更要求を、送信方法を変更可能な基地局100に送信する送信機207を備える。また、基地局100は、端末200と基地局100との間における、上り無線回線品質と下り無線回線品質との一方の測定結果に基づく上りの送信方法又は下りの送信方法の変更に関する制御情報を端末に送信する送信機107(送信装置)を備える。
【0158】
実施形態に係る無線通信システム(基地局及び端末)及びその無線通信制御方法によれば、端末の温度、すなわち、端末における測定対象(PA又はHPA、LNA)の温度が閾値を超える場合に、送信方法(アンテナ構成:送信アンテナ数、ランク数、PM)の変更によって送信電力を低下させ、アンプの電力付加効率を改善させる。これによって、アンプの発熱量が低下し、端末の発熱量(温度)を低下させることができる。また、伝送速度の低下による信号処理量の低下により、端末が有するプロセッサ(CPU201)の発熱量が低下し、端末の温度が低下する。
【0159】
また、実施形態では、送信方法(アンテナ構成)を変更する場合に、ベアラ若しくはフロー、又はパケットの所要伝送品質(QCI及びQoS)の緩和が行われる。これによって、アンテナ数、ランク数、又はPMを変更した結果、通信の所要伝送品質が満たされなくなって回線が切断されるのを回避することができる。変更後の所要伝送品質を示すQoS又はQoSポリシーの情報は、パケットのヘッダに含められ、基地局、端末、UPFにおけるユーザデータの伝送制御に使用される。
【0160】
なお、実施形態と異なり、基地局が、温度の測定結果と、無線回線の品質測定結果とを受け取り、基地局が送信方法の変更を判断する構成を採用してもよい。図33は、変形例の説明図である。図33において、端末(端末200)は、測定対象(所定部位)の温度測定を行い(S401)、温度の測定結果を基地局(基地局100)へ送信する(S402)。基地局は、温度の閾値を有し、温度の測定結果が閾値を超過するか否かの判定を以て、無線回線の品質測定の要否を判定する(S403)。
【0161】
品質測定が必要と判定された場合、基地局は、無線回線の品質測定要求を送信し(S404)、無線回線の品質測定用信号(CSI RS)を送信する(S405)。端末は、品質測定要求に応じて、受信されたCSI RSを用いた品質測定を行い(S406)、品質の測定結果(RI、PMI)を基地局へ送信する(S407)。基地局は、品質測定結果に基づいて、送信方法の変更の要否を判定する(S408)。変更要と判定された後の動作は、実施形態と同様である。
【0162】
また、実施形態と異なり、端末の温度が閾値を超える程度に上昇する前に、アンプの電力付加効率の低下を予想し、送信方法(アンテナ構成)の変更を実行することで、電力付加効率の低下を防止し、事前に端末の温度上昇を抑圧する構成を採用してもよい。
【0163】
また、高温の検出に伴う制御がバタつかないように、ヒステリシスを設定してもよい。例えば、温度の閾値1を越えている期間が時間長の閾値T1を超過した場合に、周波数変更の制御を行い、温度の閾値2を下回っている期間が時間長の閾値T2を超過した場合に、アンテナ構成(アンテナ数又はランク)を元に戻す。上記の温度の閾値1及び2、時間長の閾値T1及びT2を、基地局は端末に通知する。
【0164】
或いは、以下の構成を採用してもよい。基地局は、閾値1及び2を端末に通知する。端末は、温度が閾値1を超えたことを示す第1の通知、又は温度が閾値2を下回ったことを示す第2の通知を、周期的に基地局に送信する。基地局では、第1の通知が届いている時間をカウントすることで、温度が閾値1を超えている時間が閾値T1を超えているかを判定することができる。また、第2の通知が届いている時間をカウントすることで、温度が閾値2を下回っている時間が閾値T2を超えているかを判定することができる。閾値1及び2、閾値T1及びT2は、無線回線設定制御情報(RRCConnecetionReconfiguration message)に追加して、端末に通知することができる。また、閾値1及び2、閾値T1及びT2は、システム情報(例えば、SIB(System Information Block))に追加してもよい。
【0165】
また、実施形態では、発熱を低減することを目的としているが、寒冷地などの環境温度が極めて低い場合や、体温低下を防止する場合は、敢えて端末を発熱させてもよい。例えば、端末が外気温を測定する温度センサを備え、測定した外気温を基地局に通知する。基地局が発熱量を増加させ、一定温度になるように制御する。例えば、外気温が閾値より低い間は、送信方法の変更を回避する。以上説明した実施形態の構成は、適宜変更可能であり、必要に応じて適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0166】
100・・・基地局
101、201・・・CPU
102、202・・・制御部
103、203・・・SDAP処理部
104、204・・・PDCP処理部
105、205・・・RLC処理部
106、206・・・MAC処理部
110、210・・・無線制御部
108、208・・・送信部(PA含む)
112、212・・・受信部(LNA含む)
200・・・端末
300・・・PCF
400・・・AMF/SMF
500・・・UPF
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