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特許7596400熱成形フィルムの深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのデバイス
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  • 特許-熱成形フィルムの深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】熱成形フィルムの深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20241202BHJP
   B29D 7/01 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
A61C7/08
B29D7/01
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022560029
(86)(22)【出願日】2021-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-15
(86)【国際出願番号】 EP2021056143
(87)【国際公開番号】W WO2021197788
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-03-08
(31)【優先権主張番号】20166850.6
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー、ハンス-クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ファルティン、ペーター
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0141534(US,A1)
【文献】特開平04-092659(JP,A)
【文献】特開2012-056018(JP,A)
【文献】特開2001-337411(JP,A)
【文献】特開平02-284811(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220221(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/08
B29D 7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱成形フィルム(3)のアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)を分離するためのデバイス(1)であって、
前記深絞り加工された熱成形フィルム(3)を熱的に分離し、同時に、前記分離された深絞り加工された熱成形フィルム(3)を改良するための分離要素(4)と、
前記熱成形フィルム(3)の温度を少なくともそのガラス温度に実質的に上昇させるように、前記分離要素(4)の加熱を調節するための加熱手段(5)と、
前記分離要素(4)に対して相対的に移動可能である前記深絞り加工された熱成形フィルム(3)を支持するための支持部(6)と、
前記支持部(6)に対して、前記深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)の分離外形(S)に沿って、前記分離要素(4)を移動させるための移動機構(7)と、
前記分離外形(S)に基づいて前記加熱手段(5)と前記移動機構(7)とを制御するように適合された制御ユニットと
を備えることを特徴とするデバイス(1)。
【請求項2】
前記分離要素(4)の近傍で前記熱成形フィルム(3)の前記温度を感知するための温度センサをさらに備え、前記加熱手段(5)が、前記感知された温度に基づいて前記分離要素(4)の加熱を調節するようにさらに適合されることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス(1)。
【請求項3】
前記加熱手段(5)が、ポリメチルメタクリレートのガラス温度に対応する少なくとも105℃に前記熱成形フィルム(3)の温度を実質的に上昇させるように前記分離要素(4)の加熱を調節するようにさらに適合される
ことを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス(1)。
【請求項4】
前記移動機構(7)が、
第1の軸(z’)の周りで前記支持部(6)を回転させるための第1の回転手段と、 前記第1の軸(z’)に沿って前記支持部(6)の位置を変更するための高さ調整手段と
を備える
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項5】
前記移動機構(7)が、
前記支持部(6)の前記第1の軸(z’)に向かってまたはこれから離れて前記分離要素(4)を半径方向に移動させるための半径方向案内手段(7a)
を備える
ことを特徴とする、請求項4に記載のデバイス(1)。
【請求項6】
前記半径方向案内手段(7a)が、前記半径方向に前記分離要素(4)を支持するための回転可能なアーム(7b)を備え、
前記移動機構(7)が、
第2の軸(z’’)の周りで前記回転可能なアーム(7b)を回転させるための第2の回転手段
を備える
ことを特徴とする、請求項5に記載のデバイス(1)。
【請求項7】
前記制御ユニットは、前記分離要素(4)が、前記対応する分離外形において実質的に曲率半径の方向を指すように、前記第2の軸(z’’)の周りで前記アーム(7b)を回転させるように前記第2の回転手段を制御するようにさらに適合される
ことを特徴とする、請求項6に記載のデバイス(1)。
【請求項8】
対応するモデル(9)上の前記深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)の前記熱成形フィルム(3)を前記支持部(6)に挟持するための挟持手段(8)
をさらに備えることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項9】
前記支持部(6)が、前記分離要素(4)に対して相対的に移動可能な前記深絞り加工された熱成形フィルム(3)を支持するための回転台(6a)を備える
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項10】
前記分離要素(4)が、半径方向に突出している、ナイフ、チゼル、スパイク、または針の形で提供される
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項11】
前記深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)の前記分離外形(S)に関する情報を受け取るまたは構築するためのCAD/CAM手段
をさらに備えることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項12】
前記分離要素(4)の位置を検出するためのセンサをさらに備え、
前記制御ユニットが、前記支持部(6)および前記深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)に対して1つまたは複数の基準点に前記分離要素(4)を移動させることによって前記移動機構(7)を較正し、前記分離要素(4)が1つまたは複数の基準点に移動されるとき、前記分離要素(4)の前記位置を検出するようにさらに適合されることを特徴とする、
請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項13】
アライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)を製造するために、前記支持部(6)上に置かれることになるモデル(9)を使用して熱成形フィルム(3)を深絞り加工するための深絞り加工手段をさらに備え、前記深絞り加工手段が前記支持部(6)の上方に配置され、前記制御ユニットが、前記深絞り加工手段を制御するようにさらに適合されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のデバイス(1)を使用する方法であって、 アライナまたはバイトスプリントなどの、顎にまたがる歯科装置(2)を製造するためにモデル(9)を使用して熱成形フィルム(3)を深絞り加工するステップと、
前記支持部(6)上の前記モデル(9)によって挟持および支持された状態で、および前記熱成形フィルム(3)または前記モデル(9)上の前記分離外形(S)に沿って前記加熱された分離要素(4)を移動させることによって、前記深絞り加工された熱成形フィルム(3)を分離および改良するステップと
を備えることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる(jaw-spanning)歯科装置を分離するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
歯ぎしりの治療のためのアライナまたはバイトスプリントなどの、ポリメチルメタクリレートまたは類似の材料から作製された、顎にまたがる歯科装置は、その使用中にかなりの咀嚼負荷にさらされる。そのため、これらは、3Dプリンティングなどの現代の生産方法にもかかわらず、依然として熱成形フィルムの深絞り加工プロセスを使用して製造される。熱成形フィルムの深絞り加工の後の比較的複雑な後プロセスは、フライス加工ツール、研削ツール、および/または研磨ツールによる、深絞り加工された熱成形フィルムの手動切断およびトリミングである。深絞り加工された熱成形フィルムの手動切断およびトリミングは、たとえば、モータ付きハンドピースによって動作される回転器具を用いてなされる。結果として生じる鋭利な縁は、時間のかかるプロセスにおいて滑らかにされなければならない。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の問題を克服することと、熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのデバイスを提供することである。
【0004】
この目的は、請求項1に記載のデバイスおよび請求項14に記載の方法を通じて達成された。従属請求項の主題は、さらなる実施形態および発展に関係する。
【0005】
本発明は、熱成形フィルムのアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を分離するためのデバイスを提供する。このデバイスは、深絞り加工された熱成形フィルムを熱的に分離し、同時に、この分離された深絞り加工された熱成形フィルムを改良するための分離要素と、熱成形フィルムの温度を少なくともそのガラス温度に実質的に上昇させるように、分離要素の加熱を調節するための加熱手段と、分離要素に対して相対的に移動可能である深絞り加工された熱成形フィルムを支持するための支持部と、この支持部に対して、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置の分離外形に沿って、分離要素を移動させるための移動機構と、分離外形に基づいて加熱手段と移動機構とを制御するように適合された制御ユニットとを備える。
【0006】
本発明の主な有利な効果は、熱成形フィルムを少なくともそのガラス温度に実質的に加熱することによって、分離および改良が単一のステップで行われ得ることである。それによって、作業ステップの数が減少可能であり、急速でスムーズな分離プロセスが達成可能であり、また、全体的なプロセスが単純化可能である。本発明の別の主な有利な効果は、実質的に少なくともそのガラス温度への熱成形フィルムの温度の調整を介して、熱成形フィルムの分離は、その分解および不必要な溶解なしに可能であり、したがって、アライナまたはバイトスプリントを損傷するリスクは、可能な限り防止または減少可能であることである。本発明の別の主な有利な効果は、深絞り加工された熱成形フィルムが、いかなる手動介入の必要なしに、分離外形に沿って正確に分離可能であることである。
【0007】
本発明によれば、温度調節は、閉ループまたは開ループを通じて実行されてよい。本発明によれば、加熱手段は、熱成形フィルムの温度が、熱成形フィルムの分解温度に決して到達せず、熱成形フィルムの分解温度をはるかに下回ったままである、好ましくは実質的に熱成形フィルムのガラス温度であるかまたはそれをわずかに上回ったままであるように、分離要素の加熱を調節する。したがって、一実施形態では、温度センサは、分離要素の近傍で熱成形フィルムの温度を感知するために使用される。加熱手段は、感知された温度に基づいて分離要素の加熱を調節する。あるいは、温度センサを使用する必要性を取り除くために、熱力学モデルが加熱手段に適用されることがある。したがって、加熱手段は、分離要素とその近傍の熱成形フィルムとの間の温度降下を考慮する熱力学モデルに基づいて、分離要素の加熱を調節し得る。熱力学モデルは、経験的データに基づいてよい。
【0008】
アライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置は通常、ポリメチルメタクリレート(PMMA)から作製される。異なるタイプのポリメチルメタクリレート(PMMA)が利用可能である。したがって、一実施形態では、加熱手段は、一般に使用されるタイプのポリメチルメタクリレートのガラス温度に対応する少なくとも105℃に熱成形フィルムの温度を実質的に上昇させるように分離要素の加熱を調整するようにさらに適合される。しかしながら、あるいは、PMMA以外の他のガラス温度をもつ異なるタイプの熱成形フィルムが使用されてもよい。したがって、あるいは、ユーザは、分離されることになる熱成形フィルムのタイプに応じて加熱手段を選択的に設定することが可能であることがある。
【0009】
本発明によれば、支持部と分離要素とは、互いに対して相対的に移動可能である。相対運動は、平行移動と回転とを引き起こすためのさまざまな異なる機械的配置において達成され得る。したがって、一実施形態では、支持部の位置は、第1の軸、好ましくは垂直軸に沿って変更可能であり、同じ第1の軸の周りで回転可能である。さらに、分離要素は、第1の軸に向かって、またはこれから離れて、半径方向に移動可能であり、好ましくはまた、第2の軸、好ましくは垂直軸の周りで回転可能である。分離要素は、好ましくは、回転可能なアームによって半径方向に支持される。支持部は、好ましくは、深絞り加工された熱成形フィルムを支持するための回転台を備える。第1の軸と第2の軸とは、好ましくは、平行および垂直である。第1の軸と第2の軸とは、あるいは、非平行であってよく、および/または非垂直な方向に並べられる。
【0010】
本発明によれば、分離要素は、熱成形フィルムの容易な分離を可能にするさまざまな角度で熱成形フィルムの方を指すように配置されてよい。この角度は、固定されてもよいし、分離外形の形状に基づいて適応的に変化されてもよい。一実施形態では、回転可能なアームは、分離要素が実質的に、対応する分離外形において曲率半径の方向を指すように、第2の軸の周りで回転される。
【0011】
本発明によれば、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置の熱成形フィルムが、分離プロセス中に支持部に対して対応するモデル上で不動化可能であることも望ましい。これは、さまざまな異なる機械的配置において達成され得る。したがって、一実施形態では、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置の熱成形フィルムは、対応するモデル上で、ユーザによって取り扱い可能である挟持手段を通じて支持部に挟持される。
【0012】
本発明によれば、分離要素は、金属、好ましくは鉄から、さまざまな異なる形状を伴って用意されてよい。したがって、代替実施形態では、分離要素は、好ましくは、半径方向に突出している、ナイフ、チゼル、スパイク、または針の形で提供される。
【0013】
本発明によれば、分離外形に関する情報は、さまざまな異なるやり方でデバイスによって取得されてよい。一実施形態では、デバイスは、好ましくは外部ソースからCAD/CAM手段を通じて、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置の分離外形に関する情報を受け取る。あるいは、デバイスは、好ましくはCAD/CAM手段を通じて、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置の分離外形に関する情報を構築する。オペレータは、CAD/CAM手段、好ましくは、PCと、PC上で動作するCAD/CAMソフトウェアと、モデルと分離外形とを示すためのディスプレイなどとを使用することによって、分離外形の構造に関係させられてよい。モデルは、同じまたは追加のCAD/CAMソフトウェアを使用して、フライス盤によって生産可能である。フライス盤は、CAD/CAM手段に、好ましくはPCに接続可能である。
【0014】
本発明によれば、深絞り加工がデバイス自体によって実行可能であることが望ましい。したがって、一実施形態では、デバイスは、アライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置を製造するためにモデルを使用して熱成形フィルムを深絞り加工するための深絞り加工手段をさらに備える。深絞り加工手段は、支持部の上方に配置される。さらに、制御ユニットは、深絞り加工手段を制御するようにさらに適合される。あるいは、熱成形フィルムの深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置は、熱分離プロセスのために、別のデバイスを用いて製造され、対応するモデルとともに支持部の上に移され、その上に挟持されてよい。
【0015】
本発明によれば、デバイスは、さまざまなやり方で較正可能である。一実施形態では、デバイスは、分離要素の位置を検出するためのセンサをさらに備える。さらに、制御手段は、支持部に対しておよび深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置に対して1つまたは複数の基準点に分離要素を移動させ、分離要素が1つまたは複数の基準点に移動されるとき、分離要素の位置を検出することによって、較正を実行する。較正は、検出に基づいて実行される。検出は、カメラおよび画像処理手段によって実行可能である。代わりに、磁気的検出、電流検出、音響検出などに基づく他の存在/不在センサが使用されてよい。センサは、加熱することなくプローブと同じものを使用するために分離要素に結合されてよい。
【0016】
本発明は、デバイスを使用する方法も提供する。この方法は、少なくとも、アライナまたはバイトスプリントなどの、顎にまたがる歯科装置を製造するためにモデルを使用して熱成形フィルムを深絞り加工するステップと、支持部上のモデルによって挟持および支持された状態で、および熱成形フィルムまたはモデル上の分離外形に沿って加熱された分離要素を移動させることによって、深絞り加工された熱成形フィルムを分離および改良するステップとを備える。
【0017】
以後の説明では、本発明のさらなる態様および有利な効果が、例示的な実施形態を使用し、図面を参照することによって、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態によるデバイスの概略部分図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面に示される参照番号は、以下で列挙される要素を示し、例示的な実施形態の以後の説明で参照される。
【0020】
図1は、熱成形フィルム(3)のアライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)を分離するためのデバイス(1)の一実施形態を示す。デバイス(1)は、深絞り加工された熱成形フィルム(3)を熱的に分離し、同時に、分離された深絞り加工された熱成形フィルム(3)を改良するための分離要素(4)と、熱成形フィルム(3)の温度を少なくともそのガラス温度に実質的に上昇させるように、分離要素(4)の加熱を調節するための加熱手段(5)と、分離要素(4)に対して相対的に移動可能である深絞り加工された熱成形フィルム(3)を支持するための支持部(6)と、支持部(6)に対して、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)の分離外形(S)に沿って、分離要素(4)を移動させるための移動機構(7)と、分離外形(S)に基づいて加熱手段(5)と移動機構(7)とを制御するように適合された制御ユニットとを備える。温度は、広い範囲で、好ましくは100から300℃の間で、変化可能である。デバイス(1)は、分離要素(4)の近傍で熱成形フィルム(3)の温度を感知するための温度センサをさらに備える。さらに、加熱手段(5)は、感知された温度に基づいて分離要素(4)の加熱を調節するようにさらに適合される。熱成形フィルム(3)は、好ましくは、ポリメチルメタクリレートから作製される。さらに、加熱手段(5)は、ポリメチルメタクリレートのガラス温度に対応する少なくとも105℃に熱成形フィルムの温度を実質的に上昇させるように分離要素(4)の加熱を調節するように適合される。ガラス温度は、使用されるPMMAのタイプに応じて変化してよい。加熱手段は、分離されることになる熱成形フィルム(3)に応じて、ユーザによって設定可能である。移動機構(7)は、回転方向(A)に沿って第1の軸(z’)の周りで支持部(6)を回転させるための第1の回転手段を備える。移動機構(7)は、第1の軸(z’)に沿って支持部(6)の位置を変更するための高さ調整手段をさらに備える。移動機構(7)は、支持部(6)の第1の軸(z’)に向かってまたはこれから離れて半径方向(X)に沿って分離要素(4)を半径方向に移動させるための半径方向案内手段(7a)をさらに備える。半径方向案内手段(7a)は、半径方向(X)に分離要素(4)を支持するための回転可能なアーム(7b)を備える。移動機構(7)は、回転方向(B)に沿って第2の軸(z’’)の周りで回転可能なアーム(7b)を回転させるための第2の回転手段をさらに備える。移動機構(7)は、第2の軸(z’’)に沿って分離要素(4)の位置を変更するための別の高さ調整手段をさらに備えてよい。第1の軸(z’)と第2の軸(z’’)とは平行である。あるいは、第1の軸(z’)と第2の軸(z’’)とは非平行であってもよい。デバイス(1)は、対応するモデル(9)上の深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)の熱成形フィルム(3)を支持部(6)に挟持するための挟持手段(8)、好ましくは支持部(6)と係合するブラケットをさらに備える。支持部(6)は、分離要素(4)に対して相対的に移動可能な深絞り加工された熱成形フィルム(3)を支持するための回転台(6a)を備える。分離要素(4)は、半径方向(X)に突出している、金属、好ましくは鉄から作製されたスパイクの形で提供される。あるいは、分離要素(4)は、半径方向(X)に突出している、ナイフ、チゼル、または針の形で提供されてよい。制御手段は、分離要素(4)が、対応する分離外形において実質的に曲率半径の方向を指すように、第2の軸(z’’)の周りでアーム(7b)を回転させるように第2の回転手段を制御するようにさらに適合される。デバイス(1)は、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)の分離外形(S)に関する情報を受け取るまたは構築するためのCAD/CAM手段をさらに備える。デバイス(1)は、分離要素(4)の位置を検出するためのセンサをさらに備える。制御手段は、支持部(6)および深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)に対して1つまたは複数の基準点に分離要素(4)を移動させ、分離要素(4)が1つまたは複数の基準点に移動されるとき、分離要素(4)の位置を検出することによって、移動機構(7)を較正するようにさらに適合される。較正は、検出に基づく。デバイス(1)は、アライナまたはバイトスプリントなどの、深絞り加工された、顎にまたがる歯科装置(2)を製造するためにモデル(9)を使用して熱成形フィルム(3)を深絞り加工するための深絞り加工手段をさらに備える。深絞り加工手段は、支持部(6)の真上に配置される。制御ユニットは、深絞り加工手段を制御するようにさらに適合される。
【0021】
本発明は、デバイス(1)を使用する方法も提供する。本方法は、アライナまたはバイトスプリントなどの、顎にまたがる歯科装置(2)を製造するためにモデル(9)を使用して熱成形フィルム(3)を深絞り加工するステップと、支持部(6)上のモデル(9)によって挟持および支持された状態で、および熱成形フィルム(3)またはモデル(9)上の分離外形(S)に沿って加熱された分離要素(4)を移動させることによって、深絞り加工された熱成形フィルム(3)を分離および改良するステップとを備える。
【符号の説明】
【0022】
1 デバイス
2 歯科装置
3 熱成形フィルム(破線)
4 分離要素
5 加熱手段
6 支持部
6a 回転台
7 移動機構
7a 半径方向案内手段
7b 垂直アーム
8 挟持手段
9 モデル
A 回転方向
B 回転方向
S 分離外形
X 半径方向
Z’ 第1の軸
Z’’ 第2の軸
図1