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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/02 20060101AFI20241202BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
B62D1/02
A01B69/00 303A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022573027
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047618
(87)【国際公開番号】W WO2022145316
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2020219798
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】反甫 透
(72)【発明者】
【氏名】宮下 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】森岡 保光
(72)【発明者】
【氏名】西野 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】菊元 美紗子
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-001467(JP,A)
【文献】特開2012-065615(JP,A)
【文献】特開2009-055809(JP,A)
【文献】特開2010-202014(JP,A)
【文献】特開2007-054006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00
A01D 67/00
B62D 1/02, 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドルによる手動操舵及び自動操舵のいずれかで前後に走行可能な車体と、
前記車体に設けられた運転席と、
前記運転席の前方又は側方に設けられた操作台と、
前記操作台に設置された自動操舵用の第1操作部と、
前記運転席の後方に取り付け可能な自動操舵用の第2操作部と、
前記自動操舵を制御する制御装置と、を備え
前記制御装置は、前記第1操作部に設けられたスイッチと、当該スイッチと同一機能を有する前記第2操作部に設けられたスイッチとのうち、一方のスイッチが操作されると、前記自動操舵が終了するまで、他方のスイッチの操作を無効化する作業車両。
【請求項2】
前記第1操作部及び前記第2操作部は、前記自動操舵の開始及び停止を指示するために操作される操舵スイッチを含み、
前記制御装置は、前記第1操作部及び前記第2操作部にそれぞれ設けられた前記操舵スイッチのうち、一方の前記操舵スイッチが開始操作されたことを受けて前記自動操舵を開始すると、当該一方の前記操舵スイッチが停止操作されたことを受けて前記自動操舵を停止するまで、他方の前記操舵スイッチの操作を無効化して受け付けない請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記車体の位置を検出可能な測位装置を備え、
前記第1操作部及び前記第2操作部のうち少なくとも第1操作部は、
前記自動操舵の基準となる走行基準ラインの設定を指示するために操作される設定スイッチと、
前記測位装置により検出された前記車体の位置の補正を指示するために操作される補正スイッチと、を含む請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
記制御装置は、前記手動操舵による前記車体の走行の開始時及び停止時に、前記設定スイッチが操作されると、前記測位装置により検出された前記車体の位置に基づいて前記走行基準ラインを設定し、前記補正スイッチが操作されると、前記車体の位置を補正する請求項3に記載の作業車両。
【請求項5】
前記第2操作部は、前記運転席の後方から前記車体の側部を経由して前記操作台まで配策された電気配線により前記制御装置と電気的に接続されている請求項4に記載の作業車両。
【請求項6】
前記運転席を保護する保護機構を備え、
前記第2操作部は、前記保護機構に対して着脱可能である請求項1~5のいずれか1項に記載の作業車両。
【請求項7】
前記保護機構は、前記車体の左右の後部にそれぞれ立設された支柱と、当該支柱の上端部同士を連結する梁と、を有し、
前記第2操作部は、
前記支柱のいずれかに着脱可能な筐体と、
前記支柱と接する前記筐体の取付面以外の表面に設けられた操作可能なキーと、を含む請求項6に記載の作業車両。
【請求項8】
前記第2操作部が前記保護機構から脱落するのを防止する脱落防止部材を備えた請求項6に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1の作業車両が知られている。特許文献1の作業車両は、操作台に装着された状態で操作可能であり、且つ操作台から取り外されて運転席の後ろ側まで移動させた状態で操作可能である自動操舵用の操作部(補正スイッチ)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許公開公報「2020-1467号公報」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業車両では、自動操舵を行うときに、運転者が車体の走行方向に応じて自動操舵用の操作部(補正スイッチ)を移動させるため、当該移動操作が煩雑になることがある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、作業車両で自動操舵を行う際に操作が煩雑になるのを軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術的課題を解決するための本発明の技術的手段は、以下に示す点を特徴とする。
本発明の一態様にかかる作業車両は、ステアリングハンドルによる手動操舵及び自動操舵のいずれかで前後に走行可能な車体と、車体に設けられた運転席と、運転席の前方又は側方に設けられた操作台と、操作台に設置された自動操舵用の第1操作部と、運転席の後方に取り付け可能な自動操舵用の第2操作部と、自動操舵を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、第1操作部に設けられたスイッチと、当該スイッチと同一機能を有する第2操作部に設けられたスイッチとのうち、一方のスイッチが操作されると、自動操舵が終了するまで、他方のスイッチの操作を無効化する。
【0007】
また、本発明の一態様では、第1操作部及び第2操作部は、自動操舵の開始及び停止を指示するために操作される操舵スイッチを含み、制御装置は、第1操作部及び第2操作部にそれぞれ設けられた操舵スイッチのうち、一方の操舵スイッチが開始操作されたことを受けて自動操舵を開始すると、当該一方の操舵スイッチが停止操作されたことを受けて自動操舵を停止するまで、他方の操舵スイッチの操作を無効化して受け付けない
【0008】
また、本発明の一態様では、作業車両は、車体の位置を検出可能な測位装置を備え、第1操作部及び第2操作部のうち少なくとも第1操作部は、自動操舵の基準となる走行基準ラインの設定を指示するために操作される設定スイッチと、測位装置により検出された車体の位置の補正を指示するために操作される補正スイッチと、を含んでいる。
【0009】
また、本発明の一態様では、制御装置は、手動操舵による車体の走行の開始時及び停止時に、設定スイッチが操作されると、測位装置により検出された車体の位置に基づいて走行基準ラインを設定し、補正スイッチが操作されると、車体の位置を補正する。
【0010】
また、本発明の一態様では、第2操作部は、運転席の後方から車体の側部を経由して操作台まで配策された電気配線により制御装置と電気的に接続されている。
【0011】
また、本発明の一態様では、作業車両は、運転席を保護する保護機構を備え、第2操作部は、保護機構に対して着脱可能である。
【0012】
また、本発明の一態様では、車体の左右の後部にそれぞれ立設された支柱と、当該支柱の上端部同士を連結する梁と、を有し、第2操作部は、支柱のいずれかに着脱可能な筐体と、支柱と接する筐体の取付面以外の表面に設けられた操作可能なキーと、を含んでいる。
【0013】
さらに、本発明の一態様では、作業車両は、第2操作部が保護機構から脱落するのを防止する脱落防止部材を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、作業車両において、作業車両で自動操舵を行う際に操作が煩雑になるのを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】作業車両の制御ブロック図である。
図2】PTO変速レバーの詳細図である。
図3】自動操舵の説明図である。
図4】作業車両の自動操舵による直進中の挙動を示した図である。
図5】作業車両の前進時と後進時の自動操舵状態を示した図である。
図6】運転席の前方にある操作台示す図である。
図7】作業車両の斜視図である。
図8】第2操作部の近傍の斜視図である。
図9】作業車両の動作を示したフローチャートである。
図10】PTOスイッチの詳細図である。
図11】第2操作部の他の例を示した図である。
図12】作業車両の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
まず、本実施形態の作業車両1の外観を説明する。図12は、作業車両1の側面図である。本実施形態の作業車両1はトラクタである。但し、本発明の作業車両は、図12に示すようなトラクタに限定されず、コンバインや移植機等の農業機械(農業車両)であってもよいし、ローダ作業機等の建設機械(建設車両)等であってもよい。
【0018】
以下、作業車両1の運転席10に着座した運転者の前側(図12の矢印A1方向)を前方、運転者の後側(図12の矢印A2方向)を後方、運転者の左側を左方、運転者の右側を右方として説明する。また、作業車両1の前後方向に直交する方向である水平方向を車体幅方向として説明する。
【0019】
図12に示すように、作業車両1は、車体3と、原動機4と、走行装置7とを備えている。車体3は、走行装置7により前後に走行可能である。走行装置7は、前輪7F及び後輪7Rを有している。前輪7Fは、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。また、後輪7Rも、タイヤ型であってもクローラ型であってもよい。原動機4は、ディーゼルエンジンから構成されている。他の例として、電動モータ等で原動機4を構成してもよい。
【0020】
車体3の上部には、運転席10が設けられている。車体3の後部には、昇降装置8を含む連結部(図示省略)が設けられている。当該連結部には、作業装置2が着脱可能である。作業装置2を連結部に連結することにより、作業装置2が車体3の後方に支持され、車体3が作業装置2を牽引可能になる。作業装置2は、耕耘する耕耘装置、肥料を散布する肥料散布装置、農薬を散布する農薬散布装置、収穫を行う収穫装置、牧草等の刈取を行う刈取装置、牧草等の拡散を行う拡散装置、牧草等の集草を行う集草装置、牧草等の成形を行う成形装置等である。
【0021】
車体3の運転席10の前方には、操作台9Fが設けられている。操作台9Fには、ステアリングハンドル30やレバーやスイッチ等の操作部が設けられている。運転席10の左側方には、操作台9Lが設けられ、右側方には、操作台9Rが設けられている(後述する図7参照)。操作台9L、9Rにも、レバーやスイッチ等の操作部がそれぞれ設けられている。
【0022】
車体3の運転席10より後部には、ロプス6が設置されている。ロプス6は、例えば作業車両1の転倒時に、運転席10に着座した運転者を保護する保護機構の一例である。
【0023】
次に、作業車両1の構成を説明する。図1は、作業車両1の制御ブロック図である。作業車両1は、変速装置5、デフ装置20F、20R、昇降装置8、操舵装置11、制御装置60、測位装置40、表示装置45、作動弁25~29、及びスイッチ23、24、50~54を備えている。
【0024】
変速装置5は、変速によって走行装置7の推進力を切り替え可能であると共に、走行装置7の前進、後進の切り替えが可能である。変速装置5は、推進軸(主軸)5aと、主変速部5bと、副変速部5cと、シャトル部5dと、PTO動力伝達部5eと、前変速部5fと、を備えている。推進軸5aは、変速装置5のハウジングケース(ミッションケース)に回転自在に支持されている。推進軸5aには、原動機4のクランク軸からの動力が伝達される。主変速部5bは、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。主変速部5bは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、推進軸5aから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0025】
副変速部5cは、主変速部5bと同様に、複数のギア及び当該ギアの接続を変更するシフタを有している。副変速部5cは、複数のギアの接続(噛合)をシフタで適宜変更することによって、主変速部5bから入力された回転を変更して出力する(変速する)。
【0026】
シャトル部5dは、シャトル軸12と、前後進クラッチ13とを有している。シャトル軸12には、副変速部5cから出力された動力がギア等を介して伝達される。前後進クラッチ13は、例えば、油圧クラッチ等で構成されている。前後進クラッチ13には油路が接続され、当該油路には作動弁28が接続されている。作動弁28には、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される。前後進クラッチ13は、作動弁28の開度によって接続状態と切断状態とに切り替わる。作動弁28は、例えば、電磁弁付き二位置切替弁である。作動弁28の当該電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、前後進クラッチ13が接続状態又は切断状態に切り替わる。
【0027】
前後進クラッチ13が接続状態か切断状態に切り替わることによって、シャトル軸12の回転方向が切り替わる。シャトル軸12は、後輪デフ装置20Rに接続されている。後輪デフ装置20Rは、後輪7Rが取り付けられた後車軸21Rを回転自在に支持している。
【0028】
PTO(Power Take Off)動力伝達部5eは、PTO推進軸14と、PTOクラッチ15とを有している。PTO推進軸14は、回転自在に支持され、推進軸5aからの動力を伝達可能である。PTO推進軸14は、ギア等を介してPTO軸16に接続されている。
【0029】
PTOクラッチ15は、例えば、油圧クラッチ等で構成されている。PTOクラッチ15には油路が接続され、当該油路には作動弁27が接続されている。作動弁27には、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される。PTOクラッチ15は、作動弁27の開度によって接続状態と切断状態とに切り替わる。作動弁27は、例えば、電磁弁付き二位置切替弁である。作動弁27の当該電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、PTOクラッチ15が接続状態又は切断状態に切り替わる。
【0030】
PTOクラッチ15が接続状態か切断状態に切り替わることによって、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達する状態と、推進軸5aの動力をPTO推進軸14に伝達しない状態とに切り替わる。原動機4の動力が推進軸5a、PTOクラッチ15、及びPTO推進軸14を介してPTO軸16に伝達されることで、PTO軸16が回転駆動する。PTO軸16には、昇降装置8と作業装置2が連結されている。PTO軸16の駆動力が昇降装置8及び作業装置2に伝達されることで、昇降装置8及び作業装置2が作動する。
【0031】
前変速部5fは、第1クラッチ17及び第2クラッチ18を有している。第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、推進軸5aからの動力が伝達可能であって、例えば、シャトル軸12の動力が、ギア及び伝動軸を介して伝達される。第1クラッチ17及び第2クラッチ18からの動力は、前伝動軸22を介して前車軸21Fに伝達可能である。具体的には、前伝動軸22は、前輪デフ装置20Fに接続され、前輪デフ装置20Fは、前輪7Fが取り付けられた前車軸21Fを回転自在に支持している。
【0032】
第1クラッチ17及び第2クラッチ18は、油圧クラッチ等で構成されている。第1クラッチ17には油路が接続され、当該油路には作動弁25が接続されている。作動弁25には、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される。第1クラッチ17は、作動弁25の開度によって接続状態と切断状態とに切り替わる。第2クラッチ18には油路が接続され、当該油路には作動弁26が接続されている。作動弁26には、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される。第2クラッチ18は、作動弁26の開度によって接続状態と切断状態とに切り替わる。作動弁25、26は、例えば、電磁弁付き二位置切替弁である。各作動弁25、26の当該電磁弁のソレノイドを励磁又は消磁することにより、対応するクラッチ17、18が接続状態又は切断状態に切り替わる。
【0033】
第1クラッチ17が切断状態で且つ第2クラッチ18が接続状態である場合、第2クラッチ18を通じてシャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達される。これにより、前輪7Fと後輪7Rが駆動して、前輪7Fと後輪7Rの回転速度が略同じとなる(4WD等速状態)。一方、第1クラッチ17が接続状態で且つ第2クラッチ18が切断状態である場合、前輪7Fと後輪7Rが駆動するが、前輪7Fの回転速度が後輪7Rの回転速度に比べて速くなる(4WD増速状態)。また、第1クラッチ17及び第2クラッチ18が切断状態である場合、シャトル軸12の動力が前輪7Fに伝達されないため、後輪7Rだけ駆動する二輪駆動(2WD)となる。
【0034】
つまり、原動機4の動力が推進軸5a、主変速部5b、副変速部5c、及び前後進クラッチ13を介してシャトル軸12に伝達されて、シャトル軸12が正方向又は逆方向に回転することで、後輪デフ装置20Rが駆動して、後車軸21R及び後輪7Rが正方向又は逆方向に回転する。また、原動機4の動力がシャトル軸12からクラッチ17、18を介して前伝動軸22に伝達されて、前伝動軸22が正方向又は逆方向に回転することで、前輪デフ装置20Fが駆動して、前車軸21F及び前輪7Fが正方向又は逆方向に回転する。これにより、車体3、即ち作業車両1が前進又は後進する。
【0035】
昇降装置8は、リフトアーム8a、ロアリンク8b、トップリンク8c、リフトロッド(図示省略)、リフトシリンダ8eを有している。リフトアーム8aの前端部は、変速装置5を収容するケース(ミッションケース)の後上部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aは、リフトシリンダ8eの駆動によって揺動(昇降)する。リフトシリンダ8eは、油圧シリンダから構成されている。リフトシリンダ8eは、制御弁29を介して油圧ポンプ33と接続されている。制御弁29は、電磁弁等であって、リフトシリンダ8eを伸縮させる。
【0036】
ロアリンク8bの前端部は、変速装置5の後下部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。トップリンク8cの前端部は、ロアリンク8bよりも上方において、変速装置5の後部に上方又は下方に揺動可能に支持されている。リフトアーム8aとロアリンク8bとは、リフトロッドにより連結されている。ロアリンク8bの後部及びトップリンク8cの後部には、作業装置2が連結される。リフトシリンダ8eが駆動(伸縮)すると、リフトアーム8aが昇降するとともに、リフトロッド8dを介してリフトアーム8aと連結されたロアリンク8bが昇降する。これにより、作業装置2がロアリンク8bの前部を支点として、上方又は下方に揺動(昇降)する。なお、作業車両1は、車体3が後進したことを作動条件として昇降装置8を上昇させるオートアップ装置を有している。この実施形態では、オートアップ装置は、リフトシリンダ8e及び制御弁29を含んでいる。
【0037】
測位装置40は、D-GPS、GPS、GLONASS、北斗、ガリレオ、みちびき等の衛星測位システム(測位衛星)により、自己の位置(緯度、経度を含む測位情報)を検出可能である。即ち、測位装置40は、測位衛星から送信された衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)を受信し、衛星信号に基づいて位置(例えば、緯度、経度)を検出する。測位装置40は、受信装置41と、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)42とを有している。受信装置41は、アンテナ等を有していて測位衛星から送信された衛星信号を受信する。受信装置41は、例えばロプス6(図12)に取り付けられている。
【0038】
慣性計測装置42は、加速度を検出する加速度センサと、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。慣性計測装置42の検出結果に基づいて、車体3のロール角、ピッチ角、ヨー角等が検出可能になる。
【0039】
操舵装置11は、運転席10に着座した運転者がステアリングハンドル(ステアリングホイール)30を操作することによって車体3を操舵する手動操舵と、運転者の操作によらずに自動で車体3を操舵する自動操舵とを行うことが可能な装置である。
【0040】
操舵装置11は、ステアリングハンドル30と、当該ハンドル30を回転可能に支持するステアリングシャフト(回転軸)31と、補助機構(パワーステアリング装置)32とを有している。補助機構32は、油圧等によってステアリングシャフト31及びステアリングハンドル30の回転を補助する。補助機構32は、油圧ポンプ33から吐出した作動油が供給される制御弁34と、制御弁34により作動するステアリングシリンダ35とを含んでいる。制御弁34は、例えば、スプール等の移動によって切り替え可能な3位置切替弁であり、ステアリングシャフト31の操舵方向(回転方向)に対応して切り替わる。ステアリングシリンダ35は、前輪7Fの向きを変えるアーム(ナックルアーム)36に接続されている。
【0041】
運転者がステアリングハンドル30を一方向又は他方向に回転操作することで、当該ステアリングハンドル30の回転方向に対応して制御弁34の切り替え位置及び開度が切り替り、当該制御弁34の切り替え位置及び開度に応じてステアリングシリンダ35が左方又は右方に伸縮し、前輪7Fの操舵方向が変更可能になる。つまり、ステアリングハンドル30の手動操舵によって、車体3の進行方向が左右に変更可能である。
【0042】
また、操舵装置11は、自動操舵機構37を有している。自動操舵機構37は、車体3の自動操舵を行う機構であって、測位装置40で検出された車体3の位置に基づいて車体3を自動操舵する。自動操舵機構37は、ステアリングモータ38とギア機構39とを備えている。ステアリングモータ38は、車体位置に基づいて、回転方向、回転速度、回転角度等が制御可能なモータである。ギア機構39は、ステアリングシャフト31に設けられ且つ当該シャフト31と一体に回転するギアと、ステアリングモータ38の回転軸に設けられ且つ当該回転軸と一体に回転するギアとを含んでいる。
【0043】
ステアリングモータ38の回転軸が正方向に回転することで、ギア機構39を介して、ステアリングシャフト31が自動的に正方向に回転(回動)し、前輪7Fを左右のうち一方に操舵することができる。また、ステアリングモータ38の回転軸が逆方向に回転すると、ギア機構39を介して、ステアリングシャフト31が自動的に逆方向に回転し、前輪7Fを左右のうち他方に操舵することができる。
【0044】
制御装置60は、CPUとメモリ等から構成されている。制御装置60は、作業車両1の各部の動作を制御する。表示装置45は、運転席10の前方にある操作台9F(図12)に設けられている。表示装置45は、作業車両1の運転情報や、作業車両1に関するその他の様々な情報を表示する。また、表示装置45は、車体3の自動操舵に関する報知を行う報知装置でもある。
【0045】
スイッチ50~54は、作業車両1の運転者により操作される自動操舵用の操作スイッチ(操作部材)である。そのうち、モードスイッチ50は、自動操舵の設定を行う設定モードへの切り替えを指示するためのスイッチである。設定モードは、自動操舵を開始する前に、自動操舵に関する様々な設定を行うモードである。例えば、後述する走行基準ラインの始点、終点の設定等が設定モードで行える。
【0046】
設定スイッチ51は、設定モードが有効であるときに、自動操舵を実行するための走行基準ラインの設定を指示するためのスイッチである。操舵スイッチ52、54は、走行基準ラインに基づいて車体3の自動操舵を開始又は停止することを指示するためのスイッチである。補正スイッチ53は、測位装置40により検出された車体3の位置を補正することを指示するためのスイッチである。即ち、衛星信号(測位衛星の位置、送信時刻、補正情報等)と、慣性計測装置42で計測した測定情報(加速度、角速度)とで演算された車体3の位置は、補正スイッチ53を操作することで補正することができる。制御装置60は、各スイッチ50~54の操作状態を検出する。
【0047】
PTO変速レバー24は、作業車両1の運転者により操作されるPTO用の操作部材である。図2は、PTO変速レバー24の詳細図である。PTO変速レバー24は、PTO軸16の回転方向を切り替えたり、PTO軸16の回転数を変更(変速)したりするために操作されるレバーである。PTO変速レバー24は、運転席10の左側方にある操作台9Lに前後に揺動操作可能に設けられている(図12図7参照)。PTO変速レバー24は揺動操作されることにより、図2に示す中立位置Qnから正転第1位置Q1、正転第2位置Q2、正転第3位置Q3、及び逆転位置Qbのいずれかの駆動位置に切り替わる。
【0048】
PTO変速レバー24の未操作状態では、当該レバー24は中立位置Qnにあり、当該レバー24と連動する可動端子24fが固定端子24aに接続されて、電源から当該端子24f、24aと入力ライン62aを介して制御装置60の入力ポート60aに信号が入力される。これにより、制御装置60は、PTO変速レバー24が中立位置Qnにあることを検出する。このとき、PTO軸16は停止状態にある。
【0049】
PTO変速レバー24が前方A1に1段階揺動操作されて、当該レバー24の位置が正転第1位置Q1に切り替わると、可動端子24fが固定端子24bに接続されて、電源から当該端子24f、24bと入力ライン62bを介して制御装置60の入力ポート60bに信号が入力される。また、PTO変速レバー24が前方A1に2段階揺動操作されて、当該レバー24の位置が正転第2位置Q2に切り替わると、可動端子24fが固定端子24cに接続されて、電源から当該端子24f、24cと入力ライン62cを介して制御装置60の入力ポート60cに信号が入力される。さらに、PTO変速レバー24が前方A1に3段階揺動操作されて、当該レバー24の位置が正転第3位置Q3に切り替わると、可動端子24fが固定端子24dに接続されて、電源から当該端子24f、24dと入力ライン62dを介して制御装置60の入力ポート60dに信号が入力される。
【0050】
制御装置60は、入力ポート60b、60c、60dのそれぞれに信号が入力されると、PTO変速レバー24が正転第1位置Q1、第2位置Q2、又は第3位置Q3に切り替わったことを検出する。PTO変速スイッチ24が正転第1位置Q1に切り替わると、変速装置5の作動により、PTO軸16が所定の第1回転数で正方向に回転駆動する。また、PTO変速スイッチ24が正転第2位置Q2に切り替わると、変速装置5の作動により、PTO軸16が第1回転数より大きい所定の第2回転数で正方向に回転駆動する。さらに、PTO変速スイッチ24が正転第3位置Q3に切り替わると、変速装置5の作動により、PTO軸16が第2回転数より大きい所定の第3回転数で正方向に回転駆動する。
【0051】
また、PTO変速レバー24Lが後方A2に揺動操作されて、当該レバー24の位置が逆転位置Qbに切り替わると、可動端子24fが固定端子24eに接続されて、電源から当該端子24f、24eと入力ライン62eを介して制御装置60の入力ポート60eに信号が入力される。これにより、制御装置60は、PTO変速レバー24が逆転位置Qbにあることを検出する。このとき、変速装置5の作動により、PTO軸16が所定の回転数で逆方向に回転駆動する。
【0052】
次に、作業車両1の自動操舵について説明する。図3は、作業車両1の自動操舵を説明するための図である。自動操舵を行う前に、まず、自動操舵を実行するための走行基準ラインL1を設定する。走行基準ラインL1の設定後に、走行基準ラインL1に平行な走行予定ラインL2の設定を行うことによって自動操舵を行うことができる。自動操舵では、測位装置40によって測定された車体3の位置と走行予定ラインをL2とが一致するように、作業車両1の車体3の進行方向の操舵を自動的に行う。
【0053】
具体的には、自動操舵を行う前に、運転者が作業車両1を運転して、作業車両1を圃場内の所定位置に移動させて(S1)、当該所定位置でモードスイッチ50を操作する。すると、制御装置60が設定モードに移行する。次に、運転者が設定スイッチ51で始点登録操作を行うと(S2)、制御装置60が、このとき測位装置40によって測定された車体3の位置を走行基準ラインL1の始点P10として設定する(S3)。
【0054】
次に、運転者が作業車両1を走行基準ラインL1の始点P10から手動操舵で走行させて(S4)、所定位置で停車させる。そして、運転者が設定スイッチ51で終点登録操作を行うと(S5)、制御装置60が、このとき測位装置40によって測定された車体3の位置を走行基準ラインL1の終点P11として設定する(S6)。これにより、始点P10と終点P11とを結ぶ直線が走行基準ラインL1として設定される。
【0055】
次に、運転者が作業車両1を、走行基準ラインL1を設定した場所とは異なる場所に移動させて(S7)、操舵スイッチ52(又は操舵スイッチ54(図1))により開始操作を行う(S8)。すると、制御装置60が、走行基準ラインL1に平行な直線である走行予定ラインL2を設定する(S9)。それから、制御装置60が自動操舵機構37を作動させて、自動操舵を開始し、運転者が車体3に設けられた走行操作部材(図1のアクセルペダル182やブレーキペダル183や図6のシャトルレバー181等)を操作することで、作業車両1が走行予定ラインL2に沿うように走行する。走行基準ラインL1と走行予定ラインL2は、表示装置45により表示され、運転者が視認可能となる。
【0056】
例えば、車体3の位置が走行予定ラインL2に対して左側にある場合には、制御装置60が自動操舵機構37を作動させて、前輪7Fを右に操舵する。また、車体3の位置が走行予定ラインL2に対して右側にある場合には、制御装置60が自動操舵機構37を作動させて、前輪7Fを左に操舵する。自動操舵中に、運転者がアクセルぺダル182等の操作量を変えたり、変速装置5の変速段を変えたりすることで、作業車両1の走行速度(車速)を変更することができる。
【0057】
また、自動操舵の開始後、運転者が任意の箇所で、操舵スイッチ52により停止操作を行うと、制御装置60が自動操舵を停止(終了)する。即ち、走行予定ラインL2の終点は、操舵スイッチ52の停止操作による自動操舵の停止によって設定される。つまり、走行予定ラインL2の始点から終点までの長さは、走行基準ラインL1よりも長く設定したり、短く設定したりすることができる。言い換えれば、走行予定ラインL2は、走行基準ラインL1の長さとは関連付けられておらず、走行予定ラインL2によって、走行基準ラインL1の長さよりも長い距離を自動操舵しながら走行させることができる。
【0058】
作業車両1の自動操舵による走行中に、測位装置40により検出された車体3の位置が実際の車体3の位置とずれることがある。その車体3の位置ずれは、運転者が補正スイッチ53を操作することで補正可能である。
【0059】
次に、自動操舵時の補正スイッチ53の操作と作業車両1の挙動(走行軌跡)との関係について説明する。図4は、作業車両1の自動操舵による直進中の挙動の一例を示した図である。図4において、例えば作業車両1で自動操舵が開始されてからしばらくの間、実際の車体3の位置(実際位置)W2と測位装置40により検出された車体3の位置(演算車体位置)W1とが一致し、且つ、実際位置W2と走行予定ラインL2とが一致する。この場合、作業車両1は走行予定ラインL2に沿って走行する。即ち、測位装置40の測位に誤差がなく、演算車体位置W1が実際位置W2と一致する区間P1では、作業車両1は走行予定ラインL2に沿って走行する。
【0060】
なお、測位装置40の測位に誤差がなく、補正も行われていない場合は、演算車体位置W1と、補正スイッチ53による補正後の車体位置(補正車体位置)W3とは同値である。補正車体位置W3は、演算車体位置W1から補正スイッチ53により入力された補正量を減算することで求められる(補正車体位置W3=演算車体位置W1-補正量)。
【0061】
例えば、図4の位置P20の付近において、実際位置W2が走行予定ラインL2に対してずれていないにも関わらず、様々な影響により、測位装置40の測位に誤差が生じ、測位装置40で検出した演算車体位置W1が走行予定ラインL2(実際位置W2)に対して右側にずれしまい、そのずれ量W4が維持される。この場合、制御装置60は、演算車体位置W1と走行予定ラインL2とにずれが生じたと判断し、演算車体位置W1と走行予定ラインL2とのずれ量W4を解消するように、車体3を左に操舵する。すると、車体3の実際位置W2が走行予定ラインL2から左に離れるようにシフトする。
【0062】
その後、運転者が、走行予定ラインL2から車体3の位置が左にずれていることに気づき、位置P21にて補正スイッチ53を操作して、演算車体位置W1を実際位置W2に近づける補正量を入力する。すると、演算車体位置W1に対して当該補正量が加えられ、補正車体位置W3が実際位置W2と略一致する。つまり、補正スイッチ53によって上記補正量を入力することにより、位置P20の付近において発生したズレ量W4を解消する方向に、測位装置40により検出された車体3の位置を補正することができる。
【0063】
なお、図4に示すように、車体3の位置の補正後(位置P21)に、実際位置W2が走行予定ラインL2から左にずれている場合、自動操舵により車体3が右に操舵されることで、車体3の実際位置W2が走行予定ラインL2に沿うようになる。
【0064】
さて、前述の図3では、作業車両1が前進しながら自動操舵を行う場合を示しているが、作業車両1は後進しながらも自動操舵を行うことができる。
【0065】
図5は、作業車両1の前進時と後進時の自動操舵状態を示した図である。
例えば圃場H1内で自動操舵を行うに際して、いずれかの操舵スイッチ52、54で開始操作が行われる毎に、制御装置60が基準走行ラインL1と平行な複数の走行予定ラインL2の直線部分SLn(n=1、2、3・・・)を設定する。例えば、開始位置ST1にて操舵スイッチ52で開始操作が行われて、自動操舵の開始が指示されると、1本目の直線部分SL1が設定される。そして、制御装置60が変速機構5と自動操舵機構37を制御することで、直線部分SL1に沿って車体3を前進させながら自動操舵を行う。また、終了位置EN1にて操舵スイッチ52で停止操作が行われて、自動操舵の停止が指示されると、制御装置60が自動操舵機構37を制御することで、直線部分SL1に沿う車体3の前進時の自動操舵が終了(停止)する。
【0066】
この後、例えば、作業車両1に装着した作業装置2で作業を行うために、1本目の直線部分SL1における前進時の自動操舵の終了後に、運転者が作業車両1を旋回させずに、車体3を後進させながら自動操舵を行おうとする。
【0067】
その場合、例えば、開始位置ST2にて操舵スイッチ54で開始操作が行われて、自動操舵の開始が指示されると、制御装置60が2本目の直線部分SL2を設定する。そして、制御装置60が変速機構5と自動操舵機構37を制御することで、直線部分SL2に沿って車体3を後進させながら自動操舵を行う。具体的には、操舵スイッチ54によって自動操舵の開始が行われた際に、直線部分SL2に沿って車体3が後進するように、制御装置60が自動操舵機構37のステアリングモータ38の駆動を制御して、ステアリングシャフト31を回転させて、前輪7Fを操舵する。そして、終了位置EN2にて操舵スイッチ54で停止操作が行われて、自動操舵の停止が指示されると、制御装置60が自動操舵機構37を制御することで、直線部分SL2に沿う車体3の後進時の自動操舵が終了する。
【0068】
次に、操作台9Fについて説明する。図6は、運転席10の前方にある操作台9Fを運転席10側から見た状態を示す図である。操作台9Fには、ステアリングハンドル30と、当該ハンドル30が連結されたステアリングシャフト31が設けられている。ステアリングシャフト31の外周は、ステアリングポスト180により覆われている。ステアリングポスト180の外周は、カバー177により覆われている。カバー177は、パネルカバー178とコラムカバー179とを含んでいる。
【0069】
パネルカバー178は、表示装置45を支持している。パネルカバー178の上板部178aには、表示装置45を支持する支持部178eが設けられている。支持部178eは、ステアリングシャフト31の前方で且つステアリングハンドル30の下方において表示装置45を支持している。上板部178aの取付面178fは、支持部178eの後方であって且つステアリングハンドル30の下方に設けられている。支持部178eと取付面178fとは連続している。支持部178eは上板部178aの前部に位置し、取付面178fは上板部178aの後部に位置している。取付面178fには、モードスイッチ50と補正スイッチ53が設置されている。設定スイッチ51、補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の周囲に配置されている。
【0070】
パネルカバー178の左板部178bからは、シャトルレバー181が突出している。シャトルレバー181は、車体3の走行方向を前方A1又は後方A2に切り替える操作を行う部材である。詳しくは、シャトルレバー181を前方A1(図6で上側)に操作(揺動)することにより、前後進クラッチ13が走行装置7へ前進動力を出力する状態となり、車体3の走行方向が前方A1に切り替えられる。また、シャトルレバー181を後方A2(図6で下側)に操作することにより、前後進クラッチ13が走行装置7へ後進動力を出力する状態となり、車体3の走行方向が後方A2に切り替えられる。シャトルレバー181が中立位置にあるときには、走行装置7へ動力が出力されない。
【0071】
コラムカバー179は、ステアリングハンドル30の下方に配置されており、ステアリングシャフト31の上部の周囲を覆っている。コラムカバー179は、略四角筒状に形成されており、パネルカバー178の取付面178fから上方に突出している。つまり、取付面178fは、コラムカバー179の周囲に設けられている。そのため、取付面178fに取り付けられたモードスイッチ50と補正スイッチ53は、コラムカバー179の周囲に配置されている。
【0072】
モードスイッチ50は、ステアリングシャフト31の左下方に配置されている。モードスイッチ50は、押しボタン式のスイッチから構成されている。モードスイッチ50は、操作台9Fの内部に配策された電気配線70(図1)により制御装置60と電気的に接続されている。
【0073】
補正スイッチ53は、ステアリングシャフト31の右下方に配置されている。補正スイッチ53は、操作台9Fの内部に配策された電気配線73(図1)により制御装置60と電気的に接続されている。補正スイッチ53は、押圧可能な左補正キー53Lと右補正キー53Rを有している。左補正キー53Lを押圧操作することで、車体3の位置を左方へ補正する左補正量が御装置60に入力される。また、右補正キー53Rを押圧操作することで、車体3の位置を右方へ補正する右補正量が制御装置60に入力される。
【0074】
各補正キー53L、53Rの押圧操作回数を増加させることで、左補正量及び右補正量を増大させることができる。各補正量は、各補正キー53L、53Rの操作回数に、所定の単位量を乗じることで求められる(補正量=操作回数×単位量)。即ち、各補正キー53L、53Rを押圧操作する毎に、各補正量が単位量(例えば、数センチ或いは数十センチ)ずつ増加する。制御装置60は、補正スイッチ53の操作回数を検出し、当該操作回数に基づいて補正量を演算する。
【0075】
ステアリングシャフト31の左方には、自動操舵レバー56が左方へ突出状態で設置されている。自動操舵レバー56は、ステアリングシャフト31側に設けられた基端部を支点として、中立位置から上、下、前、及び後ろに揺動可能になっている。自動操舵レバー56の基端部は、コラムカバー179の内部に設けられている。コラムカバー179の内部には、前述の設定スイッチ51と操舵スイッチ52(図1)とが設置されている(詳細図示省略)。設定スイッチ51と操舵スイッチ52とは、操作台9Fの内部に配策された電気配線71、72(図1)によりそれぞれ制御装置60と電気的に接続されている。
【0076】
モードスイッチ50が操作されて、設定モードが有効になっている状態で、自動操舵レバー56を中立位置から後方に揺動操作することで、設定スイッチ51が始点登録操作された状態となり、このとき測位装置40により検出された車体3の位置を走行基準ラインL1の始点P10に設定する指示(信号)が制御装置60に入力される。また、自動操舵レバー56を中立位置から前方に揺動操作することで、設定スイッチ51が終点登録操作された状態となり、このとき測位装置40により検出された車体3の位置を走行基準ラインL1の終点P11に設定する指示が制御装置60に入力される。
【0077】
その後、自動操舵レバー56を中立位置から下方に揺動操作することで、操舵スイッチ52が開始操作された状態となり、自動操舵の開始の指示が制御装置60に入力される。さらに、自動操舵レバー56を中立位置から上方に揺動操作することで、操舵スイッチ52が停止操作された状態となり、自動操舵の停止の指示が制御装置60に入力される。
【0078】
モードスイッチ50、補正スイッチ53、及び自動操舵レバー56は、ステアリングシャフト31の周囲に集約して設置されている。このため、運転者は、そのスイッチ50、53とレバー56の位置を一目瞭然で把握することができる。また、運転者は、運転席10に着座したままの状態で姿勢を変えずにスイッチ50、53とレバー56を操作することができる。この結果、車体3を前進させながら自動操舵を行う際に、自動操舵用のスイッチ50、51、52、53の操作性が向上し、且つ当該スイッチ50、51、52、53の誤操作を防止する可能となる。スイッチ50~53は、運転席10の前方にある操作台9Fに設置された第1操作部である。
【0079】
なお、スイッチ50~53とレバー56の配置は、上述した配置に限定されず、任意の配置にしてもよい。また、設定スイッチ51と操舵スイッチ52とを別々のレバーやボタン等の操作ノブで操作可能な構成にしてもよい。
【0080】
図7は、作業車両1を前方から見た斜視図である。運転席10の左側方にある操作台9Lには、前述したPTO軸16を操作するためのPTO変速レバー24が設けられている。運転席10の後方A2には、ロプス6が設置されている。ロプス6は、左右1対の支柱6L、6Rと梁6bとから構成されている。支柱6L、6Rと梁6bは、鋼材から構成されている。支柱6Lは、車体3の左後部に立設され、支柱6Rは、車体3の右後部に立設されている。梁6bは、支柱6L、6Rの上端部同士を連結している。
【0081】
左側にある支柱6Lの前面には、スイッチボックス19が取り付けられている。支柱6Lと接するスイッチボックス19の取付面19b(図7で後方A2に面するスイッチボックス19の裏面、後述の図8に図示)には、磁石(図示省略)が固定されている。この磁石の磁力により、スイッチボックス19は支柱6Lに対して着脱可能になっている。
【0082】
スイッチボックス19の取付面19b以外の表面のうち、前方A1に面した前面19fには、操舵スイッチ54が設けられている。操舵スイッチ54は、運転席10の後方に取り付け可能な自動操舵用の第2操作部であり、操作台9Fに設置された第1操作部に含まれる操舵スイッチ52と同一機能を有している。
【0083】
操舵スイッチ54は、オンキー54aとオフキー54bとを有している。スイッチボックス19の内部には、操舵スイッチ54の接点や電気配線等が設けられている。スイッチボックス19は、第2操作部の筐体である。操舵スイッチ54は、運転席10の後方にあるスイッチボックス19から車体3の左側部の内側を経由して操作台9Fまで配策された電気配線74(図1も参照)により制御装置60と電気的に接続されている。
【0084】
オンキー54aを押圧操作することで、操舵スイッチ54が開始操作された状態となり、自動操舵の開始の指示が制御装置60に入力される。オフキー54bを押圧操作することで、操舵スイッチ54が停止操作された状態となり、自動操舵の停止の指示が制御装置60に入力される。
【0085】
作業車両1において後進しながら自動操舵を行う際に、運転席10に着座した運転者は、後方A2の安全確認のため、後方A2へ振り返る。その振り返った姿勢で運転者は、オンキー54aとオフキー54bとを目視可能になる。このため、運転者は、オンキー54aを押圧操作することにより、後進時の自動操作を開始し、オフキー54bを押圧操作することにより、後進時の自動操舵を停止する。即ち、操舵スイッチ54は、車体3の後進時に自動操舵を開始及び停止するために操作される後進時の自動操舵用の操作部である。
【0086】
然るに、操舵スイッチ52、54は、車体3の前進時及び後進時に使用可能(有効)である。即ち、車体3の前進時でも後進時でも、操舵スイッチ52、54のいずれかを開始操作又は停止操作することで、制御装置60が自動操舵を開始又は停止する。但し、制御装置60は、操舵スイッチ52、54のうち、一方の操舵スイッチが開始操作されたことを受けて、自動操舵を開始すると、当該一方の操舵スイッチが停止操作されたことを受けて、自動操舵を停止(終了)するまで、他方の操舵スイッチを無効化する。
【0087】
具体的には、例えば制御装置60は、後方A2にある操舵スイッチ54が開始操作されたことを受けて、後進時の自動操舵を開始すると、操舵スイッチ54が停止操作されたことを受けて、自動操舵を停止するまで、操舵スイッチ52を無効化、即ち操舵スイッチ52の操作を受け付けない。また、例えば制御装置60は、前方A1にある操舵スイッチ52が開始操作されたことを受けて、前進時の自動操舵を開始すると、操舵スイッチ52が停止操作されたことを受けて、自動操舵を停止するまで、操舵スイッチ54を無効化、即ち操舵スイッチ54の操作を受け付けない。
【0088】
図8は、スイッチボックス19と支柱6Lを後方から見た斜視図である。操舵スイッチ54が設けられたスイッチボックス19は、脱落防止機構57により支柱6Lからの脱落が防止されている。脱落防止機構57は、ワイヤ58とスナップリング59とから構成されている。ワイヤ58は、スイッチボックス19の上部を左右に貫通して、支柱6Lを囲っている。支柱6Lの後方に位置するワイヤ58の両端部には、それぞれ貫通孔58a、58bが形成されている。スナップリング59は、支柱6Lの後方に配置されて、ワイヤ58の各貫通孔58a、58bを貫通している。このため、スイッチボックス19は、ワイヤ58とスナップリング59により支柱6Lの近傍から離れないように拘束されている。
【0089】
図7及び図8では、操舵スイッチ54を有するスイッチボックス19をロプス6の左側の支柱6Lの前面に取り付けているが、スイッチボックス19は右側の支柱6Rに取り付けることもできる。図7に示したように、スイッチボックス19の電気配線74は、運転席10の後方から車体3の外部(上方)に出ているので、電気配線74が運転作業時の邪魔になることはない。また、電気配線74は運転席10の後方から支柱6L、6Rの何れかに取り付け可能な長さを有しているので、支柱6L、6Rのうち一方から他方へのスイッチボックス19の付け替え作業を容易に行うことができる。また、スイッチボックス19は、いずれかの支柱6L、6Rの任意の側面や、梁6bの任意の側面や、車体3の任意の位置に取り付けることもできる。なお、操舵スイッチ54の操作性を考えると、運転席10に着座した運転者より高い位置にある梁6b(図7)にスイッチボックス19を取り付けることはすすめられない。
【0090】
次に、作業車両1のPTO軸16と連動した自動操舵の制御について説明する。図9は、作業車両1の動作を示したフローチャートである。図9の各処理は、制御装置60が予め記憶されたソフトウェアプログラムに従って実行する。
【0091】
まず、制御装置60は、PTO変速レバー24とPTO軸16の状態を検出する(T1)。PTO軸16の状態は、例えば作動弁27の開度に基づいて検出される。又は、PTO軸16の回転状態を検出するセンサを設けて、当該センサからの出力信号に基づいて、制御装置60がPTO軸16の状態を検出してもよい。
【0092】
制御装置60は、PTO変速レバー24が中立位置Qnにあり且つPTO軸16が停止状態であれば(T2:YES)、後進時の自動操舵を許可する(T3)。なお、前進時の自動操舵は、常時許可されている。そして、モードスイッチ50や設定スイッチ51が操作されて走行基準ラインL1が設定された後、操舵スイッチ52、54のいずれかで開始操作が有ると(T4:YES)、制御装置60は、自動操舵機構37を制御して、自動操舵を開始する(T5)。これにより、作業車両1では、車体3の進行方向に応じて、前進時の自動操舵又は後進時の自動操舵が行われる。
【0093】
また、制御装置60は、実行している自動操舵の状態や自動操舵に関する案内等を示した自動操舵情報を、表示装置45に表示させることにより作業車両1の運転者に通知する(T6)。このとき、例えば図5に示したような、圃場H1における作業車両1の走行基準ラインL1や走行予定ラインL2や作業車両1の位置等を、表示装置45により表示させてもよい。又は作業車両1に備わるブザーやスピーカや照明類等により、自動操舵の状態と自動操舵に関する案内を聴覚的又は視覚的に通知してもよい。
【0094】
また、制御装置60は、開始操作されなかった操舵スイッチを無効化する(T7)。これにより、例えば、開始操作されなかった操舵スイッチが誤操作されても、当誤操作に応じて自動操舵が停止されたり、新たに自動操舵が開始されたりすることはない。
【0095】
その後、処理T4で開始操作を検出したのと同一の操舵スイッチで停止操作が有ると(T8:YES)、制御装置60は、自動操舵機構37を制御して、自動操舵を停止する(T9)。また、制御装置60は、表示装置45による自動操舵情報の通知も停止して(T10)、操作されなかった操舵スイッチの無効化を解除する(T11)。
【0096】
一方、PTO変速レバー24が中立位置Qnにない場合又はPTO軸16が駆動状態にある場合には(T2:NO)、制御装置60は、後進時の自動操舵を禁止する(T12)。このとき、前進時の自動操舵は禁止されない。
【0097】
そして、操舵スイッチ52、54のいずれかで開始操作が有ると(T13:YES)、制御装置60は、シャトルレバー181(図6)の操作状態や車輪7F、7Rの回転状態等に基づいて、車体3の走行方向を検出する。なお、シャトルレバー181の操作状態や車輪7F、7Rの回転状態を検出するセンサを設けてもよい。制御装置60は、車体3の走行方向が前方A1であれば(T14:NO)、自動操舵機構37を制御して、前進時の自動操舵を開始する(T5)。そして、制御装置60は処理T6から以降の処理を実行する。
【0098】
また、制御装置60は、車体3の進行方向が後方A2であれば(T14:YES)、後進時の自動操舵を開始せず、後進時の自動操舵が禁止されていることを示すメッセージ等を表示装置45に表示させることにより、運転者に報知する(T15)。また、制御装置60は、PTO変速レバー24を中立位置Qnに切り替えることを促す案内を表示装置45に表示させることにより、運転者に報知する(T16)。
【0099】
処理T15、T16の表示装置45による報知は、例えば、PTO変速レバー24が中立位置Qnに切り替わって、PTO軸16が停止状態になるまで継続してもよいし、又は一定時間だけ行ってもよい。また、処理T15、T16において、後進時の自動操舵が禁止されていることや、PTO変速レバー24の中立位置Qnへの切り替え案内等を、作業車両1に備わるブザーやスピーカや照明類等により聴覚的又は視覚的に報知してもよい。つまり、表示装置45以外の視覚的、聴覚的、又は触覚的な報知が行える報知装置を用いてもよい。さらに、処理T16に代えて、例えばPTO軸16の停止を促す案内を報知してもよい。
【0100】
また、上述した実施形態では、PTO変速レバー24が中立位置Qnにない場合又はPTO軸16が駆動状態にある場合に(図9のT2:NO)、制御装置60が後進時の自動操舵を禁止したが、そのPTO変速レバー24の条件とPTO軸16の条件のうち、一方の条件の当否に基づいて後進時の自動操舵を禁止してもよい。
【0101】
また、上述した実施形態では、操舵スイッチ52、54の操作により自動操舵の開始が指示され且つ車体3が後進する場合に(図9の処理T13:YES、処理T14:YES)、後進時の当該自動操舵の禁止及びPTO変速レバー24の切り替え案内を表示装置45により報知している(処理T15、T16)。然るに、操舵スイッチ52、54の操作により自動操舵の開始が指示され且つ車体3が前進する場合にも(処理T13:YES、処理T14:NO)、後進時の自動操舵の禁止及びPTO変速レバー24の切り替え案内を表示装置45により報知してもよい。なお、この場合、後進しながら自動操舵を行う場合は、PTO変速レバー24を中立位置Qnに切り替えることを促す案内を表示装置45等により報知するのが好ましい。
【0102】
また、上述した実施形態では、PTO軸16の駆動を操作する操作部材として、PTO変速レバー24を設けたが、安全性の向上等のため、当該レバー24に加えて、例えば図10に示すようなPTOスイッチ23を設けてもよい。
【0103】
図10は、PTOスイッチ23の詳細図である。PTOスイッチ23は、PTO軸16の駆動及び停止を指示するために操作されるスイッチである。PTOスイッチ23は、例えば運転席10の左側にある操作台9Lに操作可能に設けられる。PTOスイッチ23は、中立位置Qxからオフ位置Qyとオン位置(駆動位置)Qzのいずれかの位置に切り替え可能になっている。
【0104】
未操作状態では、PTOスイッチ23は中立位置Qxにあり、当該スイッチ23の可動端子23dが固定端子23aに接続されて、当該スイッチ23から入力ライン61aを通して制御装置60の入力ポート60gに信号が入力される。これにより、制御装置60は、PTOスイッチ23が中立位置Qxにあることを検出する。このとき、PTO軸16は停止状態にあり、例えばPTO変速レバー24(図2)がいずれかの駆動位置Q1、Q2、Q3、Qbに切り替えられても、PTO軸16は回転駆動しない。
【0105】
PTOスイッチ23が操作されてオン位置Qzに切り替わると、可動端子23gが固定端子23cと接続されて、当該スイッチ23から入力ライン61cを通して制御装置60の入力ポート60iに信号が入力される。これにより、制御装置60は、PTOスイッチ23がオン位置Qzに切り替わったことを検出する。このとき、変速装置5の作動により、PTO軸16は駆動可能になる。即ち、PTO変速レバー24がいずれかの駆動位置Q1、Q2、Q3、Qbに切り替えられることで、PTO軸16が所定の回転数で正方向又は逆方向に回転駆動する。
【0106】
また、PTOスイッチ23が操作されてオフ位置Qyに切り替わると、可動端子23gが固定端子23bに接続されて、当該スイッチ23から入力ライン61bを通して制御装置60の入力ポート60hに信号が入力される。これにより、制御装置60は、PTOスイッチ23がオフ位置Qyに切り替わったことを検出する。このとき、変速装置5の作動により、PTO軸16は停止状態になる。
【0107】
上記のようにPTOスイッチ23の操作によっても、PTO軸16を駆動又は停止させることができる。このため、PTO変速レバー24の位置に代えて、PTOスイッチ23の位置に基づいて、後進時の自動操舵を許可又は禁止してもよい。具体的には、例えば図9の処理T1で、PTO変速レバー24に代えて、PTOスイッチ23の状態を検出し、処理T2で、PTOスイッチ23が中立位置Qxにあるか否かを確認すればよい。PTO変速レバー24は、例えば前後及び左右に揺動操作可能なシフトレバー又はセレクトレバー等で構成されてもよい。
【0108】
また、上述した実施形態では、運転席10の後方A2に取り付け可能なスイッチボックス19(図7)に、自動操舵用の操作部として操舵スイッチ54を設けたが、これに限定するのではなく、例えば図11に示すように、スイッチボックス19に自動操舵用の操作部として補正スイッチ63を設けてもよい。補正スイッチ63は、操作台9Fに設けられた補正スイッチ53(図6)と同一機能を有している。補正スイッチ63が有する左補正キー63L及び右補正キー63Rの機能は、補正スイッチ53の左補正キー53L及び右補正キー53Rと同一である。このような構成によると、車体3を後進させながら自動操舵を行っているときに、運転者が後方A2を見ながら補正キー63L、63Rを操作して、測位装置40により検出された車体3の位置を補正することができる。また、自動操舵の実行時に、制御装置60が、補正スイッチ53、63のうち、一方のスイッチが操作されると、自動操舵が終了するまで、他方のスイッチを無効化してもよい。
【0109】
また、モードスイッチ50や設定スイッチ51のような他の自動操舵用の操作部を、運転席10の前方A1又は側方にある操作台9F、9L、9Rの少なくともいずれか1つと、運転席10の後方A2に取り付け可能なスイッチボックス19とに設けてもよい。さらに、自動操舵用の操作部は、プッシュスイッチだけでなく、スライドスイッチやタンブラスイッチ等の他の型式のスイッチでもよいし、スイッチ以外のキーやレバー等で構成されていてもよい。
【0110】
本実施形態の作業車両1は、以下の効果を奏する。
本実施形態の作業車両1は、ステアリングハンドル30による手動操舵及び自動操舵のいずれかで前後に走行可能な車体3と、車体3に設けられた運転席10と、運転席10の前方又は側方に設けられた操作台9Fと、操作台9Fに設置された自動操舵用の第1操作部50~53と、運転席10の後方に取り付け可能な自動操舵用の第2操作部54、63と、を備える。
【0111】
上記の構成によれば、作業車両1において、車体3を前進させながら自動操舵を行うときは、運転席10の前方等に設けられた自動操舵用の第1操作部50~53を操作し、車体3を後進させながら自動操舵を行うときは、運転席10の後方に設けられた自動操舵用の第2操作部54、63を操作することができる。このため、自動操舵を行うときに、運転者が車体3の走行方向に応じて自動操舵用の操作部50~54、63を移動させる必要がなく、操作が煩雑になるのを軽減することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態では、第1操作部50~53及び第2操作部54、63は、自動操舵の開始及び停止を指示するために操作される操舵スイッチ52、54を含んでいる。これにより、車体3を前進させながら自動操舵を行うときには、運転席10の前方に設けられた操舵スイッチ52を操作し、車体3を後進させながら自動操舵を行うときは、運転席10の後方に設けられた操舵スイッチ54を操作することで、自動操舵を開始及び停止することができ、操作性が向上する。
【0113】
また、本実施形態では、作業車両1は、車体3の位置を検出可能な測位装置40を備え、第1操作部50~53及び第2操作部54、63のうち少なくとも第1操作部50~53は、自動操舵の基準となる走行基準ラインL1の設定を指示するために操作される設定スイッチ51と、測位装置40により検出された車体3の位置の補正を指示するために操作される補正スイッチ53と、を含んでいる。これにより、設定スイッチ51を操作して、走行基準ラインL1を設定してから、車体3の走行方向に応じた操舵スイッチ52、54を操作して、自動操舵を行うことができる。また、自動操舵を行っているときに、補正スイッチ53を操作して、測位装置40により検出された車体3の位置を補正し、自動操舵を適切に行うことができる。
【0114】
また、図11に示した実施形態では、第2操作部54、63は、測位装置40により検出された車体3の位置の補正を指示するために操作される補正スイッチ63を含んでいる。このため、車体3の走行方向に応じた補正スイッチ53、63を操作して、測位装置40により検出された車体3の位置を補正し、自動操舵を適切行うことができ、且つ運転者の操作が煩雑になるのをより軽減することが可能となる。
【0115】
また、本実施形態では、作業車両1は、自動操舵を制御する制御装置60を備え、制御装置60は、手動操舵による車体3の走行の開始時及び停止時に、設定スイッチ51が操作されると、測位装置40により検出された車体3の位置に基づいて走行基準ラインL1を設定し、操舵スイッチ52、54が開始操作されると、自動操舵を開始し、操舵スイッチ52、54が停止操作されると、自動操舵を停止し、補正スイッチ53、63が操作されると、車体3の位置を補正し、第1操作部50~53と第2操作部54、63に設けられた同一機能を有するスイッチ(操舵スイッチ52、54、補正スイッチ53、63)のうち、一方のスイッチが操作されると、自動操舵が終了するまで、他方のスイッチを無効化する。
【0116】
これにより、車体3を前進又は後進させながら自動操舵を適切に行うことができる。また、同一機能を有する操舵スイッチ52、54や補正スイッチ53、63において、一方のスイッチにより自動操舵を開始したり、車体3の位置を補正したりした場合に、他方のスイッチが誤操作されて、運転者が意図せず、自動操舵が停止したり、車体3の位置が補正されたりするのを防止することができ、安全性を確保することが可能になる。
【0117】
また、本実施形態では、第2操作部54は、運転席10の後方から車体3の側部を経由して操作台9Fまで配策された電気配線74により制御装置60と電気的に接続されている。これにより、第2操作部54の操作に応じた入力信号を、第2操作部54から電気配線74を通して制御装置60に送信することができ、第2操作部54の操作に応じて自動操舵を行うことが可能となる。
【0118】
また、本実施形態では、運転席10を保護する保護機構6を備え、第2操作部54、63は、保護機構6に対して着脱可能である。これにより、運転者が保護機構6の好みの位置に第2操作部54、63を取り付けることができ、第2操作部54、63の操作性を向上させることが可能となる。
【0119】
また、本実施形態では、保護機構6は、車体3の左右の後部にそれぞれ立設された支柱6L、6Rと、当該支柱6L、6Rの上端部同士を連結する梁6bと、を有し、第2操作部54、63は、支柱6L、6Rのいずれかに着脱可能な筐体(スイッチボックス)19と、支柱6Lと接する筐体19の取付面19b以外の表面(前面)19fに設けられた操作可能なキー54a、54a、63L、63Rと、を含んでいる。
【0120】
上記により、車体3を後進させながら自動操舵を行う際に、運転者が安全確認のため後方A2に振り返っても、運転者の視野が保護機構6や第2操作部54、63によって狭められるのを防ぐことができる。また、後方A2に振り返った運転者が、後方A2の安全を確認しながら第2操作部54、63のキー54a、54b、63L、63Rを視認することができるので、当該キー54a、54b、63L、63Rの操作性を向上させることができる。
【0121】
また、本実施形態では、作業車両1は、第2操作部54が保護機構6から脱落するのを防止する脱落防止部材57を備える。これにより、作業車両1から伝わる振動等で第2操作部54が保護機構6から外れて、当該第2操作部54を紛失したり損傷したりするのを防止することができる。
【0122】
また、本実施形態の作業車両1は、ステアリングハンドル30による手動操舵及び自動操舵のいずれかで前後に走行可能な車体3と、車体3に設けられた原動機4と、車体3に支持された作業装置2と、原動機4の動力を作業装置2に伝達するPTO軸16と、自動操舵及びPTO軸16の駆動を制御する制御装置60と、を備え、制御装置60は、PTO軸16が停止しているときは、車体3の後進時の自動操舵を許可し、PTO軸16が駆動しているときは、車体3の後進時の自動操舵を禁止する。
【0123】
上記の構成によれば、作業車両1において、PTO軸16の停止中に、後進時の自動操舵が行われ、PTO軸16の駆動中には、後進時の自動操舵が行われないので、後進時の自動操舵を安定且つ安全に行うことができる。
【0124】
また、本実施形態では、作業車両1は、PTO軸16の駆動を操作するための操作部材であって、中立位置Qn、Qxから駆動位置Q1~Q3、Qzに切り替え可能なPTO操作部材24、23(PTO変速レバー24、PTOスイッチ23)を備え、PTO操作部材24、23が中立位置Qn、Qxにあるときは、PTO軸16が停止していて、制御装置60が車体3の後進時の自動操舵を許可し、PTO操作部材24、23が駆動位置Q1~Q3、Qzに切り替えられると、制御装置60が車体3の後進時の自動操舵を禁止し、PTO軸16が駆動可能になる。
【0125】
上記の構成によれば、PTO操作部材24、23が駆動位置Q1~Q3、Qzに切り替えられて、PTO軸16が駆動すると、後進時の自動操舵を行えなくなり、PTO操作部材24、23が中立位置Qn、Qxにあって、PTO軸16が停止していると、後進時の自動操舵を行えるようになる。このため、作業車両1の後進時の自動操舵を安定且つ安全に行うことができる。
【0126】
また、本実施形態では、作業車両1は、車体3の位置を検出可能な測位装置40と、自動操舵の基準となる走行基準ラインL1の設定を指示するために操作される設定スイッチ51と、自動操舵の開始及び停止を指示するために操作される操舵スイッチ52、54と、を備え、制御装置60は、設定スイッチ51の操作に応じて、手動操舵による車体3の走行時に測位装置40により検出された車体3の位置に基づいて走行基準ラインL1を設定し、車体3の後進時の自動操舵が許可されている場合、操舵スイッチ52、54の開始操作に応じて自動操舵を開始して、走行基準ラインL1と測位装置40により検出された車体3の位置とに基づいて自動操舵を実行し、操舵スイッチ52、54の停止操作に応じて自動操舵を停止し、車体3の後進時の自動操舵が禁止されている場合、操舵スイッチ52、54の前記操作に応じて自動操舵の開始及び停止を行わない。
【0127】
上記の構成によれば、設定スイッチ51と操舵スイッチ52、54の操作により、作業車両1の後進時の自動操舵を確実且つ安定に行うことができる。また、後進時の自動操舵が禁止されているときは、操舵スイッチ52、54が開始操作されても、後進時の自動操舵が開始されないので、安全性を確保することができる。
【0128】
また、本実施形態では、作業車両1は、車体3の後進時の自動操舵が禁止されたことを報知する報知装置(表示装置)45を備える。これにより、作業車両1で後進時の自動操舵が禁止されている場合において、当該自動操舵が行われなかったときに、作業車両1の運転者が故障であると誤解するのを防ぐことができる。
【0129】
また、本実施形態では、報知装置45は、さらにPTO軸16を停止させることを促す案内を報知する。これにより、PTO軸16が駆動しているため、後進時の自動操舵が禁止されていることと、PTO軸16を停止させれば、後進時の自動操舵が許可されることとを、作業車両1の運転者に察知させることができる。
【0130】
さらに、本実施形態では、報知装置45は、車体3の後進時の自動操舵が禁止されている場合において、自動操舵の開始が指示されたときに、前記報知を行う。これにより、運転者が作業車両1で自動操舵を開始させたいタイミングで、後進時の自動操舵が禁止されていることや、当該禁止の原因がPTO軸16の駆動にあること等を認識することができる。また、報知装置45による報知の頻度を抑えて、当該報知で運転者が煩雑になるのを防いだり、消費電力を低減したりすることができる。
【0131】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0132】
1 作業車両
3 車体
6 ロプス(保護機構)
6b 梁
6L、6R 支柱
9F、9L、9R 操作台
10 運転席
19 スイッチボックス(筐体)
19b 取付面
19f 前面(表面)
30 ステアリングハンドル
40 測位装置
50 モードスイッチ、第1操作部
51 設定スイッチ、第1操作部
52 操舵スイッチ、第1操作部
53 補正スイッチ、第1操作部
54 操舵スイッチ、第2操作部
54a オンキー
54b オフキー
57 脱落防止機構
60 制御装置
63 補正スイッチ、第2操作部
63L 左補正キー
63R 右補正キー
74 電気配線
L1 走行基準ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12