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特許7596409中間相制御のための電極上のドープされた金属酸化物薄膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】中間相制御のための電極上のドープされた金属酸化物薄膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/505 20100101AFI20241202BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241202BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241202BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241202BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/36 A
H01M4/36 C
H01M4/525
H01M4/58
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022578650
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 US2021038453
(87)【国際公開番号】W WO2021262699
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】63/044,008
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/043,611
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】上村 直
(72)【発明者】
【氏名】デュサラ、クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】キム、サンフン
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/190374(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111082025(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0083524(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0270539(US,A1)
【文献】特開2009-016302(JP,A)
【文献】特開2015-103471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープされた金属酸化物膜の少なくとも部分的な表面コーティングを含むカソード又はカソード活物質であって、
前記ドープされた金属酸化物膜が、
金属、酸素及び炭素含有膜であって10%~30%の炭素原子の原子百分率を有する、金属、酸素及び炭素含有膜、又は、
金属、酸素及びリン含有膜のどれかであって、
前記金属が、ニオブ、又はジルコニウム及びそれらの組合せから選択される、
カソード又はカソード活物質。
【請求項2】
前記ドープされた金属酸化物膜がドープされた酸化ニオブ膜である、請求項1に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項3】
前記ドープされた金属酸化物膜がニオブ、酸素及び炭素含有膜又はニオブ、酸素及びリン含有膜である、請求項1に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項4】
前記ドープされた金属酸化物膜で部分的にだけコートされる、請求項1~3のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項5】
前記ドープされた金属酸化物膜が0.1nm~5nmの平均厚さを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項6】
前記ドープされた金属酸化物膜が15%~25%の炭素原子の原子百分率を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項7】
前記ドープされた金属酸化物膜が1.6~2.1の屈折率を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項8】
前記ドープされた金属酸化物がMの平均原子組成を有し、Mがニオブ、ジルコニウム又はそれらの組合せであり、Oが酸素であり、及びDがC又はPから選択されるドーパント原子であり、並びにx=10~60%、yが10~60%の範囲であり、及びzが10~30%の範囲である、請求項1に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項9】
前記ドープされた金属酸化物膜で部分的にだけコートされる、請求項8に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項10】
前記ドープされた金属酸化物膜が0.1nm~5nmの平均厚さを有する、請求項8又は9に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項11】
前記ドープされた金属酸化物膜が15~25%の炭素原子の原子百分率を有する、請求項8~10のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項12】
前記ドープされた金属酸化物膜が1.6~2.1の屈折率を有する、請求項8~11のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質を含むリチウムイオンバッテリー。
【請求項14】
カソード又はカソード活物質を、ドープされた金属酸化物膜でコートする方法であって、
前記ドープされた金属酸化物膜が、
金属、酸素及び炭素含有膜であって10%~30%の炭素原子の原子百分率を有する、金属、酸素及び炭素含有膜、又は、
金属、酸素及びリン含有膜のどれかであって、
前記金属が、ニオブ、又はジルコニウム及びそれらの組合せから選択され、
前記カソード又はカソード活物質をニオブ及び/又はジルコニウムを含む化学前駆体の蒸気に暴露する工程a1.と、
前記カソード又はカソード活物質を共反応体に暴露する工程b1.と、を含む、方法。
【請求項15】
前記共反応体が酸素供給源である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カソード又はカソード活物質を前記化学前駆体の蒸気に暴露する前記工程a1.と、前記カソード又はカソード活物質を共反応体に暴露する前記工程b1.とが順次に行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カソード又はカソード活物質を共反応体に暴露する工程b1.の前に前記化学前駆体の蒸気をパージする工程a1.iを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が原子層堆積である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が化学蒸着である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記共反応体が 及びO から選択される、請求項15~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程b1.によって製造される前記ドープされた金属酸化物膜がMの平均原子組成を有し、Mがニオブ、ジルコニウム又はそれらの組合せから選択され、Oが酸素であり、及びDがC又はPから選択されるドーパント原子であり、並びにx=0.1~0.
3、y=0.3~0.65及びz=0.1~0.3である、請求項14~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程の組が繰り返される、請求項14~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記化学前駆体の蒸気及び/又は前記カソード又はカソード活物質の温度が50℃~200℃である、請求項14~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記カソード活物質、又は前記カソード中の前記カソード活物質が、a)層状酸化物;b)スピネルカソード材料;c)オリビン構造化カソード材料;及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項14~23のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/043,611号2020年6月25日に出願された米国仮特許出願第63/044,008号(その全内容を参照によって本願に組み込む)に対する優先権の利益を請求する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオンバッテリーの最初のサイクル中の、アノード上及び/又はカソード上の固体電解質界面(SEI)の形成は、電解質/電極界面における電解質の分解から観察される。リチウムイオンバッテリーの初期容量の低下は、このSEIの形成中のリチウムの消費の結果として生じる。更に、形成されたSEI層は不均一で不安定であり、電解質の連続的な分解による電極活物質の劣化に対して電極表面を不動態化するために効率的ではない。SEI層はバッテリーのサイクル中に物理的亀裂を受けることがあり、リチウム樹枝状結晶が生じ得、短絡回路と、その後の熱暴走とをもたらし得る。更にSEI層はまた、電極内のリチウムイオンのインターカレーションをいっそう難しくする障壁ポテンシャルを生じる。
【0003】
現在の設計において、リチウムイオンバッテリーは、電極と電解質との間の中間相を安定化するために金属酸化物又は/及びリン酸塩の連続膜の湿潤コーティング、乾燥コーティング又はスパッタリングによって、電極及び/又は電極活物質の表面に(リチウム)金属酸化物、リン酸塩又はフッ化物コーティング(例えばAl、LiPO、M=Nb、Zr、AlTiなど又はAlMM=W、Yなど)を有する。リチウム含有薄膜は、リチウムイオンバッテリー用途における電極材料の表面コーティング層としてのそれらの使用について公知である。リチウム含有薄膜の例には、LiPON、リン酸リチウム、硼酸リチウム、ホウリン酸リチウム、ニオブ酸リチウム、チタン酸リチウム、酸化ジルコニウムリチウムなどが含まれる。ALD/CVD技術による電極の表面コーティングは、所記の固体電解質界面薄膜を形成する好ましい手段であり、したがってこれらの不安定層の形成を回避する。しかしながら、リチウム含有膜の蒸着は、大量製造のための適したリチウム前駆体がないため実施するのが難しい。大部分は揮発性でなく、十分に安定しておらず、それらは望ましくない不純物を含有し得る。中間相薄膜の別の重要な用途は、ソリッドステートバッテリーにおいて使用される固体電解質材料の形成においてである。ソリッドステートバッテリーは、従来のリチウムイオンバッテリーよりも長い耐用年数、速い充電時間及び高いエネルギー密度を有する無溶剤系である。それらは、バッテリー開発における次の技術段階であると考えられる。ALD/CVD技術によって、均一且つコンフォーマルな電極/電解質界面薄膜を3Dバッテリーのような複雑な構造物上で得ることもできる。
【0004】
ケイ素アノードもまた、中間相薄膜の用途の範囲にある。ケイ素はリチウムイオンバッテリー開発におけるアノードの次世代であると考えられ、黒鉛アノード(Li/Liに対して0.05V)と同じ電位レベル(Li/Liに対して0.2V)で黒鉛アノード(372mAhg-1)よりも高い比容量(3600mAhg-1)を提供する。ケイ素アノードの主な欠点は、充電/放電中の300%までの体積膨脹であり、SEIの不安定化及び電極の物理的亀裂をもたらす。
【0005】
薄膜の中間相の用途は、リチウム金属アノード技術に拡大され得る。リチウム金属アノードは、LIBと比較して少なくとも3倍の理論容量を提供し得るので、ポストリチウムイオンバッテリー(LIB)であると考えられている。また、リチウム金属はその高い容量(黒鉛の10倍の容量)、低減されたバッテリー体積及びプロセスの簡素さのために注目されている。しかしながら、制御されていないリチウム金属表面は、Li樹枝状結晶の成長をもたらし得、短絡回路、最終的には火災を起こし得る。
【0006】
次世代カソード活物質のために、多くの研究が、金属酸化物カソード材料を特定して開発することに焦点を合わせている。広範囲の層状酸化物の中で、NMC(酸化コバルトマンガンニッケルリチウム)及びNCA(酸化アルミニウムコバルトニッケルリチウム)のような高Niカソード材料が、実用化のための最も有望な現在の候補である。しかしながら、高ニッケルカソード材料は、高い電圧が印加されるときに非晶質になる傾向がある。これらの金属酸化物材料の主な欠点の1つは、カソード材料と電解質の寄生反応による、遷移金属、特にニッケルの連続的溶解である。これは、バッテリーの充電中の電極/電解質界面におけるガス(O)放出と共にカソード活物質の構造的劣化をもたらす。更に、溶解したニッケルイオンはアノード側に移動し、アノード表面上のその堆積は、アノードにおけるSEIの急速な分解を引き起こし、最終的にバッテリーの故障を招く。
【0007】
スピネルカソード材料は、それらの高レート能力及び低い又はゼロのコバルト含有量について徹底的に調査されている。LMO(酸化マンガンリチウム)、LNMO(酸化マンガンニッケルリチウム)などのスピネルカソード材料に関する主な問題の1つは、バッテリー充電プロセス中のマンガン二価イオンの溶解であり(2Mn3+→Mn4++Mn2+)、これは主に電極/電解質界面で起こり、次いでアノード上に再堆積が起こり、高Niカソード材料の同じ機構によるようにそのSEIの破壊が生じる。
【0008】
遷移金属の溶解、過度の電解質の分解などの電解質とカソード電極との間の界面問題に対処するために、カソード及び/又はカソード材料上の薄膜の堆積を用いることができる。例えば、米国特許第8535832B2号明細書には、Ni、Mn及びCoを含むカソード活物質上への金属酸化物(Al、Bi、B、ZrO、MgO、Cr、MgAl、Ga、SiO、SnO、CaO、SrO、BaO、TiO、Fe、MoO、MoO、CeO、La、ZnO、LiAlO又はそれらの組合せ)の湿潤コーティングが開示されている。米国特許第9543581B2号明細書には、Ni、Mn及びCo元素を含むカソード活物質の前駆体粒子上の非晶質Alの乾燥コーティングが開示されている。米国特許第9614224B2号明細書には、Mnを含むカソード活物質上のスパッタリング方法を使用するLiPOMnコーティングが説明されている。米国特許第9837665B2号明細書には、Ti、Fe、Ni、V、Cr、Cu、及びCoの少なくとも1つのドーパントを有するLi、Mn、Ni、及び酸素含有化合物を含むカソード活物質上の、スパッタリング方法を使用するリン酸リチウムオキシナイトライド(LiPON)薄膜コーティングが説明されている。米国特許第9196901B2号明細書には、Co、Mn、V、Fe、Si、又はSnを含み酸化物、リン酸塩、ケイ酸塩又はそれらの2つ以上の混合物であるカソード積層体及びカソード活物質上の、原子層堆積(ALD)方法を使用するAl薄膜コーティングが説明されている。米国特許第10224540B2号明細書には、多孔性ケイ素アノード上の、ALD方法を使用するAl薄膜コーティングが説明されている。米国特許第10177365B2号明細書には、ALDを使用する、LiCoOを含むカソード活物質上へのAlW又はAlW薄膜コーティングが説明されている。米国特許第9531004B2号明細書には、チタン酸リチウムLi(4+x)Ti12(0≦x≦3)(LTO)、黒鉛、ケイ素、ケイ素含有合金、スズ含有合金、及びそれらの組合せからなるアノード材料群上の、ALD方法を使用する、Al、TiO、SnO、V、HfO、ZrO、ZnOの第1の層と、フッ化物系コーティング、炭化物系コーティング、及び窒化物系コーティングの第2の層とを含むハイブリッド薄膜コーティングが説明されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ALD又はCVDによって、ドープされた金属酸化物層をカソード又はカソード活物質上に堆積させることによって、人工中間相を電極上に形成してそれを電気化学的性質の急速な低下から保護する以下の解決策を提供する。これらのドープされた金属酸化物層は、SEI形成中の電極/電解質界面における電解質の過度の分解を低減し、最初のサイクルにおける容量損失を低減する。また、このようなドープされた金属酸化物層の存在は、電解質とカソード活物質との間の寄生反応によって引き起こされる、カソード活物質の遷移金属カチオンの溶解を低減し、次いで、アノード上のその再堆積を低減する。バッテリーの電気化学的活性はそれによって改良される。上に記載したように、他のタイプの膜、特にAlなどの高純度金属酸化物が提案されている。しかしながらこのタイプの材料は、イオン絶縁体として作用し、したがって得られたカソード及びバッテリーの最良の電気化学的性能を可能にしない。ドープされた金属酸化物層の組成は、酸化数の変化を受け得る遷移金属の選択によって、Liイオンの拡散の必要性を考慮に入れる。相当する金属酸化物は、別個のドーパント化学物質と共に並びに/又はC、Si、Sn、B、Al、N、P、及び/又はSなどのドーパントを含有する蒸気相金属前駆体を使用して堆積される。堆積条件は、金属酸化物膜ではなくドープされた金属酸化物膜を製造するために選択される。いずれかの特定の理論によって縛られることを望まないが、ドープされた金属酸化物膜は、ほとんどの状況においてほとんどの用途に適していない「低品質」膜であると考えられるであろう。例えば、このような材料は一般的に、ドーパント元素(特に炭素及びリン)によって生じた多孔性のために低密度である。しかしながらカソードを保護することとLiイオンの移動を可能にすることとの間のバランスを助長するのはこのような多孔性であり得る。また、第一列遷移元素、好ましくはMn、Ni、Co、Fe、Cuを加えることによって、膜のイオン伝導性を増加させることができ、それによって電気化学的性能を改良することができる。
【0010】
本発明は更に、列挙文のように説明される以下の非限定的な、典型的な実施形態と関連して理解することができる:
【0011】
1. ドープされた金属酸化物膜の少なくとも部分的な表面コーティングを含むカソード又はカソード活物質であって、好ましくは金属がニオブ、タンタル、バナジウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、タングステン、モリブデン、クロム及びそれらの組合せから選択されるカソード又はカソード活物質。
【0012】
2. ドープされた金属酸化物膜が金属、酸素及び炭素含有膜又は金属、酸素及びリン含有膜のどちらかである、文1に記載のカソード又はカソード活物質。
【0013】
3. ドープされた金属酸化物膜がドープされた酸化ニオブ膜である、文1に記載のカソード又はカソード活物質。
【0014】
4. ドープされた金属酸化物膜がニオブ、酸素及び炭素含有膜又はニオブ、酸素及びリン含有膜である、文1に記載のカソード又はカソード活物質。
【0015】
5. カソード又はカソード活物質がドープされた金属酸化物膜で部分的にだけコートされる、文1~4のいずれかに記載のカソード又はカソード活物質。
【0016】
6. ドープされた金属酸化物膜が0.02nm~10nm、好ましくは0.1nm~5nm、最も好ましくは0.2~2nmの平均厚さを有する、文1~5のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【0017】
7. ドープされた金属酸化物膜が5%~50%、好ましくは10%~30%、最も好ましくは15~25%の炭素原子の原子百分率を有する、文1~4のいずれかに記載のカソード又はカソード活物質。
【0018】
8. ドープされた金属酸化物膜が1.5~2.5、好ましくは1.6~2.1、最も好ましくは1.7~2.0の屈折率を有する、文3~7のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【0019】
9. ドープされた金属酸化物がMxOの平均原子組成を有し、Mが遷移金属又はII-A~VI-B元素であり、Oが酸素であり、及びDがリチウム、M又はO以外のドーパント原子であり、好ましくはDがC、Si、Sn、B、Al、N、P、又はSから選択され、並びにx=10~60%、yが10~60%の範囲であり、及びzが5~50%、好ましくは10~30%の範囲である、文1に記載のカソード又はカソード活物質。
【0020】
10. カソード又はカソード活物質がドープされた金属酸化物膜で部分的にだけコートされる、文9に記載のカソード又はカソード活物質。
【0021】
11. ドープされた金属酸化物膜が0.02nm~10nm、好ましくは0.1nm~5nm、最も好ましくは0.2~2nmの平均厚さを有する、文9又は10に記載のカソード又はカソード活物質。
【0022】
12. ドープされた金属酸化物膜が5%~50%、好ましくは10%~30%、最も好ましくは15~25%の炭素原子の原子百分率を有する、文9~11のいずれかに記載のカソード又はカソード活物質。
【0023】
13. ドープされた金属酸化物膜が1.5~2.5、好ましくは1.6~2.1、最も好ましくは1.7~2.0の屈折率を有する、文9~12のいずれか一項に記載のカソード又はカソード活物質。
【0024】
14. 文1~13のいずれかに記載のカソード又はカソード活物質を含むプロトン交換膜バッテリー。
【0025】
15. カソード又はカソード活物質を、ドープされた金属酸化物膜でコートする方法であって、
カソード又はカソード活物質を化学前駆体の蒸気に暴露する工程a1.と、
ドープされた金属酸化物膜をカソード又はカソード活物質上に堆積させる工程b1.を含む、方法。
【0026】
16. カソード又はカソード活物質を共反応体に暴露する工程a2.を更に含む、文15に記載の方法。
【0027】
17. カソード又はカソード活物質を化学前駆体の蒸気に暴露する工程a1と、カソード又はカソード活物質を共反応体に暴露する工程a2とが順次に行われる、文16に記載の方法。
【0028】
18. カソード又はカソード活物質を共反応体に暴露する工程a2の前に化学前駆体の蒸気をパージする工程a1.iを更に含む、文17に記載の方法。
【0029】
19. ドープされた金属酸化物膜をカソード又はカソード活物質上に堆積させる工程b1.が原子層堆積工程を含む、文18に記載の方法。
【0030】
20. ドープされた金属酸化物膜をカソード又はカソード活物質上に堆積させる工程b1.が化学蒸着工程を含む、文18に記載の方法。
【0031】
21. 共反応体がO2、O3、H2O、H2O2、NO、NO2、N2O又はNOx;酸素含有ケイ素前駆体、酸素含有スズ前駆体、リン酸トリメチル、ジエチルホスホルアミデートなどのホスフェート、又は硫酸塩などの酸素供給源である、文15~20に記載の方法。
【0032】
22. 工程b1.によって製造されるドープされた金属酸化物膜がMxOの平均原子組成を有し、Mが遷移金属又はII-A~VI-B元素であり、好ましくはMがニオブ、タンタル、バナジウム、タングステン、モリブデン、クロム、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、及びそれらの組合せから選択され、Oが酸素であり、及びDがリチウム、M又はO以外のドーパント原子であり、好ましくはDがC、Si、Sn、B、Al、N、P、又はSから選択され、並びにx=0.1~0.3、y=0.3~0.65及びz=0.1~0.3である、文15~19のいずれかに記載の方法。
【0033】
23. 1つ以上の工程が繰り返される、文15~22のいずれかに記載の方法。
【0034】
24. 化学前駆体の蒸気及び/又はカソード又はカソード活物質の温度が200℃以下、好ましくは50℃~200℃、より好ましくは100℃~200℃、更により好ましくは100℃~150℃である、文15~23のいずれかに記載の方法。
【0035】
25. カソード活物質、又はカソード中のカソード活物質が、a)NMC(酸化コバルトマンガンニッケルリチウム)及びNCA(酸化アルミニウムコバルトニッケルリチウム)のような高Niカソード材料などの層状酸化物;b)LMO(酸化マンガンリチウム)、LNMO(酸化マンガンニッケルリチウム)などのスピネルカソード材料;c)オリビン構造化カソード材料、特にLCP(リン酸コバルトリチウム)、LNP(リン酸ニッケルリチウム)などのオリビンリン酸塩の種類;及びそれらの組合せからなる群から選択される、文15~24のいずれかに記載の方法。
【0036】
本発明の性質及び目的の更なる理解のために、添付した図面と併せて以下の詳細な説明が参照されるべきであり、同じ要素は同じか又は類似した参照番号を与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】粉末ALD(PALD)反応器を使用してNbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用するNMC622粉末上のNbOC薄膜の堆積の、1Cにおける長期繰り返し性能(0.2Cにおいて最初の3回の予備サイクル)を示す。
図2】粉末ALD(PALD)反応器を使用してNbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用するNMC622粉末上のNbOC薄膜の堆積の、正規化された長期繰り返し性能(1Cにおけるそれらの元の放電容量への正規化)を示す。
図3】粉末ALD(PALD)反応器を使用してNbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用するNMC622粉末上のNbOC薄膜の堆積のCレート性能を示す。
図4】粉末ALD(PALD)反応器を使用してNbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用するNMC622粉末上のNbOC薄膜の堆積の正規化されたCレート性能(0.2Cにおけるそれらの元の放電容量への正規化)を示す。
図5】バッテリーのサイクルの繰り返し前及び後の、初期状態の及び粉末ALD(PALD)-100C-20CyによってNbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用して形成されるNbOCのSEM画像を示す。
図6】NbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用するALD方式のNMC622電極(EALD)上のNbOC薄膜の堆積の、1Cにおける長期繰り返し性能(0.2Cにおいて最初の3回の予備サイクル)を示す。
図7】NbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用するALD方式のNMC622電極(EALD)上のNbOC薄膜の堆積の、正規化された長期繰り返し性能(1Cにおけるそれらの元の放電容量への正規化)を示す。
図8】NbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用するNMC622電極上のNbOC薄膜のCレート性能を示す。
図9】NbCp(=NtBu)(NMe(「Nab」)/HOを使用するALD方式のNMC622電極(EALD)上のNbOC薄膜の、正規化されたCレート性能(0.2Cにおけるそれらの元の放電容量への正規化)を示す。
図10】Nb(=NtBu)(NMe(OEt)(「Nau」)、TMPO及びOを使用するCVD方式のNMC622電極(ECVD)上のNbOCP薄膜の、1Cにおける長期繰り返し性能(0.2Cにおいて最初の3回の予備サイクル)を示す。
図11】Nb(=NtBu)(NMe(OEt)(「Nau」)/TMPO/Oを使用するCVD方式のNMC622電極(ECVD)上のNbOCP薄膜の、正規化された長期繰り返し性能(1Cにおけるそれらの元の放電容量への正規化)を示す。
図12】Nb(=NtBu)(NMe(OEt)(「Nau」)/TMPO/Oを使用するCVD方式のNMC622電極(ECVD)上のNbOCP薄膜の堆積のCレート性能を示す。
図13】Nb(=NtBu)(NMe(OEt)(「Nau」)/TMPO/Oを使用するCVD方式のNMC622電極(ECVD)上のNbOCP薄膜の堆積の、正規化されたCレート性能(0.2Cにおけるそれらの元の放電容量への正規化)を示す。
図14】「ZrCp」例えばZrCp(NMe/Oを使用するALD方式のLNMO電極上のZrOC薄膜の1Cにおける長期繰り返し性能(0.2Cにおいて最初の3回の予備サイクル)を示す。
図15】「ZrCp」例えばZrCp(NMe/Oを使用するALD方式のLNMO電極上のZrOC薄膜の、正規化された長期繰り返し性能(1Cにおけるそれらの元の放電容量への正規化)を示す。
図16】「ZrCp」例えばZrCp(NMe/Oを使用するLNMO電極上のZrOC薄膜のCレート性能を示す。
図17】ZrCp(NMe/Oを使用するALD方式のLNMO電極上のZrOC薄膜の、正規化されたCレート性能(0.2Cにおけるそれらの元の放電容量への正規化)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示は、電極上に中間相を形成してそれを電気化学的性質の急速な低下から保護する解決策を提供する。電極中間相は、最終カソードへのその導入前又は後にカソード活物質上に形成される。ドープされた金属酸化物層は、同時に、順次に供給される揮発性前駆体を使用して化学蒸着(CVD)又は原子層堆積(ALD)によって及び/又は前駆体の蒸気相のパルスによって形成される。
【0039】
本明細書中で用いられるとき「ドープされた金属酸化物」及び「ドープされた金属酸化物膜」は、原子比がMxOyDz(M=遷移金属の集合体部分であり、Oが酸素であり、及びDは炭素及びリンなど、膜をドープする他の元素の集合体部分である)であるような1つ以上の付加的な元素を有する遷移金属酸化物膜を意味する。一般的に、xが10~60%の範囲であり、yが10~60%の範囲であり、及びzが5~50%、好ましくは10~30%の範囲である。
【0040】
好ましくは、Mは不完全に満たされたd軌道を有する1つ以上の安定なイオンを形成する遷移金属である。特に、Mは、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、又はWの1つ以上であり得る。
【0041】
好ましくは少なくとも1つのDは、C、Si、Sn、B、N、P、又はSから選択され、より好ましくは炭素及び/又はリンである。他のあり得るDには、Al、Mn、Co、Fe、及びCuが含まれ得る。特定の好ましいドープされた金属酸化物層には、C含有酸化チタン、Si含有酸化チタン、Pドープされた酸化チタン、C含有酸化ジルコニウム、Si含有酸化ジルコニウム、Pドープされた酸化ジルコニウム、C含有酸化ニオブ、Si含有酸化ニオブ、Pドープされた酸化ニオブが含まれる。
【0042】
ドープされた金属酸化物膜は、最終カソードの中間製造工程の前、中、又は最終カソードへのその導入後に、ドープされた金属酸化物層をカソード活物質上に堆積させるCVD又はALD法によって形成される。ドープされた金属酸化物膜は、カソードに含まれる前に例えば粉末カソード活物質の粉末ALDによってカソード活物質を完全にコートする連続膜であり得る。膜は、膜成長を制限する制御された堆積条件によって又はその表面の一部だけがCVD又はALD堆積法に供されるようにカソード活物質がカソードに導入される結果として不連続であり得る。一般的にドープされた金属酸化物膜は、0.125~10nm、例えば0.125nm~1.25nm、好ましくは0.3nm~4nmの平均厚さを有する。
【0043】
以下のものから構成されるドープされた金属酸化物堆積物を電極上に堆積させることができる:
● 層構造化酸化物、好ましくは「NMC」(酸化コバルトマンガンニッケルリチウム)、NCA(酸化アルミニウムコバルトニッケルリチウム)又はLNO(酸化ニッケルリチウム);
● スピネル、好ましくはLNMO(酸化マンガンニッケルリチウム)又はLMO(酸化マンガンリチウム);
● オリビン(リチウム金属リン酸塩、金属は鉄、コバルト、マンガンであり得る);
● ドープされるか又はされていない、黒鉛などの炭素アノードの形態;
● ケイ素アノード、
● スズアノード、
● ケイ素-スズアノード、又は
● リチウム金属。
【0044】
堆積は、電極活物質粉末上、電極活物質多孔性材料上、異なった形状の電極活物質上に行なうことができ、又は電極活物質を導電性炭素及び/若しくはバインダーと既に混在させていることができ且つ集電体箔によって既に担持させていることができる予備形成された電極内で行なうことができる。
【0045】
リチウムイオンバッテリー内の「カソード」は、充電中にカソード材料の還元が電子及びリチウムイオンの挿入によって行われる電気化学セル(バッテリー)内の陽極を意味する。放電中に、カソード材料は、電子及びリチウムイオンを放出することによって酸化される。電子が外部回路を通って移動する間に、リチウムイオンは、電解質を通って電気化学セル内でカソードからアノードに移動し、又は逆の場合も同様である。カソードは一般的に、カソード活物質(すなわちリチウム化金属層状酸化物)及び導電性カーボンブラック剤(アセチレンブラックSuper C65、Super P)及びバインダー(PVDF、CMC)から構成される。
【0046】
「カソード活物質」は、バッテリーセルのためのカソード(陽極)の組成物中の主な要素である。カソード活物質は、層状構造などの結晶構造内の例えば、コバルト、ニッケル及びマンガンであり、リチウムが挿入されるマルチメタルオキサイド材料を形成する。カソード活物質の例は、層状酸化コバルトマンガンニッケルリチウム(LiNixMnyCozO2)、スピネル酸化マンガンリチウム(LMn2O4)及びオリビンリン酸鉄リチウム(LiFePO4)である。
【0047】
ドープされた金属酸化物膜は、最終膜形成に寄与する1つ以上の化学前駆体の蒸気を使用してCVD又はALD法によって形成される。他の用途のために使用される金属酸化物又はドープされた金属酸化物もその形成のためにそれらの公知の適用可能性に基づいて使用するために任意の適した前駆体を選択することができる。一般的に金属酸化物の公知の前駆体は、ドープされた金属酸化物を製造する特徴的なCVD又はALD法のパラメーターにおいて使用される。このようなパラメーターには、例えば、1%超の炭素含有量を有する「低品質」膜を故意に製造する金属酸化物の堆積と比べてより低い蒸気及び/又は基材温度、金属酸化物と比べて比較的低い低い屈折率、及び/又は相当する金属酸化物と比べてより高いレベルの多孔性(したがってより低い密度)が含まれる。
【0048】
最適化された堆積条件下で好適には多種多様な前駆体を使用して、ドープされた金属酸化物を形成することができる。
【0049】
好ましいIVA金属前駆体は次の通りである:
● M(OR)、各Rは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはM(OMe)、M(OiPr)、M(OtBu)、M(OsBu)
● M(NR、各R及びRは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはM(NMe、M(NMeEt)、M(NEt
● ML(NR、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニルを表わし、各R及びRは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはMCp(NMe、M(MeCp)(NMe、M(EtCp)(NEt、MCp*(NMe、MCp(NMe、M(MeCp)(NMe、M(EtCp)(NEt、MCp*(NMe、M(iPrCp)(NMe、M(sBuCp)(NMe、M(tBuCp)(NMe、N(secPenCp)(NMe、M(nPrCp)(NMe
● ML(OR)、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニルを表わし、各Rは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはMCp(OiPr)、M(MeCp)(OiPr)、M(EtCp)(OEt)、MCp*(OEt)、M(iPrCp)(NMe、M(sBuCp)(NMe、M(tBuCp)(NMe、N(secPenCp)(NMe,)、M(nPrCp)(NMe
好ましいVA金属前駆体は次の通りである:
● M(OR)、各Rは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはM(OEt)5、M(OiPr)5、M(OtBu)5、M(OsBu)5
● M(NR、各R及びRは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはM(NMe、M(NMeEt)、M(NEt
● ML(NR、x=3又は4であり、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル又はN-R形態のイミドを表わし、各R及びRは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはMCp(NMe、M(MeCp)(NMe、M(EtCp)(NEt、MCp*(NMeM(=NtBu)(NMe、M(=NtAm)(NMe、M(=NtBu)(NEt、M(=NtBu)(NEtMe)、M(=NiPr)(NEtMe)
● M(=NR)L(NR、x=1又は2であり、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニルを表わし、各R及びR及びRは独立にC1~C6炭素鎖であり、最も好ましくはMCp(=NtBu)(NMe、M(MeCp)(N=tBu)(NMe、M(EtCp)(N=tBu)(NMe、MCp*(=NtBu)(NMe、MCp(=NtBu)(NEtMe)、M(MeCp)(N=tBu)(NEtMe)、M(EtCp)(N=tBu)(NEtMe)
● ML(OR)x=3又は4であり、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル又はN-R形態のイミドを表わし、各Rは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはMCp(OiPr)、M(MeCp)(OiPr)、M(EtCp)(OEt)、MCp*(OEt)M(=NtBu)(OiPr)、M(=NtAm)(OiPr)
● ML(OR)(NR、x及びyは独立に1又は2に等しく、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル(cylohexadienyl)、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル又はN-R形態のイミドを表わし、各Rは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはMCp(OiPr)(NMe)、M(MeCp)(OiPr)(NMe)、M(EtCp)(OEt)(NMe)、M(=NtBu)(OiPr)(NMe)、M(=NtBu)(OiPr)(NMe、M(=NtBu)(OiPr)(NMe)、M(=NtBu)(OiPr)(NEtMe)、M(=NtBu)(OiPr)(NEt)、M(=NtBu)(OEt)(NMe)、M(=NtBu)(OEt)(NEtMe)、M(=NtBu)(OEt)(NEt)、M(=NiPr)(OiPr)(NMe)、M(=NiPr)(OiPr)(NMe、M(=NiPr)(OiPr)(NEtMe)、M(=NiPr)(OiPr)(NEt)、M(=NiPr)(OEt)(NMe)、M(=NiPr)(OEt)(NEtMe)、orM(=NiPr)(OEt)(NEt)。
好ましいVIA金属前駆体は次の通りである:
● M(OR)、各Rは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはM(OEt)、M(OiPr)、M(OtBu)、M(OsBu)
● M(NR、各R及びRは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはM(NMe、M(NMeEt)、M(NEt
● M(NR、x及びyは独立に1~4に等しく、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル又はN-R形態のイミドを表わし、各R及びRは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはMCp(NMe、M(MeCp)(NMe、M(EtCp)(NEt、MCp*(NMeM(=NtBu)(NMe、M(=NtAm)(NMe、M(=NtBu)(NEt
● M(OR)(NRML、x、y及びzは独立に0~4に等しく、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニル又はN-R形態のイミドを表わし、各Rは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはMCp(OiPr)、M(MeCp)(OiPr)、M(EtCp)(OEt)、M(=NtBu)(OiPr)、M(=NtAm)(OiPr)、M(=NtBu)(OtBu)、M(=NiPr)(OtBu)、M(=NtBu)(OiPr)、M(=NiPr)(OiPr)
● M(=O)xLy、x、y及びzは独立に0~4に等しく、Lは非置換又は置換アリル、シクロペンタジエニル、ペンタジエニル、ヘキサジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタジエニルを表わし、アミド又はN-R形態のイミド、各Rは独立にC1~C6炭素鎖(直鎖又は分岐状)であり、最も好ましくはM(=O)(OtBu)、M(=O)(OiPr)、M(=O)(OsecBu)、M(=O)(OsecPen)、M(=O)(NMe、M(=O)(NEt、M(=O)(NiPr、M(=O)(NnPr、M(=O)(NEtMe)、M(=O)(NPen
【0050】
単一前駆体又は2つ以上の前駆体の組合せを使用して、いずれの場合においても(必要ならば又は望ましいならば)任意選択により酸化共反応体を使用して、ドープされた金属酸化物膜を形成することができる。単一前駆体は、酸素及びドーパント元素Dを含む最終膜に見出される全ての元素を与えることができる。別の選択肢として、金属は1つの前駆体に由来し得、酸素は酸化共反応体に、ドーパントD元素は第2の前駆体に由来し得る。例えば、上に列挙した金属前駆体は、ドーパント元素Dの量を与えるか又は増加させる第2の前駆体と組み合わせることができ、それらの一方又は両方が、最終膜中にいくつかの金属酸化物を生じる酸化環境内で堆積される。別の場合、第2の前駆体は、ドーパントDを供給し、金属を酸化して最終膜中に金属酸化物を生じる。当業者は、適切な前駆体及び共反応体を本技術分野に公知のものから選択して、最適化された堆積条件下で使用して金属酸化物及びドーパントDのレベルを「調整」するときに所望の組成を有するドープされた金属酸化物膜を製造することができる。様々な前駆体の選択肢の典型的なものには、以下のものが含まれる:
● 酸素は、O2、O3、H2O、H2O2、NO、NO2、N2O又はNoxなどのO供給源に由来し得る。
● 酸素は、酸素含有ケイ素前駆体、酸素含有スズ前駆体などのドーパント供給源、リン酸トリメチル、ジエチルホスホルアミデートなどのホスフェート、又は硫酸塩に由来し得る。
● 窒素は、N2、NH3、N2H4、N2H4含有混合物、アルキルヒドラジン、NO、NO2、N2O又はNOxなどのN供給源に由来し得る。
● 窒素は、窒素含有ケイ素前駆体、窒素含有スズ前駆体などのドーパント供給源、又はジエチルホスホルアミデートなどのホスフェートに由来し得る。
● 炭素は、炭化水素、炭素含有ケイ素前駆体、炭素含有スズ前駆体、炭素含有ホウ素前駆体、炭素含有アルミニウム前駆体、炭素含有リン前駆体、リン酸トリメチル、ジエチルホスホルアミデートなどのホスフェート、又は硫酸塩などのC供給源に由来し得る。
● ケイ素は、シラン又はケイ素含有有機金属前駆体などのSi供給源に由来し得る。
● スズは、スタンナン又はスズ含有有機金属前駆体などのSn供給源に由来し得る。
● アルミニウムは、アルキルアランなどのアラン、又はアルミニウム含有有機金属前駆体などのAl供給源に由来し得る。
● リンは、に由来し得る。有機ホスフィンなどのホスフィン又はリン酸トリメチル又はジエチルホスホルアミデートなどのホスフェート
● 硫黄は、硫黄、S8、H2S、H2S2、SO2、有機亜硫酸塩、硫酸塩、又は硫黄含有有機金属前駆体などのS供給源に由来し得る。
● 第一列遷移金属は、蒸着において使用するために適した公知の有機金属又は他の前駆体に由来し得る。
【実施例
【0051】
実施例1~5:100及び150℃でNMC622粉末上に堆積されるNbOC薄膜の堆積及び電気化学的性能
堆積/膜形成のための実験条件:
以下の実験条件で流動床反応器を使用してNMC622粉末上に堆積を実施した:
反応器温度 x℃
反応器圧力: 1トール
前駆体キャニスターT: 115℃
前駆体キャニスターP: 50トール
サイクル数: y
【0052】
パルスシーケンス:
Nb前駆体: 30s
パージ: 20s
O : 5s
パージ: 5s
【0053】
これらの実施例1~5のNb前駆体はNbCp(=NtBu)(NMe(「NAB」)である。NMC622電極又はNMC粉末のサイクル数は典型的に、5~20回のALDサイクルに限られるが、これは、膜組成物を達成するためには不十分な厚さである、約1.5~4Åに相当する。したがって、このような特性決定は300回のALDサイクル後に堆積された膜上で行われた。相当する厚さ及び膜組成物は次の通りである:
● 加工温度:150℃⇒GPC約0.27Å。Nb:約24%、O約47%、C約27%、N<DL
● 加工温度:100℃⇒GPC約0.78Å。Nb:約25%、O約48%、C約27%、N<DL
【0054】
これらの膜の屈折率は200℃以上でNb薄膜について約1.7対2.25である。
【0055】
電気化学的特性決定:
実験条件:
- カソード材料NMC622
- 試験電極は88:7:5重量%のカソード活物質:カーボンブラック(C65):PVDF(Solef5130)から構成され、それは次に、ドクターブレード(200ミクロン)を使用してAl集電体上にキャストされる。
- グラフに与えられる加工温度で5回又は20回のNbCp(=NtBu)(NMe2)2/HO ALDサイクル
- 電解質:EC:EMC(1:1wt)中の1M LiPF
- アノード材料としてLi金属の使用
- 約5mg/cmの電極配合量、40ミクロンの厚さ
- 1C=180mAg-1、(Li/Liに対して)3.0~4.3Vの間で繰り返されるバッテリー
【0056】
図1に見られるように、NbOC粉末でコートされたNMC622電極、特に少なめのALDサイクルを繰り返した試料(NbCp(=NtBu)(NMe2)2/H2O粉末ALD-100C-5Cy)は、初期状態のNMC622電極と比べて0.2Cにおいていっそう高い初期容量を示す。ALDが20サイクル行われるとき、初期容量は、おそらくより厚いNbOC膜のために、初期状態のものに非常に近くなる。後続のバッテリーサイクルについて1Cにおける長期安定性(図2)は、NbOC粉末でコートされたNMC622電極がそれらの容量を有効に維持し、80サイクル後に少なくとも>92.5%の容量維持率を生じ、他方、初期状態の電極は84%しか維持しないことを示す。
【0057】
図3及び図4に示されるように、Cレート性能を比較するとき、NbOC粉末でコートされたNMC622電極は、初期状態の電極と比較して、20回のALDサイクルを繰り返した試料についても、Cレートの全ての範囲(0.2C~10C)でいっそう高い容量を有する。この改良形態は、10回のALDサイクルがバッテリー性能に有害である、Al2O3などの他の金属酸化物薄膜と比べて膜をより多孔性にする、炭素ドープ処理の効果のためであり得る(S.-H.Leeら、米国特許第9196901B2号明細書、2012年)。多孔性は、高密度化された金属酸化物膜と比べてより良いLi+イオンの移動を可能にすることができる。
【0058】
図5に示される走査電子顕微鏡写真分析に基づいて、NbOC堆積物/部分的な膜の存在は、材料モルフォロジーの維持を可能にするが、他方、初期状態の材料は、NMC粒子からのニッケルの溶解により生じ得る、次いで電極表面上で位置を変え得るNiOxの明確な結晶粒の存在によって劣化する傾向がある。これらの画像分析は、以下に考察した改良された電気化学的性能とよく相関する。
【0059】
実施例6~9:50、75及び100℃でNMC622電極上に堆積されたNbOC薄膜の堆積及び電気化学的性能
堆積物の形成のための実験条件:
堆積は、以下の実験条件で熱ALD反応器内でNMC622電極上で行われた:
反応器温度 x℃
反応器圧力: 1トール
前駆体キャニスターT: 95℃
前駆体キャニスターP: 50トール
サイクル数: y
【0060】
パルスシーケンス:
Nb前駆体: 30s
パージ: 20s
O: 5s
パージ: 5s
【0061】
Nb前駆体はNbCp(=NtBu)(NMe(「NAB」)である。NMC622電極又はNMC粉末のサイクル数は典型的に、5~100回のALDサイクルに限られるが、これは膜組成物を達成するためには不十分な厚さである、約1.1~85Åに相当する。したがって、このような特性決定は300回のALDサイクル後に堆積された膜上で行われた。相当する厚さ及び膜組成物は次の通りである:
- 加工温度:100℃⇒GPC約0.23Å。Nb:約17%、O約40%、C約42%、N<DL
- 加工温度:75℃⇒GPC約0.28Å。Nb:約20%、O約45%、C約34%、N<DL
- 加工温度:50℃⇒GPC約0.85Å。Nb:約16%、O約35%、C約48%、N<DL
【0062】
これらの膜の屈折率は275C以上でNb2O5薄膜について約1.7対2.22である。
【0063】
電気化学的特性決定:
実験条件:
- カソード材料NMC622
- 電極は88:7:5重量%の活物質:カーボンブラック(C65):PVDF(Solef5130)から構成され、それは次に、ドクターブレード(200ミクロン)を使用してAl集電体上にキャストされる。
- グラフに与えられる加工温度で5回のNbCp(=NtBu)(NMe2)2/HO ALDサイクル
- 電解質:EC:EMC(1:1wt)中の1M LiPF
- アノード材料としてLi金属の使用
- 約5mg/cmの電極配合量、40ミクロンの厚さ
- 1C=180mAg-1、(Li/Liに対して)3.0~4.3Vの間で繰り返されるバッテリー
【0064】
NbOC薄膜でコートされたNMC622電極の長期サイクル安定性(図6)は、ALD温度に関係なく1Cにおける最初のサイクル(第4サイクル)において高めの放電容量を示すだけでなく、80回のバッテリーサイクル後に少なくとも>92%の容量維持率を実証し、他方、初期状態のNMC622電極については84%の維持率が観察される(図7)。また、温度依存性は、この実験用バッテリーのためのこれらの条件下でより良い長期サイクル安定性のために最適な温度である100℃でのALDによって観察される。
【0065】
Cレート性能に関して、NMC622電極上のNbOC薄膜の堆積によって、それらは初期状態の電極と比較して0.2C~5Cにおいていっそう高い容量をもたらすことができる(図8及び図9)。10Cにおいて、100℃でALD実施されたNbCp(=NtBu)(NMe2)2/HO電極だけが、初期状態の電極よりもいっそう高い容量を示す。長期繰り返し試験(図6)において既に実証されたように、このCレートの結果はまた、最適なALD温度がこれらの実験において100℃であることを裏づける。
【0066】
実施例10~13:Nb(=NtBu)(NMe(OEt)/HOを使用して75、100、125及び150℃においてNMC622電極上に堆積されたNbOC薄膜の堆積及び電気化学的性能
NABの代わりに用いられる前駆体Nb(=NtBu)(NMe(OEt)(「NAU」)によって同様な実験を実施した。得られた膜は以下の性質を有した:
● 厚さ3~61Å
● 2.06~2.28の屈折率
● 300サイクルの膜の原子組成:
○ 加工温度:150℃⇒GPC約0.66A。Nb:約25%、O約60%、C約11%、N約2%
○ 加工温度:125℃⇒GPC約1.69A。Nb:約30%、O約64%、C約4%、N約1%
○ 加工温度:100℃⇒GPC約2.25A。Nb:約27%、O約57%、C約14%、N約1%
○ 加工温度:75℃⇒GPC約3.07A。Nb:約25%、O約58%、C約15%、N約2%
【0067】
これらの電極は、NAB由来の膜を有する電極と電気化学的性能において同様な改良を有した。
【0068】
実施例14~15:NMC622電極上に堆積されたNbOCP薄膜の化学蒸着及び電気化学的性能
NbOCP堆積は、以下の実験条件に従って達成された:
堆積条件及び特性決定:
反応器温度 100~150℃
反応器圧力: 1トール
Nb前駆体キャニスターT: 95℃
Nb前駆体キャニスターP: 10トール
Nb前駆体バブリングFR: 50sccm
TMPOキャニスターT: 30℃
TMPOキャニスターP: 10トール
TMPOバブリングFR: 50sccm
反応時間: y分(グラフに明記した)
前駆体の流量:
Nb前駆体: 5sccm
TMPO: 5sccm
: 100sccm
【0069】
ニオブ前駆体はNb(=NtBu)(NMe(OEt)である。100℃における相当する厚さと膜組成は厚さ約2.1nm。Nb:29.6%、O:58.0%、C7.8%、P:2.6%、N<DL;150℃において、厚さ約1.8nm。Nb:24.3~%、O:60.1~%、C:7.6~%、P:6.4%、N<DLである。
【0070】
電気化学的特性決定:
- カソード材料NMC622
- 電極は、88:7:5重量%の活物質:カーボンブラック(C65):PVDF(Solef5130)から構成され、それは次に、ドクターブレード(200ミクロン)を使用してAl集電体上にキャストされる。
- 以下を使用して電極CVDによって堆積されるNbOP:
- CVD加工温度=100~150℃;時間: 1及び2分
- 電解質:EC:EMC(1:1wt)中の1M LiPF
- アノード材料としてLi金属の使用
- 約5mg/cmの電極配合量、40umの厚さ
- 1C=180mAg-1、(Li/Liに対して)3.0~4.3Vの間で繰り返されるバッテリー
【0071】
図10及び図11に示されるように、NbOCP薄膜でコートされたNMC622電極について0.2Cにおける初期容量は、初期状態のNMC622電極と比較して増加した。後続のサイクルについて、NbOCP薄膜でコートされたNMC622電極は明らかにより良い繰り返し性能を示し、Nb(=NtBu)(NMe2)2(OEt)/TMPO/O3ECVD-150℃-1min電極について1Cにおいて80回のバッテリーサイクル後に>95%の維持率を維持する。NbOCP薄膜を有するNMC622電極は、初期状態のNMC622電極と比較して、5Cまで低い及び適度のCレートにおいていっそう高い容量を示す(図12及び図13)。
【0072】
実施例16~19:LNMO電極上に堆積されたZrOC薄膜の堆積及び電気化学的性能
堆積条件及び特性決定:
反応器温度 75~150℃
反応器圧力: 1トール
Zr前駆体キャニスターT: 100℃
Zr前駆体キャニスターP: 20トール
Zr前駆体バブリングFR: 40sccm
反応時間: y分(グラフに明記した)
前駆体の流量:
Zr前駆体: 2sccm
: 100sccm
パルスシーケンス:
Zr前駆体: 20s
パージ: 5s
: 5s
パージ: 5s
【0073】
ジルコニウム前駆体はZrCp(NMeであり、「ZrCp」と表すことができる。平均膜の厚さは約2~20Åである。膜は、約20%~25%のZr、約1%~5%窒素、約40%~60%の酸素及び約12~30%のCを含有した。屈折率は(ZrOについて2.21と比較して)75℃において1.92から150℃において2.15までであった。
【0074】
電気化学的特性決定:
- カソード材料LNMO
- 以下を使用してCVDによって電極に堆積されるZrOC:加工温度=50~150℃;時間:5~50サイクル
- 電解質:EC:EMC(1:1wt)中の1M LiPF
- アノードとしてLi金属の使用
- 約5mg/cmの配合量、40umの厚さ
【0075】
図14及び図15に示されるように、ZrOC薄膜でコートされたLNMO電極について0.2Cにおける初期容量は、高密度ALDコーティング膜のために、ALD温度が上昇するとき初期状態のNMC622電極と比較してわずかに減少した。後続のサイクルについて、ZrOC薄膜でコートされたLNMO電極は明らかにより良い繰り返し性能を示し、特にZrCp/O3-125C-20Cy及びZrCp/O3-150C-20Cyについて、それは、それぞれ、1Cにおいて80回のバッテリーサイクル後に97%及び100%の維持率を維持し、他方、初期状態のLNMO電極について82%の容量維持率が観察された。ZrOC薄膜を有するLNMO電極は、初期状態のNMC622電極と比較して、5Cまで低い及び適度のCレートにおいていっそう高い容量を示し(図16及び図17)、他方、初期状態の及びZrOC薄膜でコートされたLNMO電極の両方について皮相容量は観察されなかった。
【0076】
本発明はその特定の実施形態と共に説明されたが、前述の説明を考慮に入れて多くの代替形態、改良形態、及び別形態が当業者には明白であることは明らかである。したがって、添付した請求の範囲の趣旨及び広い範囲内に含まれる全てのこのような代替形態、改良形態、及び別形態を包含することが意図される。本発明は好適には、開示される要素を含む、からなる又はから本質的になり得、開示されていない要素の非存在下で実施され得る。更に、第1及び第2などの順序を参照する言語がある場合、それは、典型的な意味において、及び制限的な意味においてではなく理解されるべきである。例えば、特定の複数の工程を単一工程に組み合わせることができることは当業者によって認識され得る。
【0077】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がはっきりと他に指示しない限り、複数形の指示物を含む。
【0078】
請求項における「Comprising(含む)」は、その後に特定される請求項の要素が非排他的な列挙である、すなわち他の何も更に含まれ得ず「comprising(含む)」の範囲内にあり得ることを意味する開いた移行語である。「Comprising(含む)」は、より限られた移行語「consisting essentially of(本質的に~からなる)」及び「consisting of(~からなる)」を必然的に包含するとして本明細書において定義される。したがって「comprising(含む)」は、「consisting essentially of(本質的に~からなる)」又は「consisting of(~からなる)」で置き換えられ得、「comprising(含む)」の明確に定義された範囲内にある。
【0079】
請求項における「提供する(Providing)」は、何かあるものを備える、供給する、利用可能にする、又は用意することを意味すると定義される。工程は、請求項におけるそれと反対の明示された言語が存在しない場合任意の行為者によって実施され得る。
【0080】
任意選択の又は任意選択によりは、その後に説明される事柄又は状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味する。説明は、事柄又は状況が起こる場合とそれが起こらない場合とを含む。
【0081】
範囲は、大雑把に1つの特定の値から、及び/又は大雑把にもう1つの別の特定の値まで本明細書において表され得る。このような範囲が表されるとき別の実施形態は、前記範囲内の全ての組合せと共に、1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までであると理解されるべきである。
【0082】
本明細書に示される全ての文献はそれぞれ、本出願にそれらの全体において参照によって、並びにそれぞれが引用される特定の情報について本明細書に組み込まれる。
図1
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図10
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