(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】像加熱装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241202BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20241202BHJP
H05B 3/03 20060101ALI20241202BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/16 185
H05B3/03
H05B3/00 335
(21)【出願番号】P 2023038554
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2018232863の分割
【原出願日】2018-12-12
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆史
(72)【発明者】
【氏名】西方 一志
(72)【発明者】
【氏名】中尾 健一
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 誠人
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-054103(JP,A)
【文献】特開2018-146957(JP,A)
【文献】特開平04-351877(JP,A)
【文献】特開2013-061608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
H05B 3/03
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材と接触しつつ回転する筒状のフィルムと、
前記フィルムの内部空間に配置されているヒータであって、記録材の搬送方向と直交する方向を長手方向とする基板と、前記基板に前記長手方向に並ぶ複数の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体である第1の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体であって、前記第1の発熱体よりも前記長手方向の一端部側に設けられ、前記第1の発熱体よりも前記長手方向における幅が短い第2の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体であって、前記第1の発熱体よりも前記長手方向の前記一端部側に設けられ、前記第1の発熱体よりも前記長手方向における幅が短く、前記第2の発熱体と前記長手方向において隣り合い、前記第2の発熱体よりも前記長手方向において中央側に位置する第3の発熱体と、
前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体であって、前記第1の発熱体よりも前記長手方向の前記一端部側とは逆の他端部側に設けられ、前記第1の発熱体よりも前記長手方向における幅が短い第4の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体であって、前記第1の発熱体よりも前記長手方向の前記他端部側に設けられ、前記第1の発熱体よりも前記長手方向における幅が短く、前記第4の発熱体と前記長手方向において隣り合い、前記第4の発熱体よりも前記長手方向において中央側に位置する第5の発熱体と、前記第1の発熱体、前記第2の発熱体
、前記第3の発熱体
、前記第4の発熱体および前記第5の発熱体にそれぞれ給電するための第1の電極、第2の電極
、第3の電極
、第4の電極および第5の電極と、を有する前記ヒータと、
前記フィルムの内部空間に配置される第1の端子、第2の端子
、第3の端子
、第4の端子および第5の端子であって、前記第1の電極に電気的に接続される前記第1の端子と、前記第2の電極に電気的に接続され、前記長手方向に関して前記基板に設けられた全ての前記複数の発熱体が設けられている領域のうち
前記一端部側における最も端部側に位置している端子である前記第2の端子と、前記第3の電極に電気的に接続され、前記第2の端子と前記長手方向に隣り合う前記第3の端子と、
前記第4の電極に電気的に接続され、前記長手方向に関して前記基板に設けられた全ての前記複数の発熱体が設けられている領域のうち前記他端部側における最も端部側に位置している端子である前記第4の端子と、前記第5の電極に電気的に接続され、前記第4の端子と前記長手方向に隣り合う前記第5の端子と、を有し、記録材に形成されている画像を、前記ヒータの熱で加熱する像加熱装置であって、
前記第1の端子は前記第1の端子に電気的に繋がる第1の束線を前記第1の端子に加締
めるための第1の加締め部を有し、
前記第2の端子は前記第2の端子に電気的に繋がる第2の束線を前記第2の端子に加締めるための第2の加締め部を有し、
前記第3の端子は前記第3の端子に電気的に繋がる第3の束線を前記第3の端子に加締めるための第3の加締め部を有し、
前記第4の端子は前記第4の端子に電気的に繋がる第4の束線を前記第4の端子に加締めるための第4の加締め部を有し、
前記第5の端子は前記第5の端子に電気的に繋がる第5の束線を前記第5の端子に加締めるための第5の加締め部を有し、
前記第2の加締め部は前記第2の端子が前記第2の電極に電気的に接続される位置に対して前記長手方向における前記ヒータの前記一端部側に向いており、
前記第3の加締め部は前記第3の端子が前記第3の電極に電気的に接続される位置に対して前記長手方向における前記ヒータの前
記他端部側に向いており、
前記第2の電極と前記第2の端子が電気的に接続される位置と前記第3の電極と前記第3の端子が電気的に接続される位置は、前記長手方向において前記第2の加締め部と前記第3の加締め部の間に位置して
おり、
前記第4の加締め部は前記第4の端子が前記第4の電極に電気的に接続される位置に対して前記長手方向における前記ヒータの前記他端部側に向いており、
前記第5の加締め部は前記第5の端子が前記第5の電極に電気的に接続される位置に対して前記長手方向における前記ヒータの前記一端部側に向いており、
前記第4の電極と前記第4の端子が電気的に接続される位置と前記第5の電極と前記第5の端子が電気的に接続される位置は、前記長手方向において前記第4の加締め部と前記第5の加締め部の間に位置している
ことを特徴とする像加熱装置。
【請求項2】
前記フィルムに接触して前記フィルムとの間に前記記録材を搬送するニップ部を形成する加圧部材を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の像加熱装置。
【請求項3】
前記加圧部材は前記フィルムを介して前記ヒータとともに前記ニップ部を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載の像加熱装置。
【請求項4】
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が請求項1から3のいずれか一項に記載の像加熱装置である
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真方式や静電記録方式を利用したプリンタ、複写機、あるいはこれらの機能を兼ね備えた複合機等の画像形成装置に関する。また、画像形成装置に搭載されている定着器や、記録材に定着されたトナー画像を再度加熱することによりトナー画像の光沢度を向上させる光沢付与装置等の像加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に搭載される定着装置等の像加熱装置として、フィルム加熱方式の像加熱装置が知られている。この像加熱装置は、エンドレスベルト状の耐熱性フィルム(定着フィルムとも称する)と、フィルムの内面と接触するヒータ、ヒータを保持するためのヒータホルダ、およびフィルムを介してヒータと共にニップ部を形成する加圧ローラを有する。この像加熱装置では、ニップ部において、トナー像を担持した記録材を搬送しながら加熱してトナー像を記録材に定着する。フィルム加熱方式の像加熱装置は低熱容量であるため、省電力化およびウェイトタイムの短縮化(クイックスタート)が可能になる。
【0003】
端子ヒータの基板には、発熱体と発熱体と電気的に繋がっている電極が設けられている。この電極に電力供給用のコネクタが接続される。特許文献1には、基板上の電極とコネクタの端子を超音波接合することで、高温環境での給電部(電極と端子の接続部)の信頼性を向上させる技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、像加熱装置を使用する過程で、給電部には、温度上昇および降下による熱応力が繰り返し発生する。具体的には、ヒータの基板が、基板の材料の線膨張係数に応じて熱膨張することで、電極も同程度に熱膨張する。また、端子も、その材料の線膨張係数に応じて熱膨張する。特許文献1に開示された装置において、基板と端子の線膨張係数が大きく異なる場合、互いの熱膨張量の違いによって超音波接合した給電部に大きな熱応力が発生することになる。この熱応力が繰り返し発生すると、端子が基板から外れる可能性がある。また、基板がいわゆる脆性材料であるセラミックであり、端子が金属である場合、金属の線膨張係数がセラミックの線膨張係数よりも大きいので、基板と端子が熱膨張した時、セラミックが引っ張られる方向に力が働く。この結果、セラミックに疲労が蓄積され、基板の耐用寿命が短くなる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、給電部において繰り返し発生する熱応力を低減し、装置の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明である像加熱装置は、
記録材と接触しつつ回転する筒状のフィルムと、
前記フィルムの内部空間に配置されているヒータであって、記録材の搬送方向と直交する方向を長手方向とする基板と、前記基板に前記長手方向に並ぶ複数の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体である第1の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体であって、前記第1の発熱体よりも前記長手方向の一端部側に設けられ、前記第
1の発熱体よりも前記長手方向における幅が短い第2の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体であって、前記第1の発熱体よりも前記長手方向の前記一端部側に設けられ、前記第1の発熱体よりも前記長手方向における幅が短く、前記第2の発熱体と前記長手方向において隣り合い、前記第2の発熱体よりも前記長手方向において中央側に位置する第3の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体であって、前記第1の発熱体よりも前記長手方向の前記一端部側とは逆の他端部側に設けられ、前記第1の発熱体よりも前記長手方向における幅が短い第4の発熱体と、前記複数の発熱体のうちの1つの発熱体であって、前記第1の発熱体よりも前記長手方向の前記他端部側に設けられ、前記第1の発熱体よりも前記長手方向における幅が短く、前記第4の発熱体と前記長手方向において隣り合い、前記第4の発熱体よりも前記長手方向において中央側に位置する第5の発熱体と、前記第1の発熱体、前記第2の発熱体、前記第3の発熱体、前記第4の発熱体および前記第5の発熱体にそれぞれ給電するための第1の電極、第2の電極、第3の電極、第4の電極および第5の電極と、を有する前記ヒータと、
前記フィルムの内部空間に配置される第1の端子、第2の端子、第3の端子、第4の端子および第5の端子であって、前記第1の電極に電気的に接続される前記第1の端子と、前記第2の電極に電気的に接続され、前記長手方向に関して前記基板に設けられた全ての前記複数の発熱体が設けられている領域のうち前記一端部側における最も端部側に位置している端子である前記第2の端子と、前記第3の電極に電気的に接続され、前記第2の端子と前記長手方向に隣り合う前記第3の端子と、前記第4の電極に電気的に接続され、前記長手方向に関して前記基板に設けられた全ての前記複数の発熱体が設けられている領域のうち前記他端部側における最も端部側に位置している端子である前記第4の端子と、前記第5の電極に電気的に接続され、前記第4の端子と前記長手方向に隣り合う前記第5の端子と、を有し、記録材に形成されている画像を、前記ヒータの熱で加熱する像加熱装置であって、
前記第1の端子は前記第1の端子に電気的に繋がる第1の束線を前記第1の端子に加締めるための第1の加締め部を有し、
前記第2の端子は前記第2の端子に電気的に繋がる第2の束線を前記第2の端子に加締めるための第2の加締め部を有し、
前記第3の端子は前記第3の端子に電気的に繋がる第3の束線を前記第3の端子に加締めるための第3の加締め部を有し、
前記第4の端子は前記第4の端子に電気的に繋がる第4の束線を前記第4の端子に加締めるための第4の加締め部を有し、
前記第5の端子は前記第5の端子に電気的に繋がる第5の束線を前記第5の端子に加締めるための第5の加締め部を有し、
前記第2の加締め部は前記第2の端子が前記第2の電極に電気的に接続される位置に対して前記長手方向における前記ヒータの前記一端部側に向いており、
前記第3の加締め部は前記第3の端子が前記第3の電極に電気的に接続される位置に対して前記長手方向における前記ヒータの前記他端部側に向いており、
前記第2の電極と前記第2の端子が電気的に接続される位置と前記第3の電極と前記第3の端子が電気的に接続される位置は、前記長手方向において前記第2の加締め部と前記第3の加締め部の間に位置しており、
前記第4の加締め部は前記第4の端子が前記第4の電極に電気的に接続される位置に対して前記長手方向における前記ヒータの前記他端部側に向いており、
前記第5の加締め部は前記第5の端子が前記第5の電極に電気的に接続される位置に対して前記長手方向における前記ヒータの前記一端部側に向いており、
前記第4の電極と前記第4の端子が電気的に接続される位置と前記第5の電極と前記第5の端子が電気的に接続される位置は、前記長手方向において前記第4の加締め部と前記第5の加締め部の間に位置している
ことを特徴とする。
また、上記目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、
記録材に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成された画像を記録材に定着する定着部と、
を有する画像形成装置において、
前記定着部が本発明の像加熱装置である
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る像加熱装置によれば、ヒータの基板の線膨張係数と、端子の線膨張係数との違いによる熱応力を、中間部材で低減することができ、端子の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例1の給電構成の長手方向の断面斜視図。
【
図3】実施例1の定着装置の記録材の搬送方向における断面図。
【
図7】実施例1の給電構成の熱膨張による変形の図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を例示する。ただし、実施形態に記載されている構成部品の寸法や材質や形状やそれらの相対配置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件等により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨ではない。
【0011】
(実施例1)
以下、実施例1の定着装置を備える電子写真画像形成装置(以下、画像形成装置)について説明する。
図2は、実施例1の一例である画像形成装置1の断面模式図である。
【0012】
(1)画像形成装置の全体構成
まず、本実施形の形態に係る画像形成装置の全体構成について
図2を用いて説明する。本実施例の画像形成装置1はレーザビームプリンタである。
【0013】
画像形成装置1は、記録材給送部と画像形成部を備える。記録材給送部は、カセット2と給紙ローラ3を備える。カセット2内に積載された記録材Pは、給紙ローラ3により最上位の記録材Pから一枚ずつピックアップされ、レジストローラ4とコロ5で形成されるニップ部に送られる。記録材Pはレジストローラ4とコロ5によって姿勢を整えられた後
、画像形成部に送られる。
【0014】
画像形成部は、像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと称する)6と、感光ドラム6を帯電させる帯電器7と、感光ドラム6上の潜像をトナーで現像する現像器8、感光ドラム6上の残留トナーを除去するクリーナ9を備える。感光ドラム6は、図中の矢印で示される方向に回転駆動される。帯電器7は、感光ドラム6の周面を一様に帯電する。画像形成部の上側(紙面上方向の側)には、帯電処理された感光ドラム6に画像情報に基づいてレーザービームを照射して、感光ドラム6上に静電潜像を形成する、露光部としてのレーザースキャナ10が配置されている。静電潜像は現像器8によってトナー画像として現像される。そして、現像されたトナー画像は、転写ローラ11と感光ドラム6によって形成される転写部12で記録材Pに転写される。
【0015】
トナー画像が転写された記録材Pは、定着部(像加熱部)としての定着装置(像加熱装置)13に搬送される。定着装置13により記録材P上のトナー画像が記録材Pに加熱定着される。定着装置13を通過した記録材Pは、排紙ローラ対14によって画像形成装置1上部の記録材積載部15に排紙される。
【0016】
(2)定着装置
次に、本実施例の定着装置13について説明する。
【0017】
図3は定着装置13の断面図である。定着装置13は、筒状の加熱フィルム23と、加圧ローラ16と、を有する。そして、加圧ローラ16をモータ(不図示)の動力で回転させ、加熱フィルム23を加圧ローラ16の搬送力により回転させる方式の装置である。定着装置13は、加熱体としてのヒータ70、ヒータ70を保持する保持部材としてのヒータホルダ17、ヒータホルダ17を補強する加圧ステー20を有する。加圧ローラ16は、芯軸部18と耐熱弾性層19を備える加圧部材である。ヒータホルダ17、ヒータ70、加圧ステー20は、加熱フィルム23の内部空間に配置されている。また、ヒータホルダ17は、加圧ステー20を介して不図示のバネ等によって加圧ローラ16に向かって付勢されている。加圧ローラ16が加熱フィルム23に当接することで、加熱フィルム23と加圧ローラ16との間に、記録材Pを搬送する定着ニップ部Nが形成される。加熱フィ
ルム23の内面にヒータ70が接触しているので、加圧ローラ16が回転すると、加熱フィルム23の内面がヒータ70に摺動しながら加熱フィルム23が回転する。
【0018】
トナー像Tを担持する記録材Pは、定着ニップ部Nで搬送される。その搬送過程において、記録材Pには、ヒータ70により加熱されている加熱フィルム23の熱と定着ニップ部Nの圧力とが加えられ、これによりトナー像Tが記録材Pに定着される。
【0019】
(3)ヒータ、ヒータホルダ
次に、ヒータ70、ヒータホルダ17について説明する。
図4はヒータ70の長手方向の中央におけるヒータ70の断面図を示す。
図5A~
図5Eは、ヒータ70とヒータホルダ17の構成を示す平面図である。
図4は、
図5A~
図5Eにおける搬送基準位置X0を示す点線の位置でヒータ70を切断したときのヒータ70の断面図である。また、
図5Aおよび
図5Bは、ヒータ70を裏面層73から見た図である。
図5Aは、ヒータ70を保護ガラス80の上から見た図、
図5Bは、保護ガラス80を除いてヒータ70を見た図である。
図5Cおよび
図5Dは、ヒータ70を摺動面層72から見た図である。
図5Dは、ヒータ70を保護ガラス81の上から見た図、
図5Cは、保護ガラス81を除いてヒータ70を見た図である。なお、
図5A~
図5Eの各図において、図中左側に示す矢印Fは、記録材Pの搬送方向を示している。
【0020】
図4に示すように、ヒータ70は、摺動面層72、基板71、裏面層73からなる層状
の構成を有する。ここで、ヒータ70の摺動面とは、加熱フィルム23の内面と接触する面である。ニップ部Nにおいて、加熱フィルム23の内面がヒータ70、より具体的にはヒータ70の摺動面と接触し、加熱フィルム23の外面が加圧ローラ16と接触する。そして、加熱フィルム23は、ヒータ70の摺動面と加圧ローラ16に挟まれた状態で摺動する。基板71は、ニップ部Nにおける記録材Pの搬送方向と直交する方向が基板71の長手方向となるように構成される。
【0021】
図4において、摺動面層72には、温度検知部としてのサーミスタT1および導電体78a~78dが設けられている。また、裏面層73には、発熱体74a、74b、導電体75a~75c、給電用の電極76aがそれぞれ設けられている。裏面層73には、記録材Pの搬送方向の上流側に発熱体74aが、当該搬送方向の下流側に発熱体74bが設けられている。導電体75aと導電体75bが発熱体74aを挟む位置に設けられ、同様に、導電体75aと導電体75cが発熱体74bを挟む位置に設けられている。
【0022】
導電体75aと導電体75bを介して発熱体74aに電力を供給すると発熱体74aが発熱する。同様に、導電体75aと導電体75cを介して発熱体74bに電力を供給すると発熱体74bが発熱する。保護ガラス80は、発熱体74a、74bおよび導電体75a~75cを覆い、かつ、電極76aを露出するように設けられている。
【0023】
また、
図5Bに示すように、ヒータ70の裏面層73には7つの発熱ブロックZ1~Z7が設けられている。各発熱ブロックは、記録材Pの搬送方向の上流側にある導電体75b、当該搬送方向の下流側にある導電体75c、導電体75b、75cに挟まれる位置に設けられる導電体75aを有する。さらに、各発熱ブロックは、記録材Pの搬送方向の上流側にある発熱体74a、当該搬送方向の下流側にある発熱体74bを有する。各発熱ブロックの導電体75aには、電極76a~76eが、電気的に接続されている。
【0024】
図5Aに示すように、保護ガラス80は、電極76a~76iと重なる部分を除いてヒータ70に設けられている。よって、ヒータ70の裏面側からの後述する給電用の端子を各電極76a~76iに接合することができる。なお、本実施例のヒータ70において、発熱ブロックZ2とZ3が、常に同時に発熱するように共通のスイッチ(トライアック等)で駆動されている。また、発熱ブロックZ4とZ5が、常に同時に発熱するように共通のスイッチで駆動されている。また、発熱ブロックZ6とZ7が、常に同時に発熱するように共通のスイッチで駆動されている。発熱ブロックZ1だけが、単独で駆動されている。このように、端子および電極を介して各発熱ブロックに対してそれぞれ独立した電力供給が可能であり、各発熱ブロックの発熱を独立して制御することができる。このように複数の発熱ブロックを設けることで、図中AREA1~AREA4で示すように、4種類の発熱分布を形成することができる。本実施例では、AREA1はA5紙用、AREA2はB5紙用、AREA3はA4紙用、AREA4はレター紙用となっている。
【0025】
7つの発熱ブロックを独立に制御することにより、記録材Pのサイズに合わせて給電する発熱ブロックを選択できるため、記録材Pが通らない非通紙領域に対する余剰な加熱が発生しない。なお、発熱ブロックの数や、記録材Pの搬送方向に垂直な方向における各発熱ブロックの幅は、
図5を用いた上記の例に限定されるものではない。本実施例では、図中左側のヒータ70端部に、電極76g、76fからなる電極群を形成し、図中右側のヒータ70端部に電極76h、76iからなる電極群が形成されている。ヒータ70の長手方向おいて、電極76a~76eは、ニップ部Nの範囲内に設けられているが、電極群76f~76iは、ニップ部Nの範囲外に設けられている。
【0026】
また、
図5Cに示すように、ヒータ70の摺動面層72には、ヒータ70の各発熱ブロックの温度を検知するためのサーミスタT1~T7およびサーミスタT1a、T1b、T
2a、T3a、T4a、T5a、t2~t7が設けられている。サーミスタT1~T7は、主に各発熱ブロックの温度制御に使用される。以降、サーミスタT1~T7を、温調サーミスタT1~T7と称する。
【0027】
サーミスタT1a、T1b、T2a、T3a、T4a、T5aは、各発熱ブロックの端部の温度を検知するためのサーミスタである。以降、サーミスタT1a、T1b、T2a、T3a、T4a、T5aを、端部サーミスタT1a、T1b、T2a、T3a、T4a、T5aと称する。端部サーミスタT1a、T1b、T2a、T3a、T4a、T5aは、発熱ブロックの幅が他の発熱ブロックの幅よりも狭い両端の発熱ブロックZ6、Z7を除いて、搬送基準位置X0に対して各発熱ブロック内の端部寄りの位置に設けられる。発熱ブロックZ6、Z7には発熱領域の幅が狭いため、端部サーミスタが設けられていない。
【0028】
サーミスタt2~t7は、上記の温調サーミスタや端部サーミスタが故障した場合でも、発熱ブロックの温度を検知できるように補助的に設けられているサーミスタである。以降、サーミスタt2~t7を、サブサーミスタと称する。サブサーミスタt2~t7は、ヒータ70の長手方向において、温調サーミスタT2~T7に対応する位置に設けられる。温調サーミスタT1~T7と端部サーミスタT1a、T1b、T2a、T3a、T4a、T5aの電気的な一端は共通の導電体78aに接続され、他端は導電体78bまたは導電体78eにそれぞれ接続される。また、サブサーミスタt2~t7は、電気的な一端が共通の導電体78cに接続され、他端は共通の導電体78dに接続される。導電体78a~78dは、ヒータ70の長手方向においてヒータ70の両端まで延在している。
【0029】
図5Dに示すように、ヒータ70長手方向における導電体78a~78dの両端部を除いて、サーミスタと導電体78a~78dが保護ガラス81に覆われている。保護ガラス81に覆われずに露出した導電体78a~78dは、サーミスタ用の電極群79a、79bを形成している。
【0030】
以上、本実施例のヒータ70によれば、各発熱ブロックZ1~Z7の温度を検知しながら、各発熱ブロックを独立して制御することができる。これにより、定着ニップ部Nに搬送される記録材Pのサイズに適した発熱分布の形成が可能な定着装置を提供することができる。なお、本実施例ではサブサーミスタを設ける構成について説明したが、上記のヒータ70を、サブサーミスタを設けない構成としてもよい。サブサーミスタを搭載することで、より高度かつ緻密な制御が可能になる。
【0031】
また、
図5Eに示すように、ヒータホルダ17には、電極76a~76iに対応した開口部82a~82iが設けられている。加圧ステー20とヒータホルダ17の間の空間には、電極76a~76eと電気的に接続される端子が設けられる。また、ヒータ70の長手方向端部に設置される電極76f~76iには、コネクタ300が接続される。コネクタ300のハウジング301の内部には、バネ性を有する端子302が設けられており、このバネ性を利用して端子302は電極76f~76iに接触している。
【0032】
(4)給電構成
図6にヒータ70とヒータホルダ17と給電用の端子200の関係を表した全体図を示す。また、
図1に端子200の斜視図を示す。
【0033】
図6Aに示すように、本実施例では、ヒータ70の発熱ブロックZ1~Z7への給電構成として2種類の給電構成が用いられている。1種類目の給電構成は、電極76a~76eに重なるように、導電性を有する1層の平板状の中間部材100、端子200が順番に積層された構成である。電極76a~76eと中間部材100、中間部材100と端子2
00はお互いに面同士が電気的に接合されている状態である。また、端子200の端部に設けられている加締め部201は、端子200に電気的に繋がる不図示の束線(ケーブル)を加締めるためのものである。
【0034】
2種類目の給電構成は、上述したように、コネクタ300を介して電極76f~76iと電源(不図示)とが接続される構成である。コネクタ300は、ヒータ70の短手方向からヒータ70を保持した状態のヒータホルダ17に挿入される。すると、コネクタ300のハウジング301内に設けられた端子302がヒータ70の厚みに合わせて弾性変形する。端子302の変形による反力によって、コネクタ300と電極75f~76iとの電気的接点が実現される。本実施例では、端子302によって上記のコネクタ300に対する加圧力を発生させているが、ヒータ70の厚みに応じて摺動面層72側にスペーサを配置してもよい。スペーサを設けることで、端子302によるコネクタ300に対する加圧力がより均一化し、コネクタ300と電極75f~76iとの電気的な接続がより安定する。
【0035】
図6Bに、
図6Aに示す給電構成の組み立てが完了した状態を示す。上記の通り、ヒータホルダ17に設けられた開口部82a~82eの位置で、電極76a~76eと中間部材100と端子200とが電気的に接続されている。また、複数の端子200の向きは、全て同じではない。端子200の向きを変えて配置することで、各端子200に接続される不図示の束線をヒータホルダ17の長手方向の両端に分けることができる。これにより、加圧ステー20とヒータホルダ17の断面積が小さくなるという利点が得られる。また、加熱フィルム23の直径も小さくできる。また、もう1つの給電構成としてのコネクタ300は、開口部82f~82iを介して、端子302と電極76f~76iとの電気的接点を実現する。
【0036】
次に、
図1Aを参照しながら、ヒータ70に設けられる給電構成について詳細に説明する。
図1Aは、
図6に示す電極76eがヒータ70に設けられた状態を示す。なお、電極76a~76dがヒータ70に設けられた状態も
図1Aに示す状態と同様である。
【0037】
図1Aに示すように、端子200には位置決め部202、回転止め部203が設けられている。位置決め部202には、ヒータホルダ17に備えられている位置決めボス21が挿通される穴が設けられている。また、回転止め部203には、ヒータホルダ17に備えられている回転止めボス22に嵌合する凹みが設けられている。位置決め部202が位置決めボス21に挿通され、回転止め部203が回転止めボス22に嵌合された状態で、プッシュナット303が位置決めボス21に嵌められることで、端子200がヒータホルダ17に対して固定される。
【0038】
また、端子200は、変形部204と接合部205とを有する。変形部204は、ヒータホルダ17とヒータ70の熱膨張の相対変位差を吸収する部分である。具体的には、ヒータホルダ17は耐熱樹脂で作製されており、ヒータ70はセラミックで作製されている。耐熱性樹脂(液晶ポリマー)の線膨張係数はおよそ10~100×10-6/℃であり、セラミックの線膨張係数はおよそ0.1~10×10-6/℃である。
【0039】
ヒータホルダ17およびヒータ70の熱膨張に伴う変形部204と接合部205の変化について説明する。まず、ヒータ70が発熱する際、ヒータ70の温度がヒータホルダ17の温度より先に上昇する。すなわちヒータ70の発熱初期の段階においては、搬送基準位置X0を中心とするヒータ70の熱膨張が支配的となる。この結果、変形部204は膨張方向へほとんど移動しないが、端子200の接合部205が、
図1Aの矢印(図中「熱膨張方向」)方向に移動する。このため、変形部204がヒータ70の長手方向に縮んだような状態になる。ヒータ70がさらに発熱を続けると、ヒータホルダ17も温度が上昇
して搬送基準位置X0を中心として熱膨張する。ヒータホルダ17の温度次第では、熱膨張によるヒータホルダ17の変位がヒータ70の変位より大きくなる。このため、熱膨張によるヒータホルダ17の変位が熱膨張によるヒータ70の変位より大きくなると、ヒータホルダ17の位置決めボス21も矢印方向に変位する。この結果、変形部204が、ヒータ70の長手方向において伸びたような状態になる。このようにして、端子200の変形部204は、ヒータホルダ17とヒータ70の熱膨張の相対変位差を吸収する。
【0040】
端子200の接合部205は、中間部材100と面同士で電気的に接合されている。また、中間部材100は、端子200の接合部205と接合されている面とは反対側の面でヒータ70の電極76eと面同士で電気的に接合されている。端子200と中間部材100は、ヒータ70の発熱体74a、74bと接触しないように配置される。これにより発熱体74a、74bの熱が端子200と中間部材100に奪われることを抑制できると共に、ヒータ70の長手方向における記録材の定着性のムラの発生を抑制できる。
【0041】
次に、
図1Bを参照しながら、ヒータ70の給電構成の各部の接合の手順について詳細に説明する。まず、端子200の接合部205と中間部材100とが、接合領域400において、レーザ接合によって電気的に接合される。本実施例では、接合領域400は1つの領域とする。次に、中間部材100と電極76eとが、接合領域401、402において、超音波接合によって電気的に接合される。本実施例では、接合領域401、402は、ヒータ70の長手方向に並ぶ2つの領域である。なお、接合領域400、401、402における接合点の数や接合点の形状は任意である。また、少なくとも2箇所設けられている接合領域401、402が、電極と中間部材との第1固定領域の一例である。また、接合領域400が、2箇所の第1固定領域の間に設けられている、端子と中間部材との第2固定領域の一例である。
【0042】
本実施例では、ヒータ70の長手方向において、接合領域400が接合領域401、402に挟まれるように設けられる。接合領域400、401、402の配置について、
図7Aを参照しながら説明する。
図7Aは、本実施例に係る給電構成の各部の熱膨張に伴う変形状態の例を示す。本実施例では、端子200の材料はバネ用のリン青銅であり、厚さは0.1~1mmである。また、シート状の中間部材100の材料は純銅であり、厚さは0.01~0.1mmである。リン青銅の線膨張係数はおよそ18.2×10
-6/℃であり、純銅の線膨張係数はおよそ17.7×10
-6/℃である。リン青銅の破断伸びの値はおよそ10~20%であり、純銅の破断伸びの値はおよそ35%以上である。セラミックのヒータ70のヤング率はおよそ280~400GPaであり、リン青銅の端子200のヤング率はおよそ98GPaであり、純銅で形成されている中間部材100のヤング率はおよそ118GPaである。ヒータ70の電極76eは、ヒータ70の厚みに対して薄くヤング率、線膨張係数の物性値はヒータ70と同等である。
【0043】
図7Aを参照しながら、ヒータ70の発熱に伴う各部の熱膨張による変形について説明する。ヒータ70が発熱すると、ヒータ70と端子200と中間部材100が、熱膨張することで
図7Aに示すように変形する。具体的には、電極76eと中間部材100とが接合されている接合領域401、402では、電極76eと中間部材100は、ヒータ70の変形に伴って変形する。これは、ヒータ70の厚さが中間部材100の厚さより大きく、ヒータ70のヤング率が中間部材100のヤング率より大きいため、中間部材100がヒータ70の変形に追従して変形するためである。ただし、接合領域401と接合領域402との間では、電極76eと中間部材100とは接合されていない。そして、中間部材100の線膨張係数はヒータ70の線膨張係数よりも大きい。このため、ヒータ70の長手方向(
図7Aの紙面左右方向)における熱膨張による中間部材100の伸張長さがヒータ70の伸張長さより長くなる結果、
図7Aに示すように接合領域400において中間部材100に湾曲が生じる。なお、中間部材100の材料には、湾曲に伴うひずみが生じて
も破断せずに伸張する材料が選択される。
【0044】
次に、端子200と中間部材100とが接合されている接合領域400では、端子200と中間部材100とが熱膨張により同程度の変形量で変形する。これは、端子200の線膨張係数と中間部材100の線膨張係数とが同等であるためである。端子200と中間部材100とがこのように変形することで、接合領域400、401、402の各領域に生じる熱膨張による応力を小さくすることができる。これは、接合領域400、401、402の各領域で生じる応力が、互いに増長し合うことなく独立した応力であるためである。特に、セラミックのヒータ70は、いわゆる脆性材料であるため、接合領域401、402に生じる応力は小さくすることが望ましい。
【0045】
次に、接合領域400、401、402を
図7Aに示すように構成することで得られる効果について、
図7B、
図7Cの例を参照しながら説明する。
図7Bに示す例では、電極76eと中間部材100との接合が1つの接合領域403に集約されている。また、端子200と中間部材100との接合領域404が、中間部材100を挟んで接合領域403に対向する位置に設けられている。
【0046】
図7Bに示す例では、ヒータの長手方向において、接合領域403、404が中間部材100の略全長にわたって設けられている。このため、
図7Aの場合に比べると、ヒータ70が熱膨張によって変形したときに、中間部材100のみならず端子200も、ヒータ70の熱膨張による変形に追従しやすくなる。したがって、ヒータ70の熱膨張による変形によって生じる接合領域403に対する応力には、端子200と中間部材100とが接合される接合領域404で生じる応力も影響する。この結果、電極76eと中間部材100とが接合される接合領域403に生じる応力は、
図7Aの例の接合領域401、402に生じる応力に比べると大きくなる。
【0047】
次に、
図7Cに示す例では、端子200と中間部材100との間に2つの接合領域406、407が設けられる。また、電極76eと中間部材100とが接合される1つの接合領域405が、ヒータ70の長手方向において接合領域406と接合領域407との間に設けられる。
【0048】
図7Cに示す例では、ヒータ70が熱膨張によって変形すると、電極76eと中間部材100とが接合される接合領域405がヒータ70の変形に追従する。すなわち、接合領域405における熱膨張による中間部材100の変形は、中間部材100の材料の特性に基づく熱膨張による変形よりも、ヒータ70の熱膨張による変形に追従する変形がより支配的になる。この結果、ヒータ70の長手方向における中間部材100の熱膨張による変形量は、中間部材100自体が熱膨張によって変形した場合の変形量に比べて小さくなる。したがって、中間部材100の熱膨張による変形量と端子200の熱膨張による変形量の差は、
図7Aの場合に比べて大きくなると言える。この変形差が大きくなると、
図7Cに示すように、接合領域406、407において、中間部材100の変形量よりも端子200の変形量が大きくなる結果、端子200がヒータ70から離れる方向に湾曲する。このようなが生じると、接合領域406、407に対して応力が生じるだけでなく、中間部材100が端子200に引っ張られる状態になるため、接合領域405に生じる応力が増大する。すなわち、接合領域405に生じる応力は、電極76eと中間部材100との相対的な熱膨張による変形量の差に起因する応力だけでなく、端子200と中間部材100との相対的な熱膨張による変形量の差に起因する応力の影響も受ける。
【0049】
図7Aに示す例によれば、ヒータ70の電極76a~76eに適用される給電構成において、ヒータ70の熱膨張による影響を小さくする中間部材100が、端子200と電極76eとの間に設けられる。これによって、画像形成装置1の稼働時に、当該給電構成に
おいて繰り返し生じる熱応力を小さくして、給電構成の信頼性を向上させることが可能となる。したがって、電極76eと中間部材100と端子200とのそれぞれの間に設けられる接合領域は、
図7Aに示すように構成するのが、
図7B、
図7Cに示す構成に比べてより好適であるといえる。
【0050】
本実施例においては、中間部材100の材料に純銅が用いられているが、ヒータ70の熱膨張による変形量の影響を吸収する導電体であれば、中間部材100の材料には他の材料が用いられてよい。したがって、ヒータ70のヤング率より小さいヤング率を有し、ヒータ70の破断伸びの値より大きい破断伸びの値を有する導電体であれば、種々の材料を中間部材100に用いることができる。また、本実施例では端子200と束線との接続部分は加締め部201によって加締められているため、束線を構成するリード線が加締め部201から外れないように端子200の厚さが設定されることが望ましい。また、加締め部201における端子200と束線との接続強度、給電構成の組立性、ヒータホルダ17とヒータ70の熱膨張の相対変位差の吸収を踏まえて端子200の厚さが設定されることが望ましい。また、端子200がある程度の厚さを有することで、端子200を含む給電構成の各部の組立における位置決め、固定も容易になることが期待できる。
【0051】
(5)製造方法
次に、
図8A、
図8B、
図8Cを参照しながら、本実施例の給電構成の製造方法について説明する。
図8A、
図8B、
図8Cに示す製造方法では、
図6Aに示す電極76eに対する給電構成を製造する場合について説明する。まず、
図8Aに示すように、ヒータ70の電極76eの上に中間部材100が発熱体74a、74bと接触しないように配置される。次に、中間部材100の上から超音波接合用のホーン304が押し当てられる。そして、図示しない振動子の振動による振動エネルギーがホーン304に伝達され、電極76eと中間部材100とが、互いの境界面に生じる摩擦熱によって接合される。次に、
図8Bに示すように、ヒータ70の上にヒータホルダ17が載置され、湿度硬化型のシリコン系接着剤によってヒータホルダ17とヒータ70とが接着固定される。そして、
図8Cに示すように、ヒータホルダ17の位置決めボス21に端子200の位置決め部202が挿通される。また、ヒータホルダ17の回転止めボス22に端子200の回転止め部203が嵌合される。さらに、プッシュナット303が位置決めボス21に嵌められ、端子200がヒータホルダ17に対して固定される。さらに
図8Cに示すように、レーザ接合装置305によって端子200の接合部205の上からレーザ光が照射され、端子200の接合部205と中間部材100とが接合される。
【0052】
上記の製造方法において、電極76eと中間部材100とを超音波接合によって接合することで、接合時におけるヒータ70への負荷をできるだけ小さくすることができる。また、端子200は、ヒータホルダ17の位置決めボス21と回転止めボス22とによって位置決めされる。このため、端子200の接合部205と中間部材100とが接合される前に、ヒータホルダ17がヒータ70に配置される。このとき、接合部205と中間部材100との接合に上記の超音波接合を用いると、ホーン304が端子200の接合部205に接触する可能性がある。この結果、ホーン304がヒータホルダ17や端子200と接触した状態でホーン304に振動エネルギーが伝達されると、振動エネルギーがヒータホルダ17や端子200に伝わり、ヒータホルダ17や端子200が破損する可能性がある。
【0053】
そこで本実施例では、接合部205と中間部材100との非接触の接合が可能なレーザ接合装置305を用いることで、限られたスペースに設けられる開口部82eにおいても、接合の対象ではない部材に負荷を与えずに上記の接合を実現することができる。ただし、レーザ接合では、レーザ光が接合部205を貫通する可能性がある。しかしながら、ヒータ70の電極76eに中間部材100が配置されている。これにより、仮にレーザ光が
接合部205を貫通しても、中間部材100がレーザ光からヒータ70を保護する保護部材として機能して、レーザ光によるヒータ70への負荷を抑えることが可能となる。
【0054】
また、本実施例では、接合領域400と接合領域401、402とは、中間部材100の平面部に対して垂直な方向に各領域を見たときに、互いに重ならないように配置されている。このような接合領域400、401、402の配置は、上記の製造方法においても利点がある。すなわち、電極76eと中間部材100とが接合されると、中間部材100の上面のうち接合領域401、402に対向する上面には接合による加工跡が残る。しかし、接合領域401、402と重ならない接合領域400には、中間部材100の上面には上記の加工跡は存在しない。このため、中間部材100の上面のうち接合領域400となる面は平滑な面であるといえる。したがって、中間部材100の平滑な面で中間部材100と端子200との接合を行うことができることから、上記の超音波接合において安定した接合を実現することができると言える。
【0055】
本実施例では、給電構成の製造方法において超音波接合とレーザ接合を用いたが、接合の種類これらに限定されることはない。接合の対象となる2部材の接合が確保できれば、固相接合、溶接、圧接、ろう付け、導電性接着剤などを用いた、各部材が平面同士で繋がる接合でもよい。特に、電極と中間部材の固定方法として、前述した種々の接合方法が好ましい。一方、中間部材と端子の固定方法は、上記の接合だけでなく、接合の代わりに、圧入、焼き嵌め、加締めなど、各部材が互いに入り組む結合が採用されてもよい。このように、電極と中間部材の固定方法は、固相接合、溶接、圧接、ろう付け、導電性接着剤、等の接合が好ましく、中間部材と端子の固定方法は、接合、又は圧入、焼き嵌め、加締め、等の結合、どちらでも構わない。
【0056】
また、本実施例では、中間部材100の平面部に対して垂直な方向に見て、接合領域400、401、402は互いに重ならないように配置されている。ただし、中間部材100の平面部に対して垂直な方向に見て、各領域がヒータ70の長手方向において互いにずれていれば、互いに重なる領域があっても、上記と同様の効果が期待できる。
【0057】
なお、中間部材100、端子200に対する安定した接合を実現するため、各部材にめっき処理を行ってもよい。接合の対象となる部材にめっき処理を施すことで、部材表面の酸化を抑制することが期待できる。なお、めっき処理に用いられるめっきの材料としては、錫、ニッケル、金など、酸化に耐性がある材料が挙げられる。
【0058】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。上記の実施例1において、各接合領域における各部材の熱膨張による変形に伴って生じる応力を小さくするには、各接合領域に生じる応力の影響が他の接合領域に及ばないようにすることが考えられる。そこで、
図9を参照しながら実施例2における給電構成について説明する。なお、以下の説明において、実施例1と同様の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0059】
図9は、本実施例における給電構成のヒータ70の長手方向における断面を示し、
図7A、
図7B、
図7Cに対応する図である。本実施例における給電構成は、電極76eと中間部材100とを接合する接合領域408と、端子200と中間部材100とを接合する接合領域409を有する。実施例1の接合領域401、402とは異なり、電極76eと中間部材100との間に1つの接合領域408が設けられる。また、電極76eと中間部材100とが接合される接合領域408と、端子200と中間部材100とが接合される接合領域409とは、中間部材100の平面部に対して垂直な方向に各領域を見たときに、互いに重ならないように配置されている。これにより、接合領域408、409の熱膨張による変形の自由度は、接合領域408、409を互いに重なるように配置した場合に
比べて大きくなる。この結果、接合領域408、409の一方の領域で生じる応力が他方の領域で生じる応力に影響を及ぼして各応力が増長される現象を抑制することができる。
【0060】
なお、ヒータホルダ17の熱膨張による変形量とヒータ70の熱膨張による変形量の差に起因して、中間部材100が湾曲する可能性がある。これは、ヒータホルダ17とヒータ70との間の熱膨張による変形量の相対的な差による影響が、端子200の変形部204によって上記のように吸収される前に中間部材100に及ぶためである。そこで、本実施例では、中間部材100が、中間部材100の平面部に対して垂直な方向に各領域を見たときに互いに重ならない2つの接合領域408、409で、電極76eと端子200とそれぞれ接合される。これにより、上記の中間部材100が湾曲する可能性が低くなる効果が期待できる。また、本実施例に係る給電構成において、ヒータホルダ17の材料とヒータ70の材料として、それぞれ線膨張係数が小さく、かつ線膨張係数が互いに近似している材料を選定するのがよい。
【0061】
なお、本実施例における給電構成は、
図9に示す給電構成に限られない。各接合領域に生じる熱膨張による応力が他の接合領域に生じる応力に及ぼす影響を軽減できる構成であればよい。また、本実施例によれば、ヒータ70の長手方向において各接合領域を中間部材100の異なる位置に設けることで、ヒータ70の長手方向におけるスペースを有効活用できると言える。
【0062】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。なお、以下の説明において、実施例1と同様の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例3におけるヒータ70の構成は、実施例1と同様であり
図5に示す構成である。
【0063】
図10に本実施例における給電構成のヒータ70の長手方向における断面を示す。
図10は、
図6の電極76eの給電構成の断面である。なお、電極76a~76dの給電構成も、電極76eの給電構成と同様の構成である。
図10に示すように、本実施例では、ヒータ70の電極76eにチタン製の中間部材101が配置され、電極76eと中間部材101とが、接合領域410において互いに接合されている。さらに、中間部材101に、下からニッケル製の中間部材102、銅製の中間部材100、リン青銅製の端子200の順番に重なるように配置および接合されている。中間部材101と中間部材102とが接合される接合領域は、接合領域411である。中間部材102と中間部材100とが接合される接合領域は、接合領域412である。中間部材100と端子200とが接合される接合領域は、接合領域413である。
【0064】
また、ヒータ70の材料であるセラミックの線膨張係数はおよそ0.1~10×10-6/℃である。また、中間部材の材料について、チタンの線膨張係数はおよそ8.4×10-6/℃、ニッケルの線膨張係数はおよそ13.4×10-6/℃、純銅の線膨張係数はおよそ17.7×10-6/℃、リン青銅の線膨張係数はおよそ18.2×10-6/℃である。
【0065】
なお、各接合領域における部材の接合方法は実施例1と同様であるため詳細な説明は省略する。また、本実施例では、中間部材を挟んで配置される2つの接合領域は、中間部材100の平面部に対して垂直な方向に各領域を見たときに、互いに重ならないように配置される。すなわち、接合領域410と接合領域411、接合領域411と接合領域412、接合領域412と接合領域413は、中間部材100の平面部に対して垂直な方向に各領域を見たときに、それぞれ互いに重ならないように配置される。
【0066】
また、電極76eと接合される中間部材101と端子200との間に配置される中間部
材100、101の線膨張係数が、中間部材100の線膨張係数と端子200の線膨張係数により定まる範囲内の線膨張係数となるように、各中間部材の材料が選択される。さらに、中間部材101から端子200に向かって線膨張係数が段階的に変化するように中間部材100、102の材料が選択される。具体的には、中間部材100の材料には、中間部材100の線膨張係数が、中間部材101の線膨張係数と端子200の線膨張係数の間であって、端子200の線膨張係数よりも中間部材101の線膨張係数に近い線膨張係数となる材料が選択される。また、中間部材102の材料には、中間部材102の線膨張係数が、中間部材101の線膨張係数と端子200の線膨張係数の間であって、中間部材101の線膨張係数よりも端子200の線膨張係数に近い線膨張係数となる材料が選択される。これにより、各接合領域の隣り合う部材同士の熱膨張による変形量の相対的な差がより小さくなり、応力がより低減されることが期待できる。
【0067】
さらに、中間部材101の線膨張係数は、ヒータ70の電極76eの線膨張係数を基に設定されてよい。中間部材101はヒータ70と端子200との間に設けられるが、例えばヒータ70がセラミック製である場合は、中間部材101の線膨張係数はヒータ70の線膨張係数と端子200の線膨張係数とで定まる範囲内にない線膨張係数であってもよい。セラミックはいわゆる脆性材料であり、特に引張応力に弱い。そこで、中間部材101の線膨張係数がセラミックの線膨張係数よりも小さくなるように、中間部材101の材料を選定することができる。これにより、接合領域410における各部材の熱膨張によって生じる応力の方向が、ヒータ70の膨張を縮める方向となり、ヒータ70が破損する可能性が低くなることが期待できる。
【0068】
また、電極76eと端子200との間に複数の中間部材が積層される給電構成とすることで、線膨張係数が異なる種々の材料から各中間部材の材料を選択することができる。これにより、端子200の材料の選択の幅も広がり、ヒータ70全体として製造のコストを抑えられることも期待できる。なお、本実施例では、中間部材に関して特に積層の数や材料を限定することなく、1つの中間部材の線膨張係数が、電極と対向する中間部材の線膨張係数と端子200の線膨張係数との間の範囲内にあり、かつ段階的になっていればよい。
【0069】
また、本実施例における給電構成の変形例として、
図11に示すような構成も採用することができる。
図10に示す構成と異なり、電極76eと中間部材101との間に2つの接合領域510、514が設けられる。また、中間部材101と中間部材102とが接合される接合領域511、中間部材102と中間部材100とが接合される接合領域512、中間部材100と端子200とが接合される接合領域513が設けられる。ここで、接合領域511、512、513は、それぞれ上記の接合領域411、412、413に対応する。本変形例でも、中間部材を挟んで配置される2つの接合領域は、中間部材100の平面部に対して垂直な方向に各領域を見たときに、互いに重ならないように配置される。このため、本変形例によっても、本実施例において説明した上記の効果が得られるといえる。
【0070】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4について説明する。なお、以下の説明において、実施例1と同様の構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。実施例4におけるヒータ70の構成は、実施例1と同様であり
図5に示す構成である。
【0071】
図12Aおよび
図12Bに、本実施例における電極76f、76gの給電構成を示す。なお、電極76h、76iの給電構成も、電極76f、76gの給電構成と同様の構成であるため、ここでは電極76f、76gの給電構成について説明し、電極76h、76iの給電構成の説明は省略する。まず、
図12Aに示すように、端子200がヒータホルダ
17に対して固定される。具体的には、位置決め部202(
図1B参照)には、ヒータホルダ17に備えられている位置決めボス21が挿通される穴が設けられている。また、回転止め部203には、ヒータホルダ17に備えられている回転止めボス22に嵌合する凹みが設けられている。位置決め部202が位置決めボス21に挿通され、回転止め部203が回転止めボス22に嵌合された状態で、プッシュナット303が位置決めボス21に嵌められることで、端子200がヒータホルダ17に対して固定される。
【0072】
また、端子200の加締め部201には不図示の束線が加締められており、束線は記録材Pの搬送方向Fに延伸している。次に、
図12Bを参照しながら、本実施例における給電構成について説明する。電極76f、76gの上に中間部材100が重ねられ、電極76f、76gと中間部材100とは超音波接合によって電気的に接合される。電極76fと中間部材100とは、接合領域415、416において接合され、電極76gと中間部材100とは、接合領域417、418において接合される。
【0073】
実施例1とは異なり、接合領域415と接合領域416、接合領域417と接合領域418は、それぞれ記録材Pの搬送方向Fに並ぶように配置されている。電極76f、76gの給電構成が設けられる領域は、ヒータ70側に発熱体74a、74bがない部分に対応する領域である。したがって、電極76f、76gの長手方向を記録材Pの搬送方向Fに合わせた状態で電極76f、76gを配置できる空間を確保できる。一方、実施例1に倣って、電極76f、76gの長手方向をヒータ70の長手方向に合わせると、電極76f、76gの配置は電極76a~76eの配置と同様な配置となる。すなわち、
図12Aおよび
図12Bに示す例に比べて、電極76f、76gの配置のためにヒータ70の長手方向により広い空間を確保する必要があるため、画像形成装置の大型化に繋がる可能性がある。
【0074】
本実施例の給電構成を採用することで、コネクタ300を省略することができる。コネクタ300では、端子302によってコネクタ300に対する加圧力を発生させている。このため、高温環境下でも端子302の加圧力によるコネクタ300と電極76f~76iとの導通性を保証するため、端子302にはチタン銅に金めっきを施した部品が使用されることがある。したがって、そのような部品を端子302に用いることでヒータ70の製造コストが高くなる可能性がある。本実施例では、コネクタ300の省略によって、ヒータ70の製造コストを抑えることが期待できる。また、本実施例では、電極76f~76iを上記の通り配置することで、ヒータ70を従来のヒータに比べて小型化できる。
【0075】
電極76f~76iが設けられる領域はヒータ70の非発熱部分に対応するが、ヒータの小型化により、これらの領域がヒータ70の発熱による影響を受けやすくなる可能性はある。しかし、本実施例では上記のように設けられた接合領域によって各部材の熱膨張によって生じる応力をできるだけ小さくすることができる。これにより、ヒータ70が従来のヒータに比べて小型化した場合でも、給電構成の信頼性が損なわれる懸念はないと言える。
【符号の説明】
【0076】
13・・・定着装置(像加熱装置)、70・・・ヒータ、71・・・基板、74a、74b・・・発熱体、75a、75b、75c・・・導電体、76a~76i・・・電極、100、101、102・・・中間部材、200・・・端子、400、401、402・・・接合領域、P・・・記録材