(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20241202BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20241202BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20241202BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20241202BHJP
H01L 29/423 20060101ALI20241202BHJP
H01L 29/49 20060101ALI20241202BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241202BHJP
H05B 33/14 20060101ALI20241202BHJP
H10K 59/12 20230101ALI20241202BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20241202BHJP
G02F 1/1368 20060101ALN20241202BHJP
【FI】
H01L29/78 616V
H01L29/78 616U
H01L29/78 617K
H01L29/78 617L
H01L29/78 617M
H01L29/78 617S
H01L29/78 618B
H01L21/28 301B
H01L21/28 301R
H01L29/50 M
H01L29/58 G
G09F9/30 336
H05B33/14 Z
H10K59/12
H05B33/02
G02F1/1368
(21)【出願番号】P 2023093956
(22)【出願日】2023-06-07
(62)【分割の表示】P 2021099497の分割
【原出願日】2016-11-10
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】P 2015227399
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】及川 欣聡
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(72)【発明者】
【氏名】神長 正美
(72)【発明者】
【氏名】中澤 安孝
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187701(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054558(WO,A1)
【文献】特開2015-119175(JP,A)
【文献】特開2015-130488(JP,A)
【文献】特開2015-026830(JP,A)
【文献】特開2015-079949(JP,A)
【文献】特開2013-153093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/786
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 29/417
H01L 29/423
G09F 9/30
H05B 33/14
H10K 59/12
H05B 33/02
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極として機能する領域を有する第1の導電膜と、
チャネル形成領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜の上方に位置する領域を有する第1の絶縁膜と、
ソース電極またはドレイン電極として機能する領域を有する第2の導電膜と、
前記第1の絶縁膜の上方に位置する領域と、前記第2の導電膜の上方に位置する領域と、を有する第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜と接する領域を有する第3の導電膜と、を有し、
前記酸化物半導体膜と前記第3の導電膜とが重なる領域において、前記酸化物半導体膜の上面は、前記第1の絶縁膜の下面と接する領域を有し、
前記酸化物半導体膜と前記第1の絶縁膜とが重なる領域において、前記第1の絶縁膜の上面は、前記第2の絶縁膜の下面と接する領域を有し、
前記第2の導電膜の下面は、前記第1の絶縁膜の上面と接する領域を有し、
前記第2の導電膜の下面は、前記酸化物半導体膜の上面と接する領域を有し、
前記第2の導電膜は、第1の金属膜と、前記第1の金属膜の上面に接する領域を有する第2の金属膜と、を有し、
前記第3の導電膜は、前記第1の絶縁膜と接する領域と、前記第2の絶縁膜と接する領域と、を有する第4の導電膜を介して、前記第1の導電膜と常に導通し、
前記第3の導電膜と前記第4の導電膜とが接する領域は、前記第4の導電膜と前記第1の導電膜とが接する領域と重なり、
前記第1の金属膜は、チタンと、モリブデンと、を有し、
前記第2の金属膜は、銅を有する半導体装置。
【請求項2】
ゲート電極として機能する領域を有する第1の導電膜と、
チャネル形成領域を有する酸化物半導体膜と、
前記酸化物半導体膜の上方に位置する領域を有する第1の絶縁膜と、
ソース電極またはドレイン電極として機能する領域を有する第2の導電膜と、
前記第1の絶縁膜の上方に位置する領域と、前記第2の導電膜の上方に位置する領域と、を有する第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜と接する領域を有する第3の導電膜と、を有し、
前記酸化物半導体膜と前記第3の導電膜とが重なる領域において、前記酸化物半導体膜の上面は、前記第1の絶縁膜の下面と接する領域を有し、
前記酸化物半導体膜と前記第1の絶縁膜とが重なる領域において、前記第1の絶縁膜の上面は、前記第2の絶縁膜の下面と接する領域を有し、
前記第2の導電膜の下面は、前記第1の絶縁膜の上面と接する領域を有し、
前記第2の導電膜の下面は、前記酸化物半導体膜の上面と接する領域を有し、
前記第1の絶縁膜は、シリコンと、酸素と、を有し、
前記第2の絶縁膜は、シリコンと、酸素と、を有し、
前記第2の導電膜は、第1の金属膜と、前記第1の金属膜の上面に接する領域を有する第2の金属膜と、を有し、
前記第3の導電膜は、前記第1の絶縁膜と接する領域と、前記第2の絶縁膜と接する領域と、を有する第4の導電膜を介して、前記第1の導電膜と常に導通し、
前記第3の導電膜と前記第4の導電膜とが接する領域は、前記第4の導電膜と前記第1の導電膜とが接する領域と重なり、
前記第1の金属膜は、チタンと、モリブデンと、を有し、
前記第2の金属膜は、銅を有する半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有する半導体装置及び該半導体装置を有する表示
装置に関する。または、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有する半導体装置の作製方
法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明
の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明の一態様
は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マ
ター)に関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置
、記憶装置、それらの駆動方法、またはそれらの製造方法に関する。
【0003】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶
装置は、半導体装置の一態様である。撮像装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、電
気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池等を含む)、及び電子機器は、
半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0004】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタ(電界効果トラ
ンジスタ(FET)、または薄膜トランジスタ(TFT)ともいう)を構成する技術が注
目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(表示装置)のような
電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体薄膜としてシリコ
ンを代表とする半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注
目されている。
【0005】
例えば、2つのゲート電極の間に酸化物半導体膜が設けられるデュアルゲート構造のト
ランジスタを用いることで、ゲートBTストレスによる寄生チャネルの形成を抑制した半
導体装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
酸化物半導体膜をチャネル領域に用いるトランジスタとしては、電界効果移動度(単に
移動度、またはμFEという場合がある)が高い方が好ましい。例えば、特許文献1に示
すように、2つのゲート電極の間に酸化物半導体膜が設けられるデュアルゲート構造のト
ランジスタを用いることで、トランジスタのオン電流及び電界効果移動度を高めることが
できる。
【0008】
また、デュアルゲート構造のトランジスタを用いる場合、一方のゲート電極と他方のゲ
ート電極との接続抵抗は、低い方が好ましい。当該接続抵抗が高い場合、トランジスタの
電気特性が安定しないといった問題がある。
【0009】
また、酸化物半導体膜をチャネル領域に用いるトランジスタとしては、酸化物半導体膜
中に形成される酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。例えば、
酸化物半導体膜中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、キャリア供給
源となる。酸化物半導体膜中にキャリア供給源が生成されると、酸化物半導体膜を有する
トランジスタの電気特性の変動、代表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。また、トラ
ンジスタごとに電気特性がばらつくという問題がある。したがって、酸化物半導体膜のチ
ャネル領域においては、酸素欠損が少ないほど好ましい。
【0010】
上記問題に鑑み、本発明の一態様は、酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、
電気特性の変動を抑制すると共に、信頼性を向上させることを課題の1つとする。または
、本発明の一態様は、2つのゲート電極を有するデュアルゲート構造のトランジスタにお
いて、一方のゲート電極と他方のゲート電極との接続抵抗を低減させ、安定した電気特性
を有する半導体装置を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一態様は、消
費電力が低減された半導体装置を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一
態様は、新規な半導体装置を提供することを課題の1つとする。または、本発明の一態様
は、新規な表示装置を提供することを課題の1つとする。
【0011】
なお、上記の課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。上記以外の課題は、明細
書等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽
出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジスタは、第1
のゲート電極と、第1のゲート電極上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上の酸化物半導体
膜と、酸化物半導体膜上のソース電極と、酸化物半導体膜上のドレイン電極と、酸化物半
導体膜、ソース電極、及びドレイン電極上の第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜上の第2のゲ
ート電極と、を有し、第1の絶縁膜は、第1の開口部を有し、第1の絶縁膜上には、第1
の開口部を介して第1のゲート電極と電気的に接続される接続電極が形成され、第2の絶
縁膜は、接続電極に達する第2の開口部を有し、第2のゲート電極は、酸化物導電膜と、
酸化物導電膜上の金属膜と、を有し、接続電極と第2のゲート電極とは、金属膜を用いて
電気的に接続される半導体装置である。
【0013】
また、本発明の他の一態様は、トランジスタを有する半導体装置であって、トランジス
タは、第1のゲート電極と、第1のゲート電極上の第1の絶縁膜と、第1の絶縁膜上の酸
化物半導体膜と、酸化物半導体膜上のソース電極と、酸化物半導体膜上のドレイン電極と
、酸化物半導体膜、ソース電極、及びドレイン電極上の第2の絶縁膜と、第2の絶縁膜上
の第2のゲート電極と、を有し、第1の絶縁膜は、第1の開口部を有し、第1の絶縁膜上
には、第1の開口部を介して第1のゲート電極と電気的に接続される接続電極が形成され
、第2の絶縁膜は、接続電極に達する第2の開口部と、ソース電極及びドレイン電極のい
ずれか一方に達する第3の開口部と、を有し、第2のゲート電極は、酸化物導電膜と、酸
化物導電膜上の金属膜と、を有し、第3の開口部には、金属膜と同じ組成の導電膜が形成
され、接続電極と第2のゲート電極とは、金属膜を用いて電気的に接続される半導体装置
である。
【0014】
上記態様において、ソース電極及びドレイン電極は、それぞれ、第1の金属膜と、第1
の金属膜上に接する第2の金属膜と、第2の金属膜上に接する第3の金属膜と、を有し、
第2の金属膜は、銅を含み、第1の金属膜及び第3の金属膜は、それぞれ、銅の拡散を抑
制する材料を含み、第1の金属膜の端部は、第2の金属膜の端部よりも外側に位置する領
域を有し、第3の金属膜は、第2の金属膜の上面及び側面を覆い、且つ第1の金属膜と接
する領域を有すると好ましい。
【0015】
また、上記態様において、金属膜、導電膜、第1の金属膜、及び第3の金属膜は、それ
ぞれ独立にチタン、タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか
一つまたは複数を有すると好ましい。
【0016】
また、上記態様において、酸化物導電膜は、酸化物半導体膜が有する金属元素を少なく
とも一つ有すると好ましい。
【0017】
また、上記態様において、酸化物半導体膜は、Inと、M(MはAl、Ga、Y、また
はSn)と、Znと、を有すると好ましい。また、上記態様において、酸化物半導体膜は
、結晶部を有し、結晶部は、c軸配向性を有すると好ましい。
【0018】
また、本発明の他の一態様は、上記各態様にいずれか一つに記載の半導体装置と、表示
素子と、を有する表示装置である。また、本発明の他の一態様は、該表示装置とタッチセ
ンサとを有する表示モジュールである。また、本発明の他の一態様は、上記態様にいずれ
か一つに記載の半導体装置、上記表示装置、または上記表示モジュールと、操作キーまた
はバッテリとを有する電子機器である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様により、酸化物半導体膜を有するトランジスタにおいて、電気特性の変
動を抑制すると共に、信頼性を向上させることができる。または、本発明の一態様により
、2つのゲート電極を有するデュアルゲート構造のトランジスタにおいて、一方のゲート
電極と他方のゲート電極との接続抵抗を低減させ、安定した電気特性を有する半導体装置
を提供することができる。または、本発明の一態様により、消費電力が低減された半導体
装置を提供することができる。または、本発明の一態様により、新規な半導体装置を提供
することができる。または、本発明の一態様により、新規な表示装置を提供することがで
きる。
【0020】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】半導体装置の一態様を示す上面図及び断面図。
【
図10】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図11】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図12】半導体装置の作製工程の一例を示す断面図。
【
図13】酸化物半導体の原子数比の範囲を説明する図。
【
図15】酸化物半導体の積層構造におけるバンド図。
【
図16】CAAC-OS及び単結晶酸化物半導体のXRDによる構造解析を説明する図、ならびにCAAC-OSの制限視野電子回折パターンを示す図。
【
図17】CAAC-OSの断面TEM像、ならびに平面TEM像及びその画像解析像。
【
図18】nc-OSの電子回折パターンを示す図、及びnc-OSの断面TEM像。
【
図20】In-Ga-Zn酸化物の電子照射による結晶部の変化を示す図。
【
図28】表示装置を説明するブロック図及び回路図。
【
図29】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
【
図30】本発明の一態様を説明するためのグラフおよび回路図。
【
図31】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
【
図32】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
【
図33】本発明の一態様を説明するためのブロック図、回路図および波形図。
【
図34】本発明の一態様を説明するための回路図およびタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの
異なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形
態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明
は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0023】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている
場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を
模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。
【0024】
また、本明細書にて用いる「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の
混同を避けるために付したものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0025】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位
置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関
係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明し
た語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0026】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含
む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイ
ン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間
にチャネル領域を有しており、ドレインとチャネル領域とソースとを介して電流を流すこ
とができるものである。なお、本明細書等において、チャネル領域とは、電流が主として
流れる領域をいう。
【0027】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路
動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明
細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとす
る。
【0028】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するも
の」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するも
の」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない
。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジス
タなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有
する素子などが含まれる。
【0029】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角
度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。ま
た、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態を
いう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0030】
また、本明細書等において、「膜」という用語と、「層」という用語とは、互いに入れ
替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変
更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」
という用語に変更することが可能な場合がある。
【0031】
また、本明細書等において、特に断りがない場合、オフ電流とは、トランジスタがオフ
状態(非導通状態、遮断状態、ともいう)にあるときのドレイン電流をいう。オフ状態と
は、特に断りがない場合、nチャネル型トランジスタでは、ゲートとソースの間の電圧V
gsがしきい値電圧Vthよりも低い状態、pチャネル型トランジスタでは、ゲートとソ
ースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vthよりも高い状態をいう。例えば、nチャネル
型のトランジスタのオフ電流とは、ゲートとソースの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vt
hよりも低いときのドレイン電流を言う場合がある。
【0032】
トランジスタのオフ電流は、Vgsに依存する場合がある。従って、トランジスタのオ
フ電流がI以下である、とは、トランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在
することを言う場合がある。トランジスタのオフ電流は、所定のVgsにおけるオフ状態
、所定の範囲内のVgsにおけるオフ状態、または、十分に低減されたオフ電流が得られ
るVgsにおけるオフ状態、等におけるオフ電流を指す場合がある。
【0033】
一例として、しきい値電圧Vthが0.5Vであり、Vgsが0.5Vにおけるドレイ
ン電流が1×10-9Aであり、Vgsが0.1Vにおけるドレイン電流が1×10-1
3Aであり、Vgsが-0.5Vにおけるドレイン電流が1×10-19Aであり、Vg
sが-0.8Vにおけるドレイン電流が1×10-22Aであるようなnチャネル型トラ
ンジスタを想定する。当該トランジスタのドレイン電流は、Vgsが-0.5Vにおいて
、または、Vgsが-0.5V乃至-0.8Vの範囲において、1×10-19A以下で
あるから、当該トランジスタのオフ電流は1×10-19A以下である、と言う場合があ
る。当該トランジスタのドレイン電流が1×10-22A以下となるVgsが存在するた
め、当該トランジスタのオフ電流は1×10-22A以下である、と言う場合がある。
【0034】
また、本明細書等では、チャネル幅Wを有するトランジスタのオフ電流を、チャネル幅
Wあたりを流れる電流値で表す場合がある。また、所定のチャネル幅(例えば1μm)あ
たりを流れる電流値で表す場合がある。後者の場合、オフ電流の単位は、電流/長さの次
元を持つ単位(例えば、A/μm)で表される場合がある。
【0035】
トランジスタのオフ電流は、温度に依存する場合がある。本明細書において、オフ電流
は、特に記載がない場合、室温、60℃、85℃、95℃、または125℃におけるオフ
電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等の信頼性が保
証される温度、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例
えば、5℃乃至35℃のいずれか一の温度)におけるオフ電流、を表す場合がある。トラ
ンジスタのオフ電流がI以下である、とは、室温、60℃、85℃、95℃、125℃、
当該トランジスタが含まれる半導体装置の信頼性が保証される温度、または、当該トラン
ジスタが含まれる半導体装置等が使用される温度(例えば、5℃乃至35℃のいずれか一
の温度)、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるVgsの値が存在することを
指す場合がある。
【0036】
トランジスタのオフ電流は、ドレインとソースの間の電圧Vdsに依存する場合がある
。本明細書において、オフ電流は、特に記載がない場合、Vdsが0.1V、0.8V、
1V、1.2V、1.8V、2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、また
は20Vにおけるオフ電流を表す場合がある。または、当該トランジスタが含まれる半導
体装置等の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導体装置
等において使用されるVdsにおけるオフ電流、を表す場合がある。トランジスタのオフ
電流がI以下である、とは、Vdsが0.1V、0.8V、1V、1.2V、1.8V、
2.5V、3V、3.3V、10V、12V、16V、20V、当該トランジスタが含ま
れる半導体装置の信頼性が保証されるVds、または、当該トランジスタが含まれる半導
体装置等において使用されるVds、におけるトランジスタのオフ電流がI以下となるV
gsの値が存在することを指す場合がある。
【0037】
上記オフ電流の説明において、ドレインをソースと読み替えてもよい。つまり、オフ電
流は、トランジスタがオフ状態にあるときのソースを流れる電流を言う場合もある。
【0038】
また、本明細書等では、オフ電流と同じ意味で、リーク電流と記載する場合がある。ま
た、本明細書等において、オフ電流とは、例えば、トランジスタがオフ状態にあるときに
、ソースとドレインとの間に流れる電流を指す場合がある。
【0039】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が
十分に低い場合は、「絶縁体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「
絶縁体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書
等に記載の「半導体」は、「絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本
明細書等に記載の「絶縁体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。また
は、本明細書等に記載の「絶縁体」を「半絶縁体」に言い換えることが可能な場合がある
。
【0040】
また、本明細書等において、「半導体」と表記した場合であっても、例えば、導電性が
十分に高い場合は、「導電体」としての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「
導電体」とは境界が曖昧であり、厳密に区別できない場合がある。したがって、本明細書
等に記載の「半導体」は、「導電体」に言い換えることが可能な場合がある。同様に、本
明細書等に記載の「導電体」は、「半導体」に言い換えることが可能な場合がある。
【0041】
また、本明細書等において、半導体の不純物とは、半導体膜を構成する主成分以外をい
う。例えば、濃度が0.1原子%未満の元素は不純物である。不純物が含まれることによ
り、半導体にDOS(Density of States)が形成されることや、キャ
リア移動度が低下することや、結晶性が低下することなどが起こる場合がある。半導体が
酸化物半導体を有する場合、半導体の特性を変化させる不純物としては、例えば、第1族
元素、第2族元素、第14族元素、第15族元素、主成分以外の遷移金属などがあり、特
に、水素(水にも含まれる)、リチウム、ナトリウム、シリコン、ホウ素、リン、炭素、
窒素などがある。酸化物半導体の場合、例えば水素などの不純物の混入によって酸素欠損
を形成する場合がある。また、半導体がシリコンを有する場合、半導体の特性を変化させ
る不純物としては、例えば、酸素、水素を除く第1族元素、第2族元素、第13族元素、
第15族元素などがある。
【0042】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置及び半導体装置の作製方法について、
図1乃至
図12を参照して説明する。
【0043】
<1-1.半導体装置の構成例1>
図1(A)は、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の上面図であり
、
図1(B)は、
図1(A)に示す一点鎖線X1-X2間における切断面の断面図に相当
し、
図1(C)は、
図1(A)に示す一点鎖線Y1-Y2間における切断面の断面図に相
当する。なお、
図1(A)において、煩雑になることを避けるため、トランジスタ100
の構成要素の一部(ゲート絶縁膜として機能する絶縁膜等)を省略して図示している。ま
た、一点鎖線X1-X2方向をチャネル長方向、一点鎖線Y1-Y2方向をチャネル幅方
向と呼称する場合がある。なお、トランジスタの上面図においては、以降の図面において
も
図1(A)と同様に、構成要素の一部を省略して図示する場合がある。
【0044】
トランジスタ100は、基板102上の導電膜104と、基板102及び導電膜104
上の絶縁膜106と、絶縁膜106上の絶縁膜107と、絶縁膜107上の酸化物半導体
膜108と、酸化物半導体膜108上の導電膜112aと、酸化物半導体膜108上の導
電膜112bと、酸化物半導体膜108、導電膜112a、及び導電膜112b上の絶縁
膜114と、絶縁膜114上の絶縁膜116と、絶縁膜116上の導電膜120aと、絶
縁膜116上の導電膜120bと、を有する。
【0045】
また、絶縁膜106及び絶縁膜107は、開口部151を有し、絶縁膜106及び絶縁
膜107上には、開口部151を介して導電膜104と電気的に接続される導電膜112
cが形成される。また、絶縁膜114及び絶縁膜116は、導電膜112bに達する開口
部152aと、導電膜112cに達する開口部152bとを有する。
【0046】
また、酸化物半導体膜108は、導電膜104側の酸化物半導体膜108bと、酸化物
半導体膜108b上の酸化物半導体膜108cと、を有する。また、酸化物半導体膜10
8b及び酸化物半導体膜108cは、それぞれ、Inと、M(MはAl、Ga、Y、また
はSn)と、Znと、を有する。
【0047】
例えば、酸化物半導体膜108bとしては、Inの原子数比がMの原子数比より多い領
域を有すると好ましい。また、酸化物半導体膜108cとしては、酸化物半導体膜108
bよりもInの原子数が少ない領域を有すると好ましい。
【0048】
酸化物半導体膜108bが、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有すること
で、トランジスタ100の電界効果移動度を高くすることができる。具体的には、トラン
ジスタ100の電界効果移動度が10cm2/Vsを超える、さらに好ましくはトランジ
スタ100の電界効果移動度が30cm2/Vsを超えることが可能となる。
【0049】
例えば、上記の電界効果移動度が高いトランジスタを、ゲート信号を生成するゲートド
ライバ(とくに、ゲートドライバが有するシフトレジスタの出力端子に接続されるデマル
チプレクサ)に用いることで、額縁幅の狭い(狭額縁ともいう)半導体装置または表示装
置を提供することができる。
【0050】
一方で、酸化物半導体膜108bが、Inの原子数比がMの原子数比より多い領域を有
する場合、光照射時にトランジスタ100の電気特性が変動しやすくなる。しかしながら
、本発明の一態様の半導体装置においては、酸化物半導体膜108b上に酸化物半導体膜
108cが形成されている。酸化物半導体膜108cは、酸化物半導体膜108bよりも
Inの原子数比が少ない領域を有するため、酸化物半導体膜108bよりもEgが大きく
なる。したがって、酸化物半導体膜108bと、酸化物半導体膜108cとの積層構造で
ある酸化物半導体膜108は、光負バイアスストレス試験による耐性を高めることが可能
となる。
【0051】
また、酸化物半導体膜108中、特に酸化物半導体膜108bのチャネル領域に混入す
る水素または水分などの不純物は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。し
たがって、酸化物半導体膜108b中のチャネル領域においては、水素または水分などの
不純物が少ないほど好ましい。また、酸化物半導体膜108b中のチャネル領域に形成さ
れる酸素欠損は、トランジスタ特性に影響を与えるため問題となる。例えば、酸化物半導
体膜108bのチャネル領域中に酸素欠損が形成されると、該酸素欠損に水素が結合し、
キャリア供給源となる。酸化物半導体膜108bのチャネル領域中にキャリア供給源が生
成されると、酸化物半導体膜108bを有するトランジスタ100の電気特性の変動、代
表的にはしきい値電圧のシフトが生じる。したがって、酸化物半導体膜108bのチャネ
ル領域においては、酸素欠損が少ないほど好ましい。
【0052】
そこで、本発明の一態様においては、酸化物半導体膜108に接する絶縁膜、具体的に
は、酸化物半導体膜108の上方に形成される絶縁膜114、116が過剰酸素を含有す
る構成である。絶縁膜114、116から酸化物半導体膜108へ酸素または過剰酸素を
移動させることで、酸化物半導体膜中の酸素欠損を低減することが可能となる。
【0053】
また、本発明の一態様においては、絶縁膜114、116に過剰酸素を含有させるため
に、導電膜120a、120bを積層構造とする。具体的には、導電膜120aは、酸化
物導電膜120a_1と、酸化物導電膜120a_1上の金属膜120a_2と、を有し
、導電膜120bは、酸化物導電膜120b_1と、酸化物導電膜120b_1上の金属
膜120b_2と、を有する。
【0054】
上記構成とすることで、例えば、酸化物導電膜120a_1、及び酸化物導電膜120
b_1を形成する工程において、スパッタリング法を用い、酸素ガスを含む雰囲気にて酸
化物導電膜を形成することで、酸化物導電膜の被形成面となる、絶縁膜116に酸素また
は過剰酸素を添加することが可能となる。また、金属膜120a_2と、金属膜120b
_2とを有することで、上方から照射される光が、酸化物半導体膜108に照射されるの
を抑制することができる。
【0055】
また、導電膜112cと導電膜120aとは、金属膜120a_2を用いて電気的に接
続され、導電膜112bと導電膜120bとは、金属膜120b_2を用いて電気的に接
続される。
【0056】
例えば、導電膜120aを酸化物導電膜120a_1のみで形成した場合、酸化物導電
膜120b_1と、導電膜112cとが接続する構成となる。この構成の場合、導電膜1
12cと、導電膜120aとの接続抵抗が増加する場合がある。一方で本発明の一態様に
おいては、金属膜120a_2を用いて導電膜112cと接続する構成となるため、導電
膜112cと、導電膜120aとの接続抵抗を低くすることが可能となる。
【0057】
同様に、導電膜120bを酸化物導電膜120b_1のみで形成した場合、酸化物導電
膜120b_1と、導電膜112bとが接続する構成となる。この構成の場合、導電膜1
12bと、導電膜120bとの接続抵抗が増加する場合がある。一方で本発明の一態様に
おいては、金属膜120b_2を用いて導電膜120bと接続する構成となるため、導電
膜112bと、導電膜120bとの接続抵抗を低くすることが可能となる。
【0058】
なお、導電膜120aが有する金属膜120a_2と、導電膜120bが有する金属膜
120b_2とは、同じ金属膜を加工することで形成される。別言すると、開口部152
aには、金属膜120a_2と同じ組成の金属膜120b_2が形成されることになる。
【0059】
また、トランジスタ100の上には、絶縁膜118が設けられる。絶縁膜118は、絶
縁膜116、導電膜120a、及び導電膜120bを覆うように形成される。
【0060】
なお、トランジスタ100において、絶縁膜106、107は、トランジスタ100の
第1のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜114、116は、トランジスタ100
の第2のゲート絶縁膜としての機能を有し、絶縁膜118は、トランジスタ100の保護
絶縁膜としての機能を有する。また、トランジスタ100において、導電膜104は、第
1のゲート電極としての機能を有し、導電膜120aは、第2のゲート電極としての機能
を有し、導電膜120bは、表示装置に用いる画素電極としての機能を有する。また、ト
ランジスタ100において、導電膜112aは、ソース電極としての機能を有し、導電膜
112bは、ドレイン電極としての機能を有する。また、トランジスタ100において、
導電膜112cは接続電極としての機能を有する。なお、本明細書等において、絶縁膜1
06、107を第1の絶縁膜と、絶縁膜114、116を第2の絶縁膜と、絶縁膜118
を第3の絶縁膜と、それぞれ呼称する場合がある。
【0061】
また、導電膜112aは、金属膜112a_1と、金属膜112a_1上に接する金属
膜112a_2と、金属膜112a_2上に接する金属膜112a_3と、を有する。ま
た、導電膜120bは、金属膜112b_1と、金属膜112b_1上に接する金属膜1
12b_2と、金属膜112b_2上に接する金属膜112b_3と、を有する。
【0062】
金属膜112a_2及び金属膜112b_2は、それぞれ銅を含み、金属膜112a_
1、金属膜112b_1、金属膜112a_3、及び金属膜112b_3は、それぞれ銅
の拡散を抑制する材料を含む。また、金属膜112a_1の端部は、金属膜112a_2
の端部よりも外側に位置する領域を有し、金属膜112a_3は、金属膜112a_2の
上面及び側面を覆い、且つ金属膜112a_1と接する領域を有する。また、金属膜11
2b_1の端部は、金属膜112b_2の端部よりも外側に位置する領域を有し、金属膜
112b_3は、金属膜112b_2の上面及び側面を覆い、且つ金属膜112b_1と
接する領域を有する。また、金属膜112c_1の端部は、金属膜112c_2の端部よ
りも外側に位置する領域を有し、金属膜112c_3は、金属膜112c_2の上面及び
側面を覆い、且つ金属膜112c_1と接する領域を有する。
【0063】
導電膜112a、及び導電膜112bを上記構成とすることで、配線抵抗を低くするこ
とが可能となる。また、導電膜112a、112bが有する銅元素を外部に拡散するのを
抑制することができる。よって、安定した電気特性を有する半導体装置を提供することが
できる。
【0064】
また、
図1(C)に示すように、第2のゲート電極として機能する導電膜120aは、
接続電極として機能する導電膜112cを間に挟んで、第1のゲート電極として機能する
導電膜104と電気的に接続される。よって、導電膜104と、導電膜120aとは、同
じ電位が与えられる。
【0065】
また、
図1(C)に示すように、酸化物半導体膜108は、第1のゲート電極として機
能する導電膜104と、第2のゲート電極として機能する導電膜120aのそれぞれと対
向するように位置し、2つのゲート電極として機能する膜に挟まれている。導電膜120
aのチャネル長方向の長さ、及び導電膜120aのチャネル幅方向の長さは、酸化物半導
体膜108のチャネル長方向の長さ、及び酸化物半導体膜108のチャネル幅方向の長さ
よりもそれぞれ長く、酸化物半導体膜108の全体は、絶縁膜114、116を介して導
電膜120aに覆われている。
【0066】
別言すると、トランジスタ100のチャネル幅方向において、第1のゲート電極として
機能する導電膜104及び第2のゲート電極として機能する導電膜120aは、第1のゲ
ート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107及び第2のゲート絶縁膜として機能する
絶縁膜114、116を介して酸化物半導体膜108を囲む構成である。
【0067】
このような構成を有することで、トランジスタ100に含まれる酸化物半導体膜108
を、第1のゲート電極として機能する導電膜104及び第2のゲート電極として機能する
導電膜120aの電界によって電気的に囲むことができる。トランジスタ100のように
、第1のゲート電極及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル領域が形成される酸
化物半導体膜を、電気的に囲むトランジスタのデバイス構造をSurrounded c
hannel(S-channel)構造と呼ぶことができる。
【0068】
トランジスタ100は、S-channel構造を有するため、第1のゲート電極とし
て機能する導電膜104によってチャネルを誘起させるための電界を効果的に酸化物半導
体膜108に印加することができるため、トランジスタ100の電流駆動能力が向上し、
高いオン電流特性を得ることが可能となる。また、オン電流を高くすることが可能である
ため、トランジスタ100を微細化することが可能となる。また、トランジスタ100は
、第1のゲート電極として機能する導電膜104及び第2のゲート電極として機能する導
電膜120aによって囲まれた構造を有するため、トランジスタ100の機械的強度を高
めることができる。
【0069】
以上のように、本発明の一態様の半導体装置においては、第2のゲート電極として機能
する導電膜を酸化物導電膜と、金属膜との積層構造とすることで、第2のゲート電極とし
て機能する導電膜の被形成面に酸素を添加し、且つ接続電極との接続には、当該金属膜を
用いる事で接続抵抗を低くすることができる。このような構成とすることで、電気特性の
変動が抑制された半導体装置を実現することができる。
【0070】
<1-2.半導体装置の構成要素>
以下では、本実施の形態の半導体装置に含まれる構成要素について、詳細に説明する。
【0071】
[基板]
基板102の材質などに大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度
の耐熱性を有している必要がある。例えば、ガラス基板、セラミック基板、石英基板、サ
ファイア基板等を、基板102として用いてもよい。また、シリコンや炭化シリコンを材
料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体
基板、SOI基板等を適用することも可能であり、これらの基板上に半導体素子が設けら
れたものを、基板102として用いてもよい。なお、基板102として、ガラス基板を用
いる場合、第6世代(1500mm×1850mm)、第7世代(1870mm×220
0mm)、第8世代(2200mm×2400mm)、第9世代(2400mm×280
0mm)、第10世代(2950mm×3400mm)等の大面積基板を用いることで、
大型の表示装置を作製することができる。
【0072】
また、基板102として、可撓性基板を用い、可撓性基板上に直接、トランジスタ10
0を形成してもよい。または、基板102とトランジスタ100の間に剥離層を設けても
よい。剥離層は、その上に半導体装置を一部あるいは全部完成させた後、基板102より
分離し、他の基板に転載するのに用いることができる。その際、トランジスタ100は耐
熱性の劣る基板や可撓性の基板にも転載できる。
【0073】
[導電膜]
第1のゲート電極として機能する導電膜104、ソース電極として機能する導電膜11
2a、ドレイン電極として機能する導電膜112b、接続電極として機能する導電膜11
2c、第2のゲート電極として機能する導電膜120a、及び画素電極として機能する導
電膜120bとしては、クロム(Cr)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、金(Au
)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、チタン(Ti
)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト
(Co)から選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した
金属元素を組み合わせた合金等を用いてそれぞれ形成することができる。
【0074】
また、導電膜104、112a、112b、112c、120a、120bには、イン
ジウムと錫とを有する酸化物、タングステンとインジウムとを有する酸化物、タングステ
ンとインジウムと亜鉛とを有する酸化物、チタンとインジウムとを有する酸化物、チタン
とインジウムと錫とを有する酸化物、インジウムと亜鉛とを有する酸化物、シリコンとイ
ンジウムと錫とを有する酸化物、インジウムとガリウムと亜鉛とを有する酸化物等の酸化
物導電体を適用することもできる。
【0075】
特に、導電膜120aが有する酸化物導電膜120a_1、及び導電膜120bが有す
る酸化物導電膜120b_1には、上述の酸化物導電体を好適に用いることができる。ま
た、酸化物導電膜120a_1、120b_1と、酸化物半導体膜108(酸化物半導体
膜108b及び酸化物半導体膜108c)と、が同一の金属元素を有する構成とすると好
適である。当該構成とすることで、製造コストを抑制することが可能となる。
【0076】
ここで、酸化物導電体について説明を行う。本明細書等において、酸化物導電体をOC
(Oxide Conductor)と呼称してもよい。酸化物導電体としては、例えば
、酸化物半導体に酸素欠損を形成し、該酸素欠損に水素を添加すると、伝導帯近傍にドナ
ー準位が形成される。この結果、酸化物半導体は、導電性が高くなり導電体化する。導電
体化された酸化物半導体を、酸化物導電体ということができる。一般に、酸化物半導体は
、エネルギーギャップが大きいため、可視光に対して透光性を有する。一方、酸化物導電
体は、伝導帯近傍にドナー準位を有する酸化物半導体である。したがって、酸化物導電体
は、ドナー準位による吸収の影響は小さく、可視光に対して酸化物半導体と同程度の透光
性を有する。
【0077】
また、導電膜104、112a、112b、112c、120a、120bには、Cu
-X合金膜(Xは、Mn、Ni、Cr、Fe、Co、Mo、Ta、またはTi)を適用し
てもよい。Cu-X合金膜を用いることで、ウエットエッチングプロセスで加工できるた
め、製造コストを抑制することが可能となる。
【0078】
特に、導電膜112aが有する金属膜112a_2、導電膜112bが有する金属膜1
12b_2、及び導電膜112cが有する金属膜112c_2には、上述のCu-X合金
膜を好適に用いることができる。Cu-X合金膜としては、Cu-Mn合金膜が特に好ま
しい。ただし、本発明の一態様において、これに限定されず、金属膜112b_2及び金
属膜112c_2は、少なくとも銅を有していればよい。
【0079】
また、導電膜112aが有する金属膜112a_1、112a_3、導電膜112b_
が有する金属膜112b_1、112b_3、及び導電膜112cが有する金属膜112
c_1、112c_3には、上述の金属元素の中でも、特にチタン、タングステン、タン
タル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有すると好適である。
金属膜112a_1、112a_3、112b_1、112b_3、112c_1、11
2c_3がチタン、タングステン、タンタル、及びモリブデンの中から選ばれるいずれか
一つまたは複数を有すると、金属膜112a_2、112b_2が有する銅の外部への拡
散を抑制することができる。すなわち、金属膜112a_1、112a_3、112b_
1、112b_3、112c_1、112c_3は、所謂バリアメタルとしての機能を有
する。
【0080】
金属膜112a_1、112a_3、金属膜112b_1、112b_3、及び112
c_1、112c_3には、窒素とタンタルを含む、所謂窒化タンタル膜を用いると好適
である。当該窒化タンタル膜は、導電性を有し、且つ、銅または水素に対して、高いバリ
ア性を有する。また、窒化タンタル膜は、さらに自身からの水素の放出が少ないため、酸
化物半導体膜108と接する金属膜、または酸化物半導体膜108の近傍の金属膜として
、最も好適に用いることができる。
【0081】
また、金属膜112a_3、112b_3をチタン、タングステン、タンタル、及びモ
リブデンの中から選ばれるいずれか一つまたは複数を有する構成とすることで、金属膜1
20a_2、120b_2との接続抵抗を低くすることができる。なお、金属膜120a
_2、120b_2も金属膜112a_3、112b_3と同種の材料を有すると、接続
抵抗をさらに低くすることができるため好適である。
【0082】
[第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜]
トランジスタ100の第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107として
は、プラズマ化学気相堆積(PECVD:(Plasma Enhanced Chem
ical Vapor Deposition))法、スパッタリング法等により、酸化
シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニ
ウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜
、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜および酸化ネ
オジム膜を一種以上含む絶縁層を、それぞれ用いることができる。なお、絶縁膜106、
107の積層構造とせずに、上述の材料から選択された単層の絶縁膜、または3層以上の
絶縁膜を用いてもよい。
【0083】
また、絶縁膜106は、酸素の透過を抑制するブロッキング膜としての機能を有する。
例えば、絶縁膜107、114、116及び/または酸化物半導体膜108中に過剰の酸
素を供給する場合において、絶縁膜106は酸素の透過を抑制することができる。
【0084】
なお、トランジスタ100のチャネル領域として機能する酸化物半導体膜108と接す
る絶縁膜107は、酸化物絶縁膜であることが好ましく、化学量論的組成よりも過剰に酸
素を含有する領域(酸素過剰領域)を有することがより好ましい。別言すると、絶縁膜1
07は、酸素を放出することが可能な絶縁膜である。なお、絶縁膜107に酸素過剰領域
を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にて絶縁膜107を形成すればよい。または、成膜
後の絶縁膜107を酸素雰囲気下で熱処理すればよい。
【0085】
また、絶縁膜107として、酸化ハフニウムを用いる場合、以下の効果を奏する。酸化
ハフニウムは、酸化シリコンや酸化窒化シリコンと比べて比誘電率が高い。したがって、
酸化シリコンを用いた場合と比べて、絶縁膜107の膜厚を大きくできるため、トンネル
電流によるリーク電流を小さくすることができる。すなわち、オフ電流の小さいトランジ
スタを実現することができる。さらに、結晶構造を有する酸化ハフニウムは、非晶質構造
を有する酸化ハフニウムと比べて高い比誘電率を備える。したがって、オフ電流の小さい
トランジスタとするためには、結晶構造を有する酸化ハフニウムを用いることが好ましい
。結晶構造の例としては、単斜晶系や立方晶系などが挙げられる。ただし、本発明の一態
様は、これらに限定されない。
【0086】
なお、本実施の形態では、絶縁膜106として窒化シリコン膜を形成し、絶縁膜107
として酸化シリコン膜を形成する。窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電
率が高く、酸化シリコン膜と同等の静電容量を得るのに必要な膜厚が大きいため、トラン
ジスタ100のゲート絶縁膜として、窒化シリコン膜を含むことで絶縁膜を厚膜化するこ
とができる。よって、トランジスタ100の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を
向上させて、トランジスタ100の静電破壊を抑制することができる。
【0087】
[酸化物半導体膜]
酸化物半導体膜108としては、先に示す材料を用いることができる。
【0088】
酸化物半導体膜108bがIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜
するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In>Mを満たす
ことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、I
n:M:Zn=2:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4
.1等が挙げられる。
【0089】
また、酸化物半導体膜108cがIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物
を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≦Mを
満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比とし
て、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=
1:3:2、In:M:Zn=1:3:4、In:M:Zn=1:3:6、等が挙げられ
る。
【0090】
また、酸化物半導体膜108b及び酸化物半導体膜108cが、それぞれIn-M-Z
n酸化物の場合、スパッタリングターゲットとしては、多結晶のIn-M-Zn酸化物を
含むターゲットを用いると好ましい。多結晶のIn-M-Zn酸化物を含むターゲットを
用いることで、結晶性を有する酸化物半導体膜108b及び酸化物半導体膜108cを形
成しやすくなる。なお、成膜される酸化物半導体膜108b及び酸化物半導体膜108c
の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比
のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、酸化物半導体膜108bのスパッタリン
グターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:4.1を用いる場合、成膜
される酸化物半導体膜108bの原子数比は、In:Ga:Zn=4:2:3近傍となる
場合がある。
【0091】
また、酸化物半導体膜108は、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5
eV以上、より好ましくは3eV以上である。このように、エネルギーギャップの広い酸
化物半導体を用いることで、トランジスタ100のオフ電流を低減することができる。特
に、酸化物半導体膜108bには、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2eV
以上3.0eV以下の酸化物半導体膜を用い、酸化物半導体膜108cには、エネルギー
ギャップが2.5eV以上3.5eV以下の酸化物半導体膜を用いると、好適である。ま
た、酸化物半導体膜108bよりも酸化物半導体膜108cのエネルギーギャップが大き
い方が好ましい。
【0092】
また、酸化物半導体膜108b、及び酸化物半導体膜108cの厚さは、それぞれ3n
m以上200nm以下、好ましくは3nm以上100nm以下、さらに好ましくは3nm
以上50nm以下とする。
【0093】
また、酸化物半導体膜108cとしては、キャリア密度の低い酸化物半導体膜を用いる
。例えば、第2の酸化物半導体膜108cは、キャリア密度が1×1017cm-3以下
、好ましくは1×1015cm-3以下、さらに好ましくは1×1013cm-3以下、
より好ましくは1×1011cm-3以下とする。
【0094】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性及び電気特性(電界効
果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とす
るトランジスタの半導体特性を得るために、酸化物半導体膜108b、及び酸化物半導体
膜108cのキャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間
距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0095】
なお、酸化物半導体膜108b、及び酸化物半導体膜108cとしては、それぞれ不純
物濃度が低く、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜を用いることで、さらに優れた電気特
性を有するトランジスタを作製することができ好ましい。ここでは、不純物濃度が低く、
欠陥準位密度の低い(酸素欠損の少ない)ことを高純度真性または実質的に高純度真性と
よぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が
少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、該酸化物半導体膜にチャネ
ル領域が形成されるトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリ
ーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性で
ある酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合があ
る。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、オフ電流が著
しく小さく、チャネル幅が1×106μmでチャネル長Lが10μmの素子であっても、
ソース電極とドレイン電極間の電圧(ドレイン電圧)が1Vから10Vの範囲において、
オフ電流が、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10-13A以
下という特性を得ることができる。
【0096】
したがって、上記高純度真性、または実質的に高純度真性の酸化物半導体膜にチャネル
領域が形成されるトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタ
とすることができる。なお、酸化物半導体膜のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失す
るまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、
トラップ準位密度の高い酸化物半導体膜にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電
気特性が不安定となる場合がある。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、または
アルカリ土類金属等がある。
【0097】
酸化物半導体膜に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になると共に
、酸素が脱離した格子(または酸素が脱離した部分)に酸素欠損を形成する。該酸素欠損
に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が
金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って
、水素が含まれている酸化物半導体膜を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となり
やすい。このため、酸化物半導体膜108は水素ができる限り低減されていることが好ま
しい。具体的には、酸化物半導体膜108において、SIMS分析により得られる水素濃
度を、2×1020atoms/cm3以下、好ましくは5×1019atoms/cm
3以下、より好ましくは1×1019atoms/cm3以下、5×1018atoms
/cm3以下、好ましくは1×1018atoms/cm3以下、より好ましくは5×1
017atoms/cm3以下、さらに好ましくは1×1016atoms/cm3以下
とする。
【0098】
また、酸化物半導体膜108bは、酸化物半導体膜108cよりも水素濃度が少ない領
域を有すると好ましい。酸化物半導体膜108bの方が、酸化物半導体膜108cよりも
水素濃度が少ない領域を有すことにより、信頼性の高い半導体装置とすることができる。
【0099】
また、酸化物半導体膜108bにおいて、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が
含まれると、酸化物半導体膜108bにおいて酸素欠損が増加し、n型化してしまう。こ
のため、酸化物半導体膜108bにおけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体膜10
8bとの界面近傍のシリコンや炭素の濃度(SIMS分析により得られる濃度)を、2×
1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017atoms/cm3以下とす
る。
【0100】
また、酸化物半導体膜108bにおいて、SIMS分析により得られるアルカリ金属ま
たはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×
1016atoms/cm3以下にする。アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、酸化物
半導体と結合するとキャリアを生成する場合があり、トランジスタのオフ電流が増大して
しまうことがある。このため、酸化物半導体膜108bのアルカリ金属またはアルカリ土
類金属の濃度を低減することが好ましい。
【0101】
また、酸化物半導体膜108bに窒素が含まれていると、キャリアである電子が生じ、
キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体膜
を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体膜に
おいて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、SIMS分析により
得られる窒素濃度は、5×1018atoms/cm3以下にすることが好ましい。
【0102】
また、酸化物半導体膜108b、及び酸化物半導体膜108cは、それぞれ非単結晶構
造でもよい。非単結晶構造は、例えば、後述するCAAC-OS(C Axis Ali
gned Crystalline Oxide Semiconductor)、多結
晶構造、微結晶構造、または非晶質構造を含む。非単結晶構造において、非晶質構造は最
も欠陥準位密度が高く、CAAC-OSは最も欠陥準位密度が低い。
【0103】
[第2のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜]
絶縁膜114、116は、トランジスタ100の第2のゲート絶縁膜として機能する。
また、絶縁膜114、116は、酸化物半導体膜108に酸素を供給する機能を有する。
すなわち、絶縁膜114、116は、酸素を有する。また、絶縁膜114は、酸素を透過
することのできる絶縁膜である。なお、絶縁膜114は、後に形成する絶縁膜116を形
成する際の、酸化物半導体膜108へのダメージ緩和膜としても機能する。
【0104】
絶縁膜114としては、厚さが5nm以上150nm以下、好ましくは5nm以上50
nm以下の酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0105】
また、絶縁膜114は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定によ
り、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度
が3×1017spins/cm3以下であることが好ましい。これは、絶縁膜114に
含まれる欠陥密度が多いと、該欠陥に酸素が結合してしまい、絶縁膜114における酸素
の透過量が減少してしまう。
【0106】
なお、絶縁膜114においては、外部から絶縁膜114に入った酸素が全て絶縁膜11
4の外部に移動せず、絶縁膜114にとどまる酸素もある。また、絶縁膜114に酸素が
入ると共に、絶縁膜114に含まれる酸素が絶縁膜114の外部へ移動することで、絶縁
膜114において酸素の移動が生じる場合もある。絶縁膜114として酸素を透過するこ
とができる酸化物絶縁膜を形成すると、絶縁膜114上に設けられる、絶縁膜116から
脱離する酸素を、絶縁膜114を介して酸化物半導体膜108に移動させることができる
。
【0107】
また、絶縁膜114は、窒素酸化物に起因する準位密度が低い酸化物絶縁膜を用いて形
成することができる。なお、当該窒素酸化物に起因する準位密度は、酸化物半導体膜の価
電子帯の上端のエネルギー(Ev_os)と酸化物半導体膜の伝導帯の下端のエネルギー
(Ec_os)の間に形成され得る場合がある。上記酸化物絶縁膜として、窒素酸化物の
放出量が少ない酸化窒化シリコン膜、または窒素酸化物の放出量が少ない酸化窒化アルミ
ニウム膜等を用いることができる。
【0108】
なお、窒素酸化物の放出量の少ない酸化窒化シリコン膜は、昇温脱離ガス分析法におい
て、窒素酸化物の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニア
の放出量が1×1018分子/cm3以上5×1019分子/cm3以下である。なお、
アンモニアの放出量は、膜の表面温度が50℃以上650℃以下、好ましくは50℃以上
550℃以下の加熱処理による放出量とする。
【0109】
窒素酸化物(NOx、xは0を越えて2以下、好ましくは1以上2以下)、代表的には
NO2またはNOは、絶縁膜114などに準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体膜
108のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物が、絶縁膜114及び
酸化物半導体膜108の界面に拡散すると、当該準位が絶縁膜114側において電子をト
ラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁膜114及び酸化物半導
体膜108界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさ
せてしまう。
【0110】
また、窒素酸化物は、加熱処理においてアンモニア及び酸素と反応する。絶縁膜114
に含まれる窒素酸化物は、加熱処理において、絶縁膜116に含まれるアンモニアと反応
するため、絶縁膜114に含まれる窒素酸化物が低減される。このため、絶縁膜114及
び酸化物半導体膜108の界面において、電子がトラップされにくい。
【0111】
絶縁膜114として、上記酸化物絶縁膜を用いることで、トランジスタのしきい値電圧
のシフトを低減することが可能であり、トランジスタの電気特性の変動を低減することが
できる。
【0112】
なお、トランジスタの作製工程の加熱処理、代表的には300℃以上350℃未満の加
熱処理により、絶縁膜114は、100K以下のESRで測定して得られたスペクトルに
おいてg値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2
.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下の第3のシグ
ナルが観測される。なお、第1のシグナル及び第2のシグナルのスプリット幅、並びに第
2のシグナル及び第3のシグナルのスプリット幅は、XバンドのESR測定において約5
mTである。また、g値が2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.
001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下
である第3のシグナルのスピンの密度の合計が1×1018spins/cm3未満であ
り、代表的には1×1017spins/cm3以上1×1018spins/cm3未
満である。
【0113】
なお、100K以下のESRスペクトルにおいて、g値が2.037以上2.039以
下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下の第2のシグナル、及びg値
が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのスピンの密度の合計は、窒素酸
化物(NOx、xは0より大きく2以下、好ましくは1以上2以下)起因のシグナルに相
当する。窒素酸化物の代表例としては、一酸化窒素、二酸化窒素等がある。即ち、g値が
2.037以上2.039以下の第1のシグナル、g値が2.001以上2.003以下
の第2のシグナル、及びg値が1.964以上1.966以下である第3のシグナルのス
ピンの密度の合計が少ないほど、酸化物絶縁膜に含まれる窒素酸化物の含有量が少ないと
いえる。
【0114】
また、上記酸化物絶縁膜は、SIMSで測定される窒素濃度が6×1020atoms
/cm3以下である。
【0115】
基板温度が220℃以上350℃以下であり、シラン及び一酸化二窒素を用いたPEC
VD法を用いて、上記酸化物絶縁膜を形成することで、緻密であり、且つ硬度の高い膜を
形成することができる。
【0116】
絶縁膜116は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を
用いて形成する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜は、
加熱により酸素の一部が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む
酸化物絶縁膜は、TDS分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×101
9atoms/cm3以上、好ましくは3.0×1020atoms/cm3以上である
酸化物絶縁膜である。なお、上記TDSにおける膜の表面温度としては100℃以上70
0℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好ましい。
【0117】
絶縁膜116としては、厚さが30nm以上500nm以下、好ましくは50nm以上
400nm以下の、酸化シリコン、酸化窒化シリコン等を用いることができる。
【0118】
また、絶縁膜116は、欠陥量が少ないことが好ましく、代表的には、ESR測定によ
り、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現れる信号のスピン密度
が1.5×1018spins/cm3未満、さらには1×1018spins/cm3
以下であることが好ましい。なお、絶縁膜116は、絶縁膜114と比較して酸化物半導
体膜108から離れているため、絶縁膜114より、欠陥密度が多くともよい。
【0119】
また、絶縁膜114、116は、同種の材料の絶縁膜を用いることができるため、絶縁
膜114と絶縁膜116の界面が明確に確認できない場合がある。したがって、本実施の
形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の界面は、破線で図示している。なお、本
実施の形態においては、絶縁膜114と絶縁膜116の2層構造について説明したが、こ
れに限定されず、例えば、絶縁膜114の単層構造、あるいは3層以上の積層構造として
もよい。
【0120】
[保護絶縁膜として機能する絶縁膜]
絶縁膜118は、トランジスタ100の保護絶縁膜として機能する。
【0121】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。または、絶縁膜1
18は、窒素及びシリコンを有する。また、絶縁膜118は、酸素、水素、水、アルカリ
金属、アルカリ土類金属等のブロッキングできる機能を有する。絶縁膜118を設けるこ
とで、酸化物半導体膜108からの酸素の外部への拡散と、絶縁膜114、116に含ま
れる酸素の外部への拡散と、外部から酸化物半導体膜108への水素、水等の入り込みを
防ぐことができる。
【0122】
絶縁膜118としては、例えば、窒化物絶縁膜を用いることができる。該窒化物絶縁膜
としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム
等がある。
【0123】
なお、上記記載の、導電膜、絶縁膜、酸化物半導体膜、金属膜などの様々な膜は、スパ
ッタリング法やPECVD法により形成することができるが、他の方法、例えば、熱CV
D(Chemical Vapor Deposition)法により形成してもよい。
熱CVD法の例としてMOCVD(Metal Organic Chemical V
apor Deposition)法、またはALD(Atomic Layer De
position)法などが挙げられる。
【0124】
熱CVD法は、プラズマを使わない成膜方法のため、プラズマダメージにより欠陥が生
成されることが無いという利点を有する。
【0125】
熱CVD法は、原料ガスと酸化剤を同時にチャンバー内に送り、チャンバー内を大気圧
または減圧下とし、基板近傍または基板上で反応させて基板上に堆積させることで成膜を
行ってもよい。
【0126】
また、ALD法は、チャンバー内を大気圧または減圧下とし、反応のための原料ガスが
順次チャンバーに導入され、そのガス導入の順序を繰り返すことで成膜を行ってもよい。
【0127】
MOCVD法、ALD法などの熱CVD法は、上記実施形態の導電膜、絶縁膜、酸化物
半導体膜、金属酸化膜などの様々な膜を形成することができ、例えば、In-Ga-Zn
O膜を成膜する場合には、トリメチルインジウム、トリメチルガリウム、及びジメチル亜
鉛を用いる。なお、トリメチルインジウムの化学式は、In(CH3)3である。また、
トリメチルガリウムの化学式は、Ga(CH3)3である。また、ジメチル亜鉛の化学式
は、Zn(CH3)2である。また、これらの組み合わせに限定されず、トリメチルガリ
ウムに代えてトリエチルガリウム(化学式Ga(C2H5)3)を用いることもでき、ジ
メチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛(化学式Zn(C2H5)2)を用いることもできる。
【0128】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化ハフニウム膜を形成する場合には、溶媒
とハフニウム前駆体化合物を含む液体(ハフニウムアルコキシドや、テトラキスジメチル
アミドハフニウム(TDMAH)などのハフニウムアミド)を気化させた原料ガスと、酸
化剤としてオゾン(O3)の2種類のガスを用いる。なお、テトラキスジメチルアミドハ
フニウムの化学式はHf[N(CH3)2]4である。また、他の材料液としては、テト
ラキス(エチルメチルアミド)ハフニウムなどがある。
【0129】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化アルミニウム膜を形成する場合には、溶
媒とアルミニウム前駆体化合物を含む液体(トリメチルアルミニウム(TMA)など)を
気化させた原料ガスと、酸化剤としてH2Oの2種類のガスを用いる。なお、トリメチル
アルミニウムの化学式はAl(CH3)3である。また、他の材料液としては、トリス(
ジメチルアミド)アルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、アルミニウムトリス(2
,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナート)などがある。
【0130】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化シリコン膜を形成する場合には、ヘキサ
クロロジシランを被成膜面に吸着させ、吸着物に含まれる塩素を除去し、酸化性ガス(O
2、一酸化二窒素)のラジカルを供給して吸着物と反応させる。
【0131】
例えば、ALDを利用する成膜装置によりタングステン膜を成膜する場合には、WF6
ガスとB2H6ガスを順次繰り返し導入して初期タングステン膜を形成し、その後、WF
6ガスとH2ガスとを用いてタングステン膜を形成する。なお、B2H6ガスに代えてS
iH4ガスを用いてもよい。
【0132】
例えば、ALDを利用する成膜装置により酸化物半導体膜、例えばIn-Ga-ZnO
膜を成膜する場合には、In(CH3)3ガスとO3ガスを順次繰り返し導入してIn-
O層を形成し、その後、Ga(CH3)3ガスとO3ガスとを用いてGaO層を形成し、
更にその後Zn(CH3)2ガスとO3ガスとを用いてZnO層を形成する。なお、これ
らの層の順番はこの例に限らない。また、これらのガスを混ぜてIn-Ga-O層やIn
-Zn-O層、Ga-Zn-O層などの混合化合物層を形成しても良い。なお、O3ガス
に変えてAr等の不活性ガスでバブリングして得られたH2Oガスを用いても良いが、H
を含まないO3ガスを用いる方が好ましい。また、In(CH3)3ガスに変えて、In
(C2H5)3ガスを用いても良い。また、Ga(CH3)3ガスに変えて、Ga(C2
H5)3ガスを用いても良い。また、Zn(CH3)2ガスを用いても良い。
【0133】
<1-3.半導体装置の構成例2>
次に、
図1(A)(B)(C)に示すトランジスタ100の変形例について、
図2乃至
図6を用いて説明する。
【0134】
図2(A)(B)は、
図1(B)(C)に示すトランジスタ100の変形例であるトラ
ンジスタ100Aの断面図である。また、
図3(A)(B)は、
図1(B)(C)に示す
トランジスタ100の変形例であるトランジスタ100Bの断面図である。また、
図4(
A)(B)は、
図1(B)(C)に示すトランジスタ100の変形例であるトランジスタ
100Cの断面図である。また、
図5(A)(B)は、
図1(B)(C)に示すトランジ
スタ100の変形例であるトランジスタ100Dの断面図である。また、
図6(A)(B
)は、
図1(B)(C)に示すトランジスタ100の変形例であるトランジスタ100E
の断面図である。
【0135】
図2(A)(B)に示すトランジスタ100Aは、
図1(B)(C)に示すトランジス
タ100が有する酸化物半導体膜108を3層の積層構造としている。より具体的には、
トランジスタ100Aが有する酸化物半導体膜108は、酸化物半導体膜108aと、酸
化物半導体膜108a上の酸化物半導体膜108bと、酸化物半導体膜108b上の酸化
物半導体膜108cと、を有する。
【0136】
図3(A)(B)に示すトランジスタ100Bは、
図1(B)(C)に示すトランジス
タ100が有する酸化物半導体膜108を単層構造としている。より具体的には、トラン
ジスタ100Bは、酸化物半導体膜108bを有する。
【0137】
図4(A)(B)に示すトランジスタ100Cは、
図1(B)(C)に示すトランジス
タ100が有する酸化物半導体膜108の形状が異なる。より具体的には、トランジスタ
100が有する酸化物半導体膜108cは、図面において、導電膜112a、112bか
ら露出した領域の厚さが薄い。別言すると酸化物半導体膜の一部が凹部を有する形状につ
いて例示している。一方で、トランジスタ100Cが有する酸化物半導体膜108cは、
図面において、導電膜112a、112bから露出した領域の厚さが薄くならない。別言
すると酸化物半導体膜の一部が凹部を有さない形状である。
【0138】
図5(A)(B)に示すトランジスタ100Dは、
図1(B)(C)に示すトランジス
タ100が有する導電膜112a、112b、112cの構造が異なる。より、具体的に
は、トランジスタ100Dが有する導電膜112a、112b、112cは、単層構造で
ある。
【0139】
図6(A)(B)に示すトランジスタ100Eは、所謂チャネル保護型のトランジスタ
構造である。酸化物半導体膜108上にチャネル保護膜として機能する絶縁膜115が設
けられる。絶縁膜115としては、絶縁膜114と同様の材料を用いることができる。な
お、絶縁膜115を設ける構成の場合、絶縁膜114を設けずに、導電膜112a、11
2b、絶縁膜115上に絶縁膜116を設ける構成とすることができる。
【0140】
このように、本発明の半導体装置としては、酸化物半導体膜の積層構造、酸化物半導体
膜の形状、または導電膜の積層構造等が異なっていても適用することが可能である。また
、本実施の形態に係るトランジスタは、上記の構造のそれぞれを自由に組み合わせること
が可能である。
【0141】
<1-4.半導体装置の作製方法>
次に、本発明の一態様の半導体装置であるトランジスタ100の作製方法について、図
7乃至
図12を用いて説明する。
【0142】
【0143】
まず、基板102上に導電膜を形成し、該導電膜をリソグラフィ工程及びエッチング工
程を行い加工して、第1のゲート電極として機能する導電膜104を形成する。次に、導
電膜104上に第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜106、107を形成する(図
7(A)参照)。
【0144】
本実施の形態では、基板102としてガラス基板を用い、第1のゲート電極として機能
する導電膜104として、厚さ50nmのチタン膜と、厚さ200nmの銅膜とを、それ
ぞれスパッタリング法により形成する。また、絶縁膜106として厚さ400nmの窒化
シリコン膜をPECVD法により形成し、絶縁膜107として厚さ50nmの酸化窒化シ
リコン膜をPECVD法により形成する。
【0145】
なお、絶縁膜106としては、窒化シリコン膜の積層構造とすることができる。具体的
には、絶縁膜106を、第1の窒化シリコン膜と、第2の窒化シリコン膜と、第3の窒化
シリコン膜との3層積層構造とすることができる。該3層積層構造の一例としては、以下
のように形成することができる。
【0146】
第1の窒化シリコン膜としては、例えば、流量200sccmのシラン、流量2000
sccmの窒素、及び流量100sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPE-CV
D装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高
周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが50nmとなるように形成すれば
よい。
【0147】
第2の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、流量2000sccm
の窒素、及び流量2000sccmのアンモニアガスを原料ガスとしてPECVD装置の
反応室に供給し、反応室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源
を用いて2000Wの電力を供給して、厚さが300nmとなるように形成すればよい。
【0148】
第3の窒化シリコン膜としては、流量200sccmのシラン、及び流量5000sc
cmの窒素を原料ガスとしてPECVD装置の反応室に供給し、反応室内の圧力を100
Paに制御し、27.12MHzの高周波電源を用いて2000Wの電力を供給して、厚
さが50nmとなるように形成すればよい。
【0149】
なお、上記第1の窒化シリコン膜、第2の窒化シリコン膜、及び第3の窒化シリコン膜
形成時の基板温度は350℃以下とすることができる。
【0150】
絶縁膜106を、窒化シリコン膜の3層の積層構造とすることで、例えば、導電膜10
4に銅を含む導電膜を用いる場合において、以下の効果を奏する。
【0151】
第1の窒化シリコン膜は、導電膜104からの銅元素の拡散を抑制することができる。
第2の窒化シリコン膜は、水素を放出する機能を有し、ゲート絶縁膜として機能する絶縁
膜の耐圧を向上させることができる。第3の窒化シリコン膜は、第3の窒化シリコン膜か
らの水素放出が少なく、且つ第2の窒化シリコン膜からの放出される水素の拡散を抑制す
ることができる。
【0152】
絶縁膜107としては、後に形成される酸化物半導体膜108(より具体的には、酸化
物半導体膜108b)との界面特性を向上させるため、酸素を含む絶縁膜で形成されると
好ましい。また、絶縁膜107の形成後に、絶縁膜107に酸素を添加してもよい。絶縁
膜107に添加する酸素としては、酸素ラジカル、酸素原子、酸素原子イオン、酸素分子
イオン等がある。また、添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズ
マ処理法等がある。
【0153】
次に、絶縁膜107上に酸化物半導体膜108b_0及び酸化物半導体膜108c_0
を形成する(
図7(B)(C)参照)。
【0154】
なお、
図7(B)は、絶縁膜107上に酸化物半導体膜108b_0を形成する際の成
膜装置内部の断面模式図である。
図7(B)では、成膜装置としてスパッタリング装置を
用い、当該スパッタリング装置内部に設置されたターゲット191と、ターゲット191
の下方に形成されるプラズマ192とが、模式的に表されている。
【0155】
まず、酸化物半導体膜108b_0を形成する際に、酸素ガスを含む雰囲気にてプラズ
マを放電させる。その際に、酸化物半導体膜108b_0の被形成面となる絶縁膜107
中に、酸素が添加される。また、酸化物半導体膜108b_0を形成する際に、酸素ガス
の他に、不活性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合
させてもよい。
【0156】
酸素ガスとしては、少なくとも酸化物半導体膜108b_0を形成する際に含まれてい
ればよく、酸化物半導体膜108b_0を形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの
割合としては、0%を超えて100%以下、好ましくは10%以上100%以下、さらに
好ましくは30%以上100%以下である。
【0157】
なお、
図7(B)において、絶縁膜107に添加される酸素または過剰酸素を模式的に
破線の矢印で表している。
【0158】
なお、酸化物半導体膜108b_0と、酸化物半導体膜108c_0の形成時の基板温
度は、同じでも異なっていてもよい。ただし、酸化物半導体膜108b_0と、酸化物半
導体膜108c_0との、基板温度を同じとすることで、製造コストを低減することがで
きるため好適である。
【0159】
例えば、酸化物半導体膜108を成膜する際の基板温度としては、室温以上340℃未
満、好ましくは室温以上300℃以下、より好ましくは100℃以上250℃以下、さら
に好ましくは100℃以上200℃以下である。酸化物半導体膜108を加熱して成膜す
ることで、酸化物半導体膜108の結晶性を高めることができる。一方で、基板102と
して、大型のガラス基板(例えば、第6世代乃至第10世代)を用いる場合、酸化物半導
体膜108を成膜する際の基板温度を150℃以上340℃未満とした場合、基板102
が変形する(歪むまたは反る)場合がある。よって、大型のガラス基板を用いる場合にお
いては、酸化物半導体膜108の成膜する際の基板温度を100℃以上150℃未満とす
ることで、ガラス基板の変形を抑制することができる。
【0160】
また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとし
て用いる酸素ガスやアルゴンガスは、露点が-40℃以下、好ましくは-80℃以下、よ
り好ましくは-100℃以下、より好ましくは-120℃以下にまで高純度化したガスを
用いることで酸化物半導体膜に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる
。
【0161】
また、スパッタリング法で酸化物半導体膜を成膜する場合、スパッタリング装置におけ
るチャンバーは、酸化物半導体膜にとって不純物となる水等を可能な限り除去すべくクラ
イオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて高真空(例えば、5×10-7Pa
から1×10-4Pa程度まで)排気することが好ましい。または、ターボ分子ポンプと
コールドトラップを組み合わせて排気系からチャンバー内に気体、特に炭素または水素を
含む気体が逆流しないようにしておくことが好ましい。
【0162】
また、酸化物半導体膜108b_0が形成された後、続けて、酸化物半導体膜108c
_0が、酸化物半導体膜108b上に形成される。酸化物半導体膜108c_0の形成条
件としては、酸化物半導体膜108b_0の形成条件と同様の条件を用いることができる
。ただし、酸化物半導体膜108b_0の形成条件と、酸化物半導体膜108c_0の形
成条件とは、同じでも異なっていてもよい。
【0163】
本実施の形態では、In-Ga-Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:
2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により酸化物半導体膜108b_
0を形成し、その後真空中で連続して、In-Ga-Zn金属酸化物ターゲット(In:
Ga:Zn=1:1:1.2[原子数比])を用いて、スパッタリング法により酸化物半
導体膜108c_0を形成する。また、酸化物半導体膜108b_0の形成時の基板温度
を170℃とし、酸化物半導体膜108c_0の形成時の基板温度を170℃とする。ま
た、酸化物半導体膜108b_0の形成時の成膜ガスとしては、流量60sccmの酸素
ガスと、流量140sccmのアルゴンガスと、を用いる。また、酸化物半導体膜108
c_0の形成時の成膜ガスとしては、流量100sccmの酸素ガスと、流量100sc
cmのアルゴンガスと、を用いる。
【0164】
次に、酸化物半導体膜108b_0及び酸化物半導体膜108c_を所望の形状に加工
することで、島状の酸化物半導体膜108b及び島状の酸化物半導体膜108cを形成す
る。なお、本実施の形態においては、酸化物半導体膜108b、及び酸化物半導体膜10
8cで酸化物半導体膜108を構成する(
図8(A)参照)。
【0165】
また、酸化物半導体膜108を形成した後に、加熱処理(以下、第1の加熱処理とする
)を行うと好適である。第1の加熱処理により、酸化物半導体膜108に含まれる水素、
水等を低減することができる。なお、水素、水等の低減を目的とした加熱処理は、酸化物
半導体膜108を島状に加工する前に行ってもよい。なお、第1の加熱処理は、酸化物半
導体膜の高純度化処理の一つである。
【0166】
第1の加熱処理としては、例えば、150℃以上基板の歪み点未満、好ましくは200
℃以上450℃以下、さらに好ましくは250℃以上350℃以下とすることができる。
【0167】
また、第1の加熱処理は、電気炉、RTA装置等を用いることができる。RTA装置を
用いることで、短時間に限り基板の歪み点以上の温度で熱処理を行うことができる。その
ため、加熱時間を短縮することが可能となる。また、第1の加熱処理は、窒素、酸素、超
乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10pp
b以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお
、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい
。また、窒素または希ガス雰囲気で加熱処理した後、酸素または超乾燥空気雰囲気で加熱
してもよい。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる水素、水等を脱離させると共に、酸
化物半導体膜中に酸素を供給することができる。この結果、酸化物半導体膜中に含まれる
酸素欠損を低減することができる。
【0168】
次に、絶縁膜106、及び絶縁膜107の所望の領域に開口部151を形成する。なお
、開口部151は、導電膜104に達する(
図8(B)参照)。
【0169】
開口部151としては、ドライエッチング法、及びウエットエッチング法のいずれか一
方または双方を用いて形成することができる。本実施の形態においては、ドライエッチン
グ法を用い、開口部151を形成する。
【0170】
次に、絶縁膜107、酸化物半導体膜108、及び導電膜104上に導電膜112_1
、112_2を形成する(
図8(C)参照)。
【0171】
本実施の形態では、導電膜112_1として、厚さ30nmのチタン膜をスパッタリン
グ法により成膜する。また、導電膜112_2として、厚さ200nmの銅膜をスパッタ
リング法により成膜する。
【0172】
次に、導電膜112_2上の所望の領域にマスク141a、141b、141cを形成
する。続けて、マスク141a、141b、141cを用いて、導電膜112_2を加工
することで、島状の金属膜112a_2と、島状の金属膜112b_2と、島状の金属膜
112c_2と、を形成する(
図9(A)参照)。
【0173】
なお、本実施の形態においては、ウエットエッチング装置を用い、導電膜112_2を
加工する。ただし、導電膜112_2の加工方法としては、これに限定されず、例えば、
ドライエッチング装置を用いてもよい。
【0174】
次に、マスク141a、141b、141cを除去する。続けて、導電膜112_1、
及び金属膜112a_2、112b_2、112c_2上に導電膜112_3を形成する
(
図9(B)参照)。
【0175】
本実施の形態では、導電膜112_3として、厚さ10nmのチタン膜をスパッタリン
グ法により成膜する。なお、導電膜112_3を形成することで、金属膜112a_2、
112b_2、112c_2は、導電膜112_1と導電膜112_3とで囲まれた構造
となる。導電膜112_1と導電膜112_3とで金属膜112a_2、112b_2、
112c_2を囲む構成とすることで、金属膜112a_2、112b_2、112c_
2に含まれる銅元素が外部に拡散、特に酸化物半導体膜108に拡散するのを抑制するこ
とができる。
【0176】
次に、導電膜112_3上の所望の領域にマスク142a、142b、142cを形成
する。続けて、マスク142a、142b、142cを用いて、導電膜112_1及び導
電膜112_3を加工することで、島状の金属膜112a_1と、島状の金属膜112b
_1と、島状の金属膜112c_1と、島状の金属膜112a_3と、島状の金属膜11
2b_3と、島状の金属膜112c_3と、を形成する。この工程を行うことで、金属膜
112a_1、金属膜112a_2、及び金属膜112a_3を有する導電膜112aと
、金属膜112b_1、金属膜112b_2、及び金属膜112b_3を有する導電膜1
12bと、金属膜112c_1、金属膜112c_2、及び金属膜112c_3を有する
導電膜112cと、が形成される(
図9(C)参照)。
【0177】
なお、本実施の形態においては、ドライエッチング装置を用い、導電膜112_1及び
導電膜112_3を加工する。ただし、導電膜112_1及び導電膜112_3の加工方
法としては、これに限定されず、例えば、ウエットエッチング装置を用いてもよい。
【0178】
また、導電膜112a、112bの形成後に、酸化物半導体膜108(より具体的には
酸化物半導体膜108c)の表面(バックチャネル側)を洗浄してもよい。当該洗浄方法
としては、例えば、リン酸等の薬液を用いた洗浄が挙げられる。リン酸等の薬液を用いて
洗浄を行うことで、酸化物半導体膜108cの表面に付着した不純物(例えば、導電膜1
12a、112bに含まれる元素等)を除去することができる。なお、当該洗浄を必ずし
も行う必要はなく、場合によっては、洗浄を行わなくてもよい。
【0179】
また、導電膜112a、112bを形成する工程、及び上記洗浄工程のいずれか一方ま
たは双方において、酸化物半導体膜108の導電膜112a、112bから露出した領域
が、薄くなる場合がある。
【0180】
次に、酸化物半導体膜108、及び導電膜112a、112b上に絶縁膜114及び絶
縁膜116を形成する(
図10(A)参照)。
【0181】
なお、絶縁膜114を形成した後、大気に曝すことなく、連続的に絶縁膜116を形成
することが好ましい。絶縁膜114を形成後、大気開放せず、原料ガスの流量、圧力、高
周波電力及び基板温度の一以上を調整して、絶縁膜116を連続的に形成することで、絶
縁膜114と絶縁膜116との界面において大気成分由来の不純物濃度を低減することが
できる。
【0182】
例えば、絶縁膜114として、PECVD法を用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する
ことができる。この場合、原料ガスとしては、シリコンを含む堆積性気体及び酸化性気体
を用いることが好ましい。シリコンを含む堆積性気体の代表例としては、シラン、ジシラ
ン、トリシラン、フッ化シラン等がある。酸化性気体としては、一酸化二窒素、二酸化窒
素等がある。また、上記の堆積性気体の流量に対して酸化性気体の流量を20倍以上50
00倍以下、好ましくは40倍以上100倍以下とする。
【0183】
本実施の形態においては、絶縁膜114として、基板102を保持する温度を220℃
とし、流量50sccmのシラン及び流量2000sccmの一酸化二窒素を原料ガスと
し、処理室内の圧力を20Paとし、平行平板電極に供給する高周波電力を13.56M
Hz、100W(電力密度としては1.6×10-2W/cm2)とするPECVD法を
用いて、酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0184】
絶縁膜116としては、PECVD装置の真空排気された処理室内に載置された基板を
180℃以上350℃以下に保持し、処理室に原料ガスを導入して処理室内における圧力
を100Pa以上250Pa以下、さらに好ましくは100Pa以上200Pa以下とし
、処理室内に設けられる電極に0.17W/cm2以上0.5W/cm2以下、さらに好
ましくは0.25W/cm2以上0.35W/cm2以下の高周波電力を供給する条件に
より、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0185】
絶縁膜116の成膜条件として、上記圧力の反応室において上記パワー密度の高周波電
力を供給することで、プラズマ中で原料ガスの分解効率が高まり、酸素ラジカルが増加し
、原料ガスの酸化が進むため、絶縁膜116中における酸素含有量が化学量論的組成より
も多くなる。一方、基板温度が、上記温度で形成された膜では、シリコンと酸素の結合力
が弱いため、後の工程の加熱処理により膜中の酸素の一部が脱離する。この結果、化学量
論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含み、加熱により酸素の一部が脱離する酸化物
絶縁膜を形成することができる。
【0186】
なお、絶縁膜116の形成工程において、絶縁膜114が酸化物半導体膜108の保護
膜となる。したがって、酸化物半導体膜108へのダメージを低減しつつ、パワー密度の
高い高周波電力を用いて絶縁膜116を形成することができる。
【0187】
なお、絶縁膜116の成膜条件において、酸化性気体に対するシリコンを含む堆積性気
体の流量を増加することで、絶縁膜116の欠陥量を低減することが可能である。代表的
には、ESR測定により、シリコンのダングリングボンドに由来するg=2.001に現
れる信号のスピン密度が6×1017spins/cm3未満、好ましくは3×1017
spins/cm3以下、好ましくは1.5×1017spins/cm3以下である欠
陥量の少ない酸化物絶縁膜を形成することができる。この結果、トランジスタ100の信
頼性を高めることができる。
【0188】
また、絶縁膜114、116を成膜した後に、加熱処理(以下、第2の加熱処理とする
)を行うと好適である。第2の加熱処理により、絶縁膜114、116に含まれる窒素酸
化物を低減することができる。または、第2の加熱処理により、絶縁膜114、116に
含まれる酸素の一部を酸化物半導体膜108に移動させ、酸化物半導体膜108に含まれ
る酸素欠損を低減することができる。
【0189】
第2の加熱処理の温度は、代表的には、400℃未満、好ましくは375℃未満、さら
に好ましくは、150℃以上350℃以下とする。第2の加熱処理は、窒素、酸素、超乾
燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb
以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウム等)の雰囲気下で行えばよい。なお、
上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガスに水素、水等が含まれないことが好ましい該
加熱処理には、電気炉、RTA等を用いることができる。
【0190】
次に、絶縁膜116上に酸化物導電膜120_1を形成する(
図10(B)(C)参照
)。
【0191】
なお、
図10(B)は、絶縁膜116上に酸化物導電膜120_1を形成する際の成膜
装置内部の断面模式図である。
図10(B)では、成膜装置としてスパッタリング装置を
用い、当該スパッタリング装置内部に設置されたターゲット193と、ターゲット193
の下方に形成されるプラズマ194とが、模式的に表されている。
【0192】
まず、酸化物導電膜120_1を形成する際に、酸素ガスを含む雰囲気にてプラズマを
放電させる。その際に、酸化物導電膜120_1の被形成面となる絶縁膜116中に、酸
素が添加される。また、酸化物導電膜120_1を形成する際に、酸素ガスの他に、不活
性ガス(例えば、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガスなど)を混合させてもよい
。
【0193】
酸素ガスとしては、少なくとも酸化物導電膜120_1を形成する際に含まれていれば
よく、酸化物導電膜120_1を形成する際の成膜ガス全体に占める酸素ガスの割合とし
ては、0%を超えて100%以下、好ましくは10%以上100%以下、さらに好ましく
は30%以上100%以下である。
【0194】
なお、
図10(B)において、絶縁膜116に添加される酸素または過剰酸素を模式的
に破線の矢印で表している。
【0195】
本実施の形態では、In-Ga-Zn金属酸化物ターゲット(In:Ga:Zn=4:
2:4.1[原子数比])を用いて、スパッタリング法により酸化物導電膜120_1を
形成する。
【0196】
なお、本実施の形態では、酸化物導電膜120_1を成膜する際に、絶縁膜116に酸
素を添加する方法について例示したがこれに限定されない。例えば、酸化物導電膜120
_1を形成後に、さらに絶縁膜116に酸素を添加してもよい。
【0197】
絶縁膜116に酸素を添加する方法としては、例えば、インジウムと、錫と、シリコン
とを有する酸化物(ITSOともいう)ターゲット(In2O3:SnO2:SiO2=
85:10:5[重量%])を用いて、膜厚5nmのITSO膜を酸化物導電膜120_
1として形成する。
【0198】
この場合、酸化物導電膜120_1の膜厚としては、1nm以上20nm以下、または
2nm以上10nm以下とすると好適に酸素を透過し、且つ酸素の放出を抑制できるため
好ましい。その後、酸化物導電膜120_1を通過させて、絶縁膜116に酸素を添加す
る。酸素の添加方法としては、イオンドーピング法、イオン注入法、プラズマ処理法等が
挙げられる。また、酸素を添加する際に、基板側にバイアス電圧を印加することで効果的
に酸素を絶縁膜116に添加することができる。上記バイアス電圧としては、例えば、ア
ッシング装置を用い、該アッシング装置の基板側に印加するバイアス電圧の電力密度を1
W/cm2以上5W/cm2以下とすればよい。また、酸素を添加する際の基板温度とし
ては、室温以上300℃以下、好ましくは、100℃以上250℃以下とすることで、絶
縁膜116に効率よく酸素を添加することができる。
【0199】
次に、酸化物導電膜120_1上にリソグラフィ工程によりマスクを形成し、酸化物導
電膜120_1、及び絶縁膜114、116の所望の領域に開口部152a、152bを
形成する。なお、開口部152aは、導電膜112bに達するように形成され、開口部1
52bは、導電膜112cに達するように形成される(
図11(A)参照)。
【0200】
開口部152a、152bとしては、ドライエッチング法、及びウエットエッチング法
のいずれか一方または双方を用いて形成することができる。本実施の形態においては、ド
ライエッチング法を用い、開口部152a、152bを形成する。
【0201】
次に、酸化物導電膜120_1、導電膜112b、及び導電膜112c上に金属膜12
0_2を形成する(
図11(B)参照)。
【0202】
本実施の形態では、金属膜120_2として、スパッタリング法を用い、膜厚100n
mのチタン膜を形成する。
【0203】
次に、金属膜120_2上にリソグラフィ法によりマスクを形成したのち、金属膜12
0_2、及び酸化物導電膜120_1を所望の形状に加工することで、島状の導電膜12
0aと、島状の導電膜120bと、を形成する。なお、導電膜120aは、島状の酸化物
導電膜120a_1と、島状の金属膜120a_2と、を有し、導電膜120bは、島状
の酸化物導電膜120b_1と、島状の金属膜120b_2とを有する(
図11(C)参
照)。
【0204】
次に、絶縁膜116、及び導電膜120a、120b上に絶縁膜118を形成する(図
12参照)。
【0205】
絶縁膜118は、水素及び窒素のいずれか一方または双方を有する。絶縁膜118とし
ては、例えば、窒化シリコン膜を用いると好適である。また、絶縁膜118としては、例
えば、スパッタリング法またはPECVD法を用いて形成することができる。例えば、絶
縁膜118をPECVD法で成膜する場合、基板温度は400℃未満、好ましくは375
℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下である。絶縁膜118を成膜する場
合の基板温度を、上述の範囲にすることで、緻密な膜を形成できるため好ましい。また、
絶縁膜118を成膜する場合の基板温度を、上述の範囲にすることで、絶縁膜114、1
16中の酸素または過剰酸素を、酸化物半導体膜108に移動させることが可能となる。
【0206】
また、絶縁膜118としてPECVD法により窒化シリコン膜を形成する場合、シリコ
ンを含む堆積性気体、窒素、及びアンモニアを原料ガスとして用いることが好ましい。窒
素と比較して少量のアンモニアを用いることで、プラズマ中でアンモニアが解離し、活性
種が発生する。該活性種が、シリコンを含む堆積性気体に含まれるシリコン及び水素の結
合、及び窒素の三重結合を切断する。この結果、シリコン及び窒素の結合が促進され、シ
リコン及び水素の結合が少なく、欠陥が少なく、緻密な窒化シリコン膜を形成することが
できる。一方、窒素に対するアンモニアの量が多いと、シリコンを含む堆積性気体及び窒
素の分解が進まず、シリコン及び水素結合が残存してしまい、欠陥が増大した、且つ粗な
窒化シリコン膜が形成されてしまう。これらのため、原料ガスにおいて、アンモニアに対
する窒素の流量比を5倍以上50倍以下、10倍以上50倍以下とすることが好ましい。
【0207】
本実施の形態においては、絶縁膜118として、PECVD装置を用いて、シラン、窒
素、及びアンモニアを原料ガスとして用いて、厚さ50nmの窒化シリコン膜を形成する
。流量は、シランが50sccm、窒素が5000sccmであり、アンモニアが100
sccmである。処理室の圧力を100Pa、基板温度を350℃とし、27.12MH
zの高周波電源を用いて1000Wの高周波電力を平行平板電極に供給する。PECVD
装置は電極面積が6000cm2である平行平板型のPECVD装置であり、供給した電
力を単位面積あたりの電力(電力密度)に換算すると1.7×10-1W/cm2である
。
【0208】
また、絶縁膜118形成後に、先に記載の第1の加熱処理及び第2の加熱処理と同等の
加熱処理(以下、第3の加熱処理とする)を行ってもよい。
【0209】
第3の加熱処理を行うことで、酸化物導電膜120_1の成膜の際に絶縁膜116に添
加した酸素は、酸化物半導体膜108(特に酸化物半導体膜108b)中に移動し、酸化
物半導体膜108中の酸素欠損を補填する。
【0210】
以上の工程で
図1(C)(D)に示すトランジスタ100を作製することができる。
【0211】
また、トランジスタ100の全ての作製工程において、基板温度を400℃未満、好ま
しくは375℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下とすることで、大面積
の基板を用いても基板の変形(歪みまたは反り)を極めて少なくすることができるため好
適である。なお、トランジスタ100の作製工程において、基板温度が高くなる工程とし
ては、代表的には、絶縁膜106、107の成膜時の基板温度(400℃未満、好ましく
は250℃以上350℃以下)、酸化物半導体膜108の成膜時の基板温度(室温以上3
40℃未満、好ましくは100℃以上200℃以下、さらに好ましくは100℃以上15
0℃未満)、絶縁膜116、118の成膜時の基板温度(400℃未満、好ましくは37
5℃未満、さらに好ましくは180℃以上350℃以下)、第1の加熱処理、第2の加熱
処理、または第3の加熱処理(400℃未満、好ましくは375℃未満、さらに好ましく
は180℃以上350℃以下)などが挙げられる。
【0212】
なお、本実施の形態で示す構成、方法は、他の実施の形態で示す構成、方法と適宜組み
合わせて用いることができる。
【0213】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、本発明の一態様に用いることのできる、酸化物半導体の組成
、及び酸化物半導体の構造等について、
図13乃至
図20を参照して説明する。
【0214】
<2-1.酸化物半導体の組成>
まず、酸化物半導体の組成について説明する。
【0215】
酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジ
ウム及び亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、
イットリウムまたはスズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、シリコン、
チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム
、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれ
た一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0216】
ここで、酸化物半導体が、インジウム、元素M及び亜鉛を有する場合を考える。なお、
元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元
素Mに適用可能な元素としては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウ
ム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル
、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組
み合わせても構わない。
【0217】
まず、
図13(A)、
図13(B)、および
図13(C)を用いて、本発明に係る酸化
物半導体が有するインジウム、元素M及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明す
る。なお、
図13には、酸素の原子数比については記載しない。また、酸化物半導体が有
するインジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、およ
び[Zn]とする。
【0218】
図13(A)、
図13(B)、および
図13(C)において、破線は、[In]:[M
]:[Zn]=(1+α):(1-α):1の原子数比(-1≦α≦1)となるライン、
[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):2の原子数比となるライン、[
In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):3の原子数比となるライン、[I
n]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):4の原子数比となるライン、および
[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1-α):5の原子数比となるラインを表
す。
【0219】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比(β≧0)と
なるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In
]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn
]=1:4:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原
子数比となるライン、及び[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比となるラ
インを表す。
【0220】
また、二点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+γ):2:(1-γ)の原子数
比(-1≦γ≦1)となるラインを表す。また、
図13に示す、[In]:[M]:[Z
n]=0:2:1の原子数比またはその近傍値の酸化物半導体は、スピネル型の結晶構造
をとりやすい。
【0221】
図13(A)および
図13(B)では、本発明の一態様の酸化物半導体が有する、イン
ジウム、元素M、及び亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
【0222】
一例として、
図14に、[In]:[M]:[Zn]=1:1:1である、InMZn
O
4の結晶構造を示す。また、
図14は、b軸に平行な方向から観察した場合のInMZ
nO
4の結晶構造である。なお、
図14に示すM、Zn、酸素を有する層(以下、(M,
Zn)層)における金属元素は、元素Mまたは亜鉛を表している。この場合、元素Mと亜
鉛の割合が等しいものとする。元素Mと亜鉛とは、置換が可能であり、配列は不規則であ
る。
【0223】
InMZnO
4は、層状の結晶構造(層状構造ともいう)をとり、
図14に示すように
、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)が1に対し、元素M、亜鉛、およ
び酸素を有する(M,Zn)層が2となる。
【0224】
また、インジウムと元素Mは、互いに置換可能である。そのため、(M,Zn)層の元
素Mがインジウムと置換し、(In,M,Zn)層と表すこともできる。その場合、In
層が1に対し、(In,M,Zn)層が2である層状構造をとる。
【0225】
[In]:[M]:[Zn]=1:1:2となる原子数比の酸化物半導体は、In層が
1に対し、(M,Zn)層が3である層状構造をとる。つまり、[In]および[M]に
対し[Zn]が大きくなると、酸化物半導体が結晶化した場合、In層に対する(M,Z
n)層の割合が増加する。
【0226】
ただし、酸化物半導体中において、In層が1に対し、(M,Zn)層が非整数である
場合、In層が1に対し、(M,Zn)層が整数である層状構造を複数種有する場合があ
る。例えば、[In]:[M]:[Zn]=1:1:1.5である場合、In層が1に対
し、(M,Zn)層が2である層状構造と、(M,Zn)層が3である層状構造とが混在
する層状構造となる場合がある。
【0227】
例えば、酸化物半導体をスパッタリング装置にて成膜する場合、ターゲットの原子数比
からずれた原子数比の膜が形成される。特に、成膜時の基板温度によっては、ターゲット
の[Zn]よりも、膜の[Zn]が小さくなる場合がある。
【0228】
また、酸化物半導体中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。
例えば、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比の近傍値である原子数比で
は、スピネル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、[In]:
[M]:[Zn]=1:0:0を示す原子数比の近傍値である原子数比では、ビックスバ
イト型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。酸化物半導体中に複数の相
が共存する場合、異なる結晶構造の間において、粒界(グレインバウンダリーともいう)
が形成される場合がある。
【0229】
また、インジウムの含有率を高くすることで、酸化物半導体のキャリア移動度(電子移
動度)を高くすることができる。これは、インジウム、元素M及び亜鉛を有する酸化物半
導体では、主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、インジウムの含有率
を高くすることにより、s軌道が重なる領域がより大きくなるため、インジウムの含有率
が高い酸化物半導体はインジウムの含有率が低い酸化物半導体と比較してキャリア移動度
が高くなるためである。
【0230】
一方、酸化物半導体中のインジウムおよび亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度
が低くなる。従って、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0を示す原子数比、および
その近傍値である原子数比(例えば
図13(C)に示す領域C)では、絶縁性が高くなる
。
【0231】
従って、本発明の一態様の酸化物半導体は、キャリア移動度が高く、かつ、粒界が少な
い層状構造となりやすい、
図13(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ま
しい。
【0232】
また、
図13(B)に示す領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4
.1、およびその近傍値を示している。近傍値には、例えば、原子数比が[In]:[M
]:[Zn]=5:3:4が含まれる。領域Bで示される原子数比を有する酸化物半導体
は、特に、結晶性が高く、キャリア移動度も高い優れた酸化物半導体である。
【0233】
なお、酸化物半導体が、層状構造を形成する条件は、原子数比によって一義的に定まら
ない。原子数比により、層状構造を形成するための難易の差はある。一方、同じ原子数比
であっても、形成条件により、層状構造になる場合も層状構造にならない場合もある。従
って、図示する領域は、酸化物半導体が層状構造を有する原子数比を示す領域であり、領
域A乃至領域Cの境界は厳密ではない。
【0234】
<2-2.酸化物半導体をトランジスタに用いる構成>
続いて、酸化物半導体をトランジスタに用いる構成について説明する。
【0235】
なお、酸化物半導体をトランジスタに用いることで、粒界におけるキャリア散乱等を減
少させることができるため、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる
。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0236】
また、トランジスタのチャネル領域には、キャリア密度の低い酸化物半導体を用いるこ
とが好ましい。例えば、酸化物半導体は、キャリア密度が8×1011/cm3未満、好
ましくは1×1011/cm3未満、さらに好ましくは1×1010/cm3未満であり
、1×10-9/cm3以上とすればよい。
【0237】
なお、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体は、キャリア発生源が
少ないため、キャリア密度を低くすることができる。また、高純度真性または実質的に高
純度真性である酸化物半導体は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる
場合がある。
【0238】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が
長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高
い酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場
合がある。
【0239】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度
を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、
近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、ア
ルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0240】
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0241】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化
物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭
素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法
(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)によ
り得られる濃度)を、2×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×1017a
toms/cm3以下とする。
【0242】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を
形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属
が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。
このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減すること
が好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属または
アルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm3以下、好ましくは2×10
16atoms/cm3以下にする。
【0243】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリ
ア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体
に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、該酸化物半導体にお
いて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素
濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm3以下、より好ましくは1×1018atoms/cm3以下、さ
らに好ましくは5×1017atoms/cm3以下とする。
【0244】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるた
め、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電
子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キ
ャリアである電子を生成することがある。従って、水素が含まれている酸化物半導体を用
いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素
はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SI
MSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×
1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満
、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。
【0245】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いるこ
とで、安定した電気特性を付与することができる。
【0246】
また、酸化物半導体膜は、エネルギーギャップが2eV以上、または2.5eV以上、
または3eV以上であると好ましい。
【0247】
また、酸化物半導体膜の厚さは、3nm以上200nm以下、好ましくは3nm以上1
00nm以下、さらに好ましくは3nm以上60nm以下である。
【0248】
また、酸化物半導体膜がIn-M-Zn酸化物の場合、In-M-Zn酸化物を成膜す
るために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn
=1:1:0.5、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、I
n:M:Zn=2:1:1.5、In:M:Zn=2:1:2.3、In:M:Zn=2
:1:3、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:
Zn=5:1:7等が好ましい。
【0249】
なお、成膜される酸化物半導体膜の金属元素の原子数比はそれぞれ、上記のスパッタリ
ングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%程度変動すること
がある。例えば、スパッタリングターゲットとして、原子数比がIn:Ga:Zn=4:
2:4.1を用いる場合、成膜される酸化物半導体膜の原子数比は、In:Ga:Zn=
4:2:3近傍となる場合がある。また、スパッタリングターゲットとして、原子数比が
In:Ga:Zn=5:1:7を用いる場合、成膜される酸化物半導体膜の原子数比は、
In:Ga:Zn=5:1:6近傍となる場合がある。
【0250】
<2-3.酸化物半導体の積層構造>
次に、酸化物半導体の積層構造について説明する。
【0251】
ここでは、酸化物半導体の積層構造として、酸化物半導体を2層構造または3層構造と
した場合について説明する。酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、及び酸化物半導体S
3の積層構造に接する絶縁体のバンド図と、酸化物半導体S2及び酸化物半導体S3の積
層構造に接する絶縁体のバンド図と、について、
図15を用いて説明する。
【0252】
図15(A)は、絶縁体I1、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S
3、及び絶縁体I2を有する積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。また、
図15
(B)は、絶縁体I1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、及び絶縁体I2を有する
積層構造の膜厚方向のバンド図の一例である。なお、バンド図は、理解を容易にするため
絶縁体I1、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2、酸化物半導体S3、及び絶縁体I2
の伝導帯下端のエネルギー準位(Ec)を示す。
【0253】
酸化物半導体S1、酸化物半導体S3は、酸化物半導体S2よりも伝導帯下端のエネル
ギー準位が真空準位に近く、代表的には、酸化物半導体S2の伝導帯下端のエネルギー準
位と、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の伝導帯下端のエネルギー準位との差が、0
.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV以下、または1eV以下であること
が好ましい。すなわち、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3の電子親和力と、酸化物半
導体S2の電子親和力との差が、0.15eV以上、または0.5eV以上、かつ2eV
以下、または1eV以下であることが好ましい。
【0254】
図15(A)、及び
図15(B)に示すように、酸化物半導体S1、酸化物半導体S2
、酸化物半導体S3において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言
すると、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようなバンド図を
有するためには、酸化物半導体S1と酸化物半導体S2との界面、または酸化物半導体S
2と酸化物半導体S3との界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよ
い。
【0255】
具体的には、酸化物半導体S1と酸化物半導体S2、酸化物半導体S2と酸化物半導体
S3が、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混
合層を形成することができる。例えば、酸化物半導体S2がIn-Ga-Zn酸化物半導
体の場合、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3として、In-Ga-Zn酸化物半導体
、Ga-Zn酸化物半導体、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0256】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物半導体S2となる。酸化物半導体S1と酸化
物半導体S2との界面、及び酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面における欠陥
準位密度を低くすることができるため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さく、
高いオン電流が得られる。
【0257】
トラップ準位に電子が捕獲されることで、捕獲された電子は固定電荷のように振る舞う
ため、トランジスタのしきい値電圧はプラス方向にシフトしてしまう。酸化物半導体S1
、酸化物半導体S3を設けることにより、トラップ準位を酸化物半導体S2より遠ざける
ことができる。当該構成とすることで、トランジスタのしきい値電圧がプラス方向にシフ
トすることを防止することができる。
【0258】
酸化物半導体S1、酸化物半導体S3は、酸化物半導体S2と比較して、導電率が十分
に低い材料を用いる。このとき、酸化物半導体S2、酸化物半導体S2と酸化物半導体S
1との界面、及び酸化物半導体S2と酸化物半導体S3との界面が、主にチャネル領域と
して機能する。例えば、酸化物半導体S1、酸化物半導体S3には、
図13(C)におい
て、絶縁性が高くなる領域Cで示す原子数比の酸化物半導体を用いればよい。なお、
図1
3(C)に示す領域Cは、[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、またはその近傍値
である原子数比を示している。
【0259】
特に、酸化物半導体S2に領域Aで示される原子数比の酸化物半導体を用いる場合、酸
化物半導体S1及び酸化物半導体S3には、[M]/[In]が1以上、好ましくは2以
上である酸化物半導体を用いることが好ましい。また、酸化物半導体S3として、十分に
高い絶縁性を得ることができる[M]/([Zn]+[In])が1以上である酸化物半
導体を用いることが好適である。
【0260】
<2-4.酸化物半導体の構造>
次に、酸化物半導体の構造について説明する。
【0261】
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分け
られる。非単結晶酸化物半導体としては、CAAC-OS(c-axis-aligne
d crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化
物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semicon
ductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-
like oxide semiconductor)及び非晶質酸化物半導体などがあ
る。
【0262】
また別の観点では、酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体と、それ以外の結晶性酸化物
半導体と、に分けられる。結晶性酸化物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC
-OS、多結晶酸化物半導体及びnc-OSなどがある。
【0263】
非晶質構造は、一般に、等方的であって不均質構造を持たない、準安定状態で原子の配
置が固定化していない、結合角度が柔軟である、短距離秩序は有するが長距離秩序を有さ
ない、などといわれている。
【0264】
すなわち、安定な酸化物半導体を完全な非晶質(completely amorph
ous)酸化物半導体とは呼べない。また、等方的でない(例えば、微小な領域において
周期構造を有する)酸化物半導体を、完全な非晶質酸化物半導体とは呼べない。一方、a
-like OSは、等方的でないが、鬆(ボイドともいう。)を有する不安定な構造で
ある。不安定であるという点では、a-like OSは、物性的に非晶質酸化物半導体
に近い。
【0265】
[CAAC-OS]
まずは、CAAC-OSについて説明する。
【0266】
CAAC-OSは、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化物
半導体の一種である。
【0267】
CAAC-OSをX線回折(XRD:X-Ray Diffraction)によって
解析した場合について説明する。例えば、空間群R-3mに分類されるInGaZnO
4
の結晶を有するCAAC-OSに対し、out-of-plane法による構造解析を行
うと、
図16(A)に示すように回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる。このピ
ークは、InGaZnO
4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC-OS
では、結晶がc軸配向性を有し、c軸がCAAC-OSの膜を形成する面(被形成面とも
いう。)、または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。なお、2θが31
°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°
近傍のピークは、空間群Fd-3mに分類される結晶構造に起因する。そのため、CAA
C-OSは、該ピークを示さないことが好ましい。
【0268】
一方、CAAC-OSに対し、被形成面に平行な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、
InGaZnO
4の結晶の(110)面に帰属される。そして、2θを56°近傍に固定
し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)
を行っても、
図16(B)に示すように明瞭なピークは現れない。一方、単結晶InGa
ZnO
4に対し、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合、
図16(C)に示す
ように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。したがって、
XRDを用いた構造解析から、CAAC-OSは、a軸及びb軸の配向が不規則であるこ
とが確認できる。
【0269】
次に、電子回折によって解析したCAAC-OSについて説明する。例えば、InGa
ZnO
4の結晶を有するCAAC-OSに対し、CAAC-OSの被形成面に平行にプロ
ーブ径が300nmの電子線を入射させると、
図16(D)に示すような回折パターン(
制限視野電子回折パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、I
nGaZnO
4の結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子
回折によっても、CAAC-OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成
面または上面に略垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面
に垂直にプローブ径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを
図16(E
)に示す。
図16(E)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、プロ
ーブ径が300nmの電子線を用いた電子回折によっても、CAAC-OSに含まれるペ
レットのa軸及びb軸は配向性を有さないことがわかる。なお、
図16(E)における第
1リングは、InGaZnO
4の結晶の(010)面及び(100)面などに起因すると
考えられる。また、
図16(E)における第2リングは(110)面などに起因すると考
えられる。
【0270】
また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron M
icroscope)によって、CAAC-OSの明視野像と回折パターンとの複合解析
像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認することができ
る。一方、高分解能TEM像であってもペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう。)を明確に確認することができない場合がある。そのため、CAA
C-OSは、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0271】
図17(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC-OSの断面の高分解能
TEM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical A
berration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高
分解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像は
、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fなどに
よって観察することができる。
【0272】
図17(A)より、金属原子が層状に配列している領域であるペレットを確認すること
ができる。ペレット一つの大きさは1nm以上のものや、3nm以上のものがあることが
わかる。したがって、ペレットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこ
ともできる。また、CAAC-OSを、CANC(C-Axis Aligned na
nocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。ペレットは、CAA
C-OSの被形成面または上面の凹凸を反映しており、CAAC-OSの被形成面または
上面と平行となる。
【0273】
また、
図17(B)及び
図17(C)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC
-OSの平面のCs補正高分解能TEM像を示す。
図17(D)及び
図17(E)は、そ
れぞれ
図17(B)及び
図17(C)を画像処理した像である。以下では、画像処理の方
法について説明する。まず、
図17(B)を高速フーリエ変換(FFT:Fast Fo
urier Transform)処理することでFFT像を取得する。次に、取得した
FFT像において原点を基準に、2.8nm
-1から5.0nm
-1の間の範囲を残すマ
スク処理する。次に、マスク処理したFFT像を、逆高速フーリエ変換(IFFT:In
verse Fast Fourier Transform)処理することで画像処理
した像を取得する。こうして取得した像をFFTフィルタリング像と呼ぶ。FFTフィル
タリング像は、Cs補正高分解能TEM像から周期成分を抜き出した像であり、格子配列
を示している。
【0274】
図17(D)では、格子配列の乱れた箇所を破線で示している。破線で囲まれた領域が
、一つのペレットである。そして、破線で示した箇所がペレットとペレットとの連結部で
ある。破線は、六角形状であるため、ペレットが六角形状であることがわかる。なお、ペ
レットの形状は、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合が多い。
【0275】
図17(E)では、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格
子配列の向きが変化している箇所を点線で示し、格子配列の向きの変化を破線で示してい
る。点線近傍においても、明確な結晶粒界を確認することはできない。点線近傍の格子点
を中心に周囲の格子点を繋ぐと、歪んだ六角形や、五角形及び/または七角形などが形成
できる。即ち、格子配列を歪ませることによって結晶粒界の形成を抑制していることがわ
かる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において原子配列が稠密でないことや、
金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容す
ることができるためと考えられる。
【0276】
以上に示すように、CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において
複数のペレット(ナノ結晶)が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。よって、C
AAC-OSを、CAA crystal(c-axis-aligned a-b-p
lane-anchored crystal)を有する酸化物半導体と称することもで
きる。
【0277】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。酸化物半導体の結晶性は不純物の
混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥
(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。
【0278】
なお、不純物は、酸化物半導体の主成分以外の元素で、水素、炭素、シリコン、遷移金
属元素などがある。例えば、シリコンなどの、酸化物半導体を構成する金属元素よりも酸
素との結合力の強い元素は、酸化物半導体から酸素を奪うことで酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、
二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体の原子配列
を乱し、結晶性を低下させる要因となる。
【0279】
酸化物半導体が不純物や欠陥を有する場合、光や熱などによって特性が変動する場合が
ある。例えば、酸化物半導体に含まれる不純物は、キャリアトラップとなる場合や、キャ
リア発生源となる場合がある。例えば、酸化物半導体中の酸素欠損は、キャリアトラップ
となる場合や、水素を捕獲することによってキャリア発生源となる場合がある。
【0280】
不純物及び酸素欠損の少ないCAAC-OSは、キャリア密度の低い酸化物半導体であ
る。具体的には、8×1011cm-3未満、好ましくは1×1011cm-3未満、さ
らに好ましくは1×1010cm-3未満であり、1×10-9cm-3以上のキャリア
密度の酸化物半導体とすることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または
実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。CAAC-OSは、不純物濃度が低く、欠陥
準位密度が低い。即ち、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0281】
[nc-OS]
次に、nc-OSについて説明する。
【0282】
nc-OSをXRDによって解析した場合について説明する。例えば、nc-OSに対
し、out-of-plane法による構造解析を行うと、配向性を示すピークが現れな
い。即ち、nc-OSの結晶は配向性を有さない。
【0283】
また、例えば、InGaZnO
4の結晶を有するnc-OSを薄片化し、厚さが34n
mの領域に対し、被形成面に平行にプローブ径が50nmの電子線を入射させると、
図1
8(A)に示すようなリング状の回折パターン(ナノビーム電子回折パターン)が観測さ
れる。また、同じ試料にプローブ径が1nmの電子線を入射させたときの回折パターン(
ナノビーム電子回折パターン)を
図18(B)に示す。
図18(B)より、リング状の領
域内に複数のスポットが観測される。したがって、nc-OSは、プローブ径が50nm
の電子線を入射させることでは秩序性が確認されないが、プローブ径が1nmの電子線を
入射させることでは秩序性が確認される。
【0284】
また、厚さが10nm未満の領域に対し、プローブ径が1nmの電子線を入射させると
、
図18(C)に示すように、スポットが略正六角状に配置された電子回折パターンを観
測される場合がある。したがって、厚さが10nm未満の範囲において、nc-OSが秩
序性の高い領域、即ち結晶を有することがわかる。なお、結晶が様々な方向を向いている
ため、規則的な電子回折パターンが観測されない領域もある。
【0285】
図18(D)に、被形成面と略平行な方向から観察したnc-OSの断面のCs補正高
分解能TEM像を示す。nc-OSは、高分解能TEM像において、補助線で示す箇所な
どのように結晶部を確認することのできる領域と、明確な結晶部を確認することのできな
い領域と、を有する。nc-OSに含まれる結晶部は、1nm以上10nm以下の大きさ
であり、特に1nm以上3nm以下の大きさであることが多い。なお、結晶部の大きさが
10nmより大きく100nm以下である酸化物半導体を微結晶酸化物半導体(micr
o crystalline oxide semiconductor)と呼ぶことが
ある。nc-OSは、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場
合がある。なお、ナノ結晶は、CAAC-OSにおけるペレットと起源を同じくする可能
性がある。そのため、以下ではnc-OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
【0286】
このように、nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特
に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS
は、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見
られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶
質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0287】
なお、ペレット(ナノ結晶)間で結晶方位が規則性を有さないことから、nc-OSを
、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有する酸化
物半導体、またはNANC(Non-Aligned nanocrystals)を有
する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0288】
nc-OSは、非晶質酸化物半導体よりも規則性の高い酸化物半導体である。そのため
、nc-OSは、a-like OSや非晶質酸化物半導体よりも欠陥準位密度が低くな
る。ただし、nc-OSは、異なるペレット間で結晶方位に規則性が見られない。そのた
め、nc-OSは、CAAC-OSと比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0289】
[a-like OS]
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物
半導体である。
【0290】
図19に、a-like OSの高分解能断面TEM像を示す。ここで、
図19(A)
は電子照射開始時におけるa-like OSの高分解能断面TEM像である。
図19(
B)は4.3×10
8e
-/nm
2の電子(e
-)照射後におけるa-like OSの
高分解能断面TEM像である。
図19(A)及び
図19(B)より、a-like OS
は電子照射開始時から、縦方向に延伸する縞状の明領域が観察されることがわかる。また
、明領域は、電子照射後に形状が変化することがわかる。なお、明領域は、鬆または低密
度領域と推測される。
【0291】
鬆を有するため、a-like OSは、不安定な構造である。以下では、a-lik
e OSが、CAAC-OS及びnc-OSと比べて不安定な構造であることを示すため
、電子照射による構造の変化を示す。
【0292】
試料として、a-like OS、nc-OS及びCAAC-OSを準備する。いずれ
の試料もIn-Ga-Zn酸化物である。
【0293】
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試
料は、いずれも結晶部を有する。
【0294】
なお、InGaZnO4の結晶の単位格子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn
-O層を6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られてい
る。これらの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と
同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、
以下では、格子縞の間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZ
nO4の結晶部と見なした。なお、格子縞は、InGaZnO4の結晶のa-b面に対応
する。
【0295】
図20は、各試料の結晶部(22箇所から30箇所)の平均の大きさを調査した例であ
る。なお、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。
図20より、a-lik
e OSは、TEM像の取得などに係る電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなって
いくことがわかる。
図20より、TEMによる観察初期においては1.2nm程度の大き
さだった結晶部(初期核ともいう。)が、電子(e
-)の累積照射量が4.2×10
8e
-/nm
2においては1.9nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、n
c-OS及びCAAC-OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×10
8
e
-/nm
2までの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。
図20よ
り、電子の累積照射量によらず、nc-OS及びCAAC-OSの結晶部の大きさは、そ
れぞれ1.3nm程度及び1.8nm程度であることがわかる。なお、電子線照射及びT
EMの観察は、日立透過電子顕微鏡H-9000NARを用いた。電子線照射条件は、加
速電圧を300kV、電流密度を6.7×10
5e
-/(nm
2・s)、照射領域の直径
を230nmとした。
【0296】
このように、a-like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合が
ある。一方、nc-OS及びCAAC-OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど
見られない。即ち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、不
安定な構造であることがわかる。
【0297】
また、鬆を有するため、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べ
て密度の低い構造である。具体的には、a-like OSの密度は、同じ組成の単結晶
の密度の78.6%以上92.3%未満である。また、nc-OSの密度及びCAAC-
OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満である。単結晶の
密度の78%未満である酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0298】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において、
菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO4の密度は6.357g/cm3である。よ
って、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体におい
て、a-like OSの密度は5.0g/cm3以上5.9g/cm3未満である。ま
た、例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]を満たす酸化物半導体において
、nc-OSの密度及びCAAC-OSの密度は5.9g/cm3以上6.3g/cm3
未満である。
【0299】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合、任意の割合で組成の異なる単結晶を組み合
わせることにより、所望の組成における単結晶に相当する密度を見積もることができる。
所望の組成の単結晶に相当する密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対して
、加重平均を用いて見積もればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶を
組み合わせて見積もることが好ましい。
【0300】
以上のように、酸化物半導体は、様々な構造をとり、それぞれが様々な特性を有する。
なお、酸化物半導体は、例えば、非晶質酸化物半導体、a-like OS、nc-OS
、CAAC-OSのうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0301】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態または他の実施例に示す構成と適宜
、組み合わせて用いることができる。
【0302】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、先の実施の形態で例示したトランジスタを有する表示装置の
一例について、
図21乃至
図27を用いて以下説明を行う。
【0303】
図21は、表示装置の一例を示す上面図である。
図21に示す表示装置700は、第1
の基板701上に設けられた画素部702と、第1の基板701に設けられたソースドラ
イバ回路部704及びゲートドライバ回路部706と、画素部702、ソースドライバ回
路部704、及びゲートドライバ回路部706を囲むように配置されるシール材712と
、第1の基板701に対向するように設けられる第2の基板705と、を有する。なお、
第1の基板701と第2の基板705は、シール材712によって封止されている。すな
わち、画素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706は
、第1の基板701とシール材712と第2の基板705によって封止されている。なお
、
図21には図示しないが、第1の基板701と第2の基板705の間には表示素子が設
けられる。
【0304】
また、表示装置700は、第1の基板701上のシール材712によって囲まれている
領域とは異なる領域に、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回
路部706、及びゲートドライバ回路部706と、それぞれ電気的に接続されるFPC端
子部708(FPC:Flexible printed circuit)が設けられ
る。また、FPC端子部708には、FPC716が接続され、FPC716によって画
素部702、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706に各種信号
等が供給される。また、画素部702、ソースドライバ回路部704、ゲートドライバ回
路部706、及びFPC端子部708には、信号線710が各々接続されている。FPC
716により供給される各種信号等は、信号線710を介して、画素部702、ソースド
ライバ回路部704、ゲートドライバ回路部706、及びFPC端子部708に与えられ
る。
【0305】
また、表示装置700にゲートドライバ回路部706を複数設けてもよい。また、表示
装置700としては、ソースドライバ回路部704、及びゲートドライバ回路部706を
画素部702と同じ第1の基板701に形成している例を示しているが、この構成に限定
されない。例えば、ゲートドライバ回路部706のみを第1の基板701に形成しても良
い、またはソースドライバ回路部704のみを第1の基板701に形成しても良い。この
場合、ソースドライバ回路またはゲートドライバ回路等が形成された基板(例えば、単結
晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を、第1の基板701に形成す
る構成としても良い。なお、別途形成した駆動回路基板の接続方法は、特に限定されるも
のではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法など
を用いることができる。
【0306】
また、表示装置700が有する画素部702、ソースドライバ回路部704及びゲート
ドライバ回路部706は、複数のトランジスタを有しており、本発明の一態様の半導体装
置であるトランジスタを適用することができる。
【0307】
また、表示装置700は、様々な素子を有することが出来る。該素子の一例としては、
例えば、エレクトロルミネッセンス(EL)素子(有機物及び無機物を含むEL素子、有
機EL素子、無機EL素子、LEDなど)、発光トランジスタ素子(電流に応じて発光す
るトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク素子、電気泳動素子、エレクト
ロウェッティング素子、プラズマディスプレイパネル(PDP)、MEMS(マイクロ・
エレクトロ・メカニカル・システム)ディスプレイ(例えば、グレーティングライトバル
ブ(GLV)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、デジタル・マイクロ・シャ
ッター(DMS)素子、インターフェロメトリック・モジュレーション(IMOD)素子
など)、圧電セラミックディスプレイなどが挙げられる。
【0308】
また、EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子
放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FE
D)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conductio
n Electron-emitter Display)などがある。液晶素子を用い
た表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶
ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプ
レイ)などがある。電子インク素子又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、
電子ペーパーなどがある。なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを
実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するよ
うにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを
有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路
を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0309】
なお、表示装置700における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式
等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、R
GB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、Rの画素とGの
画素とBの画素とW(白)の画素の四画素から構成されてもよい。または、ペンタイル配
列のように、RGBのうちの2色分で一つの色要素を構成し、色要素よって、異なる2色
を選択して構成してもよい。またはRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上
追加してもよい。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい
。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表
示の表示装置に適用することもできる。
【0310】
また、バックライト(有機EL素子、無機EL素子、LED、蛍光灯など)に白色発光
(W)を用いて表示装置をフルカラー表示させるために、着色層(カラーフィルタともい
う。)を用いてもよい。着色層は、例えば、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B
)、イエロー(Y)などを適宜組み合わせて用いることができる。着色層を用いることで
、着色層を用いない場合と比べて色の再現性を高くすることができる。このとき、着色層
を有する領域と、着色層を有さない領域と、を配置することによって、着色層を有さない
領域における白色光を直接表示に利用しても構わない。一部に着色層を有さない領域を配
置することで、明るい表示の際に、着色層による輝度の低下を少なくでき、消費電力を2
割から3割程度低減できる場合がある。ただし、有機EL素子や無機EL素子などの自発
光素子を用いてフルカラー表示する場合、R、G、B、Y、Wを、それぞれの発光色を有
する素子から発光させても構わない。自発光素子を用いることで、着色層を用いた場合よ
りも、さらに消費電力を低減できる場合がある。
【0311】
また、カラー化方式としては、上述の白色発光からの発光の一部をカラーフィルタを通
すことで赤色、緑色、青色に変換する方式(カラーフィルタ方式)の他、赤色、緑色、青
色の発光をそれぞれ用いる方式(3色方式)、または青色発光からの発光の一部を赤色や
緑色に変換する方式(色変換方式、量子ドット方式)を適用してもよい。
【0312】
本実施の形態においては、表示素子として液晶素子及びEL素子を用いる構成について
、
図22及び
図24を用いて説明する。なお、
図22は、
図21に示す一点鎖線Q-Rに
おける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。また、
図24は、図
21に示す一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子としてEL素子を用いた構成
である。
【0313】
まず、
図22及び
図24に示す共通部分について最初に説明し、次に異なる部分につい
て以下説明する。
【0314】
<3-1.表示装置の共通部分に関する説明>
図22及び
図24に示す表示装置700は、引き回し配線部711と、画素部702と
、ソースドライバ回路部704と、FPC端子部708と、を有する。また、引き回し配
線部711は、信号線710を有する。また、画素部702は、トランジスタ750及び
容量素子790を有する。また、ソースドライバ回路部704は、トランジスタ752を
有する。
【0315】
トランジスタ750及びトランジスタ752は、先に示すトランジスタ100と同様の
構成である。なお、トランジスタ750及びトランジスタ752の構成については、先の
実施の形態に示す、その他のトランジスタを用いてもよい。
【0316】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物
半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を低くすることができる。よって、画像
信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長
く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電
力を抑制する効果を奏する。
【0317】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるた
め、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表
示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するド
ライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路とし
て、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置
の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトラン
ジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0318】
容量素子790は、トランジスタ750が有する第1のゲート電極と機能する導電膜と
同一の導電膜を加工する工程を経て形成される下部電極と、トランジスタ750が有する
ソース電極及びドレイン電極として機能する導電膜と同一の導電膜を加工する工程を経て
形成される上部電極と、を有する。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ
750が有する第1のゲート絶縁膜として機能する絶縁膜と同一の絶縁膜を形成する工程
を経て形成される絶縁膜が設けられる。すなわち、容量素子790は、一対の電極間に誘
電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造である。
【0319】
また、
図22及び
図24において、トランジスタ750、トランジスタ752、及び容
量素子790上に平坦化絶縁膜770が設けられている。
【0320】
平坦化絶縁膜770としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂
、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料
を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで
、平坦化絶縁膜770を形成してもよい。また、平坦化絶縁膜770を設けない構成とし
てもよい。
【0321】
また、
図22及び
図24においては、画素部702が有するトランジスタ750と、ソ
ースドライバ回路部704が有するトランジスタ752と、を同じ構造のトランジスタを
用いる構成について例示したが、これに限定されない。例えば、画素部702と、ソース
ドライバ回路部704とは、異なるトランジスタを用いてもよい。具体的には、画素部7
02にスタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704に実施の形態1に示
す逆スタガ型のトランジスタを用いる構成、あるいは画素部702に実施の形態1に示す
逆スタガ型のトランジスタを用い、ソースドライバ回路部704にスタガ型のトランジス
タを用いる構成などが挙げられる。なお、上記のソースドライバ回路部704を、ゲート
ドライバ回路部と読み替えてもよい。
【0322】
また、信号線710は、トランジスタ750、752のソース電極及びドレイン電極と
して機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。信号線710として、例えば、銅元素
を含む材料を用いた場合、配線抵抗に起因する信号遅延等が少なく、大画面での表示が可
能となる。
【0323】
また、FPC端子部708は、接続電極760、異方性導電膜780、及びFPC71
6を有する。なお、接続電極760は、トランジスタ750、752のソース電極及びド
レイン電極として機能する導電膜と同じ工程を経て形成される。また、接続電極760は
、FPC716が有する端子と異方性導電膜780を介して、電気的に接続される。
【0324】
また、第1の基板701及び第2の基板705としては、例えばガラス基板を用いるこ
とができる。また、第1の基板701及び第2の基板705として、可撓性を有する基板
を用いてもよい。該可撓性を有する基板としては、例えばプラスチック基板等が挙げられ
る。
【0325】
また、第1の基板701と第2の基板705の間には、構造体778が設けられる。構
造体778は、絶縁膜を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、
第1の基板701と第2の基板705の間の距離(セルギャップ)を制御するために設け
られる。なお、構造体778として、球状のスペーサを用いていても良い。
【0326】
また、第2の基板705側には、ブラックマトリクスとして機能する遮光膜738と、
カラーフィルタとして機能する着色膜736と、遮光膜738及び着色膜736に接する
絶縁膜734が設けられる。
【0327】
<3-2.液晶素子を用いる表示装置の構成例>
図22に示す表示装置700は、液晶素子775を有する。液晶素子775は、導電膜
772、導電膜774、及び液晶層776を有する。導電膜774は、第2の基板705
側に設けられ、対向電極としての機能を有する。
図22に示す表示装置700は、導電膜
772と導電膜774に印加される電圧によって、液晶層776の配向状態が変わること
によって光の透過、非透過が制御され画像を表示することができる。
【0328】
また、導電膜772は、トランジスタ750が有するソース電極及びドレイン電極とし
て機能する導電膜と電気的に接続される。導電膜772は、平坦化絶縁膜770上に形成
され画素電極、すなわち表示素子の一方の電極として機能する。また、導電膜772は、
反射電極としての機能を有する。
図22に示す表示装置700は、外光を利用し導電膜7
72で光を反射して着色膜736を介して表示する、所謂反射型のカラー液晶表示装置で
ある。
【0329】
導電膜772としては、可視光において透光性のある導電膜、または可視光において反
射性のある導電膜を用いることができる。可視光において透光性のある導電膜としては、
例えば、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)の中から選ばれた一種を含む材
料を用いるとよい。可視光において反射性のある導電膜としては、例えば、アルミニウム
、または銀を含む材料を用いるとよい。本実施の形態においては、導電膜772として、
可視光において、反射性のある導電膜を用いる。
【0330】
なお、
図22においては、導電膜772をトランジスタ750のドレイン電極として機
能する導電膜に接続する構成について例示したが、これに限定されない。例えば、
図23
に示すように、導電膜772を接続電極として機能する導電膜777を間に挟んでトラン
ジスタ750のドレイン電極として機能する導電膜と電気的に接続させる構成としてもよ
い。なお、導電膜777としては、トランジスタ750の第2のゲート電極として機能す
る導電膜と同じ導電膜を加工する工程を経て形成されるため、製造工程を増やすことなく
形成することができる。
【0331】
また、
図22に示す表示装置700は、反射型のカラー液晶表示装置について例示した
が、これに限定されない、例えば、導電膜772を可視光において、透光性のある導電膜
を用いることで透過型のカラー液晶表示装置としてもよい。あるいは、反射型のカラー液
晶表示装置と、透過型のカラー液晶表示装置と、を組み合わせた所謂半透過型のカラー液
晶表示装置としてもよい。
【0332】
ここで、透過型のカラー液晶表示装置の一例を
図25に示す。
図25は、
図21に示す
一点鎖線Q-Rにおける断面図であり、表示素子として液晶素子を用いた構成である。ま
た、
図25に示す表示装置700は、液晶素子の駆動方式として横電界方式(例えば、F
FSモード)を用いる構成の一例である。
図25に示す構成の場合、画素電極として機能
する導電膜772上に絶縁膜773が設けられ、絶縁膜773上に導電膜774が設けら
れる。この場合、導電膜774は、共通電極(コモン電極ともいう)としての機能を有し
、絶縁膜773を介して、導電膜772と導電膜774との間に生じる電界によって、液
晶層776の配向状態を制御することができる。
【0333】
また、
図22及び
図25において図示しないが、導電膜772または導電膜774のい
ずれか一方または双方に、液晶層776と接する側に、それぞれ配向膜を設ける構成とし
てもよい。また、
図22及び
図25において図示しないが、偏光部材、位相差部材、反射
防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設けてもよい。例えば、偏光基板及び位
相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトな
どを用いてもよい。
【0334】
表示素子として液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液
晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これら
の液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイ
ラルネマチック相、等方相等を示す。
【0335】
また、横電界方式を採用する場合、配向膜を用いないブルー相を示す液晶を用いてもよ
い。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリ
ック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発
現しないため、温度範囲を改善するために数重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組
成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速
度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要である。また配向膜を設けなくてもよ
いのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を
防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。
また、ブルー相を示す液晶材料は、視野角依存性が小さい。
【0336】
また、表示素子として液晶素子を用いる場合、TN(Twisted Nematic
)モード、IPS(In-Plane-Switching)モード、FFS(Frin
ge Field Switching)モード、ASM(Axially Symme
tric aligned Micro-cell)モード、OCB(Optical
Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroe
lectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerr
oelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる
。
【0337】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用し
た透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが
、例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment
)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モー
ド、ASVモードなどを用いることができる。
【0338】
<3-3.発光素子を用いる表示装置>
図24に示す表示装置700は、発光素子782を有する。発光素子782は、導電膜
772、EL層786、及び導電膜788を有する。
図24に示す表示装置700は、発
光素子782が有するEL層786が発光することによって、画像を表示することができ
る。なお、EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。
【0339】
有機化合物に用いることのできる材料としては、蛍光性材料または燐光性材料などが挙
げられる。また、量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット
材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、
などが挙げられる。また、12族と16族、13族と15族、または14族と16族の元
素グループを含む材料を用いてもよい。または、カドミウム(Cd)、セレン(Se)、
亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルル(Te)、鉛(P
b)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)、アルミニウム(Al)、等の元素を有する量子
ドット材料を用いてもよい。
【0340】
また、
図24に示す表示装置700には、平坦化絶縁膜770及び導電膜772上に絶
縁膜730が設けられる。絶縁膜730は、導電膜772の一部を覆う。なお、発光素子
782はトップエミッション構造である。したがって、導電膜788は透光性を有し、E
L層786が発する光を透過する。なお、本実施の形態においては、トップエミッション
構造について、例示するが、これに限定されない。例えば、導電膜772側に光を射出す
るボトムエミッション構造や、導電膜772及び導電膜788の双方に光を射出するデュ
アルエミッション構造にも適用することができる。
【0341】
また、発光素子782と重なる位置に、着色膜736が設けられ、絶縁膜730と重な
る位置、引き回し配線部711、及びソースドライバ回路部704に遮光膜738が設け
られている。また、着色膜736及び遮光膜738は、絶縁膜734で覆われている。ま
た、発光素子782と絶縁膜734の間は封止膜732で充填されている。なお、
図24
に示す表示装置700においては、着色膜736を設ける構成について例示したが、これ
に限定されない。例えば、EL層786を塗り分けにより形成する場合においては、着色
膜736を設けない構成としてもよい。
【0342】
<3-4.表示装置に入出力装置を設ける構成例>
また、
図24及び
図25に示す表示装置700に入出力装置を設けてもよい。当該入出
力装置としては、例えば、タッチパネル等が挙げられる。
【0343】
【0344】
図26は
図24に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成の断面図であ
り、
図27は
図25に示す表示装置700にタッチパネル791を設ける構成の断面図で
ある。
【0345】
まず、
図26及び
図27に示すタッチパネル791について、以下説明を行う。
【0346】
図26及び
図27に示すタッチパネル791は、基板705と着色膜736との間に設
けられる、所謂インセル型のタッチパネルである。タッチパネル791は、遮光膜738
、及び着色膜736を形成する前に、基板705側に形成すればよい。
【0347】
なお、タッチパネル791は、遮光膜738と、絶縁膜792と、電極793と、電極
794と、絶縁膜795と、電極796と、絶縁膜797と、を有する。例えば、指やス
タイラスなどの被検知体が近接することで、電極793と、電極794との相互容量の変
化を検知することができる。
【0348】
また、
図26及び
図27に示すトランジスタ750の上方においては、電極793と、
電極794との交差部を明示している。電極796は、絶縁膜795に設けられた開口部
を介して、電極794を挟む2つの電極793と電気的に接続されている。なお、
図26
及び
図27においては、電極796が設けられる領域を画素部702に設ける構成を例示
したが、これに限定されず、例えば、ソースドライバ回路部704に形成してもよい。
【0349】
電極793及び電極794は、遮光膜738と重なる領域に設けられる。また、
図26
に示すように、電極793は、発光素子782と重ならないように設けられると好ましい
。また、
図27に示すように、電極793は、液晶素子775と重ならないように設けら
れると好ましい。別言すると、電極793は、発光素子782及び液晶素子775と重な
る領域に開口部を有する。すなわち、電極793はメッシュ形状を有する。このような構
成とすることで、電極793は、発光素子782が射出する光を遮らない構成とすること
ができる。または、電極793は、液晶素子775を透過する光を遮らない構成とするこ
とができる。したがって、タッチパネル791を配置することによる輝度の低下が極めて
少ないため、視認性が高く、且つ消費電力が低減された表示装置を実現できる。なお、電
極794も同様の構成とすればよい。
【0350】
また、電極793及び電極794が発光素子782と重ならないため、電極793及び
電極794には、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。または、電極7
93及び電極794が液晶素子775と重ならないため、電極793及び電極794には
、可視光の透過率が低い金属材料を用いることができる。
【0351】
そのため、可視光の透過率が高い酸化物材料を用いた電極と比較して、電極793及び
電極794の抵抗を低くすることが可能となり、タッチパネルのセンサ感度を向上させる
ことができる。
【0352】
例えば、電極793、794、796には、導電性のナノワイヤを用いてもよい。当該
ナノワイヤは、直径の平均値が1nm以上100nm以下、好ましくは5nm以上50n
m以下、より好ましくは5nm以上25nm以下の大きさとすればよい。また、上記ナノ
ワイヤとしては、Agナノワイヤ、Cuナノワイヤ、またはAlナノワイヤ等の金属ナノ
ワイヤ、あるいは、カーボンナノチューブなどを用いればよい。例えば、電極664、6
65、667のいずれか一つあるいは全部にAgナノワイヤを用いる場合、可視光におけ
る光透過率を89%以上、シート抵抗値を40Ω/□以上100Ω/□以下とすることが
できる。
【0353】
また、
図26及び
図27においては、インセル型のタッチパネルの構成について例示し
たが、これに限定されない。例えば、表示装置700上に形成する、所謂オンセル型のタ
ッチパネルや、表示装置700に貼り合わせて用いる、所謂アウトセル型のタッチパネル
としてもよい。
【0354】
このように、本発明の一態様の表示装置は、様々な形態のタッチパネルと組み合わせて
用いることができる。
【0355】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0356】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示装置について、
図28を
用いて説明を行う。
【0357】
<4.表示装置の回路構成>
図28(A)に示す表示装置は、表示素子の画素を有する領域(以下、画素部502と
いう)と、画素部502の外側に配置され、画素を駆動するための回路を有する回路部(
以下、駆動回路部504という)と、素子の保護機能を有する回路(以下、保護回路50
6という)と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成とし
てもよい。
【0358】
駆動回路部504の一部、または全部は、画素部502と同一基板上に形成されている
ことが望ましい。これにより、部品数や端子数を減らすことが出来る。駆動回路部504
の一部、または全部が、画素部502と同一基板上に形成されていない場合には、駆動回
路部504の一部、または全部は、COGやTAB(Tape Automated B
onding)によって、実装することができる。
【0359】
画素部502は、X行(Xは2以上の自然数)Y列(Yは2以上の自然数)に配置され
た複数の表示素子を駆動するための回路(以下、画素回路501という)を有し、駆動回
路部504は、画素を選択する信号(走査信号)を出力する回路(以下、ゲートドライバ
504aという)、画素の表示素子を駆動するための信号(データ信号)を供給するため
の回路(以下、ソースドライバ504b)などの駆動回路を有する。
【0360】
ゲートドライバ504aは、シフトレジスタ等を有する。ゲートドライバ504aは、
端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号が入力され、信号を出力す
る。例えば、ゲートドライバ504aは、スタートパルス信号、クロック信号等が入力さ
れ、パルス信号を出力する。ゲートドライバ504aは、走査信号が与えられる配線(以
下、走査線GL_1乃至GL_Xという)の電位を制御する機能を有する。なお、ゲート
ドライバ504aを複数設け、複数のゲートドライバ504aにより、走査線GL_1乃
至GL_Xを分割して制御してもよい。または、ゲートドライバ504aは、初期化信号
を供給することができる機能を有する。ただし、これに限定されず、ゲートドライバ50
4aは、別の信号を供給することも可能である。
【0361】
ソースドライバ504bは、シフトレジスタ等を有する。ソースドライバ504bは、
端子部507を介して、シフトレジスタを駆動するための信号の他、データ信号の元とな
る信号(画像信号)が入力される。ソースドライバ504bは、画像信号を元に画素回路
501に書き込むデータ信号を生成する機能を有する。また、ソースドライバ504bは
、スタートパルス、クロック信号等が入力されて得られるパルス信号に従って、データ信
号の出力を制御する機能を有する。また、ソースドライバ504bは、データ信号が与え
られる配線(以下、データ線DL_1乃至DL_Yという)の電位を制御する機能を有す
る。または、ソースドライバ504bは、初期化信号を供給することができる機能を有す
る。ただし、これに限定されず、ソースドライバ504bは、別の信号を供給することも
可能である。
【0362】
ソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。
ソースドライバ504bは、複数のアナログスイッチを順次オン状態にすることにより、
画像信号を時分割した信号をデータ信号として出力できる。また、シフトレジスタなどを
用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0363】
複数の画素回路501のそれぞれは、走査信号が与えられる複数の走査線GLの一つを
介してパルス信号が入力され、データ信号が与えられる複数のデータ線DLの一つを介し
てデータ信号が入力される。また、複数の画素回路501のそれぞれは、ゲートドライバ
504aによりデータ信号のデータの書き込み及び保持が制御される。例えば、m行n列
目の画素回路501は、走査線GL_m(mはX以下の自然数)を介してゲートドライバ
504aからパルス信号が入力され、走査線GL_mの電位に応じてデータ線DL_n(
nはY以下の自然数)を介してソースドライバ504bからデータ信号が入力される。
【0364】
図28(A)に示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路5
01の間の配線である走査線GLに接続される。または、保護回路506は、ソースドラ
イバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DLに接続される。または、保
護回路506は、ゲートドライバ504aと端子部507との間の配線に接続することが
できる。または、保護回路506は、ソースドライバ504bと端子部507との間の配
線に接続することができる。なお、端子部507は、外部の回路から表示装置に電源及び
制御信号、及び画像信号を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0365】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該
配線と別の配線とを導通状態にする回路である。
【0366】
図28(A)に示すように、画素部502と駆動回路部504にそれぞれ保護回路50
6を設けることにより、ESD(Electro Static Discharge:
静電気放電)などにより発生する過電流に対する表示装置の耐性を高めることができる。
ただし、保護回路506の構成はこれに限定されず、例えば、ゲートドライバ504aに
保護回路506を接続した構成、またはソースドライバ504bに保護回路506を接続
した構成とすることもできる。あるいは、端子部507に保護回路506を接続した構成
とすることもできる。
【0367】
また、
図28(A)においては、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bに
よって駆動回路部504を形成している例を示しているが、この構成に限定されない。例
えば、ゲートドライバ504aのみを形成し、別途用意されたソースドライバ回路が形成
された基板(例えば、単結晶半導体膜、多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)を実
装する構成としても良い。
【0368】
また、
図28(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図28(B)に示す構成
とすることができる。
【0369】
図28(B)に示す画素回路501は、液晶素子570と、トランジスタ550と、容
量素子560と、を有する。トランジスタ550に先の実施の形態に示すトランジスタを
適用することができる。
【0370】
液晶素子570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定
される。液晶素子570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複
数の画素回路501のそれぞれが有する液晶素子570の一対の電極の一方に共通の電位
(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶素子570の一対の
電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0371】
例えば、液晶素子570を備える表示装置の駆動方法としては、TNモード、STNモ
ード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned M
icro-cell)モード、OCB(Optically Compensated
Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqu
id Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Li
quid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Ve
rtical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、又はTBA
(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。
また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electric
ally Controlled Birefringence)モード、PDLC(P
olymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC
(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホ
ストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子及びその駆動方式として様
々なものを用いることができる。
【0372】
m行n列目の画素回路501において、トランジスタ550のソース電極またはドレイ
ン電極の一方は、データ線DL_nに電気的に接続され、他方は液晶素子570の一対の
電極の他方に電気的に接続される。また、トランジスタ550のゲート電極は、走査線G
L_mに電気的に接続される。トランジスタ550は、オン状態またはオフ状態になるこ
とにより、データ信号のデータの書き込みを制御する機能を有する。
【0373】
容量素子560の一対の電極の一方は、電位が供給される配線(以下、電位供給線VL
)に電気的に接続され、他方は、液晶素子570の一対の電極の他方に電気的に接続され
る。なお、電位供給線VLの電位の値は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される
。容量素子560は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0374】
例えば、
図28(B)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図28(A)
に示すゲートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ
550をオン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0375】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ550がオフ状態になることで
保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0376】
また、
図28(A)に示す複数の画素回路501は、例えば、
図28(C)に示す構成
とすることができる。
【0377】
また、
図28(C)に示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、容量素
子562と、発光素子572と、を有する。トランジスタ552及びトランジスタ554
のいずれか一方または双方に先の実施の形態に示すトランジスタを適用することができる
。
【0378】
トランジスタ552のソース電極及びドレイン電極の一方は、データ信号が与えられる
配線(以下、信号線DL_nという)に電気的に接続される。さらに、トランジスタ55
2のゲート電極は、ゲート信号が与えられる配線(以下、走査線GL_mという)に電気
的に接続される。
【0379】
トランジスタ552は、オン状態またはオフ状態になることにより、データ信号のデー
タの書き込みを制御する機能を有する。
【0380】
容量素子562の一対の電極の一方は、電位が与えられる配線(以下、電位供給線VL
_aという)に電気的に接続され、他方は、トランジスタ552のソース電極及びドレイ
ン電極の他方に電気的に接続される。
【0381】
容量素子562は、書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0382】
トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の一方は、電位供給線VL_aに電
気的に接続される。さらに、トランジスタ554のゲート電極は、トランジスタ552の
ソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続される。
【0383】
発光素子572のアノード及びカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続
され、他方は、トランジスタ554のソース電極及びドレイン電極の他方に電気的に接続
される。
【0384】
発光素子572としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子とも
いう)などを用いることができる。ただし、発光素子572としては、これに限定されず
、無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0385】
なお、電位供給線VL_a及び電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与
えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0386】
図28(C)の画素回路501を有する表示装置では、例えば、
図28(A)に示すゲ
ートドライバ504aにより各行の画素回路501を順次選択し、トランジスタ552を
オン状態にしてデータ信号のデータを書き込む。
【0387】
データが書き込まれた画素回路501は、トランジスタ552がオフ状態になることで
保持状態になる。さらに、書き込まれたデータ信号の電位に応じてトランジスタ554の
ソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子572は、流れる電
流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0388】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0389】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明したトランジスタの適用可能な回路構成の
一例について、
図29乃至
図32を用いて説明する。
【0390】
なお、本実施の形態においては、先の実施の形態で説明した酸化物半導体を有するトラ
ンジスタを、OSトランジスタと呼称して以下説明を行う。
【0391】
<5.インバータ回路の構成例>
図29(A)には、駆動回路が有するシフトレジスタやバッファ等に適用することがで
きるインバータの回路図を示す。インバータ800は、入力端子INに与える信号の論理
を反転した信号を出力端子OUTに出力する。インバータ800は、複数のOSトランジ
スタを有する。信号S
BGは、OSトランジスタの電気特性を切り替えることができる信
号である。
【0392】
図29(B)は、インバータ800の一例である。インバータ800は、OSトランジ
スタ810、およびOSトランジスタ820を有する。インバータ800は、nチャネル
型トランジスタのみで作製することができるため、CMOS(Complementar
y Metal Oxide Semiconductor)でインバータ(CMOSイ
ンバータ)を作製する場合と比較して、低コストで作製することが可能である。
【0393】
なお、OSトランジスタを有するインバータ800は、Siトランジスタで構成される
CMOS上に配置することもできる。インバータ800は、CMOSの回路に重ねて配置
できるため、インバータ800を追加する分の回路面積の増加を抑えることができる。
【0394】
OSトランジスタ810、820は、フロントゲートとして機能する第1ゲートと、バ
ックゲートとして機能する第2ゲートと、ソースまたはドレインの一方として機能する第
1端子と、ソースまたはドレインの他方として機能する第2端子とを有する。
【0395】
OSトランジスタ810の第1ゲートは、第2端子に接続される。OSトランジスタ8
10の第2ゲートは、信号SBGを供給する配線に接続される。OSトランジスタ810
の第1端子は、電圧VDDを与える配線に接続される。OSトランジスタ810の第2端
子は、出力端子OUTに接続される。
【0396】
OSトランジスタ820の第1ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジス
タ820の第2ゲートは、入力端子INに接続される。OSトランジスタ820の第1端
子は、出力端子OUTに接続される。OSトランジスタ820の第2端子は、電圧VSS
を与える配線に接続される。
【0397】
図29(C)は、インバータ800の動作を説明するためのタイミングチャートである
。
図29(C)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの
信号波形、信号S
BGの信号波形、およびOSトランジスタ810のしきい値電圧の変化
について示している。
【0398】
信号SBGをOSトランジスタ810の第2ゲートに与えることで、OSトランジスタ
810のしきい値電圧を制御することができる。
【0399】
信号SBGは、しきい値電圧をマイナスシフトさせるための電圧VBG_A、しきい値
電圧をプラスシフトさせるための電圧VBG_Bを有する。第2ゲートに電圧VBG_A
を与えることで、OSトランジスタ810はしきい値電圧VTH_Aにマイナスシフトさ
せることができる。また、第2ゲートに電圧VBG_Bを与えることで、OSトランジス
タ810は、しきい値電圧VTH_Bにプラスシフトさせることができる。
【0400】
前述の説明を可視化するために、
図30(A)には、トランジスタの電気特性の一つで
ある、Id-Vgカーブを示す。
【0401】
上述したOSトランジスタ810の電気特性は、第2ゲートの電圧を電圧V
BG_Aの
ように大きくすることで、
図30(A)中の破線840で表される曲線にシフトさせるこ
とができる。また、上述したOSトランジスタ810の電気特性は、第2ゲートの電圧を
電圧V
BG_Bのように小さくすることで、
図30(A)中の実線841で表される曲線
にシフトさせることができる。
図30(A)に示すように、OSトランジスタ810は、
信号S
BGを電圧V
BG_Aあるいは電圧V
BG_Bというように切り替えることで、し
きい値電圧をプラスシフトあるいはマイナスシフトさせることができる。
【0402】
しきい値電圧をしきい値電圧V
TH_Bにプラスシフトさせることで、OSトランジス
タ810は電流が流れにくい状態とすることができる。
図30(B)には、この状態を可
視化して示す。
【0403】
図30(B)に図示するように、OSトランジスタ810に流れる電流I
Bを極めて小
さくすることができる。そのため、入力端子INに与える信号がハイレベルでOSトラン
ジスタ820はオン状態(ON)のとき、出力端子OUTの電圧を急峻に下降させること
ができる。
【0404】
図30(B)に図示したように、OSトランジスタ810に流れる電流が流れにくい状
態とすることができるため、
図29(C)に示すタイミングチャートにおける出力端子の
信号波形831を急峻に変化させることができる。電圧VDDを与える配線と、電圧VS
Sを与える配線との間に流れる貫通電流を少なくすることができるため、低消費電力での
動作を行うことができる。
【0405】
また、しきい値電圧をしきい値電圧V
TH_Aにマイナスシフトさせることで、OSト
ランジスタ810は電流が流れやすい状態とすることができる。
図30(C)には、この
状態を可視化して示す。
図30(C)に図示するように、このとき流れる電流I
Aを少な
くとも電流I
Bよりも大きくすることができる。そのため、入力端子INに与える信号が
ローレベルでOSトランジスタ820はオフ状態(OFF)のとき、出力端子OUTの電
圧を急峻に上昇させることができる。
図30(C)に図示したように、OSトランジスタ
810に流れる電流が流れやすい状態とすることができるため、
図29(C)に示すタイ
ミングチャートにおける出力端子の信号波形832を急峻に変化させることができる。
【0406】
なお、信号S
BGによるOSトランジスタ810のしきい値電圧の制御は、OSトラン
ジスタ820の状態が切り替わる以前、すなわち時刻T1やT2よりも前に行うことが好
ましい。例えば、
図29(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がハイレベ
ルに切り替わる時刻T1よりも前に、しきい値電圧V
TH_Aから、しきい値電圧V
TH
_BにOSトランジスタ810のしきい値電圧を切り替えることが好ましい。また、
図2
9(C)に図示するように、入力端子INに与える信号がローレベルに切り替わる時刻T
2よりも前に、しきい値電圧V
TH_Bからしきい値電圧V
TH_AにOSトランジスタ
810のしきい値電圧を切り替えることが好ましい。
【0407】
なお、
図29(C)のタイミングチャートでは、入力端子INに与える信号に応じて信
号S
BGを切り替える構成を示したが、別の構成としてもよい。例えば、しきい値電圧を
制御するための電圧は、フローティング状態としたOSトランジスタ810の第2ゲート
に保持させる構成としてもよい。当該構成を実現可能な回路構成の一例について、
図31
(A)に示す。
【0408】
図31(A)では、
図29(B)で示した回路構成に加えて、OSトランジスタ850
を有する。OSトランジスタ850の第1端子は、OSトランジスタ810の第2ゲート
に接続される。またOSトランジスタ850の第2端子は、電圧V
BG_B(あるいは電
圧V
BG_A)を与える配線に接続される。OSトランジスタ850の第1ゲートは、信
号S
Fを与える配線に接続される。OSトランジスタ850の第2ゲートは、電圧V
BG
_B(あるいは電圧V
BG_A)を与える配線に接続される。
【0409】
図31(A)の動作について、
図31(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
【0410】
OSトランジスタ810のしきい値電圧を制御するための電圧は、入力端子INに与え
る信号がハイレベルに切り替わる時刻T3よりも前に、OSトランジスタ810の第2ゲ
ートに与える構成とする。信号SFをハイレベルとしてOSトランジスタ850をオン状
態とし、ノードNBGにしきい値電圧を制御するための電圧VBG_Bを与える。
【0411】
ノードNBGが電圧VBG_Bとなった後は、OSトランジスタ850をオフ状態とす
る。OSトランジスタ850は、オフ電流が極めて小さいため、オフ状態にし続けること
で、一旦ノードNBGに保持させたしきい値電圧VBG_Bを保持することができる。そ
のため、OSトランジスタ850の第2ゲートに電圧VBG_Bを与える動作の回数が減
るため、電圧VBG_Bの書き換えに要する分の消費電力を小さくすることができる。
【0412】
なお、
図29(B)及び
図31(A)の回路構成では、OSトランジスタ810の第2
ゲートに与える電圧を外部からの制御によって与える構成について示したが、別の構成と
してもよい。例えば、しきい値電圧を制御するための電圧を、入力端子INに与える信号
を基に生成し、OSトランジスタ810の第2ゲートに与える構成としてもよい。当該構
成を実現可能な回路構成の一例について、
図32(A)に示す。
【0413】
図32(A)では、
図29(B)で示した回路構成において、入力端子INとOSトラ
ンジスタ810の第2ゲートとの間にCMOSインバータ860を有する。CMOSイン
バータ860の入力端子は、入力端子INに接続される。CMOSインバータ860の出
力端子は、OSトランジスタ810の第2ゲートに接続される。
【0414】
図32(A)の動作について、
図32(B)のタイミングチャートを用いて説明する。
図32(B)のタイミングチャートでは、入力端子INの信号波形、出力端子OUTの信
号波形、CMOSインバータ860の出力波形IN_B、及びOSトランジスタ810の
しきい値電圧の変化について示している。
【0415】
入力端子INに与える信号の論理を反転した信号である出力波形IN_Bは、OSトラ
ンジスタ810のしきい値電圧を制御する信号とすることができる。したがって、
図30
(A)乃至
図30(C)で説明したように、OSトランジスタ810のしきい値電圧を制
御できる。例えば、
図32(B)における時刻T4となるとき、入力端子INに与える信
号がハイレベルでOSトランジスタ820はオン状態となる。このとき、出力波形IN_
Bはローレベルとなる。そのため、OSトランジスタ810は電流が流れにくい状態とす
ることができ、出力端子OUTの電圧の上昇を急峻に下降させることができる。
【0416】
また、
図32(B)における時刻T5となるとき、入力端子INに与える信号がローレ
ベルでOSトランジスタ820はオフ状態となる。このとき、出力波形IN_Bはハイレ
ベルとなる。そのため、OSトランジスタ810は電流が流れやすい状態とすることがで
き、出力端子OUTの電圧を急峻に上昇させることができる。
【0417】
以上説明したように本実施の形態の構成では、OSトランジスタを有するインバータに
おける、バックゲートの電圧を入力端子INの信号の論理にしたがって切り替える。当該
構成とすることで、OSトランジスタのしきい値電圧を制御することができる。入力端子
INに与える信号によってOSトランジスタのしきい値電圧を制御することで、出力端子
OUTの電圧を急峻に変化させることができる。また、電源電圧を与える配線間の貫通電
流を小さくすることができる。そのため、低消費電力化を図ることができる。
【0418】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【0419】
(実施の形態6)
本実施の形態では、上述の実施の形態で説明した酸化物半導体を有するトランジスタ(
OSトランジスタ)を、複数の回路に用いる半導体装置の一例について、
図33乃至
図3
6を用いて説明する。
【0420】
<6.半導体装置の回路構成例>
図33(A)は、半導体装置900のブロック図である。半導体装置900は、電源回
路901、回路902、電圧生成回路903、回路904、電圧生成回路905および回
路906を有する。
【0421】
電源回路901は、基準となる電圧VORGを生成する回路である。電圧VORGは、
単一の電圧ではなく、複数の電圧でもよい。電圧VORGは、半導体装置900の外部か
ら与えられる電圧V0を基に生成することができる。半導体装置900は、外部から与え
られる単一の電源電圧を基に電圧VORGを生成できる。そのため半導体装置900は、
外部から電源電圧を複数与えることなく動作することができる。
【0422】
回路902、904および906は、異なる電源電圧で動作する回路である。例えば回
路902の電源電圧は、電圧VORGと電圧VSS(VORG>VSS)とによって印加
される電圧である。また、例えば回路904の電源電圧は、電圧VPOGと電圧VSS(
VPOG>VORG)とによって印加される電圧である。また、例えば回路906の電源
電圧は、電圧VORGと電圧VNEG(VORG>VSS>VNEG)とによって印加さ
れる電圧である。なお電圧VSSは、グラウンド(GND)と等電位とすれば、電源回路
901で生成する電圧の種類を削減できる。
【0423】
電圧生成回路903は、電圧VPOGを生成する回路である。電圧生成回路903は、
電源回路901から与えられる電圧VORGを基に電圧VPOGを生成できる。そのため
、回路904を有する半導体装置900は、外部から与えられる単一の電源電圧を基に動
作することができる。
【0424】
電圧生成回路905は、電圧VNEGを生成する回路である。電圧生成回路905は、
電源回路901から与えられる電圧VORGを基に電圧VNEGを生成できる。そのため
、回路906を有する半導体装置900は、外部から与えられる単一の電源電圧を基に動
作することができる。
【0425】
図33(B)は電圧V
POGで動作する回路904の一例、
図33(C)は回路904
を動作させるための信号の波形の一例である。
【0426】
図33(B)では、トランジスタ911を示している。トランジスタ911のゲートに
与える信号は、例えば、電圧V
POGと電圧V
SSを基に生成される。当該信号は、トラ
ンジスタ911を導通状態とする動作時に電圧V
POG、非導通状態とする動作時に電圧
V
SSとする。電圧V
POGは、
図33(C)に図示するように、電圧V
ORGより大き
い。そのため、トランジスタ911は、ソース(S)とドレイン(D)との間を導通状態
とする動作を、より確実に行うことができる。その結果、回路904は、誤動作が低減さ
れた回路とすることができる。
【0427】
図33(D)は電圧V
NEGで動作する回路906の一例、
図33(E)は回路906
を動作させるための信号の波形の一例である。
【0428】
図33(D)では、バックゲートを有するトランジスタ912を示している。トランジ
スタ912のゲートに与える信号は、例えば、電圧V
ORGと電圧V
SSを基にして生成
される。当該信号は、トランジスタ911を導通状態とする動作時に電圧V
ORG、非導
通状態とする動作時に電圧V
SSとする。また、トランジスタ912のバックゲートに与
える電圧は、電圧V
NEGを基に生成される。電圧V
NEGは、
図33(E)に図示する
ように、電圧V
SS(GND)より小さい。そのため、トランジスタ912の閾値電圧は
、プラスシフトするように制御することができる。そのため、トランジスタ912をより
確実に非導通状態とすることができ、ソース(S)とドレイン(D)との間を流れる電流
を小さくできる。その結果、回路906は、誤動作が低減され、且つ低消費電力化が図ら
れた回路とすることができる。
【0429】
なお、電圧VNEGは、トランジスタ912のバックゲートに直接与える構成としても
よい。あるいは、電圧VORGと電圧VNEGを基に、トランジスタ912のゲートに与
える信号を生成し、当該信号をトランジスタ912のバックゲートに与える構成としても
よい。
【0430】
また
図34(A)(B)には、
図33(D)(E)の変形例を示す。
【0431】
図34(A)に示す回路図では、電圧生成回路905と、回路906と、の間に制御回
路921によって導通状態が制御できるトランジスタ922を示す。トランジスタ922
は、nチャネル型のOSトランジスタとする。制御回路921が出力する制御信号S
BG
は、トランジスタ922の導通状態を制御する信号である。また回路906が有するトラ
ンジスタ912A、912Bは、トランジスタ922と同じOSトランジスタである。
【0432】
図34(B)のタイミングチャートには、制御信号S
BGと、トランジスタ912A、
912Bのバックゲートの電位の状態をノードN
BGの電位の変化で示す。制御信号S
B
Gがハイレベルのときにトランジスタ922が導通状態となり、ノードN
BGが電圧V
N
EGとなる。その後、制御信号S
BGがローレベルのときにノードN
BGが電気的にフロ
ーティングとなる。トランジスタ922は、OSトランジスタであるため、オフ電流が小
さい。そのため、ノードN
BGが電気的にフローティングであっても、一旦与えた電圧V
NEGを保持することができる。
【0433】
また、
図35(A)には、上述した電圧生成回路903に適用可能な回路構成の一例を
示す。
図35(A)に示す電圧生成回路903は、ダイオードD1乃至D5、キャパシタ
C1乃至C5、およびインバータINVを有する5段のチャージポンプである。クロック
信号CLKは、キャパシタC1乃至C5に直接、あるいはインバータINVを介して与え
られる。インバータINVの電源電圧を、電圧V
ORGと電圧V
SSとによって印加され
る電圧とすると、クロック信号CLKによって、電圧V
ORGの5倍の正電圧に昇圧され
た電圧V
POGを得ることができる。なお、ダイオードD1乃至D5の順方向電圧は0V
としている。また、チャージポンプの段数を変更することで、所望の電圧V
POGを得る
ことができる。
【0434】
また、
図35(B)には、上述した電圧生成回路905に適用可能な回路構成の一例を
示す。
図35(B)に示す電圧生成回路905は、ダイオードD1乃至D5、キャパシタ
C1乃至C5、およびインバータINVを有する4段のチャージポンプである。クロック
信号CLKは、キャパシタC1乃至C5に直接、あるいはインバータINVを介して与え
られる。インバータINVの電源電圧を、電圧V
ORGと電圧V
SSとによって印加され
る電圧とすると、クロック信号CLKによって、グラウンド、すなわち電圧V
SSから電
圧V
ORGの4倍の負電圧に降圧された電圧V
NEGを得ることができる。なお、ダイオ
ードD1乃至D5の順方向電圧は0Vとしている。また、チャージポンプの段数を変更す
ることで、所望の電圧V
NEGを得ることができる。
【0435】
なお、上述した電圧生成回路903の回路構成は、
図35(A)で示す回路図の構成に
限らない。例えば、電圧生成回路903の変形例を
図36(A)乃至
図36(C)に示す
。なお、電圧生成回路903の変形例は、
図36(A)乃至
図36(C)に示す電圧生成
回路903A乃至903Cにおいて、各配線に与える電圧を変更すること、あるいは素子
の配置を変更することで実現可能である。
【0436】
図36(A)に示す電圧生成回路903Aは、トランジスタM1乃至M10、キャパシ
タC11乃至C14、およびインバータINV1を有する。クロック信号CLKは、トラ
ンジスタM1乃至M10のゲートに直接、あるいはインバータINV1を介して与えられ
る。クロック信号CLKによって、電圧V
ORGの4倍の正電圧に昇圧された電圧V
PO
Gを得ることができる。なお、段数を変更することで、所望の電圧V
POGを得ることが
できる。
図36(A)に示す電圧生成回路903Aは、トランジスタM1乃至M10をO
Sトランジスタとすることでオフ電流を小さくでき、キャパシタC11乃至C14に保持
した電荷の漏れを抑制できる。そのため、効率的に電圧V
ORGから電圧V
POGへの昇
圧を図ることができる。
【0437】
また、
図36(B)に示す電圧生成回路903Bは、トランジスタM11乃至M14、
キャパシタC15、C16、およびインバータINV2を有する。クロック信号CLKは
、トランジスタM11乃至M14のゲートに直接、あるいはインバータINV2を介して
与えられる。クロック信号CLKによって、電圧V
ORGの2倍の正電圧に昇圧された電
圧V
POGを得ることができる。
図36(B)に示す電圧生成回路903Bは、トランジ
スタM11乃至M14をOSトランジスタとすることでオフ電流を小さくでき、キャパシ
タC15、C16に保持した電荷の漏れを抑制できる。そのため、効率的に電圧V
ORG
から電圧V
POGへの昇圧を図ることができる。
【0438】
また、
図36(C)に示す電圧生成回路903Cは、インダクタInd1、トランジス
タM15、ダイオードD6、およびキャパシタC17を有する。トランジスタM15は、
制御信号ENによって、導通状態が制御される。制御信号ENによって、電圧V
ORGが
昇圧された電圧V
POGを得ることができる。
図36(C)に示す電圧生成回路903C
は、インダクタInd1を用いて電圧の昇圧を行うため、変換効率の高い電圧の昇圧を行
うことができる。
【0439】
以上説明したように本実施の形態の構成では、半導体装置が有する回路に必要な電圧を
内部で生成することができる。そのため半導体装置は、外部から与える電源電圧の数を削
減できる。
【0440】
なお、本実施の形態で示す構成等は、他の実施の形態で示す構成と適宜組み合わせて用
いることができる。
【0441】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の半導体装置を有する表示モジュール及び電子機器
について、
図37乃至
図40を用いて説明を行う。
【0442】
<7-1.表示モジュール>
図37に示す表示モジュール7000は、上部カバー7001と下部カバー7002と
の間に、FPC7003に接続されたタッチパネル7004、FPC7005に接続され
た表示パネル7006、バックライト7007、フレーム7009、プリント基板701
0、バッテリ7011を有する。
【0443】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、表示パネル7006に用いることができる。
【0444】
上部カバー7001及び下部カバー7002は、タッチパネル7004及び表示パネル
7006のサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0445】
タッチパネル7004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチパネルを表示パネル
7006に重畳して用いることができる。また、表示パネル7006の対向基板(封止基
板)に、タッチパネル機能を持たせるようにすることも可能である。また、表示パネル7
006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチパネルとすることも可能である。
【0446】
バックライト7007は、光源7008を有する。なお、
図37において、バックライ
ト7007上に光源7008を配置する構成について例示したが、これに限定さない。例
えば、バックライト7007の端部に光源7008を配置し、さらに光拡散板を用いる構
成としてもよい。なお、有機EL素子等の自発光型の発光素子を用いる場合、または反射
型パネル等の場合においては、バックライト7007を設けない構成としてもよい。
【0447】
フレーム7009は、表示パネル7006の保護機能の他、プリント基板7010の動
作により発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。またフレ
ーム7009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0448】
プリント基板7010は、電源回路、ビデオ信号及びクロック信号を出力するための信
号処理回路を有する。電源回路に電力を供給する電源としては、外部の商用電源であって
も良いし、別途設けたバッテリ7011による電源であってもよい。バッテリ7011は
、商用電源を用いる場合には、省略可能である。
【0449】
また、表示モジュール7000は、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追
加して設けてもよい。
【0450】
<7-2.電子機器1>
次に、
図38(A)乃至
図38(E)に電子機器の一例を示す。
【0451】
図38(A)は、ファインダー8100を取り付けた状態のカメラ8000の外観を示
す図である。
【0452】
カメラ8000は、筐体8001、表示部8002、操作ボタン8003、シャッター
ボタン8004等を有する。またカメラ8000には、着脱可能なレンズ8006が取り
付けられている。
【0453】
ここではカメラ8000として、レンズ8006を筐体8001から取り外して交換す
ることが可能な構成としたが、レンズ8006と筐体が一体となっていてもよい。
【0454】
カメラ8000は、シャッターボタン8004を押すことにより、撮像することができ
る。また、表示部8002はタッチパネルとしての機能を有し、表示部8002をタッチ
することにより撮像することも可能である。
【0455】
カメラ8000の筐体8001は、電極を有するマウントを有し、ファインダー810
0のほか、ストロボ装置等を接続することができる。
【0456】
ファインダー8100は、筐体8101、表示部8102、ボタン8103等を有する
。
【0457】
筐体8101は、カメラ8000のマウントと係合するマウントを有しており、ファイ
ンダー8100をカメラ8000に取り付けることができる。また当該マウントには電極
を有し、当該電極を介してカメラ8000から受信した映像等を表示部8102に表示さ
せることができる。
【0458】
ボタン8103は、電源ボタンとしての機能を有する。ボタン8103により、表示部
8102の表示のオン・オフを切り替えることができる。
【0459】
カメラ8000の表示部8002、及びファインダー8100の表示部8102に、本
発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0460】
なお、
図38(A)では、カメラ8000とファインダー8100とを別の電子機器と
し、これらを脱着可能な構成としたが、カメラ8000の筐体8001に、表示装置を備
えるファインダーが内蔵されていてもよい。
【0461】
図38(B)は、ヘッドマウントディスプレイ8200の外観を示す図である。
【0462】
ヘッドマウントディスプレイ8200は、装着部8201、レンズ8202、本体82
03、表示部8204、ケーブル8205等を有している。また装着部8201には、バ
ッテリ8206が内蔵されている。
【0463】
ケーブル8205は、バッテリ8206から本体8203に電力を供給する。本体82
03は無線受信機等を備え、受信した画像データ等の映像情報を表示部8204に表示さ
せることができる。また、本体8203に設けられたカメラで使用者の眼球やまぶたの動
きを捉え、その情報をもとに使用者の視点の座標を算出することにより、使用者の視点を
入力手段として用いることができる。
【0464】
また、装着部8201には、使用者に触れる位置に複数の電極が設けられていてもよい
。本体8203は使用者の眼球の動きに伴って電極に流れる電流を検知することにより、
使用者の視点を認識する機能を有していてもよい。また、当該電極に流れる電流を検知す
ることにより、使用者の脈拍をモニタする機能を有していてもよい。また、装着部820
1には、温度センサ、圧力センサ、加速度センサ等の各種センサを有していてもよく、使
用者の生体情報を表示部8204に表示する機能を有していてもよい。また、使用者の頭
部の動きなどを検出し、表示部8204に表示する映像をその動きに合わせて変化させて
もよい。
【0465】
表示部8204に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0466】
図38(C)(D)(E)は、ヘッドマウントディスプレイ8300の外観を示す図で
ある。ヘッドマウントディスプレイ8300は、筐体8301と、表示部8302と、バ
ンド状の固定具8304と、一対のレンズ8305と、を有する。
【0467】
使用者は、レンズ8305を通して、表示部8302の表示を視認することができる。
なお、表示部8302を湾曲して配置させる好適である。表示部8302を湾曲して配置
することで、使用者が高い臨場感を感じることができる。なお、本実施の形態においては
、表示部8302を1つ設ける構成について例示したが、これに限定されず、例えば、表
示部8302を2つ設ける構成としてもよい。この場合、使用者の片方の目に1つの表示
部が配置されるような構成とすると、視差を用いた3次元表示等を行うことも可能となる
。
【0468】
なお、表示部8302に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。本発明
の一態様の半導体装置を有する表示装置は、極めて精細度が高いため、
図38(E)のよ
うにレンズ8305を用いて拡大したとしても、使用者に画素が視認されることなく、よ
り現実感の高い映像を表示することができる。
【0469】
<7-3.電子機器2>
次に、
図38(A)乃至
図38(E)に示す電子機器と、異なる電子機器の一例を
図3
9(A)乃至
図39(G)に示す。
【0470】
図39(A)乃至
図39(G)に示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、ス
ピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端
子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、
光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、
流量、湿度、傾度、振動、におい又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォ
ン9008、等を有する。
【0471】
図39(A)乃至
図39(G)に示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々
な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能
、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)
によって処理を制御する機能、無線通信機能、無線通信機能を用いて様々なコンピュータ
ネットワークに接続する機能、無線通信機能を用いて様々なデータの送信または受信を行
う機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して表示部に表示す
る機能、等を有することができる。なお、
図39(A)乃至
図39(G)に示す電子機器
が有することのできる機能はこれらに限定されず、様々な機能を有することができる。ま
た、
図39(A)乃至
図39(G)には図示していないが、電子機器には、複数の表示部
を有する構成としてもよい。また、該電子機器にカメラ等を設け、静止画を撮影する機能
、動画を撮影する機能、撮影した画像を記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する
機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0472】
図39(A)乃至
図39(G)に示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0473】
図39(A)は、テレビジョン装置9100を示す斜視図である。テレビジョン装置9
100は、表示部9001を大画面、例えば、50インチ以上、または100インチ以上
の表示部9001を組み込むことが可能である。
【0474】
図39(B)は、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は
、例えば電話機、手帳又は情報閲覧装置等から選ばれた一つ又は複数の機能を有する。具
体的には、スマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、
スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を設けてもよい。また、携帯情
報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。例えば、3
つの操作ボタン9050(操作アイコンまたは単にアイコンともいう)を表示部9001
の一の面に表示することができる。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部900
1の他の面に表示することができる。なお、情報9051の一例としては、電子メールや
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)や電話などの着信を知らせる表示、
電子メールやSNSなどの題名、電子メールやSNSなどの送信者名、日時、時刻、バッ
テリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位
置に、情報9051の代わりに、操作ボタン9050などを表示してもよい。
【0475】
図39(C)は、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は
、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、
情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えば、携
帯情報端末9102の使用者は、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状
態で、その表示(ここでは情報9053)を確認することができる。具体的には、着信し
た電話の発信者の電話番号又は氏名等を、携帯情報端末9102の上方から観察できる位
置に表示する。使用者は、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく、表示
を確認し、電話を受けるか否かを判断できる。
【0476】
図39(D)は、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末
9200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信
、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。また、表
示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、携帯情報端末9200は、通信規格された近距離無線通信を実行するこ
とが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハン
ズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006を
有し、他の情報端末とコネクターを介して直接データのやりとりを行うことができる。ま
た接続端子9006を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は接続端子900
6を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0477】
図39(E)(F)(G)は、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図であ
る。また、
図39(E)が携帯情報端末9201を展開した状態の斜視図であり、
図39
(F)が携帯情報端末9201を展開した状態または折り畳んだ状態の一方から他方に変
化する途中の状態の斜視図であり、
図39(G)が携帯情報端末9201を折り畳んだ状
態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開し
た状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末92
01が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000
に支持されている。ヒンジ9055を介して2つの筐体9000間を屈曲させることによ
り、携帯情報端末9201を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させるこ
とができる。例えば、携帯情報端末9201は、曲率半径1mm以上150mm以下で曲
げることができる。
【0478】
次に、
図38(A)乃至
図38(E)に示す電子機器、及び
図39(A)乃至
図39(
G)に示す電子機器と異なる電子機器の一例を
図40(A)(B)に示す。
図40(A)
(B)は、複数の表示パネルを有する表示装置の斜視図である。なお、
図40(A)は、
複数の表示パネルが巻き取られた形態の斜視図であり、
図40(B)は、複数の表示パネ
ルが展開された状態の斜視図である。
【0479】
図40(A)(B)に示す表示装置9500は、複数の表示パネル9501と、軸部9
511と、軸受部9512と、を有する。また、複数の表示パネル9501は、表示領域
9502と、透光性を有する領域9503と、を有する。
【0480】
また、複数の表示パネル9501は、可撓性を有する。また、隣接する2つの表示パネ
ル9501は、それらの一部が互いに重なるように設けられる。例えば、隣接する2つの
表示パネル9501の透光性を有する領域9503を重ね合わせることができる。複数の
表示パネル9501を用いることで、大画面の表示装置とすることができる。また、使用
状況に応じて、表示パネル9501を巻き取ることが可能であるため、汎用性に優れた表
示装置とすることができる。
【0481】
また、
図40(A)(B)においては、表示領域9502が隣接する表示パネル950
1で離間する状態を図示しているが、これに限定されず、例えば、隣接する表示パネル9
501の表示領域9502を隙間なく重ねあわせることで、連続した表示領域9502と
してもよい。
【0482】
本実施の形態において述べた電子機器は、何らかの情報を表示するための表示部を有す
ることを特徴とする。ただし、本発明の一態様の半導体装置は、表示部を有さない電子機
器にも適用することができる。
【0483】
なお、本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて用い
ることができる。
【符号の説明】
【0484】
100 トランジスタ
100A トランジスタ
100B トランジスタ
100C トランジスタ
100D トランジスタ
100E トランジスタ
102 基板
104 導電膜
106 絶縁膜
107 絶縁膜
108 酸化物半導体膜
108a 酸化物半導体膜
108b 酸化物半導体膜
108b_0 酸化物半導体膜
108c 酸化物半導体膜
108c_ 酸化物半導体膜
108c_0 酸化物半導体膜
112_1 導電膜
112_2 導電膜
112_3 導電膜
112a 導電膜
112a_1 金属膜
112a_2 金属膜
112a_3 金属膜
112b 導電膜
112b_ 導電膜
112b_1 金属膜
112b_2 金属膜
112b_3 金属膜
112c 導電膜
112c_1 金属膜
112c_2 金属膜
112c_3 金属膜
114 絶縁膜
115 絶縁膜
116 絶縁膜
118 絶縁膜
120_1 酸化物導電膜
120_2 金属膜
120a 導電膜
120a_1 酸化物導電膜
120a_2 金属膜
120b 導電膜
120b_1 酸化物導電膜
120b_2 金属膜
141a マスク
141b マスク
141c マスク
142a マスク
142b マスク
142c マスク
151 開口部
152a 開口部
152b 開口部
191 ターゲット
192 プラズマ
193 ターゲット
194 プラズマ
501 画素回路
502 画素部
504 駆動回路部
504a ゲートドライバ
504b ソースドライバ
506 保護回路
507 端子部
550 トランジスタ
552 トランジスタ
554 トランジスタ
560 容量素子
562 容量素子
570 液晶素子
572 発光素子
664 電極
665 電極
667 電極
700 表示装置
701 基板
702 画素部
704 ソースドライバ回路部
705 基板
706 ゲートドライバ回路部
708 FPC端子部
710 信号線
711 配線部
712 シール材
716 FPC
730 絶縁膜
732 封止膜
734 絶縁膜
736 着色膜
738 遮光膜
750 トランジスタ
752 トランジスタ
760 接続電極
770 平坦化絶縁膜
772 導電膜
773 絶縁膜
774 導電膜
775 液晶素子
776 液晶層
777 導電膜
778 構造体
780 異方性導電膜
782 発光素子
786 EL層
788 導電膜
790 容量素子
791 タッチパネル
792 絶縁膜
793 電極
794 電極
795 絶縁膜
796 電極
797 絶縁膜
800 インバータ
810 OSトランジスタ
820 OSトランジスタ
831 信号波形
832 信号波形
840 破線
841 実線
850 OSトランジスタ
860 CMOSインバータ
900 半導体装置
901 電源回路
902 回路
903 電圧生成回路
903A 電圧生成回路
903B 電圧生成回路
903C 電圧生成回路
904 回路
905 電圧生成回路
906 回路
911 トランジスタ
912 トランジスタ
912A トランジスタ
912B トランジスタ
921 制御回路
922 トランジスタ
7000 表示モジュール
7001 上部カバー
7002 下部カバー
7003 FPC
7004 タッチパネル
7005 FPC
7006 表示パネル
7007 バックライト
7008 光源
7009 フレーム
7010 プリント基板
7011 バッテリ
8000 カメラ
8001 筐体
8002 表示部
8003 操作ボタン
8004 シャッターボタン
8006 レンズ
8100 ファインダー
8101 筐体
8102 表示部
8103 ボタン
8200 ヘッドマウントディスプレイ
8201 装着部
8202 レンズ
8203 本体
8204 表示部
8205 ケーブル
8206 バッテリ
8300 ヘッドマウントディスプレイ
8301 筐体
8302 表示部
8304 固定具
8305 レンズ
9000 筐体
9001 表示部
9003 スピーカ
9005 操作キー
9006 接続端子
9007 センサ
9008 マイクロフォン
9050 操作ボタン
9051 情報
9052 情報
9053 情報
9054 情報
9055 ヒンジ
9100 テレビジョン装置
9101 携帯情報端末
9102 携帯情報端末
9200 携帯情報端末
9201 携帯情報端末
9500 表示装置
9501 表示パネル
9502 表示領域
9503 領域
9511 軸部
9512 軸受部