(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】フランジ継手接合部修理具、フランジ継手接合部修理構造、及び、フランジ継手接合部修理方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/172 20060101AFI20241202BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20241202BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20241202BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20241202BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
F16L55/172
F16J15/00 C
F16J15/06 L
F16L55/18 Z
F16L23/02 Z
(21)【出願番号】P 2023108940
(22)【出願日】2023-06-30
【審査請求日】2024-08-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 璃南美
(72)【発明者】
【氏名】山内 真吾
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-083685(JP,A)
【文献】特開2010-276094(JP,A)
【文献】米国特許第05692544(US,A)
【文献】特許第5876245(JP,B2)
【文献】特開2020-090971(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/172
F16J 15/00
F16J 15/06
F16L 55/18
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合された一対の配管フランジの外周に巻き回され、前記一対の配管フランジの接合部分を覆う溝が内面の全周に渡って形成された弾性リング材と、
前記溝内に形成された樹脂層と、
前記弾性リング材の外周に配置され、前記弾性リング材を径方向内側へ締め付ける締付け具と、
を備え、
前記弾性リング材は、ゴム層と、前記ゴム層の外周を覆う鋼板バネとを有し、前記ゴム層の幅方向中央に前記溝が形成されている、
フランジ継手接合部修理具。
【請求項2】
前記ゴム層は、前記弾性リング材の周方向端部が鋼板バネの周方向端部から突出した突出部を有している、
請求項1に記載のフランジ継手接合部修理具。
【請求項3】
前記弾性リング材を幅方向に保持する保持クリップを備えた、
請求項1に記載のフランジ継手接合部修理具。
【請求項4】
前記弾性リング材は、周方向において一箇所が切れた有端リング状とされている、
請求項1に記載のフランジ継手接合部修理具。
【請求項5】
前記弾性リング材は、周方向において複数に分割されている、
請求項1に記載のフランジ継手接合部修理具。
【請求項6】
接合された一対の配管フランジと、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のフランジ継手接合部修理具と、
を備えた、フランジ継手接合部修理構造。
【請求項7】
ゴム層と、前記ゴム層の外周を覆う鋼板バネとを有し、前記ゴム層の幅方向中央の内周に全周に渡ってフランジ接合部分を覆う溝が形成された弾性リング材の前記溝に樹脂剤を塗布し、
接合された一対の配管フランジの外周に、弾性リング材を巻き回し、
前記弾性リング材の外周に締付け具を配置して前記弾性リング材を径方向内側へ締め付ける、
フランジ継手接合部修理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の開示する技術は、フランジ継手接合部修理具、フランジ継手接合部修理構造、及び、フランジ継手接合部修理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管の継手部分について、ガス漏れ等が生じた場合、種々のガス漏れ修理方法が提案されている。例えば、特許文献1には、帯状の封止材(ゴム)をリング状にしてフランジ外周に被せ、締め付けバンドを封止材の外側に巻回して固定し、ガスの漏洩を抑止する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、帯状の封止材をフランジの外周に巻回した後、漏洩箇所のフランジ同士を接合するボルトを取り外し、ボルト孔に樹脂を充填することで、ガスの漏洩を抑止している。しかしながら、特許文献1に開示された方法では、樹脂注入を特殊な治具を用いて行う必要があり、作業が繁雑になる。
【0005】
本開示は上記事実を考慮し、特殊な治具なしの簡易な作業でフランジ継手接合部のガス漏れを一時的に修理可能な、フランジ継手接合部修理具、フランジ継手接合部修理構造、及びフランジ継手接合部修理方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様のフランジ継手接合部修理具は、接合された一対の配管フランジの外周に巻き回され、前記一対の配管フランジの接合部分を覆う溝が内面の全周に渡って形成された弾性リング材と、前記溝内に形成された樹脂層と、前記弾性リング材の外周に配置され、前記弾性リング材を径方向内側へ締め付ける締付け具、を備えている。
【0007】
第1の態様のフランジ継手接合部修理具は、弾性リング材及び締付け具を有している。弾性リング材は、一対の配管フランジの接合部分を覆う溝が内面に全周に渡って形成されている。弾性リング材の溝内には、樹脂層が形成されている。
【0008】
フランジ継手接合部修理具を用いる際には、弾性リング材を接合された一対の配管フランジの外周に巻き回し、溝内に形成された樹脂層で一対の配管フランジの接合部分を覆う。そして、弾性リング材の外周に締付け具を配置して、弾性リング材を径方向内側へ締め付ける。
【0009】
これにより、一対の配管フランジの接合部分に樹脂層が入り込み、ガス漏洩箇所を含むフランジ接合部分が全周に渡ってシールされ、ガス漏洩箇所においてガス漏れを止めることができる。また、弾性リング材を用いることにより、漏洩ガス圧に抗して樹脂層をフランジ接合部分に配置することができる。
【0010】
このように、第1の態様のフランジ継手接合部修理具によれば、特殊な治具なしの簡易な作業でフランジ継手接合部のガス漏れを一時的に修理することができる。
【0011】
第2の態様のフランジ継手接合部修理具は、前記弾性リング材は、ゴム層と、前記ゴム層の外周を覆う鋼板バネとを有し、前記ゴム層の幅方向中央に前記溝が形成されている。
【0012】
このように、弾性リング材として、ゴム層と、ゴム層の外周を覆う鋼板バネを用いることにより、弾性力を用いてフランジの接合部分に樹脂剤を押圧させ、ガス漏れ部分を適切に封止することができる。
【0013】
第3の態様のフランジ継手接合部修理具は、前記ゴム層は、前記弾性リング材の周方向端部が鋼板バネの周方向端部から突出した突出部を有している。
【0014】
このように、ゴム層の周方向端部を鋼板バネの周方向端部から突出させた突出部を形成することにより、ゴム層同士の周方向端部を圧縮変形させて密着させることができる。
【0015】
第4の態様のフランジ継手接合部修理具は、前記弾性リング材を幅方向に保持する保持クリップを備えている。
【0016】
このように、保持クリップを用いることにより、弾性リング材のずれを抑制することができる。
【0017】
第5の態様のフランジ継手接合部修理具は、前記弾性リング材は、周方向において一箇所が切れた有端リング状とされている。
【0018】
このように、弾性リング材を、周方向の一箇所で切れた有担リング状とすることにより、弾性リング材を1部材で構成することができる。
【0019】
第6の態様のフランジ継手接合部修理具は、前記弾性リング材は、周方向において複数に分割されている。
【0020】
このように、弾性リング材を、周方向において複数に分割することにより、弾性リング材をフランジ外周へ容易に配置することができる。
【0021】
第7の態様のフランジ継手接合部修理構造は、接合された一対の配管フランジと、第1態様~第5態様のいずれかのフランジ継手接合部修理具と、備えている。
【0022】
第7の態様のフランジ継手接合部修理構造によれば、特殊な治具なしの簡易な作業でフランジ継手接合部のガス漏れを一時的に修理することができる。
【0023】
第8の態様のフランジ継手接合部修理方法は、全周に渡ってフランジ接合部分を覆う溝が内周に形成された弾性リング材の前記溝に樹脂剤を塗布し、接合された一対の配管フランジの外周に、弾性リング材を巻き回し、前記弾性リング材の外周に締付け具を配置して前記弾性リング材を径方向内側へ締め付ける。
【0024】
第8の態様のフランジ継手接合部修理方法では、溝に塗布された樹脂材で一対の配管フランジの接合部分を覆い、締付け具で弾性リング材の外周から径方向内側へ締め付けることにより、フランジの接合部分に樹脂剤が入り込む。これにより、ガス漏洩箇所を含むフランジ接合部分が全周に渡ってシールされ、ガス漏洩箇所を補修することができる。また、弾性リング材を用いることにより、漏洩ガス圧に抗して樹脂剤をフランジ接合部分に配置することができる。
【0025】
このように、第8の態様のフランジ継手接合部修理方法によれば、特殊な治具なしの簡易な作業でフランジ継手接合部のガス漏れを一時的に修理することができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示は上記構成としたので、特殊な治具なしの簡易な作業でフランジ継手接合部のガス漏れを一時的に修理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施形態のフランジ継手接合部修理構造の分解斜視図である。
【
図2】本実施形態の弾性リング材の、(A)は軸方向から見た断面図であり、(B)は周方向の断面図である。
【
図4】本実施形態の弾性リング材を一対の配管フランジに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】本実施形態の弾性リング材及び締め付け具を一対の配管フランジに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態のフランジ継手接合部修理具を一対の配管フランジに取り付けた状態を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態の弾性リング材の変形例の軸方向から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示の実施形態のフランジ継手接合部修理具20、フランジ継手接合部修理構造10について、図面を参照して説明する。
図1には、本実施形態のフランジ継手接合部修理構造10を構成する、一対の配管フランジ12、及び、フランジ継手接合部修理具20が分解斜視図で示されている。
【0029】
一対の配管フランジ12の各々は、円板状のフランジ部14、及び、筒状の配管部16を備えている。フランジ部14は、配管部16よりも大径とされ、中央に配管部16の流路と連通する孔(不図示)が形成されている。配管部16は、一端がフランジ部14の中央に連結されている。一対の配管フランジ12は、配管部16同士が対向するように接合され、4箇所が締結部材18で互いに締結されている。配管フランジ12の軸方向を符号Sで示している。
【0030】
フランジ継手接合部修理具20は、弾性リング材22、一対の締め付け具30、及び、保持クリップ38を備えている。弾性リング材22は、一箇所が切れた有端のリング状とされ、
図2(A)、
図2(B)にも示されるように、ゴム層24と鋼板バネ26を有している。鋼板バネ26は帯状とされており、弾性リング材22の外周に配置されている。
【0031】
ゴム層24は、鋼板バネ26の内周に鋼板バネ26と略同幅で積層されており、鋼板バネ26よりも厚みが厚くなっている。ゴム層24は、鋼板バネ26の端部から周方向に突出された突出部24Aが両端部に連続して形成されている。ゴム層24は、使用時には、後述するように、一対の配管フランジ12のフランジ部14の外周に沿って配置され、両端の突出部24A同士が突き合わせられた状態で、圧縮される。
【0032】
ゴム層24の幅方向中央部には、溝25が形成されている。溝25は、断面が矩形状とされており、ゴム層24の内面の全周に渡って形成されている。溝25の幅は、一対の配管フランジ12の接合部分を覆う十分な長さとされている。すなわち、溝25の幅は、一対のフランジ部14の間に挟まれている図示しないガスケットの厚みよりも広幅とされている。溝25の深さは、ゴム層24の厚みよりも浅く、一例として1mm~2mm程度でよい。
【0033】
図3に示されるように、溝25には、樹脂剤が塗布されており、樹脂層28が形成されている。樹脂剤としては、シリコンなどの自身の弾性変形により封止作用を有するものであることが好ましい。なお、
図1、2では、樹脂層28は図示が省略されている。
【0034】
締め付け具30は、
図1に示されるように、リング状とされ、バンド部32、及び、締結部34を有している。バンド部32は帯状とされ端部同士が重ね合わされ、弾性リング材22の外周に沿って配置される。バンド部32の幅は、弾性リング材22の幅の1/2以下とされている。締結部34は、バンド部32の重ね合わされた端部に設けられている。締結部34は、ネジ34A及び係合部34Bを有しており、ネジを一方向に回転させることにより、バンド部32の重ね合わせ量が増える方向に係合部分が移動して締結が進み、締結部34のネジを反対方向に回転させることにより、バンド部32の重ね合わせ量が減る方向に係合部分が移動して締結が緩む。
【0035】
保持クリップ38は、両端が略直角に屈曲したコ字状とされており、中間部38A、及び中間部38Aの両側に屈曲部38Bが形成されている。中間部38Aは、弾性リング材22の幅方向と略同一長さとされている。屈曲部38Bは、弾性リング材22の厚みよりも長くなっている。保持クリップ38の屈曲部38B間に、弾性リング材22を保持可能とされている。本実施形態では、4個の保持クリップ38を用いる。
【0036】
次に、本実施形態のフランジ継手接合部修理具20の取り付けについて説明する。まず、弾性リング材22の内周の溝25に樹脂剤を塗布して、樹脂層28を形成する。そして、弾性リング材22の両端間を、弾性変形させて広げ、一対の配管フランジ12のフランジ部14の外周に沿って配置する(
図4参照)。次に、一対の締め付け具30を、各々弾性リング材22の外周に幅方向に並べて配置し、締結部34のネジ34Aで仮固定する(
図5参照)。その後、保持クリップ38を屈曲部38B間に弾性リング材22を挟持するように周方向の4箇所に取り付け、配管軸方向におけるフランジ部14との位置決めを行って、弾性リング材22をフランジ部14の外周に保持する。そして、締結部34のネジ34Aをさらに締めて、締め付け具30を本締めする(
図6参照)。
【0037】
これにより、一対の配管フランジ12の接合部分に樹脂層28を形成する樹脂剤が入り込み、ガス漏洩箇所を含んだフランジ接合部分が全周に渡ってシールされ、ガス漏洩箇所を補修することができる。また、弾性リング材22及び締め付け具30を用いることにより、漏洩ガス圧、例えば、中圧B(試験0.4MPa)に抗して樹脂層28を形成する樹脂剤をフランジ接合部分に配置することができる。
【0038】
このように、本実施形態のフランジ継手接合部修理具20によれば、特殊な治具なしの簡易な作業でフランジ継手接合部のガス漏れを一時的に修理することができる。
【0039】
また、本実施形態では、弾性リング材22が、ゴム層24と、ゴム層24の外周を覆う鋼板バネ26で形成されているので、弾性力を用いてフランジの接合部分に樹脂剤を押圧させ、ガス漏れ部分を適切に封止することができる。
【0040】
また、本実施形態では、ゴム層24は、周方向端部が鋼板バネ26の周方向端部から突出した突出部24Aを有しているので、突出部24A同士を圧縮変形させて密着させることができ、端部の隙間を埋めることができる。
【0041】
また、本実施形態では、弾性リング材22を幅方向に保持する保持クリップ38を有し、弾性リング材22をフランジ部14の外周に保持するので、弾性リング材22のフランジ部14に対する幅方向のずれを抑制することができる。
【0042】
なお、本実施形態では、締め付け具30のバンド部32の幅を弾性リング材22の幅の1/2以下として2本用いたが、締め付け具30を若干広幅として1本のみ用いてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、保持クリップ38で弾性リング材22の4箇所を保持したが、1~3箇所でも、5箇所以上でもよい。
【0044】
また、本実施形態では、弾性リング材22をゴム層24と鋼板バネ26を積層して形成したが、ゴム層24のみ、鋼板バネ26のみで形成してもよい。ゴム層24のみの場合には、ゴム層24の内周に溝25を形成して、この溝25に樹脂剤を塗布する。また、鋼板バネ26のみの場合には、鋼板バネ26の内周に溝25を形成して、この溝25に樹脂剤を塗布する。
【0045】
[変形例]
本実施形態の弾性リング材22は、一箇所が切れた一部材の有端リング状で構成されていたが、
図7に示されるように、2分割してもよい。すなわち、軸方向Sから見て、半円状の半弾性リング材42Aと、同形状の半弾性リング材42Bとで、弾性リング材42を構成してもよい。
【0046】
この場合には、半弾性リング材42Aと半弾性リング材42Bの各々が、ゴム層44と鋼板バネ46を有している。ゴム層44と鋼板バネ46は、前述のゴム層24、鋼板バネ26に対応する部材である。そして、半弾性リング材42Aと半弾性リング材42Bの各々のゴム層44は、鋼板バネ46の端部から周方向に突出された突出部45を有している。ゴム層44は、使用時には、一対の配管フランジ12のフランジ部14の外周に沿って配置され、2箇所において突出部45同士が突き合わせられた状態で、圧縮される。
【0047】
ゴム層44の幅方向中央部には、前述の溝25と同様に溝47が形成され、溝47には、樹脂剤が塗布されており、樹脂層48が形成される。
【0048】
このように、分割された弾性リング材42とすることにより、フランジ部14の外周へ弾性リング材42を容易に配置することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 フランジ継手接合部修理構造
12 配管フランジ
20 フランジ継手接合部修理具
22、42 弾性リング材
24、44 ゴム層
24A、45 突出部
25、47 溝
26、46 鋼板バネ
28、48 樹脂層
30 締付け具
38 保持クリップ
44 ゴム層
45 突出部
46 鋼板バネ
【要約】
【課題】簡易な作業でフランジ継手接合部のガス漏れを一時的に修理可能にする。
【解決手段】フランジ継手接合部修理具20は、接合された一対の配管フランジ12の外周に巻き回され、一対の配管フランジ12の接合部分を覆う溝25が内面の全周に渡って形成された弾性リング材22と、溝25内に形成された樹脂層と、弾性リング材22の外周に配置され、弾性リング材22を径方向内側へ締め付ける締付け具30と、を備えている。
【選択図】
図1