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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】収容体
(51)【国際特許分類】
   F25D 3/00 20060101AFI20241202BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20241202BHJP
【FI】
F25D3/00 E
C09K5/14 F
C09K5/14 102F
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023117383
(22)【出願日】2023-07-19
(62)【分割の表示】P 2019147875の分割
【原出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2023129520
(43)【公開日】2023-09-14
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】葛谷 拓嗣
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3220843(JP,U)
【文献】特開2006-097984(JP,A)
【文献】特開2004-101090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/00-5/20
F25D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料で着色されているゲル体と、常温で透明な液体となりかつ凍結すると透明度が下がる蓄冷液とが、内部を視認可能な収容体に収容されて備えられ、前記ゲル体が、前記収容体及び常温の前記蓄冷液とは異なる色に着色されて、前記ゲル体が常温で前記収容体及び前記蓄冷液を透過して視認可能である蓄冷材用の収容体であって、
平面視で矩形形状であり、
内部領域において互いに対向する対向壁部同士を連絡している連絡部を有しており、
前記連絡部には、くびれた部分が設けられ、そのくびれた部分の外周面には、前記ゲル体を受容する環状凹部が形成され、
前記連絡部は、平面視で前記収容体における2短辺の中央を結ぶ線上に2つ配置されている、収容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄冷材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蓄冷材として、容器等の収容体に収容された蓄冷液を凍結させて使用されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-97984号公報(段落[0021])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の蓄冷材に対して、蓄冷液が凍結しているか否かを視認し易くすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、容器又は袋からなり内部を視認可能な収容体と、前記収容体に収容され、常温で透明な液体となり、凍結すると透明度が下がる蓄冷液と、前記収容体に収容され、前記収容体及び常温の前記蓄冷液とは異なる色に顔料で着色されて、常温で前記収容体及び前記蓄冷液を透過して視認可能であるゲル体と、を備える蓄冷材である。
【0006】
発明の第2態様は、前記蓄冷液は、染料により有色透明に着色されている、第1態様に記載の蓄冷材である。
【0007】
発明の第3態様は、前記蓄冷液の色と前記ゲル体の色とが略補色関係になっている、第2態様に記載の蓄冷材である。
【0008】
発明の第4態様は、前記ゲル体は、前記ゲル体及び前記蓄冷液の全体に対して、10~90体積%を占める、第1態様から第3態様のうち何れか1の態様に記載の蓄冷材である。
【0009】
発明の第5態様は、前記ゲル体における顔料の濃度は、前記蓄冷液における顔料の濃度よりも高くなっている、第1態様から第4態様のうち何れか1の態様に記載の蓄冷材である。
【0010】
発明の第6態様は、前記ゲル体は、カルボキシメチルセルロースが架橋してなる、第1態様から第5態様のうち何れか1の態様に記載の蓄冷材である。
【0011】
発明の第7態様は、前記蓄冷液及び前記ゲル体は、水に、前記顔料、カルボキシメチルセルロース及び架橋剤が添加されてなり、100重量部の前記水に対して、前記顔料が0.0005~0.01重量部添加されてなる、第6態様に記載の蓄冷材である。
【0012】
発明の第8態様は、100重量部の前記水に対して、前記カルボキシメチルセルロースが0.5~1.5重量部添加されてなる、第7態様に記載の蓄冷材である。
【0013】
発明の第9態様は、前記架橋剤は、カリミョウバンである、第7態様又は第8態様に記載の蓄冷材である。
【0014】
発明の第10態様は、前記カリミョウバンが、前記カルボキシメチルセルロースに対して、0.2~2倍の重量、添加されてなる、第9態様に記載の蓄冷材である。
【0015】
発明の第11態様は、容器又は袋からなり内部を視認可能な収容体を用意し、顔料とカルボキシメチルセルロースとカリミョウバンを透明な溶媒に添加した混合液を用意し、前記混合液を前記収容体に収容して、常温で透明な液体となると共に凍結すると透明度が下がる蓄冷液と、常温で前記収容体及び前記蓄冷液を透過して視認可能であるゲル体と、を形成し、前記顔料として、前記収容体及び常温の前記蓄冷液とは異なる色に前記ゲル体を着色するものを用い、前記混合液を用意するにあたり、前記溶媒に前記カルボキシメチルセルロースを混合した後に前記カリミョウバンを添加するか、又は、前記溶媒にカルボキシメチルセルロースと前記カリミョウバンを同時に添加する、蓄冷材の製造方法である。
【0016】
発明の第12態様は、前記混合液に、前記カリミョウバンを、前記カルボキシメチルセルロースに対して、0.2~2倍の重量、添加する、第11態様に記載の蓄冷材の製造方法である。
【0017】
発明の第13態様は、前記混合液を用意するにあたり、前記溶媒を染料で有色透明に着色しておく、第11態様又は第12態様に記載の蓄冷材の製造方法である。
【0018】
発明の第14態様は、前記溶媒としての水100重量部に対して、前記カルボキシメチルセルロースを、0.5~1.5重量部添加する、第11態様から第13態様のうち何れか1の態様に記載の蓄冷材の製造方法である。
【発明の効果】
【0019】
発明の第1態様の蓄冷材、及び発明の第11態様の製造方法で製造された蓄冷材では、常温のとき、即ち、蓄冷液が凍結していないときには、収容体及び蓄冷液とは異なる色のゲル体が視認可能となるので、収容体に蓄冷液のみが収容されている従来の構成に比べて、蓄冷液が凍結していないことが視認容易となる。また、蓄冷液が凍結したときには、蓄冷液の透明度が下がるので、常温のときよりもゲル体が視認し難くなる。即ち、蓄冷液の透明度の低下に加えて、ゲル体が視認し難くなるので、従来よりも蓄冷液の凍結が視認容易となる。以上により、本態様によれば、蓄冷液が凍結しているか否かを視認し易くすることが可能となる。
【0020】
また、発明の第11態様では、カルボキシメチルセルロースを溶媒に混合した後に、カリミョウバンを添加する。これにより、収容体内で、塊状のゲル体を蓄冷液と分離させて形成することが可能となる。
【0021】
発明の第2態様、第13態様では、蓄冷液を着色することで、蓄冷液が凍結したときにゲル体をより視認し難くすることが可能となり、蓄冷液の凍結を把握させ易くすることができる。
【0022】
発明の第3態様では、蓄冷液の色とゲル体の色とが略補色関係になっているので、常温のときにゲル体を目立ち易くすることが可能となる。
【0023】
発明の第4態様では、ゲル体が、ゲル体及び蓄冷液の全体に対して、10体積%以上を占めるので、常温でゲル体を目立ち易くすることができる。また、ゲル体が、ゲル体及び蓄冷液の全体に対して、90体積%以下となっているので、凍結した蓄冷液による蓄冷効果を良好にすることができると共に、蓄冷液の凍結時にはゲル体をより視認し難くすることができる。
【0024】
発明の第5態様では、ゲル体における顔料の濃度が、蓄冷液における顔料の濃度よりも高くなっているので、常温でゲル体の色を目立ち易くすることが可能となる。
【0025】
ゲル体は、カルボキシメチルセルロースが架橋してなるものであってもよい(発明の第6態様)。この場合、蓄冷液及びゲル体は、水に、顔料、カルボキシメチルセルロース及び架橋剤が添加されてなるものが好ましく、この場合、100重量部の水に対して、顔料が0.0005~0.01重量部添加されていることがさらに好ましい(発明の第7態様)。顔料を0.0005重量部以上とすることで、常温時にゲル体を目立ち易くすることができる。また、顔料を0.01重量部以下とすることで、蓄冷液中での顔料の沈殿が抑制可能となる。
【0026】
発明の第8態様、第14態様では、100重量部の水に対して、カルボキシメチルセルロースが0.5~1.5重量部添加されるので、蓄冷液から分離したゲル体を形成し易くすることができる。
【0027】
発明の第9態様では、架橋剤がカリミョウバンであるので、カルボキシメチルセルロースを架橋させ易くすることが可能となる。
【0028】
発明の第10態様、第12態様では、カリミョウバンが、カルボキシメチルセルロースに対して、0.2~2倍の重量、添加されているので、塊状のゲル体を形成し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示の第1実施形態に係る(A)蓄冷材の斜視図、(B)蓄冷材の平面図
図2】蓄冷材の拡大側断面図
図3】(A)混合液における顔料及び染料の分散状態を示す概念図、(B)収容体内でゲルが形成されたときの顔料及び染料の配置を示す概念図
図4】第2実施形態に係る(A)蓄冷材の斜視図、(B)蓄冷材の平面図
図5】第2実施形態に係る蓄冷材の拡大側断面図
図6】確認実験における各実験例を示すテーブル
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
図1及び図2に示されるように、第1実施形態の蓄冷材10は、内部が視認可能な容器からなる収容体11の中に、蓄冷液20が収容されてなる。収容体11は熱伝導性を有していて、蓄冷材10は蓄冷液20を凍結させて使用される。収容体11は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよく、例えば、樹脂で構成される。また、収容体11は、扁平で平面視長四角形状をなして、一短辺部に蓄冷液20の封入口を有し、その封入口がキャップ12で閉塞されている。
【0031】
蓄冷液20は、常温で透明な液体となっている。蓄冷液20は、凍結すると透明度が下がるようになっている。本実施形態では、蓄冷液20は、染料41(図3参照)により有色透明に着色されている。本実施形態では、蓄冷液20の溶媒は、水であり、水に染料41が溶け込んでいる。
【0032】
図1(B)に示されるように、本実施形態の蓄冷材10では、収容体11の内部には、蓄冷液20中にゲル体30が浮遊している。ゲル体30は、ゲル体30及び蓄冷液20の全体に対して、10~90体積%を占めていることが好ましく、30~70体積%占めていることがより好ましい。
【0033】
ゲル体30は、収容体11及び常温の蓄冷液20とは異なる色に着色されていて、常温で収容体11及び蓄冷液20を透過して視認可能となっている。本実施形態では、ゲル体30の色は、蓄冷液20の色と略補色関係になっている。例えば、ゲル体30の色が黄系統の色で、蓄冷液20の青系統の色となっている。なお、本開示において、収容体11と蓄冷液20について「透明」であるとは、常温でゲル体30を収容体11及び蓄冷液20を通して視認可能な透明性を少なくとも有しているということであり、半透明であることも含まれる。
【0034】
ゲル体30は、顔料42(図3参照)により着色されている。顔料42は、ゲル体30内で分散している。蓄冷材10では、ゲル体30における顔料42の濃度(単位体積当たりの顔料42の重量)は、蓄冷液20における顔料42の濃度よりも高くなっている。本実施形態では、収容体11内の顔料42が、ゲル体30内に偏在していると共に、収容体11内の染料41が、蓄冷液20中に偏在している。
【0035】
ゲル体30は、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のゲル化剤を架橋させたものであることが好ましい。ゲル化剤としては、例えば、寒天、ゼラチン、増粘性多糖類、ポリアクリル酸誘導体等を用いることができる。増粘性多糖類としては、例えば、ローカストビーンガム、ジュランガム、カラギーナン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。ポリアクリル酸誘導体としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド誘導体(2-アクリルアミドー2-2―メチルプロピルスルホン酸、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド又はジメチルアクリルアミド)等を、1種類又は複数種類用いることができる。
【0036】
本実施形態では、ゲル体30は、溶媒としての水に、ゲル化剤としてのカルボキシメチルセルロースと、ゲル化剤を架橋させる架橋剤と、顔料42とが添加されて形成されている。本実施形態では、架橋剤として、カリミョウバンが用いられている。
【0037】
なお、架橋剤としては、例えば、多価金属塩を用いることができる。多価金属塩としては、2価又は3価のものが用いられ、カリミョウバン,硫酸アルミニウム,酢酸アルミニウム,水酸化アルミニウム,硫酸第一鉄,塩化第一鉄,硫酸亜鉛,塩化バリウム,硝酸クロム,酢酸鉛,塩化第二銅,塩化スズ,硝酸銀等が挙げられる。これらのうち、カルボキシメチルセルロースの架橋し易さの観点から、カリミョウバンが好ましい。また、蓄冷液20の溶媒としては、イオン交換水が好ましい。
【0038】
なお、顔料42としては、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、ペリレン系、ペリノン系、アントラキノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系などの有機顔料が挙げられるが、これに限定されるものではない。より具体的には、顔料42として、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジスアゾイエロー、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、チオインジゴマゼンタ、チオインジゴボルドー、ジオキサジンバイオレット、イソインドリノンイエロー、カーミン6B 、レーキレッドC 、パーマネントレッド2B 、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、ブリリアントファーストスカーレット等を用いることができる。上記顔料は、1種単独で用いることも、2種以上併用して用いることもできる。
【0039】
また、染料41としては、例えば、青色1号、青色2号、青色202号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色402号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、赤色227号、赤色502号、橙色205号、橙色207号、緑色3号、緑色204号、緑色205号、紫色401号、黒色401号、褐色201号等の酸性染料や、例えば塩基性青99、塩基性黄57、塩基性赤76、塩基性茶16、塩基性茶17等の塩基性染料等を用いることができる。上記染料は、1種単独で用いることも、2種以上併用して用いることもできる。
【0040】
なお、蓄冷液20は、溶媒に、さらに無機塩が溶け込んだものであってもよい。この場合、無機塩を溶け込ませることで、蓄冷液20の凝固点を下げることができ、蓄冷効果を高めることが可能となる。また、無機塩を多く入れると、蓄冷液20が凍結したときに、蓄冷液20を白濁させ易くすることが可能となり、透明度を下げ易くすることが可能となる。無機塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硝酸カリウム、硝酸カルシウム等が挙げられる。
【0041】
本実施形態の蓄冷材10は、例えば、以下のようにして製造される。まず、収容体11が用意される。また、顔料42とカルボキシアルキルセルロースと架橋剤が、透明な溶媒に混合された混合液43(図3(A)参照)が用意される。混合液43には、染料11も混合される。本実施形態では、溶媒として水が用いられ、架橋剤としてはカリミョウバンが用いられる。顔料42としては、有機顔料であって、収容体11及び常温の蓄冷液20(即ち、染料41の色)とは異なる色にゲル体30を着色するものが用いられる。なお、図3(A)では、染料41を小さなドットで表し、顔料42を大きなドットで表している。
【0042】
顔料42は、水100重量部に対して、0.0005重量部以上、0.01重量部以下添加されることが好ましい。また、カルボキシメチルセルロースは、水100重量部に対して、0.5重量部以上、1.5重量部以下添加されることが好ましい。カリミョウバンは、カルボキシメチルセルロースに対して、0.2倍以上、2倍以下の重量添加されることが好ましい。
【0043】
ここで、混合液43を用意するにあたり、架橋剤としてのカリミョウバンは、溶媒にカルボキシメチルセルロースと顔料42が混合された後に、添加される。そして、このようにして得られた混合液43が、収容体11に封入される(図3(A)参照)。
【0044】
そして、図3(A)から図3(B)への変化に示されるように、時間の経過と共に、収容体11内で、混合液43から蓄冷液20とゲル体30とが形成され、互いに分離する。
【0045】
ここで、混合液43を用意するにあたり、本実施形態と添加順を逆にして、溶媒にカリミョウバンを混合した後に、カルボキシメチルセルロースを添加した場合、蓄冷液20と分離した塊状のゲル体30が形成されずに、蓄冷液20が全体的に増粘されるだけとなる。これに対し、本実施形態では、上述のように、カリミョウバンを、溶媒にカルボキシメチルセルロースを混合した後に添加するので、収容体11内で、蓄冷液20と分離した塊状のゲル体30を形成することが可能となる。また、架橋剤としてカリミョウバンを用いることで、カルボキシメチルセルロースを架橋させ易くすることが可能となる。さらに、100重量部の水に対して、カルボキシメチルセルロースを0.5重量部以上とすることで、ゲル体をさらに形成し易くすることができる。また、カルボキシメチルセルロースを、100重量部の水に対して、1.5重量部以下とすることで、ゲル体30を蓄冷液20全体に分散したものではなく、蓄冷液20から分離した塊状に形成し易くすることができる。さらに、カリミョウバンを、カルボキシメチルセルロースに対して、0.2~2倍の重量、添加することで、塊状のゲル体30を形成し易くすることができる。なお、カリミョウバンが上記範囲よりも多い場合でも塊状のゲル体30を形成可能であるが、カリミョウバンが余剰となるので、上記範囲内であることが好ましい。
【0046】
ここで、図3(A)から図3(B)への変化に示されるように、混合液43からゲル体30と蓄冷液20が形成される際には、顔料42は、ゲル体30内に保持されて蓄冷液20から分離することができる。一方、染料41は、水に溶け込んでいて、ゲル体30が形成されても蓄冷液20内に均一になったまま留まり、ゲル体30から分離することができる。即ち、混合液43が得られた直後では、顔料42と染料41の色が混ざった状態となっていても、時間が経過してゲル体30と蓄冷液20が形成されると、顔料42と染料41がそれぞれゲル体30と蓄冷液20とに分離することができる。そして、ゲル体30が顔料42によって着色されると共に、蓄冷液20が染料41の色に着色される。例えば、顔料42が黄色で、染料41が青色の場合、緑色であった混合液43が、次第に、黄色のゲル体30と青色の蓄冷液20とに分離する。このような現象が起こるのは、顔料42は、疎水性なので水(即ち、蓄冷液20)と親和し難いため、相対的にゲル体30内に存在し易くなるためと考えることもできる。また、顔料42は、上述のように疎水性であるため、水を溶媒とする蓄冷液20には沈殿し易いものであるが、本実施形態の蓄冷材10では、ゲル体30の内部に保持されることで、沈殿し難くなる。なお、混合液43中で顔料42をよく分散させておくと、顔料42をゲル体30内で分散状態にし易くすることができる。ゲル体30と蓄冷液20とへの顔料42と染料41の上記分離については、後述する[確認実験]によっても確認される。
【0047】
本実施形態の蓄冷材10では、常温のとき、即ち、蓄冷液20が凍結していないときには、収容体11及び蓄冷液20とは異なる色のゲル体30が視認可能となるので、収容体11に蓄冷液20のみが収容されている従来の構成に比べて、蓄冷液20が凍結していないことが視認容易となる。また、蓄冷液20が凍結したときには、蓄冷液20の透明度が下がるので、常温のときよりもゲル体30が視認し難くなる。即ち、蓄冷液20の透明度の低下に加えて、ゲル体30が視認し難くなるので、従来よりも蓄冷液20の凍結が視認容易となる。以上により、蓄冷材10によれば、蓄冷液20が凍結しているか否かを視認し易くすることが可能となる。また、従来の蓄冷材では、蓄冷液が常温で透明であると、蓄冷材の背景の色によっては蓄冷液が凍結しているように見える事態が生じ得るが、本実施形態の蓄冷材10では、このような場合でも、ゲル体30を備えることで蓄冷液20の凍結の有無を視認し易くなる。
【0048】
本実施形態では、蓄冷液20を着色することで、蓄冷液20が凍結したときにゲル体30をより視認し難くすることが可能となり、蓄冷液20の凍結を把握させ易くすることができる。また、蓄冷液20の色とゲル体30の色とが略補色関係になっているので、常温のときにゲル体30を目立ち易くすることが可能となる。また、本実施形態では、ゲル体30が、顔料42により着色され、ゲル体30における顔料42の濃度(単位体積当たりの顔料42の重量)が、蓄冷液20における顔料42の濃度よりも高くなっている。これにより、常温でゲル体30の色を目立ち易くすることが可能となる。
【0049】
本実施形態のように、蓄冷液20及びゲル体30は、水に、顔料42、カルボキシメチルセルロース及び架橋剤が添加されてなるものが好ましく、この場合、上述のように、100重量部の水に対して、顔料42が0.0005~0.01重量部添加されていることがより好ましい。顔料42を0.0005重量部以上とすることで、常温時にゲル体30を目立ち易くすることができる。また、顔料42を0.01重量部以下とすることで、蓄冷液20中での顔料42の沈殿が抑制可能となる。
【0050】
本実施形態では、ゲル体30が、ゲル体30及び蓄冷液20の全体に対して、10体積%以上を占める(30体積%以上であることがより好ましい。)ので、常温でゲル体30を目立ち易くすることができる。また、ゲル体30が、ゲル体30及び蓄冷液20の全体に対して、90体積%以下(70体積%以下であることがより好ましい。)であるので、凍結した蓄冷液20による蓄冷効果を良好にすることができると共に、蓄冷液20の凍結時にはゲル体30をより視認し難くすることができる。
【0051】
[第2実施形態]
図4(A)及び図4(B)には、第2実施形態の蓄冷材10Vが示されている。本実施形態の蓄冷材10Vは、上記第1実施形態の蓄冷材10に対して収容体11の形状を変更したものである。
【0052】
図4(A)及び図5に示されるように、本実施形態では、収容体11Vは、上記第1実施形態の収容体11と同様に扁平で平面視長四角状をなしている。詳細には、収容体11Vには、蓄冷液20及びゲル体30を収容する内部領域を収容体11Vの厚み方向で挟んで対向する1対の対向壁部14,14が設けられ、リブ13は、対向壁部14,14同士を連絡して収容体11Vの内部領域を貫通している。本実施形態では、リブ13が設けられることで、蓄冷液20が膨張した場合でも、対向壁部14,14同士が遠ざかるように収容体11Vが膨むことを抑制でき、収容体11Vが破裂することが抑制される。
【0053】
本実施形態では、リブ13は、くびれた形状となっていて、収容体11の厚み方向の中央側に向かうにつれて細くなっている(詳細には、テーパ状に細くなっている)。これにより、リブ13の外周面には、環状凹部13Uが形成されている。より詳細には、本実施形態では、リブ13は、1対のカップ部15Cの底部同士を突き合わせた構成となっていて、各カップ部15Cは、対向壁部14の外側に開口している。また、収容体11は、対向壁部14及びカップ部15Cを有する矩形皿状のプレート部15同士が合わさってなり、それらプレート部15,15の境目にリブ13の最もくびれた部分が位置している。なお、本実施形態では、リブ13は、複数(例えば、収容体11の長辺方向に複数)設けられている。
【0054】
ここで、本実施形態では、ゲル体30Vは、環状をなし、リブ13を取り巻くように形成されている。さらに、ゲル体30Vの内周部は、リブ13の外周面の環状凹部13Uに受容されている(図5参照)。この場合、ゲル30Vの内周部が、環状凹部13Uに、周方向全体に亘って受容されていることが好ましい。
【0055】
本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、蓄冷材10Vを製造するにあたり、混合液43が用意され、混合液43が収容体11Vに封入される。そして、上記第1実施形態と同様にして、時間の経過と共に、混合液43から蓄冷液20とゲル体30Vが形成される(図4(B)及び図5参照)。このとき、リブ13を有する本実施形態の収容体11Vでは、収容体11V内でリブ13を取り巻く環状にゲル体30Vを形成することが可能となる。また、本実施形態では、リブ13が収容体11Vの厚み方向の中央側に向かうにつれて細くなるくびれた形状となっているので、ゲル体30Vがリブ13を取り巻くように形成されたときに、ゲル体30Vの内周部をリブ13のくびれ部分に受容させることが可能となる。
【0056】
本実施形態の蓄冷材10Vによれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。また、本実施形態では、ゲル体30Vが、リブ13を取り巻くように環状に形成される。従って、リブ13によって収容体11V内でのゲル体30Bの移動を規制することができる。これにより、ゲル体30Vの位置が変わり難くなり、常温でのゲル体30Vの視認が容易となる。しかも、リブ13により、収容体11Vの補強と、ゲル体30Vの移動の規制とを兼ねることができ、リブ13の有効利用が図られる。また、本実施形態では、ゲル体30Vの内周部が、リブ13の環状凹部13Uに受容されるので、収容体11Vの厚み方向の中央側にゲル体30Vを留め易くすることができ、ゲル体30Vを各対向壁部14から離して配置し易くすることができる。これにより、蓄冷液20が凍結したときに、蓄冷液20によりゲル体30Vを隠し易くすることができる。
【0057】
なお、本実施形態には、以下の特徴1~3が含まれている。
【0058】
[特徴1]
容器からなり内部を視認可能な収容体と、
前記収容体に収容され、常温で透明な液体となり、凍結すると透明度が下がる蓄冷液と、
前記収容体に収容され、前記収容体及び常温の前記蓄冷液とは異なる色に顔料で着色されて、常温で前記収容体及び前記蓄冷液を透過して視認可能であるゲル体と、を備える蓄冷材であって、
前記収容体には、前記収容体内での前記ゲル体の移動を規制する移動規制部が設けられている、蓄冷材。
【0059】
[特徴2]
前記収容体のうち互いに対向する対向壁部同士を連絡し、前記収容体の内部領域を貫通する連絡部(リブ13)を有し、
前記ゲル体は、環状をなし、前記連絡部を取り巻くように配置され、
前記移動規制部は、前記連絡部で構成される、特徴1に記載の蓄冷材。
【0060】
[特徴3]
前記連絡部には、くびれた部分が設けられ、そのくびれた部分の外周面には、前記ゲル体の内周部を受容する環状凹部が形成されている、特徴2に記載の蓄冷材。
【0061】
上記特徴1~3の蓄冷材では、収容体により、ゲル体が収容体内での移動を規制されるので、ゲル体の位置が変わり難くなり、常温でのゲル体の視認が容易となる。特徴2の蓄冷材では、連絡部により、収容体の補強と、ゲル体の移動の規制とを兼ねることができる。特徴3の蓄冷材では、ゲル体の内周部が、連絡部の環状凹部に受容されるので、対向壁部の対向方向においてゲル体の移動範囲を規制することができ、ゲル体を各対向壁部から離して配置し易くすることができる。これにより、蓄冷液が凍結したときに、ゲル体を隠し易くすることができる。
【0062】
[確認実験]
以下の確認実験により、上記第1実施形態及び第2実施形態のように、蓄冷液20とゲル体30を備える蓄冷材10等について、蓄冷液20の凍結の有無の視認性を確認した。
【0063】
1.蓄冷材の構成
<実験例1~7>
実験例1~7では、図6に示される配合原料を、上記実施形態の製造方法と同様にして混合した混合液を、収容体に封入し、蓄冷材を得た。実験例1~7において収容体に封入した混合液の原料配合の詳細は、図6及び以下の通りである。同図のテーブル中の数値は、各原料成分の重量部を表している。カルボキシメチルセルロースとカリミョウバンを添加した実験例では、前者より後者を後に添加している。なお、顔料は、分散させ易くするため、水とアルコール(エタノール)にて10倍に希釈して予め分散させてから添加した(実験例1~4)。
【0064】
溶媒;水
無機塩;(1)塩化ナトリウム、(2)塩化アンモニウム
顔料;(1)シアニンブルー:DIC株式会社製の商品名「FASTOGEN(登録商標) BLUE FA5380」、(2)ジスアゾイエロー:DIC株式会社製の商品名「SYMULER(登録商標) FAST YELLOW 4340」
ゲル化剤;カルボキシメチルセルロース(CMC):日本製紙株式会社製の商品名「F350HC-4」
架橋剤;カリミョウバン:大明化学工業株式会社製の商品名「カリミョウバン」
染料;(1)青色1号:ダイワ化成株式会社製の商品名「青色1号」、(2)青色2号:ダイワ化成株式会社製の商品名「青色2号」、(3)黄色4号:ダイワ化成株式会社製の商品名「黄色4号」
【0065】
収容体は、略直方体状の容器であり、収容体の内部に収容された混合液が占める領域の大きさは、150mm×200mm×20mmである。
【0066】
2.評価方法
<凍結前の色>
混合液を収容体に収容してから常温で3日間放置したものについて、常温において収容体を通して蓄冷液の色を目視にて確認した。
【0067】
<凍結後の色、透明性の低下>
上記凍結前の蓄冷液の色を確認した後に、冷凍庫に蓄冷材を投入し、蓄冷液を-30℃で冷凍して凍結させた。その後、蓄冷材を冷凍庫から取り出した直後に、収容体11を通して蓄冷液の色を目視にて確認した。凍結による蓄冷液の透明性の低下(例えば、白濁)が認められた場合には「○」、蓄冷液の透明性の低下が認められなかった場合には、「×」と評価した。
【0068】
<ゲル体の有無、ゲル体の視認性の変化>
凍結前の蓄冷液の色を確認する際に、ゲル体の有無、及びゲル体の色を目視にて確認した。また、蓄冷液の凍結前後でのゲル体の視認性の変化を評価した。蓄冷液の凍結前後でゲル体の視認性に、変化がはっきり認められる場合には(見えにくくなったとはっきり認められる場合等には)「○」、変化が全く認められないか又は変化がほとんど認められない場合には、「×」とした。即ち、ゲル体がもともと存在しない実験例では、「×」の評価となる。
【0069】
<顔料の沈殿>
凍結前の色を確認する際に、顔料の沈殿を目視にて確認した。顔料の沈殿が認められなかった場合には「○」、顔料の沈殿が認められた場合には「×」と評価した。
【0070】
<耐候評価>
フェードメータ(JIS B7751準拠)にて、63℃で48時間放置する試験を行い、その試験前後の色の変化を目視にて確認した。そして、色の変化が認められなかった場合には「○」、色の変化(退色)が認められた場合には「×」と評価した。
【0071】
3.評価結果
図6に示されるように、カルボキシメチルセルロース、カリミョウバンを添加した実験例1,3,5,6では、凍結前の状態で塊状のゲル体が形成されることが確認された。また、顔料が含まれる実験例1,3の結果から、顔料がゲル体内に保持され、蓄冷液から分離することが確認された。さらに、実験例5,6の結果から、染料は、ゲル体内にはほとんど入り込まずに蓄冷液中に留まることが確認された。さらに、実験例3の結果から、顔料と染料が混合された混合液が収容体に封入された場合には、顔料と染料がそれぞれゲル体と蓄冷液とに分離することが確認できた。具体的には、黄色の顔料と青色の染料とが用いられた実験例3では、顔料と染料が混合された直後には、混合液は緑色であったが、時間の経過と共に、混合液が、顔料を保持した黄色のゲル体と、染料が溶け込んだ青色の蓄冷液とに分離することが確認できた。また、実験例2の結果から、カルボキシメチルセルロースを含んでいても、カリミョウバンを含まない場合には、ゲル体が形成されないことが確認された。
【0072】
実験例1,3では、蓄冷液中に、常温で蓄冷液とは異なる色に顔料で着色されたゲル体が形成されると共に、常温で収容体と透明な蓄冷液を通してゲル体が視認容易であった。また、実験例1,3では、凍結による蓄冷液の白濁(透明性の低下)も十分であった。従って、実験例1,3では、蓄冷液の凍結の有無の視認が、他の実験例に比べて容易であった。なお、実験例5,6では、常温で蓄冷液が透明であるもののゲル体の視認性が悪かった。
【0073】
実験例1~4と、実験例5~7との比較から、顔料が含まれていると、耐候評価で「○」であり、顔料が含まれていないと「×」となることが確認された。また、実験例4の結果から、カルボキシメチルセルロースとカリミョウバンを含まない構成では、顔料の沈殿があり「×」の結果となった。
【0074】
以上の結果から、顔料、カルボキシメチルセルロース、カリミョウバンを添加した実験例1,3では、評価した全ての項目で良好であることが確認された。なお、実験例1,3が「実施例」に相当し、実験例2,4~7が「比較例」に相当する。
【0075】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、蓄冷液20が、着色されていたが、無色であってもよい。
【0076】
(2)上記実施形態では、混合液43を用意するにあたり、溶媒にカルボキシメチルセルロースを混合した後にカリミョウバンを添加していたが、溶媒にカルボキシメチルセルロースとカリミョウバンを同時に添加してもよい。この場合でも、収容体11内で塊状のゲル体30を蓄冷液20と分離させて形成することが可能となる。
【0077】
(3)上記実施形態の蓄冷材10の製造方法では、ゲル体30が収容体11内で形成されたが、ゲル体30を形成してから収容体11に収容してもよい。
【0078】
(4)上記実施形態では、収容体11が容器であったが、収容体11が袋であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
10,10V 蓄冷材
11,11V 収容体
12 キャップ
13 リブ
14 対向壁部
20 蓄冷液
30,30V ゲル体
41 染料
42 顔料
43 混合液
図1
図2
図3
図4
図5
図6