(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-29
(45)【発行日】2024-12-09
(54)【発明の名称】男性のQOLの改善のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20241202BHJP
A61P 15/12 20060101ALI20241202BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20241202BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20241202BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20241202BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20241202BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20241202BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20241202BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241202BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20241202BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241202BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20241202BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20241202BHJP
A61P 1/14 20060101ALI20241202BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20241202BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20241202BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20241202BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20241202BHJP
【FI】
A61K31/353
A61P15/12
A61P3/00
A61P29/00
A61P25/04
A61P25/02
A61P25/18
A61P25/22
A61P21/00
A61P17/14
A61P15/10
A61P15/00
A61P27/02
A61P9/10
A61P17/00
A61P11/00
A61P27/16
A61P7/10
A61P1/14
A61P25/24
A61P25/20
A23L33/105
A23L5/00 J
(21)【出願番号】P 2023199298
(22)【出願日】2023-11-24
【審査請求日】2023-12-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三橋 和也
(72)【発明者】
【氏名】大江 健一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 涼介
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-534751(JP,A)
【文献】特表2006-508942(JP,A)
【文献】特表2022-509468(JP,A)
【文献】特表2007-511542(JP,A)
【文献】国際公開第2020/004568(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0251511(US,A1)
【文献】国際公開第2007/066655(WO,A1)
【文献】日本内科学会雑誌,2013年,第102巻、第4号,pp.914-921
【文献】日本食品科学工学会誌 ,2015年,Vol.62(7),pp.356-363
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A23L 33/00
A23L 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を含有する、男性のQOLの改善のための組成物であって、
前記男性が、軽度又は中等度の男性更年期障害の男性であり、
前記QOLの改善が、更年期障害の改善であり、
前記更年期障害が、AMSスコアにより評価される、
組成物。
【化1】
(式中、R
1~R
7は、それぞれ、水酸基又は水素原子を表す。)
【請求項2】
前記更年期障害の改善が、健康感の改善、身体の痛みの改善、自律神経の乱れの改善、睡眠の改善、疲労感の改善、気分の改善、不安の改善、活力の改善、筋力の改善、体毛の改善、又は性的能力の改善である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記男性が、満40歳以上満70歳以下である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記男性が、更年期障害の自覚症状がある、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記
一般式(1)で表される化合物の1日の摂取量が総量で1mg以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
飲食品である、請求項1又は2に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、男性のQOLの改善のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
男性の更年期障害は、男性ホルモンの一つであるテストステロンの減少が原因であると考えられている。その緩和や改善のために、例えば、ユーグレナ及び/又はパラミロンを含有する、テストステロン分泌促進剤が開発されている(特許文献1)。また、エルダーベリー生果抽出物を有効成分とする、血中テストステロン含量を増加させる組成物が開発されている(特許文献2)。また、生体内で男性ホルモン(テストステロン等のアンドロゲン)を女性ホルモン(エストロゲン)に変換する酵素であるアロマターゼが知られており、ガラナ抽出物を含有する、アロマターゼ阻害剤が開発されている(特許文献3)。
【0003】
一方で、テストステロンから5α-リダクターゼによって生じるジヒドロテストステロンが知られており(特許文献4)、テストステロンが増加するとジヒドロテストステロンも増加する。ジヒドロテストステロンの増加は、男性型脱毛症(AGA)や前立腺肥大症の
発症原因であると考えられており、テストステロンを増加させることは決して良いことばかりではないという考え方がある(非特許文献1)。
そのため、テストステロンを増加させるのではなく、テストステロン様作用を有する別の化合物が求められている。
【0004】
イソフラボンの一種であるダイゼインから腸内細菌の働きによって生じるエクオールという成分が知られており、エクオールはエストロゲン活性が高いことで知られている(特許文献5)。しかし、例えば、人が大豆イソフラボンを摂取しても、腸内細菌の相違によって、大豆イソフラボンの中に含まれるダイゼインをエクオールにまで変換できる能力には個人差があり、エクオールを産生できる人とそうでない人とがいることも明らかとなっている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-213518号公報
【文献】特表2022-509468号公報
【文献】特開2010-059192号公報
【文献】特開2015-028007号公報
【文献】特開2003-310177号公報
【文献】特開2021-106538号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】日皮会誌:127(13), 2763-2777, 2017 (平成29)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の課題は、少なくとも、男性のQOLを改善する技術の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エクオール類が上記課題を解決できることを見出した。本開示は、下記の態様を含む。
本開示は、エクオール類を含有する、男性のQOLの改善のための組成物を提供するこ
とができる。
前記組成物は、前記QOLの改善が、更年期障害の改善であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記更年期障害の改善が、健康感の改善、身体の痛みの改善、自律神経の乱れの改善、睡眠の改善、疲労感の改善、気分の改善、不安の改善、活力の改善、筋力の改善、体毛の改善、又は性的能力の改善であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記更年期障害が、AMSスコアにより評価されることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記QOLの改善が、身体の症状の改善、又は心の症状の改善であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記QOLの改善が、身体の症状の改善であり、前記身体の症状の改善が、眼精疲労の改善、身体の痛みの改善、心臓の虚血の改善、疲労の改善、肌の調子の改善、気管支炎の改善、白髪の改善、自律神経のバランスの改善、難聴の改善、むくみの改善、整胃、整腸、又は育毛であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記QOLの改善が、心の症状の改善であり、前記心の症状の改善が、怒りの改善、活気の改善、抑うつの改善、混乱の改善、不安の改善、又は不眠の改善であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記QOLが、抗加齢QOL共通問診票により評価されることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記男性が、満40歳以上満70歳以下であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記男性が、更年期障害の自覚症状があることを好ましい態様としている。
前記組成物は、前記エクオール類の1日の摂取量が総量で1mg以上であることを好ましい態様としている。
前記組成物は、飲食品であることを好ましい態様としている。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、少なくとも、男性のQOLを改善する技術を提供できるという効果を奏しうる。また、本開示によれば、テストステロンを増加させるわけではないため、テストステロンから生じるジヒドロテストステロンの増加による男性型脱毛症(AGA)や前立腺肥大
症の発症を想定する必要はない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、クレームの範囲によってのみ限定される。
【0011】
本開示の一実施態様は、エクオール類を含有する、男性のQOLの改善のための組成物である。
【0012】
エクオール類は、下記一般式(1)で表される。
【化1】
(式中、R
1~R
7は、それぞれ、水酸基又は水素原子を表す。)
エクオール類の具体例としては、上記一般式(1)で表される化合物に含まれる化合物すべてが挙げられ、具体的には、エクオール(4’,7-イソフラバンジオールと称されることもある。)、5-ヒドロキシエクオール等が挙げられる。
【0013】
本実施態様に係る組成物は、エクオール類を単独で含むものであってもよいし、男性のQOLを改善できる限り、他の成分を含んでもよい。例えば、マカ、亜鉛、難消化性デキストリン、ステアリン酸Ca、二酸化ケイ素などの成分が挙げられる。
【0014】
本実施態様に係る組成物を摂取する対象は男性(男性のヒト)である。
【0015】
本実施態様に係る組成物を摂取する対象の年齢は、本実施態様に係る組成物を摂取することでQOLが改善される限り特に限定されないが、好ましく満40歳以上、より好ましくは満45歳以上、さらに好ましくは満50歳以上であり、好ましくは満70歳以下、より好ましくは満65歳以下、さらに好ましくは満60歳以下である。すなわち、例えば、満40歳以上満70歳以下、満45歳以上満65歳以下、満50歳以上満60歳以下等である。
【0016】
本実施態様に係る組成物を摂取する対象は、更年期障害の自覚症状があることが好ましい。尚、男性更年期障害は、例えば、late onset hypogonadism syndrome (LOH syndrome)等と英訳される。尚、本明細書において、更年期障害は、更年期症状を含むものとする
。
【0017】
本実施態様に係る組成物を摂取する対象は、エクオール類を産生できる者でもエクオール類を産生できない者でもよいが、エクオール類を産生できない者であることが好ましい。また、エクオール類を産生できない者としては、ダイゼイン類やゲニステイン類からエクオール類を産生できない者であることがより好ましい。具体的には、ダイゼインからエクオールを産生できない者や、ゲニステインから5-ヒドロキシエクオールを産生できない者等が挙げられる。
【0018】
QOLとは「クオリティオブライフ(Quality of life)」の略称であり、一般的には
「生活の質」とも称される。
本実施態様におけるQOLの改善とは、対象がエクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも、対象がエクオール類を摂取したときの方が、QOLが改善することをいう。
【0019】
本実施態様に係る組成物は、QOLの低下を抑制するために予防的に摂取するものであってもよいし、QOLを維持するために摂取するものであってもよい。
本実施態様におけるQOLの改善の評価は、医師等による客観的な判断であってもよい
が、専門家の開発した検査や質問票などにより客観的な尺度によって評価されるものであることが好ましい。
【0020】
本実施態様におけるQOL改善の評価が、専門家の開発した検査や質問票などにより客観的な尺度によって評価されるものである場合、その例としては、抗加齢QOL共通問診票(日本抗加齢医学会発行)による評価が挙げられる。抗加齢QOL共通問診票による評価で行う場合、その評価で得られる各因子の数値と合計点は、対象がエクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が小さいことが好ましい。
【0021】
前記QOLの改善は、例えば、後述する実施例のように、評価するのに十分な数の対象の集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、表3に掲げる「身体の症状」の合計点と表4に掲げる「心の症状」の合計点とについて、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときに、いずれの{(A)-(B)}(人)も正であるならば、QOLの改善がされたと判断することができる。当該{(A)-(B)}(人)は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、「身体の症状」の合計点については{(A)-(B)}(人)が7人、「心の症状」の合計点については{(A)-(B)}(人)が10人であり、いずれの{(A)-(B)}(人)も正であるため、QOLの改善がされたことが示されている。
【0022】
本実施態様におけるQOLの改善は、好ましくは、身体の症状の改善、又は心の症状の改善である。
【0023】
前記身体の症状の改善は、例えば、後述する実施例のように、評価するのに十分な数の対象の集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、「身体の症状」の合計点について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときに、{(A)-(B)}(人)が正であるならば、身体の症状の改善がされたと判断することができる。{(A)-(B)}(人)の値は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、{(A)-(B)}(人)が7人であり、正であるため、身体の症状の改善がされたことが示されている。
【0024】
前記心の症状の改善は、例えば、後述する実施例のように、評価するのに十分な数の対象の集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、「心の症状」の合計点について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときに、{(A)-(B)}(人)が正であるならば、心の症状の改善がされたと判断することができる。{(A)-(B)}(人)の値は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、{(A)-(B)}(人)が10人であり、正であるため、心の
症状の改善がされたことが示されている。
【0025】
前記身体の症状の改善は、好ましくは、眼精疲労の改善、身体の痛みの改善、心臓の虚血の改善、疲労の改善、口渇の改善、肌の調子の改善、気管支炎の改善、白髪の改善、自律神経のバランスの改善、難聴の改善、むくみの改善、頻尿の改善、体重の維持、整胃、免疫力の向上、整腸、又は育毛である。
尚、身体の痛みは、眼痛、頭痛、および胃痛からなる群から選択される一以上を除く身体の痛みであってよい。また、疲労は、眼精疲労、および目が疲れることからなる群から選択される一以上を除く疲労であってよい。
【0026】
前記眼精疲労の改善は、好ましくは、目が疲れることの改善、目がかすむことの改善、又は眼痛の改善である。
【0027】
前記眼精疲労の改善は、例えば、後述する実施例のように、対象集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、まず、「目が疲れる」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときの、{(A)-(B)}(人)を算出する。便宜上、これを(C1)(人)とする。
同様にして、「目がかすむ」についても算出する。便宜上、これを(C2)(人)とする。
同様にして、「眼痛」についても算出する。便宜上、これを(C3)(人)とする。
このとき、{(C1)+(C2)+(C3)}(人)が正であるならば、眼精疲労の改善がされたと判断することができる。当該{(C1)+(C2)+(C3)}(人)は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、(C1)(人)が7人、(C2)(人)が4人、(C3)(人)が2人のため、{(C1)+(C2)+(C3)}(人)が13人であり、正であるため、眼精疲労の改善がされたことが示されている。
【0028】
目が疲れることの改善は、例えば、後述する実施例のように、対象集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、「目が疲れる」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときに、{(A)-(B)}(人)が正であるならば、目が疲れることの改善がされたと判断することができる。{(A)-(B)}(人)の値は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、{(A)-(B)}(人)が7人であり、正であるため、目が疲れることの改善がされたことが示されている。
目がかすむことの改善、眼痛の改善についても同様にして判断することができる。
【0029】
前記身体の痛みの改善は、好ましくは、筋肉痛の改善、身体の凝り(肩の凝りを除いてもよい。また、例えば、全身の凝り、肩の凝り、背中の凝り、及び腰の凝り等であってよい。)の改善、腰痛の改善、又は関節痛の改善である。
【0030】
前記身体の痛みの改善は、例えば、後述する実施例のように、対象集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、まず、「肩がこる」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改
善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときの、{(A)-(B)}(人)を算出する。便宜上、これを(C1)(人)とする。
同様にして、「筋肉痛・こり」についても算出する。便宜上、これを(C2)(人)とする。
同様にして、「腰痛」についても算出する。便宜上、これを(C3)(人)とする。
同様にして、「関節痛」についても算出する。便宜上、これを(C4)(人)とする。
このとき、{(C1)+(C2)+(C3)+(C4)}(人)が正であるならば、身体の痛みの改善がされたと判断することができる。当該{(C1)+(C2)+(C3)+(C4)}(人)は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、(C1)(人)が5人、(C2)(人)が-2人、(C3)(人)が3人、(C4)(人)が4人のため、{(C1)+(C2)+(C3)+(C4)}(人)が10人であり、正であるため、身体の痛みの改善がされたことが示されている。
【0031】
前記肩の凝りの改善は、例えば、後述する実施例のように、対象集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、「肩がこる」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときに、{(A)-(B)}(人)が正であるならば、肩の凝りの改善がされたと判断することができる。{(A)-(B)}(人)の値は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、{(A)-(B)}(人)が5人であり、正であるため、肩の凝りの改善がされたことが示されている。
【0032】
前記筋肉痛の改善・身体の凝りの改善は、例えば、後述する実施例のように、対象集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、「筋肉痛・こり」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときに、{(A)-(B)}(人)が正であるならば、筋肉痛の改善・身体の凝りの改善がされたと判断することができる。{(A)-(B)}(人)の値は大きい方が好ましい。
【0033】
腰痛の改善は、例えば、後述する実施例のように、対象集団(被験者集団)に対して行う抗加齢QOL共通問診票による評価で判断することができる。
具体的には、「腰痛」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときに、{(A)-(B)}(人)が正であるならば、腰痛の改善がされたと判断することができる。{(A)-(B)}(人)の値は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、{(A)-(B)}(人)が3人であり、正であるため、腰痛の改善がされたことが示されている。
関節痛の改善についても同様にして判断することができる。
【0034】
他の好ましい態様である、心臓の虚血の改善、疲労の改善、口渇の改善、肌の調子の改善、気管支炎の改善、白髪の改善、自律神経のバランスの改善、難聴の改善、むくみの改善、頻尿の改善、体重の維持、整胃、免疫力の向上、整腸、育毛についても、既に記載し
た、眼精疲労の改善と同様にして判断することができる。また、後述するように、当該好ましい態様に、好ましい態様がさらにある場合、当該態様についても、既に記載した、目が疲れることの改善と同様にして判断することができる。
【0035】
前記心臓の虚血の改善は、好ましくは、動悸の改善、又は息切れの改善である。
【0036】
前記疲労の改善は、好ましくは、だるいことの改善、又は健康感がないことの改善であり、前者は、例えば、身体がだるいことの改善である。
【0037】
前記肌の調子の改善は、好ましくは、肌の不調の改善である。
【0038】
前記気管支炎とは、好ましくは、咳や痰の改善であり、例えば、咳が出やすいことの改善、又は痰が出やすいことの改善及び/又は痰が切れにくいことの改善である。
【0039】
前記自律神経のバランスの改善は、好ましくは、頭痛の改善、めまいの改善、汗をかきやすいことの改善、のぼせの改善、又は冷え性(例えば、「sensitivity to cold」等と
英訳される。)の改善である。
【0040】
前記難聴の改善は、好ましくは、耳鳴りの改善、又は会話が聞きづらいことの改善である。
【0041】
前記体重の維持は、好ましくは、太りやすいことの改善、やせることの改善、又は体重の減少の改善である。
【0042】
前記整胃は、好ましくは、食欲不振の改善、胃が張ることの改善、又は胃痛の改善である。
【0043】
前記免疫力の向上は、好ましくは、風邪をひきやすいことの改善である。
【0044】
前記整腸は、好ましくは、下痢の改善、又は便秘の改善である。
【0045】
前記育毛は、好ましくは、抜け毛(脱毛)の改善である。
【0046】
前記心の症状の改善は、好ましくは、怒りの改善、活気の改善、抑うつの改善、友好の改善、混乱の改善、不安の改善、又は不眠の改善である。
【0047】
これらの好ましい態様についても、既に記載した、眼精疲労の改善と同様にして判断することができる。また、後述するように、当該好ましい態様に、好ましい態様がさらにある場合には当該態様についても、既に記載した、目が疲れることの改善と同様にして判断することができる。
【0048】
前記怒りの改善は、好ましくは、いらいらすることの改善、又は怒りっぽいことの改善である。
【0049】
前記活気の改善は、好ましくは、意欲がわかないことの改善、幸せと感じないことの改善、生きがいがないと感じることの改善、日常生活が楽しくないと感じることの改善、自信を失ったと感じることの改善、又は自分が役に立つ人間ではないと感じることの改善である。
【0050】
前記抑うつの改善は、好ましくは、憂うつの改善である。
【0051】
前記友好の改善は、好ましくは、人と話すのが嫌と感じることの改善である。
【0052】
前記混乱の改善は、好ましくは、くよくよすることの改善、ど忘れをすることの改善、集中できないことの改善、問題を解決できないことの改善、又は物事を容易に判断できないことの改善である。
【0053】
前記不安の改善は、緊張感の改善、理由なく不安になることの改善、又は何か恐怖を感じることの改善である。
【0054】
前記不眠の改善は、好ましくは、眠りが浅いことの改善、寝つきが悪いことの改善、又は心配ごとでよく眠れないことの改善である。
【0055】
本実施態様に係る組成物を摂取する対象は、更年期障害に該当することが好ましい。対象が更年期障害にあるか否かは常法により確認することができる。例えば、簡略更年期指数(SMI)チェック表や、男性更年期障害質問票(AMSスコア)による評価が挙げられる。簡略更年期指数(SMI)チェック表を用いたときは、71点以上の場合に対象が更年期障害にあると確認できる。また、男性更年期障害質問票(AMSスコア)を用いたときは、27点以上の場合に対象が更年期障害にあると確認できる。したがって、前記QOLの改善は、更年期障害の改善であってよい。
【0056】
本実施態様における更年期障害の改善の評価が、専門家の開発した検査や質問票などにより客観的な尺度によって評価されるものの場合、その例としては、男性更年期障害質問票(AMSスコア)による評価が挙げられる。AMSスコアによる評価で行う場合、その評価で得られる各因子の数値と合計点は、対象がエクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が小さいことが好ましい。
【0057】
前記更年期障害の改善は、例えば、後述する実施例のように、評価するのに十分な数の対象の集団(被験者集団)に対して行う男性更年期障害質問票(AMSスコア)による評価で判断することができる。
具体的には、表1に掲げる「AMSスコア」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)という対象の数を(A)(人)、悪化した(すなわち、値が大きくなった)という対象の数を(B)(人)としたときに、いずれの{(A)-(B)}(人)も正であるならば、更年期障害の改善がされたと判断することができる。当該{(A)-(B)}(人)は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、{(A)-(B)}(人)が11人であり、正であるため、更年期障害の改善がされたことが示されている。
【0058】
また、前記更年期障害の改善は、上記のように対象の数に基づいて改善を判断してもよいが、スコア平均に基づいて判断することもできる。
具体的には、表2に掲げる「合計点」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が改善した(すなわち、値が小さくなった)ときに、更年期障害の改善がされたと判断することができる。エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)のスコア平均から、摂取したときのスコア平均を差し引いた値は大きい方が好ましい。
尚、表2に掲げるように、「からだの疲労や行動力の減退」の因子は、「気分」の因子と「活力」の因子の両者に含まれ、また、「力尽きた、どん底にいると感じる」の因子も
、「気分」の因子と「活力」の因子の両者に含まれるが、表2に掲げる「合計点」を算出する際にはいずれについても重複分は含めない。具体的に説明すると、摂取前(スコア平均)については、表2に記載されているすべての数値の合計は43.2であるが、重複分を含めない場合の合計は39.1であり、後者を採用する。摂取後4週(スコア平均)についても同様であり、表2に記載されているすべての数値の合計は34.6であるが、重複分を含めない場合の合計は31.5であり、後者を採用する。
後述する実施例では、一例として、対象を軽度・中等度の対象に限定した場合であるが、エクオール類を摂取する前のスコア平均が39.1、エクオール類を摂取した後(摂取後4週)のスコア平均が31.5であり、値が小さくなったため、更年期障害の改善がされたことが示されている。
【0059】
前記更年期障害の改善は、好ましくは、健康感の改善、身体の痛みの改善、自律神経の乱れの改善、睡眠の改善、疲労感の改善、気分の改善、不安の改善、活力の改善、筋力の改善、体毛の改善、又は性的能力の改善である。
【0060】
これらの好ましい態様について、また、後述するように、当該好ましい態様に、好ましい態様がさらにある場合には当該態様についても、既に記載した、眼精疲労の改善や、目が疲れることの改善と同様に、対象の数に基づいて改善を判断することができる。
【0061】
また、既に記載したように、スコア平均に基づいて判断することもできる。
具体的には、例えば、「健康感の改善」であれば、「健康感」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)よりも摂取したときの方が、スコア平均が改善した(すなわち、値が小さくなった)ときに、健康感の改善がされたと判断することができる。エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)のスコア平均から、摂取したときのスコア平均を差し引いた値は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、一例として、対象を軽度・中等度の対象に限定した場合であるが、エクオール類を摂取する前のスコア平均が3.4、エクオール類を摂取した後のスコア平均が1.9であり、値が小さくなったため、健康感の改善がされたことが示されている。
【0062】
また、例えば、「気分の改善」であれば、まず、「いらいらする」について、エクオール類を摂取しないとき(又は、エクオール類を摂取する前若しくはプラセボを摂取したとき)のスコア平均から、摂取したときのスコア平均を差し引いた値を算出する。便宜上、これを(C1)とする。
同様にして、「神経質になった」についても算出する。便宜上、これを(C2)とする。
同様にして、「からだの疲労や行動力の減退」についても算出する。便宜上、これを(C3)とする。
同様にして、「力尽きた、どん底にいると感じる」についても算出する。便宜上、これを(C4)とする。
このとき、{(C1)+(C2)+(C3)+(C4)}が正であるならば改善されたと判断することができる。当該{(C1)+(C2)+(C3)+(C4)}は大きい方が好ましい。
後述する実施例では、(C1)が0.3、(C2)が0.4、(C3)が0.6、(C4)が0.4のため、{(C1)+(C2)+(C3)+(C4)}が1.7であり、正であるため、気分の改善がされたことが示されている。
【0063】
前記健康感の改善は、好ましくは、総合的に調子が思わしくないことの改善である。
【0064】
前記身体の痛みの改善は、好ましくは、関節の痛みの改善、又は筋肉の痛みの改善である。
【0065】
前記自律神経の乱れの改善は、好ましくは、ひどい発汗の改善である。
【0066】
前記睡眠の改善は、好ましくは、睡眠の悩みの改善である。
【0067】
前記疲労感の改善は、好ましくは、よく眠くなることの改善、又はしばしば疲れを感じることの改善である。
【0068】
前記気分の改善は、好ましくは、いらいらすることの改善、神経質になったこと(神経質)の改善、からだの疲労の改善、行動力の減退の改善、又は「力尽きた、どん底にいると感じる」ことの改善である。
【0069】
前記不安の改善は、好ましくは、不安感の改善、憂うつな気分の改善、又は「人生の山は通り過ぎた」と感じることの改善である。
【0070】
前記活力の改善は、好ましくは、からだの疲労の改善、行動力の減退の改善、又は「力尽きた、どん底にいると感じる」ことの改善である。
【0071】
前記筋力の改善は、好ましくは、筋力の低下の改善である。
【0072】
前記体毛の改善は、好ましくは、ひげの伸びが遅くなった(ひげの伸びが遅い)ことの改善である。
【0073】
前記性的能力の改善は、好ましくは、性的能力の衰えの改善、早朝勃起(朝立ち)の回数の減少の改善、又は性欲の低下の改善である。
【0074】
本実施態様に係る組成物全量に対するエクオール類の含有量は、特に限定されないが、エクオール類の総量として、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、一方で、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。すなわち、例えば、0.001質量%以上20質量%以下、0.01質量%以上10質量%以下、0.1質量%以上5質量%以下等である。
【0075】
本実施態様に係る組成物の摂取量は、対象の齢、体重、摂取経路、摂取スケジュール、形態などにより適宜設定されるが、それを摂取することにより、該対象においてQOLが改善する限り特に限定されない。エクオール類の総量として、1日当たり、好ましくは1mg以上であり、より好ましくは2mg以上であり、さらに好ましくは5mg以上であり、一方で、好ましくは40mg以下であり、より好ましくは20mg以下であり、さらに好ましくは10mg以下である。すなわち、例えば、1日当たり、1mg以上40mg以下、2mg以上20mg以下、5mg以上10mg以下等である。
【0076】
また、本実施態様に係る組成物の摂取スケジュールとしては、1日あたり1回の摂取でもよいし、1日に複数回に分けた摂取でもよい。また、数日又は数週間に1回の摂取であってもよいが、毎日摂取することが好ましい。また、摂取期間は、好ましくは4週以上、より好ましくは8週以上であり、一方で上限は特に限定されないが、例えば満100歳になるまでなどが挙げられ、死亡するまでであってもよい。すなわち、例えば、4週以上死亡するまで、8週以上満100歳になるまで等である。
【0077】
本実施態様に係る組成物の用途は、治療目的および非治療目的のいずれであってもよい。「非治療目的」とは、医療行為を含まない行為のことである。医療行為を含まない行為としては、例えば、健康増進のための行為や美容のための行為等が挙げられる。
【0078】
本実施態様に係る組成物が非治療目的で使用される場合の対象は、健常者であってよい。健常者とは、本実施態様に係る組成物を摂取する際に、例えば、更年期障害や、更年期障害の改善として既に例示した好ましい態様における疾患、症状、症候、及び障害等(本開示では、「疾患、症状、症候、及び障害等」を「疾患等」と記載することがある。)に該当しない者等を指してよい。本実施態様に係る組成物が非治療目的で使用される場合、更年期障害や、更年期障害の改善として既に例示した好ましい態様における疾患等の予防ができる。
【0079】
本実施態様に係る組成物が治療目的で使用される場合の対象は、非健常者であってよい。本実施態様に係る組成物が治療目的で使用される場合は、非健常者において、更年期障害や、更年期障害の改善として既に例示した好ましい態様における疾患等の治療が可能になる。
【0080】
本実施態様に係る組成物は、飲食品(サプリメントを含む。)として利用することができる。例えば、エクオール類を含有する、男性のQOLの改善のための飲食品である。
当該飲食品は、健常者および非健常者を含む対象に対して用いることができる。また、非治療目的として使用することができる。
【0081】
エクオール類を飲食品の素材として用いる場合、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品、食品添加物等(これらには飲料も含まれる。)として使用できる。飲食品の形態としては、例えば、適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、錠剤、カプセル、ペーストなどに成形して食用に供してもよく、また種々の食品、例えば、ハム、ソーセージなどの食肉加工食品、かまぼこ、ちくわなどの水産加工食品、パン、菓子、バター、粉乳、発酵乳製品に添加して使用したり、水、果汁、牛乳、清涼飲料などの飲料に添加して使用してもよい。
【0082】
飲食品は、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分とすることができる。タンパク質としては、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、部分脱脂粉乳、カゼイン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、及びこれらの加水分解物、バターなどが挙げられる。糖質としては、糖類、加工澱粉(デキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用してもよく、合成品及び/又はこれらを多く含む飲食品を用いてもよい。
【0083】
飲食品は、常法に従って製造することができる。また、エクオール類の飲食品への配合量、配合方法、配合時期は適宜選択することができる。さらに、必要に応じて、瓶、袋、缶、箱、パック等の適宜の容器に封入することができる。
【0084】
飲食品全量に対するエクオール類の含有量や、飲食品の摂取量、飲食品の摂取スケジュールについては、本実施態様に係る組成物全量に対するエクオール類の含有量や、本実施態様に係る組成物の摂取量、本実施態様に係る組成物の摂取スケジュールの記載を援用する。
【0085】
エクオール類を飲食品の素材とし、前記各用途に用いられる場合には、その各用途を記載した飲食品としてよく、また、その各用途から想起される用途を記載した飲食品としてよい。
【0086】
本実施態様に係る組成物は、医薬品として利用することができる。例えば、エクオール類を含有する、男性のQOLの改善のための医薬品である。
当該医薬品は、非健常者に対して用いることができる。また、治療目的として使用することができる。
【0087】
エクオール類を医薬品の素材として用いる場合、医薬品としての適用方法は、経口投与又は非経口投与のいずれも採用することができる。投与に際しては、有効成分を経口投与、直腸内投与、注射などの投与方法に適した固体又は液体の医薬用無毒性担体と混合して、慣用の医薬製剤の形態で投与することができる。このような製剤としては、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤などの液剤、凍結乾燥製剤などが挙げられ、これらの製剤は製剤上の常套手段により調製することができる。前記の医薬用無毒性担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングルコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水などが挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤などの慣用の添加剤を適宜添加することもできる。
【0088】
上記医薬品全量に対するエクオール類の含有量や、医薬品の投与量、医薬品の投与スケジュールについては、本実施態様に係る組成物全量に対するエクオール類の含有量や、本実施態様に係る組成物の摂取量、本実施態様に係る組成物の摂取スケジュールの記載を援用する。
【0089】
本実施態様に係る組成物が含むエクオール類は、エクオール類を含む組成物であってよく、例えば、ダイゼイン類を含む組成物(例えば、大豆、大豆胚芽、大豆胚芽抽出物、豆腐、油揚げ、豆乳、納豆、醤油、味噌、テンペ、レッドクローブ又はその抽出物、アルファルファ又はその抽出物等)の発酵物であってエクオール類を含むものであってよく、好ましくは、大豆胚芽の発酵物であってエクオール類を含むものや、大豆胚芽抽出物の発酵物であってエクオール類を含むものである。
尚、本開示において、「ダイゼイン類」は、ダイジン、マロニルダイジン、アセチルダイジン、ダイゼイン、ジハイドロダイゼインを含み、「ゲニステイン類」は、ゲニスチン、マロニルゲニスチン、アセチルゲニスチン、ゲニステイン、ジハイドロゲニステイン等を含み、「グリシテイン類」は、グリシチン、マロニルグリシチン、アセチルグリシチン、グリシテイン、ジハイドログリシテイン等を含むものとする。
【0090】
したがって、本実施態様に係る組成物は、エクオール類を含む組成物を含有する、男性のQOLの改善のための組成物であってよい。
【0091】
また、本実施態様に係る組成物は、ダイゼイン類を含む組成物の発酵物であってエクオール類を含むものを含有する、男性のQOLの改善のための組成物であってよい。
また、本実施態様に係る組成物は、大豆胚芽の発酵物であってエクオール類を含むものを含有する、男性のQOLの改善のための組成物であってよい。
また、本実施態様に係る組成物は、大豆胚芽抽出物の発酵物であってエクオール類を含むものを含有する、男性のQOLの改善のための組成物であってよい。
【0092】
また、本実施態様に係る組成物は、ダイゼイン類を含む組成物の発酵によって得られたエクオール類を含有する、男性のQOLの改善のための組成物であってよい。
また、本実施態様に係る組成物は、大豆胚芽の発酵によって得られたエクオール類を含有する、男性のQOLの改善のための組成物であってよい。
また、本実施態様に係る組成物は、大豆胚芽抽出物の発酵によって得られたエクオール類を含有する、男性のQOLの改善のための組成物であってよい。
【0093】
前記大豆胚芽の発酵物であってエクオール類を含むものは常法に従って得ることができる。また、大豆胚芽の発酵についても常法に従うことができる。
【0094】
前記大豆胚芽抽出物は、発酵により発酵物となった際にエクオール類を含むものであれば特に限定されず、例えば、実施例に記載したような、イソフラボン類を含む組成物が挙げられ、より具体的には、イソフラボン類を含む大豆胚芽抽出物が挙げられる。このようなイソフラボン類を含む大豆胚芽抽出物は、大豆及び大豆胚芽(胚軸)から抽出することができる。該抽出には、水、エタノール、または含水エタノールを用いることができる。また、例えば、文献「植物ポリフェノール含有素材の開発-その機能性と安全性-」(2007年発行、株式会社シーエムシー出版)のようにして得ることができる。
【0095】
イソフラボン類とは、ポリフェノールの分類のひとつであり、イソフラボンを基本骨格とするフラボノイドである。イソフラボン類は、大豆、葛、レッドクローバー、カンゾウなどのマメ科の植物に多く含まれる。したがって、前記イソフラボン類を含む大豆胚芽抽出物は、その代わりとして、葛、レッドクローバー、カンゾウなどのマメ科の植物の抽出物であってイソフラボン類を含むものであってもよい。
【0096】
また、前記大豆胚芽抽出物は、発酵により発酵物となった際にエクオール類を含むものであれば、その成分が抽出又は精製されたものであってもよい。すなわち、前記大豆胚芽抽出物はイソフラボン類であってもよいし、イソフラボン類を含む組成物であってもよく、例えば、実施例に記載したような、イソフラボン類を含む組成物であってよい。
【0097】
イソフラボン類としては、発酵によりエクオール類となるものであれば特に限定されない。
イソフラボン類としては、例えば、ダイゼインが挙げられる。この場合、ダイゼインからエクオールを生成する能力を有する微生物を用いて発酵することで、その微生物にエクオールを生成させることができる。尚、ダイゼインは、ダイジンを加水分解酵素(例えば、β-グルコシダーゼ等)により加水分解して得られたものであってもよい。
また、配糖体であるダイジンからダイゼインを生成する能力を有し、かつ、ダイゼインからエクオールを生成する能力を有する微生物を用いて発酵することで、その微生物にエクオールを生成させることもでき、このような場合には、イソフラボン類としてはダイジンであってよい。
【0098】
また、イソフラボン類としては、例えば、ゲニステインが挙げられる。この場合、ゲニステインから5-ヒドロキシエクオールを生成する能力を有する微生物を用いて発酵することで、その微生物に5-ヒドロキシエクオールを生成させることができる。尚、ゲニステインは、ゲニスチンを加水分解酵素(例えば、β-グルコシダーゼ等)により加水分解して得られたものであってもよい。
また、配糖体であるゲニスチンからゲニステインを生成する能力を有し、かつ、ゲニステインから5-ヒドロキシエクオールを生成する能力を有する微生物を用いて発酵することで、その微生物に5-ヒドロキシエクオールを生成させることもでき、このような場合には、イソフラボン類としてはゲニスチンであってよい。
【0099】
前記イソフラボン類は必ずしも精製された純品である必要はない。発酵により得られるエクオール類の使用目的や用途などに応じて、イソフラボン類の種類、形態、精製度等を任意に選択することができる。
発酵に用いる大豆胚芽抽出物の量や濃度は、発酵により発酵物となった際にエクオール類を含む限り特に限定されない。また、好ましい態様において大豆胚芽抽出物がイソフラボン類を含む場合の発酵に用いるイソフラボン類の量や濃度も特に限定されない。また、好ましい態様においてイソフラボン類単体を用いる場合の発酵に用いるイソフラボン類の量や濃度も特に限定されない。培養液の量や製造しようとするエクオール類の量に応じて適宜設定することができる。
【0100】
発酵においては、大豆胚芽抽出物を含む培地において、嫌気性微生物を培養する。該嫌気性微生物は、37℃付近(例えば30~42℃)の温度でエクオール類の生産能を有する嫌気性微生物である限り特に限定されないが、例えば、Adlercreutzia属に属する微生
物、Asaccharobacter属に属する微生物、Bacteroides属に属する微生物、Bifidobacterium属に属する微生物、Eggerthella属に属する微生物、Enterococcus属に属する微生物、Eubacterium属に属する微生物、Lactobacillus属に属する微生物、Lactococcus属に属する
微生物、Sharpea属に属する微生物、Slackia属に属する微生物、Streptococcus属に属す
る微生物が挙げられる。中でも、Asaccharobacter属に属する、Adlercreutzia属に属する微生物が好ましい。
【0101】
また、Adlercreutzia属に属する微生物としては、Adlercreutzia equolifaciensに属する微生物、Adlercreutzia mucosicolaに属する微生物が挙げられ、Asaccharobacter属に
属する微生物としては、Asaccharobacter celatusに属する微生物が挙げられ、Bacteroides属に属する微生物としては、Bacteroides ovatusに属する微生物が挙げられ、Bifidobacterium属に属する微生物としては、Bifidobacterium animalisに属する微生物、Bifidobacterium breveに属する微生物、Bifidobacterium longumに属する微生物、Bifidobacterium pseudolongumに属する微生物が挙げられ、Enterococcus属に属する微生物としては、Enterococcus faecalisに属する微生物が挙げられ、Lactobacillus属に属する微生物としては、Lactobacillus fermentumに属する微生物、Lactobacillus intestinalisに属する
微生物、Lactobacillus plantarumに属する微生物、Lactobacillus rhamnosusに属する微生物が挙げられ、Lactococcus属に属する微生物としては、Lactococcus garvieaeに属す
る微生物が挙げられ、Sharpea属に属する微生物としては、Sharpea azabuensisに属する
微生物が挙げられ、Slackia属に属する微生物としては、Slackia equolifaciensに属する微生物、Slackia isoflavoniconvertensに属する微生物が挙げられ、Streptococcus属に
属する微生物としては、Streptococcus constellatusに属する微生物、Streptococcus intermediusに属する微生物が挙げられる。
【0102】
また、Adlercreutzia equolifaciensに属する微生物としては、Adlercreutzia equolifaciens FJC-B9T株が挙げられ、Adlercreutzia mucosicolaに属する微生物としては、Adlercreutzia mucosicola Mt1B8株が挙げられ、Asaccharobacter celatusに属する微生物と
しては、Asaccharobacter celatus AHU 1763株、Asaccharobacter celatus DSM 18785株
が挙げられ、Bacteroides ovatusに属する微生物としては、Bacteroides ovatus E-23-15株が挙げられ、Bifidobacterium breveに属する微生物としては、Bifidobacterium breve
ATCC 15700株が挙げられ、Bifidobacterium longumに属する微生物としては、Bifidobacterium longum BB536株が挙げられ、Eggerthella属に属する微生物としては、Eggerthell
a sp. YY7918株、Eggerthella sp. D1株が挙げられ、Enterococcus faecalisに属する微
生物としては、Enterococcus faecalis INIA P333株が挙げられ、Eubacterium属に属する微生物としては、Eubacterium sp. D2株が挙げられ、Lactobacillus fermentumに属する
微生物としては、Lactobacillus fermentum DPPMA114株が挙げられ、Lactobacillus intestinalisに属する微生物としては、Lactobacillus intestinalis KTCT13676BP株が挙げられ、Lactobacillus plantarumに属する微生物としては、Lactobacillus plantarum DPPMA24W株、Lactobacillus plantarum DPPMASL33株が挙げられ、Lactobacillus rhamnosusに
属する微生物としては、Lactobacillus rhamnosus INIA P540株、Lactobacillus rhamnosus DPPMAAZ1株が挙げられ、Lactococcus garvieaeに属する微生物としては、Lactococcus
garvieae 20-92株が挙げられ、Sharpea azabuensisに属する微生物としては、Sharpea azabuensis ST18株が挙げられ、Slackia equolifaciensに属する微生物としては、Slackia
equolifaciens DZE株が挙げられ、Slackia isoflavoniconvertensに属する微生物としては、Slackia isoflavoniconvertens HE8株が挙げられ、また、Slackia属に属する微生物
としては、Slackia sp. TM-30株、Slackia sp. FJK1株、Slackia sp. NATTS株、Slackia sp. YIT 11861株が挙げられ、Streptococcus constellatusに属する微生物としては、Streptococcus constellatus E-23-17株が挙げられ、Streptococcus intermediusに属する微生物としては、Streptococcus intermedius A6G-225株が挙げられる。
【0103】
前記嫌気性微生物は、エクオール類の生産に適した条件で大豆胚芽抽出物を培地中に含有させて培養されてよい。前記エクオール類の生産に適した条件とは、エクオール類の生成活性を持つ前記嫌気性微生物の生存と活動が維持される条件を言う。より具体的には、前記嫌気性微生物の生存が可能な気相条件(嫌気性条件)が維持され、前記嫌気性微生物の活性と増殖を支持するための栄養素が与えられることを言う。前記嫌気性微生物の生存に適した種々の培地組成が公知である。したがって、前記嫌気性微生物を用いる場合に、当業者は、適切な培地組成を選択することができる。たとえば、Difco社製のBHI培地
や、実施例において用いた日水製薬社製のGAMブイヨン培地等を使用することができる。
【0104】
また、培地には、例えば、水溶性の有機物を炭素源として加えることができる。水溶性の有機物として、例えば、ソルボース、フラクトース、グルコースなどの糖類;メタノールなどのアルコール類;吉草酸、酪酸、プロピオン酸、酢酸、ギ酸など有機酸類が挙げられる。
炭素源としての培地に加える有機物の濃度は、培地中の前記嫌気性微生物を効率的に発育させるために適宜調節することができる。一般的には、0.1~10wt/vol%の範囲から添加量を選択することによって、過不足を避けることができる。
【0105】
上記の炭素源に加えて、培地には、窒素源が加えられる。窒素源としては通常の発酵に用いうる各種の窒素化合物を用いることができる。好ましい無機窒素源は、アンモニウム塩、及び硝酸塩である。より好ましい無機窒素源は、硫安、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、硝酸カリウム及び硝酸ソーダである。
一方、好ましい有機窒素源はアミノ酸類、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンNなど)、肉エキス、肝臓エキス、消化血清末などである。より好ましい有機窒素源は
アルギニン、システイン、シトルリン、リジン、酵母エキス、ペプトン類(例えばポリペプトンNなど)である。
【0106】
さらに、炭素源や窒素源に加えて、前記嫌気性微生物の培養に適した他の有機物あるいは無機物を培地に加えることもできる。たとえば、ビタミンなどの補因子や各種の塩類等の無機化合物を培地に加えることによって、前記嫌気性微生物の増殖や活性を増強できる場合もある。たとえば無機化合物、ビタミン類、動植物由来の微生物増殖補助因子として以下のものを挙げることができる。
無機化合物 ビタミン類
リン酸二水素カリウム ビオチン
硫酸マグネシウム 葉酸
硫酸マンガン ピリドキシン
塩化ナトリウム チアミン
塩化コバルト リボフラビン
塩化カルシウム ニコチン酸
硫酸亜鉛 パントテン酸
硫酸銅 ビタミンB12
明ばん チオオクト酸
モリブデン酸ソーダ p-アミノ安息香酸
塩化カリウム
ホウ酸等
塩化ニッケル
タングステン酸ナトリウム
セレン酸ナトリウム
硫酸第一鉄アンモニウム
【0107】
これらの無機化合物やビタミン類、あるいは増殖補助因子を添加して培養液を製造する方法は公知である。培地は、液体、半固体、あるいは固体とすることができる。好ましい培地の形態は、液体培地である。
【0108】
前記嫌気性微生物は、公知の嫌気性微生物の培養方法にしたがって培養することができる。工業的な製造には、培地や基質ガスを連続的に供給することができ、かつ培養物を回収するための機構を備えた連続培養システム (continuous fermentation system)が好適
である。
嫌気性微生物の培養においては、連続培養システム内への酸素の混入を防ぐことが必要である。培養器は通常用いられる培養槽がそのまま利用できる。前記嫌気性微生物の培養にも利用することができる培養タンクが市販されている。培養槽内に混入する酸素を、窒素などの不活性気体あるいは基質ガスなどで置換することにより、嫌気的な雰囲気を作ることができる。
【0109】
培養槽には付加的な機能が与えられた培養槽が利用できる。たとえば、通常使用される攪拌混合槽のほか、気泡塔型の培養槽、ドラフトチューブ型の培養槽などが利用できる。液体培地に吹き込まれる混合気体によって前記嫌気性微生物は遊離分散され、前記嫌気性微生物と培地とを十分に接触させることができる。また、バイオトリックリングフィルター(biotrickling filter)のように通気性の高いスラグ、その他セラミック系の無機充
てん物、あるいはポリプロピレン等の有機合成物質の充てん層に、水分を滴らせながら前記嫌気性微生物を生息させ、そこにガスを通気しながら培養することもできる。さらに、使用する前記嫌気性微生物は常法によりカラギーナンゲル、アルギン酸ゲル、アクリルアミドゲル、キチン、セルロース、寒天などに固定化して用いることもできる。
【0110】
培養槽の形状によっては、培地を十分に攪拌するため、攪拌機等を利用することもできる。培養槽内の培養物を攪拌することによって、培地成分や基質ガスを前記嫌気性微生物に接触させる機会を増やして、エクオール類の生成効率を最適化することができる。また基質ガスをナノバブルとして供給することもできる。
【0111】
前記嫌気性微生物の十分な生育のため、培養物のpHは5.0~8.0が好ましく、6.0~7.5がより好ましく、6.5~7.5がさらに好ましい。また、培養槽の温度は特に限定されるものではないが、エクオール類の回収量を増加できるため、好ましくは30℃~40℃であり、さらに好ましくは33℃~38℃である。
発酵時間は、エクオール類の生成量、大豆胚芽抽出物の残存量等に応じて適宜設定できる。例えば8~120時間、好ましくは12~72時間、特に好ましくは16~60時間である。
【0112】
前記嫌気性微生物の培養は、水素を含む1種類以上の気体からなる気相下で行うことが
好ましい。水素濃度は特に限定されない。
【0113】
得られた培養液は、ろ過あるいは遠心分離などにより固液分離し、液相を回収してもよい。ろ過としては、例えば、ろ紙あるいは限外ろ過膜等を用いたろ過等が挙げられ、遠心分離としてはスパーデカンターなどの遠心分離機を用いた遠心分離等が挙げられる。また、得られた培養液は、固液分離をせずに、そのまま用いてもよい。
【0114】
大豆胚芽抽出物の発酵物は、得られた培養液を必要に応じて、加熱乾燥処理、噴霧乾燥処理、又は凍結乾燥処理により固形状にして使用することができる。加熱乾燥処理及び噴霧乾燥処理は、いずれも、例えばスプレードライ装置を使用して行うことができる。凍結乾燥処理は凍結乾燥装置を使用して行うことができる。
加熱乾燥処理、噴霧乾燥処理、又は凍結乾燥処理された発酵物は、必要に応じて粉末化処理に供してもよい。
【0115】
このような方法によって得られる、加熱乾燥処理、噴霧乾燥処理、又は凍結乾燥処理された発酵物は、乾燥粉末中、エクオール類を0.05~50質量%含むことができる。例えば、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%から選択される2点の質量%濃度を下限(~以上、又は、~より高い)及び上限(~以下、又は、~より低い)とする濃度範囲により示される質量%濃度であることが好ましい。
【0116】
後述する実施例に示される通り、本実施態様に係る組成物を摂取した対象では、腸内細菌叢の多様性が改善される。
したがって、本実施態様に係る組成物は、腸内細菌叢改善の用途に用いることができる。前記腸内細菌叢改善は、好ましくは、腸内細菌叢の多様性の改善である。
また、このことから、本開示は、エクオール類を含有する、腸内細菌叢改善用組成物を提供することができる。
【0117】
本実施態様に係る組成物が非治療目的で使用される場合の対象は、健常者であってよい。健常者とは、本実施態様に係る組成物を摂取する際に、例えば、過敏性腸症候群、便秘、下痢、食物アレルギーに該当しない者等を指してよい。本実施態様に係る組成物が非治療目的で使用される場合、過敏性腸症候群、便秘、下痢、食物アレルギー等の予防ができる。
【0118】
本実施態様に係る組成物が治療目的で使用される場合の対象は、非健常者であってよい。本実施態様に係る組成物が治療目的で使用される場合は、非健常者において、過敏性腸症候群、便秘、下痢、食物アレルギー等の治療が可能になる。
【0119】
腸内細菌叢の多様性が改善するとShannon Idexが増加するため、Shannon Idexを分析することにより腸内細菌叢の多様性の改善を確認することができる。その分析には、例えば、腸内フローラ検査「マイキンソー プロ」(株式会社サイキンソー製)等を使用することができる。
【0120】
後述する実施例に示される通り、本実施態様に係る組成物を摂取した対象では、腸内細菌叢においてファーミキューテス(Firmicutes)門細菌が増加する。
したがって、本実施態様に係る組成物は、ファーミキューテス(Firmicutes)門細菌増
殖促進の用途に用いることができる。
また、このことから、本開示は、エクオール類を含有する、ファーミキューテス(Firmicutes)門細菌増殖促進用組成物を提供することができる。
【0121】
ファーミキューテス(Firmicutes)門細菌数の分析には、例えば、腸内フローラ検査「マイキンソー プロ」(株式会社サイキンソー製)等を使用することができる。
【実施例】
【0122】
以下に実施例を記載するが、いずれの実施例も、限定的な意味として解釈される実施例ではない。
【0123】
〔製造例1〕男性のQOLの改善のための組成物の製造
原料として、エクオール(5 mg)を含む、大豆胚芽抽出物の発酵物「商品名:アクアエクオール」、マルチトール、結晶セルロース、トウモロコシたん白質、ステアリン酸Ca、二酸化ケイ素、カルナウバロウを用いて、錠剤に成型し、男性のQOLの改善のための組成物として製造して、後述する試験に試験食として使用した。
【0124】
前記大豆胚芽抽出物の発酵物は次のようにして調製した。
まず、発酵に用いる嫌気性微生物の種培養液を調製した。すなわち、GAMブイヨン培地
(日水製薬製)5.9 gとL-アルギニン塩酸塩1.2 gを純水100 mLに溶かし、窒素ガスを通じながら10 mLずつ嫌気性菌培養用18 mm試験管(三紳工業製)に分注し、ブチルゴム栓、プラスチックキャップをして115℃、15分間滅菌した。この培地に-80℃で凍結保存していた嫌気性微生物であるアサッカロバクター・セラツス(Asaccharobacter celatus)DSM 18785株を植菌し、無菌フィルターを通した水素ガスで気相を2分間以上置換した後(水素の
分圧パーセント濃度 100%)、37℃、250 spmで18時間振とう培養を行い、種培養液を調製した。
次に、イソフラボン-80(J-オイルミルズ社製)11 g、酵母エキス3 g、L-システ
イン塩酸塩0.5 g、ヘミン0.002 g、β-シクロデキストリン16.5g、L-アルギニン塩酸塩12.1g、オレイン酸0.1g、消泡剤0.2 gを含み、脱イオン水で1000 mLに合わせたものであって、pH 7.1とした培地を調製し、1000 mLを2 L容加圧ミニジャー(オートマチックシステムリサーチ製)に入れ、窒素ガスを20分間以上通じた後、115℃、15分間滅菌した。ただ
し、前記イソフラボン-80(J-オイルミルズ社製)は、北米産大豆胚芽を原料に国内で抽出精製して得られた大豆イソフラボン配糖体(ダイジン、グリシチン、及びゲニスチン)を高純度に含む粉末であり(大豆機能性素材(ファイン)、[online]、株式会社J-オイルミルズ、[令和5年8月9日検索]、インターネット<https://www.j-oil.com/prosumer/fine/>)、本試験では、予め市販のβ-グルコシダーゼを用いて前記配糖体を加水分解し、アグリコン化したもの(それぞれ、ダイゼイン、グリシテイン、及びゲニステイン)を用いた。
この培地に上記種培養液20 mLを植菌し、スパージャーより水素/窒素[2:98](体積比
)のガスを無菌的に0.1 L/minで通気し、37℃、500 rpm、50 kPaで培養を行った。培養中pHは硫酸で7.2に調整した。48時間後、培養液を取り出した。
培養液を硫酸でpH 5.0に調整後、105℃、1分加熱処理した。室温まで冷却後、15,000×g、10分間、20℃で遠心分離を行った。本上清液をスプレードライすることで、前記発酵
物を得た。エクオールの含有量は6.5 %であった。
【0125】
〔実施例1〕
満40歳以上の健康な男性17名を対象に、試験食を4週間、1日2錠(エクオールとして1日10 mg)、水またはぬるま湯で摂取させた。摂取前と摂取後4週に、男性更年期障害質問票(AMSスコア)、および、抗加齢QOL共通問診票を用いて評価した。
【0126】
評価はそれぞれのマニュアルに沿って行った。
AMSスコアでは、「1.なし」、「2.軽い」、「3.中等度」、「4.重い」、「5.非常に重い」の5段階で被験者に回答させ、1~5を、それぞれ1~5ポイントとし
てスコア化した。
抗加齢QOL共通問診票では、「1.全くなし」、「2.ほとんどなし」、「3.少しあり」、「4.中程度あり」、「5.高度にあり」の5段階で被験者に回答させ、1~5
を、それぞれ1~5ポイントとしてスコア化した。
【0127】
(AMSスコアに基づく結果)
AMSスコアに基づく結果を表1に示す。摂取前と比べ、スコアが低下した項目を『改善』、上昇した項目を『悪化』とし、各人の合計点についても同様に判断した。その結果、すべての項目において、改善した人数が悪化した人数を上回った。特に、合計点については、17名中、12名で改善、1名で悪化となり、改善した人数が、悪化した人数を上回ったことから、本実施例に係る組成物は、被験者の男性更年期障害を改善することがわかった。
また、摂取前に点数が27点以上だった軽度・中等度の被験者(11名)に限れば、表2のように、スコア平均値に関し、「からだの疲労や行動力の減退」の項目、「憂うつな気分」の項目、「力尽きた、どん底に居ると感じる」の項目、および合計点において、摂取前に比べて有意に改善した(p<0.05)。
【0128】
【0129】
【0130】
(抗加齢QOL共通問診票に基づく結果)
抗加齢QOL共通問診票に基づく結果を表3と表4に示す。スコアが低下した項目を『改善』、上昇した項目を『悪化』とし、各人の合計点についても同様に判断した。その結果
、表3より、34項目の身体の症状のうち24項目において、摂取前に比べ、改善した人数が悪化した人数を上回った。また、表4より、21項目の心の症状のうち18項目において、摂取前に比べ、改善した人数が悪化した人数を上回った。さらに、その合計点についても改善した人数が悪化した人数を上回ったことから、本実施例に係る組成物は、被験者のQOLを改善することがわかった。
【0131】
【0132】
【0133】
〔実施例2〕
実施例1の被験者のうち同意の得られた15名に対して、株式会社サイキンソーが提供する腸内フローラ検査「マイキンソー プロ」を用い、マニュアルに従って腸内細菌叢を分析した。
【0134】
(結果)
腸内細菌叢の分析結果を表5に示す。本実施例に係る組成物は、被験者の腸内細菌叢の多様性を改善することがわかった。尚、表中の「ファーミキューテス門細菌」は、「ファーミキューテス(Firmicutes)門細菌」の数を示す。
【0135】
【要約】
【課題】少なくとも、男性のQOLを改善する技術の提供。
【解決手段】エクオール類を含有する、男性のQOLの改善のための組成物。
【選択図】なし